特許第6188604号(P6188604)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188604ステッピングモーターの制御装置、画像処理装置、及びステッピングモーターの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188604
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ステッピングモーターの制御装置、画像処理装置、及びステッピングモーターの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/60 20160101AFI20170821BHJP
   H02P 8/10 20060101ALI20170821BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H02P29/60
   H02P8/10
   H04N1/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-37483(P2014-37483)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-162993(P2015-162993A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】田代 雅也
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−039874(JP,A)
【文献】 特開2001−315985(JP,A)
【文献】 特開2008−079423(JP,A)
【文献】 特開2008−043094(JP,A)
【文献】 特開2010−287335(JP,A)
【文献】 特開2005−144936(JP,A)
【文献】 特開昭61−98168(JP,A)
【文献】 特開平3−266714(JP,A)
【文献】 特開平3−118719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/60
H02P 8/10
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置の内部の温度を検知する温度検知部と、
前記画像処理装置の電源オフ状態又は画像処理に必要な駆動部に電力が供給されないスリープ状態を含む休止状態から前記画像処理装置が有する全ての前記駆動部が動作可能な動作状態に切り替える状態切替部と、
前記状態切替部によって前記画像処理装置が前記休止状態から前記動作状態に切り替えられる際に、切り替え前の前記休止状態の休止時間が、前記画像処理装置の前記休止状態が継続することにより前記画像処理装置の内部の温度が前記画像処理装置外の環境温度まで低下するのに必要な時間として予め定められた第1基準時間以上であるか否かを判定する第1時間判定部と、
前記第1時間判定部によって前記休止時間が前記第1基準時間以上と判定された場合に、前記温度検知部によって検知された検知温度が予め定められた閾値温度未満であるか否かを判定する温度判定部と、
前記温度判定部によって前記検知温度が前記閾値温度以上と判定された場合に、前記画像処理装置に連結された連結装置が有する第1ステッピングモーターに駆動パルス信号を含む第1電流を供給することによって前記第1ステッピングモーターの回転駆動を可能な状態にし、前記検知温度が前記閾値温度未満と判定された場合に、前記第1ステッピングモーターに前記駆動パルス信号を含まない第2電流を供給することにより前記第1ステッピングモーターに熱を生じさせる第1電流制御部と、
を備えるステッピングモーターの制御装置。
【請求項2】
前記第1電流制御部が前記第1ステッピングモーターに前記第2電流を予め定められた第1励磁時間だけ供給していたことを示すフラグ情報を記憶する記憶部と、
前記第1電流制御部によって前記第2電流が前記第1励磁時間だけ供給された後に、前記第1ステッピングモーターが励磁されない無励磁状態となり、前記無励磁状態において前記動作状態から前記休止状態に移行して再び前記状態切替部によって前記画像処理装置が前記休止状態から前記動作状態に切り替えられた際に、前記第1時間判定部によって前記第1基準時間未満と判定された場合に、前記記憶部に前記フラグ情報が記憶されていることを条件に、前記休止状態の前の前記動作状態における前記無励磁状態が予め定められた第2基準時間以上か否かを判定する第2時間判定部と、を更に備え、
前記第1電流制御部は、前記第1時間判定部によって前記第1基準時間未満と判定され、且つ、前記第2時間判定部によって前記休止状態の前の前記動作状態における前記無励磁状態が前記第2基準時間以上と判定された場合に、前記第1ステッピングモーターに前記第2電流を前記第1励磁時間よりも短い第2励磁時間だけ供給する請求項1に記載のステッピングモーターの制御装置。
【請求項3】
前記閾値温度は、前記第1ステッピングモーターの回転軸を回転可能に支持する軸受部材の収縮による負荷、前記第1ステッピングモーターと前記第1ステッピングモーターに駆動される駆動対象との間にある伝達部材の収縮による負荷、及び前記伝達部材に塗布された潤滑剤の粘度の増加による負荷の何れか一つ又は複数の負荷によって前記第1ステッピングモーターに付与される負荷が予め定められた負荷値未満の状態を維持することが可能な温度である請求項1又は2に記載のステッピングモーターの制御装置。
【請求項4】
前記第1電流制御部は、前記画像処理装置が前記休止状態の場合に、前記第1ステッピ
ングモーターへの電力の供給を遮断する請求項1〜3の何れかに記載のステッピングモーターの制御装置。
【請求項5】
請求項1〜の何れかに記載のステッピングモーターの制御装置と、
前記画像処理装置の内部に設けられ、前記画像処理装置の内部の温度を示す温度信号を前記ステッピングモーターの制御装置に出力する温度センサーと、
前記連結装置の内部に設けられた前記第1ステッピングモーターと、
を備える画像処理装置。
【請求項6】
記画像処理装置の内部に設けられ前記第1電流が供給されることによって駆動する第2ステッピングモーターと、
前記温度判定部によって前記閾値温度未満であると判定された場合に、前記第2ステッピングモーターに前記第2電流を供給する第2電流制御部と、を更に備える請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像処理装置の内部の温度を検知する温度検知部と、前記画像処理装置に連結された連結装置が有する第1ステッピングモーターと、を備える前記画像処理装置で実行されるステッピングモーターの制御方法であって、
前記画像処理装置の電源オフ状態又は画像処理に必要な駆動部に電力が供給されないスリープ状態を含む休止状態から前記画像処理装置が有する全ての前記駆動部が動作可能な動作状態に切り替える状態切替ステップと、
前記状態切替ステップによって前記画像処理装置が前記休止状態から前記動作状態に切り替えられる際に、切り替え前の前記休止状態の休止時間が、前記画像処理装置の前記休止状態が継続することにより前記画像処理装置の内部の温度が前記画像処理装置外の環境温度まで低下するのに必要な時間として予め定められた第1基準時間以上であるか否かを判定する第1時間判定ステップと、
前記第1時間判定ステップによって前記休止時間が前記第1基準時間以上と判定された場合に、前記温度検知部によって検知された検知温度が予め定められた閾値温度未満であるか否かを判定する温度判定ステップと、
前記温度判定ステップによって前記検知温度が前記閾値温度以上と判定された場合に、前記第1ステッピングモーターに駆動パルス信号を含む第1電流を供給することによって前記第1ステッピングモーターの回転駆動を可能な状態にし、前記閾値温度未満と判定された場合に、前記第1ステッピングモーターに前記駆動パルス信号を含まない第2電流を供給することにより前記第1ステッピングモーターに熱を生じさせる第1電流制御ステップと、
を含むステッピングモーターの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に連結された連結装置に設けられたステッピングモーターの制御装置及びステッピングモーターの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナー、コピー機、及び複合機等の画像処理装置には、原稿を搬送する原稿自動送装置(ADF: automatic document feeder)が搭載されているものがある。ADFは、用紙を挟持する複数の搬送ローラーを回転させることにより原稿を搬送する機構を備えている。搬送ローラーの駆動源として、制御が容易であり位置決め精度が高いステッピングモーターが用いられている。ステッピングモーターは、ギヤを介して搬送ローラーに接続されている。
【0003】
