特許第6188896号(P6188896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6188896
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20170821BHJP
   B66B 23/12 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B66B29/00 D
   B66B23/12 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-174813(P2016-174813)
(22)【出願日】2016年9月7日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀生
(72)【発明者】
【氏名】石川 佳延
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−96606(JP,A)
【文献】 特開2008−94579(JP,A)
【文献】 特開2012−6721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主枠内を無端状に連結され、所定の走行路を循環移動する複数の踏み段を有する乗客コンベアであって、
前記踏み段にそれぞれ設けられ、前記循環移動時、前記走行路に設けられたレール上を転動するローラと、
前記走行路近くに設置され、この設置位置へ移動した踏み段の前記ローラの外周面と端面とを結ぶ角部の正常時の位置を検出する正常位置検出用のセンサーと、
この正常位置検出用のセンサーの近くに設けられ、前記正常時の位置から外れた前記角部を検出する異常状態検出用のセンサーと、
を備えたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記センサーは、投光部から受光部へ光軸を投射し、前記角部がこの光軸を遮光することにより検出動作する光電センサーであることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、循環移動する、無端状に連結された複数の踏み段を有する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエスカレータや動く歩道などの乗客コンベアは、主枠内を無端状に連結され、所定の走行路を循環移動する複数の踏み段を有する。踏み段には走行用のローラがそれぞれ設けられており、走行路に設けられたレール上を転動することにより循環移動する。踏み段は乗客を直接乗せるための重要な部品であり、異常が発生した場合には乗客の安全確保上、早期発見と修理が求められる。
【0003】
踏み段の異常は、走行用のローラが摩耗したり、ローラの一部が剥離したり、ローラの軸部が破損したりするなど、ローラ及びその関連部分の損傷によることがほとんどである。このような異常が生じると、走行中の踏み段が傾いたり浮き上がったりするので、このような状態を目視で監視したり、監視カメラにより撮影した画像(例えば、特許文献1参照)を用いたりして、異常の有無を判断していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−98114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、目視による監視では、監視員に大きな負担を与えると共に、検出漏れが発生するおそれがある。また、監視カメラで撮影した画像を用いる場合は、監視カメラを設置しなければならず、撮影した画像を処理する画像処理システムが必要になる等、設備が大掛かりとなり、設備コストも大幅に上昇してしまう
本発明は、踏み段に設けられた走行用のローラの異常を、簡素な構成で確実に検出することができ、安全性が向上する乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態に係る乗客コンベアは、主枠内を無端状に連結され、所定の走行路を循環移動する複数の踏み段を有する乗客コンベアであって、前記踏み段にそれぞれ設けられ、前記循環移動時、前記走行路に設けられたレール上を転動するローラと、前記走行路近くに設置され、この設置位置へ移動した踏み段の前記ローラの外周面と端面とを結ぶ角部の正常時の位置を検出する正常位置検出用のセンサーと、この正常位置検出用のセンサーの近くに設けられ、前記正常時の位置から外れた前記角部を検出する異常状態検出用のセンサーとを備えたことを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、センサーにより走行用のローラの異常を確実に検出して、早期発見により対処することができ、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る乗客コンベアの全体図である。
図2】踏み段構造を示す斜視図である。
図3】踏み段構造を示す正面図である。
図4】ローラとセンサーとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、乗客コンベア1としてエスカレータを例示し、その概略構成を示している。エスカレータ1は、無端状に連結され、所定の走行路を循環移動する複数の踏み段5を有する。踏み段5の詳細構造は後述するが、走行路に設けられたレール上を転動するローラをそれぞれ有し、このレールにガイドされて走行路を循環移動する。
【0011】
