(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188691
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】2部分酸素発生系
(51)【国際特許分類】
A61K 8/22 20060101AFI20170821BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20170821BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20170821BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20170821BHJP
C01B 13/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
A61K8/22
A61K8/19
A61K8/02
A61Q19/00
C01B13/02 B
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-522197(P2014-522197)
(86)(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公表番号】特表2014-527041(P2014-527041A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】IB2012053798
(87)【国際公開番号】WO2013017995
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月2日
(31)【優先権主張番号】61/513,126
(32)【優先日】2011年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/555,336
(32)【優先日】2012年7月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルチャンドラ・エム・カランディカル
(72)【発明者】
【氏名】スニタ・ジェイ・マクワナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンジュウ・リウ・ジャオ
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02746249(US,A)
【文献】
特開平05−339131(JP,A)
【文献】
特表平09−502385(JP,A)
【文献】
特開2004−035363(JP,A)
【文献】
特開昭62−083303(JP,A)
【文献】
実開平02−118728(JP,U)
【文献】
LUO YONGLAN,PREPARATION OF MNO2 NANOPARTICLES BY DIRECTLY MIXING POTASSIUM PERMANGANATE 以下備考,MATERIALS LETTERS,NL,NORTH-HOLLAND PUBLISHING COMPANY,2007年 3月12日,V61 N8-9,P1893-1895,AND POLYELECTROLYTE AQUEOUS SOLUTIONS
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C01B 13/00−13/36
A62D 9/00
A62B 7/00−33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物を含む溶液を含む第1の部分およびナノ粒子二酸化マンガン触媒の溶液を含む第2の部分を含む酸素を皮膚に放出および送達するための2部分スプレーであって、
前記過酸化物を含む溶液と共に混合すると、酸素の放出を生じ、
前記2部分スプレーはエアロゾルを形成するように構成され、
前記第1の部分および前記第2の部分が、酸素の放出が必要になるまで容器の別々の貯蔵所に保存され、
前記ナノ粒子二酸化マンガン触媒が、5〜500ナノメートルの間の平均サイズを有し、かつ前記触媒溶液中に25〜100ppmの濃度で存在すること特徴とする2部分スプレー。
【請求項2】
前記スプレーは、水性、非水性またはその混合物でもよい、請求項1の2部分スプレー。
【請求項3】
天然または合成の重合体、モイスチャライザー、湿潤剤、粘度調整剤、緩和剤、テクスチャーエンハンサー、UV遮断薬、着色剤、色素、セラミック、抗酸化剤、および芳香剤からなる群から選択された少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1の2部分スプレー。
