【文献】
冨澤浩,「Siナノウォールタンデムセル」,第74回応用物理学会秋季学術講演会,2013年 9月,16-083, 18p-A4-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トップセルは、上方から見たときに、前記第2透明導電層の表面が、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に露出されている、請求項1に記載の太陽電池。
前記トップセルの表面に、前記第1透明導電層に電気的に接続される第1の櫛歯状の受光面電極と、前記第2透明導電層に電気的に接続される第2の櫛歯状の受光面電極が設けられている、請求項1に記載の太陽電池。
前記ボトムセルの裏面側には、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に形成された第1導電型領域と、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に形成され、前記単結晶Si基体のバルク部よりもドナー濃度の高い第2導電型領域が形成されており、前記第1導電型領域のフィンガー部と前記第2導電型領域のフィンガー部は、所定間隔で交互に位置しており、さらに、
前記ボトムセルの裏面に、前記第1導電型領域に電気的に接続される第1の櫛歯状の裏面電極と、前記第2導電型領域に電気的に接続される第2の櫛歯状の裏面電極が設けられている、
請求項1〜5の何れか1項に記載の太陽電池。
前記太陽電池を上方から見たときに、前記第1の櫛歯状の受光面電極のバスバー部と前記第2の櫛歯状の裏面電極のバスバー部が一方端側で平行に位置しており、前記第2の櫛歯状の受光面電極のバスバー部と前記第1の櫛歯状の裏面電極のバスバー部が他方端側で平行に位置している、請求項6に記載の太陽電池。
前記トップセルが備える第1透明導電層、第1導電型を有するアモルファスSi材料層、第2導電型を有する単結晶Si層、第2導電型を有するアモルファスSi層、を有する積層構造は、前記太陽電池を上方から見たときに、所定の間隔で2次元配列する複数のナノワイヤ若しくは壁面が所定の方向に揃い且つ所定の間隔で2次元配列する複数の壁状のナノウォールに区画されたアレイ構造を有し、前記ナノワイヤの直径若しくは前記ナノウォールの厚みが、前記単結晶Si層の部位において10nm以下であり、
互いに隣接する前記ナノワイヤ若しくは前記ナノウォールは、絶縁性物質により離間されている、
請求項1〜8の何れか1項に記載の太陽電池。
前記透明導電層は酸化インジウム・スズ(ITO)であり、前記絶縁性透明パッシベーション層はシリコン酸化物もしくはアルミニウム酸化物からなる層である、請求項10に記載の太陽電池の製造方法。
前記第2のステップの後に、前記トップセルの単結晶Si層の上方に、前記第1のSi単結晶基板とは逆の導電型を有するアモルファスSi材料層を形成する第3のステップを備えている、請求項10に記載の太陽電池の製造方法。
前記第3のステップは、前記アモルファスSi材料層の形成に先立ち、前記単結晶Si層を、所定の間隔で2次元配列する複数のナノワイヤであって前記単結晶Si層の部位において直径が10nm以下のナノワイヤ、若しくは、壁面が所定の方向に揃い且つ所定の間隔で2次元配列する複数の壁状のナノウォールであって前記単結晶Si層の部位において厚みが10nm以下であるナノウォールに区画するサブステップを備えている、請求項10に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり、タンデム型Si太陽電池の光電変換効率の更なる向上のためには、結晶Si層の厚みを薄くして、結晶Si層内でのオージェ再結合を抑制することが効果的である。しかし、一方で、結晶Si層の厚みを薄くすると光吸収長が短くなるために短絡電流密度の減少を招き、太陽電池全体として評価すると、所望の光電変換効率には至らないという問題がある。さらに、太陽電池の製造工程において、薄い結晶Si層を破損させないための手法の開発も求められる。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、トップセルの結晶Si層を薄くして結晶Si層内でのオージェ再結合を抑制し、かつ、製造工程においても薄い結晶Si層が破損することのない、光電変換効率の高いタンデム型のSi太陽電池およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明に係る太陽電池は、トップセルが基体の主面上に設けられており、前記トップセルは、光入射側から、順次、透明導電層、第1導電型アモルファスSi材料層、前記第1導電型とは逆の第2導電型結晶Si層、第2導電型アモルファスSi層を有する積層構造を有し、前記トップセルの表面には受光面電極が、前記基体には裏面電極が設けられており、前記トップセルの第2導電型結晶Si層の厚みが30μm以下である、ことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記トップセルの第2導電型結晶Si層の厚みが3μm〜30μmである。
【0010】
また、好ましくは、前記トップセルの第2導電型結晶Si層の厚みが4μm〜20μmである。
【0011】
