特許第6188809号(P6188809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188809フッ素を含む非水性被覆剤組成物、その被覆剤組成物の被覆方法ならびにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188809
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】フッ素を含む非水性被覆剤組成物、その被覆剤組成物の被覆方法ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/16 20060101AFI20170821BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20170821BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170821BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C09D133/16
   C09D175/04
   C09D7/12
   B05D7/24 302P
【請求項の数】20
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2015-534943(P2015-534943)
(86)(22)【出願日】2013年8月16日
(65)【公表番号】特表2016-502564(P2016-502564A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】EP2013067151
(87)【国際公開番号】WO2014053268
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】61/709,548
(32)【優先日】2012年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12187210.5
(32)【優先日】2012年10月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター クライン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ファイグル
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ニーダーマイア
(72)【発明者】
【氏名】ノアベアト シュタイドル
(72)【発明者】
【氏名】ブアクハート ヴァルター
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−513734(JP,A)
【文献】 特表2001−524559(JP,A)
【文献】 特開平10−273879(JP,A)
【文献】 特表2014−506530(JP,A)
【文献】 特表2011−514920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/16
B05D 7/24
C09D 7/12
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水性被覆剤組成物であって、
(A)ポリヒドロキシ基および(ペル)フルオロアルキル基含有ポリ(メタ)アクリレート成分(A)30〜80質量%、
(B)1種または複数のポリイソシアネート基含有化合物(B)20〜70質量%、
ならびに
(D)1種または複数の触媒(D)、
を含んでおり、
ここで、前記成分(A)および(B)の質量%表示が、それぞれ前記成分(A)および(B)の結合剤含有量に関し、かつここで、成分(A)および(B)の質量割合の合計がそのつど100質量%である前記非水性被覆剤組成物において、
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、構成成分として、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数のジイソシアネート(PI)、
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルモノアルコール成分(FA)、ならびに
(iii)場合により、イソシアネート基に対する少なくとも1つの反応性基(G1)、および場合により、前記基(G1)とは異なるさらなる官能基(G2)を有する1種または複数の化合物(V)
からの1種または複数のペルフルオロアルキル基含有反応生成物(U)を、そのつど該ポリ(メタ)アクリレート成分(A)の製造に使用されるすべての化合物の量に対して0.05〜15.0質量%含むことを特徴とする前記非水性被覆剤組成物。
【請求項2】
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、(ペル)フルオロアルキルアルコール成分(FA)として一般式(I)
【化1】
および/または一般式(II)
【化2】
[前記式中、R1、R2は、互いに独立してH、F、CF3であるが、R1およびR2は、同時にHであってはならず、
xは1〜20であり、yは1〜6であり、zは0〜100であり、
Aは、CR’R’’−CR’’’R’’’’−Oまたは(CR’R’’)a−OまたはCO−(CR’R’’)b−Oであり、
R’、R’’、R’’’、R’’’’は、互いに独立してH、アルキル、シクロアルキル、アリール、1〜25個の炭素原子を有する任意の有機基であり、a、bは、3〜5であり、ここで、前記ポリアルキレンオキシド構造単位Azが、任意のアルキレンオキシドからのホモポリマー、コポリマーまたはブロックポリマーであるか、またはポリオキシアルキレングリコールであるか、またはポリラクトンである]
のペルフルオロアルコールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の被覆剤組成物。
【請求項3】
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、(ペル)フルオロアルキルアルコール成分(FA)として、
【化3】
および/または
【化4】
[前記式中、lは1〜8であり、mは1〜15であり、nは1〜12であり、oは1〜10である]
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の被覆剤組成物。
【請求項4】
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、1種または複数のフッ素含有反応生成物(U)を、そのつど該ポリ(メタ)アクリレート成分(A)の製造に使用されるすべての化合物の量に対して0.1〜10.0質量%含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項5】
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、フッ素を含む構成成分として、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数のジイソシアネート(PI)、
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルモノアルコール成分(FA)、ならびに
(iii)イソシアネート基に対する反応性基(G1)およびエチレン性不飽和二重結合(G2)を有する1種または複数の化合物(V)
からの反応生成物(U)を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項6】
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、フッ素を含む構成成分として、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数の脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート(PI)、
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルモノアルコール成分(FA)
【化5】
[式中、rは1〜8であり、好ましくは、rは1〜6であり、pは1〜6であり、好ましくは、pは1〜2である]
(iii)少なくとも1つのカルボキシル基および/またはヒドロキシ基(G1)、ならびに少なくとも1つのアクリル系および/またはメタクリル系不飽和二重結合(G2)を有する1種または複数の、好ましくは、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ラクトンと反応させたヒドロキシアルキルアクリレート、ラクトンと反応させたヒドロキシアルキルメタクリレートおよびそれらの混合物の群から選択される化合物(V)
からの反応生成物(U)を含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項7】
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、1種もしくは複数のペルフルオロアルキル基およびポリヒドロキシ基含有飽和ポリアクリレート、または1種もしくは複数のペルフルオロアルキル基およびポリヒドロキシ基含有飽和ポリメタクリレート、または1種もしくは複数のペルフルオロアルキル基およびポリヒドロキシ基含有飽和ポリアクリレートと、1種もしくは複数のペルフルオロアルキル基およびポリヒドロキシ基含有飽和ポリメタクリレートとからの混合物からなり、ならびに/または前記飽和ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、ペルフルオロアルキル基を含む構成成分として、イソホロンジイソシアネート、2−(ペルフルオロヘキシル)エタノールおよびヒドロキシエチルアクリレートおよび/もしくはヒドロキシエチルメタクリレートおよび/もしくはヒドロキシアルキルカプロラクトンアクリレートおよび/もしくはヒドロキシアルキルカプロラクトンメタクリレートからの反応生成物(U)を含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項8】
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、フッ素を含む構成成分として、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する、1種または複数のジイソシアネート(PI)1モル、
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルモノアルコール成分(FA)1モル、および
(iii)イソシアネート基に対する反応性基(G1)を有する1種または複数のエチレン性不飽和化合物(V)1モル
からの反応生成物(U)を含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項9】
前記成分(A)として使用される1種以上のポリ(メタ)アクリレートが、飽和しており、かつ
(a1)1種または複数のフッ素含有エチレン性不飽和反応生成物(U)0.05〜15.0質量%、
(a2)1種または複数のヒドロキシ基含有モノマー10〜50質量%、
(a3)エチレン性不飽和カルボン酸の1種または複数のアルキルエステルおよび/またはシクロアルキルエステル10〜89.95質量%、
(a4)1種または複数のビニル芳香族化合物0〜50質量%、ならびに
(a5)さらなるエチレン性不飽和モノマー0〜10質量%
から形成されており、ここで、前記モノマー(a1)〜(a5)の質量割合の合計が、そのつど100質量%であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項10】
前記成分(A)として使用されるポリ(メタ)アクリレートが、60〜300mgKOH/g、好ましくは70〜200mgKOH/gのOH価を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項11】
前記成分(A)として使用されるポリ(メタ)アクリレートが、−100℃〜+100℃、好ましくは−60℃〜+60℃のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項12】
前記被覆剤組成物が、カルボキシル基がπ電子系と共役する少なくとも1種のモノマーの芳香族の、場合により置換されているカルボン酸(S)を、そのつど成分(A)および(B)の合計の結合剤割合に対して0.2〜15.0質量%を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項13】