【請求項4】
前記ナノ粒子二酸化マンガン触媒が、50〜300ナノメートルの間の平均サイズを有する、請求項1の2部分スプレー。
【請求項5】
第2の部分は、液体、ゲル、泡、または水中油もしくは油中水のエマルジョンであってもよい、請求項1の2部分スプレー。
【請求項6】
第2の部分における二酸化マンガンの濃度は、75〜100ppmの間である、請求項1の2部分スプレー。
【請求項7】
第1の部分における過酸化水素の濃度は、プラスの量から3重量パーセントである、請求項1の2部分スプレー。
【請求項8】
3重量パーセント未満の過酸化水素を含む過酸化物を含む溶液を含む第1の部分およびナノ粒子二酸化マンガン触媒の溶液を含む第2の部分を含む酸素を皮膚に放出および送達するための2部分スプレーであって、
前記ナノ粒子は、50〜300ナノメートルの間の平均サイズを有し、前記触媒の溶液中に25〜100ppmの間の濃度を有し、前記第1および第2の部分は、共にエアロゾルとして混合したときに酸素の放出を生じ、
前記第1の部分および前記第2の部分が、酸素の放出が必要になるまで容器の別々の貯蔵所に保存されること特徴とする2部分スプレー。
【請求項9】
天然または合成の重合体、モイスチャライザー、湿潤剤、粘度調整剤、緩和剤、テクスチャーエンハンサー、UV遮断薬、着色剤、色素、セラミック、抗酸化剤、および芳香剤からなる群から選択された少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項8の2部分スプレー。
【請求項10】
形成される前記エアロゾルが、アルカリ性である、請求項1の2部分スプレー。
【請求項11】
形成される前記エアロゾルが、アルカリ性である、請求項8の2部分スプレー。
【請求項12】
前記ナノ粒子二酸化マンガン触媒の溶液が、別の触媒を含む、請求項1の2部分スプレー。
【請求項13】
前記別の触媒が、炭酸水素ナトリウム、水酸化カルシウム、またはそれらの組み合わせである、請求項12の2部分スプレー。
【請求項14】
前記ナノ粒子二酸化マンガン触媒の溶液が、別の触媒を含む、請求項8の2部分スプレー。
【請求項15】
前記別の触媒が、炭酸水素ナトリウム、水酸化カルシウム、またはそれらの組み合わせである、請求項14の2部分スプレー。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この出願は、2011年7月29日に出願された米国仮出願番号第61/513,126からの優先権の利益を主張し、およびその内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、化粧品製剤における使用のための生成酸素に関する。
【0003】
酸欠または低酸素は、一般に、彼らの四肢(たとえば、足)においてそれらが不十分な血液循環のために老化するため人々が、並びに糖尿病などの状態を持つものが経験する。また、老人の皮膚における正常以下の、低酸素圧の研究も示されている。これは、しわ、乾燥および低皮膚弾力などの不十分な皮膚健康および目に見える状態の過剰な存在を引き起こすことが多い。長年にわたって、化粧品製造業者は、これらの年齢に関連した効果を遅延させ、並びに皮膚健康を改善し、および維持するために緩和剤、エクスフォリエーター、モイスチャライザーその他などの成分の多大な多様性を持つ皮膚製剤を導入してきた。直接低酸素の問題に着手することは、一般に実践されてこなかった。
【0004】
酸素はかなり反応性かつ不安定であるため、通常の使用のための皮膚に対する酸素の送達は、技術的挑戦である。高濃度の酸素は、この不安定性のために家庭用のために提供することができない。しかし、酸素は、Ladizinskyに対する米国特許公開2006/0121101にしたがって過酸化物および過酸化物分解触媒の形態で提供することができる。この刊行物は、皮膚の領域に適用される包帯剤を用いることにより無傷の皮膚に対してこのような治療を提供する。包帯剤は、水性過酸化水素組成物および過酸化物分解触媒を有するヒドロゲル層を含む破裂可能な貯蔵所を一般に有する。残念なことに、酸素への過酸化水素の促進分解は、非常に迅速であり、このため包帯剤は、酸素が最大時間可能な間皮膚に対して保たれるように外側に酸素を通さない層を有する。この包帯剤は、皮膚の小領域に対して有用であるが、皮膚の大領域または不規則に成形された領域に対しては実行不可能であることが明らかなはずである。
【0005】
