特許第6188859号(P6188859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188859
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】X線撮像装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   A61B6/00 320R
   A61B6/00 300G
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-79124(P2016-79124)
(22)【出願日】2016年4月11日
(62)【分割の表示】特願2012-4390(P2012-4390)の分割
【原出願日】2012年1月12日
(65)【公開番号】特開2016-128078(P2016-128078A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】竹元 久人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 耕一郎
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−212426(JP,A)
【文献】 特開2007−244489(JP,A)
【文献】 特表2006−517439(JP,A)
【文献】 特開平09−234198(JP,A)
【文献】 特開2010−253051(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0014726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線発生部と、
前記X線発生部によるX線照射範囲を制限するX線絞り部と、
前記X線発生部により発生されたX線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部の受光面に関心領域を設定する設定部と、
前記X線発生部と前記X線絞り部とを制御し、前記X線絞り部により前記関心領域にX線照射範囲を制限しない広域撮像と前記関心領域にX線照射範囲を制限した部分撮像とを行う撮像制御部と、
前記関心領域の露光量と所定の閾値との比較に基づいて、前記部分撮像時の自動露光制御により増加したX線照射量の増加率を算出する増加率算出部と、
前記増加率を表示する表示部と、
を具備するX線撮像装置。
【請求項2】
前記X線絞り部を通過したX線の線量を検出する線量検出部と、
前記広域撮像で前記線量検出部により検出された値と、前記広域撮像後の前記部分撮像で前記線量検出部により検出された値とに基づいて、被検体の被曝線量の低減率を算出する低減率算出部を更に備え、
前記表示部は、前記増加率と前記低減率とを表示する、
請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記低減率のグラフを表示する、請求項2記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記グラフとして、広域撮像予測積算値グラフと部分撮像予測積算値グラフとの少なくとも一方を表示し、前記広域撮像予測積算値グラフは、現時点以降に前記広域撮像が行われると仮定した場合の被曝線量の積算値の時間変化を示し、前記部分撮像予測積算値グラフは、現時点以降に前記部分撮像が行われると仮定した場合の被曝線量の積算値の時間変化を示す、請求項3記載のX線撮像装置。
【請求項5】
前記低減率算出部は、前記広域撮像で前記線量検出部により検出された被曝線量率を基準値G1とし、前記広域撮像後の前記部分撮像で前記線量検出部により検出された被曝線量率を現在値G2としたときのG2/G1の値を、前記低減率として算出する、請求項2記載のX線撮像装置。
【請求項6】
前記低減率算出部は、所定時間のX線撮像において前記線量検出部によって検出された被曝線量の積算値を実測積算値Σ2とし、前記所定時間のX線撮像を実行する前に前記広域撮像で前記線量検出部によって検出された線量率と前記所定時間との積を基準積算値Σ1としたときのΣ2/Σ1の値を、前記低減率として算出する、請求項2記載のX線撮像装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記増加率を前記X線検出部からのX線画像データと共に表示する、請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項8】
前記表示部は、前記広域撮像予測積算値グラフと前記部分撮像予測積算値グラフとの両方を一画面に表示する、請求項4記載のX線撮像装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記広域撮像予測積算値グラフと前記部分撮像予測積算値グラフとの少なくとも一方に加え、現時点までの前記被検体の被曝線量の積算値の時間変化を示す実測積算値グラフを一画面に表示する、請求項4記載のX線撮像装置。
【請求項10】
前記被検体について許容される被曝線量の積算値の上限値を記憶する記憶部と、
