(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力側のドライブピニオンギヤより下方に配置されると共に該ドライブピニオンギヤと噛合するデフリングギヤと、該デフリングギヤに連結されるデファレンシャルギヤと、前記デフリングギヤおよび前記デファレンシャルギヤを収容するケースと、前記ケース内を前記デフリングギヤおよび前記デファレンシャルギヤが配置されるデフ室と作動油を貯留する作動油貯留室とに区画する区画部材とを備える動力伝達装置において、
前記区画部材は、前記ケースの第1ケース部材とにより前記作動油貯留室を形成すると共に、前記ケースの第2ケース部材とにより前記デフ室を形成し、
前記第1ケース部材には、前記デファレンシャルギヤに作動油を供給する作動油供給管が挿入され、
前記区画部材は、前記第1ケース部材側には前記作動油供給管を挿入方向に押さえる保持部を有する、
ことを特徴とする動力伝達装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明のよる動力伝達装置20の概略構成図である。同図に示す動力伝達装置20は、前輪駆動式の車両に搭載される図示しないエンジンのクランクシャフトに接続されると共にエンジンからの動力を左右の駆動輪(前輪)DWに伝達可能なものである。図示するように、動力伝達装置20は、コンバータハウジング220(第1ケース部材)や当該コンバータハウジング220に連結されるトランスアクスルケース240(第2ケース部材)を含むトランスミッションケース22や、コンバータハウジング220内に収容される流体伝動装置(発進装置)23、オイルポンプ24、トランスアクスルケース240内に収容される自動変速機25、ギヤ機構(ギヤ列)40、デファレンシャルギヤ(差動機構)50等を含む。
【0012】
流体伝動装置23は、エンジンのクランクシャフトに接続される入力側のポンプインペラ23pや、自動変速機25の入力軸26に接続された出力側のタービンランナ23t、ポンプインペラ23pおよびタービンランナ23tの内側に配置されてタービンランナ23tからポンプインペラ23pへの作動油の流れを整流するステータ23s、ステータ23sの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ23o、ロックアップクラッチ23c等を有するトルクコンバータとして構成される。ただし、流体伝動装置23は、ステータ23sを有さない流体継手として構成されてもよい。
【0013】
オイルポンプ24は、ポンプボディとポンプカバーとからなるポンプアッセンブリと、ハブを介して流体伝動装置23のポンプインペラ23pに接続された外歯ギヤとを備えるギヤポンプとして構成されている。オイルポンプ24は、エンジンからの動力により駆動され、図示しないオイルパンに貯留されている作動油(ATF)を吸引して図示しない油圧制御装置へと圧送する。
【0014】
自動変速機25は、8段変速式の変速機として構成されており、
図1に示すように、ダブルピニオン式の第1遊星歯車機構30と、ラビニヨ式の第2遊星歯車機構35と、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための4つのクラッチC1,C2,C3およびC4、2つのブレーキB1およびB2、並びにワンウェイクラッチF1とを含む。
【0015】
第1遊星歯車機構30は、外歯歯車であるサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ32と、互いに噛合すると共に一方がサンギヤ31に、他方がリングギヤ32に噛合する2つのピニオンギヤ33a,33bの組を自転かつ公転自在に複数保持するプラネタリキャリア34とを有する。図示するように、第1遊星歯車機構30のサンギヤ31は、トランスミッションケース22に固定されており、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリア34は、入力軸26に一体回転可能に接続されている。また、第1遊星歯車機構30は、いわゆる減速ギヤとして構成されており、入力要素であるプラネタリキャリア34に伝達された動力を減速して出力要素であるリングギヤ32から出力する。
【0016】
第2遊星歯車機構35は、外歯歯車である第1サンギヤ36aおよび第2サンギヤ36bと、第1および第2サンギヤ36a,36bと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ37と、第1サンギヤ36aに噛合する複数のショートピニオンギヤ38aと、第2サンギヤ36bおよび複数のショートピニオンギヤ38aに噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のロングピニオンギヤ38bと、複数のショートピニオンギヤ38aおよび複数のロングピニオンギヤ38bを自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持するプラネタリキャリア39とを有する。第2遊星歯車機構35のリングギヤ37は、自動変速機25の出力部材として機能し、入力軸26からリングギヤ37に伝達された動力は、ギヤ機構40、デファレンシャルギヤ50およびドライブシャフト28を介して左右の駆動輪に伝達される。また、プラネタリキャリア39は、ワンウェイクラッチF1を介してトランスミッションケース22により支持され、当該プラネタリキャリア39の回転方向は、ワンウェイクラッチF1により一方向に制限される。
