(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188810
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】HLA−B*1301対立遺伝子の使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20060101AFI20170821BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20170821BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20170821BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20170821BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20170821BHJP
A61P 39/02 20060101ALN20170821BHJP
A61K 31/145 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
C12Q1/68 AZNA
C12N15/00 A
G01N33/50 Z
G01N33/53 M
G01N33/15 Z
!A61P39/02
!A61K31/145
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-537106(P2015-537106)
(86)(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公表番号】特表2016-503287(P2016-503287A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】CN2013000714
(87)【国際公開番号】WO2014063433
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年4月22日
(31)【優先権主張番号】201210407149.2
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514151166
【氏名又は名称】シャントン プロヴィンシャル インスティテュート オブ ダーマトロジー アンド ベネレオロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】チャン・フレン
(72)【発明者】
【氏名】チェン・シュウミン
(72)【発明者】
【氏名】リウ・ホン
【審査官】
安居 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−503152(JP,A)
【文献】
特表2002−539450(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0100926(US,A1)
【文献】
Lin, M., et al.,Association of HLA class I with severe acute respiratory syndrome coronavirus infection,BMC Medical Genetics,2003年,4(9)
【文献】
Lin, L, et al.,Both HLA-B*1301 and B*1302 Exist in Asian Populations and Are Associated with Differnt Haplotypes,Human Immunology,1995年,43,51-56
【文献】
Li, H., et al.,HLA-B*1301 as a Biomarker for Genetic Susceptibility to Hypersensitiviity Dermatitis Induced by Trichloroethylene among Workers in China,Environmental Health Perspectives,2007年,115(11),1553-1556
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおけるダプソンに応答して生じる有害な薬物反応のリスクを検出又は評価するための、前記ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子、又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーを有しているかどうかを検出するためのプライマーの使用であって、
前記検出が、DNA特異的ハイブリダイゼーション、PCRに基づくHLA配列決定、又はHLA血清型判定のうちの少なくとも1つによって行われ、
前記HLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーが、HLA−B*1301対立遺伝子の存在を示すことを特徴とする使用。
【請求項2】
