【文献】
J. Am. Chem. Soc.,2013年,135,3331-3334
【文献】
Chem. Eur. J.,2010年,16,3983-3993
【文献】
New J. Chem.,2003年,27,1451-1462
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
メタセシス反応は、化学合成、例えば、閉環メタセシス(RCM)、クロスメタセシス(CM)、開環メタセシス(ROM)、開環メタセシス重合(ROMP)、環式ジエンメタセシス重合(ADMET)、自己メタセシス、アルケンとアルキンとの反応(エンイン反応)、アルキンの重合、およびカルボニルのオレフィン化といった形態の化学合成に幅広く用いられている。メタセシス反応は、例えば、オレフィンの合成、ノルボルネン誘導体の開環重合、不飽和ポリマーの解重合、およびテレケリックポリマーの合成に用いられている。
【0003】
メタセシス触媒の種類は幅広く、特に、(特許文献1)および(特許文献2)に記載されているものが知られている。これらは次に示す一般構造:
【化1】
(式中、Mは、オスミウムまたはルテニウムであり、R基は、同一であるかまたは異なる、多種多様な構造を有する有機基であり、X
1およびX
2は、アニオン性配位子であり、配位子Lは、帯電していない電子供与体である)を有する。これらの文献において、この種のメタセシス触媒に関連する「アニオン性配位子」という語はいずれも、中心金属から離してみた場合に、電子殻が閉殻となることによって負に帯電している配位子を指す。
【0004】
略して「NBR」とも称されるニトリルゴムは、典型的には、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルと、少なくとも1種の共役ジエンと、適切であれば、1種以上のさらなる共重合可能なモノマーとの共重合体または三元共重合体であるが、近年、このニトリルゴムの分解のためにメタセシス反応がいっそう重要になってきている。
【0005】
略して「HNBR」とも称される水素化ニトリルゴムは、ニトリルゴムを水素化することによって製造される。したがって、HNBRに含まれる共重合したジエン単位のC=C二重結合は、完全にまたは部分的に水素化されている。共重合したジエン単位の水素化度は、通常は50〜100%の範囲にある。HNBRは、非常に高い耐熱性、極めて優れた耐オゾン性および耐薬品性ならびに極めて優れた耐油性と、非常に優れた機械的性質(高い耐摩耗性等)とを兼ね備えた特殊なゴムである。こうした理由から、HNBRは多岐に亘る分野に幅広く使用されており、例えば、自動車分野(シール材、ホース、ベルトおよび制振部材)、原油生産分野(ステータ、油井用シール材およびバルブシール材)ならびに航空機産業、エレクトロニクス産業、機械製造および造船における様々な部品に使用されている。
【0006】
市販されているHNBRのグレードのほとんどは、通常、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が55〜120の範囲にあり、これは、数平均分子量Mn(測定方法:標準ポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)))が約200,000〜700,000の範囲にあることに相当する。分子量分布の幅に関する情報を与える多分散指数「PDI」の測定値(PDI=Mw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量であり、いずれも標準ポリスチレンを用いたGPCにより測定される))は、多くの場合、3以上である。残存二重結合量は、通常、1〜18%の範囲にある(NMRまたはIR分光法により測定される)。一方、残存二重結合量が0.9%以下であるものは、当技術分野においては「完全水素化グレード」と称するのが通例である。
【0007】
ムーニー粘度が比較的高いHNBRグレードは、加工に関する制限を受けやすい。分子量がより低く、したがってムーニー粘度がより低いHNBRグレードの方が、加工性が大幅に改善されるため、多くの用途において望ましい。
【0008】
これまでにも、HNBRの鎖長を分解によって短くする数々の試みがなされてきた。例えば、熱機械処理(素練り)を、例えば、ロールミルまたはスクリュー式装置(特許文献3)で行うことによって、分子量を低下させることができる。しかし、一部が酸化することによってヒドロキシル基、ケト基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基等の官能基が分子内に導入されるだけでなく、高分子の微細構造も実質的に変化してしまう。
【0009】
ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が55未満の範囲にある、すなわち数平均分子量Mnが約200,000g/mol未満であることに相当するモル質量の低いHNBRを既存の製造プロセスによって製造することは長い間実現されなかった。その理由は、まず第1に、NBRを水素化する際にムーニー粘度が段階的に増大し、第2に、水素化に使用されるNBR供給原料のモル質量を特定の閾値よりも低くなるように自在に低下させることができない(そのようにしてしまうと、ゴムの粘着性が高くなり過ぎて、利用可能な工業設備で処理を行うことがもはや不可能となる)ためである。既存の工業設備で問題なく処理することが可能なNBR供給原料のムーニー粘度の下限値は約30ムーニー単位(ML(1+4)100℃)である。このようなNBR供給原料を使用して得られるHNBRのムーニー粘度は、55ムーニー単位(ML(1+4)100℃)程度である。ムーニー粘度はASTM標準D1646に準拠して求められる。
【0010】
さらに最近の先行技術においては、水素化を行う前にNBRを分解して、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が30ムーニー単位未満すなわち数平均分子量Mnが70,000g/mol未満となるように分子量を低下させることによってこの問題を克服している。分子量の低下はメタセシスにより達成され、その場合は、通常、低分子量の1−オレフィンが添加される。NBRのメタセシスは、例えば、(特許文献4)、(特許文献5)および(特許文献6)に記載されている。メタセシス反応は、有利には、分解反応が完了した後、後続の水素化に付す前に、分解したニトリルゴムを溶媒から単離する必要がないように、水素化反応と同一の溶媒中で行われる。このメタセシス分解反応は、極性基、特にニトリル基に耐性を有するメタセシス触媒によって触媒される。
【0011】
(特許文献7)および(特許文献8)には、ムーニー粘度の低いHNBRを得るために、オレフィンメタセシスによってNBRを分解した後に水素化を行うことを含むプロセスが記載されている。このプロセスは、第1ステップにおいて、1−オレフィンおよび特定の、Os、Ru、MoおよびW系錯体触媒の存在下にNBRを反応させ、第2ステップにおいて水素化を行うものである。こうすることにより、重量平均分子量(Mw)が30,000〜250,000の範囲にあり、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が3〜50の範囲にあり、多分散指数PDIが2.5未満であるHNBRを得ることができる。NBRのメタセシスは、例えば、触媒として、下に示す、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド(「グラブスI」)または1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリデニリデン(imidazolidenylidene))(トリシクロヘキシルホスフィン)(フェニル−メチレン)ルテニウムジクロリド(「グラブスII」):
【化2】
を使用して行われることが記載されている。
【0012】
分子量および分子量分布という観点では、グラブス(II)型触媒を用いたメタセシスによる分解の方が、グラブス(I)型触媒を用いた場合よりも効率的に進行する。
【0013】
メタセシス触媒には数多くの用途があることから、メタセシス触媒合成の重要性は高まってきている。
【0014】
(非特許文献1)には、スルホニウム塩を使用して金属カルベン錯体を合成することが報告されており、これは、in situで水素を引き抜くことによって硫黄イリドを生成し、次いでこれを金属前駆体と反応させることにより、対応する金属カルベン錯体を生成するものである。具体的には、グラブスI触媒は、この経路で合成される。次のスキームに示す経路には、ルテニウムヒドリド錯体もビニルスルフィドも関与せず、このことに関する教示も一切なされていない。
【化3】
【0015】
(非特許文献2)および(非特許文献3)には、(PPh
3)
3RuHClおよび塩化プロパルギルを反応させることによるグラブス型錯体の合成が記載されている。次いで、得られた錯体のアルキリデンおよびホスフィンを交換することにより、グラブスI触媒に変換することができる。
【化4】
【0016】
(非特許文献4)においては、クロロギ酸ビニルを出発物質であるルテニウムヒドリドと反応させることが記載されており、CO
2が脱離し、クロリドが中心金属に転位することによってルテニウムエチリデン錯体を得ることが記載されている。
【化5】
【0017】
(非特許文献5)においては、出発物質であるルテニウムヒドリドをハロゲン化プロパルギルまたはハロゲン化ビニルと反応させることによってグラブス型錯体を生成することが記載されている。出発物質であるルテニウムヒドリドを塩化アルケニルと反応させることによって反応性アルキルカルベンが生成することがさらに述べられているが、多くの副生成物が認められており、このことがこの方法を合成的に実用的でないものにしている。
【化6】
【0018】
(非特許文献6)、(非特許文献7)、(非特許文献8)、(非特許文献9、および(非特許文献10)には、下の図に示す触媒を含む、中性配位子として2個のN−複素環カルベンを有するオレフィンメタセシス触媒の例が幾つか示されている。N−複素環カルベン配位子は、一般に「NHC配位子」と称されることが多い。これらの論文は全て、ルテニウム出発物質としてグラブスI触媒またはグラブスII触媒のいずれかを使用しているか、あるいは上記グラブス触媒を生成するための前述の経路を用いているかのいずれかである。これらのNHCのいずれも、金属に結合して三座配位子を形成することができる側鎖を特徴とはしていない。
【化7】
【0019】
(非特許文献11)、(非特許文献12)、(非特許文献13)、および(非特許文献14)においては、下の図に示す触媒を含む数種類のルテニウム系触媒の合成およびメタセシス活性が検討されており、これらは、アニオン性配位子の一方または両方が単座または二座のアリールオキシ基に置換されている。これらの化学種は、出発物質としてグラブス型錯体を使用し、次いで適切な基質で陰イオン交換を行うことによって得られる。
【化8】
【0020】
(非特許文献15)には、ヒドロキシアルキル鎖を有するNHC配位子を含むルテニウムベンジリデン錯体の合成が記載されている。この中性配位子は、トランス体よりもシス体となるように転位することができる。ピリジンの存在下においては、ホスフィンおよび一方のクロリドが2当量のピリジンに置き換わり、ヒドロキシル基が中心金属に配位することが分かった。ルテニウム出発物質としてグラブスI触媒を用いることにより、次に示す錯体が合成される。
【化9】
【0021】
(非特許文献16)には、錯体化の際に金属に結合するペンダントホスフィンを有するNHC配位子を含むルテニウムアルキリデン錯体の合成が記載されている。まず最初に2個の塩素で架橋された二核錯体を形成し、次いでこれを適切な置換ジアゾメタンと反応させることにより、単核錯体であるアルキリデンルテニウム錯体に変換される。
【化10】
【0022】
(非特許文献17)には、半置換活性を有する電子供与体となり得る三座ビス−カルベン配位子の合成およびメタセシス活性が記載されている。この合成には、ルテニウム出発物質として第1世代グラブス触媒を使用することが含まれる。
【化11】
【0023】
(非特許文献18)には、次に示すグラブス−ホベイダ(Grubbs−Hoveyda)型触媒を含むチオラートの合成およびZ選択的メタセシス活性が報告されており、この化合物は、グラブス−ホベイダ触媒を出発物質として合成される。
【化12】
【0024】
まとめるとその多くは好ましくない配位子を含んでおり、場合によっては十分な活性および/または選択性を有しておらず、何より重要なことは、調製が困難であるか、または出発物質としてグラブスIまたはII構造を用いないと調製できない可能性があることである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一般式(I)を有する新規なルテニウム系錯体は、触媒として、特に、多種多様な不飽和基質のメタセシス反応に極めて適しており、熱的安定性も高い。これらの触媒は、低コストかつ安全性の高い経路を介して入手可能であり、収率も高い。好ましくは、この合成経路は、出発物質としてグラブスIやグラブスIIを使用することを含まず、ビニルスルフィドを使用することを含む。驚くべきことに、ビニルスルフィドを用いる反応により、アルキリデン配位子を生成させることが可能になり、非常に効果の高いメタセシス触媒である新規なアルキリデン−チオラートRu錯体が得られる。
【0031】
本特許出願に用いられる「置換」という語は、指定された基または原子上の水素原子が、各場合において指定された基のうちの1種に置き換えられていることを意味する。但し、指定された原子の原子価を超えることはなく、この置換により生成するのは安定な化合物である。
【0032】
本特許出願および本発明において、一般的な意味または好ましい範囲について上述および後述する、基、置換基の定義、パラメータ、または説明はいずれも、任意のやり方で互いに組み合わせることができ、すなわちそれらには各範囲および好ましい範囲の組合せが包含される。
【0033】
一般式(I)を有する錯体触媒の好ましい実施形態:
X1の定義:
一般式(I)を有する錯体触媒において、X
1は、アニオン性配位子を表す。
【0034】
X
1は、例えば、ヒドリド、ハライド、擬ハライド、アルコキシド、アミド、トリフラート、ホスフェート、ボレート、カルボキシレート、アセテート、ハロゲン化アセテート、ハロゲン化アルキルスルホネート、トシラート、または弱く配位した任意のアニオン性配位子であることができる。X
1はまた、例えば、直鎖もしくは分岐のC
1〜C
30アルキルまたはC
6〜C
24アリールであることができる。
【0035】
好ましい実施形態においては、X
