特許第6188760号(P6188760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188760
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】修飾毒素
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/34 20060101AFI20170821BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20170821BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20170821BHJP
   C07K 14/475 20060101ALI20170821BHJP
   C07K 14/62 20060101ALI20170821BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20170821BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20170821BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170821BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20170821BHJP
   A61K 39/385 20060101ALI20170821BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170821BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170821BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170821BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20170821BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C07K14/34ZNA
   C07K14/54
   C07K14/575
   C07K14/475
   C07K14/62
   C07K16/00
   C07K19/00
   C12N15/00 A
   A61K39/00 H
   A61K39/385
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P35/04
   A61P43/00 121
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】118
(21)【出願番号】特願2015-195872(P2015-195872)
(22)【出願日】2015年10月1日
(62)【分割の表示】特願2010-513449(P2010-513449)の分割
【原出願日】2008年6月20日
(65)【公開番号】特開2016-74655(P2016-74655A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2015年10月30日
(31)【優先権主張番号】60/945,556
(32)【優先日】2007年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/945,568
(32)【優先日】2007年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/954,284
(32)【優先日】2007年8月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/954,278
(32)【優先日】2007年8月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/032,888
(32)【優先日】2008年2月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/032,910
(32)【優先日】2008年2月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/042,178
(32)【優先日】2008年4月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/042,187
(32)【優先日】2008年4月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509350723
【氏名又は名称】アンジェリカ セラピューティックス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,クラウド,ジォフレイー
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ,ディープシカ
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー,マシュー,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ラスト,アリソン,ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】キーン,サイモン
【審査官】 松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/052129(WO,A1)
【文献】 特表2004−533845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2又は200の全長配列90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ少なくとも1個のT細胞エピトープのエピトープコア以上のアミノ酸残基の置換を含む少なくとも1個の修飾T細胞エピトープコアを含み、
前記1以上のアミノ酸残基の置換は、
(i)配列番号2又は200のアミノ酸残基97位のバリンのスレオニン、アラニン、又はアスパラギン酸の置換又は
(ii)配列番号2又は200のアミノ酸残基7位のバリンのアスパラギン酸への置換、アミノ酸残基107位のロイシンのアスパラギンへの置換、及びアミノ酸残基124位のフェニルアラニンのヒスチジンへの置換
あり、
修飾ジフテリア毒素が未修飾ジフテリア毒素と比べて低下した免疫原性を示す、修飾ジフテリア毒素。
【請求項2】
前記修飾ジフテリア毒素が更に細胞結合リガンドを含有してなる、請求項1に記載の修飾ジフテリア毒素。
【請求項3】
細胞結合リガンドが、抗体もしくはその抗原結合断片、サイトカイン、ポリペプチド、ホルモン、増殖因子又はインスリンである、請求項に記載の修飾ジフテリア毒素。
【請求項4】
サイトカインを含有し、且つ該サイトカインがインターロイキン2(IL−2又はインターロイキン3(IL−3である、請求項に記載の修飾ジフテリア毒素。
【請求項5】
抗体を含有し、且つ該抗体が、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、ヒト化抗体、遺伝子組換え抗体、又は移植抗体である、請求項に記載の修飾ジフテリア毒素。
【請求項6】
更に、前記修飾ジフテリア毒素と細胞結合リガンドとを結合するペプチドリンカーを含む、請求項2〜のいずれかに記載の修飾ジフテリア毒素。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の前記修飾ジフテリア毒素と製薬学的に許容し得る担体とを含有してなる医薬組成物。
【請求項8】
被検体の悪性疾患の治療薬製剤における請求項に記載の医薬組成物の使用であって、前記悪性疾患が血液癌、固形腫瘍又はそれらの転移であることを特徴とする使用。
【請求項9】
非悪性疾患の治療薬製剤における請求項に記載の医薬組成物の使用であって、前記非悪性疾患が移植片対宿主病又は乾癬であることを特徴とする、使用。
【請求項10】
被検体の悪性疾患の治療薬製剤における請求項に記載の医薬組成物と抗癌剤の使用であって、前記悪性疾患が血液癌、固形腫瘍又はそれらの転移であることを特徴とする、使用。
【請求項11】
前記血液癌が、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、再発性/難治性T細胞非ホジキンリンパ腫、再発性/難治性B細胞非ホジキンリンパ腫、皮下脂肪組織様T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫鼻型、慢性リンパ球性白血病、固形腫瘍、又はヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型関連急性T細胞白血病/リンパ腫である、請求項又は10に記載の使用。
【請求項12】
前記固形腫瘍が、皮膚、黒色腫、肺、膵臓、乳房、卵巣、結腸、直腸、胃、甲状腺、喉頭、前立腺、結腸直腸、頭、首、眼、口、器官、食道、胸部、骨、睾丸、リンパ、骨髄、骨、肉腫、腎臓、汗腺、肝臓、腎臓、脳、消化管、上咽頭、尿生殖路及び筋肉からなる群から選択される組織若しくは器官の固形腫瘍、又はそれらのいずれかの転移である、請求項又は10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾毒素、修飾毒素を含有する融合タンパク質、その組成物、修飾毒素を調
製する方法、及び修飾毒素を用いて癌などの疾患を治療する方法に関する。
【0002】
(相互参照)
本出願は、2007年6月21日付け出願の米国特許仮出願第60/945,556号
(代理人整理番号33094−702.101)、2007年8月6日付け出願の米国特
許仮出願第60/954,278号(代理人整理番号33094−702.102)、2
008年2月29日付け出願の米国特許仮出願第61/032,888号(代理人整理番
号33094−702.103)、2008年4月3日付け出願の米国特許仮出願第61
/042,178号(代理人整理番号33094−702.104)、2007年6月2
1日付け出願の米国特許仮出願第60/945,568号(代理人整理番号33094−
703.101)、2007年8月6日付け出願の米国特許仮出願第60/954,28
4号(代理人整理番号33094−703.102)、2008年2月29日付け出願の
米国特許仮出願第61/032,910号(代理人整理番号33094−703.103
)及び2008年4月3日付け出願の米国特許仮出願第61/042,187号(代理人
整理番号33094−703.104)の利益を主張する。これらの出願のそれぞれは、
その全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
治療用タンパク質の効果は、例えば、治療用タンパク質に対する望まれていない免疫反
応によって制限され得る。例えば、幾つかのマウスモノクロナール抗体は、多くのヒト疾
患環境において療法として有望視されているが、ある場合にはかなりの程度のヒト抗マウ
ス抗体(HAMA)反応の誘導により機能しなくなっている[Schroff,R.W.
et al.,(1985)Cancer Res.45:879−885;Shawl
er,D.L.et al.,(1985)J.Immunol.135:1530−1
535]。モノクロナール抗体については、HAMA反応を減少させようとして多数の技
法が開発されている[国際公開第WO89/09622号明細書;欧州特許出願公開第E
P0239400公報;欧州特許出願公開第EP0438310号公報;国際公開第WO
91/06667号明細書]。これらの組換えDNAアプローチは、一般に、最終構造体
においてヒト遺伝情報を増加させながら、最終抗体構造体においてマウス遺伝情報を減少
させている。それにもかかわらず、得られる「ヒト化」抗体は、幾つかの場合においては
、患者において免疫反応を未だに誘発している[Issacs J.D.(1990)S
em.Immunol.,2:449,456;Rebello,P.R.et al.
,(1999)Transplantation 68:1417−1420]。
【0004】
抗体は、免疫反応を開始し得る治療薬として投与される唯一の種類のポリペプチド分子
ではない。ヒト起源のタンパク質及びヒトの内部で生じるアミノ酸配列と同じアミノ酸配
列を有するタンパク質は、ヒトにおいて免疫反応をさらに誘発することができる。注目に
値する例としては、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子[Wadhwa,M.et
al.,(1999)Clin.Cancer Res.,5:1353−1361]及
びインターフェロンα2[Russo,D.et al.,(1996)Bri.J.H
aem.,94:300−305;Stein,R.et al.,(1988)New
Engl.J.Med.,318:1409−1413]の治療使用が挙げられる。こ
れらのヒトタンパク質が免疫原性であるこのような状況において、これらの対象において
別の方法で機能しているこれらのタンパク質に対する免疫学的寛容の推定される破綻が存
在する。
【0005】
治療用タンパク質に対する持続した抗体産生応答は、ヘルパーT細胞の増殖及び活性化
の刺激を必要とする。T細胞の刺激は、T細胞と抗原提示細胞(APC)との間の相互作
用を必要とする。相互作用の中心に、APCの表面のペプチドMHCクラスII複合体に
関与するT細胞表面のT細胞受容体(TCR)がある。ペプチドは、抗原タンパク質の細
胞内プロセシングから派生する。MHCクラスII分子表面での提示によってT細胞の活
性を刺激することができるタンパク質抗原由来のペプチド配列は、一般に「T細胞エピト
ープ」と呼ばれる。このようなT細胞エピトープは、MHCクラスII分子に結合する能
力を有する任意のアミノ酸残基配列であり、少なくとも原則として、TCRを、T細胞応
答を促進するのに関与させることによってこれらのT細胞の活性化を生じることができる
。多くのタンパク質について、少数のヘルパーT細胞エピトープが、T−ヘルパーシグナ
ル伝達を駆動して、治療用タンパク質表面の非常に幅広いレパートリーの露出した表面決
定因子であり得るものに対して持続した高親和性のクラス変換抗体反応をもたらすことが
できることが理解される。
【0006】
T細胞エピトープの同定は、治療用タンパク質中のT細胞エピトープのエピトープ排除
に対する最初のステップとして認められる。国際公開第WO98/52976号及び第W
O00/34317号明細書は、ヒトMHCクラスII DRアロタイプのサブセットを
結合する可能性を有するポリペプチド配列を同定する計算スレッディング法を教示してい
る。これらの応用において、予測されるT細胞エピトープは、計算により同定され、その
後に関心のタンパク質内の慎重なアミノ酸置換の使用によって除去される。しかし、この
スキーム及びその他の計算に基づいたエピトープ同定方法[Godkin,A.J.et
al.,(1998)J.Immunol.,161:850−858;Sturni
olo,T.et al.,(1999)Nat.Biotechnol.,17:55
5−561]を用いて、MHCクラスII分子を結合することができると予測されるペプ
チドが、あらゆる状況で、特に生体内で、プロセシング経路又はその他の現象に起因して
T細胞エピトープとして機能し得ないことが見出されている。さらに、T細胞エピトープ
予測に対する計算法は、一般的にDP又はDQ制限を有するエピトープを予測することが
できなかった。
【0007】
例えばMHCクラスII結合表面の供給源として規定されたMHCアロタイプのB細胞
系を使用する合成ペプチドのMHCクラスII分子結合能力を測定する生体外方法[Ma
rshall K.W.et al.,(1994)J.Immunol.,152:4
946−4956;O’Sullivan et al.,(1990)J.Immun
ol.,145:1799−1808;Robadey C.et al.,(1997
)J.Immunol.,159:3238−3246]は、MHCクラスIIリガンド
の同定に応用し得る。しかし、このような技法は、広い多様性のMHCアロタイプに対す
る多数の可能なエピトープをスクリーニングするのに適合しないし、結合ペプチドのT細
胞エピトープとして機能する能力を確認することもできない。
【0008】
T細胞エピトープの他に、多数のタンパク質が、血管漏出症候群(VLS)を誘発する
ことが知られている。VLSは、血管内皮に対するタンパク質介在損傷から生じる。組換
えタンパク質、免疫毒素及び融合毒素の場合には、損傷は、治療用タンパク質と血管内皮
細胞の間の相互作用によって開始する。
【0009】
VLSの基礎となるメカニズムは、不明であり、おそらくは内皮細胞(EC)において
開始される事象のカスケードを伴うと思われ、また炎症カスケード及びサイトカインを伴
う(Engert et al.,1997)。VLSは、血管内皮細胞(EC)に対す
る損傷並びに間質性浮腫、体重増加並びにその最も重篤な形での腎障害、失語症及び肺水
腫をもたらす液体及びタンパク質の溢出を含む複合病因を有する(Sausville
and Vitetta,1997;Baluna and Vitetta,1996
;Engert et al.,1997)。
【0010】
リシン毒素において見出されるVLSモチーフの一つ、「LDV」モチーフが、インテ
グリン受容体に結合するのに必要とされるフィブロネクチンのサブドメインの活性を本質
的に模倣することが報告された。インテグリンは、細胞と細胞及び細胞と細胞外マトリッ
クスの相互作用(ECM)に介在する。インテグリンは、種々の細胞表面並びに細胞外マ
トリックスタンパク質、例えばフィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、コラーゲ
ン、オステオスポンジン、トロンボンスポンジン及びフォンウィルブランド因子の受容体
として機能する。インテグリンは、血管系の発生及び維持において重要な役割を果たし且
つ血管新生中の内皮細胞接着性に影響を及ぼす。さらに、リシン「LDV」モチーフはロ
タウイルスコートタンパク質に見出すことができ、このモチーフはウイルスによる細胞へ
の結合及び侵入に重要であることが報告されている(Coulson,et al.,P
roc.Natl.Acad.Sci.USA,94(10):5389−5494(1
997))。従って、内皮細胞接着、血管安定性、並びにヒト血管内皮細胞(HUVEC
)に結合するリシン及び血管漏出に介在するVLSモチーフの間に直接的関連があるよう
に思われる。
【0011】
このモチーフが同類アミノ酸置換によって除去された突然変異体脱グリコシル化リシン
毒素A鎖(dgRTA)が組み立てられており、これらの突然変異体は、マウスモデルに
おいてより小さいVLS効果を例証した(Smallshaw et al.,Nat.
Biotechnol.,21(4):387−91(2003))。しかし、これらの
構造体の大部分は、野生型リシン毒素ほど細胞障害性ではなかったdgRTA突然変異体
を産生し、リシン担毒体の重要な及び機能的に重要な構造変化が突然変異により生じたこ
とを示唆している。dgRTAにおけるモチーフがHUVEC相互作用及びその他のタン
パク質におけるVLSに介在したことを示唆する証拠が得られなかったことも留意される
べきである。種々の研究により、突然変異体dgRTAの大部分が余り効果のない担毒体
であることが明らかにされており、これらの突然変異担毒体を使用して融合毒素を組み立
てることができることを示唆する証拠は得られなかった。
【0012】
VLSは、多くの場合、細菌性敗血症中に観察され、IL−2及び種々のその他のサイ
トカインを伴い得る(Baluna and Vitetta,J.Immunothe
r.,(1999)22(1):41−47)。VLSはまた、タンパク質融合毒素又は
組換えサイトカイン療法を受けている患者においても観察される。VLSは、低アルブミ
ン血症、体重増加、肺水腫及び低血圧として現れることができる。免疫毒素及び融合毒素
を受け入れているある患者において、筋肉痛及び横紋筋融解症が、筋肉組織又は脳微小血
管系における液体蓄積の機能としてVLSから生じる(Smallshaw et al
.,Nat.Biotechnol.,21(4):387−91(2003))。VL
Sは、リシンA鎖、サポリン、シュードモナス菌外毒素A及びジフテリア毒素(DT)を
含有する免疫毒素を用いて治療を受けた患者において生じている。標的毒素、免疫毒素及
び組換えサイトカインの有用性に関する臨床試験の全ては、VLS効果及びVLS様効果
が治療母集団で観察されたことを報告した。VLSは、DAB389IL−2を用いて治
療を受けた患者の約30%において生じた(Foss et al.,Clin.Lym
phoma,1(4):298−302(2001)、Figgitt et al.,
Am.J.Clin.Dermatol.,1(1):67−72(2000))。DA
389IL−2(本出願において同じ意味でDT387−IL2ともいう)は、標的リ
ガンドとしてインターロイキン2(IL−2)に遺伝子融合したDT(DT担毒体)の触
媒(C)ドメイン及び貫膜(T)ドメインからなるタンパク質融合毒素である。[Wil
liams et al.,Protein Eng.,1:493−498(1987
);Williams et al.,J.Biol.Chem.,265:11885
−11889(1990);Williams et al.,J.Biol.Chem
.,265(33):20673−20677;Waters et al.,Ann.
New York Acad.Sci.,30(636):403−405,(1991
);Kiyokawa et al.,Protein Engineering,4(
4):463−468(1991);Murphy et al.,In Handbo
ok of Experimental Pharmacology,145:91−1
04(2000)]。
【0013】
VLSはまた、IL−2、増殖因子、モノクロナール抗体の投与及び伝統的な化学療法
の後にも観察されている。重篤なVLSは、液体及びタンパク質溢出、浮腫、低下した組
織内灌流、治療の中止及び臓器不全を引き起こし得る[Vitetta et al.,
Immunology Today,14:252−259(1993);Siegal
l et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,91(20):9514
−9518(1994);Baluna et al.,Int.J.Immunoph
armacology,18(6−7):355−361(1996);Baluna
et al.,Immunopharmacology,37(2−3):117−13
2(1997);Bascon,Immunopharmacology,39(3):
255(1998)]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第WO89/09622号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第EP0239400公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第EP0438310号公報
【特許文献4】国際公開第WO91/06667号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Schroff,R.W.et al.,(1985)Cancer Res.45:879−885
【非特許文献2】Shawler,D.L.et al.,(1985)J.Immunol.135:1530−1535
【非特許文献3】Issacs J.D.(1990)Sem.Immunol.,2:449,456
【非特許文献4】Rebello,P.R.et al.,(1999)Transplantation 68:1417−1420
【非特許文献5】Wadhwa,M.et al.,(1999)Clin.Cancer Res.,5:1353−1361
【非特許文献6】Russo,D.et al.,(1996)Bri.J.Haem.,94:300−305
【非特許文献7】Stein,R.et al.,(1988)New Engl.J.Med.,318:1409−1413
【非特許文献8】Godkin,A.J.et al.,(1998)J.Immunol.,161:850−858
【非特許文献9】Sturniolo,T.et al.,(1999)Nat.Biotechnol.,17:555−561
【非特許文献10】Marshall K.W et al.,(1994)J.Immunol.,152:4946−4956
【非特許文献11】O’Sullivan et al.,(1990)J.Immunol.,145:1799−1808
【非特許文献12】Robadey C.et al.,(1997)J.Immunol.,159:3238−3246
【非特許文献13】Coulson,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94(10):5389−5494(1997)
【非特許文献14】Smallshaw et al.,Nat.Biotechnol.,21(4):387−91(2003)
【非特許文献15】Baluna and Vitetta,J.Immunother.,(1999)22(1):41−47
【非特許文献16】Foss et al.,Clin.Lymphoma,1(4):298−302(2001)
【非特許文献17】Figgitt et al.,Am.J.Clin.Dermatol.,1(1):67−72(2000)
【非特許文献18】Williams et al.,Protein Eng.,1:493−498(1987)
【非特許文献19】Williams et al.,J.Biol.Chem.,265:11885−11889(1990)
【非特許文献20】Williams et al.,J.Biol.Chem.,265(33):20673−20677
【非特許文献21】Waters et al.,Ann.New York Acad.Sci.,30(636):403−405,(1991)
【非特許文献22】Kiyokawa et al.,Protein Engineering,4(4):463−468(1991)
【非特許文献23】Murphy et al.,In Handbook of Experimental Pharmacology,145:91−104(2000)
【非特許文献24】Vitetta et al.,Immunology Today,14:252−259(1993)
【非特許文献25】Siegall et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,91(20):9514−9518(1994)
【非特許文献26】Baluna et al.,Int.J.Immunopharmacology,18(6−7):355−361(1996)
【非特許文献27】Baluna et al.,Immunopharmacology,37(2−3):117−132(1997)
【非特許文献28】Bascon,Immunopharmacology,39(3):255(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、野生型ジフテリア毒素に比べて血管漏出症候群の減少をもたらす及び/又は野
生型ジフテリア毒素に比べて低下した免疫原性を有する修飾ジフテリア毒素を設計する必
要がある。
【0017】
修飾毒素、修飾毒素を含有する融合タンパク質、その組成物、修飾毒素を調製する方法
、及び修飾毒素を用いて癌などの疾患を治療する方法が、本明細書において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
少なくとも1個のT細胞エピトープに少なくとも1個のアミノ酸残基修飾を有する毒素
からなる修飾毒素であって前記修飾毒素が未修飾毒素と比べて低下した免疫原性を示すこ
とを特徴とする修飾毒素、修飾毒素を含有する融合タンパク質、その組成物、修飾毒素を
調製する方法及び疾患を治療する方法が、本明細書において提供される。
【0019】
少なくとも1個のT細胞エピトープに少なくとも1個のアミノ酸残基修飾を含有する修
飾ジフテリア毒素が本明細書において提供される。前記修飾毒素は、未修飾毒素と比べて
低下した免疫原性を示す。T細胞エピトープは、配列番号:181、184、187、1
90、193、196及び199から選択されるアミノ酸配列を含有することができる。
本明細書に開示される化合物の一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素の少なくと
も1個のアミノ酸残基修飾は、配列番号:181、184、187、190、193、1
96及び199のエピトープコアで行われる。さらに別の実施形態において、少なくとも
1個のアミノ酸残基修飾は、配列番号:181、184、187、190、193、19
6及び199のN末端、C末端、又はその両方で行われる。さらに別の実施形態において
、少なくとも1個のアミノ酸残基修飾は、配列番号:181、184、187、190、
193、196及び199のエピトープコアで及びN末端、C末端、又はその両方で行わ
れる。
【0020】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、V7S、V7T、V7N、V7D、
D8E、S9A、S9T、V29S、V29T、V29N、V29D、D30E、S31
N、I290T、D291E、S292A、S292T、V97A、V97T、V97D
、L107N、M116A、M116Q、M116N、F124H、V148A、V14
8T、L298A及びL298Nの中から選択される1個又はそれ以上の修飾を含有する
【0021】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、V7N、V7T、V29N、V29
T及びV29Dの中から選択される2個の修飾を含有する。修飾としては、以下に限定さ
れないが、V7N V29N、V7N V29T、V7N V29D、V7T V29N
、V7T V29T又はV7T V29Dが挙げられる。
【0022】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、V7D、V7N、V7T、L107
A、L107N及びF124Hの中から選択される3個の修飾を含有する。修飾としては
、以下に限定されないが、V7D L107A F124H、V7D L107N F1
24H、V7N L107A F124H、V7N L107N F124H、V7T
L107A F124H及びV7T L107N F124Hが挙げられる。
【0023】
一つの実施形態において、DTバリアントは、例えば、V7D V97D L107N
F124H、V7N V97D L107N F124H、V7T V97A L10
7N F124H、V7T V97D L107N F124H、V7T V97T L
107N F124H、V7D V97A L107N F124H、V7D V97T
L107N F124H、V7N V97A L107N F124H及びV7N V
97T L107N F124Hなどの4つの修飾を含有する。
【0024】
修飾毒素(毒素を含有する融合物を含む)であって、前記毒素がジフテリア毒素又はそ
の断片からなり且つ未修飾ジフテリア毒素と比べて低下した免疫原性を示す修飾毒素が本
明細書において提供される。さらに、ジフテリア毒素と、非ジフテリア毒素ポリペプチド
由来のリガンドの少なくとも1個の細胞結合ドメインとを含有する低下した免疫原性を示
す修飾毒素が、明細書において提供される。一つの実施形態において、非ジフテリア毒素
ポリペプチド由来の細胞結合ドメインは、細胞結合リガンドである。本明細書に開示され
る化合物の別の実施形態において、修飾毒素は、融合毒素であって、非毒素ポリペプチド
が細胞結合リガンド、例えば以下に限定されないが抗体又はその抗原結合断片、サイトカ
イン、ポリペプチド、ホルモン、増殖因子又はインスリンである融合毒素である。
【0025】
一つの実施形態において、修飾毒素は、融合毒素であって、細胞結合ドメインが抗体又
はその抗原結合断片である融合毒素である。抗体は、例えば、モノクロナール抗体、ポリ
クロナール抗体、ヒト化抗体、遺伝子組換え抗体、移植抗体であることができる。抗原結
合断片は、例えば、Fab、Fab、F(ab’)、scFv、scFv、一本鎖
結合ポリペプチド、V又はVであることができる。別の実施形態において、抗体又は
その抗原結合断片は、例えば、B細胞表面分子CD19又はCD22などのB細胞表面分
子に結合する。あるいは、抗体又はその抗原結合断片は、卵巣受容体MISIIR(ミュ
ーラー阻害物質II型受容体)に結合する。
【0026】
非ジフテリア毒素ポリペプチドは、以下に限定されないが、抗体又はその抗原結合断片
、EGF、IL−I、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、
IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、
IL−15、INFα、INFγ、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、TNF、V
EGF、エフリン、BFGF及びTGFからなり得る。一つの実施形態において、サイト
カインはIL2である。
【0027】
また、少なくとも1個のT細胞エピトープに少なくとも1個のアミノ酸残基修飾を有す
る毒素からなる修飾毒素であって、前記修飾毒素が未修飾毒素と比べて低下した免疫原性
を示すことを特徴とする修飾毒素が、本明細書において提供される。さらに、少なくとも
1個のT細胞エピトープに少なくとも1個のアミノ酸残基修飾を有する修飾毒素であって
、前記毒素がジフテリア毒素又はその断片であることを特徴とする修飾毒素が提供される
。また、少なくとも1個のT細胞エピトープに少なくとも1個のアミノ酸残基修飾を有す
る修飾毒素であって、前記毒素がジフテリア融合毒素であることを特徴とする修飾毒素が
提供される。さらにまた、少なくとも1個のT細胞エピトープに少なくとも1個のアミノ
酸残基修飾を有する修飾毒素であって、前記毒素がジフテリア毒素と、非ジフテリア毒素
ポリペプチド由来の少なくとも1個の細胞結合メインとからなるジフテリア融合毒素であ
ることを特徴とする修飾毒素が提供される。また、少なくとも1個のT細胞エピトープに
少なくとも1個のアミノ酸残基修飾を有する修飾毒素であって、前記毒素がジフテリア毒
素と、非ジフテリア毒素ポリペプチド由来の少なくとも1個の細胞結合メインとからなる
ジフテリア融合毒素であり且つ非ジフテリア毒素ポリペプチドがIL−2であることを特
徴とする修飾毒素が提供される。
【0028】
低下した免疫原性及び内皮細胞に対して減少した結合を有する修飾ジフテリア毒素を含
有する組成物であって、前記修飾ジフテリア毒素が、配列番号2又は200に列記したよ
うなアミノ酸配列であって、その中に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有するアミノ酸
配列を含有し、配列番号:181、184、187、190、193、196及び199
の中から選択されるアミノ酸配列を含有する少なくとも1個のT細胞エピトープが修飾さ
れ、及び少なくとも1個のアミノ酸修飾が、配列番号2又は200の残基7−9、29−
31及び290−292の中から選択される領域の(x)D/E(y)モチーフ内で行わ
れ、及び前記修飾ジフテリア毒素が、未修飾ジフテリア毒素に匹敵する細胞毒性を有し、
位置(x)での修飾が、A、S、E、F、C、M、T、W、Y、P、H、Q、D、N、K
、R、G、L及び表1の修飾又は異常アミノ酸の中から選択されるアミノ酸残基によるV
又はIの置換であり;及び/又は位置D/Eでの修飾が、A、S、E、I、V、L、F、
C、M、G、T、W、Y、P、H、Q、N、K、R及び表1の修飾又は異常アミノ酸の中
から選択されるアミノ酸残基によるD又はEの置換であり;及び/又は位置(y)での修
飾が、I、F、C、M、A、G、T、W、Y、P、H、E、Q、D、N、K、R、S、L
、V及び表1の修飾又は異常アミノ酸の中から選択されるアミノ酸残基による置換である
ことを特徴とする低下した免疫原性及び内皮細胞に対して減少した結合を有する修飾ジフ
テリア毒素を含有する組成物が、本明細書において提供される。
【0029】
未修飾ジフテリア毒素は、例えば、配列番号2又は200のアミノ酸配列あるいは配列
番号:4−147のいずれか一つのアミノ酸配列を有することができる。
【0030】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、V7T、V7N、V7D、D8N、
S9A、S9T、S9G、V29N、V29D、V29T、D30N、S31G、S31
N、I290T、D291E、S292A、S292G及びS292Tの中から選択され
る1個又はそれ以上の修飾を含有する。
【0031】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、2個の修飾を含有する。このような
修飾ジフテリア毒素は、例えば、V7N V29N、V7N V29T、V7N V29
D、V7T V29N、V7T V29T又はV7T V29Dなどの突然変異の組み合
わせを含有することができる。
【0032】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、3個の修飾を含有する。このような
修飾ジフテリア毒素は、例えば、V7N V29N I290N,V7N V29N I
290T、V7N V29N S292A、V7N V29N S292T、V7N V
29T I290N、V7N V29T I290T、V7N V29T S292A、
V7N V29T S292T及びV7T V29T I290Tなどの突然変異の組み
合わせを含有することができる。
【0033】
修飾ジフテリア毒素を含有する組成物は、未修飾ジフテリア毒素と比べて低下した免疫
原性(修飾T細胞エピトープ及び/又はB細胞エピトープ)及びヒト血管内皮細胞(HU
VEC)に対する低下した結合活性を示す(有する)。このような組成物は、非ジフテリ
ア毒素ポリペプチド、例えば以下に限定されないが、抗体又はその抗原結合断片、EGF
、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8
、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−1
5、INFα、INFγ、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、TNF、VEGF、
エフリン、BFGF及びTGFをさらに含有することができる。非ジフテリア毒素ポリペ
プチドはまた、このようなポリペプチドの断片、例えばその細胞結合部分であることもで
きる。一つの実施形態において、非ジフテリア毒素ポリペプチドは、IL−2又はその細
胞結合部分である。
【0034】
修飾ジフテリア毒素であって、(i)ジフテリア毒素内の少なくとも1個のT細胞エピ
トープを同定し、(ii)(i)で同定された少なくとも1個のT細胞エピトープ内の少
なくとも1個のアミノ酸残基を修飾する方法によって調製され、前記修飾ジフテリア毒素
が未修飾毒素と比べて低下した免疫原性を示すことを特徴とする修飾ジフテリア毒素が、
本明細書において提供される。
【0035】
また、未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及び内皮細胞に対する結合の減少を示す修
飾ジフテリア毒素を選択する方法であって、(i)配列番号2又は200のジフテリア毒
素のアミノ酸配列内の少なくとも1個のT細胞エピトープを同定し、(ii)(i)で同
定された少なくとも1個のT細胞エピトープ内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾し
、(iii)配列番号2又は200の残基7−9、29−31及び290−292からな
る群から選択される領域内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾し、この場合に、前記
修飾ジフテリア毒素は、未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及び内皮細胞に対する結合
の減少を示し、(iv)修飾ジフテリア毒素の修飾されたアミノ酸配列を解析して、少な
くとも1個のT細胞エピトープ又は少なくとも1個のVLSモチーフが修飾されているこ
とを確認し、及び(v)未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及び内皮細胞に対する結合
の減少を示す修飾ジフテリア毒素を選択することからなる方法が、本明細書において提供
される。
【0036】
未修飾毒素と比べて低下した免疫原性を示す修飾ジフテリア毒素を調製する方法であっ
て、(i)配列番号2又は200のジフテリア毒素のアミノ酸配列内の少なくとも1個の
T細胞エピトープを同定し、(ii)(i)で同定された少なくとも1個のT細胞エピト
ープ内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾することからなる方法が、本明細書におい
て提供される。
【0037】
未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及び内皮細胞に対する結合の減少を示す修飾ジフ
テリア毒素を調製する方法であって、(i)配列番号2又は200のジフテリア毒素のア
ミノ酸配列内の少なくとも1個のT細胞エピトープを同定し;(ii)ステップ(i)で
同定された少なくとも1個のT細胞エピトープ内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾
し;及び(iii)配列番号2又は200の残基7−9、29−31及び290−292
からなる群から選択される領域内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾することからな
り、前記修飾ジフテリア毒素が未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及び内皮細胞に対す
る結合の減少を示すことを特徴とする方法が、さらに本明細書において提供される。
【0038】
未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及び内皮細胞に対する結合の減少を示す修飾ジフ
テリア毒素を調製する方法であって、(i)配列番号2又は200のジフテリア毒素のア
ミノ酸配列内の少なくとも1個のT細胞エピトープを同定し;(ii)(i)で同定され
た少なくとも1個のT細胞エピトープ内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾し;(i
ii)配列番号2又は200の残基7−9、29−31及び290−292からなる群か
ら選択される領域内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾し;(iv)修飾ジフテリア
毒素の修飾されたアミノ酸配列を解析して、T細胞エピトープの修飾がVLSモチーフを
生じているか否かを同定し、及び(v)(iv)で同定された前記VLSモチーフを修飾
することからなり、前記修飾ジフテリア毒素が未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及び
内皮細胞に対する結合の減少を示すことを特徴とする方法が、さらに本明細書において提
供される。
【0039】
未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及び内皮細胞に対する結合の減少を示す修飾ジフ
テリア毒素を調製する方法であって、(i)配列番号2又は200のジフテリア毒素のア
ミノ酸配列内の少なくとも1個のT細胞エピトープを同定し;(ii)(i)で同定され
た少なくとも1個のT細胞エピトープ内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾し;(i
ii)配列番号2又は200の残基7−9、29−31及び290−292からなる群か
ら選択される領域内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾し;(iv)修飾ジフテリア
毒素の修飾されたアミノ酸配列を解析して、VLSモチーフの修飾がT細胞エピトープを
生じているか否かを同定し、及び(v)(iv)で同定された前記T細胞エピトープを修
飾することからなり、前記修飾ジフテリア毒素が未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及
び内皮細胞に対する結合の減少を示すことを特徴とする方法が、さらに本明細書において
提供される。
【0040】
修飾ジフテリア毒素(この場合に、前記修飾ジフテリア毒素は、少なくとも1個のB細
胞エピトープを失っている)を選択する方法であって、(i)ジフテリア毒素ワクチンを
用いて免疫された被検体から血清試料を取得し、この場合、前記血清は、前記ジフテリア
毒素ワクチンに対する抗体を含有し、(ii)前記血清を1個又はそれ以上の修飾ジフテ
リア毒素と接触させ、この場合、前記修飾ジフテリア毒素に対する前記抗体の結合は、複
合体を形成し、(iii)前記複合体の有無を検出し、この場合に、複合体が検出される
場合には、修飾ジフテリア毒素は、少なくとも1個のB細胞エピトープを失っておらず及
び複合体の量の低下が検出される場合には、修飾ジフテリア毒素は、少なくとも1個のB
細胞エピトープを失っており、及び(iv)少なくとも1個のB細胞エピトープを失って
いる修飾ジフテリア毒素を選択することからなる方法が、本明細書において提供される。
【0041】
修飾毒素と製薬学的に許容し得る担体又は賦形剤とを含有する医薬組成物が、本明細書
において提供される。
【0042】
治療有効量の本明細書に記載の医薬組成物を哺乳動物に投与することからなる、哺乳動
物における悪性疾患及びGVHDなどの非悪性疾患を治療する方法が、本明細書において
提供される。
【0043】
悪性疾患は、血液癌であることができる。悪性疾患は、固形腫瘍であることができる。
悪性疾患はまた、転移であることができる。典型的な血液癌としては、以下に限定されな
いが、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、再発性/難治性T細胞非ホジキンリンパ
腫、再発性/難治性B細胞非ホジキンリンパ腫、皮下脂肪組織様T細胞リンパ腫、節外性
ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫鼻型、慢性リンパ球性白血病、固形腫瘍及びヒトT細
胞リンパ球向性ウイルス1型関連急性T細胞白血病/リンパ腫が挙げられる。代表的な固
形腫瘍としては、以下に限定されないが、皮膚、黒色腫、肺、膵臓、乳房、卵巣、結腸、
直腸、胃、甲状腺、喉頭、前立腺、結腸直腸、頭、首、眼、口、器官、食道、胸部、骨、
睾丸、リンパ、骨髄、骨、肉腫、腎臓、汗腺、肝臓、腎臓、脳、消化管、上咽頭、尿生殖
路、筋肉及びその他の組織の中から選択される組織又は器官の固形腫瘍が挙げられる。転
移としては、以下に限定されないが、記載の固形腫瘍のいずれかの転移性腫瘍が挙げられ
る。
【0044】
非悪性疾患としては、例えば、GVHD、aGVHD及び乾癬が挙げられる。
【0045】
本明細書に記載のDTバリアント−IL2融合タンパク質を投与することによって抗癌
剤(例えば、RNA導入DC、抗CLTA4抗体、MISIIR scFvsなど)の活
性を高める方法が、本明細書において提供される。一つの実施形態において、DTバリア
ント−IL2融合タンパク質が、投与され、次いで抗癌剤が投与される。一つの限定され
ない例において、DTバリアント−IL2融合タンパク質は、抗癌剤の少なくとも4日前
に投与される。
【0046】
また、抗癌剤(例えば、RNA導入DC、抗−CLTA4抗体、MISIIR scF
vsなど)と本明細書に記載のDTバリアント−IL2融合タンパク質とを投与すること
によってTregの減少又は排除による転移性癌を治療する方法が、本明細書において提
供される。転移性腫瘍としては、例えば、転移性腎細胞癌、転移性前立腺癌、転移性卵巣
癌及び転移性肺癌が挙げられる。一つの実施形態において、DTバリアント−IL2融合
タンパク質が投与され、次いで抗癌剤が投与される。一つの限定されない例において、D
Tバリアント−IL2融合タンパク質は、抗癌剤の少なくとも4日前に投与される。
【0047】
別の態様において、抗癌剤(例えば、RNA導入DC、抗−CLTA4抗体、MISI
IR scFvsなど)と本明細書に記載のDTバリアント−IL2融合タンパク質とを
投与することによってTregの減少又は排除による前立腺腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍又は
黒色腫を治療する方法が、本明細書において提供される。一つの実施形態において、DT
バリアント−IL2融合タンパク質が投与され、次いで抗癌剤が投与される。一つの限定
されない例において、DTバリアント−IL2融合タンパク質は、抗癌剤の少なくとも4
日前に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】ドナー母集団のアロタイプの頻度を示す。試験集団及び社会集団において発現されたドナーアロタイプの頻度の比較を示す。
図2】DT T細胞エピトープマップ及びドナー応答を表す。51人の健常ドナーに対して試験したオーバーラップペプチドを使用するDT−1のCD4+T細胞エピトープマップを示す。バックグラウンド応答率(5.6%)は、赤い点線で示す。この閾値を越える反応を誘導するペプチドは、T細胞エピトープ(a+記号で示す)を含有する。
図3】DT T細胞エピトープ1を表す。エピトープ1は、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングを使用して同定された。3人のドナーが、ペプチド2に反応した(ドナー30、36及び47)。ペプチド2(配列番号:161)について提案された9量体結合レジスターを、表示したp1及びp9アンカー残基と共に示す。比較のために、ペプチド1及び3(配列番号:158及び160)を示す。
図4】DT T細胞エピトープ2を示す。エピトープ2は、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングを使用して同定された。4人のドナーが、ペプチド31に反応した(ドナー12、23、30及び36)。ペプチド31(配列番号:162)について提案された9量体結合レジスターを、表示したp1及びp9アンカー残基と共に示す。比較のために、ペプチド32(配列番号:163)を示す。
図5】DT T細胞エピトープ3を示す。エピトープ3は、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングを使用して同定された。3人のドナーが、ペプチド35に反応した(ドナー1、2及び35)。ペプチド35(配列番号:166)について提案された9量体結合レジスターを、表示したp1及びp9アンカー残基と共に示す。比較のために、ペプチド34(配列番号:165)を示す。
図6】DT T細胞エピトープ4を示す。エピトープ4は、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングを使用して同定された。3人のドナーが、ペプチド39に反応した(ドナー5、15及び50)。ペプチド39(配列番号:169)について提案された9量体結合レジスターを、表示したp1及びp9アンカー残基と共に示す。
図7】DT T細胞エピトープ5を示す。エピトープ5は、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングを使用して同定された。6人のドナーが、ペプチド40、41及び42に反応した。この領域(配列番号:173)について提案された9量体結合レジスターを、表示したp1及びp9アンカー残基と共に示す。
図8】DT T細胞エピトープ6を示す。エピトープ6は、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングを使用して同定された。3人のドナー(ドナー30、39及び49)が、ペプチド49に反応した。この領域(配列番号:175)について提案された9量体結合レジスターを、表示したp1及びp9アンカー残基と共に示す。
図9】DT T細胞エピトープ7を示す。エピトープ7は、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングを使用して同定された。4人のドナー(ドナー1,15、30及び35)が、ペプチド100に反応した。ペプチド100(配列番号:178)について提案された9量体結合レジスターを、表示したp1及びp9アンカー残基と共に示す。比較のために、ペプチド99(配列番号:176)を示す。
図10】DT T細胞エピトープマップを示す。DT−1の配列内のCD4+T細胞エピトープの位置を示す。T細胞エピトープマッピングにより同定されたT細胞エピトープを、配列の上に応答ドナー確認者(identifier)を含むバーとして示す。
図11】DTペプチドに対するドナーアロタイプ反応の頻度を示す。試験集団において発現された頻度と比べた応答ドナーアロタイプの頻度(%として表す)の円グラフ表示を示す。分析は、試験集団の8%を超える応答を誘導したエピトープに限定し且つ研究集団において5%を超える頻度で発現されたアロタイプに限定した。
図12】無調整ドナーデータについてのDTペプチド刺激指数を示す。ボールド体で強調された刺激指数は、陽性応答を示す(SI>2.0、p<0.05)。イタリック体で強調された数は、ボーダーライン結果を示す(SI>1.9、p<0.05)。ドナー13、20及び38は、極めて低いCPMなので分析から除外した。
図13】調整ドナーデータについてのDTペプチド刺激指数を示す。ボールド体で強調された刺激指数は、陽性応答を示す(SI>2.0、p<0.05)。イタリック体で強調された数は、ボーダーライン結果を示す(SI>1.9、p<0.05)。ドナー13、20及び38は、極めて低いCPMなので分析から除外した。
図14】野生型ΔR DT(ひし形で示す)は、IVTTアッセイにおいてヌル構造体(星印で示す)よりも大きな程度までT7−lucプラスミドの転写/翻訳を阻害したことを示す。
図15】DT特異抗体は、内皮細胞の表面に結合されたDTを検出したことを示す。HUVEC細胞に対するDTバリアントの結合(DT−Glu52、CRM突然変異体)及びFACS分析を使用する抗体による検出を示す。黒塗りの棒グラフは、結合剤を使用しない結果である。斜線のハッチング棒グラフは、記載の種々の条件を使用するアッセイ対照を示す。クロスハッチング棒グラフは、検出抗体(DT+ヤギpAb抗DT(Serotec)+抗gt−PE)の存在下でのDTバリアントを示す。
図16】HUVEC細胞に対するONTAK−A1488及びDT−Glu52−A1488の結合−FACSでの抗体による検出を示す。ONTAK(登録商標)−A1488 6:1 D:P(黄色の上の線、ひし形で示す);DT−Glu52−A1488 3:1 D:P(赤色の中間の線、丸で示す);及びDT−Glu52−A1488 2:1 D:P(緑色の下の線、三角で示す)。
図17】HUVEC細胞を、FACSでIL−2Rの発現について試験した;ONTAK(登録商標)−A1488がIL−2受容体を経て結合していないことが確認されたことを示す。
図18】毒素と共に短時間インキュベーションした後の細胞膜の完全性の喪失を測定するためにヨウ化プロピジウム及びFACSを使用する細胞膜完全性アッセイを例証する。ONTAK(登録商標)(ひし形で示す)、DT−Glu52(四角で示す)及びrhIL−2(三角で示す)。ONTAK(4個のVLSモチーフを含有する)は、DT−Glu52(3個のVLSモチーフ)又はrhIL−2(1個のVLSモチーフ)のいずれよりも大きい膜損傷を生じさせると思われる。
図19】細胞毒性アッセイを、DT−IL2 T細胞エピトープ及びIVTTアッセイで選択されたVLSバリアントリードの活性を確認するのに使用する。ONTAK(登録商標)(ひし形印)、組換えヒトIL−2(rhIL−2、四角で示す)及び対照(三角で示す)は、ONTAK(登録商標)が細胞毒性であることを例証する。
図20】野生型(WT)と比べたバリアントのADPリボシル化活性を例証する。アッセイの閾値は、0.5であった。「」又は「」で印を付けた棒線は、統計学的に有意な結果を示す。
図21】代表的な数のエピトープバリアントの設計を図解する。
図22】野生型(WT)と比べたバリアントのADPリボシル化活性を図解する。アッセイの閾値は、0.5であった。
図23】DTの野生型及びエピトープ(Ep)バリアントによる標的T7−ルシフェラーゼプラスミドの生体外転写/翻訳の阻害を、T7−連結網状赤血球溶菌液キット及びSteadyGlo化学発光試薬(Promega)を使用して測定した。IC50を測定し、野生型DTの値をそれぞれのエピトープバリアントの値で除して、プロットした活性比を算出した(Y軸)。反復実験(n=3)からの平均値を示す。1=WT活性。0.5=最小許容活性の閾値。
図24】タンパク質合成の阻害における野生型DT382と比べたDT382のエピトープバリアントの相対活性を示す。
図25】タンパク質合成の阻害における野生型DTと比べたVLS DTバリアントの相対活性を示す。
図26】HUVEC細胞に対する標識VLSバリアントの結合を示す。DT389−IL2は、黒塗りのひし形印(◆)として表し、DT382は、黒塗りの四角印(■)として示し、DT382(V7N V29T S292A)は、黒塗りの三角印(▲)として示し、DT382(V7N V29T I290N)は、「×」として示し、及びBSAは、黒塗りの丸印(●)として示す。
図27】野生型及びヌルDTバリアントと比べた修飾DTバリアントについてのIC50データを示す。WTは、黒塗りのひし形印(◆)として示し、ヌルDTバリアントは、白塗りの四角印(□)として示し、DT29Nは、記号「+」として示し、S30Gは、黒塗りの三角印(▲)として示し及びV148Aは、星印(*)として示す。
図28】DAB398(DT)の以下のT細胞マップを、iTope(商標)T細胞エピトープ予測ソフトウエアを使用して作製した。T細胞エピトープを含む可能性がある領域に、ボールド体での可能性のあるp1アンカー残基と共に下線を付した。生体外T細胞アッセイを使用して同定されたT細胞エピトープの位置は、囲んで強調した。
図29】4重T細胞エピトープDTバリアントについてIC50データを示す。
図30】HUVEC細胞に対するONTAK−488、対照DT(ΔR)−488及びBSA−488の結合−FACSでの抗体による検出を示す。ONTAK(登録商標)−488 2.8:1 D:P(上の線、さらに印「+」で示す)、対照DT(ΔR)−488 3:1 D:P(上の二番目の線、丸印「●」で示す)、BSA−488 7:1 D:P(中間の線、星印「*」で示す)、BSA−488 5:1 D:P(下から二番目の線、「×」で示す)及びBSA−488 2.6:1 D:P(一番下の線、三角印「▲」で示す)。
図31】野生型DT382、DT382バリアント及びヌル構造体DT382(G53E)のアミノ酸配列を示す。下線を付した配列は、ベクター/タグ配列であり、エンテロキナーゼ切断部位はイタリック体で強調し及びWT配列由来の突然変異はボールド体で示す。
【0049】
文献の援用
本明細書に挙げた全ての刊行物及び特許出願明細書は、それぞれ個々の刊行物又は特許
出願明細書が具体的に及び独立して参照することにより組み込まれることを示されている
かのように、同じ程度に参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0050】
本出願は、特定の製剤又はプロセスパラメーターに限定されないことが理解されるべき
である。なぜならば、これらは、勿論、変化させ得るからである。また、本明細書で使用
する用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的とするものであり、限定すること
を意図するものでないことも理解されるべきである。また、本明細書に記載の方法及び物
質と同様又は均等の多数の方法及び物質が本発明の実施において使用できることが理解さ
れるべきである。
【0051】
本出願に従って、当該技術の範囲内の従来の分子生物学、微生物学及び組換えDNA技
術を使用し得る。このような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambr
ook et al.,「Molecular Cloning:A Laborato
ry Manual」(1989);「Current Protocols in M
olecular Biology」 Volumes I−III[Ausubel,
R.M.,ed.(1994)];「Cell Biology:A Laborato
ry Handbook」 Volumes I−III[J.E.Celis,ed.
