特許第6188731号(P6188731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188731非芳香族から芳香族を分離するための促進輸送膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188731
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】非芳香族から芳香族を分離するための促進輸送膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/36 20060101AFI20170821BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 63/10 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 71/08 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B01D61/36
   B01D69/00 500
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D63/02
   B01D63/08
   B01D63/10
   B01D71/42
   B01D71/40
   B01D71/08
   B01D71/44
   B01D71/38
   B01D71/02
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-560076(P2014-560076)
(86)(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公表番号】特表2015-508710(P2015-508710A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】US2013028495
(87)【国際公開番号】WO2013130923
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2014年10月17日
(31)【優先権主張番号】61/606,080
(32)【優先日】2012年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】506018097
【氏名又は名称】アラムコ サービシズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】ヤハヤ,ガルバ,オー.
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−138136(JP,A)
【文献】 特開昭62−007404(JP,A)
【文献】 特開平04−227823(JP,A)
【文献】 特開平07−275672(JP,A)
【文献】 特開平06−091130(JP,A)
【文献】 特開昭49−048603(JP,A)
【文献】 Carl A.Koval, et al.,Poly(vinyl alcohol)-Silver Nitrate Facilitated Transport Membranes for the Separation of Aromatic and Aliphatic Compounds,Polymer Membranes for Gas and Vapor Separation,2009年 7月23日,Chapter 10, pp 127-134
【文献】 松山秀人 外,硝酸銀を担体とする支持液膜によるベンゼン/シクロヘキサンの分離,化学工学協会年会研究発表講演要旨集,1987年 3月,Vol.52,pp 48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/36
B01D 63/02
B01D 63/08
B01D 63/10
B01D 69/00
B01D 69/10
B01D 69/12
B01D 71/02
B01D 71/08
B01D 71/38
B01D 71/40
B01D 71/42
B01D 71/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族炭化水素供給流から芳香族炭化水素を分離するための装置であって、前記装置が、
膜支持体と、
前記膜支持体上に配置された親水性ポリマー膜マトリックスであって、2.5〜5重量%のポリビニルアルコールとアルギン酸ナトリウムとを含む、親水性ポリマー膜マトリックスと、
架橋剤により前記親水性ポリマー膜マトリックスに結合される硝酸銀であって、脂肪族と比べて芳香族に対してより大きな親和性を示す、硝酸銀と、
前記膜支持体を保持するように構成される膜ハウジングであって、前記膜ハウジングは、入口、透過液出口、および保持液出口を備え、前記入口は、前記芳香族炭化水素供給流を受容するように動作可能であり、前記透過液出口は、透過液流を排出するように動作可能であり、前記保持液出口は、保持液流を排出するように動作可能である、膜ハウジングと、を備え、
前記装置が、前記芳香族炭化水素供給流が前記膜ハウジング内に導入されるとき、非芳香族炭化水素から芳香族炭化水素を分離するように動作可能である、装置。