ところで、前記ギヤはポリアセタール樹脂等により形成されており、温度変化によって膨脹収縮する性質がある。具体的には、温度が下がると前記ギヤが収縮して、前記ギヤとその回転軸との摩擦抵抗が増大して、ステッピングモーターの回転駆動にかかる負荷が増大する場合がある。また、円滑に駆動力を伝達するために、前記ギヤ同士の接触部分には、グリスが塗布されている。グリスは、温度の低下に伴い粘度が高くなる性質がある。そのため、温度が下がるとグリスの粘度が増加して、ステッピングモーターの回転駆動にかかる負荷が増大する場合がある。また、温度が下がると、ステッピングモーターの軸受け部分が収縮して過度の摩擦抵抗を生じるため、ステッピングモーターの回転駆動にかかる負荷が増大する場合がある。このように、ステッピングモーターに過負荷がかかった状態で、常温環境と同じ駆動電流量の駆動パルス信号がステッピングモーターに印加されると、ステッピングモーターが脱調してしまう問題が生じる。
【0004】
そのため、特許文献1〜4には、低温環境のときにステッピングモーターを駆動させる駆動電流量を常温環境の駆動電流量よりも大きくする技術が開示されている。また、特許文献5には、低温環境のときにステッピングモーターを回転させない励磁電流を供給することによって、ステッピングモーターを温める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−38193号公報
【特許文献2】特開平02−233452号公報
【特許文献3】特開平05−227797号公報
【特許文献4】特開2003−281840号公報
【特許文献5】特開2005−39874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
連結装置が連結された画像処理装置の場合、前記連結装置にもステッピングモーターが備えられているが、前記連結装置のステッピングモーターを制御しようとすると、前記特許文献1〜4の制御方法では、前記連結装置にも温度センサーが必要になる。また、前記特許文献5の技術では、FAX装置等装置内部に温度センサー及びステッピングモーターを備え、温度検出センサーの温度に基づいてステッピングモーターの励磁電流を制御するものである。しかしながら、画像処理装置の外部に連結された原稿自動送装置や後処理装置等の前記連結装置に温度センサーを設けずに、前記先行文献5の制御方法によりステッピングモーターを制御しようとしても、前記連結装置内のステッピングモーターの励磁電流を適切に制御することはできない。つまり、画像処理装置内に設けられた温度センサーの温度に基づいて、前記連結装置内のステッピングモーターの励磁電流が制御されると、周辺の環境温度が低いにもかかわらず、前記連結装置内のステッピングモーターの励磁電流量が下げられて、ステッピングモーターが過負荷になり、場合によっては脱調するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、連結装置内のステッピングモーターを安定して駆動させることが可能なステッピングモーターの制御装置、画像処理装置、及びステッピングモーターの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係るステッピングモーターの制御装置は、温度検出部、状態切替部、第1時間判定部、温度判定部、及び第1電流制御部を備える。前記温度検知部は、画像処理装置の内部の温度を検知する。前記状態切替部は、前記画像処理装置の電源オフ状態又は画像処理に必要な駆動部に電力が供給されないスリープ状態を含む休止状態から前記画像処理装置が有する全ての前記駆動部が動作可能な動作状態に切り替える。前記第1時間判定部は、前記状態切替部によって前記画像処理装置が前記休止状態から前記動作状態に切り替えられる際に、切り替え前の前記休止状態の休止時間が予め定められた第1基準時間以上であるか否かを判定する。前記温度判定部は、前記第1時間判定部によって前記休止時間が前記第1基準時間以上と判定された場合に、前記温度検知部によって検知された検知温度が予め定められた閾値温度未満であるか否かを判定する。前記第1電流制御部は、前記温度判定部によって前記検知温度が前記閾値温度以上と判定された場合に、前記画像処理装置に連結された連結装置が有する第1ステッピングモーターに駆動パルス信号を含む第1電流を供給することによって前記第1ステッピングモーターの回転駆動を可能な状態にし、前記検知温度が前記閾値温度未満と判定された場合に、前記第1ステッピングモーターに前記駆動パルス信号を含まない第2電流を供給することにより前記第1ステッピングモーターに熱を生じさせる。
【0009】
本発明の他の局面に係る画像処理装置は、一の局面に係るステッピングモーターの制御装置に加えて、温度センサー及び第1ステッピングモーターを備える。前記温度センサーは、前記画像処理装置の内部に設けられ、前記画像処理装置の内部の温度を示す温度信号を前記ステッピングモーターの制御装置に出力する。前記第1ステッピングモーターは、前記連結装置の内部に設けられている。
【0010】
本発明の他の局面に係るステッピングモーターの制御方法は、画像処理装置の内部の温度を検知する温度検知部と、前記画像処理装置に連結された連結装置が有する第1ステッピングモーターと、を備える前記画像処理装置で実行されるステッピングモーターの制御方法であって、状態切替ステップ、第1時間判定ステップ、温度判定ステップ、及び第1電流制御ステップを含む。前記状態切替ステップは、前記画像処理装置の電源オフ状態又は画像処理に必要な駆動部に電力が供給されないスリープ状態を含む休止状態から前記画像処理装置が有する全ての前記駆動部が動作可能な動作状態に切り替える。前記第1時間判定ステップは、前記状態切替ステップによって前記画像処理装置が前記休止状態から前記動作状態に切り替えられる際に、切り替え前の前記休止状態の休止時間が予め定められた第1基準時間以上であるか否かを判定する。前記温度判定ステップは、前記第1時間判定ステップによって前記休止時間が前記第1基準時間以上と判定された場合に、前記温度検知部によって検知された検知温度が予め定められた閾値温度未満であるか否かを判定する。前記第1電流制御部は、前記温度判定ステップによって前記検知温度が前記閾値温度以上と判定された場合に、前記第1ステッピングモーターに駆動パルス信号を含む第1電流を供給することによって前記第1ステッピングモーターの回転駆動を可能な状態にし、前記閾値温度未満と判定された場合に、前記第1ステッピングモーターに前記駆動パルス信号を含まない第2電流を供給することにより前記第1ステッピングモーターに熱を生じさせる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、連結装置内のステッピングモーターを安定して駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る複合機の構成を示す図。
図2】ステッピングモーター制御装置の構成を示すブロック図。
図3】ステッピングモーター制御装置により実行されるADF駆動処理の手順の一例を示すフローチャート。
図4】ADF駆動処理によって呼び出される予熱処理の手順の一例を示すフローチャート。
図5】温度センサーによって検出される複合機内部の温度とADFのステッピングモーターの推定温度との推移の第1例を示すグラフ。
図6】温度センサーによって検出される複合機内部の温度とADFのステッピングモーターの推定温度との推移の第2例を示すグラフ。
図7】温度センサーによって検出される複合機内部の温度とADFのステッピングモーターの推定温度との推移の第3例を示すグラフ。
図8】温度センサーによって検出される複合機内部の温度とADFのステッピングモーターの推定温度との推移の第4例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0014】
[複合機100の概略構成]
まず、本発明の実施形態の複合機100(本発明の画像処理装置の一例)の概略構成について説明する。ここで、図1(A)は、複合機100の正面図であり、図1(B)は、図1(A)の切断線IB−IBの断面図である。なお、説明の便宜上、複合機100が使用可能に設置された設置状態(図1に示される状態)で鉛直方向を上下方向7と定義し、前記設置状態において図1に示される面を正面(前面)として前後方向8を定義し、前記設置状態の複合機100の正面を基準として左右方向9を定義する。
【0015】
図1に示されるように、複合機100は、画像読取部1、ADF(Automatic Document Feeder)2(本発明の連結装置の一例)、画像形成部3、給紙部4、制御部5、操作表示部6、及び温度センサー57等を備えた画像処理装置である。操作表示部6は、制御部5からの制御指示に従って各種の情報を表示し、ユーザー操作に応じて制御部5に各種の情報を入力するタッチパネル等である。例えば、本発明は、画像処理を実行する装置であれば、プリンター、FAX装置、複写機等であってもよい。
【0016】