さらに、好ましくは、前記トップセルの第2導電型結晶Si層の厚みが5μm〜10μmである。
【0012】
ある態様では、前記トップセルは、前記第1導電型アモルファスSi材料層と第2導電型結晶Si層の間に、i型アモルファスSi材料層を備えている。
【0013】
また、ある態様では、前記トップセルは、前記第2導電型結晶Si層と第2導電型アモルファスSi層との間に、i型アモルファスSi層を備えている。
【0014】
さらに、ある態様では、前記トップセルと前記基体の間に、絶縁性透明パッシベーション層を備えている。
【0015】
好ましくは、前記絶縁性透明パッシベーション層は、シリコン酸化物もしくはアルミニウム酸化物からなる層である。
【0016】
例えば、前記基体は単結晶Siからなる。
【0017】
ある態様では、前記基体は単結晶Siからなり、前記トップセルと前記基体の間に、酸化インジウム・スズ(ITO)からなる層を備えている。
【0018】
また、ある態様では、前記基体は単結晶Siからなるボトムセルであり、前記トップセル側が第2導電型領域であり、その下方に第1導電型領域が形成されており、該ボトムセルの裏面に前記裏面電極が設けられてタンデム化されている。
【0019】
さらに、ある態様では、前記ボトムセルは、前記第2導電型領域の前記トップセル側に、該第2導電型領域よりもドナー濃度の高い第2導電型層を備えている。
【0020】
また、ある態様では、前記トップセルは、前記第2導電型アモルファスSi層の下側に設けられた第2の透明導電層を備えている。
【0021】
さらに、ある態様では、前記トップセルは、上方から見たときに、前記第2の透明導電層の表面が、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に露出されている。
【0022】
また、ある態様では、前記トップセルの表面に、前記透明導電層に電気的に接続される第1の櫛歯状の受光面電極と、前記第2の透明導電層に電気的に接続される第2の櫛歯状の受光面電極が設けられている。
【0023】
さらに、ある態様では、前記ボトムセルの裏面側には、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に形成された前記第1導電型領域と、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に形成され、前記第2導電型領域よりもドナー濃度の高い第2の第2導電型領域が形成されており、前記第1導電型領域のフィンガー部と前記第2の第2導電型領域のフィンガー部は、所定間隔で交互に位置している。
【0024】
好ましい態様では、前記ボトムセルの裏面に、前記第1導電型領域に電気的に接続される第1の櫛歯状の裏面電極と、前記第2の第2導電型領域に電気的に接続される第2の櫛歯状の裏面電極が設けられている。
【0025】
また、好ましい態様では、前記太陽電池を上方から見たときに、前記第1の櫛歯状の受光面電極のバスバー部と前記第2の櫛歯状の裏面電極のバスバー部が一方端側で平行に位置しており、前記第2の櫛歯状の受光面電極のバスバー部と前記第1の櫛歯状の裏面電極のバスバー部が他方端側で平行に位置している。
【0026】
例えば、前記トップセルに設けられた透明導電層は、酸化インジウム・スズ(ITO)である。
【0027】
好ましくは、前記トップセルの光入射側に設けられた透明導電層は反射防止層を兼ねている。
【0028】
また、好ましくは、前記トップセルの前記第2導電型結晶Si層が、前記トップセルと前記ボトムセルの発電電流が同じになる厚みに設計されている。
【0029】
さらに、好ましくは、前記トップセルが備える透明導電層、第1導電型アモルファスSi材料層、第2導電型結晶Si層、第2導電型アモルファスSi層を有する積層構造は、前記太陽電池を上方から見たときに、所定の間隔で2次元配列する複数のナノワイヤ若しくは壁面が所定の方向に揃い且つ所定の間隔で2次元配列する複数の壁状のナノウォールに区画されたアレイ構造を有し、前記ナノワイヤの直径若しくは前記ナノウォールの厚みが、前記第2導電型結晶Si層の部位において10nm以下である。
【0030】
また、好ましくは、互いに隣接する前記ナノワイヤ若しくは前記ナノウォールは、絶縁性物質により離間されている。
【0031】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、基体上にトップセルを有する太陽電池の製造方法であって、表面領域に第2導電型アモルファスSi層が形成され、該第2導電型アモルファスSi層の上に透明導電層が設けられた第1の第2導電型Si結晶基板と、表面に透明導電層若しくは絶縁性透明パッシベーション層が形成された前記基体の表面同士を、400℃以下の温度で貼り合わせる第1のステップと、前記第1の第2導電型Si結晶基板を裏面から厚み30μm以下まで薄くして前記トップセルの第2導電型結晶Si層とする第2のステップと、を備えている。
【0032】
好ましくは、前記基体は、表面領域にバルクよりも高いドナー濃度の第2導電型層が形成され、該第2導電型層の上に絶縁性透明パッシベーション層が設けられた第2の第2導電型Si結晶基板である。
【0033】
