(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188684
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ニッケル系合金の熱機械プロセッシング
(51)【国際特許分類】
C22F 1/10 20060101AFI20170821BHJP
C22C 19/05 20060101ALI20170821BHJP
B21J 1/04 20060101ALI20170821BHJP
B21J 1/06 20060101ALI20170821BHJP
B21J 5/00 20060101ALI20170821BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20170821BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
C22F1/10 H
C22C19/05 F
B21J1/04
B21J1/06 Z
B21J5/00 A
B21J5/06 F
!C22F1/00 624
!C22F1/00 623
!C22F1/00 640A
!C22F1/00 641A
!C22F1/00 641C
!C22F1/00 681
!C22F1/00 683
!C22F1/00 682
!C22F1/00 691B
!C22F1/00 694A
!C22F1/00 694B
!C22F1/00 691C
!C22F1/00 612
!C22F1/00 684Z
!C22F1/00 692A
!C22F1/00 602
!C22F1/00 626
!C22F1/00 604
【請求項の数】42
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-513521(P2014-513521)
(86)(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公表番号】特表2014-520206(P2014-520206A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】US2012036707
(87)【国際公開番号】WO2012166295
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】13/150,494
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501187033
【氏名又は名称】エイティーアイ・プロパティーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】フォーブス・ジョーンズ,ロビン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー・ディー
【審査官】
川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−299120(JP,A)
【文献】
特開2002−146497(JP,A)
【文献】
特開昭60−100655(JP,A)
【文献】
特開2000−212709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/00− 3/02
C22C 19/00−19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル系合金の加工物を1157〜1163℃(2115°F〜2125°F)の範囲の温度に加熱することを含む第1の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を30%〜70%の面積の縮小まで回転鍛造することを含む第1の鍛造ステップであって、前記ニッケル系合金の加工物が、前記第1の鍛造ステップが開始されるときに、1157〜1163℃(2115°F〜2125°F)の範囲の温度にある、第1の鍛造ステップと、
前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を954〜1046℃(1750°F〜1915°F)の範囲の温度に加熱することを含む第2の加熱ステップであって、前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を高温に維持し、前記第1の鍛造ステップの終了から前記第2の加熱ステップの開始まで、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度より167℃(300°F)低い温度未満の温度に冷却させないようにする、第2の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を20%〜70%の面積の縮小まで回転鍛造することを含む第2の鍛造ステップであって、前記ニッケル系合金の加工物が、前記第2の鍛造ステップが開始されるときに、954〜1046(1750°F〜1915°F)の範囲の温度にある、第2の鍛造ステップとを含むプロセスであって、
前記ニッケル系合金の加工物が、0.05重量%までの炭素、27.0重量%〜31.0重量%のクロム、0.5重量%までの銅、7.0重量%〜11.0重量%の鉄、0.5重量%までのマンガン、0.015重量%までの硫黄、0.5重量%までのケイ素、少なくとも58%のニッケル、および付随の不純物質からなる、
プロセス。
【請求項2】
前記第1の加熱ステップが、少なくとも6.0時間、1157〜1163℃(2115°F〜2125°F)にて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第2の加熱ステップが、2.0時間より長い在炉時間において、954〜1046℃(1750°F〜1915°F)にて稼動する炉内で、前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第2の加熱ステップが、3.0時間〜10.0時間の在炉時間において、954〜1046℃(1750°F〜1915°F)にて稼動する炉内で、前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第2の加熱ステップが、4.0時間〜8.0時間の在炉時間において、954〜1046℃(1750°F〜1915°F)にて稼動する炉内で、前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
フィード材料を真空誘導溶解し、ニッケル系合金のインゴットを形成することと、
前記ニッケル系合金のインゴットを再溶解し、精錬ニッケル系合金のインゴットを形成することであって、前記再溶解することが真空アーク再溶解およびエレクトロスラグ再溶解からなる群から選択される少なくとも1つの再溶解操作を含むことと、
前記精錬ニッケル系合金のインゴットをプレス鍛造し、前記ニッケル系合金の加工物を形成することと、
をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第2の鍛造ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間、少なくとも982℃(1800°F)であるが、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度以下の温度にて加熱することと、
前記加工物を水で焼き入れすることと、
をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第2の鍛造ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間、704〜760℃(1300°F〜1400°F)にて時効させることと、
前記加工物を空気冷却させることと
をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
ロッドおよび丸形バーからなる群から選択される、ニッケル系合金生成物であって、
ニッケル系合金が、0.05重量%までの炭素、27.0重量%〜31.0重量%のクロム、0.5重量%までの銅、7.0重量%〜11.0重量%の鉄、0.5重量%までのマンガン、0.015重量%までの硫黄、0.5重量%までのケイ素、少なくとも58%のニッケル、および付随の不純物質からなり、
前記生成物が、均一な粒径分布である、ASTM No.3.0〜9.0の粒径の等軸粒、金属顕微鏡で観察可能な結晶粒界に均一に分布する粒間M23C6カーバイド析出物、および実質的に金属顕微鏡で観察できない粒間M23C6カーバイド析出物を含む、上記ニッケル系合金生成物。
【請求項10】
ニッケル系合金の加工物を、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度より高い温度に加熱することを含む第1の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を、20%〜70%の面積の縮小まで加工することを含む第1の加工ステップであって、前記ニッケル系合金の加工物が、前記第1の加工ステップが開始されるときに、M23C6カーバイドソルバス温度より高い温度にある第1の加工ステップと、
前記加工されたニッケル系合金の加工物を、927℃(1700°F)より高く、かつ前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度未満の温度に加熱することを含む第2の加熱ステップであって、前記加工された状態のニッケル系合金の加工物を高温で維持し、前記第1の加工ステップの終了から前記第2の加熱ステップの開始まで、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度より167℃(300°F)低い温度未満の温度に冷却させないようにする第2の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を、20%〜70%の第2の面積の縮小まで加工することを含む第2の加工ステップであって、前記第2の加工ステップが開始されるときに、前記ニッケル系合金の加工物を927℃(1700°F)より高く、かつ前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度未満の温度にある第2の加工ステップと、
を含み、
前記ニッケル系合金の加工物が、0.05重量%までの炭素、27.0重量%〜31.0重量%のクロム、0.5重量%までの銅、7.0重量%〜11.0重量%の鉄、0.5重量%までのマンガン、0.015重量%までの硫黄、0.5重量%までのケイ素、少なくとも58重量%のニッケル、および付随の不純物質からなる、
プロセス。
【請求項11】