【0017】
クラッチC1は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第1サンギヤ36aとを締結すると共に両者の締結を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチ(摩擦係合要素)である。クラッチC2は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、入力軸26と第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリア39とを締結すると共に両者の締結を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチである。クラッチC3は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを締結すると共に両者の締結を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチである。クラッチC4は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリア34と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを締結すると共に両者の締結を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチである。
【0018】
ブレーキB1は、油圧サーボを含むバンドブレーキあるいは多板摩擦式ブレーキとして構成されており、第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bをトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共に第2サンギヤ36bのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる油圧ブレーキ(摩擦係合要素)である。ブレーキB2は、油圧サーボを含むバンドブレーキあるいは多板摩擦式ブレーキとして構成されており、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリア39をトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共にプラネタリキャリア39のトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる油圧ブレーキである。また、ワンウェイクラッチF1は、例えばインナーレースやアウターレース、複数のスプラグ等を含み、インナーレースに対してアウターレースが一方向に回転した際にスプラグを介してトルクを伝達すると共に、インナーレースに対してアウターレースが他方向に回転した際に両者を相対回転させるものである。ただし、ワンウェイクラッチF1は、ローラ式といったようなスプラグ式以外の構成を有するものであってもよい。
【0019】
これらのクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2は、図示しない油圧制御装置による作動油の給排を受けて動作する。
図2に、自動変速機25の各変速段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2、並びにワンウェイクラッチF1の作動状態との関係を表した作動表を示す。自動変速機25は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2を
図2の作動表に示す状態とすることで前進1〜8速の変速段と後進1速および2速の変速段とを提供する。なお、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2の少なくとも何れかは、ドグクラッチといった噛み合い係合要素とされてもよい。
【0020】
ギヤ機構40は、自動変速機25の第2遊星歯車機構35のリングギヤ37に連結されるカウンタドライブギヤ41と、自動変速機25の入力軸26と平行に延在するカウンタシャフト42に固定されると共にカウンタドライブギヤ41に噛合するカウンタドリブンギヤ43と、カウンタシャフト42に形成(あるいは固定)されたドライブピニオンギヤ(ファイナルドライブギヤ)44と、ドライブピニオンギヤ44よりも下方に配置される(
図3参照)と共に当該ドライブピニオンギヤ44に噛合するデフリングギヤ(ファイナルドリブンギヤ)45とを有する。なお、デフリングギヤ45は、はすば歯車として構成されている。
【0021】
デファレンシャルギヤ50は、
図1や
図3〜