現時点以降に、前記X線絞り部によって所定の面積に制限された前記X線照射範囲に対応する被曝線量率でX線撮像を行ったと仮定した場合に、前記被検体の被曝線量の積算値が現時点での値から前記上限値に達するまでに要する時間を算出する時間算出部と、を更に備え、
前記表示部は、前記上限値を示すグラフと、前記上限値に達するまでに要する時間と、を表示する、
請求項9記載のX線撮像装置。
【請求項11】
X線を発生するX線発生部と、前記X線発生部によるX線照射範囲を制限するX線絞り部と、前記X線発生部により発生されたX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部の受光面に関心領域を設定する設定部と、前記X線発生部と前記X線絞り部とを制御し、前記X線絞り部により前記関心領域にX線照射範囲を制限しない広域撮像と前記関心領域にX線照射範囲を制限した部分撮像とを行う撮像制御部と、を具備するX線撮像装置のコンピュータに、
前記関心領域の露光量と所定の閾値との比較に基づいて、前記部分撮像時の自動露光制御により増加したX線照射量の増加率を算出する機能と、
前記増加率を表示する機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線撮像装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
虚血性心疾患の治療方法としては、近年、低侵襲治療である血管内治療が多く採用されている。血管内治療は、通常はX線撮像装置を用いてX線透視下において行われる。血管内治療は、治療時間が2乃至3時間に及ぶ治療となることもあり、患者及び治療スタッフへの被曝が問題となっている。従って、被曝の低減の為に、被検体を防護板で保護したり、撮像レートを落としたりという工夫が為されている。しかしながら、それらによる被曝低減効果は十分であるとは言えない。
【0003】
他方、ROI撮像という技術が知られている。ROI撮像は、オペレータの指定する部分領域に限定してX線撮像を行う技術である。ROI撮像を採用することで、通常のX線撮像に比べて実際に被検体の被曝線量を確実に低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−265449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、X線撮像装置のオペレータは、通常のX線撮像を実行した場合に比べて実際にどれ程の被曝線量が低減されたのかを具体的に知ることができない。
【0006】
課題は、ROI撮像を実行した際に、通常のX線撮像を実行した(実行する)場合に比べてどれ程の被曝線量低減が実現したのかをオペレータが認識できるX線撮像装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るX線撮像装置は、X線を発生するX線発生部と、前記X線発生部によるX線照射範囲を制限するX線絞り部と、前記X線発生部により発生されたX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部の受光面に関心領域を設定する設定部と、前記X線発生部と前記X線絞り部とを制御し、前記X線絞り部により前記関心領域にX線照射範囲を制限しない広域撮像と前記関心領域にX線照射範囲を制限した部分撮像とを行う撮像制御部と、前記関心領域部分の露光量と所定の閾値との比較に基づいて、前記部分撮像時の自動露光制御により増加したX線照射量の増加率を算出する増加率算出部と前記増加率を表示する表示部と、を具備する。
【0008】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、X線を発生するX線発生部と、前記X線発生部によるX線照射範囲を制限するX線絞り部と、前記X線発生部により発生されたX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部の受光面に関心領域を設定する設定部と、前記X線発生部と前記X線絞り部とを制御し、前記X線絞り部により前記関心領域にX線照射範囲を制限しない広域撮像と前記関心領域にX線照射範囲を制限した部分撮像とを行う撮像制御部と、を具備するX線撮像装置のコンピュータに、前記関心領域部分の露光量と所定の閾値との比較に基づいて、前記部分撮像時の自動露光制御により増加したX線照射量の増加率を算出する機能と、前記増加率を表示する機能と、を実現させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るX線撮像装置のシステム構成例を示すブロック図である。
図2図2は、図1のX線照射部を含む撮像機構の一構造例を示す外観斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るX線撮像装置による“被曝低減効果を示す指標”を算出する際の処理の流れの概略を示す図である。
図4図4は、毎フレーム(毎秒)当たりの被曝線量である被曝線量率の概念を示す図である。
図5A図5Aは、X線を照射する操作の開始時点から、当該操作の終了時点までの一つのrunのX線照射操作期間での積算量として被曝線量を捉えた場合の被曝線量の概念を示す図である。
図5B図5Bは、一つ以上のrunから成る一連の手技期間での積算量として被曝線量を捉えた場合の被曝線量の概念を示す図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係るX線撮像装置の低減率計算部による計算の一例を示す図である。