前記ニッケル系合金の加工物が、0.05重量%までの炭素、28.0重量%〜30.0重量%のクロム、0.25重量%までの銅、8.0重量%〜10.0重量%の鉄、0.25重量%までのマンガン、0.010重量%までの硫黄、0.25重量%までのケイ素、少なくとも58重量%のニッケル、および付随の不純物質からなる、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の加工ステップおよび前記第2の加工ステップが独立して、平圧延、リング圧延、圧延成形、プレス鍛造、押出し成形、および回転鍛造からなる群より選択される少なくとも1つの操作を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第1の加工ステップおよび前記第2の加工ステップが回転鍛造を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第1の加熱ステップが、少なくとも3.0時間、1157〜1163℃(2115°F〜2125°F)にて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項15】
第2の加熱ステップが、2.0時間より長い在炉時間において、954〜1046℃(1750°F〜1915°F)にて稼動する炉内で前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項16】
前記第2の加熱ステップが、3.0時間〜10.0時間の在炉時間において、954〜1046℃(1750°F〜1915°F)にて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第2の加熱ステップが、4.0時間〜8.0時間の在炉時間において、954〜1046℃(1750°F〜1915°F)にて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項18】
フィード材料を真空誘導溶解し、ニッケル系合金のインゴットを形成することと、
前記ニッケル系合金のインゴットを再溶解し、精錬ニッケル系合金のインゴットを形成することであって、前記再溶解することが真空アーク再溶解およびエレクトロスラグ再溶解からなる群から選択される少なくとも1つの再溶解操作を含むことと、
前記精錬ニッケル系合金のインゴットをプレス鍛造し、前記ニッケル系合金の加工物を形成することと、
をさらに含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第2の加工ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間、少なくとも982℃(1800°F)であるが、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度以下の温度にて加熱することと、
前記加工物を水で焼き入れすることと、
をさらに含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項20】
前記第2の加工ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間、704〜760℃(1300°F〜1400°F)の温度にて時効させることと、
前記加工物を周囲温度に空気冷却させることと、
をさらに含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項21】
ニッケル系合金生成物であって、
前記ニッケル系合金が、0.05重量%までの炭素、27.0重量%〜31.0重量%のクロム、0.5重量%までの銅、7.0重量%〜11.0重量%の鉄、0.5重量%までのマンガン、0.015重量%までの硫黄、0.5重量%までのケイ素、少なくとも58重量%のニッケル、および付随の不純物質からなり、
前記生成物が、均一な粒径分布である、ASTM No.3.0〜9.0の粒径の等軸粒、金属顕微鏡で観察可能な結晶粒界に均一に分布する粒間M23C6カーバイド析出物、および実質的に金属顕微鏡で観察できない粒間M23C6カーバイド析出物を含む、上記のニッケル系合金生成物。
【請求項22】
前記生成物が、ロッド、丸形バー、および矩形バーからなる群から選択される長形生成物を含む、請求項21に記載の生成物。
【請求項23】
ニッケル系合金の加工物を、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度より高い温度に加熱することを含む第1の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を、20%〜70%の面積の縮小まで加工することを含む第1の加工ステップであって、前記ニッケル系合金の加工物が、前記第1の加工ステップが開始されるときに、M23C6カーバイドソルバス温度より高い温度にある第1の加工ステップと、
前記加工されたニッケル系合金の加工物を、927℃(1700°F)より高く、かつ前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度未満の温度に加熱することを含む第2の加熱ステップであって、前記加工された状態のニッケル系合金の加工物を高温で維持し、前記第1の加工ステップの終了から前記第2の加熱ステップの開始まで、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度より167℃(300°F)低い温度未満の温度に冷却させないようにする第2の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を、20%〜70%の第2の面積の縮小まで加工することを含む第2の加工ステップであって、前記第2の加工ステップが開始されるときに、前記ニッケル系合金の加工物を927℃(1700°F)より高く、かつ前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度未満の温度にある第2の加工ステップと、
を含み、
前記ニッケル系合金の加工物が、0.05重量%までの炭素、27.0重量%〜31.0重量%のクロム、0.5重量%までの銅、7.0重量%〜11.0重量%の鉄、0.5重量%までのマンガン、0.015重量%までの硫黄、0.5重量%までのケイ素、少なくとも58重量%のニッケル、および付随の不純物質からなる、
プロセス。
【請求項24】
前記ニッケル系合金の加工物が、0.05重量%までの炭素、28.0重量%〜30.0重量%のクロム、0.25重量%までの銅、8.0重量%〜10.0重量%の鉄、0.25重量%までのマンガン、0.010重量%までの硫黄、0.25重量%までのケイ素、少なくとも58重量%のニッケル、および付随の不純物質からなる、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記第1の加工ステップおよび前記第2の加工ステップが独立して、平圧延、リング圧延、圧延成形、プレス鍛造、押出し成形、および回転鍛造からなる群より選択される少なくとも1つの操作を含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項26】
前記第1の加工ステップおよび前記第2の加工ステップが回転鍛造を含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項27】
前記第1の加熱ステップが、少なくとも3.0時間、1157〜1163℃(2115°F〜2125°F)にて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項28】
第2の加熱ステップが、2.0時間より長い在炉時間において、927〜1046℃(1700°F〜1915°F)にて稼動する炉内で前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項29】
前記第2の加熱ステップが、3.0時間〜10.0時間の在炉時間において、927〜1046℃(1700°F〜1915°F)にて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項30】
前記第2の加熱ステップが、4.0時間〜8.0時間の在炉時間において、927〜1046℃(1700°F〜1915°F)にて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項31】
フィード材料を真空誘導溶解し、ニッケル系合金のインゴットを形成することと、
前記ニッケル系合金のインゴットを再溶解し、精錬ニッケル系合金のインゴットを形成することであって、前記再溶解することが真空アーク再溶解およびエレクトロスラグ再溶解からなる群から選択される少なくとも1つの再溶解操作を含むことと、
前記精錬ニッケル系合金のインゴットをプレス鍛造し、前記ニッケル系合金の加工物を形成することと、
をさらに含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項32】
前記第2の加工ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間、少なくとも982℃(1800°F)であるが、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度以下の温度にて加熱することと、
前記加工物を水で焼き入れすることと、
をさらに含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項33】
前記第2の加工ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間、704〜760℃(1300°F〜1400°F)の温度にて時効させることと、
前記加工物を周囲温度に空気冷却させることと、
をさらに含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項34】
ニッケル系合金の加工物を、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度より高い温度に加熱することを含む第1の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を、20%〜70%の面積の縮小まで加工することを含む第1の加工ステップであって、前記ニッケル系合金の加工物が、前記第1の加工ステップが開始されるときに、M23C6カーバイドソルバス温度より高い温度にある第1の加工ステップと、
前記加工されたニッケル系合金の加工物を、927〜1046℃(1700°F〜1915°F)の温度に加熱することを含む第2の加熱ステップであって、前記加工された状態のニッケル系合金の加工物を高温で維持し、前記第1の加工ステップの終了から前記第2の加熱ステップの開始まで、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度より167℃(300°F)低い温度未満の温度に冷却させないようにする第2の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を、20%〜70%の第2の面積の縮小まで加工することを含む第2の加工ステップであって、前記第2の加工ステップが開始されるときに、前記ニッケル系合金の加工物を927℃(1700°F)より高く、かつ前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度未満の温度にある第2の加工ステップと、
