(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フッ素化触媒が、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、及びハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ素化クロムハロゲン化物、フッ素化クロム酸化物、SbCl5、SbCl3、SbF5、SnCl4、TaCl5、TiCl4、NbCl5、MoCl6、FeCl3、CrF3、Cr2O3、SbCl5のフッ素化種、SbCl3のフッ素化種、SnCl4のフッ素化種、TaCl5のフッ素化種、TiCl4のフッ素化種、NbCl5のフッ素化種、MoCl6のフッ素化種、FeCl3のフッ素化種、Cr2O3のフッ素化種、又はこれらの組合せからなる群から選択される液相触媒である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]本発明においては、これらの必要性のそれぞれに対処している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本発明は、概して、そのプロセス中間体である2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの生成を向上させることによる、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する改良された方法に関する。より具体的には、本発明は、実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、フッ素化触媒の存在下で、連続的又は断続的な触媒の再生の必要なしに、フッ化水素と反応させることによって、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを製造する方法を提供する。
【0008】
[0008]2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン中間体供給材料が、過小フッ素化中間体、及び2,3−ジクロロ−3,3−トリフルオロプロペンのような有機不純物を含むことは通常的である。より具体的には、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCC−1230xa)及び/又は1,1,1,2,3−テトラクロロプロパン(HCC−240db)のフッ素化によって2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを生成
させる反応においては、この反応が完全に進行して2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを形成することは通常はない。別の反応方法を用いると、2,3−ジクロロ−3,3−トリフルオロプロペンが中間体として生成する。本発明者らは、この不純物の存在によって、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンへの転化中に触媒が徐々に失活することを見出した。かかる劣化に対抗するために、塩素又は他の同様の酸化剤を加えて触媒を活性に保持することができる。而して、これは所望の生成物である2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造に関連するコストを増加させる。
【0009】
[0009]しかしながら、驚くべきことに、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが有機基準で十分に高い純度のものである限りにおいては、塩素の添加は必要ないことが見出された。これは、酸化剤のコスト、酸化剤を加えるために必要な全ての装置、未反応の酸化剤を分離するコスト、及び酸化剤によって生成する不要な副生成物を処分するコストが排除される利益を有する。結局のところ、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造に関連するコストも向上する。
【0010】
[0010]したがって、1つの非限定的な態様においては、本発明は、実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、酸化剤の不存在下でフッ化水素及びフッ素化触媒と反応させることによって2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを製造する方法に関する。実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、少なくとも99%の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの組成物を含み、或いは本明細書において他に定義する通りである。これはまた、無機物質、例えばフッ化水素、塩化水素等を任意の量で含んでもいてよく、これらは場合によって反応共供給流として用いることができる。
【0011】
[0011]2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造するための出発材料には、公知である任意の材料を含ませることができる。上記で規定したように、かかる出発材料には、例えば、1,1,2,3−テトラクロロプロペン及び/又は1,1,1,2,3−テトラクロロプロパンを含ませることができ、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは一方又は両方の反応物質をフッ素化することによって製造される。得られる中間体流は、生成物である2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、及び2,3−ジクロロ−3,3−トリフルオロプロペンのような1種類以上の不純物を含む。次に、蒸留のような公知の分離技術を用いて化合物を分離することによって、有機基準で実質的に純粋な量の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを中間体流から得る。
【0012】
[0012]この方法は、液相又は蒸気相中で、連続的又はバッチ式に行うことができる。反応へ供給するフッ化水素と実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとの非限定的であるが好ましいモル比は、少なくとも1:1〜約50:1の範囲である。反応は、約30℃〜約200℃の温度、及び約5psia〜約200psiaの圧力で行うことができる。