図8に示すように、一対(2個)のピニオンギヤ51と、それぞれドライブシャフト28に固定されると共に一対のピニオンギヤ51に直角に噛合する一対(2個)のサイドギヤ52と、一対のピニオンギヤ51を支持するピニオンシャフト53と、一対のピニオンギヤ51および一対のサイドギヤ52を収容すると共に上述のデフリングギヤ45が連結(固定)されるデフケース54とを有する。本実施形態において、各ピニオンギヤ51および各サイドギヤ52は、すぐばかさ歯車として構成される。また、ピニオンギヤ51のそれぞれとデフケース54との間には、ピニオンワッシャ55が配置され、サイドギヤ52のそれぞれとデフケース54との間には、サイドワッシャ56が配置される。そして、デフケース54は、トランスミッションケース22により軸受81,82を介してドライブシャフト28と同軸に回転自在に支持される。
【0022】
続いて、動力伝達装置20におけるデフリングギヤ45やデファレンシャルギヤ50の周辺の構造について説明する。
図3はコンバータハウジング220にリザーバプレート70を取り付けた状態を示す説明図であり、
図4はリザーバプレート70が取り付けられていないコンバータハウジング220を示す説明図であり、
図5はトランスアクスルケース240を示す説明図であり、
図6はトランスアクスルケース240にリザーバプレート70を配置した状態を示す説明図である。また、
図7は
図3におけるA−B線に沿った断面を示す説明図であり、
図8は
図3におけるA−C線に沿った断面を示す説明図であり、
図9は
図3におけるA−D線に沿った断面を示す説明図である。
図3中の左上の破線の円はドライブピニオンギヤ44を示し、中央の破線の円はデフリングギヤ45を示す。また、
図3中の一点鎖線は作動油貯留室65における作動油の液面を示し、矢印はデフリングギヤ45の回転方向を示す。
【0023】
これらの図面に示すように、コンバータハウジング220およびトランスアクスルケース240を含むトランスミッションケース22の内部は、
図10,
図11,
図12に示すリザーバプレート70により、デフリングギヤ45およびデファレンシャルギヤ50が配置されるデフ室60と、作動油を貯留する作動油貯留室65とに区画される。なお、以下の説明において、「上」および「下」は、それぞれ動力伝達装置20が車両に搭載された状態での鉛直方向における「上」または「下」を示すものとする。
【0024】
コンバータハウジング220は、
図3,
図4に示すように、トランスアクスルケース240に組み付ける際のハウジング側合わせ面(第1ケース合わせ面)221を有する。このハウジング側合わせ面221の底部近傍から図中右方向にリザーバプレート70の外縁に沿って略90度上までの範囲には、ハウジング側合わせ面221に沿ってリザーバプレート70の厚み程度だけ内側に段差したハウジング側段差面223が形成されている。また、
図4,
図9に示すように、コンバータハウジング220内には、コンバータハウジング220に形成された油孔225aを介して油路226aと油孔225bを介して油路226bとを接続する作動油供給管88とが配設されている。
【0025】
トランスアクスルケース240は、
図5,
図6に示すように、コンバータハウジング220に組み付ける際のケース側合わせ面(第2ケース合わせ面)241を有する。トランスアクスルケース240には、底部近傍から図中右方向に略45度の角度で直線状に中央側に延びるリブ242が形成されている。
【0026】
リザーバプレート70は、
図10〜
図12に示すように、筒状部71と、筒状部71から径方向外側に延出されたフランジ部72とを含む。リザーバプレート70は、筒状部71に形成されたボルト孔76aとフランジ部72に形成された2つのボルト孔76b,76cを用いて、
図3に示すように、3つのボルト86a〜86cによりコンバータハウジング220に取り付け固定される。これら筒状部71およびフランジ部72から構成されるリザーバプレート70は、鉄などの金属部材をプレス加工により形成される。なお、リザーバプレート70は、樹脂により射出成形により成形されてもよい。
【0027】
筒状部71は、
図7〜
図9に示すように、デファレンシャルギヤ50のデフケース54の外周面の一部に沿って延在するように形成され、主に、デフケース54の一方のサイドギヤ支持部(コンバータハウジング220により軸受81を介して支持される部分)を除く部分を囲む。筒状部71のコンバータハウジング220側の端部と当該コンバータハウジング220との間には、リザーバプレート70がトランスミッションケース22に固定された状態で若干のクリアランスが画成される。
【0028】
フランジ部72は、筒状部71のトランスアクスルケース240側の端部から径方向外側に向けて延出される。また、フランジ部72および筒状部71の上部には、カウンタシャフト42を回転自在に支持する図示しない軸受と干渉しないように切欠部70sが形成されており、これにより、フランジ部72は、筒状部71の周囲において円弧状(略C字状)に延在する。