(1994)];「Current Protocols in Immunology
」 Volumes I−III[Coligan,J.E.,ed.(1994)]、
「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait ed.
1984);「Nucleic Acid Hybridization」[B.D.H
ames & S.J.Higgms eds.(1985)];「Transcrip
tion and Translation」[B.D.Hames & S.J.Hi
ggins,eds.(1984)];「Animal Cell Culture」[
R.I.Freshney,ed.(1986)]、「Immobilized Cel
ls And Enzymes」[IRL Press,(1986)];B.Perb
al,「A Practical Guide To Molecular Cloni
ng」(1984)が参照される。これらのそれぞれは、その全体を参照することにより
本明細書に組み込まれる。
【0052】
I.T細胞エピトープを同定する方法
最近、合成ペプチドと組み合わせた組換えMHC分子の可溶性複合体を開発する技術が
使用し始めている[Kern,F.et al.,(1998)Nature Medi
cine 4:975−978;Kwok,W.W.et al.,(2001) Tr
ends in Immunol.,22:583−588]。これらの試薬及び手順は
、特定のMHCペプチド複合体を結合することができ及び広い多様なMHCアロタイプに
対するスクリーニング多重可能性エピトープに適合しないヒト又は実験動物被検体由来の
末梢血試料からT細胞クローンの存在を同定するのに使用される。
【0053】
T細胞活性化の生物学的アッセイは、依然として、試験ペプチド/タンパク質配列の免
疫反応を誘発する能力の読み取りを提供するのに最も実用的な選択肢になっている。この
種のアプローチの例としては、細菌タンパク質スタフィロキナーゼにT細胞増殖アッセイ
を使用し、次いでT細胞株を刺激するのに合成ペプチドを使用してエピトープマッピング
するPetraらの研究が挙げられる[Petra,A.M.et al.,(2002
)J.Immunol.,168:155−161]。同様に、破傷風毒素タンパク質の
合成ペプチドを使用するT細胞増殖アッセイは、毒素の免疫優性エピトープ領域の規定を
もたらしている[Reece J.C.et al.,(1993)J.Immunol
.,151:6175−6184]。国際公開第WO99/53038号明細書は、ヒト
免疫細胞の単離サブセットを使用し、生体外(in vitro)でその分化を促進し、関心の合
成ペプチドの存在下で細胞を培養し及び培養したT細胞の誘導された増殖を測定すること
によって試験タンパク質中のT細胞エピトープを決定し得るアプローチを開示している。
同じ技法は、Sticklerらによっても記載されている[Stickler,M.M
.et al.,(2000)J.Immunotherapy 23:654−660
];両方の場合において、この方法は、細菌スブチリシン内のT細胞エピトープの検出に
適用される。このような技法は、所望の免疫細胞サブセット(樹状細胞、CD4+及び/
又はCD8+T細胞)を得るために、細胞単離法及び多数のサイトカインサプリメントを
用いる細胞培養の注意深い適用を必要とする。
【0054】
国際公開第WO02/069232号明細書は、治療的関心の多数のタンパク質につい
てMHCクラスIIリガンドを定義するコンピューター法を記載している。しかし、生体
内で免疫原性ペプチドの提示を導くタンパク質分解プロセシング及びその他の生理学的ス
テップの必要などの理由により、コンピューターに基づいたスキームによって定義できる
ペプチドの全レパートリーの比較的少ないサブセットが最終的な生物学的関連性を有する
ことは明らかである。従って、生体外ヒトT細胞活性化アッセイが、T細胞活性化を裏付
けることができる毒素のタンパク質配列内の領域を同定するのに使用可能であり、それに
よってこのタンパク質における免疫原性の問題に最も生物学的に関連する。本明細書で使
用する「T細胞エピトープ」とは、MHCクラスIIに結合することができ、T細胞を刺
激することができ及び/又はMHCクラスIIと複合化してT細胞を結合することができ
る(必ずしも測定できるほどに活性化させる必要はない)アミノ酸配列を指す。
【0055】
本明細書に開示した方法に従って、合成ペプチドは、生体外で培養したヒトT細胞にお
いて増殖反応を誘発するその能力について試験される。T細胞は、全血試料から周知の手
段で容易に得ることができる末梢血単核細胞(PBMC)層内に存在する。さらに、PB
MC標本は、生理学的比率のT細胞と抗原提示細胞を含有し、従って生体外で代理免疫反
応を行う良好な物質源である。このようなアッセイの操作において、2.0にほぼ等しい
か又はそれを超える刺激指数は、誘導性増殖の有用な尺度である。しかし、刺激指数は、
毒素に応じて異なっていてもよく、それぞれの毒素及び対応するペプチドライブラリーに
ついてのベースラインを参照して確定し得る。このような試験の一つの例において、刺激
指数(SI)は、試験ペプチドに対して測定された増殖スコア(例えば、例えばH−チ
ミジン取り込みを使用する場合には放射能の1分当たりのカウント数)を、試験ペプチド
と接触していない細胞で測定されたスコアで割り算することによって慣用的に得てもよい
。反応を誘発しないペプチドは、SI=1.0を示し得るが、0.8−1.2の範囲内の
SI値もまた珍しいものではないかもしれない。多数の技術的方法が、記録されたスコア
の信頼を確保するために、このようなアッセイの操作に組み込むことができる。典型的に
は、全ての測定は、少なくとも3回の反復で行われ、平均スコアが算出され得る。算出さ
れたSI=>2.0である場合には、3回反復の個々のスコアは、異常データの証拠につ
いて調べることができる。試験ペプチドは、細胞と少なくとも2種類の濃度で接触させ、
その濃度は、典型的には、最低2倍の濃度差に及ぶであろう。このような濃度範囲は、ア
ッセイに対してキネティック・ディメンションへのオフセットを提供し、単一時間点測定
、例えばプラス7日で行われる場合には有用であり得る。幾つかのアッセイにおいては、
多重時間経過測定を行ってもよく、これらもまた最低2種類の濃度で提供されるペプチド
免疫原を使用して行ってもよい。同様に、PBMCドナー試料の大部分が反応性であると
予想される対照ペプチドの含有は、それぞれのアッセイプレートに含め得る。インフルエ
ンザ赤血球凝集素ペプチド307−309、配列PKYVKQNTLKLA(配列番号:
201);及びクラミジアHSP60ペプチド配列KVVDQIKKISKPVQH(配
列番号:202)は、対照ペプチドをこのようなアッセイに使用した例である。あるいは
、又はさらに、アッセイはまた、可能な全タンパク質抗原、例えばキーホールリンペット
由来のヘモシアニンを使用でき、それに対する全PBMC試料は、2.0よりも著しく大
きいSIを示すことが予期されるであろう。このような使用のためのその他の対照抗原は
、当該技術において周知であろう。
【0056】
本明細書に開示の方法は、マップが広い範囲の可能なMHCアロタイプに関連性を有す
る場合の毒素のエピトープマップを提供できる。マップは、タンパク質を投与される可能
性がある患者の大部分についてタンパク質のT細胞駆動免疫反応を誘発する能力を除外し
得るか又は少なくとも改善し得る修飾タンパク質の設計又は選択を可能にすることを十分
に表し得る。改善とは、未修飾タンパク質と比べて免疫反応の低下(すなわち、低下した
免疫原性)(例えば、多かれ少なかれ約1.5倍、多かれ少なかれ約2倍、多かれ少なか
れ約5倍、多かれ少なかれ約10倍、多かれ少なかれ約20倍、多かれ少なかれ約50倍
、多かれ少なかれ約100倍、多かれ少なかれ約200倍、多かれ少なかれ約500倍、
又はこれらのこの範囲)を指すことができる。あるいは、低下した免疫原性を有するタン
パク質又は毒素とは、未修飾タンパク質と比べて免疫反応を導くその能力の低下%(例え
ば、約1%未満、約2%未満、約3%未満、約4%未満、約5%未満、約10%未満、約
20%未満、約50%未満、約100%未満及びこれらの範囲)を指すことができる。従
って、スクリーニング方法の実施において、未処置ドナー由来のPBMC誘導T細胞は、
ヒト集団に現存の少なくとも90%を超えるMHCクラスIIレパートリー(HLA−D
R)の試料を提供するために十分な免疫多様性のドナーのプールから収集される。ナイー
ブT細胞反応が所定の合成ペプチドに対して検出されるべきである場合には、実際にはペ
プチドは、単離において多数のドナーから誘導されたPBMC標本と接触する。ドナーの
数(又は「ドナープール」の大きさ)は、実際上は20人未満の関連のない個人であると
は思われず及びドナープールにおける全試料は、そのMHCクラスIIハプロタイプに従
って予め選択し得る。
【0057】
本明細書で使用する「未処置ドナー」という用語は、環境面で、ワクチン接種によって
、又は例えば輸血などの他の手段によって、毒素にこれまでに暴露されていない被検体を
指す。
【0058】
ある国の人々は、毒素に対して定期的にワクチン接種を受けているか又は例えばジフテ
リア毒素などの外因性毒素及び毒素様タンパク質の環境源に暴露されていることが注目さ
れる。このような人々において、前記の増加したSIスコアによる尺度として想起応答の
可能性が存在する。
【0059】
T細胞エピトープについてスクリーニングする場合には、T細胞は、多数の異なる健常
ドナーであるが治療的にタンパク質を受け入れていない健常ドナー由来の末梢血試料から
得ることができる。必要ならば、患者の血液試料は、1個又はそれ以上のポリペプチドの
有無を同定するために抗体を使用するELISAなどの従来のアッセイを使用して特定の
ポリペプチドの存在について試験することができる。アッセイは、当該技術で知られてい
る従来の方法を使用して生体外で培養したPBMCを使用して行われ、PBMCを、関心
のタンパク質を代表する合成ペプチド種(すなわち、ライブラリー)と接触させ、適当な
期間のインキュベーション、細胞増殖などのペプチド誘導T細胞活性化の測定を行うこと
を伴う。測定は、任意の適当な手段であることができ且つ例えばH−チミジンの取り込
みを使用して行ってもよく、それによって細胞物質へのHの蓄積が、実験装置を使用し
て容易に測定される。PBMC試料及び合成ペプチドのそれぞれの組み合わせについての
細胞増殖の程度は、非ペプチド処理PBMC試料において認められる細胞増殖の程度と比
較して調べることができる。予期した増殖効果がある1個又は複数個のペプチドを用いた
処置の後に認められる増殖反応に対して参照もまたなし得る。これに関して、公知の幅広
いMHC制限を有するペプチド、特にDP又はDQイソ型に対してMHC制限を有するペ
プチドエピトープを使用することが好都合であるが、本発明はこのような制限ペプチドの
使用に限定されない。このようなペプチドは、例えばインフルエンザ赤血球凝集素及びク
ラミジアHSP60に関して上記に記載されている。
【0060】
一つの限定されない例において、ジフテリア毒素(DT)についてのT細胞エピトープ
は、マッピングされ、その後に本明細書に記載の方法を使用して修飾される。DTについ
てエピトープマップの組み立てを促進するために、合成ペプチドのライブラリーが作製さ
れる。ペプチドのそれぞれは、長さでアミノ酸残基15個であり、それぞれは、12個の
アミノ酸残基ずつ一連の次のペプチドに重なり合う。すなわち、一連のそれぞれのペプチ
ドは、分析にさらに3個のアミノ酸を増加的に付加した。このような方法で、所定の隣接
したペプチド対は、連続した配列の18個のアミノ酸をマップ化した。ナイーブT細胞ア
ッセイを使用するDTについてT細胞マップを定義する一つの方法を、実施例7で例証す
る。毒素のT細胞マップを定義する方法によって同定されたペプチドのそれぞれは、MH
CクラスIIを結合し、アッセイ系で検出できる増殖爆発を誘発するのに十分な親和性を
有する少なくとも1個の同族TCRに関与できることを示唆する。
【0061】
II.毒素を修飾する方法
本明細書に記載の毒素分子は、組換え方法の使用を含め幾つかの方法のいずれかで調製
できる。本明細書において提供されるタンパク質配列及び情報は、アミノ酸配列をコード
するポリヌクレオチド(DNA)を推定するのに使用できる。これは、例えば、DNSst
ar software suite[DNAstar Inc,Madison、Wi
s.,USA]などのコンピューターソフトウエアツールを使用して達成できる。ポリペ
プチドをコードするこのようなポリヌクレオチド又はその重要なホモローグ、バリアント
、切断、伸長もしくは別の修飾が、本明細書において意図される。
【0062】
毒素のT細胞エピトープをマッピングし(同定し)、該エピトープを、修飾された配列
がヘルパーT反応の誘導を抑制する(部分的に又は完全に)ように修飾する方法が、本明
細書において提供される。修飾としては、同様の変化に影響を及ぼすために修飾ポリペプ
チドをコードするポリヌクレオチドのコドンにおいてなされるアミノ酸の置換、欠失、又
は挿入が挙げられる。アミノ酸残基をコードするコドンは、当該技術で周知である。標的
配列の定方向突然変異誘発を達成するために組換えDNA方法を使用することができ、多
数のこのような方法が利用でき、本明細書に記載され及び前記のような技術において知ら
れている。一般的に、部位特異的突然変異誘発の技術は周知である。簡潔に述べると、オ
リゴヌクレオチド指向PCR突然変異誘発用の一本鎖鋳型を生成するバクテリオファージ
ベクターが用いられる。ファージベクター(例えば、M13)は、市販されており、その
使用は、一般に当該技術で周知である。同様に、二本鎖プラスミドもまた、関心のポリヌ
クレオチドをファージからプラスミドに移す工程を排除する部位特異的変異誘発において
常用されている。所定の突然変異配列を有する合成オリゴヌクレオチドプライマーが、こ
の鋳型から修飾された(所望の突然変異体)DNAの生体外合成を指示するのに使用でき
、ヘテロ二本鎖DNAが、所望のクローンの増殖選択及び同定のためのコンピテント大腸
菌(E.coli)を形質転換させるのに使用される。あるいは、1対のプライマーを、
二本鎖ベクターの2個の別々の鎖にアニールさせて、PCR反応において所望の突然変異
を有する両方の対応する相補鎖を同時に合成できる。
【0063】
一つの実施形態において、Sugimotoらによって報告されているようなプラスミ
ドDNA鋳型を使用するQuick Change部位特異的突然変異誘発法が使用でき
る(Sugimoto et al.,Annal.Biochem.,179(2):
309−311(1989))。挿入片の挿入標的遺伝子を含有するプラスミド鋳型のP
CR増幅は、所望の突然変異を含む2個の合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して
達成される。それぞれベクターの向かい合った鎖に相補的なオリゴヌクレオチドプライマ
ーが、突然変異誘発グレードのPfuTurbo DNAポリメラーゼによって温度サイ
クル中に伸長される。オリゴヌクレオチドプライマーの取り込みの際に、ねじれ型のニッ
ク(切れ目)を含有する突然変異プラスミドが生成する。増幅された非メチル化生成物は
、DpnIで処理して、メチル化親DNA鋳型を消化し、突然変異を含む新たに合成され
たDNAを選択する。大部分の大腸菌株から単離されるDNAは、ダム・メチル化される
ことから、メチル化及びヘミメチル化DNAに特異的なDpnI消化に感受性である。反
応生成物は、所望の修飾を有するプラスミドを得るために、大腸菌の高効率株中に形質転
換される。ポリペプチド中にアミノ酸修飾を誘導する別の方法は、当該技術において周知
であり、本明細書でも使用できる。
【0064】
タンパク質に適した修飾としては、特定の残基又は残基の組み合わせのアミノ酸置換を
挙げ得る。T細胞エピトープの排除のために、アミノ酸置換は、T細胞エピトープの活性
の抑制又は排除を達成すると予測されるアミノ酸配列内の適切な位置又はアミノ酸残基で
行われる。実際に、適切な位置又はアミノ酸残基は、MHCクラスII結合溝内に提供さ
れるポケットの一つの中に結合するアミノ酸残基と同じであることが好ましいであろう。
このような修飾は、いわゆるペプチドの「P1」又は「P1アンカー」位置の裂隙の第一
のポケット内の結合を変化させ得る。ペプチドのP1アンカー残基とMHCクラスII結
合溝の第一のポケットとの間の結合相互作用の性質は、全ペプチドに対する全体結合親和
性の主要な決定因子であると認められる。アミノ酸配列のこの位置での適切な置換は、一
般に、ポケット(例えば、より親水性の残基に対する置換)内に容易に適応しにくいアミ
ノ酸残基を取り込むであろう。MHC結合裂隙内のその他のポケット領域内の結合と同じ
位置のペプチドのアミノ酸残基もまた、考慮され、この範囲に入る。
【0065】
所定の可能なT細胞エピトープ内の単一のアミノ酸修飾は、1個又はそれ以上のT細胞
エピトープを排除し得る一つの経路を表すことが理解される。単一のエピトープ内の修飾
の組み合わせが、考慮し得、独立して規定されたエピトープが相互に重なり合っている場
合には適切であり得る。また、アミノ酸修飾(所定のエピトープ内で単独で又は単一のエ
ピトープ内で組み合わせで)は、MHCクラスII結合溝に関して「ポケット残基」と異
なる位置であるが、アミノ酸配列内の任意の位置で行われてもよい。修飾は、当該技術で
知られており及び本明細書に記載されている公知のコンピューター法を使用して生じる相
同構造又は構造方法を参照して行われてもよく、ポリペプチドの公知の構造的特徴に基づ
いていてもよい。変化(修飾)は、バリアント分子の構造又は生物活性を復元することを
意図し得る。このような代償的変化及び変化としてはまた、ポリペプチドから特定のアミ
ノ酸残基の欠失又は付加(挿入)も挙げ得る。また、構造を変化させる及び/又は分子の
生物活性を抑制する修飾及びT細胞エピトープを排除し、従って分子の免疫原性を低下さ
せる修飾を行うことができる。あらゆる形の修飾が本明細書において意図される。
【0066】
タンパク質分子からエピトープを除去する別の手段は、国際公開第WO02/0692
32号明細書(これもまた参照することによって本明細書に完全に組み込まれる)に記載
のスキームに従って開発されたコンピューターツールと共に、本明細書に概説したような
ナイーブT細胞活性化アッセイスキームの共同使用である。ソフトウエアは、所定のポリ
ペプチド配列について結合スコアを得るためにポリペプチドMHCクラスII結合相互作
用のレベルでの抗原提示のプロセスをシミュレートする。このようなスコアは、集団に現
存する主要MHCクラスIIアロタイプの多くについて測定される。このスキームは、任
意のポリペプチド配列を試験することができるので、ポリペプチドのMHCクラスII結
合溝と相互作用する能力に関してアミノ酸の置換、付加又は欠失の結果が予測できる。従
って、MHCクラスIIと相互作用できる減少した数のアミノ酸を含有し、それによって
免疫原T細胞エピトープとして機能する新たな配列組成を設計できる。一つの所定のドナ
ー試料を使用する生物アッセイが、最大4つのDRアロタイプに対する結合を評価できる
場合には、コンピューター法は、>40のアロタイプを同時に使用して同じポリペプチド
配列を試験できる。実際には、このアプローチは、多数のMHCアロタイプと相互作用す
るその能力において変化させられている新しい配列バリアントの設計を指示することがで
きる。当業者には明らかであるように、望まれていないエピトープを除去するという目的
を達成する置換の多数の代替セットに到達できるであろう。しかし、得られる配列は、本
明細書に開示の特定の組成物と密接に相同性であると認められ、従って本出願の範囲内に
入る。
【0067】
エピトープマッピング及び場合によりT細胞活性化の生物学に基づいたアッセイを使用
する再試験と協力して、MHCクラスIIリガンドの同定のため及びMHCクラスIIリ
ガンドを欠く配列類縁体の設計のためのコンピューターツールを使用する併用アプローチ
は、本出願の別の方法及び実施形態である。この実施形態の一般的な方法は、以下の工程
、すなわち、
i)ナイーブT細胞活性化アッセイ及び関心のタンパク質配列を集合的に包含する合成ペ
プチドを使用して、T細胞を活性化することができるエピトープ領域を同定する工程と、
ii)ペプチドリガンドと1つ又はそれ以上のMHCアロタイプとの結合をシミュレート
する計算スキームを使用して、工程(i)で同定されたエピトープ領域を解析し、それに
よってエピトープ領域内にあるMHCクラスIIリガンドを同定する工程と、
iii)ペプチドリガンドと1つ又はそれ以上のMHCアロタイプとの結合をシミュレー
トする計算スキームを使用して、もはやMHCクラスIIを結合しないか又はより少ない
数のMHCアロタイプに対して低い親和性をもって結合するエピトープ領域内に含まれる
MHCリガンドの配列類縁体を同定する工程と、及び場合により
iv)関心のタンパク質内の同定されたエピトープ領域を完全に包含するか又は収集にお
いて包含し、ナイーブT細胞活性化アッセイにおける配列類縁体を野生型(親)配列と同
時に試験するナイーブT細胞活性化アッセイ及び合成ペプチドを使用する工程と、
からなる。
【0068】
一つの実施形態において、未修飾毒素と比べて低下した免疫原性を示す修飾毒素を調製
する方法は、毒素のアミノ酸配列内の少なくとも1個のT細胞エピトープを同定し、少な
くとも1個の同定されたT細胞エピトープ内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾する
ことからなる。
【0069】
別の実施形態において、未修飾毒素と比べて低下した免疫原性を示す修飾毒素は、毒素
のアミノ酸配列内の少なくとも1個のT細胞エピトープを同定し、少なくとも1個の同定
されたT細胞エピトープ内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾する方法によって生成
される。
【0070】
さらに別の実施形態において、未修飾毒素と比べて低下した免疫原性を示す修飾毒素を
選択する方法は、毒素のアミノ酸配列内の少なくとも1個のT細胞エピトープを同定し、
少なくとも1個の同定されたT細胞エピトープ内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾
し、未修飾毒素と比べて低下した免疫原性を示す修飾毒素を選択することからなる。
DT T細胞エピトープ
また、1個又はそれ以上のT細胞エピトープに少なくとも1個の修飾を有するDTバリ
アントが、本明細書において提供される。7個のT細胞エピトープが、本明細書に記載の
方法及びさらに実施例9に記載の方法によってDT内で同定された。7個のT細胞エピト
ープは、配列番号:181、184、187、190、193、196及び199に示す
ようなジフテリア毒素アミノ酸配列を含有する。本明細書に記載のように、配列番号:1
81は、配列番号:2又は200のアミノ酸残基1−27に対応し、配列番号:184は
、配列番号:2のアミノ酸残基85−117に対応し、配列番号:187は、配列番号:
2又は200のアミノ酸残基95−127に対応し、配列番号:190は、配列番号:2
又は200のアミノ酸残基104−136に対応し、配列番号:193は、配列番号:2
又は200のアミノ酸残基112−144に対応し、配列番号:196は、配列番号:2
又は200のアミノ酸残基136−168に対応し及び配列番号:199は、配列番号:
2又は200のアミノ酸残基286−318に対応する。これらのエピトープは、さらに
、エピトープ(9量体結合レジスター)及び隣接アミノ酸残基のMHCクラスII結合の
ための最も好ましい結合レジスターであるコア9量体アミノ酸配列を含有する。コア9量
体結合レジスターは、一次エピトープであると考えられるが、9量体結合レジスターの外
側に配置された残基は、MHCクラスII分子と相互作用し且つペプチド/MHCクラス
II複合体の安定性を支えることが明らかにされている。7個の同定されたDT T細胞エ
ピトープのコア9量体結合レジスターは、配列番号:161、164、167、169、
173、175及び178のアミノ酸配列を有する。
【0071】
本明細書に記載のT細胞エピトープは、さらに、エピトープの領域によって特徴付ける
ことができる。このような領域は、エピトープコア、N末端及びC末端を含有する。本明
細書で使用する「エピトープコア」とは、T細胞エピトープのコア9量体アミノ酸配列を
指す。エピトープコアは、さらに、N末端及び/又はC末端のコア9量体アミノ酸配列に
隣接した0個、1個、2個又は3個のアミノ酸残基を含有することができる。従って、エ
ピトープコアは、ある実施形態においては、約9個のアミノ酸から最大約15個のアミノ
酸までの長さに及ぶことができる。
【0072】
本明細書で使用する「N末端」とは、エピトープコアのN末端に隣接したアミノ酸を指
し、エピトープコアのN末端に隣接し且つその上流の少なくとも1個、2個、3個、4個
、5個、6個、7個、8個又は9個のアミノ酸を包含する。
【0073】
本明細書で使用する「C末端」とは、エピトープコアのC末端に隣接したアミノ酸を指
し、エピトープコアのC末端に隣接し且つその下流の少なくとも1個、2個、3個、4個
、5個、6個、7個、8個又は9個のアミノ酸を包含する。
【0074】
DT T細胞エピトープ1は、VDSSKSFVM(配列番号:161)として示すア
ミノ酸配列を有する9量体ペプチドからなる。本明細書に記載のように、T細胞エピトー
プの排除は、エピトープコアの0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個
、9個、10個、11個、12個、13個、14個又は15個のアミノ酸を修飾すること
によって及び/又はエピトープコアのN末端及び/又はC末端に隣接した0個、1個、2
個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又はそれ以上のアミノ酸残基を修飾する
ことによって達成できる。
【0075】
一つの限定されない例において、配列番号:181として示すアミノ酸配列を有するD
T T細胞エピトープ1のエピトープコア内の1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有する
ジフテリア毒素であって、アミノ酸修飾が挿入、欠失又は置換によるものであるジフテリ
ア毒素が、本明細書において提供される。DT T細胞エピトープ1のコアエピトープは
、配列番号:181に示すアミノ酸配列のアミノ酸残基7−15、6−16、5−17、
4−18又はこれらの任意の組み合わせを含有することができる。また、本明細書におい
て、配列番号:181に示すアミノ酸配列を有するDT T細胞エピトープ1のN末端及
び/又はC末端に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有するジフテリア毒素が提供される
。DT T細胞エピトープ1のN末端は、配列番号:181に示すアミノ酸配列のアミノ
酸残基1−6、1−5、1−4、1−3又はこれらの中の任意の組み合わせを含有する。
DT T細胞エピトープ1のC末端は、配列番号:181に示すアミノ酸配列のアミノ酸
残基16−24、17−25、18−26、19−27又はこれらの中の任意の組み合わ
せを含有する。また、配列番号:181のエピトープコアに及び配列番号:181のN末
端及び/又はC末端内に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有する修飾ジフテリア毒素が
、本明細書において提供される。一つの限定されない例において、エピトープコアのP1
バリン残基は、同定されたT細胞エピトープを修飾及び/又は排除するために任意のアミ
ノ酸残基で置換することができる。一つの実施形態において、エピトープコアのP1バリ
ン残基は、同定されたT細胞エピトープを修飾及び/又は排除するために、残基の極性部
分がDT分子上に露出された表面であり且つ疎水性領域が埋め込まれるように、極性アミ
ノ酸残基で置換することができる。極性アミノ酸残基の例としては、以下に限定されない
が、ヒスチジン(H)、グリシン(G)、リシン(K)、セリン(S)、トレオニン(T
)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸/アスパ
ラギン酸塩(D)、グルタミン酸/グルタミン酸塩(E)及びグルタミン(Q)が挙げら
れる。これらの修飾は以下に記載のその他のエピトープに適用できることが理解されるで
あろう。
【0076】
DT T細胞エピトープ2は、VDNAETIKK(配列番号:164)として示すア
ミノ酸配列を有する9量体ペプチドからなる。このT細胞エピトープの排除は、エピトー
プコアの0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個のアミノ酸
を修飾することによって及び/又はN末端及び/又はC末端の0個、1個、2個、3個、
4個、5個、6個、7個、8個、9個又はそれ以上のアミノ酸残基を修飾することによっ
て達成できる。一つの限定されない例において、配列番号:184のエピトープコア内に
1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有するジフテリア毒素であって、アミノ酸修飾が挿入
、欠失又は置換によるものであるジフテリア毒素が、本明細書において提供される。DT
T細胞エピトープ2のコアエピトープは、配列番号:184として示すアミノ酸配列の
アミノ酸残基13−21、12−22、11−23、10−24又はその中の任意の組み
合わせを含有する。また、配列番号:184に示すアミノ酸配列を有するDT T細胞エ
ピトープ2のN末端及び/又はC末端内に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有するジフ
テリア毒素が、本明細書において提供される。DT T細胞エピトープ2のN末端は、配
列番号:184として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基1−9、2−10、3−11、4
−12又はこれらの中の任意の組み合わせを含有する。DT T細胞エピトープ2のC末
端は、配列番号:184として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基22−30、23−31
、24−32、25−33又はこれらの中の任意の組み合わせを含有する。また、配列番
号:184のエピトープコアに及びN末端及び/又はC末端内に1個又はそれ以上のアミ
ノ酸修飾を有する修飾ジフテリア毒素が、本明細書において提供される。一つの限定され
ない例において、コア9量体のP1バリン残基は、同定されたT細胞エピトープを修飾及
び/又は排除するために任意のアミノ酸残基で置換することができる。
【0077】
DT T細胞エピトープ3は、LGLSLTEPL(配列番号:167)として示すア
ミノ酸配列を有する9量体ペプチドからなる。このT細胞エピトープの排除は、エピトー
プコアの0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個のアミノ酸
を修飾することによって及び/又はN末端及び/又はC末端の0個、1個、2個、3個、
4個、5個、6個、7個、8個、9個又はそれ以上のアミノ酸残基を修飾することによっ
て達成することができる。一つの限定されない例において、配列番号:187のエピトー
プコア内に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有するジフテリア毒素であって、アミノ酸
修飾が挿入、欠失又は置換によるものであるジフテリア毒素が、本明細書において提供さ
れる。DT T細胞エピトープ3のコアエピトープは、配列番号:187として示すアミ
ノ酸配列のアミノ酸残基13−21、12−22、11−23、10−24又はその中の
任意の組み合わせを含有することができる。また、配列番号:187に示すアミノ酸配列
を有するDT T細胞エピトープ3のN末端及び/又はC末端内に1個又はそれ以上のア
ミノ酸修飾を有するジフテリア毒素が、本明細書において提供される。DT T細胞エピ
トープ3のN末端は、配列番号:187として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基1−9、
2−10、3−11、4−12又はその中の任意の組み合わせを含有する。DT T細胞
エピトープ3のC末端は、配列番号:187として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基22
−30、23−31、24−32、25−33又はその中の任意の組み合わせを含有する
。また、配列番号:187のエピトープコアに及びN末端及び/又はC末端内に1個又は
それ以上のアミノ酸修飾を有する修飾ジフテリア毒素が、本明細書において提供される。
一つの限定されない例において、コア9量体のP1リシン残基は、同定されたT細胞エピ
トープを修飾及び/又は排除するために、残基の極性部分がDT分子上の露出した表面で
あり且つ疎疎水性領域が埋め込まれるように、極性アミノ酸残基で置換することができる
。さらに別の限定されない例において、コア9量体のP6トレオニン及び/又はP7グル
タミン酸位置は、同定されたT細胞エピトープを修飾及び/又は排除するために任意のア
ミノ酸で置換することができる。
【0078】
DT T細胞エピトープ4は、MEQVGTEEF(配列番号:169)として示すア
ミノ酸配列を有する9量体ペプチドからなる。このT細胞エピトープの排除は、エピトー
プコアの0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個のアミノ酸
を修飾することによって及び/又はN末端及び/又はC末端の0個、1個、2個、3個、
4個、5個、6個、7個、8個、9又はそれ以上のアミノ酸残基を修飾することによって
達成することができる。一つの限定されない例において、配列番号:190のエピトープ
コア内に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有するジフテリア毒素であって、アミノ酸修
飾が挿入、欠失又は置換によるものであるジフテリア毒素が、本明細書において提供され
る。DT T細胞エピトープ4のコアエピトープは、配列番号:190として示すアミノ
酸配列のアミノ酸残基13−21、12−22、11−23、10−24又はその中の任
意の組み合わせを含有することができる。また、配列番号:190に示すアミノ酸配列を
有するDT T細胞エピトープ4のN末端及び/又はC末端内に1個又はそれ以上のアミ
ノ酸修飾を有するジフテリア毒素が、本明細書において提供される。DT T細胞エピト
ープ4のN末端は、配列番号:190として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基1−9、2
−10、3−11、4−12又はその中の任意の組み合わせを含有する。DT T細胞エ
ピトープ4のC末端は、配列番号:190として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基22−
30、23−31、24−32、25−33又はその中の任意の組み合わせを含有する。
また、配列番号:190のエピトープコアに及びN末端及び/又はC末端内に1個又はそ
れ以上のアミノ酸修飾を有する修飾ジフテリア毒素が、本明細書において提供される。一
つの限定されない例において、コア9量体のP6トレオニン及び/又はP7グルタミン酸
残基は、同定されたT細胞エピトープを修飾及び/又は排除するため任意のアミノ酸で置
換することができる。
【0079】
DT T細胞エピトープ5は、FIKRFGDGA(配列番号:173)として示すア
ミノ酸配列を有する9量体ペプチドからなる。このT細胞エピトープの排除は、エピトー
プコアの0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個のアミノ酸
を修飾することによって及び/又はN末端及び/又はC末端の0個、1個、2個、3個、
4個、5個、6個、7個、8個、9又はそれ以上のアミノ酸残基を修飾することによって
達成することができる。一つの限定されない例において、配列番号:193のエピトープ
コア内に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有するジフテリア毒素であって、アミノ酸修
飾が挿入、欠失又は置換によるものであるジフテリア毒素が、本明細書において提供され
る。DT T細胞エピトープ5のコアエピトープは、配列番号:193として示すアミノ
酸配列のアミノ酸残基13−21、12−22、11−23、10−24又はその中の任
意の組み合わせを含有することができる。また、配列番号:193に示すアミノ酸配列を
有するDT T細胞エピトープ5のN末端及び/又はC末端内に1個又はそれ以上のアミ
ノ酸修飾を有するジフテリア毒素が、本明細書において提供される。DT T細胞エピト
ープ5のN末端は、配列番号:193として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基1−9、2
−10、3−11、4−12又はその中の任意の組み合わせを含有する。DT T細胞エ
ピトープ5のC末端は、配列番号:193として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基22−
30、23−31、24−32、25−33又はその中の任意の組み合わせを含有する。
また、配列番号:193のエピトープコアに及びN末端及び/又はC末端内に1個又はそ
れ以上のアミノ酸修飾を有する修飾ジフテリア毒素が、本明細書において提供される。一
つの限定されない例において、コア9量体のP4アルギニン残基、P6グリシン残基、P
7アスパラギン酸残基、及び/又はP9アラニン残基、あるいはその中の組み合わせは、
同定されたT細胞エピトープを修飾及び/又は排除するために置換することができる。
【0080】
DT T細胞エピトープ6は、VEYINNWEQ(配列番号:175)として示すア
ミノ酸配列を有する9量体ペプチドからなる。このT細胞エピトープの排除は、エピトー
プコアの0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個のアミノ酸
を修飾することによって及び/又はN末端及び/又はC末端の0個、1個、2個、3個、
4個、5個、6個、7個、8個、9又はそれ以上のアミノ酸残基を修飾することによって
達成することができる。一つの限定されない例において、配列番号:196のエピトープ
コア内に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有するジフテリア毒素であって、アミノ酸修
飾が挿入、欠失又は置換によるものであるジフテリア毒素が、本明細書において提供され
る。DT T細胞エピトープ6のコアエピトープは、配列番号:196として示すアミノ
酸配列のアミノ酸残基13−21、12−22、11−23、10−24又はその中の任
意の組み合わせを含有することができる。また、配列番号:196に示すアミノ酸配列を
有するDT T細胞エピトープ6のN末端及び/又はC末端内に1個又はそれ以上のアミ
ノ酸修飾を有するジフテリア毒素が、本明細書において提供される。DT T細胞エピト
ープ6のN末端は、配列番号:196として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基1−9、2
−10、3−11、4−12又はその中の任意の組み合わせを含有する。DT T細胞エ
ピトープ5のC末端は、配列番号:196として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基22−
30、23−31、24−32、25−33又はその中の任意の組み合わせを含有する。
また、配列番号:196のエピトープコアに及びN末端及び/又はC末端内に1個又はそ
れ以上のアミノ酸修飾を有する修飾ジフテリア毒素が、本明細書において提供される。一
つの限定されない例において、コア9量体のP1バリンは、同定されたT細胞エピトープ
を修飾及び/又は排除するために、親水性部分が露出した表面であり及び疎水性領域がタ
ンパク質内に埋め込まれるように極性アミノ酸残基で置換することができる。
【0081】
DT T細胞エピトープ7は、LEKTTAALS(配列番号:178)として示すア
ミノ酸配列を有する9量体ペプチドからなる。このT細胞エピトープの排除は、エピトー
プコアの0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個のアミノ酸
を修飾することによって及び/又はN末端及び/又はC末端の0個、1個、2個、3個、
4個、5個、6個、7個、8個、9又はそれ以上のアミノ酸残基を修飾することによって
達成することができる。一つの限定されない例において、配列番号:199のエピトープ
コア内に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有するジフテリア毒素であって、アミノ酸修
飾が挿入、欠失又は置換によるものであるジフテリア毒素が、本明細書において提供され
る。DT T細胞エピトープ7のコアエピトープは、配列番号:199として示すアミノ
酸配列のアミノ酸残基13−21、12−22、11−23、10−24又はその中の任
意の組み合わせを含有することができる。また、配列番号:199に示すアミノ酸配列を
有するDT T細胞エピトープ7のN末端及び/又はC末端内に1個又はそれ以上のアミ
ノ酸修飾を有するジフテリア毒素が、本明細書において提供される。DT T細胞エピト
ープ7のN末端は、配列番号:199として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基1−9、2
−10、3−11、4−12又はその中の任意の組み合わせを含有する。DT T細胞エ
ピトープ7のC末端は、配列番号:199として示すアミノ酸配列のアミノ酸残基22−
30、23−31、24−32、25−33又はその中の任意の組み合わせを含有する。
また、配列番号:199のエピトープコアに及びN末端及び/又はC末端内に1個又はそ
れ以上のアミノ酸修飾を有する修飾ジフテリア毒素が、本明細書において提供される。一
つの限定されない例において、コア9量体のP1ロイシンは、同定されたT細胞エピトー
プを修飾及び/又は排除するために任意のアミノ酸で置換することができる。
【0082】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、V7S、V7T、D8E、S9A、
S9T、V29S、V29T、V29N、V29D、D30E、S31N、I290T、
D291E、S292A、S292T、V97A、V97T、V97D、L107N、M
116A、M116Q、M116N、F124H、V148A、V148T、L298A