1は、ハライド、特に、フルオリド、クロリド、ブロミド、またはヨージド、ホスフェート、ボレート、カルボキシレート、アセテート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメチルスルホネート、またはトシラートを意味する。
【0036】
特に好ましい実施形態においては、X
1は、ハライドを意味し、よりさらに好ましくは、X
1は、クロリドまたはヨージドを表す。
【0037】
Yの定義:
Yは、酸素(O)または硫黄(S)のいずれかであり、好ましくは硫黄である。
【0038】
L1の定義:
L
1は、L
2に関し定義した一般構造(Ia
*)、(Ib
*)、(Ic
*)、および(Id
*)とは異なるN−複素環カルベン配位子である。通常、L
1は、一般式(IIa)または(IIb):
【化16】
(式中、
R
4、R
5、R
6、R
7は、同一であるかまたは異なり、かつそれぞれ、水素、直鎖もしくは分岐のC
1〜C
30アルキル、C
3〜C
20シクロアルキル、C
2〜C
20アルケニル、C
2〜C
20アルキニル、C
6〜C
24アリール、C
1〜C
20カルボキシレート、C
1〜C
20アルコキシ、C
2〜C
20アルケニルオキシ、C
2〜C
20アルキニルオキシ、C
6〜C
20アリールオキシ、C
2〜C
20アルコキシカルボニル、C
1〜C
20アルキルチオ、C
6〜C
20アリールチオ、C
1〜C
20アルキルスルホニル、C
1〜C
20アルキルスルホネート、C
6〜C
20アリールスルホネート、またはC
1〜C
20アルキルスルフィニルであるか、
あるいは、
R
6およびR
7は、上記の意味を有し、かつそれと同時に、R
4およびR
5は、一緒に、イミダゾリン環またはイミダゾリジン環内の隣接する2個の炭素原子と一緒になって、C
6〜C
10環状構造を形成し、
但し、L
1は、一般式(Ia
*)、(Ib
*)、(Ic
*)、および(Id
*)とは異なる)
に相当する構造を有するイミダゾリンまたはイミダゾリジン配位子を表す。
【0039】
同様に、式(IIa)および(IIb)に従う配位子が、配位子構造(Ia
*)、(Ib
*)、(Ic
*)、および(Id
*)とは異なるという条件下で、上で定義した置換基R
4、R
5、R
6、R
7のうちの1種以上は、適切であれば、互いに独立に、1種以上の置換基、好ましくは直鎖もしくは分岐のC
1〜C
10アルキル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
1〜C
10アルコキシ、またはC
6〜C
24アリールで置換されていてもよく、これらの上述した置換基は、次に1種以上の官能基、好ましくは、ハロゲン、特に塩素または臭素、C
1〜C
5アルキル、C
1〜C
5アルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される官能基で置換されていてもよい。
【0040】
単に明瞭化を目的として、本出願において一般式(IIa)および(IIb)に示すイミダゾリンまたはイミダゾリジン配位子の構造は、この種の配位子に関する多くの文献に同様に記載されている(IIa’)および(IIb’):
【化17】
の構造と同義であり、これらはイミダゾリンまたはイミダゾリジン配位子のカルベンの特徴を強調したものであることを追記することができる。このことは、下に示す、この構造に関連する好ましい構造(III−a)〜(III−o)および構造(Ia
*)、(Ib
*)、(Ic
*)、および(Id
*)にも当てはまる。
【0041】
後述する全ての好ましい実施形態においては、上述の条件と同じ条件が適用されるものとする。すなわち、どの場合においても、R
4、R
5、R
6、R
7の意味は、式(IIa)および(IIb)(またはそれぞれ(IIa’)および(IIb’)および(III−a)〜(III−o))を有するイミダゾリンまたはイミダゾリジン配位子が、式(Ia
*)、(Ib
*)、(Ic
*)、または(Id
*)を有する配位子とは必ず異なるように選択されるものとする。
【0042】
一般式(I)を有する触媒の好ましい実施形態において、R
4およびR
5は、それぞれ互いに独立に、水素、C
6〜C
24アリール、特に好ましくはフェニル、直鎖または分岐のC
1〜C
10アルキル、特に好ましくはプロピルまたはブチルであるか、あるいは、これらが構造(IIa)(または構造(IIa’))内で結合している炭素原子と一緒になって、C
6〜C
10シクロアルキルまたはC
6〜C
10アリール置換基、好ましくはフェニル環を形成し、上述の置換基はいずれも、次に、直鎖または分岐のC
1〜C
10アルキル、C
1〜C
10アルコキシ、C
6〜C
24アリールからなる群から選択される1つ以上のさらなる置換基、また、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアナート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンからなる群から選択される官能基で置換されていてもよい。
【0043】
一般式(I)を有する触媒の好ましい実施形態においては、置換基R
6およびR
7は、同一であるかまたは異なり、かつそれぞれ、直鎖または分岐のC
1〜C
10アルキル、特に好ましくはi−プロピルまたはネオペンチル、C
3〜C
10シクロアルキル、特に好ましくはアダマンチル、C
6〜C
24アリール、特に好ましくはフェニル、C
1〜C
10アルキルスルホネート、特に好ましくはメタンスルホネート、C
6〜C
10アリールスルホネート、特に好ましくはp−トルエンスルホネートである。
【0044】
上述のR
6およびR
7の意味を有する置換基は、直鎖または分岐のC
1〜C
5アルキル、特にメチルまたはi−プロピル、C
1〜C
5アルコキシ、場合により置換されたアリールからなる群から選択される1、2、又はそれより多いさらなる置換基、また、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアナート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンからなる群から選択される官能基、で置換されていてもよい。
【0045】
特に、置換基R
6およびR
7は、同一であるかまたは異なっており、かつそれぞれ、i−プロピル、ネオペンチル、アダマンチル、メシチル、または2,6−ジイソプロピルフェニルである。
【0046】
特に好ましいイミダゾリンまたはイミダゾリジン配位子は、次に示す構造(III−a)〜(III−o):
【化18】
を有し、式中、Phは、各場合において、フェニル置換基であり、Buは、任意の種類のブチル置換基であり、Mesは、各場合において、2,4,6−トリメチルフェニル置換基であり、かt(iPr)
2Phは、全ての場合において2,6−ジイソプロピルフェニルである。
【0047】
L2の定義:
一般式(I)を有する新規な触媒の一実施形態において、
R
2は、各部分(Ia
*)、(Ib
*)、(Ic
*)、または(Id
*)において、同一であるかまたは異なり、かつH、C
1〜C
10アルキル、C
6〜C
14アリール、ハライド、好ましくはクロリドを表すか、あるいは、2個のR
2が、(Ia
*)、(Ib
*)、(Ic
*)、または(Id
*)部分内のこれらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の縮合した5員環または6員環を形成し、
R
3は、好ましくはC
1〜C
10、より好ましくはC
1〜C
4アルキル、またはC
6〜C
14アリール、より好ましくはフェニルを表し、これらのものは全て非置換であっても、あるいは1種以上の置換基であって、好ましくは、直鎖もしくは分岐のC
1〜C
10アルキル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
1〜C
10アルコキシ、またはC
6〜C
24アリールを表す、1種以上の置換基で置換されていてもよく、これらの置換基は、次に、1種以上の官能基、好ましくは、ハライド、C
1〜C
5アルキル、C
1〜C
5アルコキシ、フェニル、および置換フェニルからなる群から選択される官能基で置換されていてもよい。
【0048】
式(Ia
*)および(Ib
*)に従う配位子は単座配位子として機能することができるが、場合によっては、その構造次第で、および錯体中の他の配位子次第で、二座または三座配位子としても機能することもできる。式(Ic
*)および(Id
*)に従う配位子は二座配位子として機能することができるが、場合によっては、その構造次第で、および錯体中の他の配位子次第で、三座配位子としても機能することができる。
【0049】
好ましくは、L
2は、構造(Ia
*)または(Ib
*)を有する配位子を表し、式中、
nは、同一であるかまたは異なり、かつ1〜10の範囲の整数を表し、および
Dは、同一であるかまたは異なり、かつC
1〜C
20アルコキシ、C
6〜C
24アリールオキシ、またはC
1〜C
10チオエーテルを表し、
R
2およびR
3は、上述の一般的意味又は好ましい意味を有する。
【0050】
より好ましい実施形態においては、L
2は、構造(Ia
*)または(Ib
*)を有する配位子を表し、式中、
nは、同一であるかまたは異なり、かつ1〜5の範囲の整数を表し、および
Dは、同一であるかまたは異なり、かつC
1〜C
10アルコキシまたはC
6〜C
14アリールオキシを表し、
R
2およびR
3は、上述の一般的意味又は好ましい意味を有する。
【0051】
特に好ましい実施形態においては、L
2は、構造(Ia
*−1)または(Ib
*−2):
【化19】
を有する配位子を表す。
【0052】
別の好ましい実施形態においては、L
2は、構造(Ic
*)または(Id
*)を有する配位子を表し、式中、
nは、同一であるかまたは異なり、かつ1〜10の範囲の整数を表し、
Eは、同一であるかまたは異なり、かつ酸素または硫黄を表し、および
R
3は、同一であるかまたは異なり、かつC
1〜C
20アルキルまたはC
6〜C
24アリールを表し、
R
2およびR
3は、上述の一般的意味又は好ましい意味を有する。
【0053】
より好ましい実施形態において、L
2は、構造(Ic
*)または(Id
*)を有する配位子であり、式中、
nは、同一であるかまたは異なり、かつ1〜5の範囲の整数を表し、
Eは、同一であるかまたは異なり、かつ酸素または硫黄を表し、および
R
3は、同一であるかまたは異なり、かつC
1〜C
10アルキルまたはC
6〜C
14アリールを表し、
R
2およびR
3は、上述の一般的意味又は好ましい意味を有する。
【0054】
特に好ましい実施形態においては、L
2は、構造:
【化20】
を有する配位子を表す。
【0055】
R
1の定義:
一般式(I)の新規な触媒構造において、R
1は、非置換または置換C
6〜C
14アリール、N−複素環カルベン配位子、またはP(R’)
3(式中、R’は、同一であるかまたは異なり、かつ置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐のC
1〜C
14アルキル、置換もしくは非置換のC
6〜C
24アリール、または置換もしくは非置換のC
3〜C
20シクロアルキルのいずれかを表す)を表す。
【0056】
好ましくは、R
1は、非置換のC
6〜C
14アリールを表すか、またはF、Cl、Br、I、NO
2、およびCH
3からなる群から選択される1、2、3、4、5個もしくはそれより多い置換基で置換されたC
6〜C
14アリールを表す。一般式(I)の新規な触媒構造の非常に好ましい実施形態においては、R
1は、非置換のフェニル環またはp位にF、Cl、Br、I、NO
2、およびCH
3からなる群から選択される1個の置換基を有するフェニル環、またはF、Cl、Br、Iおよびこれらの混合物から選択される5個の置換基を有するフェニル環のいずれかである。
【0057】
Rの定義:
一般式(I)を有する新規な触媒構造において、Rは、置換または非置換の直鎖または分岐のC
1〜C
14、好ましくはC
1〜C
8アルキル、より好ましくはC
1〜C
5アルキルを意味する。一般式(I)を有する新規な触媒構造の好ましい一実施形態においては、Rは、非置換の直鎖もしくは分岐のC
1〜C
5アルキルであるか、またはC
6〜C
14アリール(最も好ましくはフェニル)で置換された直鎖もしくは分岐のC
1〜C
5アルキル(好ましくはメチル)であるかのいずれかである。
【0058】
好ましい実施形態においては、本発明は、一般式(I)に従うルテニウム系錯体であって、式中、
X
1は、ハライド(より好ましくは、フルオリド、クロリド、ブロミド、またはヨージド)、ホスフェート、ボレート、カルボキシレート、アセテート、トリフルオロアセテート、トリフルオルメチルスルホネート、またはトシラートを意味し、
Yは、OまたはS、より好ましくはSであり、
R
1は、非置換のC
6〜C
14アリールを表すか、またはF、Cl、Br、I、NO
2、およびCH
3からなる群から選択される、1、2、3、4、5個もしくはそれより多い置換基で置換されたC
6〜C
14アリールを表し、
Rは、非置換の直鎖もしくは分岐のC
1〜C
5アルキルであるか、またはC
6〜C
14アリール(最も好ましくはフェニル)で置換された直鎖もしくは分岐のC
1〜C
5−アルキル(より好ましくはメチル)を表し、
L
1は、一般式(IIa)または(IIb):
【化21】
(式中、
R
4、R
5、R
6、R
7は、同一であるかまたは異なり、かつそれぞれ、水素、直鎖もしくは分岐のC
1〜C
30アルキル、C
3〜C
20シクロアルキル、C
2〜C
20アルケニル、C
2〜C
20アルキニル、C
6〜C
24アリール、C
1〜C
20カルボキシレート、C
1〜C
20アルコキシ、C
2〜C
20アルケニルオキシ、C
2〜C
20アルキニルオキシ、C
6〜C
20アリールオキシ、C
2〜C
20アルコキシカルボニル、C
1〜C
20アルキルチオ、C
6〜C
20アリールチオ、C
1〜C
20アルキルスルホニル、C
1〜C
20アルキルスルホネート、C
6〜C
20アリールスルホネート、またはC
1〜C
20アルキルスルフィニルを表すか、
あるいは、
R
6およびR
7は上記の意味を有し、かつそれと同時に、R
4およびR
5は、一緒に、イミダゾリンまたはイミダゾリジン環内のそれらに隣接する2個の炭素原子と一緒になってC
6〜C
10環状構造を形成し、
但し、L
1は、一般式(Ia
*)、(Ib
*)、(Ic
*)、および(Id
*)とは異なる)
に相当する構造を有するイミダゾリンまたはイミダゾリジン配位子を表し、
L
2は、構造(Ia
*)または(Ib
*):
(式中、
nは、同一であるかまたは異なり、かつ1〜5の範囲の整数であり、および
Dは、同一であるかまたは異なり、かつC
1〜C
10アルコキシまたはC
6〜C
14アリールオキシを表す)