図7図7は、被曝低減率計算部によって算出された数値に基づいて作成された低減効果グラフの表示領域の一例を示す図である。
図8図8は、グラフ表示領域に表示する低減効果グラフの一例を示す図である。
図9図9は、グラフ表示領域に表示する低減効果グラフの一例を示す図である。
図10図10は、グラフ表示領域に表示する低減効果グラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係るX線撮像装置を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るX線撮像装置のシステム構成例を示すブロック図である。図2は、図1のX線照射部1を含む撮像機構の一構造例を示す外観斜視図である。
【0011】
X線撮像装置は、図1に示すようにシステム構成として、X線源1−1と面積線量計1−2とX線絞り1−3とを含むX線照射部1と、高電圧発生部2と、X線検出部5と、心電波形計測器(ECG)6と、自動露光制御部7と、画像記憶部8と、撮像制御部9と、絞り制御部10と、画像処理部11と、ROI設定操作部12と、モニタ13と、被曝低減率計算部20と、を具備する。
【0012】
X線撮像装置は、図2に示すように撮像機構に係る構成として、Z軸方向レール211と、X軸方向レール212と、台車213と、鉛直軸回転機構23と、懸垂アーム24と、Cアーム回転機構25と、Cアーム26と、X線照射部1と、X線検出部5と、を具備する。
【0013】
なお、図2に示すX線撮像装置は所謂アンダーチューブタイプのX線撮像装置であるが、他のタイプ(例えばオーバーチューブタイプ)のX線撮像装置にも本一実施形態を適用することができる。
【0014】
Z軸方向レール211、X軸方向レール212、及び台車213はスライド機構を構成している。これらZ軸方向レール211、X軸方向レール212、及び台車213から成るスライド機構は、駆動制御部(不図示)による制御で、鉛直軸回転機構23、懸垂アーム24、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射部1、及びX線検出部5を一体として水平方向にスライドさせる。
【0015】
Z軸方向レール211は、図2に示すZ軸の方向に延設され、天井に支持されている。X軸方向レール212は、図2に示すX軸の方向に延設され、その両端のローラ(不図示)を介してZ軸方向レール211に支持されている。X軸方向レール212は、駆動制御部(不図示)による制御で、Z軸方向レール211上をZ軸方向に移動する。
【0016】
台車213は、ローラ(不図示)を介してX軸方向レール212によって支持されている。台車213は、駆動制御部(不図示)による制御で、X軸方向レール212上をX軸方向に移動する。
【0017】
台車213を支持するX軸方向レール212は、Z軸方向レール211上をZ軸方向に移動可能であり、且つ、台車213はX軸方向レール212上をX軸方向に移動可能である。従って、台車213は、当該X線撮像装置が設置されている検査室内を、水平方向(X軸方向及びZ軸方向)に移動可能であると言える。
【0018】
鉛直軸回転機構23は、台車213によって回転可能に支持されている。鉛直軸回転機構23は、駆動制御部(不図示)による制御で、懸垂アーム24、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射部1、及びX線検出部5を一体として鉛直軸回転方向T1に回転させる。
【0019】
懸垂アーム24は、鉛直軸回転機構23によって支持されている。
【0020】
Cアーム回転機構25は、懸垂アーム24に回転可能に支持されている。Cアーム回転機構25は、駆動制御部(不図示)による制御で、Cアーム26、X線照射部1、及びX線検出部5を一体として、懸垂アーム24に対する回転方向T2に回転させる。
【0021】
Cアーム26は、Cアーム回転機構25によって支持されている。このCアーム26には、X線照射部1とX線検出部5とが被検体Pを中心にして対向配置されている。Cアーム26の背面又は側面にはレール(不図示)が設けられており、Cアーム回転機構25とCアーム26とによって挟み込まれた当該レール(不図示)を介して、Cアーム26は、X線照射部1及びX線検出部5を一体として、Cアーム26の円弧方向T3に円弧状の軌道を描くように移動させる。この移動も、駆動制御部(不図示)の制御による移動である。
【0022】
X線照射部1は、Cアーム26の一方端に設けられている。このX線照射部1は、駆動制御部(不図示)による制御で前後に移動することが可能なように設けられている。
【0023】
X線源1−1は、高電圧発生部2に接続されており、高電圧発生部2から高電圧電力の供給を受けて、高電圧電力の条件に応じて被検体Pの所定部位に向かってX線を照射する。
【0024】
高電圧発生部2は、X線源1−1のフィラメントに電流(フィラメント電流)を供給する。これによりX線源1−1からX線が発生され、被検体Pに対して照射される。高電圧発生部2の管電圧とフィラメント電流とは個別に可変である。
【0025】
