(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.組成物
本開示は、組成物を提供する。一実施形態では、本組成物は、第1のプロピレン系ポリマーと、オレフィンブロックコポリマーと、硬化成分とを含む。硬化成分は、プロピレン/α−オレフィンコポリマーである第2のプロピレン系ポリマー、スコーチ遅延剤、および架橋剤を含む。本組成物はまた、第1のプロピレン系ポリマーと、オレフィンブロックコポリマーと、硬化成分との反応混合物を含む。
【0009】
A.第1のプロピレン系ポリマー
本組成物は、第1のプロピレン系ポリマーを含む。第1のプロピレン系ポリマーは、プロピレンホモポリマーまたはプロピレン/α−オレフィンコポリマーであり得る。一実施形態では、第1のプロピレン系ポリマーは、ランダムプロピレン/α−オレフィンコポリマー(または第1のランダムプロピレン/α−オレフィン)である。ランダムプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、モノマーがポリマー鎖にわたってランダムに分布されたコポリマーであり、プロピレンから得られる過半量のモル%単位を含み、残りの単位が少なくとも1つのα−オレフィンの単位から得られる。コポリマー中のコモノマーの存在は、結晶化度、それ故にプロピレンの物理的特性を変化させる。ランダムプロピレンコポリマーのα−オレフィン成分は、エチレン(エチレンが本開示の目的でα−オレフィンと見なされる)、またはC
4〜20線状、分岐状、もしくは環状α−オレフィンであり得る。好適なC
4〜20α−オレフィンの非限定的な例としては、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、および1−オクタデセンが挙げられる。α−オレフィンはまた、シクロヘキセンまたはシクロペンテン等の環状構造を含み、3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサン等のα−オレフィンをもたらす。
【0010】
一実施形態では、第1のプロピレン系ポリマーは、0.85g/cc〜0.95g/ccの密度、および2g/10分〜25g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するランダムプロピレン/α−オレフィンコポリマーである。
【0011】
一実施形態では、第1のプロピレン系ポリマーは、エチレンから得られる15重量パーセント単位を含む第1のランダムプロピレン/エチレンコポリマーであり、このコポリマーは、2.16kgの荷重下で0.9g/cm
3の密度、約170,000の分子量、および230℃で12g/10分のMFRを有する。第1のランダムプロピレン/エチレンコポリマーの非限定的な例は、The Dow Chemical Company,Midland,Michigan,USAから入手可能なC715−12である。
【0012】
第1のプロピレン系ポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0013】
B.オレフィンブロックコポリマー
本組成物は、オレフィンブロックコポリマーを含む。本明細書で使用されるとき、「オレフィンブロックコポリマー(または「OBC」)は、マルチブロックまたはセグメント化コポリマーであり、線状様式で結合された、すなわち、ポリマーが懸垂またはグラフト化様式ではなく、重合されたエチレン官能基に対して端部間を結合される化学的に区別された単位を含むポリマーである、2つ以上の化学的に別個の領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含む。ある特定の実施形態では、ブロックは、そこに組み込まれたコポリマーの量もしくはタイプ、密度、結晶化度の量、そのような組成のポリマーに帰する結晶子サイズ、立体規則性のタイプもしくは程度(イソタクチックもしくはシンジオタクチック)、位置規則性(regio−regularity)もしくは位置変則性(regio−irregularity)、長鎖分岐もしくは超分岐を含む分岐の量、均一性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性において異なる。オレフィンブロックコポリマーは、コポリマーの独自の作製プロセスのため、多分散指数(PDIもしくはM
w/M
n)の独自の分布、ブロック長さ分布、および/またはブロック数分布を特徴とする。より具体的には、連続的プロセスにおいて製造されるとき、OBCの実施形態は、約1.7〜約8、約1.7〜約3.5、約1.7〜約2.5、および約1.8〜約2.5、または約1.8〜約2.1の範囲のPDIを有することができる。バッチまたはセミバッチプロセスにおいて製造されるとき、OBCの実施形態は、約1.0〜約2.9、約1.3〜約2.5、約1.4〜約2.0、または約1.4〜約1.8の範囲のPDIを有することができる。
【0014】
一実施形態では、OBCは、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーである。エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、エチレンから得られる過半モル分率の単位を含み、このエチレンは、少なくとも50mol%、少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、または少なくとも80mol%を含み、残りのマルチブロックコポリマーは、コモノマーを含む。エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、化学的または物理的特性において異なる2つ以上の重合されたモノマー単位の複数の(すなわち、2つ以上の)ブロックまたはセグメント(ブロックインターポリマー)を特徴とする、重合された形態でエチレンおよび共重合可能なα−オレフィンコモノマーをさらに含むことができ、マルチブロックコポリマーである。いくつかの実施形態では、マルチブロックコポリマーは、以下の式によって表され得る:
(AB)
n
式中、nは、少なくとも1、好ましくは2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100以上など、1を超える整数であり、「A」は、ハードブロックまたはセグメントを表し、「B」は、ソフトブロックまたはセグメントを表す。複数のAおよび複数のBは、分岐または星状の様式ではなく、線状様式で連結される。「ハード」セグメントは、いくつかの実施形態では95重量パーセントを超える量、他の実施形態では98重量パーセントを超える量でエチレンが存在する重合された単位のブロックを指す。言い換えると、ハードセグメントにおけるコモノマー含有量は、いくつかの実施形態では5重量パーセント未満、他の実施形態では、ハードセグメントの総重量の2重量パーセント未満である。いくつかの実施形態では、ハードセグメントは、すべてのエチレン、または実質的にすべてのエチレンを含む。
【0015】
その一方で、「ソフト」セグメントは、コモノマー含有量が、いくつかの実施形態ではソフトセグメントの総重量の5重量パーセント超、様々な他の実施形態では8重量パーセント超、10重量パーセント超、または15重量パーセント超である、重合された単位のブロックを指す。いくつかの実施形態では、ソフトセグメントにおけるコモノマー含有量は、様々な他の実施形態では20重量パーセント超、25重量パーセント超、30重量パーセント超、35重量パーセント超、40重量パーセント超、45重量パーセント超、50重量パーセント超、または60重量パーセント超であり得る。