を有する配位子、または
構造(Ic
*)または(Id
*):
(式中、
nは、同一であるかまたは異なり、かつ1〜5の範囲の整数であり、および
Eは、同一であるかまたは異なり、かつ酸素または硫黄を表し、および
R
3は、同一であるかまたは異なり、好ましくは、C
1〜C
10アルキル(より好ましくはC
1〜C
4アルキル)またはC
6〜C
14アリール(より好ましくはフェニル)を表し、上述のものはいずれも、非置換であっても、あるいは1種以上の置換基であって、好ましくは、直鎖もしくは分岐のC
1〜C
10アルキル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
1〜C
10アルコキシ、またはC
6〜C
24アリールを表す1種以上の置換基で置換されていてもよく、これらの置換基は、次に、1種以上の官能基、好ましくは、ハライド、C
1〜C
5アルキル、C
1〜C
5アルコキシ、フェニル、および置換フェニルからなる群から選択される官能基で置換されていてもよい)
を有する配位子のいずれかを表し、
ここで、R
2は、各部分(Ia
*)、(Ib
*)、(Ic
*)、または(Id
*)において、同一であるかまたは異なり、かつH、C
1〜C
10アルキル、C
6〜C
14アリール、ハライド、好ましくはクロリドを表すか、あるいは、2個のR
2が、(Ia
*)、(Ib
*)、(Ic
*)または(Id
*)部分内のこれらが結合している2個の隣接する炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の縮合した5員環または6員環を形成する、
錯体に関する。
【0059】
本発明は、非常に好ましい実施形態においては、次に示す式(I−1)〜(I−8)を有する錯体触媒に関する。
【化22】
(式中、「Ph」はフェニルを意味し、「Me」はメチルを意味し、「Mes」は2,4,5トリメチルフェニルを意味する。)
【0060】
一般式(I)に従う錯体触媒の合成
上の一般式(I)を有する触媒化合物は、L
1L
2L
3RuHClに適切なビニルスルフィドまたは対応するエーテル類縁体を反応させて、この金属水素化物に挿入することによって、金属アルキリデンを形成することにより、合成することができる。クロリドの交換は、(CH
3)
3SiX
2を用いることによって行われる。この反応を次のスキームに示す:
【化23】
(式中、
L
1、L
2、Y、
及びR1は、式(I)に関する定義と同じ意味を有し、
RはRが結合する−CH2−と一緒になって、置換または非置換の直鎖または分岐のC1〜C14アルキルを意味し、
L
3は、P(R’)
3(R’は、同一であるかまたは異なり、かつ置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐のC
1〜C
14アルキル、置換もしくは非置換のC
6〜C
24アリール、または置換もしくは非置換のC
3〜C
20シクロアルキルのいずれかを表す)、好ましくは、PPh
3、P(p−Tol)
3、P(o−Tol)
3、PPh(CH
3)
2、P(p−FC
6H
4)
3、P(p−CF
3C
6H
4)
3、P(C
6H
4−SO
3Na)
3、P(CH
2C
6H
4SO
3Na)
3、P(イソプロピル)
3、P(CHCH
3(CH
2CH
3))
3、P(シクロペンチル)
3、P(シクロヘキシル)
3、P(ネオペンチル)
3、またはP(ベンジル)
3を表す)。
【0061】
したがって本発明は、一般式(I)の錯体触媒を調製するための方法であって、一般式(IV):
【化24】
(式中、
L
1およびL
2は、式(I)に関する定義と同じ意味を有し、
L
3は、P(R’)
3(R’は、同一であるかまたは異なっており、かつ置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐のC
1〜C
14アルキル、置換もしくは非置換のC
6〜C
24アリール、または置換もしくは非置換のC
3〜C
20シクロアルキルのいずれかを表す)、好ましくは、PPh
3、P(p−Tol)
3、P(o−Tol)
3、PPh(CH
3)
2、P(p−FC
6H
4)
3、P(p−CF
3C
6H
4)
3、P(C
6H
4−SO
3Na)
3、P(CH
2C
6H
4−SO
3Na)
3、P(イソプロピル)
3、P(CHCH
3(CH
2CH
3))
3、P(シクロペンチル)
3、P(シクロヘキシル)
3、P(ネオペンチル)
3またはP(ベンジル)
3を表す)
の化合物を、
一般式(V):
【化25】
(式中、YおよびR
1は、式(I)に関する定義と同じ意味を有する)
の化合物と反応させることにより、一般式(
VI’):
【化26】
(式中、L
1、L
2、R
1、
及びYは、式(I)に関する定義と同じ意味を有
し、R−
CH2−部分は、置換または非置換の直鎖または分岐のC1〜C14アルキルを意味する)
の化合物を得て、次いでこの化合物を、
(CH
3)
3SiX
2
(式中、X
2は、式(I)に
おけるX1に関する定義と同じ意味を有する)
を用いて変換することにより、一般式(I)の化合物を得ることを含む方法に関する。
【0062】
本発明のプロセスによる一般式(I)の触媒錯体の合成は有機溶媒中で行うことができる。好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ブロモベンゼン、またはクロロベンゼンが使用される。この反応は、通常、20〜50℃の範囲、好ましくは25℃〜45℃の範囲の温度で行われる。それに続くX
2によるクロリドの交換も、有機溶媒中、好ましくはベンゼン中で行われ、通常は、同じく、20〜50℃の範囲、好ましくは25℃〜45℃の範囲の温度が用いられる。
【0063】
化合物(IV)、すなわちL
1L
2L
3RuHClの合成は、国際公開第2013/024119号パンフレットに概説されている手順に従い行うことができる。
【0064】
このような合成は、
a)化合物(VIIa)、(VIIb)、(VIIc)、および(VIId):
【化27】
【化28】
(式(VIIa)、(VIIb)、(VIIc)、および(VIId)中、
nは、同一であるかまたは異なり、かつ1〜20の範囲の整数を表し、
Dは、同一であるかまたは異なり、かつヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオール、チオラート、チオエーテル、セレノール、セレノエーテル、アミン、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、アルシン、スルホキシド、スルホン、アルキル、ホスフィンイミン、アミノホスフィン、カルベン、セレノキシド、イミダゾリン、イミダゾリジン、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド、ホスフィンセレニド、ケトン、エステル、ピリジル、置換ピリジル、または2個の電子供与体として作用することができる任意の基を表し、
R
3は、同一であるかまたは異なり、かつH、アルキル、またはアリールを表し、および
Eは、同一であるかまたは異なり、かつ−O−、−S−、−Se−、−N(R)−、−P(R)−、−As(R)−、−S(=O)−、−PR(=S)−、−PR(=O)−、−C(=O)−、−C(=S)−、2,6−ピリジレン、置換2,6−ピリジレン、および2個の電子供与体として作用することができる他の任意の2価の基からなる群から選択される、2個の電子供与体として作用することができる2価の基を表し、および
R
2は、各化合物(VIIa)、(VIIb)、(VIIc)、または(VIId)中において同一であるかまたは異なり、かつH、アルキル、アリール、ハライド、好ましくはクロリドを表すか、あるいは、2個のR
2が、各化合物(VIIa)、(VIIb)、(VIIc)、または(VIId)内でこれらが結合している2個の隣接する炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の縮合した5員環または6員環を形成する)
からなる群から選択される一般式L
2AgClの化合物を、一般式(VIII):
【化29】
(式中、
L
3は、P(R’)
3を表し、R’は同一であるかまたは異なり、かつ置換もしくは非置換の、直鎖もしくは分岐のC
1〜C
14アルキル、置換もしくは非置換のC
6〜C
24アリール、または置換もしくは非置換のC
3〜C
20シクロアルキルのいずれか、好ましくは、PPh
3、P(p−Tol)
3、P(o−Tol)
3、PPh(CH
3)
2、P(p−FC
6H
4)
3、P(p−CF
3C
6H
4)
3、P(C
6H
4−SO
3Na)
3、P(CH
2C
6H
4−SO
3Na)
3、P(イソプロピル)
3、P(CHCH
3(CH
2CH
3))
3、P(シクロペンチル)
3、P(シクロヘキシル)
3、P(ネオペンチル)
3またはP(ベンジル)
3を表す)
の錯体を用いて変換することにより、一般式(IX):
【化30】
(式中、L
2およびL
3は、一般式(I)に関し上に概説した意味と同じ意味を有する)を有する錯体を得るステップと、
b)このような一般式(IX)を有する錯体を、化合物L
1(式中、L
1は、一般式(I)に関する定義と同じ意味を有する)を用いて変換することにより、一般式(X):
【化31】
(式中、L
1、L
2およびL
3は、一般式(I)に関し上に概説した意味と同じ意味を有する)
を有する錯体を得るステップと
を含む。
【0065】
出発化合物であるL
2AgClは、例えば、国際公開第2013/024119号パンフレットに開示されている、当業者に知られている方法に従って容易に調製することができる。
【0066】
メタセシス:
さらに本発明は、C=C二重結合を含む少なくとも1種の基質を、一般式(I)に従う新規な錯体触媒と接触させて、メタセシス反応を行う方法を提供する。メタセシス反応は、例えば、閉環メタセシス(RCM)、クロスメタセシス(CM)、または開環メタセシス(ROMP)であることができる。この目的のためには、メタセシスに付すべき1種または複数種の基質を、式(I)に従う錯体触媒に接触させて反応させることによって行われる。
【0067】
好ましい実施形態においては、本発明の方法は、分子量M
wが低減されたニトリルゴムの調製であって、出発ニトリルゴムを、一般式(I)に従う錯体触媒の存在下にクロスメタセシス反応に付すことによる調製に関する。
【0068】
メタセシスに付す化合物:
少なくとも1個のC=C二重結合を含む任意の種類の化合物をメタセシス反応に付すことができる。
【0069】
本発明のプロセスは、好ましくは、いわゆるニトリルゴムに適用することができる。ニトリルゴム(「NBR」)とは、少なくとも1種の共役ジエンからなる繰り返し単位と、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルモノマーからなる繰り返し単位と、適切であれば、1種以上のさらなる共重合可能なモノマーからなる繰り返し単位とを含む共重合体または三元重合体を指す。
【0070】
この種のニトリルゴムの共役ジエンは、いかなる性質を有するものであってもよい。好ましくは、(C
4〜C
6)共役ジエンが用いられる。1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、またはこれらの混合物が特に好ましい。1,3−ブタジエンもしくはイソプレンまたはこれらの混合物を使用することが特に好ましい。1,3−ブタジエンが非常に好ましい。
【0071】
α,β−不飽和ニトリルモノマーとして、任意の公知のα,β−不飽和ニトリルを用いることが可能であり、(C
3〜C
5)−α,β−不飽和ニトリル、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、またはこれらの混合物が好ましい。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0072】
したがって、本発明によるメタセシスに付すのに特に好ましいニトリルゴムは、アクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンの共重合体である。
【0073】
共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルに加えて、当業者に知られている1種以上のさらなる共重合可能なモノマー、例えば、カルボキシル基を含むターモノマー、例えば、α,β−不飽和モノカルボン酸、そのエステルもしくはアミド、α,β−不飽和ジカルボン酸、そのモノエステルもしくはジエステル、またはこれらの対応する無水物もしくはアミド、を用いることが可能である。
【0074】
α,β−不飽和モノカルボン酸として、アクリル酸およびメタクリル酸を用いることが可能である。
【0075】
α,β−不飽和モノカルボン酸のエステル、好ましくは、そのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを用いることも可能である。アルキルエステル、特に、α,β−不飽和モノカルボン酸のC
1〜C
18アルキルエステルが好ましい。アルキルエステル、特に、アクリル酸またはメタクリル酸のC
1〜C
18アルキルエステル、より具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、およびメタクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。同じく、α,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルも好ましく、アクリル酸またはメタクリル酸のアルコキシアルキルエステルがより好ましく、その中でも特に、アクリル酸またはメタクリル酸のC
2〜C
12アルコキシアルキルエステルが好ましく、アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルが非常に好ましい。上述したものなどのアルキルエステルと、例えば上述した形態のアルコキシアルキルエステルとの混合物を使用することも可能である。シアノアルキル基のC原子の数が2〜12個であるアクリル酸シアノアルキルおよびメタクリル酸シアノアルキル、好ましくはアクリル酸α−シアノエチル、アクリル酸β−シアノエチル、およびメタクリル酸シアノブチルを用いることも可能である。ヒドロキシアルキル基のC原子の数が1〜12個であるアクリル酸ヒドロキシアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキル、好ましくはアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、およびアクリル酸3−ヒドロキシプロピルを用いることも可能であり、また、フッ素置換ベンジル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、好ましくはアクリル酸フルオロベンジルおよびメタクリル酸フルオロベンジルを用いることも可能である。フルオロアルキル基を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、好ましくはアクリル酸トリフルオロエチルおよびメタクリル酸テトラフルオロプロピルを用いることも可能である。アミノ基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステル、例えば、アクリル酸ジメチルアミノメチルおよびアクリル酸ジメチルアミノエチルを使用することも可能である。