X線検出部5は、Cアーム26の他方端(X線照射部1の出射側)に設けられている。X線検出部5は、駆動制御部(不図示)の制御で、前後に移動が可能なように設けられている。X線検出部5は、例えば入射X線を直接的又は間接的に電荷に変換する複数の検出素子(画素)が2次元状に配列されてなる平面検出器(FPD:flat panel detector)であり、各検出素子によりX線を検出して電気信号に変換する。撮像に際しては、X線源1−1とX線検出部5との間に、寝台天板上に載置された状態で被検体Pが配置される。
【0026】
撮像制御部9は、本一実施形態に係るX線撮像装置全体を統括的に制御する。撮像制御部9は、X線撮像の際には高電圧発生部2に第1、第2制御信号を供給する。第1制御信号により高電圧発生部2がX線源1−1に印加する管電圧が変化される。第2制御信号により高電圧発生部2がX線源1に供給するフィラメント電流が変化される。管電圧及びフィラメント電流の変化は、被検体Pへ照射されるX線の照射線量を変化させる。
【0027】
X線絞り1−3は、X線源1−1のX線放射窓に装備されている。X線絞り1−3は、X線源1−1から被検体Pへ照射するX線の照射範囲(X線照射範囲)を限定(制限)する。図示はしていないが、X線絞り1−3は、例えば個別可動式の複数の遮蔽板を備えている。これら複数の遮蔽板の枚数及び移動方式のバリエーションによりX線照射範囲は矩形、X軸に対して傾斜した矩形又は円形に制限される。これら遮蔽板は例えば4枚であり、X線照射範囲は矩形である。これら遮蔽板は典型的にはX線遮蔽性を有する鉛板から成るが、本来的にはX線の線質を変更するためのX線に対する半透明性を有するウェッジ、例えばモリブデン含有板であっても良い。
【0028】
絞り制御部10は、X線絞り1−3が装備する遮蔽板の移動を制御する。これにより遮蔽板に囲まれた開口の中心位置及び開口の大きさ、例えば開口の対角線長や径を任意に変更することができる。
【0029】
面積線量計1−2は、X線源1−1から放射され、X線絞り1−3を通過したX線の線量(被曝線量)を任意の検出周期で検出する線量計である。この面積線量計1−2は、入射したX線の線量を電荷に変換する変換素子によって構成され、当該面積線量計1−2におけるX線の照射強度、照射面積、及び照射時間に略比例した面積線量(例えば[Gy・cm]で表される;以降、被曝線量と称する)及び面積線量率(例えば[Gy・cm/s]で表される;以降、被曝線量率と称する)を示す信号を生成して出力する。
【0030】
なお、X線検出部5の受光面の一部分に制限してX線を照射する撮像は、部分撮像又はROI撮像と称される。ROIは、Region Of Interestの略称であり、高い関心を寄せて注視する撮像域内の一部領域と定義され得る関心領域である。このときの照射範囲を第2照射範囲と称する。ここで照射範囲とは、典型的にはアイソセンタを通りX線中心軸に直交する撮像基準面に対してX線束が交わる領域の大きさとして定義される。第2照射範囲での撮像が上述のROI撮像であり、第2照射範囲に対応するX線絞り1−3の開口を部分開口と称する。
【0031】
この第2照射範囲よりも広い照射範囲(本例では、X線絞り1−3による照射範囲の制限が無い状態の照射範囲)を第1照射範囲と称する。すなわち、第1照射範囲は、X線検出部5の受光面全面に対応する。第1照射範囲での撮像を全面撮像と称し、第1照射範囲に対応する開口を全面開口と称する。
【0032】
なお、本一実施形態においては、第1照射範囲を、X線検出部5の受光面全域に対応する領域であるとして説明するが、少なくとも第2照射範囲よりも広い領域であれば、X線検出部5の受光面全域に対応する領域より狭い領域であっても良い。
【0033】
なお、第1照射範囲内での第2照射範囲の中心位置及び大きさは絞り制御部10の制御下で任意に可変である。
【0034】
ROI設定操作部12は、モニタ13における全面表示像上で関心領域(以降、ROIと称する)を設定する為の操作部である。オペレータによるROI設定操作部12の操作で設定されたROIの範囲情報は、X線絞り1−3の開口状態を変更させる為の制御信号と共に撮像制御部9に供給される。
【0035】
ROI設定操作部12によって設定されたROIに係るROI撮像に際しては、撮像制御部9は、ROIの位置及び大きさに関する情報を、自動露光制御部(ABC;Automatic Brightness Control)7に供給する。
【0036】
自動露光制御部7は、X線検出器5の出力からROIに対応するデータを抽出し、その露光量を表す平均値等を所定の閾値と比較し、その比較結果を撮像制御部9に供給する。ところで、ROI撮像においては被検体Pに入射するX線のうち散乱線が減少する。この為、X線撮像により取得する画像データの明るさは、全面撮像に比べてROI撮像によるものの方が少し暗くなる。従って、自動露光制御部7から前記比較結果を供給された撮像制御部9は、ROI撮像においては、管電流、管電圧、及びX線のパルス幅のうち少なくとも一つを高くすることでX線撮像における放射線量を増加させ、画像データの明るさが全面撮像時のそれと同じ程度になるように制御する。
【0037】
画像記憶部8は、X線照射が継続されている期間中にX線検出部5により一定周期で繰り返し取得された画像データが記憶される。これら画像データは、画像処理部11を経由してモニタ13に実時間表示される。
【0038】