【0013】
[0013]フッ素化触媒は、金属ハロゲン化物、ハロゲン化金属酸化物、中性金属、金属合金、バルク又は担持形態の活性炭、或いはこれらの組合せから選択することができる。一態様においては、フッ素化触媒は、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、及びハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ素化クロムハロゲン化物、フッ素化クロム酸化物、SbCl
5、SbCl
3、SbF
5、SnCl
4、TaCl
5、TiCl
4、NbCl
5、MoCl
6、FeCl
3、CrF
3、Cr
2O
3、SbCl
5のフッ素化種、SbCl
3のフッ素化種、SnCl
4のフッ素化種、TaCl
5のフッ素化種、TiCl
4のフッ素化種、NbCl
5のフッ素化種、MoCl
6のフッ素化種、FeCl
3のフッ素化種、Cr
2O
3のフッ素化種、
又はこれらの組合せから選択される液相触媒である。他の態様においては、フッ素化触媒は、Cr
2O
3、Cr
2O
3/Al
2O
3、Cr
2O
3/AlF
3、Cr
2O
3/炭素、CoCl
2/Cr
2O
3/Al
2O
3、NiCl
2/Cr
2O
3/Al
2O
3、CoCl
2/AlF
3、NiCl
2/AlF
3、又はこれらの組合せから選択される蒸気相触媒である。
【0014】
[0014]他の態様においては、本発明は、まず、有機基準で実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、酸化剤の不存在下でフッ化水素及びフッ素化触媒と反応させて2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを生成させ、次に2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させるのに有効な条件下で2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを脱ハロゲン化水素化することによって、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法に関する。
【0015】
[0015]有機基準で実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、少なくとも99%の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含み、又は本明細書において他に定義する通りである。これはまた、任意の量の無機物質、例えばフッ化水素、塩化水素等を含んでいてもよく、これらは場合によって反応共供給流として用いることができる。
【0016】
[0016]2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造するための出発材料にはまた、公知である任意の他の材料を含ませることもできる。例えば、かかる出発材料には、1,1,2,3−テトラクロロプロペン及び/又は1,1,1,2,3−テトラクロロプロパンを含ませることができ、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは一方又は両方の反応物質をフッ素化することによって製造される。得られる中間体流は、生成物である2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、及び2,3−ジクロロ−3,3−トリフルオロプロペンのような1種類以上の不純物を含む。次に、蒸留のような公知の分離技術を用いて化合物を分離することによって、実質的に純粋な量の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを中間体流から得る。
【0017】
[0017]更なる態様においては、本発明は、1,1,2,3−テトラクロロプロペン及び/又は1,1,1,2,3−テトラクロロプロパンをフッ素化して、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン及び1種類以上の不純物を含む中間体流を生成させることによって2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法に関する。次に、中間体流から2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを分離して、有機基準で実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの組成物を形成し、これを酸化剤の不存在下でフッ化水素及びフッ素化触媒と反応させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを生成させる。この生成物を、次に、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させるのに有効な条件下で脱ハロゲン化水素化する。
【0018】
[0018]更なる態様及び有利性は、本明細書に与える開示事項に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0020]本発明は、概して、不飽和材料のフッ化水素化中の触媒の寿命を延ばし、連続的
又は断続的な触媒の再生の必要性を減少する方法に関する。特に、本発明は、反応中間体である2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)の生成を向上させることによる2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFC−1234yf)を製造する改良された方法に関する。具体的には、まず有機反応物質である2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)を精製することによって生成が向上する。次に、この物質をフッ素化触媒の存在下でフッ化水素と反応させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244b)を形成する。
【0021】