ダプソンに応答して生じる有害な薬物反応が、ダプソン過敏症症候群である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ダプソン過敏症症候群をスクリーニングするための、ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子、又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーを有しているかどうかを検出するためのプライマーの使用であって、
前記検出が、DNA特異的ハイブリダイゼーション、PCRに基づくHLA配列決定、又はHLA血清型判定のうちの少なくとも1つによって行われ、
前記HLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーが、HLA−B*1301対立遺伝子の存在を示すことを特徴とする使用。
【請求項4】
前記プライマーが、PCRに基づくHLA配列決定のためのPCRプライマーを含む、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記プライマーが、配列番号1及び配列番号2に記載する配列からなるプライマー対1、及び/又は、配列番号3及び配列番号4に記載する配列からなるプライマー対2を含む、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
ヒトにおけるダプソンに応答して生じる有害な薬物反応のリスクを検出又は評価する方法であって、ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出することを含み、前記HLA−B*1301対立遺伝子を有するヒトの方が、前記HLA−B*1301対立遺伝子を有しないヒトよりもダプソンを投与した際のダプソンに応答して生じる有害な薬物反応のリスクが高く、一対の相同染色体の両方の染色体に前記HLA−B*1301対立遺伝子を有するヒトの方が、一対の相同染色体の片方にのみ前記HLA−B*1301対立遺伝子を有するヒトよりもダプソンを投与した際のダプソンに応答して生じる有害な薬物反応のリスクが高いことを特徴とする方法。
【請求項7】
ダプソンに応答して生じる有害な薬物反応が、ダプソン過敏症症候群である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ダプソンに応答して生じる有害な薬物反応を治療するための候補薬物の同定及びスクリーニング方法であって、
HLA−B*1301対立遺伝子、又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーを発現している単離細胞を、候補薬物と接触させる工程であって、前記HLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーが、HLA−B*1301対立遺伝子の存在を示す工程、及び、
HLA−B*1301対立遺伝子又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーに結合し、HLA−B*1301対立遺伝子又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーの発現及び/又は機能を阻害する候補薬物を同定及び/又はスクリーニング工程を含み、
前記HLA−B*1301対立遺伝子又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーに結合し、HLA−B*1301対立遺伝子又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーの発現及び/又は機能を阻害する候補薬物が、ダプソンに応答して生じる有害な薬物反応を治療するための候補薬物として、同定又は選択されることを特徴とする方法。
【請求項9】
ダプソン過敏症症候群を治療するための候補薬物の同定及びスクリーニング方法であって、
HLA−B*1301対立遺伝子、又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーを発現している単離細胞を、候補薬物と接触させる工程であって、前記HLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーが、HLA−B*1301対立遺伝子の存在を示す工程、及び、
HLA−B*1301対立遺伝子又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーに結合し、HLA−B*1301対立遺伝子又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーの発現及び/又は機能を阻害する候補薬物を同定及び/又はスクリーニング工程を含み、
前記HLA−B*1301対立遺伝子又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーに結合し、HLA−B*1301対立遺伝子又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーの発現及び/又は機能を阻害する候補薬物が、ダプソン過敏症症候群を治療するための候補薬物として、同定又は選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