また、好ましくは、前記第1のステップは、前記第1の第2導電型Si結晶基板の表面と前記基体の表面の少なくとも一方に、表面活性化処理を施すサブステップを備えている。
【0034】
例えば、前記表面活性化処理はプラズマ処理又はオゾン処理の少なくとも一方で実行される。
【0035】
例えば、前記透明導電層は酸化インジウム・スズ(ITO)であり、前記絶縁性透明パッシベーション層はシリコン酸化物もしくはアルミニウム酸化物からなる層である。
【0036】
ある態様では、前記第1のステップに先立ち、前記第1の第2導電型Si結晶基板の表面領域に所定のドーズ量の水素を注入して水素イオン注入層を形成するステップを備え、前記第2のステップにおいて、前記水素イオン注入層に機械的若しくは熱衝撃を付与することにより前記第1の第2導電型Si結晶基板から第2導電型結晶Si層を剥離させて前記トップセルの第2導電型結晶Si層とする。
【0037】
また、ある態様では、前記第2のステップの後に、前記第2導電型結晶Si層の上方に、第2導電型とは逆の第1導電型アモルファスSi材料層を形成する第3のステップを備えている。
【0038】
さらに、ある態様では、前記第3のステップは、前記第1導電型アモルファスSi材料層の形成に先立ち、前記第2導電型結晶Si層を、所定の間隔で2次元配列する複数のナノワイヤであって前記第2導電型結晶Si層の部位において直径が10nm以下のナノワイヤ、若しくは、壁面が所定の方向に揃い且つ所定の間隔で2次元配列する複数の壁状のナノウォールであって前記第2導電型結晶Si層の部位において厚みが10nm以下であるナノウォールに区画するサブステップを備えている。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る太陽電池は、トップセルの第2導電型結晶Si層を、従来のものに比較して顕著に薄くした構造を採用した。その結果、トップセルの開放電圧は、第2導電型結晶Si層を100μmとしたものに比較して、0.1V以上高くなり、高い電圧で電流を取り出すことができるため光電変換効率が向上する。
【0040】
また、本発明をタンデム型の太陽電池とした場合には、出力を、トップセルとボトムセルから各々独立に取り出すことができるため、直列接続型タンデムセルで必要となる発電電流のマッチングを取る必要がない。
【0041】
さらに、本発明に係る太陽電池の製造方法は、いわゆる「貼り合わせ」技術を応用し、トップセルと基体若しくはボトムセルの「貼り合わせ」を400℃以下で行うため、水素化アモルファスSi層から水素が離脱して膜質を低下させることがなく、結晶Si層への新たな欠陥生成もない。このため、本発明をタンデム型の太陽電池とした場合には、タンデム化に伴うヘテロ接合セルの劣化が生じない。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、図面を参照して、本発明に係る太陽電池およびその製造方法について説明する。なお、以降の説明では、第1導電型をp型とし、第2導電型をn型として説明するが、これとは逆の関係、すなわち、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としてもよい。また、以降の説明では、「アモルファスSi材料層」をアモルファスSi層として説明するが、この他に、アモルファスSiO層やアモルファスSiN層などとすることもできる。
【0044】
以降では、本発明に係る太陽電池がタンデム型の太陽電池である場合について説明するが、タンデム型である必要は必ずしもない。本発明に係る太陽電池は、ボトムセルを備えることなく、基体上にトップセルが設けられた太陽電池であってもよい。つまり、「ボトムセル」が太陽電池として機能する必要は必ずしもない。
【0045】
[本発明に係るタンデム型太陽電池の基本構造の概略]
図1は、本発明に係るタンデム型のシリコン太陽電池の基本構造の概略を説明するための断面図である。この太陽電池300は、光入射側(図の上側)に設けられたトップセル100と、このトップセル100の下方に設けられたボトムセル200が積層されたタンデム型の太陽電池である。
【0046】
トップセル100は、第1のn型Si結晶基板10を用い、後述するプロセス例により作製される。このトップセル100は、光入射側から、順次、透明導電層110、p型アモルファス材料層としてのp型アモルファスSi層120、n型結晶Si層130、n型アモルファスSi層140を備えている。
図1に示した例では、n型アモルファスSi層140の下側に、第2の透明導電層150が設けられており、透明導電層110と第2の透明導電層150を2つの電極層とすることにより、トップセル100の出力を、ボトムセル200とは独立に取り出すことができる。透明導電層110は、例えば、酸化インジウム・スズ(ITO)からなり、反射防止層を兼ねさせることもできる。なお、トップセル100の表面に設けられる受光面電極(不図示)については、後述する。
【0047】
なお、p型アモルファス材料層は、上述のp型アモルファスSi層120に代えて、p型アモルファスSiO層やp型アモルファスSiN層とするようにしてもよい。また、このp型アモルファスSi層120とn型結晶Si層130との間に、i型アモルファス材料層としてのi型アモルファスSi層を設けてもよく、i型アモルファスSi層に代えて、i型アモルファスSiO層やi型アモルファスSiN層を設けるようにしてもよい。