[0021]米国特許出願2010/0036179(その内容は参照として本明細書中に包含する)に示されているように、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)を製造する1つの方法は、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)を、フッ素化触媒の存在下でフッ化水素と反応させることが必要である。フッ化物は、HCFO−1233xf出発試薬中の二重結合を横切って付加され、最終的にハロアルカン中間体を生成させる。次に、HCFC−244bbを、米国出願20070007488、20070197842、及び20090240090(これらの明細書は参照として本明細書中に包含する)に記載されているように当該技術において周知である2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の製造における出発試薬として用いる。
【0022】
[0022]HCFO−1233xfの製造方法においては、前駆体試薬をフッ化水素でフッ素化する。これは、例えば、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCC−1230xa)及び/又は1,1,1,2,3−テトラクロロプロパン(HCC−240db)をHFで気相又は液相接触フッ素化してHCFO−1233xfを得ることによって行うことができる。かかる前駆体の反応生成物は、HCFO−1233xf、未反応のHF、HCl、及び他の副生成物を含む。
【0023】
[0023]1つの種類の副生成物は、過小フッ素化中間体及び有機不純物(例えば、2,3−ジクロロ−3,3−トリフルオロプロペン及び構造的に関連する化合物)(これらは反応が完了まで進行しないために生成する)を含む。理論に縛られることは意図しないが、HCFO−1233xf共供給流内にかかる有機不純物が存在すると、HCFC−244bbへの転化中に触媒の劣化が引き起こされると考えられる。かかる劣化に対抗するために、塩素又は同様の酸化剤を共供給流として連続的又はバッチ的に加えて触媒を活性に保持する。しかしながら、驚くべきことに、HCFO−1233xfが十分に高い有機純度のものである、即ち他の有機不純物が供給流から排除されている限りにおいては、この添加は必要ないことが見出された。これは、酸化剤のコスト、酸化剤を加えるために必要な全ての装置、未反応の酸化剤を分離するコスト、及び酸化剤によって生成する不要な副生成物を処分するコストが排除される利益を有する。
【0024】
[0024]本明細書において用いる有機基準で「十分な純度」又は「十分に高い純度」又は「高い純度」とは、HCFC−244bbへの転化中に触媒活性を劣化させない精製HCFO−1233xfの任意の量を指す。一態様においては、HCFO−1233xfは組成物の有機部分の99%超を構成する。この供給流にはまた、無機物質、例えばフッ化水素、塩化水素等を任意の量又は重量%で含ませることもでき、これらは場合によって反応共供給流として用いることができる。
【0025】
[0025]HCFO−1233xfは当該技術において公知の任意の方法を用いて製造することができる。例えば、無水HFを反応器に供給しながら、反応器をフッ素化反応温度に予備加熱する。1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCC−1230xa)及び/又は1,1,1,2,3−テトラクロロプロパン(HCC−240db)を、出発試薬と
して、任意の好都合な温度及び圧力においてフッ化水素と共に反応器に供給する。好ましい非限定的な態様においては、HCC−1230xa又はHCC−240dbとHFのいずれか又は両方を、反応器に導入する前に、予備気化するか又は約30℃〜約300℃の温度に予備加熱する。他の態様においては、HCC−1230xa又はHCC−240dbとHFを反応器内で気化する。いずれの場合においても、次にHFとHCC−1230xa又はHCC−240dbの供給流を所望のモル比に調節する。HFとHCC−1230xa又はHCC−240dbとのモル比は、好ましくは約3:1〜約100:1;より好ましくは約4:1〜約50:1;最も好ましくは約5:1〜約20:1;の範囲である。
【0026】
[0026]蒸気相フッ素化反応は、約80℃〜約400℃;より好ましくは約100℃〜約350℃;最も好ましくは約200℃〜約330℃;の範囲の好ましい温度で行う。反応器圧力は重要ではなく、大気圧以上、大気圧、又は真空下であってよい。真空圧は、約5torr(0.0966psig)〜約760torr(14.69psig)であってよい。蒸気相フッ素化反応中は、HCC−1230xa又はHCC−240dbとHFを、フッ素化触媒の存在下において蒸気相中で反応させる。反応物質の蒸気を、フッ素化触媒と、約1〜120秒間、又はより好ましくは約1〜20秒間接触させる。本発明の目的のためには、「接触時間」とは、触媒床が100%空隙であると仮定した場合に気体状反応物質が触媒床を通過するのに必要な時間である。
【0027】
[0027]好ましい態様においては、プロセス流は触媒の床を通って下降方向である。それぞれの使用の前に、触媒は好ましくは、乾燥、予備処理、及び活性化する。また、長時間の使用の後に、反応器内に配置している状態で触媒を定期的に再生することが有利である可能性もある。予備処理は、触媒を、窒素又は他の不活性ガス流中で約250℃〜約430℃に加熱することによって行うことができる。触媒は、次に、高い触媒活性を得るために、それを大過剰の窒素ガスで希釈したHF流で処理することによって活性化することができる。触媒の再生は、O
2又は塩素のような酸化剤を用いるなどの当該技術において公知の任意の手段によって行うことができる。例えば、約100℃〜約400℃、好ましくは約200℃〜約375℃の温度において、触媒の上に空気又は窒素で希釈した空気を、反応器の寸法に応じて約8時間〜約3日間通過させる。
【0028】