を含むプロセスであって、
前記ニッケル系合金の加工物が、0.05重量%までの炭素、27.0重量%〜31.0重量%のクロム、0.5重量%までの銅、7.0重量%〜11.0重量%の鉄、0.5重量%までのマンガン、0.015重量%までの硫黄、0.5重量%までのケイ素、少なくとも58重量%のニッケル、および付随の不純物質からなる、プロセス。
【請求項35】
前記ニッケル系合金の加工物が、0.05重量%までの炭素、28.0重量%〜30.0重量%のクロム、0.25重量%までの銅、8.0重量%〜10.0重量%の鉄、0.25重量%までのマンガン、0.010重量%までの硫黄、0.25重量%までのケイ素、少なくとも58重量%のニッケル、および付随の不純物質からなる、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記第1の加工ステップおよび前記第2の加工ステップが独立して、平圧延、リング圧延、圧延成形、プレス鍛造、押出し成形、および回転鍛造からなる群より選択される少なくとも1つの操作を含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項37】
前記第1の加熱ステップが、少なくとも3.0時間、1157〜1163℃(2115°F〜2125°F)にて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項38】
第2の加熱ステップが、2.0時間より長い在炉時間において、927〜1046℃(1700°F〜1915°F)にて稼動する炉内で前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項39】
前記第2の加熱ステップが、3.0時間〜10.0時間の在炉時間において、927〜1046℃(1700°F〜1915°F)にて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項40】
前記第2の加熱ステップが、4.0時間〜8.0時間の在炉時間において、927〜1046℃(1700°F〜1915°F)にて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項41】
フィード材料を真空誘導溶解し、ニッケル系合金のインゴットを形成することと、
前記ニッケル系合金のインゴットを再溶解し、精錬ニッケル系合金のインゴットを形成することであって、前記再溶解することが真空アーク再溶解およびエレクトロスラグ再溶解からなる群から選択される少なくとも1つの再溶解操作を含むことと、
前記精錬ニッケル系合金のインゴットをプレス鍛造し、前記ニッケル系合金の加工物を形成することと、
をさらに含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項42】
前記2つの加熱ステップおよび前記2つの鍛造ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間、704〜760℃(1300°F〜1400°F)の温度にて時効させることと、
前記加工物を周囲温度に空気冷却させることと、
をさらに含む、請求項34に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ニッケル系合金の熱機械プロセッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル系合金は、多くの有利な材料特性を有することから、種々の用途において優れた技術合金となる。例えば、クロムおよび鉄添加物を含むニッケル系合金は、多くの水性媒体および高温雰囲気下において、腐食に対して優れた耐性を有する。ニッケル系合金はまた、広範囲の高温にわたり、冶金安定性および高強度を維持し、高温への長期間の曝露の間、脆化相を形成しない。良好なクリープ、破断強度、冶金安定性、および高温時の耐腐食性ならびに、長時間にわたる作用期間の組み合わせにより、ニッケル系合金は厳しい環境および激しい操作条件下を含む用途において機能することができる。例えば、ニッケル系合金は、鉱酸生成およびプロセッシング装置、石炭ガス化ユニット、石油化学プロセッシング装置、焼却炉、蒸気発生チューブ、バッフル、チューブシート、および他の金属製品、ならびに原子力発電生成システムの構造要素を含む工学用途における利用を見出すことができる。
【発明の概要】
【0003】
非限定的実施形態において、ニッケル系合金の熱機械処理プロセスは、少なくとも2つの加熱ステップおよび少なくとも2つの加工ステップを含む。ニッケル系合金の加工物を、第1の加熱ステップにおいて、ニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度より高い温度に加熱する。加熱されたニッケル系合金の加工物を、第1の加工ステップにおいて、20%〜70%の面積の縮小まで加工し、加工されたニッケル系合金の加工物を提供する。ニッケル系合金の加工物は、第1の加工ステップが開始されるときに、M
23C
6カーバイドソルバス温度より高い温度にある。加工されたニッケル系合金の加工物を、第2の加熱ステップにおいて、1700°F(926℃)より高く、かつニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度未満の温度に加熱する。加工されたニッケル系合金の加工物を高温に維持し、第1の加工ステップの終了から第2の加熱ステップの開始まで、周囲温度に冷却させないようにする。加熱されたニッケル系合金の加工物を、第2の加工ステップにおいて、20%〜70%の面積の縮小まで加工する。ニッケル系合金の加工物は、第2の加工ステップが開始されるときに、1700°F(926℃)より高く、かつニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度未満の温度にある。
【0004】
別の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の熱機械処理プロセスは、少なくとも2つの加熱ステップおよび少なくとも2つの鍛造ステップを含む。ニッケル系合金の加工物を、第1の加熱ステップにおいて、2000°F〜2125°F(1093℃〜1163℃)の範囲の温度に加熱する。加熱されたニッケル系合金の加工物を、第1の鍛造ステップにおいて、30%〜70%の面積の縮小まで回転鍛造し、鍛造されたニッケル系合金の加工物を提供する。加熱されたニッケル系合金の加工物は、第1の鍛造ステップが開始されるときに、2000°F〜2125°F(1093℃〜1163℃)の範囲の温度にある。鍛造されたニッケル系合金の加工物を、第2の加熱ステップにおいて、1750°F〜1925°F(954℃〜1052℃)の範囲の温度に加熱する。鍛造されたニッケル系合金の加工物を高温に維持し、第1の鍛造ステップの終了から第2の加熱ステップの開始まで、周囲温度に冷却させないようにする。加熱されたニッケル系合金の加工物を、第2の鍛造ステップにおいて、20%〜70%の面積の縮小まで回転鍛造する。加熱されたニッケル合金のインゴットは、第2の回転鍛造ステップが開始されるときに、1750°F〜1925°F(954℃〜1052℃)の範囲の温度にある。
【0005】
本明細書において開示され、記載される本発明は、この発明の概要に要約される実施形態に限定されないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に開示され、記載される非限定的および非包括的実施形態の種々の特性および特徴は、以下の添付の図面を参照してさらに理解され得る。
【0007】
【
図2】
図2Aは、断面概略図であり、
図2Bは、異常な結晶粒成長の環状領域を有する熱鍛造および熱処理された長形生成物の斜視概略図である。
【
図3A】本明細書に記載の種々の非限定的実施形態における、熱機械プロセッシングの種々の効果を示す合金690の長形生成物の各領域の断面のマクロ構造の金属顕微鏡写真である。
【
図3B】本明細書に記載の種々の非限定的実施形態における、熱機械プロセッシングの種々の効果を示す合金690の長形生成物の各領域の断面のマクロ構造の金属顕微鏡写真である。
【
図3C】本明細書に記載の種々の非限定的実施形態における、熱機械プロセッシングの種々の効果を示す合金690の長形生成物の各領域の断面のマクロ構造の金属顕微鏡写真である。
【
図3D】本明細書に記載の種々の非限定的実施形態における、熱機械プロセッシングの種々の効果を示す合金690の長形生成物の各領域の断面のマクロ構造の金属顕微鏡写真である。
【0008】
読者は、本開示に従う種々の非限定的および非包括的実施形態の以下の詳細な説明を考慮することによって、上述の詳細ならびにその他を理解するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示のプロセスおよび生成物の構造、機能、操作、製造、および使用を全般的に理解するため、種々の実施形態を本明細書に記載し、図示する。本明細書に記載および図示された種々の実施形態は、非限定的および非包括的であることが理解される。したがって、本発明は、本明細書に開示される種々の非限定的および非包括的実施形態の記載により限定されない。むしろ、本発明は、特許請求の範囲によってのみ定義される。種々の実施形態と合わせて図示かつ/または記載される特性および特徴を、他の実施形態の特性および特徴と組み合わせることができる。かかる修正および変更は、本明細書の範囲内に含まれることが意図される。したがって、本明細書に明らかに、もしくは本質的に記載され、またはそうでなければ、本明細書により明らかに、もしくは本質的に支持される任意の特性または特徴を記載するよう、特許請求の範囲を補正することができる。さらに、本出願者は、従来技術に存在し得る、肯定的に権利放棄した特性または特徴に対して、特許請求の範囲を補正する権利を有する。それゆえ、任意のかかる補正は、合衆国法典第35編の第112条、第1章、および合衆国法典第35編の第132条(a)の要件に準拠する。本明細書に開示および記載される種々の実施形態は、本明細書に種々に記載される特性および特徴を含み、構成され、または本質的に構成されることができる。
【0010】
本明細書に特定される任意の特許、刊行物、または他の開示資料は、別途指定されない限り、その全体を本明細書に参照により組み込まれるが、組み込まれた資料が本明細書に明記される既存の定義、記述、または他の開示資料と矛盾しない範囲にのみ組み込まれる。したがって、および必要な範囲に対して、本明細書に記載の明らかな開示は、本明細書に参照により組み込まれる任意の矛盾する資料にとって代わる。本明細書に参照により組み込まれるとされるが、本明細書に記載の既存の定義、記述、または他の開示資料と矛盾する任意の資料またはその一部は、組み込まれる資料と既存の開示資料との間に生じる矛盾がない範囲に組み込まれるに過ぎない。本出願者は、本明細書を、本明細書に参照により組み込まれる任意の主題またはその一部を記載するよう補正する権利を有する。
【0011】
