(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188975
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ブローオフ制御を備える大型ターボチャージャー付き2ストローク圧縮着火内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 23/02 20060101AFI20170821BHJP
F02B 77/08 20060101ALI20170821BHJP
F02B 77/10 20060101ALI20170821BHJP
F02B 75/32 20060101ALI20170821BHJP
F02B 25/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
F02B23/02 C
F02B77/08 F
F02B77/08 L
F02B77/10
F02B75/32 B
F02B25/02
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-17818(P2017-17818)
(22)【出願日】2017年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-137866(P2017-137866A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年2月23日
(31)【優先権主張番号】PA201670059
(32)【優先日】2016年2月3日
(33)【優先権主張国】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516330468
【氏名又は名称】マン ディーゼル アンド ターボ フィリアル ア マン ディーゼル アンド ターボ エスイー チュスクラン
【氏名又は名称原語表記】MAN Diesel & Turbo,filial af MAN Diesel & Turbo SE,Tyskland
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(72)【発明者】
【氏名】ポール センカ
(72)【発明者】
【氏名】マス レーギル
【審査官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−056877(JP,U)
【文献】
実開昭60−075644(JP,U)
【文献】
実開昭57−059930(JP,U)
【文献】
特公昭46−007681(JP,B1)
【文献】
英国特許出願公告第00817018(GB,A)
【文献】
英国特許出願公告第00495391(GB,A)
【文献】
特表2012−512356(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00103064(EP,A2)
【文献】
欧州特許出願公開第02541018(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 23/02
F02B 25/02
F02B 75/32
F02B 77/08
F02B 77/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッド(43)を備える大型ターボチャージャー付き2ストローク圧縮着火内燃エンジンであって、
燃焼チャンバ(27)として機能する複数のシリンダ(1)を備え、前記シリンダ(1)は、シリンダ・カバー(22)と、前記シリンダ・カバー(22)の中心に配置された排気弁(4)と、前記排気弁(4)を排気ガス受け(3)に接続する排気ダクト(35)と、を備え、
前記シリンダ・カバー(22)は、流体的に前記燃焼チャンバ(27)に接続される入口(57)と、流体的に吐出管に接続される出口(58)と、を有するブローオフ弁(50)を備えるエンジンにおいて、
前記ブローオフ弁(50)は、閉位置と完全開位置との間である中間位置の範囲で動くことができる可動弁部材(52)を備え、
前記ブローオフ弁(50)は、前記可動弁部材(52)が前記中間位置の何れか又は前記完全開位置にあるときに、前記入口(57)から前記出口(58)へのガスの流れを許容し、
前記ブローオフ弁(50)は、前記可動弁部材(52)が前記閉位置にあるときに、前記入口(57)から前記出口(58)へのガスの流れを遮断し、
前記可動弁部材(52)は、前記燃焼チャンバ(27)内の圧力に曝される第1の有効圧力面(59)を備え、該燃焼チャンバ(27)内の圧力により前記完全開位置へ向けて付勢され、
