特許第6188791号(P6188791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188791
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】紡績機械における集束装置用の固定手段
(51)【国際特許分類】
   D01H 5/72 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   D01H5/72
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-513287(P2015-513287)
(86)(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公表番号】特表2015-517611(P2015-517611A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】IB2013000970
(87)【国際公開番号】WO2013175282
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年5月13日
(31)【優先権主張番号】00709/12
(32)【優先日】2012年5月21日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】590005597
【氏名又は名称】マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ネーゲリ
(72)【発明者】
【氏名】ルーデク マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ガーブリエル シュナイダー
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−107830(JP,A)
【文献】 特開平08−260259(JP,A)
【文献】 特開昭63−182427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H1/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績機械のドラフト装置ユニット(2)に追加的な集束モジュール(VM)を解離可能に取付け及び位置決めする固定手段であって、前記集束モジュール(VM)は支持体(20)を有していて、該支持体(20)は少なくとも1つのサクション通路(SK)を備えていて、該サクション通路(SK)は、前記支持体(20)に可動に支持された集束エレメント(17)のサクション挿入体(18)に接続されている、固定手段において、
当該固定手段は、互いに間隔をおいて前記紡績機械に固定された2つのクランプエレメント(11)から形成され、該クランプエレメント(11)はそれぞれ、前記紡績機械における位置決めされた不動の固定のために保持手段(54,M)を有し、かつそれぞれ、片側において開放した第1の収容スリット(50)を備えており、該第1の収容スリット(50)は、保持部分(48)を有していて、該保持部分(48)と共に、前記支持体(20)に固定された保持エレメント(45)が形状結合式のクランプ結合部を形成することを特徴とする、紡績機械における集束装置用の固定手段。
【請求項2】
前記各保持部分(48)と前記支持体(20)の前記各保持エレメント(45)との間における前記形状結合式の結合部は、前記クランプエレメント(11)の前記第1の収容スリット(50)が位置している互いに向かい合って位置する平面(AS)に対して平行に延びる旋回平面(SE)における前記支持体(20)の旋回運動を可能にし、各クランプエレメント(11)は、前記旋回運動を制限するストッパ(55)を有している、請求項1記載の固定手段。
【請求項3】
前記各クランプエレメント(11)は、片側において開放した第2の収容スリット(77)を備えており、該第2の収容スリット(77)は、管エレメント(19)の保持エレメント(76)と共に形状結合式の結合部を形成することができる保持部分(78)を有している、請求項1又は2記載の固定手段。
【請求項4】
前記第1の収容スリット(50)の長手方向軸線(LA)と前記第2の収容スリット(77)の長手方向軸線(LB)とは、互いに角度(c)を成して交差している、請求項3記載の固定手段。
【請求項5】
前記各クランプエレメント(11)は、前記第2の収容スリット(77)の延長方向で見て、片側において開放したポケット状の収容部(83)を有していて、該収容部(83)は、前記管エレメント(19)に固定されたウェブ(89)を固定するために設けられている、請求項3又は4記載の固定手段。