具体的には、トラス(構造フレーム)2の内部に、無端状に連結された複数の踏み段5を備える。トラス2内の上階側に設けられた駆動輪(スプロケット)3には、減速機6及び駆動チェーン7を介してモータ8から回転動力が供給される。トラス2内の下階側には従動輪(スプロケット)4が設けられ、駆動輪3との間に無端状の踏み段チェーン9が架け渡されている。複数の踏み段5は、駆動輪3と従動輪4との間に架け渡された無端状の踏み段チェーン9と連結しており、駆動輪3が回転することにより、従動輪4との間に架け渡された踏み段チェーン9により、上下階間の走行路に設けられたガイドレール(図示省略)上を循環移動する。
【0012】
また、踏み段5の進行方向の両脇には欄干12が備えられ、この欄干12の外周に沿って無端状の手すりベルト(移動手摺)13が取り付けられている。欄干12の手すりベルト13は、踏み段5の移動に合わせて踏み段5と同方向に周回移動する。
【0013】
このようなエスカレータ1の動作は、トラス2内に設置される制御装置14によって、インバータ装置(図示せず)及びモータ8を制御することで実現される。制御装置14は、CPU、RAM及びROMなどを有するコンピュータである。制御装置14の機能は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することにより、エスカレータ1を構成する各種装置を動作させる。また、CPUによりRAMやROMにおける各種データの読み出し及び書き込みも行われる。
【0014】
踏み段5は、図2に示すように、主として、踏み段フレーム20と、踏み段パネル30とを備える。
【0015】
踏み段フレーム20は、踏み段パネル30を支持するものであり、図3に示すように、主として、ローラによる前輪21、前輪軸22、ローラによる後輪ローラ23、後輪軸24、及び接続部材25を備える。
【0016】
前輪21は、図1で示した駆動輪3と従動輪4との間に掛け渡された踏み段チェーン9に連結され、前輪軸22の両端部に一対、配設されている。前輪21は、踏み段チェーン9の駆動によって、前輪レール(図示省略)上を転動する。すなわち、一対の前輪21は、前輪軸22の両端部に回転自在に配設されている。
【0017】
後輪23は、前輪軸22と平行な、左右一対の後輪軸24の外端部に配設され、一対の前輪21の後方に一対、配設される。後輪23は、前輪21の移動に伴って、後輪レール(図示省略)上を転動する。一対の後輪23の間隔は、一対の前輪21の間隔よりも小さく設定されている。 一対の後輪軸24は、円筒状に構成されている。
【0018】
接続部材25は、一対の前輪21と一対の後輪23とをそれぞれ接続する。具体的には、前輪21と接続された前輪軸22と、後輪23と接続された後輪軸24とを接続している。
【0019】
踏み段パネル30は、図2に示すように、主として、クリート(踏み板)31と、クリートライザー(蹴上げ部)33とを備える。
【0020】
クリート31は、乗客がエスカレータ1に乗っているときに、水平もしくはほぼ水平な上面部を構成する。クリートライザー33は、クリート31の進行方向の一端部から下方に延設されており、乗客がエスカレータ1に乗っていて複数の踏み段5が階段状の状態のときに、垂直もしくはほぼ垂直な、蹴上げ面部を構成する。
【0021】
このような構成の踏み段5は、エスカレータ1の運転時、クリート31上に乗客などの重量物が積載された状態で移動する。この際、積載物の重量は、対応するレール上を転動するローラ(前輪)21,及びローラ(後輪)23に加わる。
【0022】
ここで、ローラ(前輪)21は、前述のように踏み段チェーン9に連結されることから左右のローラ(前輪)21が鉄材による前輪軸22により強固に連結された構造である。これに対しローラ(後輪)23は、踏み段チェーン9に連結されず、単に積載物の重量を支えればよいため、図3で示したように、左右のローラ(後輪)23は、アルミダイキャストによる個別の後輪軸24により支持された比較的簡素な構成である。
【0023】
しかし、このローラ(後輪)23には、踏み段5上を乗客が歩行した場合などに生じる衝撃や振動が垂直方向に直接加わるため、摩耗や剥離等の損傷が生じ易い。或いは、後輪軸24の変形によるローラ(後輪)23の変位やレール上からの脱輪などの異常が、ローラ(前輪)21に比べて生じ易い。
【0024】
そこで、この実施の形態では、踏み段5の走行路近くに、図4で示すように、センサー41,42,43,44を設置する。これらセンサー41,42,43,44は、それらの設置位置へ移動した踏み段5のローラ(後輪)23の、外周面(図示水平部)と端面(図示垂直部)とを結ぶ角部の位置を検出する。
【0025】
これら4つのセンサー41,42,43,44のうち、センサー42,43は、正常時におけるローラ(後輪)23の角部の位置を検出する正常位置検出用のセンサーである。これに対し、センサー41,44は、正常位置検出用のセンサー42,43の近くで、これらより外側に位置しており、ローラ(後輪)23の角部の位置が、正常時の位置から外側にずれた異常状態を検出する異常状態検出用のセンサーである。
【0026】
これら4つのセンサー41,42,43,44の検出信号は、それぞれ異常判定部46に入力される。異常判定部46は、入力された4つの検出信号のオン・オフ状態の組み合わせにより、ローラ(後輪)23の異常の有無を判定する。
【0027】
この異常判定部46は、専用のマイクロコンピュータを用い、そこに設定された判断プログラムにより判定したり、或いは、前述した制御装置14を構成するコンピュータの1機能として実現してもよい。
【0028】