【0048】
なお、上述のp型アモルファスSi層120、i型アモルファスSi層、n型アモルファスSi層140は何れも、殆どの場合、水素化されたアモルファス層とされる。この点は、p型アモルファスSi層120およびi型アモルファスSi層が上述した他のアモルファスSi材料層であった場合でも同様である。
【0049】
ボトムセル200は、第2のn型Si結晶基板20を用い、後述するプロセス例により作製される。このボトムセル200は、単結晶Siからなり、トップセル側がn型領域210であり、その下方(すなわち太陽電池の裏面側)に、エミッタ層としてのp型領域220が設けられている。
【0050】
また、この図に示した例では、ボトムセル200のn型領域210のトップセル側に、表面電界層(FSF)として、バルクとしてのn型領域よりもドナー濃度の高いn型層230が設けられている。さらに、エミッタ層としてのp型領域220に隣接して、裏面電界層(BSF)として、バルクとしてのn型領域よりもドナー濃度の高い第2のn型層240が形成されている。
【0051】
エミッタ層であるp型領域220と第2のn型層240のそれぞれには、絶縁性膜250を介して、第1の裏面電極260と第2の裏面電極270が電気的に接続され、エミッタ層であるp型領域220と第2のn型層240を2つの電極層とすることにより、ボトムセル200の出力を、トップセル100とは独立に取り出すことができる。
【0052】
なお、後述する態様では、p型領域220を、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に形成するとともに、第2のn型領域240も同様に、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に形成し、p型領域220のフィンガー部と第2のn型領域240のフィンガー部を、所定間隔で交互に位置させる。
【0053】
ここで、上述のp型領域220のうち、バスバー部は必ずしもp型の導電型とされている必要はないが、便宜上、当該バスバー部も含めて「p型領域」という。同様に、上述の第2のn型領域240のうち、バスバー部は必ずしもn型の導電型とされている必要はないが、便宜上、当該バスバー部も含めて「n型領域」という。換言すれば、p型領域220のフィンガー部および第2のn型領域240のフィンガー部がそれぞれ「p型」および「n型」」であり、これらのフィンガー部が、所定間隔でストライプ状に交互に位置させるようにしてもよい。
【0054】
トップセル100とボトムセル200の間に設けられた符号160で示した層は絶縁性透明パッシベーション層であり、後述の製造プロセスで貼り合わせに用いられる層である。この絶縁性透明パッシベーション層160は、例えば、シリコン酸化物やアルミニウム酸化物からなる層である。
【0055】
トップセル100の各層の組成や厚み等は、例えば、下記のように設計することができる。透明導電層110は0.1μm程度のITO、p型アモルファスSi層120とi型アモルファスSi層の総厚は0.01μm程度、n型結晶Si層130の厚みは30μm以下、i型アモルファスSi層とn型アモルファスSi層140の総厚は0.01μm程度、第2の透明導電層150は0.1μm程度のITOである。なお、トップセルのn型結晶Si層の厚みは、好ましくは3μm〜30μm、より好ましくは4μm〜20μm、さらに好ましくは5μm〜10μmである。その理由については後述する。
【0056】
単結晶Siからなるボトムセル200の各層の厚み等は、例えば、下記のように設計することができる。バルクとしてのn型領域210は厚みが200〜500μm程度でその比抵抗は1Ωcm程度、エミッタ層としてのp型領域220はアクセプタ濃度が5×10
19cm
-3程度でその厚みは2〜3μm程度、表面電界層(FSF)としてのn型層230はドナー濃度が1×10
19cm
-3程度でその厚みは0.1〜1μm程度、裏面電界層(BSF)としての第2のn型層240はドナー濃度が5×10
19cm
-3〜1×10
20cm
-3程度でその厚みは1〜2μm程度である。
【0057】
なお、絶縁性膜250としてはSiO
2が好適に用いられる。また、トップセル100とボトムセル200の間に設けられる絶縁性透明パッシベーション層160にもSiO
2が好適に用いられ、その厚みは例えば0.1μm程度である。
【0058】
また、後述する受光面電極や、上述の裏面電極260、270は、スパッタや蒸着で全面に形成した金属(例えば、AlやAgなど)をパターニングして形成するか、AlやAgなどのペーストを用いてスクリーン印刷後焼成して形成することができる。
【0059】
[トップセルのn型結晶Si層の厚み]
図2は、光電変換効率のトップセルn型結晶Si層の厚み依存性のシミュレーション結果を示す図である。このシミュレーションでは、ボトムセルの厚みを300μmとし、トップセルのn型結晶Si層の厚みをパラメータとして光電変換効率を求めている。この結果によれば、トップセルのn型結晶Si層の厚みが100μmの場合の光電変換効率はn型結晶Si層の厚みが1μmの場合と概ね等しく(23.5%)、厚みが100μmを超えるとこの値を下回る。