プライマーが、前記単離細胞におけるHLA−B*1301対立遺伝子又はHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーの検出のために使用される請求項6から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記プライマーが、PCRに基づくHLA配列決定のためのPCRプライマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プライマーが、配列番号1及び配列番号2に記載する配列からなるプライマー対1、及び/又は、配列番号3及び配列番号4に記載する配列からなるプライマー対2を含む、請求項10から11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HLA−B*1301対立遺伝子の使用、具体的には、ダプソン症候群のリスクの遺伝子マーカーとしてのHLA−B*1301対立遺伝子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
MHC(主要組織適合遺伝子複合体)は、移植片拒絶に関する遺伝子複合体である。ヒトMHCは、HLA(ヒト白血球A系)と呼ばれる。多形が多く存在することが、HLA遺伝子系の非常に重要な特徴である。ヒト集団では、HLA複合体の多くの遺伝子座にDNA配列の様々な変異体が存在し、これら変異体は、対立遺伝子と呼ばれる。HLA対立遺伝子系は、6番染色体上に位置する。ヒトは、ランダムに交配するヘテロ接合型集団であるので、各個体について2つのHLA対立遺伝子が完全に同じである可能性は非常に低い。このことから、HLAがヒトの体内において最も多数の多形を有する系となるだけではなく、各個体におけるHLE対立遺伝子及びその産物は、この個体が保有する独自性の生物学的「身分証明書」、即ち、個体性のマーカーとなる。HLA系の多形により、集団の継続が保証され且つその安定性が維持されるように、様々な病原体に対する集団の好適な免疫反応が確保される。多くのHLA分子は、様々な集団における薬物反応に関連していることが見出されている。例えば、中国人集団及びタイ人集団におけるHLA−B*1502対立遺伝子、又は白人集団及び日本人集団におけるHLA−A*3101対立遺伝子は、カルバマゼピンによって生じる薬物過敏性反応に関連しており、白人集団におけるHLA−B*5701対立遺伝子は、アバカビルによって生じる薬物反応に関連しており、中国人集団におけるHLA−B*5801は、アロプリノールによって生じる薬物反応に関連している。HLA−B*1301対立遺伝子に関連する薬物反応は現在まで見出されていないが、この遺伝子座がトリクロロエチレン(工業溶剤)によって生じるアレルギー性皮膚炎に関連していることは既に報告されている(非特許文献1)。
【0003】
1908年に合成されたダプソン(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、DDS)は、抗感染剤及び抗炎症剤である。この薬物は、単独で又は他の薬物と組み合わせて、感染性疾患(例えば、ハンセン病、マラリア、放線菌感染によって誘発される疾患、及びHIV感染に起因するニューモシスティスカリニ肺炎)の治療、又は好中球若しくは好酸球の異常浸潤を特徴とする慢性炎症性疾患(例えば、自己免疫性水疱疾患、持久性隆起性紅斑、膿疱性乾癬、壊疽性膿皮症、ざ瘡)の治療において広く用いることができる。更に、この薬物は、関節リウマチを治療すると同時に、急性虚血性脳卒中患者の神経をある程度保護する機能を更に有する場合がある。
【0004】
これまでの疫学的研究により、DDS治療を受けた患者のうちの約0.5%〜約3%が薬物過敏症症候群に罹患している場合があり、死亡率は約11%〜約13%であることが示されている。1949年には早くもLoweがこの現象に気付いており、この疾患は、1951年に正式に「ダプソン過敏症症候群(DHS)」と命名された。薬物に対する個体の重篤な異種反応であるDHSは、DDS治療の4週間〜6週間後に生じることが多く、高熱、発疹、及び内臓障害(通常、肝臓及び血液系の障害)、更には重篤な状態の臓器不全を含む臨床症状を伴う。ハンセン病の併用化学療法及びHIV感染に起因するニューモシスティスカリニ肺炎の予防的化学療法においてDDSが世界中で使用されているので、DHSの発症率は劇的に増加している。刊行された疫学論文についての最近のシステマティックレビューには、DHSの有病率は約1.4%であると要約されている。しかし、DHSのリスクを予測するために利用可能な信頼性の高い検出方法は未だ存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Li H,Dai Y,Huang H,et al. HLA−B*1301 as a biomarker for genetic susceptibility to hypersensitivity dermatitis induced by trichloroethylene among workers in China.Environ Health Perspect2007;115:1553−6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、ダプソン症候群のリスクの遺伝子マーカーとしてのHLA−B*1301対立遺伝子の新規使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供される新規使用は、以下のうちの少なくとも1つである。