画像読取部1は、原稿Pから画像データを取得する。画像読取部1は、原稿カバー2A、コンタクトガラス11、読取ユニット12、ミラー13、ミラー14、光学レンズ15、及びCCD(Charge Coupled Device)16等を備えた画像読取部である。コンタクトガラス11は、画像読取部1の上面に設けられており、複合機100の画像読取対象となる原稿Pが載置される透明な原稿台である。
【0017】
原稿カバー2Aは、必要に応じてコンタクトガラス11を覆うものである。そして、画像読取部1は、制御部5によって制御されることによって、コンタクトガラス11上に載置された原稿Pから画像を読み取る。
【0018】
読取ユニット12は、LED光源121及びミラー122を備えており、第2ステッピングモーター18(本発明の第2ステッピングモーターの一例、図2参照)等の移動機構によって副走査方向(図1における左右方向9)へ移動可能に構成されている。第2ステッピングモーター18を含む前記移動機構は、画像読取部1の内部に設けられている。そして、移動機構によって読取ユニット12が前記副走査方向に移動されると、LED光源121からコンタクトガラス11に向けて照射される光が前記副走査方向に走査される。
【0019】
第2ステッピングモーター18は、1−2相励磁式であり、ギヤを介して前記移動機構に連結されており、後述する制御部5のドライバー5Dから入力される駆動パルス信号を含む第1励磁電流(本発明の第1電流の一例)が供給されることによって駆動する。なお、第2ステッピングモーター18は、1−2相励磁式のステッピングモーターに限るものではない。また、第2ステッピングモーター18は、後述する第1ステッピングモーター29と同型の製品のものとして説明する。
【0020】
LED光源121は、複合機100の主走査方向(図1における前後方向8)に沿って配列された多数の白色LEDを備えている。LED光源121は、読み取り時に、コンタクトガラス11上の読取位置12Aにある原稿Pに向けて1ライン分の白色光を照射する。なお、読取位置12Aは、読取ユニット12の前記副走査方向への移動に伴って前記副走査方向へ移動する。
【0021】
ミラー122は、LED光源121から読取位置12Aにある原稿Pに光を照射したときの反射光をミラー13に向けて反射させる。そして、ミラー122で反射した光は、ミラー13及びミラー14によって光学レンズ15に導かれる。光学レンズ15は、入射した光を集光してCCD16に入射させる。
【0022】
CCD16は、受光した光をその光量に応じた電気信号(電圧)に変換して制御部5に出力する光電変換素子である。具体的には、CCD16は、LED光源121から光が照射されたときに原稿Pから反射した光に基づいて原稿Pの画像に対応する電気信号に基づいて画像データを生成する。
【0023】
ADF2は、複合機100の上部に連結された原稿カバー2Aに設けられている。ADF2は、原稿トレイ21、給送機構22、複数の搬送ローラー23、原稿押さえ24、及び排紙部25等を備えた原稿自動送装置であり、複合機100に連結して用いられる。ADF2は、給送機構22及び搬送ローラー23各々を第1ステッピングモーター29(図2参照、本発明の第1ステッピングモーターの一例)で駆動させることによって、原稿トレイ21にセットされた原稿Pをコンタクトガラス11上の読取位置12Aを通過させて排紙部25まで搬送させる。この際に、画像読取部1によって読取位置12Aを通過する原稿Pの画像が読み取られる。即ち、画像読取部1が原稿Pの画像を読み取る方法には、ADF2により移動させられる原稿Pの画像を読み取る移動読取方法と、読取ユニット12を移動させることによってコンタクトガラス11に載置された原稿Pの画像を読み取る静止読取方法とがある。
【0024】
第1ステッピングモーター29は、ADF2が有し、ADF2の内部に設けられている1−2相励磁式であり、ギヤ(本発明の伝達部材の一例)を介して給送機構22及び搬送ローラー23(本発明の駆動対象の一例)に連結されており、後述する制御部5のドライバー5Dから入力される駆動パルス信号を含む前記第1励磁電流が供給されることによって駆動する。具体的には、第1ステッピングモーター29の回転軸は、金属製であり、ポリアセタール樹脂等の軸受部材によって、回転可能に支持されている。第1ステッピングモーター29の前記回転軸と第1ステッピングモーターに駆動される搬送ローラー23との間には、ポリアセタール樹脂等の複数のギヤが設けられている。前記複数のギヤは、第1ステッピングモーター29の回転力を搬送ローラー23に伝達する。前記複数のギヤの連結部には、駆動力を伝搬しやすくするためにグリス等の潤滑剤が塗布されている。なお、第1ステッピングモーター29は、1−2相励磁式のステッピングモーターに限るものではない。また、ポリアセタール樹脂は、温度が低下すると収縮する性質がある。グリスは、温度が低下すると粘度が増加する性質がある。
【0025】
原稿押さえ24は、コンタクトガラス11上の読取位置12Aの上方に原稿Pが通過できる間隔を隔てた位置に設けられている。原稿押さえ24は、主走査方向に長尺状に形成されており、その下面(コンタクトガラス11側の面)には白色のシートが貼り付けられている。複合機100では、前記白色のシートの画像データが白色基準データとして読み取られる。前記白色基準データは、周知のシェーディング補正等で用いられる。
【0026】
画像形成部3は、画像読取部1で読み取られた画像データ、又は外部のパーソナルコンピューター等の情報処理装置から入力された画像データに基づいて画像形成処理(印刷処理)を実行する電子写真方式の画像形成部である。画像形成部3は、感光体ドラム31、帯電装置32、LSU(Laser Scanner Unit)33、現像装置34、転写ローラー35、除電装置36、定着ローラー37、及び加圧ローラー38等を備えている。
【0027】
そして、画像形成部3では、給紙部4から給送された用紙Sに以下の手順で画像が形成され、画像形成後の用紙Sは排紙トレイ39に排紙される。具体的には、まず、帯電装置32によって感光体ドラム31が所定の電位に一様に帯電される。次に、LSU33によって感光体ドラム31の表面に画像データに基づく光が照射される。これにより、感光体ドラム31の表面に静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム31上の静電潜像は現像装置34によってトナー像として現像(可視像化)される。続いて、感光体ドラム31に形成されたトナー像は転写ローラー35によって用紙Sに転写される。その後、用紙Sに転写されたトナー像は、その用紙Sが定着ローラー37及び加圧ローラー38の間を通過して排出される際に定着ローラー37で加熱されて用紙Sに溶融定着する。感光体ドラム31の電位は除電装置36で除電される。
【0028】
給紙部4は、画像形成部3において画像が形成される用紙Sを給送する。給紙部4は、不図示のカセット装着部に装着された不図示の給紙カセットに載置された複数の用紙Sを一枚ずつ画像形成部3に給送する。
【0029】
温度センサー57は、画像読取部1の内部に設けられている。温度センサー57は、複合機100の内部の温度を検出して、検出した温度情報を示す温度信号を制御部5に出力する。温度センサー57は、温度の上昇に伴って抵抗が比例的に減少するNTCサーミスタ−を用いたものである。温度センサー57から前記温度信号が入力された制御部5は、画像読取部1の内部の温度を検知する。温度センサー57及び制御部5は、本発明の温度検知部の一例である。なお、温度センサー57は、複合機100の内部温度を検出することができるものであれば、複合機100の内部に設けられていなくてもよい。また、画像読取部1の代わりに、定着ローラー37などを備える画像形成部3の内部温度を検出するものでもよい。
【0030】
[制御部5の構成]
制御部5は、複合機100を統括制御するものである。図1に示されるように、制御部5は、CPU5A、ROM5B、RAM5C、及びドライバー5D等を主な構成要素とするマイクロコンピュータとして構成されている。なお、制御部5は、集積回路(ASIC、DSP)等の電子回路で構成されたものであってもよい。
【0031】
制御部5は、複合機100の内部において、画像読取部1、ADF2、画像形成部3、給紙部4、及び操作表示部6等に接続されており、これらの構成要素を制御する。また、制御部5は、画像読取部1及びADF2を構成する各要素、具体的には、温度センサー57、第1ステッピングモーター29、及び第2ステッピングモーター18等に接続されている。ROM5Bには、第1ステッピングモーター29及び第2ステッピングモーター18を制御するためのプログラムが記憶されている。CPU5Aは、ROM5B内の制御プログラムを実行することによって、制御部5に接続された第1ステッピングモーター29及び第2ステッピングモーター18を制御するステッピングモーター制御部10(本発明のステッピングモーターの制御装置の一例)として機能する(図2参照)。RAM5Cは、揮発性の記憶部であり、CPU5Aが、前記制御プログラムを実行する際に、一時記憶部として機能する。
【0032】