及びL298Nの中から選択される1個又はそれ以上の修飾を含有する。
【0083】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、V7N、V7T、V29N、V29
T及びV29Dの中から選択される2個の修飾を含有する。修飾としては、以下に限定さ
れないが、V7N V29N、V7N V29T、V7N V29D、V7T V29N
、V7T V29T又はV7T V29Dが挙げられる。
【0084】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、V7D、V7N、V7T、L107
A、L107N及びF124Hの中から選択される3個の修飾を含有する。修飾としては
、以下に限定されないが、V7D L107A F124H、V7D L107N F1
24H、V7N L107A F124H、V7N L107N F124H、V7T
L107A F124H及びV7T L107N F124Hが挙げられる。
【0085】
一つの実施形態において、DTバリアントは、4個の修飾、例えばV7D V97D
L107N F124H、V7N V97D L107N F124H、V7T V97
A L107N F124H、V7T V97D L107N F124H、V7T V
97T L107N F124H、V7D V97A L107N F124H、V7D
V97T L107N F124H、V7N V97A L107N F124H及び
V7N V97T L107N F124Hなどを含有する。
【0086】
前述の例及び実施形態の他に、1個又はそれ以上のT細胞エピトープに1個又はそれ以
上のアミノ酸修飾を有する修飾ジフテリア毒素が、本明細書において意図される。一つの
限定されない例において、少なくとも1個のT細胞エピトープに少なくとも1個の修飾を
有するジフテリア毒素が、本明細書において提供される。別の限定されない例において、
前記の1個、2個、3個、4個、5個、6個又は7個のT細胞エピトープに少なくとも1
個の修飾を有するジフテリア毒素が、本明細書において提供される。さらなる限定されな
い例としては、2個以上のT細胞エピトープに2個以上のアミノ酸修飾を有するジフテリ
ア毒素が挙げられる。任意の数の前記のDT T細胞エピトープ内のアミノ酸修飾の任意
の組み合わせが、本明細書において意図される。
【0087】
DT T細胞エピトープ及びアロタイプ頻度
抗原内に認められる個々のエピトープは、特異的MHCクラスIIアロタイプによって
優先的に提示されることができ、同様に同じ抗原内の他の特異的エピトープは、MHCク
ラスII分子上に提示されないかもしれない。特定のエピトープと特異的MCHクラスI
I分子とのこのような会合は、個々のMHCクラスIIアロタイプに依存することが明ら
かにされている。特異的エピトープと特異的アロタイプとの会合もまた、T細胞エピトー
プの除去のためにDTを修飾する場合に認めることができる。このような考察は、特異的
アロタイプについて(例えば、ある種のMHCクラスIIアロタイプを有する被検体の特
異的集団について)DT分子の極めて特異的な修飾を可能にすることができる。1人又は
複数の被検体のMHCクラスIIアロタイプは、当該技術において知られているゲノタイ
ピング法で容易に決定でき、従ってDT T細胞エピトープと所定のアロタイプの会合は
、そのアロタイプに適合した毒素修飾において考察するために、容易に同定される。DT
T細胞エピトープとMHCクラスIIアロタイプとの間の会合の同定は、実施例9、表
5及び図12に示す。本明細書において、毒素の所定のエピトープについて同定されたM
HCクラスII会合に適合したT細胞エピトープ修飾を有する修飾毒素が意図される。
【0088】
本明細書の教示に基づいて、これらの方法を本明細書に記載のその他の毒素に応用でき
る。例えば、MHC会合及びT細胞エピトープに関して解析されている毒素のアミノ酸配
列が、容易に使用できる。さらに、MHC会合に関して解析されていない毒素も解析でき
、明細書全体を通じて及び以下の実施例に記載されている方法を使用して試験できる。
【0089】
B細胞エピトープの選別
本明細書に記載のようなT細胞エピトープの同定及び修飾の他に、B細胞エピトープの
同定及び修飾は、毒素の免疫原性をさらに低下させることができる。血清学的方法、コン
ピューター法、又は両方の方法の組み合わせを、毒素又は修飾毒素内のB細胞エピトープ
を同定するのに使用できる。血清学的方法は、被検体の免疫原分子、例えばタンパク質、
ペプチド及びポリペプチドに対して抗体を生じる能力を用いる。毒素又は修飾毒素が、例
えばワクチン接種用のように集団に予め投与されているものである場合には、被検体にお
いて生じた抗体反応は、B細胞エピトープについて毒素又は修飾毒素を選別するのに使用
できる。一つの限定されない例において、本明細書に開示されているような修飾されたそ
のT細胞エピトープを既に有している毒素(例えば、ジフテリア毒素)は、B細胞エピト
ープを同定するのにさらに選別することができる。修飾毒素の配列に基づいたペプチドラ
イブラリーが合成でき、毒素に対する抗体を含有する毒素ワクチン接種ドナー由来の血清
が、ペプチドライブラリーのペプチドに結合する能力について試験することができる。種
々の方法及びアッセイ、例えば、以下に限定されないが、ELISA、RIA及びウェス
タンブロッティング法は、当該技術において周知であり、毒素ワクチン接種ドナーの血清
由来の抗体に結合する1個又はそれ以上のペプチドを同定するのに使用できる。ドナー血
清中で抗体を結合するこれら1個又はそれ以上のペプチドは、毒素配列内でB細胞エピト
ープを提示する。修飾毒素B細胞エピトープの同定の後に、B細胞エピトープに対応する
アミノ酸残基は、修飾することができ、修飾毒素はドナー血清に対して再選別される。こ
のプロセスは、修飾毒素の免疫原性をさらに低下させるために多数回行うことができる。
本明細書においてT細胞エピトープの同定について認められるように、公知のB細胞エピ
トープデータベース及び予測タンパク質モデル化プログラムを利用するコンピューター法
を、毒素又は修飾毒素内のB細胞エピトープを同定するのに用いることができる。このよ
うなエピトープがコンピューター法で同定され、修飾されると、修飾毒素は、本明細書に
記載のようなワクチン接種ドナー血清に対して選別することができる。コンピューターB
細胞エピトープ選別法は、単独で使用できるし、又は毒素内のB細胞エピトープの同定及
び修飾のためのペプチドライブラリーB細胞エピトープ選別と組み合わせて使用できる。
場合により、修飾毒素は、B細胞エピトープ選別に先立って及び又はそれに続いて選別す
ることができる。また、本明細書において、B細胞エピトープの修飾中に生じているかも
しれない任意のT細胞エピトープの存在についてのB細胞エピトープ修飾毒素の選別も意
図される。
【0090】
本明細書に記載の発明の出願は、少なくとも1個のB細胞エピトープを失っている修飾
毒素を選択する方法であって、毒素を用いて免疫されている少なくとも1人の被検体から
血清試料を取得し、前記血清は、前記毒素に対する抗体を含有し、前記血清を1個又はそ
れ以上の修飾毒素と接触させ(前記抗体の前記修飾毒素に対する結合は、複合体を形成す
る)、前記複合体の有無を検出し(複合体が検出される場合には、修飾毒素は少なくとも
1個のB細胞エピトープを失っておらず及び複合体の量の低下が検出される場合には、修
飾毒素は少なくとも1個のB細胞エピトープを失っている)及び少なくとも1個のB細胞
エピトープ失っている修飾毒素を選択することからなる修飾毒素(前記修飾毒素は、少な
くとも1個のB細胞エピトープを失っている)を選択する方法を包含する。一つの限定さ
れない実施形態において、複合体の量の低下は、未修飾毒素を用いて観察される量よりも
、例えば約1.5倍少ない、約2倍少ない、約5倍少ない、約10倍少ない、約20倍少
ない、約50倍少ない、約100倍少ない、約200倍少ない、又は約500倍少ないも
のであり得る。
【0091】
IV.血管漏出症候群
細胞損傷、特に内皮細胞損傷は、ヘビに咬まれたことなどによる毒素又は敗血症性ショ
ックを生じる分子、あるいは治療薬、例えば免疫毒素又はインターロイキンによって生じ
るか否かに関わらず、患者にとって未だに問題である。
【0092】
VLSは、多くの場合に細菌性敗血症中に観察され、IL−2及び種々の他のサイトカ
インを伴い得る(Baluna and Vitetta,Immunopharmac
ology,37:117−132,1996)。VLSの基礎となるメカニズムは、不
明であり、内皮細胞(EC)内で開始される事象のカスケードを伴うと考えられ、また炎
症カスケード及びサイトカインを伴うと考えられる(Engert et al.,In
:Clinical Applications of Immunotoxins,F
rankel(ed),2:13−33,1997)。VLSは、血管内皮細胞(EC)
に対する損傷並びに間質性浮腫、体重増加及びその最も重症型の腎臓障害、失語症及び肺
水腫をもたらす液体及びタンパク質の溢出を伴う複雑な病因を有する(Sausvill
e and Vitetta,In:Monoclonal Antibody−Bas
ed Therapy of Cancer,Grossbard(ed.),4:81
−89,1997;Baluna and Vitetta,Immunopharma
cology,37:117−132,1996;Engert et al.,In:
Clinical Applications of Immunotoxins,Fr
ankel(ed),2:13−33,1997)。血管漏出症候群(VLS)は、ヒト
においてこのようにこれまでに試験された全ての免疫毒素、並びにサイトカイン、例えば
インターロイキン2(IL−2)、TNF及びアデノウイルスベクターに関連する重大な
問題であった(Rosenberg et al.,N.Engl.J.Med.,31
6:889−897,1987;Rosenstein et al.,J.Immun
ol.,137:1735−1742,1986)。
【0093】
残基L74、D75、V76で修飾配列を含有するリシン毒素A鎖由来の抗体複合ペプ
チドは、低下を示した(Vitettaらの米国特許第6,566,500号公報)。従
って、(x)D/E(y)配列(1個又は複数)の1個又はそれ以上のアミノ酸欠失又は
突然変異、及び/又は例えばジフテリア毒素などの毒素の1個又はそれ以上のフランキン
グ残基が、これらの配列を含有する毒素分子のEC損傷を誘発する能力を低下又は抑制し
得ることが意図される。このような化学物質のEC損傷活性を低下させるか又は排除する
少なくとも1個の突然変異モチーフ及び/又は1個又はそれ以上のフランキング残基を含
有する1個又はそれ以上のポリペプチドをできることが期待される。
【0094】
本明細書において、ポリペプチド内の(x)D/E(y)又は(x)D/E(y)T配
列の突然変異に基づいて低下したVLS促進能を有する組成物であって、このような配列
それぞれを除去するか又は変化させる組成物、及びそれを使用する方法が、以下に記載さ
れる。従って、低下したVLS促進能を有するポリペプチドを製造する本明細書に記載の
全ての方法が、低下したEC損傷活性を有するポリペプチドを製造するのに応用できるこ
とが理解されるであろう。全てのこのような方法及びこのような方法で同定又は製造され
る組成物並びにその均等物が、本発明に包含される。
【0095】
ある態様において、本出願は、疾患、例えば以下に限定されないが、悪性疾患、例えば
皮膚T細胞リンパ腫、再発性/難治性T細胞非ホジキンリンパ腫、再発性/難治性B細胞
非ホジキンリンパ腫、皮下脂肪組織様T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞
リンパ腫鼻型、慢性リンパ球性白血病及びヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型関連急性
T細胞白血病/リンパ腫など;非悪性疾患、例えば移植片対宿主病及び乾癬など並びにこ
のような疾患の進行中の内皮細胞に対する損傷(すなわち、VLS)の治療薬を製造する
ための修飾毒素組成物であって、未修飾毒素組成物の配列と比べて除去された又は変更さ
れた(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E(y)Tを含有する配列の少なくとも1
個のアミノ酸を有する修飾毒素組成物の使用を提供する。
【0096】
副作用としての血管漏出症候群(VLS)の減少又は排除は、タンパク質治療薬、特に
免疫毒素及び融合毒素サブクラスのタンパク質治療薬の「リスク便益比」を向上させるこ
とから、著しい進歩に相当する(Baluna et al.,Int.J.Immun
opharmacology,18(6−7):355−361(1996);Balu
na et al.,Immunopharmacology,37(No.2−3):
117−132(1997),Bascon,Immunopharmacology,
39(3):255(1998))。細胞毒素及び独特な標的ドメイン(免疫毒素の場合
には細胞結合ドメイン)からなる融合タンパク質、すなわち一本鎖分子を開発できること
は、自己免疫疾患、例えば関節リウマチ及び乾癬、移植片拒絶反応及びその他の非悪性医
療適用のための治療薬の開発を促進できるであろう(Chaudhary et al.
,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87(23):9491−9494
(1990);Frankel et al.,in Clinical Applic
ations of Immunotoxins Scientific Publis
hing Services,Charleston S.C.,(1997),Kne
chtle et al.,Transplantation,15(63):1−6(
1997);Knechtle et al.,Surgery,124(2):438
−446(1998);LeMaistre,Clin.Lymphoma,1:S37
−40(2000);Martm et al.,J.Am.Acad.Dermato
l.,45(6):871−881,2001))。DAB389IL−2(ONTAK
(登録商標))は、現在、唯一の食品医薬品局承認タンパク質融合毒素であり、DT担毒
体及びL−2受容体を有する細胞を標的とするサイトカインIL−2を用いており、皮膚
T細胞リンパ腫(CTCL)の治療について承認されている(Figgitt et a
l.,Am.J.Clin.Dermatol.,1(1):67−72(2000);
Foss,Clin.Lymphoma,1(4):298−302(2001);Mu
rphy et al.,In Bacterial Toxins:Method a
nd Protocols,Holst O,ed,Humana Press,Tot
owa,N.J.,pp.89−100(2000))。ONTAK(登録商標)は、デ
ニロイキン・ジフチトックス、DAB389−IL−2、又はOnzarと種々に呼ばれ
る。その構造は、順番に、メチオニン残基、天然DTの残基1−386、天然DTの残基
484−485及びIL−2の残基2−133(配列番号:148)からなる。従って、
全長のONTAK(登録商標)は、521個のアミノ酸を含有する。ONTAK(登録商
標)のN末端で付加されたメチオニン残基の結果として、ジフテリアの配列の番号付与は
、一つによればONTAK(登録商標)の番号を有するレジスターの範囲外であることが
認められるべきである。
【0097】
多数のその他の担毒体、特にリシン毒素及びシュードモナス菌外毒素Aが、両方の免疫
毒素、融合毒素及び化学複合体を開発するのに用いられている。しかし、これらの分子は
、臨床試験を成功裏に完了しておらず、全てが著しい副作用としてVLSを示す(Kre
itman,Adv.Pharmacol.,28:193−219(1994);Pu
ri et al.,Cancer Research,61:5660−5662(1
996);Pastan,Biochim Biophys Acta.,24:133
3(2):C1−6(1997);Frankel et al.,Supra(199
7);Kreitman et al.,Current Opin.Invest.D
rugs,2(9):1282−1293(2001))。従って、ジフテリア毒素につ
いて本明細書に記載の修飾は、例えばリシン及びシュードモナス菌外毒素Aなどのその他
の毒素に外挿することができる。
【0098】
ある実施形態において、1個又はそれ以上の(x)D(y)及び/又は(x)D(y)
Tモチーフ又はそのフランキング配列に基づいて修飾された毒素又は化合物が、生体内で
VLSを抑制するのに使用できる。従って、(x)D(y)配列又はフランキング配列に
影響を及ぼすこのような突然変異がポリペプチドのVLSを誘発する能力又はこれらの配
列に付随する能力を変えることができることが意図される。一つの限定されない例におい
て、ジフテリア毒素は、生体内でVLSを抑制するために修飾される。
【0099】
VLSを誘発する低下した能力を有する毒素又は化合物を製造するために、1個又はそ
れ以上の(最大全部及び例えば全部の)残りの(x)D(y)及び/又は(x)D(y)
T配列が、ポリペプチドの表面に対して減少した露出を有することが意図される。例えば
、ポリペプチドの非露出部分に少なくとも部分的に配置されているか、又は分子の表面に
対する完全な又は部分的な露出から遮蔽されている(x)D(y)及び/又は(x)D(
y)T配列が、VLSを促進又は誘発する細胞、受容体又はその他の分子とあまり相互作
用しないことが意図される。従って、ポリペプチドの一次構造から(x)D(y)及び/
又は(x)D(y)T配列の完全排除は、低下したVLSを誘発又は促進する能力を有す
る毒素又は分子を生成させるのに必ずしも必要でないかもしれない。しかし、全ての(x
)D(y)及び/又は(x)D(y)T配列の除去が、VLSを誘発又は促進する最も低
い能力を有する組成物を製造するために意図される。
【0100】
突然変異が、あまり露出されていない(x)D(y)及び/又は(x)D(y)Tモチ
ーフを有するポリペプチドを生成しやすいか否かを調べるために、移動された又は付加さ
れた(x)D(y)及び/又は(x)D(y)T配列の推定される配置は、突然変異した
配列を、当業者に公知のこのような方法、例えば以下に限定されないが、X線結晶学、N
MR又はコンピューターモデル化によって決定されるような、突然変異していないポリペ
プチドの二次及び三次構造の配列と比較することによって決定できる。種々のポリペプチ
ド構造のコンピューターモデルが、文献及びコンピューターデータベースにおいて利用で
きる。一つの限定されない例において、Entrezデータベースウェブサイト(ncb
i.nlm.nih.gov/Entrez/)が、突然変異誘発のための標的配列及び
領域を同定するのに使用できる。Entrezデータベースは、知られている場合には、
同定されたアミノ酸配列についての3D構造のデータベースに相互接続される。このよう
な分子モデルが、外部分子と接触するためにポリペプチドの内部に埋め込まれた同様の配
列よりも多く露出しているポリペプチド内の(x)D(y)、(x)D(y)T及び/又
はフランキング配列を同定するのに使用できる。外部分子と接触するためにより多く露出
している(x)D(y)、(x)D(y)T及び/又はフランキング配列は、VLS及び
これらの配列に付随するその他の毒性効果を促進又は抑制するのにより寄与していると思
われ、従って、突然変異誘発のための一次標的であるべきである。突然変異型又は野生型
のポリペプチドの構造は、当業者には公知であるように、生体外又は生体内アッセイで使
用する前に直接にX線結晶学又はNMRで決定できるであろう。
【0101】
(x)D(y)及び/又は(x)D(y)T配列を含有するアミノ酸配列がポリペプチ
ドにおいて変化させられると、少なくとも1個の毒性効果を誘導又は促進するその能力の
変化は、本明細書に記載の又は当業者に公知の技法のいずれかを使用してアッセイできる
【0102】
本明細書で使用するように、(x)D(y)配列又は(x)D(y)T配列を含有する
アミノ酸配列の「変化させる」、「変化させた」、「変化する」及び「変化」とは、当業
者には公知のポリペプチド内の(x)D(y)及び/又は(x)D(y)T配列を含有す
るアミノ酸配列の化学修飾、並びにこのようなアミノ酸配列の任意の突然変異、例えば以
下に限定されないが、挿入、欠失、切断又は置換を包含する。このような変化は、(x)
D(y)及び/又は(x)D(y)T配列を含有する1個又はそれ以上のアミノ酸配列の
少なくとも1個の毒性効果(すなわち、VLS、EC損傷などを促進する能力)を変化さ
せるか又は修飾する(抑制する)ことができる。本明細書で使用するように、(x)D(
y)配列又は(x)D(y)T配列を含有するアミノ酸配列は、(x)D(y)及び/又
は(x)D(y)Tトリ又はテトラペプチド配列に対してC末端及び/又はN末端の少な
くとも1個のフランキング配列を含有することができる。このような「変化」は、合成ポ
リペプチドにおいて又は突然変異ポリペプチドを生成するために発現される核酸配列にお
いてなされることができる。
【0103】
一つの態様において、(x)D(y)及び/又は(x)D(y)T配列を含有するアミ
ノ酸配列の変化は、アミノ酸配列の除去によるものである。本明細書で使用するように、
(x)D(y)及び/又は(x)D(y)T配列を含有するアミノ酸配列について「除去
する」、「除去された」、「除去する」又は「除去」とは、(x)D(y)及び/又は(
x)D(y)Tトリ又はテトラペプチド配列、及び/又は少なくとも1個の未変性フラン
キング配列の存在を排除する一次アミノ酸配列の突然変異を指す。「除去される」又は「
欠く」という用語は、同じ意味で使用される。
【0104】
本出願の一つの態様は、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)に対して減少した結合を有す
るジフテリア毒素(DT)の遺伝子修飾ポリペプチドに関する。これらの修飾ポリペプチ
ドは、以下、修飾DT、修飾DTポリペプチド又はDTバリアントと呼ぶ。本出願は、D
Tポリペプチドの(x)D(y)モチーフ内に、すなわち未変性DT配列(配列番号:1
)の残基6−8(VDS)、残基28−30(VDS)及び残基289−291(IDS
)に、あるいは配列番号:2又は200の残基7−9(VDS)、残基29−31(VD
S)及び残基290−292(IDS)で1個又はそれ以上の変化を有する修飾DTに関
する。(x)D(y)モチーフは、「VLSモチーフ」と呼ばれることから、1個又はそ
れ以上の修飾(x)D(y)モチーフを有する修飾DTポリペプチドは、「VLS修飾D
Tポリペプチド」と呼ぶことができる。
【0105】
本出願の一つの態様は、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)に対して減少した結合を有す
る毒素(例えば、ジフテリア毒素(DT))の遺伝子修飾ポリペプチドに関する。これら
の修飾毒素は、以下、修飾毒素と呼ぶ。本出願は、毒素ポリペプチドの(x)D/E(y
)モチーフ内の1個又はそれ以上の変化を有する修飾毒素を提供する。例えば、DT内に
認められる(x)D/E(y)モチーフは、未変性DT配列(配列番号:1)の残基6−
8(VDS)、残基28−30(VDS)及び残基289−291(IDS)で生じるか
、あるいは配列番号:2又は200の残基7−9(VDS)、残基29−31(VDS)
及び残基290−292(IDS)で生じる。(x)D/E(y)モチーフは、「VLS
モチーフ」と呼ばれることから、1個又はそれ以上の修飾(x)D/E(y)モチーフを
有する修飾毒素ポリペプチドは、時には、「VLS修飾毒素ポリペプチド」と呼ばれる。
【0106】
VLSを誘発する、アポトーシスを誘発する及びその他の効果を誘発するような(x)
D/E(y)及び(x)D/E(y)Tモチーフの同定に関して、VLS阻害剤の新しい
ファミリーの分子の創作は、これらの分子が最大の有益効果を発揮することを可能にする
。例えば、本明細書に開示される組成物及び方法を使用する毒素治療薬の低下した毒性は
、より大きい患者集団を治療することを可能にするか又はより進行した疾患(例えば、癌
)を治療することを可能にする。ある実施形態において、(x)D/E(y)及び/又は
(x)D/E(y)Tモチーフ又はそのフランキング配列に基づいた修飾タンパク質又は
融合タンパク質は、VLS又は生体内のその他の活性を抑制するのに使用し得る。
【0107】
(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E(y)T配列を欠いているペプチド、ポリ
ペプチド又はタンパク質を生成させるために、保存アスパラギン酸(D)又は保存グルタ
ミン酸(E)を欠失又は変異させるか、アスパラギン酸又はグルタミン酸を別のアミノ酸
に置換するか、あるいは1個又はそれ以上のアミノ酸をその位置で又はその位置に隣接し
た位置で挿入することができる。本明細書において意図する修飾は、欠失又は突然変異事
象の結果として、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、セリン(S)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メ
チオニン(M)、グリシン(G)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン
(Y)、プロリン(P)、ヒスチジン(H)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、
リシン(K)、アルギニン(R)及び表1の修飾又は異常アミノ酸の中から選択されるア
ミノ酸残基による配列内の(D)又は(E)残基の置換を含む。
【0108】
あるいは、(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E(y)T配列を欠いているペプ
チド、ポリペプチド又はタンパク質を生成させるために、保存アスパラギン酸(D)を欠
失又は変異させるか、アスパラギン酸を別のアミノ酸に置換するか、あるいは1個又はそ
れ以上のアミノ酸をその位置で又はその位置に隣接した位置で挿入することができる。本
明細書において意図する修飾は、欠失又は突然変異事象の結果として、イソロイシン(I
)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチ
オニン(M)、アラニン(A)、グリシン(G)、トレオニン(T)、トリプトファン(
W)、チロシン(Y)、プロリン(P)、ヒスチジン(H)、グルタミン(Q)、アスパ
ラギン(N)、リシン(K)、アルギニン(R)及び表1の修飾又は異常アミノ酸の中か
ら選択されるアミノ酸残基による配列内の(D)残基の置換を含む。
【0109】
【表1】
【0110】
一つの実施形態において、(x)残基は、(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E
(y)Tを除去するために1個又はそれ以上のアミノ酸の挿入によって欠失、置換又は移
動させることができる。本明細書において意図する修飾は、欠失又は突然変異事象の結果
として、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)、トレオニン(
T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、プロリン(P)、ヒスチジン(H)、グ
ルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、リ
シン(K)、アルギニン(R)、グリシン(G)、セリン(S)、アラニン(A)、ロイ
シン(L)及び表1の修飾又は異常アミノ酸の中から選択されるアミノ酸残基による配列
内の(x)残基の置換を含む。
【0111】
あるいは、(x)残基は、(x)D(y)及び/又は(x)D(y)Tを除去するため
に、1個又はそれ以上のアミノ酸の挿入によって欠失、置換又は移動させることができる
。本明細書において意図する修飾は、欠失又は突然変異事象の結果として、フェニルアラ
ニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)、トレオニン(T)、トリプトファン
(W)、チロシン(Y)、プロリン(P)、ヒスチジン(H)、グルタミン酸(E)、グ
ルタミン(Q)、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、リシン(K)、アルギニ
ン(R)及び表1の修飾又は異常アミノ酸の中から選択されるアミノ酸残基による配列内
の(x)残基の置換を含む。例えば、記載のようなV又はIアミノ酸残基は、このような
アミノ酸残基のいずれかで置換される。
【0112】
一つの実施形態において、(y)残基は、(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E
(y)Tを除去するために、1個又はそれ以上のアミノ酸の挿入によって欠失、置換又は
移動させることができる。欠失又は突然変異事象の結果として配列内の(y)残基を置換
し得るアミノ酸は、例えば、イソロイシン(I);フェニルアラニン(F);システイン
/シスチン(C);メチオニン(M);アラニン(A);グリシン(G);トレオニン(
T);トリプトファン(W);チロシン(Y);プロリン(P);ヒスチジン(H);グ
ルタミン酸(E);グルタミン(Q);アスパラギン酸(D);アスパラギン(N);リ
シン(K);及びアルギニン(R)、ロイシン(L)、バリン(V)、セリン(S)並び
に、例えば以下に限定されないが、表1に示すアミノ酸である。
【0113】
あるいは、(y)残基は、(x)D(y)及び/又は(x)D(y)T配列を除去する
ために、1個又はそれ以上のアミノ酸の挿入によって欠失、置換又は移動させることがで
きる。欠失又は突然変異事象の結果として配列内の(y)残基を置換し得るアミノ酸は、
例えば、イソロイシン(I);フェニルアラニン(F);システイン/シスチン(C);
メチオニン(M)、アラニン(A);グリシン(G);トレオニン(T);トリプトファ
ン(W)、チロシン(Y)、プロリン(P);ヒスチジン(H);グルタミン酸(E);
グルタミン(Q);アスパラギン酸(D);アスパラギン(N)、リシン(K);及びア
ルギニン(R)並びに、例えば以下に限定されないが、表1に示すアミノ酸である。
【0114】
物理的領域、3次元空間、又はHUVEC結合部位及び/又は(x)D/E(y)モチ
ーフの近傍に配置されるその他の残基は、VLSを抑止する、抑制する、又は除去するた
めに変異又は変化させ得る。フランキング領域内の突然変異について標的とされるアミノ
酸としては、天然毒素タンパク質の表面又はその近くのアミノ酸が挙げられる。変化は、
タンパク質の表面の特定の領域において帯電を無効にするか又は逆転させ得る(x)D/
E(y)モチーフの領域内の帯電残基を除去又は置換し得る。変化はまた、物理的領域、
空間又は(x)D/E(y)配列の近傍又はタンパク質の活性部位のアミノ酸の大きさ及
び/又は親水性も変化させ得る。例えば、LDVは、α4β1インテグリン受容体に対す
るその結合に関与するフィブロネクチンのCS1ドメインの最小活性部位を構成する(M
akarem and Humphries,1991;Wayner and Kov
ach,1992;Nowlin et al.,1993)。しかし、フィブロネクチ
ン(FN)は、HUVECを損傷しない。代わりに、FNは、HUVECをRTA介在損
傷から保護する(Baluna et al.,1996)。RTAと異なり、FNは、
トレオニンの代わりにC末端LDV−フランキングプロリンを有する。ディスインテグリ
ンにおいて、RGDに隣接する残基は、リガンド結合において役割を果たす(Lu et
al.,1996)。LDV又はホモローグ含有分子の血管統合性を促進する(例えば
、FN)か又はそれを崩壊する(例えば、DT)能力の間の相違は、LDVモチーフの配
向、又は相互作用(すなわち、結合)のための利用性に依存し得、従ってフランキング配
列に依存し得る。従って、(x)D/E(y)配列の1個又はそれ以上のフランキング残
基の変化は、分子のVLSを促進する能力を高めるか又は低下させ得る。また、(x)D
/E(y)配列を、受容体などの他のタンパク質と相互作用するように、タンパク質の外
面に露出する変化は、VLS促進活性を高め、これに対してあまり露出されない立体配置
はVLS促進活性を低下させ得る。
【0115】
(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E(y)T配列のN末端又はC末端フランキ
ング配列内の少なくとも1個の突然変異、化学修飾、移動又はその他の変化はまた、低下
したVLSを促進する能力を有するタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを生成し得る
。好ましくは、このような突然変異又は変化は、活性部位に影響を及ぼさない1個又はそ
れ以上の残基において生じるであろう。他の実施形態において、突然変異又は変化は、約
1個、約2個、約3個、約4個、約5個、約6個又はそれ以上のN末端及び/又はC末端
から(x)D/E(y)トリペプチド配列までの1個又はそれ以上の残基において生じる
であろう。他の態様において、(x)D/E(y)トリペプチドに隣接していない1個又
はそれ以上の残基は、(x)D/E(y)モチーフの機能に寄与し得る。このような残基
は、本明細書に記載のような及び当業者に知られているような3次元モデルにおけるトリ
ペプチド配列に対するその近接によって同定し得及びフランキング配列の一部として変化
について考慮される。このような変化は、1個又はそれ以上の「野生型」フランキング残
基が、変化させられ、除去され、移動され、化学修飾される限りは、(x)D/E(y)
及び(x)D/E(y)T配列を変化させるために、上記の変化のいずれかを包含し得る
【0116】
このようなアミノ酸修飾は、融合タンパク質の状況内の標的細胞にDTの触媒ドメイン
を効率的に送達し及び無傷のVLSモチーフを再構成しない能力についてアッセイできる
。本明細書において、低下したVLS誘発能力を有する修飾ジフテリア毒素が提供される
。任意の残りの(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E(y)T配列は、可能ならば
、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの表面に対する減少した露出を有するべきであ
る。
【0117】
一つの限定されない例において、ジフテリア毒素の非露出部分に少なくとも部分的に配
置されるかあるいは分子の表面に対する完全又は部分露出から保護される(x)D/E(
y)及び/又は(x)D/E(y)T配列は、VLSを促進又は誘発する細胞、受容体又
はその他の分子とあまり相互作用しないであろうことが意図される。従って、ジフテリア
毒素の一次構造から(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E(y)T配列の完全排除
は、低下したVLS誘発又は促進能力を有する毒素又は分子を必ずしも生成しないことが
意図される。しかし、一つの実施形態において、全ての(x)D/E(y)及び/又は(
x)D/E(y)T配列は、最も低いVLS誘発能力を有する組成物を生成するために除
去される。
【0118】
突然変異が、あまり露出されていない(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E(y
)Tモチーフを有する修飾毒素を生成しやすいか否かを調べるために、移動されるか又は
付加された(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E(y)T配列の推定される配置は
、当業者に公知のこのような方法、例えば以下に限定されないが、X線結晶学、NMR又
はコンピューターモデル化によって決定されるように、突然変異配列を突然変異していな
い(ポリペプチド)毒素の二次及び三次構造の配列と比較することによって決定できる。種
々のポリペプチド及びペプチド構造のコンピューターモデルが、文献及びコンピューター
データベースにおいて利用できる。一つの限定されない例において、Entrezデータ
ベースウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez/)が
、突然変異誘発のための標的配列及び領域を同定するのに使用できる。Entrezデー
タベースは、知られている場合には、同定されたアミノ酸配列についての3D構造のデー
タベースに相互接続される。このような分子モデルは、外部分子と接触するためにポリペ
プチド又はポリペプチドの内部に埋め込まれた同様の配列よりも多く露出しているジフテ
リア毒素内の(x)D/E(y)、(x)D/E(y)T及び/又はフランキング配列を
同定するのに使用できる。外部分子(例えば、受容体)と接触するためにより多く露出し
ている(x)D/E(y)、(x)D/E(y)T及び/又はフランキング配列は、VL
S及びこれらの配列に付随するその他の毒性効果を促進又は抑制するのにより寄与してい
ると思われ、従って、突然変異誘発のための一次標的であるべきである。ある実施形態に
おいて、少なくとも1個の(x)D/E(y)、(x)D/E(y)T及び/又はフラン
キング配列を付加することが望ましい場合には、外部分子と接触するためにより多く露出
しているタンパク質の領域が、このような配列を付加するために部位として好ましい。突
然変異型又は野生型(ポリペプチド)毒素の構造は、当業者には公知であるように、生体外
又は生体内アッセイで使用する前に直接、X線結晶学又はNMRで決定できるであろう。
【0119】
(x)D/E(y)及び/又は(x)D/E(y)T配列を含有するアミノ酸配列が(
ポリペプチド)毒素において変更されると、少なくとも1個の毒性効果を促進するその能
力の変化は、本明細書に記載の技法又は当業者に公知の技法のいずれかを使用してアッセ
イできる。アミノ酸配列を変化させる方法は、以下により詳しく記載され、また当該技術
において知られている。
【0120】
修飾(変化)は、これらの領域内の未修飾配列又は予め修飾された配列の改変を可能に
するが、毒素又は担毒体の細胞毒性を損なわないこれらアミノ酸の置換、挿入又は欠失で
ある。これらの修飾は、内皮細胞との相互作用を媒介するのに関与するためVDS/ID
S配列を再生する修飾を含まないであろう。従って、このような非未変性組換え配列は、
毒素の独特なドメインの固有の機能を維持し、同時に血管内皮細胞と相互作用するその能
力を著しく低下させる新規な一連の突然変異体を含有する。
【0121】
一つの実施形態において、本発明のDTバリアントは、VLSに関連するモチーフを排
除し、それによってこの症候群に一般に付随する臨床副作用を抑制するために、DT分子
の(x)D/E(y)モチーフの一つの内に、すなわち配列番号:1の残基6−8(VD
S)、残基28−30(VDS)及び残基289−291(IDS)内に、少なくとも1
個の修飾を含む。しかし、本出願の修飾DTは、タンパク質融合毒素中に組み込まれた場
合には、標的真核細胞の細胞質ゾルへのその触媒ドメインの送達を促進するその能力にお
いてDT387と同程度に効果があり及び有効である。DT387(配列番号:2)は、
触媒ドメイン及びトランスロケーションドメイン及びN末端メチオニンの付加を含む未変
性DTタンパク質のアミノ酸残基1−386を含有する切断DTタンパク質である。DT
389(配列番号:200)は、順番にメチオニン残基、未変性DTの残基1−386及
び未変性DTの残基484−485を含有する切断DTタンパク質である。一つの実施形
態において、本発明のDTバリアントは、VLSに関連するモチーフを排除し、それによ
ってこの症候群に一般に付随する臨床副作用を抑制するために、DT分子の(x)D/E
(y)モチーフの一つの内に、すなわち配列番号:2又は200の残基7−9(VDS)
、残基29−31(VDS)及び残基290−292(IDS)内に、少なくとも1個の
修飾を含む。
【0122】
未修飾ジフテリア毒素は、例えば、配列番号:2又は200のアミノ酸配列あるいは配
列番号:4−147のいずれかのアミノ酸配列を有することができる。一つの実施形態に
おいて、未修飾ジフテリア毒素に匹敵する細胞毒性を有する修飾ジフテリア毒素とは、未
修飾ジフテリア毒素と比べて実質的に同様の細胞毒性を有するか、あるいは少なくとも約
70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約
90%、又は少なくとも約95%又はそれ以上の細胞毒性を有する修飾ジフテリア毒素を
指す。大腸菌中で産生された精製DAB389IL−2は、一般に、5×10−11M〜
1×10−12Mの間のIC50を生じる。従って、別の実施形態において、未修飾ジフ
テリア毒素に匹敵する細胞毒性を有する修飾ジフテリア毒素とは、約5×10−11M〜
約1×10−12M、約1×10−10M〜約1×10−10M、約1×10−9M〜約
1×10−10M、又は約1×10−8M〜約1×10−9Mの間のIC50を有する修
飾ジフテリア毒素を指す。未修飾ジフテリア毒素と比べた修飾ジフテリア毒素の細胞毒性
は、細胞毒性アッセイ、例えば以下の実施例に記載の細胞毒性アッセイで試験できる。
【0123】
(x)D/E(y)モチーフにおける修飾の他に、修飾DTは、切断された分子が細胞
結合ドメインと融合される場合に細胞中に標的細胞をトランスロケーションさせ、殺す能
力を保持する限りは、配列番号:2又は200の1〜30個のアミノ酸、1〜10個のア
ミノ酸、又は1〜3個のアミノ酸の欠失又は置換をさらに含有することができる。
【0124】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素であって、前記修飾ジフテリア毒素が配
列番号2又は200に示すようなアミノ酸配列であってその中に1個又はそれ以上のアミ
ノ酸修飾を有するアミノ酸配列を有し、少なくとも1個のアミノ酸修飾が、例えば、配列
番号:2又は200の残基7−9、29−31及び290−292などの領域の(x)D
(y)モチーフ内で行われ及び修飾ジフテリア毒素が未修飾ジフテリア毒素に匹敵する細
胞毒性を有する修飾ジフテリア毒素が、本明細書において提供される。一つの実施形態に
おいて、位置(x)の修飾は、A、S、E、F、C、M、T、W、Y、P、H、Q、D、
N、K、R、G、L、あるいは表1の修飾又は異常アミノ酸によるV又はIの置換である
。一つの実施形態において、位置Dの修飾は、A、S、E、I、V、L、F、C、M、G
、T、W、Y、P、H、Q、N、K、Rあるいは表1の修飾又は異常アミノ酸によるDの
置換である。一つの実施形態において、位置(y)の修飾は、I、F、C、M、A、G、
