特許第6188826号(P6188826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188826
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】外面に表面増感分光法要素を有する装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20170821BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20170821BHJP
   G01J 3/44 20060101ALI20170821BHJP
   G01J 3/443 20060101ALI20170821BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   G01N21/65
   G01J3/02 Z
   G01J3/44
   G01J3/443
   G01N21/64 G
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-555137(P2015-555137)
(86)(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公表番号】特表2016-508601(P2016-508601A)
(43)【公表日】2016年3月22日
(86)【国際出願番号】US2013023660
(87)【国際公開番号】WO2014120129
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年8月3日
【審判番号】不服2016-12016(P2016-12016/J1)
【審判請求日】2016年8月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】ヤマカワ,ミネオ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ツィヨン
【合議体】
【審判長】 郡山 順
【審判官】 松岡 智也
【審判官】 信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/033097(WO,A1)
【文献】 特開2003−057173(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/054027(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0092660(US,A1)
【文献】 特開昭63−212332(JP,A)
【文献】 特開2012−225719(JP,A)
【文献】 米国特許第5864397(US,A)
【文献】 特表2005−514179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00-1/44,21/00-21/74,33/48-33/98
A61B1/00-1/32, 5/06-5/22, 9/00-10/06
JSTPlus(JDream3)
JMEDPlus(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光法を行うための装置であって、
生体へ挿入されることができる形状およびサイズを有する細長い基体であって、第1の端部および第2の端部を有する、細長い基体と、
前記細長い基体の前記第1の端部と前記第2の端部との間で両端部以外の場所において前記細長い基体の外面に配置された表面増感分光法(SES)要素の第1のグループとを含む、装置。
【請求項2】
前記細長い基体が、鍼灸針からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記細長い基体が円形の断面からなり、前記SES要素の第1のグループが、前記細長い基体の前記第1の端部と前記第2の端部との間で両端部以外の場所において前記細長い基体の外周の周りに配置されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記細長い基体の外面から延びる複数のナノフィンガを更に含み、前記SES要素のそれぞれが、前記複数のナノフィンガのそれぞれの先端部に配置されている、請求項1〜3の何れかに記載の装置。
【請求項5】
隣接するナノフィンガの先端部がお互いに対して近接し、前記隣接するナノフィンガの少なくとも幾つかの先端部にある前記SES要素がお互いに接触するように、前記複数のナノフィンガは、前記複数のナノフィンガの隣接するナノフィンガ上に部分的に倒れる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
記SES要素の第1のグループを覆うカバー層を更に含む、請求項1〜5の何れかに記載の装置。
【請求項7】
前記カバー層が、液体に溶解可能、光分解可能、及び外部刺激を受けることによって除去可能の少なくとも1つである、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記カバー層は、特定の粒子が前記SES要素に接触することを実質的に阻止することができる多孔質膜からなる、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
SES要素の第2のグループを更に含み、前記第1のグループ及び前記第2のグループがそれぞれ、前記細長い基体の前記第1の端部と前記第2の端部との間で両端部以外の場所において前記細長い基体の表面に配置されている、請求項1〜5の何れかに記載の装置。
【請求項10】
記SES要素の第1のグループを覆う第1のカバー層と、
記SES要素の第2のグループを覆う第2のカバー層とを更に含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1のカバー層および前記第2のカバー層が、異なる速度で又は異なる時間に除去されるようになっている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記細長い基体上に設けられた薬材料を更に含み、前記薬材料が、所定の時間量および外部刺激を受けた際の少なくとも1つの後に、前記検体へ導入されることができる、請求項1〜11の何れかに記載の装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかに記載の装置を用いて分光法を行うためのシステムであって、