画像記憶部8は、X線検出部5で撮像された画像データを記憶する。心電波形計測器(ECG)6は、被検体Pの心電波形を計測し、心電波形を解析して心拍時相を表すデータを出力する。この心拍時相とは例えばR波から次のR波までの期間(一心拍期間)の各位置を百分率で正規化した指標である。画像記憶部8に記憶される画像データには個々に撮像時刻に対応する心拍時相データが関連付けられる。画像記憶部8に記憶された画像データは、画像処理部11を介してモニタ13に表示される。モニタ13は、図2に示す撮像機構と共に例えばカテーテル処置室内に設置される。
【0039】
被曝低減率計算部20は、X線源1−1によるX線照射範囲がX線絞り1−3によって制限されたことによる“被曝低減効果を示す指標”を算出する(詳細は後述する)。
【0040】
なお、“被曝線量”としては、面積線量計1−2への入射線量、面積線量計102によって算出された線量(吸収線量、線量等量)、または、被検体Pへの照射線量などを用いることができるが、ここでは説明の便宜上、面積線量計1−2によって算出された線量(面積線量計1−2の出力値)を“被曝線量”として説明する。この被曝線量の具体的な測定方法としては、主として、面積線量計1−2の検出値を用いた実測による方法と、X線照射に係る各種条件を用いて算出する方法とを挙げることができる(詳細は後述する)。
【0041】
なお、本一実施形態においては、X線撮像装置として図2に示すように天井走行式Cアームを備える装置を想定しているが、これに限られることはない。すなわち、例えば床走行式Cアームを備える装置等であっても、本一実施形態を適用することができる。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態に係るX線撮像装置による“被曝低減効果を示す指標”を算出する際の処理の流れの概略を示す図である。
【0043】
まず、全面撮像が実行される。具体的には、X線絞り1−3の開口が全面開口の状態に設定され、撮像制御部9は、手技開始以後、適時にオペレータより入力されたトリガに基づいてX線源1−1にX線発生を開始させ、被検体PにX線を照射させる為に高電圧発生部2を制御する。
【0044】
このとき、X線は第1照射範囲で被検体Pに照射される。X線照射はオペレータによりニュートラルの状態に復帰させられるまで継続される。X線照射が継続されている期間中にはX線検出部5で画像データが一定周期で繰り返し取得される。取得された画像データは画像記憶部8に記憶されるとともに、画像処理部11を経由してモニタ13に実時間表示される。上述の全面撮像により取得される画像データは、例えば図3に示す全面画像データ51−1であり、この全面撮像におけるX線照射範囲の面積を“基準面積”として設定し、被曝線量を“基準被曝線量”として設定する。
【0045】
その後、オペレータの操作によりX線発生が停止されると、撮像制御部9は、X線の発生を停止させX線照射を停止させるために高電圧発生部2を制御し、全面撮像が停止される。
【0046】
ここで、オペレータは、被曝低減処理を行う。すなわち、オペレータは、ROI設定操作部12を用いてモニタ13に表示されている全面表示像上でROIを設定する。撮像制御部9は、X線絞り1−3の開口状態を、ROI設定操作部12から供給されたROIの範囲情報及び制御信号に基づいて変更するように、絞り制御部10を制御する。
【0047】
この制御により絞り制御部10は、X線絞り1−3の開口状態を、全面開口状態から設定されたROIに対応する部分開口状態に変更させる。換言すれば、絞り制御部10の制御で、X線照射範囲が第1照射範囲から第2照射範囲に変更される。
【0048】
上述の開口状態の変更が完了すると、撮像制御部9は、X線発生を開始させ被検体にX線を照射開始させる為に、高電圧発生部2を制御してX線照射を開始させる。そして、撮像制御部9は、X線照射開始と同期して、X線検出部5による画像データ(ROI撮像による部分画像データ)の取得を開始させる。取得した部分画像データは、画像記憶部8に記憶されると共に画像処理部11を経由してモニタ13において動画として実時間表示される。
【0049】
以下、図4図5A及び図5Bを参照して、本一実施形態における“被曝線量”の種々の捉え方を説明する。図4は、フレーム当たり(フレーム毎)の被曝線量である被曝線量率の概念を示す図である。図5Aは、X線を照射する操作の開始時点から、当該操作の終了時点までの一つのrunのX線照射操作期間での積算量として被曝線量を捉えた場合の被曝線量の概念を示す図である。図5Bは、一つ以上のrunから成る一連の手技期間での積算量として被曝線量を捉えた場合の被曝線量の概念を示す図である。
【0050】
本一実施形態における被曝線量の捉え方は、大きく分けて次の二種類に分類することができる。
【0051】
一つの捉え方では、毎フレーム(毎秒)当たりで被曝線量を捉える(被曝線量率)。すなわち、図4に示すように1フレーム当たり(例えば1[sec]当たり)で被曝線量を捉える。この場合、被曝線量率の単位は例えば“Gy/s”または“Gy・cm/s”となる。
【0052】
別の捉え方では、図5A及び図5Bに示すように所定期間における積算量として被曝線量を捉える。
【0053】