T、W、Y、P、H、E、Q、D、N、K、R、S、L、V及び表1の修飾又は異常アミ
ノ酸による置換である。
【0125】
あるいは、別の実施形態において、その中に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有する
修飾ジフテリア毒素であって、少なくとも1個のアミノ酸修飾が配列番号:2又は200
の残基7−9、29−31及び290−292からなる群から選択される領域の(x)D
/E(y)モチーフ内で行われ及び前記修飾ジフテリア毒素が未修飾ジフテリア毒素に匹
敵する細胞毒性を有する、その中に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有する修飾ジフテ
リア毒素が、本明細書において提供される。一つの実施形態において、位置(x)の修飾
は、F、C、M、T、W、Y、P、H、E、Q、D、N、K、R、あるいは表1の修飾又
は異常アミノ酸によるV又はIの置換である。別の実施形態、位置D/Eの修飾は、I、
V、L、F、C、M、A、G、T、W、Y、P、H、Q、N、K、R又は表1の修飾又は
異常アミノ酸によるD/Eの置換である。一つの実施形態において、位置(y)の修飾は
、I、F、C、M、A、G、T、W、Y、P、H、E、Q、D、N、K、R、S、L、V
及び表1の修飾又は異常アミノ酸による置換である。
【0126】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、V7T、V7N、V7D、D8N、
S9A、S9T、S9G、V29N、V29D、V29T、D30N、S31G、S31
N、1290T、D291E、S292A、S292G及びS292Tの中から選択され
る1個又はそれ以上の修飾を含む。
【0127】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は、2個の修飾を含む。このような修飾
ジフテリア毒素は、突然変異の組み合わせ、例えば、V7N V29N、V7N V29
T、V7N V29D、V7T V29N、V7T V29T又はV7T V29Dなど
を含むことができる。
【0128】
一つの実施形態において、修飾ジフテリア毒素は3個の修飾を含む。このような修飾ジ
フテリア毒素は、突然変異の組み合わせ、例えばV7N V29N I290N、V7N
V29N I290T、V7N V29N S292A、V7N V29N S292
T、V7N V29T I290N、V7N V29T I290T、V7N V29T
S292A、V7N V29T S292T及びV7T V29T I290Tなどを
含むことができる。
【0129】
1個又はそれ以上の(x)D/E(y)モチーフ内に約1個、2個、3個、4個、5個
、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個
、17個、18個、19個、又は最大で約20個の修飾を含む修飾ジフテリア毒素は、本
明細書に記載の方法を使用して、アミノ酸残基を連続的に修飾し、活性を、予め修飾され
ていない又は予め修飾されたジフテリア毒素に対するそれぞれの修飾の後に比較すること
によって調製される。あるいは、2個以上の修飾を含む修飾ジフテリア毒素は、本明細書
に記載の方法を使用して、2個以上のアミノ酸残基を同時に修飾し、活性を予め修飾され
ていないジフテリア毒素と比較することによって調製される。修飾毒素は、アッセイ当該
技術において知られているアッセイ及び本明細書に記載の アッセイ、例えば以下に限定
されないが、細胞毒性アッセイ及びADPリボシル化アッセイを使用して活性について試
験できる。
【0130】
発現された毒素−突然変異体及び毒素−融合タンパク質は、その機能活性について試験
できる。種々の毒素の活性を試験する方法は、当該技術において周知である。例えば、D
Tバリアント及びDT−融合タンパク質のVLS効果は、実施例に2に記載のようなHU
VECにおいて試験できる。DTバリアント又はDT−融合タンパク質のリボシルトラン
スフェラーゼ活性は、実施例3に記載のリボシルトランスフェラーゼアッセイで試験でき
る。DTバリアント又はDT−融合タンパク質の細胞毒性は、実施例4に記載のようにし
て試験できる。これらのリガンドを使用するVLS修飾DT融合毒素は、特異的結合が存
在する細胞型の癌又はその他の疾患を治療することに有用である
V.T細胞エピトープ、B細胞エピトープ及びVLSモチーフの修飾を有する毒素
T細胞及びB細胞エピトープの修飾によって免疫原性を低下させる方法並びに本明細書
に記載のようなVLSモチーフの修飾によって血管漏出症候群を軽減させる方法の他に、
毒素及び修飾毒素は、低下した免疫原性(T細胞、B細胞、又はこれら両方)及び血管漏
出症候群を引きこす能力の低下(すなわち、内皮細胞及び血管内皮細胞に対して低下した
結合並びに内皮細胞間結合の崩壊の減少及び本明細書に記載のような血管漏出症候群の他
の適応症)を示すポリペプチドを生成するために両方の修飾を含むことができる。
【0131】
T細胞エピトープ、B細胞エピトープ、VLSモチーフ及びこれらの組み合わせに修飾
を有する毒素(例えば、ジフテリア毒素)を生成させるために、それぞれの型の修飾のた
めになされたアミノ酸残基の修飾が、その他の修飾に照らして考慮される。一つの限定さ
れない例において、T細胞エピトープ及びVLSモチーフの両方の修飾が望ましい。T細
胞エピトープ及びVLSモチーフの両方を修飾する場合には、毒素内の少なくとも1個の
T細胞エピトープ内の少なくとも1個のアミノ酸の修飾は、VLSモチーフを作り出すべ
きでない。同様に、毒素内の少なくとも1個のVLSモチーフ内の少なくとも1個のアミ
ノ酸の修飾は、T細胞エピトープを作り出すべきでない。また、T細胞エピトープ又はV
LSモチーフの修飾は、予め修飾されたT細胞又はVLSモチーフを再誘導すべきでない
。さらにまた、このようなポリペプチドの修飾はまた、所望の場合には、T細胞エピトー
プ又はVLSモチーフを作り出すか又は再誘導すべきでないB細胞エピトープの修飾を考
慮に入れることもできる。
【0132】
毒素の細胞毒性に影響を及ぼす修飾も行うことができる。例えば、1個又はそれ以上の
修飾が1個又はそれ以上のT細胞エピトープに対して行われ、VLSモチーフ及び/又は
B細胞エピトープが調製され且つ修飾毒素の細胞毒性が未修飾毒素よりも低い場合には、
1個又はそれ以上の修飾は、細胞毒性を未修飾毒素のレベルに匹敵するレベル又は有効レ
ベルまで回復させるために行うことができることが本明細書において意図される。
【0133】
ジフテリア毒素(T)の膜挿入ドメイン(トランスロケーションドメイン)は、細胞の
細胞質ゾルへの触媒ドメイン(C)ドメインの送達に関与する両親媒性領域を含む。一つ
の限定されない例において、領域のヘリカル構造を保持する1個又はそれ以上の異なるア
ミノ酸残基による両親媒性領域の1個又はそれ以上のアミノ酸残基の置換は、細胞毒性を
保持できる。両親媒性領域内の荷電及び疎水性アミノ酸残基及びその修飾の組成及び分布
の考察もまた、本明細書において意図される。荷電アミノ酸残基の例としては、Glu、
Asp、Asn、Gln、Lys、Arg及びHisが挙げられる。疎水性アミノ酸とし
ては、以下に限定されないが、アラニン及びフェニルアラニンが挙げられる。
【0134】
本明細書に記載のADP−リボシル化タンパク質ファミリーの触媒ドメインの結合裂隙
の修飾は、細胞毒性に影響を及ぼすこともできる。一つの限定されない例において、ジフ
テリア毒素CドメインのF/Y−X−S−T−Xモチーフの1個又はそれ以上のアミノ酸
残基の修飾は、ポリペプチドの細胞毒性に影響を及ぼすことができる。触媒ドメインを保
持する1個又はそれ以上の異なるアミノ酸残基によるこの領域の1個又はそれ以上のアミ
ノ酸残基の置換は、細胞毒性を保持できる。ADP−リボシル化タンパク質ファミリー〔
例えば、緑膿菌外毒素A〕の関連構成メンバーとの比較は、ジフテリア毒素Cドメインな
どのドメインのアミノ酸残基修飾及び組成に関する指針を提供できる。これらのような修
飾も本明細書において意図される。
【0135】
低下した免疫原性、低下したVLS効果(すなわち、減少した内皮細胞結合)及びこれ
らの組み合わせを有する修飾毒素を調製する方法が、本明細書において提供される。また
、低下した免疫原性、低下したVLS効果及びこれらの組み合わせを有する修飾毒素を選
択する方法も、本明細書に記載の発明の範囲に意図される。
【0136】
一つの実施形態において、毒素は、T細胞エピトープ、B細胞エピトープ、VLSモチ
ーフ及びこれらの組み合わせについて修飾され、修飾毒素のアミノ酸配列は、T細胞エピ
トープ、B細胞エピトープ又はVLSモチーフの生成又は再導入のために連続的に調べら
れる。T細胞エピトープ、B細胞エピトープ、VLSモチーフ又はこれらの組み合わせが
生成又は再導入されていることが認められる場合には、その中のアミノ酸残基は、前記の
T細胞エピトープ、B細胞エピトープ、VLSモチーフ又はこれらの組み合わせを除去す
るために、任意のT細胞エピトープ、B細胞エピトープ、VLSモチーフ又はこれらの組
み合わせを生成又は再導入することなくさらに修飾される。
【0137】
別の実施形態において、毒素内のT細胞エピトープが、最初に同定され、修飾され、次
いで毒素内の任意のVLSモチーフが同定及び修飾される。次いで、修飾毒素は、任意の
T細胞エピトープの生成及び再導入について調べられ、任意のこのようなT細胞エピトー
プは、VLSモチーフを生成又は再導入することなく修飾される。さらに別の実施形態に
おいて、毒素内のVLSモチーフは、最初に同定及び修飾され、次いで毒素内のT細胞エ
ピトープが同定及び修飾される。
【0138】
本明細書に記載の方法の適用はまた、低下した免疫原性、低下したVLS効果(すなわ
ち、低下した内皮細胞結合)及びこれらの組み合わせを示す修飾毒素を調製する方法も提
供する。また、低下した免疫原性、低下したVLS効果及びこれらの組み合わせを有する
修飾毒素を選択する方法も、本明細書に記載の発明の範囲に意図される。このような特徴
のために修飾毒素を試験する方法は、当該技術において公知であり且つ例えば本明細書に
提供される実施例に記載される。一つの実施形態において、未修飾毒素と比べて低下した
免疫原性及び低下したVLS効果を示す修飾毒素を調製する方法は、毒素のアミノ酸配列
内の少なくとも1個のT細胞エピトープを同定し、少なくとも1個の同定されたT細胞エ
ピトープ内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修飾し、毒素のアミノ酸配列内の少なくと
も1個のVLSモチーフを同定し及び少なくとも1個の同定されたVLSモチーフ内の少
なくとも1個のアミノ酸を修飾することからなる。
【0139】
別の実施形態において、未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及び低下したVLS効果
を示す修飾毒素は、毒素のアミノ酸配列内の少なくとも1個のT細胞エピトープを同定し
、少なくとも1個の同定されたT細胞エピトープ内の少なくとも1個のアミノ酸残基を修
飾し、毒素のアミノ酸配列内の少なくとも1個のVLSモチーフを同定し及び少なくとも
1個の同定されたVLSモチーフ内の少なくとも1個のアミノ酸を修飾する方法によって
作り出される。
【0140】
さらの別の実施形態において、未修飾毒素と比べて低下した免疫原性及び低下したVL
S効果を示す修飾毒素を選択する方法は、毒素のアミノ酸配列内の少なくとも1個のT細
胞エピトープを同定し、少なくとも1個の同定されたT細胞エピトープ内の少なくとも1
個のアミノ酸残基を修飾し、毒素のアミノ酸配列内の少なくとも1個のVLSモチーフを
同定し、少なくとも1個の同定されたVLSモチーフ内の少なくとも1個のアミノ酸を修
飾し及び未修飾毒素と比べて低下した免疫原性を示す修飾毒素を選択することからなる。
【0141】
VI.毒素
本明細書で使用する「毒素」という用語は、任意の抗細胞薬を指し、以下に限定されな
いが、細胞毒素及び/又は抗細胞薬の任意の組み合わせを包含する。ある態様において、
毒素は、例えば、植物毒素、真菌毒素、細菌毒素、リボソーム不活性化タンパク質(RI
P)又はこれらの組み合わせである。毒素としては、以下に限定されないが、アブリンA
鎖、ジフテリア毒素(DT)A鎖、シュードモナス菌外毒素、RTA、志賀毒素A鎖、志
賀様毒素、ゲロニン、モモルジン、ポークウィード抗ウイルスタンパク質、サポリン、ト
リコサンチン、オオムギ毒素及び当該技術において公知の種々のその他の毒素が挙げられ
る。本明細書で使用される毒素は、具体的にはブドウ球菌エンテロトキシン毒素B(SE
B)、ヒルジン及びボウガニンタンパク質を除外する。
【0142】
ジフテリア毒素は、モノ−ADP−リボシル化毒素ファミリーのメンバーであり、モノ
−ADP−リボシル化毒素ファミリーは、さらにコレラ毒素、シュードモナス菌外毒素A
、百日咳毒素及びクロストリジウムC3様毒素のような毒素を包含する。このファミリー
のメンバーは、多数の類似のタンパク質ドメイン及びモチーフ、特に毒素の触媒部位を含
む。例えば、このファミリーの多くのメンバーの触媒部位は、これらの毒素の触媒機能に
おいて重要なグルタミン酸残基を含むことが知られている。このファミリーのメンバーは
、典型的な毒素としてDTを使用する本明細書に記載の発明の範囲内にあると考えられる
。DTは、3個のドメイン、すなわち触媒ドメイン、貫膜ドメイン及び受容体結合ドメイ
ンからなる(Choe et al.,Nature,357:216−222(199
2))。未変性DTの核酸及びアミノ酸配列は、図2にGreenfield et a
l.,PNAS(1983)80:6853−6857によって記載されている。未変性
DTは、ヘパリン結合上皮増殖因子様受容体を発現する細胞を標的とする(Naglis
h et al.,Cell,69:1051−1061(1992))。第一世代の標
的毒素は、最初は、新規な標的リガンドを、DT又は細胞結合が欠損したDTの突然変異
体(例えば、CRM45)などの毒素に化学的に架橋結合させることによって開発された
(Cawley,Cell,22:563−570(1980);Bacha et a
l.,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.,181(1):131−138
(1986);Bacha et al.,Endocrinology,113(3)
:1072−1076(1983);Bacha et al.,J.Biol.Che
m.,258(3):1565−1570(1983))。特定のクラスの受容体担持細
胞の表面の受容体にDT担毒体を指向させる天然細胞結合ドメイン又は架橋リガンドは、
無傷の触媒ドメイン及びトランスロケーションドメインを有していなければならない(C
awley et al.,Cell,22:563−570(1980);vande
rSpek et al.,J.Biol.Chem.,5:268(16):1207
7−12082(1993);vanderSpek et al.,J.Biol.C
hem.,7(8):985−989(1994);vanderSpek et al
.,J.Biol.Chem.,7(8):985−989(1994);Roscon
i,J.Biol.Chem.,10;277(19):16517−161278(2
002))。これらのドメインは、受容体内在化後の標的細胞の送達及び中毒にとって重
要である(Greenfield et al.,Science,238(4826)
536−539(1987))。毒素、毒素複合体又は融合毒素が細胞表面受容体にいっ
たん結合すると、細胞は、エンドサイト小胞によって毒素結合受容体を内在する。小胞は
処理されるにつれて、酸性化されてしまい、DT担毒体のトランスロケーションドメイン
は、毒素の9つの貫膜セグメントをエンドサイト小胞の膜内に挿入する構造再構成を行う
。この事象は、毒素の触媒ドメインが通り抜ける生産性細孔の形成を引き起こす。いった
ん転位置すると、ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性を有する触媒ドメインが、標
的細胞の細胞質ゾル内に放出され、そこで毒翻訳が自由にでき、従って細胞死を行う(v
anderSpek et al.,Methods in Molecular Bi
ology,Bacterial Toxins:methods and Proto
cols,145:89−99,Humana press,Totowa,N.J.,
(2000)に概説されている)。
【0143】
10個未満のDTの分子は、もしこれらが細胞質ゾルに侵入するならば細胞を殺すであ
ろう(しかし、侵入プロセスは非効率であることから、その何倍もの数が細胞表面に結合
しなければならない)。この驚くべき能力は、最初は、このような毒があまりにも強くて
制御できないという懸念を招く。しかし、DTなどの毒素は、(標的細胞に指向させた場
合を除いて)その細胞結合ドメイン又はサブユニットを除去又は修飾することによって簡
単に無毒化することができる。次いで、毒素の残りの部分(細胞結合ドメインを欠いてい
る)が、毒素部分を標的細胞に標的として向けるリガンド(例えば、細胞結合ドメインを
含有するポリペプチド又はその部分)に連結される。望まれていない交差反応性を欠いて
いる細胞結合ドメインを含有するポリペプチド又はその部分を選択することによって、融
合タンパク質は、より安全であり、大部分の従来の抗癌薬よりも小さい非特異的細胞毒性
効果を有する。DTなどの毒素のその他の主な魅力は、これらの毒素がタンパク質合成の
阻害剤であることから、これらの毒素が分裂している細胞と同じくらい有効に休止細胞を
殺すことである。従って、治療時に周期中ではない腫瘍又は感染細胞は、融合タンパク質
の細胞毒性から免れない。
【0144】
DTなどの毒素は、多くの場合、2つのジスルフィド結合鎖、すなわちA鎖及びB鎖を
含有する。B鎖は、細胞結合領域とトランスロケーション領域の両方を有し、酸性細胞区
画の膜を通ってA鎖の細胞質ゾル内への挿入を促進する。A鎖は、この場合に、トランス
ロケーション後に細胞を殺す。その生体内使用のために、リガンドと毒素は、血流及び組
織を通り抜けながら安定な状態を保つような方法で連結されるが、毒素部分が細胞質ゾル
中に放出できるように標的細胞内では不安定である。
【0145】
しかし、それにもかかわらず適切な生物学的反応を提供することができる最も小さい分
子を用いることが、薬理学的観点から望ましいものであり得る。従って、より小さいA鎖
ペプチド又は適切な抗細胞応答を提供するであろうその他の毒素を用いることが望ましい
ものであり得る。
【0146】
本明細書に記載のジフテリア毒素は、配列番号:2又は200に示すアミノ酸配列を含
有する。また、ジフテリアのバリアントは、その生物活性をさらに保持しながらその核酸
配列中に核酸残基の挿入、欠失及び/又は置換を含むことが知られている。ジフテリア毒
素のバリアントは、ジフテリア毒素の間で核酸の変異を実証することが特徴付けられおり
(Holmes,R.K.,J.Infect.Dis.,181(Supp.1):S
156−S167(2000))、従ってジフテリア毒素は、種々の核酸及び/又はアミ
ノ酸配列を含有することができる。また、核酸残基の挿入、欠失及び/又は置換も、アミ
ノ酸配列に影響を及ぼすことができる。しかし、必ずしも全ての核酸残基の変化が、遺伝
暗号の重複性のせいでタンパク質のアミノ酸残基レベルで変化をもたらすとは限らないで
あろう。ジフテリア毒素の核酸及び/又はアミノ酸の変化(すなわち、挿入、欠失及び/
又は置換)もまた、ジフテリア毒素の定義の範囲内に含まれ且つ本明細書において意図さ
れる。本明細書で使用されるように、ジフテリア毒素は、配列番号:2又は200に示す
アミノ酸配列を含有し且つさらに配列番号:2又は200に対して約90%、91%、9
2%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%相同性のアミノ酸配
列を含有するジフテリア毒素を包含する。また、DTのC末端切断も行うことができ、例
えばDT389又はDT387の約1個、約2個、約3個、約4個、約5個、約6個、約
7個、約8個、約9個、約10個、約11個、約12個、約13個、約14個、約15個
、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個又は約50個のアミノ酸残基の欠
失が挙げられる。例えば、本明細書で使用されるように、ジフテリア毒素は、配列番号:
2又は149のアミノ酸残基1−382に示すアミノ酸配列を含有し且つさらに配列番号
:2又は149のアミノ酸残基1−382に対して約90%、91%、92%、93%、
94%、95%、96%、97%、98%又は99%相同性のアミノ酸配列を含有するジ
フテリア毒素を包含する。ジフテリア毒素のバリアントは、修飾することができ、本明細
書に記載の方法のいずれかを使用して機能について試験することができることが理解され
るであろう。
【0147】
一つの態様おいて、本明細書で使用する毒素とは、毒素(例えば、ジフテリア毒素)と
少なくとも1個の細胞結合ドメインを含有する非毒素ポリペプチドとの間の融合タンパク
質を意図する。一つの限定されない例において、ジフテリア毒素又はその断片は、インタ
ーロイキン2(IL−2)の細胞結合ドメインに融合され、従って融合毒素を作る。本明
細書にさらに詳しく説明するように、融合タンパク質毒素は、リンカーポリペプチド及び
複合体を含有することもできる。このような毒素も、本明細書に開示される発明の方法に
よって修飾される毒素として意図される。
【0148】
一つの実施形態において、毒素は、修飾毒素を含有する融合タンパク質であって、毒素
結合ドメインが非毒素ポリペプチドの結合ドメインで置換されている融合タンパク質であ
る。別の実施形態において、毒素は、修飾ジフテリア毒素と非毒素ポリペプチドとからな
る融合タンパク質である。別の実施形態において、毒素は、ジフテリア毒素とIL−2と
からなる融合タンパク質である。
【0149】
ジフテリア毒素は代表的な毒素として論じられることが多いが、本明細書に記載の本発
明の方法は、前述の毒素のいずれかに適用できることが認められるであろう。
【0150】
VII.融合タンパク質
本発明はまた、修飾毒素融合タンパク質を提供する。修飾毒素ポリペプチドは、例えば
、非毒素ポリペプチドに融合させることができる。一つの実施形態において、非毒素ポリ
ペプチドは、細胞特異的結合リガンドである。本発明において使用される特異的結合リガ
ンドは、リガンド全体を含有するか、又はリガンドの結合ドメイン全体を含むリガンドの
部分を含有するか、又は結合ドメインの有効部分を含有することができる。リガンド分子
の結合ドメインの全部又は大部分を含有することが最も望ましい。一つの限定されない例
において、DT融合タンパク質は、DT関連ポリペプチド(例えば、本明細書に記載の修
飾DT)及び相互にインフレームで融合された非DTポリペプチドを含有する。DT関連
ポリペプチドは、低下した免疫原性又は修飾T細胞エピトープ、ヒト血管内皮細胞に対す
る低下した結合、又はこれらの組み合わせを有するDTバリアントの全体又は部分に対応
する。一つの実施形態において、DT融合タンパク質は、配列番号:4−147の一つに
示される修飾DT配列の少なくとも1つの部分を含有する。別の実施形態において、DT
融合タンパク質は、少なくとも1個のT細胞エピトープ修飾を含有する。さらに別の実施
形態において、DT融合タンパク質は、少なくとも1個のT細胞エピトープの修飾と、配
列番号:4−147の1つ又はそれ以上に示す少なくとも1個の修飾とを含有する。さら
に別の実施形態、DT融合タンパク質は、少なくとも1個のT細胞エピトープの修飾と、
配列番号:4−147の1つ又はそれ以上に示す少なくとも1個の修飾と、少なくとも1
個のB細胞エピトープ修飾を含有する。
【0151】
本明細書に開示される化合物の一つの実施形態において、修飾毒素は、非ジフテリア毒
素ポリペプチドが細胞結合リガンドである融合毒素である。別の実施形態において、細胞
結合リガンドは、抗体又はその抗原結合断片、サイトカイン、ポリペプチド、ホルモン、
増殖因子又はインスリンである。さらに別の実施形態において、サイトカインはIL−2
である。
【0152】
別の実施形態において、修飾毒素は、細胞結合ドメインが抗体又はその抗原結合断片で
ある融合毒素である。抗体は、例えばモノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、ヒト化
抗体、遺伝子組換え抗体又は移植抗体であることができる。抗原結合断片は、例えばFa
b、Fab、F(ab’)、scFv、scFv2(A鎖の2個のscFv分子の頭
部−尾部のタンデム結合)、一本鎖結合ポリペプチド、VH又はVLであることができる
。抗原結合断片を調製する方法は、当該技術において知られており、本明細書に組み込ま
れる。有用な抗体としては、標的細胞膜又は腫瘍結合抗原の表面で発現される受容体又は
その他の部分に特異的に結合できる抗体が挙げられる。
【0153】
「特異的に結合する」とは、結合剤が、標的細胞表面の抗原に、非関連抗原を結合する
よりも大きい親和性で結合することを意味する。このような親和性は、非関連抗原に対す
る結合剤の親和性よりも少なくとも約10倍大きい、少なくとも約100倍大きい、又は
少なくとも約1000倍大きいことが好ましい。「免疫反応性の」及び「特異的に結合す
る」という用語は、本明細書において同じ意味で使用される。ある実施形態において、抗
腫瘍抗体又はその抗原結合断片(例えば、scFv、scFv2など)は、腫瘍細胞の表
面決定因子を認識するものであり且つ受容体介在エンドサイトーシスによってこれらの細
胞の中に取り込まれる。別の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、B細胞表
面分子に結合し、例えばB細胞表面分子は、CD19又はCD22である。あるいは、抗
体又はその抗原結合断片は、卵巣受容体MISIIR(ミューラー阻害物質II型受容体
)に結合する。
【0154】
細胞特異的結合リガンドとしては、以下に限定されないが、ポリペプチドホルモンを挙
げることもでき、例えば、α−MSHの結合ドメインを使用して作り出されるポリペプチ
ドホルモンは、メラニン細胞に選択的に結合することができ、黒色腫の治療に有用な改良
されたt−MSHキメラ毒素の組み立てを可能にする(Murphy,J.R.et a
l.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,83(21):8258−8
262(1986))。使用できるその他の特異的結合リガンドとしては、インスリン、
ソマトスタチン、インターロイキンI及びIII並びに顆粒球コロニー刺激因子が挙げら
れる。細胞特異的結合ドメインを有する他の有用なポリペプチドリガンドは、卵胞刺激ホ
ルモン(卵巣細胞に特異的)、黄体形成ホルモン(卵巣細胞に特異的)、甲状腺刺激ホル
モン(甲状腺細胞に特異的)、バソプレシン(子宮細胞、並びに膀胱細胞及び腸細胞に特
異的)、プロラクチン(乳房細胞に特異的)及び成長ホルモン(ある種の骨組織細胞に特
異的)である。使用できる特異的結合リガンドとしては、サイトカイン、例えば、以下に
限定されないが、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL
−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−
14、IL−15、β−インターフェロン、α−インターフェロン(INF−α)、IN
F−γ、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、METH−1、ME
TH−2、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、腫瘍壊死因子(TNF)、SVEG
F、TGF−β、Flt3及びB細胞増殖因子が挙げられる。IL−2は、活性化T細胞
を伴うアレルギー反応及び自己免疫疾患、例えば全身性エリトマトーデス(SLE)にお
けるその役割から、特に重要である。B細胞増殖因子を使用して作り出される毒素融合タ
ンパク質は、免疫抑制剤であって増殖するB細胞を殺し、B細胞増殖因子受容体を有し且
つ過敏性反応及び臓器拒絶反応に関与する免疫抑制剤として使用できる。その他のサイト
カインとしては、サブスタンスP(Benoliel et al.,Pain,79(
2−3):243−53(1999))、VEGF(Hotz et al.,J.Ga
strointest Surg.,6(2):159−66(2002))、IL−3
(Jo et al.,Protein Exp Purif.,33(1):123−
33(2004))及びGM−CSF(Frankel et al.,Clin.Ca
ncer Res.,8(5):1004−13(2002))が挙げられる。これらの
リガンドを使用する修飾融合毒素は、癌又は特異結合が存在する細胞種のその他の疾患を
治療するのに有用である。
【0155】
IL−2において、残基19−21(配列番号:3)のLDL配列(「VLS」モチー
フ)が、α−へリックス中に配置され、部分的に露出される。LDLモチーフのAsp−
20をLysに突然変異させると、IL−2受容体のβ鎖に対するIL−2の結合及びそ
の後のT細胞の増殖を排除する(Collins et al.,1988)。IL−2
が生体外でアルブミンに対する血管内皮の透過性を直接に増大させること及びこの効果は
抗IL−2受容体モノクロナール抗体によって抑制できることが報告されている(Dow
nie et al.,1992)。IL−2中のLDL配列は、HUVECを損傷する
。IL−2のLDL内のAsp−20は、受容体結合及び機能活性に関与する(Coll
ins et al.,1988)。従って、ある実施形態において、VLSを排除又は
抑制するためにIL−2の(x)D/E(y)配列及び/又はフランキング配列の突然変
異が、Asp−20に関して保存的であるべきであるか又はIL−2の生物活性を低下さ
せ得ることが意図される。
【0156】
多数の細胞特異的リガンドについて、結合ドメインが配置されているそれぞれのこのよ
うなリガンド内の領域が、現在知られている。また、固相ポリペプチド合成の進歩は、こ
の技術の当業者がリガンドの種々の断片を合成し、これらの断片を、ELISAアッセイ
などの当該技術において公知の慣用の方法を使用して標識すべき細胞のクラスに結合する
能力について試験することによって、実際に任意のこのようなリガンドの結合ドメインを
決定ことを可能にする。従って、本発明のキメラ遺伝子融合毒素は、完全なリガンドを必
ずしも含む必要がないが、むしろ所望の細胞結合能を示すリガンドの断片だけを含むこと
ができる。同様に、リガンドのアナローグ又はその小さい配列変化を有する細胞結合領域
は、合成でき、その細胞に結合する能力について試験することができ、本発明の混成分子
に組み込むことができる。細胞結合ポリペプチドのアミノ酸配列は、1個又はそれ以上の
VLSモチーフ、T細胞エピトープ、B細胞エピトープ又はこれらの組み合わせについて
分析することができ、本明細書に記載の概念に従って修飾することができる。
【0157】
一つの態様において、本発明の毒素融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術で作
り出される。例えば、種々のポリペプチド配列をコードするDNA断片は、慣用の方法に
従って、例えば、連結のための平滑末端化又はスタッガー末端化された末端、適切な末端
を提供する制限酵素消化、必要に応じて付着末端の充填、望ましくない連結を回避するア
ルカリホスファターゼ処理、及び酵素連結を用いることによって、インフレームで一緒に
連結される。別の実施形態において、融合遺伝子は、慣用の技法、例えば自動DNA合成
装置で合成できる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、アンカープライマーを使用し
て行うことができ、アンカープライマーは、その後にアニールされ、再増幅されてキメラ
遺伝子配列を生じることができる2個の連続する遺伝子断片の間で相補的張出し部分を生
じる。
【0158】
融合タンパク質の適切な立体構造折畳みに必要とされる場合には、ペプチドリンカー配
列は、それぞれのポリペプチドがその二次構造及び三次構造中に折畳むことを確実にする
のに十分な距離で、非毒素ポリペプチド成分から毒素関連ポリペプチドを離すのに用いる
ことができる。このようなペプチドリンカー配列は、当該技術で周知の標準的技法を使用
して融合タンパク質に組み込むことができ且つ以下の因子、(1)その柔軟な伸長した立
体構造を採用できる能力、(2)毒素関連ポリペプチド及び非毒素ポリペプチドの表面で
機能性エピトープと相互作用できる二次構造を採用することができないこと、及び(3)
ポリペプチド機能性エピトープと反応し得る疎水性又は帯電残基の欠如、に基づいて選択
することができる。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、Asn及びSer残基を
含有する。また、その他の中性に近いアミノ酸、例えばThr及びAlaも、リンカー配
列に使用できる。リンカーとして有効に用いることができるアミノ酸配列としては、以下
に限定されないが、Maratea et al.,Gene,40:39−46,19
85;Murphy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,
83:8258−8262,1986;米国特許第4,935,233号及び同第4,7
51,180号公報に開示されているアミノ酸配列が挙げられる。リンカー配列は、一般
に長さで約1個〜約50個のアミノ酸であることができる。毒素関連ポリペプチド及び非
毒素ポリペプチドが、機能性ドメインを分離し且つ立体障害を抑制するのに使用できる非
必須N末端アミノ酸領域を有する場合には、リンカー配列は必要とし得ない。
【0159】
化学的架橋又は複合は、反応生成物に相当する種々の分子種をもたらし、典型的にはこ
れらの生成物の小さな画分のみが触媒的に及び生物学的に活性である。生物学的に活性で
あるために、反応生成物は、担毒体の触媒ドメイン及びトランスロケーションドメインの
固有の構造及び活性を阻害しない方法で複合されなければならない。反応生成物が、多く
の場合、例えば大きさ、電荷密度及び相対疎水性を含め類似の生物物理学的特徴を有する
ことから、不活性種から活性種又は高活性種の分離は、必ずしも可能であるとは限らない
。多量の純粋な臨床グレードの活性生成物の化学架橋毒素からの単離は、典型的には、臨
床試験用の医薬グレードの生成物の製造及びその後の臨床市場への導入のためには経済的
に可能でないことは注目に値する。この問題を回避するために、未変性DT受容体結合ド
メインが代用受容体標的ドメインとしてメラニン細胞刺激ホルモンで遺伝的に置換されて
いる遺伝子DT型タンパク質融合毒素が作り出される(Murphy et al.,P
NAS,83:8258−8262(1986))。このアプローチは、IL−2受容体
の高親和性型を発現したこれらの細胞に対してのみ特異的に細胞毒性であったDAB48
6IL−2を作り出すために、代用標的リガンドとしてヒトIL−2と共に使用された(
Williams et al.,Protein Eng.,1:493−498(1
987))。DAB486IL−2に関するその後の研究により、分子のDT部分からの
97個のアミノ酸の切断は、IL−2受容体標的毒素よりも安定で、より細胞毒性のバー
ジョンDAB389IL−2をもたらすことが示された(Williams et al
.,J.Biol.Chem.,265:11885−889(1990))。元の構造
体(486体)は、未変性DT細胞結合ドメインの部分を未だ有していた。DAB389
バージョンは、Tドメインと関連受容体結合ドメインの間のランダムコイルにおいて終わ
る融合タンパク質のDT部分を有するDTのCドメイン及びTドメインを含有する。それ
以来、多数のその他の標的リガンドが、このDT担毒体、DAB389に遺伝的に融合さ
れている(VanderSpek et al.,Method in Molecul
ar Biology,Bacterial Toxins:Methods and
Protocols,145:89−99,Humana Press,Totowa,
N.J.(2000))。同様のアプローチが、現在、その他の細菌性タンパク質と共に
用いられており、遺伝子融合毒素は、多くの場合、生成及び精製することがより容易であ
る。
【0160】
VIII.核酸、ベクター及び宿主細胞
本発明の別の態様は、修飾されたDTバリアント又はその融合タンパク質をコードする
ポリヌクレオチド(核酸、DNA)を含有するベクターに関する。
【0161】
種々の遺伝子についてヌクレオチド及びポリペプチド配列が、これまでに開示されてお
り、当業者に知られているコンピューターデータベースで見出すことができる。一つのこ
のようなデータベースは、米国国立生物工学情報センター(the National
Center for Biotechnology Information)のGe
nbankデータベース及びGenPeptデータベースである。これらの公知の遺伝子
のコード領域は、本明細書に開示される技法を使用して又は当業者に知られている任意の
技法で増幅及び/又は発現させることができる。また、ポリペプチド配列は、当業者に知
られている方法、例えば自動ポリペプチド合成装置、例えばApplied Biosy
stems(Foster City,Calif.)から入手できる自動ポリペプチド
合成装置を使用するポリペプチド合成で合成できる。
【0162】
本明細書で使用する「発現ベクター又は構造体」とは、核酸コード配列の部分又は全体
を転写することができる遺伝子産物をコードする核酸を含有する任意の種類の遺伝子構造
体を意味する。転写物は、タンパク質に翻訳することができるが、必ずしも翻訳される必
要はない。従って、ある実施形態において、発現は、遺伝子の転写及びRNAの遺伝子産
物への翻訳の両方を含む。他の実施形態において、発現は、例えばアンチセンス構造体を
作り出すために核酸の転写を含むのみである。
【0163】
特に有用なベクターは、DNAセグメントのコード部分が全長タンパク質、ポリペプチ
ド又はより小さいペプチドをコードするか否かに関わらず、プロモーターの転写調節下に
配置されるベクターであると考えられる。「プロモーター」とは、細胞の合成装置で、又
は遺伝子の特定の転写を開始するのに必要とされる導入された合成装置で認識されるDN
A配列を指す。「操作的に配置された」、「制御下」又は「転写調節下」という語句は、
RNAポリメラーゼ開始及び遺伝子の発現を制御するために遺伝子産物をコードする核酸
に関してプロモーターが正しい配置及び配向にあることを意味する。
【0164】
プロモーターは、本明細書に開示される組成物に関連して、コードセグメント又はエキ
ソンの上流に配置された5’非コード配列を、例えば組換えクローニング及び/又はPC
R法を使用して単離することによって得ることができることから、遺伝子に必然的に関連
するプロモーターの形であることができる。
【0165】
別の実施形態において、組換え又は異種プロモーターの制御下にコード化DNAセグメ
ントを配置することによってある利点が得られることが意図される。本明細書で使用する
組換え又は異種プロモーターとは、標準的にその自然環境にある遺伝子に関連しないプロ
モーターを指すことを意図する。このようなプロモーターとしては、他の遺伝子に標準的
に関連するプロモーター、及び/又は任意のその他の細菌、ウイルス、真核細胞、又は哺
乳動物細胞から単離されたプロモーター、及び/又は「天然に存在」しない人の手で調製
されたプロモーター、すなわち異なるプロモーター由来の異なる要素を含有するか、ある
いは発現を高めるか、低下させるか又は変化させる突然変異を含有するプロモーターを挙
げることができる。
【0166】
細胞種、組織、又はさらには動物においてDNAセグメントの発現を効率的に指示する
プロモーターが、発現のために選択される。タンパク質の発現のためのプロモーター及び
細胞種の組み合わせの使用は、一般に、分子生物学の当業者には公知である。例えば、S
ambrook et al.,(1989)参照(参照することによって本明細書に組
み込まれる)。用いられるプロモーターは、構成性又は誘導性であることができ及び導入
されたDNAセグメントの高水準発現を指示するのに適切な条件下で使用でき、例えば組
換えタンパク質又はペプチドの大規模産生に都合のよい条件下で使用できる。
【0167】
プロモーターの中の少なくとも1個のモジュールは、一般に、RNA合成の開始部位を
配置させる機能を果たす。この最もよく知られている例は、TATAボックスであるが、
TATAボックスを欠く幾つかのプロモーター、例えば哺乳動物末端デオキシヌクレオチ
ジルトランスフェラーゼ遺伝子用のプロモーター及びSV40後期遺伝子用のプロモータ
ーにおいては、開始部位それ自体を覆う個別の要素が、開始の場所を固定するのに役立つ
【0168】
さらなるプロモーター要素は、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらのプロ
モーター要素は、開始部位の30−110塩基対(bp)上流の領域に配置されるが、多
数のプロモーターが、さらに開始部位の下流に機能性要素を含有することが明らかにされ
ている。プロモーター要素同士の間の間隔は、要素が互いに対して反転又は移動される場
合にはプロモーター機能が保たれるように順応性がある場合が多い。tkプロモーターに
おいて、プロモーター要素同士の間の間隔は、活性が低下し始める前には50bp離れる
まで増大させることができる。プロモーターに応じて、個々の要素は、転写を活性化させ
るために協調して又は独立して機能を果たすと思われる。
【0169】
核酸の発現を調節するために用いられる特定のプロモーターは、標的細胞の中で核酸を
発現することができる限りは重要であるとは考えられない。従って、ヒト細胞が標的とさ
れる場合には、ヒト細胞の中で発現されることができるプロモーターに隣接した核酸コー
ド領域を配置し且つその制御下に核酸コード領域を配置することが好ましい。一般的に言
えば、このようなプロモーターは、ヒトプロモーター又はウイルス性プロモーターを含有
してもよい。
【0170】
発現において、あるものは、典型的には、転写物の適切なポリアデニル化を行うために
ポリアデニル化シグナルを含むであろう。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の首
尾よい実施には重要であるとは考えられず、任意のこのような配列を使用し得る。ポリア
デニル化シグナルとしては、以下に限定されないが、種々の標的細胞において十分に機能
するのに都合がよく且つ機能することが知られているSV40ポリアデニル化シグナル及
びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが挙げられる。また、発現カセットの要素と