記SES要素を照明するための照明光源と、
記SES要素の近くに配置された被分析物から放出された光を検出するためのスペクトロメータとを含む、システム。
【請求項14】
請求項1〜12の何れかに記載の装置を用いて分光法を行うための方法であって、
ターゲット粒子を含有する前記生体の流体内において、前記ターゲット粒子の少なくとも幾つかを前記SES要素に接触させ、
照射ビームを前記SES要素および前記ターゲット粒子に送り、前記ターゲット粒子に散乱信号を放出させ、
前記ターゲット粒子により放出された前記散乱信号を測定することを含む、方法。
【請求項15】
請求項1〜5の何れかに記載の装置を製造するための方法であって、
前記細長い基体の前記外面に前記SES要素を設け、
前記細長い基体上にカバー層を設けることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
表面増感ラマン分光法(surface-enhanced Raman spectroscopy:SERS)のような表面増感分光法(surface-enhancedspectroscopy:SES)において、被分析物の振動励起レベルが調査される。光子のエネルギーは、光子により励起された振動レベルの量に等しい量だけ移動(シフト)することができる(ラマン散乱)。調査されている被分析物に特有の分子振動に対応する帯域の波長分布からなるラマンスペクトルが検出されて、被分析物が同定され得る。SERSにおいて、被分析物の分子は、誘電体(例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、及びポリマー)でコーティングされても、されていなくても良い金属ナノ粒子に接触または近接(例えば、数十ナノメートル未満)し、当該金属ナノ粒子は、ひとたび光により励起されると、当該金属ナノ粒子の周囲に強い近接場を生成する、プラズモンモード(自由電子密度の集団振動)をサポートする。これらの場は、近接場の領域において被分析物分子に結合し、被分析物の分子からの散乱信号の放出を強めることができる。
【0002】
本開示の特徴要素は、一例として示され、以下の図面に制限されない。当該図面において、同様の参照符号は、類似の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1A】本開示の一例による、分光法を行うための装置の簡略化した側面図である。
図1B】本開示の一例による、線A−Aに沿った、図1Aに示された装置の拡大断面図である。
図1C】本開示の別の例による、図1Aに示された装置の簡略化した断面図である。
図2A】本開示の別の例による、分光法を行うための装置の図である。
図2B】本開示の別の例による、分光法を行うための装置の図である。
図2C】本開示の別の例による、分光法を行うための装置の図である。
図3】本開示の一例による、SES装置および分光法を行うための装置を含むことができるSESシステムの図である。
図4A】本開示の一例による、図1A図3に示された装置において実施され得るSES要素のアレイ(この場合、ナノフィンガ)の等角図である。
図4B】本開示の例による、ナノフィンガの倒れる前の、図4Aに示された線C−Cに沿った断面図である。
図4C】本開示の例による、ナノフィンガの倒れた後の、図4Aに示された線C−Cに沿った断面図である。
図5】本開示の一例による、分光法を行うための装置を製作するための方法の流れ図である。
図6】本開示の一例による、分光法を行うための装置を用いるための方法の流れ図である。
【0004】
詳細な説明
簡略化および例示の目的のために、本開示は、主としてその例を参照することにより説明される。以下の説明において、本開示の完全な理解を与えるために、多くの特定の細部が記載される。しかしながら、本開示がこれら特定の細部に制限されずに実施され得ることは容易に明らかであろう。また、幾つかの方法および構造は、本開示を不必要に曖昧にしないように、詳細に説明されない。
【0005】
本開示の全体にわたって、用語「1つの(a)及び(an)」は、少なくとも1つの特定の要素を示すことが意図されている。本明細書で使用される限り、用語「含む」は、〜を含むがこれに限定されるものではないことを意味する。用語「基づいて」は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。更に、用語「光」は、電磁スペクトルの赤外部、近赤外部、及び紫外部を含む、電磁スペクトルの可視部分および非可視部分の波長を有する電磁放射線を意味する。
【0006】
本明細書には、分光法(スペクトロスコピー、分光線検査)を行うための装置、表面増感分光法(SES)を行うためのシステム、装置を製作するための方法、及び当該装置を用いて分光法を行うための方法が開示される。本明細書に開示された装置は、検体へ挿入されることができる形状およびサイズを有する細長い基体を含むことができ、この場合、細長い基体は、第1の端部および第2の端部を有する。また、当該装置は、細長い基体の第1の端部と第2の端部との間の場所において細長い基体の外面に配置された複数のSES要素も含むことができる。一例によれば、また、当該装置は、当該装置の検体への挿入および/または注入中にSES要素を保護するためのカバー層も含むことができる。カバー層は、選択的に除去可能であり及び/又は特定の粒子が複数のSES要素に接触することを実質的に阻止する多孔質膜を含むことができる。
【0007】
一例によれば、SES要素が設けられ得る細長い基体は、鍼灸針とすることができ、この場合、SES要素が、鍼灸針の挿入先端部の近くに設けられる。1つの点について、SES要素は、比較的簡単な方法で検体の所望の場所に配置され得る。即ち、検体の所望の流体場所にSES要素を配置するように、本明細書に開示された装置を挿入するために、鍼灸針を挿入することに関連した従来の技術が利用され得る。
【0008】
更に、SES要素は、細長い基体の外周の周りに設けられ得る。そういうものだから、SES要素の少なくとも幾つかは、細長い基体が検体へ挿入される回転配向に関係なく照射ビーム(励起光)を受け取ることができる。1つの点について、例えば、装置がその中心の長手軸を中心として回転したとしても、装置は、依然として分光法を行うために使用され得る。