【0076】
さらに、共重合可能なモノマーとして、α,β−不飽和ジカルボン酸、好ましくは、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびメサコン酸を用いることも可能である。
【0077】
さらに、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物、好ましくは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、および無水メサコン酸を使用することも可能である。
【0078】
さらに、α,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルまたはジエステルを使用することも可能である。
【0079】
これらのα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルまたはジエステルは、例えば、アルキルエステル、好ましくはC
1〜C
10アルキルエステル、より具体的には、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、またはn−ヘキシルエステル;アルコキシアルキルエステル、好ましくはC
2〜C
12アルコキシアルキル、より好ましくはC
3〜C
8アルコキシアルキルエステル;ヒドロキシアルキルエステル、好ましくはC
1〜C
12ヒドロキシアルキル、より好ましくはC
2〜C
6ヒドロキシアルキルエステル;シクロアルキルエステル、好ましくはC
5〜C
12シクロアルキル、より好ましくはC
6〜C
12シクロアルキルエステル;アルキルシクロアルキルエステル、好ましくはC
6〜C
12アルキルシクロアルキル、より好ましくはC
7〜C
10アルキルシクロアルキルエステル;アリールエステル、好ましくはC
6〜C
14アリールエステルであることができ、これらのエステルはモノエステルであってもジエステルであってもよく、ジエステルの場合は、エステルが混合エステルであることも可能である。
【0080】
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、アクリル酸2−プロピル−ヘプチル、および(メタ)アクリル酸ラウリルである。より具体的には、アクリル酸n−ブチルが用いられる。
【0081】
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。より具体的には、アクリル酸メトキシエチルが用いられる。
【0082】
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のヒドロキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、および(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルである。
【0083】
α,β−不飽和モノカルボン酸の他のエステルで他に用いられるものとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシメチル)アクリルアミド、およびウレタン(メタ)アクリレートがある。
【0084】
α,β−不飽和ジカルボン酸モノエステルの例には、
・マレイン酸モノアルキルエステル、好ましくは、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、およびマレイン酸モノ−n−ブチル;
・マレイン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくは、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロへプチル;
・マレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくは、マレイン酸モノメチルシクロペンチルおよびマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;
・マレイン酸モノアリールエステル、好ましくはマレイン酸モノフェニル;
・マレイン酸モノベンジルエステル、好ましくはマレイン酸モノベンジル;
・フマル酸モノアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、およびフマル酸モノ−n−ブチル;
・フマル酸モノシクロアルキルエステル、好ましくは、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびフマル酸モノシクロヘプチル;
・フマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくは、フマル酸モノメチルシクロペンチルおよびフマル酸モノエチルシクロヘキシル;
・フマル酸モノアリールエステル、好ましくはフマル酸モノフェニル;
・フマル酸モノベンジルエステル、好ましくはフマル酸モノベンジル;
・シトラコン酸モノアルキルエステル、好ましくは、シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、およびシトラコン酸モノ−n−ブチル;
・シトラコン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくは、シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、およびシトラコン酸モノシクロヘプチル;
・シトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくは、シトラコン酸モノメチルシクロペンチルおよびシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・シトラコン酸モノアリールエステル、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;
・シトラコン酸モノベンジルエステル、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;
・イタコン酸モノアルキルエステル、好ましくは、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、およびイタコン酸モノ−n−ブチル;
・イタコン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくは、イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、およびイタコン酸モノシクロヘプチル;
・イタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくは、イタコン酸モノメチルシクロペンチルおよびイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・イタコン酸モノアリールエステル、好ましくはイタコン酸モノフェニル;
・イタコン酸モノベンジルエステル、好ましくはイタコン酸モノベンジル;
・メサコン酸モノアルキルエステル、好ましくはメサコン酸モノエチルエステル
が包含される。
【0085】
α,β−不飽和ジカルボン酸ジエステルとして、上述のモノエステルの群をベースとするジエステル類縁体を用いることが可能であり、エステル基は、化学的に異なる基であってもよい。
【0086】
好ましくは、メタセシスに付される基質は、少なくとも1種の共役ジエンの繰り返し単位と、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルの繰り返し単位と、適切であれば、1種以上のさらなる共重合可能なモノマーの繰り返し単位とを含むニトリルゴムであり、好ましくは、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の共役ジエンの繰り返し単位と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルの繰り返し単位とを含み、任意選択により場合によっては、α,β−不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、これらのエステルまたはアミドからなる群から選択される1種以上のさらなる共重合可能なモノマーの繰り返し単位を含んでもよいニトリルゴムである。
【0087】
使用されるNBRポリマー中の共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルのモノマー比は幅広い範囲内で変えることができる。1種または複数種の共役ジエン全体の比率は、通常は、ポリマー全体を基準として40〜90重量%の範囲、好ましくは50〜85重量%の範囲にある。1種または複数種のα,β−不飽和ニトリル全体の比率は、通常、ポリマー全体を基準として10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%である。それぞれのモノマーの比率の総和は100重量%までである。追加のさらなるモノマーを、ポリマー全体を基準として0〜40重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%の量で存在させることができる。この場合、1種もしくは複数種の共役ジエンおよび/または1種もしくは複数種のα,β−不飽和ニトリルのうちの対応する比率がさらなるモノマーの比率に置き換えられ、その場合も、全てのモノマーの比率の総和は100重量%までとなる。
【0088】
上述したモノマーを重合することによるこの種のニトリルゴムの調製は当業者によく知られており、文献に包括的に記載されている。
【0089】
本発明の目的に使用可能なニトリルゴムは、例えば、Perbunan(登録商標)およびKrynac(登録商標)の商標でLanxess Deutschland GmbHから市販されている製品である。
【0090】
水素化に使用することができるニトリルゴムは、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が30〜70の範囲、好ましくは30〜50の範囲にある。これは、重量平均分子量Mwが150000〜500000の範囲、好ましくは180000〜400000の範囲にあることに相当する。使用されるニトリルゴムの多分散度PDI=M
w/M
n(M
nは数平均分子量である)は、通常、2.0〜6.0の範囲、好ましくは2.0〜4.0の範囲にある。
【0091】
メタセシス反応条件:
メタセシス分解は、通常、10℃〜150℃の範囲の温度、好ましくは20℃〜100℃の範囲の温度で行われる。この反応は、通常、標準圧力下で行われる。
【0092】
メタセシス反応は、使用される錯体触媒を失活させず、かつ、反応に他の何らかの形態の悪影響を及ぼすこともない好適な溶媒中で行うことができる。好ましい溶媒には、これらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、シクロヘキサン、およびクロロベンゼンが包含される。特に好ましい溶媒はクロロベンゼンである。コオレフィン自体が溶媒として作用することができる場合もあり(例えば、1−ヘキセンの場合)、さらなる溶媒の追加を省くこともできる。
【0093】
使用されるニトリルゴムを基準とする一般式(I)の錯体触媒の量は、具体的な錯体触媒の性質および触媒活性に応じて変わる。錯体触媒および基質は、通常、1:226〜1:2.5、好ましくは1:43〜1:3、特に好ましくは1:9〜1:4.5のモル比で用いられる。
【0094】
本発明による錯体触媒がニトリルゴムのメタセシスに用いられる場合、ニトリルゴムの量に対する一般式(I)を有する化合物の量は、通常、0.005〜0.25phrの範囲、好ましくは0.00667〜0.1334phrの範囲、より好ましくは0.0333〜0.0667の範囲にある(phr=分解すべきニトリルゴム100重量部当たりの重量部)。ルテニウム系錯体は、さらにルイス酸と併用することができる。これは、触媒反応を行うため、特に、このようなルテニウム系錯体およびルイス酸を含む触媒系の存在下でメタセシス反応を行うための、本発明の実用的な実施形態である。
【0095】
したがって本発明は、一般式(I)のルテニウム系錯体および少なくとも1種のルイス酸、好ましくは一般式(Z):
B(R
8)
3 (Z)
(式中、
R
8は、同一であり、ハロゲン(より好ましくは、F、Cl、I、またはBr)、非置換もしくは置換C
6〜C
14アリール(より好ましくは、フェニル)、またはF、ClおよびCF
3からなる群から選択される1、2、3、4、もしくは5個の置換基で置換されたフェニル(さらに好ましくは、C
6F
5)、またはC
6〜C
14ヘテロアリール(6〜14個のC原子の少なくとも1個が、1個のヘテロ原子、好ましくは窒素もしくは酸素に置き換えられているもの)である)
の化合物を含む触媒系にも関する。
【0096】
特に好ましいR
8は、同一であり、上述した一般的意味、好ましい意味、およびより好ましい意味を有するものである。
【0097】
最も好ましくは、BCl
3、BF
3、BI
3、またはB(C
6F
5)
3が添加される。
【0098】
この種の一般式(Z)の化合物が用いられる場合、一般式(Z)の化合物対一般式(I)の錯体触媒のモル比は、0.5:1〜15:1の範囲、好ましくは1:1〜10:1の範囲、より好ましくは1:1〜2:1の範囲である。
【0099】
NBRのメタセシスに用いる場合、一般式(Z)の化合物は、通常、錯体触媒の溶液に添加される。
【0100】
NBRメタセシスは、コオレフィンの非存在下または存在下に実施することができる。好ましくは、コオレフィンは、直鎖または分岐のC
2〜C