して意図されるのは、ターミネーター配列である。これらの要素は、メッセージレベルを
高め及びカセットから他の配列への読み取りを最小限にするのに役立ち得る。
【0171】
特定の開始シグナルもまた、コード配列の効率的な翻訳に必要とし得る。これらのシグ
ナルとしては、ATG開始コドン及び隣接配列が挙げられる。外因性翻訳制御シグナル、
例えばATG開始コドンが提供されることを必要とし得る。当業者は、容易に、これを決
定し、必要なシグナルを提供することができるであろう。開始コドンは、全挿入片の翻訳
を確実にするために所望のコード配列の読み取り枠を有する「インフレーム」になければ
ならないことは周知である。外因性の翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然又は合成
のものであることができる。発現の効率は、適切な転写エンハンサー要素を含有させるこ
とによって高め得る。
【0172】
ポリペプチドを他の選択されたタンパク質と同時に発現させることができ、この場合に
前記タンパク質を同一細胞中で同時に発現させることができるか又は遺伝子を別の選択さ
れたタンパク質を既に有している細胞に提供できることが意図される。同時発現は、2個
の異なる組換えベクター(それぞれは、それぞれのDNAのいずれかのコピーを有する)
を細胞に同時に移入することによって達成できる。あるいは、単一の組換えベクターは、
前記タンパク質の両方についてコード領域を含有させるために組み立てることができ、こ
れは、次いで単一のベクターを移入した細胞中で発現させることができる。いずれにして
も、本明細書において「同時発現」という用語は、同じ組換え細胞中の遺伝子と他の選択
されたタンパク質の両方の発現を指す。
【0173】
本明細書で使用する「操作された」及び「組換え」細胞又は宿主細胞という用語は、外
因性DNAセグメント又は遺伝子、例えばcDNA又はタンパク質をコードする遺伝子が
導入されている細胞を指すことを意図する。従って、操作された細胞は、組換えにより導
入された外因性DNAセグメント又は遺伝子を含有していいない自然発生の細胞と区別す
できる。従って、操作された細胞は、人の手によって導入された遺伝子又は遺伝子を有す
る細胞である。組換え細胞としては、導入されたcDNA又はゲノム遺伝子を有する細胞
が挙げられ、また特定の導入された遺伝子に必然的に関連しないプロモーターに隣接して
配置された遺伝子も挙げられる。
【0174】
修飾されているか又は野生型であるかに関わらず、本発明に従って組換えポリペプチド
を発現させるためには、野生型又は修飾されたタンパク質をコードする核酸を含有する発
現ベクターが1個又はそれ以上のプロモーターの制御下で調製されるであろう。コード配
列をプロモーター「の制御下」に置くために、転写読み取り枠の転写開始部位の5’末端
を、一般に選択されたプロモーターの「下流の」(すなわち、3’)の約1個〜約50個
のヌクレオチドの間に配置する。「上流」プロモーターは、DNAの転写を刺激し、コー
ドされた組換えタンパクの発現を促進する。これが、この文脈において「組換え発現」の
意味である。
【0175】
多くの標準的な技法が、種々の宿主発現系でタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの
発現を達成するために、適切な核酸及び転写/翻訳制御配列を含有する発現ベクターを組
み立てるのに利用できる。発現に利用できる細胞の種類としては、以下に限定されないが
、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクター
を用いて形質転換させた大腸菌及び枯草菌などの細菌が挙げられる。
【0176】
原核生物宿主のある種の例は、大腸菌株RR1、大腸菌LE392、大腸菌B、大腸菌
X1776(ATCC No.31537)及び大腸菌W3110(F−、λ−、原栄養
性、ATCC No.273325)、枯草菌などの桿菌、並びにその他の腸内細菌、例
えばサルモネラ・チフィムリウム、セラチア・マルセセンス及び種々のシュードモナス菌
の種である。
【0177】
一般的に、宿主細胞に適合する種から誘導されるレプリコンと制御配列とを含有するプ
ラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。ベクターは、普通、複製部位
と、形質転換細胞において表現型の選択を提供できる標識配列とを有する。例えば、大腸
菌は、多くの場合、pBR322(大腸菌種から誘導されるプラスミド)の誘導体を使用
して形質転換される。pBR322は、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性の遺伝子
を含有し、従って形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBRプラスミ
ド、又は他の微生物プラスミドもしくはファージは、それ自体のタンパク質の発現のため
に微生物が使用できるプロモーターも含有しなければならないか又は含有するために修飾
されなければならない。
【0178】
さらに、宿主微生物に適合するレプリコンと制御配列とを含有するファージベクターが
、これらの宿主に関連して形質転換ベクターとして使用できる。例えば、ファージλGE
M(商標)−11が、例えば大腸菌LE392などの宿主細胞を形質転換するのに使用で
きる組換えファージベクターを調製するのに利用し得る。
【0179】
別の有用なベクターとしては、後に精製及び分離、又は分割するためのグルタチオンS
−トランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質を生成させるのに使用するために
、pINベクター(Inouye et al.,1985)、及びpGEXベクターが
挙げられる。他の適した融合タンパク質は、β−ガラクトシダーゼ、ユビキチンなどを有
するものである。
【0180】
組換えDNA組み立てに最も一般的に使用されるプロモーターとしては、β−ラクタマ
ーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース及びトリプトファン(trp)プロモーター系が挙
げられる。これらが最も一般的に使用されるが、他の微生物プロモーターが発見され、利
用されており、これらのヌクレオチド配列に関する詳細が公表されており、当業者がこれ
らをプラスミドベクターと機能的に連結することを可能にさせる。
【0181】
大腸菌などの細菌細胞での組換えタンパク質産生に関する以下の詳細を、一般的な組換
えタンパク質産生に関する典型的な情報として提供し、特定の組換え発現系に対するその
適応は、当業者には公知であろう。
【0182】
発現ベクターを含有する細菌細胞、例えば大腸菌は、多数の適当な培地のいずれかで、
例えばLBで増殖させる。組換えタンパク質の発現は、例えば、IPTGを培地に加える
ことによって又はインキュベーションをより高い温度に切り替えることによって誘導し得
る。細菌を一般的には2〜24時間のさらにある時間培養した後に、細胞は、遠心分離に
より収集され、残存培地を除去するために洗浄される。
【0183】
次いで、細菌細胞は、例えば、細胞ホモジナイザーで破壊することによって溶解され、
可溶性細胞成分から濃厚封入体及び細胞膜を分離するために遠心分離される。この遠心分
離は、濃厚封入体を緩衝液中への糖類、例えばスクロースの取り込み及び選択速度での遠
心分離によって選択的に濃縮する条件下で行うことができる。
【0184】
組換えタンパク質が封入体中で発現される場合には、多くの場合のように、これらは数
種類の溶液のいずれかで洗浄して混入宿主タンパク質の幾つかを除去し、次いで還元剤、
例えばβ−メルカプトエタノール又はDTT(ジチオトレイトール)の存在下で、高濃度
の尿素(例えば、8M)又はグアニジン塩酸塩などのカオトロピック剤を含有する溶液に
可溶化させる。
【0185】
本明細書に記載の方法で製造されるポリペプチドは、過剰発現させることができる、す
なわち、細胞でのその自然な発現と比べて高められたレベルで発現させることができるこ
とが意図される。このような過剰発現は、放射標識及び/又はタンパク質精製を含め種々
の方法で評価することができる。しかし、単純且つ直接的な方法が好ましく、例えば、S
DS/PAGE及びタンパク質染色又はウェスタンブロッティング、次いで定量分析、例
えば得られるゲル又はブロットの濃度スキャニングを含む方法が好ましい。天然細胞中の
量と比べて組換えタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの量の特異的な増大は、宿主細
胞によって産生される他のタンパク質に関して特定のポリペプチドの相対存在量であり、
例えばゲル上で目に見えるように、過剰発現を示す。
【0186】
本明細書において提供される発現ベクターは、修飾DT又はその融合タンパク質をコー
ドするポリヌクレオチドを宿主細胞中のポリヌクレオチドの発現に適した形態で含有する
。発現ベクターは、一般的に発現に使用すべき宿主細胞に基づいて選択され、発現される
べきポリヌクレオチド配列に操作的に連結される1個又はそれ以上の調節配列を有する。
形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどのような因子
に依存することができることが当業者には認められるであろう。本明細書に記載の発現ベ
クターは、本明細書に記載のようなポリヌクレオチド(例えば、修飾DT又はDT融合タ
ンパク質など)によってコードされるタンパク質、例えば融合タンパク質を産生させるた
めに宿主細胞に導入することができる。
【0187】
発現ベクターは、原核生物又は真核細胞中での修飾DT又はDT融合タンパク質の発現
のために設計することができる。真核細胞の内部に単一のDT遺伝子が存在すると、細胞
を殺すであろう。具体的には、毒素は、翻訳及びリボシル化に必要とされるEF−tuに
結合する。従って、DTは、もはやDTによって認識されない修飾EF−tuを有する真
核細胞中で発現させることができるだけである(例えば、Liu et al.,Pro
tein Expr.Purif.,30:262−274(2003);Phan e
t al.,J.Biol.Chem.,268(12):8665−8(1993);
Chen et al.,Mol.Cell Biol.,5(12):3357−60
(1985);Kohne et al.,SomaT Cell Mol.Genet
.,11(5):421−31(1985);Moehring et al.,Mol
.Cell Biol.,4(4):642−50(1984)参照)。また、修飾DT
又はその融合タンパク質は、大腸菌などの細菌細胞中で発現させることができる(Bis
hai et al.,J.Bacteriol,169(11):5140−51(1
987))。発現及び活性の型及び宿主プロテアーゼ発現のレベルが考慮され、これは操
作されたDT担毒体に存在する切断部位に依存する。固有の発現宿主プロテアーゼ発現プ
ロファイルは、産生されたDT融合毒素の収量に悪影響を及ぼすであろう(Bishai
et al.,supra(1987))。この不可欠な切断部位を変化させて得られ
る融合タンパク質の細胞選択性を調節することができる程度まで、このような切断部位突
然変異体は、VLS修飾担毒体であり得ると想定される(Gordon et al.,
Infect Immun.,63(1):82−7(1995);Gordon et
al.,Infect Immun.,62(2):333−40(1994);Va
llera et al.,J.Natl.Cancer Inst.,94:597−
606(2002);Abi−Habib et al.,Blood.,104(7)
:2143−8(2004))。あるいは、発現ベクターは、生体外で転写及び翻訳する
ことができる。
【0188】
本出願は、発現のために細胞、組織、哺乳動物にポリヌクレオチドを送達するための遺
伝子送達ビヒクルをさらに提供する。例えば、本発明のポリヌクレオチド配列は、遺伝子
送達ビヒクルに、局部的に又は全身的に投与することができる。これらの構造体は、生体
内又は生体外様式でウイルス又は非ウイルスベクターアプローチを利用できる。このよう
なコード配列の発現は、内因性の哺乳動物プロモーター又は異種プロモーターを使用して
誘導することができる。生体内でのコード配列の発現は、構成性又は調節性であり得る。
本発明は、ウイルスベクターを含め意図するポリヌクレオチドを発現することができる遺
伝子送達ビヒクルを包含する。例えば、PG13パッキング細胞を用いる系を開発したQ
iaoらは、癌細胞を殺し且つDTを自殺ベクターの要素として使用する方法を提供する
DT断片を有する組換えレトロウイルスを作り出している。Qiao et al.,J
.Virol.,76(14):7343−8(2002)。
【0189】
発現させたDT突然変異体及びDT融合タンパク質は、これらの機能活性について試験
することができる。DT活性を試験する方法は、当該技術において周知である。例えば、
DT突然変異体及びDT融合タンパク質のVLS効果は、実施例2に記載のようにしてH
UVECで試験することができる。DTバリアント及びDT融合タンパク質のリボシルト
ランスフェラーゼ活性は、実施例3に記載のリボシルトランスフェラーゼアッセイにより
試験することができる。DTバリアント及びDT融合タンパク質の細胞毒性は、実施例4
に記載のようにして試験することができる。
【0190】
本出願はまた、本明細書に記載の1個又はそれ以上の方法を使用して発現される精製さ
れたポリペプチドを提供し、好ましい実施形態においては、実質的に精製されたポリペプ
チドを提供する。本明細書で使用する「精製された」という用語は、哺乳動物細胞又は組
換え宿主細胞から単離できるタンパク質様組成物であって、少なくとも1個のポリペプチ
ドが、その天然で得ることができる状態と比べて、すなわち細胞抽出物内のその純度と比
べて、任意の程度まで精製されているタンパク質様組成物を指すことを意図する。従って
、精製されたポリペプチドはまた、それが天然に存在する環境に存在しない野生型又は修
飾ポリペプチドも指す。
【0191】
「実質的に精製された」という用語が使用される場合には、これは、特定のポリペプチ
ドが組成物の主成分を形成しており、例えば組成物中のタンパク質の約50%又はそれ以
上を構成している組成物を指すであろう。一つの実施形態において、実質的に精製された
ポリペプチドは、組成物中の約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約9
9%を超えるか又はさらにそれを超えるポリペプチドを構成するであろう。
【0192】
本発明に適用されるように、「等質性まで精製される」ポリペプチドとは、ポリペプチ
ドが実質的に他のタンパク質及び生物学的成分を含有していない純度レベルを有すること
を意味する。例えば、精製されたポリペプチドは、多くの場合、分解配列決定を行うこと
ができるように十分に他のタンパク質成分を含有していないであろう。
【0193】
ポリペプチドの精製の程度を定量する種々の方法は、本明細書の開示に照らして当業者
には公知であろう。これらの方法は、例えば、画分の特異タンパク質活性の測定、又はゲ
ル電気泳動で画分内のポリペプチドの数の評価を含む。
【0194】
所望のポリペプチドを精製するために、少なくとも幾つかの特定のポリペプチドを含有
する天然又は組換え組成物は、種々の他の成分を組成物から除去するために分別に供され
るであろう。本明細書において以下に詳細に記載する技法の他に、タンパク質精製に使用
するのに適した種々のその他の技法は、当業者には周知であろう。これらの技法は、例え
ば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などを用いた沈殿又は熱変性により、次いで遠心分
離、クロマトグラフィー工程、例えばイオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタ
イト、レクチンアフィニティー及び他のアフィニティークロマトグラフィー工程;等電位
点電気泳動、ゲル電気泳動;及びこれら及びその他の技法の組み合わせを含む。
【0195】
別の例は、特定の結合パートナーを使用する特定の融合タンパク質の精製である。この
ような精製法は、当該技術では日常的である。本発明は特定のタンパク質についてDNA
配列を提供することから、任意の融合タンパク質精製法が現在実施できる。これは、特定
のタンパク質−グルタチオンS−トランスフェラーゼ融合タンパク質の生成、大腸菌での
発現及びグルタチオン−アガロース上でアフィニティークロマトグラフィーを使用する等
質性までの単離又はタンパク質のN末端及びC末端上のポリヒスチジン標識の生成並びに
その後のNi−アフィニティークロマトグラフィーを使用する精製によって例示される。
しかし、所定の多数のDNA及びタンパク質は、公知であるか、又は本明細書に記載の方
法を使用して同定及び増幅し得、任意の精製法がここで用いることができる。
【0196】
ポリペプチドが常にその最も生成された状態で提供されることは、一般的要件ではない
。実際に、それにもかかわらず天然の状態と比べて所望のタンパク質組成物中に豊富であ
る実質的にあまり精製されていないポリペプチドが、ある一定の実施形態において有用性
をもつことが意図される。相対精製の低い度合いを示すポリペプチドは、タンパク質生成
物の全ての回収において、又は発現されたタンパク質の活性の維持において利点を有し得
る。
【0197】
組成物を調製する方法であって、(a)配列番号:4−147のアミノ酸配列を有する
ポリペプチド又は2個又はそれ以上のこのような修飾を有するポリペプチドをコードする
ポリヌクレオチドを含有するベクターを組み立て、(b)前記ポリペプチドを、前記ベク
ターを含有する宿主細胞中で発現させることからなる方法が、本明細書において提供され
る。一つの実施形態において、組成物は、このような方法で製造され、前記組成物は、配
列番号2又は200の配列を有するDT分子と比べてヒト血管内皮細胞(HUVEC)に
対して低下した結合活性を有する。また、組成物を調製する方法であって、(a)少なく
とも1個のT細胞エピトープ修飾を有する毒素をコードするポリヌクレオチドを含有する
ベクターを組み立て、(b)前記ポリペプチドを、前記ベクターを含有する宿主細胞中で
発現させることからなる方法が、本明細書において提供される。一つの実施形態において
、組成物は、このような方法で製造され、毒素はDTTである。一つの実施形態において
、組成物は、このような方法で製造され、前記組成物は、配列番号2又は200の配列を
有するDT分子と比べて低下した免疫原性を有する。
【0198】
未修飾毒素と比べて低下した免疫原性を有する修飾毒素を調製する方法が、本明細書に
おいて提供される。前記方法は、(a)毒素をコードする核酸配列を含有するベクター組
み立て、前記修飾ジフテリア毒素は、その中に1個又はそれ以上のアミノ酸修飾を有する
配列番号:2に示すようなアミノ酸配列を有するジフテリア毒素からなり、この場合に少
なくとも1個のアミノ酸修飾は、T細胞エピトープ内で行われ、及びこの場合に前記修飾
ジフテリア毒素は、未修飾ジフテリア毒素に匹敵する細胞毒性を有し、及び(b)前記の
ポリペプチドを前記のベクターを含有する宿主細胞中で発現させる工程からなる。
【0199】
別の実施形態は、未修飾ジフテリア毒素と比べて低下した免疫原性及びヒト血管内皮細
胞(HUVEC)に対する低下した結合活性を有する修飾ジフテリア毒素を調製する方法
を包含する。前記方法は、(a)修飾ジフテリア毒素をコードする核酸配列を含有するベ
クターを組み立て、前記修飾ジフテリア毒素は、その中に1個又はそれ以上のアミノ酸修
飾を有する配列番号:2又は200に示すようなアミノ酸配列を有するジフテリア毒素か
らなり、この場合に少なくとも1個のアミノ酸修飾は、T細胞エピトープ内、配列番号:
2又は200の残基7−9、29−31及び290−292からなる群から選択される領
域の(x)D(y)モチーフ内、B細胞エピトープ内、又はこれらの組み合わせ内で行わ
れ、及びこの場合に前記修飾ジフテリア毒素は、未修飾ジフテリア毒素に匹敵する細胞毒
性を有し、及び(b)前記のポリペプチドを前記のベクターを含有する宿主細胞中で発現
させる工程からなる。一つの限定されない例において、修飾されたVLS(x)D/E(
y)モチーフは、A、S、E、F、C、M、T、W、Y、P、H、Q、D、N、K、R、
G、L及び表1の修飾又は異常アミノ酸の中から選択されるアミノ酸残基によるV又はI
の置換である位置(x)での修飾であることができ、及びこの場合に位置D/Eの修飾は
、A、S、E、I、V、L、F、C、M、G、T、W、Y、P、H、Q、N、K、R及び
表1の修飾又は異常アミノ酸の中から選択されるアミノ酸残基によるD/Eの置換である
。一つの実施形態において、位置(y)での修飾は、I、F、C、M、A、G、T、W、
Y、P、H、E、Q、D、N、K、R、S、L、V及び表1の修飾又は異常アミノ酸によ
る置換である。
【0200】
未修飾ジフテリア毒素は、例えば、配列番号:2又は200のアミノ酸配列あるいは配
列番号:4−147のいずれか1つのアミノ酸配列を有することができる。
【0201】
細菌完全毒素及び植物完全毒素は、多くの場合に、2つのジスルフィド結合鎖、すなわ
ちA鎖及びB鎖を含有する。B鎖は、細胞結合領域(その受容体は、多くの場合、特定さ
れていない)とトランスロケーション領域の両方を有し、酸性細胞区画の膜を通してA鎖
の細胞質ゾル内への挿入を促進する。次いで、A鎖は、取り込みの後に細胞を殺す。その
生体内使用のために、リガンドと毒素は、血流及び組織を通り抜けながら安定な状態を保
つような方法で連結されるが、毒素部分が細胞質ゾル中に放出できるように標的細胞内で
不安定である。しかし、薬理学的観点からは、それにもかかわらず適切な生物学的反応を
提供することができる最も小さい分子を用いることが望ましいものであり得る。従って、
適切な抗細胞応答を提供するであろうより小さいA鎖ペプチドを用いることを望むことが
できる。この目的を達成するために、DTは、「切断する」ことができ、適切な毒素活性
をさらに保持できる。所望ならば、この切断A鎖は、本明細書に記載の実施形態に従って
融合タンパク質に用いることができることが提案される。
【0202】
あるいは、毒素部分に対する組換えDNA技術の応用はさらなる利点を提供し得ること
が見出し得る。生物活性DTが現在クローン化され、組換え発現されている点で、現在、
それにもかかわらず適切な毒素活性を示すより小さいバリアントペプチド又はバリアント
ペプチドを同定し、調製できる。また、DTが現在クローン化されている事実は、部位特
異的変異誘発の応用を可能にし、それによってDT A鎖、毒素由来のペプチドを容易に
調製し、選別することができ且つ本明細書に記載の化合物と共に使用するための別の有用
な部分を得ることができる。同定されると、これらの部分は、VLS、EC損傷活性及び
/又は本明細書に記載されているか又は当業者に知られているこのような配列の別の効果
を促進する能力の低下を示す毒素を作り出すために突然変異させることができる。
【0203】
このような方法で調製される修飾ジフテリア毒素と非ジフテリア毒素ポリペプチドから
なる融合タンパク質であって、前記非ジフテリア毒素ポリペプチドが、抗体又はその抗原
結合断片、EGF、IL−I、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、I
L−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL
−14、IL−15、INFα、INFγ、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、T
NF、VEGF、エフリン、BFGF、TGF及びこれらの細胞結合部分の中から選択さ
れるものである融合タンパク質が、本明細書において提供される。一つの実施形態におい
て、非ジフテリア毒素ポリペプチドは、例えば、IL−2又はその細胞結合部分である。
ある実施形態において、融合タンパク質又は毒素は、さらに、少なくとも別の物質を含有
する。このような物質は、分子又は部分、例えば、以下に限定されないが、本明細書のど
こかに記載のような少なくとも1個のエフェクター(治療薬部分)又はリポーター分子(
検出可能な標識)である。
【0204】
IX.検出可能な標識
本発明は、標的エピトープ、例えば罹患組織又は疾患を引き起こす細胞で発現されたエ
ピトープ(例えば、癌細胞表面のIL−2受容体)に対する融合タンパク質を提供する。
ある実施形態において、融合タンパク質は、本明細書に記載の修飾されたDTを含有する
。別の実施形態において、融合タンパク質は、さらに第二の物質を含有する。このような
物質は、例えば、リポーター分子又は検出可能な標識などの分子又は部分であり得る。リ
ポーター分子は、アッセイを使用して検出できる任意の部分である。ポリペプチドに複合
されているリポーター分子の限定されない例としては、酵素、放射標識、ハプテン、蛍光
標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、発光分子、光親和性分子、着色粒子又はリガ
ンド、例えばビオチンが挙げられる。検出可能な標識としては、その特異的な機能特性、
及び/又は化学的特性によって検出できる化合物及び/又は要素が挙げられ、これらの使
用は、これらが結合されたポリペプチドを検出すること及び/又は所望ならば定量するこ
とを可能にする。多数の適切な検出可能な(造影)物質が、ポリペプチドにこれらを付着
させる方法があることから、当該技術において知られている(例えば、米国特許第5,0
21,236号、同第4,938,948号及び同第4,472,509号公報参照、そ
れぞれは、参照することにより本明細書に組み込まれる)。使用される造影部分は、常磁
性イオン、放射性同位元素、蛍光色素、NMR検出可能物質、X線造影部分であり得る。
アジド基を含有する分子も、低強度紫外線によって生じる反応ナイトレン中間体によって
タンパク質に対して共有結合を形成するのに使用できる(Potter & Haley
、1983)。特に、プリンヌクレオチドの2−及び8−アジド類縁体が、粗細胞抽出物
中のタンパク質を結合するヌクレオチドを同定するために、部位特異的光プローブとして
使用されている(Owens & Haley,1987;Atherton et a
l.,1985)。2−及び8−アジドヌクレオチドもまた、精製タンパク質のヌクレオ
チド結合ドメインを位置決めするために使用されており(Khatoon et al.
,1989;King et al.,1989;及びDholakia et al.
,1989)、ポリペプチド結合剤として使用できる。
【0205】
X.組成物及び治療用途
本明細書に記載の化合物のそれぞれは、許容し得る担体又は賦形剤と組み合わせた場合
には組成物として使用できる。このような組成物は、生体外での分析に有用であるし、あ
るいは開示化合物を用いて被検体を治療するために生体内で又は生体外で被検体に投与す
るのに有用である。
【0206】
従って、医薬組成物は、有効成分の他に、製薬学的に許容し得る賦形剤、担体、緩衝剤
、安定剤又は当業者に周知のその他の物質を含有することができる。このような物質は、
無毒性であるべきであり且つ有効成分の効果を妨害しないものであるべきである。担体又
はその他の物質の正確な性質は、投与の経路に依存するであろう。
【0207】
本明細書に記載の方法によって同定される関心のタンパク質、例えば抗体を含有する医
薬製剤は、所望の精製度を有するタンパク質を、任意の生理学的に許容し得る担体、賦形
剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Scienc
es 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合すること
によって、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で保管するよう調製できる。許容し得る担体、
賦形剤又は安定剤は、用いられる投薬量及び濃度で受容者に対して毒性がなく、これらと
しては、緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸;酸化防止剤、例えば
アスコルビン酸及びメチオニン;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモ
ニウムクロリド;塩化ヘキサメソニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニム;フ
ェノール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル
パラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3
−ペンタノール及びm−クレゾール);低分子量(残基約10個未満)ポリペプチド;タ
ンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性重合体、例えば
ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチ
ジン、アルギニン又はリシン;単糖、二糖及びその他の糖質、例えばグルコース、マンノ
ース又はデキストリン;キレート化剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マン
ニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複
合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばT
WEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)又はポリエチレングリコール(
PEG)が挙げられる。
【0208】
本明細書に記載の製剤は、治療される具体的な適応症について必要に応じて2種類以上
の活性化合物を含有することもできる。このような分子は、適宜、意図する目的に有効な
量で組み合わせて存在させる。
【0209】
許容し得る担体は、投与される患者に対して生理学的に許容し得るものであり且つそれ
と共に/その中に投与される化合物の治療特性を保持する。許容し得る担体及びその製剤
は、例えば、Remington’pharmaceutical Sciences(
18th Edition,ed.A.Gennaro,Mack Publishin
g Co.,Easton,PA 1990)に一般的に記載されている。一つの典型的
な担体は、生理学的食塩水である。本明細書で使用する「製薬学的に許容し得る担体」と
いう語句は、体のある器官又は部分の投与部位から体の別の器官又は部分に、あるいは生
体外アッセイ系において目的化合物を運ぶ又は輸送することに関与する製薬学的に許容し
得る物質、組成物又はビヒクル、例えば液状又は固形充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は
カプセル化材料を意味する。それぞれの担体は、製剤の他の成分に適合でき且つ投与され
る被検体に無害であるという意味で「許容し得る」ものでなければならない。許容し得る
担体は、目的化合物の特定の活性を変化させるべきではない。典型的な担体及び賦形剤は
、本明細書の他の個所に提供されている。
【0210】
一つの態様において、医薬投与に適合する、溶媒(水性又は非水性)、溶液、エマルジ
ョン、分散媒、被覆剤、等張及び吸収促進又は遅延剤を含有する製薬学的に許容し得る又
は生理学的に許容し得る組成物が、本明細書において提供される。従って、医薬組成物又
は医薬製剤とは、被検体において医薬用途に適した組成物を指す。医薬組成物及び製剤は
、ある量の本明細書に記載の化合物、例えば有効量の本明細書に記載の修飾融合タンパク
質と、製薬学的に又は生理学的に許容し得る担体とを含有する。
【0211】
組成物は、具体的な投与の経路(全身又は局所)に適合するように製剤化することがで
きる。従って、組成物は、種々の経路による投与に適した担体、希釈剤又は賦形剤を含有
する。経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤又は液剤の形態であり得る。
錠剤は、ゼラチンなどの固体担体又は補助剤を含有し得る。液状医薬組成物は、一般に液
状担体、例えば水、石油、動物又は植物油、鉱油又は合成油を含有する。生理食塩水溶液
、デキストロース又は他の糖溶液又はグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレ
ングリコール又はポリエチレングリコールを含有させ得る。
【0212】
別の実施形態において、組成物は、組成物中の化合物の安定性を向上させる及び/又は
組成物の放出速度を調節することを目的として、必要に応じて、許容し得る添加剤をさら
に含有することができる。許容し得る添加剤は、目的化合物の特定の活性を変化させない
。典型的な許容し得る添加剤としては、以下に限定されないが、糖、例えばマンニトール
、ソルビトール、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルボース、スクロース、
ガラクトース、デキストラン、デキストロース、フルクトース、ラクトース及びこれらの
混合物が挙げられる。許容し得る添加剤は、許容し得る担体及び/又は賦形剤、例えばデ
キストロースと組み合わせることできる。あるいは、典型的な許容し得る添加剤としては
、以下に限定されないが、ペプチドの安定性を高め且つ溶液のゲル化を低下させるために
界面活性剤、例えばポリソルベート20又はポリソルベート80が挙げられる。界面活性
剤は、溶液の0.01%〜5%の量で組成物に添加することができる。このような許容し
得る添加剤の添加は、貯蔵中の組成物の安定性及び半減期を高める。
【0213】
医薬組成物は、皮下に、筋肉内に、腹腔内に、経口的に又は静脈内に投与することがで
きる。組成物のエアロゾル送達も、慣用の方法を使用して本明細書において意図される。
例えば、静脈内送達は、現在、カニューレ又は直接注入によるか、あるいは超音波誘導細
針によって可能である。Mishra(Mishra et al.,Expert O
pin.Biol.,3(7):1173−1180(2003))は、腫瘍内注入を提
供している。
【0214】
腸内(経口)投与用の製剤は、錠剤(被覆又は未被覆)、カプセル(硬質又は軟質)、
微小球、エマルジョン、粉剤、顆粒剤、結晶、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤に含
有させることができる。慣用の非毒性固体担体(例えば、医薬グレートのマンニトール、
ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セル
ロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムが挙げられる)が、固形製剤を調製
するのに使用できる。補足活性化合物(例えば、防腐剤、抗菌剤、抗ウイルス剤及び抗真
菌剤)も製剤中に包含させることができる。液状製剤もまた、腸内投与に使用できる。担
体は、種々の油、例えば石油、動物油、植物油又は合成油、例えば落花生油、ダイズ油、
鉱油、ゴマ油から選択することができる。適当な医薬賦形剤としては、例えば、デンプン
、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小
麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、、
グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プ
ロピレングリコール、水、エタノールが挙げられる。
【0215】
注射用組成物としては、水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び滅菌注射剤溶液又は分
散液の即時調製用滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与については、適当な担体としては、
生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippa
ny,N.J.)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、例えば水
、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリ
エチレングリコールなど)及びこれらの適当な混合物を含有する溶媒又は分散媒であるこ
とができる。流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を使用することによって、分散液
の場合には必要な粒度を維持することによって及び界面活性剤を使用することによって維
持することができる。抗菌剤及び抗真菌剤としては、例えば、パラベン、クロロブタノー
ル、フェノール、アスコルビン酸及びチメロサールが挙げられる。等張剤、例えば糖類、
ポリアルコール、例えばマニトール、ソルビトール及び塩化ナトリウムを組成物に含有さ
せてもよい。得られる溶液は、そのままで使用するためにパッケージするか又は凍結乾燥
することができる。凍結乾燥製剤は、後で、投与の前に滅菌溶液と組み合わせることがで
きる。
【0216】
組成物は、例えば、静脈内に、例えば単位用量の注射によって従来どおり投与できる。
注射については、有効成分は、実質的に発熱物質を含有しておらず且つ適当なpH、等張
性及び安定性を有する非経口的に許容し得る水溶液の形態であることができる。例えば、
等張ビヒクル、例えば塩化ナトリウム液、リンゲル液、乳酸加リンゲル液を使用して適当
な溶液を調製できる。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/又はそ
の他の添加剤を含有させてもよい。
【0217】
一つの実施形態において、組成物は凍結乾燥される。組成物が、医薬に又は本明細書に
おいて提供される種々の方法のいずれかにおける使用に考慮される場合には、組成物は、
組成物が炎症反応又は安全でないアレルギー反応を引き起こさないように発熱物質を実質
的に含有していないことが意図される。
【0218】
許容し得る担体は、吸収又はクリアランスを安定させるか、高めるか又は遅らせる化合
物を含有することができる。このような化合物としては、例えば糖質、例えばグルコース
、スクロース又はデキストリン;低分子量タンパク質;ペプチドのクリアランス又は加水
分解を抑制する組成物;賦形剤あるいはその他の安定剤及び/又は緩衝剤が挙げられる。
吸収を遅らせる物質としては、例えばアルミニウムモノステアレート及びゼラチンが挙げ
られる。洗浄剤もまた、リポソーム担体を含有する医薬組成物の吸収を安定化させるため
にあるいは高めるか又は低下させるために使用できる。消化から保護するために、化合物
は、酸及び酵素加水分解に耐性にするために組成物と複合化させることができるし、又は
化合物は、適度の耐性担体、例えばリポソーム中に複合化させることができる。化合物を
消化から保護する手段は、当該技術で知られている(例えば、治療薬の経口送達用脂質組
成物を記載しているFix(1996)Pharm.Res.,13:1760−176
4;Samanen(1996)J.Pharm.Pharmacol.,48:119
−135及び米国特許第5,391,377号公報参照)。
【0219】
静脈内注射、又は難儀な部位での注射については、有効成分は、発熱物質を含有してお
らず且つ適当なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容し得る水溶液の形態であ
る。当業者は、例えば、等張ビヒクル、例えば塩化ナトリウム液、リンゲル液、乳酸加リ
ンゲル液を使用して適当な溶液を十分に調製することができる。必要に応じて、防腐剤、
安定剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/又はその他の添加剤を含有させてもよい。
【0220】
「製薬学的に許容し得る」という語句は、ヒトに投与した場合に、生理学的に許容でき
且つ典型的にはアレルギー性副作用又は同様の有害な副作用、例えば急性胃ぜん動異常亢
進、眩暈などを生じない分子実体及び組成物を指す。
【0221】
治療剤組成物に関して使用される場合の「単位用量」という用語は、ヒトのための単位
製剤として適当な物理的に不連続な単位を指し、それぞれの単位は、必要な希釈剤、すな
わち担体又はビヒクルと共同して所望の治療効果を生じるために算出された所定量の活性
物質を含有する。
【0222】
組成物は、製剤に適合した方法で及び治療有効量で投与できる。投与される量は、治療
される被検体、被検体の免疫系の有効成分を利用する能力及び所望の結合能力の程度に依
存する。投与に必要とされる有効成分の正確な量は、開業医の判断に左右され且つそれぞ
れの個人に特有である。初回投与及び追加免疫接種に適した治療計画は、変更することも
できるが、初回投与、次いで次の注射又はその他の投与まで1時間又はそれ以上の時間間
隔での反復投与によって代表される。あるいは、多くの場合に、血中に10ナノモル〜1
0マイクロモルの濃度を維持するのに十分な連続静脈内注入が意図される。
【0223】
医師又は獣医は、必要な組成物の「有効量」(ED50)を容易に決定及び処方するこ
とができる。例えば、医師又は獣医は、組成物中に用いられる化合物の用量を、所望の治
療効果を達成するために必要とされる量よりも少ない量で開始し、所望の効果が達成され
るまで製剤を徐々に増やすことができる。
【0224】
本明細書で使用する「治療有効量」とは、器官又は組織において所望の治療又は予防効
果を少なくとも部分的に達成する量である。一例を挙げれば、疾患の予防及び/又は治療
処置を成し遂げるのに必要な修飾DTの量は、それ自体固定されない。投与される修飾D
T融合毒素の量は、疾患の種類、疾患の程度及び疾患を患う哺乳動物の種の大きさと共に
変化する。一般に、量は、癌の治療に使用される他の細胞毒性薬物に使用される量の範囲
内にあるが、ある場合には、修飾DT融合毒素の特異性及び高められた毒性のために、よ
り少ない量が必要とされるであろう。ある状況で及び現在利用できる技法、例えば(カニ
ューレ又は対流促進送達、選択的放出)によって達成できるように、増強された局所的に
増加させた融合毒素量を特定の部位に送達する試みもまた、望ましいものであり得る(L
aske et al.,J.Neurosurg.,87:586−5941(997
);Laske et al.,Nature Medicine,3:1362−13
68(1997),Rand et al.,Clin.Cancer Res.,6:
2157−2165(2000);Engebraaten et al.,J.Can
cer,97:846−852(2002),Prados et al.,Proc.
