特許第6188719号(P6188719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188719ケーシング内に配置された多層アクチュエータと、アクチュエータ表面での一定の極微小漏れ電流とを有するアクチュエータモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188719
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ケーシング内に配置された多層アクチュエータと、アクチュエータ表面での一定の極微小漏れ電流とを有するアクチュエータモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/053 20060101AFI20170821BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20170821BHJP
   H02N 2/00 20060101ALI20170821BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01L41/053
   H01L41/09
   H02N2/00
   H01L41/083
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-551613(P2014-551613)
(86)(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公表番号】特表2015-508576(P2015-508576A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】EP2013050393
(87)【国際公開番号】WO2013104710
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】102012200328.2
(32)【優先日】2012年1月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ビンディヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ユルゲン シュライナー
【審査官】 宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−535688(JP,A)
【文献】 特開2008−300466(JP,A)
【文献】 特表2007−527462(JP,A)
【文献】 特開2001−294642(JP,A)
【文献】 特開2011−171485(JP,A)
【文献】 特表2012−503341(JP,A)
【文献】 特表2010−514164(JP,A)
【文献】 特開2010−258025(JP,A)
【文献】 特開2008−098655(JP,A)
【文献】 特表2004−536158(JP,A)
【文献】 特開2003−180090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/053
H01L 41/083
H01L 41/09
H02N 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(23)内に配置された圧電セラミック多層アクチュエータ(1)を有するアクチュエータモジュール(22)において、
前記ケーシング(23)が密閉されており、前記多層アクチュエータ(1)と前記ケーシング(23)との間に、水を化学的に変換及び/又は結合する媒体(21)が部分充填又は充填された空間(24)が配置されており、
前記ケーシング(23)は、ケーシングカバー(8)と、ケーシング周壁(9)と、ケーシング底部(10,17)とから成っており、
前記ケーシングカバーは、セラミックから成っていて、外周面にメタライジングされた領域を有しており、該領域を介して、前記ケーシングカバーとケーシング周壁との密な結合が行われていることを特徴とする、アクチュエータモジュール。
【請求項2】
前記媒体(21)は、水と反応して水を消費する、請求項1記載のアクチュエータモジュール。
【請求項3】
前記媒体(21)は、ポリウレタン樹脂を含んでいる、請求項1又は2記載のアクチュエータモジュール。
【請求項4】
前記媒体(21)は、粉末状にされた乾燥剤から成っている、請求項1から3までのいずれか1項記載のアクチュエータモジュール。
【請求項5】
前記ケーシング(23)内に、前記多層アクチュエータ(1)用の電気的な接続部材(11)が導入されており、記電気的な接続部材(11)は、前記ケーシング底部(10,17)内に、電気的に絶縁されて密に組み込まれている、請求項1から4までのいずれか1項記載のアクチュエータモジュール。
【請求項6】