1)ヒトにおけるダプソンに応答して生じる有害な薬物反応のリスクを検出又は評価する製品の調製における、ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出するための物質の使用;
2)ヒトにおけるダプソン過敏症症候群のリスクを検出又は評価する製品の調製における、ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出するための物質の使用;
3)ダプソン過敏症症候群をスクリーニングする製品の調製における、ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出するための物質の使用;
4)ヒトにおけるダプソンに応答して生じる有害な薬物反応のリスクを検出又は評価する方法であって、ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出することを含み、HLA−B*1301対立遺伝子を有するヒトの方が、HLA−B*1301対立遺伝子を有しないヒトよりもダプソンを用いた際の有害な薬物反応のリスクが高く、一対の相同染色体の両方の染色体にHLA−B*1301対立遺伝子を有するヒトの方が、一対の相同染色体の片方にのみHLA−B*1301対立遺伝子を有するヒトよりもダプソンを用いた際の有害な薬物反応のリスクが高い方法;
5)ヒトにおけるダプソン過敏症候群を発症するリスクを検出又は評価する方法であって、ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出することを含み、HLA−B*1301対立遺伝子を有するヒトの方が、HLA−B*1301対立遺伝子を有しないヒトよりもダプソンを用いた際のダプソン過敏症候群のリスクが高く、一対の相同染色体の両方の染色体にHLA−B*1301対立遺伝子を有するヒトの方が、一対の相同染色体の片方にのみHLA−B*1301対立遺伝子を有するヒトよりもダプソンを用いた際のダプソン過敏症候群のリスクが高い方法;
6)ダプソンに応答して生じる有害な薬物反応を治療するために開発された方法であって、ターゲットとしてHLA−B*1301対立遺伝子を用いる検出方法を用いて候補薬物を同定及び/又はスクリーニングすることを含む方法;
7)ダプソン過敏症症候群を治療するために開発された方法であって、ターゲットとしてHLA−B*1301対立遺伝子を用いる検出方法を用いて候補薬物を同定及び/又はスクリーニングすることを含む方法;
8)ヒトにおけるダプソンに応答して生じる有害な薬物反応を発現するリスクを検出又は評価する製品であって、ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出するための物質を含む製品。
【0008】
上記1)、2)、3)、及び8)においてヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出するための物質は、対立遺伝子の存在を検出するための当技術分野で公知である方法のいずれかにおいて使用されている試薬、キット、及び/又は装置であってよい。例えば、以下の方法のうちの少なくとも1つによってHLA−B*1301対立遺伝子の存在を判定するために使用される試薬、キット、及び/又は装置である:DNA特異的ハイブリダイゼーション、PCRに基づくHLA配列決定、及びHLA血清型判定。ここで、PCRに基づくHLA配列決定において使用するPCRプライマーは、具体的には、プライマー対1及び/又はプライマー対2であってよい。プライマー対1は、配列番号1及び配列番号2に記載する一本鎖DNAからなり、プライマー対2は、配列番号3及び配列番号4に記載する一本鎖DNAからなる。本発明の1つの実施例では、上記1)、2)、3)、及び8)におけるヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出するための物質は、プライマー対1及び/又はプライマー対2であるか、或いは前記プライマー対1及び/又はプライマー対2を含むキットである。
【0009】
更に、上記1)、2)、3)、及び8)におけるヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出するための物質は、その存在がHLA−B*1301対立遺伝子の存在を示すHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーをヒトが有しているかどうかを検出するための方法において用いられている試薬、キット、及び/又は装置であってもよい。更に、上記4)及び5)におけるヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかの検出は、その存在がHLA−B*1301対立遺伝子の存在を示すHLA−B*1301対立遺伝子と等価な遺伝子マーカーを検出することによって行ってもよい。等価な遺伝子マーカーは、HLA−B*1301対立遺伝子に連結している遺伝子マーカーである。