場合によりあらかじめ被覆された基材に、請求項1から12までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物からの層を塗布することを特徴とする被覆法。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項の被覆剤組成物の塗布後に、20〜80℃、特に20〜60℃の温度で硬化させることを特徴とする、請求項13に記載の被覆法。
【請求項15】
前記場合によりあらかじめ被覆された基材が、航空機または風力エネルギー装置または1種もしくは複数のその部品、好ましくは風力エネルギー装置の回転翼であることを特徴とする、請求項13または14に記載の被覆法。
【請求項16】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物を、最も外側の塗料層として風力エネルギー装置の回転翼に塗布することを特徴とする、請求項13から15までのいずれか1項に記載の被覆法。
【請求項17】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物のクリア塗料としての使用、もしくは請求項13から16までのいずれか1項に記載の方法の、永続的に撥水性および防汚性の表面被覆のための使用。
【請求項18】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物の、航空機または風力エネルギー装置またはその部品の氷結防止被覆のための使用。
【請求項19】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物の、航空機または風力エネルギー装置の回転翼の作動により発生する音を低減するための、該航空機または風力エネルギー装置の回転翼の被覆のための使用。
【請求項20】
前記塗料層の最上層が、請求項1から12までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物から製造されていることを特徴とする、1層、場合により多層の塗膜を有する風力エネルギー装置、または1種もしくは複数の風力エネルギー装置の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリヒドロキシ基および(ペル)フルオロアルキル基含有ポリ(メタ)アクリレート成分(A)、少なくとも1種のポリイソシアネート基含有化合物(B)および触媒(D)を含む非水性被覆剤組成物に関する。
【0002】
さらに、本発明の対象は、前記被覆剤組成物の使用下での被覆方法、ならびに、前記被覆剤組成物のクリア塗料としての、もしくは風力エネルギー装置または航空機またはそれらの部品の被覆のための、特に氷結防止被覆としての使用である。
【0003】
フッ素含有ポリマーをベースとする非水性被覆剤は、以前から、きわめて多様な多くの適用目的として公知である。
【0004】
例えば、EP−B−856020では、フッ素含有ポリアクリレート結合剤およびポリイソシアネート基含有架橋剤をベースとする非水性クリア塗料が記載されており、このクリア塗料は、硬化させて撥油性、防汚性および撥水性の被覆にすることができ、車両、例えば、地下鉄、列車、バスなど、工業設備、例えば、タンク、建造物および別の建物の被覆のために使用することができる。特に、前記クリア塗料は、落書きが問題となっている、建造物、バス、列車および別の対象物を被覆するのに用いられる、それというのは、結果として生じる被覆が、容易に洗浄することができ、さらに汚れに対して優れた耐性を有しているからである。フッ素含有ポリアクリレート結合剤を製造するために、フルオロアルキル基を有するエチレン性不飽和化合物、例えば、フルオロアルキルエチル(メタ)アクリレートまたは2−(N−エチルペルフルオロオクタンスルホアミド)エチルメタクリレートが使用される。ただし、このフッ素含有モノマーは、別個にして、その他のモノマーと別にして供給されねばならないため、前記結合剤の製造は、かなり費用がかかる。
【0005】
さらに、例えば、風力エネルギー装置の回転翼の被覆に求められるような、きわめて疎水性であると同時にきわめて高い機械的および光化学的な耐性を有する表面をいかに可能な限り長く保つことができるか、という説明は、前記文献において、可能な限り迅速な取り付け強度(Montagefestigekeit)および優れた補修接着性をいかに保証できるかという説明と同じくらいわずかにしか記載されていない。同じく、いかに可能な限り容易かつ経済的に前記特性を達成しうるかという説明も見当たらない。
【0006】
さらに、EP−B−856022からは類似の被覆剤が公知であり、この被覆剤は、フッ素含有ポリアクリレート結合剤に加えて、架橋剤としてポリイソシアネートを含んでおり、ここで、イソシアネート基の0.1〜33モル%が、ペルフルオロアルコールと反応する。そこに記載されているフッ素化ポリイソシアネートの製造では、モノフッ素化ポリイソシアネートの他に、高い割合のジフッ素化およびトリフッ素化ポリイソシアネートが予期され、これらは、塗装表面にマイグレーションするため、結果として生じる被覆の外見の全体的印象(いわゆる「外観」)、硬度、耐化学薬品性、および別の機械・技術的特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0007】
フッ素含有クリア塗料は、WO05/030892にも記載されており、ここで、前記クリア塗料は、結合剤としてフッ素含有ポリアクリレートを含んでおり、このポリアクリレートは、さらにオルガノシランモノマーを重合導入して含んでいる。前記フッ素含有ポリアクリレートは、さらにまた、フルオロアルキル基を有するエチレン性不飽和化合物、例えば、フルオロアルキルエチル(メタ)アクリレートまたは2−(N−エチルペルフルオロオクタンスルホアミド)アルキル(メタ)アクリレートの重合導入により得られる。
【0008】
WO05/030891から、改良されたクリア塗料/クリア塗料接着性を有するフッ素化クリア塗料が公知であり、この塗料は、フルオロアルキル基を有する重合導入されたエチレン性不飽和化合物、例えば、フルオロアルキルエチル(メタ)アクリレートまたは2−(N−エチルペルフルオロオクタンスルホアミド)アルキル(メタ)アクリレートをベースとするフッ素化シランポリマーの他に、接着性改善のために、フッ素化ポリウレタン樹脂を含んでいる。この樹脂は、ポリイソシアネートと、ペルフッ素化モノアルコール、ならびにオリゴマーおよび/またはポリマーのポリエーテルポリオール、例えば、エトキシ化/プロポキシ化グリコールとの反応により得られ、遊離イソシアネート基をもはや有していない。
【0009】
WO05/080465は、容易に洗浄でき、耐摩耗性で耐アルカリ性の被覆を記載しており、この被覆は、硬化可能な結合剤系および無機粒子の他に、この結合剤系の官能基と反応性である少なくとも1種の官能基を有する、少なくとも1種のフッ素含有ポリマーまたはオリゴマーを含む被覆の使用により得られる。フッ素含有ポリマーまたはオリゴマーとして、例えば、フッ素化ポリエーテル、フッ素化エポキシド、フッ素化ポリウレタンおよびフッ素含有重合体が使用され、ここで、このフッ素含有重合体は、市販のフルオロモノマー、例えば、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなどを使用して製造される。
【0010】
WO07/115752は、エポキシド/アミン硬化機構を有するポリウレタンをベースとする、二成分の水性複合反応性樹脂系(Hybridreaktivharzsysteme)を記載しており、この系は、建築および工業分野で、機械的に耐負荷性が高く、容易に洗浄できる被覆を製造するために使用される。場合により、前記被覆剤は、アミノ官能性および/またはヒドロキシ官能性および/またはメルカプト官能性のフッ素変性されたマクロモノマーまたはテレケリック体を含んでいてよい。
【0011】
さらに、WO05/007762は、共有結合されたフッ素化側鎖を有する水性の、場合によりフッ素化されたポリウレタン複合分散液を記載しており、前記側鎖は、ポリウレタンベースで、および/またはラジカル重合可能なフッ素含有モノマーで導入することができる。このポリウレタン複合分散液を使用して、高い硬度と関連する高い架橋密度によって条件付けられて、優れた機械的特性および優れた耐溶媒性および耐化学薬品性を有する、防汚性の被覆を製造することができる。この被覆は、きわめて多くの種々の使用目的に好適である。
【0012】
WO08/040428からも、無機および非無機の下地を持続的に撥油性、撥水性および防汚性の被覆にするための、特に建築および工業分野におけるフッ素変性されたポリウレタン被覆が公知である。
【0013】
さらに、EP−A−2085442から、フルオロシラン成分をベースとする水性被覆剤が公知であり、この成分は、種々の適用目的のための無機および非無機の下地を、持続的に撥油性で撥水性の表面処理するために使用される。
【0014】
EP−B−587667から、フッ素を含む無機重合体をベースとする被覆剤組成物が公知であり、この組成物は、ガラス、セラミック、金属、プラスチックおよび紙の被覆に、特に、車両のサイドミラーおよびバックミラーならびにフロントガラスの被覆に使用される。
【0015】
EP−A−1844863は、同じく、液体反発性の強い被覆、つまり、標準液体、例えば、特に水と、120°〜180°の可能な限り大きい接触角を形成する前記被覆を製造するための被覆剤を記載している。そのために、ポリマーおよびセラミック材料もしくはナノ粒子を含んでおり、例えば、規則的な表面を有する被覆をもたらす被覆剤が使用される。しかし、前記ポリマーの詳細な組成についての説明は、記載されていない。
【0016】
表面被覆に対して、フッ素化側鎖を有するくし形ポリマーによる試験がすでに実施された。これに関して、低い表面エネルギー、およびそれによって優れた防汚性で撥水性の特性を達成するために、主鎖に対して可能な限り長いフッ素化された鎖および可能な限り短い間隔保持物(「スペーサー」)が、炭化水素基の形態として、決定的であることが公知である。比較的長いスペーサーは、それと比べて明らかに不適切な結果をもたらす(“Fluorinated comblike homopolymers:The effect of spacer lengths on surface properties”,Saidi,Salima;Guittard,Frederic;Guimon,Claude;Geribaldi,Serge;Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry,vol.43,issue 17,3737〜3747ページ)。
【0017】
さらに、Journal of Donghua University(Natural Science),Vol.35,No.5,Oct.2009,547〜553ページから、ペルフルオロオクタノール、イソホロンジイソシアネートおよびヒドロキシエチルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートおよびオクタデシルアクリレートとの反応生成物の共重合によるフッ素化ポリアクリレートエマルジョンの製造、ならびに得られたフッ素化ポリアクリレートエマルジョンの、綿繊維を被覆するための使用が公知である。
【0018】
さらに、中国公開特許公報CN101020731Aは、ヒドロキシル基含有アクリレートコポリマーと、ジイソシアネートとペルフルオロアルキルアルコールとのイソシアネート基含有の等モルの反応生成物との反応による、フッ素化アクリレートコポリマーの製造を記載している。この溶媒ベースのフッ素化アクリレートコポリマーは、革、テキスタイル製品などの撥水性および撥油性の仕上げ加工を施すために使用される。
【0019】
多数の別の文献からも、撥水性被覆を製造するための疎水性被覆剤が公知である。例えば、EP−B−1210396は、氷結防止被覆の製造のための疎水性被覆剤組成物を記載しており、この組成物は、粒子のゲルへの化学結合により、好ましくはシリカベースで製造されるものであり、ここで、表面の疎水性は、この表面の粗さにより物理的に高められる。
【0020】
WO96/04123は、同様に、自浄性表面を製造するための疎水性被覆剤を記載しており、ここで、隆起およびくぼみの人工的な表面構造が生成されており、この隆起は、疎水性の材料からなるものである。そのために、例えば、テフロンが使用される。
【0021】