【請求項2】
前記膜支持体が、ポリアクリロニトリルを含む、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記親水性ポリマー膜マトリックスが、ポリアクリル酸、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される追加の親水性ポリマーをさらに含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記架橋剤が、グルタルアルデヒドを含む、請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記膜ハウジングが、渦巻ハウジング、プレートおよびフレームハウジング、ならびに中空糸束ハウジングからなる群から選択される、請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、40以上53以下の選択性を有するように動作可能である、請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
非芳香族成分から芳香族成分を分離するために促進輸送膜を使用する方法であって、
少なくとも前記芳香族成分の一部が、親水性ポリマー膜マトリックスにわたって拡散するような、膜動作条件下で、請求項1に記載の装置の前記入口に芳香族成分と非芳香族成分とを含む炭化水素流を供給することと、
前記透過液出口を通して、前記炭化水素流と比べて芳香族成分に富む透過液流を引き出すことと、
前記保持液出口を通して、前記炭化水素流と比べて非芳香族成分に富む保持液流を引き出すことと、を含む、方法。
【請求項8】
追加の芳香族成分を除去する蒸留条件下で、蒸留塔に前記保持液流を導入して、希薄非芳香族流と希薄芳香族流とを形成することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記膜動作条件が、パーベーパレーション条件を含む、請求項またはのいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記炭化水素流が液相にある、請求項のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、芳香族および脂肪族化合物の両方を有する炭化水素流から芳香族を分離するために動作可能である促進輸送膜(FTM)に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン(BTX))は、石油化学製品の生産において重要な前駆体として作用する。加えて、芳香族の分離は、石油精製における芳香族含有流の改善および調整に有用である。したがって、これらすべての流れから芳香族を回収するために役立つ経済的な方法を提供することは、有益であろう。
【0003】
石油精製から芳香族を分離するための典型的な方法は、液体/液体抽出、および抽出または共沸蒸留を含み得る。しかし、これらの方法は、典型的には、非常に高価であり、資本集約的である。例えば、蒸留塔(distillation columns)は、典型的には、最大300フィートの高さであり、200枚を超えるトレイを含有し得る。還流比は、一般的に10を超え、したがって、本処理は、非常にエネルギー集約型である。このように、より経済的な分離処理が必要とされる。
【0004】
膜のパーベーパレーション(pervaporation)処理は、様々な種類の炭化水素を分離するために使用されてきた。しかし、これらの従来の膜の多くは、低い選択性(すなわち、5〜20)および/または低いフラックス速度(0.03〜0.3kg/m/時)に悩まされている。したがって、従来の膜の商業的実現性は限られ、それらが、例えば、抽出蒸留などの従来の膜のパーベーパレーション処理と競合することを妨げる。したがって、従来の膜の上に、フラックス速度および/または選択性を改善したFTMを有することは、有利であろう。FTMが、従来の膜を超える強度および安定性を提供する場合にも有利であろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、一般的に、FTMと、FTMを生成および使用する方法とを対象とする。一実施形態によれば、FTMは、芳香族および非芳香族の両方を含む炭化水素流から高価値の芳香族の分離および回収を支援する。別の実施形態において、FTMは、さらなる分離を提供するために、抽出蒸留処理と組み合わされる。
【0006】
本発明の様々な実施形態は、FTMの開発と、石油精製所での芳香族含有流のような非芳香族富化流から、費用対効果の高い方法で高価値の芳香族炭化水素を分離して回収するためにFTMを生成および使用する方法とに関する。例えば、一実施形態において、錯化剤が炭化水素供給の中の芳香族と選択的に相互作用するように、FTMは、ポリマー親水性膜の骨格または膜マトリックスの上に、錯化剤(すなわち、芳香族に対する強い親和性を示す担体)を組み込むことによって取得され、それによって、従来のポリマー膜と比べて膜の分離特性を大幅に増強させる。FTMは、従来の膜よりも著しく高い選択性を有する優れた性能を示す。実施形態によれば、FTMは、少なくとも約40の選択性を有するように動作可能である。
【0007】
