(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ショベル系の掘削機をベースマシンとして、そのベースマシンのアームの先端部に、上下方向に周回移動するチェーン式の混合撹拌翼を備えた混合撹拌ヘッドを装着し、前記混合撹拌ヘッドの混合撹拌翼による原位置土の掘削およびその原位置土と固化材との混合撹拌を行いながら、地中に前記混合撹拌翼の周回移動面の幅寸法に相当する連続した鉛直な改良壁体を構築する地盤改良装置であって、
前記改良壁体の構築に際して、平面視にて構築すべき改良壁体の厚み寸法を二分する平面中心線に対し前記ベースマシンの履帯をほぼ平行に保ちつつ、前記混合撹拌翼の周回移動面と前記平面中心線とをほぼ直角とした上で、前記混合撹拌ヘッドを前記平面中心線方向に掘進させるようにした地盤改良装置において、
前記混合撹拌ヘッドは、本体部となる支柱の上端部と下端部との間に無端状をなす前記チェーン式の混合撹拌翼を巻き掛けたものである一方、
前記ベースマシンのアームの先端部と前記混合撹拌ヘッドとの間に、前記平面中心線と前記ベースマシンの平面視でのブームおよびアームの中心線とのなす角度を調整可能な取付角調整機構が設けられていて、
前記取付角調整機構は、
前記ベースマシンのアームの先端部に連結される固定板と、
前記混合撹拌ヘッドの上端部に連結されると共に前記固定板と重ね合わされる可動板と、
前記固定板と可動板の中心部を貫通するように前記支柱の中心線の延長線上に配置され、前記固定板に対して前記可動板を回転可能に連結支持している軸部材と、
前記固定板に対して前記可動板を回転させた位置に規制してねじ締め固定する締結固定手段と、
を備えていることを特徴とする地盤改良装置。
前記混合撹拌ヘッドは、前記支柱の上端部にモータとそれによって駆動される駆動輪を、前記支柱の下端部に従動輪をそれぞれ配置すると共に、それらの駆動輪と従動輪との間に前記チェーン式の混合撹拌翼を巻き掛けたものであって、
前記混合撹拌ヘッドの平面視において、張り側となる前記チェーン式の混合撹拌翼と緩み側となる前記チェーン式の混合撹拌翼とで挟まれた領域であって且つ前記チェーン式の混合撹拌翼の幅寸法内で、前記取付角調整機構の軸部材と、前記混合撹拌ヘッドの支柱、モータ、駆動輪および従動輪のそれぞれが重なり合うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
前記取付角調整機構は、前記可動板を含む混合撹拌ヘッドの前記固定板からの脱落を防止する脱落防止機構を備えていることを特徴とする請求項3に記載の地盤改良装置。
前記取付角調整機構は、前記固定板が前記ベースマシンのアームの先端部に対して着脱可能で、且つ前記可動板が前記混合撹拌ヘッドの上端部に対して着脱可能な中間ブラケット式のものとして形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の地盤改良装置。
前記取付角調整機構は、前記固定板が前記ベースマシンのアームの先端部に対して着脱可能で、且つ前記可動板が前記混合撹拌ヘッドの上端部に対して一体的に結合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の地盤改良装置。
前記平面中心線と前記ベースマシンの平面視でのブームおよびアームの中心線とのなす角度の最小角度を15°として鉛直な改良壁体を構築することを特徴とする請求項8に記載の改良壁体の構築方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された地盤改良装置では、混合撹拌ヘッドそのものの使用形態よりして、ベースマシンのアームの先端部と混合撹拌ヘッドとの間に介装される旋回機構も堅牢な構造のものとする必要があり、必然的にアクチュエータとその動力伝達系を含む旋回機構の形状および重量が過大となる傾向にある。そのため、混合撹拌ヘッドの重量に旋回機構の重量が加わるだけでなく、混合撹拌時に付着した土砂重量が加わり、ベースマシンの重量負荷が大きくなりすぎて、施工中のベースマシンの姿勢が不安定となるおそれがあった。
【0006】
この傾向は、後述する
図13に示すように、平面視にて構築すべき改良壁体の厚み寸法を二分する平面中心線に対しベースマシンの履帯を平行に保ちつつ、混合撹拌ヘッドにおける混合撹拌翼の周回移動面と前記平面中心線とを直角とした上で、上記平面中心線とベースマシンの平面視でのブームおよびアームの中心線とのなす角度が鋭角になるような姿勢にてベースマシンを構えて、ブームおよびアームの揺動動作方向に力に基づく上記平面中心線方向の分力を当該平面中心線方向への掘進ベクトルとして混合撹拌ヘッドを掘進させる場合に特に顕著となる。
【0007】
また、ベースマシンの先端部と混合撹拌ヘッドとの間に介装される旋回機構の高さ寸法が大きくなると、その分だけベースマシンのアーム先端から混合撹拌ヘッドの先端までの距離が大きくなる。そのため、地中に貫入した混合撹拌ヘッドを掘進させる場合に、混合撹拌ヘッドの下端部が上端部に比べて遅れ気味となって混合撹拌ヘッドの鉛直姿勢を維持できなくなり、掘進能力が低下することとなって好ましくない。この傾向は、混合撹拌ヘッドの長さが大きくなって、地中への貫入深度が大きくなるほど顕著となる。