さらに、例えば、WO2011/147416から、風力エネルギー装置またはその部品、特に回転翼の表面に、氷、水および汚れが付着するのを防ぐために、疎水性の強い被覆を備えることが公知である、それというのは、これらが、例えば、回転翼の重量および空気力学に悪影響を及ぼすことがあり、それによって、風力エネルギー装置の効率を低下させるからである。被覆剤として、例えば、テフロン、フルオロポリウレタン、エポキシフッ素化成分、シリコーン処理されたポリ尿素などが推奨される。好適な被覆剤の組成についての詳細な説明は、前記文献にも記載されていない。
【0022】
さらに、WO2011/020876からも、風力エネルギー装置またはその部品、特に回転翼の表面を、テフロンと混同したフッ素化ポリウレタンまたはポリウレタンをベースとする疎水性の強い被覆を備えることが公知であるが、ここで、またもや、好適な被覆剤の組成についての詳細な説明は、前記文献には記載されていない。
【0023】
さらに、EP−B−1141543から、風力エネルギー装置の音響放射を低下させるために、風力エネルギー装置の回転翼を液体反発性塗料で被覆することが公知である。好適な塗料の例として、市販のマイクロシリコン塗料の他に、ボート被覆のために開発されたポリウレタン塗料も挙げられるが、ここで、またもや、好適な被覆剤の組成についての詳細な説明は、前記文献には記載されていない。
【0024】
したがって、本発明の課題は、特に、風力エネルギー装置または航空機またはそれらの部品を被覆するための被覆剤組成物であって、それぞれの下地、またはその下地にすでに存在する被覆への優れた接着性、ならびに結果として生じる被覆の優れた上塗り性(Ueberlackerbarkeit)を保証する前記被覆剤組成物を提供することであった。同時に、前記被覆剤は、持続的に撥水性および防汚性であり、とりわけ、風力エネルギー装置、航空機またはそれらの部品、特に風力エネルギー装置の回転翼に、氷、水および汚れが付着するのを持続的に減少させる被覆をもたらすのが望ましい。
【0025】
さらに、前記被覆剤組成物が、同時に、風力エネルギー装置の回転翼の被覆の分野において、特に、きわめて優れた機械的および光化学的な耐性に関して、高い要求を満たす被覆をもたらすことも望ましい。
【0026】
さらに、前記被覆剤組成物は、最大80℃の低温で、可能な限り迅速な、優れた硬化を示すのが望ましい、つまり、60℃にて30分の硬化後にすでに、最初の取り付け作業またはデマスキングが、被覆を損なうことなく実施できる範囲で硬化されているのが望ましい。しかし、同時に、前記被覆剤組成物の充分に長い加工時間(「ポットライフ」)が保証されていることも望ましい。ここで、ポットライフとは、前記被覆剤組成物が、その初期粘度の二倍の値に達した時間であると理解される。
【0027】
さらに、前記結果として生じる被覆は、優れた外見の全体的印象(いわゆる「外観」)、可能な限り高い硬度、優れた耐化学薬品性、ならびに自動車補修塗装およびプラスチック基材および/または有用車両の塗装の分野で通常必要とされる、優れた別の機械・技術的特性を有しているのが望ましい。
【0028】
最後に、前記被覆剤組成物は、可能な限り容易かつ経済的に製造できるのが望ましい。
【0029】
上記課題提起を踏まえて、非水性被覆剤組成物であって、
(A)ポリヒドロキシ基および(ペル)フルオロアルキル基含有ポリ(メタ)アクリレート成分(A)30〜80質量%、好ましくは50〜70質量%、
(B)1種または複数のポリイソシアネート基含有化合物(B)20〜70質量%、好ましくは30〜50質量%、および
(D)1種または複数の触媒(D)
を含んでおり、
ここで、成分(A)および(B)の質量%表示が、それぞれ成分(A)および(B)の結合剤含有量に関し、かつここで、成分(A)および(B)の質量割合の合計がそのつど100質量%である前記被覆剤組成物において、
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、
(i)異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数のジイソシアネート(PI)、
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルモノアルコール成分(FA)、および
(iii)場合により、イソシアネート基に対する少なくとも1つの反応性基(G1)、および場合により、前記基(G1)とは異なるさらなる官能基(G2)を有する、1種または複数の化合物(V)
からの1種または複数のフッ素含有反応生成物(U)を、そのつど該ポリ(メタ)アクリレート成分(A)の製造に使用されるすべての化合物の量に対して0.05〜15.0質量%含むことを特徴とする前記被覆剤組成物が見出された。
【0030】
さらに、本発明の対象は、前記被覆剤組成物を使用する被覆方法、ならびに前記被覆剤組成物の、クリア塗料として、もしくは風力エネルギー装置または航空機またはそれらの部品の被覆のための、特に氷結防止被覆としての使用である。
【0031】
本発明による被覆剤組成物が、それぞれの下地、またはその下地上にすでに存在している被覆への優れた接着性、ならびに結果として生じる被覆の優れた上塗り性を保証することは、驚くべきことであり、予期できないことであった。同時に、前記被覆剤は、持続的に撥水性および防汚性であり、かつとりわけ、持続的に、風力エネルギー装置、航空機またはそれらの部品、特に、風力エネルギー装置の回転翼に、氷、水および汚れが付着するのを減少させる被覆をもたらすものである。
【0032】
さらに、前記被覆組成物は、同時に、風力エネルギー装置の回転翼の被覆の分野において、特に、きわめて優れた機械的および光化学的な耐性に関して、高い要求も満たす被覆をもたらすものである。
【0033】
さらに、前記被覆剤組成物は、最大80℃の低温で、可能な限り迅速で、優れた硬化を示している、つまり、60℃で30分の硬化後すでに、最初の取り付け作業またはデマスキングを、前記被覆を損なうことなく実施することができる範囲で硬化している。しかし、同時に、前記被覆剤組成物の充分に長い加工時間(「ポットライフ」)も保証されている。
【0034】
さらに、結果として生じる被覆は、外見の全体的印象(いわゆる「外観」)が優れていること、硬度が可能な限り高いこと、耐化学薬品性が優れていること、ならびに自動車補修塗装およびプラスチック基材および/または有用車両の塗装の分野において、通常必要とされる別の機械・技術的特性が優れていることを特徴としている。
【0035】
最後に、前記被覆剤組成物は、容易かつ経済的に製造可能なものである。
【0036】
本発明の詳細な説明
ポリ(メタ)アクリレート成分(A)
以下の詳細な説明から判明する通り、ポリ(メタ)アクリレート成分(A)は、特に飽和ポリ(メタ)アクリレートコポリマーである。
【0037】
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が、構成成分として、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数のジイソシアネート(PI)、
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルモノアルコール成分(FA)、および
(iii)場合により、イソシアネート基に対する少なくとも1つの反応性基(G1)、および場合により、前記基(G1)とは異なるさらなる官能基(G2)を有する、1種または複数の化合物(V)
からの1種または複数のフッ素含有反応生成物(U)を、そのつど前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)の製造に使用されるすべての化合物の量に対して0.05〜15.0質量%、好ましくは0.1〜10.0質量%含んでいることが、本発明に必須である。
【0038】
ここで、前記フッ素含有反応生成物(U)は、多様な方法で前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)に導入されてよい。
【0039】
例えば、まず、ヒドロキシ基含有ポリ(メタ)アクリレート樹脂を製造して、次に、重合類似(polymeranalog)反応により、前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)のヒドロキシ基の一部と、フッ素基およびイソシアネート基含有の反応生成物(U)のまだ遊離のイソシアネート基と反応させることが可能である。
【0040】
前記フッ素基およびイソシアネート基含有反応生成物(U)は、例えば、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数のジイソシアネート(PI)、および
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルアルコール成分(FA)
から製造可能である。
【0041】
その他に、まず、さらなる官能基、例えば、カルボキシル基、無水物基、エポキシ基などを有する、ヒドロキシ基含有ポリ(メタ)アクリレート樹脂を製造し、次に、このさらなる官能基と、前記ポリ(メタ)アクリレート樹脂のさらなる官能基と反応するさらなる官能基を有するフッ素含有反応生成物(U)と反応させることも可能である。
【0042】
ここで、前記フッ素含有反応生成物(U)は、例えば、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数のジイソシアネート(PI)、
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルアルコール成分(FA)、および
(iii)イソシアネート基に対する少なくとも1つの反応性基(G1)、および場合により、前記基(G1)と異なるさらなる官能基(G2)を有する1種または複数の飽和化合物(V)
以下から製造可能である。
【0043】
好適な化合物(V)の例は、例えば、少なくとも2つのヒドロキシ基を有するポリマーポリオール、例えば、ポリエステルポリオール、ポリアルキレンエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリウレタンポリオールまたはポリシロキサンポリオールである。好ましいポリマーポリオールは、ポリエステル、ポリアルキレンエーテル、ポリエステルカーボネートおよびポリカーボネートである。
【0044】
ここで、1種もしくは複数のジイソシアネート(PI)と1種もしくは複数の化合物(V)および1種または複数の(ペル)フルオロアルキルアルコール(FA)との反応は、同時に行われてよいか、または、しかし、段階的に、例えば、まず、前記イソシアネート成分を1種または複数の化合物(V)と反応させて、続いて、得られた中間生成物と前記(ペル)フルオロアルキルアルコール成分(FA)と反応させることによって段階的に行われてよい。
【0045】
ただし、前記(ペル)フルオロアルキル基含有ポリ(メタ)アクリレート成分(A)は、重合類似反応ではなく、相応の(ペル)フルオロアルキル基含有のエチレン性不飽和反応生成物(U)の重合により製造されるのが好ましい。
【0046】
したがって、前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)は、フッ素を含む構成成分として、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数のジイソシアネート(PI)、
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルモノアルコール成分(FA)、ならびに
(iii)イソシアネート基に対する反応性基(G1)およびエチレン性不飽和二重結合を(G2)有する1種または複数の化合物(V)、
からの反応生成物(U)を含んでいるのが好ましい。
【0047】
前記特別なエチレン性不飽和のフッ素含有反応生成物(U)を構成成分として使用することは、前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)の製造に使用される、別のエチレン性不飽和化合物との優れた相溶性を保証する。したがって、一般に、本発明により使用されるペルフルオロアルキル基含有のエチレン性不飽和反応生成物は、この反応生成物を(慣用の、市販のフッ素含有モノマーの場合に必要である通り)別個の供給として供給する必要があるのではなく、前記反応生成物は、その他のモノマーと一緒に使用されてよい。
【0048】