[0028]HCFO−1233xfは、HCFO−1233xf、未反応の出発材料、部分フッ素化中間体、及び副生成物(例えばHCl及び2,3−ジクロロ−3,3−トリフルオロプロペン)を含むフッ素化生成物混合物から回収することができる。回収方法には、当該技術において一般的に知られている化合物分離方法の1つ又は組合せを含ませることができる。1つの非限定的な態様においては、HCFO−1233xf、未反応のHFの一部、及びHClを、蒸留カラムにおいて蒸留物質として回収し、一方、未反応の有機出発材料、部分フッ素化中間体及び副生成物、並びに未反応のHFの一部を、カラムの底部から回収して、更なる反応のためにフッ素化反応器に再循環して戻す。かかる方法は、標準的な蒸留カラム内において、約300psig未満、好ましくは約200psig未満、最も好ましくは150psig未満である圧力で行うことができる。蒸留カラムの圧力によって蒸留運転温度が固有に決定される。HCFO−1233xf、未反応のHFの一部、及びHClを回収するための蒸留カラムは、約−40℃〜約100℃、好ましくは約−40℃〜約75℃の温度で運転することができる。場合によっては第2の蒸留を用いることができ、この場合には留出物部分はHClの実質的に全部を含む。カラムの塔底流は、十分に高い純度のHCFO−1233xf、及びHFを含む。HFは、場合によっては、HCFC−244bb液相フッ素化反応器に導入する前にこの流れから取り出すことができる。HFは、硫酸、水による吸収、又は苛性溶液との反応などの当該技術において公知の手段によってこの流れから取り出すことができる。
【0029】
[0029]精製HCFO−1233xfは、次に、標準的な転化技術を用いてHCFC−244bbに転化させることができる。実際には、反応器を加熱する前に触媒をフッ素化反応器内に充填する。次に、反応器が所望の温度に達した後に、HF、HCl、及び実質的に純粋なHCFO−1233xfを反応器に供給する。フッ素化反応のために好適な任意の反応器を本発明において用いることができる。好ましくは、反応器は、ハステロイ−C、インコネル、モネル、及びフルオロポリマーライニング容器のようなHFの腐食効果に抵抗性の材料から構成する。かかる液相フッ素化反応器は当該技術において周知である。
【0030】
[0030]本発明方法は、バッチ又は連続モードのいずれかで行うことができる。連続法においては、反応器が所望の温度に達した後に、HCFO−1233xf及びHFを反応器に好ましくは同時に供給する。フッ素化反応の温度及び圧力は、運転のバッチ及び連続モードの両方に関して実質的に同等に維持する。滞留時間又は接触時間は、約1秒間〜約2時間、好ましくは約5秒間〜約1時間、最も好ましくは約10秒間〜約30分間の範囲である。上記に記載の滞留時間内でフッ素化を行うのに十分な量の触媒を存在させなければならない。連続運転モードにおいては、HF及びHCFC−244bbを反応器から連続的に取り出す。
【0031】
[0031]好ましい態様においては、反応は、約30℃〜約200℃、より好ましくは約50℃〜約150℃、更により好ましくは約75℃〜約125℃の温度で行う。液相フッ素化反応は、関与する物質の反応及び揮発性のために必要な温度の結果として、反応器内の圧力を用いて行う。この圧力は、温度、用いるフッ化水素の量、及びHCFO−1233xfの転化率に応じて変化する可能性がある。好都合な運転圧力は、約5psia〜約200psia、好ましくは約30〜約175psia、最も好ましくは約60psia〜約150psiaの範囲である。
【0032】
[0032]任意の液相フッ素化触媒を本発明において用いることができる。非包括的なリストは、ルイス酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属酸化物、第IVb族金属ハロゲン化物、第Vb族金属ハロゲン化物、又はこれらの組合せを含む。液相フッ素化触媒の非排他的な例は、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、及びハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ素化クロムハロゲン化物、フッ素化クロム酸化物、又はこれらの組合せである。液相フッ素化触媒の具体的な非排他的な例は、SbCl
5、SbCl
3、SbF
5、SnCl
4、TaCl
5、TiCl
4、NbCl
5、MoCl
6、FeCl
3、SbCl
5のフッ素化種、SbCl
3のフッ素化種、SnCl
4のフッ素化種、TaCl
5のフッ素化種、TiCl
4のフッ素化種、NbCl
5のフッ素化種、MoCl
6のフッ素化種、FeCl
3のフッ素化種、又はこれらの組合せである。本発明を限定するものではないが、SbCl
5触媒が好ましい。
【0033】
[0033]或いは、この反応は、反応器に蒸気相(固体)フッ素化触媒を充填する蒸気相プロセスを用いて行うことができる。当該技術において公知の任意のフッ素化触媒をこの方法において用いることができる。本発明を限定するものではないが、SbCl
5が炭素上に含侵されている蒸気相触媒、及びSbCl
5がAl
2O
3上に含侵されている蒸気相触媒が特に有用である。
【0034】
[0034]1つの非限定的な態様においては、触媒はハロゲン化アンチモンである。ハロゲン化アンチモンは、第1にそれを活性に維持するために5価状態で利用できなければならない。この状態は、連続ハロゲン交換反応が進行するにつれて3価状態に徐々に劣化する。従来は、触媒を活性に維持するためには元素状塩素のような強い酸化剤を加えることが必要であると考えられていた。ハロゲン交換においては、HFと5価アンチモン(Sb
+V)との間で錯体が形成され;この錯体は次に有機部分上のC−Cl結合と相互作用して
、C−F有機結合(熱力学的により優位である)及びSb
V−HCl錯体を形成し;HClは速やかに錯体から切り離されて気体状の副生成物を形成する。Sb
+Vは、これらの相互作用の約97%において他の活性Sb
+V−HF錯体を形成するのに未だ利用することができるが、これらの相互作用の約3%においては、Sb
+III状態に劣化し、これは錯体を形成しないか又は触媒的に活性でない。本発明は、Sb
+V触媒の存在は反応を促進するが、この触媒は、供給流がハロゲン交換反応メカニズムを受ける物質を含まないのに十分な純度のものであるならば不活性のSb
+III形態に劣化しないことを示すものである。
【0035】
[0035]好ましい態様においては、触媒は、HCFO−1233xfのモル%を基準として約2%〜約80%、好ましくは約5%〜約50%、最も好ましくは約10%〜約20%の量で存在させる。少なくとも98%の純度を有するフッ素化触媒が好ましい。
【0036】
[0036]反応化学量論に基づいて、HCFO−1233xfに対するHFの必要なモル比は、少なくとも出発有機物質中の二重結合の数と同等であり、好ましくは過剰で存在させる。好ましい態様においては、HFとHCFO−1233xfとのモル比は、少なくとも約1:1〜約50:1、より好ましくは約1:1〜約30:1、最も好ましくは約2:1〜約15:1の範囲である。HF中の水は、触媒と反応して触媒を失活させる。したがって、実質的に無水のHFが好ましい。「実質的に無水」とは、HFが約0.03重量%未満の水を含み、好ましくは約0.01重量%未満の水を含むことを意味する。しかしながら、当業者であれば、触媒中の水の存在は、用いる触媒の量を増加させることによって補償することができることを認識するであろう。反応において用いるのに好適なHFは、Morristown, N.J.のHoneywell International Inc.から購入することができる。