本明細書を通して「種々の非限定的実施形態」などの言及は、具体的な特性または特徴が実施形態に含まれ得ることを意味する。したがって、本明細書における「種々の非限定的実施形態における」などの句の使用は、必ずしも通常の実施形態を指すとは限らず、異なる実施形態を指し得る。さらに、具体的な特性または特徴を、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。したがって、種々の実施形態と合わせて、図示または記載される具体的な特性または特徴を、限定されることなく、1つ以上の他の実施形態の特性または特徴と、全体に、または部分的に組み合わせることができる。かかる修正および変更は、本明細書の範囲に含まれることが意図される。
【0012】
本明細書において、別途指定される場合を除いて、全ての数値パラメータは、全ての例において、「約」という用語によって、前置きされ、修飾されているものと理解すべきであり、この場合、数値パラメータは、パラメータの数値を決定するために使用される基本的な測定技術の本質的な可変特徴を有する。少なくとも、かつ特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する企図としてではなく、本明細書に記載される各数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮して、かつ通常の丸める技術を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0013】
同様に、本明細書に列挙する任意の数値範囲は、列挙された範囲に包含される同じ数値精度の全ての部分範囲を含むよう意図される。例えば、「1.0〜10.0」の範囲は、列挙された最小値の1.0と列挙された最大値の10.0との間(および境界値を含む)の全ての部分範囲を含む、すなわち、1.0に等しいか、またはそれを超える最小値と、10.0に等しいか、またはそれより小さい最大値、例えば、2.4〜7.6とを有するよう意図される。本明細書に列挙されるあらゆる最大数値限定は、その中に包含されるそれよりも低い全ての数値限定を含むよう意図され、また本明細書に列挙されるあらゆる最小数値限定は、その中に包含されるそれよりも高い全ての数値限定を含むよう意図される。したがって、本出願者は、特許請求の範囲を含む本明細書を、本明細書に明記される範囲内に包含される任意の部分範囲を明記するよう補正する権利を有する。全てのかかる範囲は、任意のかかる部分範囲を明記する補正が、合衆国法典第35編の第112条、第1章、および合衆国法典第35編の第132条(a)の要件に準拠するであろうように、本明細書に本質的に記載されるよう意図される。
【0014】
本明細書で使用するとき、文法的冠詞「1つの(one)」、「a」、「an」、および「その(the)」は、別途指定されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むよう意図される。したがって、冠詞は、本明細書において、1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)のその冠詞の文法的目的語を指すために使用される。例として、「構成要素」は、1つ以上の構成要素を意味し、したがって、場合により複数の構成要素が企図され、また記載の実施形態の実施に採用または使用されてもよい。さらに、使用する文脈が別途要求しない限り、単数名詞の使用は複数を含み、複数名詞の使用は単数を含む。
【0015】
本明細書に開示および記載される種々の実施形態は、部分的に、ニッケル系合金の熱機械プロセッシングに関する。本明細書に開示かつ記載される熱機械プロセッシングを使用して、ニッケル系合金の生成物、例えば、バー、ロッド、スラブ、リング、ストリップ、プレートなどを生成することができる。本明細書に記載のプロセスにより生成される生成物は、規定の粒径および規定の析出カーバイド分布を特徴とし得る。
【0016】
粒界型応力腐食割れ(IGSCC)は、引張り強度下および腐食環境にさらされた金属材料の結晶粒界に沿って、割れが形成される腐食メカニズムである。IGSCCを促進する引張り強度は、作用中の金属構成要素に外部から加わる応力の形態および/または金属材料中に内在の応力の形態であり得る。IGSCCには多くの場合、厳しい腐食環境を含む用途、例えば、化学プロセッシング装置および原子力発電の加圧水型原子炉(PWR)の構造要素において直面する。ニッケル系合金、例えば、合金600(UNS N06600)および合金690(UNS N06690)は、このような合金の一般的な耐腐食性により、このような用途に使用することができる。しかし、ニッケル系合金は、高温および高圧作用条件下、例えば、水中または蒸気環境下では、それにもかかわらずIGSCCを示し得る。
【0017】
ある熱機械処理プロセスを使用して、厳しい腐食環境におけるニッケル系合金のIGSCCに対する 感受性を減少させることができる。熱加工および熱処理の組み合わせを使用し、IGSCC耐性を増大させる規定の粒径およびカーバイド分布を有するニッケル系合金の生成物を生成することができる。例えば、相対的に高濃度のクロムおよび鉄を含むニッケル系合金、例えば、合金600および合金690などを、ある公知の方法により熱機械プロセッシングし、析出M
23C
6カーバイドの粒間分布を有する規定の粒径を有し、粒中にクロム欠乏がない生成物を生成することができる。ニッケル系合金内の粒間のM
23C
6カーバイドの粒間析出は、厳しい腐食環境の合金の脆弱化を減少させ、これがIGSCCに対する耐性をかなり増大させる。
【0018】
種々の非限定的実施形態において、本明細書に記載のプロセスを使用し、ニッケル系合金、例えば、合金600および合金690などを熱機械処理することができる。例えば、種々の非限定的実施形態において、本明細書に記載の熱機械プロセスの実施形態に従い処理された合金690の加工物は、(合金全体の重量/質量による割合で)少なくとも58.0%のニッケル、27.0%〜31.0%のクロム、7.0%〜11.0%の鉄、0.5%までのマンガン、0.05%までの炭素、0.5%までの銅、0.5%までのケイ素、0.015%までの硫黄、および付随の不純物質を含む化学組成を有し得る。種々の非限定的実施形態において、従い処理された合金690の加工物は、上記の元素範囲内に包含される任意の元素の部分範囲を含む化学組成を有し得る。例えば、本明細書に記載の熱機械プロセスの実施形態に従い処理された合金690の加工物は、(合金全体の重量/質量による割合で)少なくとも59.0%のニッケル、28.0%〜30.0%のクロム、8.0%〜10.0%の鉄、0.25%までのマンガン、0.010%〜0.040%の炭素、0.25%までの銅、0.25%までのケイ素、0.010%までの硫黄、および付随の不純物質を含み得る。種々の非限定的実施形態において、特定の最大量「まで」である、本明細書に記載の全ての合金元素構成物質はまた、「ゼロより大きい量〜」特定の最大量を含む。
【0019】
種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金インゴットを、真空誘導溶解(VIM)フィード材料により生成し、所定の組成仕様に一致する化学組成を含む合金を生成することができる。例えば、フィード材料を使用して、上記の合金690の仕様に一致する化学組成を含む合金を生成することができる。例えば、VIMにより生成された溶融合金を、原インゴットに鋳造することができる。種々の非限定的実施形態において、原インゴットを、1回以上の真空アーク再溶解(VAR)およびエレクトロスラグ再溶解(ESR)操作において入力電極として使用し、精錬インゴットを生成することができる。種々の非限定的実施形態において、当技術分野において公知の他の最初の溶解および/または再溶解操作、例えば、アルゴン−酸素脱炭法(AOD)および/または真空脱気を単独、またはVARおよび/またはESRと組み合わせて使用し、ニッケル系合金インゴットを生成することができる。
【0020】
種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金インゴットを、標準的な熱処理方法を使用して均質化し、かつ/または鍛造し、ニッケル系合金の加工物を生成することができる。例えば、(鋳放し、精錬、または均質化状態の)ニッケル系合金インゴットをプレス鍛造し、続く熱機械プロセッシング操作において入力として使用される加工物を生成することができる。種々の他の非限定的実施形態において、(鋳放し、精錬、または均質化状態の)ニッケル系合金インゴットを、続く熱機械プロセッシング操作に適した任意の形状および寸法を有する予備成形体の加工物に鍛造変形することができる。
【0021】
種々の非限定的実施形態において、熱機械プロセッシング操作は、少なくとも2つの加熱ステップおよび少なくとも2つの加工ステップを含み得る。第1の加熱ステップは、ニッケル系合金の加工物をカーバイドスーパーソルバス温度に加熱することを含み得る。第1の加工ステップは、ニッケル系合金の加工物を加工(例えば、鍛造または圧延)することを含むことができ、この場合、ニッケル系合金の加工物は、加工が開始されるとき、カーバイドスーパーソルバス温度にある。第2の加熱ステップは、ニッケル系合金の加工物をカーバイドソルバス下温度に加熱することを含み得る。第2の加工ステップは、ニッケル系合金の加工物を加工(例えば、鍛造または圧延)することを含むことができ、この場合、ニッケル系合金の加工物は、加工が開始されるときに、カーバイドソルバス下温度にある。
【0022】
特許請求の範囲を含む、本明細書において使用される用語「第1の」、「第2の」、「前」、「後」などは、ステップまたは操作と合わせて使用されるときに、前の、間にある、および/または続くステップまたは操作の可能性を除外しない。例えば、種々の非限定的実施形態において、「第1の」および「第2の」加熱ステップおよび「第1の」および「第2の」加工ステップを含む熱機械プロセッシング法は、特定の「第1の」および「第2の」加熱ステップおよび「第1の」および「第2の」加工ステップの前、間、および/または後にさらなる加熱、加工、および/または他のステップをさらに含み得る。
【0023】
本明細書において使用される用語、「カーバイドスーパーソルバス温度」は、少なくとも、合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度と同じぐらい高い温度を指す。本明細書において使用される用語、「カーバイドソルバス下温度」は、合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度未満の温度を指す。合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度は、合金に存在する炭素の本質的に全てが固溶体の状態であり、合金が金属顕微鏡で観察可能なM
23C
6カーバイド相または析出物を含まない最も低い温度である。合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度は、合金の化学組成、特に炭素含量に依存する。例えば、合金690のM
23C