【請求項6】
前記各クランプエレメント(11)の前記保持手段は、前記第1の収容スリット(50)の下に設けられたU字形の足部分(54)から形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の固定手段。
【請求項7】
前記U字形の足部分(54)の脚(E1,E2)はそれぞれ、固定エレメント(M)を収容するための開口(63,64)を備えている、請求項6記載の固定手段。
【請求項8】
前記集束モジュール(VM)の前記支持体(20)に組み込まれたサクション通路(SK)を、中央の吸込み通路(85)に接続されたサクション管(16)と結合するための、請求項3からまでのいずれか1項記載の固定手段を備えた連結装置であって、
前記固定手段の領域に位置する前記サクション通路(SK)の端部に、該サクション通路(SK)からその長手方向において突出する閉鎖リング(31)が設けられており、該閉鎖リング(31)は、前記サクション通路(SK)と逆向きの内方に向かって円錐形に延びるリング状の外面(52)を備えており、該外面(52)には、管エレメント(19)の、円錐形に外方に向かって延びるリング状の内面(29)が、少なくとも部分的に接触しており、前記管エレメント(19)は、前記紡績機械に間隔をおいて固定された2つのクランプエレメント(11)の前記第2の収容スリット(77)の各保持部分(78)において保持され、前記管エレメント(19)の自由端部の外周部(27)に、前記サクション管(16)がその内面(66)でシール作用をもって接触していることを特徴とする、固定手段を備えた連結装置。
【請求項9】
前記閉鎖リング(31)の円錐形に延びる前記外面(52)は、該外面(52)が前記管エレメント(19)の円錐形に延びる前記内面(29)に接触している領域に、円弧状の湾曲部(53)を有している、請求項8記載の連結装置。
【請求項10】
前記管エレメント(19)の、前記サクション管(16)が接触している前記外周部(27)は、螺旋形に延びる隆起部(86)を備えている、請求項8又は9記載の連結装置。
【請求項11】
前記管エレメント(19)の、円錐形に外方に向かって延びるリング状の前記内面(29)の領域にわたって延在する外周部(88)に、リング状に形成された弾性的なシールエレメント(60)がシール作用をもって接触しており、該シールエレメント(60)は前記管エレメント(19)を越えて突出していて、前記閉鎖リング(31)の、前記管エレメント(19)の外側に位置していて内方に向かって円錐形に延びるリング状の前記外面(52)に、シール作用をもって接触している、請求項8から10までのいずれか1項記載の連結装置。
【請求項12】
前記クランプエレメント(11)は、前記紡績機械の長手方向に設けられた軸(59)に固定されている、請求項8から11までのいずれか1項記載の連結装置。
【請求項13】
前記各クランプエレメント(11)の前記保持手段は、前記第1の収容スリット(50)の下に設けられたU字形の足部分(54)から形成されており、
前記U字形の足部分(54)の脚(E1,E2)はそれぞれ、固定エレメント(M)を収容するための開口(63,64)を備え、
前記軸(59)は、前記クランプエレメント(11)を固定するために各クランプエレメント(11)の前記U字形の足部分(54)の前記脚(E1,E2)の前記開口(63,64)に進入する固定エレメント(M)が貫通する貫通孔(58)を備えている、請求項12記載の連結装置。
【請求項14】
1つのクランプエレメント(11)の両方の脚(E1)のうちの1つの開口(63)がねじ山を備えていて、前記固定エレメントはねじ(M)であり、該ねじ(M)の、ねじ山(M1)を備えた端部が、前記軸(59)を越えて突出している、請求項13記載の連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機械のドラフト装置ユニットにおける集束モジュールを解離可能に取付け及び位置決めする固定手段であって、集束モジュールは支持体を有していて、該支持体は少なくとも1つのサクション通路を備えていて、該サクション通路は、支持体に可動に支持された集束エレメントのサクション挿入体に接続されている、固定手段に関する。
【0002】
本発明はまた、集束モジュールの支持体に組み込まれたサクション通路を、中央の吸込み通路に接続されたサクション管と結合するための、本発明のように構成された固定手段を備えた連結装置に関する。
【0003】