【0037】
[0037]得られるHCFC−244bb及びHFは、中和及び蒸留のような当該技術において公知の任意の分離又は精製法によって反応混合物から回収することができる。HCFC−244bbは、純粋な形態、部分的に純粋な形態、又は2,3,3,3−テトラフルオロプロペン:HFO−1234yfの製造における中間体としてのHCFC−244bb製造工程からの全流出流と共に不純形態で用いることができる。
【0038】
[0038]HFO−1234yfを製造するためには、HCFC−244bbを前段の工程からの反応器流出流の一部として反応器中に導入する。HCFC−244bbは、場合によって、窒素、アルゴンなどのような不活性ガス希釈剤と共に供給することができる。非限定的であるが好ましい態様においては、HCFC−244bbを、反応器に導入する前に予備気化又は予備加熱する。或いは、HCFC−244bbを反応器の内部で気化する。有用な反応温度は約100℃〜約700℃の範囲であってよい。好ましい温度は約150℃〜約600℃の範囲であってよく、より好ましい温度は約200℃〜約550℃の範囲であってよい。反応は、大気圧、大気圧以上、又は真空下で行うことができる。真空圧は、約5torr(0.0966psig)〜約760torr(14.69psig)であってよい。HCFC−244bbと触媒との接触時間は約0.5秒間〜約120秒間の範囲であってよいが、より長いか又はより短い時間を用いることができる。
【0039】
[0039]HCFC−244bbのHFO−1234yfへの転化率は、少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%、更により好ましくは少なくとも約30%である。好ましくは、かかる態様においては、HFO−1234yfへの選択率は少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約95%である。
【0040】
[0040]好ましい態様においては、プロセス流は、触媒床を通って下降又は上昇方向である。また、長時間の使用後に反応器内に配置した状態で触媒を定期的に再生することが有
利である可能性もある。触媒の再生は、O
2又は塩素のような酸化剤を用いることなどの当該技術において公知の任意の手段によって行うことができる。例えば、約100℃〜約400℃、好ましくは約200℃〜約375℃の温度において、触媒の上に空気又は窒素で希釈した空気を、反応器の寸法に応じて約0.5時間〜約3日間通過させることによる。
【0041】
[0041]一般に、脱ハロゲン化水素化反応工程からの流出流(多段階反応器配置において存在する可能性がある任意の中間体流出流を含む)は、処理して所望程度の分離及び/又は他の処理を行うことができる。例えば、反応器流出流がHFO−1234yfを含む態様においては、流出流は一般にHCl及び未反応のHCFC−244bbも含む。反応生成物のこれらの成分の一部又は実質的に全部を、吸収、中和、及び蒸留のような当該技術において公知の任意の分離又は精製法によって反応混合物から回収することができる。未反応のHCFC−244bbを完全か又は部分的に再循環して、所望のCF
3CF=CH
2(HFO−1234yf)の全収量を向上させることができると期待される。場合によっては、しかしながら好ましくは、次に脱塩化水素化反応の結果から塩化水素を回収する。塩化水素の回収は通常の蒸留によって行い、ここでそれを留出物から取り出す。
【0042】
[0042]或いは、HClは、水又は苛性スクラバーを用いることによって回収又は取り出すことができる。水抽出剤を用いる場合には、HClは水溶液として取り出される。苛性物質を用いる場合には、HClは水溶液中の塩化物塩として系から取り出される。
【0043】
[0043]触媒は、金属ハロゲン化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(又は0価の酸化状態)の金属又は金属合金、或いはバルク又は担持形態の活性炭であってよい。金属ハロゲン化物又は金属酸化物触媒、好ましくは1価、2価、及び3価の金属のハロゲン化物、酸化物、及びこれらの混合物/組合せ、より好ましくは1価及び2価の金属のハロゲン化物及びそれらの混合物/組合せを用いる場合には、成分の金属としては、Cr
3+、Fe
3+、Mg
2+、Ca
2+、Ni
2+、Zn
2+、Pd
2+、Li
+、Na
+、K
+、及びCs
+が挙げられるが、これらに限定されない。成分のハロゲンとしては、F
−、Cl
−、Br
−、及びI
−が挙げられるが、これらに限定されない。有用な1価又は2価の金属のハロゲン化物の例としては、LiF、NaF、KF、CsF、MgF
2、CaF
2、LiCl、NaCl、KCl、及びCsClが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化処理としては、従来技術において公知の任意のもの、特にハロゲン化源としてHF、F
2、HCl、Cl
2、HBr、Br
2、HI、及びI
2を用いるものを挙げることができる。
【0044】
[0044]中性、即ち0価の金属、金属合金、及びそれらの混合物を用いる場合には、有用な金属としては、Pd、Pt、Rh、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、及び合金又は混合物としての上記の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。触媒は担持であっても非担持であってもよい。
【0045】
[0045]金属合金の有用な例としては、SS 316、Monel 400、Inconel 825、Inconel 600
、及びInconel 625が挙げられるが、これらに限定されない。
[0046]本発明の別の態様においては、HCFC−244bbの脱ハロゲン化水素化は、それを、KOH、NaOH、Ca(OH)