【0009】
一例として、本明細書に開示された装置は、健康と病気の医学的管理に実施され得る。例えば、本明細書に開示された装置は、比較的迅速で正確なプロファイリング(分析学)を行う、及び生理学的被分析物からのバイオマーカー(生体指標)の発見を行う、並びに早期診断、病気の予防、スクリーニング、監視、診断、治療、及び健康改善、特に医療処置および薬物治療の評価と査定に重要である生理学的状態の発見を行うために使用され得る。本明細書で説明されるように、装置は、単一又は複数の状態および測定基準の同定、特定のバイオマーカー及び天然または人工的に導入されたレポーター分子の分布、及び潜在的なバイオマーカーの新たな又は集合的なプロファイルの発見を教え導く及び収集するために、リアルタイム(オンライン)及び/又はオフラインで分光法を行うために使用され得る。
【0010】
最初に図1Aを参照すると、一例に従って、分光法を行うための装置100の簡略化した側面図が示される。理解されるべきは、図1Aに示された装置100は、追加の構成要素を含むことができ、本明細書に説明された構成要素の幾つかは、装置100の範囲から逸脱せずに取り除かれ及び/又は変更され得る。また、理解されるべきは、図1Aに示された構成要素は、一律の縮尺に従わずに描かれており、ひいては当該構成要素は、本明細書に示されたものと違う、それぞれに対して異なる相対的なサイズを有しても良い。
【0011】
一般的に言えば、装置100は、表面増感ラマン分光法(SERS)、表面増感ルミネセンス検出、表面増感蛍光検出、又は他のタイプの表面増感型の光学的増強検出を含むことができる分光法(スペクトロスコピー)を行うために実現され得る。この場合、装置100は、細長い基体102、及び複数の表面増感分光法(SES)要素110を含むことができる。SES要素110は、細長い基体102の表面の上に少し離れて延在するように示されている。しかしながら、より詳細に後述されるように、SES要素110は、比較的小さい要素とすることができ、例えばナノスケールの寸法を有することができ、それ故に理解されるべきは、幾つかの例において、SES要素110は、図1Aに示されているものと同じように見えないかもしれない。そういうものだから、図1A並びに他の図面のSES要素110の描写は、簡略化した例示および説明のためであると明確に理解されるべきである。
【0012】
細長い基体102は、横軸に沿って延びることができ、第1の端部104及び第2の端部106を有することができる。SES要素110のそれぞれは、第1の端部104と第2の端部106との間で、細長い基体102に沿った複数の場所に個々のグループで設けられ得る。従って、図1Aに示されたSES要素110は、より詳細に後述されるように、SES要素110からなる個々のグループを表すことができる。
【0013】
装置100は、或るサイズ、或る構成を有することができ、装置100を、検体(被検物、標本)への挿入および/または注入に適するようにする材料から製造され得る。また、第1の端部104は、一般に装置100が検体の皮膚層を通じて挿入されることを可能にする尖った先端部も有することができる。しかしながら、その尖った先端部は省略されても良く、装置100は、従来の鍼療法の円筒形挿入道具によって挿入され得る。特定の例として、装置100の細長い基体102は、鍼灸針とすることができ、従って、鍼灸針を人間へ挿入するために利用されるものと同様の方法で検体へ挿入され得る。細長い基体102の第2の端部106は、装置100を、又は装置100の少なくとも一部を検体へ挿入することを容易にするためのハンドル(図示せず)を含むことができる。
【0014】
一例によれば、装置100は、生体内で、即ち人間、動物、昆虫、植物、非生物要素などのような検体へ装置100を挿入および/または注入した後に、分光法を行うように実現され得る。従って、装置100は、血液、リンパ液、唾液、間質液などのような液状検体の粒子(例えば、分子)を分析するために実現され得る。代案として、装置100は、装置100の注入を必要としない分光法の応用形態において実現され得る。
【0015】
従って、細長い基体102は、検体への挿入および/または注入に適した任意の材料、例えばシリコン(ケイ素)、ポリマー、プラスチック、銀、チタニウムなどを含むことができる。装置100が検体へ挿入および/または注入されないで実施されるべきである他の例においては、細長い基体102は、検体に対して毒性を持つかもしれない材料のような他の材料も含むことができる。一例によれば、細長い基体102は、約0.1mm〜約10mmの範囲である直径(又は幅)、及び約1mm〜約100mmの範囲である長さを有することができる。更に、SES要素110は、細長い基体102の比較的小さい区画にわたって広がるグループに構成され得る。一例として、SES要素110のグループのそれぞれは、約5μm(ミクロン)〜約500μm(ミクロン)の範囲である幅を有することができる。
【0016】
SES要素110は、細長い基体102の任意の表面に設けられ得る。特に、SES要素110は、異なるグループ分けで細長い基体102に配設され得る。即ち、SES要素110の1つのグループは、細長い基体102上の1つの場所に配置されることができ、SES要素110の別のグループは、細長い基体102上の第2の場所に配置され得る。しかしながら、理解されるべきは、装置100の描写は例示のためであり、装置100の構成要素に対する様々な変更は、装置100の範囲から逸脱せずに行われ得る。例えば、複数のSES要素110は、互い違い(交互)の構成を含むように配設され得る。一例として、SES要素110の単一のグループは、細長い基体102の表面に沿って配置され得る。別の例として、SES要素110の追加のグループが、細長い基体102のほぼ全長に沿って配置され得る。
【0017】
一般的に言えば、SES要素110は、SES要素110と接触する及び/又はそれらに比較的近接した粒子により、光、蛍光、ルミネスセンスなどの何れかの放出を強める要素とすることができ、それ故に当該粒子上で、表面増感ラマン分光法(SERS)、増強された光ルミネセンス、増強された蛍光発光などのように、検出操作を強める。SES要素110は、以下に限定されないが、金(Au)、銀(Ag)及び銅(Cu)のようなプラズモンをサポート(支援)する材料を含むことができるプラズモンナノ粒子またはナノ構造体を含むことができる。また、SES要素110は、様々な順序付けられた又はランダムな構成で基体上に配設された構造も含むことができる。