まだ公開されていないPCT/CH2011/000280には、紡績機械(例えばリング精紡機)のドラフト装置ユニット(例えば二連ドラフト装置)から送出された繊維材料のための、取外し可能に設けられた集束モジュールの構成が、図示及び説明されている。この場合集束モジュールは支持体を有しており、この支持体には、回転可能に支持されたサクションドラムが取り付けられている。サクションドラムの内部には、サクション挿入体が設けられており、これらのサクション挿入体は、支持体の内部に設けられたサクション通路に接続されている。支持体は、サクション通路も終端しているその自由端部に、U字形の端部材を備えており、この端部材によって支持体はサクション管に被せ嵌められる。このときサクション通路の出口開口は、サクション管における開口と合致し、これによってサクション挿入体と、サクション管に接続された負圧源との間における接続部を形成する。支持体のU字形の端部材の寸法及びサクション管の外径は、支持体が端部材とサクション管との間におけるクランプ作用によってサクション管に保持され、サクション管の周方向における支持体ひいては集束モジュールの旋回運動が可能になるように選択されている。この旋回運動によって集束モジュールは作業位置から休止位置に、かつ逆に休止位置から作業位置に旋回させられる。
【0004】
この公知の構成には、追加的なサクション管を設けることが必要であるという欠点がある。また同様に、サクション通路の開口をサクション管における各開口と合致させるための、サクション管における支持体の迅速かつ正確な位置決めが困難である。そのために場合によっては、サクション管に追加的なガイドを設けることが必要である。サクション通路とサクション管の内部領域とを連結箇所の領域において周囲に対して十分に隔てるために、特殊なシールエレメントを設けることが必要である。
【0005】
ゆえに本発明の課題は、公知の解決策における欠点を排除して、その都度の集束モジュールを簡単かつ正確にしかもドラフト装置ユニットに対する正確な位置において取付け・取外しすることが可能な、紡績機械のドラフト装置における追加的な集束モジュールを取り付けるための固定手段を提供することである。同様に、本発明のように構成された固定手段を使用して、紡績機械の中央の吸込み通路と集束モジュールのサクション挿入体とを結合するための連結装置を提供することが望まれている。これによって集束モジュールは、特殊なシールエレメントを備えた特殊な追加的なサクション管なしに、紡績機械の既存のドラフト装置ユニットに取り付けることができる。
【0006】
この課題を解決するために本発明に係る固定手段では、当該固定手段は、少なくとも1つのクランプエレメントから成っていて、該クランプエレメントは、紡績機械における位置決めされた不動の固定のために保持手段を有し、かつ片側において開放した第1の収容スリットを備えており、該第1の収容スリットは、保持部分を有していて、該保持部分と共に、支持体に固定された保持エレメントが形状結合式のクランプ結合部を形成するようにした。
【0007】
上記のように構成された保持手段によって、固定手段もしくはクランプエレメントは、確定された予め定められた位置において紡績機械に固定され、これによってその都度のドラフト装置ユニットの位置に対して正確に適合される。また上記のように構成された、片側において開放した収容スリットによって、支持体は、該支持体に固定された保持エレメントを介して問題なくかつ迅速に、固定の位置へと移動することができ、この位置において保持エレメントは、収容スリットの領域において保持部分との形状結合式のクランプ結合部を形成する。
【0008】
「収容スリット」という概念は、例えば、長手方向に延在する細い開口(例えば長孔)を意味し、この開口は、保持エレメント(例えばピン)を導入するために片側において開放している。導入を促進するために、この開口は導入領域において拡大するように形成されていてよい。このとき保持部分は、収容スリットよりも大きな内径を有することができ、これによって、収容スリットに導入された保持エレメントは、クランプエレメントの、スリットを形成する少なくとも1つのエレメントの弾性的な変位によって、保持エレメントを保持部分においてロックして固定する。この効果を得るために、保持エレメントの外寸は、保持部分の内寸にほぼ相当していて、スリットの開口と保持部分との間の領域におけるスリットの最小の内寸よりも大きい。
【0009】
収容スリットの領域におけるクランプエレメントの弾性的な変位を可能にするために、クランプエレメントは好ましくはプラスチック(例えばプラスチック射出成形品)から製造されている。
【0010】
別の態様では、固定手段は、互いに間隔をおいて紡績機械に固定された2つのクランプエレメントから形成される。このとき両クランプエレメントは、支持体を、各クランプエレメントの保持部分に保持された各1つの保持エレメントを介して、2つの側において支持している。両クランプエレメントは、同じ形状を有することができる。また、両クランプエレメントを、ウェブを介して互いに結合することも可能である。