別の実施形態によれば、FTMは、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)のようなガラス状親水性ポリマーの組み合わせから作られる。銀塩は、脂肪族よりもむしろ芳香族に対して強い親和性を有するので、硝酸銀(AgNO)のような銀塩が、錯化剤(例えば、担体)として使用される。
【0008】
別の実施形態によれば、芳香族炭化水素供給流から芳香族炭化水素を分離するための装置が提供される。本装置は、膜支持体と、膜支持体上に配置された親水性ポリマー膜マトリックスと、架橋剤を使用して親水性ポリマー膜マトリックスに結合される担体剤と、膜支持体を保持するように構成される膜ハウジングとを含む。親水性ポリマー膜マトリックスは、有効量のPVAおよびSAを含む。担体剤は、脂肪族と比べて芳香族に対してより高い親和性を示し得る。膜ハウジングは、入口、透過液出口、および保持液出口を含む。入口は、芳香族炭化水素供給流を受信するように動作可能であり、透過液出口は、透過液流を排出するように動作可能であり、保持液出口は、保持液流を排出するように動作可能である。本装置は、芳香族炭化水素供給流が、膜動作条件下で膜ハウジング内に導入されるとき、非芳香族炭化水素から芳香族炭化水素を分離するように動作可能である。
【0009】
別の実施形態によれば、担体剤は、金属塩、アミン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、担体剤は、AgNOを含む。好ましい実施形態において、AgNOは、有効量の架橋剤(好ましくは、約5重量パーセント)、および約80〜約93重量パーセントの量の水(好ましくは蒸留水)と混合された約2〜約15重量パーセントの量のAgNOの担体溶液を作ることにより、親水性ポリマー膜マトリックスに組み込まれ、その後、担体剤と親水性ポリマー膜マトリックスとの結合に有効な期間、親水性ポリマー膜マトリックスを担体溶液に接触させる。
【0010】
別の実施形態によれば、膜支持体は、ポリアクリロニトリルを含む。別の実施形態において、親水性ポリマー膜マトリックスは、PVA、SA、ポリアクリル酸、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される追加の親水性ポリマーを含む。
【0011】
別の実施形態によれば、親水性ポリマー膜マトリックスは、親水性ポリマーおよび蒸留水を含む流延溶液を得ることと、流延溶液で膜支持体を被覆することとによって形成される。一実施形態において、親水性ポリマーは、PVAおよびSAを含む。別の実施形態において、流延溶液は、約1〜約5重量パーセントの量のPVA、約1〜約5重量パーセントの量のSA、および残部の水を含む。
【0012】
別の実施形態によれば、架橋剤はグルタルアルデヒドを含む。別の実施形態において、膜ハウジングは、以下のいずれかである。渦巻ハウジング、プレートおよびフレームハウジング、ならびに中空糸束ハウジング。
【0013】
本発明のある実施形態はまた、FTMの生成方法を提供する。例えば、本発明の実施形態によれば、FTMを生成する方法は、親水性ポリマーおよび蒸留水を含む流延溶液を得るステップと、親水性ポリマー膜を形成するために流延溶液で膜支持体を被覆するステップと、親水性ポリマー膜支持体を乾燥させるステップとを含む。本方法は、担体剤、架橋剤、および蒸留水を含む担体溶液を得るステップと、担体溶液を親水性ポリマー膜支持体に接触させるステップと、膜支持体を乾燥させるステップとをさらに含む。芳香族および非芳香族炭化水素を有する炭化水素流が、膜動作条件下でFTMに導入されるとき、FTM製品は、非芳香族成分から芳香族成分を分離するように動作可能である。
【0014】
一実施形態によれば、担体溶液を得るステップは、残部の蒸留水とともに、約2〜約15重量パーセントの量のAgNOを約5重量パーセントの量のグルタルアルデヒドで溶解することを含む。別の実施形態において、親水性ポリマーは、PVA、SA、ポリアクリル酸、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
別の実施形態によれば、流延溶液を得るステップは、蒸留水に最大5重量パーセントの親水性ポリマーを溶解することを含む。別の実施形態によれば、流延溶液を得るステップは、残部の蒸留水とともに、約1〜約5重量パーセントの量のPVAを約1〜約5重量パーセントの量のSAで溶解することを含む。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、FTMを使用して炭化水素流の中の非芳香族成分から芳香族成分を分離するための方法をさらに提供する。一実施形態において、少なくとも芳香族成分の一部が親水性ポリマー膜マトリックスにわたって拡散するように、芳香族成分を分離するためにFTMを使用する方法は、膜動作条件下で、本明細書中に記載のいずれかの装置の入口に芳香族成分および非芳香族成分を含む炭化水素流を供給するステップを含む。この方法はさらに、透過液出口を通して炭化水素流と比べて芳香族成分に富む透過液流を引き出し、かつ保持液出口を通して炭化水素流と比べて非芳香族成分に富む保持液流を引き出すステップを含む。
【0017】