前記ケーシング底部は、金属から成っており、前記電気的な接続部材は、前記ケーシング底部内のガラス貫通案内部又はセラミック貫通案内部を介して、前記ケーシングの内部に導入されている、請求項記載のアクチュエータモジュール。
【請求項7】
前記ケーシング底部は、セラミックから成っていて、メタライジングされた開口部を有しており、これらの開口部内に、前記電気的な接続部材がろう接されており、記ケーシング底部は、外周面にメタライジングされた領域を有しており、該領域を介して、前記ケーシング底部とケーシング周壁との密な結合が行われている、請求項記載のアクチュエータモジュール。
【請求項8】
前記ケーシング周壁は、全体的又は部分的に金属ベローズから成っている、請求項1からまでのいずれか1項記載のアクチュエータモジュール。
【請求項9】
前記全体的又は部分的に金属ベローズから成っているケーシング周壁により、前記多層アクチュエータに対して所要の機械的な予荷重が与えられている、請求項1からまでのいずれか1項記載のアクチュエータモジュール。
【請求項10】
前記ケーシング周壁は、全体的又は部分的にセラミックから成っており、前記電気的な接続部材は、前記ケーシング底部及びーシングカバー内に配置されている、請求項6又は7記載のアクチュエータモジュール。
【請求項11】
ケーシング(23)内に配置された圧電セラミック多層アクチュエータ(1)を有するアクチュエータモジュール(22)において、
前記ケーシング(23)が密閉されており、前記多層アクチュエータ(1)と前記ケーシング(23)との間に、水を化学的に変換及び/又は結合する媒体(21)が部分充填又は充填された空間(24)が配置されており、
前記ケーシング(23)は、ケーシングカバー(8)と、ケーシング周壁(9)と、ケーシング底部(10,17)とから成っており、
前記ケーシング底部及び/又はケーシングカバーは、可撓性のダイヤフラムから成っていることを特徴とする、アクチュエータモジュール。
【請求項12】
前記ケーシング底部と、前記ケーシング周壁と、前記ケーシングカバーとは、溶接、属ろうを用いた硬ろう付け、ガラスろうを用いたろう付け、又は軟ろう付けによって、密に結合される、請求項1から11までのいずれか1項記載のアクチュエータモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内に配置された圧電セラミック多層アクチュエータを有するアクチュエータモジュールに関する。
【0002】
公知の圧電セラミック多層アクチュエータ1(図1参照)は、積み重ねられた複数の薄い圧電活性材料2、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の層と、その間に配置された複数の導電性の内部電極7とから成っており、これらの内部電極7は、例えば交互にアクチュエータ表面に達するように案内される。これらの内部電極7を、ベースメタライジング部3が接続している。これにより、内部電極7は電気的に並列接続され且つ多層アクチュエータ1の2つの接続部5を成す、2つのグループにまとめられる。接続部5に所定の電圧がかけられると、電圧は全ての内部電極7に対して並列的に伝達されて、活性材料2の全ての層内に所定の電界を生ぜしめ、これにより、活性材料2は機械的に変形することになる。これら全ての機械的な変形の総和が、アクチュエータの両端面において、利用可能な延伸6及び/又は力として供与される。
【0003】
圧電セラミック多層アクチュエータは、従来技術に基づきモノリスとして形成されている。即ち、活性材料に、焼結前にいわゆるグリーンシートとして、貴金属ペーストを用いたスクリーン印刷法により内部電極を設け、加圧してアクチュエータ積層体を形成し、熱分解してから焼結させることにより、モノリス状のアクチュエータが生ぜしめられる。
【0004】
次いでアクチュエータボデーの表面が、形状を付与する方法、一般には研削により加工される。アクチュエータ(図2参照)に対して、導出された内部電極7の領域内に、例えば電気めっき法又は金属ペーストのスクリーン印刷により、ベースメタライジング部3が付与される。このベースメタライジング部3は、金属の外部電極4、例えば構造化された金属薄板、線材網又は線材織布を付与することによって補強される。この外部電極4には、電気的な接続部5がろう接される。接続部5のろう接前又はろう接後に、アクチュエータは電気的に絶縁性のコーティングで被覆され、このコーティングは更に、アクチュエータ表面を機械的な損傷から保護する。
【0005】
図1は、従来技術に基づく圧電セラミック多層アクチュエータを示し、図2は改良として、ベースメタライジング部3と接続部5との間に設けられた外部電極4を示すものである。
【0006】
このようなアクチュエータ及び外部電極の構成及び製造は、例えばEP0844678B1、DE3330538A1、DE4036287C2、US5281885、US4845399、US5406164及びJP07−226541Aに詳しく記載されている。