【0011】
さらに別の態様では、保持部分と支持体の各保持エレメントとの間における形状結合式の結合部は、第1の収容スリットの平面に対して平行に延びる旋回平面における支持体の旋回運動を可能にし、各クランプエレメントは、旋回運動を制限するストッパを有している。
【0012】
集束モジュールの旋回運動を可能にするために、保持部分の形状は、保持エレメントの形状に相応に合わせられている。好ましくは保持エレメントは、横断面円形のピンから成っていて、保持部分は円形横断面を有している。これによって保持手段(例えばピン)は保持部分におけるロック位置において回転することができ、ひいては集束モジュールの支持体の旋回を可能にする。集束モジュールを確定された休止位置に保つことを目的として、この旋回運動を制限するために、クランプエレメントにはストッパが設けられており、このストッパに支持体は旋回運動時に接触する。作業位置において支持体は、相応に形成されたロック装置を介して保持され、これについては、後で述べる実施形態においてさらに詳しく記載する。
【0013】
負圧源に接続されているサクション管を接続するための連結箇所を形成するために、別の態様では、各クランプエレメントは、片側において開放した第2の収容スリットを備えており、該第2の収容スリットは、サクション管に接続されている管エレメントの保持エレメントと共に形状結合式の結合部を形成することができる保持部分を有している。
【0014】
これによってクランプエレメントに追加的な機能を、つまり紡績機械に集束モジュールを固定する機能の他に、追加的に、負圧源に通じるサクション通路の接続部を形成するサクション管を備えた連結箇所の機能をも与えることができる。このとき、集束モジュールの旋回運動が実施される場合でも、サクション管とサクション通路とサクション管との間における結合部が周囲に対して隔てられたままであることが、保証されねばならない。
【0015】
別の好適な態様では、第1の収容スリットの長手方向軸線と第2の収容スリットの長手方向軸線とは、互いに角度を成して交差している。このように交差されていると、集束モジュール及びサクション管の管エレメントの取付け・取外しを問題なく実施することができる。各収容スリットの長手方向平面において延びている長手方向軸線は、例えば60°〜120°の角度をもって互いに交差することができる。
【0016】
管エレメントをサクション管への接続のためにクランプエレメントにおける確定された位置領域内に留めるために、別の態様では、各クランプエレメントは、第2の収容スリットの延長方向で見て、片側において開放したポケット状の収容部を有していて、該収容部は、管エレメントに固定されたウェブを固定するために設けられている。このように構成されていると、クランプエレメントに対する、ひいては集束モジュールの支持体のサクション通路に対する管エレメントの位置決めが保証される。
【0017】
紡績機械にクランプエレメントを簡単かつ確実に取り付けるために、別の態様では、各クランプエレメントの保持手段は、第1の収容スリットの下に設けられたU字形の足部分から形成されている。このときさらなる態様では、U字形の足部分の脚はそれぞれ、固定エレメントを収容するための開口を備えている。
【0018】
このように構成されていると、固定手段もしくはクランプエレメントを簡単かつ迅速に、しかも位置正確に、例えば紡績機械に設けられた支持エレメント(例えば軸)に取り付けることができる。
【0019】
集束モジュールの支持体に組み込まれたサクション通路を、中央の吸込み通路に接続されたサクション管と結合するための、本発明に係る固定エレメントもしくはクランプエレメントを備えた単純かつ機能確実な連結装置を得るために、本発明に係る連結装置の構成では、固定手段の領域に位置するサクション通路の端部に、該サクション通路からその長手方向において突出する閉鎖リングが設けられており、該閉鎖リングは、サクション通路と逆向きの内方に向かって円錐形に延びるリング状の外面を備えており、該外面には、管エレメントの、円錐形に外方に向かって延びるリング状の内面が、少なくとも部分的に接触しており、管エレメントは、紡績機械に間隔をおいて固定された2つのクランプエレメントの第2の収容スリットの各保持部分において保持され、管エレメントの自由端部の外周部に、サクション管がその内面でシール作用をもって接触している。
【0020】
このとき閉鎖リングの円錐形に延びるリング状の外面は、軸方向で見て、幾分外方に向かって湾曲した表面(凸面)を有することができ、この構成によって、閉鎖リングの前記外面と管エレメントの円錐形に延びる内面との間における僅かな運動を可能にすることができる。この運動は、集束モジュールの旋回中に予め定められた範囲において生じる。