【0018】
SES要素110は、ナノスケールの表面粗さを有することができ、当該表面粗さは一般に、層(単数または複数)の表面上のナノスケール表面特徴要素により特徴付けられ、プラズモンをサポートする材料層(単数または複数)の堆積中に自然に作成され得る。本明細書の定義により、プラズモンをサポートする材料は、信号の散乱および分光法中に当該材料上または当該材料近くの被分析物からの信号の発生または放出を容易にする材料とすることができる。
【0019】
幾つかの例において、SES要素110は、被分析物分子の吸着を容易にするように機能化され得る。例えば、SES要素110の表面は、被分析物の特定のクラスが引きつけられて、SES要素110上に結合または選択的に吸着され得るように、機能化され得る。SES要素110が被分析物分子からの散乱光放出を強めることができる様々な方法は、より詳細に後述される。
【0020】
装置100は、被分析物からの信号放出(例えば、ラマン散乱光、ルミネスセンス、蛍光発光など)の強化を大幅に高めるように比較的大多数のSES要素110を含むことができる。更に、複数のSES要素110は、信号放出を大幅に強化するためにSES要素110に十分な、及び放出された信号を検出するための検出器に十分な任意の適切な寸法を含むことができる。
【0021】
さて、図1Bを参照すると、一例による、図1Aの線A−Aに沿った、装置100の簡略化した垂直断面図が示される。細長い基体102は、円形断面を有し、SES要素110は、細長い基体102の円周の周りに延在することができる。更に、細長い構造体102の円周の周りのSES要素110のこの構成は、細長い基体102の長手軸に沿った細長い基体102の回転配向に関係なく、SES要素110のグループ上へ光が送られる可能性を大幅に増すことができる。
【0022】
理解されるべきは、図1Bに示された装置100は、装置100の範囲から逸脱せずに様々な点で変更され得る。例えば、細長い基体102の全円周にわたって広がる代わりに、SES要素110は、細長い基体102の円周の一部に設けられ得る。一例として、SES要素110は、細長い基体102の円周の半分に設けられ得る。別の例として、SES要素110は、細長い基体102の円周の周りに複数のグループで配設され得る。この例において、間隙が、細長い基体102の円周に沿って、SES要素110の個々のグループ間に設けられ得る。
【0023】
さて、図1Cを参照すると、別の例による、装置100の簡略化した垂直断面図が示される。図1Cに示された例において、細長い基体102は、矩形断面を有するように示され、SES要素110が細長い基体の1つの面に配設されているように示される。理解されるべきは、細長い基体102は、装置100の範囲から逸脱せずに他の断面形状を有することができる。例えば、細長い基体102は、他の多角形形状、卵形形状などを有することができる。更に、細長い基体102が中実構造を有するように示されているが、細長い基体102は代わりに、完全または部分的に中空構造を有することができる。更に又は代案として、SES要素110は、細長い基体102の複数の面に沿って設けられ得る。
【0024】
さて、図2Aを参照すると、別の例による、図1Aに示された分光法を行うための装置100の簡略化した側面図が示される。図2Aに示された装置100は、図1Aに示された装置100に含まれるものと同じ構成要素の全てを含むことができ、それ故に、これら構成要素は、図2Aに示された装置100に関してより詳細に説明されない。
【0025】
図2Aに示されるように、装置100は、SES要素110の上に延在するカバー層200を含むことができる。図2Aの線B−Bに沿った装置100の垂直断面図である図2Bに示されるように、カバー層200も、細長い基体102の円周の周りに延在することができる。また、図2Bの装置100は、より詳細に後述される随意的な細孔210を含むようにも示される。一例に従って、カバー層200は、装置100の検体への挿入中にSES要素110を保護することができる保護層とすることができる。更に又は代案として、カバー層200は、装置100の検体への注入後にSES要素110を保護することができる。いずれにしても、カバー層200は、SES要素110を保護するための任意の適切な材料から形成され得る。例えば、カバー層200は、人間に無害である生分解性材料、人工および生体高分子材料を含む生体適合性材料の組み合わせ、金属、脂質、炭水化物などから形成され得る。
【0026】
特定の例に従って、カバー層200は、検体へ挿入された後に溶解することができる材料から形成され得る。この例において、カバー層200は、所定の時間の長さの後に検体の流体にさらされた後、カバー層200が溶解することを可能にする材料および特定のサイズから形成され得る。別の例に従って、カバー層200は、外部刺激がカバー層200上に加えられた際に取り除かれることができる材料から形成され得る。この例において、外部刺激には、例えば光、熱、化学薬品、生物学的作用物質などが含まれ得る。それ故に、例えば、外部刺激は、装置100の検体への挿入および/または注入後にカバー層200上に加えられ得る。従って、1つの点について、カバー層200は、検体への挿入および/または注入中にSES要素110を保護することができ、挿入および/または注入後にSES要素110を曝露するために取り除かれ得る。
【0027】
別の例に従って、カバー層200は、検体へと送達されることができる薬を含むことができる。この例において、カバー層200は、更に又は代案として、SES要素110が設けられていない基体102の領域の上に設けられ得る。更なる例として、カバー層200は、カバー層200が取り除かれた際に薬が検体へ送達され得るように、薬材料を覆うことができる。それ故に、例えば、これら例のカバー層200は、薬が検体へ送達されることになることを示す分光法操作の実行に次いで、取り除かれ得る。
【0028】