【0016】
2つ以上のモノマーから形成されたそれぞれの区別可能なセグメントまたはブロックが単一ポリマー鎖に結合されるため、ポリマーは、標準の選択的抽出技術を用いて完全に分画され得ない。例えば、比較的結晶質である領域(高密度セグメント)、および比較的非結晶質である領域(より低い密度セグメント)を含むポリマーは、異なる溶媒を用いて選択的に抽出または分画され得ない。一実施形態では、ジアルキルエーテルまたはアルカン溶媒のいずれかを用いる抽出可能なポリマーの量は、総ポリマー重量の10パーセント未満、7パーセント未満、5パーセント未満、または2パーセント未満である。
【0017】
加えて、本明細書に開示されるOBCは、ポアソン分布ではなく、シュルツ−フローリー分布に適合するPDIを有する。このOBCは、国際公開第2005/090427号および米国特許出願第11/376,835号に記載される重合プロセスによって製造され、これは、多分散ブロック分布ならびにブロックサイズの多分散分布の両方を有する製品をもたらす。これは、区別可能な物理的特性を有するOBC製品の形成をもたらす。多分散ブロック分布の理論的利点は、Potemkin,
Physical Review E(1998)57(6),pp.6902−6912、およびDobrynin,
J.Chem.Phvs.(1997)107(21),pp9234−9238において以前にモデル化および論述されている。
【0018】
一実施形態では、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、約1.7〜約3.5のMw/Mn、摂氏温度で少なくとも1つの融点(Tm)、およびグラム/立法センチメートル単位で密度(d)という(A)を有すると定義され、Tmおよびdの数値は、以下の関係に相当する:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
2
【0019】
式中、dは、0.866g/ccまたは0.87g/cc〜0.89g/cc、0.91g/cc、または0.93g/ccであり、Tmは、113℃、115℃、117℃、または118℃〜120℃、121℃、または125℃である。
【0020】
一実施形態では、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、約1.7〜約3.5のMw/Mnという(B)を有すると定義され、最高のDSCピークと最高の結晶分析分画(「CRYSTAF」)ピークとのとの温度差として定義される、J/g単位での融解熱(ΔH)、および摂氏温度でのデルタ量(ΔT)によって特徴付けられ、ΔTおよびΔHの数値は、以下の関係を有する:
0〜130J/gのΔHの場合、ΔT>−0.1299()H)+62.81
130J/gを超えるΔHの場合、ΔT≧48℃
【0021】
式中、CRYSTAFピークは、少なくとも5パーセントの累積ポリマーを用いて決定され、5パーセント未満のポリマーが識別可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は、30℃である。
【0022】
一実施形態では、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムで測定された300パーセントのひずみでのパーセントで、および1サイクルで弾性回復(Re)という(C)を有すると定義され、グラム/立方センチメートルで密度(d)を有し、Reおよびdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含まないとき、以下の関係を満たす:
Re>1481−1629(d)。
【0023】
一実施形態では、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、TREFを用いて分画されるとき、40℃〜130℃で溶出する分子量画分であって、画分が同じ温度の範囲で溶出する比較可能なランダムエチレンインターポリマー画分の含有量よりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含有量を有することを特徴とする分子量画分を有する(D)を有すると定義され、前記比較可能なランダムエチレンインターポリマーが同じコモノマー(複数可)を有し、メルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含有量(ポリマー全体に基づく)をエチレン/α−オレフィンインターポリマーのものの10パーセント以内を有する。
【0024】
一実施形態では、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)、および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を有する(E)を有すると定義され、G’(25℃)対G’(100℃)の比率は、約1:1〜約9:1の範囲である。
【0025】
一実施形態では、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、TREFを用いて分画されるとき、40℃〜130℃で溶出する分子画分であって、画分が少なくとも0.5〜約1までのブロックインデックス、および約1.3を超える分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする分子画分という(F)を有すると定義される。
【0026】
一実施形態では、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、0〜約1.0までの平均ブロックインデックス、および約1.3を超える分子量分布Mw/Mnという(G)を有すると定義される。
【0027】
エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、上記に記載される特性(A)〜(G)の任意の組み合わせを有することができる。
【0028】
好適なコモノマーの非限定的な例としては、3〜30個の炭素原子の直鎖/分岐α−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−l−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、および1−エイコセン;3〜30または3〜20個の炭素原子のシクロオレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、および2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン;ジオレフィンおよびポリオレフィン、例えばブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、および5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン;ならびに3−フェニルプロペン、4−フェニルプロペン、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、および3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンが挙げられる。
【0029】
一実施形態では、エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーにおけるコモノマーは、プロピレン、オクテン、ブテン、およびヘキサンから選択される。
【0030】