【0060】
n型結晶Si層の厚みが30μm以下では光電変換効率24%以上が得られており、n型結晶Si層の厚みが3〜30μmの範囲にあると光電変換効率24%以上が得られている。また、n型結晶Si層の厚みが4μm〜20μmの範囲では24.1%を超える光電変換効率が得られ、5μm〜10μmの範囲では24.2%を超える光電変換効率が得られている。
【0061】
図3は、トップセルの開放電圧V
OCのn型結晶Si層の厚み依存性のシミュレーション結果を示す図で、バルクのシリコンを想定して得られた開放電圧V
OCの値を、図中に丸印で示した。
図3(A)にはn型結晶Si層の厚みが1〜100μmの範囲での開放電圧が示されており、
図3(B)にはn型結晶Si層の厚みが1〜10μmの範囲での開放電圧が示されている。
【0062】
これらの図に示した結果によれば、n型結晶Si層の厚みが10〜20μm近辺で、開放電圧の向上が認められ、特に、n型結晶Si層の厚みが10μm以下では、開放電圧の向上が顕著であり0.8V以上の値が得られている。これは、n型結晶Si層の厚みが薄くなったことにより、結晶Si層内におけるキャリアのオージェ再結合が顕著に抑制されることを示している。
【0063】
図3に示した結果によれば、n型結晶Si層の厚みが10μm以下で顕著な開放電圧の向上が認められる一方で、
図2に示した結果からは、n型結晶Si層の厚みが5μmよりも薄くなると徐々に光電変換効率が低下している事実を考慮すると、最も好ましいn型結晶Si層の厚み範囲は5μm〜10μmであると考えられる。
【0064】
[トップセルとボトムセルからの出力取り出し]
図4は、本発明に係る太陽電池が備える受光面電極の態様を説明するための図である。この態様では、トップセル100の表面に、上述の透明導電層110に電気的に接続される第1の受光面電極170と、第2の透明導電層150に電気的に接続される第2の受光面電極180が設けられ、透明導電層110と第2の透明導電層150を2つの電極層とすることにより、トップセル100の出力を、ボトムセル200とは独立に取り出すことができる。
【0065】
なお、既に説明したように、ボトムセル200の出力も、エミッタ層であるp型領域220と第2のn型層240を2つの電極層とすることにより、ボトムセル200の出力を、トップセル100とは独立に取り出すことができる。
【0066】
図5(A)および
図5(B)はそれぞれ、太陽電池300の光入射側(上方)から見たときの受光面電極の態様を説明する図(
図5(A))および太陽電池300の裏面側(下方)から見たときの裏面電極の態様を説明する図(
図5(B))である。
【0067】
図5(A)に示したように、トップセル100には、上方から見たときに、第1の櫛歯状の受光面電極170と第2の櫛歯状の受光面電極180が設けられている。そして、トップセル100の第2の透明導電層150の表面は、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に露出されており、第1の櫛歯状の受光面電極170は透明導電層110に電気的に接続され、第2の櫛歯状の受光面電極180は第2の透明導電層150に電気的に接続される。
【0068】
つまり、トップセル100は、上方から見たときに、第2の透明導電層150の表面が、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に露出されており、透明導電層110に電気的に接続される第1の櫛歯状の受光面電極170と、第2の透明導電層150に電気的に接続される第2の櫛歯状の受光面電極180が設けられ、これにより、トップセル100の出力を、ボトムセル200とは独立に取り出すことを可能としている。
【0069】
また、この態様では、ボトムセル200の裏面側には、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に形成されたp型領域220と、バスバー部と該バスバー部から延在する複数のフィンガー部を有する櫛歯状に形成され、バルクとしてのn型領域210よりもドナー濃度の高い第2のn型領域240が形成されており、p型領域220のフィンガー部と第2のn型領域240のフィンガー部は、所定間隔で交互に位置している。
【0070】
そして、ボトムセル200の裏面に、p型領域220に電気的に接続される第1の櫛歯状の裏面電極260と、第2のn型領域240に電気的に接続される第2の櫛歯状の裏面電極270が設けられ、これにより、ボトムセル200の出力を、トップセル100とは独立に取り出すことを可能としている。
【0071】
このような態様の受光面電極の構造は、トップセル100の透明導電層(110、150)のシート抵抗が高いことによる損失が無視できない場合に、特に効果的である。そして、トップセル100の出力とボトムセル200の出力を独立に取り出すことができるため、電気的に直列接続された2端子タンデムセルのように両者の発電電流のマッチングを取る必要はなく、セル設計の制約は少ない。
【0072】
また、上述の態様では、トップセル100の出力端子は入射光面側にあることとなり、ボトムセル200の出力端子は裏面側にあることとなるため、何枚かのセルを組み込んでモジュールを作製する場合には、トップセル同士、あるいはボトムセル同士を直列に接続して、モジュールの端子ボックスは4端子にする。