前記可動弁部材(52)は、油圧力に曝される第1の面(61)を備え、該油圧力により前記閉位置に向けて付勢され、
前記可動弁部材(52)は、前記第1の面(61)より面積が小さく該第1の面(61)の反対方向を向いた第2の面(62)を備え、前記第2の面(62)は、前記完全開位置から予め定められた中間位置まで伸びる第1の範囲にあるときのみに、前記油圧力に曝されて該油圧力により前記完全開位置へ向けて付勢される
ことを特徴とする、エンジン。
【請求項2】
前記予め定められた中間位置は、前記完全開位置よりも前記閉位置に近い、
請求項1記載のエンジン。
【請求項3】
前記可動弁部材(52)の第1の面(61)、及び、前記第2の面(62)は、第2の有効圧力面を形成する、
請求項1又は2記載のエンジン。
【請求項4】
前記第1の面(61)は、前記可動弁部材(52)の全ての位置において前記油圧力によって加圧され、
前記第2の面(62)は、前記第1の範囲の位置において前記油圧力によって加圧される、
請求項3記載のエンジン。
【請求項5】
前記可動弁部材(52)は、前記第2の面(62)が前記第1の範囲の位置において前記油圧力によって加圧されるのを許容する口(71)を開く、
請求項4記載のエンジン。
【請求項6】
前記可動弁部材(52)は、弁座(55)と協働する弁体(54)を備え、前記弁座は、前記シリンダ・カバー(22)を通って伸びるブローオフ・ボア(29)に配置される、
請求項1〜5の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項7】
前記弁座(55)の主面は、前記ブローオフ・ボア(29)の主方向に対して斜めに配置される、
請求項1〜6の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項8】
前記可動弁部材(52)は、弁ステム(53)に接続された弁体(54)と、前記弁ステム(53)に動作可能に接続された作動ピストン(56)と、を備える、
請求項1〜7の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項9】
前記第1の面(61)は、前記作動ピストン(56)の一方側に配置され、前記第2の面(62)は、前記作動ピストン(56)の反対側に配置される、
請求項1〜8の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項10】
前記ブローオフ・ボア(29)は、前記排気弁(4)をバイパスするために、ブローオフ管(36)を介して前記排気ダクト(35)又は前記排気ガス受け(3)に接続される、
請求項1〜9の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項11】
前記ブローオフ弁(50)は、冷却手段を備え、前記冷却手段は、好ましくは冷却媒体を前記ブローオフ弁(50)に通流させるための流路を備える、
請求項1〜10の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項12】
前記エンジンは、エンジン負荷の増加に応じて増加しエンジン負荷の減少に応じて減少する圧力を有する油圧システム(88)を備え、
前記第1の面(61)及び前記第2の面(62)が形成する第2の有効圧力面(61、62)は、前記油圧システム(88)の油圧力によって加圧される、
請求項1〜11の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項13】
前記油圧システム(88)は、燃料噴射弁(42)に動力を提供する、
請求項12記載のエンジン。
【請求項14】
前記油圧システム(88)は、排気弁作動システム(48)に動力を提供する、
請求項12又は13記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クロスヘッドを備える大型ターボチャージャー付き2ストローク圧縮着火内燃エンジンにおけるブローオフ事象の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
クロスヘッド・タイプの大型2ストローク・ターボチャージャー付き圧縮着火内燃エンジンは、例えば、外洋航行の大型船舶の推進又は発電所の主発動機として用いられる。単なる規模の問題ではなく、これらの2ストローク・ディーゼル・エンジンは、他の内燃エンジンとは異なるように製造される。排気弁の重量は400kgに至り、ピストンは100cmに至る直径を有し、燃焼チャンバの最高動作圧力は典型的には数百barになる。この高圧レベルに関連する力とピストンのサイズは巨大である。
【0003】