一実施形態では、エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーは、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーである。
【0031】
OBC組成物は、本明細書に論じられる2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0032】
C.硬化成分
本組成物は、硬化成分を含む。硬化成分は、プロピレン/α−オレフィンコポリマー(第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマー)である第2のプロピレン系ポリマー、スコーチ遅延剤、および架橋剤を含む。
【0033】
i.第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマー
硬化成分は、プロピレン/α−オレフィンコポリマー(「第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマー」)である第2のプロピレン系ポリマーを含む。第2のプロピレン系ポリマーは、上記に記載される第1のプロピレン系ポリマーとは異なる。言い換えると、第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、密度、メルトフローレート、イソタクチシチー、結晶化度、および/または触媒系などの前述の第1のプロピレン系ポリマーとは異なる1つ以上の特性を有する。プロピレン/α−オレフィンコポリマーのための好適なコモノマーの非限定的な例としては、C
2およびC
4〜C
10α−オレフィン、例えばC
2、C
4、C
6、およびC
8α−オレフィンが挙げられる。第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、1重量%〜40重量%のα−オレフィンコモノマーを含有する。
【0034】
一実施形態では、硬化成分の第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、プロピレン/エチレンコポリマー(または第2のプロピレン/エチレンコポリマー)である。さらなる実施形態では、第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、ランダムプロピレン/エチレンコポリマーである。
【0035】
第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、実質的にイソタクチックプロピレン配列を有すると特徴付けられる。「実質的にイソタクチックプロピレン配列」は、配列が0.85超、0.90超、0.92超、または0.93超の
13C NMRによって測定されるイソタクチックトライアド(mm)を有することを意味する。イソタクチックトライアドは、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,504,172号および国際公開第2000/01745号に記載され、これは、
13C NMRスペクトルによって決定されたコポリマー分子鎖におけるトライアド単位の点からイソタクチ配列を指す。
【0036】
第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、ASTM D−1238に従って(230℃/2.16Kgで)測定される0.1〜25g/10分の範囲のメルトフローレート(MFR)を有する。すべての個々の値および0.1〜25g/10分の部分範囲は、本明細書に包含および開示され、例えば、MFRは、0.1、0.2、または0.5の下限〜25、15、10、8、または5g/10分の上限であり得る。例えば、第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、0.1〜10g/10分、または別の方法では0.2〜10g/10分の範囲のMFRを有することができる。
【0037】
第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、1〜30重量%の範囲の結晶化度(少なくとも2〜50ジュール/グラム(J/g)未満の融解熱)を有し、すべての個々の値およびこれらの部分範囲は、本明細書に包含および開示される。例えば、結晶化度は、1、2.5、または3重量%(それぞれ少なくとも2、4、または5J/g)の下限〜30、24、15、または7重量%(それぞれ50、40、24.8、または11J/g未満)の上限であり得る。例えば、第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、少なくとも1〜24、15、7、5重量%(それぞれ少なくとも2〜40、24.8、11、8.3J/g未満)の範囲の結晶化度を有することができる。結晶化度は、上記に記載されるように、DSC法によって測定される。第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、プロピレンから得られる単位、ならびにエチレンコモノマーおよび任意のC
4〜C
10α−オレフィンから得られるポリマー単位を含む。例示的なコモノマーは、C
2およびC
4〜C
10α−オレフィン、例えばC
2、C
4、C
6、およびC
8α−オレフィンである。
【0038】
第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、1〜40重量%のエチレンコモノマーを含む。すべての個々の値および1〜40重量%の部分範囲は、本明細書に包含および開示され、例えば、コモノマー含有量は、1、3、4、5、7、または9重量%の下限〜40、35、30、27、20、15、12、または9重量%の上限であり得る。例えば、第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、1〜35重量%、または別の方法では1〜30重量%、3〜27重量%、3〜20重量%、または3〜15重量%のエチレンコモノマーを含む。
【0039】
第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、3.5以下、別の方法では3.0以下、または他の別の方法では1.8〜3.0の数平均分子量で割った重量平均分子量(M
w/M
n)として定義される分子量分布(MWD)を有する。
【0040】
一実施形態では、第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、非メタロセン、金属中心ヘテロアリールリガンド触媒プロピレン/エチレンコポリマーである。そのような第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,960,635号および同第6,525,157号にさらに記載される。そのような2のプロピレン/エチレンコポリマーは、商標名VERSIFYでThe Dow Chemical Companyから、または商標名VISTAMAXXでExxonMobil Chemical Companyから市販されている。
【0041】
一実施形態では、第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、(A)プロピレンから得られる60〜100未満、80〜99、およびより好ましくは85〜99重量%の単位、ならびに(B)エチレンおよび任意に1つ以上のC