図5Aに示す例では、X線を照射する操作の開始時点から、当該操作の終了時点までの一連のX線照射操作期間(1カットまたは1runと称されている期間;図5Aにおいて符号cで示す期間)での積算量として被曝線量を捉えている。ここで、X線を照射する操作とは、例えばX線照射スイッチ(不図示)の押圧であり、当該操作の終了とは例えばX線照射スイッチ(不図示)から手を離すことである。また、1runは、通常3秒〜30秒程度である。
【0054】
図5Bに示す例では、一つ以上のrunから成る一連の手技期間Cでの積算量として被曝線量を捉えている。換言すれば、本例では手術全体を鑑みて被曝線量を捉えており、手術の時間(短くても15分、長ければ3時間以上)の間の任意の区間(通常は最初から現時点まで)に撮像した全runにおける合計積算量として被曝線量を捉えている。
【0055】
上述した図5Aに示す例及び図5Bに示す例の場合、被曝線量の単位は例えば“Gy”または“Gy・cm”となる。
【0056】
なお、各runで取得した画像は各run毎に一塊の単位で動画として1ファイルとして保存される。医師はrunとrunとの合間に手を休めたり、ROIを設定したり等の操作を行うことができる。
【0057】
詳細には、図3に示すように、この実時間表示される部分画像データ53は、画像処理部11によって、直前の全面撮像期間に取得され画像記憶部8に記憶されている全面画像データ51−2に位置整合して合成される(例えばsuperimpose)。
【0058】
つまり、ROIに対応する範囲の画像(部分画像データ53)は画像処理部11によってトリミングされ、直前の全面撮像期間に取得され記憶されている全面画像データ51−2に重ねて表示される。
【0059】
なお、部分画像に合成される全面画像は、再生動画であっても良いし、動画を構成する複数の静止画の中の特定の1フレームの静止画、例えば直前の全面撮像期間における最終フレームの静止画であっても良い。
【0060】
以下、本一実施形態に係るX線撮像装置の被曝低減率計算部20による計算例を説明する。前記被曝低減率計算部20は、撮像制御部9から供給される情報に基づいて、下記の “被曝低減効果を示す指標”を算出する。
【0061】
なお、下記の“被曝低減効果を示す指標”の全ての指標、又はユーザの目的に応じて予め設定された所定の指標が、画像処理部11によって全面画像データに合成され、モニタ13に表示される。
【0062】
《指標1》
“X線絞り1−3によって制限される前のX線照射範囲(第1照射範囲)の面積S1”に対する“制限された後のX線照射範囲(第2照射範囲)の面積”の比であるS2/S1(以降、面積比と略称する)
《指標2》
ROI撮像時の自動露光制御によって増加したX線照射量の増加率である照射量増加率R(ABC7による前記比較結果に基づいて算出)
《指標3》
“面積比S2/S1”と“照射量増加率R”との積
《指標4》
“X線絞り1−3によって制限される前の被曝線量率(全面撮像時における被曝線量率)G1”に対する“制限された後の被曝線量率(ROI撮像時における被曝線量率)G2”の比である線量率比G2/G1(G1、G2、G2/G1の値は、面積線量計1−2による検出値に基づいて算出する)
《指標5》
“所定時間(実際にX線撮像を行った全runの合計時間)だけ全面撮像を行ったと仮定した場合の当該所定時間における被曝線量の積算値(推測値)Σ1”と“前記所定時間に亘ってROI撮像、ROI撮像と全面撮像とを交互に利用した撮像、または、X線絞り1−3の開口状態を変化させながらのROI撮像を実際に行った際の被曝線量の積算値(実測値)Σ2”との比である積算値比Σ2/Σ1(Σ1、Σ2、Σ2/Σ1の値は、面積線量計1−2による検出値、及び実際の撮像時間に基づいて算出する;Σ1の値は、例えば全面撮像による被曝線量の線量率と所定時間との積として算出される推測値であり、Σ2の値は面積線量計1−2による実測値である)
ここで、全面撮像を時刻T1〜時刻T2まで行い、且つ、ROI撮像を時刻T2〜時刻T3まで行ったとした場合を例にして詳細に説明する。
【0063】
まず、実際にはROI撮像を行った時間に全面撮像を行ったと仮定した場合での当該時間における被曝線量の積算値(推定値)は、
【数1】
【0064】
と表される。
【0065】
そして、全面撮像のみを使用したと仮定して推定した被曝線量の積算値は、
【数2】
【0066】
と表される。
【0067】
さらに、面積線量計1−2の検出値である被曝線量の積算値(実測値)は、
【数3】
【0068】
と表される。
【0069】
ここで、被曝線量の積算値の低減率(積算値比Σ2/Σ1)は、面積線量計1−2の検出値に基づく積算値/(ROI撮像を使用しない(全runにおいて全面撮像を行った)と仮定した場合の被曝線量の積算値)として算出され、
【数4】
【0070】
と表される。
【0071】
上述の計算式から分かるように、時系列的に過去のX線撮像であって全面撮像のときの被曝線量率G1を、被曝低減効果を示す指標を算出する上での基準値とする。また、時系列的に過去の全面撮像での線量率と所定時間との積として算出される被曝線量の積算値Σ1も、被曝低減効果を示す指標を算出する上での基準値となる。
【0072】
基準値の更新については、オペレータが全面撮像を実行する毎に値を更新することが好ましい。また、観察角度を変更する毎にも基準値を更新することが好ましい。このように基準値の更新を頻繁に行うほど、被曝低減を示す指標の信頼性が高くなる。
【0073】