あるいは、Devillez(米国特許5,736,582)は、過酸化水素のための溶媒も含む皮膚治療組成物におけるベンゾイルペルオキシドの部分における過酸化水素の使用を提唱する。これは、過酸化水素を皮膚に損傷を与えるだろうレベル以下にとどめ、かつより高い濃度の溶液にとどめることができる水と一緒のジメチルイソソルビドなどの溶媒が有効であることが教示されている。過酸化物分解触媒は存在しない。残念なことに、酸素濃度または生成についてのデータは示されていないし、酸素放出のために時間は必要とされない。この方法は、酸素を含まない組成物を超えた前進であるようにみえるが、資料不足により、このアプローチの全体の有効性についての客観的判断行うことが困難になる。しかし、過酸化物の濃度を考慮すると、有意な容積の酸素を生成されたことは疑わしい。
【0006】
酸素を皮膚に適用する使いやすい方法に対する需要がある。このような方法および/または製品は、特別な包帯剤またはその他の扱いにくい要求を必要とすることなく、比較的少ない成分を有し、および使用するために直観的であるべきである。公知の製品に類似の様式で使用し得る製品が消費者にとって最も容易に受け入れられるだろう。
【発明の概要】
【0007】
上で考察した問題は、本開示においてかなりの程度での解決を見いだしており、局所的組成物の過酸化物を有する部分に添加されたときに迅速におよび効率的に酸素を生成する二酸化マンガン(MnO
2)ナノ粒子の使用を記述する。ナノ粒子ではない二酸化マンガン粒子は、この挙動を示すことができない。
【0008】
1つの部分が約1〜1000ナノメートルの間の平均サイズで二酸化マンガンナノ粒子を有し、およびもう1つの部分が水素過酸化物を含む2部分スプレーは、皮膚に酸素を送達する際にうまく遂行する。一実施形態では、前記2部分スプレーはエアロゾルを形成するように構成され、前記第1の部分および前記第2の部分が、酸素の放出が必要になるまで容器の別々の貯蔵所に保存され、前記ナノ粒子二酸化マンガン触媒が、5〜500ナノメートルの間の平均サイズを有し、かつ前記触媒溶液中に25〜100ppmの濃度で存在する。
触媒含有部分と酸素前駆体部分を持つ開示された局所的組成物は、水性、非水性または2つの混合物(例えばエマルション)のいずれかであり得る。水中油型(O/W)または油中水型(W/O)両方の組成物が本開示に包含される。美容上望ましい付加的特性を与えるために、(触媒および/または酸素前駆物を持つ)成分組成物は、天然または合成ポリマー、モイスチャライザー、保湿剤、粘度調整剤、皮膚軟化剤、質感向上剤、紫外線防止剤、着色剤、顔料、セラミック(ヒュームドシリカ、二酸化チタン、天然および合成粘土)、抗酸化剤、香料
からなる群から選択された少なくとも1つの成分など、その他の原料を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、発明の1つまたは複数の態様、発明の実施例、図面において図示された実施例について詳細に言及をしてある。各実施例および態様は、発明の説明の方法によって提供してあり、および発明の限定として意味されない。たとえば、1つの態様の一部として図示され、または記述された特色を別の態様で使用して、さらなる態様をさらに得てもよい。発明は、発明の範囲および趣旨の範囲内にはいるようにこれらおよびその他の修飾、並びにバリエーションを含むことが意図される。
【0010】
皮膚に対する酸素の適用は、しわ、乾燥および低皮膚弾力などの不十分な皮膚健康および目に見える状態の過剰な存在などの老化によってもたらされる多数の問題を緩和するのを補助することができる。皮膚に適用された酸素は、これらの年齢に関連した効果を遅延させ、皮膚健康を改善し、および維持するのを補助することができる。
【0011】
局所的に液体または泡組成物の適用を介して皮膚に対して酸素を適用することは、上記で考察した所望の利益を送達する便利な、簡単な、および迅速な方法である。本明細書に開示した2部分製剤は、酸素を使用のために利用でき、貯蔵の間に失われないことを保証するのを補助する。酸素は高度に反応性である不安定物質であるため、過酸化物の形態で酸素を送達することは、酸素が、それが必要であるまで存在することを保証するのを補助する。オンデマンドで酸素を生成するために二酸化マンガンで過酸化物を触媒することにより、消費者が、酸素が送達されるときを選択することができる。しかし、2つの成分が徹底的に混合されて酸素の最大量が最大利益を送達するように放出されることを保証することが2部分系では重要である。
【0012】