別の実施形態によれば、本方法は、追加の芳香族成分を除去する蒸留条件下で蒸留塔に保持液流を導入し、希薄非芳香族流および希薄芳香族流を形成するステップをさらに含む。別の実施形態において、膜動作条件は、通常、パーベーパレーション(pervaporation)の間に遭遇する動作条件を含む。別の実施形態において、炭化水素流は液相にある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明は、例示の目的のために多くの具体的な詳細を含むが、以下の詳細における多くの例、変形、および代替物は本発明の範囲および趣旨内であることを関連技術分野の当業者は認識するであろうと理解される。したがって、本明細書に記載されている、本発明の例示的な実施形態は、一般性を失うことなく、かつ制限を課されることなく、請求項に係る発明に関連して示される。
【0019】
本発明の実施形態は、親水性ポリマーから調製されるFTMを対象とする。FTMは、かかる炭化水素を含有する混合物から芳香族および非芳香族炭化水素を分離するのに有用である。本発明の他の実施形態は、FTMを調製するための処理を対象とし、該処理は、ポリマーの架橋を促進するために、膜動作条件下でFTMのポリマーを有効量の架橋剤に接触させ、これにより、架橋されたポリマー膜を形成することを含む。本発明の様々な実施形態によれば、架橋されたポリマー膜は、芳香族炭化水素に対する選択性を示す。
【0020】
ある実施形態によれば、FTMを調製するために使用され得る好適な親水性ポリマーは、PVAおよびSAを含む。別の実施形態において、追加の親水性ポリマーは、以下のうちの1つ以上を含む:ポリアクリル酸、キトサン、ポリアクリルアミド、ならびにポリビニルアミン。好ましくは、本発明の親水性ポリマーは、親水性ポリマーが、好適な膜動作条件下で有効量の架橋剤の存在において架橋を受けるように選択される。
【0021】
実施形態は、FTMの開発に焦点をあてる。任意に、FTM膜は、より費用効率の良い方法で、高価値の芳香族を分離し、回収するための抽出蒸留処理と結合される。一実施形態において、石油精製からの芳香族含有流は、炭化水素供給として使用される。炭化水素供給のための他の許容可能な供給源は、非限定的な例として、ナフサクラッカ供給流、輸送用ガソリン燃料混合供給原料、および改質油流出流を含む。
【0022】
さらに、一実施形態では、FTMは、親水性ポリマー膜の骨格または膜マトリックス上で、錯化剤または担体を組み込む(すなわち、芳香族に対する強い親和性を示す)ことによって得られる。錯化剤は、混合物の中の芳香族と選択的に相互作用するように動作可能である。実施形態によれば、FTMは、少なくとも約40の選択性を有するように動作可能である。
【0023】
別の実施形態において、膜動作条件は、パーベーパレーションおよびパーストラクション(perstraction)を含む。パーベーパレーションは、透過化合物を除去するために、膜の透過液側を真空(すなわち、低下圧力)にし、一方、パーストラクションは、透過液を運び出すために、液体または気体掃引流を利用する。このように、従来の蒸留処理および他の従来の抽出処理とは異なり、パーベーパレーションまたはパーストラクションにおける分離メカニズムは、成分の相対揮発度に基づかず、むしろ、分離メカニズムは、供給物質の収着および拡散特性と、FTMの選択透過性との間の差に基づく。
【0024】
一実施形態では、FTMは、石油および化学流内の非芳香族からの、硫黄および窒素ヘテロ原子環式化合物を含む芳香族の分離に有用であり、また、飽和物からの、大きな置換芳香族の分離に特に有用であることが発見された。典型的な供給流は、重質接触ナフサ流、中間接触ナフサ流、軽質芳香族コンテンツ流、光触媒サイクル油、ジェット燃料、ディーゼル、および回収可能な量のBTX、または飽和物と組み合わせた他の芳香族を含有する化学工場内での流れを含む。
【0025】
一実施形態では、膜自体は、任意の便利なモジュール設計を利用する任意の便利な形態であり得る。したがって、膜材料のシートは、渦巻またはプレート、およびフレーム透過セルモジュールにおいて使用され得る。膜の中空糸ハウジングは、チューブまたは繊維の内部空間における供給または掃引液体(または真空)のいずれかと束になった構成で使用され得、他の材料は、他方の側にある。
【0026】
さらなる実施形態では、FTMの使用は、別個の抽出蒸留処理の前または後に統合されることが可能であろう。蒸留処理の前に使用される場合、FTMは、一つにはより少ない供給流量が処理されることによって、既存の塔(column)からのより高い生成物の収率または品質を可能にする。蒸留処理に続いて使用される場合、特に高純度の製品が必要とされる場合、FTMは、蒸留塔の上部または底部いずれかの生成物の研磨ステップとして作用する。
【0027】
本発明の様々な実施形態によれば、FTMは、従来の膜上に進歩性のある利点を提供する。例えば、本発明の少なくとも1つの実施形態によるFTMは、芳香族および脂肪族化合物の両方を有する炭化水素流から芳香族を分離するために動作可能であるFTMと、FTMを生成および使用する処理とを提供し、この処理は、全体的な処理に必要なエネルギー消費の低減および膜交換コストの低減による節減によって、炭化水素流からの芳香族の分離に関連する投資および運用コストを削減する。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、本発明の実施形態を示す目的のために提供される。しかし、これらの実施例は本質的に単なる例示であり、本発明の処理の実施形態は、必ずしもこれに限定されないことが理解されるべきである。