図3に示すように、フランジ部72の底部から底部を含んで図中右方向に向かって略90度上までの外縁部には第1シール部77が形成されている。第1シール部77は、コンバータハウジング220のハウジング側段差面223に当接することにより第1シール部77のシールを確保する。また、フランジ部72の第1シール部77より図中左方向に向かって略60度上までの外縁部には第2シール部78が形成されている。第2シール部78は、トランスアクスルケース240に形成されたリブ242に当接し、リブ242から押圧されることにより第2シール部78のシールを確保する。
【0029】
第2シール部78は、
図3,
図10〜
図12に示すように、外縁が直線状に形成されており、外縁がトランスアクスルケース240のリブ242に当接しやすいようにリブ242側に突出するように形成されている。このため、第2シール部78がリブ242により押圧されて弾性変形し、第2シール部78のシールをより良好に確保する。
【0030】
第1シール部分77の底部には、
図3,
図11に示すように、コンバータハウジング220の底部の凹部に整合するように、径方向に延出した凸形状の位置決め部77aが形成されている。この位置決め部77aを設けたことにより、コンバータハウジング220に組み付ける際のリザーバプレート70の位置決めが容易となる。特に、位置決め部77aを第2シール部78近傍に形成したので、第2シール部78とリブ242とのズレを抑制することができる。
【0031】
フランジ部72のボルト孔76a近傍(
図3ではボルト86aの右側)には、コンバータハウジング220に配設された作動油供給管88を保持する保持部73が形成されている。保持部73は、
図9〜
図12に示すように、コンバータハウジング220側に張り出すように形成した張出部73aと、この張出部73aに作動油供給管88に沿うように形成した窪部73bとを有する。したがって、保持部73では、窪部73bが作動油供給管88に当接してコンバータハウジング220側に押すようにして作動油供給管88を保持する。このようにリザーバプレート70のフランジ部72に保持部73を形成して作動油供給管88を保持するから、作動油供給管88の保持にクランプ用部材などの他の部材を用いる必要がない。また、作動油供給管88に沿うように窪部73bが形成されているから、窪部73bにより作動油供給管88を安定して保持することができる。さらに、保持部73の形状を凹凸のある張出部73aと窪部73bとにより複雑な形状としたから、保持部73の曲げなどに対する強度を高くすることができる。
【0032】
図9に示すように、作動油供給管88には、保持部73で保持されている部位の近傍に、少なくとも一つの作動油供給孔88oが形成されている。一方、リザーバプレート70の筒状部71には、
図9〜
図12に示すように、作動油供給孔88oの下側となる位置に開口部71oが形成されている。これにより、作動油供給管88の作動油供給孔88oから筒状部71の開口部71oを介してデファレンシャルギヤ50のピニオンシャフト53へと作動油を供給し、ピニオンシャフト53を潤滑・冷却することが可能となる。上述したように、作動油供給管88は保持部73により保持され、開口部71oは保持部73の近傍に形成されるから、作動油供給孔88oは精度よく開口部71oの真上に位置するようになる。このため、開口部71oの直径を大きくしなくても作動油供給孔88oからの作動油は開口部71oを介してピニオンシャフト53に供給される。このため、開口部71oを小さくすることができ、リザーバプレート70の強度を高くすることができる。なお、作動油供給管88を配設する油孔225bは、コンバータハウジング220内に形成されて軸受81の近傍で開口する図示しない油路と連通する。作動油供給管88からの作動油を軸受81に供給し、当該軸受81を潤滑・冷却することが可能となる。なお、軸受81に供給された作動油の少なくとも一部は、リザーバプレート70の筒状部71とコンバータハウジング220との間の画成されたクリアランスを介してデフ室60から作動油貯留室65へ排出される。
【0033】
以上説明した実施形態の動力伝達装置20では、リザーバプレート70のフランジ部72に、コンバータハウジング220に配設された作動油供給管88を保持する保持部73を形成したので、作動油供給管88の保持にクランプ用部材などの他の部材を用いるものに比して、部品点数を少なくすることができ、組み付けをより良好なものとすることができる。しかも、保持部73としてコンバータハウジング220側に張り出すように形成した張出部73aに作動油供給管88に沿うように窪部73bを形成したから、窪部73bにより作動油供給管88を安定して保持することができる。また、保持部73の形状を凹凸のある張出部73aと窪部73bとにより複雑な形状としたから、保持部73の曲げなどに対する強度を高くすることができる。
【0034】
また、実施形態の動力伝達装置20では、作動油供給管88の保持部73で保持されている部位の近傍に作動油供給孔88oを形成すると共に、リザーバプレート70の筒状部71の作動油供給孔88oの下側となる位置に開口部71oを形成することにより、作動油供給管88の作動油供給孔88oから筒状部71の開口部71oを介してデファレンシャルギヤ50のピニオンシャフト53へと作動油を供給して、ピニオンシャフト53を潤滑・冷却を行なうことができる。作動油供給管88は保持部73により保持され、開口部71oは保持部73の近傍に形成されるから、作動油供給孔88oは精度よく開口部71oの真上に位置するようになり、開口部71oの直径を小さくすることができる。この結果、リザーバプレート70の強度を高くすることができる。