ドライバー5Dは、CPU5Aの制御に従って、前記第1励磁電流を第1ステッピングモーター29の各相の励磁コイル(第1励磁コイル29A及び第2励磁コイル29B、図2参照)に順次出力して励磁させることにより、前記第1ステッピングモーター29を駆動させる。同様に、ドライバー5Dは、CPU5Aの制御に従って、前記第1励磁電流を第2ステッピングモーター18の各相の励磁コイル(第1励磁コイル18A及び第2励磁コイル18B、図2参照)に順次出力して励磁させることにより、前記第2ステッピングモーター18を駆動させる。
【0033】
また、本実施形態では、ドライバー5Dは、CPU5Aの制御に従って、前記駆動パルス信号を含まない第2励磁電流(本発明の第2電流の一例)を第1ステッピングモーター29の各相の励磁コイル(第1励磁コイル29A及び第2励磁コイル29B)に出力して、停止したまま励磁させる。これによって、前記第1ステッピングモーター29の第1励磁コイル29A及び第2励磁コイル29Bにジュール熱が生じて、第1ステッピングモーター29は、予熱により温められる。同様に、ドライバー5Dは、CPU5Aの制御に従って、前記第2励磁電流を第2ステッピングモーター18の各相の励磁コイル(第1励磁コイル18A及び第2励磁コイル18B)に出力して、停止したまま励磁させる。これによって、前記第2ステッピングモーター18の第1励磁コイル18A及び第2励磁コイル18Bにジュール熱が生じて、第2ステッピングモーター18は、予熱により温められる。なお、本実施形態の前記第2励磁電流は、定常電流であるが、これに限られない。例えば、前記第2励磁電流として、ステッピングモーターを駆動させないパルスを含む電流でもよい。
【0034】
本実施形態では、ROM5Bに、後述するステッピングモーターの制御処理を実行するためのプログラム等が記憶されている。CPU5Aは、このプログラムを実行することにより、前記ステッピングモーターの制御処理を実行する。また、CPU5Aが前記プログラムを実行することにより、前記ステッピングモーターの制御処理において、制御部5は、第1時間判定部51(本発明の第1時間判定部の一例)、第1温度判定部52(本発明の温度判定部の一例)、第1電流制御部53(本発明の第1電流制御部の一例)、第2時間判定部54(本発明の第2時間判定部の一例)、第2温度判定部55(本発明の温度判定部の一例)、第2電流制御部56(本発明の第2電流制御部の一例)、フラグ記憶部58(本発明の記憶部の一例)、及び状態切替部60(本発明の状態切替部の一例)として機能する(図2参照)。
【0035】
また、ROM5Bには、前記プログラムの他に、前記ステッピングモーターの制御処理に用いられる休止時間L、予熱時間、電流量、及び閾値温度(本発明の閾値温度の一例)などが記憶されている。例えば、第1時間判定部51で休止時間Lを判定するために必要な予め定められた第1基準時間L1などがROM5Bに記憶されている。第1温度判定部52及び第2温度判定部55で検出温度が前記閾値温度未満か否かを判定するための前記閾値温度などがROM5Bに記憶されている。第1電流制御部53で予熱するために必要な前記第2励磁電流の電流量及び第1励磁時間P1(本発明の第1励磁時間の一例)などがROM5Bに記憶されている。第2時間判定部54で休止時間Lを判定するために必要な予め定められた第2基準時間L2,L3などがROM5Bに記憶されている。第2電流制御部56で予熱するために必要な前記第2励磁電流の電流量及び第2励磁時間P2,P3(本発明の第2励磁時間の一例)などがROM5Bに記憶されている。
【0036】
状態切替部60は、複合機100を休止状態から複合機100が有する全ての駆動部が動作可能な動作状態に切り替える。前記駆動部とは、例えば、定着ローラー37、帯電装置32、現像装置34、及び第2ステッピングモーター18等の熱源となる駆動装置である。前記休止状態には、電源オフ状態及びスリープ状態が含まれる。前記電源オフ状態とは、複合機100が有する全ての前記駆動部に電源が投入されていない状態である。前記スリープ状態とは、画像処理に必要な前記駆動部に電力が供給されない状態である。前記休止状態において、複合機100の内部を温めることが可能な熱源となる前記駆動部(例えば、定着ローラー37及び第2ステッピングモーター18等)への電力の供給が遮断される。また、この状態において、連結装置であるADF2が有する第1ステッピングモーター29への電力の供給が遮断され、第1ステッピングモーター29は熱を発生しない。そのため、複合機100の前記休止状態が継続することにより複合機100の内部の温度が複合機100外の環境温度まで低下する。また、定着ローラー37を有する複合機100の内部温度よりも内部温度が低いADF2の内部も環境温度まで低下する。複合機100に連結されるADF2の第1ステッピングモーター29及び前記複数のギヤも環境温度まで低下する。前記スリープ状態の複合機100が、復帰信号を受信すると直ちに前記動作状態に移行する。また、前記電源オフ状態の複合機100に電源が投入されると、前記動作状態に移行する。前記動作状態には、電源投入状態、及び指示待ち状態が含まれる。前記電源投入状態とは、複合機100が有する全ての前記駆動部に電源が投入された状態である。前記指示待ち状態とは、複合機100が画像を処理する指示信号を検知したことに応じて直ちに画像処理を開始することが可能な状態である。例えば、前記動作状態において、定着ローラー37に電力が供給され待機温度(例えば、50度など)や定着温度(例えば、180度)に加熱されたり、第2ステッピングモーター18に電力が供給されたりして画像読取部1の内部温度が複合機100外の環境温度よりも高くなる。なお、復帰とは、複合機100が前記休止状態から前記動作状態に移行することであり、定着ローラー37が加熱を開始したりした場合などを含む。
【0037】
第1時間判定部51は、状態切替部60によって複合機100が前記休止状態から前記動作状態に切り替えられる際に、切り替え前の前記休止状態の休止時間Lが予め定められた第1基準時間L1以上であるか否かを判定する。具体的には、第1時間判定部51は、前記スリープ状態からの復帰を示す前記復帰信号又は前記電源オフ状態から電源投入を示す前記電源投入信号を受けて、複合機100が前記動作状態に復帰するときに、前記動作状態に復帰するまでの休止時間L(図5参照)が第1基準時間L1(図5参照)以上であるか否かを判定する。ここで、第1基準時間L1は、複合機100の前記休止状態が継続することにより、複合機100の内部の温度が複合機100外の環境温度まで低下するのに必要な時間である。また、ADF2が有する第1ステッピングモーター29及前記複数のギヤも環境温度まで低下する。そのため、温度センサー57及び制御部5が検知する温度が、ADF2が有する第1ステッピングモーター29及びその周辺の温度に一致する。第1基準時間L1は、予め測定によって得られた値が用いられる。第1基準時間L1は、前記休止状態になる直前の前記動作状態に応じて、複数の時間や、温度が低下するまでに最も長い時間が用いられる。例えば、第1基準時間L1は、3時間乃至5時間である。なお、第1時間判定部51による具体的な第1時間判定ステップについては後述する。
【0038】
第1温度判定部52は、第1時間判定部51によって複合機100の休止時間Lが第1基準時間L1以上と判定された場合に、温度センサー57及び制御部5によって検知された検知温度が前記閾値温度未満であるか否かを判定する。第1温度判定部52による温度判定は、複合機100に電源が投入されたり又は前記復帰信号が受信されたりしたときに、熱源となる前記駆動部に電力が供給される前に一度だけ判定される。もちろん、前記動作状態に移行する途中の時間や、前記動作状態になった直後であり電力の供給を受けた定着ローラー37が発する熱が温度センサー57に伝わらない時間に数回に分けて温度を判定して、その平均温度に基づいて検出温度を取得する場合も含まれる。ここで、前記閾値温度は、第1ステッピングモーター29に付与される負荷が予め定められた負荷値未満の状態を維持することが可能な温度であり、許容温度の下限値である。前記第1ステッピングモーター29に付与される負荷が前記負荷値以上となる原因として、ポリアセタール樹脂の収縮やグリスの粘度の増加がある。例えば、第1ステッピングモーター29の前記回転軸を回転可能に支持する前記軸受部材がポリアセタール樹脂で形成されているため、環境温度が低下すると収縮して、回転駆動する前記回転軸の抵抗になる。また、第1ステッピングモーター29と搬送ローラー23との間にある複数のギヤがポリアセタール樹脂で形成されているため、環境温度が低下すると収縮して駆動力を伝達し難くなる。さらに、前記複数のギヤに潤滑剤としてグリスが塗布されている。グリスは、環境温度が低下すると粘度が増大して駆動力を伝達し難くなる。このような一つ又は複数の負荷が生じる原因によって第1ステッピングモーター29に負荷が付与される。前記閾値温度より低い環境温度にある第1ステッピングモーター29に前記第1励磁電流が供給されると、第1ステッピングモーター29は脱調する可能性が高い。複合機100の休止時間Lが第1基準時間L1を超える場合には、複合機100の内部温度は、複合機100外の環境温度にまで低下する。また、第1ステッピングモーター29及びその周辺のADF2内部の温度も環境温度にまで低下する。複合機100の内部温度とADF2内の第1ステッピングモーター29及び前記複数のギヤの温度が同じ温度になる。そのため、第1温度判定部52は、温度センサー57から得られた前記温度情報によって、第1ステッピングモーター29及び前記複数のギヤの温度を検知することができる。なお、第1温度判定部52による具体的な温度判定ステップについては後述する。