【0021】
本発明に係る連結装置によって、追加的なサクション通路を使用することなしに、集束モジュールを、既存のドラフト装置ユニットに対して後から簡単に装着することができる。通常、糸吸込みのためのサクション管は集束モジュールのサクション通路に接続されているので、中央の吸込み通路にサクション通路を接続するために既存の接続部を使用することができる。すなわち、集束モジュールを有しない汎用の紡績機械における糸吸込みのための接続部は、この糸吸込み部の取外し後に、そのまま、後から装着される集束モジュールの接続のために、負圧源への接続を目的として、使用することができる。
【0022】
フレキシブルなサクション管を簡単にかつシール作用をもって管エレメントに接続するために、本発明に係る連結装置の別の態様では、管エレメントの、サクション管が接触している外周部は、螺旋形に延びる隆起部を備えている。このような螺旋形の隆起部によって、サクション管を回転させることにより、大きな力を要することなく、サクション管を管エレメントの端部材に被せ嵌めることができる。
【0023】
閉鎖リング及び管エレメントの互いに接触している円錐形に延びるリング面の領域を、さらに良好に周囲に対して隔てるために、管エレメントの、円錐形に外方に向かって延びるリング状の内面の領域にわたって延在する外周部に、リング状に形成された弾性的なシールエレメントがシール作用をもって接触しており、該シールエレメントは管エレメントを越えて突出していて、閉鎖リングの、管エレメントの外側に位置していて内方に向かって円錐形に延びるリング状の外面に、シール作用をもって接触している。
【0024】
個々の集束モジュールにおける負圧状態ひいては繊維材料の集束を、紡績機械の全長にわたってほぼ一定に保つために種々異なった管エレメントを使用することが提案されており、これらの管エレメントは、負圧源に対する距離に対して調整されて相応に合わせられた、内径の異なった貫通開口を有している。取り違えを回避するために、種々異なった管エレメントは色によって識別できるようになっていてよい。
【0025】
別の好適な態様では、クランプエレメントは、紡績機械の長手方向に設けられた軸に固定されている。この態様において、軸は、クランプエレメントを固定するために各クランプエレメントのU字形の収容部の脚の開口に進入する固定エレメントが貫通する貫通孔を備えていることができる。
【0026】
このような構成は、紡績機械の既存のドラフト装置ユニットにおけるクランプエレメントの迅速かつ位置正確な固定を可能にする。
【0027】
クランプエレメントを固定するために、別の態様では、1つのクランプエレメントの両方の脚のうちの1つの開口がねじ山を備えていて、固定エレメントはねじであり、該ねじの、ねじ山を備えた端部が、軸を越えて突出している。
【0028】
もちろん、クランプエレメントを位置正確にかつ相応に方向付けて紡績機械に固定するためには、さらに多数の他の固定可能性がある。
【0029】
本発明の別の利点については、以下において図示の実施形態を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ドラフト装置ユニットに集束モジュールを装着するための本発明に係る固定手段を備えた紡績部を概略的に示す側面図である。
図2】相応に形成された連結装置を備えた固定手段の領域を拡大して示す側面図である。
図3図2に示した矢印Yの方向から見た部分図である。
図4図2にXで示した領域を拡大して示す部分図である。
図5図1を矢印Nの方向から見て示す縮小図である。
【0031】
図1には、ドラフト装置ユニット(Streckwerkeinheit)2を備えた紡績機械(リング精紡機)の紡績部1が側面図で略示されており、このドラフト装置ユニット2は、入口ローラ対3,4、中間ローラ対5,6及び出口ローラ対7,8を備えている。中間ローラ対5,6にはそれぞれエプロン12,13が巻き掛けられて案内されており、これらのエプロン12,13はそれぞれ、図示されていないケージを取り囲んで図示の位置に保持される。前記ローラ対のうちの上側ローラ4,6,8は、押圧ローラとして形成されていて、略示された軸を介して、旋回可能に支持された押圧レバー10に回転可能に支持されている。押圧レバー10は、軸15を中心にして旋回可能に支持され、図示のように、ばねエレメントFを用いて押圧される。このばねエレメントFは例えば、エアホースであってもよい。略示されたばね押圧装置を用いて、上側ローラ4,6,8は、ローラ対の下側ローラ3,5,7に押圧される。ローラ対3,5,7は、図示されていない1つの駆動装置によって駆動される。駆動される下側ローラ3,5,7を介して、押圧ローラ4,6,8もしくはエプロン13は、エプロン12を介して摩擦により駆動される。駆動されるローラ5の周速度は、駆動されるローラ3の周速度よりも幾分高いので、ドラフト装置ユニット2に供給されるスライバLである繊維材料は、入口ローラ対3,4と中間ローラ対5,6との間において、予備ドラフトされる。繊維材料Lの主ドラフトは、中間ローラ対5,6と出口ローラ対7,8との間において行われ、この場合出口ローラ7は、中間ローラ5よりも大幅に高い周速度を有する。