【0073】
なお、トップセル100の結晶Si層130の厚さを調整することにより、トップセル100とボトムセル200の発電電流が同じになるようにすることも可能である。この場合には2端子化も実現し得る。例えば、トップセルとボトムセルの出力を直列接続して、モジュールに組み込んでもよいし、モジュールの端子ボックス内でトップセルからの出力とボトムセルからの出力を直列に接続して2端子にしてもよい。
【0074】
2端子タンデムセル構造にするには、例えば、以下のような電極間接続関係を採用することができる。
【0075】
図6は、
図5(A)および
図5(B)の図中に破線で示した部分の断面構造の概略を示す図である。まず、トップセル100とボトムセル200の最適動作電流がほぼ等しくなるように、トップセル100の結晶Si130層の厚さを調整する。その後、ボトムセル200のエミッタからの出力を取り出すための櫛歯電極260の母線と、トップセル100のn型アモルファスSi層側に設けた第2の透明導電層150に電気的に接続する櫛歯電極180の母線を、ボトムセル200の端部をセルの厚さ方向に横切る形に、導電性材料280で接続する。
【0076】
この場合、接続しようとする櫛歯電極の母線同士をセルの同じ端部縁になるように配置しておく。つまり、太陽電池100を上方から見たときに、第2の櫛歯状の受光面電極である第2の透明導電層150のバスバー部と第1の櫛歯状の裏面電極である第1の裏面電極260のバスバー部が他方端側で平行に位置させる。一方、第1の櫛歯状の受光面電極である第1の透明導電層110のバスバー部と第2の櫛歯状の裏面電極である第2の裏面電極270のバスバー部は、他方端側で平行に位置することになる。
【0077】
このような電極間の接続に際しては、発電電流による電圧降下が十分に小さくなるように行う。セルの裏面の絶縁性膜250が熱酸化やプラズマCVDで形成された酸化膜である場合には、セルの端面もこのような絶縁性膜250で被覆されていること、そして、セルの厚さは数百μmであることを考慮すると、厚さが数μm以上のAgペーストなどの導電性ペーストを用いることが好ましい。このような導電性ペーストを用いれば、セルの端部に、上述の両母線に接触するように塗布して焼成するだけで、発電電流による当該接続箇所での電圧降下は、発電電圧に比べて十分小さくすることができる。
【実施例】
【0078】
以下に、上述した構造の本発明に係る太陽電池の製造方法の概要を、例示により説明する。なお、下記実施例では、第1導電型をp型とし、第2導電型をn型とされているが、これとは逆の関係、すなわち、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としてもよいことは、既に述べたとおりである。また、「アモルファスSi材料層」がアモルファスSi層ではなく、アモルファスSiO層やアモルファスSiN層などとすることもできることも、既に述べたとおりである。
【0079】
図7は、本発明に係る太陽電池を製造するプロセス例のフローチャートである。まず、上述した2枚のn型単結晶Si基板(10、20)を準備する。Si基板の厚みに特別な制限はないが、一般的には、200〜500μmである。第1のn型Si結晶基板10はトップセル作製用のものであり、第2のn型Si結晶基板20はボトムセル作製用のものである。下記の実施例では、第1のn型Si結晶基板10は片面ポリッシュ仕上げのもので差し支えないが、第2のn型Si結晶基板20は両面ポリッシュ仕上げのものを用いている。また、Si基板の比抵抗値は太陽電池の設計事項であるが、ここでは、1Ωcm程度のものを用いている。
【0080】
第1のn型Si結晶基板10の表面に、n型水素化アモルファスSi層140を形成し(S101)、さらに、このn型水素化アモルファスSi層140の上にITOから成る透明導電層150を形成する(S102)。
【0081】
一方、第2のn型Si結晶基板20の裏面には、n
+領域(リン濃度10
19〜10
20cm
-3程度)とp
+領域(ボロン濃度10
19〜10
20cm
-3程度のp
+層)をストライプ状(乃至は櫛型状)に形成し、これらを裏面電界層(BSF)としての第2のn型層240およびエミッタ層としてのp型領域220とする(S201)。これらのn
+領域やp
+領域の形成は、イオン注入法や熱拡散法あるいはレーザードーピング法などによる。
【0082】
次いで、第2のn型Si結晶基板20の表面に、表面電界層(FSF)としてのn型層230(リン濃度10
19cm
-3程度のn
+層)を形成する(S202)。このFSF層は、熱拡散法やイオン注入法により形成される。
【0083】
これに続き、表面電界層(FSF)としてのn型層230の上に、絶縁性透明パッシベーション層160を形成する(S203)。このパッシベーション膜は、熱酸化膜、CVDによる堆積酸化膜、プラズマCVDやホットワイヤーCVDによる水素化アモルファスSiO膜などである。
【0084】
次に、第1のn型Si結晶基板10の表面(つまり、ITOから成る透明導電層150)と第2のn型Si結晶基板20の表面(つまり、絶縁性透明パッシベーション層160)の少なくとも一方に、表面活性化処理を施す(S301)。この表面活性化処理は、例えば、プラズマ処理やオゾン処理である。