ASCO,21:69b(2002),Pickering et al.,J.CLi
n.Invest.,91(2):724−9(1993))。
【0225】
一つの実施形態は、本明細書に記載の状態、疾患又は障害を治療するための医薬を調製
するために本明細書に記載の組成物の使用を意図する。医薬は、治療を必要とする患者/
被検体の物理的特性に基づいて製剤化することができ、状態、疾患又は障害の段階に応じ
て単一又は多重製剤に製剤化することができる。医薬は、病院及び診療所に配布するのに
適切なラベルを有する適当なパッケージにパッケージすることでき、この場合にラベルは
、本明細書に記載の疾患を有する被検体の治療についての表示のためのものである。医薬
は、単一又は多数の単位としてパッケージできる。製剤及び組成物の投与についての使用
説明書が、以下に記載のようなパッケージに含ませることができる。
【0226】
発明は、さらに、上記に記載の修飾毒素又はその融合タンパク質と製薬学的に許容し得
る担体とを含有する医薬組成物に関する。
【0227】
滅菌注射剤溶液は、所定量の有効成分を、適切な溶媒に、必要に応じて上記に列記した
成分の1つ又は組み合わせと共に混和し、次いで滅菌濾過することによって調製できる。
一般に、分散液は、有効成分を、基本分散媒と上記に列記した成分からの必要な他の成分
とを含有する滅菌ビヒクルに混和することによって調製される。滅菌注射剤溶液の調製用
滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これは有効成
分と任意の追加の所望の成分との粉末を、これらの予め滅菌濾過された溶液から生成する
【0228】
ある実施形態において、本質的に融合タンパク質を含有する製剤を得るためにこの混合
物のさらなる精製である。この精製は、さらなるクロマトグラフ分離によって達成でき、
例えば、様々な種の免疫毒素を溶出するために塩濃度勾配を使用するアフィニティークロ
マトグラフィー及び免疫毒素を大きな分子から分離するゲル濾過によって達成できる。
【0229】
本明細書に記載の化合物の精製に使用するゲルは、ランダム構造を有する3次元網状構
造である。モレキュラーシーブゲルは、分析又は分離される物質と結合又は反応しない架
橋重合体である。ゲル濾過用途について、ゲル材料は、一般に荷電されていない。ゲル内
の空間は、液体で満たされ、液相はゲル容量の大部分を構成する。ゲル濾過カラムに常用
される物質としては、デキストラン、アガロース及びポリアクリルアミドが挙げられる。
【0230】
デキストランは、グルコース残基から構成される多糖であり、SEPHADEX(Ph
amacia Fine Chemicals,Inc.)という名称で市販されている
。そのビーズは、種々の細孔サイズを提供することによって異なる大きさの分子を分離す
ることを目的として、種々の架橋度で調製される。アルキルデキストランは、N,N’−
メチレンビスアクリルアミドを用いて架橋されてSEPHACRYL−S100−S10
00を形成し、これはSEPHADEXが達成できる場合よりも広い範囲で分別する強力
なビーズを調製することを可能にする。
【0231】
ポリアクリルアミドは、ゲル濾過媒体としても使用できる。ポリアクリルアミドは、架
橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを用いて調製される架橋アクリルアミ
ドの重合体である。ポリアクリルアミドは、種々の大きさの粒子の分離に使用するために
、Bio−Rad Laboratories(USA)から種々の細孔サイズで入手で
きる。
【0232】
ゲル物質は、水及び数種類の有機溶媒の中で膨潤する。膨潤は、細孔が溶出液として使
用される液体で満たされてしまうプロセスである。より小さい分子が細孔に入るにつれて
、ゲルの中を通るこれらの前進は、細孔に入らない大きい分子に比べて遅れ、分離の基礎
をなす。ビーズは、種々の用途に使用される種々の細末度で入手できる。ビーズが粗大で
あれば粗大であるほど、流れは速く且つ分離が悪い。超微細グレードは、最大分離に使用
できるが、流れが極めて遅い。微細グレードは、より早い流速を必要とする大きなカラム
での調製作業に使用される。粗いグレードは、分離が時間よりも重要でない大きな製剤用
であるか又は分子量に大きな相違を有する分子の分離用である。
【0233】
アフィニティークロマトグラフィーは、一般に、リガンド又は抗体などの物質によるタ
ンパク質の認識に基づく。カラム材料は、結合分子、例えば活性化色素を、例えば不溶性
マトリックスに、共有結合によって連結することによって合成できる。次いで、カラム材
料は、所望の物質を溶液から吸着することを可能にする。次に、条件を、結合が生じない
条件に変化させ、基質を溶出させる。首尾よいアフィニティークロマトグラフィーについ
ての必要条件は、マトリックスが分子を吸着しなければならないこと、リガンドがその結
合活性を変化させることなく連結されなければらないこと、リガンドがその結合が十分に
堅固であるように選択されねばならないこと、及び物質を破壊せずに物質を溶出すること
ができなければならないことである。
【0234】
本明細書に記載の化合物の一つの実施形態は、マトリックスが反応性色素−アガロース
マトリックスであるアフィニティークロマトグラフィー法である。Blue−SEPHA
ROSE(Cibacron Blue 3GAと、アガロース又はSEPHAROSE
とから構成されるカラムマトリックス)が、アフィニティークロマトグラフィーマトリッ
クスとして使用できる。また、SEPHAROSE CL−6Bが、Sigma Che
mical CompanyからReactive Blue 2として入手できる。こ
のマトリックスは、融合タンパク質を直接に結合し、塩濃度勾配を用いて溶出することに
よって融合タンパク質の分離を可能にする。
【0235】
修飾毒素を含有する組成物が、本明細書において提供される。一つの実施形態において
、修飾毒素は、ジフテリア毒素からなり、前記修飾ジフテリア毒素は、その中に1個又は
それ以上のアミノ酸修飾を有する配列番号2又は200に示したようなアミノ酸配列を含
有し、少なくとも1個のアミノ酸修飾は、T細胞エピトープ内か、配列番号:2又は20
0の残基7−9、29−31及び290−292の中から選択される領域の(x)D/E
(y)モチーフ内か、B細胞エピトープ内か、又はこれらの組み合わせで行われ、及び前
記修飾ジフテリア毒素は、未修飾ジフテリア毒素に匹敵する細胞毒性を有する。一つの限
定されない例において、修飾VLS(x)D/E(y)モチーフは、A、S、E、F、C
、M、T、W、Y、P、H、Q、D、N、K、R、G、L及び表1の修飾又は異常アミノ
酸の中から選択されるアミノ酸残基によるV又はIの置換である位置(x)での修飾を含
有し、及び位置D/Eでの修飾は、A、S、E、I、V、L、F、C、M、G、T、W、
Y、P、H、Q、N、K、R及び表1の修飾又は異常アミノ酸の中から選択されるアミノ
酸残基によるD又はEの置換である。一つの実施形態において、位置(y)での修飾は、
I、F、C、M、A、G、T、W、Y、P、H、E、Q、D、N、K、R、S、L、V、
及び表1の修飾又は異常アミノ酸による置換である。
【0236】
未修飾ジフテリア毒素は、例えば、配列番号:2又は200のアミノ酸配列を有するか
又は配列番号:4−147のいずれか1つのアミノ酸配列を有することができる。
【0237】
組成物は、修飾ジフテリア毒素を含有し、前記組成物は、未修飾ジフテリア毒素と比べ
て低下した免疫原性、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)に対する低下した結合活性及びこ
れらの組み合わせを有する。このような組成物は、以下に限定されないが、抗体又はその
抗原結合断片、EGF、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6
、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、
IL−14、IL−15、INFα、INFγ、GM−CSF、G−CSF、M−CSF
、TNF、VEGF、エフリン、BFGF及びTGFを含有する非ジフテリア毒素ポリペ
プチドをさらに含有する。非ジフテリア毒素ポリペプチドはまた、このようなポリペプチ
ドの断片、例えばその細胞結合部分であることもできる。一つの実施形態において、非ジ
フテリア毒素ポリペプチドは、IL−2又はその細胞結合部分である。
【0238】
低下した免疫原性、HUVECに対する低下した結合、又はこれらの組み合わせを有し
同時に細胞毒性を維持する修飾毒素及びその融合タンパク質は、種々のリンパ系由来の悪
性腫瘍(例えば、癌)、固体腫瘍及び非悪性疾患、例えばGVHD又は乾癬の治療に使用
できる。
【0239】
典型的な実施形態において、本発明のT細胞エピトープ修飾DT融合毒素は、医学的障
害、例えば、T細胞リンパ腫などの癌、又は標的リガンドが選択的に結合することができ
る望まれていない細胞の種類の存在に特徴がある非悪性疾患を患う哺乳動物(例えば、ヒ
ト)などの被検体に投与される。
【0240】
デニロイキン・ジフチトックスは、以前に治療された皮膚T細胞リンパ腫を有する被検
体を治療するのに有効であることが明らかにされている(Chin and Foss(
2006)Clinical Lymphoma and Myeloma,7(3):
199−204;Talpur et al.,(2006)J.Investigat
ive Dermatology,126:575−583)。簡潔に言えば、デニロイ
キン・ジフチトクスは、静脈内に、連続3日又は5日間、4μg/kg/日、9μg/k
g/日又は18μg/kg/日の用量で3〜21サイクル投与された。51%の全反応率
が観察された。デニロイキン・ジフチトクスは、米国において皮膚T細胞リンパ腫の治療
用に米国食品医薬品局によって承認されている。
【0241】
本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質を投与することによって皮膚T細胞リンパ腫
を有する被検体を治療する方法が、本明細書において提供される。
【0242】
デニロイキン・ジフチトクスは、再発性/難治性のT細胞及びB細胞非ホジキンリンパ
腫を有する被検体を治療するのに有効であることが明らかにされている(Dang et
al.,(2006)Br.J.Haematology,136:439−447;
Dang et al.,(2004)J.Clin.Oncol.,22:4095−
4102)。簡潔に言えば、適格患者は、デニロイキン・ジフチトクス(18μg/kg
/日)を3週毎に5日間、最大8サイクルで受けた。このような治療計画は、患者に十分
に耐容用性であり、再発性/難治性のT細胞及びB細胞非ホジキンリンパ腫を治療するの
に有効であった。
【0243】
本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質を投与することによって再発性/難治性のT
細胞又はB細胞非ホジキンリンパ腫を有する被検体を治療する方法が、本明細書において
提供される。
【0244】
第II相臨床試験において、リツキシマブと組み合わせたONTAK(登録商標)が、
再発性/難治性のB細胞非ホジキンリンパ腫を患う患者を治療するのに著しく有効である
ことが明らかにされた。従って、本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質を投与するこ
とによって再発性/難治性のB細胞非ホジキンリンパ腫を有する被検体を治療する方法が
、本明細書において提供される。
【0245】
デニロイキン・ジフチトクスは、皮下脂肪組織様T細胞リンパ腫を有する被検体を治療
するのに有効であることが明らかにされている(McGinnis et al.,(2
002)Arch.Dermatol.,138:740−742)。簡潔に言えば、ベ
キサロテン及びインターフェロンαで以前に治療を受けた女性患者は、治療の2ヶ月以内
に再発した。この患者は、次いで、静脈内デニロイキン・ジフチトクス(9μg/kg/
日を5日間)の1サイクルの治療を受けた。臨床寛解が、全ての皮膚疾患の消散と共に観
察され、全身症状が、デニロイキン・ジフチトクスの第三サイクルの完了の2週間後に得
られた。
【0246】
本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質を投与することによって皮下脂肪組織様T細
胞リンパ腫を有する被検体を治療する方法が、本明細書において提供される。一つの限定
されない実施形態において、必要ならば、被検体は、1つ又はそれ以上の他の治療、例え
ばベキサロテン及び/又はインターフェロンαと組み合わせて治療される。
【0247】
デニロイキン・ジフチトクスは、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、鼻型を有
する被検体を治療するのに有効であることが明らかにされている(Kerl et al
.,(2006)Br.J.Dermatology,154:988−991)。簡潔
に言えば、急速進行性エプスタイン・バーウイルス陽性鼻型節外性ナチュラルキラー/T
細胞リンパ腫を有する58歳の男性が、ベキサロテンとデニロイキン・ジフチトクスとの
組み合わせを用いて治療された。皮膚腫瘍の著しい退縮が、デニロイキン・ジフチトクス
の最初のサイクルの後に観察され、デニロイキン・ジフチトクスの月1回のサイクルで5
ヶ月間維持された。
【0248】
本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質をベキサロテンと組み合わせて投与すること
によって節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、鼻型を有する被検体を治療する方法
が、本明細書において提供される。
【0249】
デニロイキン・ジフチトクスは、以前に治療された慢性リンパ球性白血病を有する被検
体を治療するのに有効であることが明らかにされている(Frankel et al.
,(2006)Cancer,106(10):2158−2164)。簡潔に言えば、
デニロイキン・ジフチトクスは、60分の静脈内輸液として21日毎に5日間、18μg
/kg/日の用量で最大8サイクル投与された。全体として、患者は、末梢慢性リンパ球
性白血病(CLL)細胞の減少、リンパ節サイズの減少、及びある場合には、骨髄生検か
ら時間と共に確認される寛解を示した。ある場合には、治療された患者は、フルダラビン
に対して化学療法抵抗性であった(Morgan et al.,(2004)Clin
.Cancer Res.,9(10 Pt 1):3555−3561)。
【0250】
本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質を投与することによって慢性リンパ球性白血
病を有する被検体を治療する方法が、本明細書において提供される。
【0251】
デニロイキン・ジフチトクスは、ヒトT細胞リンパ球指向性ウイルス1関連急性T細胞
白血病/リンパ腫を有する被検体を治療するのに有効であることが明らかにされている(
Venuti et al.,(2003)Clin.Lymphoma,4(3):1
76−180)。簡潔に言えば、4サイクルのデニロイキン・ジフチトクスが投与され、
これは標準血圧の回復及び骨髄線維症の縮小をもたらした。疾患進行後、4サイクルのハ
イパーCVAD(多分割シクロホスファミド/ドキソルビシン/ビンクリスチン/デカド
ロン)が投与され、完全臨床寛解が達成された。患者は、デニロイキン・ジフチトクスに
よる維持療法を1年間受けた。
【0252】
ハイパーCVAD療法と組み合わせて本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質を投与
することによってヒトT細胞リンパ球指向性ウイルス1関連急性T細胞白血病/リンパ腫
を有する被検体を治療する方法が、本明細書において提供される。
【0253】
デニロイキン・ジフチトクスは、固体腫瘍を有する被検体を治療するのに有効であるこ
とが明らかにされている(Eklund and Kuzel.Expert Rev.
Anticancer Ther.,2005 Feb;5(l):33−8)。従って
、本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質を投与することによって1種又はそれ以上の
固体腫瘍を有する被検体を治療する方法が、本明細書において提供される。典型的な固
体腫瘍としては、以下に限定されないが、皮膚、黒色腫、肺、膵臓、乳房、卵巣、結腸、
直腸、胃、甲状腺、喉頭、卵巣、前立腺、結腸直腸、頭部、頸部、眼、口、咽頭、食道、
胸部、骨、精巣、リンパ、骨髄、骨、肉腫、腎臓、汗腺、肝臓、腎臓、脳、消化管、上咽
頭、尿生殖路、筋肉及びその他の組織の中から選択される組織又は器官の固形腫瘍が挙げ
られる。
【0254】
急性移植片対宿主病(aGVHD)は、デニロイキン・ジフチトクスによって認識され
るIL−2に対して高親和性の受容体を発現する活性化T細胞によって部分的に介在され
る。ステロイド耐性aGVHDを患う患者の第II相試験において、1群の患者を、4.
5μg/kgを1日1回、1〜5日、次いで週1回、試験8日目、15日目、22日目及
び29日目にの用法で治療した。別の群の患者を、上記と同じ投与スケジュールで9μg
/kgの用法で治療した。反応を、36日目及び100日目に評価した。患者の41%が
反応し、全員が36日目で完全寛解し、27%の患者が100日目で反応する(完全寛解
4人及び部分寛解2人)。
【0255】
本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質を投与することによってaGVHDを有する
被検体を治療する方法が、本明細書において提供される。
【0256】
乾癬は、T細胞が皮膚の抗原提示細胞によって慢性的に刺激される免疫介在皮膚疾患で
ある。乾癬は、間欠治療を必要とする慢性の再発性疾患である。デニロイキン・ジフチト
クスは、活性化T細胞を効果的に標的とすることが明らかにされ、乾癬を好転させた。し
かし、治療の副作用が血管漏出症候群であった(Walsh and Shear.(2
004)CMAJ、170(13):1933−1941)。重篤な乾癬を患う患者の第
II相試験において、35人の患者を、ONTAK(登録商標)の3種類の用量(0.5
、1.5又は5μg/kg/日)の1つを用いて治療し、8週間1週当たり3種類の用量
を受けさせた。患者15人(5又は1.5μg/kg/日を用いて治療した)中8人が、
乾癬面積及び重症度指数(Psoriasis Area and Severity
Index)(PASI)及び医師総合評価(Physicain’ Global A
ssessment)(PGA)により測定される症状の50%を超える減少を示した。
4人の患者(全員が、5μg/kg/日の用量で治療を受けた)が、5段階PGA尺度で
2段階病状改善の恩恵を受けた。
【0257】
本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質を投与することによって乾癬を有する被検体
を治療する方法が、本明細書において提供される。
【0258】
また、本明細書に記載の非免疫原性DT融合タンパク質を投与することによって維持治
療を提供する方法が、本明細書において意図される。
【0259】
Dannullら(J.Clin.Invest.,115(12):3623−36
33(2005))によって報告されているように、RNA移入樹状細胞(DC)を用い
た免疫処置は、転移性癌を有する患者において強いT細胞応答を刺激する効果的な方法で
ある(Su et al.,2003.Cancer Res.,63:3127−21
33;Heiser et al.,2002.J.Clin.Invest.,109
:409−417)。IL−2受容体α鎖を構成的に発現するCD4+T細胞(CD25
)は、調節能力において、他のT細胞の活性化及び機能を抑制することによって機能する
(Shevach,E.M.2001.J.Exp.Med.,193:F41−F46
)。これらの生理学的役割は、正常組織によって発現される抗原に対する免疫反応を調節
することによって自己免疫の発生から宿主を保護することにある(Jonuleit e
t al.,2000.J.Exp.Med.,192:1213−1222;Read
and Powrie.2001.Curr.Opin.Immunol.,13:6
44−649)。腫瘍抗原は大部分が自己抗原であることから、T調節細胞(Treg)
もまた腫瘍を有する宿主が効果的な抗腫瘍免疫反応を開始することを防止し得る。過去の
研究により、増加させた数のCD4+CD25+Tregが進行癌患者で認めることがで
きること(Woo et al.,2002.J.Immunol.,168:4272
−4276)及び高いTreg頻度が生存率の低下に関連すること(Curiel et
al.,2004.Nat.Med.10:942−949)が明らかにされている。
腫瘍増殖の制御におけるCD4+CD25+Tregの重要な役割は、抗CD25抗体を
使用するTragの欠乏がマウスにおいて効果的な抗腫瘍免疫を誘発できることを実証す
ることによってさらに強調された(Shimizu et al.,1999.J.Im
munol.,163:5211−5218;Onizuka et al.,1999
.Cancer Res.,59:3128−3133)。また、抗CD25療法は、G
M−CSF分泌B16腫瘍細胞の治療効果を高め及び腫瘍を有する動物の生存を延ばした
(Sutmuller et al.,2001.J.Exp.Med.,194:82
3−832)。累積的に、これらの実験データは、CD4+CD25+Tregの優先的
な欠乏を招く薬剤、例えばIL−2受容体CD25サブユニットを発現する細胞を標的と
する化合物の投与によって癌治療の有効性を高めることができることを示唆している。
【0260】
組換えIL−2ジフテリア毒素は、転移性腎細胞癌(RCC)患者においてCD25発
現Tregを排除するためにDAB389IL−2(デニロイキン・ジフチトクス及びO
NTAK(登録商標)としても知られている)を複合する。高親和性IL−2受容体に対
する結合、その後の内在化、及びタンパク質合成の酵素阻害の結果としてDAB389I
L−2の細胞毒性作用が生じ、最終的に細胞死に至る。
【0261】
DAB389IL−2が、CD25の中間又は低レベル発現で他のPBMC又はCD4
+T細胞に対する明らかなバイスタンダー毒性なしに、用量に依存した形でヒトPBMC
からTregを選択的に排除することが明らかにされた。Tregの欠乏は、生体外で増
殖性及び細胞毒性T細胞応答の高められた刺激をもたらしたが、DAB389IL−2が
T細胞初回刺激段階に先立って使用され且つT細胞初回刺激中に除かれた場合のみであっ
た。DAB389IL−2、次いで腫瘍RNA移入DCを用いた免疫処置によるRCC患
者のTregの欠乏は、腫瘍RNA移入DC単独の投与と比べると腫瘍特異的T細胞の刺
激の向上を招いた。CD4+CD25高Tregは、DAB389IL−2の単回投与を
使用して、明らかなバイスタンダー毒性なしに及びCD25を発現する他の細胞の機能に
影響を及ぼすことなく排除できる。DAB389IL−2は、RCC患者の末梢血に存在
するTregの数を著しく減少させ、末梢血由来のFoxP3転写物の量を減少させ及び
生体内でTreg介在免疫抑制活性を抑止した。また、DCを単独で受け入れている被検
体と比べた場合に、腫瘍特異的CD8+T細胞の著しく高い頻度は、併用DAB389I
L−2及びDC免疫処置を用いて治療された患者において測定できる。また、併用療法後
にCD4+T細胞応答の改善の傾向があった。
【0262】
新生細胞に対する同種免疫は、エフェクターT細胞と調節T(Treg)細胞の間のバ
ランスに依存する。Treg細胞は、エフェクターCD4+及びCD8+T細胞の活性化
を直接抑制することによって正常細胞及び新生細胞に対する免疫攻撃を防止する。組換え
インターロイキン2/ジフテリア毒素複合体(DAB/IL2;デニロイキン・ジフチト
クス;ONTAK(登録商標))の使用が、Treg細胞を欠乏させ且つヒトの新生物性
腫瘍に対する免疫寛容を破壊する方法として研究された。DAB/IL2(12μg/k
g;毎日4回投与:21日サイクル)を、転移性黒色腫を有する患者16人に投与し、数
個のT細胞サブセットの末梢血濃度及び全身腫瘍組織量に対する影響を測定した。
【0263】
Raskuら(J.Translational Medicne;6:12(200
8))は、DAB/IL2がTreg細胞及び全CD4+及びCD8+T細胞の一時的欠
乏(<21日)を生じたことを見出した。T細胞の再増殖は、4量体MART−1、チロ
シナーゼ及びgp100ペプチド/MHC複合体を使用してフローサイトメトリーで測定
されるように、数人の患者における黒色腫抗原特異的CD8+T細胞の新たな出現と一致
した。16人の患者は、少なくとも1サイクルのDAB/IL2を受け入れ、これらの患
者の中の5人は、CT及び/又はPET画像化によって測定されるように黒色腫転移の退
縮を経験した。1人の患者は、MART−1特異的CD8+T細胞の新たな出現に関連し
た幾つかの肝及び肺転移の退縮と共にほぼ完全な寛解を経験した。ただ一つの転移性腫瘍
がこの患者に残り、外科切除後に、免疫組織化学分析により、CD8+T細胞によって取
り囲まれたMART1+黒色腫細胞が明らかにされた。癌患者のT細胞の一時的欠乏は、
同種免疫の恒常性制御を混乱させ、新生細胞に対する特異性を有するエフェクターT細胞
の膨張を可能にし得る。
【0264】
最近の研究は、自然に誘発される腫瘍関連抗原(TAA)特異免疫の欠如は、単なる受
動的プロセスではないこと実証している。Barnettら(Am.J.Reprod.
Immunol.,54(6)321(2005))は、腫瘍がTAA特異的免疫寛容の
誘導によってTAA特異免疫の誘導を積極的に抑制することを実証した。この免疫寛容は
、部分的には調節T細胞(Tregs)によって介在される。Barnettらは、デニ
ロイキン・ジフチトクス(ONTAK(登録商標))を使用してヒト癌、例えば卵巣癌に
おいてTregを欠乏させると免疫を高めるという証拠を示した。
【0265】
CD4+CD25+Foxp3+調節T(Treg)細胞は、効果的な抗腫瘍免疫の欠
如に関与している(Litzinger et al.,(2007)Blood;11
0(9):3192−201)。デニロイキン・ジフチトクス(DAB(389)IL−
2)は、Treg細胞を標的とする手段を提供する。正常C57BL/6マウスの脾臓、
末梢血及び骨髄のTreg細胞は、デニロイキン・ジフチトクスの単回腹腔内注射後に種
々に減少した。その減少は、24時間以内にはっきり現れ、約10日持続した。他の薬剤
を用いた免疫処置の1日前のデニロイキン・ジフチトクスの注射は、免疫処置単独で誘発
させたレベルを超えて抗原特異的T細胞応答を高めた。Litzingerらは、マウス
モデルにおいて、種々の細胞区画のTreg細胞に対するデニロイキン・ジフチトクスの
異なる効果、抗原特異的T細胞免疫反応を高めるためにデニロイキン・ジフチトクスを他
の薬剤と組み合わせる利点、生きているウイルスベクターに対する宿主免疫反応のデニロ
イキン・ジフチトクスによる阻害の欠如及び免疫原と併用した場合のデニロイキン・ジフ
チトクスの投与計画の重要性を実証した。
【0266】
Tregは、増殖しつつある腫瘍細胞に対する免疫反応を調節し、場合によっては抑制
する不可欠な部分であることが明らかにされている。Matsushitaら(J.Im
munol.Methods;333(1−2):167−79(2008))は、3つ
のTreg欠乏及び/又は排除の方法、すなわち低用量シクロホスファミド(CY)を利
用する方法、Treg(PC61)表面に見出されるIL−2受容体に対する特異抗体を
利用する方法及びデニロイキン・ジフチトックス(DD)を使用する方法を比較した。M
atsushitaは、DDの利用は他のT細胞サブセットに対する並行殺細胞作用なし
に、>50%のTreg細胞減少をもたらすが、B16黒色腫に対する抗腫瘍免疫を高め
ないことを実証した。最後に、PC61は、CD8(+)T細胞の全体数の減少なしに、
他の試薬よりも長く持続したTregの中程度の減少を示した。
【0267】
本明細書に記載のDTバリアント−IL2融合タンパク質を投与することによって抗癌
剤(例えば、RNA移入DC、抗CLTA4抗体、MISIIR scFvsなど)の活
性を高める方法が、本明細書において提供される。一つの実施形態において、DTバリア
ント−IL2融合タンパク質が投与され、次いで抗癌剤が投与される。一つの限定されな
い例において、DTバリアント−IL2融合タンパク質は、抗癌剤の少なくとも4日前に
投与される。
【0268】
また、抗癌剤(例えば、RNA移入DC、抗CLTA4抗体、MISIIR scFv
sなど)と、本明細書に記載のDTバリアント−IL2融合タンパク質とを投与すること
によってTregの減少又は排除により転移性癌を治療する方法が、本明細書において提
供される。転移性腫瘍としては、例えば、転移性腎細胞癌、転移性前立腺癌、転移性卵巣
癌及び転移性肺癌が挙げられる。一つの実施形態において、DTバリアント−IL2融合
タンパク質が投与され、次いで抗癌剤が投与される。一つの限定されない剤において、D
Tバリアント−IL2融合タンパク質は、抗癌剤の少なくとも4日前に投与される。
【0269】
別の態様において、抗癌剤(例えば、RNA移入DC、抗CLTA4抗体、MISII
R scFvsなど)と、本明細書に記載のDTバリアント−IL2融合タンパク質とを
投与することによってTregの減少又は排除により前立腺腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍又は
黒色腫を治療する方法が、本明細書において提供される。一つの実施形態において、D
Tバリアント−IL2融合タンパク質が投与され、次いで抗癌剤が投与される。一つの限
定されない剤において、DTバリアント−IL2融合タンパク質は、抗癌剤の少なくとも
4日前に投与される。
【0270】
このような成分の毒性及び治療効果は、LD50(集団の50%を死に至らせる用量)
及びED50(集団の50%に治療効果がある用量)を調べるための細胞培養又は実験動
物での標準的薬学的手法によって調べることができる。毒性効果と治療効果の間の用量比
が治療指数であり、それはLD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指
数を示す化合物が好ましい。中毒性副作用を示す化合物を使用してもよいが、非癌性細胞
及びあるいは正常細胞に対する可能性のある損傷を最小限にする目的で影響を受けた罹患
組織の部位にこのような化合物を標的として向け、それによって副作用を軽減する送達シ
ステムを設計することに留意するべきである。
【0271】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られるデータは、ヒトに使用する範囲の投薬量を
製剤するのに使用できる。このような化合物の投薬量は、毒性をほとんど又は全く有せず
ED50を含む血中濃度の範囲内にあることが好ましい。投薬量は、用いる剤形及び利用
する投与の経路に応じてこの範囲内で変化させ得る。本発明の方法で使用する任意の化合
物について、治療有効量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。用量は
、細胞培養で及び実施例4に以下に示すように測定されるようなIC50(すなわち、症
状の最大半分の阻止を達成する試験化合物の濃度)を含む血中血漿濃度範囲を達成するた
めに動物モデルにおいて処方し得る。このような情報は、ヒトに有用な用量をより正確に
決定するのに使用できる。血漿中濃度は、例えば、高性能液体クロマトグラフィーで測定
し得る。
【0272】
本出願の化合物及び方法の実施形態は、例証することを意図するものであり、限定する
ことを意図するものではない。修飾及び変化は、タンパク質融合毒素の組み立てにおいて
DT担毒体として使用できることに関して機能的にほぼ未変性であることを維持しながら
、低下した免疫原性及び/又は減少したHUVEC結合をもたらすことができるT細胞エ
ピトープ配列、記載のVLS配列及びB細胞エピトープ配列に対する記載の修飾の周囲の
DT担毒体における改変に関与し得る上述の教示に照らして当業者が行うことができる。
【0273】
本明細書に記載の化合物及び方法、他の目的、例えば選択された細胞集団に対する他の
新規な分子の送達に使用できることも、当業者には考えられる。
【0274】
本出願は、免疫処置の実施形態において使用する組成物を意図する。1個又はそれ以上
の(x)D/E(y)、(x)D/E(y)T及び/又はフランキング配列における変化
によってVLS又は他の毒性作用を促進するのにあまり効果がないタンパク質様組成物が
、毒素に対する免疫反応を刺激する抗原として有用であることが意図される。具体的な実
施形態において、1個又はそれ以上の修飾された(x)D/E(y)、(x)D/E(y
)T及び/又はフランキング配列を含有するDTは、有用抗原として意図される。好まし
くは、組成物は、望まれていない小分子量分子を除去するために広く透析される及び/又
は所定のビヒクルへのより容易な配合のために凍結乾燥される。別の実施形態において、
免疫処置に1個又はそれ以上の活性部位残基を欠く毒素(すなわち、トキソイド)を使用
することもできる。
【0275】
本明細書に記載の化合物及び方法は、毒素の量が免疫原性、VLS又はこれらの組み合
わせの潜在能力をできるだけ多く低下させることが望ましい1つ又は複数の臨床状況にお
いてこのような物質を送達するのに使用される状況下で使用できる。この状況において、
触媒ドメイン又はその幾つかの部分は、置換され、不活性化され及び所望の物質又は分子
と融合される。酸感受性又はプロテアーゼ感受性の切断部位は、触媒ドメインの残部と所
望の物質又は分子との間に挿入できる。
【0276】
本明細書に開示の修飾毒素に連結し得る物質又は分子としては、以下に限定されないが
、選択的送達を必要とされるペプチド又はタンパク質断片、核酸、オリゴヌクレオチド、
酸非感受性タンパク質、糖タンパク質、タンパク質又は新規な化学実体が挙げられる。
【0277】
従って、変化は記載された範囲内にある開示された具体的な実施形態において行い得る
ことが理解されるべきである。
XI.パッケージ及びキット
さらに別の実施形態において、本出願は、前記の化合物を使用するためのキットに関す
る。低下した免疫原性、VLS促進又は毒性効果、あるいはこれらの組み合わせを示す毒
素はキットで提供できる。このようなキットは、すぐ使用でき且つ保存できる容器におい
て、細胞表面の特定の受容体(例えば、癌細胞表面のIL−2受容体)を標的とする融合
タンパク質を生成させるために、毒素を特異的細胞結合リガンドと組み合わせるのに使用
し得る。従って、キットは、適当な容器手段に、低下した免疫原性、VLS促進又は毒性
効果、あるいはこれらの組み合わせを有する組成物を含有するであろう。キットは、適当
な容器手段に、修飾DT又はその融合タンパク質を含有し得る。
【0278】
キットの容器手段は、一般に、少なくとも1個のバイアル、試験管、フラスコ、ボトル
、注射器及び/又はその他の容器手段を含み、その中に少なくとも1個のポリペプチドを
入れることができ及び/又は好ましくは適宜分注することができる。キットは、商業規模
のために厳重な管理に少なくとも1個の融合タンパク質、検出可能部分、リポーター分子
、及び/又は任意の他の試薬容器を入れるための手段を含むことができる。このような容
器は、所定のバイアルを格納する射出成形及び/又は吹込成形プラスチック容器を含むこ
とができる。キットはまた、キットの材料の使用について印刷物を含めることもできる。
【0279】
パッケージ及びキットは、医薬製剤中に緩衝剤、防腐剤及び/又は安定剤をさらに含む
ことができる。キットのそれぞれの要素は、個々の容器内に封入することができ、種々の
容器全部を単一の容器内に入れることができる。本発明のキットは、冷却保存又は室温保
存用に設計することができる。
【0280】
また、製剤は、キットの保存寿命を高めるために安定剤(例えば、ウシ血清アルブミン
(BSA))を含有する。組成物が凍結乾燥される場合には、キットは、凍結乾燥製剤を
再構成するために溶液の別の製剤を含有することができる。許容し得る再構成溶液は、当
該技術では周知であり、例えば、製薬学的に許容し得るリン酸緩衝生理食塩水(PBS)
が挙げられる。
また、本明細書において提供されるパッケージ又はキットは、さらに、本明細書において
提供される他の部分のいずれか、例えば1個又はそれ以上のリポーター分子及び/又は1
個又はそれ以上の検出可能な部分/物質を含むことができる。
【0281】
パッケージ及びキットは、さらに、アッセイ、例えばELISAアッセイ、細胞毒性ア
ッセイ、ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性アッセイなどのための1個又はそれ以
上の要素を含有することができる。本出願において試験される試料としては、例えば、血
液、血漿及び組織切片並びに分泌物、尿、リンパ液及びこれらの産物が挙げられる。パッ
ケージ及びキットは、さらに試料採取用の1個又はそれ以上の要素(例えば、注射器、カ
ップ、綿棒など)を含むことができる。
【0282】
パッケージ及びキットは、さらに、例えば製品説明、投与の方法及び/又は治療の適応
を明記しているラベルを含むことができる。本明細書において提供されるパッケージは、
本明細書に記載の組成物のいずれかを含むことができる。パッケージは、さらに、癌を治
療するためのラベルを含むことができる。
【0283】
「パッケージ材料」という用語は、キットの要素を格納する物理的構造を指す。パッケ
ージ材料は、要素を滅菌的に保持することができ、このような目的に常用される材料(例
えば、紙、波形繊維、ガラス、プラスチック、箔、アンプルなど)からなることができる
。ラベル又はパッケージ挿入物は、適切な取扱説明書を含むことができる。従って、キッ
トは、本発明の任意の方法においてキット要素を使用するためのラベル又は取扱説明書を
さらに含むことができる。キットは、本発明の任意の方法において化合物を投与するため
の取扱説明書と一緒に化合物をパック又はディスペンサーに含むことができる。
【0284】
取扱説明書としては、本明細書に記載の方法のいずれか、例えば治療方法を実施するた
めの取扱説明書を挙げることができる。取扱説明書は、さらに、十分な臨床指標又は起こ
り得る有害症状の表示、あるいはヒト被検者に使用するために食品医薬品局などの監督官
庁によって要求される追加情報を含むことができる。
【0285】
取扱説明書は、「印刷物」、例えばキット内又はキットに貼付された紙又は厚紙である
か、あるいはキット又はパッケージ材料に貼付されたラベルであるか、あるいはキットの
要素を含むバイアル又は管に取り付けられたラベルであってもよい。取扱説明書は、さら
に、コンピューター読み取り可能媒体、例えばディスク(フロッピー(登録商標)ディス
ク又はハードディスク)、光学CD、例えばCD−又はDVD−ROM/RAM、磁気テ
ープ、電気的保存媒体、例えばRAM及びROM、ICチップ及びこれらのハイブリッド
、例えば磁気/光学保存媒体に収納してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0286】
本願発明は、本願発明の代表的な実施形態として提供される以下の限定されない実施例
を参照することによってよりよく理解し得る。以下の実施例は、発明の実施形態をより十
分に例証することを目的として提示されるが、本願発明の広範な範囲を限定すると解釈さ
れるべきではない。本願発明のある実施形態が本明細書に示され、記載されているが、こ
のような実施形態は、単なる例として提供されることは明らかであろう。多数の変化、変
更及び置換は、当業者には発明から逸脱することなく思い付くであろう。本明細書に記載
の実施形態の種々の代替が本明細書に記載の方法の実施において用い得ることが理解され
るべきである。
【実施例1】
【0287】
DTバリアント及びDT融合タンパク質の組み立て、発現及び精製
DTバリアント及びDT融合タンパク質の組み立て
N末端のメチオニン残基と、未変性DTのアミノ酸残基1−386(配列番号:2)(
ここでは先端切断担毒体の残基2−387)とを含有する切断DT型担毒体を、DT38
7又はDT387の残基1−382として組み立てる。また、DT型担毒体は、N末端の
メチオニン残基と、未変性DTのアミノ酸残基1−386(配列番号:2)(ここでは先
端切断担毒体の残基2−387)と、未変性DTの残基484−485とを含有すること
ができ、DT389として組み立てられる。DT387及びDT389は、残基7−9(
VDS)、残基29−31(VDS)及び残基290−292(IDS)に3つの(x)
D(y)モチーフを含有する。DT382は、DT387又はDT389の残基1−38
2を含有する。本明細書に記載のような他のC末端切断DT構造体が、DTバリアントの
機能性を試験するために本明細書において提供されるアッセイで使用できる。DT389
に行った修飾は切断構造体(例えば、DT382)でも行うことができ、機能性について
試験できることが理解されるであろう。図31に、野生型DT382、DT382バリア
ント及びヌル構造体DT382(G53E)のアミノ酸配列を示す。下線を付した配列は
、ベクター/標識配列であり、エンテロキナーゼ切断部位をイタリック体で強調し、及び
WT配列由来の突然変異をボールド体で示す。
【0288】
部位特異的変異誘発を用いてDTの(x)D(y)モチーフを変化させる。Strat
agene Quickchange突然変異誘発キットを使用して、突然変異体を組み
立てる。オリゴヌクレオチドプライマーを、VLSに関与する(x)D(y)モチーフ内
のコード残基を変化させるために設計する。
【0289】
配列番号:4−147を、限定されない典型的な修飾DT及び対応するアミノ酸配列の
リストに示す。
【0290】
突然変異体を、ヒトインターロイキン2(配列番号:3)又はその細胞結合部分をコー
ドする配列に遺伝子融合されたタンパク質融合毒素に関連して試験する。DT融合タンパ
ク質を発現させ、精製する。
【0291】
DTバリアント及びDT融合タンパク質の発現及び精製
切断及び/又は修飾DTタンパク質、修飾DT突然変異体及び修飾DT融合タンパク質
をコードするプラスミド構造体を、大腸菌HMS174(DE3)細胞内に形質転換する
。大腸菌HMS174は、組換えタンパク質の過剰発現を達成できるプロテアーゼ欠失株
である。組換えタンパク質の発現の誘導は、大腸菌HMS174にイソプロピルチオガラ
クトシダーゼ(IPTG)を加えることによって得られる。インキュベーションの後に、
細菌細胞を遠心分離によって収穫し、溶解し、組換えタンパク質を、Murphyとva
nderSpekによって報告された封入体製剤(Methods in Molecu
lar Biology,Bacterial Toxins:methods and
protocols,145:89−99 Humana press,Totowa
,N.J.(2000))からさらに精製する。HUVECに対する効果がVLSに由来
し、内毒素が存在することによらないことを確実にするためにタンパク質製剤から内毒素
を除去することが必要であり得る。内毒素は、イオン交換樹脂を通すことによって<25
0 EU/mlまで除去される。全長物質から分解産物の分離が、イオン交換クロマトグ
ラフィー中に生じる。イオン交換樹脂を用いた別の最終精製の後に、内毒素は、<25
EU/mlに減少し、担毒体は、VLSについて生体外でのHUVEC細胞結合の関数と
して試験される。DT387又はDT389担毒体の分析は、前記の方法からの試料が本
明細書に記載の及び当該技術で公知の慣用の方法を使用してSDSポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動(PAGE)で分離される場合には、クーマシーブルー染色及びウェスタンブ
ロットを使用して行うことができる。
【0292】
DT387又はDT389担毒体のリボシルトランスフェラーゼ活性に影響を及ぼさな
い適切な発現を有する安定な構造体をもたらす突然変異は、その後に、対応するVLS修
飾DT−EGF及びVLS修飾DT−IL−2タンパク質融合毒素(それぞれ実施例5)
において標的とした細胞毒性について試験することができる。
【実施例2】
【0293】
細胞透過性アッセイ
ヒト血管内皮細胞をEGM培地(Cambrex,Walkersville,Mdか
ら得られる)中に保持する。サブコンフルエント初期継代細胞を、プラスチック製カバー
スリップ上に、同等のT細胞数で接種する。精製した、内毒素を含有していない野生型D
T担毒体及び突然変異体を、化学的結合によって蛍光標識F−150(Molecula
r Probes,Eugene,Oreg)で標識する。HUVECを、等量の標識担
毒体と共にインキュベートする。次いで、培地を吸引し、次いで細胞を洗浄し、固定し、
分析のために調製した。異なる処理群からのカバースリップ上の細胞の検査は、蛍光担毒
体で標識された細胞の数の分析を可能にする。標的リガンドは担毒体表面に存在せず、従
ってHUVEC相互作用のレベルは、HUVECに対する担毒体親和性にのみ比例する。
比較を、蛍光顕微鏡を使用し、少なくとも10個の独立した領域、異なるカバースリップ
又は異なるスライドから標識された細胞の数を比較することによって行った。特に突然変
異体構造体の場合には、細胞標識は容易に見えないので、DAPI染色剤を使用して細胞
を局在化する。4’−6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)は、天然二本
鎖DNAと蛍光複合体を形成することが知られている。それ自体DAPIは、細胞化学的
検討における有用なツールである。DAPIがDNAに結合すると、その蛍光は強く増強
される。従って、DAPIは細胞核を標識する方法として役立つ。それに対して、F−1
50DT担毒体で処理された細胞は、容易に観察される。突然変異体DT担毒体構造体の
定量化を促進するために、シグナル強度及びバックグラウンドシグナルの変化もまた増大
させる。
【0294】
HUVEC単層の形態に対するDTバリアントIL−2融合タンパク質の影響も、例え
ばBalunaら(Int.J.Immunopharm.,18:355−361,1
996)及びSoler−Rodriguezら(Exp.Cell Res.,206
:227−234,1993)によって報告された方法に従って評価できる。DTのVL
S配列及びIL−2がHUVECを損傷するか否かを調べるために、単層を、種々の濃度
のDTバリアント、DTバリアント−IL−2−融合タンパク質又は対照と共にインキュ
ベートする。HUVECを単離し、培養し、顕微鏡で調べた。簡潔に言えば、HUVEC
単層を、10−6Mのそれぞれのバリアント、融合タンパク質、対照、又は培地単独と共
に37℃で18時間インキュベートし、次いで位相顕微鏡(20倍の倍率)で調べる。正
常な単層は、細長い形を有する高密集細胞からなり、これに対して損傷した細胞は、丸ま
り、プレートから引き離れる。未処理HUVECは、密集している細長い細胞からなる。
単層は、2時間のインキュベーション後に細胞球状化について2時間後に評価することが
でき及び単層中の間隙の形成について18時間後に評価することができる。HUVECに
対する毒性効果を評価する。
【0295】
内皮単層の透過性を生体外で測定する別の方法は、既に詳細に記載されている(Fri
edman et al.,J.Cell.Physiol.,129:237−249
(1986);Downie et al.,Am.J.Resp.Cell.Mol.