2、及びCaO(しかしながらこれらに限定されない)を含む強苛性溶液と昇温温度において反応させることによって行うこともできる。この場合には、苛性溶液の濃度は約2重量%〜約52重量%、より好ましくは約5重量%〜約50重量%、最も好ましくは約10重量%〜約45重量%である。苛性物質とHCFC−244bbとのモル比は、好ましくは約1:1〜約2:1、より好ましくは約1.1:1〜約1.5:1、最も好ましくは約1.2:1〜約1.4:1の範囲である。反応は、約20℃〜約100℃、より好ましくは約30℃〜約90℃、最も好ましくは約40
℃〜約80℃の温度で行うことができる。上記したように、反応は大気圧、大気圧以上、又は真空下で行うことができる。真空圧は約5torr(0.0966psig)〜約760torr(14.69psig)であってよい。更に、場合によってはAliquat 336
のような溶媒又は相関移動触媒を用いて、苛性溶液中に有機化合物を溶解させるのを助けることができる。この随意的な工程は、かかる目的のために当該技術において周知の溶媒を用いて行うことができる。その後、当該技術において公知の任意の手段、例えば抽出及び好ましくは蒸留によって、未反応の出発材料及び副生成物を含む反応生成物混合物からHFO−1234yfを回収することができる。HFO−1234yf及び任意の副生成物の混合物を蒸留カラムに通す。例えば、蒸留は、好ましくは、標準的な蒸留カラム内において、大気圧、大気圧以上、又は真空で行うことができる。好ましくは、圧力は約300psig未満、好ましくは約200psig未満、最も好ましくは150psig未満である。蒸留カラムの圧力によって蒸留運転温度が固有に決定される。好ましくは、このセクションにおいて記載するような脱塩化水素化の態様においては、HCFC−244bbの転化率は、少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約75%、更により好ましくは少なくとも約90%である。好ましくは、かかる態様においては、HFO−1234yfへの選択率は、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約94%である。
【0046】
[0047]好ましい態様においては、本発明は、HCFC−244bbを製造する上記に記載のプロセスの直前に、フッ化水素によって1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCC−1230xa)又は1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)を蒸気相フッ素化して、フッ化水素及び2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む流れを生成させることによって2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)を製造する先のプロセス工程を行う多段階方法に関する。
【0047】
[0048]上記に基づくと、本発明は
(i)実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、フッ素化触媒の存在下、酸化剤の不存在下においてフッ化水素と反応させて2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む組成物を生成させ;次に
(ii)2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させるのに有効な条件下で2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを脱ハロゲン化水素化する;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法に関する。
【0048】
[0049]更なる態様においては、本発明はまた、
(a)1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCC−1230xa)及び/又は1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化して、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン及び1種類以上の有機不純物を生成させ;
(b)有機不純物から2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを分離して、実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを形成し;
(b)実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、酸化剤の不存在下でフッ化水素及びフッ素化触媒と反応させて2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む組成物を生成させ;次に
(c)2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させるのに有効な条件下で2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを脱ハロゲン化水素化する;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法も提供する。
【実施例】
【0049】
[0050]以下の非限定的な実施例は本発明を例示するように働く。
[0051]実施例1:
[0052]フッ素化触媒としてフッ素化SbCl
5を用いて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)+HF→2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)の連続液相フッ素化を行った。
【0050】
[0053]反応の前に、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)原材料(1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCC−1230xa)からの蒸気相フッ化水素化反応によって予め調製した)を、多段階蒸留カラム内において加圧下で99%超の純度まで蒸留した。
【0051】
[0054]2230gの混合アンチモン塩化物(1モルのSbCl
3あたり5モルのSbCl
5)を、触媒ストリッパー、ID(内径)2インチの充填カラムを取り付け、凝縮器(その機能は、システムを連続反応モードで運転する場合に、連行された触媒、未反応のHFの一部、及び未反応のHCFO−1233xfの一部を反応器に戻すことである)を取り付けたテフロンライニング液相反応器(テフロンはE.I. DuPont de Nemours & Coの商