【0085】
この表面活性化処理に続き、既に公知の半導体基板同士の貼り合わせ技術を応用して、第1のn型Si結晶基板の表面(つまり、ITOから成る透明導電層150)と第2のn型Si結晶基板の表面(つまり、シリコン酸化物やアルミニウム酸化物などからなる絶縁性透明パッシベーション層160)同士を貼り合わせる(S302)。なお、この貼り合わせは、400℃以下の温度で行う。これは、トップセルの水素化アモルファスSi層からの水素の離脱による膜質の低下と、トップセルの結晶Si層への欠陥導入を抑制し、タンデム化に際しての太陽電池特性の劣化を生じさせないためである。
【0086】
なお、この貼り合わせの強度を高める目的で、トップセル側であるITOから成る透明導電層150の上に、更に、水素化アモルファスSiO膜を堆積しておいてもよい。
【0087】
この貼り合わせの後、第1のn型Si結晶基板の裏面側の結晶部分を取り除き、厚み30μm以下(一般的には10μm以下)まで薄くして、トップセルのn型結晶Si層130を形成する(S303)。
【0088】
この薄化工程は、第1のn型Si結晶基板の裏面側を機械的に研磨することのほか、いわゆる「スマートカット法」などの手法によってもよい。
【0089】
スマートカット法による場合には、ステップS101に先立ち、第1のn型Si結晶基板の表面領域に所定のドーズ量の水素を注入して水素イオン注入層を形成しておき、ステップS303において、上記水素イオン注入層に機械的若しくは熱衝撃を付与することにより第1のn型Si結晶基板からn型結晶Si層を剥離させてトップセルのn型結晶Si層とする。
【0090】
このような薄化工程の後、必要に応じて、研磨ダメージ層のエッチング除去を行い、結晶Si層の厚みを所望の値に調整する。
【0091】
その後、光入射面側に、水素化i型アモルファスSi層、水素化p型アモルファスSi層120、ITOから成る透明導電層110を、順次、積層する(S304〜S306)。
【0092】
次いで、フォトリソ技術により、
図4に示したように、第2の透明導電層150の一部を露出させ(S307)、受光面電極170、180を形成する(S308)。これにより、第1の受光面電極170が透明導電層110に電気的に接続され、第2の受光面電極180が第2の透明導電層150に電気的に接続され、トップセルが完成する。
【0093】
最後に、第2のn型Si結晶基板の裏面側にコンタクトホールを形成して、
図4に示したような裏面電極260、270を形成し(S309)、トップセルが完成するとともに太陽電池としても完成する。
【0094】
既に説明したように、本発明に係る太陽電池のように、トップセルの結晶Si層の厚さを薄くすることにより、開放電圧を高めることが可能である。一方で、トップセルの結晶Si層の厚さが薄くなると、トップセルの光吸収長(光路長)が短くなり、その結果、短絡電流密度は小さくなり出力は結晶Si層が厚いセルに比較して低下する。しかし、本発明の太陽電池はタンデム構造であるため、トップセルで吸収できなかった光はボトムセルで吸収され、発電に供することができる。その結果、トップセルの発電電流を高い電圧で取り出すことができる分だけ、ボトムセル単体で発電する場合に比べて変換効率が改善される。
【0095】
このように、本発明に係る太陽電池は、トップセルの第2導電型結晶Si層を、従来のものに比較して顕著に薄くした構造を採用した。その結果、トップセルの開放電圧は、第2導電型結晶Si層を100μmとしたものに比較して、0.1V以上高くなり、高い電圧で電流を取り出すことができるため光電変換効率が向上する。
【0096】
また、出力を、トップセルとボトムセルから各々独立に取り出すことができるため、直列接続型タンデムセルで必要となる発電電流のマッチングを取る必要がない。
【0097】
さらに、本発明に係る太陽電池の製造方法は、いわゆる「貼り合わせ」技術を応用し、トップセルとボトムセルの「貼り合わせ」を400℃以下で行うため、水素化アモルファスSi層から水素が離脱して膜質を低下させることがなく、結晶Si層への新たな欠陥生成もないため、タンデム化に伴うヘテロ接合セルの劣化が生じない。
【0098】
これまでは、本発明に係る太陽電池がタンデム型の太陽電池である場合について説明した。しかし、本発明に係る太陽電池は必ずしもタンデム型である必要はなく、ボトムセルを備えることなく、基体上に上述のトップセルが設けられた太陽電池であってもよい。つまり、上述した「ボトムセル」が太陽電池として機能する必要は必ずしもない。
【0099】
上述した「ボトムセル」を太陽電池とせず、いわゆる基体である場合には、本発明に係る太陽電池は、トップセルが基体の主面上に設けられており、前記トップセルは、光入射側から、順次、透明導電層、第1導電型アモルファスSi材料層、前記第1導電型とは逆の第2導電型結晶Si層、第2導電型アモルファスSi層を有する積層構造を有し、前記トップセルの表面には受光面電極が、前記基体には裏面電極が設けられており、前記トップセルの第2導電型結晶Si層の厚みが30μm以下である、ことを特徴とする太陽電池ということになる。
【0100】