【0032】
図5図1の視線方向Nから見た縮小図)から分かるように、1つの共通の押圧レバー10は、互いに隣接して位置する各2つのドラフト装置ユニット2(二連ドラフト装置(Zwillingsstreckwerk)ZS)に対応して配置されている。この場合、互いに隣接して配置されたドラフト装置ユニットもしくは集束モジュール(Verdichtungsmodule)のエレメントは、等しいもしくは部分的に鏡像的に配置されたエレメントであるので、これらのエレメントに対しては同一符号が使用されている。
【0033】
各出口ローラ対7,8から送出されたドラフトされた繊維材料Vは、下方に向かって変向され、集束モジュールVMにおける後続のサクションドラム17のサクションゾーンZの領域に達する。各サクションドラム17は、全周に延在するパーフォレーションもしくは開口Oを備えている。図5に略示するように、二連ドラフト装置ZSには、それぞれ2つのサクションドラム17が対応配置されており、この場合2つのサクションドラム17は、支持体20に固定された軸22に回転可能に支持されている。各サクションドラム17内には、支持体20に結合された位置固定のサクション挿入体18(図5)が進入している。サクション挿入体18は、図1に略示されているように、空気通路LKを備えており、これらの空気通路LKは、サクションスリットSに通じており、このサクションスリットSは、各サクション挿入体18の周囲の部分領域においてサクションゾーンZの領域に配置されていて、サクションドラム17の開口Oと向かい合って位置している。
【0034】
サクション挿入体18の空気通路LKは、サクション通路SKに接続されていて、このサクション通路SKは、支持体20の内部において出口開口30にまで延びている。この出口開口30は、円形形状を有することができる。特に図2及び図4の拡大図から分かるように、本実施形態では、出口開口30の領域でかつサクション通路SKの内部に、環状の凹部23が設けられており、この凹部23には、閉鎖リング31の環状のリブ28が進入している。このリブ28を介して閉鎖リング31は、出口開口30において支持体20に、軸方向及び半径方向において保持される。
【0035】
閉鎖リング31は、内径L1を有する円形の貫通開口35を有しており、この貫通開口35は、接続する管エレメント19の、内径L2を有する貫通開口37に向かい合って同軸的に位置している。
【0036】
管エレメント19のリング形状の端部25の外周部27には、例えばフレキシブルなサクション管16が被せ嵌められており、このサクション管16はその他方の自由端部において、略示された連結箇所26を介して吸込み通路85に接続されている。この吸込み通路85は負圧源SPに接続されている。
【0037】
一方ではサクション管16を簡単に管エレメント19の端部25に被せ嵌めることができるようにするために、かつ他方では、端部25の外周部27とサクション管16の内面66との間における良好なシールを得るために、外周部27には螺旋形の隆起部86が設けられている。サクション管16の柔軟性によって、サクション管16の内面66は、隆起部86を備えた外周部27の構造に適合し、これによって確実なシールが保証され、さらにサクション管16は管エレメント19に確実に保持される。
【0038】
管エレメント19は、貫通開口37を起点として、開口47の、円錐形に外方に向かって延びる内面29を備えており、この内面29は、閉鎖リング31に向かって上昇、つまり拡大している。閉鎖リング31は、管エレメント19に向かって延びる端部材51を備えており、この端部材51は、円錐形に延びる外面52を備えていて、この外面52には、開口47の内面29が少なくとも部分的に接触している。円錐形に延びる外面52は、管エレメント19に向かって降下するように、つまり収斂するように形成されている。閉鎖リング31を備えた支持体20を管エレメント19に対して旋回運動できるようにするために、外面52の端部には湾曲部(半径)53が設けられている。
【0039】