例えば燃料噴射のタイミング又は量を誤ることによって、過剰な圧力がシリンダの1つにおいてまれに発生し得る。このような過剰圧力に対応するために、シリンダ・カバーをシリンダ・ライナの上部に押圧する力は、シリンダ・カバーを台板に接続して相互にエンジン構造を維持するステー・ボルトに与える張力によって慎重に制御される。したがって、過剰圧力が生じた際に、シリンダ・カバーは持ち上げられ、過剰圧力はシリンダ・ライナの上部とシリンダ・カバーの底部との間から漏出する。当該技術分野において一般的に用いられているこのシステムは、問題がないわけではない。シリンダ・カバーを持ち上げると、爆発性のガスが漏れ、170dbに至る大きな音とともに制御不能なガスが放たれる。多くの場合は火炎の噴射という形で、高熱ガスの爆発により側部ブローオフが生じると、いかなる傍観者も深刻な損害を被る。さらに、極めて高温で高圧のガスが、シリンダ・ライナ及びシリンダ・カバーの精密加工された合わせ面を浸食し、また、シリンダ・ライナの上部とシリンダ・カバーの底部との間に配置されたシール・リングを損傷する。それゆえ、ブローオフ事象が生じると、所望の液密性を得るために、これらの面の加工及びシール・リングの再配置が求められる。したがって、ブローオフが生じた後の修理コストは多大なものとなる。さらに、ステー・ボルトにかかる張力は、エンジン及び周囲の温度変化によって変化するので、正確に制御することができない。もしブローオフが瞬間的に生じたら、ステー・ボルトにかかる張力は相対的に高くなり、これまでにもピストン及びクランクシャフトに生じる力によって大端部及び他の高価なエンジン要素が損傷した。このような事象は費用がかかるのでブローオフを制御するほうが良い。
【0004】
大型船の保険業者(船級協会)は、大型船用エンジンは燃焼チャンバの過剰圧力による損傷に対して安全な方策で保護されなければならないことを要求する。
【0005】
ここで、いくつかの従来技術では、燃焼チャンバの過剰圧力によって生じ得る損傷に対してエンジンを保護するために、つぶれるように設計された燃焼チャンバの壁に破裂板を備えるエンジンが提供される。これらの破裂板の欠点は、燃焼チャンバ内の圧力変動に曝されて経年劣化し、やがて例えば小さな失火による比較的小さな過剰圧力によって、もうつぶれてしまうことである。したがって、破裂板は早い時期につぶれがちである。特に、つぶれた破裂板を新しい板に交換するためにエンジンを停止しなければならないのが問題である。したがって、現在最も多く用いられている破裂板の方策は最適なものではない。
【0006】
燃焼チャンバ内に過剰圧力が生じた際に燃焼チャンバからガスを抜くために開かれるという要求に答えるべく、セキュリティ弁を備える他のエンジンが提供されている。これらは、ばね仕掛けのポペット弁である。しかしながら、ブローオフ現象の爆発性に対して、これらのポペット弁は圧力を十分早く抜くためにはその最大開口が不十分であるため、あまり効果がない。したがって、これらのセキュリティ弁は、十分短い時間で所望の開面積を効果的に提供することはできず、単にシリンダ・カバーが持ち上がる前のインジケータ又は警笛になるという効果があるだけであり、これらの既知の弁はシリンダ・カバーが持ち上がるのを防止することはできない。
【0007】
GB817,018(特許文献1)は、シリンダ・ライナとシリンダ・カバーとの間に分離リングを備える大型2ストローク・ディーゼル・エンジンを開示しており、分離リングは、安全弁を受け入れるためのボアを備えている。しかしながら、既知の安全弁は信頼性がよくなかったので、この安全弁の使用は中止された。
【0008】
したがって、クロスヘッド・タイプの大型2ストローク圧縮着火内燃エンジンのための改善されたブローオフ制御システムが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】GB817,018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記の問題を解決するか少なくとも低減することができるクロスヘッド・タイプの大型2ストローク圧縮着火内燃エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の及び他の課題は独立請求項の構成によって解決される。さらに実施形態は、従属請求項、明細書、及び図面から明らかになる。
【0012】
第1の態様では、クロスヘッドを備える大型ターボチャージャー付き2ストローク圧縮着火内燃エンジンが提供される;
ここで、エンジンは、燃焼チャンバとして機能する複数のシリンダを備え、シリンダは、シリンダ・カバーと、シリンダ・カバーの中心に配置された排気弁と、排気弁を排気ガス受けに接続する排気ダクトと、を備え、