【0039】
第1電流制御部53は、第1温度判定部52によって前記閾値温度以上と判定された場合に、複合機100に連結されたADF2が有する第1ステッピングモーター29に前記第1励磁電流を第1励磁時間P1(図5参照)供給することによって第1ステッピングモーター29の回転駆動を可能な状態にする。また、第1電流制御部53は、第1温度判定部52によって前記閾値温度未満と判定された場合に、第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を第1励磁時間P1(図5参照)供給することにより第1ステッピングモーター29に熱を生じさせる。ここで、第1励磁時間P1は、前記第2励磁電流の供給によって第1ステッピングモーター29を許容温度の上限値(120度)よりも低い上限閾値温度(100度)にまで熱せられる時間である。第1励磁時間P1は、予め測定によって得られた値が用いられる。例えば、第1ステッピングモーター29に供給される前記第2励磁電流が1Aの定電流の場合、第1励磁時間P1は、30秒程度である。なお、第1電流制御部53は、複合機100が前記休止状態の場合に、第1ステッピングモーター29への電力の供給を遮断する。また、複合機100が前記休止状態の場合に、ADF2が単独で動作しない。そのため、第1ステッピングモーター29及び前記複数のギヤが複合機100の画像形成処理と別に駆動することはない。
【0040】
また、前述の第1電流制御部53は、第2時間判定部54によって、第1ステッピングモーター29が励磁されない無励磁状態後述する第2基準時間L2,L3以上であると判定された場合に、第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を予め定められた第2励磁時間P2,P3(図6及び図7参照)供給する。第2励磁時間P2,P3は、前記第2励磁電流の供給によって前記第1ステッピングモーターが前記下限閾値温度である15度から前記上限閾値温度である100度に熱せられる時間である。第2励磁時間P2,P3は、予め測定によって得られた値が用いられる。第2励磁時間P2,P3は、第1励磁時間P1よりも短い時間であり、例えば20秒から25秒程度である。なお、第1電流制御部53は、前記停止前電流供給の条件(図3のステップS5参照)を満たさない場合に、第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給させない。このように、第1電流制御部53は、第1ステッピングモーター29に予熱処理が必要とされる場合以外には、前記第2励磁電流を供給しない。なお、第1電流制御部53による具体的な第1電流制御ステップについては後述する。
【0041】
第2時間判定部54は、第1電流制御部53によって前記第2励磁電流が予め定められた第1励磁時間P1だけ第1ステッピングモーター29に供給された後に、前記動作状態において第1ステッピングモーター29が励磁されない前記無励磁状態が予め定められた第2基準時間L2,L3(図6及び図7参照)以上継続したか否かを判定する。ここで、第2基準時間L2,L3は、低温状況において複合機100が前記動作状態に復帰した後に第1ステッピングモーター29に電流が供給されない無励磁状態が続くことにより、第1ステッピングモーター29及び前記複数のギヤが冷え、許容温度の下限値(10度)よりも高い下限閾値温度(15度)まで低下する時間である。第2基準時間L2,L3は、予め測定によって得られた値が用いられる。具体的に、図6に示されるように、第2基準時間L2は、前記無励磁状態が続くことによって、予熱処理により前記上限閾値温度である100度まで熱せられた第1ステッピングモーター29及び前記複数のギヤが15度まで冷える時間である。図7に示されるように、第2基準時間L3は、駆動により60度まで熱せられた第1ステッピングモーター29の前記無励磁状態が続くことにより前記下限閾値温度である15度まで冷える時間である。第2基準時間L2,L3は、第1ステッピングモーター29が前記無励磁状態になって、温度が低下する時間であり、複合機100が前記休止状態になる第1基準時間L1よりも十分に短い。例えば、第2基準時間L2,L3は、10分乃至20分である。
【0042】
フラグ記憶部58は、第1電流制御部53が第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給したことを示すフラグ情報を記憶する。これにより、休止時間Lが第1基準時間L1よりも短いため、第1温度判定部52により温度が判定されない場合でも、前記休止状態になる前の前記動作状態において第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流が供給されていたか否かが判別可能になる。また、第1電流制御部53は、第1時間判定部51によって休止時間Lが第1基準時間L1未満と判定され、且つフラグ記憶部58に前記フラグ情報が記憶されていることを条件に(図3のステップS5参照)、第1ステッピングモーター29に第2励磁電流を供給する処理をする。これによって、制御部5は、複合機100が前記休止状態に移行する前に第1予熱処理を実行していたか否かに基づいて、前記休止状態から復帰後に第2予熱処理を実行するか否かを定めることができる。即ち、休止時間Lが第1基準時間L1未満で前記動作状態に復帰したために、第1温度判定部52によって温度判定がされない場合に、前回の前記動作状態における予熱処理の有無に基づいて、複合機100外の環境温度が前記閾値温度未満か否かが判定される。言い換えると、前回の前記動作状態において予熱処理を実行していれば、制御部5によって複合機100外の環境温度が前記閾値温度未満と判定される。この場合、制御部5は、第1ステッピングモーター29が継続して励磁されない前記無励磁状態が第2基準時間L2,L3以上になると、第1ステッピングモーター29に第2励磁電流が供給される。なお、制御部5が、ステッピングモーターの制御処理で実行する前記第1予熱処理及び前記第2予熱処理については後述する。
【0043】
第2温度判定部55は、温度センサー57によって検出された検出温度が予め定められた前記閾値温度未満か否かを判定する。ここで、前記閾値温度は、第2ステッピングモーター18が許容温度の下限値であり、第1ステッピングモーター29と共通のものとする。第2温度判定部55は、第1温度判定部52と異なり、予め定められた時間ごとに温度センサー57から温度情報を取得して第2ステッピングモーター18の温度変化を検出する。
【0044】
第2電流制御部56は、第2温度判定部55によって温度センサー57から取得した温度情報が前記閾値温度未満と判定された場合に、第2ステッピングモーター18に前記第2励磁電流を第1励磁時間P1供給する。これによって、第2電流制御部56は、温度センサー57の温度情報が前記閾値温度未満の場合に直ちに、第2ステッピングモーター18を温めることができる。
【0045】
[ステッピングモーターの制御処理]
以下、図3及び図4のフローチャートを参照して、制御部5によって実行されるステッピングモーターの制御処理の手順を説明する。なお、図3及び図4のフローチャートにおいてステップS1、S2、・・・は処理手順(ステップ)番号を表している。ここに、前記ステッピングモーターの制御処理プログラムに従って、前記ステッピングモーターの制御処理を実行するときの制御部5が本発明に係る状態切替部、第1時間判定部、温度判定部、第1電流制御部、第2時間判定部、及び記憶部に相当する。当該処理は、複合機100に電源が投入されるか又は複合機100が前記休止状態から前記動作状態に復帰したときから処理を開始して、電源が切られるか又は複合機100が前記休止状態に移行するまで処理を続ける。
【0046】
(ステップS1)
ステップS1において、制御部5は、複合機100が前記動作状態に復帰する前記復帰信号を受信したか否かを判定する。具体的には、制御部5は、前記電源投入信号を検出するか、前記復帰信号を受信したかを判定する。制御部5は、復帰する前記復帰信号を受信するまで待ち続ける(S1のNO側)。一方、前記復帰信号を受信したと判定すると、制御部5は、処理をステップS2に移行させる(S1のYES側)。即ち、制御部5は、前記電源オフ状態や前記スリープ状態を含む前記休止状態から前記動作状態に複合機100の状態を切り替える。ここで、ステップS1を実行する制御部5は、本発明の状態切替部の一例に相当する。また、ステップS1は、本発明の状態切替ステップの一例に相当する。