センサー41,42,43,44としては、投光部から受光部へ光軸を投射し、ローラ(後輪)23の角部がこの光軸を遮光することにより検出動作する光電センサーを用いる。 なお、光電センサーには、所謂透過型と反射型があるがどちらを用いてもよい。すなわち、透過型は、投光部の発光素子から受光部に光軸を発し、受光部に設けた光電変換素子により光軸を受光することで電気信号を出力する。また、反射型は、投光部に、受光部への光軸を発する発光素子、及び受光部で反射した光軸を受光することで電気信号を出力する光電変換素子を設け、受光部に、投光部からの光軸を投光部へ反射させる反射体を設けている。これら透過型と反射型のいずれであっても、ローラ(後輪)23の角部が光軸を遮光することで、検出信号を出力する。
【0029】
上記構成において、エスカレータ1の運転時、複数の踏み段5は、それらのローラ(前輪)21,ローラ(後輪)23が、所定の走行路に設けられたレール上を転動することにより、走行路を循環移動する。走行路には、図4で示したように、4つのセンサー41,42,43,44が設置されており、これらの設置位置に移動した踏み段5のローラ(後輪)23の角部の位置を検出して異常の有無を判定する。
【0030】
すなわち、センサー41,42,43,44の設置位置へ移動した踏み段5のローラ(後輪)23に異常がなく、正常位置に位置していれば、左右のローラ23、23の角部は、図示のように内側に位置する正常位置検出用のセンサー42,43の光軸のみを遮光する。このため、センサー42,43の検出信号はオフとなり、他のセンサー41,44の検出信号はオン状態のままとなる。異常判定部46は、これら検出信号のオン・オフの組み合わせからローラ23に異常がないと判定する。
【0031】
左右のローラ23,23のいずれか、または双方が、摩耗により小径となった場合、対応するセンサー42,43のいずれか、または双方は。角部の正常位置を検出できずオン状態となる。すなわち、正常位置検出センサー42,43のいずれか、または双方がオン状態となり、他の異常状態検出用のセンサー41,44もオン状態の場合は、異常判定部46は、オン状態となった正常位置検出用のセンサー42,43に対応するローラ23の異常と判定する。
【0032】
ローラ23は、一般に外周部分と中心側の部分とを異なる材質で構成した二重構造になっている。このため、ローラ23が過大重量や大きな衝撃を繰り返し受けると、外周部分が中心側の部分から剥離することがある。剥離した外周部分は、ローラ23の進行方向に対する内側又は外側(図示左右方向)にずれてしまう異常が生じる。
【0033】
例えば、ローラ23の剥離した外周部分が外側にずれた場合、ずれた角部が、対応する異常状態検出用のセンサー41,44のいずれか、または双方を遮光して、その検出信号をオフにする。異常判定部46は、センサー41,42が共にオフ、或いはセンサー43,44が共にオフ、さらにはすべてのセンサーがオフの場合、対応するローラ23の剥離した外周部分が外側にずれた異常と判断する。
【0034】
これに対し、ローラ23の剥離した外周部分が内側にずれた場合、ずれた角部に対応する側のセンサー41,42の双方、またはセンサー43、44の双方は、共に遮光されなくなり、それらの検出信号はオンとなる。異常判定部46は、センサー41,42が共にオン、或いはセンサー43,44が共にオン、さらにはすべてのセンサーがオンの場合、対応するローラ23の剥離した外周部分が内側にずれた異常と判断する。
【0035】
また、吸水などによりローラ23が膨張した場合、傍聴したローラに対応するセンサー41,42が共にオフ、又は43,44が共にオフ状態となる。これらの組み合わせにより異常判定部46はローラ23の膨張による異常を検出する。
【0036】
また、後輪軸24の破損などによりローラ23が脱輪した場合、脱輪により内側又は外側に変位したローラ23の位置により、センサー41,42,43,44のオン・オフ状態は前述した剥離の場合と同じになり、異常判定部46はローラ23の脱輪による異常を検出する。
【0037】
さらに、踏み段5が何らかの不具合により斜行したり、片伸びした場合は、ローラ23の位置異常として現れるので、前述した正常位置検出時におけるセンサー41,42,43,44のオン・オフ状態とは異なるオン・オフ状態の組み合わせが生じる。このため、異常判定部46は、踏み段5の斜行等による異常を検出する。
【0038】
上記実施の形態は、ローラ(後輪)23の異常を検出する場合を説明したが、勿論ローラ(前輪)21についても同様のセンサーを設けることにより異常を検出することができるので、ローラ(前輪)21及びローラ(後輪)23を含めた踏み段5全体の異常を検出するように構成してもよい。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1…乗客コンベア
5…踏み段
21,23…ローラ
42,43…正常位置検出用のセンサー
41,44…異常状態検出用のセンサー
46…異常判定部
【要約】
【課題】踏み段に設けられた走行用のローラの異常を、簡素な構成で確実に検出することができ、安全性が向上する乗客コンベアを提供する。
【解決手段】所定の走行路を循環移動する複数の踏み段にそれぞれ設けられ、循環移動時、走行路に設けられたレール上を転動するローラ23を有する。走行路近くに設置され、この設置位置へ移動した踏み段のローラ23の外周面と端面とを結ぶ角部の正常時の位置を検出する正常位置検出用のセンサー42,43と、この正常位置検出用のセンサー42,43の近くに設けられ、正常時の位置から外れた角部を検出する異常状態検出用のセンサー41,44とを備えている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4