16オレフィンである。好適なオレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、スチレン、1−ヘキセン、および1−オクテンである。好ましくは、1−ヘキセンまたは1−オクテンが使用される。コオレフィンが液体である場合(例えば、1−ヘキセンの場合)、コオレフィンの量は、用いられるNBRを基準として、好ましくは0.2〜20重量%の範囲である。コオレフィンが気体である場合(例えば、エチレンの場合)、コオレフィンの量は、好ましくは、室温で反応槽内に1×10
5Pa〜1×10
7Paの範囲の圧力、好ましくは5.2×10
5Pa〜4×10
6Paの範囲の圧力が確立されるように選択される。
【0101】
メタセシスの反応混合物の、使用されるニトリルゴムの濃度は決定的に重要な要素ではないが、反応混合物の粘度が過度に高くなること及びそれに伴う混合の問題によって悪影響が及ぼされるべきではないことには当然留意しなければならない。反応混合物中のNBRの濃度は、反応混合物全体を基準として、好ましくは1〜25重量%の範囲、特に好ましくは5〜20重量%の範囲にある。
【0102】
反応時間は、多くの要素、例えば、NBRの種類、触媒の種類、使用される触媒の濃度、および反応温度に左右される。反応は、通常、標準条件下で5時間以内に完了する。メタセシスの進行は、標準的な分析方法、例えば、GPC測定によるか、または粘度を測定することによって監視することができる。
【実施例】
【0103】
I 錯体の合成
フェニルビニルスルフィドは購入したままの状態で用いた。その他のビニルスルフィドは全て文献に記載されている手順にしたがって合成した。
【0104】
p−フルオロフェニルビニルスルフィドの合成
Can.J.Chem,1977,55,548−551にしたがって合成を行った。
【0105】
p−ニトロフェニルビニルスルフィドの合成
J.Org,Chem.1980,45,1046−1053にしたがって合成を行った。
【0106】
フェニルビニルエーテルの合成
J.Mol.Catal.A;Chem,2005,226,141−147にしたがって合成を行った。
【0107】
水で促進される1−ヘキシンの位置選択的ヒドロチオール化による(C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)の合成:
Can.J.Chem.2009,87,1605−1609にしたがい、次に示すように合成を行った;1−ヘキシン(0.86mL,7.48mmol)およびペンタフルオロチオフェノール(1.00mL,7.50mmol)の混合物をH
2O(6mL)中、室温で4時間撹拌した。反応混合物をEt
2O(3×20mL)で抽出し、エーテル抽出物をMgSO
4上で乾燥させた。減圧下で溶媒を除去し、(E)体および(Z)体の混合物を無色透明な液体として得た(1.92g,91%)。
1H NMR(400MHz,C
6D
6);異性体1:δ5.80−5.74(m,2H,(C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),1.81(m,2H,(C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),1.13(m,4H,(C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),0.79(m,3H,(C
6F
5)SCHCH(C
4H
9))。異性体2:δ5.69(d,
3J
HH=9Hz,1H,(C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),5.55(dt,
3J
HH=9Hz,
3J
HH=7Hz,1H,(C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),2.19(m,2H,(C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),1.26(m,4H,(C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),0.84(m,3H,(C
6F
5)SCHCH(C
4H
9))
19F{
1H}NMR(178MHz,C
6D
6);δ−133.94(m,2F,o−F),−154.03(t,
3J
FF=21Hz,1F,p−F),−161.80(m,2F,m−F)
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
6):δ146.9(dm,
1J
CF=247Hz,C
6F
5),141.2(dm,
1J
CF=252Hz,C
6F
5),137.6(dm,
1J
CF=252Hz,C
6F
5)。異性体1:134.1((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),120.5((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),31.0((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),28.6((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),22.3((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),13.7((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9))。異性体2;138.0((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),118.0((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9))),32.5((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),30.9((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),22.2((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9)),13.7((C
6F
5)SCHCH(C
4H
9))
【0108】
水により促進される1−ペンチンの位置選択的ヒドロチオール化による(C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)の合成:
Can.J.Chem.2009,87,1605−1609にしたがい、次に示すように合成を行った;1−ペンチン(0.74mL,7.50mmol)およびペンタフルオロチオフェノール(1.00mL,7.50mmol)の混合物をH
2O(6mL)中、室温で4時間撹拌した。反応混合物をEt
2O(3×20mL)で抽出し、エーテル抽出物をMgSO
4上で乾燥させた。減圧下で溶媒を除去することにより(E)体および(Z)体の混合物を無色透明な液体として得た(1.61g,80%)。
1H NMR(400MHz,C
6D
6):異性体1:δ5.91−5.84(m,2H,(C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),2.00(m,2H,(C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),1.34(m,2H,(C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),0.82(m,3H,(C
6F
5)SCHCH(C
3H
7))。異性体2:δ5.84(d,
3J
HH=9Hz,1H,(C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),5.76(m,1H,(C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),2.21(m,2H,(C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),1.41(m,2H,(C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),0.89(m,3H,(C
6F
5)SCHCH(C
3H
7))
19F{
1H}NMR(178MHz,C
6D
6):δ−132.99(m,2F,o−F),−153.05(t,
3J
FF=21Hz,1F,p−F),−161.00(m,2F,m−F)
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
6):δ147.2(dm,
1J
CF=247Hz,C
6F
5),141.2(dm,
1J
CF=252Hz,C
6F
5),137.7(dm,
1J
CF=252Hz,C
6F
5)。異性体1:134.2((C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),120.8((C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),34.7((C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),22.1((C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),13.4((C
6F
5)SCHCH(C
3H
7))。異性体2:137.7((C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),118.7((C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),35.0((C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),21.9((C
6F
5)SCHCH(C
3H
7)),13.3((C
6F
5)SCHCH(C
3H
7))
【0109】
錯体(1)を、国際公開第2013/024119A号パンフレットの実施例A3にしたがって合成した。
【0110】
錯体(3)を国際公開第2013/024119A号パンフレットの実施例A3と同様の方法で合成した。
【0111】
錯体(6)を国際公開第2013/024119A号パンフレットの実施例A4にしたがって合成した。
【0112】
「IMes−Cl
2」は、
【化32】
を意味し、
「IMes」は、
【化33】
を意味し
「SIMes」は、
【化34】
を意味する。
【0113】
I.1 錯体(2)の合成
【化35】
錯体(1)(0.150g,0.177mmol)のTHF(5mL)溶液にTHF(5mL)中のIMes(0.105g,0.354mmol)を加え、混合物を60℃で24時間加熱した。揮発性物質を減圧下で全て除去した。生成物をトルエン(10mL)で抽出し、セライトで濾過した。溶液を2mLに濃縮し、この赤色溶液にペンタン(15mL)を加えて生成物を析出させた。フリット上に錯体(2)が赤色固体として得られ、これを真空乾燥させ(0.114g,73%)、X線による構造決定に適した結晶をトルエン/ペンタンから25℃で成長させた。
1H NMR(400MHz,C
6D
6):δ7,54(t,
3J
HH=8Hz,6H,PPh
3),7.39(m,1H,IMes−CH),7.04(m,2H,Mes−CH),6.99−6.90(m,13H,PPh
3+IMes−CH+Mes−CH+OCO−CH),6.66(d,
3J
HH=2Hz,OCO−CH),4.68(dd,
2J
HH=15Hz,
3J
HH=3Hz,1H,OCO−CH
2),3.90(m,1H,OCO−CH),2.92−2.10(m,30H,OCO−CH
3+OCO−CH
2+Mes−CH
3),−28.12(d,
2J
PH=26Hz,1H,Ru−H)
31P{
1H}NMR(161MHz,C
6D
6):δ43.9(s,PPh
3)
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
6):δ141.3(d,
1J
PC=30Hz,C
ipso,PPh
3),137.3(C
ipso),134.9(d,
2J
PC=11Hz,o−C,PPh
3),134.3(IMes−CH),134.1(Mes−CH),128.9(d,
4J
PC=2Hz,p−C,PPh
3),128.8(Mes−CH),128.4(IMes−CH),127.6(d,
3J
PC=8Hz,m−C,PPh
3),119.9(OCO−CH),118.4(OCO−CH),72.6(OCO−CH
2),71.4(OCO−CH
2),58.2(OCO−CH
3),57.9(OCO−CH
3),48.0(OCO−CH
2),47.5(OCO−CH
2),21.3(Mes−CH
3)
【0114】
I.2 錯体(4)の合成
【化36】
錯体(3)(0.100g,0.114mmol)のTHF(5mL)溶液にTHF(5mL)中のSIMes(0.070g,0.228mmol)を加え、混合物を50℃で24時間加熱した。揮発性物質を減圧下で全て除去した。生成物をトルエン(10mL)で抽出し、セライトで濾過した。溶液を2mLに濃縮し、この赤色溶液にペンタン(15mL)を加えることにより生成物を析出させた。フリット上に錯体(4)を赤色固体として回収し、真空乾燥させた(0.076g,73%)。
1H NMR(400MHz,C
6D
6):δ7.52(t,
3J
HH=8Hz,6H,PPh
3),6.94(m,11H,PPh
3+Mes−CH),6.82(s,1H,Mes−CH),6.51(s,1H,Mes−CH),4.43(dt,
2J
HH=16Hz,
3J
HH=4Hz,1H,OCO−CH
2),3.60(m,1H,OCO−CH
2),3.39−3.16(m,8H,OCO−CH
2+SIMes−CH
2),2.99(s,6H,OCO−CH
3+Mes−CH
3),2.83(br s,5H,Mes−CH
3+OCO−CH
2),2.64(s,6H,OCO−CH
3+Mes−CH
3),2.33(s,3H,Mes−CH
3),2.13(s,3H,Mes−CH
3),1.92(s,3H,OCO−4,5−CH
3),1.83(s,3H,OCO−4,5−CH
3),1.59(s,3H,Mes−CH
3),−27.43(d,
2J
PH=27Hz,1H,Ru−H)
31P{
1H}NMR(161MHz,C
6D
6);δ36.5(s,PPh
3)
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
6);δ141.2(d,
1J
PC=29Hz,C
ipso,PPh
3),139.7(C
ipso),135.0(d.