なお、《1》乃至《5》に示す各値は実測値に基づいて算出する値であるが、推測値のみを用いて予測を行ってもよい。そのような予測の一例については後述する。
【0074】
以下、図6を参照して被曝低減率計算部20による計算の一例を説明する。図6は、本一実施形態に係るX線撮像装置の低減率計算部20による計算の一例を示す図である。図6に示す例では、各値は下記のようになる。
【0075】
面積比S2/S1=25/100=1/4
照射量増加率R=180/100=9/5
低減率X=1/4×9/5=0.45
但し、図6に示す例においては、低減率Xを、上述の《指標3》すなわち“面積比S2/S1”と“照射量増加率R”との積として算出している。
【0076】
ここで、低減率X=0.45を百分率で表示すると45%となる。つまり、ROI撮像時の被曝線量は、全面撮像時における被曝線量の45%まで低減されていることを示している。
【0077】
G1,G2,Σ1,Σ2の各値については、面積線量計1−2による検出値(面積線量計1−2の出力信号)により求められる。また、低減率Xの値については、通常、被曝低減率計算部20が面積線量計1−2の出力信号(検出値)に基づいて、G2/G1またはΣ2/Σ1を算出した値を使用する。
【0078】
上述したように、面積線量計1−2の検出値を用いずとも、X線撮像に係る各種条件に基づいて低減率Xを求めることは可能であるが、面積線量計1−2の検出値を用いることで次のような利点がある。すなわち、ROI撮像に伴って自動露光制御が実行された場合や被検体に係る条件が変化した場合等であっても、面積線量計1−2の検出値を用いることで正確な値を求めることができる利点がある。
【0079】
上述の例のようにして算出された5種の数値は、モニタ13において画像データに重畳して又は当該画像データの近傍等に表示される。これら5種の数値の表示態様としては、例えば画像データ上の縁部位近傍に重畳して表示する態様や、モニタ13以外の表示部材を別途設けて当該表示部材に表示する態様等を挙げることができる。このように表示することで、オペレータは、被曝低減処理による被曝低減の効果を確認しつつ作業を行うことができる。
【0080】
なお、前記5種の数値の表示態様としては、数値自体を表示する代わりに、数値を所定のアイコンや図形等に変換して表示してもよい。すなわち、例えば携帯電話機等において利用されている“電池の残量を表示する為に用いられているアイコン”、“電波感度を表示する為に用いられているアイコン”、及び“所定の計器を模したアイコン”等を用いて前記数値を図形的に表現してユーザに提示してもよい。
【0081】
ところで、より効果的に被曝低減の効果をオペレータに提示する為には、被曝低減率計算部20が、被曝低減効果を示す低減効果グラフを作成し、該低減効果グラフを画像データに重畳させて表示させてもよい。
【0082】
以下、図7乃至図10を参照して、低減効果グラフ及びその表示態様について説明する。図7は、上述した被曝低減率計算部20によって算出された数値に基づいて作成された低減効果グラフを、画像データに重畳してモニタ13に表示させる領域(以降、グラフ表示領域と称する)の一例を示す図である。図8乃至図10は、それぞれグラフ表示領域に表示する低減効果グラフの一例を示す図である。なお、各低減効果グラフは、面積線量計1−2の出力値及びX線絞り1−3の開口状態等に基づいて、被曝低減率計算部20によって生成される。
【0083】
モニタ13において画像データに重畳して低減効果グラフを表示させる際に、グラフ表示領域55として最も適している部位の一つは、図7に示すように全体画像データ51における周縁部位(同図に示す例では右上端部)である。
【0084】
《リアルタイム表示》
グラフ表示領域55に表示させる低減効果グラフの第1の例は、図8に示す“低減比のリアルタイム表示グラフ”である。本表示例では、低減率Xを百分率で表した値の時間変化を示すグラフをリアルタイム表示(所定周期で更新表示)する。例えば、面積線量計1−2によって新たに信号が生成されて出力される毎に、低減率Xの表示が最新のものに更新される。図8において太実線で示されているのは全面撮像時の被曝線量(一定値)であり、細実線で示されているのは全面撮像時の被曝線量に対するROI撮像時の被曝線量の比率(低減率Xを百分率で表した値)である。本例では、低減率XはG2/G1として求めればよい。
【0085】
なお、上述したリアルタイム表示の更新周期は、面積線量計1−2による検出周期に同期させてもよいし、異なる周期としてもよい。
【0086】
《積算値表示》
グラフ表示領域55に表示させる低減効果グラフの第2の例は、図9に示す“被曝線量の積算値グラフ”である。本表示例では、所定期間のX線撮像(全面撮像及びROI撮像)による被検体Pの被曝線量として面積線量計1−2から出力された値を積算した積算値の時間変化を示すグラフ(第2のグラフ73)と、これと同時間だけ全面撮像を行ったと仮定した場合の被曝線量の積算値を示すグラフ(第1のグラフ71)と、を表示する。
【0087】
図9において太実線で示されているのは全面撮像時の被曝線量の積算値であり、細実線で示されているのはROI撮像時の被曝線量の積算値であり、破線で示されているのはROI撮像が行われていた時間帯を全面撮像が行われていたと仮定した場合の被曝線量の積算値(被曝低減率計算部20による推測値)である。
【0088】