4〜10α−オレフィンから得られる0超〜40、好ましくは1〜20、4〜16、およびさらにより好ましくは4〜15重量%の単位を含み、かつ少なくとも0.001、少なくとも0.005、およびより好ましくは少なくとも0.01の長鎖分岐/1000個の全炭素の平均を含有することをさらに特徴とし、長鎖分岐という用語は、短鎖分岐より多い少なくとも1個(1)の炭素の鎖長を指し、短鎖分岐は、コモノマーにおいて炭素の数より少ない2個(2)の炭素の鎖長を指す。例えば、プロピレン/1−オクテンインターポリマーは、長さが少なくとも7個(7)の炭素の長鎖分岐を有する主鎖を有するが、これらの主鎖はまた、長さが6個(6)のみの炭素の短鎖分岐を有する。プロピレン/エチレンコポリマーインターポリマーにおける最大長鎖分岐数は、3長鎖分岐/1000個の全炭素を超えない。
【0042】
一実施形態では、第2のプロピレン/エチレンコポリマーは、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:
【0043】
0.86g/cc〜0.89g/ccの密度;
【0044】
ASTM D−1238に従って(230℃/2.16Kgで)測定される、1g/10分〜25g10/分のメルトフローレート;
【0045】
55℃〜116℃の溶融温度(DSCにおけるTmピーク);および
【0046】
1.8〜3.0の分子量分布(MWD)。
【0047】
好適な第2のプロピレン/エチレンコポリマーの非限定的な例は、商標名VERSIFY(商標)でThe Dow Chemical Companyから市販されている2300である。
【0048】
第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0049】
ii.スコーチ遅延剤
硬化成分は、スコーチ遅延剤を含む。用語「スコーチ」は、配合および/または処理中の早過ぎる架橋である。スコーチは、架橋剤が熱分解を受けるときに生じる。これは、制御されていない様式で進み、熱可塑性材料の質量でゲル粒子を生成し得る架橋反応を開始する。ゲル粒子は、架橋ポリマーの均一性に悪影響を与える。加えて、スコーチは、処理を困難にし、かつ望ましくない処理エネルギーの増加を必要とする熱可塑性材料に対する高い溶融粘度をもたらす。したがって、「スコーチ遅延剤」は、OBCにおける早過ぎる架橋および/または制御されていない架橋を減少させるか、または取り除く。
【0050】
好適なスコーチ遅延剤の非限定的な例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル(TEMPO)、および4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル(4−ヒドロキシ−TEMPO)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
一実施形態では、スコーチ遅延剤は、4−ヒドロキシル−TEMPOである。
【0052】
iii.架橋剤
硬化成分は、架橋剤を含む。架橋剤は、個々のOBCポリマー鎖を互いに結合させる。特定の理論に縛られないが、第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、硬化成分のための担体としての機能を果たし、OBCの架橋中に第1のプロピレン系ポリマーのベータ切断を防ぐと考えられる。
【0053】
一実施形態では、架橋剤は、過酸化物である。過酸化物は、ジアルキルペルオキシドであり得る。好適なジアルキルペルオキシドの非限定的な例としては、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−アミルペルオキシ)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−アミルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ[(t−ブチルペルオキシ)−イソプロピル]−ベンゼン、ジ−t−アミルペルオキシド、1,3,5−トリ−[(t−ブチルペルオキシ)−イソプロピル]ベンゼン、1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)ブタノール、1,3−ジメチル−3−(t−アミルペルオキシ)ブタノール、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
一実施形態では、過酸化物は、2,5ジメチル2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサンである。硬化成分は任意に、硬化促進剤を含むことができる。好適かつ非限定的な硬化促進剤は、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)である。
【0055】
一実施形態では、硬化成分は、78〜99重量%のプロピレン/エチレンコポリマー、0重量%または0重量%超〜2重量%のスコーチ遅延剤、および1〜20重量%の過酸化物を含む。重量パーセントは、硬化成分の総重量に基づく。
【0056】
D.添加剤
本組成物は、1つ以上の任意の添加剤を含むことができる。好適な添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、伸展油(鉱油またはパラフィン油)、充填剤(三水和アルミニウム、水酸化マグネシウム)、紫外線安定剤、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0057】
一実施形態では、本組成物は、
(A)5重量%または14重量%〜36重量%または50重量%の第1のプロピレン系ポリマーと、
(B)15重量%、27重量%、または35重量%〜64重量%、または76重量%のOBCと、
(C)1重量%、3重量%、または4重量%〜18重量%、25重量%、36重量%、または40重量%の第2のプロピレン/エチレンコポリマーと、
(D)0重量%、0.01重量%、または0.05重量%〜0.5重量%または1重量%のスコーチ遅延剤と、
(E)0.25重量%、0.1重量%、または0.5重量%〜2.5重量%または5.0重量%の架橋剤と、を含む。重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0058】
一実施形態では、本組成物は、以下の添加剤のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する上記に記載される組成物(A)〜(E)を含む:
(F)0重量%、0重量%超、0.1重量%、または0.5重量%〜1重量%または2重量%の酸化防止剤;
(G)0重量%、0重量%超、または1重量%〜33重量%または50重量%の伸展油;
(H)0重量%、0重量%超、または1重量%〜33重量%または50重量%の充填剤;および
(I)0重量%、0重量%超、または0.1〜1重量%のUV安定剤。重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0059】
本組成物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0060】
2.熱可塑性加硫物
一実施形態では、本組成物の反応混合物は、熱可塑性加硫物組成物を生成する。本明細書で使用されるとき、用語「熱可塑性加硫物」(または「TPV」)は、硬化されたエラストマー相が熱可塑性材料中に分散された熱可塑性エラストマーである。TPV組成物は、少なくとも1つの熱可塑性材料および少なくとも1つの硬化された(すなわち、架橋された)エラストマー材料を含む。熱可塑性材料は、マトリクスまたは連続相を形成し、硬化されたエラストマーは、不連続相を形成し、すなわち、硬化されたエラストマーのドメインが熱可塑性マトリクス中に分散される。一実施形態では、硬化されたエラストマーのドメインは、熱可塑性材料の連続相を通じて均一に分散される。