2J
PC=11Hz,o−C,PPh
3),128.9(d,
4J
PC=2Hz,p−C,PPh
3),128.6(C
ipso),127.5(d,
3J
PC=8Hz,m−C,PPh
3),125.7(C
ipso),124.5(OCO−4,5−C
ipso),122.2(OCO−4,5−C
ipso),72.9(OCO−CH
2),71.0(OCO−CH
2),58.4(OCO−CH
3),57.8(OCO−CH
3),51.5(SIMes−CH
2),50.8(SIMes−CH
2),46.5(OCO−CH
2),45.9(OCO−CH
2),21.4(Mes−CH
3),21.2(Mes−CH
3),21.0(Mes−CH
3),20.9(Mes−CH
3),19.6(Mes−CH
3),18.3(Mes−CH
3),10.3(OCO−4,5−CH
3),9.8(OCO−4,5−CH
3)
【0115】
I.3 錯体(5)の合成
【化37】
錯体(1)(0.200g,0.236mmol)のTHF(5mL)溶液にTHF(5mL)中のIMes−Cl
2(0.174g,0.472mmol)を加え、混合物を60℃で48時間加熱した。揮発性物質を減圧下で全て除去した。生成物をトルエン(10mL)で抽出し、セライトで濾過した。溶液を2mLに濃縮し、この赤色溶液にペンタン(15mL)を加えて生成物を析出させた。フリット上に赤色固体を回収し、真空乾燥させた(0.147g,65%)。X線による構造決定に適した結晶をトルエン/ペンタンから25℃で成長させた。
1H NMR(500MHz,C
6D
6):δ7.48(t,
3J
HH=8Hz,6H,PPh
3),6.96(m,5H,PPh
3+Mes−CH),6.90(m,8H,PPh
3+Mes−CH),6.68(br s,1H,OCO−CH),6.67(d,
3J
HH=2Hz,1H,OCO−CH),4.61(ddd,
2J
HH=15Hz,
3J
HH=4Hz,
3J
HH=2Hz,1H,OCO−CH
2),3.88(m,1H,OCO−CH
2),2.91(s,3H,OCO−CH
3),2.87(m,1H,OCO−CH
2),2.81−2.57(m,13H,OCO−CH
3+Mes−CH
3+OCO−CH
2),2.36−2.15(m,10H,OCO−CH
2+Mes−CH
3),2.05(br s,3H,Mes−CH
3),−28.11(d,
2J
PH=25Hz,1H,Ru−H)
31P{
1H}NMR(161MHz,C
6D
6):δ43.2(s,PPh
3)
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
6,partial);δ140.7(d,
1J
PC=31Hz,C
ipso,PPh
3),134.9(d,
2J
PC=11Hz,o−C,PPh
3),129.4(br s,C
ipso),128.3(Mes−CH),128.2(d,
4J
PC=2Hz,p−C,PPh
3),127.6(d,
3J
PC=8Hz,m−C,PPh
3),120.0(OCO−CH),118.8(OCO−CH),72.4(OCO−CH
2),71.3(OCO−CH
2),58.2(OCO−CH
3),57.9(OCO−CH
3),48.1(OCO−CH
2),47.4(OCO−CH
2),21.3(br s,Mes−CH
3),18.2(br s,Mes−CH
3)
【0116】
I.4 錯体(I−1)の合成
【化38】
錯体(6)(0.100g,0.112mmol)のCH
2Cl
2(5mL)溶液にフェニルビニルスルフィド(16.7μL,0.128mmol)を室温で加えた。次いでこの溶液を5時間撹拌した後、溶媒を濃縮して0.5mLとし、ペンタン(15mL)を加えて、得られた混合物をセライトパッドで濾過した。次いでペンタンを減圧下に除去し、得られた残渣にペンタン層(10mL)を加えて、一夜放置した。遊離トリフェニルホスフィンがペンタン層に吸収され、赤色固体(0.079g,92%)が得られる。ヘキサン溶液をゆっくりと蒸発させることにより、X線による構造決定に適した結晶を成長させた。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):δ18.29(br s,1H,Ru=CH),7.01(s,2H,Mes−CH),6.96(s,1H,Mes−CH),6.94(s,1H,Mes−CH),6.85(s,1H,OCO−CH),6.69(br s,1H,OCO−CH),6.60(m,3H,S(C
6H
5)),6.56(m,2H,S(C
6H
5)),3.93(m,4H,Mes−CH
2),3.32(br s,4H,OCO−CH
2),3.19(br s,4H,OCO−CH
2+OCO−CH
3),3.16(s,3H,OCO−CH
3),3.06(br s,2H,OCO−CH
2),2.74(s,3H,Mes−CH
3),2.62(s,3H,Mes−CH
3),2.50(s,3H,Mes−CH
3),2.42(s,3H,Mes−CH
3),2.35(s,3H,Mes−CH
3),2.31(s,3H,Mes−CH
3),1.63(d,
3J
HH=5Hz,3H,Ru=CHCH
3)
13C{
1H}NMR(101MHz,CD
2Cl
2):δ313.7(Ru=CHCH
3),188.8(NCN),151.2(NCN),139.9(C
ipso),139.03(C
ipso),138.3(S(C
6H
5)),135.5(C
ipso),137.9(S(C
6H
5)),130.0(Mes−CH),129.9(Mes−CH),129.7(Mes−CH),129.6(Mes−CH),126.9(S(C
6H
5)),121.6(OCO−CH),121.2(OCO−CH),72.2(OCO−CH
2),58.7(OCO−CH
3),58.6(OCO−CH
3),51.8(SIMes−CH
2),51.7(SIMes−CH
2),49.1(OCO−CH
2),48.7(Ru=CHCH
3),21.2(Mes−CH
3),20.3(Mes−CH
3),19.0(Mes−CH
3),18.8(Mes−CH
3)
【0117】
I.5 錯体(I−2)の合成
【化39】
錯体(I−1)(0.050g,0.065mmol)のC
6H
6(2mL)溶液にトリメチルシリルヨージド(10.0μL,0.071mmol)を室温で溶解した。次いでこの溶液を1時間撹拌した後、溶媒を除去し、残渣をペンタンで洗浄した。次いでペンタンをデカンテーションにより除去して、錯体(I−2)を赤色固体として得た(0.048g,87%)。X線による構造決定に適した結晶をベンゼン/ペンタンから25℃で成長させた。
1H NMR(400MHz,C
6D
6):δ18.82(br s,1H,Ru=CH),7.09(m,2H,S(C
6H
5)),6.90(d,
3J
HH=2Hz,1H,OCO−CH),6.84(s,1H,Mes−CH),6.82(s,1H,Mes−CH),6.78(m,5H,Mes−CH+S(C
6H
5)),6.57(br s,1H,OCO−CH),3.44(m,4H,SIMes−CH
2),3.30(m,4H,OCO−CH
2),3.19−2.99(m,4H,OCO−CH
2),2.95(s,3H,OCO−CH
3),2.89(s,3H,Mes−CH
3),2.85(s,3H,Mes−CH
3),2.81(s,3H,OCO−CH
3),2.75(s,3H,Mes−CH
3),2.71(s,3H,Mes−CH
3),2.14(s,3H,Mes−CH
3),2.13(s,3H,Mes−CH
3),2.00(d,
3J
HH=6Hz,3H,Ru=CHCH
3)
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
6);δ313.7(Ru=CHCH
3),188.5(NCN),151.1(NCN),139.8(C
ipso),139.6(C
ipso),138.4(C
ipso),138.3(C
ipso),138.3(C
ipso),137.9(S(C
6H
5)),133.5(S(C
6H
5)),130.2(Mes−CH),129.9(Mes−CH),129.7(Mes−CH),127.2(S(C
6H
5)),122.1(OCO−CH),121.0(OCO−CH),72.5(OCO−CH
2),71.7(OCO−CH
2),58.3(OCO−CH
3),58.2(OCO−CH
3),51.6(SIMes−CH
2),51.5(SIMes−CH
2),49.3(Ru=CHCH
3),49.0(OCO−CH
2),23.2(Mes−CH
3),21.3(Mes−CH
3),21.1(Mes−CH
3),20.9(Mes−CH
3),20.7(Mes−CH
3),19.6(Mes−CH
3)
【0118】
I.6 錯体(I−3)の合成
【化40】
錯体(6)(0.100g,0.112mmol)のCH
2Cl
2(5mL)溶液に4−フルオロフェニルビニルスルフィド(0.017g,0.224mmol)を室温で加えた。次いでこの溶液を4時間撹拌した後、溶媒を濃縮して0.5mLとし、ペンタン(15mL)を加えて、得られた混合物をセライトパッドで濾過した。次いでペンタンを減圧下に除去し、得られた残渣にペンタン層(10mL)を加えて、一夜放置した。遊離トリフェニルホスフィンがペンタン層に吸収され、錯体(I−3)が赤色固体として得られる(0.070g,80%)。X線による構造決定に適した結晶をベンゼン/ペンタンから25℃で成長させた。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2):δ18.34(br s,1H,Ru=CH),7.01(s,2H,Mes−CH),6,96(s,1H,Mes−CH),6.93(s,1H,Mes−CH),6.86(d,
3J
HH=2Hz,1H,OCO−CH),6.68(br s,1H,OCO−CH),6.51(m,2H,p−F−C
6H
5),6.34(app t,
3J
HH=9Hz,2H,p−F−C
6H
5),3.92(m,4H,SIMes−CH
2),3.44−3.26(br s,4H,OCO−CH
2),3.23(br s,3H,OCO−CH
3),3.16(s,3H,OCO−CH
3),3.13−3.00(br s,4H,OCO−CH
2),2.74(s,3H,Mes−CH
3),2.61(s,3H,Mes−CH
3),2.48(s,3H,Mes−CH
3),2.40(s,3H,Mes−CH
3),2.36(s,3H,Mes−CH
3),2.31(s,3H,Mes−CH
3),1.63(d,
3J
HH=5Hz,Ru=CHCH
3)
19F{
1H}NMR(178MHz,CD
2Cl
2):δ−124.49(br s)
13C{
1H}NMR(101MHz,CD
2Cl
2):δ313.5(Ru=CHCH
3),223.9(NCN),188.8(NCN),159.7(d,
1J
FF=239Hz,S(C
6H
4F)),147.0(d,
4J
FC=3Hz,S(C
6H
4F)),140.5(C
ipso),139.9(C
ipso),138.6(C
ipso),138.5(C
ipso),138.1(C
ipso),137.9(C
ipso),137.8(C
ipso),135.6(C
ipso),133.9(br d,
3J
FC=7Hz,S(C
6H
4F)),129.8(Mes−CH),129.6(Mes−CH),121.7(OCO−CH),121.1(OCO−CH),113.7(d,
2J
FC=21Hz,S(C
6H
4F)),73.6(OCO−CH
2),72.2(OCO−CH
2),58.4(OCO−CH
3),58.2(OCO−CH
3),51.3(SIMes−CH
2),51.1(SIMes−CH
2),49.7(OCO−CH
2),48.9(OCO−CH
2),46.8(Ru=CHCH
3),21.1(Mes−CH
3),21.0(Mes−CH
3),20.7(Mes−CH
3),20.5(Mes−CH
3),19.3(Mes−CH
3),19.2(Mes−CH
3)
【0119】
I.7 錯体(I−4)の合成
【化41】
錯体(6)(0.100g,0.112mmol)のC
2H
4C1
2(5mL)溶液に4−ニトロフェニルビニルスルフィド(0.041g,0.224mmol)を室温で加えた。次いでこの溶液を4時間撹拌した後、溶媒を濃縮して0.5mLとし、ペンタン(15ml)を加え、得られた混合物をセライトパッドで濾過した。次いでペンタンを減圧下に除去し、得られた残渣にペンタン層(10mL)を加えて、一夜放置した。遊離トリフェニルホスフィンがペンタン層に吸収され、錯体(I−4)が紫色固体として得られる(0.068g,75%)。
1H NMR(400MHz,C
6D
6):δ18.42(q,
3J