ナノ粒子サイズの二酸化マンガンは、1から1000ナノメートル、より望ましくは5から500ナノメートルおよびさらに望ましくは50から約300ナノメートルの範囲の粒子を意味する。二酸化マンガンナノ粒子を含む基剤溶液は、黄褐色または黄褐色の色を有する。基剤溶液は、水中油もしくは油中水の液体、ゲル、泡またはエマルジョンでもよい。基剤溶液の例を下に示してある。基剤溶液中の二酸化マンガンの濃度は、500〜10000ppmの間、より望ましくは約900〜5000ppmの間および一般にプラスの量から約3重量パーセントの過酸化水素の濃度にあってもよい。
【0013】
一旦ナノ粒子二酸化マンガンを含む基剤溶液が作製されたら、それを二酸化マンガンの劣化を伴わずに後で使用するために貯蔵させ得る。同様に、第2の成分、過酸化水素を適当な条件下で劣化を伴わずに別々に貯蔵させ得る。一旦過酸化水素から酸素を遊離して、皮膚を治療することが望まれると、酸素の最大量を放出させるために2つの成分を徹底的に混合させるべきである。
【0014】
2成分のための送達系は、別々の貯蔵所を含み、かつノズルにおいて2つの成分を、これらが瓶を離れるにつれて混合するスプレーボトルでもよい。二重のチャンバーディスペンサとしても公知の2部分ディスペンサは、たとえば、マイアミ、フロリダのNew High Glass Inc.から市販されている(www.newhighglass.net参照されたい)。ここであげた企業情報は、例示目的のためにだけである。出願のための本開示の2部分組成物の適合性は、この企業のディスペンサだけに限られていないが、その他の企業ディスペンサを、これらが機能的要求を満たす限り使用してもよい。2部分の比率を使用者が調整することができる2部分ディスペンサも、本開示での使用に適する。また、2部分を合わせ、およびエアロゾルまたはスプレーを形成するための類似のディスペンサがある。1つのこのようなディスペンサは、ドイツのLindal Group(www.lindalgroup.com)から入手可能であり、「バッグオンバルブ」系と共に「バッグインバッグ」として特定される。公開された特許(米国5,4O2,916を参照されたい、およびその中で引用された引例は、これらの全体がこの中に組み込まれる)およびこのような2部分噴霧装置を記述する。
【0015】
実施例1:二酸化マンガンナノ粒子の調製
1.87グラムのポリ-アリルアミンハイドロクロライド(PAH、15,000Mw、Sigma-Aldrichから、93.5g/mol)をイオン除去(Di)水の50mLに溶解し、0.4Mの溶液を調製した。0.79グラムの過マンガン酸カリウム(KMnO4)(Riedel-de-Haenから、158.03g/mol)を50mLのDi水に溶解し、0.2Mの溶液を得た。両方の溶液をマグネチックスターラで室温にてガラスビーカー(250mL容量)において混合した。混合により、混合溶液の色は、暗赤色から暗褐色に変化に始め還元反応(KMnO
4から二酸化マンガンに)が起こったことを示している。ビーカーの溶液を一晩撹拌した。二酸化マンガンへの完全な還元は、最終溶液のUV-VISスペクトルにおいて〜350nmにおける単一吸収ピークによって確認した。最終的な二酸化マンガンナノ粒子溶液は、二酸化マンガン重量でおよそ4300ppmを有した。この溶液は、さらなる使用のためにDi水中に1000ppmの保存液に希釈した。
【0016】
実施例2:オンデマンドでの酸素生成のための2部分水性製剤の試験
オンデマンドでの酸素生成の実現可能性を証明するために、プロトタイプ2部分製剤を調整した。0.9%w/w過酸化水素からなる部分1は、35%w/w過酸化水素水から作製した(Spectrum HY115;New Brunswick、NJ)。二酸化マンガンナノ粒子(二酸化マンガンNP)の種々の濃度(重量で100ppm、75ppm、50ppmおよび25ppm)での部分2は、実施例1にしたがって1000ppmの保存液から希釈した。部分1および2は、酸素へ過酸化水素を分解するために、容積で1:1の比率であわせた。試験試料は、異なる5mlのファルコンチューブにおいて同じ容積(2ml)の一定分量の二酸化マンガンNP溶液(二酸化マンガン濃度を変化する)を0.9%の水性過酸化水素の2mlの一定分量と慎重に合わせることによって作製した。対照試料は、2mlの0.9%の水性過酸化水素および2mlのDi水を合わせることによって作製した。部分1の添加の前の部分2の色(二酸化マンガンNPの濃度を変化する)および混合物の色(合わせた部分1および部分2)を記録した(表1のとおりに記述)。全ての試験試料および対照は、0-2分にておよび60分にて2部分を合わせた直後に、残りの過酸化水素についてアッセイした。アッセイ目的のために、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)アッセイ(実施例3において記述した)を使用して、混合物の一定分量(150マイクロリットル)を残留する過酸化物について試験した。