等価な遺伝子マーカーは、一塩基多形(SNPと略される)、単純反復配列(SSR)マーカー等であってよく、例えば、rs114740545、rs116111301、rs115901473、rs115087954、rs115675600、rs187280524、rs114242707、rs117901686、rs144295468、rs116670002、rs114025781、rs150578601、rs184663538、rs147436789、rs116727474、rs181134814、rs114738037、rs116559955、rs140019442、rs115099160、rs114269118、rs116702376、rs114044189、rs75031011、rs114703573、rs116990865、rs116352528、rs115467821、rs114557543、rs115169469、rs114174160、rs148933000、rs139232749、rs191781678、rs116299045、rs115919658、rs184804684、rs115314010、rs114560740、rs116664449、rs116590236、rs114042808、rs115282162、rs191351745、rs142449668、rs138476012、rs116791918、rs114619879、rs145574701、rs186013251、rs116394756、rs144957773、rs149868923、rs117015327、rs146938564、rs144519211、rs116800609、rs115438047、rs116238756、rs115579895、rs114934557、rs115644116、rs184278614、rs115512397、rs117674267、rs117357765、rs187285424、rs115938217、rs144112558、rs143310386、rs117948233、rs116143597、rs115618393、rs118069711、rs114558979、rs114430391、rs116545227、rs114871120、rs186776456、rs115144194、rs114466888、rs116050364、rs117554535、rs138890419、rs117416412、rs187053286、rs138585202、rs114790460、rs182307981、rs116799594、rs117177835、rs115493428、rs147420529、rs143510919、rs115271465、rs148814200、rs146667604、rs145848766、rs116182888、rs139753005、rs151055597、rs142876154、rs114596560、rs147187739、rs117882759、rs150312141、rs138525703、rs150009117、rs114955269、rs141690290、rs114673459、rs115461077、rs190715652、rs116270078、rs189405064、rs115840422、rs141629269、rs145194724、rs149956121、rs139220743、rs193127702、rs116309554、rs114342076、rs139930000、rs145959074、rs142459425、rs182634314、rs137882198、rs115709299、rs149636715、rs150064319、rs190220726、rs114486436、rs139261704、rs142035154、rs146509511、rs188267792、rs183291469、rs114495987、rs116690463、rs142716612、rs115326349、rs114215172、rs115305111、rs150528380、rs114842164、rs115766057、rs116766359、rs114463114、rs150105195、rs142447081、rs114212906、rs114475434、rs115827739、rs189111115、rs115681000、rs116255593、rs115130140、rs116619302、rs115660274、rs115068492、rs115683494、rs116193620、rs114233831、rs115655546、rs116812555、rs115586038、rs115967895、rs115837294、rs185848342、rs117652729、rs192118756、rs189253569、rs116429420、rs115212249、rs116599568、rs115588141、rs117168997、rs116208261、rs115372244、rs118005849、rs117246836、rs117200577、rs114618162、rs111841098、rs114370548、rs115788187、rs137884196、rs114251983、rs115690605、rs116815392、rs114999980、rs116234368、rs117604452、rs115646358である。