【0047】
(ステップS2)
ステップS2において、制御部5は、複合機100が前記復帰信号を受信したときに、複合機100の休止時間Lが第1基準時間L1以上であるか否かを判定する。例えば、制御部5は、前記復帰信号を受信したときに、熱源となる前記駆動部に電力が供給されず前記休止状態に移行した時刻と前記復帰信号を受信した時刻とから休止時間Lを算出して、第1基準時間L1以上か否かを判定する。なお、制御部5は、複合機100の電源オフ時の時刻と電源オン時の時刻との差から休止時間Lを算出して、第1基準時間L1以上か否かを判定するものでもよい。第1基準時間L1は、複合機100の内部温度及び第1ステッピングモーター29の周辺温度が、複合機100外の環境温度に等しい温度まで低下するのに必要な時間である。第1基準時間L1以上か未満かを判定することによって、制御部5は、複合機100の内部温度及び第1ステッピングモーター29の周辺温度が、複合機100外の環境温度に等しい温度まで低下したか否かを判定する。休止時間Lが第1基準時間L1未満であると判定すると、制御部5は、処理をステップS11に移行する(ステップS2のNO側)。一方、休止時間Lが第1基準時間L1以上であると判定すると、制御部5は、処理をステップS3に移行する(ステップS2のYES側)。ここで、ステップS2を実行する制御部5は、本発明の第1時間判定部の一例に相当する。また、ステップS2は、本発明の第1時間判定ステップの一例に相当する。
【0048】
(ステップS3,S14)
ステップS3において、制御部5は、温度センサー57から取得した温度情報に基づき検出された検出温度が前記閾値温度未満か否かを判定する。制御部5は、ステップS1によって複合機100が前記復帰信号を受信してから、熱源である定着ローラー37等を始動させるまでの5秒から20秒の間までにステップS3を実行する。前記検出温度が前記閾値温度以上と判定した場合は、制御部5は、処理をステップS14へ移行する(ステップS3のNO側)。ステップS14において、制御部5は、後述する前記第2予熱処理の設定を解除して、具体的には、前記フラグ情報をオフにして、処理を終了する。この場合、制御部5は、第1ステッピングモーター29に予熱処理を実行する必要がないと判定する。一方、前記検出温度が前記閾値温度未満と判定した場合、制御部5は、処理をステップS4に移行する(ステップS3のYES側)。この場合、制御部5は、第1ステッピングモーター29に予熱処理を実行する必要があると判定する。制御部5によるステップS3の処理は、複合機100が前記復帰信号を受信したときに一度だけ実行される。もちろん、制御部5によるステップS3は、近接する5秒から20秒の間に数回に分けて温度センサー57から温度情報を取得して、温度情報の平均値に基づいて検出温度を取得するものでもよい。ここで、ステップS3を実行する制御部5は、本発明の温度判定部の一例に相当する。また、ステップS3は、本発明の温度判定ステップの一例に相当する。
【0049】
(ステップS4)
ステップS4において、制御部5は、前記第1予熱処理を実行する。図4に示されるように、制御部5は、ステップS21において、第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流の供給を開始する。ステップS22において、制御部5は、第1励磁時間P1が経過するか否かを判定する。制御部5は、第1励磁時間P1が経過したと判定されるまで前記第2励磁電流を供給し続ける(ステップS22のNO側)。前記第2励磁電流にはパルス信号が含まれないため、第1ステッピングモーター29は回転しない。第1ステッピングモーター29の第1励磁コイル29A及び第2励磁コイル29Bに流れる前記第2励磁電流によってジュール熱が生じて、第1ステッピングモーター29が熱せられる。第1励磁時間P1が経過したと判定すると、制御部5は、処理をステップS23に移行する(ステップS22のYES側)。ステップS23において、制御部5は、前記第2励磁電流の供給を停止する。このように、前記第1予熱処理とは、制御部5が、第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を第1励磁時間P1の間供給して、第1ステッピングモーター29を熱する処理である。
【0050】
(ステップS5)
ステップS5において、制御部5は、後述するステップS13での前記第2予熱処理を実行するための前記フラグ情報を設定する。具体的には、制御部5は、複合機100が前記動作状態のときに第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給していたことを示す前記フラグ情報を記憶する。本発明では、温度センサー57が、複合機100が前記動作状態に復帰する前記復帰信号を受信した直後にしか検出温度を取得しない。そのため、ステップS4において前記第1予熱処理を実行した場合に、制御部5は、第1ステッピングモーター29に後述する前記第2予熱処理を実行する。前記フラグ情報は、前記第2予熱処理が必要か否かを制御部5が判定するために用いられる。また、本発明では、ステップS2において休止時間Lが第1基準時間L1未満であると判定されると、制御部5は、前記休止状態に移行する前に前記第1予熱処理を実行していたか否かにより、前記休止状態から前記動作状態に復帰するときに、前記第2予熱処理を実行する必要があるか否かを判定する。そのために、前記フラグ情報は、復帰後に前記第2予熱処理を実行する必要があるか否かを制御部5が判定するために用いられる。
【0051】
(ステップS6,S7)
ステップS6において、制御部5は、複合機100が前記休止状態に移行したか否かを判定する。前記休止状態に移行したと判定されると、制御部5は、処理を終了する(ステップS6のYES側)。前記休止状態に移行していないと判定すると(ステップS6のNO側)、ステップS7において、制御部5は、ADF2に原稿Pを搬送させる搬送指示を受けたか否かを判定する。前記搬送指示を受けなければ、制御部5は、処理をステップS11に移行する(ステップS7のNO側)。一方、前記搬送指示を受けると制御部5は、処理をステップS8に移行する(ステップS7のYES側)。
【0052】
(ステップS8,S9,S10)
ステップS8において、制御部5は、前記第1励磁電流を第1ステッピングモーター29に供給して駆動させる。これにより、ADF2内の第1ステッピングモーター29を含む各機器が稼働されて、原稿トレイ21に載置された原稿Pは、読取位置12Aを通過させて排紙部25まで順次搬送される。ステップS9において、制御部5は、原稿トレイ21に原稿Pが載置されているか否かを判定し、原稿Pが有る間は、搬送を続ける(ステップS9のYES側)。このとき、第1ステッピングモーター29の第1励磁コイル29A及び第2励磁コイル29Bに流れる前記第1励磁電流によってジュール熱が生じて、第1ステッピングモーター29が熱せられる。一方、原稿Pが無くなると(ステップS9のNO側)、ステップS10において、制御部5は、前記第1励磁電流を第1ステッピングモーター29に供給することを停止して、処理をステップS11へ移行する。
【0053】
(ステップS11)
ステップS11において、制御部5は、前記フラグ情報が設定にされているか否かを判定する。これによって、制御部5は、前記第2予熱処理の必要性の有無を判定する。前記第2予熱設定がされていなければ、制御部5は処理をステップS6へ移行する(ステップS11のNO側)。これによって、複合機100が前記休止状態に移行したことを検出するか(ステップS6)、前記搬送指示を受ける(ステップS7)まで、制御部5は処理を待ち続ける。一方、前記フラグ情報が設定されていれば、制御部5は、処理をステップS12へ移行する(ステップS11のYES側)。前述のように、制御部5は、前記フラグ情報に基づいて、前記第2予熱処理が必要か否かを判定する。前記フラグ情報が立つ場合が2つある。1つ目の場合は、前記休止状態から前記動作状態に復帰するときに、制御部5が前記第1予熱処理を実行したことである。2つ目は、前記休止状態から前記動作状態に復帰した場合に、休止時間Lが第1基準時間L1未満であり、前記休止状態の前の前記動作状態において、制御部5が前記第予熱処理を実行していたことである。
【0054】
(ステップS12)
ステップS12において、制御部5は、第1ステッピングモーター29の前記無励磁状態が第2基準時間L2,L3以上か否かを判定する。第2基準時間L2,L3未満と判定されると、制御部5は、処理をステップS6へ移行する(ステップS12のNO側)。これによって、複合機100が前記休止状態に移行したことを検出するか(ステップS6)、前記搬送指示を受けるか(ステップS7)、前記無励磁状態が第2基準時間L2,L3以上になるまで(ステップS12)、制御部5は処理を待ち続ける。一方、第2基準時間L2,L3以上と判定されると、制御部5は、処理をステップS13へ移行する(ステップS12のYES側)。この場合、制御部5は、第1ステッピングモーター29に前記第2予熱処理を実行する必要であると判定する。ここで、ステップS12を実行する制御部5は、本発明の第2時間判定部の一例に相当する。