【0061】
本熱可塑性加硫物組成物は、第1のプロピレン系ポリマーおよび架橋OBCを含む。第1のプロピレン系ポリマーは、熱可塑性加硫物の連続相である。架橋OBCは、第1のプロピレン系ポリマーを通じて分散された不連続相である。
【0062】
OBCは、以下に詳細に論じられるような硬化成分によって架橋される。一実施形態では、熱可塑性加硫物組成物はまた、第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーを含む。
【0063】
本TPVは、OBCを第1のプロピレン系ポリマーと溶融混合し、かつOBCの架橋を支持する温度で硬化成分を添加することによって調製される。TPV組成物は、バンバリーミキサで混合することを含む、ポリマーを混合するための任意の好適な方法によって調製され得る。1つ以上の任意の添加剤はまた、混合手順中に添加され得る。
【0064】
一実施形態では、硬化成分は、プレブレンド(マスターバッチとも呼ばれる)である。言い換えると、硬化成分は、硬化成分をOBCおよび第1のプロピレン系ポリマーに添加する前に調製される。硬化成分は、110℃〜130℃の温度で第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーを溶融混合することによって作製される。第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーが溶融されると、スコーチ遅延剤および架橋剤は、ミキサに添加される。熱混合が1〜5分間続く。その後、硬化成分のプレブレンドは、周囲温度まで冷却され、次いで小片にカットされる。
【0065】
一実施形態では、本TPV組成物は、動的架橋によって調製される。用語「動的架橋」は、ポリマーの架橋が生じるとき、架橋剤とポリマーとの混合物が噛み砕かれるプロセスである。用語「動的」は、混合物が架橋ステップの間、せん断力に供されることを示す。それに対して、「静的架橋」は、ポリマーが架橋手順中に動かない(固定された相対空間で)プロセスである。動的架橋の利点は、ブレンドが例えば、適切な割合のプロピレン系ポリマーおよびOBCを含有するとき、熱可塑性エラストマー組成物が得られ得ることである。出願者は、硬化成分が均一な動的架橋を有利にもたらし、動的架橋中にスコーチを減少させるか、または除去することを発見した。
【0066】
一実施形態では、第1のプロピレン系ポリマーおよびOBCは、170℃〜180℃の温度でHaake内部ミキサに投入される。硬化成分(プレブレンド)は続いて添加される。任意の他の添加剤は、この段階で添加され得る。温度は、OBCの架橋を開始するために185℃まで上昇される。Haakeミキサの混練器は、混合物を動的に加硫処理し、OBCを架橋するために80rpm〜90rpmの速度で回転される。ミキサから取り出される混合化合物は、熱可塑性加硫物組成物である。
【0067】
動的加硫処理中、第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、架橋剤のための担体として有利に機能を果たし、均一な動的架橋を促進する。第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーはまた、OBCおよび第1のプロピレン系ポリマーのための相溶化剤として有利に機能を果たす。
【0069】
5重量%〜50重量%の第1のプロピレン系ポリマーと、
【0070】
15重量%〜76重量%の架橋OBCと、
【0071】
1重量%〜40重量%の第2のプロピレン/エチレンコポリマーと、を含む。重量パーセントは、TPV組成物の総重量に基づく。
【0072】
一実施形態では、TPV組成物は、0重量%または0重量%超〜50重量%の油を含む。
【0073】
一実施形態では、TPV組成物は、EPDMを含まない。
【0074】
一実施形態では、TPV組成物は、スチレンを含まない。
【0075】
一実施形態では、TPV組成物は、4MPa〜20MPaの引張り強度を有する。
【0076】
一実施形態では、TPV組成物は、200%〜900%の破断伸び率を有する。
【0077】
本TPV組成物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0078】
3.物品
本開示は、物品を提供する。物品は、本TPV組成物を含む。好適な物品の非限定的な例としては、発泡体、タイヤ、ホース、ベルト、ガスケット、合成コルク、自動車用途(乗用車/トラックの屋根ふき材、窓シール、車体シール、艶出しシール)、キャップライナー、ガスケット、シーラント、押出形材、および成形部品が挙げられる。
【0079】
定義
特に反対に、文脈から黙示的に、または当該技術分野において慣用されて記載されない限り、すべての部およびパーセントは、重量に基づき、すべての試験方法は、本開示の出願日現在のものである。
【0080】
本明細書で使用されるとき、用語「組成物」は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を含む。
【0081】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」、およびそれらの派生語は、任意の追加の成分または手順の存在を除外しない。用語「から本質的になる」は、操作性に不可欠なものを除いていかなる成分または手順も除外する。用語「からなる」は、具体的に記載されないいずれの成分または手順をも除外する。
【0082】
本明細書で使用されるとき、用語「エチレン系ポリマー」は、重合された形態で過半量のエチレンモノマー(ポリマーの重量に基づく)を含み、かつ任意に1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0083】
本明細書で使用されるとき、用語「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」は、重合された形態で過半量のエチレンモノマー(インターポリマーの重量に基づく)および少なくとも1つのα−オレフィンを含むインターポリマーを指す。
【0084】
本明細書で使用されるとき、用語「エチレン/α−オレフィンコポリマー」は、重合された形態で過半量のエチレンモノマー(コポリマーの重量に基づく)、および2つしかないモノマータイプとしてα−オレフィンを含むコポリマーを指す。
【0085】
本明細書で使用されるとき、用語「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、コポリマー(2つの異なるタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために利用される)、および3つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0086】
本明細書で使用されるとき、用語「オレフィン系ポリマー」は、重合された形態で過半量のオレフィンモノマー、例えばエチレンまたはプロピレン(ポリマーの重量に基づく)を含み、かつ任意に1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0087】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリマー」は、同じタイプまたは異なるタイプにかかわらず、モノマーを重合することによって調製された高分子化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマー(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すために利用される)という用語、および以下に定義されるようなインターポリマーという用語を包含する。