シリンダ・カバーは、流体的に燃焼チャンバに接続される入口と、流体的に吐出管に接続される出口と、を有するブローオフ弁を備え、
ブローオフ弁は、閉位置と完全開位置の間を、これらの間の中間位置の範囲で動くことができる可動弁部材を備え、
ブローオフ弁は、可動弁部材が中間位置の何れか又は完全開位置にあるときに、入口から出口へのガスの流れを許容し、ブローオフ弁は、可動弁部材が閉位置にあるときに、入口から出口へのガスの流れを遮断し、
可動弁部材は、燃焼チャンバの圧力が可動弁部材を完全開位置へ向けて付勢するように、燃焼チャンバの圧力に曝される第1の有効圧力面を備え、
可動弁部材は、可動弁部材を閉位置に向けて付勢するために油圧力に曝される第2の有効圧力面を有し、
第2の有効圧力面は、可動弁部材が閉位置にあるときに第1のサイズを有し、可動弁部材の第1の範囲の位置にあるときに第1のサイズよりも小さい第2のサイズを有し、第1の範囲の位置は完全開位置から予め定められた中間位置まで伸びる。
【0013】
燃焼チャンバの圧力によって開位置へ付勢され、油圧力によって閉位置へ付勢される可動弁部材をブローオフ弁に設けることによって、燃焼チャンバが過剰圧力状態になってもエンジンへの損傷を防止するために求められる解放に適応するための、十分速くかつ十分大きな開口で開くことができる配置を実現することができる。ブローオフ弁の可動部材のバランスをとるために油圧力を用いることによって、ブローオフ弁が開く圧力を確実に制御することができ、また、燃焼チャンバのガスを逃がすための広い通流面積を提供するために速くかつ広く開く構成を提供することができる。ブローオフ弁が開いた際に有効圧力が減少する第2の面は、ブローオフ弁が開くことによって燃焼チャンバ内の圧力が下落することに起因する不要な開閉の繰り返しを防止する。
【0014】
第1の態様の第1の可能な実施形態において、前記予め定められた位置は、完全開位置よりも閉位置に近い。
【0015】
第1の態様の第2の可能な実施形態において、第2の有効圧力面は、可動弁部材の第1の面、及び、第1の面よりも小さくかつ第1の面の反対方向を向いている可動弁部材の第2の面、によって形成される。
【0016】
第1の態様の第3の可能な実施形態において、第1の面は、可動弁部材の全ての位置において油圧力によって加圧され、第2の面は、第1の範囲の位置において油圧力によって加圧される。
【0017】
第1の態様の第4の可能な実施形態において、可動弁部材は、第2の面が第1の範囲の位置において油圧力によって加圧されるのを許容する口を開く。
【0018】
第1の態様の第5の可能な実施形態において、可動弁部材は、弁座と協働する弁体を備え、弁座は、シリンダ・カバーを通って伸びるブローオフ・ボアに配置される。
【0019】
第1の態様の第6の可能な実施形態において、弁座の主面は、ブローオフ・ボアの主方向に対して斜めに配置される。
【0020】
第1の態様の第7の可能な実施形態において、可動弁部材は、弁ステムに接続された弁体と、弁ステムに動作可能に接続された作動ピストンと、を備える。
【0021】
第1の態様の第8の可能な実施形態において、第1の面は、作動ピストンの一方側に配置され、第2の面は、作動ピストンの反対側に配置される。
【0022】
第1の態様の第9の可能な実施形態において、ブローオフ・ボアは、排気弁をバイパスするために、ブローオフ管を介して排気ダクト又は排気ガス受けに接続される。
【0023】
第1の態様の第10の可能な実施形態において、ブローオフ弁は、冷却手段を備え、冷却手段は、好ましくは冷却媒体をブローオフ弁に通流させるための流路を備える。
【0024】
第1の態様の第11の可能な実施形態において、エンジンは、エンジン負荷の増加に応じて増加しエンジン負荷の減少に応じて減少する圧力を有する油圧システムを備え、第2の有効圧力面は、油圧システムの油圧力によって加圧される。
【0025】
第1の態様の第12の可能な実施形態において、油圧システムは、燃料噴射弁に動力を提供する。
【0026】
第1の態様の第13の可能な実施形態において、油圧システムは、排気弁作動システムに動力を提供する。
【0027】
本開示の以下の詳細部分において、本発明は、図面に示された例示の実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】例示の実施形態における大型2ストローク・ディーゼル・エンジンの正面図である。
【
図2】
図1の大型2ストローク・エンジンの側面図である。
【
図3】
図1の大型2ストローク・エンジンのブロック図である。
【
図4】実施形態におけるブローオフ弁を備えたシリンダ・カバー及び排気弁の側面図である。
【
図6】実施形態におけるブローオフ弁の立面図である。