この場合の基体としては、例えば、単結晶Siを用いることとしてもよい。また、基体が単結晶Siからなる場合、トップセルと基体の間に、酸化インジウム・スズ(ITO)からなる層を備えている態様としてもよい。
【0101】
さらに、上記基体は、表面領域にバルクよりも高いドナー濃度の第2導電型層が形成され、該第2導電型層の上に絶縁性透明パッシベーション層が設けられた第2の第2導電型Si結晶基板である態様としてもよい。
【0102】
この場合、太陽電池の製造に際し、上述したステップS303(貼り合わせの後、第1のn型Si結晶基板の裏面側の結晶部分を取り除き、厚み30μm以下まで薄くして、トップセルのn型結晶Si層130を形成するステップ)の後に、第2導電型結晶Si層の上方に、第2導電型とは逆の第1導電型アモルファスSi材料層を形成するステップを備えるようにすることとしてもよい。
【0103】
また、トップセルの構造を、ナノワイヤやナノウォールがアレイ配列された態様のものとしてもよい。このようなナノ構造のものとすることにより、量子効果を高め、太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
【0104】
このような構造のトップセルを備えた太陽電池は、前記トップセルが備える透明導電層、第1導電型アモルファスSi材料層、第2導電型結晶Si層、第2導電型アモルファスSi層を有する積層構造は、前記太陽電池を上方から見たときに、所定の間隔で2次元配列する複数のナノワイヤ若しくは壁面が所定の方向に揃い且つ所定の間隔で2次元配列する複数の壁状のナノウォールに区画されたアレイ構造を有し、前記ナノワイヤの直径若しくは前記ナノウォールの厚みが、前記第2導電型結晶Si層の部位において10nm以下である、太陽電池と言うことになる。
【0105】
斯かる態様を採用する場合、互いに隣接する前記ナノワイヤ若しくは前記ナノウォールは、絶縁性物質により離間されているようにすることが好ましい。
【0106】
また、ナノ構造のトップセルとする際には、第2導電型結晶Si層の上方に第2導電型とは逆の第1導電型アモルファスSi材料層を形成するステップにおいて、第1導電型アモルファスSi材料層の形成に先立ち、第2導電型結晶Si層を、所定の間隔で2次元配列する複数のナノワイヤであって第2導電型結晶Si層の部位において直径が10nm以下のナノワイヤ、若しくは、壁面が所定の方向に揃い且つ所定の間隔で2次元配列する複数の壁状のナノウォールであって第2導電型結晶Si層の部位において厚みが10nm以下であるナノウォールに区画するサブステップを備えていることが好ましい。
【0107】
図8は、トップセルが、所定の間隔で2次元配列する複数の壁状のナノウォールに区画されたアレイ構造の場合のタンデム型の太陽電池の構成を概念的に説明するための斜視図である。
【0108】
Siのバンドギャップはバルクでは1.1eV程度であるが、ナノオーダーのウォールやワイヤとした場合、その大きさが10nm程度よりも小さくなると大きくなることが知られている。そして、ナノウォールやナノワイヤのサイズ(幅)を変えることにより、量子閉じ込め効果によるバンドギャップ制御が可能である。つまり、トップセルを、このような大きさのナノウォールやナノワイヤを2次元配列させた構造のものとすることで、量子閉じ込め効果を積極的に利用して太陽電池としての性能を高めることができる。
【0109】
ナノウォールを想定すると、理論的には、ウォールの厚みを2nmまで狭めると、実効的なバンドギャップは約1.6eVとなり、バルクのシリコンのバンドギャップ(約1.1eV)よりも45%程度バンドギャップが広がり、高効率化が期待できる。
【0110】
図9は、所定の間隔で2次元配列する複数の壁状のSiのナノウォールに区画されたアレイ構造を有するトップセルの一部を観察した透過電子顕微鏡像である。ナノウォールのサイズは10nm以下であり、この図に示した例では約2nmである。また、ナノウォール相互間には、絶縁性物質(SiO
2やAl
2O
3)が埋め込まれている。
【0111】
図10は、ナノウォールに区画されたアレイ構造(A)の反射率とナノウォール相互間に絶縁性物質であるSiO
2を埋め込んだアレイ構造(B)の反射率の波長依存性を示す図である。
【0112】
この図から明らかなように、ナノウォール相互間に絶縁性物質を埋め込むことにより反射率は低く抑えられ、太陽光の利用効率が高まる。
【0113】
このようなナノウォールは、例えば、下記のプロセスにより作製することができる。先ず、液浸リソグラフィーを用いたパターニングで数十nm幅のウォールを形成する。これにより、例えば、幅が75nm程度、高さが1μm程度のウォールを形成することができる。なお、基材となるSiの主面が(1,1,0)面であるとすると、例えば(1,−1,1)面は(1,1,0)面に直行するから、壁面が(1,−1,1)面のウォールを主面に垂直に形成することができる。これに次いで、酸化処理およびエッチング処理を繰り返すことにより、幅が数nmのナノウォールを形成する。
【0114】
なお、上述のナノウォールに代えて、所定の間隔で2次元配列する複数のナノワイヤに区画されたアレイ構造のものとし、そのナノワイヤの直径を10nm以下のサイズのものとしても、同様の量子効果を得ることができることは言うまでもない。