更なる例に従って、カバー層200は、複数の細孔210を有する多孔質膜を含むことができる(図2B)。この例におけるカバー層200は、様々な材料がカバー層200の下のSES要素110に接触することを実質的に阻止することができる。それ故に、カバー層200の細孔210を何とか通り抜けるのに十分に小さいサイズを有する粒子のみが、SES要素110に接触することができる。1つの点について、カバー層200は、より大きな不要な粒子がSES要素110を遮断する又は破損することを実質的に防止することができる。また、細孔210は、特定の形状を有する分子の選択的な通過を可能にするための特定の形状も有することができる。更に又は代案として、カバー層200は、細孔210を通過すると期待されない分子のレセプタと機能化され得る。この例において、カバー層200は、流体の多重種が選択的に及び効率的に阻止され得るように、様々なタイプの分子のレセプタと機能化され得る。
【0029】
また、カバー層200は、励起光および散乱信号を含む光が実質的に通過することを可能にするように形成され得る。この例において、カバー層200は、光および信号が通過することを可能にするための十分に薄いサイズを有するように形成および/または光学的に透明な材料から形成され得る。特定の例として、カバー層200は、約2nm〜約500nmの間の厚さを有することができる。更に、カバー層200は比較的薄い構成を有するように示されているが、カバー層200は代案として、より厚いスポンジ状の又は骨組み状のマトリクス構成を有することができる。
【0030】
この例におけるカバー層200は、カバー層200が本明細書で説明された装置100の機能を実行することを可能にする任意の適切な材料によって構成され得る。カバー層200の適切な材料の例には、酢酸セルロース、ウレタン系ポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、又はポリカーボネートウレタン)、エチレングリコール系ポリマー、ヘパリン機能化ポリマー、これら材料の組み合わせなどが含まれ得る。
【0031】
一例として、細孔210が、分子インプリンティング技術の具現化形態を通じてカバー層200へ製造され得る。例えば、この技術において、カバー層200を通過することを可能にされることになる分子は、ポリマー材料と混合され、混合物が比較的薄いシートへ形成されてレジスト硬化(例えば、UV硬化)されてもよい。次いで、分子は、混合された材料の比較的薄いシートから溶解されて、それにより特にカバー層200を通過することを可能にされることになる分子に合うように成形された細孔210が残される。次いで、材料の薄いシートが支持多孔質副層(図示せず)に配置されて、その組み合わされた層がSES要素110の上に配置され得る。
【0032】
別の例によれば、カバー層200は、脂質またはリン脂質分子の2つの層から作成された薄い有極性膜とすることができる脂質二重層を含む。脂質二重層は、細胞(セル)の周りに連続したバリヤを形成する脂質分子の比較的平坦なシートを含むことができる。脂質二重層は、脂質二重層膜を介した輸送賦形剤としての機能を果たすタンパク質またはチャネルを含むことができる。この点に関して、タンパク質は、分子を選択的に輸送することができ、例えば、分子は、脂質二重層膜を介して脂質二重層膜を通過するのに十分な小さいサイズを有し、それ故に脂質二重層膜がフィルタとして動作することを可能にすることができる。脂質二重層は、天然に存在する細胞から採取され得る、及び/又は脂質分子から合成的に製造され得る。いずれにしても、脂質二重層は、例えば、支持多孔質副層(図示せず)上に脂質二重層をコーティングすることにより配置され、その組み合わされた層がSES要素110の上に配置され得る。
【0033】
更なる例によれば、カバー層200は、対応するゲスト分子に結合されることになる、クラウンエーテル、シクロデキストリンなどのようなホスト分子を含むように機能化され得る。ホスト分子に対応する分子がホスト分子に結合することができるので、対応するゲスト分子は実質的に、カバー層200を通過してSES要素110に接触することを阻止され得る。
【0034】
さて、図2Cを参照すると、別の例による、図2Aに示された分光法を行うための装置100の簡略化した側面図が示される。図2Cに示された装置100は、装置100が複数のカバー層210a及び210bを含むことができるという点で、図2Aに示された装置100とは異なるかもしれない。特に、カバー層210a及び210bのそれぞれは、SES要素110の個々のセット(集合)上の領域を覆うことができる。
【0035】
一例によれば、カバー層210a及び210bのそれぞれは、カバー層210a及び210bが検体の流体に曝露された後に異なる速度で溶解する、又は光により光分解されることができる材料(複数)から形成されることができる、及び/又は異なる構成(例えば、厚さ)を有することができる。この例において、SES要素110の異なるセットは、異なった時間に検体の流体にさらされる又は光分解のために光にさらされることができる。
【0036】
別の例において、カバー層210a及び210bは、同じ材料から形成され且つ同じ構成を有しても良い。この例において、外部刺激が異なる時間にカバー層210a及び210bに加えられて、カバー層210a及び210bの下に包含されたSES要素110の異なるセットを曝露することができる。異なる時間にSES要素110の異なるグループを選択的に曝露することにより、装置100は、時間と共に検体の状態の変化を検出するために使用され得る。
【0037】
図2A図2Cに示されるように、カバー層200、210a、210bは、細長い基体102の表面の上に或る距離を置いて広がることができる。しかしながら、カバー層200、210a、210bは、比較的薄い層を含むことができ、それ故に、装置100がカバー層200、210a、210bから実質的に干渉されずに、検体へ挿入されることが可能になる。理解されるべきは、幾つかの例において、カバー層200、210a、210bは、図2A図2Cに示されたのと同じに見えないかもしれない。そういうものだから、図2A図2Cのカバー層200、210a、210bの描写は、簡略化した例示および説明のためであることを明確に理解するべきである。
【0038】