6カーバイドソルバス温度は、0.02重量%〜0.05重量%の範囲の炭素濃度において、つまり、Sente Software,Surrey,UKより入手可能なJMatProソフトウェアを使用して算出された、29.0重量%のクロム、9.0重量%の鉄、0.2重量%の銅、0.2重量%のケイ素、0.2重量%のマンガン、0.01重量%の硫黄、0.25のアルミニウム、0.25のチタン、0.008の窒素、および60.842重量%〜60.872重量%のニッケルの公称組成において、およそ1915°F〜2115°F(1046℃〜1157℃)の範囲であり得る。カーバイドソルバス温度は、経験的に決定するか、または状態図計算および材料特性シミュレーションソフトウェア、例えば、CompuTherm LLC,Madison,Wisconsin,USAより入手可能なJMatProソフトウェアまたはPandatソフトウェアを使用して概算することができる。
【0024】
本明細書において使用される、特定の温度または温度範囲「に」加工物を加熱することは、加工物の内部の材料部分を含む加工物全体の温度を特定の温度に、または特定の温度範囲にするために十分な時間にて加工物を加熱することを示す。同様に、特定の温度または温度範囲「に」加熱される加工物の状態は、加工物の内部の材料部分を含む加工物全体の温度を特定の温度に、または特定の温度範囲にするために十分な時間にて加工物が加熱されることを示す。加工物をある温度または温度範囲「に」加熱するために必要な時間量は、例えば、加工物の形状および寸法、ならびに加工物材料の熱伝導率に依存するだろう。
【0025】
本明細書において使用される、特定の温度または温度範囲「にて」特定の時間または時間範囲で加工物を加熱すること(すなわち、温度時間)は、(例えば、熱電対、パイロメーターなどを使用して測定された)加工物の表面温度が特定の温度または温度範囲の±25°F(±14℃)に達する時点から測定される特定の時間または時間範囲において加工物を加熱することを示す。本明細書において使用される、特定の温度時間は、加工物の表面温度を特定の温度または温度範囲の±25°F(±14℃)内にする予加熱時間を含まない。本明細書において使用される用語、「在炉時間」は、加工物を温度規制された環境、例えば、炉内で維持する時間量を示し、温度規制された環境を特定の温度または温度範囲にする必要がある時間を含まない。
【0026】
本明細書において使用される、特定の温度または温度範囲「にて」加工物に鍛造、加工、または他の機械プロセッシングを行うことは、加工物の内部の材料部分を含む、加工物全体の温度が鍛造、加工、または他の機械プロセッシングが開始されるときに、特定の温度または温度範囲にあることを示す。特定の温度または温度範囲「にて」鍛造、加工、または同様の操作中の加工物の表面冷却および/または断熱加熱が加工物の各部分の温度を、操作中に特定された温度から変化させ得ることが考えられる。
【0027】
種々の非限定的実施形態において、熱機械処理プロセスは、ニッケル系合金の加工物をニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度より高い温度に加熱することを含む第1の加熱ステップを含む。加熱されたニッケル系合金の加工物を、第1の加工ステップにおいて20%〜70%の面積の縮小まで加工し、加工されたニッケル系合金の加工物を提供することができる。加熱されたニッケル系合金の加工物は、第1の加工ステップの開始時に、M
23C
6カーバイドソルバス温度より高い温度であってよい。加工されたニッケル系合金の加工物を、第2の加熱ステップにおいて、1700°F(926℃)より高く、かつニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度未満の温度に加熱することができる。加工されたニッケル系合金の加工物を、高温で維持することができ、第1の加工ステップの終了から第2の加熱ステップの開始まで、周囲温度に冷却させないようにすることができる。ニッケル系合金の加工物を、第2の加工ステップにおいて、第2の20%〜70%の面積の縮小まで加工することができる。ニッケル系合金の加工物は、第2の加工ステップの開始時に、1700°F(926℃)より高く、かつニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度未満の温度であってよい。ニッケル系合金の加工物を、第2の加工ステップの終了後に周囲温度に空気冷却させることができる。
【0028】
種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物をカーバイドスーパーソルバス温度に加熱する第1の加熱ステップは、少なくとも6.0時間(360分)の温度時間において、2000°F〜2125°F(1093℃〜1163℃)で稼動する炉内でニッケル系合金の加工物を加熱することを含み得る。ニッケル系合金の加工物を、2000°F〜2125°F(1093℃〜1163℃)またはその中に包含される任意の部分範囲、例えば、2000°F〜2100°F(1093℃〜1149℃)、2000°F〜2075°F(1093℃〜1135℃)、2000°F〜2050°F(1093℃〜1121℃)、2025°F〜2075°F(1107℃〜1135℃)、2050°F〜2125°F(1121℃〜1163℃)、2050°F〜2100°F(1121℃〜1149℃)などにて稼動する炉内で加熱することによりカーバイドスーパーソルバス温度に加熱することができる。
【0029】
種々の非限定的実施形態において、加工されたニッケル系合金の加工物をカーバイドソルバス下温度に加熱する第2の加熱ステップは、2.0時間(120分)より長い在炉時間において、1700°F(926℃)より高く、かつニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度未満の温度にて稼動する炉内でニッケル系合金の加工物を加熱することを含み得る。ニッケル系合金の加工物を、1700°F〜1950°F(926℃〜1066℃)またはその中に包含される任意の部分範囲、例えば、1750°F〜1925°F(954℃〜1052℃)、1750°F〜1825°F(954℃〜996℃)、1825°F〜1925°F(996℃〜1052℃)、1775°F〜1900°F(968℃〜1038℃)、1800°F〜1875°F(982℃〜1024℃)、1800°F〜1850°F(982℃〜1010℃)などにて稼動する炉内で加熱することによりカーバイドソルバス下温度に加熱することができる。種々の実施形態において、第2の加熱ステップは、2.0時間(120分)より長い〜10.0時間(600分)の在炉時間において、カーバイドソルバス下温度またはその中に包含される任意の部分範囲、例えば、2.5〜8.0時間(150〜480分)、3.0〜10.0時間(180〜600分)、3.0〜8.0時間(180〜480分)、4.0〜8.0時間(240〜480分)、5.0〜8.0時間(300〜480分)などにて稼動する炉内でニッケル系合金の加工物を加熱することを含み得る。
【0030】
種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を、高温に維持することができ、第1の加工ステップの終了から第2の加熱ステップの開始まで、室温に冷却させないようにすることができる。例えば、ニッケル系合金の加工物を、合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度より300°F(167℃)
低い温度以上の温度にて維持することができる。種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を、合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度より200°F(111℃)
低い、150°F(83℃)
低い、または100°F(56℃)
低い温度以上の温度にて維持することができる。種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を、第1の加工ステップの終了から第2の加熱ステップの開始まで、少なくとも1700°F(926℃)の温度にて維持することができる。種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を、第1の加工ステップの終了から第2の加熱ステップの開始まで、少なくとも1750°F(954℃)、1800°F(982℃)、1850°F(1010℃)、1900°F(1038℃)、または1950°F(1066℃)の温度にて維持することができる。
【0031】
種々の非限定的実施形態において、第1の加工ステップ、第2の加工ステップ、および任意の続く加工ステップは、第1の加工ステップの前に、加工物の断面積に対して加工物の断面積を、合わせて40%〜95%縮小させることができる。第1の加工ステップ、第2の加工ステップ、および任意の続く加工ステップは、独立して、20%〜70%、またはその中に包含される任意の部分範囲、例えば、30%〜70%、40%〜60%、45%〜55%などの面積の縮小を生じ得る。第1の加工ステップにより生じる面積の縮小を、第1の加工ステップの前の加工物の初期の断面積に基づき算出する。第2の加工ステップにより生じる面積の縮小を、第1の加工ステップにより生じる加工状態の断面積に基づき算出する。任意の続く加工ステップの面積の縮小を、これまでの加工ステップにより生じる加工状態の断面積に基づき算出することができる。
【0032】
種々の非限定的実施形態において、第1の加工ステップ、第2の加工ステップ、および任意の続く加工ステップは、独立して、具体的な加工ステップを行うために使用される装置による1回以上のパスを含み得る。例えば、第1の加工ステップは、加工物の断面積を20%〜70%縮小させるために回転鍛造による1回以上のパスを含むことができ、第2の加工ステップは、第1の加工ステップにより生じる加工物の加工状態の断面積に対して加工物の断面積を20%〜70%縮小させるために回転鍛造による1回以上のパスを含み得る。第1の加工ステップおよび第2の加工ステップにより生じる面積の縮小の合計は、第1の加工ステップの前の加工物の面積に対して40%〜95%であってよい。回転鍛造によるそれぞれ個々のパスにより生じする面積の縮小は、例えば、これまでのパスにより生じた中間体の断面積に対して5%〜25%であってよい。
【0033】
種々の非限定的実施形態において、加熱されたニッケル系合金の加工物は、第1の加工ステップの開始時に、M
23C
6カーバイドソルバス温度より高い温度であってよく、加熱されたニッケル系合金の加工物は、第2の加工ステップの開始時に、1700°F(926℃)より高く、かつニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度未満の温度であってよい。種々の非限定的実施形態において、加熱されたニッケル系合金の加工物は、第1の加工ステップ全体にわたり、M
23C
6カーバイドソルバス温度より高い温度であってよい。種々の非限定的実施形態において、加熱されたニッケル系合金の加工物は、第2の加工ステップ全体にわたり、1700°F(926℃)より高く、かつニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度未満の温度であってよい。例えば、加工操作を行うために使用されるダイ、アンビル、および/またはロールを加熱し、加工ダイ、アンビル、および/またはロールと接触する加工物の表面からの伝導による熱消失を最小限にするか、または排除することができる。さらに、各加工ステップ中の加工物材料を変形させる断熱加熱は、少なくとも部分的に、加工物からの熱の消失を補うことができる。