【0055】
(ステップS13)
ステップS13において、制御部5は、ステップS4と同様に、前記第2予熱処理を実行する。図4に示されるように、制御部5は、ステップS21において、第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流の供給を開始する。ステップS22において、制御部5は、第2励磁時間P2,P3が経過するか否かを判定する。制御部5は、第2励磁時間P2,P3が経過したと判定されるまで前記第2励磁電流を供給し続ける(ステップS22のNO側)。前記第2励磁電流にはパルス信号が含まれないため、第1ステッピングモーター29は回転しない。第1ステッピングモーター29の第1励磁コイル29A及び第2励磁コイル29Bに流れる前記第2励磁電流によってジュール熱が生じて、第1ステッピングモーター29が熱せられる。第2励磁時間P2,P3が経過したと判定すると、制御部5は、処理をステップS23に移行する(ステップS22のYES側)。ステップS23において、前記第2励磁電流の供給を停止する。このように、前記第2予熱処理とは、制御部5が、第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を第2励磁時間P2,P3の間供給して、第1ステッピングモーター29を熱する処理である。例えば、複合機100が前記動作状態になった後に、複合機100による画像形成動作を実行するが、ADF2によって原稿Pが搬送されない場合、前記第2予熱処理によって、ADF2の第1ステッピングモーター29が熱せられる。その後に、ADF2に原稿Pを搬送する前記搬送指示が入力されて、ADF2が原稿Pを搬送する際に、第1ステッピングモーター29は脱調しない。その後、制御部5は、複合機100が前記休止状態に移行したことを検出するか(ステップS6)、前記搬送指示を受けるか(ステップS7)、前記無励磁状態が第2基準時間L2,L3以上になるまで(ステップS12)、制御部5は処理を待ち続ける。ここで、ステップS4、S13を実行する制御部5は、本発明の第1電流制御部の一例に相当する。また、ステップS4、S13は、本発明の第1電流制御ステップの一例に相当する。
【0056】
次に、図5乃至図8に示される、温度センサー57によって検出される複合機100内部の温度とADF2の第1ステッピングモーター29の推定温度との推移について説明する。図5乃至図8において、実線61,63,65,67が温度センサー57によって検出される複合機100の内部温度を示し、破線62,64,66,68が第1ステッピングモーター29の推定温度を示している。図中の左端縦線の目盛が、複合機100の温度センサー57の検出温度に対応し、図中の右端縦線の目盛が、第1ステッピングモーター29の推定温度に対応する。なお、タイミングT1,T2,・・・は、グラフ中のタイミングを表している。
【0057】
[温度制御の例1]
(タイミングT1乃至タイミングT4)
図5に示される温度の推移の例は、復帰した後に、ADF2を使用しない原稿読取処理が実施され、そのまま複合機100が前記休止状態に移行した場合を示している。タイミングT1において、複合機100が前記休止状態に移行するため、実線61で示される温度センサー57によって検出される温度は徐々に低下する。その後、タイミングT3において、複合機100に前記休止状態からの前記復帰信号が入力され、制御部5が前記復帰信号を検出する。タイミングT3とタイミングT1との間隔が休止時間Lである。図5の例では、タイミングT3が、タイミングT1から第1基準時間L1が経過したタイミングT2よりも後であるため、制御部5は、タイミングT3における温度センサー57の温度情報を取得して、温度が前記閾値温度未満か否かを判定する。取得された温度が5度であり、前記閾値温度が10度であるため、制御部5は、第1ステッピングモーター29に前記第1予熱処理を実行する。制御部5は、タイミングT3からタイミングT4まで第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給し続ける。タイミングT3とタイミングT4との間隔が第1励磁時間P1である。これによって、破線62で示される第1ステッピングモーター29の推定温度は、許容温度の前記上限閾値温度である100度まで加熱される。
【0058】
(タイミングT5及びタイミングT6)
タイミングT5において、ユーザーによってADF2を使用しない原稿読取処理の実行が開始され、タイミングT6まで続く。そのため、実線61で示される複合機100の内部温度は5度付近から徐々に上昇し、前記動作状態の温度である25度付近まで上昇して、その温度を維持する。その間、ADF2は使用されないため、破線62で示される第1ステッピングモーター29及び前記複数のギヤの温度が徐々に低下する。タイミングT6以降、複合機100は復帰して前記動作状態に移行しているが、第1ステッピングモーター29は使用されないため、実線61で示される複合機100の内部温度及び破線62で示される第1ステッピングモーター29の推定温度は徐々に低下する。
【0059】
(タイミングT7)
タイミングT7において、制御部5は、複合機100を前記休止状態に移行する。言い換えると、前記休止状態に移行するまでの時間が、タイミングT6とタイミングT7との時間である。
【0060】
[温度制御の例2]
(タイミングT11及びタイミングT12)
図6に示される温度の推移の例は、復帰した後に、ADF2を使用しない原稿読取処理が間欠的に実施された場合を示している。タイミングT11において、タイミングT3と同様に、複合機100に前記復帰信号が入力され、制御部5が前記復帰信号を検出する。さらに、制御部5は、タイミングT11において、前記第1予熱処理を実行する。制御部5は、タイミングT11からタイミングT12まで第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給し続ける。タイミングT11とタイミングT12との間隔が第1励磁時間P1である。
【0061】
(タイミングT13)
タイミングT13において、ユーザーによってADF2を使用しない原稿読取処理の実行が開始され、間欠的に繰り返し実行される。そのため、実線63で示される複合機100の内部温度は5度付近から徐々に上昇し、前記動作状態の温度である25度付近まで上昇して、その温度を維持する。その間、ADF2は使用されず、第1ステッピングモーター29は、前記無励磁状態になる。そのため、破線64で示される第1ステッピングモーター29の推定温度が徐々に低下する。
【0062】
(タイミングT14及びタイミングT15)
タイミングT14は、第1ステッピングモーター29に対して前記第1予熱処理を実行し終わったタイミングT13から第2基準時間L2が経過した時間である。制御部5は、前記第1予熱処理が終了してから第2基準時間L2を経過した時点において、破線64で示される前記無励磁状態の第1ステッピングモーター29の推定温度が前記下限閾値温度である15度付近まで低下していると判定し、前記第2予熱処理の実行を開始する。制御部5は、タイミングT14からタイミングT15まで第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給し続ける。タイミングT14とタイミングT15との間隔が第2励磁時間P2である。これによって、破線64で示される第1ステッピングモーター29の推定温度は、前記上限閾値温度である100度まで加熱される。
【0063】
(タイミングT16)
タイミングT16において、制御部5は、複合機100を前記休止状態に移行する。
【0064】
[温度制御の例3]
(タイミングT21及びタイミングT22)
図7に示される温度の推移の例は、復帰した後に、ADF2を使用した原稿読取処理が実施された場合を示している。タイミングT21において、タイミングT3,T11と同様に、複合機100に前記復帰信号が入力され、制御部5が前記復帰信号を検出する。さらに、制御部5は、タイミングT21において、前記第1予熱処理を実行する。制御部5は、タイミングT21からタイミングT22まで第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給し続ける。タイミングT21とタイミングT22との間隔が第1励磁時間P1である。
【0065】
(タイミングT23)
タイミングT23において、ユーザーによってADF2を使用した原稿読取処理の実行が開始される。そのため、実線65で示される複合機100の内部温度は5度付近から徐々に上昇し、前記動作状態の温度である25度付近まで上昇して、その温度を維持する。その間、ADF2は使用されて、第1ステッピングモーター29に前記第1励磁電流が供給される。そのため、破線66で示される第1ステッピングモーター29の推定温度は、前記動作状態の温度である60度になり、その温度を維持する。
【0066】
(タイミングT24)