さて、図3を参照すると、一例による、SESを行うためのSES装置302及び装置100を含むSESシステム300の図が示される。理解されるべきは、図3に示されたSESシステム300は、追加の構成要素を含むことができ、本明細書で説明された構成要素の幾つかは、SESシステム300の範囲から逸脱せずに取り除かれる及び/又は変更され得る。また、理解されるべきは、図3に示された構成要素は、一律の縮尺に従わずに描かれており、ひいては当該構成要素は、本明細書に示されたものと違う、それぞれに対して異なる相対的なサイズを有しても良い。
【0039】
SES装置302は、照明光源304、ダイクロイックビームスプリッタ308、反射器310、及びスペクトロメータ314を含むことができる。照明光源304は、ダイクロイックビームスプリッタ308を通して、照射ビーム306(例えば、レーザビーム、LEDビーム、又は他のタイプの光ビーム)を放出することができる。また、照射ビーム306は、反射器310により装置100上へ反射され得る。照射ビーム306は、検体層320を貫通して、SES要素110、及びSES要素110に比較的近接および/または接触するターゲット粒子を照明することができる。
【0040】
図3において、ターゲット粒子340は、例えば血液、リンパ液、唾液、間隙液などを含むことができる流体の流れ330内に含まれているように示されている。ターゲット粒子340は、例えば天然の及び/又は人工的に導入されたレポーター分子、バイオマーカー(生体指標)などを含むことができる。一般的に言えば、バイオマーカー及びレポーター分子は、血液および他の体液、並びに立体配座、及び健康および病気に関する医療パラメータの化学的/物理的状態の分子指標から導出され得る。流体の流れ330は、ターゲット粒子340及び他の体液を含むことができる。流体330が装置100の近くで流れる場合、ターゲット粒子340の幾つかは、SES要素110の幾つかと接触、場合によってはSES要素110の幾つかと結合することができる。
【0041】
一般的に言えば、照射ビーム306は、SES要素110に対する励起光として動作することができ、それによりSES要素110の周りの近接場が生じることができる。SES要素110の周りの近接場は、SES要素110の近傍のターゲット粒子340に結合することができる。また、SES要素110の金属ナノ粒子(又は他のプラズモン構造体)も、ターゲット粒子340の単一の放出プロセスを強めるように作用することができる。結果として、散乱信号312(例えば、ラマン散乱光、ルミネセンス、蛍光発光など)がターゲット粒子340から放出されることができ、散乱信号312の放出は、SES要素110により強化され得る。SES要素110の近くのターゲット粒子340から全方向に放出され得る散乱信号312の一部は、反射器310の方へ放出され得る。
【0042】
装置100は、装置100が挿入および/または注入され得る検体の層320(例えば、皮膚層、体内組織、静脈壁、血管、リンパ本幹、ふた(カバー)など)の下に挿入および/または注入されるように示されている。別の例において、照射ビーム306は、装置100が配置され得る気体環境または液体環境を通過することができる。いずれにしても、散乱信号312も、表面層および/または気体環境または液体環境を通過することができる。
【0043】
散乱信号312は、反射器310から反射されてダイクロイックビームスプリッタ308に戻るように方向付けられ得る。また、ダイクロイックビームスプリッタ308は、散乱信号312をスペクトロメータ314の方へ反射することができる。スペクトロメータ314は、異なる波長の光の分離および測定を可能にする、スリット、回折格子、レンズなどのような光学素子を含むことができる。また、スペクトロメータ314は、分離された波長域の強度を測定するために、検出器(例えば、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)などの検出器)も含むことができる。分離された波長帯域の測定された強度は、被分析物を同定するために使用され得る。
【0044】
SESシステム300の範囲から逸脱せずに、図3に示されたSES装置302に対して、様々な変更を行うことができる。例えば、反射器310は、照射ビーム306をSES要素110上へ集束させることができる及び/又は散乱信号312をダイクロイックビームスプリッタ308上へ集束させることができる放物線形状を有することができる。更なる例として、様々な追加の光学的構成要素(例えば、反射鏡(ミラー)、プリズム、光ファイバなど)が、配置されて、SES要素110上に照射ビーム306を方向付ける及び/又は散乱信号312をスペクトロメータ314に方向付けることができる。
【0045】
さて、図4A図4Cを参照すると、一例による、SES要素110のアレイ400の等角図および側面図がそれぞれ示される。理解されるべきは、図4A図4Cに示されたアレイ400は、追加の構成要素を含むことができ、本明細書に説明された構成要素の幾つかは、本明細書に開示された装置100の範囲から逸脱せずに取り除かれ及び/又は変更され得る。また、理解されるべきは、図4A図4Cに示された構成要素は、一律の縮尺に従わずに描かれており、ひいては当該構成要素は、本明細書に示されたものと違う、それぞれに対して異なる相対的なサイズを有しても良い。
【0046】
一般的に言えば、図4A図4Cに示されたSES要素110のアレイ400は、図1A図3に示された複数のSES要素110の一例である。特に、アレイ400において、SES要素110は、基体402の表面の上に延びる個々のナノフィンガ404の頂部に配置され得る。基体402は、ケイ素、窒化ケイ素、ガラス、プラスチック、ポリマー、SiO、Al、アルミニウムなど又はこれら材料の組み合わせ等のような、任意の適切な材料から形成され得る。基体402は、図1Aに示された細長い基体102とすることができるか、又は基体402は、細長い基体102の頂部に配置され得る別個の基体とすることができる。
【0047】
一例によれば、ナノフィンガ404は、より詳細に後述されるように、ナノメータの範囲内である寸法、例えば、約500nm未満とすることができる寸法を有することができ、ナノフィンガ404が横方向に曲げられる又は倒れることを可能にするような、例えばナノフィンガ404の先端部がお互いに向かって移動することを可能にするような比較的フレキシブルな材料から形成され得る。ナノフィンガ404の適切な材料の例には、UV硬化性または熱硬化性インプリンティングレジスト、ポリアルキルアクリレート、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマ、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、フッ素重合体など、又はその任意の組み合わせのようなポリマー材料、金、銀、アルミニウムなどのような金属材料、半導体材料など、及びそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0048】