【0007】
多くの用途が多層アクチュエータ(以下は一般的にアクチュエータとも呼ぶ)に対して課す要求は、アクチュエータに、長期間にわたり、その特性を変化させることなく基準電圧をかけることができるようになっている、ということである。典型的な用途は、特定の位置に移動し且つ場合によってはこの位置を何ヶ月も何年も保持せねばならない作動駆動装置や位置決め駆動装置である。前記要求は、上述の従来技術に基づくアクチュエータでは満たすことができない。
【0008】
その理由は、アクチュエータ表面の高い電界強度に基づいて、極性分子、一般には水蒸気が、周辺から引き寄せられるからである。この水蒸気は、あらゆる公知のポリマーコーティングに多かれ少なかれ迅速に浸透して、最終的にはアクチュエータ表面において導電率を高め且つ漏れ電流を増大させる。漏れ電流は、同様に上昇するアクチュエータ温度に基づいて、電界に基づく水蒸気吸着と、アクチュエータ温度に基づく脱着との平衡が生じるまで増大する。標準的な実験環境条件において、内部電界強度が2000V/mmの場合、7×7×30mmの寸法を有するアクチュエータに関する、時間にわたる典型的な漏れ電流推移を、図8の線図が示している。
【0009】
被覆としてセラミックコーティング又はガラスを使用した場合、水蒸気は、アクチュエータの運転に基づいて必然的に形成される、コーティングの微小亀裂を通って浸入する。
【0010】
金属ケーシング内に適当な封止コンパウンドを注入することも、成功にはつながらない。それというのも、前記作用が生じるには、封止コンパウンド内に含まれているか、或いは密閉段階の間に浸入する極少量の水で、既に十分であるからである。
【0011】
弱点は、ケーシングの底部及びカバーにおいて常に必要な延伸継ぎ目と、接続部若しくは接続線材とにより形成される。延伸継ぎ目を介して湿分が浸入するようになっており、接続部若しくは接続線材は、コーティング若しくはケーシングを通して外部に導出する必要がある。プラスチックにより絶縁された線材の使用は、上記の理由から成功には至らない。
【0012】
本発明の根底を成す課題は、ケーシング内に配置された圧電セラミック多層アクチュエータを有するアクチュエータモジュールを改良して、長期運転の後でもアクチュエータ表面に導電率の増大延いては漏れ電流の増大が生じないようにすることにある。
【0013】
この課題は本発明に基づき、請求項1の特徴により解決される。
【0014】
ケーシングが密閉されており、多層アクチュエータとケーシングとの間に、水を化学的に変換及び/又は結合する媒体が部分充填又は充填された空間が配置されていることによって、浸入する水蒸気が、アクチュエータ表面における導電率の増大延いては漏れ電流の増大を生ぜしめることはなくなる。前記水は、水蒸気とも理解される。
【0015】
密閉されたケーシングに基づいて、極めて少量の水若しくは水蒸気しか、ケーシングの内部に流入せず、この少量の水若しくは水蒸気は、前記媒体により変換されるか結合されるので、アクチュエータ表面に堆積することはない。
【0016】
種々様々な媒体が適している。ある構成において、媒体は水と反応して水を消費する。好適には、媒体はポリウレタン樹脂を含有しているか、又は媒体は、粉末状にされた乾燥剤から成っている。
【0017】
ケーシング内には、多層アクチュエータ用の電気的な接続部材が導入されている。ケーシングは、好適な構成では、ケーシングカバー、ケーシング周壁及びケーシング底部から成っている。好適には、電気的な接続部材は電気的に絶縁されて、ケーシング底部に密に組み込まれている。
【0018】
このことは、ある構成では、ケーシング底部が金属から成っており、電気的な接続部材がケーシング底部に設けられたガラス貫通案内部又はセラミック貫通案内部を介して、ケーシング内部に導入されていることによって達成される。ガラス貫通案内部は気密且つ水密に形成されていなければならない。
【0019】
択一的に、ケーシング底部はセラミックから成っていて、メタライジングされた開口部を有しており、これらの開口部内に電気的な接続部材がろう接されている。好適には、ケーシング底部は外周面にメタライジングされた領域を有しており、この領域を介して、ケーシング底部とケーシング周壁との密な結合が行われる。
【0020】
ある構成では、ケーシングカバーがセラミックから成っていて、好適には外周面にメタライジングされた領域を有しており、この領域を介して、ケーシングカバーとケーシング周壁との密な結合が行われる。
【0021】
アクチュエータが妨害されることなく延伸可能であり且つこのことによってケーシングに損傷を与えないようにするために、ケーシング周壁は、好適な構成では全体的又は部分的に、金属ベローズから成っている。
【0022】
好適には、全体的又は部分的に金属ベローズから成るケーシング周壁によって、多層アクチュエータに対する所要の機械的な予荷重が生ぜしめられる。