Biol.,7(1)58−65(1992))。記載されている種々の培地と共にイン
キュベーションの後に、密集内皮細胞を含有するフィルターをPBSで2回洗浄する。次
いで、結合した内皮細胞を有するフィルターを改変フラックスチャンバーに取り付け、こ
のチャンバーを培養皿に入れる。チャンバーの上部ウエルに、50mMのHepesを含
有する血清無含有培地を満たす。この皿に、上記と同じ培地を満たす。攪拌バーを下部ウ
エルに加え、チャンバー全体を電気攪拌装置上に置き、37℃でインキュベートする。前
記チャンバーを、上部ウエルとビーカーの周囲液体の間の培地の量が同じになるまでイン
キュベートする。従って、上部ウエルと下部ウエルの間に静水圧の差は存在しない。この
平衡時間後に、上部ウエルの培地の少量のアリコートを取り出し、[125I]ウシ血清
アルブミン(30,000cpm/ml)を含有する培地に置き換える。放射性標識アル
ブミンを、使用直前に1MのPBSに対して十分に透析する。試験の終了後に透析[12
I]アルブミン及び下部ウエルの培地のクロマトグラフ監視により、アルブミンとの同
時クロマトグラフ(Friedman et al.,J.Cell.Physiol.
,129:237−249(1986))に対して>95%の125Iが実証される。
25Iプローブの添加の10分、30分、60分、120分、180分及び240分後に
、上部ウエル及び下部ウエルの両方から培地の少量のアリコート(三重反復で)を連続的
に取り出す。それぞれのアリコートの[125I]活性をガンマ計数器で測定し、上部ウ
エル及び下部ウエルからの試料について平均cpm/mlを測定する。実験培地を使用し
てバックグラウンドについて適切な補正を行う。BPAEC単層の[125I]アルブミ
ン移動速度を、90分〜240分の定常状態クリアランスに全体にわたる上部ウエル/時
間のカウント数に対する下部ウエルのカウントの出現の速度として表す(Friedma
n et al.,J.Cell.Physiol.,129:237−249(198
6))。それぞれのアルブミン移動速度点(「n」)は、1つの群内の二重反復フィルタ
ーの平均速度を表す。それぞれの群のフィルターは、二重反復対照フィルター(すなわち
、希釈剤単独と共にインキュベートしたフィルター上の単層)を含有していた。別のフィ
ルターにおいて、非放射性標識ウシ血清アルブミン(最終濃度1%)を、上部ウエルの[
125I]ウシ血清アルブミンと共に加える。単層を渡る[125I]アルブミン移動速
度を、前記の方法を使用して測定する。内皮単層は、未修飾DT−IL−2融合タンパク
質と比べてDTバリアント−IL−2融合タンパク質に暴露した後にはより損傷を受けて
いないことが期待される。
【0296】
さらに別のアッセイにおいて、DT−IL−2の突然変異体の溝(channel)形
成活性を、平面脂質二重層膜系を使用して調べ(vanderSpek et al.,
J.Biol.Chem.,268:12077−12082(1993);Silve
rman et al.,J.Membr.Biol.,137:17−28(1994
);Hu et al.,Prot.Eng.,11(9):811−817(1998
))、未修飾DT−IL−2と比べる。膜は、ポリスチレンカップに形成される50−1
00μmの開口部を渡って形成される。中性脂質が除去されたレシチン型IIS(Sig
ma)の1%ヘキサン溶液(Kagawa and Racker,Biol.Chem
.,246:5477−5487(1971))を使用して、開口部の両側を被覆し、乾
燥させる。次いで、開口部の外側を、軽質石油中で調製される1.5%スクアレン溶液で
被覆する。カップを、Warner Instruments(Hamden、CT)に
より調製されるブロックのバックチャンバーに入れる。緩衝液(1M KCl、2mM
CaCl、1mM EDTA、50mM HEPES、pH7.2)を、カップに開口
部レベルの上まで加える(0.5ml)。ブロックのフロントチャンバーに、HEPES
の代わりに30mMのMES(pH5.3)を用いる以外は、上記と同じ緩衝液1.0m
lを満たす。レシチンヘキサン溶液の50μlのアリコートを、フロントチャンバーの緩
衝液の上に積層し、ヘキサンを蒸発させる。次いで、フロントチャンバーの緩衝液の高さ
を下げ、開口部のレベルの上に上げ、平面脂質二重層を形成する。未修飾DT−IL−2
融合タンパク質及びそのDTバリアント−IL−2融合タンパク質を、20〜730ng
/mlの濃度でフロントチャンバーに加える。+60mVの電圧を、電位固定条件を使用
して膜に渡って印加する。カップを入れてあるブロックのバックチャンバーを、仮想接地
で保持し、電圧はタンパク質を加えるフロントチャンバーを参照する。電流を、標準法(
Jakes et al.,J.Biol.Chem.,265:6984−6991(
1989))を使用して監視する。溝の伝導度を、式g=I/V(式中、gは伝導度であ
り、Iは膜の中を流れる電流であり、及びVは膜に渡って印加される電圧である)を使用
して測定する。脂質二重層は、DTバリアント−IL−2融合タンパク質に露出の後に未
修飾DT−IL−2融合タンパク質と比べてより損傷を受けていないことが期待される。
【実施例3】
【0297】
この実施例は、ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性を試験する方法を説明する。
リボソーム不活性化タンパク質毒素、例えばジフテリア毒素は、ペプチド鎖伸長因子2(
EF−2)の共有結合的修飾を触媒する。EF−2の修飾されたヒスチジン残基のリボシ
ル化は、リボソームでのタンパク質合成を停止し、細胞死をもたらす。DT387突然変
異体の触媒活性を調べるそれぞれのリボシルトランスフェラーゼアッセイは、50mMト
リス−Cl(pH8.0)、25mM EDTA、20mMジチオトレイトール、0.4
mg/ml精製EF−2及び1.0pM [32P]−NAD(10mCi/ml、1
000Ciミリモル、Amersham−Pharmacia)中で行う。精製突然変異
タンパク質を、40μlの最終反応容量で試験する。反応を96ウエルのV底マイクロタ
イタープレート(Linbro)で行い、室温で1時間及びインキュベートする。タンパ
ク質を、200μlの10%TCAを加えることによって沈殿させ、ガラス繊維フィルタ
ーで回収し、放射能を標準プロトコールで測定する。ADP−リボシル化を測定する従来
の方法は、二本鎖(ds)活性化因子DNAオリゴヌクレオチドで処理した透過性細胞を
使用し、放射性標識NADのその後の測定は、酸不溶性物質に取り込ませる。FACS
に基づいた方法、例えばKunzmannら(Immunity & Ageing,3
:8(2006))によって報告された方法も利用できる。
【実施例4】
【0298】
修飾DT−IL−2融合タンパク質細胞の粗製抽出物に関する細胞毒性アッセイ
DT387又はDT389構造体を最初に使用して、修飾担毒体が多数の標的リガンド
に化学的に連結することができ、機能的標的毒素を生成することを実証する。DT387
リンカーIL−2又はDT389リンカーIL−2によって代表されるような一本鎖 融
合毒素は、複合体毒素の発生において典型的に遭遇するスケールアップ精製の問題を回避
する。操作された変化の効果を確認するために、多数の修飾DT387 IL−2融合毒
素又はDT389 IL−2融合毒素を産生させ、細胞毒性アッセイで試験する。
【0299】
アミノ酸置換を前記のようにして行い、この変化は融合毒素を産生できない不活性担毒
体を生じないことを調べるために、細胞毒性アッセイを行う。
【0300】
細胞毒性アッセイ
細胞毒性アッセイを、HUT102/6TG細胞、すなわち高親和性インターロイキン
−2受容体を発現するヒトHTLVl形質転換T細胞株を使用して行う。HUT102/
6TG細胞を、10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、50IU/mlのペニシリン及
び50μg/mlのストレプトマイシンを補足したRPMI1640(Gibco)培地
に保持する。細胞を、5×l0/ウエルの密度で96ウエルのVマイクロタイタープレ
ートに接種する。融合タンパク質毒素を、典型的にはウエルに10−7Mから10−12
Mに至るまでの範囲のモル濃度で加える。ウエルの最終容量は、200μlである。プレ
ートを、5%CO環境で、37℃で18時間インキュベートする。このプレートを遠心
分離に供して細胞をペレットし、培地を除去し、1.0μCi/ml[14C]ロイシン
(<280mCi/ミリモル、Amersham−Pharmacia)及び21mMグ
ルタミン、50IU/mlのペニシリン及び50μg/mlのストレプトマイシンを含有
する200μlのロイシン無含有最小必須培地に置き換える。細胞を90分間振盪し、次
いでプレートを遠心分離に供して細胞をペレット化する。上清を除去し、細胞を60μl
の0.4M KOHに溶解し、次いで室温で10分間インキュベーションする。次いで、
140μlの10%TCAを各ウエルに加え、さらに10分、室温インキュベーションを
行う。沈降したタンパク質を、PHD細胞ハーベスターを使用してガラス繊維フィルター
で収集し、取り込まれた放射能を、標準方法を使用して測定する。結果を、対照(タンパ
ク質合成を阻害するために加えられた融合タンパク質はない)[14C]−ロイシン取り
込みの割合として報告する。Toxilight(商標)、Vialight(商標)及
びALAMARBLUE(商標)キットは、バリアントを評価するために使用できる非放
射性市販アッセイである。アッセイは96ウエルプレートフォーマットで行い、感受性及
び耐性細胞株を使用して時間にわたって毒素(10−7M〜10−12M)を滴定する。
【0301】
大腸菌から産生された医薬グレードGMP精製DAB389IL−2は、典型的には5
×10−11M〜1×10−12MのIC50を生じる。部分精製毒素は、部分精製不均
質抽出物において10〜100倍低い活性を示す。医薬グレード毒素を等質性まで精製し
、再生融合毒素の活性画分を生物活性薬として使用する。上記の実施例において、本発明
者らは、ミディアムスループット分析を利用して、部分精製修飾DT−IL−2融合毒素
の受容体特異的細胞毒性を調べ、それを同様に精製したDAB389IL−2の活性と比
較した。これらのアッセイは、修飾DT387リンカーIL−2融合のDAB389IL
−2に対する匹敵する活性を実証する。特異的細胞毒性の算出は部分融合毒素の試料中の
タンパク質の全量に基づくことは、注目されるべきである。アッセイについて、等モル濃
度の融合毒素を試験した。
【0302】
各試料中の非融合毒素タンパク質の相対量は、任意の所定の構造体のIC50を人為的
に変えることができる。すなわち、この分析に使用する試料中の非全長又は非融合毒素タ
ンパク質は、もしかするとIC50のわずかな相違を説明するであろう。
【0303】
大腸菌中で産生された精製DAB389IL−2は、典型的には5×10−11M〜1
×10−12MのIC50を生じる。
【0304】
ミディアムスループット細胞毒性アッセイを使用して、修飾DT−IL−2融合毒素の
粗精製物を分析し、これを同様に精製したDT387リンカーIL−2の活性と比較する
た。
【0305】
残基19−21(LDL)に配置されたIL−2中に1個の(x)D/E(y)モチー
フが存在することは、注目されるべきである。VLSに対するIL−2の寄与は、IL−
2中の(x)D/E(y)モチーフを修飾することによって調べ、上記の細胞毒性アッセ
イを使用して修飾タンパク質を試験することができる。例えば、DT387又はDT38
リンカーIL−2から誘導される修飾DT突然変異体を使用して、触媒活性、VLS活
性及び標的毒素の標的細胞の細胞質ゾルへの効果的な送達に対する突然変異の影響を区別
することができる。また、DT387及びDT387リンカーIL−2の修飾DT突然変
異体同士の間の比較は、担毒体単独の修飾配列の影響を、DT387リンカーIL−2中
に存在するIL−2標的リガンドから区別するであろう。別の例において、DT389
びDT389リンカーIL−2の両方からから誘導される修飾DT突然変異体を使用して
、触媒活性、VLS活性及び標的毒素の標的細胞の細胞質ゾルへの効果的な送達に対する
突然変異の影響を区別することができる。また、DT389及びDT389リンカーIL
−2の修飾DT突然変異体同士の間の比較は、担毒体単独の修飾配列の影響を、DT38
リンカーIL−2中に存在するIL−2標的リガンドから区別するであろう。
【実施例5】
【0306】
この実施例は、本明細書に記載の融合タンパク質の効果を生体内で試験する方法を説明
する。ある、血管新生したヒト皮膚をSCIDマウスに移植し、このマウスに毒素含有融
合タンパク質を注射し、移植片中の体液蓄積を湿潤/乾燥重量比として測定することによ
って生体内でヒト内皮に対する毒素含有融合タンパク質の効果を研究するために、モデル
が開発されている(Baluna et al.,J.Immunother.,22(
1):41−47(1999))。ヒト皮膚中の体液蓄積は、凍結乾燥の前後の皮膚移植
片のパンチ生検の重量を測定することによって測定する。このモデルを使用して、生体内
で本明細書に記載の修飾DT融合タンパク質の効果を評価することができる。
【0307】
正常SCIDマウスの肺の体液蓄積も、VLSの代用モデルとして使用される。IL−
2は、マウスの肺の体液蓄積を誘発することが明らかにされている(Orucevic
and LaIa,J.Immunother Emphasis Tumor Imm
unol.,18(4):210−220(1995))。肺又は皮膚移植片の含水率は
、湿潤/乾燥重量比として算出される。このモデルにおいて、肺血管漏出も、125I−
アルブミンが静脈内注射された肺での蓄積を測定することによって評価される(Smal
lshaw et al.,Nature Biotechnology,21:387
−391(2003))。
【実施例6】
【0308】
多重アッセイ、例えば生体外細胞毒性アッセイ、生体外血管毒性、生体内マウスモデル
及び本明細書に記載の又は当該技術で公知の任意の他のアッセイが、本明細書に記載のD
Tバリアントの機能を試験するのに利用できる。
【0309】
生体外細胞毒性アッセイ
種々の修飾DT融合タンパク質の細胞毒性活性は、CD22Daudi細胞及び先に
記載のような[H]−ロイシン取り込みを使用して測定される(Ghetie et
al.,1988)。未処理対照培養物に対して50%まで[H]−ロイシン取り込み
を減少させる融合タンパク質の濃度は、IC50として定義される。
【0310】
血管毒性
修飾DTを用いて調製された融合タンパク質の血管損傷を誘発させる能力を評価する最
初の段階として、HUVECを使用する一連の生体外試験を行うことができる。生体外ア
ッセイについて、HUVEC単層の形態に対する修飾DT融合タンパク質の効果を、先に
記載のようにして試験する(Baluna et al.,1996)。
【0311】
生体内アッセイ
修飾DT融合タンパク質の効果は、SCID/Daudi腫瘍モデルで調べることがで
きる(Ghetie et al.,1992)。簡潔に言えば、雌性SCIDマウスに
、当日に5×10個のDaudi細胞を静脈内注射する(I.V.、側尾静脈)。融合
タンパク質を、1日目、2日目、3日目及び4日目にI.V.注射する。マウス5匹の群
を、それぞれの処理に使用し、試験を反復する。処理群には、(1)未処理(対照)、(
2)未修飾DT融合タンパク質、又は(3)未修飾DT融合タンパク質を受けさせる。マ
ウスを追跡し,その後肢の麻痺が生じたときに犠牲死させる。SCIDマウスの肺血管漏
出を記載のようにして評価する(Baluna et al.,1999)。肺の含水量
を、10μg修飾DT融合タンパク質/マウス体重を注射したマウスから取り出した肺の
湿潤/乾燥重量比として算出する。
【実施例7】
【0312】
この実施例は、T細胞エピトープについて毒素をスクリーニングする方法を説明する。
MHC、ポリペプチド及びT細胞受容体(TCR)の間の相互作用は、T細胞認識の抗原
特異性のための構造的基礎を提供する。T細胞増殖アッセイは、MHCに対するポリペプ
チドの結合及びTCRによるMHC/ポリペプチド複合体の認識を試験する。この実施例
の生体外でのT細胞増殖アッセイは、抗原提示細胞(APCs)及びT細胞を含有する末
梢血単核細胞(PBMC)の刺激を含む。刺激は、合成ペプチド抗原を使用して生体外で
行う。刺激されたT細胞増殖は、H−チミジン(H−Thy)を使用して測定し及び
取り込まれたH−Thyの存在は、洗浄した固定された細胞のシンチレーション計数を
使用して評価する。
【0313】
12時間未満の時間保存されたヒト血液のドナープールから軟膜を取得し、毒素のアミ
ノ酸残基配列に対応するポリペプチドライブラリーを、公知の方法で合成するか又は又適
切な供給源から得る。軟膜の穏やかな遠心分離によって、赤血球及び白血球を、血漿及び
血小板から分離する。上部の相(血漿及び血小板を含有する)を除去し、廃棄する。赤血
球及び白血球を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に1:1で希釈し、その後に15ml
のフィコール・パーク(GE Healthcare)上に積層する。遠心分離を、製造
業者の推奨する条件に従って行い、PBMCを血清+PBS/フィコール・パーク界面か
ら収穫する。PBMCを、PBS(1:1)と混合し、遠心分離により収集する。上清を
除去し、廃棄し、PBMCペレットを50mlのPBSに再懸濁する。細胞を遠心分離に
よって再度ペレット化し、PBS上清を廃棄する。次いで、細胞を50mlのAIM V
培地を使用して再懸濁し、この時点で計数し、トリパンブルー色素排除を使用して生存率
を評価する。細胞を再度遠心分離によって収集し、上清を廃棄する。細胞を、低温保存用
に1ml当たり3×10個の密度で再懸濁する。保存培地は、90%(v/v)熱不活
性化ABヒト血清(Invitrogen)及び10%(v/v)DMSO(Invit
rogen)である。細胞を、調節凍結容器に移し、−70℃で一夜置き、その後に長期
保存のために液体Nに移す。使用する必要がある場合には、細胞を37℃の水浴で急速
解凍し、その後に10mlの予熱したAIM V培地に移す。
【0314】
PBMCを、96ウエル平底プレート中でウエル当たり2×10PBMCの密度でポ
リペプチド抗原を用いて刺激する。PBMCを37℃で7日間インキュベートし、その後
H−Thyと共に振盪する。毒素の配列全体に及ぶ12個のアミノ酸の増分を重ね合
わせた合成ポリペプチド(15量体)が生成する。
【0315】
それぞれのポリペプチドを、20人の未処置ドナーから単離したPBMCに対して個々
にスクリーニングする。免疫原性であることがすでに明らかにされている2個の対照ポリ
ペプチド及び強力な非想起抗原、KLHを、各ドナーアッセイで使用する。使用する対照
抗原は、Flu赤血球凝集素;クラミジアHSP60ペプチド及びキーホール・リンペッ
ト・ヘモシアニンである。ポリペプチドを、10mMの最終濃度までDMSOに溶解し、
次いでこれらの原液をAIM V培地に1/500に希釈する(最終濃度20μM)。ポ
リペプチドを、平底96ウエルプレートに加えて100μl中2μM及び20μMの最終
濃度を得る。解凍PBMCの生存率を、トリパンブルー色素排除によって評価し、次いで
細胞を2×10細胞/mlの密度で再懸濁し、100μl(2×10PBMC/ウエ
ル)を、ペプチドを入れた各ウエルに移す。三重反復ウエル培養物を、それぞれのペプチ
ド濃度で評価する。プレートを、5%COの湿潤雰囲気で、37℃で7日間インキュベ
ートする。細胞を、1μCiH−Thy/ウエルと共に18〜21時間振盪し、その後
にフィルターマット上に収穫する。CPM値を、マイクロプレートベータトッププレート
計数器を使用して調べる。結果を、刺激指数として表す。刺激指数(SI)は、試験ペプ
チドに対して測定される増殖スコア(例えば、放射能の1分当たりのカウント数)を、試
験ペプチドと接触していない細胞で測定されるスコアで除算することによって誘導される
【実施例8】
【0316】
脱免疫処置は、数種のタンパク質、例えば植物毒素(欧州特許出願公開第EP1737
961号公報)及び細菌(国際公開WO2004/018684号明細書)毒素のT細胞
エピトープ欠乏バリアントを生じさせるのに首尾よく応用されている。脱免疫処置技術は
、例えばEpiScreen(商標)(Antitope,Ltd,Cambridge
,UK)の開発によって改善されており、T細胞エピトープを測定するためにより感受性
である。
【0317】
T細胞エピトープは、点突然変異の導入よりもむしろ複合タンパク質(Composi
te Protein)(商標)技術(Antitope,Ltd)を使用して、他のタ
ンパク質由来の配列セグメントで置換することによって除去することができ、その結果T
細胞エピトープは、タンパク質機能を保持しながら除去することにおいてより可変性のあ
る溶液を提供する。
【0318】
本明細書に記載の方法は、以下の7段階を使用して低下したVLS及び低下した免疫原
性を有するDTバリアントを生じさせることにある。
【0319】
段階1−DTのT細胞エピトープマッピング及び選択されたリガンド、例えばヒトIL
−2との連結;
段階2−VLS及びDT活性についてのアッセイ;
段階3−多数のバリアント(約100−250個のバリアント)をスクリーニングする
のに適したフォーマットで、大腸菌での全DTの遺伝子合成、発現及び精製;
段階4−低下したVLS(HUVEC結合アッセイ)についてDTバリアントの生成及
び試験−バリアントを2回試験する(単一遺伝子座/多重遺伝子座);
段階5−T細胞エピトープを除去した後のDTバリアントの生成及び試験−バリアント
を複数回試験する(単一エピトープ、多重エピトープ、最適化)、第2回目の試験はVL
Sバリアントとの組み合わせを含む(段階4);
段階6−段階5からのリードDTバリアントと、タンパク質リガンド、例えばヒトIL
−2との融合によるリードDT−融合バリアントの生成及びタンパク質精製/試験(この
段階は任意である);並びに
段階7−EpiScreen(商標)(野生型先端切断DT(ΔR)の対照)による、
リードDT1−389(「先端切断DT(ΔR)」)バリアントの免疫原性試験。
【0320】
HUVEC結合アッセイでのVLSモチーフに突然変異を含むDTバリアントの試験及
びIVTTアッセイでの有効性についての全てのDTバリアントの試験を、例えば、野生
型受容体結合(R)ドメイン(DT(ΔR))なしで先端切断DTバリアントを用いて行
う。細胞毒性アッセイにおける効力についてのリードの試験を、全長DTバージョンと、
DT(DR)がIL−2に融合している融合タンパク質との両方を用いて行う。1個又は
それ以上のリードDTバリアント(段階7)のEpiScreen(商標)確認について
、修飾C及びIドメインを有する最適化DTバリアントを、先端切断DT(ΔR)の発現
により試験する。
【実施例9】
【0321】
DTのEpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピング
[EpiScreen用のドナー選択]
Addenbrooke病院地域研究倫理委員会(Addenbrooke’s Ho
spital Local Research Ethics Committee)に
よって許可された承認に従って英国国立血液サービス(UK National Blo
od Tranfusion Service)(Addenbrooke病院、Cam
bridge、UK)から得られた健康な地域社会ドナーの軟膜(24時間以内に採取し
た血液から)から、末梢血単核細胞(PBMC)を単離する。PBMCを、軟膜からLy
mphoprep(Axis−shield、Dundee、Scotland)密度勾
配遠心分離によって単離し、CD8+T細胞を、CD8+RossetteSep(商標
)(StemCell Technologies,Inc)を使用して欠乏させる。ド
ナーを、Biotest HLA SSP−PCRに基づいた組織適合キット(Biot
est,Landsteinerstraβe、Denmark)を使用してHLA−D
Rハプロタイプを同定することによって特定する。また、対照抗原、キーホール・リンペ
ット・ヘモシアニン(KLH)(Pierce,Rockford,USA)に対するT
細胞応答も調べた。ドナー54人の集団を、社会集団(world populatio
n)において発現されるHLA−DRアロタイプの数及び頻度を最も良く表すために選択
する(表1及び図1)。社会集団において発現されるアロタイプに対して、前記集団で発
現されるアロタイプの分析により、>80%の範囲が達成されること及び全ての主要HL
A−DR対立遺伝子(社会集団において発現される頻度>5%を有する個々のアロタイプ
)が十分に提示されることが明らかにされた。表1は、ドナーのハプロタイプ、及びドナ
ーPBMCの処理及び単離中に得られるKLHに対する応答(試験1)と、この試験中の
再試験(ANG01)の後に得られるドナー応答との比較を示す。ドナーハプロタイプの
概要を表2に示し、試験で使用したドナー アロタイプの頻度と、社会集団において存在
する頻度との比較を図1に示す。
【0322】
【表2】
【0323】
表2.ドナーの詳細及びハプロタイプ。KLHに対するドナー応答(SI)を、2つの独
立した試験について示す。試験1は、新たに単離されたPBMCについて行い、ANG0
1はこの試験における再試験である。両方の試験で同じ結果(すなわち、陽性又は陰性)
を生じなかった応答は、灰色で強調する。極めて低い基礎cpm(<150cpm)を有
する3人のドナーは、分析から除外した。
【0324】
[EpiScreen分析:増殖アッセイ]
EpiScreen(商標)を使用して、C末端にヒトIL−2の10個のアミノ酸を
有するDTのC及びIドメインを含むDT1−389の配列から誘導されるオーバーラッ
プペプチドを試験した。C末端のヒトIL−2の10個のアミノ酸(DT1−389/I
L−2 2−10)と一緒に、DT−Iの残基1−389に及ぶオーバーラップペプチド
を設計した。12個のアミノ酸まで重複する一連の128×15量体ペプチドを、1×l
4量体及び1×11量体と一緒に合成し、51人の健康なドナーの集団からEpiScr
een(商標)T細胞エピトープマッピングを使用して誘導された末梢血単核細胞(PB
MC)を刺激するのに使用した。個々のペプチドを、反復培養物中で試験し、T細胞増殖
アッセイを使用して応答を評価して、エピトープの正確な位置を同定した。各ドナー由来
のPBMCを解凍し、計数し、生存率について評価した。細胞を室温のAIM V培地(
Invitrogen、Carlsbad,California)中で生き返らせ、そ
の後に細胞密度を2.5×10PBMC/ml(増殖細胞ストック)に調整した。ペプ
チドを、10mMの最終濃度までDMSO(Sigma−Aldrich,St Lou
is,MO,USA)に溶解した。次いで、ペプチド培養ストックを、AIM V培地に
5μMの最終濃度まで希釈することによって調製した。それぞれのペプチド及びそれぞれ
のドナーについて、6重反復培養物を、平底96ウエルプレートで100μlのペプチド
培養ストックを100μlの増殖細胞ストックに加えることによって確立した。陽性対照
培養物及び陰性対照培養物の両方も、6重反復で確立した。9×96ウエルプレート全部
をそれぞれのドナーについて使用し、それぞれのプレートは、15個のペプチドを1つの
陰性対照(担体単独)と共に6重反復で試験するのに十分であった。最終プレートに、陽
性対照KLHを加えた。
【0325】
培養物を、合計6日間インキュベートし、その後に各ウエルに0.5μCiの[H]−
チミジン(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachu
setts、USA)を加えた。培養物を、さらに18時間インキュベートし、その後に
TomTec Mach III細胞ハーベスターを使用してフィルターマット上に収穫
した。各ウエルについて1分当たりのカウント(cpm)を、MicroPlate B
eta Counter(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、M
assachusetts、USA)で、並行して、低バックグラウンドカウントモード
で、Meltilex(商標)(Perkin Elmer(登録商標)、Waltha
m,Massachusetts,USA)シンチレーションカウントすることによって
測定した。
【0326】
増殖アッセイについて、2に相当するか又はそれよりも大きい(SI≧2)刺激指数(
SI)の実験的閾値は、すでに確立されており、それによってこの閾値を越える増殖反応
を誘導する試料は、陽性であると認められる(含有される場合には、境界線SI≧1.9
0が強調される)。広範なアッセイ展開及び過去の研究により、これは多数の偽陽性応答
を検出することなく最大感度を可能にする最小シグナル対ノイズ閾値であることを明らか
にされている。陽性応答は、以下の統計学的及び実験的閾値によって定義される。
【0327】
1.試験ウエルcpmと培地対照ウエルとを、対合していない2つの試料のスチューデ
ントのt検定を使用して比較することによる応答の有意性(p<0.05)。
【0328】
2.2よりも大きい(SI≧2)刺激指数、この場合SI=試験ウエルの平均(cpm
)/培地対照ウエルの平均(cpm)である。
【0329】
また、アッセイ内変動を、重複培養物からの生データの変動の係数及び標準偏差(SD
)を算出することによって評価した。
【0330】
増殖アッセイを、6重反復培養物において設定した(「非調整データ」)。アッセイ内
変動性が低いことを確実にするために、データを最大及び最小cpm値(「調整データ」
)を除いた後に解析し、ドナー応答のSIを両方のデータセットを使用して比較した。調
整データセット及び非調整データセットの両方からのドナーSIの詳細を、図12及び1
3に示す。T細胞エピトープを、試験+2×SD(バックグラウンド応答率)において全
てのペプチドに対する応答の平均頻度を算出することによって同定した。この閾値を越え
て増殖を誘導した任意のペプチドは、T細胞エピトープを含有するとみなす。
【0331】
[ペプチドのコンピューターiTope(商標)分析]
増殖アッセイで陽性であったペプチドの配列を、Antitopeの予測iTope(
商標)ソフトウエアを使用して解析した。このソフトウエアは、ペプチドのアミノ酸側鎖
とMHCクラスII結合溝内の特異的結合ポケットとの間の好ましい相互作用を予測する
。重要な結合残基の配置は、長いペプチド配列の上に及ぶする1個のアミノ酸によって重
ね合わされた10量体ペプチドを生成することによって調べた。それぞれの10量体は、
MHCクラスIIアロタイプ(合計32)のAntitopeのデータベースと対照して
試験し、そのMHCクラスII分子との適合及び相互作用に基づいて採点した。多数の対
立遺伝子に対して高い結合スコアを生じたペプチドは、コア9量体を含有するとみなした
。このような試験は、(a)DT1−389/IL−2 2−10 DT1−389/I
L−2 2−10の完全T細胞エピトープマップ、(b)個々のT細胞エピトープの効力
及びDTから除去するための優先順位付けの評価、及び(c)MHCクラスIIアロタイ
プとのT細胞エピトープ関連性の評価を含めDT1−389/IL−2 2−10の包括
的なT細胞エピトープ分析を提供した。
【0332】
[T細胞エピトープの同定]
前記のEpiScreen(商標)分析を使用して同定された130のペプチド全部を
、51人の健康なドナー(54人のドナーが最初に選択されたが、ドナー13、20及び
38は、低い基礎cpmである、すなわち150cpmのカットオフ値よりも低いcpm
であるために分析から除外した)に対して試験するために首尾よく合成した。陽性応答は
、所定のペプチドに対してSI≧2を有する有意な(p<0.05)応答を生じたドナー
によって定義される。ボーダーラインの応答(SI≧1.90を有する有意な(p<0.