【0035】
もとより、本実施形態の動力伝達装置20では、リザーバプレート70のフランジ部72の底部を含む外縁部分に第1シール部77を形成し、第1シール部77がコンバータハウジング220のハウジング側段差面223に当接することにより第1シール部77のシールを確保し、フランジ部72の底部から第1シール部77の反対側に第2シール部78を形成し、第2シール部78がトランスアクスルケース240のリブ242に当接して押圧されることにより第2シール部78のシールを確保する。第2シール部78は直線状に形成されているから、リブ242に押圧されて変形しても、外縁が円弧状或いは曲線状のものに比して、リブ242との接触状態を維持することができ、シールをより良好に保持することができる。これらの結果、作動油貯留室65からデフ室60への作動油の流入をより良好に抑制することができ、デフリングギヤ45に作用する作動油の撹拌抵抗をより低減することができる。
【0036】
本実施形態の動力伝達装置20では、コンバータハウジング220側に張り出すように形成した張出部73aと、この張出部73aに作動油供給管88に沿うように形成された窪部73bとにより保持部73を構成するものとしたが、作動油供給管88を保持すればよいから、これらの形状とは異なる形状に形成しても構わない。
【0037】
本実施形態の動力伝達装置20では、作動油供給管88の保持部73で保持されている部位の近傍に作動油供給孔88oを形成すると共に、リザーバプレート70の筒状部71の作動油供給孔88oの下側となる位置に開口部71oを形成するものとしたが、作動油供給管88の保持部73で保持されている部位から離れた部位に作動油供給孔88oを形成すると共に、リザーバプレート70の筒状部71の作動油供給孔88oの下側となる位置に開口部71oを形成するものとしてもよい。
【0038】
本実施形態の動力伝達装置20では、第1シール部77に位置決め部77aを設けるものとしたが、位置決め部77aを他の部位に設けるものとしてもよい。
【0039】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【0040】
本発明の動力伝達装置において、前記区画部材は前記第1ケース部材に固定され、前記作動油供給管は、前記第1ケース部材から前記デファレンシャルギヤの軸方向に延びる軸方向管と、前記軸方向管の第1ケース部材側とは反対側の端部から前記デファレンシャルギヤの径方向に延びる径方向管とからなり、前記保持部は前記径方向管と当接するものとすることもできる。こうすれば、第1ケース部材と区画部材とにより作動油供給管の径方向管を挟み込むもの状態となり、より確実に作動油供給供管の保持が可能となり、作動油供給管の抜け止めをより確実に行なうことができる。
【0041】
本発明の動力伝達装置において、前記保持部は、前記第1ケース部材側に張り出した張出部と、該張出部に前記作動油供給管に沿うよう形成された窪部とを有するものとすることもできる。こうすれば、窪部により作動油供給管を安定して保持することができると共に、保持部の形状を複雑にして保持部の曲げなどに対する強度を高くすることができる。
【0042】
また、本発明の動力伝達装置において、前記作動油供給管は、前記保持部により保持される部位近傍の鉛直下側に作動油を供給するための作動油供給孔を有し、前記区画部材は、前記作動油供給孔の鉛直下側に該作動油供給孔からの作動油を前記デフ室側に供給するための開口部を有するものとすることもできる。こうすれば、作動油供給孔や開口部は保持部近傍に形成されるから、作動油をデフ室側に供給するための開口部の直径を小さくすることができ、区画部材の強度を高くすることができる。
【0043】
本発明の動力伝達装置において、前記第1ケース部材には、外縁に第1ケース合わせ面が形成されていると共に前記第1ケース合わせ面の底部近傍に該第1ケース合わせ面から内側に段差する第1段差面が形成されており、前記第2ケース部材には、前記第1ケース合わせ面と整合する第2ケース合わせ面が形成されていると共に前記第2ケース合わせ面の底部近傍から前記区画部材の外縁に沿って中央に延びるリブが形成されており、前記区画部材には、外周部のうち底部を含んで該底部から一方向に向かった第1範囲には前記第1段差面に当接してシールする第1シール部が形成されていると共に、外周部のうち前記第1範囲の底部側の端部近傍から他方向に向かった第2範囲には径方向に延出して前記リブに当接する第2シール部が形成されているものとすることもできる。こうすれば、区画部材の第1シール部が第1段差面に当接して第1シール部のシールを確保し、第2シール部が第2ケース部材のリブに当接して第2シール部のシールを確保することができる。これにより、デフリングギヤおよびデファレンシャルギヤが配置されるデフ室への作動油の流入をより良好に抑制し、デフリングギヤに作用する作動油の撹拌抵抗をより低減することができる。