【0023】
ある構成において、ケーシング周壁は全体的又は部分的にセラミックから成っており、電気的な接続部材は、ケーシング底部及び/又はケーシングカバー内に配置されている。
【0024】
ケーシング底部及び/又はケーシングカバーは、可撓性のダイヤフラムから成っていてもよい。この場合、金属ベローズは省くことができる。
【0025】
好適には、ケーシング底部と、ケーシング周壁と、ケーシングカバーとは、溶接、特にレーザ溶接、金属ろうを用いた硬ろう付け、ガラスろうを用いたろう付け、又は軟ろう付けによって、密に結合される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】モノリス状の多層アクチュエータの構成を示す図である。
図2図1の詳細図である。
図3】ケーシング周壁9としての金属ベローズ、ケーシングカバー8、及びガラス貫通案内部12内に接続部材11としてコンタクトピンを備えたケーシング底部10を有する、密閉されたケーシング23を示す図である。ケーシング23は溶接されている(符号13)。ケーシングカバー8、ケーシング周壁9及びケーシング底部10は、金属から成っている。
図4】ケーシング周壁9としての金属ベローズ、ケーシングカバー8、及びろう接されたセラミック貫通案内部14内に接続部材11としてコンタクトピンを備えたケーシング底部10を有する、密閉されたケーシング23を示す図である。ケーシングは溶接されている(符号13)。
図5】ケーシング周壁9としての金属ベローズ、周面にメタライジング部を備えたケーシングカバー16としてのセラミックカバー、及び周面のメタライジング部と、接続部材11としてろう接されたコンタクトピンとを備えたケーシング底部17としてのセラミック底部を有する、密閉されたケーシングを示す図である。ケーシングはろう接されている(符号18)。
図6】互いに溶接されている金属ベローズと金属管15の2つの部分から成るケーシング周壁9、金属製のケーシングカバー8、及びガラス貫通案内部12内に接続部材11としてコンタクトピンを備えた金属製のケーシング底部10を有する、密閉されたケーシング23を示す図である。ケーシングは溶接されている(符号13)。
図7】部分的にメタライジングされたセラミック管20にろう接されている2つの金属ベローズを備える、3つの部分から構成されたケーシング周壁9、金属製のケーシングカバー8及び金属製のケーシング底部10を有する、密閉されたケーシングを示す図である。接続部材11としてのコンタクトピンが、アクチュエータ1の外部電極4に直接に接続されている。ケーシングは溶接されている(符号13)。
図8】ケーシング無しの従来技術によるアクチュエータ1の漏れ電流特性と、本発明に基づき密閉された、アクチュエータモジュール22としてのアクチュエータ1の漏れ電流特性とを示す図である。
【0027】
以下に、本発明を図3図7につき詳しく説明する。
【0028】
アクチュエータモジュールとは、アクチュエータ1とケーシングとから成るユニットを意味するものである。
【0029】
圧電セラミックアクチュエータ1を、金属又はセラミックのケーシング23内に組み込むことを提案する。このケーシング23において、接続部材11はケーシング底部10,17の一体的な構成部分である。接続部材11は、例えばガラス貫通案内部12によって、周辺に対して気密にシールされていてよい。ケーシング23は、例えば溶接部13によって密閉されている。ケーシング形状は、アクチュエータ1を所定の位置に保持するために、小さな機械的な予荷重がアクチュエータ1に加えられるように選択されている。ケーシング23は、アクチュエータ1の行程に抗して過大な抵抗を生ぜしめないように、少なくとも部分的に可撓性でなければならない。このことは、ケーシング23、若しくはケーシング周壁9を金属ベローズとして形成するか、又はケーシング23を金属ダイヤフラムによって閉鎖することにより、達成される。ケーシングの剛性は、好適にはアクチュエータの剛性に比べ小さい。
【0030】
ケーシング23内には、閉鎖時に閉じ込められた水分子を固定するか、或いは化学的に変換する媒体21が供給される。漏れ電流が発生するには、典型的には表面に吸着されているような極少量の水で十分である。よって、このような最小量の水を非活性化させ、且つケーシング23を金属又はガラス18,19を用いたろう接によって密閉するか、又は溶接13によって密閉することが必要である。
【0031】
このことは、以下の利点をもたらす。即ち:
このように密閉されたアクチュエータモジュール22は、基準電界強度で持続的に運転されても、一定の極微小漏れ電流を示す。図8には、前記のように密閉されたアクチュエータ1における漏れ電流の推移が、線図として示されている。アクチュエータの寸法及びその他のパラメータは、図8に記載の密閉されていないアクチュエータと同じである。密閉されたアクチュエータ1の漏れ電流は、密閉されていないアクチュエータの漏れ電流よりも、約1000000倍小さい。