【
図7】ブローオフ弁の可動弁部材が異なる位置にある
図6のブローオフ弁の断面図である。
【
図8】ブローオフ弁の可動弁部材が異なる位置にある
図6のブローオフ弁の断面図である。
【
図9】ブローオフ弁の可動弁部材が異なる位置にある
図6のブローオフ弁の断面図である。
【
図10】
図6のブローオフ弁の異なる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の詳細な説明では、クロスヘッドを備える大型2ストローク・ターボチャージャー付き圧縮着火(ディーゼル)内燃エンジンが例示の実施形態によって説明される。
図1から
図3は、クランクシャフト42及びクロスヘッド43を備える、大型低速ターボチャージャー付き2ストローク圧縮着火エンジンを示している。
図3は、吸排気システムを備えたエンジンの図式的表示である。この例示の実施形態では、エンジンは、一列に並んだ6個のシリンダ1を備える。大型2ストローク・ターボチャージャー付き圧縮点火内燃エンジンは、典型的には、エンジン・フレーム45に収容され一列に並んだ5個から16個の間のシリンダを備える。エンジンは、例えば、船舶における主エンジン、又は、発電所において発電機を動作させるための定置エンジンとして使用され得る。エンジンの総出力は、例えば、5,000から110,000kWの範囲となり得る。
【0030】
エンジンは、シリンダ1の下部領域に掃気口19を備え、シリンダ1の上部のシリンダ・カバー22の中心に配置された排気弁4を備えた、2ストローク・ユニフロー型の圧縮着火エンジンである。シリンダを通るガス流れの主方向は、シリンダ1の底部の掃気口19からシリンダ1の上部の排気弁4へ向かう「ユニフロー(uniflow)」となる。給気は、大型の概ね中空の円筒体の形状をした給気受け2から個々のシリンダ1の掃気口19を通る。シリンダ1内のピストン41は、給気を圧縮し、燃料は燃料噴射弁(図示していない)からシリンダ・カバー22に注入され、燃焼に続いて排気ガスが生成される。
【0031】
排気弁4が開くと、排気ガスは、当該のシリンダ1に関連する排気ダクト35を通って、大型の中空の円筒体の形状をした排気ガス受け3へ流れ、第1の排気導管18を通ってターボチャージャー5のタービン6へ進み、そこから排気ガスは第2の排気導管7を通って大気へ流れる。シャフト8を介して、タービン6は、空気入口10を通って空気とともに供給された圧縮機9を駆動する。圧縮機9は、圧縮された給気を、給気受け2へつながる給気導管11へ運ぶ。
【0032】
導管11内の吸気は、圧縮機を約200℃にしたまま、給気を冷却するインタークーラ12を通り、36℃から80℃の温度になる。
【0033】
冷却された給気は、電気駆動モータ17によって駆動され、給気の流れをエンジンの低い又は部分的な負荷状態で加圧する補助ブロワ16を通って給気受け2へ導かれる。より高いエンジン負荷においては、ターボチャージャー圧縮機9は、十分に圧縮された掃気を運び、補助ブロワ16は逆止弁15を介してバイパスされる。
【0034】
図4及び
図5は、それぞれ、排気弁4及びシリンダ・カバー22の側面及び断面をより詳細に示している。排気弁4は、排気弁スピンドル44及びシリンダ・カバー22の中央開口に配置された一体式の弁体とともにシリンダ・カバー22に確実にボルト止めされる。排気弁スピンドル44は、排気弁スピンドル44の弁体が弁座に置かれている閉位置で示されている。排気弁4が開になると、燃焼チャンバ27は排気ダクト35に接続される。排気ダクト35は、一実施形態では排気ガス受け3に直接接続される。
【0035】
シリンダ・カバー22は、燃焼チャンバ27の上部を形成する。シリンダ・カバー22は、図面では視認することができない複数の冷却チャンネルを備えている。さらに、燃料噴射弁(典型的には各シリンダの単一燃料エンジンに対して3個の燃料弁及び各シリンダのデュアル燃料エンジンに対して6個の燃料弁)(燃料弁は図示されていない)は、燃焼チャンバ27内に突出する燃料弁のノズルを有するシリンダ・カバー22内の受け入れられるボアである。
【0036】
排気弁4は、弁スピンドル44の頂部において油圧チャンバ38を備える油圧排気弁アクチュエータ47を備えている。空気ばね37は、弁スピンドル44を上方(
図5において上方)、すなわち閉方向へ付勢し、油圧アクチュエータ47は、油圧アクチュエータ47が加圧されたら弁スピンドル44を開方向へ付勢する。したがって、排気弁スピンドル44の持ち上げは油圧アクチュエータ47に油圧を加えることによって行われ、空気ばね37は弁スピンドル44をその閉位置に確実に戻す。
【0037】