【0010】
実際には、Roche 454 Life Sciencesによって開発されたGenome Sequencer FLXシステム及びPCR−SSOP−Luminex(主装置は、US Luminex Corporation製のLuminex100、200、3D flow Luminexsである)等の第二世代シーケンサ、PCR−SSP、Sanger Sequencing(ABI社製の第一世代シーケンサ、3130、3130XL、3730、3730XL)等を用いて、ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出することができる。
【0011】
上記1)、2)、3)、及び8)における製品は、試薬又はキット、更には試薬又はキットと装置との複合製品であってよい。
【0012】
上記4)及び5)におけるヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかの検出では、DNA特異的ハイブリダイゼーション、PCRに基づくHLA配列決定、及び/又はHLA血清型判定等、対立遺伝子の存在を検出するための当技術分野で公知である方法のいずれを使用してもよい。
【0013】
上記使用では、検出しようとしているヒトの末梢血から調製されるDNA、RNA、タンパク質、細胞、又は血清を用いて、ヒトがHLA−B*1301対立遺伝子を有しているかどうかを検出することができる。
【0014】
上記6)及び7)では、具体的には、HLA−B*1301対立遺伝子を発現している単離細胞を試験する薬物と接触させ、次いで、HLA−B*1301対立遺伝子の発現及び/又は機能を阻害する傾向のあるHLA−B*1301対立遺伝子に結合している薬物を候補薬物として用いて、ダプソン過敏症症候群等ダプソンに応答して生じる有害な薬物反応を治療する効果について更に試験してよい。
【0015】
前記薬物反応は、意図しない不所望の薬物作用であり、かかる有害な反応は、疾患を予防、診断、又は治療するための用量で生じる。ある患者が有害な薬物反応を発現する可能性が一般集団よりも高い場合、この患者は、有害な薬物反応を発現するリスクがある。
【0016】
本願の1つの実施例では、DHS患者76人及び非DHS臨床対照1,034人からなる集団に対する研究の結果は、1つのHLA−B*1301対立遺伝子を有する(一対の相同染色体の片方にのみHLA−B*1301対立遺伝子を有する)ヒトは、DDSの投与後、HLA−B*1301対立遺伝子を有しないヒトの37.53倍DHSのリスクが高く(信頼水準0.95;信頼区間(18.80,74.94))、2つのHLA−B*1301リスク対立遺伝子を有する(一対の相同染色体が両方HLA−B*1301対立遺伝子を有する)ヒトは、DDSの投与後、HLA−B*1301対立遺伝子を有しないヒトの110.8倍DHSのリスクが高い(信頼水準0.95;信頼区間(25.85,474.54)ことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、HLA領域の相関シグナルを示す。Aは、HLA−B*1301(矢印によって示す)が、MHC領域において最も著しく相関している対立遺伝子であることを示す。組み換え率は、薄青色のピーク図で表される。導入したときのSNP、対立遺伝子、及びアミノ酸を円形で示し、分類後のSNPを菱形で示す。HLA−B*1301遺伝子座とこれらSNP、対立遺伝子、及びアミノ酸との相関度を異なる色で表す。赤色:相関係数>0.8;オレンジ色:相関係数=0.5〜0.8;黄色:相関係数=0.2〜0.5;灰色:相関係数<0.2;及び白色:相関係数=0。Bは、HLA−B*1301遺伝子座を制御することによる状態解析後のMHC領域における相関シグナルチャートを示す。残留相関シグナルは観察されず、これは、この領域に個々のシグナルHLA−B*1301が1つしか存在しないことを示す。
【
図2】
図2は、予測マーカーとしてHLA−B*1301を用いてDHSに対して実施したリスク予測の受信者動作特性曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施例は、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明をより深く理解することができるように提供するものである。以下の実施例で用いられる全ての実験方法は、特に指示しない限り従来の方法である。
【0019】
以下の実施例で用いられる全ての材料、試薬等は、特に指示しない限り、市販されているものである。
【実施例】
【0020】
実施例1. HLA−B*1301対立遺伝子は、ダプソン過敏症症候群のリスクの遺伝子マーカーである
I. サンプル
サンプルは、症例サンプル、臨床対照サンプル、及び健常対照サンプルを含むヒトから採取した末梢血であった。
【0021】
1. 症例サンプル