05)応答)もまた含めた。非調整データ解析の結果と調製データ解析の結果とを、アッ
セイ内変動性が低いこと及び陽性応答は個々のウエルでの偽性増殖の結果ではないことを
確証するために比較した。それぞれの解析の結果は、方法の間にほとんど相違がないこと
を示した。従ってT細胞エピトープマップは、調整データ解析を使用して編集した。非調
整解析と調製解析の両方からのドナー刺激指数を図12及び13それぞれに示す。T細胞
エピトープは、試験での全てのペプチドに対する応答の平均頻度プラス標準偏差の2倍(
「バックグラウンド応答率」と呼ぶ)を算出することによって同定した。これは、5.6
%であると算出され、3人以上のドナーで陽性応答を誘導することについて同等であった
。この閾値を上回る増殖反応を誘導するペプチドは、T細胞エピトープを含有するとみな
した。
【0333】
表3は、ペプチドのそれぞれに対する個々のドナーの応答の要約を提供する。ペプチド
に対する応答の頻度を表すグラフは、図2に見出すことができる。9つのペプチドがバッ
クグラウンド応答率を上回る増殖反応を誘導し(ペプチド2、31、35、39、40、
41、42、49及び100)、従ってT細胞エピトープを含有するとみなした。これら
9つのペプチドから、合計7個のT細胞エピトープが、DT−1配列内で同定され、以下
でさらに詳しく考察する。
【0334】
【表3】
【0335】
表3.個々のペプチドに対するドナーの応答の概要。陽性応答(SI≧2及びp<0.0
5)はドナー番号によって示し、個々SIは対応するドナーの次の括弧内に示す。ボーダ
ーライン応答(SI≧1.9及びp<0.05)は、(*)で示す。バックグラウンド応
答率は5.6%であり、それは3人のドナーと同等であった。
【0336】
[EpiScreenによって同定されたT細胞エピトープ]
(a)エピトープ1−ペプチド2
ペプチド2(DDVVDSSKSFVMENF;配列番号:159)は、表2及び図2
に示すようなT細胞エピトープを含有する。合計3人のドナー(30、36及び47)が
ペプチド2に応答したが、ドナー30の応答はボーダーラインであった(1.92のSI
)。前記の明細全体を通じて考察するように、T細胞エピトープの排除は、同定されたエ
ピトープのアミノ酸の修飾によって達成できる。エピトープのアミノ酸、例えばMHCク
ラスII結合裂隙のアンカーポケット(p1及びp9)を結合することに関連するアミノ
酸残基の修飾は、MHCクラスII分子上のエピトープの首尾よい提示に影響を及ぼすこ
とができる及び/又は防止する(すなわち、エピトープを排除する)ことができる。同様
に、MHCクラスII結合裂隙の内部ポケットを結合することに関連するアミノ酸残基、
及び/又はMHCクラスII分子に影響を及ぼすか又はそれと相互作用するコア9量体エ
ピトープの外側の残基の修飾は、エピトープを排除できる。T細胞エピトープの排除のた
めのアミノ酸残基修飾の種々の組み合わせが、本明細書に記載の方法で調製でき、試験で
きる。
【0337】
AntitopeのコンピューターiTope(商標)MHCクラスII予測ソフトウ
エアを使用して、ペプチド2を、可能な9量体MHCクラスII結合レジスターについて
解析した。このソフトウエアは、結合する可能性を有する対立遺伝子の数(合計32から
)に基づいたエピトープについて最も好ましい結合レジスターを、対立遺伝子の平均結合
スコア(この場合、陽性閾値は0.5に設定される)と一緒に予測する。この解析の結果
は、コア9量体が、バリン(V8)を可能なp1アンカー残基として有するVDSSKS
FVM(配列番号:161)であることを示した(図3)。この立体配座において、解析
は、32個の対立遺伝子の中の25個の結合を予測した。
また、VDSSKSFVMコア9量体(配列番号:161)も、ペプチド2とオバーラッ
プするペプチド1及び3の両方に存在する。興味深いことに、ドナー36は、ペプチド2
及び3の両方に応答し(それぞれ2.13及び2.02のSI)、また統計学的に有意で
あった(p<0.05)ペプチド1(SI=1.88)に対する高い応答を有していて、
VDSSKSFVM(配列番号:161)がコア9量体結合レジスターであることを示す
。同様に、ドナー30は、1.64のSIでペプチド1に応答し、これは1.9〜2.0
のカットオフよりも明らかに低かったが、統計学的に有意であり(p<0.05)、全体
的なバックグラウンドSIよりも高かった。ドナー47は、ペプチド1及び3に対する陽
性応答を開始しなかった。これは、おそらくはペプチド内のコア9量体の配置によるもの
と思われる。9量体結合レジスターの外側の残基の相互作用がペプチド:MHCクラスI
I複合体の安定性を裏付けることが十分に実証されている(Engelhard et
al.,1994)。従って、ペプチド2は、コア9量体をMHCクラスIIの結合に最
適な立体配置で含有していると思われる。DT−1の結晶構造の精査(Steere e
t al.,2000)により、p1バリン残基(V8)が部分的に露出した位置内にあ
ることが明らかにされた。従って、極性置換残基は、極性部分が表面露出され且つ疎水性
領域が覆い隠されるように選択できる。T細胞エピトープに対するこのような修飾は、毒
素の免疫原性を低下させることができる。
【0338】
(b)エピトープ2−ペプチド31
表3及び図2は、4人のドナー(ドナー12、23、30及び36)がこの領域にT細
胞エピトープの存在を示すペプチド31(KVLALKVDNAETIKK;配列番号:
162)に応答したことを示す。また、オーバーラップペプチドの分析により、ドナー2
3がペプチド32に対してボーダーライン応答を生じ、ドナー36もペプチド32に応答
し、その応答は、閾値下(SI=1.81)であるが統計学的に有意(p<0.05)で
あることが明らかにされた。iTope(商標)コンピューター解析を使用すると、この
ペプチドのコア9量体は、バリン(V97)を主要なp1アンカー残基として有するVD
NAETIK(配列番号:164)であると予測された(図4)。これは、ドナー23の
ペプチド32に対する応答及びドナー36の同じコア9量体を含有していたペプチド32
に対する閾値下の応答によって裏付けられた(図5)。この立体配座において、解析は、
32個のMHCクラスII対立遺伝子の中の28個の結合を示した。構造及び相同性モデ
リングは、V97の配置が分子の表面に十分に露出されており且つ活性部位に関連づけら
れないことを明らかにした。
【0339】
(c)エピトープ3−ペプチド35
ペプチド35(配列番号:166)は、段階1において前記のように刺激の後に陽性増
殖応答を生じた3人のドナー(ドナー1、2及び35)によって示されるようなT細胞エ
ピトープを含有する(図2及び表3)。iTope(商標)による解析により、このペプ
チドについて最も好ましい結合レジスターは、ロイシン(L107)を主要なアンカー残
基、p1として有するLGLSLTEPL(配列番号:167)であることが明らかにさ
れた(図5)。この9量体は、32個のMHCクラスII対立遺伝子の中の13個を結合
する可能性を有していた。ドナー35もまた、同じコア9量体を含有していたペプチド3
4に対して増殖応答(SI=1.83)を有していた。これは、陽性応答についてカット
オフ1.9〜2.0より低かったが、統計学的に有意(p<0.05)であり、且つ配列
LGLSLTEPL(配列番号:167)がこの領域内のエピトープであることを示す。
【0340】
このエピトープのためのp1アンカーの結晶構造解析及び相同性モデリングは、それが
大部分覆い隠されており、少量が表面露出していることを示す。エピトープ1に関しては
、MHCクラスIIに対する結合を除去するために極性残基を置換できるであろう。この
ペプチドのp9アンカーもまた覆い隠され、従って、変化は、毒素の表面に十分に露出さ
れているp6及びp7を含有する他のポケット位置にあると考えられる。
【0341】
(d)エピトープ4−ペプチド39
3人のドナー(ドナー5、15及び50)が、ペプチド39(LMEQVGTEEFI
KRFG;配列番号:168)を用いた刺激の後に陽性増殖応答を生じたが、ドナー50
の応答はボーダーライン(1.94のSI)であった(図2及び表3)。このペプチド内
のT細胞エピトープは、iTope(商標)解析後にMEQVGTEEF(配列番号:1
69)をコア9量体MHCクラスII結合レジスターとして含有すると予測された(図6
)。この立体配座において、位置116のメチオニンはp1アンカー残基を形成し、この
エピトープは、32個のMHCクラスII対立遺伝子の中の19個を結合すると予測され
る。このMHCクラスII結合レジスターの位置1及び9は、毒素の触媒ドメインのコア
の中に覆い隠され、互いに満たされる。従って、これらの残基は、タンパク質の全体的な
安定性にとって重要であると考えられる。エピトープ3と同様に、コア9量体の他のポケ
ット、例えばp6及びp7(これらは十分に露出されている)と相互作用する残基が、置
換のために考慮される。
【0342】
(e)エピトープ5−ペプチド40、41及び42
有力なT細胞エピトープは、ペプチド40、41及び42(配列番号:170−172
)内にあると思われる。検出されたエピトープ全部について、この領域のエピトープは、
試験集団の15.7%に相当する合計8人の異なるドナーにおいて応答を誘導するその能
力によって示されるように、最も免疫原性である(表3及び図2)。6人のドナーが、ペ
プチド40(ドナー15、36、46、47、49及び50)、ペプチド41(ドナー3
5、36、40、46、49、50)及び42(ドナー35、36、40、47、49及
び50)に応答し、3つのオーバーラップペプチド全部に対する応答がドナー49及び5
0について観察され、一方ドナー30、40、46及び47は、2つのオーバーラップペ
プチドに応答した。iTope(商標)コンピューター解析により、このペプチドについ
ての結合モチーフはフェニルアラニン(F124)をP1アンカー残基として有するFI
KRFGDGA(配列番号:173)であると予測された(図7)。この9量体は、3つ
のオーバーラップペプチド全部に存在しており、32個のMHCクラスII対立遺伝子の
中の23個を結合すると予測された。フェニルアラニン124は、触媒ドメインのコア内
に実質的に覆い隠され且つM115及びV118に対してパックし、従って潜在的に構造
上重要であると考えられる。しかし、アンカーの位置4、6、7及び9は、種々の程度に
露出されており、エピトープを除去するために標的として向けることができる。
【0343】
(f)エピトープ6−ペプチド49
また、ペプチド49(SSSVEYINNWEQAKA;配列番号:174)も、T細
胞エピトープを含有する。図2及び表3は、3人のドナー(ドナー30、39及び49)
がペプチド49による刺激の後に陽性増殖応答を生じたことを示す。iTope(商標)
コンピューター解析を使用すると、このペプチドに最も好ましい結合レジスターは、32
個のMHCクラスII対立遺伝子の中の22個を結合する可能性を有するVEYINNW
EQ(配列番号:175、図8)であると予測された。この結合レジスターは、バリン(
V148)をp1アンカー残基として有していた。ペプチド49とオーバーラップしたペ
プチド48及び50も同じコア9量体を含有していたが、ドナー30、39及び49は、
オーバーラップペプチに応答せず、コア9量体の外側の残基もまたMHCクラスII分子
に対するペプチドの結合に重要であることを実証している。バリン148は部分的に表面
露出され、従って極性置換残基は、親水性部分が表面露出され且つ疎水性領域が覆い隠さ
れるように選択できる。
【0344】
(g)エピトープ7−ペプチド100
エピトープ7は、ペプチド100(LEKTTAALSILPGIG、配列番号:17
7)内に見出された。4人のドナー(ドナー1、15、30及び35)がペプチド100
に応答し、ドナー15の応答はボーダーラインであった。iTope(商標)解析により
、このペプチドのコア9量体結合レジスターは、ロイシン(L298)をp1アンカー残
基として有するLEKTTAALS(配列番号:178)であると予測された(図9)。
この9量体は、32個の可能なMHCクラスII対立遺伝子の中の24個を結合すると予
測された。この9量体もペプチド99内に存在し、ドナー30はこれに対する統計学的に
有意である(p<0.05)閾値下応答(SI=I.84)を開始し、従ってこれらのペ
プチドの結合モチーフとしてLEKTTAALS(配列番号:178)を支持する。ロイ
シン298は、トランスロケーションドメインの表面に十分に露出されており且つこのド
メインの活性に関連づけられない。従って、それは置換について明らかな問題を有してい
ない。従って、残基は、T細胞エピトープを修飾/排除することを目的として容易に置換
できる。
【0345】
[T細胞エピトープ及びアロタイプ応答]
表4は、DT−1配列内に見出される7個のT細胞エピトープの詳細を要約し、図10
は、タンパク質配列内のエピトープの配置を表す。DT−1とIL−2の間の接合部内に
エピトープは検出されなかった。
【0346】
ペプチド40、41及び42中に配置されたT細胞エピトープ(エピトープ5)は、試
験集団の15.7%で応答を誘導した。ペプチド31及び100中に配置されたエピトー
プ(エピトープ2及び7、それぞれ)は、試験集団の7.84%で応答を誘導した(表4
)。ペプチド2内のエピトープ(エピトープ1)、ペプチド35のエピトープ(エピトー
プ3)、ペプチド39内のエピトープ(エピトープ4)及びペプチド49内のエピトープ
(エピトープ6)は、試験集団の5.88%で応答を誘導した。上記エピトープのそれぞ
れに対する陽性応答の大きさ(平均SI)の解析により、全部が2〜2.5の平均SIを
有するこれらの有効性においてかなり等しいと思われることが示された。しかし、エピト
ープ3は、それよりも大きい3.13の平均SIを有していた。
【0347】

表4:T細胞エピトープを含有するペプチドに対する陽性応答の大きさ及び頻度の要約
【0348】
【表4】
【0349】
HLA−DRアロタイプの発現と個々のペプチドに応答するドナーの間の関連も解析し
た。エピトープ2、5及び7(ペプチド31、40−42及び100)を評価した。表4
及び図12は、ANG01試験集団で発現されたアロタイプの頻度と比べた前記ペプチド
のそれぞれに応答するドナーによって発現されるアロタイプの頻度を表す。MHCクラス
IIアロタイプと特定のエピトープへの応答との間の関連は、応答する集団内のアロタイ
プの頻度が2倍を超える観察された頻度(すなわち、試験集団×2における頻度)である
場合に認められた。
【0350】
個々のドナーによって発現されたMHCクラスIIアロタイプに対してEpiScre
en(商標)アッセイで観察された陽性ドナー応答同士の比較は、エピトープ2、5及び
7に応答するドナーが特定のアロタイプと関連することを示した。エピトー5に対するT
細胞応答は、HLA−DRB111、HLA−DRB115及びHLA−DR5の発
現と関連していた。このエピトープに応答し且つ及これらのアロタイプを発現するドナー
の頻度は、それぞれ12%、15%及び15%であった。これらの全部が、ANG01試
験集団内のこれらのアロタイプの頻度(それぞれ5%、7%及び7%であった)の2倍を
超えた。また、前記ペプチドのiTope(商標)解析により、HLA−DR5が予測さ
れたコア9量体を結合することが明らかにされた。エピトープ2及び7の両方に対するT
細胞応答は、HLA−DRB115及びHLA−DRB5に関連していると思われる。
エピトープ2又はエピトープ7に応答し且つHLA−DRB115及びHLA−DRB
5を発現するドナーの頻度は、それぞれの対立遺伝子について20%及び21%であり、
これはANG01試験群におけるそれぞれの対立遺伝子について観察された頻度7%の2
倍を超えていた。これらのペプチドのiTope(商標)解析により、それぞれのペプチ
ドについて予測された結合レジスターはHLA−DR5を結合する可能性を有しているこ
とが明らかにされた。T細胞エピトープの同定の他に、これらの解析は、特定のペプチド
に対するT細胞応答とMHCクラスII対立遺伝子の発現との関連も示す。
【0351】

表5.試験集団内で発現されたアロタイプの頻度と比べた応答ドナーアロタイプの頻度(
%として表す)。MHCクラスIIアロタイプとエピトープに対する応答との関連性を灰
色で強調する。
【0352】
【表5】
【実施例10】
【0353】
[VLSアッセイ]
種々のアッセイを使用して、本明細書に記載のDTバリアントのVLS活性を評価でき
る。
【0354】
一つのアッセイにおいて、DT−IL2又はバリアントは、フルオレセインに複合され
た。標識された細胞の蛍光顕微鏡/手動計数を使用して、VLS活性の代用としてHUV
EC細胞に対する直接結合を評価することができる。
【0355】
生体内試験、形態学的変化、細胞単層透過性又は細胞膜完全性の喪失、及びCD31発
現との相関関係は、本明細書に記載のバリアントを検出できる種々の手段に相当し、VL
S活性を評価するのにも使用できる。
【0356】
(a)抗体を用いた検出
DT特異抗体を使用して、VLSモチーフによって内皮細胞表面に結合されたDTを検
出できる。共通エピトープを、バリアント同士の間の結合の相違を検出するために直接に
標識した。ELISAを使用して、利用できる抗DT抗体の特異性/親和性を確認した。
ここに記載した方法の他に、His標識Abは、DTバリアントを選択できる別の手段を
提供する。
【0357】
図15は、HUVEC細胞に対するDTバリアント(DT−Glu52;CRM突然変
異体)の結合及びFACS分析を使用する抗体による検出を例証する。
【0358】
(b)直接結合
蛍光色素(Alexa488)に対するDT及び毒素突然変異体の直接複合体を使用し
て、本明細書に記載のDTバリアントを評価できる。Alexa色素は、高安定性であり
、明るい。少量タンパク質標識キット(Microscale Protein Lab
elling Kit(Molecular Probes/Invitrogen:A
30006)は、タンパク質(20〜100μg)の微小規模の標識を可能にする。標識
の度合い(DOL)は最適化することができ、色素:タンパク質(D:P)の比は、分光
光度計で測定され、再現可能である。FACSを使用して蛍光を測定する。
【0359】
前記アッセイは、図16に例示するように、HUVEC細胞に結合するONTAK−A
1488及び対照DT−Glu52−A1488の良好な検出を達成した。前記アッセイ
は、図30に例示するように、BSA−A1488の結合と比べて、HUVEC細胞に結
合するONTAK−A1488及び対照DT(ΔR)−A1488の良好な検出を達成し
た。
【0360】
HUVEC細胞を、FACSでIL−2R発現について試験した。HUVEC細胞に結
合するONTAK−A1488は、図17に示すようにIL−Rと無関係であることが確
認された。
【0361】
(c)細胞膜完全性
細胞膜完全性を評価して、毒素に露出後の細胞膜の完全性の喪失を測定できる。VLS
モチーフを包含するペプチドを、Balunaら(PNAS USA,96:3957(
1999))に記載されているような方法を使用して蛍光色素に直接に結合させた。ある
いは、本明細書に記載されているか又は当該技術で知られている他のアッセイを利用でき
る。
【0362】
細胞膜完全性アッセイは、ヨウ化プロピジウム(PI)を使用して行い、毒素に対する
影響を、毒素と短時間インキュベート後の細胞膜の完全性の喪失の代用としてPI取り込
みを測定するためにFACSで評価した(図18)。
【0363】
VLSを誘導する可能性について、HUVEC細胞DT結合アッセイを、Cドメインと
Iドメインのみを含有する切断DT(ΔR)を使用して試験する。DT分子は、HUVE
Cに対する結合の分析のために標識する。この工程は、段階3からのDT(ΔR)の発現
を利用し、従ってHUVECアッセイの生成をDT発現後に開始する。
【0364】
[DT活性/細胞毒性アッセイ]
DT活性の測定に適したアッセイは、すでに確立されている。細胞毒性アッセイを利用
して、DT−IL2T細胞エピトープ及びIVTTアッセイで選択されたVLSバリアン
トリードの毒素活性を確認する。
【0365】
(a)生体外転写/翻訳(IVTT)アッセイ
DT活性を測定するために生体外転写/翻訳(IVTT)アッセイを使用すると、DT
遺伝子の直接的転写/翻訳が、ウサギ網状赤血球溶菌液系を使用して試験された。典型的
には、これは、標的プラスミド(T7−ルシフェラーゼ)のIVTTを測定する化学発光
アッセイによるルシフェラーゼ遺伝子の連結転写/翻訳を含み、活性毒素は、ルシフェラ
ーゼシグナルを抑制し、減少する。滴定曲線によるメディアムスループットスクリーニン
グ(MTS)を可能にするPCR生成物を利用し、全てのバリアントを同じ96ウエルア
ッセイプレートでのWT DTと比較した。代用IC50は、阻害曲線から測定できる。
DTは結合し、伸長因子−2(EF−2)の共有結合修飾を生じることから、これは、活
性DTバリアントについてルシフェラーゼ産生の阻害を生じるであろう。連結転写/翻訳
アッセイを、リボソーム阻害タンパク質の分析に使用して、DTのCドメインの活性に関
する情報を得ることができる。例えば米国特許第5,976,806号及び同第5,69
5,983号明細書(これらのそれぞれは、その全体を参照することにより本明細書に組
み込まれる)に記載されているようなこのような連結転写/翻訳アッセイ反応を実施する
のに有用な種々の方法が、当業者に知られている。
【0366】
本明細書に記載のIVTTアッセイを使用して、WT DR DTが90%に達するT
7−lucプラスミドの転写/翻訳の用量に依存した阻害を実証し、これに対してヌルで
は約20%の阻害で一定値になることが明らかにされた(図14)。
【0367】
(b)発光細胞毒性アッセイ
Toxilight(商標)、Vialight(商標)及びALAMARBLUE(
商標)キットは、細胞毒性を測定するのに使用できる非放射性の市販アッセイである。ア
ッセイは、96ウエルプレートフォーマットで行い、感受性及び耐性T細胞系を使用して
時間と共に毒素(10−7〜10−12M)を滴定する。ヒトT細胞株に対するONTA
KとIL−2の細胞毒性を、Toxilightキットを使用して48時間評価した。1
秒当たりの蛍光カウント(LCPS)は、アデニレートキナーゼ放出の度合いを反映する
図19)。
【0368】
(c)リボシルトランスフェラーゼアッセイ
連結転写/翻訳アッセイの他に、リボシルトランスフェラーゼアッセイ(例えば、実施
例3に記載)が96ウエルフォーマットで確立された。このアッセイは、大腸菌でのDT
遺伝子の発現(段階3)からのDTの試料を使用し、前記の連結転写/翻訳アッセイと同
時に試験する。ADPリボシル化を測定する従来の方法は、二本鎖(ds)活性化因子D
NAオリゴヌクレオチドで処理した透過性細胞を使用し、その後の放射標識NAD+の測
定は、酸不溶性物質に組み込まれる。
【0369】
新たなFACSに基づいた方法、例えばKunzmannら(2006 Immuni
ty & Ageing)に記載された方法も利用できる。
【0370】
DTバリアントの細胞毒性の測定のために、(実施例4に記載されているような)細胞
毒性アッセイが、開発されており、全長DTバリアントの分析用のための96ウエルフォ
ーマットでHUT102−6TG細胞を使用する(HUT102−6TGは、リードDT
−IL−2タンパク質の最終分析(段階6)に使用される細胞株である)。細胞毒性アッ
セイは、全長DTの発現を必要とすることから、このアッセイは、段階3でDT発現の後
に使用される。
【実施例11】
【0371】
遺伝子の合成、発現及び精製
DT及びヒトIL−2遺伝子は、段階3の初めに、大腸菌中で発現させるのに最適化さ
せたコドンを使用して、当該技術において知られている慣用の技法を使用して合成される
。細胞毒性及びHUVEC結合アッセイ(段階2参照)の分析において使用すべき全長D
T及びDT(ΔR)(CドメインとIドメインのみを含有する)を生成させるために、大
腸菌の細胞周辺腔内へのDTの搬出のための分泌リーダー配列を含むベクター系を使用す
る。プラスミド及び大腸菌株は、可溶性生成物を生成させるのに最適化させる。His標
識DT生成物は、Ni−IDAカラムで精製し、スピンカラムは、リードの並行精製を可
能にする。DTの精製方法としては、例えば、DTに融合させた親和性標識(例えば、H
is6標識)による精製が挙げられる。段階3で開発された方法は、以下のバリアントの
活性を段階4及び5でのリード候補を同定することを目的として正確に比較できるような
同様の品質を有する多数のDTバリアントの信頼性のある製造を提供する。
【実施例12】
【0372】
DTのVLSバリアントの設計及び組み立て
VLSを誘導する可能性の低下のためのDTのバリアントを、2回の突然変異、すなわ
ち、1回目のDTの3つの(x)D(y)モチーフそれぞれでの別個の突然変異、及び2
回目のリード突然変異と任意の追加の突然変異の組み合わせで生じさせる。それぞれのD
Tバリアントを、HUVEC結合アッセイ(段階2)で試験し、2回目の突然変異の後に
選択された最適突然変異を、前記プロジェクトの段階5の中間段階のT細胞エピトープ突
然変異と組み合わせる。これらのアッセイのためのDTバリアントの生成は、大腸菌での
先端切断DT(ΔR)の発現によるものである(段階3)。
【実施例13】
【0373】
DTのT細胞エピトープバリアントの設計、組み立て及び試験
免疫原性を低下させるためにT細胞エピトープを排除するためのDTのバリアントを、
CドメインとIドメインでの2回の置換によって生成させる。1回目のバリアントは、単
一のエピトープ遺伝子座に別個の置換を含み、次いでこれらを2回目のバリアント中で組
み合わせて、2つ、3つ又はそれ以上のバリアント遺伝子座の組み合わせを生成させる(
T細胞エピトープの数及び優先順位に依存する)。2回目のバリアントは、段階4からの
VLSバリアントとの組み合わせを含む。VLS突然変異体をT細胞エピトープ置換と組
み合わせる追加の工程により、リードDTバリアントのさらなる最適化が必要とされる場
合には、任意の3回目のDTバリアントが含有される。
【0374】
DTのT細胞エピトープ遺伝子座での置換は、(主として)T細胞エピトープ由来のコ
アMHC結合9量体内のアミノ酸を、別のタンパク質、特にDT関連タンパク質の相同遺
伝子座で生じるアミノ酸で置換し、同様の三次構造を有する他のタンパク質からの配列セ
グメントを使用することによって生成される。ペプチドMHCクラスII結合予測コンピ
ューターソフトウエアiTope(商標)(Antitope,Ltd.)による解析は
、T細胞エピトープの排除のための選択された置換に対する指針として使用される。DT
結晶構造の構造解析もまた、DTの活性を低下させるか又はDT構造の安定性を低下させ
ると最も思われない突然変異に対する指針として使用される。ある場合には、このような
構造解析は、活性又は安定性を失うことなくT細胞エピトープ内のある置換に適合できる
T細胞エピトープ遺伝子座の外の代償的な置換を示唆し得る。
【0375】
DTのT細胞エピトープバリアントは、主として、Cドメイン内の置換の分析のための
ウサギ網状赤血球アッセイ(段階2)並びにC及びIドメイン内の置換の分析のための細
胞毒性アッセイ(段階2)を使用して試験する。これらのアッセイのためのDTバリアン
トの発現は、大腸菌での全長DTの転写/翻訳及び発現それぞれ(段階3)を使用する。
2回目(及び任意の3回目)の置換由来のリードについて、リボシルトランスフェラーゼ
及びHUVEC結合アッセイもリード候補を同定するために使用される。
【0376】
26個のエピトープバリアントが、設計され、組み立てられている(図21)。26個
のうち10個(10/26)のバリアントが、本明細書に記載のようにしてIVTTアッ
セイで試験されている。T細胞エピトープは、相対強度に基づいて優先順位付けされてい
る(図22)。図23は、7個のエピトープの突然変異体について代表的な結果を表し、
突然変異体が野生型活性を保持するそれぞれのエピトープについて得られていることを実
証する。
DTエピトープバリアントはタンパク質合成を阻害する
DT382構造体が使用され、DTの配列番号:2又は149のアミノ酸残基1−38
2及びIL2を含有していた。制限酵素部位が、Rドメイン又はIL2部分のいずれかで
のクローニングのためにアミノ酸残基382で操作された。修飾は、以下に記載のように
して組み込まれる。
【0377】
T細胞エピトープ1、3及び5が、推定されるMHCクラスII結合p1アンカー残基
で修飾されているDT382遺伝子のバリアントを、生成させた。野生型DT配列の残基
V7、L107及びF124を、活性を保持しながらT細胞エピトープを除去すると予測
されたアミノ酸(MHCクラスII結合の崩壊によって)に置換した(個々の置換は、単
一のエピトープバリアントにおいて活性であると同定された)。単一の及び組み合わせた
バリアントの活性を、生体外転写/翻訳アッセイで測定した。それぞれのバリアントの精
製PCR産物を、ウサギ網状赤血球溶菌液、TnT緩衝液、T7RNAポリメラーゼ、ア
ミノ酸混合物−Met、アミノ酸混合物−Leu及びRNasin(#N2511 Pr
omega,Madison WI)を含有するTnT連結転写/翻訳反応混合物(#L
4610 Promega,Madison WI、製造業者の取扱い説明書に従う)に
、10.5μlの全容量で反応当たりにつき1ng〜64ngのDNA範囲を使用して滴
定した。反応物を、30℃で30分間インキュベートして、種々のバリアントの間のDT
遺伝子翻訳の速度の可能な相違を可能にさせた。次いで、250ngのT7−ルシフェラ
ーゼ対照プラスミドを加え、反応物を30℃でさらに45分間インキュベートした。ルシ
フェラーゼの発現を、製造業者の取扱説明書(#E2510 Promega,Madi
son WI)に従って、反応物をSteadyGloルシフェラーゼアッセイ試薬と共
にインキュベートした後に、蛍光によって測定した。発光読み取りを、BMG FLUO
star OPTIMA蛍光プレートリーダー(BMG Labtech、Durham
、NC)を使用して測定した。
【0378】
28個のVLS突然変異体が設計され、組み立てられている。28個のうちの18個(
18/28)のVLS突然変異体がIVTTアッセイで試験されている。公知のVLSバ
リアントは、野生型(WT)に匹敵するか又はそれよりも大きい活性を有することが明ら
かにされ、野生型(WT)に匹敵するか又はそれよりも大きい活性を実証する多数の代替
VLSバリアントが同定されている(図20)。
【0379】
タンパク質合成の%阻害を、反応物中のDNA濃度に対してプロットし、得られる曲線
を使用して、それぞれのバリアントについてIC50を算出した。IC50を、アッセイ
内変動を見込むために、=1の値が、野生型に匹敵する活性を表し、>1の値が、DT活
性の上昇を表し及び<1の値が、DT活性の低下を表すように、野生型DT(どのアッセ
イプレートにも含まれる)のIC50をDTバリアントのIC50で除算することによっ
て標準化した。
【0380】
表6:野生型及びヌルDTバリアントと比較した修飾DTバリアントのIC50データ
。単一バリアントのデータを図27に線グラフとして示し、4重バリアントを図29に棒
グラフトして示す。
【0381】
【表6】
【0382】
4重バリアントV7D V97A L107N F124H、V7D V97T L1
07N F124H、V7N V97A L107N F124H及びV7N V97T
L107N F124Hは、WTと比べて同等のIC50活性を示した。
【0383】
4重バリアントV7D V97D L107N F124H、V7N V97D L1
07N F124H、V7T V97A L107N F124H、V7T V97D
L107N F124H及びV7T V97T L107N F124Hは、WTと比べ
て向上したIC50活性を示した。
【0384】
表7:WTと比較したVLS及び/又はT細胞エピトープバリアントの相対IVTTス
コア。相対IVTTスコアは、野生型DTのIC50を突然変異体DTのIC50で除算
することによって決定される。
【0385】
【表7】
【0386】
図24は、タンパク質合成の阻害において野生型DT382と比べたDT382エピト
ープバリアントの相対活性を表す。データは、DTの次のT細胞エピトープバリアント:
V7N L107N F124H、V7N L107A F124H、V7D L107
N F124H、V7D L107A F124H、V7T L107N F124H及
びV7T L107A F124H及びV7T V29T I290Tの全部が、タンパ
ク質合成の阻害において野生型DT382と同様の活性を示す。これに対して、G53E
置換は、活性の低下をもたらす。本明細書に記載のように、G52修飾に対する言及は、
N末端メチオニンを含んでいない配列番号:1のDT分子のアミノ酸残基番号付与を指す
【実施例14】
【0387】
DTVLSバリアントはタンパク質合成を阻害する
認識されたx(D)yモチーフが破壊されるように、VLSモチーフが突然変異するD
T382遺伝子のバリアントを生成させた。単一及び多重遺伝子座でのバリアントの活性
を、PCR産物を使用する生体外転写/翻訳アッセイでの活性について評価した(実施例
1に記載のように)。
【0388】
図25は、タンパク質合成の阻害において野生型DT382と比べたDT382のVL
Sバリアントの相対活性を表す。データは、次のVLSバリアント:V7N V29N
I290N、V7N V29N I290T、V7N V29N S292A、V7N
V29N S292T、V7N V29T I290N、V7N V29T I290T
、V7N V29T S292A及びV7N V29T S292Tの全部がタンパク質
合成の阻害において野生型DT382と同等の活性を示すことを示す。
【実施例15】
【0389】
HUVECに対するVLSバリアントの結合
ヒト血管内皮細胞(HUVEC)を、EBM(CC−3124 Lonza,Base
l,Switzerland)に保持した。使用前に、細胞を、酵素無含有解離用緩衝液
(C5914 Sigma,Poole,UK)を使用してプラスチック培養基板から分
離し、1%BSAと0.05%NaNとを含有するリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁した
。次いで、細胞を、5%正常ヒト血清を含有する上記と同じ緩衝液中で20分間インキュ
ベートし、その後にAlexa488蛍光色素(A30006 Invitrogen、
Carlsbad CA)に複合されている精製DT382タンパク質又はDT382
VLSバリアントの滴定液を、製造業者の取扱い説明書に従って加えた。細胞を、前記標
識タンパク質と共に30分間インキュベートし、その後に洗浄し、PBS+1%BSA+
0.05%NaN緩衝液に再懸濁した。標識DT−389−IL2融合物を、陽性対照
として使用し、標識BSAを陰性対照として使用した。次いで、細胞をFACSCali
burフローサイトメーター(Becton Dickinson、Franklin
Lakes、NJ)で分析し、細胞集団の蛍光染色を測定した。次いで、バックグラウン
ドを超える染色を示した細胞%を、使用した標識タンパク質の濃度に対してプロットした
【0390】
図26は、HUVEC細胞に対する標識DT382 VLSバリアントの結合を表す。
標識DT389−IL2融合物(ONTAK(登録商標))を陽性対照として使用し、標
識BSAを陰性対照として使用した。データは、精製Alexa488標識DT382及
びDT389−IL2(陽性対照)が、HUVECに同様のレベルで結合することを示す
。これに対して、VLSバリアント、V7N V29T S292A(示した)、V7N
V29T I290N(示した)及びV7N V29N I290N(示されていない
)の結合は、HUVECに対して、DT382又はDT389−IL2と比べて低下した
レベルの結合を示す。
【実施例16】
【0391】
DT由来のペプチドの配列を、AntitopeのiTope(商標)ソフトウエアを
使用して解析し、可能なMHCクラスII結合ペプチドを予測した。iTope(商標)
ソフトウエアは、生体外MHCクラスII結合試験からのデータを、生体外T細胞アッセ
イによってT細胞エピトープであると実証されているペプチドの大きなデータベースのア
ラインメントと組み合わせて、スコアリングマトリックスにする。オーバーラップ13量
体ペプチドを、全DT配列についてアミノ酸1個の増分でiTope(商標)を使用して
選別した。スコアリングマトリックスから誘導されるような重要なポケット位置でペプチ
ド内のそれぞれのアミノ酸の分布を集計することによって、結合スコアを得た。可能なT
細胞エピトープを含有するペプチド(9量体)を同定した(下線を付した配列)。この場
合に、平均結合スコアは、>0.6(試験した32MHCクラスII対立遺伝子について
)の場合及び>15個のMHCクラスII対立遺伝子の場合には、結合すると予測された
図28)。それぞれの9量体のp1アンカー配置をボールド体で強調し、可能な結合ペ
プチドの完全なリストを、表8に要約する。比較のために、生体外T細胞アッセイを使用
して同定されたT細胞エピトープを、囲みで示す。
【0392】
表8.iTope(商標)MHCクラスII結合ソフトウエアを使用してT細胞エピト
ープを含有すると予測された9量体配列のリスト
【0393】
【表8】
【実施例17】
【0394】
バリアントDT−IL2組み立て及び発現
段階6において、1個又はそれ以上のリードDT−IL2バリアントが、段階5からの
リードDTバリアントと、段階3からのヒトIL2(2−133)遺伝子との融合によっ
て生成される。大腸菌での野生型及びリードDT−IL2バリアントの発現は、例えば、
封入体中のタンパク質凝集体の貯留及び再生を含むDT−IL2の従来の方法に従う。次
いで、野生型及び1個又はそれ以上のリードDT−IL2バリアントを、段階2に記載の
ようにして、細胞毒性及びVLS−関連アッセイで試験する。
【実施例18】
【0395】
EpiScreen(商標)を使用するリードDTバリアントの免疫原性試験
段階5からのリードDT(ΔR)バリアントを精製し、EpiScreen(商標)経
時T細胞アッセイを使用して野生型DT(ΔR)と比較する。HLAアロタイプの発現に
社会集団を代表する多数の健康なドナーが、前記のドナーライブラリーから選択される。
ドナーを、2〜4×10 CD8+T細胞欠乏PBMCを含有する別個のバルク培養物
中のそれぞれのタンパク質を用いて刺激する。重複試料(Tブラストの試料)を5〜8日
目にバルク培養物から取り出し、及び増殖をIL−2分泌(ELISPOT)と共に評価
する。野生型とDT(ΔR)バリアントの間の評価をさらに確証するために、試験集団に
、段階1の間に行ったEpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピング試験から
の応答ドナー(提供された十分な数のCD8T細胞欠乏PBMCが残る)を補充した。
【0396】
リードDT(ΔR)バリアントにおける免疫原性の喪失を確認することを目的として、
EpiScreen(商標)経時T細胞アッセイによるT細胞免疫原性の解析を、以下の
通りに行う。
【0397】
(i)健康なドナー由来の軟膜(社会集団について>80%DRB1アロタイプ範囲を
有する)を使用して、生理学的レベルのAPC及びCD4T細胞を含有するPBMCを
単離する;
(ii)各ドナーを、陽性対照抗原、例えばキーホール・リンペット・ヘモシアニン(
可能な新抗原)又は破傷風トキソイド(想起抗原)に対して試験する;
(iii)MHCクラスI制限T細胞応答の検出を除外するために、CD8T細胞を
欠乏させる;
(iv)リードDT(ΔR)バリアント及び野生型DT(ΔR)を、互いに対して比較
して、T細胞CD4T細胞を活性化する相対能力を評価する;
(v)データを、統計学的及び頻度分析を含む追加の情報によって裏付けられたSI>
2の陽性応答を有する先に実証したアッセイパラメーターを使用して解析する;
(vi)EpiScreen(商標)経時T細胞アッセイからのデータは、個々のDT
分子に対するT細胞の応答の大きさ及び反応速度論に関する情報を提供する;
(vii)陽性応答を生じるドナーからの残存PBMCが、保存され、反復試験研究で
使用するために利用できる;及び
(viii)ドナーアロタイプ並びにDT(ΔR)に対する応答及びバリアントDT(
ΔR)リードに対する応答の関連性について評価を行う。
【実施例19】
【0398】
DTバリアント−IL2融合タンパク質のアジュバント効果
臨床試験デザイン及び患者適格性
患者の治療は、治験審査委員会(Institutional Review Boa
rd)及び米国食品医薬品局によって承認されたプロトコールの一部として書面によるイ
ンフォームドコンセントに従って行われる。組織学的に確認された転移性RCCを有する
患者が、試験に適任である。全患者は、適切な肝臓、腎臓及び神経機能、6ヶ月を超える
寿命及び70%以上のカルノフスキーパフォーマンス状況を有することを要求される。患
者は、任意の以前の治療に関連したあらゆる毒性から正常な状態に戻っていなければなら
ず、しかも試験に入る前の少なくとも6週間は任意の化学療法、放射線療法又は免疫療法
を受けていてはならない。CNS転移を有する患者、自己免疫疾患の履歴を有する患者及
び重篤な併発性の慢性又は急性疾患を有する患者は、この試験から除外される。免疫抑制
剤を受けている患者も除外される。適格対象は、DTバリアント−IL2融合タンパク質
(18μg/kg)の単回投与、次いで腫瘍RNA移入DCによる免疫処置を受けるか又
はDTバリアント−IL2融合タンパク質単独を受ける同じ確率で無作為に選ばれる。全
ての被検体は、腫瘍RNA移入DCの皮内注射を3回受ける。この注射は、2週間の間隔
で皮内投与され及びそれぞれの注射で200μlの0.9%塩化ナトリウムに懸濁された
1×10細胞からなる。処置後に、被検体は、臨床毒性並びに免疫応答及び臨床応答に
ついて評価される。調節制限及びある被検体においては腫瘍組織に対する制限されたアク
セスにより、腫瘍生検は行われない。
【0399】
DTバリアント−IL2融合タンパク質及び組成物の調製
DTバリアント−IL2融合タンパク質を、2mlの1回使用バイアル中のクエン酸緩
衝液に150μg/mlの濃度で配合された凍結滅菌溶液として提供する。解凍後に、D
Tバリアント−IL2融合タンパク質を、滅菌標準食塩水で最終濃度15μg/mlに希
釈し、30分間にわたる静脈内注入によって送達させる。患者は、注入の30〜60分前
にアセトアミノフェン(600mg)及び抗ヒスタミン剤を受けることを許される。DC
培養のために、濃縮白血球画分を、白血球分離により収集する。PBMCを、白血球分離
生成物から密度勾配遠心分離で単離する(Histopaque;Sigma−Aldr
ich)。半接着性細胞画分を、組換えヒトIL−4(500U/ml;R&D Sys
tems)及び組換えヒトGM−CSF(rhGM−CSF、800U/ml;Immu
nex Corp.)を補足した血清無含有X−VIVO15培地(Cambrex C
orp.)中でのDC培養に使用する。7日後に、未成熟DCを、収集し、これに明細胞
癌として組織学的に分類される腫瘍組織から抽出した全RNAを移入する。免疫学的モニ
タリング研究に使用される対照RNAを、自己良性腎臓組織(RE)又はPBMCから単
離する。未成熟DCの移入は、電気穿孔によって行う。DCを、PBS中で洗浄し、Vi
aSpan(Barr Laboratories)中に4×10細胞/mlの濃度で
再懸濁する。次いで、細胞を、1×10細胞当たり5μgのRNAと共に5分間同時イ
ンキュベートし、0.4cmキュベット中で300V及び150μFでの指数関数的減衰
送達によって電気穿孔する(Gene Pulser II;Bio−Rad)。電気穿
孔後に、細胞を、X−VIVO15培地に再懸濁し、10ng/mlのTNF−α、10
ng/mlのIL−1β、150ng/mlのIL−6(R&D Systems)及び
1μg/mlのプロスタグランジンE(PGE;Cayman Chemical
Co.)の存在下で、20時間で成熟させる。投与の前に、完全成熟DC:Linneg
、HLAクラスI及びIIhigh、CD86high及びCD83highの典型的な
表現型を満たしていることを確実にするために、細胞を特性決定する。
【0400】
免疫状態の評価
IFN−γ及びIL−4ELISPOTの分析を、免疫処置の前、間及び後に得られた
PBMCを使用して行う。PBMCを、完全RPMI 1640培地中で一夜培養する。
PBMCから、CD4+T細胞及びCD8+T細胞を、ネガティブデプレション(neg
ative depletion)によって単離する(Miltenyi Biotec
)。ブロッキング後に、1×10T細胞及び1×10RNA移入DCを、2μg/m
lのIFN−γ捕捉抗体(Pierce Biotechonology Inc.)又
はIL−4捕捉抗体(BD Biosciences Pharmingen)で予め被
覆された96ウエルニトロセルロースプレート(Multiscreen−IP、Mil
hpore)のそれぞれのウエルに加える。プレートを、37℃で20時間インキュベー
トし、それぞれのウエルに、ビオチン化IFN−γ検出抗体(Pierce Biote
chonology Inc.)又はビオチン化IL−4抗体(BD Bioscien
ces Pharmingen)を加える。次いで、細胞を、室温でさらに2時間インキ
ュベートし、次いでストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(1μg/ml、Si
gma−Aldrich)を加え、プレートを、基質(KPL)と共に展開した。洗浄後
に、スポットを、自動ELISPOTリーダー(Zeiss)を使用して計数した。
【0401】
CTLアッセイを、RNA移入DCを自己PBMCと共に同時培養することによって行
う。細胞を、一回再刺激し、IL−2(20単位/ml)を、5日後に加え、その後に隔
日で加える。培養の12日後に、エフェクター細胞を収集する。標的細胞を、100μC
iのNa[51CrO](PerkinElmer)を用いて、200μlの完全R
PMI 1640中で、5%CO中37℃で1時間標識し、51Cr標識標的細胞を、
完全RPMI 1640培地で、エフェクター細胞と共に37℃で5時間インキュベート
する。次いで、50μlの上清を収集し、シンチレーションカウンターで51Crの放出
を測定する。
【0402】
増殖アッセイのために、精製CD3+T細胞を、丸底マイクロプレートに、mRNA移
入DCの存在下で接種する。T細胞単独を、バックグラウンド対照として使用する。4日
後に、各ウエルに、1μCiの[メチル−H]チミジン(PerkinElmer)を
さらに16時間加える。チミジンの取り込みを、液体シンチレーションカウンターを使用
して測定する。
【0403】
DTバリアント−IL2融合タンパク質の細胞毒性を、MTTアッセイで測定する。細
胞を、種々のDTバリアント−IL2融合タンパク質と共に6時間インキュベーションし
た後に、96ウエルプレートに5×10細胞/ウエルの密度で接種する。48時間のイ
ンキュベーションの後に、5mg/ml貯蔵物から20μlのMTTを加える。4時間後
に、100μlイソプロパノール/0.1M塩酸を加えることによってホルマザン結晶を
溶解する。ホルマザン生成物の吸光度を、ELISAプレートリーダーで、570nmで
測定する。
【0404】
ワクチン誘導CD4+T細胞によるサイトカイン分泌を、ヒトTh−1/Th−2サイ
トカインキット(Cytokine Bead Array、BD Bioscienc
es Pharmingen)を使用して製造業者の取扱い説明書に従って測定する。単
離したCD4+T細胞を、RNA移入DCを10:1の比率で用いて、一夜再刺激する。
【0405】
4色FACS分析を、以下の抗体:抗CD4 FITC、抗CD45RO、抗CD45
RA(CALTAG Laboratories)、抗CD25 PE(BD Bios
ciences Pharmingen)及び抗GITR(R&D Systems)及
びイソタイプ対照(CALTAG Laboratories)を使用して行う。CD4
+/CD25neg、CD4+/CD25int及びCD4+/CD25highT細胞
の選別を、抗体標識後に、BD FACSAria細胞分別機を使用して行う。FoxP
3の細胞内検出のために、細胞を、30μg/mlのジギトニンを用いて4℃で45分間
透過処理する。その後に、細胞を、抗FoxP3抗体(Abcam)及びR−フィコエリ
トリン抗ヤギIgGを用いて10μg/mlのジギトニンの存在下で、4℃で30分間染
色する。染色後に、細胞を固定し、FACSで分析する。細胞内CTLA−4検出のため
に、T細胞を透過処理し、固定し、ビオチン化抗CD152(BD Bioscienc
es Pharmingen)、次いでAPC−ストレプトアビジン(BD Biosc
iences Pharmingen)で染色する。合計1×10細胞を、染色緩衝液
(1%PCS、2mM EDTA及び0.1%アジ化ナトリウムを有するPBS)で懸濁
し、抗体と共に4℃で20分間インキュベートする。
【0406】
DTバリアント−抗IL2融合タンパク質投与の前に及び投与の4日後に、試験被検体
のPBMCから単離したTregの抑制活性を、すでに記載されているようにして分析す
る(Tsaknanriis et al.,2003.J.Neurosci.Res
.,74:296−308)。CD4+/CD25+T細胞を、試験被検体のPBMCか
ら、磁気ビーズ分離法を使用して単離する。細胞を、PBSで洗浄し、完全RPMI 1
640培地に再懸濁し、抗CD3/CD28抗体(0.4μg/ウエル)(CALTAG
Laboratories)で予め被覆しておいた96ウエル丸底プレートに入れる。
CD4+/CD25−細胞を、2.0×10/ウエル単独で塗布するか又はCD4+/
CD25+細胞と組み合わせて、三重反復ウエルに、1:2(CD4+/CD25:CD
4+CD25+)の比率で塗布する。5日目に、1μCiのH−チミジンを、最終16
時間の培養のために加える。次いで、細胞をガラス繊維フィルターで収集し、放射標識チ
ミジンの取り込みについて評価する。
【0407】
β−アクチン転写物のリアルタイムPCR型定量の詳細は、文献にすでに記載されてい
る。FoxP3 mRNA転写物を、Hs00203958ml Taq−Man遺伝子
発現アッセイ(Applied Biosystems)を使用して、製造業者によって
提供されるプロトコールに従って定量する。全長FoxP3挿入片を含有するプラスミド
を使用して、標準曲線を作成する。
【0408】
処理の前及び後にT細胞分析を、免疫療法を完了した患者全員について、IFN−γE
LISPOTで行う。免疫処置後の抗原特異的CD4+T細胞及びCD8+T細胞の増加
を、T細胞応答の変化率の治療の前後で同等であるという帰無仮説を分析するウィルコク
ソンのマッチドペア符号順位検定を使用して比較する。0.05よりも小さい2−sid
ed P値を統計学的に有意であるとみなす。
【0409】
本発明は、本発明の精神又はその本質的特徴から逸脱することなく別の形で具体化され
てもよいし又は別の方法で実施されてもよい。従って、本明細書の開示は、全ての態様に
おいて、例証されており、限定されないとみなされるべきであり、及び均等の意味及び範
囲に入る全ての変化がその中に包含されると意図される。
【0410】
種々の参考文献が本明細書全体を通じて引用され、そのそれぞれは、その全体を参照す
ることにより本明細書に組み込まれる。
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]