【0034】
種々の非限定的実施形態において、第1の加工ステップおよび第2の加工ステップは、独立して、1回以上の鍛造または圧延操作、例えば、平圧延、リング圧延、圧延成形、プレス鍛造、押出し成形、回転鍛造などを含み得る。種々の実施形態において、第1の加工ステップおよび第2の加工ステップはそれぞれ、1回以上の回転鍛造のパスを含み得る。
【0035】
本明細書において使用される用語、「回転鍛造」は、2つ以上のアンビル/ダイを使用し、加工物の長軸に垂直に加工物に圧力を加えながら変形させ、それにより加工物の断面積を減少させ、かつ加工物の長さを増大させ、長形の生成物を生成する、例えば、チューブ、バー、およびロッドなどの長尺加工物の加工を指す。回転鍛造操作100を
図1Aおよび1Bに図示し、これらの図において、円筒形バー/ロッド型の加工物102を、アンビル/ダイ104により圧力を加えながら変形させ、それにより加工物の断面積を減少させ、加工物の長さを増大させる。回転鍛造は、長さに沿った一定または様々な断面積の固体または管状長形生成物を生成する。回転据込み、またはラジアル鍛造としても知られる回転鍛造は、加工物を、非回転の平アンビル/ダイと、軌道、らせん状、遊星状、または直線状の動きをとる円錐状の加工面を有する旋回(揺動)ダイとの間にプレスする揺動(すなわち、揺動ダイ)鍛造と混同されることはない。
【0036】
種々の非限定的実施形態において、熱機械処理プロセスは、合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度より高い温度に合金690の加工物を加熱することを含む第1の加熱ステップを含み得る。例えば、第1の加熱ステップは、2000°F〜2125°F(1093℃〜1163℃)の範囲の温度に合金690の加工物を加熱することを含み得る。種々の非限定的実施形態において、合金690の加工物は、0.05重量%までの炭素、27.0重量%〜31.0重量%のクロム、0.5重量%までの銅、7.0重量%〜11.0重量%の鉄、0.5重量%までのマンガン、0.015重量%までの硫黄、0.5重量%までのケイ素、少なくとも58重量%のニッケル、および付随の不純物質を含む化学組成を有し得る。
【0037】
加熱された合金690の加工物を、1回以上の回転鍛造のパスを含む第1の鍛造ステップにおいて、20%〜70%の面積の縮小まで回転鍛造させることができる。加熱された合金690の加工物は、第1の鍛造ステップの開始時に、M
23C
6カーバイドソルバス温度より高い温度、例えば、第1の鍛造ステップが開始されるときに、2000°F〜2125°F(1093℃〜1163℃)の範囲の温度であってよい。鍛造合金690の加工物を、第2の加熱ステップにおいて、1700°F(926℃)より高く、かつニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度未満の温度に加熱することができる。例えば、第2の加熱ステップは、鍛造された合金690の加工物を1750°F〜1925°F(954℃〜1052℃)の範囲の温度に加熱することを含み得る。鍛造された合金690の加工物は、第1の鍛造ステップの終了から第2の加熱ステップの開始まで、少なくとも1700°F(926℃)の温度にて維持することができる。
【0038】
加熱された合金690の加工物を、1回以上の回転鍛造のパスを含む第2の鍛造ステップにおいて、第2の20%〜70%の面積の縮小まで回転鍛造することができる。加熱された合金690の加工物は、第2の鍛造ステップの開始時に、1700°F(926℃)より高く、かつM
23C
6カーバイドソルバス温度未満の温度、例えば、第2の鍛造ステップが開始されるときに、1750°F〜1925°Fの範囲の温度であってよい。合金690の加工物を、第2の鍛造ステップの終了後に周囲温度に空気冷却させることができる。
【0039】
種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物、例えば、合金690の加工物などを、少なくとも2つの加熱ステップおよび少なくとも2つの加工ステップの後にさらに熱処理することができる。例えば、ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間の温度時間において、少なくとも1800°F(982℃)であるが、ニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度以下の温度にて焼鈍することができる。種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を、1800°F〜2000°F(982℃〜1093℃)またはこの中に包含される任意の部分範囲、例えば、1840°F〜1960°F(1004℃〜1071℃)、1850°F〜1950°F(1010℃〜1066℃)、1875°F〜1925°F(1024℃〜1052℃)などの温度にて焼鈍することができる。種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を、少なくとも4.0時間の温度時間において焼鈍することができる。種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を、焼鈍熱処理後に水で焼き入れすることができる。
【0040】
種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物、例えば、合金690の加工物を、少なくとも2つの加熱ステップおよび少なくとも2つの加工ステップの後に時効させることができる。例えば、ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間の温度時間において、1300°F〜1400°F(704℃〜760℃)の温度にて時効させることができる。種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を、1300°F〜1400°F(704℃〜760℃)またはその中に包含される任意の部分範囲、例えば、1325°F〜1375°F(718℃〜746℃)、1310°F〜1360°F(710℃〜738℃)などの温度にて時効させることができる。種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を、少なくとも4.0時間の温度時間において時効させることができる。種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を、時効熱処理後に空気冷却させることができる。
【0041】
種々の非限定的実施形態において、ニッケル系合金の加工物を焼鈍および時効させることができる。例えば、少なくとも2つの加熱ステップおよび少なくとも2つの加工ステップの後に、ニッケル系合金の加工物を周囲温度に空気冷却させ、次いで、少なくとも3.0時間の温度時間において、少なくとも1800°F(982℃)であるが、ニッケル系合金のM
23C
6カーバイドソルバス温度以下の温度にて焼鈍させることができる。ニッケル系合金の加工物を、焼鈍熱処理後に水で焼き入れし、次いで少なくとも3.0時間の温度時間において、1300°F〜1400°F(704℃〜760℃)の温度にて時効させることができる。
【0042】
本明細書に記載のプロセスを使用し、例えば、鍛造および/または圧延生成物を生成することができる。例えば、種々の非限定的実施形態において、少なくとも2つの加熱ステップおよび少なくとも2つの加工ステップは、予備成形体の加工物を長形生成物、例えば、丸形バーおよびロッド、矩形バーおよびロッド、六角形バーおよびロッド、鍛造矩形長形生成物、ならびに圧延矩形長形生成物を含む生成物に変換する。本明細書に開示のプロセスを使用し、例えば、それぞれの長さに沿った一定または様々な断面積の長形生成物を生成することができる。それぞれの長さに沿った様々な断面積を有する長形生成物を生成する実施形態において、第1の加工ステップおよび第2の加工ステップは、長形生成物の長さに沿った1つ以上の位置で、加工物の断面積を合わせて40%〜95%縮小させることができる。さらに、本明細書に開示のプロセスを使用して、例えば、回転鍛造チューブを生成することができる。
【0043】
種々の非限定的実施形態において、本明細書に記載のプロセスにより生成された生成物は、ASTM B166−08:Standard Specification for Nickel−Chromium−Iron Alloys(UNS N06600,N06601,N06603,N06690,N06693,N06025,N06045,and N06696) and Nickel−Chromium−Cobalt−Molybdenum Alloy(UNS N06617) Rod,Bar,and Wire(2008)、およびASME SB−166:Specification for Nickel−Chromium−Iron Alloys(UNS N06600,N06601,N06603,N06690,N06693,N06025,N06045,and N06696) and Nickel−Chromium−Cobalt−Molybdenum Alloy (UNS N06617) Rod,Bar,and Wire(2007)の要件を満たすことができ、これらは本明細書に参照により組み込まれる。
【0044】
種々の非限定的実施形態において、本明細書に記載のプロセスにより生成される生成物は、本明細書に参照により組み込まれる、ASTM E 112−10:Standard Test Methods for Determining Average Grain Size(2010)に従い決定されたASTM No.3.0〜9.0の粒径を有し得る。種々の非限定的実施形態において、本明細書に記載のプロセスにより生成される生成物は、ASTM No.3.0〜9.0またはその中に包含される任意の部分範囲、例えば、ASTM No.3.0〜8.0、3.5〜7.5、4.0〜7.0、4.5〜6.5、3.0〜7.0、3.0〜6.0などの粒径を有し得る。種々の非限定的実施形態において、本明細書に記載のプロセスにより生成される生成物は、結晶粒界に均一に分布する粒間M
23C
6カーバイド析出物を含み得る。種々の非限定的実施形態において、本明細書に記載のプロセスにより生成される生成物は、最小の、金属顕微鏡で観察可能な粒間M
23C
6カーバイド析出物を含み得る。種々の非限定的実施形態において、本明細書に記載のプロセスにより生成される生成物は、金属顕微鏡で観察可能な粒間M
23C
6カーバイド析出物を含まない。
【0045】
ミクロ構造のカーバイド分布は、金属顕微鏡、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用することにより決定され、本明細書に記載の種々の非限定的実施形態に従い、プロセッシングされたニッケル系合金の化学エッチング(例えば、臭素−メタノールエッチング溶液)された検体を評価することができる。例えば、種々の非限定的実施形態において、本明細書に記載のプロセスにより生成される生成物は、500倍の倍率のSEMを使用して評価するときに、全ての観察可能な結晶粒界に均一に分布する粒間M