支持体20は例えば、互いに固定された2つの半割シェルから成っており、両半割シェルは、組み立てられた状態においてサクション通路SKを形成する。出口開口30は、円形横断面の代わりに、方形横断面を有することもできる。この場合には閉鎖リング31も凹部23の領域において、方形に延びるリブ28を備えている。この場合貫通開口35は、閉鎖リング31の端部材51の外面52と同様に円形であってよく、このようになっていると、後続の管エレメント19との連結箇所KSの領域における連結が可能になる。
【0040】
特に拡大図である図2及び図3から分かるように、集束モジュールVMの支持体20は、軸59に互いに間隔aをおいて固定された2つのクランプエレメント11を介して取り付けられている。クランプエレメント11は、片側において開放したU字形の足部分54を有しており、この足部分54を介して、各クランプエレメント11は軸59に支持されている。この軸59は、紡績機械の機械フレームに結合されている。各クランプエレメント11を軸59において周方向で位置決めするため及び固定するために、軸59には貫通孔58が設けられており、これらの貫通孔58は、相応の軸方向間隔bをおいて形成されている。貫通孔58を貫いてねじMが貫通しており、このねじMは、そのねじ山部分M1がねじ山付孔63内に進入し、かつヘッドM2が各クランプエレメント11の足領域54の孔64内に進入している。
【0041】
クランプエレメント11は、片側において開放した収容スリット50を有しており、この収容スリット50は保持部分48を備えていて、この保持部分48は、収容スリット50よりも大きな内寸もしくは内径を有している。保持部分48は例えば円形に形成されていてよく、この保持部分48においてピン45がクランプ力によって保持される。支持体20には、互いに反対側に位置する2つの側に、各1つのピン45が固定されており、これらのピン45を介して支持体20は、軸59に間隔aをおいて取り付けられた2つのクランプエレメント11の保持部分48によって保持される。支持体20をピン45を介して収容スリット50内に容易に導入できるようにするために、収容スリット50は開口の領域に外方に向かって広がる面を備えている。クランプエレメント11は、弾性的に可撓性の材料(例えばプラスチック)から成っていてよく、このような材料から成っていると、ピン45が保持部分48の領域に移動させられる場合に、保持ウェブ46の弾性的な変位を可能にすることができる。保持部分48とピン45との間における円形のクランプ結合部によって、保持部分48の中心軸線Wを中心にした、支持体20ひいては集束モジュールVMの旋回運動が可能になる。
【0042】
集束モジュールVMの作業位置(図1)において、サクションドラム17(又はサクションドラム17に結合された摩擦リング)は、駆動される出口ローラ7の周囲に接触しており、このときサクションドラム17と出口ローラ7との間には、集束される繊維材料Vが位置していて、ニップされる。この位置において集束モジュールVMは、ウェブ62によって固定され、このウェブ62は、支持体20に固定されているウェブ49に接触している。出口ローラ7に対するサクションドラム17の所望の圧着力を得るために、ウェブ62は板ばね68に取り付けられており、この板ばね68は、ねじ69を介して押圧レバー10に固定されている。押圧レバー10が解離されて、破線で示された上側位置に移動させられた後で、集束モジュールVMもまたその自重によって、破線で示された下側位置に旋回させられる。この下方への旋回運動は、各クランプエレメント11に取り付けられているストッパ55によって制限されている。図2にはこのような位置が破線で示されている。
【0043】
各サクション挿入体18のサクションスリットSも延在しているサクションゾーンZに接続して、ニップローラ33が設けられており、このニップローラ33は図示の作業位置においてそれぞれのサクションドラム17と共にニップラインPを形成している。図示の二連ドラフト装置ZSのニップローラ33は、その作業位置において死点位置の上方に保持されていて、押圧アーム72に支持された軸32に回転可能に支持されている。押圧アーム72にはばねエレメントが取り付けられており、このばねエレメントを介して軸32は、略示されたガイドスリット内において、各サクションドラム17に向かって押し込まれる。押圧アーム72は軸24を備えており、この軸24を介して押圧アーム72は、支持体20に固定された軸受エレメント80に旋回可能に取り付けられている。この旋回運動によってニップローラ33は、休止位置に旋回することができる。繊維材料の集束については、他の刊行物における開示に基づいて十分に公知であるので、ここでは詳しく述べない。
【0044】