上記フッ素基およびイソシアネート基含有反応生成物(U)を製造するためにも、使用されるのが好ましいエチレン性不飽和のフッ素含有反応生成物(U)を製造するためにも、2つの異なる反応性イソシアネート基を有するジイソシアネート(PI)、例えば、イソホロンジイソシアネートを使用することが本発明に必須である。これによって、選択的にモノフッ素化反応生成物を得ること、および相応に(そもそも存在するならば)きわめて少ない割合の二フッ素化反応生成物を得ることが保証されている。これによって、さらにまた、前記フッ素化反応生成物(U)が、可能な限り完全に前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)に組み込まれて、相応に、結果として生じる硬化された被覆においても網目構造に組み込まれる。
【0049】
上記フッ素基含有反応生成物(U)を製造するためにも、使用されるのが好ましいエチレン性不飽和のフッ素含有反応生成物(U)を製造するためにも、(ペル)フルオロアルキルモノアルコール成分(FA)として一般式(I)
【化1】
および/または一般式(II)
【化2】
[前記式中、R1、R2は、互いに独立してH、F、CF3であるが、R1およびR2は、同時にHであってはならず、
xは1〜20であり、yは1〜6であり、zは0〜100であり、
Aは、CR’R’’−CR’’’R’’’’−Oまたは(CR’R’’)a−OまたはCO−(CR’R’’)b−Oであり、
R’、R’’、R’’’、R’’’’は、互いに独立してH、アルキル、シクロアルキル、アリール、1〜25個の炭素原子を有する任意の有機基であり、
a、bは、3〜5であり、
ここで、前記ポリアルキレンオキシド構造単位Azは、任意のアルキレンオキシドのホモポリマー、コポリマーまたはブロックポリマーであるか、またはポリオキシアルキレングリコールであるか、またはポリラクトンである]
のペルフルオロアルコールが使用されるのが好ましい。
【0050】
ペルフルオロアルキルアルコール(FA)として好適な化合物の例は、例えば、WO2008/040428、33ページ4行〜34ページ3行に記載の(ペル)フルオロアルキルアルコール、ならびに、EP−B−1664222B1、9ページ、段落[0054]〜10ページ、段落[57]に記載の(ペル)フルオロアルキルアルコールである。
【0051】
特に、一般式(III)
【化3】
および/または一般式(IV)
【化4】
[前記式中、
lは1〜8であり、好ましくは、lは1〜6であり、特に好ましくは、lは2〜3であり、
mは1〜15であり、好ましくは、mは5〜15であり、
nは1〜12であり、好ましくは、nは1〜6であり、
oは1〜10であり、好ましくは、oは1〜4である]
の本発明によるペルフルオロアルキルアルコール(FA)が使用される。
【0052】
好適なペルフルオロアルコールの例は、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタン−1オール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデカン−1オール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12−ヘンエイコサフルオロドデカン−1オール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,14−ペンタコサフルオロテトラデカン−1オール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16−ノナコサフルオロヘキサデカン−1オール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロヘプタン−1オール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロノナン−1オール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−エイコサフルオロウンデカン−1オール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14−テトラコサフルオロトリデカン1−オール、および3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16−オクタコサフルオロペンタデカン−1オールである。
【0053】
上記フッ素基含有反応生成物(U)を製造するためにも、使用されるのが好ましいエチレン性不飽和のフッ素含有反応生成物(U)を製造するためにも、(ペル)フルオロアルキルアルコール成分(FA)として、一般式(V)
【化5】
[式中、rは1〜8であり、好ましくは、rは1〜6であり、特に、rは1〜4であり、pは1〜6であり、特に、pは1〜2である]のペルフルオロアルコールまたは一般式(V)の種々のフルオロアルコールの混合物が使用されるのが特に好ましい。
【0054】
特に、一般式(V)[式中、pは2である]のペルフルオロアルキルエタノール、好ましくは、2(ペルフルオロヘキシル)エタノールおよび2(ペルフルオロオクチル)エタノール、および一般式(V)の種々のペルフルオロアルキルエタノールの混合物、特に、2(ペルフルオロヘキシル)エタノールと2(ペルフルオロオクチル)エタノールとからの混合物が、場合により、別の(ペル)フルオロアルキルエタノールと一緒に使用される。好ましくは、2(ペルフルオロヘキシル)エタノール30〜49.9質量%および2(ペルフルオロオクチル)エタノール30〜49.9質量%を有するペルフルオロアルキルエタノール混合物、例えば、Daikin Industries Ltd.,社(日本、大阪)の市販製品Fluowet(登録商標)EA612およびFluowet(登録商標)EA812;2(ペルフルオロヘキシル)エタノール、例えば、市販製品Daikin A−1620、または2(ペルフルオロオクチル)エタノール、例えば、市販製品のDaikin A−1820が使用されるのが好ましい。2(ペルフルオロヘキシル)エタノールが使用されるのがことに好ましい。
【0055】
イソシアネート基に対する反応性基(G1)、およびエチレン性不飽和二重結合(G2)を有する化合物(V)として、例えば、さらにヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基またはアミド基を含む、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が考慮に入れられる。特に、化合物(V)として、さらにヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基またはアミド基を含む、アクリル系および/またはメタクリル系不飽和二重結合を有する化合物が考慮に入れられる。成分(V)として、さらにヒドロキシ基を含む、アクリル系および/またはメタクリル系不飽和二重結合を有する化合物が考慮に入れられるのが特に好ましい。
【0056】
好適なエチレン性不飽和化合物(V)の例は、エチレン性不飽和モノカルボン酸、およびエチレン性不飽和ジカルボン酸、ならびにそのヒドロキシアルキルエステル、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クエン酸、およびそのヒドロキシアルキルエステル、ならびにアミノ基含有アルキルエステル、例えば、ブチルアミノエチルメタクリレートである。
【0057】
前記化合物(V)が、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシシクロアルキルアクリレート、ヒドロキシシクロアルキルメタクリレートおよびそれらの混合物の群から選択されるのが特に好ましい。
【0058】
使用されるのが好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの例は、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートなどである。
【0059】
イソシアネートに対する反応性基(G1)を有するエチレン性不飽和化合物(V)として、特に、ラクトンと、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレートおよびそれらの混合物との反応生成物が使用されてもよい。これは、ラクトンのホモ重合体または混合重合体であってよく、好適な二官能性開始剤分子に付加されたラクトンの、末端ヒドロキシ基を有する付加生成物であるのが好ましい。好適なラクトンの例は、[ε]−カプロラクトン、[β]−プロピオラクトン、[γ]−ブチロラクトンおよび/またはメチル−[ε]−カプロラクトンならびにそれらの混合物である。ラクトンの重合体の代わりに、特に好ましくは、ラクトンに相当するヒドロキシカルボン酸の、相応の化学当量の重縮合体が使用されてもよい。
【0060】
さらに、イソシアネート基に対する反応性基(G1)を有するエチレン性不飽和化合物(V)として、ポリマーポリオールで変性されたヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレートおよびそれらの混合物が使用されてもよく、例えば、ポリエステルポリオール、ポリアルキレンエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリウレタンポリオールまたはポリシロキサンポリオールで変性されたヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレートおよびそれらの混合物である。好ましいポリマーポリオールは、ポリエステル、ポリアルキレンエーテル、ポリエステルカーボネートおよびポリカーボネートである。
【0061】
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)は、フッ素を含む構成成分として、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数の脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート(PI)、
(ii)一般式(V)
【化6】
[式中、rは1〜8であり、好ましくは、rは1〜6であり、特に好ましくは、rは1〜4であり、pは1〜6であり、好ましくは、pは1〜2である]の1種または複数の(ペル)フルオロアルキルアルコール成分(FA)、ならびに
(iii)ヒドロキシ基(G1)ならびにアクリル系および/またはメタクリル系不飽和二重結合(G2)を有する1種または複数の化合物(V)、好ましくは、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ラクトンと反応させたヒドロキシアルキルアクリレート、ラクトンと反応させたヒドロキシアルキルメタクリレートおよびそれらの混合物、
からの反応生成物(U)を含んでいるのが特に好ましい。
【0062】
前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)は、フッ素を含む構成成分として、イソホロンジイソシアネート、2−(ペルフルオロヘキシル)エタノールおよびヒドロキシエチルアクリレートおよび/またはヒドロキシエチルメタクリレートおよび/またはヒドロキシアルキルカプロラクトンアクリレートおよび/またはヒドロキシアルキルカプロラクトンメタクリレートからの反応生成物(U)を含んでいるのが殊に好ましい。
【0063】
ここで、前記成分(PI)、(FA)および(V)の質量比は、変化してよい。ただし、ペルフルオロアルキル基の重合類似の導入のために、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数のジイソシアネート(PI)1モル、および
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルモノアルコール成分(FA)1モル
からの反応生成物(U)であるのが好ましい。
【0064】
フッ素を含む構成成分として、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数のジイソシアネート(PI)1モル、
(iii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルモノアルコール成分(FA)1モル、および
(iii)イソシアネート基に対する少なくとも1つの反応性基(G1)を有する1種または複数のエチレン性不飽和化合物(V)1モル
からの反応生成物(U)を含む、ポリ(メタ)アクリレート成分(A)が使用されるのが特に好ましい。
【0065】