76人の中国人DHS患者(探索的研究39人、検証的研究37人)が研究に参加した。これら76人の患者には、ハンセン病に対する併用化学療法を受けたときにDDSが投与されていた。患者の男性対女性比は、1.6:1であり、平均年齢は38歳であった。DDSの最初の投与からDHS臨床症状の発生まで、2週間〜8週間(平均32.79日間)かかった。最も一般的な皮膚病変は、斑丘疹(57.7%)、続発性剥脱性皮膚炎(38.5%)、猩紅熱様紅斑(7.7%)、及び口内びらん(1.3%)であった。系に関連する症状としては、発熱(83.1%)、肝機能異常(74.4%)、及びリンパ腺肥大(34.6%)が含まれていた。臨床検査結果は、血清中の肝酵素レベルが異常に上昇していたことを示した。58人の患者でアラニントランスアミナーゼレベルが著しく上昇しており、49人の患者でアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼレベルが著しく上昇しており、37人の患者でヘモグロビンレベルが低下しており、35人の患者で血清ビリルビンレベルが異常に増加していた。DHSの診断は、患者の病歴、臨床所見、及び臨床検査に基づいて行った。
【0022】
2. 臨床対照サンプル
この研究の臨床対照サンプルには、非DHS患者1,034人(探索段階833人、検証段階201人)が含まれていた。これら1,034人の非DHS患者は、各々、ハンセン病に罹患しており、ハンセン病の治療のために併用化学療法レジメンの一部としてDDSを投与されていた。これら臨床対照サンプルのいずれにおいても、DHSの臨床症状又は異常な生物学的指標はみられなかった。
【0023】
これら臨床対照サンプル及び症例サンプルは、地理学的にも民族学的にも概ね一致していた。
【0024】
3. 健常対照サンプル
この研究の健常対照サンプルには、中国人集団におけるHLA−B*1301の頻度を評価するために1,944人の健常対照が含まれており、951人は広東省、523人は山東省、470人は雲南省出身であった。
【0025】
以下の4つの診断基準のうちの2以上又は3番目のルールに基づいてハンセン病患者の診断を確定した:1.感覚障害及び無発汗、又は麻痺領域を伴う皮膚病変;2.対応する機能障害を伴う太い神経幹として表される末梢神経障害;3.皮膚病変の組織切片又は組織液塗抹においてらい菌が検出された;4.病理学的に明らかな特徴的変化。
【0026】
健常対照の診断基準:ハンセン病及び他の感染性疾患の病歴がなく且つ他の自己免疫疾患の病歴及び家族歴もない。
【0027】
II. 方法
1. 探索段階
Illumina−660chip(Illumina Human 660W−Quad beadchip)を用いて、症例サンプルのDHS患者39人及び臨床対照サンプルの非DHS患者833人の遺伝子型を決定した。DHS患者39人及び非DHS患者833人で見つかった合計430,276個のSNPを、ゲノムワイドスキャンの探索段階におけるデータ解析で用いた。
【0028】
症例サンプルのDHS患者39人及び臨床対照サンプルの非DHS患者833人の各個体に対して、アジア人のHAPMAP(国際HapMap計画)のレファレンス配列(北京出身の漢民族、東京出身の中国人、及び日本人を含む合計178人の個体)を用いてHLA対立遺伝子(二対立遺伝子及び四対立遺伝子)及びアミノ酸の導入解析を実施した。合計66個の典型的なHLAの二対立遺伝子、118個の典型的なHLAの四対立遺伝子、497個の多形アミノ酸位置、及び4,206個のSNPを導入し、これを、分類から得られた4,636個のSNPと共に相関解析に付した。相関解析の結果(
図1のA)に示されている通り、6番染色体のMHC領域に位置する一塩基多形部位(物理的距離:26,000,000〜34,000,000)(NCBI bulid 37)は、ダプソンの臨床使用の際に生じたダプソン過敏症症候群と相関していた。
【0029】
HLA−B*1301及びHLA−C*0304遺伝子座における正相関シグナルを定義するために、この領域に対してロジスティック回帰解析を行った。これら2つの遺伝子座間の相関係数は、0.74であった。更に、HLA−B*13二対立遺伝子及び497個の多形アミノ酸位置に対して実施した相関解析では、これらの間に相関シグナルは存在しているが、各シグナルは、HLA−B*1301よりも弱いことが示された。HLA−B*1301を制御したとき、MHC領域において他の独立シグナルはみられなかった(
図1のB)。要するに、HLA−B*1301がDHSリスクの主対立遺伝子であることが示された。HLA−B*1301(P=2.04×10
−16、OR=21.67、信頼水準0.95、信頼区間(10.41,45.12))。
【0030】
2. 検証段階
HLA−B*1301対立遺伝子の相関を更に検証するために、454シークエンシングプラットフォーム(Roche 454 Life Sciencesによって開発されたGenome Sequencer FLXシステム)を用いて、症例サンプルの別のDHS患者37人及び臨床対照サンプルの別の非DHS患者201人(合計1,089人の検証対照から無作為に選択した)に対してHLA分類を実施した。ここでは、各々プライマー対1及びプライマー対2を用いて、サンプルの末梢血から単離したゲノムDNAに対してHLA−B*1301対立遺伝子のPCR増幅を実施した。プライマー対1は、配列番号1及び配列番号2に記載する一本鎖DNAからなり、プライマー対2は、配列番号3及び配列番号4に記載する一本鎖DNAからなる。
【0031】