過酸化水素の分解反応は非常に急速で、および多くの酸素泡を形成し、起沸を生じさせることに留意されたい。別に、同じく作製した試験試料を使用して、生理食塩水へのポリエチレン膜を介した酸素フラックスを測定した(実施例4に記載したとおり)。表1に見られるように、75ppm以上にてナノサイズの二酸化マンガン(二酸化マンガンNP)は、0.9%過酸化水素水溶液を完全に分解した。50ppm以下にて二酸化マンガンNP溶液の色は、淡い黄色を介して、美的に許容された。興味深いことに、最初の二酸化マンガンNPが100ppmであった場合を除き、合わせた溶液(部分1および2)は無色になった。この観察は、我々の知識の及ぶ限りでは公開された文献において報告されていなかったので、この結果は、予想外だった。
【0017】
【表1】
0.9%の過酸化水素分解:((対象-試料)/対照)*100
対照:0.9%の過酸化水素(二酸化マンガンNPなし)
試料:0.9%の過酸化水素+二酸化マンガンNP(様々なppm)。
【0018】
実施例3:試験試料および対照における残留する過酸化水素を測定するために使用した西洋わさびペルオキシダーゼアッセイ
西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)は、過酸化水素の反応を触媒し、および色素生成基質o-フェニレンジアミン(OPD)を酸化する。過酸化物分解の割合は、490nmにて分光光度計によって測定することができる。他に詳細に記述したアッセイ(下記の参照文献を参照されたい)を本研究のために修正した。
【0019】
参照文献:Fornera S, Walde P., Spectrophotometric quantification of horseradish peroxidase with o-phenylenediamine. Anal Biochem. 2010 Dec 15; 407(2):293-5. Epub 2010 Aug 6. Department of Materials, ETH Zurich, CH-8093 Zurich, Switzerland。
【0020】
実施例4:2部分水性製剤からの酸素フラックスの測定
表1(実施例2)に収載した過酸化水素分解の割合を25°Cにて酸素フラックスを測定することによって実証した。部分1(0.9%の過酸化水素部分)および部分2(二酸化マンガンNP)を新たに調製して、1:1の比率で混合した;1.2mLの二酸化マンガンNPを伴う1.2mLの0.9%の水性過酸化水素をフランツセルのポリエチレン(PE)膜(厚さ〜25ミクロン)上で直接混合した。膜は、空気飽和食塩水溶液で満たされたフランツセルの柔軟な壁として作用した。セルを溶存酸素測定プローブ(Ocean Optics(FL)からのFoxy(登録商標)プローブ)に装着した。溶存酸素プローブは、時間とともにppmで生理食塩水溶液による酸素取り込みをモニターした。混合物をセルに置かれた後、生理食塩水における酸素濃度をモニターした。〜5分の初期時間の遅れの後、酸素濃度は、次の60分間の時間と共に直線的に増大し始めた。直線勾配バリューを使用して、酸素フラックス(mg/cm
2/分)は、単純な数学的モデルを使用して算出した。種々の試料について測定された酸素フラックス値は、表1に収載してある。理解し得るとおり、フラックスの増大は、二酸化マンガンNPの濃度増大を伴ってさらなる過酸化物分解と一致した。最高のフラックスバリュー〜0.37は、1気圧および25°Cにて酸素で飽和された水性溶液について別々に観察された〜0.4のフラックス値に非常に近かった。
【0021】
フランツセルチャンバー
フランツセルチャンバーは、製剤開発において頻繁に使用されるインチビトロ皮膚浸透アッセイである。フランツセル装置は、膜によって分離された2つの一次チャンバーからなる。動物皮膚を膜として使用することができるが、ヒト皮膚または上で使用したポリエチレンなどのその他の膜が適する。試験製品を、上部チャンバーを介して膜に適用した。底面チャンバーは、液体を含み、ここから解析のために規則的な間隔にて試料が取り込まれる。この試験は、各時点において膜に浸透した能動的な量を決定する。チャンバーを恒温にて維持する。媒体に応じて、フランツセル解析を介して決定される浸透の割合は、有意に変化し得る(おそらく10倍から50倍まで)。
【0022】
実施例5:過酸化物分解の割合に対する助触媒の効果
0.11M程度の低い炭酸水素ナトリウム(Na
2CO