さらに、本発明によれば、前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)は、1種もしくは複数のペルフルオロアルキル基およびポリヒドロキシ基含有飽和ポリアクリレート、または1種もしくは複数のペルフルオロアルキル基およびポリヒドロキシ基含有飽和ポリメタクリレート、または1種もしくは複数のペルフルオロアルキル基およびポリヒドロキシ基含有飽和ポリアクリレートと、1種もしくは複数のペルフルオロアルキル基およびポリヒドロキシ基含有飽和ポリメタクリレートとからの混合物からなることが好ましい。しかし、成分(A)として、1種または複数のペルフルオロアルキル基、および場合によりポリヒドロキシ基含有飽和ポリ(メタ)アクリレートと、フッ素基を含まない、ポリヒドロキシ基含有飽和ポリ(メタ)アクリレートとからの混合物が使用されても当然よい。ここで、前記混合物が、1種または複数のフッ素含有反応生成物(U)を、そのつど前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)の製造に使用されるすべての化合物の量に対して0.05〜15質量%、好ましくは0.1〜10.0質量%含むことだけが留意される。
【0066】
成分(A)として、飽和であり、
(a1)1種または複数のフッ素を含むエチレン性不飽和反応生成物(U)0.05〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%、
(a2)1種または複数のヒドロキシ基含有モノマー10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%、
(a3)エチレン性不飽和カルボン酸の1種または複数のアルキルエステルおよび/またはシクロアルキルエステル10〜89.95質量%、好ましくは30〜84.9質量%、
(a4)1種または複数のビニル芳香族化合物0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%、ならびに
(a5)さらなるエチレン性不飽和モノマー0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、
から形成されており、ここで、前記モノマー(a1)〜(a5)の総質量の合計が、そのつど100質量%である前記ポリ(メタ)アクリレートが使用されるのが特に好ましい。
【0067】
モノマー(a2)として、化合物(V)としてすでに上記されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレート、ならびにエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルおよびヒドロキシシクロアルキルエステル、例えば、フマル酸、クロトン酸およびマレイン酸、およびそれらの混合物が好適である。
【0068】
モノマー(a3)として、特に、活性水素を含まないエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル、特に好ましくはさらなる官能基を含まないアルキルエステル、殊に好ましくはエチレン性不飽和カルボン酸を有する飽和モノアルコールのアルキルエステルが好適である。前記エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル(a3)の例は、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸およびマレイン酸、好ましくはアクリル酸および/またはメタクリル酸のアルキルエステルおよびシクロアルキルエステル、例えば、好ましくは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレートまたはラウリルメタクリレート、シクロアルキルアクリレートおよび/またはシクロアルキルメタクリレート、例えば、シクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレートおよび/またはシクロヘキシルメタクリレートである。
【0069】
モノマー(a4)として、特に、活性水素を含まないビニル芳香族化合物が好適である。好適なビニル芳香族化合物(a4)の例は、ビニル芳香族炭化水素、例えば、ビニルトルエン、α−メチルスチレンまたは特にスチレンである。
【0070】
モノマー(a5)として、特に、活性水素を含まない、少なくとも2つの重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有するエチレン性不飽和化合物が好適である。少なくとも2つの重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する好適なエチレン性不飽和モノマー(a5)の例は、エチレン性不飽和カルボン酸を有する飽和ジアルコールのジエステル、特に、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸およびマレイン酸、好ましくはアクリル酸および/またはメタクリル酸を有する飽和ジアルコールのジエステル、例えば、ヘキサジオールジアクリレート、ヘキサジオールジメタクリレート、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートである。最後に、モノマー(a5)として、ポリイソシアネートと不飽和アルコールまたはアミンとの反応生成物が使用されてもよい。その例として、ヘキサメチレンジイソシアネート1モルとアリルアルコール2モルとからの反応生成物、またはイソホロンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとからの反応生成物が挙げられる。
【0071】
モノマー(a1)〜(a4)とは異なるさらなるエチレン性不飽和化合物(a5)として、活性水素を含まず、ケイ素を含まないモノマー、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸のニトリル、ビニルエステルまたはビニルエーテル、エチレン性不飽和カルボン酸アミド、例えば、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、イタコン酸ジアミド、α−エチルアクリルアミド、クロトン酸アミド、フマル酸アミドおよびマレイン酸ジアミドが使用されてもよい。
【0072】
本発明による殊に好ましいポリ(メタ)アクリレートポリオールは、一般に、コポリマーであり、それぞれ標準ポリスチレンに対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定して、1,000〜20,000ダルトン、特に1,500〜10,000ダルトンの質量平均分子量Mwを有しているのが好ましい。
【0073】
前記コポリマーのガラス転移温度は、一般に、−100〜100℃、特に−60〜60℃以下である(DIN−EN−ISO11357−2に準拠してDSC測定を用いて測定)。
【0074】
前記ポリ(メタ)アクリレートポリオールは、60〜300mgKOH/g、特に70〜200mgKOH/gのOH価を有するのが好ましい。
【0075】
水酸基価(OH価)は、物質1gによってアセチル化で結合される酢酸量と当量の水酸化カリウムのmg数を示すものである。前記試料は、前記測定では無水酢酸ピリジンで沸騰させて、生じた酸を水酸化カリウム溶液で滴定する(DIN53240−2)。純粋なポリ(メタ)アクリレートの場合、OH価は、使用されるOH官能性モノマーに基づく計算により充分正確に測定することもできる。
【0076】
前記ポリ(メタ)アクリレートポリオールは、0〜30mgKOH/gの酸価を有しているのが好ましい。ここで、酸価は、そのつど化合物1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を示す(DIN EN ISO2114)。
【0077】
ポリヒドロキシ基含有化合物(C)
本発明による被覆剤組成物は、場合により、ポリヒドロキシ基含有ポリ(メタ)アクリレート成分(A)の他に、さらに1種もしくは複数の、成分(A)とは異なる、モノマーのポリヒドロキシ基含有飽和化合物、ならびに/またはオリゴマーおよび/またはポリマーの飽和したポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオールおよびポリシロキサンポリオール、特に飽和ポリエステルポリオールを(C)として含んでいてよい。前記化合物(C)は、それぞれこの被覆剤組成物の結合剤の割合に対して0〜20質量%、特に好ましくは0〜10質量%、殊に好ましくは1〜5質量%の割合を占有しているのが好ましい。
【0078】
好適なポリエステルポリオールは、例えば、EP−A−0994117およびEP−A−1273640に記載されている。ポリウレタンポリオールは、好ましくは、ポリエステルポリオールプレポリマーと、好適なジイソシアネートまたはポリイソシアネートとの反応により製造され、例えば、EP−A−1273640に記載されている。好適なポリシロキサンポリオールは、例えば、WO−A−01/09260に記載されている。
【0079】
ヒドロキシ基含有化合物(C)として、低分子ポリオールが使用されてよい。低分子ポリオールとして、例えば、ジオール、例えば、好ましくはエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,2−シクロヘキサンジメタノール、ならびにポリオール、例えば、好ましくはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールヘキサン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリトール、ならびにジペンタエリトリトールが使用される。前記低分子ポリオールは、わずかな割合で前記ポリオール成分(A)に加えて混合されるのが好ましい。
【0080】
ポリイソシアネート基含有成分(B)
本発明により使用されるイソシアネート基含有化合物(B)は、自体公知の置換されている、または置換されていない芳香族、脂肪族、脂環式および/または複素環式ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートであるのが好ましい。
【0081】
好適なジイソシアネートの例は、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えば、Bayer AG社Desmodur(登録商標)W)、テトラメチルキシリルジイソシアネート(例えば、American Cyanamid社TMXDI(登録商標))および前記ポリイソシアネートの混合物である。さらに好ましいポリイソシアネートは、前記ジイソシアネートのイソシアヌレート三量体および/またはアロファネート二量体および/またはビウレット二量体および/またはウレトジオン二量体である。
【0082】
本発明のさらなる実施態様では、前記ポリイソシアネートは、ポリオールと化学量論的過剰の前記ポリイソシアネートとの反応により得られる、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネートプレポリマーである。前記ポリイソシアネートプレポリマーは、例えば、US−A−4,598,131に記載されている。
【0083】
特に好ましいポリイソシアネート成分(B)は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートおよび/またはそのイソシアヌレート三量体および/またはそのアロファネート二量体および/またはそのビウレット二量体および/またはそのウレトジオン二量体である。
【0084】
つまり、前記ポリイソシアネート成分(B)は、前記成分(A)の製造に場合により使用されるイソシアネート基含有反応生成物(U)と、特に、イソシアネート基含有量が比較的高い点で区別される、それというのは、前記成分(B)が、1分子当たり平均少なくとも2つのイソシアネート基を有している一方で、前記イソシアネート基含有反応生成物(U)は、1分子当たり平均して2つ未満、好ましくは1つのイソシアネート基を有しているからである。
【0085】
触媒(D)
触媒(D)として、自体公知の化合物が使用されてよい。例えば、ルイス酸(電子不足化合物)、例えば、ナフテン酸スズ、安息香酸スズ、オクタン酸スズ、酪酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、ジブチル酸化スズ、オクタン酸鉛、リン酸またはスルホン酸のアミン付加物(例えば、King Industries社Nacure−Typ)である。前記被覆剤において、反応生成物(U)の製造にも使用される触媒が使用されるのが好ましい。したがって、特に、1つのイソシアネート基だけの選択的反応を、前記反応生成物の製造で保証する触媒、例えば、特に、スズを含む触媒が使用される。