【0029】
芳香族および脂肪族化合物の両方を含有する炭化水素供給は、1:4の比のベンゼン対シクロヘキサンを伴いて調製された。サイズおよび沸点がベンゼンと似ているため、シクロヘキサンが脂肪族化合物の代表として使用された。膜ハウジングは、親水性ポリマー膜マトリックスが板上に配置された多孔質金属板(すなわち、膜支持体)によって2つの区画に分離されたセルを使用して作られた。膜ハウジングは、ベンゼン・シクロヘキサン溶液の混合液で満たされた5Lの貯蔵容器を通し、ポンプを介して付着された。既知組成物の供給溶液は、膜セルの供給側を通り過ぎてポンプ輸送され、その後、制御された流量で貯蔵容器に戻される。貯蔵容器内のベンゼン濃度は、熱検出器および積分器を備えたガスクロマトグラフ(例えば、Varian 3300)を用いて、時間に対して測定された。膜貫通フラックスは、下流の真空ポンプによって生成され、透過測定は、膜の下流側の真空下で行われた。上流の圧力は、大気圧に維持された。膜ハウジングの他方の側は、通常、透過蒸気を凝縮し、収集するために、真空ポンプに液体窒素冷却トラップを介して付着された。冷却トラップ内に蓄積され透過液の重量および濃度はまた、収集された試料の重量の測定およびガスクロマトグラフィー分析によって、それぞれ経時的に決定された。典型的なパーベーパレーション実験において、透過液の試料が約1〜3時間の期間にわたって収集される前に、膜フラックスは、約2〜3時間安定化させることが可能であった。実験は、0.2mmHgの透過圧力、30℃の温度、および異なるポリマー膜の種類により実施された。
【0030】
親水性ポリマー膜マトリックスを作るために、いくつかの流延溶液を、約90℃の蒸留水に様々な量のPVAおよびSAを個別に溶解することによって調製し、各ポリマーのための均質な溶液を生成した。担体溶液は、2〜15重量パーセントのAgNOと、蒸留水中の5重量パーセントのグルタルアルデヒド(GA)架橋剤とを混ぜることによって調製した。流延溶液は、その後、膜支持体(PAN)上で被覆され、一晩放置して乾燥させた。被覆膜を、約5分間担体溶液に浸漬させ、その後、取り出し、一晩乾燥させた。複合膜は、架橋および担体溶液に浸漬された時、暗緑色になった。4つの膜の組成物は、以下の表1で提供される。
【0031】
【表1】
【0032】
調製されたFTMは、透過側を真空下に保持して、上で説明した膜ハウジング中、1:4(重量/重量)のベンゼン:シクロヘキサンの供給濃度で試験された。結果は、以下の表2で提供される。
【0033】
【表2】
【0034】
フラックスは、以下の等式に基づいて算出された。
【0035】
【数1】
式中、qはフラックス、mは透過流動体の質量(kg)、Aは有効膜の断面積(m)、tは時間(時間(hour))である。
【0036】
総ベンゼン・シクロヘキサンフラックスは、冷却トラップに集められた液体、収集時間、および供給溶液と接触する膜表面積から決定された。個々のベンゼンおよびシクロヘキサンフラックスは、全フラックスおよびベンゼン濃度から算出された。
【0037】
処理の分離係数は、以下の等式により決定された。
【0038】
【数2】
式中、[Cは、透過液の中のベンゼンの濃度、[Cは、透過液の中のシクロヘキサンの濃度、[Cは、供給の中のベンゼンの濃度、[Cは、供給の中のシクロヘキサンの濃度である。
【0039】
本発明は、開示された要素を好適に含み、それらから構成され、またはそれらから本質的に構成され得、開示されていない要素がない限り実施され得る。例えば、いくつかのステップは、単一のステップに集約可能であることが当業者によって認識され得る。
【0040】
特に定義されない限り、使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0041】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により特に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0042】
本明細書で使用されるとき、および添付の特許請求の範囲において、「含む(comprise)」、「有する(has)」、および「含む(include)」のような用語、およびそのすべての文法上の変化形はそれぞれ、追加要素またはステップを排除しない開放的で非限定的な意味を有するように意図される。
【0043】
「任意に」は、続いて記載される事象または状況が、起こり得る、または起こり得ないことを意味する。本説明は、事象または状況が起こる事例、およびそれが起こらない事例を含む。
【0044】
範囲は、ほぼ1つの特定の値からおよび/またはほぼ別の特定の値までのものとして、本明細書で表現され得る。かかる範囲が表現されるとき、別の実施形態は、前述の範囲内の全ての組み合わせに加えて、ある特定の値から、および/または他の特定の値までであることが理解されるべきである。
【0045】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明の原理および範囲から逸脱することなく、種々の変更、置換、および変形をこれに行うことが可能であることを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその適切な法的均等物によって決定されるべきである。