HH=6Hz,1H,Ru=CH),7.71(d,
3J
HH=9Hz,2H,p−NO
2(C
6H
4)),6.75(m,7H,p−NO
2(C
6H
4)+Mes−CH+OCO−CH),6.49(s,1H,OCO−CH),3.44(m,3H,OCO−CH
2),3.32−3.21(m,4H,SIMes−CH
2),3.13−2.94(m,3H,OCO−CH
2),2.86(s,3H,OCO−CH
3),2.76(s,5H,OCO−CH
2+Mes−CH
3),2.73(s,3H,OCO−CH
3),2.64(s,6H,2×Mes−CH
3),2.49(s,3H,Mes−CH
3),2.12(s,3H,Mes−CH
3),2.09(s,3H,Mes−CH
3),1.87(d,
3J
HH=6Hz,Ru=CHCH
3)
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
6):δ314.2,(Ru=CH),186.9(NCN),167.3(NCN),141.6(C
ipso),139.8(C
ipso),139.0(C
ipso),138.6(C
ipso),130.7(p−NO
2−C
6H
4),129.7(Mes−CH),129.5(Mes−CH),129.2(Mes−CH),128.8(Mes−CH),121.5(OCO−CH),121.3(OCO−CH),121.1(p−NO
2−C
6H
4),72.7(OCO−CH
2),71.5(OCO−CH
2),58.0(OCO−CH
3),57.9(OCO−CH
3),50.8(OCO−CH
2),50.7(OCO−CH
2),49.5(SIMes−CH
2),46.3(Ru=CHCH
3),20.6(Mes−CH
3),20.5(Mes−CH
3),20.1(Mes−CH
3),19.5(Mes−CH
3),18.7(Mes−CH
3),18.6(Mes−CH
3)
【0120】
I.8 錯体(I−5)の合成
【化42】
錯体(6)(0.100g,0.112mmol)のC
6H
5Br(2mL)溶液にペンタフルオロフェニルベンジルスルフィド(0.068g,0.224mmol)を室温で加えた。次いでこの溶液を24時間撹拌した後、この溶液を冷ペンタン(15mL)に撹拌しながら滴下することにより生成物を析出させた。フリット上に錯体(I−5)を桃色/赤色固体として回収し、真空乾燥させた(0.073g,70%)。X線による構造決定に適した結晶をテトラヒドロフラン/ペンタンから25℃で成長させた。
1H NMR(400MHz,C
6D
5Br):δ15.65(dd,
3J
HH=8Hz,
3J
HH=3Hz,1H,Ru=CH),7.06(s,1H,Mes−CH),7.05(s,1H,Mes−CH),6.95(br s,1H,OCO−CH),6.87(s,2H,Mes−CH),6.84(d,
3J
HH=2Hz,1H,OCO−CH),6.80(br s,1H,C
6H
5),6.75(br s,2H,C
6H
5),6.68(br s,2H,C
6H
5),4.08(dd,
2J
HH=15Hz,
3J
HH=3Hz,1H,OCO−CH
2),4.00(dt,
2J
HH=15Hz,
3J
HH=3Hz,1H,OCO−CH
2),3.64(m,4H,SIMes−CH
2),3.49(m,4H,OCO−CH
2),3.32(m,2H,OCO−CH
2),3.04(s,3H,OCO−CH
3),2.87(s,2H,Ru=CHCH
2),2.72(s,3H,OCO−CH
3),2.61(s,3H,Mes−CH
3),2.23(s,6H,2×Mes−CH),2.15(s,9H,3×Mes−CH
3)
19F{
1H}NMR(376MHz,C
6D
5Br):δ−131.72(br s,1F,o−S(C
6F
5)),−132.36(br s,1F,o−S(C
6F
5)),−162.33(t,
3J
FF=22Hz,1F,p−S(C
6F
5)),−166.25(br s,1F,m−S(C
6F
5)),−166.68(br s,1F,m−S(C
6F
5))
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
5Br,partial):δ309.6(Ru=CH),138.0(C
ipso),137.5(C
ipso),137.1(C
ipso),130.0(C
6H
5),129.8(Mes−CH),129.6(Mes−CH),129.4(C
6H
5),123.5(C
6H
5),122.5(OCO−CH),121.0(OCO−CH),72.9(OCO−CH
2),72.6(OCO−CH
2),58.2(OCO−CH
3),58.1(OCO−CH
3),58.0(Ru=CHCH
2),52.1(SIMes−CH
2),49.7(OCO−CH
2),49.4(OCO−CH
2),21.0(Mes−CH
3),19.6(Mes−CH
3),18.7(Mes−CH
3)
【0121】
I.9 錯体(I−6)の合成
【化43】
錯体(6)(0.100g,0.112mmol)のC
6H
5Br(2mL)溶液にペンタフルオロフェニルペンテニルスルフィド(0.060g,0.224mmol)を室温で加えた。次いでこの溶液を24時間撹拌した後、溶液を冷ペンタン(15mL)に滴下することにより生成物を析出させた。フリット上に錯体(I−6)を橙色/褐色固体として回収し、真空乾燥させた(0.073g,73%)。X線による構造決定に適した結晶をブロモベンゼン/ペンタンから25℃で成長させた。
1H NMR(400MHz,C
6D
5Br):δ16.37(t,
3J
HH=5Hz,1H,Ru=CH),7.04(d,
3J
HH=2Hz,1H,OCO−CH),6.85(s,2H,Mes−CH),6.83(d,
3J
HH=2Hz,1H,OCO−CH),6.71(s,2H,Mes−CH),4.16(m,1H,OCO−CH
2),3.69(m,3H,OCO−CH
2),3.59(m,1H,OCO−CH
2),3.55(m,4H,SIMes−CH
2),3.37(m,1H,OCO−CH
2),3.15(m,2H,OCO−CH
2),2.92(s,3H,OCO−CH
3),2.90(s,3H,OCO−CH
3),2.66(s,6H,2×Mes−CH
3),2.23(s,6H,2×Mes−CH
3),2.16(s,6H,2×Mes−CH
3),1.31(m,2H,ペンチリデン−CH
2),1.13(m,2H,ペンチリデン−CH
2),1.05(m,2H,ペンチリデン−CH
2),0.83(t,
3J
HH=7Hz,3H,ペンチリデン−CH
3)
19F{
1H}NMR(376MHz,C
6D
5Br):δ−131.87(br s,1F,o−S(C
6F
5)),−132.41(br s,1F,o−S(C
6F
5)),−162.70(t,
3J
FF=22Hz,1F,p−S(C
6F
5)),−166.45(br s,1F,m−S(C
6F
5)),−166.98(br s,1F,m−S(C
6F
5))
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
5Br,partial):δ315.2(Ru=CH),212.6(NCN),181.8(NCN),137.9(C
ipso),137.4(C
ipso),129.9(Mes−CH),129.6(Mes−CH),122.6(OCO−CH),121.3(OCO−CH),73.0(OCO−CH
2),71.4(OCO−CH
2),58.5(OCO−CH
3),58.0(OCO−CH
3),52.2(SIMes−CH
2),49.4(OCO−CH
2),48.3(OCO−CH
2),29.3(ペンチリデン−CH
2),22.9(ペンチリデン−CH
2),21.0(Mes−CH
3),19.6(Mes−CH
3),18.7(Mes−CH
3),14.3(ペンチリデン−CH
3)
【0122】
I.10 錯体(I−7)の合成
【化44】
錯体(6)(0.100g,0.112mmol)のC
6H
5Br(2mL)溶液にペンタフルオロフェニルヘキセニルスルフィド(0.063g,0.224mmol)を室温で加えた。次いでこの溶液を24時間撹拌した後、この溶液を冷ペンタン(15mL)に撹拌しながら滴下することにより生成物を析出させた。フリット上に橙色/褐色固体を回収し、真空乾燥させた(0.072g,71%)。X線による構造決定に適した結晶をブロモベンゼン/ペンタンから25℃で成長させた。
1H NMR(400MHz,C
6D
5Br):δ16.44(t,
3J
HH=5Hz,1H,Ru=CH),7.00(s,1H,OCO−CH),6.85(s,2H,Mes−CH),6.82(d,
3J
HH=2Hz,1H,OCO−CH),6.71(s,2H,Mes−CH),4.15(dd,
2J
HH=14Hz,
3J
HH=4Hz,1H,OCO−CH
2),3.67(m,2H,OCO−CH
2),3.59(m,1H,OCO−CH
2),3.50(m,4H,SIMes−CH
2),3.33(m,1H,OCO−CH
2),3.12(m,1H,OCO−CH
2),2.92(s,4H,OCO−CH
2+OCO−CH
3),2.89(s,4H,OCO−CH
2+OCO−CH
3),2.66(s,7H,ヘキシリデン−CH
2+2×Mes−CH
3),2.22(s,6H,2×Mes−CH
3),2.15(s,7H,ヘキシリデン−CH
2+2×Mes−CH
3),1.21(m,3H,ヘキシリデン−CH
2),1.07(m,3H,ヘキシリデン−CH
2),0.85(t,
3J
HH=7Hz,3H,ヘキシリデン−CH
3)
19F{
1H}NMR(376MHz,C
6D
5Br);δ−131.83(br s,1F,o−S(C
6F
5)),−132.44(br s,1F,o−S(C
6F
5)),−162.69(t,
3J
FF=22Hz,1F,p−S(C
6F
5)),−166.42(br s,1F,m−S(C
6F
5)),−166.96(br s,1F,m−S(C
6F
5))
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
5Br,partial);δ315.3(Ru=CH),212.3(NCN),181.8(NCN),137.7(C
ipso),137.2(C
ipso),129.3(Mes−CH),129.0(Mes−CH),122.0(OCO−CH),120.7(OCO−CH),72.9(OCO−CH
2),71.4(OCO−CH
2),58.5(OCO−CH
3),58.0(OCO−CH
3),52.3(SIMes−CH
2),49.4(OCO−CH
2),48.3(OCO−CH
2),32.0(ヘキシリデン−CH
2),26.7(ヘキシリデン−CH
2),22.8(ヘキシリデン−CH
2),21.05(ヘキシリデン−CH
2),21.0(Mes−CH
3),19.5(Mes−CH
3),18.7(Mes−CH
3),14.2(ヘキシリデン−CH
3)
【0123】
I.11 錯体(I−8)の合成
【化45】
錯体(2)(0.100g,0.112mmol)のCH
2C1
2(5mL)溶液にフェニルビニルスルフィド(16.7μL,0.128mmol)を室温で加えた。次いでこの溶液を5時間撹拌した後、溶媒を濃縮して0.5mLとし、ペンタン(15mL)を加えて、得られた混合物をセライトパッドで濾過した。次いでペンタンを減圧下に除去し、得られた残渣にペンタン層(10mL)を加えて、一夜放置した。遊離トリフェニルホスフィンがペンタン層に吸収され、錯体(I−8)が赤色固体として得られる(0.050g,59%)。X線による構造決定に適した結晶をベンゼン/ペンタンから25℃で成長させた。
1H NMR(500MHz,C
6D
6):δ19.09(q,
3J
HH=6Hz,1H,Ru=CH),7,03(br m,1H,S(C
6H
5)),7.01(br m,1H,S(C
6H
5)),6.94(d,
3J
HH=2Hz,1H,OCO−CH),6.85−6.73(br m,7H,(3H)S(C
6H
5),(4H)Mes−CH),6.65(s,1H,d,
3J
HH=2Hz,1H,OCO−CH),6.24(d,
3J
HH=2Hz,1H,Mes−CH),6.23(d,
3J
HH=2Hz,1H,Mes−CH),3.84(br s,2H,OCO−CH
2),3.56(m,1H,OCO−CH
2),3.46(m,1H,OCO−CH
2),3.21(m,2H,OCO−CH
2),3.08(m,1H,OCO−CH
2),2.96(s,3H,OCO−CH
3),2.85(m,1H,OCO−CH
2),2.77(s,3H,OCO−CH
3),2.73(s,3H,Mes−CH
3),2.67(s,3H,Mes−CH
3),2.48(s,6H,Mes−CH