【0086】
1種または複数の触媒(D)が、それぞれ成分(A)および(B)の合計の結合剤含有量に対して0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%使用されるのが好ましい。
【0087】
モノマーの芳香族カルボン酸(S)
さらに、取り付け強度および機械的特性を改善するために、前記被覆剤組成物が、少なくとも1種のモノマーの芳香族、場合により置換されているカルボン酸(S)であって、そのカルボキシル基がπ電子系と共役する前記カルボン酸(S)を含んでいることが好ましい。ここで、前記カルボキシル基の数は変化してよく、ここで、前記カルボン酸は、1つのカルボキシル基を有しているのが好ましい。前記モノマーの芳香族、場合により置換されているカルボン酸は、500g/mol未満、特に好ましくは300g/mol未満の分子量を有しているのが好ましい。2〜5のpKs値(酸解離定数)を有するモノマーの芳香族、場合により置換されているカルボン酸が使用されるのが好ましい。pKs値は、半当量点のpH値に相当しており、ここで、溶媒は、水であるのが好ましい。酸の場合に、pKs値の表示が水中では不可能である場合、溶媒としてDMSOか、または酸が溶解可能な別の好適な溶媒が選択されるのが好ましい。
【0088】
モノマーの芳香族モノカルボン酸およびポリカルボン酸、相応のアルキルおよびアリール置換されている芳香族モノカルボン酸およびポリカルボン酸、ならびに相応のヒドロキシ基含有芳香族モノカルボン酸およびポリカルボン酸、例えば、フタル酸およびテレフタル酸、アルキルもしくはアリール置換されているフタル酸およびテレフタル酸、安息香酸およびアルキルもしくはアリール置換されている安息香酸、さらなる官能基を有する芳香族カルボン酸、例えば、サリチル酸およびアセチルサリチル酸、アルキルもしくはアリール置換されているサリチル酸またはその異性体、多核芳香族カルボン酸、例えば、ナフタリンカルボン酸の異性体およびその誘導体が好適である。
【0089】
前記被覆剤組成物が、モノマーの芳香族カルボン酸(S)として、安息香酸、tert−ブチル安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、サリチル酸および/またはアセチルサリチル酸、特に好ましくは安息香酸を含んでいるのが好ましい。
【0090】
成分(A)、(B)、場合により(C)、(D)および場合により(S)ならびに前記被覆剤組成物のさらなる成分の組み合わせ
一成分被覆剤組成物である場合、遊離イソシアネート基がブロック剤でブロックされているポリイソシアネート基含有化合物(B)が選択される。例えば、前記イソシアネート基は、置換されているピラゾール、特にアルキル置換されているピラゾール、例えば、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾールなどでブロックされてよい。前記成分(B)のイソシアネート基が、ブッロクされずに使用されるのが特に好ましい。
【0091】
前記2成分(2K)被覆剤組成物の場合、前記被覆剤を塗布する直前に、ポリヒドロキシ基含有化合物(A)ならびにさらなる以下に記載の成分を含む塗料成分は、前記ポリイソシアネート基含有化合物(B)ならびに場合により以下に記載のさらなる成分を含むさらなる塗料成分と自体公知の方法で混合され、ここで、一般に、前記化合物(A)を含む塗料成分は、触媒(D)ならびに前記溶媒の一部を含んでいる。
【0092】
前記ポリヒドロキシ成分(A)は、好適な溶媒中に存在していてよい。好適な溶媒(L)は、前記ポリヒドロキシ成分を充分に溶解することが可能であり、かつ前記被覆剤中で前記化合物(A)、(B)、(D)、(S)、および場合により(C)に対して化学的不活性であり、前記被覆剤の硬化においても、(A)、場合により(C)、(B)、(D)および(S)と反応しない溶媒である。特に、これは、非プロトン性溶媒である。この非プロトン性溶媒(L)の例を以下に挙げる。
【0093】
本発明による被覆剤組成物は、前記成分(A)および場合により(C)のヒドロキシ基と、前記成分(D)のイソシアネート基との反応により硬化する。
【0094】
前記ポリオール(A)および場合により(C)、ならびに前記ポリイソシアネート(B)の質量割合は、前記ポリヒドロキシ基含有化合物(A)および場合により(C)のヒドロキシ基対前記成分(B)のイソシアネート基のモル当量比が、1:0.9〜1:1.5、好ましくは1:0.9〜1:1.1、特に好ましくは1:0.95〜1:1.05であるように選択されるのが好ましい。
【0095】
本発明によれば、前記ポリヒドロキシ基および(ペル)フルオロアルキル基含有ポリ(メタ)アクリレート成分(A)を、それぞれ前記成分(A)の結合剤含有量に対して30〜80質量%、好ましくは50〜70質量%、ならびに1種以上のポリイソシアネート基含有化合物(B)を、それぞれ前記成分(B)の結合剤含有量に対して20〜70質量%、好ましくは30〜50質量%含んでおり、ここで、前記成分(A)および(B)の質量割合の合計は、常に100質量%である。
【0096】
さらに、本発明による被覆剤組成物は、1種または複数の触媒(D)を、それぞれ成分(A)および(B)の合計の結合剤含有量に対して好ましくは0.001〜5質量%、特に好ましくは0.01〜2質量%含んでいる。
【0097】
本発明による被覆剤組成物は、さらに、少なくとも1種の芳香族カルボン酸(S)を0.2〜15.0質量%、好ましくは0.5〜8.0質量%、特に好ましくは0.5〜5.0質量%含んでいるのが好ましく、ここで、質量%表示は、それぞれ前記成分(A)および(B)の合計の結合剤含有量に対している。
【0098】
結合剤含分とは、それぞれ、架橋前の前記被覆剤組成物のテトラヒドロフラン(THF)中に可溶性の含分であると理解される。そのために、50〜100倍の量のTHFが溶解している少量の試料(P)が秤量され、不溶性の構成成分がろ別され、THFが蒸発されて、続いて、60分間130℃にて乾燥させることによって、前記あらかじめTHF中に溶解された構成成分の固形体が測定され、デシケーターで冷却されて、その後、再び秤量される。残留物は、前記試料(P)の結合剤含有量に相当する。
【0099】
前記成分(A)および(B)の質量割合の合計(ここで、しかし、それぞれ前記結合剤含分だけは考慮されるが、場合により存在する溶媒含分は考慮されない)は、そのつど100質量%であり、成分(D)および(S)の量は、前記成分(A)および(B)の質量割合の合計に対している。
【0100】
本発明による被覆剤組成物は、非水性被覆剤であるのが好ましく、溶媒を含んでいてよいか、または溶媒を含まない系として調製されていてよい。
【0101】
本発明による被覆剤組成物のための溶媒(L)として、特に、前記被覆剤中で前記化合物(A)および(B)に対して化学的不活性であり、かつ前記被覆剤の硬化においても(A)および(B)と反応しない溶媒が好適である。前記溶媒(L)の例は、脂肪族および/または芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、溶媒ナフサ、Solvesso 100またはHydrosol(登録商標)(ARAL社)、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンまたはメチルアミルケトン、エステル、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチルまたはエトキシプロピオン酸エチル、エーテルまたは前記溶媒からの混合物である。前記芳香族溶媒または溶媒混合物が、前記溶媒に対して最大1質量%、特に好ましくは最大0.5質量%の含水量を有しているのが好ましい。
【0102】
前記1種もしくは複数の溶媒(L)は、本発明によれば被覆剤組成物中で、前記被覆剤組成物の固形体含有量が、少なくとも50質量%、特に好ましくは少なくとも60質量%である量で使用されるのが好ましい。
【0103】
さらに、本発明による被覆剤組成物は、1種もしくは複数のアミノプラスト樹脂および/または1種もしくは複数のトリ(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン(E)を、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含有量に対して0〜30質量%、好ましくは0〜15質量%含んでいてよい。
【0104】
好適なトリ(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンの例は、US−A−4939213、US−A−5084541およびEP−A−0624577に挙げられている。
【0105】
好適なアミノプラスト樹脂(E)の例は、塗料産業の分野で通常使用されるあらゆるアミノプラスト樹脂であり、ここで、このアミノプラスト樹脂の反応性によって、結果として生じる被覆剤の特性を制御することができる。アルデヒド、特に、ホルムアルデヒド、および例えば、尿素、メラミン、グアナミンおよびベンゾグアナミンからの縮合性生物である。前記アミノプラスト樹脂は、一般に、部分的または好ましくは完全にアルコールでエーテル化されているアルコール基、好ましくはメチロール基を含んでいる。特に、低級キュアルコールでエーテル化されたアミノプラスト樹脂が使用される。メタノールおよび/またはエタノールおよび/またはブタノールでエーテル化されたアミノプラスト樹脂、例えば、Cymel(登録商標)、Resimene(登録商標)、Maprenal(登録商標)およびLuwipal(登録商標)の名称で市販されている生成物が使用されるのが好ましい。
【0106】
前記アミノプラスト樹脂(E)は、以前より公知の化合物であり、例えば、米国特許出願US2005/0182189A1、1ページ、段落[0014]〜4ページ、段落[0028]に詳しく記載されている。
【0107】
さらに、本発明による被覆剤混合物もしくは本発明による被覆剤組成物は、少なくとも1種の通常および公知の塗料添加剤(F)を、有効的な量、つまり、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含有量に対して好ましくは20質量%まで、特に好ましくは15質量%まで、特に10質量%までの量で含んでいてよい。
【0108】
好適な塗料添加剤(F)の例は、以下の通りである:
・特に、UV吸収剤;
・特に、光保護剤、例えば、HALS化合物、ベンゾトリアゾールまたはオキサラニリド(Oxalanilide);
・ラジカル捕捉剤;
・スリップ剤;
・重合抑制剤;
・消泡剤;
・成分(A)および(C)とは異なる反応性希釈剤、特に、さらなる成分もしくは水との反応により初めて反応性になる反応性希釈剤、例えば、Incozol(登録商標)またはアスパラギン酸エステル;
・成分(A)および(C)とは異なる湿潤剤、例えば、シロキサン、フッ素含有化合物、カルボン酸半エステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸およびそのコポリマーまたはポリウレタン;
・接着促進剤;
・レベリング剤;
・塗膜形成助剤、例えば、セルロース誘導体;
・充填剤、例えば、二酸化ケイ素をベースとするナノ粒子、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウム;さらなる補足は、Roempp Lexikon “Lacke und Druckfarben” Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1998,250〜252ページを参照;
・成分(A)および(C)とは異なるレオロジー制御添加剤、例えば、特許文献WO94/22968、EP−A−0276501、EP−A−0249201またはWO97/12945から公知の添加剤;例えば、EP−A−0008127に開示されている、架橋された高分子ミクロ粒子(polymere Mikroteilchen);無機層状ケイ酸塩、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、モンモリロナイトタイプのナトリウム−マグネシウム層状ケイ酸塩、およびナトリウム−マグネシウム−フッ素−リチウム層状ケイ酸塩、ケイ酸、例えば、Aerosile(登録商標);またはイオン性および/または会合性作用基を有する合成ポリマー、例えば、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、またはエチレン−無水マレイン酸コポリマー、ならびにそれらの誘導体または疎水性変性エトキシ化ウレタンまたはポリアクリレート;