エンジンは、燃焼チャンバ27から排気ダクト35まで(図示されているように)延伸するブローオフ導管を備える。代替的に、ブローオフ導管は燃焼チャンバ27から排気ガス受け3まで延伸する。ブローオフ導管の横断面積は、不着火の場合又は燃焼チャンバ27に過剰圧力が生じるような他の場合に、十分速やかに燃焼チャンバ27の圧力を抜くために十分大きくなっている。ブローオフ弁50は、ブローオフ導管の開閉を制御し、ブローオフ弁50は、エンジンに損傷が生じるのを防ぐために過剰な圧力が生じた場合に燃焼チャンバ27内の圧力を抜くために十分速く十分大きな開口を開くことができる。
【0038】
ブローオフ導管の一部は、シリンダ・カバー22内のブローオフ・ボア29によって形成される。ブローオフ管36は、ブローオフ・ボア29を排気ダクト35又は排気ガス受け3へ接続する。
【0039】
図6から
図10は、ブローオフ弁50をさらに詳細に図示している。ブローオフ弁50は、(図示されているように)ブローオフ弁がシリンダ・カバー22内の適切なボア28(
図5)に挿入されるカートリッジとして使用され得るように、又は、(図示していない)ブローオフ弁がシリンダ・カバー22の一体的部品となり得るように、自身のハウジング51とともに提供され得る。
【0040】
ブローオフ弁50は、シリンダ・カバー22から突出するブラケット68とともにシリンダ・カバー22内のボア28に挿入される。ブラケット68は、ハウジング51にボルト止めされてもよいし、又は、ハウジング51の一体部品とすることもできる。ブラケット68は、ブローオフ弁50をシリンダ・カバー22に固定するボルト(
図5)を受け入れるためのボアを備える。ハウジング51は、ブローオフ弁50が開いたときに排気ガスの排出を許容するための大型出口(開口)58を備える。
【0041】
ブローオフ弁50は、
図7に示す閉位置と
図9に示す完全開位置との間で動くことができる可動弁部材52を備えており、すなわち可動弁部材52は、
図7に示す閉位置と
図9に示す完全開位置との間の範囲の位置にわたって前後に動くことができる。
図8において、可動弁部材52は中間位置で示されている。ブローオフ弁50は、可動弁部材52がその閉位置にないときに入口57から出口58へガスが流れるのを許容する。弁ハウジング51の中空63は、入口57を出口58へ接続する。弁座55は、入口57の周囲に配置される。
【0042】
可動弁部材52は、その長手方向の端部の一方に弁体54が設けられたスピンドル53を備える。スピンドル53の長手方向の反対側の端部にはダンパ要素69が備えられる。スピンドル53は、ハウジング51の長手方向のボアに摺動可能に受け入れられる。
【0043】
弁体54が設けられたスピンドル53の端部は、弁ハウジング51内において長手方向のボアを中空63に向けて伸びる。弁体54は、
図7及び
図10に示すように、可動弁部材52が閉位置にあるときに、開口57に露出している第1の有効圧力面59を形成する弁体54の面で弁座55に着座する。
【0044】
可動弁部材52が持ち上げられたときに、
図8及び
図9に示すように弁体54は中空63内に位置し、ガスを入口57(開口)から出口58(開口)へ流すための実質的な流れ領域を提供する。一実施形態では、弁座55の主面Zは、ブローオフ・ボア29を通る流れの制限を最小化するために、ブローオフ・ボア29への主方向に対して斜めに配置される。ブローオフ・ボア29が真っすぐの場合、主方向はボア29の流れの長手方向になる。ブローオフ・ボア29が曲がっている場合、主方向は弁座55がブローオフ・ボア29と交差する位置におけるカーブの局所方向となる。
【0045】
中空63は、弁スピンドル53をガイドする長手方向のボアの一方側に設けられる。この長手方向のボアの他方側には、作動ピストン56を受け入れる円筒チャンバが設けられる。作動ピストン56は円筒チャンバを第1のチャンバ60と第2のチャンバ66とに分ける。作動ピストン56は、可動弁部材52に動作可能に接続されるように、スピンドル53に固定される。一実施形態においてピストン56は、可動弁部材52の一体部分であってもよい。可動弁部材52は、第1の面61と、反対方向を向いた第2の面62と、を有する。第1の面61は、第1のチャンバ60の圧力に曝されており、第1のチャンバ60が加圧された際に可動弁部材52を閉位置へ付勢する。第2の面62は、第2のチャンバ66の圧力に曝されており、第2のチャンバ66が加圧された際に可動弁部材52を完全開位置に付勢する。第1の面61の面積は、第2の面62の面積よりも大きい。したがって、可動弁部材52は、第1のチャンバ60の圧力と第2のチャンバ66の圧力とが等しい場合には、閉位置へ付勢される。第1の面61及び第2の面62はともに、第2の有効圧力面を形成する。第1の有効圧力面59に作用する燃焼チャンバ27内の圧力は、第1の有効圧力面59の面積と燃焼チャンバ27内の圧力との乗算に対応する力で可動弁部材52を閉位置に付勢する。