3),2.16(s,3H,Mes−CH
3),2.15(s,3H,Mes−CH),2.08(d,
3J
HH=5Hz,3H,Ru=CHCH
3)
13C{
1H}NMR(126MHz,C
6D
6):δ313.6(Ru=CHCH
3),189.8(NCN),152.4(NCN),139.4(C
ipso),139.2(C
ipso),138.7(C
ipso),137.8(C
ipso),137.2(C
ipso),135.9(S(C
6H
5)),133.0(S(C
6H
5)),129.6(Mes−CH),129.4(Mes−CH),129.3(Mes−CH),129.2(Mes−CH),127.0(S(C
6H
5)),124.0(IMes−CH),123.6(IMes−CH),121.8(OCO−CH),121.2(OCO−CH),73.5(OCO−CH
2),72.4(OCO−CH
2),58.3(OCO−CH
3),58.2(OCO−CH
3),49.8(OCO−CH
2),49.0(OCO−CH
2),47.5(Ru=CHCH
3),21.1(Mes−CH
3),21.0(Mes−CH
3),20.4(Mes−CH
3),20.3(Mes−CH
3),19.1(Mes−CH
3),19.0(Mes−CH
3)
【0124】
I.12 錯体(I−9)の合成
【化46】
錯体(2)(0.100g,0.109mmol)のCH
2C1
2(5mL)溶液にフェニルビニルスルフィド(17.0μL,0.131mmol)を室温で加えた。次いでこの溶液を1時間撹拌した後、溶媒を濃縮して0.5mLとし、ペンタン(15mL)を加えて、得られた混合物をセライトパッドで濾過した。次いでペンタンを減圧下に除去し、残渣にペンタン層(10mL)を加えて、一夜放置した。遊離トリフェニルホスフィンがペンタン層に吸収され、錯体(I−9)が赤色固体として得られる(0.069g,80%)。X線による構造決定に適した結晶をベンゼン/ペンタンから25℃で成長させた。
1H NMR(400MHz,C
6D
6):δ19.05(br s,1H,Ru=CH),7.05(m,2H,S(C
6H
5)),6.97(s,1H,Mes−CH),6,94(s,1H,Mes−CH),6.82(s,2H,Mes−CH),6.67(m,3H,S(C
6H
5)),3.73−3.03(br m,12H,SIMes−CH
2+Me
2Im(OMe)
2−CH
2),2.99(s,3H,Me
2Im(OMe)
2−CH
3),2.94(s,3H,Mes−CH
3),2.91(s,3H,Mes−CH
3),2.78(s,3H,Me
2Im(OMe)
2−CH
3),2.68(s,3H,Mes−CH
3),2.66(s,3H,Mes−CH
3),2.25(s,3H,Mes−CH
3),2.13(s,3H,Mes−CH
3),2.07(d,
3J
HH=6Hz,3H,Ru=CHCH
3),1.70(s,3H,Me
2Im(OMe)
2−4,5−CH
3),1.44(s,3H,Me
2Im(OMe)
2−4,5−CH
3)
13C{
1H}NMR(101MHz,C
6D
6):δ312.0(Ru=CHCH
3),223.7(NCN),186.3(NCN),152.1(C
ipso),140.1(C
ipso),139.7(C
ipso),138.6(C
ipso),138.5(C
ipso),138.2(C
ipso),137.9(C
ipso),137.7(C
ipso),133.4(S(C
6H
5)),130.3(Mes−CH),129.9(Mes−CH),129.7(Mes−CH),129.6(Mes−CH),126.3(S(C
6H
5)),126.1(Me
2Im(OMe)
2−C
ipso),125.5(Me
2Im(OMe)
2−C
ipso),121.1(S(C
6H
5)),74.5(Me
2Im(OMe)
2−CH
2),72.7(Me
2Im(OMe)
2−CH
2),58.3(Me
2Im(OMe)
2−CH
3),58.2(Me
2Im(OMe)
2−CH
3),51.3(SIMes−CH
2),51.1(SIMes−CH
2),47.7(Me
2Im(OMe)
2−CH
2),46.5(Ru=CHCH
3),46.0(Me
2Im(OMe)
2−CH
2),20.9(Mes−CH
3),20.6(Mes−CH
3),20.5(Mes−CH
3),19.2(Mes−CH
3),19.1(Mes−CH
3),9.3(Me
2Im(OMe)
2−4,5−CH
3),8.9(Me
2Im(OMe)
2−4,5−CH
3)
【0125】
I.13 錯体(I−10)の合成
【化47】
錯体(I−9)(0.065g,0.095mmol)のC
6H
6(2mL)溶液にトリメチルシリルヨージド(14.0μL,0.104mmol)を室温で加えた。次いでこの溶液を1時間撹拌した後、溶媒を除去し、残渣をペンタンで洗浄した。次いでペンタンをデカンテーションにより除去し、錯体(I−10)を赤色固体として得た(0.038g,53%)。X線による構造決定に適した結晶をベンゼン/ペンタンから25℃で成長させた。
1H NMR(400MHz,C
6D
6);δ19.04(br s,1H,Ru=CH),7.13(br s,2H,S(C
6H
5)),6.94(s,1H,Mes−CH),6.91(s,1H,Mes−CH),6.84(s,1H,Mes−CH),6.77(s,1H,Mes−CH),6.72(m,1H,S(C
6H
5)),6.64(br m,2H,S(C
6H
5)),3.70−3.17(br m,12H,SIMes−CH
2+Me
2Im(OMe)
2−CH
2),2.98(s,3H,Me
2Im(OMe)
2−CH
3),2.95(br s,6H,Mes−CH
3),2.88(s,3H,Me
2Im(OMe)
2−CH
3),2.74(s,6H,Mes−CH
3),2.23(s,3H,Mes−CH),2.13(s,3H,Mes−CH
3),2.09(d,
3J
HH=6Hz,3H,Ru=CHCH
3),1.69(s,3H,Me
2Im(OMe)
2−4,5−CH
3),1.47(s,3H,Me
2Im(OMe)
2−4,5−CH
3)
13C{
1H}NMR partial(101MHz,C
6D
6):δ185.2(NCN),139.6(C
ipso),139.3(C
ipso),138.8(C
ipso),138.6(C
ipso),138.3(C
ipso),136.7(S(C
6H
5)),134.3(br s,S(C
6H
5)),130.6(Mes−CH),130.1(Mes−CH),129.9(Mes−CH),129,8(Mes−CH),126.6(S(C
6H
5)),126.4(Me
2Im(OMe)
2−C
ipso),126.1(Me
2Im(OMe)
2−C
ipso),122.6(S(C
6H
5)),73.5(Me
2Im(OMe)
2−CH
2),71.7(Me
2Im(OMe)
2−CH
2),58.6(Me
2Im(OMe)
2−CH
3),58.3(Me
2Im(OMe)
2−CH
3),51.8(SIMes−CH
2),47.7(Me
2Im(OMe)
2−CH
2),46.1(Ru=CHCH
3),23.0(Mes−CH
3),21.4(Mes−CH
3),21.1(Mes−CH
3),20.6(Mes−CH
3),19.6(Mes−CH
3),9.55(Me
2Im(OMe)
2−4,5−CH
3),9.05(Me
2Im(OMe)
2−4,5−CH
3)
【0126】
II 1,5−シクロオクタジエン(1,5−COD)の開環メタセシス重合(ROMP)
【化48】
1,5−シクロオクタジエンの開環メタセシス重合の標準的な手順は次の通りである:次に示す本発明の触媒錯体、グラブスI触媒、またはグラブスII触媒の所要量(1mol%)をそれぞれ秤量してCD
2C1
2(0.5mL)に溶かした。添加剤(すなわちヘキサン中BCl
3(1M))の使用を含む試験の場合は、所要量を加えて混合物を5分間静置した。溶液をNMR管に装入し、1,5−シクロオクタジエン(60μL,0.50mmol)を添加し、NMR管にキャップをして、溶液を表1〜11に示した温度で混合した。反応の進行を
1H NMRで2時間毎に監視した。反応の進行は、出発物質対生成物のピークの積分値により決定した。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
【0132】
【表6】
【0133】
【表7】
【0134】
【表8】
【0135】
【表9】
【0136】
【表10】
【0137】
【表11】
【0138】
III ジアリルマロン酸ジエチルの閉環メタセシス(RCM)
【化49】
ジアリルマロン酸ジエチルの閉環メタセシスの標準的な手順は次の通りである:表12〜22に記載する触媒の所要量(5mol%)を秤量し、CD
2C1
2(0.5mL)に溶かした。添加剤(すなわちヘキサン中BCl
3(1M))の使用を含む試験の場合は、所要量を添加して混合物を5分間静置した。溶液をNMR管に装入し、ジアリルマロン酸ジエチル(20μL,0.50mmol)を加えて、NMR管にキャップをし、溶液を混合した。反応の進行を
1H NMRで2時間毎に監視した。反応の進行は、出発物質対生成物のオレフィン由来のピークの積分値により決定した。
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
【表14】
【0142】
【表15】
【0143】
【表16】
【0144】
【表17】
【0145】
【表18】
【0146】
【表19】
【0147】
【表20】
【0148】
【表21】
【0149】
【表22】
【0150】
IV 酢酸5−ヘキセニルおよびアクリル酸メチルのクロスメタセシス(CM)
【化50】
酢酸5−ヘキセニルおよびアクリル酸メチルのクロスメタセシスの標準的な手順は次の通りである:表23〜33に記載する触媒の所要量(2mol%)を秤量し、CD
2Cl
2(0.5mL)に溶かした。添加剤(すなわちヘキサン中BCl
3(1M))の使用を含む試験を行う場合は、所要量を添加し、混合物を5分間静置した。溶液をNMR管に装入し、酢酸5−ヘキセニル(20μL,0.12mmol)およびアクリル酸メチル(10μL,0.11mmol)の混合物を加えて、溶液を表11〜14に記載した温度で混合した。反応の進行を
1H NMRで2時間毎に監視した。反応の進行は、出発物質対生成物のオレフィン由来のピークの積分値により決定した。
【0151】
【表23】
【0152】
【表24】
【0153】
【表25】
【0154】
【表26】
【0155】
【表27】
【0156】
【表28】
【0157】
【表29】
【0158】
【表30】
【0159】
【表31】
【0160】
【表32】
【0161】
【表33】
【0162】
V ニトリルブタジエンゴム(NBR)および1−ヘキセンのクロスメタセシス
後続の一連の実施例群(series)において実施するニトリルブタジエンゴム(NBR)および1−ヘキセンのクロスメタセシスの標準的な手順は次に示す通りである:
NBR(1.5g)をクロロベンゼン(13.585g)に加え、振盪機で24時間振盪することにより10重量%のNBR溶液を得た。この溶液に1−ヘキセン(60mg)を加えて1時間振盪した。グローブボックス内で所要量の触媒を適量のクロロベンゼンに溶解することにより触媒の原液(1mg/0.5mL)を調製した。次いで適量のBCl
3を加えて、溶液を5分間撹拌した後、グローブボックスから取り出し、NBR溶液に加えた。1、2、3、4および24時間後に試料を採取した。試料から揮発性物質を全て除去し、GPCにてポリスチレン検量線を用いてMn、MwおよびPDIを測定した。
【0163】
この一連の実施例群においては、表34に示す触媒および表35に示すニトリルブタジエンゴムを用いた。メタセシス反応の結果を表36〜39に示す。
【0164】
【表34】
【0165】
【表35】
【0166】
【表36】
【0167】
【表37】
【0168】
【表38】
【0169】
後続の一連の実施例群で実施するニトリルブタジエンゴム(NBR)および1−ヘキセンのクロスメタセシスの標準的な手順は次の通りである:
NBR(75g)をクロロベンゼン(425g)に加え、振盪機で24時間振盪することにより15重量%のNBR溶液を得た。この溶液に1−ヘキセン(4g)を加えて1時間振盪した。グローブボックス内で所要量の触媒を適量のクロロベンゼンに溶解することにより触媒の原液(1mg/0.5mL)を調製した。次いで適量のBCl
3を加えて溶液を5分間撹拌した後、グローブボックスから取り出し、NBR溶液に加えた。1、2、3、4、および24時間後に試料を採取した。試料から揮発性物質を全て除去し、GPCにてポリスチレン検量線を用いてMn、Mw、およびPDIを測定した。
【0170】
【表39】