・防火剤。
【0109】
被覆剤組成物であって、
少なくとも1種のポリヒドロキシ基含有ポリアクリレート(A)および/または少なくとも1種のポリヒドロキシ基含有ポリメタクリレート(A)を、成分(A)の結合剤含有量に対して50〜70質量%、
前記ポリイソシアネート基含有化合物(B)を、前記成分(B)の結合剤含有量に対して30〜50質量%、
前記ヒドロキシ基含有成分(C)の、前記被覆剤組成物の結合剤含有量に対して0〜10質量%、
少なくとも1種の芳香族カルボン酸(S)を、成分(A)および(B)の合計の結合剤含有量に対して0.5〜8.0質量%、
1種もしくは複数のアミノプラスト樹脂および/または1種もしくは複数のトリ(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン(E)を、前記被覆剤組成物の結合剤含有量に対して0〜15質量%、
少なくとも1種の通常および公知の塗料添加剤(F)を、前記被覆剤組成物の結合剤含有量に対して0〜10質量%、
ならびに
少なくとも1種の触媒(D)を、成分(A)および(B)の合計の結合剤含有量に対して0.01〜2質量%、
を含んでおり、
ここで、前記成分(A)および(B)の質量割合の合計は、そのつど100質量%であり、かつ、ここで前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)は、
(i)2つの異なる反応性イソシアネート基を有する1種または複数の脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート(PI)、
(ii)1種または複数の(ペル)フルオロアルキルアルコール成分(FA)
【化7】
[式中、nは1〜6である]、ならびに
(iii)ヒドロキシ基(G1)ならびにアクリル系および/またはメタクリル系不飽和二重結合(G2)を有する1種または複数の化合物(V)、好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ラクトンと反応したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそれらの混合物の群から選択される、
からの1種または複数のフッ素含有反応生成物(U)を、そのつど前記ポリ(メタ)アクリレート成分(A)の製造で使用されるすべての化合物の量に対して0.1〜10.0質量%含む、前記被覆剤組成物が特に好ましい。
【0110】
本発明のさらなる実施態様では、本発明による被覆剤混合物もしくは本発明による被覆剤組成物は、さらに顔料および/または充填剤を含んでいてよく、顔料着色された上塗り塗料もしくは顔料着色された下塗り塗料またはサーフェーサー剤、特に、顔料着色された上塗り塗料の製造に用いられる。そのために使用される顔料および/または充填剤は、当業者に公知である。前記顔料は、通常、この顔料対結合剤の比が、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含有量に対して、0.05:1〜1.5:1である量で使用される。
【0111】
本発明による被覆剤から製造される本発明による被覆が、すでに硬化した電着塗膜、サーフェーサー塗膜、ベース塗膜または通常および公知のクリア塗膜の上にも際立って接着するため、自動車ライン(OEM)塗装における使用の他に、自動車補修塗装および/または自動車付属部品の被覆、および/または有用車両の被覆に際立って好適である。
【0112】
本発明による被覆剤組成物の塗布は、あらゆる通常の塗布方法、例えば、スプレー、ドクターブレード、刷毛塗り、流し込み、浸漬、含浸、滴下またはロールによって行われてよい。ここで、被覆されるべき基材は、それ自体は静止していてよく、ここで、塗布装置または塗布設備が動かされる。しかし、前記被覆されるべき基材、特に、コイルが動かされてもよく、ここで、塗布設備は、基材に対して静止しているか、または好適な方法で動かされる。
【0113】
スプレー塗布法、例えば、圧縮空気吹付、エアレス吹付、高速回転、電着塗装(ESTA)が、場合により、ホットスプレー塗布、例えば、ホットエアホットスプレーと結びつけて適用されるのが好ましい。
【0114】
前記塗布された本発明による被覆剤の硬化は、ある程度の静止時間の後に行うことができる。この静止時間は、例えば、前記塗料層の流展および脱気のため、または揮発性成分、例えば、溶媒を気化するために用いられる。この静止時間は、ここで、前記塗装層の損傷または変化、例えば、予定より早い完全な架橋が生じない範囲内で、高められた温度を適用することによって、および/または減少させた空気湿分により維持する、および/または短縮することができる。
【0115】
前記被覆剤の熱硬化は、方法に関する特徴は有していないが、通常および公知の方法、例えば、循環炉内での加熱またはIRランプの照射により行われる。ここで、前記熱硬化は、段階的に行われてもよい。さらなる好ましい硬化方法は、近赤外線(NIR線)による硬化である。
【0116】
前記熱硬化は、1分〜10時間までの間に20〜200℃の温度で行われるのが好ましく、ここで、低温の場合、比較的長い硬化時間を適用することもできる。ここで、自動車補修塗装の場合、およびプラスチック部品の塗装ならびに有用車両の塗装の場合、通常、好ましくは20〜80℃、特に20〜60℃の低温が適用される。
【0117】
本発明による被覆剤組成物は、移動手段(特に、自動車、例えば、自転車、オートバイ、バス、貨物自動車もしくは乗用車)の車体またはその部品の装飾、保護および/もしくは硬化を与える被覆ならびに塗膜として;特に、乗用車車体のプラスチック付属部品を、例えば、屋根、後部荷室扉、ボンネット、フェンダー、バンパー、スポイラー、ロッカーパネル、ライニングストリップ、サイドクラッディングなどを製造する場合に被覆するために、ならびに有用車両、例えば、貨物自動車、チェーン駆動式建設車両、例えば、クレーン車、ホイールローダーおよびコンクリートミキサー車、乗合自動車、レール使用車両、船舶、航空機ならびに農作業用機器、例えば、トラクターおよび刈り取り脱穀機、およびそれらの部品、ならびに家具、窓および扉;プラスチック成形部品、特にCDおよび窓;シート;光学的、電気光学的および機械的構成部材ならびにガラス中空体および日用品を塗装するために好適である。
【0118】
したがって、本発明による被覆剤組成物は、例えば、場合によりあらかじめ被覆された基材に塗布されてよく、ここで、本発明による被覆剤組成物は、顔料着色されていても、顔料着色されていなくてもよい。本発明による被覆剤組成物は、クリア塗料として使用されるのが好ましい。同時に優れた機械的および光化学的な耐性の場合の疎水性特性のため、前記組成物は、あらゆる種類の、場合によりあらかじめ被覆された基材の永続的な撥水性および防汚性の表面被覆のためにも使用される。
【0119】
本発明による被覆剤組成物は、場合によりあらかじめ被覆された基材に、本発明による被覆剤組成物を有する層が塗布される被覆法で使用されるのが特に好ましい。ここで、場合によりあらかじめ被覆された基材として、特に航空機または風力エネルギー装置またはそれらの1種もしくは複数の部品、特に、風力エネルギー装置の回転翼が考慮に入れられる。
【0120】
さらに、本発明による被覆剤組成物は、場合によりあらかじめ被覆された基材上に、まず、顔料着色されたベース塗料層が、次に、本発明による被覆剤組成物を有する層が塗布される方法でも使用される。したがって、本発明の対象は、少なくとも1つの顔料着色されたベース塗料層と、それに続いて配置される、少なくとも1つのクリア塗料層とからの効果および/または色を与える多層塗膜であって、前記クリア塗料層が、本発明による被覆剤組成物から製造されていることを特徴とする前記多層塗膜でもある。
【0121】
水で希釈可能なベース塗料が使用されてもよく、有機溶媒をベースとするベース塗料が使用されてもよい。好適なベース塗料は、例えば、EP−A−0692007、およびその第3欄、50行以下に記載の文献に記載されている。前記塗布されたベース塗料は、まず、乾燥されるのが好ましい、これは、このベース塗膜から、蒸発段階で前記有機溶剤もしくは水の少なくとも一部が取り除かれることを意味する。前記乾燥は、室温〜80℃の温度で行われるのが好ましい。前記乾燥後、本発明による被覆剤組成物が塗布される。続いて、中間塗膜が、自動車ライン塗装で適用される条件下では、20〜200℃の温度で、1分〜10時間までの間に焼成されるのが好ましく、ここで、自動車補修塗装の場合に適用される温度、一般に20〜80℃、特に20〜60℃である温度では、比較的長い硬化時間が適用されてもよい。
【0122】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、本発明の被覆剤組成物は、透明なクリア塗料として、プラスチック基材、特にプラスチック付属部品を被覆するために使用される。前記プラスチック付属部品は、同じく、多段階被覆法で被覆されるのが好ましく、この方法では、場合によりあらかじめ被覆された、または後続の被覆をより良く接着させるために前処理が施された基材(例えば、前記基材の火炎処理、コロナ処理、またはプラズマ処理)に、まず顔料着色されたベース塗料層が、その後、本発明による被覆剤組成物を有する層が塗布される。
【0123】
前記被覆されるべきプラスチック部品は、通常、ASA、ポリカーボネート、ASAとポリカーボネートとからのブレンド、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレートまたは耐衝撃性変性されたポリメチルメタクリレートからなり、特に、好ましくはポリカーボネート含分が40%より多い、特に50%より多いASAとポリカーボネートとからのブレンドが使用される。
【0124】
ここで、ASAとは、一般に、耐衝撃性変性されたスチレン/アクリロニトリル重合体であると理解され、ここで、ポリアルキルアクリレートゴム上の、ビニル芳香族化合物、特に、スチレン、およびビニルシアン化物、特に、アクリルニトリルのグラフトコポリマーは、特にスチレンおよびアクリロニトリルからのコポリマーマトリックスとして存在している。
【0125】
本発明による被覆剤組成物が、航空機および風力エネルギー装置またはそれらの部品、特に、風力エネルギー回転翼の被覆法のきわめて要求の高い分野で、特に風力エネルギー装置の回転翼上の上塗り塗装(Decklackierung)(外側塗料層)として使用されるのが殊に好ましい。
【0126】
したがって、本発明の対象は、本発明による被覆剤組成物の、航空機または風力エネルギー装置またはそれらの部品の氷結防止被覆のため、特に、風力エネルギー装置の回転翼の氷結防止被覆のための使用でもある。
【0127】
さらに、本発明は、本発明による被覆剤組成物の、航空機または風力エネルギー装置の回転翼の作動により発生する音を低下させるための、この航空機または風力エネルギー装置の回転翼の被覆のための使用にも関する。
【0128】
したがって、本発明の対象は、塗料層の最上層が、本発明による被覆剤組成物から製造されていることを特徴とする、1層(場合により多層)の塗膜を有する風力エネルギー装置または風力エネルギー装置の1種もしくは複数の部品でもある。
【0129】
例1〜例3
本発明によるフルオロモノマー1の製造
イソホロンジイソシアネート83gを、撹拌器、還流冷却器、温度計および滴下漏斗を備える三口フラスコ1l内に、二ラウリン酸ジブチルスズ0.1gと一緒に装入する。前記三口フラスコを55℃に加熱して、次に、滴下漏斗でゆっくりと市販の2−(ペルフルオロヘキシル)エタノールをベースとするフルオロアルコール(市販製品Daikin Industries Ltd社(日本、大阪)Daikin A−1620)40.7gを添加する。以下に記載のジブチルアミンによる滴定により測定されるNCO含有量6.85%が得られる。その後、同じく55℃で、ヒドロキシエチルメタクリレート14.5gを滴加する。さらに酢酸ブチル5.2gを添加する。NCO含有量0.01%未満に達した後、冷却する。このようにして得られた澄明で、無色の溶液は、93.3質量%の含分のフルオロモノマーを有している。
【0130】
本発明によるフルオロモノマー2の製造
ヒドロキシエチルメタクリレート1モルを、ε−カプロラクトン2モルと一緒に、二ラウリン酸ジブチルスズ50ppmを添加しながら120℃で2時間撹拌する。次に、この反応生成物を、55℃でフルオロアルコール1モルとIPDI 1molとからの反応生成物に滴加する。
【0131】
本発明によるフルオロモノマー3の製造
ヒドロキシエチルメタクリレート1モルを、ε−カプロラクトン4モルと一緒に、二ラウリン酸ジブチルスズ50ppmを添加しながら120℃で2時間撹拌する。次に、この反応生成物を、55℃でフルオロアルコール1モルとIPDI 1モルとからの反応生成物に滴加する。