標である)中に加えた。反応器はID=2.75インチ×L(長さ)36インチであり、混合機/攪拌機は取り付けなかった。反応器を約85℃〜87℃に加熱した。次に、約700gのHFを加えることによって触媒を活性化した。触媒のフッ素化によって生成するHClにより、反応系の圧は制御した場合には約100psigに上昇した。次に、連続的な気体状HFの供給を開始した。これは、浸漬管を通して液体触媒中に1.1ポンド/時の速度でバブリングし、1.0ポンドのHFが加えられた時点で、同じ浸漬管を通して精製2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの供給も開始した。精製HCFO−1233xfは、約1.0ポンド/時の速度で連続的に供給した。HFと1233xfとのモル比は7.1:1であった。反応温度は85℃〜87℃に維持し、圧力は100psigに維持した。主としてHCFC−244bbである反応の生成物が、共沸混合物として多少過剰のHFと一緒に触媒ストリッパーから排出された。実験は120時間連続して行った。この実験に関するHCFO−1233xfの平均転化率は>99%であり、244bbへの選択率は98%に達した。この実験中は6時間後に塩素は加えなかった。先行実験(比較例を参照)においては、3〜4時間毎に塩素をバッチ添加することが必要であった。
【0052】
[0055]比較例:
[0056]同じ運転条件を用いたが、原材料供給流として、同様に調製したが蒸留又は他の形態で精製しておらず、>3%の有機不純物(主として2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232)を含む2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)の供給流を用いた同じ装置内での先行実験においては、この反応はハロゲン交換反応及びフッ化水素付加反応メカニズムの両方を含んでいるので、少量(通常は運転3〜4時間毎に20〜30g)の塩素を加えることが必要であった。これらの添加を行わない場合には、触媒の活性は徐々に劣化して、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)の2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)への転化が徐々に減少して、最終的に完全に停止するようになった。
【0053】
[0057]実施例2:
[0058]本実施例は、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(TCP)+3HF→2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)+3HClの連続蒸気相フッ素化反応を示す。この実験に関するフッ素化触媒はフッ素化Cr
2O
3であった。
【0054】
[0059]N
2、HF、及び有機供給流、供給流気化器、過熱器、ID=4”のモネル反応器、酸スクラバー、乾燥機、及び生成物回収システムから構成される連続蒸気相フッ素化
反応システムを用いて反応を研究した。反応器に、9415.2gの予備処理したCr
2O
3(約6.5Lの触媒に等しい)を装填した。次に、反応器を一定温度の砂浴中に設置した後、N
2パージを触媒上に通しながら、反応器を約235℃の反応温度に加熱した。反応器は約3psigの圧力であった。HF供給流をN
2との共供給流として(気化器及び過熱器を介して)反応器に15分間導入し、この時点でN
2流を停止した。HFの流速を1.4ポンド/時に調節し、次に1,1,2,3−テトラクロロプロペン(TCP)の供給を(気化器及び過熱器を介して)反応器に開始した。約15:1のモル比のHF:TCPのために、TCPの供給速度を約0.8ポンド/時において一定に維持し、HF供給を1.4ポンド/時において一定に維持した。反応が開始したら、触媒床温度は250〜260℃の範囲に上昇した。250〜260℃、3psig、及び上記の供給速度における接触時間は約16秒間であると計算された。500時間の運転時間にわたって回収された物質の平均組成は、約97.2GC面積%のHCFO−1233xf、1.6GC面積%の244bb、0.6GC面積%のHFC−245cb、0.4GC面積%の1232xf、0.1GC面積%のHCFC−1233xd、及び0.08GC面積%のHCFO−1231xf、並びに0.02GC面積%のその他のものであった。500時間後に、触媒が活性を失い始めた時点でHCFO−1233xfへの選択率が減少するにつれて、過小フッ素化中間体である2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)が現れ始めた。650時間の運転時間の後にHCFO−1233xfへの選択率が約83%に減少した時点で、触媒活性の損失のために反応を停止した。TCPの転化率は実験全体にわたって>99%で維持された。
【0055】
[0060]実施例3:
[0061]本実施例は、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)→2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)+HClの連続蒸気相脱塩化水素化反応を示す。この実験に関する脱塩化水素化触媒は10重量%CsCl/90重量%MgF
2であった。
【0056】
[0062]熱伝達を高めるためにニッケルメッシュを充填したモネルプレヒーター(ID=1インチ、長さ32インチ)を取り付けたモネル反応器(ID=2インチ、長さ32インチ)を用いて、HCFC−244bbのHFO−1234yfへの転化を行った。反応器に、2.0Lのペレット化した10重量%CsCl/90重量%MgF
2脱塩化水素化触媒を充填した。触媒を支持するために、ニッケルメッシュを反応器の頂部及び底部に配置した。多点熱電対を反応器の中央部に挿入した。触媒を、乾燥N
2流中、480℃の温度において6時間予備処理した。次に、95GC%の244bb/3.1GC%の1233xf/0.35GC%の245cbの組成を有する供給流を、1.0ポンド/時の速度で反応器中に導入した。供給流は、反応器プレヒーターに導入する前に気化した。蒸留カラムの塔底物を排出し、反応器中に再循環した。供給速度は1.0ポンド/時において一定に維持し、温度及び圧力は両方とも変化させた。反応器全体の温度勾配は3〜5℃を決して超えなかった。触媒の生産性は3〜6ポンド/時/ft