【0046】
第1のチャンバ60は、供給ボア82及びダンパ・チャンバ65を介してブローオフ弁50の入口80と接続される。入口80、供給ボア82、及び、ダンパ・チャンバ65は、本実施形態ではブラケット68に配置されているが、ハウジング51に配置されていてもよい。
【0047】
入口80は、連続する最低水準の油圧を供給するエンジンの油圧システム88に接続される。好ましくは、油圧システム88は、一定の圧力又はエンジン負荷の増加とともに増加しエンジン負荷の減少とともに減少する圧力を供給する。
【0048】
口80における圧力は、ダンパ・チャンバ65及び供給導管82を介して第1のチャンバ60にかかり、この圧力は、第1の面61の面積と第1のチャンバ60内の圧力との乗算に相当する力で可動弁部材52を閉位置に付勢する。
【0049】
第2の導管64は、作動ピストン56が補償口71よりも上の位置にあるときに(
図7〜
図10においてブローオフ弁50の上方向)、補償口71を介して第2のチャンバ66を入口80に接続する。
図7及び
図10に示すように可動弁部材52が閉位置にあるときに、補償口71は作動ピストン56によってブロックされる。
【0050】
図7及び
図10の状況において、第2のチャンバ66は、低圧すなわち冷却入口75を介した口80の圧力よりも著しく低い圧力で加圧される。冷却入口75は、ブローオフ弁50を冷却するために、冷却油(油圧液)がチャンバ66へ流れるのを許容する。冷却出口74は、冷却油(油圧液)が流出するのを許容する。流れ制限(図示していない)は、第2のチャンバ66内の圧力を瞬間的に冷却液の圧力よりも相対的に高くするために、冷却入口75の上流及び冷却出口74の下流に配置される。
【0051】
燃焼チャンバ27内で過剰圧力が生じたときに、第1の有効圧力面59に作用する燃焼チャンバ27の圧力は、可動弁部材52の第1の圧力チャンバによって生成される圧力の反力を超え、可動弁部材52は、
図8に示すように完全開位置に向けて動き始める。
【0052】
可動弁部材52が所定量持ち上げられると第2の口71は開き、第2の圧力チャンバ66は口80におけるより高い圧力と接続される。冷却入口75及び冷却出口74に関連する制限は、チャンバ66内の圧力が冷却入口75及び冷却出口74それぞれを介して失われないことを保証する。したがって、第2の面62は、口80からの圧力によって加圧され、可動部材を完全開位置へ付勢する追加の力を生成する。可動弁部材52に作用する閉める力は著しく減少する。これは、ブローオフ事象の間にブローオフ弁50が安定して開いていることを保証するように機能する、可動弁部材52が多少開いている際の閉じる力を低下させるものである。燃焼チャンバ27のガスの圧力による開く力は、すなわち、弁体54が弁座55から持ち上げられた瞬間に中空63の加圧によって顕著に減少する。開く力の喪失におけるこの減少への対策をしなければ、1回の過剰圧力事象の間にブローオフ弁50の開閉が繰り返されるという望ましくない結果をもたらし得る。第2の口71が作動ピストン56によって覆われていないときには、閉じる力は減少するので、ブローオフ弁50の安定した開処理を提供する。
【0053】
したがって、油圧システム88からの圧力によって加圧される、可動弁部材52の閉方向に作用する第2の有効圧力面は、可動弁部材52の閉位置における第1のサイズと、可動弁部材52の第1の範囲の位置にあるときに前記第1のサイズより小さい第2のサイズと、を有し、第1の範囲の位置は、完全開位置から所定の中間位置まで伸びる。中間位置は、作動ピストン56に関連する第2の口71の位置に依存し、前記完全開位置よりも前記閉位置に近いほうが好ましいが、これは状況に応じて変化し、当業者は閉じる力が減少される適切な位置を決定することができる。可動弁部材52がいったん幾分か持ち上げられたときに閉じる力を減少することを保証する他の手段を用いることもできる。
【0054】
可動弁部材52が完全開位置へ向けて全行程を移動するときに、その移動は、スピンドル53の自由端にある減衰要素69と減衰チャンバ65との協働によって弱められる。減衰要素69は、円筒形の減衰チャンバ65に摺動して受け入れられるのに好適な直径の円筒要素であり、
図9に示すように可動弁部材52が完全開位置に静かに到達することを保証する。
【0055】
油圧システム88は、
図11を参照してより詳細に説明され、加圧された油圧液とともに供給導管45を提供するポンプ又はポンプ場41を備える。供給導管45の圧力は、50barから500barの間のいずれであってもよい。供給導管45は、加圧された油圧液を、燃料弁42、排気弁作動システム48、ブローオフ弁50など様々な消耗品を供給する共通レール又は疑似共通レールであってもよい。共通戻しライン49は、油圧液の様々な消耗品をタンクに接続する。