【0132】
前記フルオロモノマーのNCO含有量の測定
未反応のNCOの含有量は、ジブチルアミンにより、ブロモフェノールブルーに対して塩酸0.5nを用いる滴定により以下の通り測定する:
実際の滴定の前に、空試験値測定を実施する。この空試験値測定では、定義されて添加された量のジブチルアミンを、ブロモフェノールブルーを指示薬として使用して、水性塩酸0.5モル/lを用いて青から黄色
に滴定する。この消費は、「空試験における消費」として考慮される。
【0133】
前記主要の滴定では、前記試料は、ジブチルアミンと完全に反応して消散する。ここで、N−C二重結合が開かれて、ジブチルアミンが付加される。尿素誘導体が生じる。前記未反応のジブチルアミンを、指示薬であるブロモフェノールブルーを使用して、水性塩酸0.5モル/lにより青から黄色に逆滴定する。色の変化は、約30秒安定していなければならない。この消費は、「主要試験における消費」として考慮される。
【0134】
種々のフルオロモノマーを有する本発明によるポリマー溶液の製造
油加熱された特殊鋼ジャケットで温度調節され、アンカー撹拌器、還流冷却器および温度計を備える特殊鋼加圧反応器4l内に、酢酸ブチル911.1gを装入する。前記装置を窒素で洗浄した後、窒素で生成された2.5barの過剰圧にて、前記反応器を160℃に加熱する。次に、ダイアフラムポンプを用いて、それぞれモノマー混合物1200gを4時間にわたって計量供給する。同時並行して、10分の時間経過および合計4.75時間の供給時間で、ジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP)50%溶液を同じくダイアフラムポンプにより前記モノマー量に対して7.0質量%の量で酢酸ブチルに計量供給する。さらに60分後160℃で冷却して、前記反応器の圧力を放出する。
【0135】
上記方法により得られるポリマー溶液は、酢酸ブチルを用いて、約60%の固形体含分に希釈して、四面式フィルムアプリケーター100μmを用いてガラス板に塗布した。接触角の測定は、130℃で30分間乾燥した後、この塗膜で行われた。
【0136】
前記被覆の疎水性を測定するために、前記硬化した被覆の試験するべき表面に水滴を塗布する。次に、顕微鏡下で、接触角(H)を、水滴と塗料表面との接触点での接線を求めることによって、Kruess社ハンディ接触角測定システムMobiledropを使用して測定する。同じように、ジヨードメタンに対する接触角を求める。測定のために、測定ヘッドを前記試料に置く。計量供給レバーは、計量供給管(Dosierkanuele)を下げて、液滴を計量供給する。プリズムの配置は、液滴のプロフィール図を、内蔵カメラによって接続されているノートパソコンに変換する。そこで、KRUESS−Software SW23(DSA2)を使用して、液滴ビデオ(Tropfenvideo)の評価および接触角の測定が行われる。
【0137】
【表1-1】
【0138】
【表1-2】
【0139】
試験されたフルオロモノマーすべてが、同一の方法でポリマーに取り込むことができ、かつ表面張力に関して同等の効果も示すが示された。フルオロモノマー1が、最も少ない化学的な消費で製造することができるため、さらなる試験は、このモノマー1を用いて実施した。
【0140】
例4〜例20
g、OH価およびフルオロモノマーの含有量に関する最適な配合を求めるため、以下の基本配合にしたがって、高処理装置(High throughput Anlage)を用いて重合を実施した。すべての合成物のバッチの量は、約200mlであった。
変動する成分として、以下のモノマーを使用した:
ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)
n−ブチルアクリレート(nBA)
スチレン(Sty)
メチルメタクリレート(MMA)
フッ素含有モノマー(1)
前記重合の以下の範囲条件を定めた:重合温度110℃、供給時間 モノマー混合物3時間、開始剤溶液3.5時間、後重合1時間、モノマーに対して開始剤7%、メチルイソブチルケトン中の開始剤溶液(25%もしくは17.4%)。
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
例4〜例20の被覆剤の製造
このようにして得られたポリアクリレート溶液から、続いてクリア塗料を調製する。そのために、まずそれぞれ安息香酸1.762部を第4表の5に記載された量のアクリレート樹脂溶液中で撹拌しながら溶解させる。続いて、それぞれ第4表に記載された量のメチルイソブチルケトンを、酢酸ブチル中の二ラウリン酸ジブチルスズ10%溶液0.132部、UV光保護剤とHALS光保護剤(1:1)とからなる市販の光保護剤混合物0.881部、およびフッ素含有アクリレートをベースとするレベリング剤0.0655部と撹拌しながら混合する。溶媒を含まない三量体化されたヘキサメチレンジイソシアネートに対して23.4%のイソシアネート含有量を有する、三量体化された、イソシアネート基を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする低粘度ポリイソシアネート硬化剤(BAYER社Desmodur(登録商標)N3600)をOH/NCOの化学量論比が1:1.1である量(第4表に記載された量)で添加した後、塗膜をガラス板に付着させる(ウェット膜厚約100μm)。約30分フラッシュオフさせて、その後、前記塗膜を60℃で30分間乾燥させる。接触角の測定は、130℃で30分間乾燥させた後、前記塗膜で行われた。
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
さらに、例4〜例20の被覆から、さらにフィッシャースコープ硬度(Fischer Scope Haerten)を測定した。この試験は、ビッカーズ硬さHV法に準拠して、Helmut Fischer GmbH社の機器HP100VP X−Progを用いて行われた(硬度試験DIN50133に対する浸透法、硬度測定法)。ここで、角錐状のダイアモンドを、定義された荷重を増加させて試料に押しつける。使用されるパラメータは以下の通りである:
試験荷重増加速度 1mN/s
待機15s(クリープ)
試験荷重減少速度 1mN/s
待機0mNで15s
荷重増加時間:20秒間、20mNまで増加させる。すべての時間の間、経路測定(Wegemessung)を行う。荷重・経路曲線(Kraft−Wege−Kurve)から、特に硬度を計算することができる:
HU 最大試験荷重N/mm2で示されるユニバーサル硬度。実施された形状補正は考慮されない。形状補正を考慮するために制御フィールkorr.のスイッチを入れる。
Y GPa(MPa)で示される浸透弾性率(Eindringmodul)。形状補正は常に考慮される。
We/Wtot %で示される弾性変形割合(hHU)。弾性変形エネルギー(We)と全変形エネルギー(Wtot)とからの指数。侵入作用の可塑性および弾性の割合。形状補正は常に考慮される。
Cr1 %で示される荷重下のクリープ。一定の最大試験荷重における材料挙動。形状補正は常に考慮される。
Cr2 %で示される荷重下のクリープ。荷重減少後の一定(所定)の最小試験荷重での材料挙動。形状補正は常に考慮される。
hmax μm(nm)で示される最大試験荷重での侵入物(Indentors)の侵入深さ。実施された形状補正は考慮されない。形状補正を考慮するため制御フィールドkorr.のスイッチをいれる。
korr. 制御フィールドのスイッチを入れることによって、パラメータのHU、HU(h)、HU(F)、HU、Cr、h(F)およびhmaxは、侵入物の実際の形状に補正される。実施された形状補正は、そのつど考慮される。
【0147】
【表6】
【0148】
例21〜例23
前記統計試験計画により得られる結果は、配合の選択において、そのスケールアップ性を試験したものである。そのために、(第7表に相応して)以下のポリアクリレートを試験的基準として製造した。ここで、以下の
・全体Tgが低い場合にフルオロモノマーの含有量が低い(例21)
・Tgが低い場合にフッ素含有量が高い(例22)
・Tgが高く、OH価が比較的高い場合にフッ素含有量が高い(例23)
配合物を試験した。
【0149】
樹脂すべては透明であり、ゲル粒子を示さなかった。次に、例23の配合物を、接着性を試験するために調製してクリア塗料にした。
【0150】
例21〜例23のポリアクリレート樹脂
油加熱された特殊鉄鋼ジャケットで温度調節されており、アンカー撹拌器、還流冷却器および温度計を備える特殊鋼反応器4l内に、第7表に装入物と記載された量のメチルイソブチルケトン(MIBK)を装入する。窒素ブランケット(Ueberschleierung mit Stickstoff)をしながら、前記反応器を110℃に加熱する。次に、ダイアフラムポンプを用いて、それぞれモノマー混合物1200gを4時間にわたって計量供給する。同時並行して、10分の時間経過および合計4.75時間の供給時間で、同じくダイアフラムポンプで、tert−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)50%溶液をメチルイソブチルケトン(MIBK)に計量供給する。さらに60分後、110℃で冷却する。
【0151】
【表7】
【0152】
例21〜例23のクリア塗料および結果として生じた被覆の製造:
続いて、このようにして得られたポリアクリレート溶液から、クリア塗料を調製する。そのために、それぞれアクリレート樹脂溶液50部、二ラウリン酸ジブチルスズ0.03部、UV光保護剤およびHALS光保護剤(1:1)とからなる市販の光保護剤混合物2部、フッ素含有アクリレートをベースとするレベリング剤0.15部、ならびに安息香酸1部を撹拌しながら混合する。溶媒を含まない三量体化されたヘキサメチレンジイソシアネートに対して23.4%のイソシアネート含有量を有する、三量体化された、イソシアネート基を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする低粘度ポリイソシアネート硬化剤(BAYER社Desmodur(登録商標)N3600)をOH/NCOの化学量論比が1:1.1である量で添加した後、前記塗膜をガラス板に付着させる(ウェット膜厚約100μm)。約30分フラッシュオフさせて、その後、前記塗膜を60℃で30分間乾燥させる。
【0153】
接触角測定:
前記被覆の疎水性を測定するために、前記硬化された被覆の試験されるべき表面に水滴を塗布する。次に、顕微鏡下で、接触角(H)を、水滴と塗料表面との接触点での接線を求めることによって、上記の通り、Kruess社ハンディ接触角測定システムMobiledropを使用して測定する。
【0154】
例21〜例23の被覆の結果は、第8表に示されている。前記接触角が小さければ小さいほど、前記表面の架橋は、より優れている。本発明による被覆の場合、水に対して測定される接触角が、少なくとも65°、特に少なくとも90°であるのが望ましい。
【0155】
【表8】
【0156】
上塗り性(Ueberlackierbarkeit)の測定
そのために、KTL(陰極電着塗装)被覆された金属板(約50×50cm)に、Glasurit社90シリーズの水性の、真黒色の補修用ベース塗料を、10〜15μmの層厚さで塗布して、Glasurit社Glasurit(登録商標)RATIO Aqua、Glasurit社の代替的な Glasurit(登録商標)Grundfueller 285−700/―730/790の技術情報に準拠してフラッシュオフする。その後、例23の本発明によるクリア塗料を、空気圧式噴霧法を用いて40〜60μ化学量論比の層厚さで塗布する。前記クリア塗料は、約15分の室温でのフラッシュオフ後に、実験用乾燥炉で60℃で30分間乾燥させる。
【0157】
前記板を7日間室温で貯蔵した後、次に、研磨されていないクリア塗料被覆上に、さらにまたGlasurit社90シリーズの水性の、黒色の補修用ベース塗料を塗布するが、しかし、この20μm〜0μmの層厚さの先細りのくさび形で塗布する。再びフラッシュオフして、次に、上記例23のクリア塗料を同様にくさび形で塗装し、ここで、このクリア塗料くさび形は、しかし、その場合、ベース塗料くさび形に対して90°曲げられている。炉内で60℃にて30分間焼成させた後、冷却させてから、接着性をクロスカットを用いて試験する。
【0158】
例23のクリア塗料の場合、平面全体にきわめて優れた接着性が示された。したがって、本発明によるクリア塗料被覆上の変性されていないベース塗料も、クリア塗料それ自体上のクリア塗料も際立った接着性を有していることが示された。