3で見積もられた。最も高い生産性は470℃及び45psigにおいて観察され、最も低い生産性は480℃及び3psigの圧力において観察された。反応生成物を苛性スクラバー中に供給して、HCl副生成物を除去した。次に生成物流を、デシカントを充填したカラムに通して、残留湿分を除去した。無給油コンプレッサーを用いて、粗生成物を30〜45psigの圧力に維持した蒸留カラム中に供給した。蒸留は連続モードで行い、取り出し速度は反応器内のHFO−1234yfの生成速度と同じにした。蒸留1234yfの純度は99.9GC%+であった。蒸留物のGC分析によって、軽質不純物がppmレベルの重質不純物と共に存在していたことが示された。
【0057】
3psigにおいて480℃:244bb転化率=約30%、1234yfへの選択率=約97%;
20psigにおいて480℃:244bb転化率=約47%、1234yfへの選択率=約96%;
20psigにおいて470℃:244bb転化率=約36%、1234yfへの選択率=約97%;
45psigにおいて470℃:244bb転化率=約53%、1234yfへの選択率=約96%;
45psigにおいて460℃:244bb転化率=約38%、1234yfへの選択率=約98%;
反応データ:条件:供給流=95GC%の244bb/3.1GC%の1233xf/0.35GC%の245cb;2.0Lの10重量%CsCl/90重量%MgF
2触媒;1.0ポンド/時の供給速度。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
本発明は以下の態様を含む。
[1]
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの実質的に純粋な有機成分を含む供給流を、酸化剤の不存在下でフッ化水素及びフッ素化触媒と反応させることを含む、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの製造方法。
[2]
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの実質的に純粋な有機成分が、1,1,2,3−テトラクロロプロペン及び/又は1,1,1,2,3−テトラクロロプロパンをフッ素化し、中間体流から2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを分離することを含む方法によって製造される、[1]に記載の方法。
[3]
中間体流が、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン及び1種類以上の反応不純物を含む、[2]に記載の方法。
[4]
少なくとも1種類の不純物が2,3−ジクロロ−3,3−トリフルオロプロペンである、[3]に記載の方法。
[5]
反応に供給するフッ化水素と2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの実質的に純粋な有機成分とのモル比が少なくとも1:1〜約50:1の範囲である、[1]に記載の方法。
[6]
フッ素化触媒が、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、及びハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ素化クロムハロゲン化物、フッ素化クロム酸化物、SbCl5、SbCl3、SbF5、SnCl4、TaCl5、TiCl4、NbCl5、MoCl6、FeCl3、CrF3、Cr2O3、SbCl5のフッ素化種、SbCl3のフッ素化種、SnCl4のフッ素化種、TaCl5のフッ素化種、TiCl4のフッ素化種、NbCl5のフッ素化種、MoCl6のフッ素化種、FeCl3のフッ素化種、Cr2O3のフッ素化種、又はこれらの組合せからなる群から選択される液相触媒である、[1]に記載の方法。
[7]
フッ素化触媒が、炭素上に含侵されているSbCl5、Al2O3上に含侵されているSbCl5、及びこれらの組合せからなる群から選択される蒸気相触媒である、[1]に記載の方法。
[8]
反応を約30℃〜約200℃の温度で行う、[1]に記載の方法。
[9]
反応を約5psia〜約200psiaの圧力で行う、[1]に記載の方法。
[10]
(i)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの実質的に純粋な有機成分を含む供給流を、酸化剤の不存在下でフッ化水素及びフッ素化触媒と反応させて2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを生成させ;そして
(ii)2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させるのに有効な条件下で2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを脱ハロゲン化水素化する;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
[11]
(i)1,1,2,3−テトラクロロプロペン及び/又は1,1,1,2,3−テトラクロロプロパンをフッ素化して、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン及び1種類以上の不純物を含む中間体流を生成させ;
(ii)中間体流から2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを分離して、実質的に純粋な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを形成し;
(iii)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの実質的に純粋な有機成分を含む供給流を、酸化剤の不存在下でフッ化水素及びフッ素化触媒と反応させて2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを生成させ;そして
(iv)2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させるのに有効な条件下で2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを脱ハロゲン化水素化する;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。