HLA Callerソフトウェアを用いてGATKでHLA対立遺伝子の再検査を実施した。次いで、ロジスティック回帰解析と共に相関解析を実施した。結果は、HLA−B*1301(OR=23.54、信頼水準0.95、信頼区間(8.71,63.62);P=4.74×10
−10)を示した。
【0032】
3. 組み合わせ分析
探索段階のデータと検証段階のデータとを組み合わせて解析したところ、HLA−B*1301対立遺伝子は、DHSと強く相関していることが見出された(OR=22.32、信頼水準0.95、信頼区間(12.40,40.28);P=6.32×10
−25)。
【0033】
454シークエンシングプラットフォーム(Roche 454 Life Sciencesによって開発されたGenome Sequencer FLXシステム)を用いて、症例サンプルのDHS患者76人及び臨床対照サンプルの非DHS患者1,034人に対してHLA分類を実施した。分類結果を表1に示す。
【表1】
表1:HLA分類結果
注記:第1列に記載されているNは、サンプルの合計数を意味し、第2列及び第3列における括弧外の数値は、サンプル数を表し、括弧内の百分率は、サンプルの合計数に対する括弧外の数値の割合を表す。
【0034】
表1の結果から分かる通り、DHS患者76人のうち、真陽性サンプル(HLA−B*1301保有者)数は66であり、偽陰性サンプル(HLA−B*1301非保有者)数は10であった。非DHS患者1,034人のうち、真陰性サンプル(HLA−B*1301非保有者)数は886であり、偽陽性サンプルHLA−B*1301保有者)数は148であった。予測マーカーとしてHLA−B*1301を用いてDHSに対するリスク予測を実施したところ、感度は86.84%であり、特異度は85.69%であった(
図2)。ここで、感度=真陽性サンプル数/(真陽性サンプル数+偽陰性サンプル数)×100%であり、特異度=真陰性サンプル数/(真陰性サンプル数+偽陽性サンプル数)×100%である。HLA−B*1301ヘテロ保有者のDHSのリスクは、OR
het=61×886/10×144=37.53(信頼水準0.95;信頼区間(18.80,74.94))であり;HLA−B*1301ホモ保有者のDHSのリスクは、OR
hom=5×886/10×4=110.75(信頼水準0.95;信頼区間(25.85,474.54))であった。上記から分かる通り、DHS患者の86.8%(66/76)がHLA−B*1301対立遺伝子を保有していたが、非DHS患者では僅か14.3%(148/1,034)であった。結果によって示されている通り、個体がHLA−B*1301リスク対立遺伝子を1つ有している場合(HLA−B*1301ヘテロ保有者)、この個体は、DDS投与後、HLA−B*1301対立遺伝子を有しない個体の37.53倍DHSのリスクが高く(信頼水準0.95;信頼区間(18.8,74.9))、個体がHLA−B*1301リスク対立遺伝子を2つ有している場合(HLA−B*1301ホモ保有者)、この個体は、DDSの投与後、HLA−B*1301対立遺伝子を有しない個体の110.8倍DHSのリスクが高い(信頼水準0.95;信頼区間(25.9,474.5)。
【0035】
アジア人集団に関する最近の概説では、DHSの有病率は1.4%であると推測されている(Lorenz,Wozel et al.2012)。この有病率に基づいて計算すると、陽性予測値は7.9%であり、陰性予測値は99.8%であり、陽性尤度比は6.07であり、陰性尤度比は0.1536であった。陽性尤度比6.07によれば、HLA−B*1301を有する個体におけるDHSのリスクは7.9%に上昇し、陰性尤度比0.1536によれば、HLA−B*1301を有する個体におけるDHAの発症率は、1.4%から0.2%に低下するであろう。DDS治療を必要としている患者に対してHLA−B*1301対立遺伝子のスクリーニングを行うことにより、薬物を投与することなしに陽性保有者におけるDHSの発症率を1.4%から0.2%に大きく低下させられることが示された。
【0036】
(山東省、広東省、及び雲南省出身の)健常対照サンプルの健常対照1,944人から得られたデータによれば、HLA−B*1301対立遺伝子の頻度は、山東省サンプルにおいて3.3%であり、雲南省サンプルにおいて7.1%であり、広東省サンプルにおいて8.2%であった。これは、HLA−B*1301対立遺伝子の中国北部集団における頻度が2%〜5%であり、中国南部集団における頻度が5%〜20%であるという対立遺伝子データベースにおける報告と一致していた。中国人集団及び幾つかのアジアの国々におけるこの遺伝子座の相対有病率を鑑みて、DDS投与前のHLA−B*1301のスクリーニング及びリスク評価は、非常に有益であろう。
【産業上の利用可能性】
【0037】
実際に、HLA−B*1301対立遺伝子の有無を検出して、DDS治療を必要としている患者がDHSに罹患するかどうかを予測することができる。リスク予測は、検出結果に基づいて行うことができる。HLA−B*1301を有する個体には、薬物過敏反応を導く可能性があるDDS治療の代わりに他の薬物で治療することが提案される。HLA−B*1301を有しない個体は、DDS治療によって薬物過敏反応が生じる可能性が非常に低いので、DDSを用いても安全である。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]