ナノフィンガ404は、任意の適切な取り付け機構(メカニズム)を通じて基体402の表面に取り付けられ得る。例えば、ナノフィンガ404は、種々の適切なナノ構造成長技術の使用を通じて基体402の表面上に直接的に成長され得る。別の例として、ナノフィンガ404は、基体402と一体的に形成され得る。この例において、例えば、基体402が製造され得る材料の一部が、ナノフィンガ404を形成するためにエッチングされ又は別な方法で処理され得る。更なる例において、材料の別個の層が、基体402の表面に付着されることができ、材料の別個の層がエッチングされ又は別な方法で処理されて、ナノフィンガ404が形成され得る。様々な例において、ナノフィンガ404は、ナノインプリティング又はエンボス加工処理を通じて製造されることができ、この場合、ナノフィンガ404を形成するために、ポリマーマトリクスに対する多段階インプリンティングプロセスにおいて比較的剛性の柱状体の鋳型(テンプレート)が利用され得る。これらの例において、鋳型は、所定の構成においてナノフィンガ404を配列するための所望のパターニングでもってフォトリソグラフィ又は他の先端リソグラフィを通じて形成され得る。より具体的には、例えば、所望のパターンは、電子ビームリソグラフィ、フォトリソグラフィ、レーザー干渉リソグラフィ、集束イオンビーム(FIB)、球体の自己集合などの何れかにより、型に設計され得る。更に、パターンは、別の基体、例えばケイ素、ガラス、又はポリマー基体(PDMS、ポリイミド、ポリカーボネートなど)上に転写され得る。エッチングのような様々な他のプロセス、並びに微小電気機械システム(MEMS)及びナノ電気機械システム(nano-electromechanical systems:NEMS)の製造において使用される様々な技術も使用して、ナノフィンガ404を製造することができる。
【0049】
ナノフィンガ404は、実質的に円筒形状の断面を有するように示されている。しかしながら、理解されるべきは、ナノフィンガ404は、例えば、長方形、正方形、三角形などのような、他の形状の断面を有することができる。更に又は代案として、ナノフィンガ404は、ナノフィンガ404が特定の方向に実質的に倒れるように傾斜するように、切り込み(ノッチ)、膨らみ(バルジ)などのような特徴要素と共に形成され得る。従って、例えば、2つ以上の隣接するナノフィンガ404は、ナノフィンガ404がお互いに向かって倒れる可能性を増大させるための特徴要素を含むことができる。ナノフィンガ404が倒れることができる様々な方法が、より詳細に後述される。
【0050】
アレイ400は、実質的にランダムな分布のナノフィンガ404、又は所定の構成のナノフィンガ404を含むことができる。いずれにしても、一例によれば、ナノフィンガ404は、ナノフィンガ404が部分的に倒れた状態になる際に、少なくとも2つの隣接するナノフィンガ404の先端部がお互いに近接した状態にされることができるように、お互いに対して配設され得る。特定の例として、隣接するナノフィンガ404は、お互いから約100nm未満離れて配置され得る。特定の例によれば、ナノフィンガ404は、ナノフィンガ404の隣接するものが所定の幾何学的形状(例えば、三角形、正方形、五角形など)へ優先的に倒れるように、基体402上にパターン形成され得る。
【0051】
さて、図4Bを参照すると、一例による、アレイ400の、図4Aに示された線C−Cに沿った断面図が示される。その図に示されているように、ナノフィンガ404の先端部408のそれぞれは、そこに配置された個々のSES要素110を含むことができる。金属ナノ粒子を含むことができるSES要素110は、例えば、金属材料の物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、スパッタリングなどの1つ、又は予め合成されたナノ粒子の自己組織化(自己集合)を通じて、ナノフィンガ404の先端部408上に堆積され得る。
【0052】
ナノフィンガ404は図4A図4Bにおいて、それぞれがお互いに対して垂直に且つ同じ高さに延びるように示されているが、ナノフィンガ404の幾つかはお互いに対して様々な角度および高さで延びても良いことは理解されるべきである。ナノフィンガ404の角度および/または高さの違いは、例えばナノフィンガ404の製造およびナノフィンガ404上のSES要素110の堆積などに存在する製造または成長の変動から生じる差異に起因して発生する可能性がある。
【0053】
図4Bに示されるように、ナノフィンガ404は、先端部408がお互いに対して実質的に一定の間隔を置いた配列状態にあることができる第1の位置にあることができる。先端部408間の間隙410は、液体が間隙410内に配置されることを可能にするのに十分に大きいサイズからなることができる。更に、間隙410は、例えば、液体が蒸発する際に先端部408に加えられる毛細管力を通じて、間隙410に提供された液体が蒸発する際に、ナノフィンガ404の少なくとも幾つかの先端部408がお互いに向かって引き寄せられることを可能にするのに十分に小さいサイズからなることができる。
【0054】
さて、図4Cを参照すると、一例による、液体の蒸発後の、アレイ400の図4Aに示された線C−Cに沿った断面図が示される。図4Cに示された図は、ナノフィンガ404の幾つかの先端部408がお互いに向かって引き寄せられた第2の位置にあることができることを除いて、図4Bに示された図と同じであるかもしれない。一例によれば、幾つかのナノフィンガ404の先端部408は、先端部408間の間隙410における液体(図示せず)の蒸発中および蒸発後に、隣接するナノフィンガ404のそれぞれに加えられる毛細管力に起因して、或る時間期間にわたってお互いに比較的近接した状態にあることができ且つその状態のままにあることができる。更に、隣接する先端部408上のSES要素110は、例えば金−金結合(ボンディング)、結合分子(図示せず)などを通じて、お互いに結合することができる。