23C
6カーバイド析出物を含むことができ、または最小の観察可能な粒間M
23C
6カーバイド析出物を含み、もしくは含まない。種々の非限定的実施形態において、本明細書に記載のプロセスにより生成される生成物は、均一な粒径分布である、ASTM No.3.0〜9.0の粒径の等軸粒、金属顕微鏡で観察可能な結晶粒界に均一に分布する粒間M
23C
6カーバイド析出物、および最小の、金属顕微鏡で観察可能な粒間M
23C
6カーバイド析出物を含む。
【0046】
本明細書に記載のプロセスは、顕微鏡スケールで均一でない粒径分布を生じる異常な結晶粒成長を減らし、または排除する。特定の限界内で粒径を規制するため、ニッケル系合金の加工物、例えば、合金690の加工物を、合金の再結晶温度およびカーバイドソルバス温度の両方より高い温度にて熱加工、すなわち、スーパーソルバス温度にて加工することができる。しかし、続く粒間M
23C
6カーバイド析出物の均一な分布を生成するための熱処理は多くの場合、加工物のマクロ構造の各部分に異常な、および均一でない結晶粒成長を生じる。例えば、ニッケル系合金、例えば、合金690の熱加工されたロッドおよび丸形バーは、生成物の断面を介して異常な結晶粒成長の環状領域を発達させる傾向にある。
図2Aおよび2Bは、長形生成物200、例えば、合金690などのニッケル系合金のロッドまたは丸形バーなどを概略的に図示する。長形生成物200は、生成物の断面を介して異常な結晶粒成長の環状領域205を含む。
【0047】
理論に束縛されることを望まないが、粒径を規制するためのスーパーソルバス温度での熱加工が、異常な結晶粒成長を生じる、加工物の固有の内部歪みを生じると考えられる。固有の内部歪みは、熱加工および熱加工後の冷却中の加工物の熱膨張差により生じると考えられる。加工物の表面材料は、加工ダイ/アンビルに接触、および続く冷却中であるときに、内部の材料、特に加工物の中央に向かう材料に比べ、かなり急速に冷却される。これにより、より冷却された表面および表面に近い材料と、より熱い内部の材料との間の急激な温度差が確立する。温度差は、熱加工された生成物の中央の高温から表面の低温に熱膨張差を生じ、これが材料の固有の内部歪みを生じると考えられる。粒間M
23C
6カーバイド析出物の均一な分布を生成するための、続く熱処理の間、内部歪みは、異常な結晶粒成長を促進し、これが冷却中の熱膨張差により生じる内部歪みの領域に局在すると考えられる。これは、生成物のマクロ構造において観察された異常な、および均一でない結晶粒成長の環状領域を生じると考えられる。
【0048】
異常な結晶粒成長のこれらの有害の領域は、ニッケル系合金の加工物、例えば、合金690の加工物を、合金のカーバイドソルバス温度より低い温度、すなわち、ソルバス下温度にて加工することにより緩和され得る。しかし、ソルバス下温度で加工した後、続く粒間M
23C
6カーバイド析出物の均一な分布を生成するための熱処理は多くの場合、加工物全体にわたる受け入れ難い結晶粒成長を生じる。粒径は、規制が難しく、熱処理は多くの場合、ASTM No.3.0より大きい(すなわち、ASTM No.が3.0未満)粒径を生成する。さらに、カーバイドの全てがソルバス下温度で加工中に溶解しない。結果として、続く熱処理の間に生成される粒間カーバイド分布は多くの場合、予備成形体の加工物の大きな粒の間に存在し、ソルバス下温度で加工する前、間、または後に溶解しなかった、結晶粒界の大きなストリンガーを含む。
【0049】
本明細書に記載のプロセスは、肉眼的スケールの均一でない粒径分布を生じる異常な結晶粒成長を減らし、または排除し、かつ均一な粒径分布である、ASTM No.3.0〜9.0の粒径の等軸粒、結晶粒界に均一に分布する粒間M
23C
6カーバイド析出物、および最小の粒間M
23C
6カーバイド析出物を有する生成物を生成する。少なくとも2つの加熱ステップの1つ目において、ニッケル系合金の加工物を、予備成形体の加工物に存在するM
23C
6カーバイドの全てを溶解するカーバイドスーパーソルバス温度に加熱する。少なくとも2つの加工ステップの1つ目において、ニッケル系合金の加工物を、例えば、20%〜70%の面積の縮小まで、カーバイドスーパーソルバス温度にて加工する。カーバイドスーパーソルバス温度での加工は、カーバイドの析出を防止し、ASTM No.3.0〜9.0の範囲の粒径の均一な粒径分布を生じる。
【0050】
少なくとも2つの加熱ステップの2つ目において、ニッケル系合金の加工物を、カーバイドソルバス下温度に加熱する。加工物は、ソルバス下温度で安定し、第1の加工ステップから第2の加熱ステップまで、周囲温度に冷却させないようにする。これにより、加工物材料がカーバイドの析出の反応速度が最速となる点である、材料の恒温変態(TTT)曲線の臨界の「鼻」領域の間に冷却されないため、任意のカーバイドの析出を最小限にする。カーバイドの核生成および析出は、例えば、カーバイドソルバス温度のおよそ300°F(167℃)内のカーバイドソルバス下温度にて非常に遅くなる。これは、未規制のカーバイドの析出を防止する。少なくとも2つの加工ステップの2つ目において、ニッケル系合金の加工物を、例えば、20%〜70%の面積の縮小まで、カーバイドソルバス下温度にて加工する。カーバイドソルバス下温度での加工は、続く熱処理中の異常な結晶粒成長を生じると考えられる、材料内の熱膨張差および固有の内部歪みを減少させる。
【0051】
以下の非限定的および非包括的実施例は、本明細書に記載の実施形態の範囲を制限することなく、種々の非限定的および非包括的実施形態をさらに記載することを意図する。
【実施例】
【0052】
合金690の
複数のヒートは、VIMを使用してフィード材料を溶融することにより調製した。合金690の
複数のヒートの化学組成は、ASTM B166−08:Standard Specification for Nickel−Chromium−Iron Alloys(UNS N06600,N06601,N06603,N06690,N06693,N06025,N06045,and N06696) and Nickel−Chromium−Cobalt−Molybdenum Alloy(UNS N06617) Rod, Bar,and Wire(2008)およびASME SB−166:Specification for Nickel−Chromium−Iron Alloys(UNS N06600,N06601,N06603,N06690,N06693,N06025,N06045,and N06696) and Nickel−Chromium−Cobalt−Molybdenum Alloy(UNS N06617) Rod,Bar,and Wire(2007)に準拠し、これらは本明細書において参照により組み込まれる。
【0053】
VIM
の複数のヒートを、ESRにおいて入力電極として使用された
複数の原インゴットに鋳造した。ESR操作により、およそ20インチ(508ミリメートル)の直径を有する精錬円筒形インゴットを生成した。
この複数の20インチのESRインゴットを、標準的な方法を使用して均質化し、プレス鍛造し、およそ14インチ(356ミリメートル)の直径を有する
複数の円筒形加工物を生成した。
【0054】
加工物を、2つの加熱ステップおよび2つの加工ステップを含む本明細書に記載のプロセスの非限定的実施形態に従い熱機械処理した。第1の加熱ステップにおいて、加工物を、少なくとも6時間の温度時間において、2000°F〜2050°F(1093℃〜1121℃)にて稼動する炉内で加熱した。第1の加工ステップにおいて、加熱された加工物を、およそ53%の面積の縮小に相応する、およそ9.6インチ(243ミリメートル)径に回転鍛造した。第1の加工ステップは、回転鍛造による4回のパスを含み、各パスは、およそ17%〜18%の面積の縮小を生じた。加工物全体は、第1の加工ステップが開始されるときに、およそ2000°F〜2050°Fの範囲の温度にあった。回転鍛造のパス中、加工物のダイ内およびダイ外の表面温度を、4回全てのパスにおいて、1700°F〜2050°F(926℃〜1121℃)の範囲に維持した。
【0055】
回転鍛造の終了後に、加工物の表面温度を周囲温度に冷却させないようにし、加工物を直ちに1825°F(996℃)にて稼動する炉に入れた。第2の加熱ステップにおいて、鍛造された加工物を、およそ1.0時間、2.0時間、4.0時間、または8.0時間の在炉時間において炉内で加熱した。第2の加工ステップにおいて、加熱された加工物を、中間体の9.6インチ(243ミリメートル)径に対しておよそ44%の面積の縮小に相応する、およそ7.2インチ(182ミリメートル)径まで2回目の回転鍛造を行った。第2の加工ステップは、回転鍛造による3回のパスを含み、各パスは、17%〜18%の面積の縮小を生じた。加工物全体は、第2の加工ステップが開始されるときに、およそ1825°F(996℃)の温度にあった。第2の加工ステップの間、加工物のダイ内およびダイ外の表面温度を、3回全てのパスにおいて、1700°F〜2050°F(926℃〜1121℃)の範囲に維持した。加工物を、第2の加工ステップの終了後、周囲温度に空気冷却させた。2つの加工ステップにより生じた面積の縮小の合計は、およそ74%であった。
【0056】
2回の加熱および2回の回転鍛造の加工物を、4時間の温度時間において、1875°F(1024℃)にて焼鈍した後、周囲温度に水で焼き入れした。焼き入れした加工物を4時間の温度時間において、1340°Fにて時効させ、周囲温度に空気冷却させた。
【0057】
加工物の断面を、標準的な方法を使用してエッチングし、マクロ構造を金属顕微鏡で評価した。
図3Aは、第1の加工ステップから第2の加工ステップまで、1825°F(996℃)にて稼動する炉内でおよそ1時間の在炉時間において加熱された加工物の断面の金属写真である。
図3Bは、第1の加工ステップから第2の加工ステップまで、1825°F(996℃)にて稼動する炉内で、およそ2時間の在炉時間において加熱された加工物の断面の金属写真である。
図3Cは、第1の加工ステップから第2の加工ステップまで、1825°F(996℃)にて稼動する炉内で、およそ4時間の在炉時間において加熱された加工物の断面の金属写真である。
図3Dは、第1の加工ステップから第2の加工ステップまで、1825°F(996℃)にて稼動する炉内で、およそ8時間の在炉時間において加熱された加工物の断面の金属写真である。
【0058】
図3Aおよび3Bに示されるように、1825°F(996℃)にて稼動する炉内で、およそ1時間および2時間の在炉時間において加熱された加工物は、異常な結晶粒成長の環状領域を発達させた。
図3Cおよび3Dに示されるように、1825°F(996℃)にて稼動する炉内で、およそ4時間および8時間の在炉時間において加熱された加工物は、任意の異常な結晶粒成長を示さなかった。およそ4時間および8時間の在炉時間において加熱された加工物の粒径は、ASTM E112−10に従い決定された、ASTM No.3.0〜8.0の範囲内であった。粒間M
23C