3)および水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)のような触媒(無機ベース)は、低濃度レベルの二酸化マンガンNPとの組み合わせにおいて過酸化水素の分解割合を増強する。50ppm程度の低い二酸化マンガンNPは、0.11Mの助触媒と組み合わせて試験したときに、即時にオンデマンドで(表2)0.9%の水性過酸化水素を完全に分解する。
【0023】
助触媒の効果を研究するために、2mlの0.9%の水性過酸化水素(Spectrum HY-115)を5mlのファルコンチューブに取り、これに1.9mlの特定の濃度の二酸化マンガンNPおよび0.1mlの0.11MのNa
2CO
3を添加した。別に、同じ比率を0.1mlの0.11MのCa(OH)
2溶液を使用して試験した。同様に、二酸化マンガンNPの各濃度(25ppm、50ppm、75ppmおよび100ppm)を別々に試験した。何らの二酸化マンガンNPも含んでいない対照試料を、2mlのDi水と2mlの0.9%の水性過酸化水素(過酸化水素)を混合することによって同様にアッセイした(データ示さず)。以前の実施例に記載したようにHRPアッセイによって混合している2分以内に、反応混合物を試験した。
【0024】
【表2】
0.9%の過酸化水素分解:((制御-試料)/対照)*100
対照:0.9%の過酸化水素(二酸化マンガンNPなし)
試料:助触媒の0.9%の過酸化水素+二酸化マンガンNPの量(ppm)+助触媒。
【0025】
明らかに、試験試料に助触媒が存在すると、100%の過酸化水素分解が25ppm程度の低い二酸化マンガンについて見られた(表2)。対照的に、助触媒の存在を伴わないと、完全に分解を駆動するためにほぼ4倍多い二酸化マンガン(100ppm)を必要とした(表1を参照されたい)。
助触媒がこれらのアルカリ度を介してこの接触効果を生じさせたかどうか理解するために、我々は、試験液のpHを測定した。データ(表3に示した)は、10.2〜10.8の間で変動する溶液を含むCa(OH)
2のpHを、および9.9〜11の間で変動するNa
2CO
3を含んだものについて示した。したがって、接触効果は、実際は試験液のアルカリ度の増加のためであった。中性pHがより高いと過酸化物分解をもたらすが、それは一般に皮膚看護製剤において望ましくない。優先度は、ほぼ中性またはわずかに酸性(6〜7.5)pHの間である。
【0026】
【表3】
0.9%の過酸化水素分解:((制御-試料)/対照)*100
対照:0.9%の過酸化水素(二酸化マンガンNPなし)
試料:助触媒の0.9%の過酸化水素+二酸化マンガンNPの量(ppm)+助触媒。
【0027】
実施例6:助触媒の存在下における過酸化水素分解に対する中性pHの効果
中性条件の近く(pH 6-7.5)で、過酸化水素分解の割合に対するpHの効果を研究するために、助触媒を伴う試験液を0.1Mの塩酸(HCl)を使用して7.5のpHに酸性化した。助触媒の存在下において二酸化マンガンNPの濃度の変化では、アルカリ性(表3)から中性(表4)にpHを変えると、過酸化水素分解の割合をわずかに減少させた。したがって、中性条件下で100%の過酸化水素分解を達成するためには、アルカリ条件下で25ppmの二酸化マンガンNPと比較してより多量の二酸化マンガンNPを必要とした(75+ppm)。前述の如く、この実験における試験液は、実施例5の方法によって過酸化物分解についてアッセイした。
【表4】
0.9%の過酸化水素分解:((制御-試料)/対照)*100
対照:0.9%の過酸化水素(二酸化マンガンNPなし)
試料:助触媒の0.9%の過酸化水素+二酸化マンガンNPの量(ppm)+助触媒。
【0028】
実施例7:過酸化水素に対するAmigelの粘性の効果
この実施例の目的は、2部分系の過酸化水素分解反応に対する粘性の効果を調べるためにAmigelの濃度を変化してゲルプロトタイプを作製することであった。10%のAmigel、天然バイオポリマーおよび化粧品成分の保存液を調製した。簡潔には、60グラムのAmigel(Alban Mullerから)を摂氏90度にて540グラムのDl水と混合して10%w/wのAmigel保存液を得た。1.0%w/w、0.5%w/wおよび0.25%w/w Amigel溶液を調製するために、この保存液をさらに希釈した。
【0029】
2部分ゲル系は、1.0%w/w、0.5%w/wおよび0.25%w/w Amigelで調製した。第1の部分は、0.9%の過酸化水素Amigelであった;0.64グラム(35%、Spectrum peroxide)を別々に25グラムの1.0%、0.5%および0.25%w/w Amigel溶液に添加して、混合した。第2の部分は、25ppmの二酸化マンガンNP Amigelであった;0.145ml(4300ppm、実施例1において調製した二酸化マンガンNPの保存液)を別々に25グラムの1.0%、0.5%および0.25%のw/w Amigel溶液に添加して、混合した。過酸化水素分解の割合をアッセイするために、2.0mlの0.9%の過酸化水素Amigel部分を1.9mlの25ppmの二酸化マンガンNP Amigel部分と混合し、これに0.1mlの助触媒(0.11MのNa