つまり、第1のグラフ71は現時点までの全時間帯を全面撮像で行ったと仮定した場合の被曝線量の積算値の時間変化を示すグラフであり、第2のグラフ73は現時点までに行われた全面撮像及びROI撮像による実際の被曝線量の積算値の時間変化を示すグラフである。
【0089】
本表示例では、全面撮像とROI撮像とを切り替えながら手術を行う場合を想定しており、各撮像期間の終了(X線照射の終了)時に、当該撮像期間の終点までのグラフを表示することとなる。
【0090】
《積算値見込み表示(予測表示)》
グラフ表示領域55に表示させる低減効果グラフの第3の例は、図10に示す“積算値見込みのグラフ”である。本表示例では、想定される手技完了までの時間における被曝見込み量を表示したり、被検体Pが被曝線量の上限値に達するまでの時間を各条件(X線絞り1−3の開口状態)毎に算出し、各々の条件毎にX線撮像可能な時間を示すグラフを生成して表示する。
【0091】
ここで、図10において太実線で示しているのは全面撮像を行った時間の被曝線量の積算値である。細実線で示されているのはROI撮像時の被曝線量の積算値である。太破線で示されているのは実際にはROI撮像が行われた時間帯に全面撮像が行われたと仮定した場合の被曝線量の積算値(被曝低減率計算部20による推測値)である。細破線で示されているのは現時点以降にROI撮像が行われると仮定した場合の被曝線量の積算値(被曝低減率計算部20による推測値)である。
【0092】
つまり、第2のグラフ73(太実線+細実線)は、現時点までに行われた全面撮像とROI撮像とによる実際の被曝線量の積算値の時間変化を示すグラフである。第3のグラフ77(太破線)は、現時点以降に全面撮像が行われると仮定した場合の、被曝線量の積算値の時間変化を示すグラフである。第4のグラフ79(細破線)は、現時点以降にROI撮像が行われると仮定した場合の被曝線量の積算値の時間変化を示すグラフである。
【0093】
本積算値見込みの低減効果グラフは、例えば下記のように求められる。すなわち、被検体Pの被曝線量の上限値をDmaX[Gy・cm]とし、現時点での被検体Pの被曝線量積算値をDnow[Gy・cm]とし、ROI撮像による被曝の線量率をD2[Gy・cm/sec]とし、全面撮像による被曝の線量率をD1[Gy・cm/sec]とすると、
ROI撮像によるX線撮像可能時間t2=(DmaX−Dnow)/D2
全面撮像によるX線撮像可能時間t1=(DmaX−Dnow)/D1
として求められる。
【0094】
なお、ROI撮像による被曝の線量率をD2[Gycm/sec]は、X線絞り1−3の開口状態の設定に基づいて定まる値である。
【0095】
なお、予測表示のグラフについては、X線絞り1−3によるX線照射範囲の制限面積(絞り量)の設定に応じて複数本の第3のグラフ79を描くことができる。従って、X線絞り1−3による絞り量を複数設定し(例えば、現時点での絞り量、及び、X線照射範囲を全面撮像時の1/4に絞った場合の絞り量等)、それら設定に対応する複数本の第3のグラフ79を描いてもよい。
【0096】
上述のように現時点以降の積算値の時間変化を予測するグラフを作成して表示することで、オペレータは、各条件でのX線撮像可能時間を容易に認識できるようになる。
【0097】
以上説明したように、本一実施形態によれば、ROI撮像を実行した際に、通常のX線撮像を実行した(実行する)場合に比べてどれ程の被曝線量低減が実現したのかをオペレータが認識できるX線撮像装置及びプログラムを提供することにある。
【0098】
なお、例えば低減率X等の各種値の算出において、線量として面積線量計1−2の出力値(実測値)を用いる代わりに、所望の推測値を用いて事前にシミュレーションを行う態様で本一実施形態を実施してもよい。
【0099】
また、被曝線量低減方法として、上述したX線絞り1−3を用いたX線照射範囲の制限(ROI撮像)に加えて、他の被曝線量低減方法を併用しても勿論よい。例えば、管電流、管電圧、パルス幅、SID(X線源と検出器との距離)、PID(患者と検出器との距離)、線質フィルタ、コリメーター、FOV等の各種条件を変更することによる被曝線量低減措置を、上述のROI撮像と併用してもよい。
【0100】
ところで、上述した本一実施形態に係るX線撮像装置による一連の処理は、プログラム化することで、或いはプログラム化した後当該プログラムを記憶媒体に読み込むことによって、当該X線撮像装置とは独立したソフトウェア製品単体としての販売、配布も容易になり、また本一実施形態に係る技術を他のハードウェア上で利用することも可能となる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
P…被検体、 1−1…X線源、 1−2…面積線量計、 1−3…X線絞り、 1…X線照射部、 2…高電圧発生部、 5…X線検出部、 6…心電波形計測器、 7…自動露光制御部、 8…画像記憶部、 9…撮像制御部、 10…絞り制御部、 11…画像処理部、 12…ROI設定操作部、 13…モニタ、 20…被曝低減率計算部、 31…C形アーム、 32…天井懸下アーム、 33…スライダ、 51,51−1,51−2…全面画像データ、 53…部分画像データ、 55…グラフ表示領域。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10