タイミングT24において、ユーザーによってADF2を使用した原稿読取処理の実行が終了される。そのため、実線65で示される複合機100の内部温度は徐々に低下する。その間、ADF2は使用されず、第1ステッピングモーター29は、前記無励磁状態になる。そのため、破線66で示される第1ステッピングモーター29の推定温度が徐々に低下する。
【0067】
(タイミングT25及びタイミングT26)
タイミングT25は、第1ステッピングモーター29が前記無励磁状態になったタイミングT24から第2基準時間L3が経過した時間である。制御部5は、前記無励磁状態になってから第2基準時間L3を経過した時点において、破線66で示される前記無励磁状態の第1ステッピングモーター29の推定温度が前記下限閾値温度である15度付近まで低下していると判定し、前記第2予熱処理の実行を開始する。制御部5は、タイミングT25からタイミングT26まで第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給し続ける。タイミングT25とタイミングT26との間隔が第2励磁時間P3である。これによって、第1ステッピングモーター29が加熱され、破線66で示される第1ステッピングモーター29の推定温度は、前記上限閾値温度である100度まで上昇する。
【0068】
(タイミングT27)
タイミングT27において、制御部5は、複合機100を前記休止状態に移行する。
【0069】
[温度制御の例4]
(タイミングT31乃至タイミングT33)
図8に示される温度の推移の例は、前記休止状態の休止時間Lが第1基準時間L1よりも短い場合でも前記第2予熱処理を実行する場合を示している。この場合、前回の前記動作状態のときに前記第2予熱処理を実施していたことを条件に、今回の前記動作状態において前記第2予熱処理を実行する。前回の前記動作状態のタイミングT31からタイミングT32まで、制御部5は、前記第2予熱処理として第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給し続ける。タイミングT31とタイミングT32との間隔が第2励磁時間P2である。破線68で示される第1ステッピングモーター29の推定温度が100度まで上昇する。タイミングT33において、複合機100は、前記休止状態に移行し、実線67で示される複合機100の内部温度は徐々に低下する。また、破線68で示される第1ステッピングモーター29の推定温度も徐々に低下する。
【0070】
(タイミングT34乃至T36)
タイミングT34において、複合機100に前記休止状態からの前記復帰信号が入力され、制御部5が前記復帰信号を検出する。タイミングT34とタイミングT33との間隔が休止時間Lである。図8の例では、タイミングT34が、タイミングT33から第1基準時間L1が経過したタイミングT36よりも前であるため、制御部5は、タイミングT3における温度センサー57の温度情報を取得しない。この場合、複合機100の内部温度が十分に冷えていないため、温度センサー57によって正確な内部温度を検出することができない。そのため、制御部5は、フラグ記憶部58に保持されている前記フラグ情報を参照し(図3のフローチャートのステップS2のNO側参照)、前記第2予熱処理を実行するか否かを判定する。図8の例では、フラグ記憶部58に前回の前記動作状態のときに前記第2予熱処理を実行していたことを示す前記フラグ情報が保持されている。制御部5は、タイミングT34からタイミングT35まで第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給し続ける。タイミングT34とタイミングT35との間隔が第2励磁時間P2である。これによって、破線68で示される第1ステッピングモーター29の推定温度は、約80度まで加熱される。この温度は、制御部5によって第1ステッピングモーター29に駆動電流が供給された場合に、第1ステッピングモーター29が脱調をしない温度である。
【0071】
(タイミングT37及びタイミングT38)
タイミングT37まで、ユーザーによってADF2を使用しない原稿読取処理の実行が開始される。そのため、実線67で示される複合機100の内部温度は徐々に上昇し、前記動作状態の温度である25度付近まで上昇して、その温度を維持する。その間、ADF2は使用されないため、破線68で示される前記無励磁状態の第1ステッピングモーター29及び前記複数のギヤの温度が徐々に低下する。タイミングT37は、第1ステッピングモーター29が前記無励磁状態になったタイミングT36から第2基準時間L2が経過した時間である。制御部5は、第2基準時間L2を経過した時点において、破線68で示される前記無励磁状態の第1ステッピングモーター29の推定温度が前記下限閾値温度である15度付近まで低下していると判定し、前記第2予熱処理の実行を開始する。制御部5は、タイミングT37からタイミングT38まで第1ステッピングモーター29に前記第2励磁電流を供給し続ける。タイミングT37とタイミングT38との間隔が第2励磁時間P2である。これによって、第1ステッピングモーター29が加熱され、破線68で示される第1ステッピングモーター29の推定温度は、前記上限閾値温度である100度まで上昇する。
【0072】
[実施形態の効果]
以上説明したように、本発明のステッピングモーター制御部10によれば、ADF2内の第1ステッピングモーター29周辺の温度を検出しない場合であっても、第1ステッピングモーター29及び前記複数のギヤの温度を一定範囲内に保つことによって、第1ステッピングモーター29を安定して駆動させることができる。また、複合機100の内部温度を測定する温度センサー57を使用するために、第1ステッピングモーター29及び前記複数のギヤの温度を測定する温度センサーを備える必要がないため、低コストで第1ステッピングモーター29の動作を安定させることができる。
【0073】
[実施形態の変形例]
上記実施形態の説明では、ステッピングモーター制御部10が、連結装置であるADF2の第1ステッピングモーター29を制御する場合について説明したが、これに限るものではない。複合機100に連結される連結装置は、ADF2に以外に、給紙装置及び後処理装置でもよい。例えば、連結装置が、複合機100に増設して連結される給紙装置であり、ステッピングモーター制御部10によって制御されるステッピングモーターは、給紙装置の用紙補給部分を駆動する駆動源である。また、連結装置が、複合機100に連結される後処理装置であり、ステッピングモーター制御部10によって制御されるステッピングモーターは、後処理装置の用紙仕分け部分を駆動する駆動源である。
【0074】
上記実施形態の説明では、同型製品の第1ステッピングモーター29と第2ステッピングモーター18とを使用して、同じ値の前記閾値温度によってステッピングモーターを制御する場合について説明したが、これに限るものではない。第1ステッピングモーター29と第2ステッピングモーター18とを別型製品とし、ステッピングモーター制御部10は、異なる前記閾値温度によって第1ステッピングモーター29と第2ステッピングモーター18とを制御してもよい。また、温度センサー57は、画像読取部1の近くに配置されている場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、温度センサー57は、定着ローラー37の近くに設けられていてもよい。この場合、温度センサー57は、第2ステッピングモーター18の温度を直接検出することができない。そのため、第2温度判定部55は、複合機100が前記動作状態になったときに一度だけ温度を検出する。第2電流制御部56は、検出された検出温度が前記閾値温度未満であると判定された場合に第2ステッピングモーター18に前記第2励磁電流を供給する。このように、制御部5は、第2ステッピングモーター18に対しても前記ステッピングモーターの制御処理に基づいて、前記第2励磁電流を供給するものでもよい。
【0075】
本開示の範囲は、請求項の記載に先行する詳細な説明ではなく、添付の請求項の記載により定義されるので、本明細書に記載の実施形態は、例示に過ぎず、かつ非限定的であると理解されたい。従って、特許請求の範囲から逸脱しない変更の全て、または均等物が、請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
100:複合機
1:画像読取部
2:ADF
3:画像形成部
4:給紙部
5:制御部
5A:CPU
5B:ROM
5C:RAM
5D:ドライバー
6:操作表示部
10:ステッピングモーター制御部
29:第1ステッピングモーター
51:第1時間判定部
52:第1温度判定部
53:第1電流制御部
54:第2時間判定部
55:第2温度判定部
56:第2電流制御部
57:温度センサー
58:フラグ記憶部
60:状態切替部
L:停止時間
L1:第1基準時間
L2,L3:第2基準時間
P1:第1励磁時間
P2,P3:第2励磁時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8