2CO
3)を添加した。実施例3で述べたようにHRPアッセイを使用して混合している2分以内に反応混合物を試験した。1.0%、0.5%および0.25%w/w Amigelにおける0.9%の過酸化水素の各濃度を別々に試験した。同様に、1.0%、0.5%および0.25%w/w Amigelの25ppmの二酸化マンガンNPを別々に試験した。
【0030】
表5における結果から分かるように、粘性は、2部分系の過酸化水素分解反応に対して効果を有さなかった。
【0031】
【表5】
0.9%の過酸化水素分解:((制御-試料)/対照)*100
対照:二酸化マンガンNPを伴わないAmigel(1.0%、0.5%および0.25%)中の0.9%の過酸化水素
試料:0.9%の過酸化水素1.0%、0.5%および0.25%)+Amigel(1.0%、0.5%および0.25%)中の二酸化マンガンNPの量(ppm)+0.11MのNa
2CO
3(助触媒)。
【0032】
実施例8:25℃および40℃にて0.9%の過酸化水素(Spectrum HY115)の保存寿命安定性
いずれの化粧品製剤についても、1年またはより長い相当な安定性が工業貯蔵寿命要求を満たすことが望まれる。この研究は、35%の過酸化水素水から作製された0.9%の過酸化水素の安定性を試験した(Spectrum HY115;New Brunswick、NJ)。安定性の計測値は、40℃にて12週の加速試験期間の最後にて、過酸化水素の初濃度から10%未満の喪失であった。25°Cにて維持した試料を対照として役立てた。
【0033】
試験は、n=3の試料サイズで行った。簡潔には、1.28mlの35%のSpectrum HY115過酸化物を、48.72mlのDi水に添加して50mlの0.9%の過酸化水素水を作製した。25℃にてインキュベートした温度制御において、3つの0.9%の過酸化水素を伴う50ミリリットルのスクリューキャップのチューブを置き、および0.9%の過酸化水素を伴うその他の3つのチューブを40℃にてインキュベートした制御温度に置いた。0日(調製の日)において、それぞれチューブを実施例3に記載されているようにHRPアッセイを使用して過酸化物含量についてアッセイした。毎週、25および40℃にて試料を実施例3に記載されているようにHRPアッセイを使用して過酸化物含量についてアッセイした。12週間40℃にて老化した試料は、2年の保存寿命に対応した。結果を表6に示してある。25℃における試料中の過酸化水素濃度のごくわずかな変化は、12週にわたって観察された。しかし、40℃における試料については、最初から〜20%の過酸化水素濃度の低下が3週後に見られた。その後で、変化は、12週を通じて観察されなかった。これらの試料が天然において実験的だったのだから、安定性は許容される。
【0035】
実施例9:40℃における100ppmの二酸化マンガンNPの保存寿命安定性
実施例8で述べたとおり、二酸化マンガンNPを含む溶液もその全ての貯蔵寿命にわたってその活性を示すことは重要である。本実施例は、40℃にて100ppmの二酸化マンガンNP溶液の安定性を試験するために行った研究を記述する。高濃度の安定性は、一般に100ppm未満の全ての溶液の優れた安定性を示すであろうため、我々は、100ppmの溶液を選択した。100ppmの二酸化マンガンNPの50mLの溶液を実施例1にしたがって保存液から調製した。ファルコンPPチューブ内の100ppmの二酸化マンガンNP溶液を、12週間40℃にて温度調節したインキュベーターに置いた。二酸化マンガンNP溶液の安定性は、その0.9%の過酸化水素水を分解する能力によって測定した。表7に示したように各時点にて、5mLファルコンチューブに100ppmの二酸化マンガンNP溶液の0.5mLを分注し、これに0.9%の過酸化水素水(実施例8において調製したとおり)を添加した。対照試料を同様にアッセイした(データ示さず);5mlのファルコンチューブにおいて、2mlの0.9%の水性過酸化水素(過酸化水素)を取り、これに2mlのDi水を添加した。反応は、酸素の放出を伴って混合の2分以内に迅速な起沸を生じた。100ppmの二酸化マンガンNPでの過酸化物分解の割合を実施例3に記載されているようにHRPアッセイを使用してアッセイした。
【0036】