【0088】
本明細書で使用されるとき、用語「プロピレン系ポリマー」は、重合された形態で過半量のプロピレンモノマー(ポリマーの重量に基づく)を含み、かつ任意に1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0089】
本明細書で使用されるとき、用語「プロピレン/エチレンコポリマー」は、重合された形態で過半量のプロピレンモノマー(ポリマーの重量に基づく)を含み、かつ任意に1つ以上の追加のモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0091】
ATREF
分析的昇温溶出分画(ATREF)を、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,798,081号、およびWilde,L.;Ryle,T.R.;Knobeloch,D.C.;Peat,I.R.;Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers,J.Polym.Sci.,20,441−455(1982)に記載される方法に従って行う。分析されるべき組成物をトリクロロベンゼンに溶解させ、不活性担体(ステンレス鋼ショット)を含有するカラム中で0.1℃/分の冷却速度で20℃まで温度を徐々に低下させることによって結晶化させる。カラムには、赤外線検出器が備えられる。次に、ATREFクロマトグラム曲線を、1.5℃/分の速度で溶出溶媒(トリクロロベンゼン)の温度を20から120℃まで徐々に上昇させることによってカラムから結晶化したポリマー試料を溶出することによって作成する。
【0092】
13C NMR分析
テトラクロロエタン−d
2/オルトジクロロベンゼンの約3gの50/50混合物を10mmのNMR管内の0.4gの試料に添加することによって試料を調製する。試料を溶解させ、管およびその内容物を150℃まで加熱することによって均一化する。データを、100.5MHzの
13C共振周波数に対応するJEOL Eclipse(商標)400MHzの分光計またはVarian Unity Plus.TM.400MHzの分光計を用いて収集する。データを、6秒のパルス繰り返し遅延でデータファイルにつき4000の過渡応答を用いて取得する。定量分析の最小の信号対雑音比を達成するために、複数のデータファイルを合計する。スペクトル幅は、32Kデータ点の最小ファイルサイズで25,000Hzである。試料を10mmの広帯域プローブ内で、130℃で分析する。コモノマー組み込みを、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、ランドルのトライアド法(Randall,J.C;JMS−Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29,201−317(1989)を用いて決定する。
【0093】
圧縮ひずみ(OBCの場合)
圧縮ひずみを、ASTM D 395に従って測定する。試料を、12.7mmの総厚に達するまで、厚さ3.2mm、2.0mm、および0.25mmの直径25.4mmの丸い円板を積層することによって調製する。円板を、以下の条件下のホットプレスで成形された12.7cm×12.7cmの圧縮成形プラークからカットする:190℃で3分間ゼロ圧力、続いて190℃で2分間86MPa、続いて86MPaで冷たい水道水でプレスの内側を冷却する。
【0094】
引張りのひずみ
引張りのひずみを、ASTM D 412に従って測定する。引張り棒を、ASTM D412に定義されるDie Cによって約2±0.3mmの厚さを有するプラークからカットする。引張りのひずみ試験を、ASTM D412に従って実施する。引張り棒を、予熱のために10分間、INSTRONの環境チャンバ(70℃)内に保つ。次に、試料をさらに10分間、100%の伸び率で保持し、それを戻らせることなく迅速に解放する。次に、試料を10分間、休ませる。10分間の休憩期間の終了時に、基準点間の距離を測定する。引張りのひずみを以下の式に従って計算する:
引張りのひずみ=100[L−L
0]/L
0
Lは、10分間の収縮期間後の基準点間の距離に等しい。
【0095】
標準CRYSTAF法
分岐分布を、PolymerChar,Valencia,Spainから市販されているCRYSTAF 200ユニットを用いて結晶化分析分画(CRYSTAF)によって決定する。試料を160℃で1時間、1,2,4トリクロロベンゼン(0.66mg/mL)に溶解させ、95℃で45分間安定化させる。試料採取温度は、0.2℃/分の冷却速度で95〜30℃に及ぶ。赤外線検出器を使用して、ポリマー溶液濃度を測定する。累積可溶濃度を、温度が低下しながらポリマーが結晶化するときに測定する。累積特性の分析導関数は、ポリマーの短鎖分岐分布を反映している。
【0096】
CRYSTAFピーク温度および面積は、CRYSTAF Software(Version 2001.b,PolymerChar,Valencia,Spain)に含まれるピーク分析モジュールによって同定される。CRYSTAFピーク発見ルーチンは、dW/dT曲線における最大値としてピーク温度、および導関数曲線における同定されたピークの両側の最大正変曲の間の面積を同定する。CRYSTAF曲線を計算するために、好ましい処理パラメータは、70℃の温度限界であり、平滑化パラメータが0.1の温度限界を上回り、0.3の温度限界を下回る。
【0097】
用語「結晶化度」は、結晶構造を形成する原子または分子の配列の規則性を指す。ポリマー結晶化度は、DSCを用いて検査され得る。Tmeは、溶融が終了する温度を意味し、Tmaxは、ピーク溶融温度を意味し、これらはともに、最終加熱ステップからのデータを用いてDSC分析から当業者によって決定されるときのものである。DSC分析の好適な方法の1つは、TA Instruments,IncからのモデルQ1000(商標)DSCを使用する。DSCの較正を以下の様式で実施する。最初に、基準線を、アルミニウムDSCパンに試料を用いることなく−90℃〜290℃のセルを加熱することによって取得する。次に、7ミリグラムの新しいインジウム試料を次のように分析する:試料を180℃まで加熱し、試料を10℃/分の冷却速度で140℃まで冷却し、続いて試料を1410℃で1分間、等温に保ち、続いて試料を10℃/分の加熱速度で140℃から180℃まで加熱する。インジウム試料の融解熱および溶融の開始を測定し、溶融の開始について156.6℃から0.5℃以内であり、かつ融解熱について28.71J/gから0.5J/g以内であることを確認する。次に、脱イオン水を、10℃/分の冷却速度で25℃から30℃までDSCパン内の少量の新しい試料を冷却することによって分析する。試料を30℃で2分間、等温に保ち、10℃/分の加熱速度で30℃まで加熱する。溶融の開始を測定し、0℃から0.5℃以内であることを確認する。
【0098】