6カーバイド析出物を形成した加工物は、結晶粒界に均一に分布し、最小の粒間M
23C
6カーバイドの析出を示した。
【0059】
本明細書に記載のプロセスは、臨界技術用途、例えば、化学プロセッシング装置の構造要素および原子力発電のためのPWRに優れた性質を備える、ミクロ構造およびマクロ構造を有するニッケル系合金の生成物を生成する。本明細書は、種々の非限定的および非包括的実施形態を参照して記載されている。しかし、当業者であれば、本開示の実施形態(またはその一部)の種々の置換、修正、またはいずれかの組み合わせが、本明細書の範囲内でなされ得ることを認識されるだろう。したがって、本明細書が本明細書に明記されない追加の実施形態を支持することが考えられ、かつ理解される。かかる実施形態は、例えば、本明細書に記載の種々の非限定的実施形態の開示されたステップ、構成要素、要素、特性、態様、特徴、限定などのいずれかを組み合わせ、修正し、または再編成することにより得られ得る。このように、出願者は、本明細書に種々に記載される特徴を追加するために、審査過程において特許請求の範囲を補正する権利を有し、かかる補正は、合衆国法典第35編の第112条、第1章、および合衆国法典第35編の第132条(a)の要件に準拠する。
[発明の態様]
[1]
ニッケル系合金の加工物を2000°F〜2125°Fの範囲の温度に加熱することを含む第1の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を30%〜70%の面積の縮小まで回転鍛造することを含む第1の鍛造ステップであって、前記ニッケル系合金の加工物が、前記第1の鍛造ステップが開始されるときに、2000°F〜2125°Fの範囲の温度にある、第1の鍛造ステップと、
前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を1750°F〜1925°Fの範囲の温度に加熱することを含む第2の加熱ステップであって、前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を高温に維持し、前記第1の鍛造ステップの終了から前記第2の加熱ステップの開始まで、周囲温度に冷却させないようにする、第2の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を20%〜70%の面積の縮小まで回転鍛造することを含む第2の鍛造ステップであって、前記ニッケル系合金の加工物が、前記第2の鍛造ステップが開始されるときに、1750°F〜1925°Fの範囲の温度にある、第2の鍛造ステップとを含むプロセスであって、
前記ニッケル系合金の加工物が、0.05重量%までの炭素、27.0重量%〜31.0重量%のクロム、0.5重量%までの銅、7.0重量%〜11.0重量%の鉄、0.5重量%までのマンガン、0.015重量%までの硫黄、0.5重量%までのケイ素、少なくとも58%のニッケル、および付随の不純物質を含む、
プロセス。
[2]
前記第1の加熱ステップが、少なくとも6.0時間の温度時間において、2000°F〜2125°Fにて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、1に記載のプロセス。
[3]
前記第2の加熱ステップが、2.0時間より長い在炉時間において、1750°F〜1925°Fにて稼動する炉内で、前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、1に記載のプロセス。
[4]
前記第2の加熱ステップが、3.0時間〜10.0時間の在炉時間において、1750°F〜1925°Fにて稼動する炉内で、前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、1に記載のプロセス。
[5]
前記第2の加熱ステップが、4.0時間〜8.0時間の在炉時間において、1750°F〜1925°Fにて稼動する炉内で、前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、1に記載のプロセス。
[6]
フィード材料を真空誘導溶解し、ニッケル系合金のインゴットを形成することと、
前記ニッケル系合金のインゴットを再溶解し、精錬ニッケル系合金のインゴットを形成することであって、前記再溶解することが真空アーク再溶解およびエレクトロスラグ再溶解からなる群から選択される少なくとも1つの再溶解操作を含むことと、
前記精錬ニッケル系合金のインゴットをプレス鍛造し、前記ニッケル系合金の加工物を形成することと、
をさらに含む、1に記載のプロセス。
[7]
前記2つの加熱ステップおよび前記2つの鍛造ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間の温度時間において、少なくとも1800°Fであるが、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度以下の温度にて加熱することと、 前記加工物を水で焼き入れすることと、
をさらに含む、1に記載のプロセス。
[8]
前記2つの加熱ステップおよび前記2つの鍛造ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間の温度時間において、1300°F〜1400°Fにて時効させることと、
前記加工物を空気冷却させることと
をさらに含む、1に記載のプロセス。
[9]
前記生成物が、ロッドおよび丸形バーからなる群から選択された、1のプロセスにより生成された生成物。
[10]
前記生成物が、均一な粒径分布である、ASTM No.3.0〜9.0の粒径の等軸粒、金属顕微鏡で観察可能な結晶粒界に均一に分布する粒間M23C6カーバイド析出物、および実質的に金属顕微鏡で観察できない粒間M23C6カーバイド析出物を含む、9に記載の生成物。
[11]
ニッケル系合金の加工物を、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度より高い温度に加熱することを含む第1の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を、20%〜70%の面積の縮小まで加工することを含む第1の加工ステップであって、前記ニッケル系合金の加工物が、前記第1の加工ステップが開始されるときに、M23C6カーバイドソルバス温度より高い温度にある第1の加工ステップと、
前記加工されたニッケル系合金の加工物を、1700°Fより高く、かつ前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度未満の温度に加熱することを含む第2の加熱ステップであって、前記加工された状態のニッケル系合金の加工物を高温で維持し、前記第1の加工ステップの終了から前記第2の加熱ステップの開始まで、周囲温度に冷却させないようにする第2の加熱ステップと、
前記加熱されたニッケル系合金の加工物を、20%〜70%の第2の面積の縮小まで加工することを含む第2の加工ステップであって、前記第2の加工ステップが開始されるときに、前記ニッケル系合金の加工物を1700°Fより高く、かつ前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度未満の温度にある第2の加工ステップと、
を含むプロセス。
[12]
前記ニッケル系合金の加工物が、0.05重量%までの炭素、27.0重量%〜31.0重量%のクロム、0.5重量%までの銅、7.0重量%〜11.0重量%の鉄、0.5重量%までのマンガン、0.015重量%までの硫黄、0.5重量%までのケイ素、少なくとも58重量%のニッケル、および付随の不純物質を含む、11に記載のプロセス。
[13]
前記ニッケル系合金の加工物が、0.05重量%までの炭素、28.0重量%〜30.0重量%のクロム、0.25重量%までの銅、8.0重量%〜10.0重量%の鉄、0.25重量%までのマンガン、0.010重量%までの硫黄、0.25重量%までのケイ素、少なくとも58重量%のニッケル、および付随の不純物質を含む、11に記載のプロセス。
[14]
前記第1の加工ステップおよび前記第2の加工ステップが独立して、平圧延、リング圧延、圧延成形、プレス鍛造、押出し成形、および回転鍛造からなる群より選択される少なくとも1つの操作を含む、11に記載のプロセス。
[15]
前記第1の加工ステップおよび前記第2の加工ステップが回転鍛造を含む、11に記載のプロセス。
[16]
前記第1の加熱ステップが、少なくとも3.0時間の温度時間において、2000°F〜2125°Fにて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、11に記載のプロセス。
[17]
第2の加熱ステップが、2.0時間より長い在炉時間において、1750°F〜1925°Fにて稼動する炉内で前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、11に記載のプロセス。
[18]
前記第2の加熱ステップが、3.0時間〜10.0時間の在炉時間において、1750°F〜1925°Fにて稼動する炉内で、前記ニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、11に記載のプロセス。
[19]
前記第2の加熱ステップが、4.0時間〜8.0時間の在炉時間において、1750°F〜1925°Fにて稼動する炉内で、前記回転鍛造されたニッケル系合金の加工物を加熱することを含む、11に記載のプロセス。
[20]
フィード材料を真空誘導溶解し、ニッケル系合金のインゴットを形成することと、
前記ニッケル系合金のインゴットを再溶解し、精錬ニッケル系合金のインゴットを形成することであって、前記再溶解することが真空アーク再溶解およびエレクトロスラグ再溶解からなる群から選択される少なくとも1つの再溶解操作を含むことと、
前記精錬ニッケル系合金のインゴットをプレス鍛造し、前記ニッケル系合金の加工物を形成することと、
をさらに含む、11に記載のプロセス。
[21]
前記2つの加熱ステップおよび前記2つの加工ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間の温度時間において、少なくとも1800°Fであるが、前記ニッケル系合金のM23C6カーバイドソルバス温度以下の温度にて加熱することと、
前記加工物を水で焼き入れすることと、
をさらに含む、11に記載のプロセス。
[22]
前記2つの加熱ステップおよび前記2つの鍛造ステップの後に、
前記ニッケル系合金の加工物を、少なくとも3.0時間の温度時間において、1300°F〜1400°Fの温度にて時効させることと、
前記加工物を周囲温度に空気冷却させることと、
をさらに含む、11に記載のプロセス。
[23]
11に記載のプロセスにより生成される生成物。
[24]
前記生成物が、ロッド、丸形バー、および矩形バーからなる群から選択される長形生成物を含む、23に記載の生成物。
[25]
前記生成物が、均一な粒径分布である、ASTM No.3.0〜9.0の粒径の等軸粒、金属顕微鏡で観察可能な結晶粒界に均一に分布する粒間M23C6カーバイド析出物、および実質的に金属顕微鏡で観察できない粒間M23C6カーバイド析出物を含む、23に記載の生成物。