ニップローラ33によって生ぜしめられたニップラインPは、同時にいわゆる「撚り止め間隙(Drehungssperrspalt)」を形成し、この撚り止め間隙から繊維材料は、搬送方向FSにおいて、圧縮された糸FKとして撚りを加えられて、略示されたリング精紡機に供給される。このリング精紡機はリング39とトラベラ40とを備え、この場合糸は巻管41に巻き上げられて、ボビン42(コップ)を形成する。ニップラインPとトラベラ40との間には、糸ガイド43が配置されている。リング39は、紡績プロセス中に昇降運動を実施するリングフレーム44に固定されている。
【0045】
ニップラインPとボビン42との間における糸切れ時に、ニップポイントPを介して引き続き供給される糸FKは、支持エレメント20に設けられた各サクション管75、搬送通路における開口77及びサクション通路SKを介して、負圧源SPによって生ぜしめられた負圧の作用下で吸い出され、吸込み通路85に供給される。この場合サクション管75の各サクション開口38は、糸走路に対して相応の位置関係で配置されている。
【0046】
閉鎖リング31と管エレメント19との間における連結箇所KSを周囲空気に対して隔てるために、リング形状の弾性的なシールエレメント(単にシールと呼ぶ)60が設けられている。このシール60はウェブ70を有しており、このウェブ70を介してシール60は、管エレメント19の外周部に設けられた環状溝71に保持される。シール60の、ウェブ70とは反対側の自由端部74は、閉鎖リング31の斜めに降下する外面52にシール作用をもって接触している。これによって如何なる場合でも、つまり閉鎖リング31と管エレメント19とが相対運動した場合でも、周囲空気に対して連結箇所KSを隔てることが保証される。上記の構成によってまた、閉鎖リング31と管エレメント19との間における製作誤差を補償することができる。
【0047】
管エレメント19を、図2に示した連結位置に保つために、管エレメント19には互いに同軸的に位置しかつ逆向きに突出する2つのピン76が設けられており、両方のピン76は、片側において開放した別の収容スリット77の別の保持部分78において、軸59に互いに間隔aをおいて取り付けられた2つのクランプエレメント11によって保持される。このとき保持部分78は、保持部分78に直ぐ隣接した収容スリット77の最小の内寸よりも大きな内寸を有している。各収容スリット77内へのより良好な導入のために、収容スリット77は開口に向かって、拡大するように延びる導入面を備えている。つまり収容スリット77の内寸は、導入開口に向かって増大する。クランプエレメント11の選択された弾性材料によって、保持部分78内へのピン76の移動時に、収容スリット77に隣接して延びる保持ウェブ79は、ピン76が各保持部分78に達するまで弾性的に変位することができる。保持部分78においてピン76は、保持ウェブ79のばね弾性的な戻り運動によって固定される。
【0048】
各クランプエレメント11の収容スリット50,77は、各収容スリット50,70の長手方向平面において延びる長手方向軸線LA;LBが互いに60°〜120°の角度cを成して交差するように配置されている。
【0049】
管エレメント19がサクション管16への接続のために、クランプエレメント11における予め確定された位置領域内に留まるようにするために、次のことが提案される。すなわち、各クランプエレメント11は、第2の収容スリット77の延長方向で見て、片側において開放したポケット状の収容部83を有していて、この収容部83は、管エレメント19に固定されたウェブ89を固定するために設けられている。この構成によって、クランプエレメント11に対する、ひいては集束モジュールVMの支持体20のサクション通路SKに対する、管エレメント19の位置決めが保証される。
【0050】
管エレメント19のウェブ89は、図3に略示するように、これらのウェブ89が管エレメント19の組み付けられた位置(図2)においてそれぞれ、間隔aをおいて軸59に固定された2つのクランプエレメント11のポケット状の収容部83内に進入し、そこで固定されるように形成されている。
【0051】
吸込み力を紡績機械の長さに相応して適合させるために、貫通開口37の内径L2が種々異なった管エレメント19を使用することができる。これによって、すべての集束モジュールVMにおいてほぼ等しい負圧状態が存在することを保証することができる。異なった管エレメント19は、取り違えを回避するために、異なった色を有することができる。集束モジュールVMのサクション通路SKとサクション管16との間に設けられた管エレメント19を使用することによって、集束箇所の吸込み力を簡単に、負圧源SPに対して適正に適合させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5