ポリマーの試料を190℃の温度で薄いフィルムにプレスする。約5〜8mgの試料を量り分け、DSCパンに配置する。蓋をパンに圧着させて、閉鎖雰囲気を確保する。試料パンをDSCセルに配置し、次いで約100℃/分の高速でポリマー溶融温度を上回る約30℃の温度まで加熱する。試料を約3分間、この温度で保つ。次に、試料を10℃/分の速度で−40℃まで冷却し、3分間その温度で等温に保つ。その結果として、試料を、溶融が完了するまで10℃/分の速度で加熱する。結果として得られたエンタルピー曲線を、ピーク溶融温度、開始およびピーク結晶化温度、融解熱および結晶化熱、Tme、Tmax、ならびに米国特許第5,960,635号に記載されるような対応するサーモグラムから任意の他の対象の量に対して決定する。融解熱を公称重量パーセントの結晶化度に変換するために使用される係数は、165J/g=100重量%の結晶化度である。この変換係数を使用する場合、プロピレン系コポリマーの総結晶化度(単位:重量パーセントの結晶化度)は、165J/gで割られ、かつ100パーセントを乗じた融解熱として計算される。
【0099】
密度を、ASTM D792に従って測定する。
【0100】
標準DSC法
示差走査熱量測定の結果を、RCS冷却アクセサリおよびオートサンプラを備えたTAIモデルQ1000 DSCを用いて決定する。50ml/分の窒素パージガス流を使用する。試料を薄いフィルムにプレスし、約175℃でのプレスにおいて溶融させ、次いで室温(25℃)まで空冷する。次に、3〜10mgの材料を直径6mmの円板にカットし、正確に秤量し、軽アルミニウムパン(約50mg)に配置し、次いで圧着して閉じる(crimped shut)。試料の熱挙動を以下の温度プロファイルで調査する。試料を迅速に180℃まで加熱し、あらゆる以前の熱履歴を削除するために3分間、等温に保持する。次に、試料を10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、3分間、−40℃で保持する。次に、試料を10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する。冷却および第2の加熱曲線を記録する。
【0101】
DSC溶融ピークを、−30℃と溶融の終了との間に引いた直線状の基準線に対して、熱流量(W/g)における最大値として測定する。融解熱を、直線状の基準線を用いて−30℃と溶融の終了との間の溶融曲線下の面積として測定する。
【0102】
特に記載されない限り、各ポリマーの融点(複数可)(T
m)は、上記に記載されるようなDSCから得られた第2の熱曲線(ピークTm)から決定される。結晶化温度(T
c)は、第1の冷却曲線(ピークTc)から測定される。
【0103】
DMA
動的機械分析(DMA)を、10MPaの圧力で、180℃で5分間ホットプレスに形成された圧縮成形円板上で測定し、次いで90℃/分の速度でプレスにおいて水冷する。ねじり試験のための両持ちカンチレバー治具を備えたARES制御されたひずみレオメーター(TA instruments)を用いて試験を行う。
【0104】
1.5mmのプラークをプレスし、寸法32×12mmの棒にカットする。試料を10mm(グリップ分離ΔL)分離された治具間の両端で把持し、−100℃から200℃まで(1ステップにつき5℃)の連続した温度ステップに供する。温度ごとに、ねじり係数G’を、10ラド/秒の角周波数で、ひずみ振幅を0.1パーセント〜4パーセントの間に維持して、トルクが十分であることを確保し、測定を直線型に維持して測定する。
【0105】
10gの初期の静的力を維持して(自動張力モード)、熱膨張が生じたとき、試料が緩むのを防ぐ。結果として、グリップ分離ΔLは、特にポリマー試料の融点または軟化点を上回る温度とともに増加する。最高温度で、または治具間の間隙が65mm達したとき、試験を終了させる。
【0106】
発泡体に適用されるとき、用語「伸び率%」は、発泡体の試料が破断前に達し得る線形伸長率である。発泡体を、引張り強度を決定するために使用される同じ方法によって試験し、その結果を、ASTM D−3574のTest Eの手順に従って発泡体試料の元の長さの百分率として表す。
【0107】
GPC法
ゲル透過クマトログラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210、またはPolymer Laboratories Model PL−220器具のいずれかからなる。カラムおよびカルーセルコンパートメントを140℃で操作する。3つのPolymer Laboratories 10ミクロン Mixed−Bカラムを使用する。溶媒は、1,2,4トリクロロベンゼンである。試料を、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶媒中に0.1グラムのポリマーの濃度で調製する。160℃で2時間、軽く撹拌することによって試料を調製する。使用した注入量は、100マイクロリットルであり、流速は、1.0ml/分である。
【0108】
GPCカラムセットの較正を、個々の分子量間に少なくとも10の分離を有する6つの「カクテル」混合物において準備された580〜8,400,000に及ぶ分子量を有する21の狭い分子量分布ポリスチレン標準を用いて実施する。この標準をPolymer Laboratories(Shropshire,UK)から購入する。ポリスチレン標準を、1,000,000以上の分子量では50ミリリットルの溶媒中に0.025グラムで調製し、1,000,000未満の分子量では50ミリリットルの溶媒中に0.05グラムで調製する。ポリスチレン標準を30分間、穏やかに撹拌しながら80℃で溶解させる。狭い標準混合物を最初に、かつ最高分子量成分から減少させる順に実行し、分解を最小限に抑える。ポリスチレン標準ピーク分子量を、以下の式(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載される):M
ポリエチレン=0.431(M
ポリスチレン)を用いてポリエチレン分子量に変換する。
【0109】
ポリエチレン当量分子量の計算をViscotek TriSEC ソフトウェアバージョン 3.0を用いて実施する。
【0110】
メルトフローレートまたはMFRを、ASTM D 1238、条件230℃/2.16kgに従って測定する。
【0111】
メルトインデックスまたはMIを、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定する。
【0112】
TREFによるポリマー分画
大規模TREF分画を、160℃で4時間撹拌することによって2リットルの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)に15〜20gのポリマーを溶解させることによって実施する。30〜40メッシュ(600〜425μm)の球状工業用ガラスビーズ(Potters Industries,HC 30 Box 20,Brownwood,Tex.,76801から入手可能)と、ステンレス鋼の直径0.028インチ(0.7mm)のカットワイヤショット(Pellets,Inc.63 Industrial Drive,North Tonawanda,N.Y.,14120から入手可能)との60:40(v:v)混合物を充填した3インチ×4フィート(7.6cm×12cm)のスチールカラムに、ポリマー溶液を15psig(100kPa)の窒素によって圧入する。このカラムを160℃に初期設定された熱制御オイルジャケットに浸漬する。このカラムを最初に、125℃まで弾道的に冷却し、次いで毎分0.04℃の速度で20℃まで除冷し、1時間保持する。温度を毎分0.167℃の速度で上昇させながら、新しいTCBを約65ml/分の速度で導入する。
【0113】