【0056】
MEラインの油圧システムのMAN B&W(登録商標)エンジンは、突然の局所消費ピークに対応するために局所アキュムレータが使用された疑似共通レールである。MEエンジンの油圧システムは、燃料弁及び排気弁に動力を提供する。典型的なMEエンジンでは、エンジン負荷に関連する油圧システムの圧力は以下のとおりとなる。
【0057】
エンジン負荷(%)−システム圧力(Bar)
20 − 222
30 − 222
40 − 225
50 − 227.5
60 − 240
70 − 255
80 − 270
90 − 282.5
100 − 295
【0058】
したがって、油圧は、エンジン負荷の増加によって増加し、エンジンが閉じると減少する。ただし、上記の表における数値は単なる例示であり、実際の圧力値は所与の種類のエンジンごとに、かつ、エンジンの種類ごとに変わり得ることに注意されたい。さらに、定格負荷のエンジン、すなわち負荷及び速度がエンジン種類に関連するL1負荷とは異なるエンジンもまた、典型的にはわずかに低い異なるシステム圧力を有する。
【0059】
燃焼チャンバ27における標準最大圧力は、上記の表に示されるように油圧システムの圧力と非常に類似する特性で、エンジン負荷の増加に応じて増加し、エンジン負荷の減少に応じて減少する。したがって、第1の有効圧力面59の面積の大きさに関連して第1の面61の面積の大きさに寸法決めすることによって、ブローオフ弁50は、実際のエンジン負荷によって燃焼チャンバ27の標準圧力よりもマージンの分だけ高い圧力において開くように寸法決めされる。マージンは、一定の差圧であってもよいし、又は、エンジン負荷の増加に応じて増加し、逆の場合も同様であってもよい。
【0060】
ブローオフ弁50は、口80へ供給される一定の圧力によっても動作し得る。この場合、圧力は、通常のエンジン動作中において燃焼チャンバ27の最高圧力がマージンを超えると、ブローオフ弁50が開くようにすべきである。例えば、最大予想圧力(すなわち100%エンジン負荷)が200Barである場合に、ブローオフ弁50が230Barの圧力において開くように設定される。ブローオフ弁50は、口80に供給される圧力を考慮して第1の有効圧力面59と第1の面61との比率を調整することによって、要求圧力において開くように設定され得る。
【0061】
(図示されていない)実施形態では、ブローオフ弁50は、エンジンの制御器に結合され、ブローオフ事象の際にはアラームを発行する。これに関して、ブローオフ弁50は、一実施形態では第2のチャンバ66の圧力を検出する圧力センサを備えている。第2のチャンバ66の圧力が冷却油の圧力を超えると、ブローオフ弁50は開いており、アラームが発行される。代替的に、可動弁部材52を運動センサによって監視することができ、可動弁部材52が閉位置から動いて離れたら、アラームが発行される。
【0062】
(図示していない)一実施形態では、エンジンが停止したときにブローオフ弁50を動作させるために、可動弁部材52を閉位置から離れる方向に付勢する皿ばね等の弾性手段を配置してもよい。
【0063】
一実施形態では、可動弁部材52が閉位置に付勢されるか又は完全開位置に付勢されるかを決定する力のバランスは、可動弁部材52に作用する燃焼チャンバ27のガスの圧力、及び、可動弁部材52に作用するブローオフ弁に供給される油圧液の圧力、のバランスのみによって決定される。したがって、もしエンジンが停止した際にブローオフ弁を動作させるための弾性手段があったとしたら、これらの弾性手段は、エンジンの動作中に可動弁部材52の動作に大きな影響を与えない弱い力を有することになる。
【0064】
本発明を様々な実施形態とともに説明した。しかしながら、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することによって、開示された実施形態に対する他のバリエーションが特許請求の範囲にかかる発明を実践する当業者によって理解され実施され得る。特許請求の範囲において、「備える」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞は「a」、「an」は複数形を排除するものではない。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという事実のみでは、これらの手段の組合せを効果的に使用できないということを意味しない。
【0065】
特許請求の範囲で使用される参照符号は、範囲を制限するものと解釈すべきではない。