表7の下の結果は、40℃にて維持した100ppmの二酸化マンガンNP溶液が0.9%の過酸化水素を分解する際に活性だったことを示す;6週までの100%の分解およびその後12週までの94%−98%、およびこれは非常に優れている。
【0037】
【表7】
0.9%の過酸化水素分解:((制御-試料)/対照)*100
対照:ちょうど0.9%の過酸化水素(二酸化マンガンNPなし)
試料:0.9%の過酸化水素+ 100ppmの二酸化マンガンNP。
【0038】
上の実験研究は、25°Cにてアルカリ条件下で、わずか25ppmの二酸化マンガンナノ粒子を含む溶液を使用して、過酸化水素の分解が完了したこと、すなわち100%を示す。しかし、pHがより高い中性条件、すなわち約7-7.5のpHへ移動したときに、溶液における75ppm以上の濃度の二酸化マンガンナノ粒子が100%の過酸化水素分解を達成するために必要とされた。
【0039】
PE膜を介した酸素フラックス(領域:8cm2)を25°Cにて過酸化水素(0.9%wt)および二酸化マンガンナノ粒子(25ppm)溶液(2.4gmの総量)の新鮮な混合物から測定した。これは、100%の過酸化物分解を生じて、フラックスは、〜0.38マイクログラムの酸素/cm2/分であることが見いだされた。この値は、1気圧(0.4マイクログラムの酸素/cm2/分)での純酸素気体を通気することによって調製した酸素の水性溶液について得られた酸素フラックス値と同等であった。対照的に、市販のSephoraゲル製品は、〜0.18マイクログラムの酸素/cm2/分の酸素フラックスを得た。1気圧および25°Cでの純酸素気体と平衡な水溶液は、〜40ppmの溶存酸素を含むことに留意されたい。比較して、環境空気下(全圧:1気圧および酸素分圧〜0.2気圧および25°C)、水中の溶存酸素の量は、〜8ppmである。
【0040】
言い換えると、本明細書において開示した水性組成物は、オンデマンドで過飽和状態の溶解した酸素含有溶液を生じることができたし、および市販のSephoraゲル製品の2倍程度の速さで酸素を送達することができた。本明細書において開示した組成物における溶存酸素のより優れた利用能のため(〜40ppm対空気飽和溶液からの8ppm)、組成物は、より速い透過によって選りすぐれた酸素の治療利益を提供するはずである。より速い透過は、皮膚における、および組成物における酸素の濃度の間の原動力の増加または差の増加のためである。
【0041】
実施例10:泡としての基剤溶液(prophetic)
O2を生成するための2部分泡組成物は、米国特許3,423,330の3列(65-75行)に記述された実施例の修正によって調製する。過酸化水素を含む部分は、過酸化水素の量が1重量%であることを除き、開示された実施例と同じ成分を混合することによって調製する。対応する水の量は、84重量%に増やす。表面活性物質成分の量は、保持する。二酸化マンガンナノ粒子を含む部分は、また過酸化物を成分として除外し、および二酸化マンガンナノ粒子が含まれたことを除いて、上の特許に記述された実施例にしたがって調製する。二酸化マンガンは、実施例1において調製したその濃縮物の形態の組成物に添加する。濃縮物の量は、添加される水に対して適切に調整して〜100ppmの二酸化マンガンを達成するように調整する。本部分は、その後の使用について、上で開示した2部分ディスペンサに含まれる。ディスペンサを出ていく2部分の比率は、1:1に維持されるが、その他の比率も維持することができる。
【0042】
実施例11:エマルジョンとしての基剤溶液(prophetic)
油-水乳濁液は、以下の通りにいくつかの修正をして米国特許4,485,091実施例2に従って調製した。乳酸成分を除外し、過酸化水素量は、1重量%に変更した。過酸化水素を含む部分は、これらの変更を組み込んで作製する。
【0043】
二酸化マンガンを含む部分は、同じ基剤水中油型乳剤を使用して、しかし以下の変更をして作製する。乳酸を除外し、および水性二酸化マンガンナノ粒子濃縮物(この出願の実施例1から)を〜100ppmの二酸化マンガンを得るだろう量で添加する。最後に、水を適切な量で添加してマスバランスおよびエマルジョン調製を完了する。
【0044】
次いで、2部分をさらなる使用のために二重チャンバーポンプディスペンサにパッケージする。
【0045】
本開示は、その具体的態様に関して詳細に記述してあるが、種々の改変、修正およびその他の変更を本開示の精神と範囲から逸脱することなく本開示に行ってもよいことは当業者にとって明らかだろう。したがって、請求の範囲は、添付の請求の範囲によって包含される全てのこのような修正、改変およびその他の変更を包含することが意図される。