【0032】
アクチュエータ1の製造に際しては、例えばDE19840488A1に記載の、有機バインダシステムを有する、低温で焼結される圧電セラミックが、125μmの厚さのシートとして準備される。このシートに、市販の内部電極ペーストが、スクリーン印刷によって塗布される。このようなシートが多数積み重ねられて、1つの積層体を形成するように加圧される。その際に、積層体の上面及び/又は下面において、いくつかのシートは、アクチュエータ1を後で電気的に接触接続させることのできる不活性領域を形成するために、内部電極7を塗布されずに残されている。積層体は、複数の個別の棒状のアクチュエータに切断され、これらのアクチュエータは900℃〜1100℃で、好適には1000℃で焼結される。アクチュエータ表面を研削した後で、銀から成るベースメタライジング部3が、スクリーン印刷/焼付け過程により、コンタクト側に付与される。その上に、金属線材網から成る外部電極4がろう接される。次いで、機械的な損傷からの保護及び後続の測定過程における電気的な絶縁のために、アクチュエータ1は、市販のシリコーンラッカによって絶縁される。今や、アクチュエータ1は分極され且つ電気的に測定され得る。
【0033】
アクチュエータケーシング23は、ケーシング周壁9として、アクチュエータ1よりもやや短い金属ベローズを用いることにより、形成される。ケーシング周壁9の両側には、ケーシングカバー8の溶接を可能にする領域が設けられている。ケーシング周壁9若しくは金属ベローズの内径は、アクチュエータ1を金属ベローズ内に挿入した場合に、アクチュエータ1がケーシング周壁9の壁面に接触しない程度の大きさである。
【0034】
ケーシング23用のケーシング底部10,17は、平行平面の金属板に2つの孔を穿孔することにより形成される。これらの孔には、例えばガラスろうにより密閉され且つ電気的に絶縁されたコンタクトピンが、接続部材11として挿入されて、ガラス貫通案内部12を形成している。
【0035】
ケーシングカバー8としては、孔を有しない、平行平面の金属板が用いられる。
【0036】
次いでアクチュエータ1が、エポキシ接着剤によってケーシング底部10,17に固定され、これによりアクチュエータ1は、その外部電極4でもって、接続部材11としての両コンタクトピンに接触することになる。外部電極4とコンタクトピンとの間のコンタクトは、ろう接、溶接、又は導電性接着剤を用いた接着により生ぜしめられる。
【0037】
アクチュエータケーシング23が、アクチュエータ1を覆うように嵌められて、ケーシング底部10,17に、例えばレーザによって溶接される。今、アクチュエータ1は、ケーシング周壁9としての金属ベローズをやや越えて突出している。この過程においてアクチュエータ1は、ケーシング23に接触してはならない。
【0038】
次いで、アクチュエータ1とアクチュエータケーシング23との間の中間室若しくは空間24が、水を消費する媒体21、例えばポリウレタン樹脂、で満たされる。この媒体21は、硬化時に水を吸収して化学的に変換し、その際に例えばCOを遊離させる。
【0039】
次いでケーシングカバー8がアクチュエータ1上に載置され、ケーシング9がカバー8に引き寄せられて、例えばレーザ溶接によって密に取り付けられる。
【0040】
モノリス状の多層アクチュエータを製造する際の上述した手順は、冒頭で述べたように、特許文献や、その他の刊行物に詳しく記載されている。アクチュエータを密閉する際の本発明による手順は、上述した作業過程と同じである必要はない。当業者にとっては、同じ結果をもたらす類似の手順を導き出すことも可能である。
【0041】
「密」とは、気密及び水密であることを意味している。
【符号の説明】
【0042】
1 モノリス状の圧電セラミック多層アクチュエータ
2 圧電活性材料
3 ベースメタライジング部
4 外部電極
5 供給電圧用の接続線材
6 作動中のアクチュエータの運動方向
7 内部電極
8 ケーシングカバー、金属製ディスク
9 ケーシング周壁、金属ベローズ
10 ケーシング底部、孔付きの金属製ディスク
11 接続部材、金属製のコンタクトピン
12 ガラスろうから成るガラス貫通案内部
13 溶接部、溶接シーム
14 ケーシング底部とコンタクトピンとにろう接されたセラミック貫通案内部、メタライジングされたセラミック管片
15 金属管
16 周面がメタライジングされたケーシングカバー、セラミックディスク
17 周面がメタライジングされており、内側がメタライジングされた孔を備えたケーシング底部、セラミックディスク
18 金属ベローズ−底部、金属ベローズ−カバー、又は金属ベローズ−セラミック管のろう接部
19 コンタクトピン−底部のろう接部
20 両端部の周面がメタライジングされたセラミック管
21 充填材としての水結合媒体若しくは水変換媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8