分取TREFカラムから約2000ml部の溶離液を16ステーションの加熱フラクションコレクタで収集する。約50〜100mlのポリマー溶液が残るまで、ロータリエバポレータを用いて各画分中のポリマーを濃縮する。この濃縮溶液を、過剰のエタノールを添加し、濾過し、かつ洗浄する(最終洗浄を含めて約300〜500mlのメタノール)前に一晩静置させる。濾過ステップを、5.0.μmのポリテトラフルオロエチレンコーティングされた濾紙(Osmonics Inc.,Cat# Z50WP04750から入手可能)を用いて3位置真空補助濾過ステーションで実施する。濾過された画分を60℃で真空オーブン中に一晩乾燥させ、さらなる試験前に化学天秤で量る。
【0114】
引張り強度
機械的試験のシートを、圧縮成形ポリマー片によって、10MPaの圧力下の180℃および10分の圧縮時間で作製する。シートを、Die Cを用いて釣り鐘型の試料にカットする。引張り強度試験を、ASTM D412に従って室温で実施する。引張り速度は、50mm/分である。
【0115】
TMA
熱機械的分析:試料を厚さ1.8mmのフィルムに圧縮成形し、次いで0.5ニュートンの荷重で熱機械的分析器(TMA Q400)内で50℃から200℃まで5℃/分の速度で走査する。
【0116】
次に、本開示のいくつかの実施形態を以下の実施例で詳細に記載する。
【実施例】
【0117】
1.材料
実施例の項で使用される材料を以下の表1に提供する。
【0118】
【表1】
【0119】
2.硬化成分の調製
プレブレンド硬化成分の調製―VERSIFY 2300プロピレン/エチレンコポリマーを120℃で50mlのHaake内部ミキサ(Thermo Coから)に投入する。VERSIFY 2300プロピレン/エチレンコポリマーが溶融した後、次に、4−ヒドロキシル−TEMPOおよびLUPEROX 101をミキサに投入し、約2分まで混合する。フォルマント硬化成分(マスターバッチ)をHaakeから取り出し、室温まで冷却させ、その後、小片にカットする。
【0120】
3.反応混合物およびTPV組成物の形成
TPV組成物の調製:OBCおよびプロピレンホモポリマーをHaake内部ミキサに175℃で投入し、5分間混合する。次に、油および他の添加剤を装填する。トルクが一貫性を保った時点で、温度を185℃まで上昇させ、次いで硬化成分(上記の)をミキサに投入する。回転速度は、80rpmである。混合された化合物をミキサから取り出し、室温まで冷却する。フォルマントTPV組成物を成形および他の試験のために小片にカットする。
【0121】
4.比較試料および発明実施例を以下の表2に提供する。
【0122】
【表2】
【0123】
5.考察
表2に示されるように、発明実施例1〜9は、油を使用しない動的架橋OBCを有するTPV組成物である。純OBC(OBC1、比較試料1)と比較して、すべての発明実施例1〜9は、機械的特性(400%を超える引張り伸び率)と流動性(10g/10分を超えるMI)との良好な平衡を示す。同時に、耐熱性は、発明実施例1〜9において顕著に改善される。
【0124】
比較試料2および3は、ゴム相(分散相)として動的架橋EPDM(NORDEL IP4760)を有するTPV試料である。発明実施例10〜12は、動的架橋OBCを有するTPVであり、油も充填されている。発明実施例10〜12を比較試料2〜3と比較して、発明実施例10〜12は、機械的特性と流動性との平衡を改善した。
【0125】
比較実施例4は、商業的TPV試料(AES,EXXONMOBILのSantroprene 201−64)である。発明実施例10〜12を比較試料4と比較して、OBC樹脂ベースのTPVがはるかに良好な伸び率を達成するが、他の特性が商業的TPVのSantroprene 201−64と同程度であることが分かる。
【0126】
加えて、発明実施例1〜9および10〜12はまた、軟度が油およびOBCの含有量を変化させることによって調整され得ることを示し、これは、より広い設計空間を提供する。
【0127】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および図解に限定されないが、以下の特許請求の範囲に収まる場合、実施形態の一部および異なる実施形態の要素の組み合わせを含む実施形態の修正された形態を含むことが特に意図される。
なお、本発明には、以下の態様が含まれることを付記する。
[1]
反応混合物を含むか、またはそれから得られる組成物であって、
第1のプロピレン系ポリマーと、
オレフィンブロックコポリマーと、
硬化成分であって、
i.第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーと、
ii.スコーチ遅延剤と、
iii.架橋剤と、を含む、硬化成分と、を含む、組成物。
[2]
前記第1のプロピレン系ポリマーは、第1のプロピレン/エチレンコポリマーである、[1]に記載の組成物。
[3]
前記オレフィンブロックコポリマーは、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーである、[1]または[2]のいずれかに記載の組成物。
[4]
前記第2のプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、第2のプロピレン/エチレンコポリマーである、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
前記スコーチ遅延剤は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル(TEMPO)、および4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル(4−ヒドロキシ−TEMPO)、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
前記架橋剤は、過酸化物である、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]
前記硬化成分は、硬化促進剤をさらに含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]
14重量%〜50重量%の前記第1のプロピレン/エチレンコポリマーと、
35重量%〜76重量%のオレフィンブロックコポリマーと、
3重量%〜36重量%の前記第2のプロピレン/エチレンコポリマーと、
0.01重量%〜1.0重量%のスコーチ遅延剤と、
0.1重量%〜5.0重量%の過酸化物と、を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[9]
酸化防止剤、伸展油、充填剤、UV安定剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を含む、[8]に記載の組成物。
[10]
第1のプロピレン系ポリマーを含む連続相と、
前記連続相中に分散された不連続相であって、架橋オレフィンブロックコポリマーを含む、不連続相と、を含む、熱可塑性加硫物組成物。
[11]
前記第1のプロピレン系ポリマーは、第1のプロピレン/エチレンコポリマーである、[10]に記載の熱可塑性加硫物組成物。
[12]
第2のプロピレン/エチレンコポリマーを含む、[10]または[11]のいずれかに記載の熱可塑性加硫物組成物。
[13]
5重量%〜50重量%の第1のプロピレン系ポリマーと、
15重量%〜76重量%の架橋オレフィンブロックコポリマーと、
1重量%〜40重量%の第2のプロピレン/エチレンコポリマーと、を含む、[12]に記載の熱可塑性加硫物組成物。
[14]
4MPa〜20MPaの引張り強度を有する、[10]〜[13]のいずれかに記載の熱可塑性加硫物組成物。
[15]
200%〜900%の破断伸び率を有する、[10]〜[14]のいずれかに記載の熱可塑性加硫物組成物。