【0055】
一つの点について、ナノフィンガ404の先端部408は、図4Cに示されたようにお互いに向かって引き寄せられるようにされて、SES要素110の近接場においてターゲット粒子340による信号放出を強めることができる。その理由は、隣接する先端部408上のSES要素110間の比較的小さい間隙(又は間隙の無い状態)は、比較的大きな電界強度を有する「ホットスポット」を形成するからである。一例によれば、ナノフィンガ404は、ターゲット粒子340を含有する流体の流れ330(図3)の導入前に、図4Cに示された部分的に倒れた状態へ配置され得る。別の例によれば、ナノフィンガ404は、図2A図2Cに示されたSES要素110の上にカバー層200、210a、210bを形成する前に、図4Cに示された部分的に倒れた状態へ配置され得る。
【0056】
更なる例によれば、SES要素110は、基体402上に直接的に堆積および/または形成され得る。更に又は代案として、SES要素110がお互いに接触する又はお互いに対して比較的近接した状態にあり且つSES要素110が別の基体、例えば細長い基体102に移されることができるように、SES要素110は例えば、図4Cに示されたように最初に形成および配置されることができる。
【0057】
さて、図5を参照すると、一例による、分光法を行うための装置100を製造するための方法500の流れ図が示される。理解されるべきは、図5に示された方法500は、方法500の範囲から逸脱せずに、追加のプロセスを含むことができ、本明細書に記載されたプロセスの幾つかは、取り除かれる及び/又は変更されてもよい。更に、方法500の具現化形態を通じて製造されるように、装置100に特定の言及が本明細書でなされているが、方法500は、方法500の範囲から逸脱せずに異なるように構成された装置を製造するように実施され得ることは理解されるべきである。
【0058】
ブロック502において、複数のSES要素110が、検体へ挿入されることができる形状およびサイズを有する細長い基体102の表面に設けられることができ、この場合、細長い基体102は第1の端部104及び第2の端部106を有する。第1の端部104は、尖った先端部を有することができる。上述したように、SES要素110は、様々な方法の何れかにおいて細長い基体102の表面に設けられ得る。
【0059】
ブロック504において、カバー層200、210a、210bが、細長い基体102上に設けられ得る。一例によれば、カバー層200、210a、210bが、検体への装置100の挿入中および/または注入後に、SES要素110を保護するためにSES要素110の上に設けられ得る。更に又は代案として、カバー層200、210a、210bは、検体へ送達されるべき薬を含むことができる。
【0060】
さて、図6を参照すると、一例による、分光法を行うための装置100を用いるための方法600の流れ図が示される。理解されるべきは、図6に示された方法600は、方法600の範囲から逸脱せずに、追加のプロセスを含むことができ、本明細書に記載されたプロセスの幾つかは、取り除かれる及び/又は変更されてもよい。更に、方法600において使用されているように、装置100に特定の言及が本明細書でなされているが、方法600は、方法600の範囲から逸脱せずに異なるように構成された装置を使用することができることは理解されるべきである。
【0061】
ブロック602において、装置100の少なくとも一部が、検体へ挿入されることができ、当該検体は、少なくともターゲット粒子の幾つかが複数のSES要素110に接触するように、ターゲット粒子340を含有する流体330を含む。装置100の細長い基体102が鍼灸針である例によれば、装置100は、鍼灸針を検体へ挿入するために利用されるものと同様の方法で、検体へ挿入され得る。例えば、装置100は、別個の供給機構(メカニズム)の使用を必要とせずに、検体の外側層(例えば、皮膚)を通じて直接的に挿入され得る。
【0062】
ブロック604において、刺激が、カバー層200、210a、210bを少なくとも部分的に取り除くために、カバー層200、210a、210b上に随意に加えられ得る。上述したように、刺激には、熱、光、化学薬品、生物学的作用物質などの何れかが含まれ得る。更に、ブロック604において刺激を加えることは、例えば、カバー層200、210a、210bが検体の流体にさらされた後に溶解する、又は光により光分解されるための材料および/または構成からカバー層200、210a、210bが形成される場合には、随意とすることができる。カバー層200、210a、210bが多孔質膜から形成されている他の例において、カバー層200、210a、210bはSES要素110の上に維持され得る。
【0063】
ブロック606において、照射ビームが複数のSES要素110及びターゲット粒子340上に向けられる(送られる)ことができ、それによりターゲット粒子340が散乱信号312を放出する。上述したように、SES要素110は一般に、SES要素110と接触している又は比較的近接しているターゲット粒子340からの散乱信号312の放出を強めることができる。更に、散乱信号312はスペクトロメータ314に送られることができる。
【0064】
ブロック608において、ターゲット粒子340により放出された散乱信号312が測定され得る。散乱信号312は、図3に関連して上述されたように、スペクトロメータ314により測定され得る。
【0065】
本開示の全体にわたって特に説明されたが、本開示の代表例は、幅広い応用形態にわたって有用であり、上記説明は、制限することを意図しておらず且つそのように解釈されるべきではなく、本開示の態様の例示的な説明として提供されている。
【0066】
本明細書で説明および図示されたものは、その変形形態の幾つかと併せた例である。本明細書で使用される用語、説明および図面は、単なる例示のために記載されており、制限として意図されていない。多くの変形形態が、以下の特許請求の範囲により定義されることが意図されている本内容(及びそれらの等価物)の思想および範囲内において可能であり、この場合、全ての用語は、別段の指示が無い限りそれらの最も広い妥当な意味が意図されている。

図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6