【0008】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、機能上、最低限必要なベースマシンのアームの先端部に対する混合撹拌ヘッドの取付角調整のための調整自由度のみを残して、アクチュエータを廃止し、もって小型軽量で且つ使い勝手の良好な取付角調整機構を有する地盤改良装置とそれを用いた改良壁体の構築方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ショベル系の掘削機をベースマシンとして、そのベースマシンのアームの先端部に、上下方向に周回移動するチェーン式の混合撹拌翼を備えた混合撹拌ヘッドを装着し、前記混合撹拌ヘッドの混合撹拌翼による原位置土の掘削およびその原位置土と固化材との混合撹拌を行いながら、地中に前記混合撹拌翼の周回移動面の幅寸法に相当する連続した鉛直な改良壁体を構築する地盤改良装置であって、前記改良壁体の構築に際して、平面視にて構築すべき改良壁体の厚み寸法を二分する平面中心線に対し前記ベースマシンの履帯をほぼ平行に保ちつつ、前記混合撹拌翼の周回移動面と前記平面中心線とをほぼ直角とした上で、前記混合撹拌ヘッドを前記平面中心線方向に掘進させるようにした地盤改良装置である。
【0010】
その上で、前記混合撹拌ヘッドは、本体部となる支柱の上端部と下端部との間に無端状をなす前記チェーン式の混合撹拌翼を巻き掛けたものである一方、前記ベースマシンのアームの先端部と前記混合撹拌ヘッドとの間に、前記平面中心線と前記ベースマシンの平面視でのブームおよびアームの中心線とのなす角度を調整可能な取付角調整機構が設けられている。
【0011】
そして、前記取付角調整機構は、前記ベースマシンのアームの先端部に連結される固定板と、前記混合撹拌ヘッドの上端部に連結されると共に前記固定板と重ね合わされる可動板と、前記固定板と可動板の中心部を貫通するように前記支柱の中心線の延長線上に配置され、前記固定板に対して前記可動板を回転可能に連結支持している軸部材と、前記固定板に対して前記可動板を回転させた位置に規制してねじ締め固定する締結固定手段と、を備えているものである。
【0012】
好ましい態様としては、前記混合撹拌ヘッドがベースマシンのアームの先端部に吊り下げ支持される際の重量バランスに基づく姿勢安定性を考慮し、前記混合撹拌ヘッドは、前記支柱の上端部にモータとそれによって駆動される駆動輪を、前記支柱の下端部に従動輪をそれぞれ配置すると共に、それらの駆動輪と従動輪との間に前記チェーン式の混合撹拌翼を巻き掛けたものであって、前記混合撹拌ヘッドの平面視において、張り側となる前記チェーン式の混合撹拌翼と緩み側となる前記チェーン式の混合撹拌翼とで挟まれた領域であって且つ前記チェーン式の混合撹拌翼の幅寸法内で、前記取付角調整機構の軸部材と、前記混合撹拌ヘッドの支柱、モータ、駆動輪および従動輪のそれぞれが重なり合うように配置されている。
【0013】
同様に、重量バランスに基づく姿勢安定性を考慮した別の好ましい態様としては、前記取付角調整機構の固定板と可動板は共に水平で且つ互いに平行であって、前記混合撹拌ヘッドの平面視において、張り側となる前記チェーン式の混合撹拌翼と緩み側となる前記チェーン式の混合撹拌翼とで挟まれた領域であって且つ前記チェーン式の混合撹拌翼の幅寸法内に納まるように、前記取付角調整機構の固定板および可動板の大きさがそれぞれ設定されている。
【0014】
改良壁体を構築する際の負荷を考慮した別の好ましい態様としては、前記取付角調整機構は、前記可動板を含む混合撹拌ヘッドの前記固定板からの脱落を防止する脱落防止機構を備えている。
【0015】
より具体的な好ましい態様としては、前記取付角調整機構の軸部材が前記脱落防止機構の一部を兼ねていて、前記脱落防止機構は、前記固定板と可動板の中心部をそれぞれに貫通した前記軸部材の両端部に、それぞれの貫通穴からの前記軸部材の抜け出しを阻止する抜け止め部材を不離一体に設けてある。
【0016】
使い勝手の良さに着目した場合の別の好ましい態様としては、前記取付角調整機構は、前記固定板が前記ベースマシンのアームの先端部に対して着脱可能で、且つ前記可動板が前記混合撹拌ヘッドの上端部に対して着脱可能な中間ブラケット式のものとして形成されている。
【0017】
その一方で、構造のさらなる簡素化と共に、前記取付角調整機構と混合撹拌ヘッドとの連結部での堅牢性に着目した場合の別の好ましい態様としては、前記取付角調整機構は、前記固定板が前記ベースマシンのアームの先端部に対して着脱可能で、且つ前記可動板が前記混合撹拌ヘッドの上端部に対して一体的に結合されている。
【0018】
また、前記地盤改良装置を用いて行う改良壁体の構築方法の好ましい態様として、前記取付角調整機構の機能により、前記平面中心線と前記ベースマシンの平面視でのブームおよびアームの中心線とのなす角度を鋭角に保った上で、前記混合撹拌ヘッドを前記平面中心線方向に掘進させて鉛直な改良壁体を構築する。
【0019】
なお、前記平面中心線と前記ベースマシンの平面視でのブームおよびアームの中心線とのなす角度の最小角度は、本発明者等の実験に基づく知見よりして15°程度である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、取付角調整機構の高さ寸法を初めとしてその形状および重量が小さくなって、取付角調整機構を含む混合撹拌ヘッドの使い勝手が良好なものとなり、ベースマシンの姿勢の不安定さを招くことなく安定して施工を行えるようになる。
【0021】
また、平面視にて構築すべき改良壁体の厚み寸法を二分する平面中心線とベースマシンの平面視でのブームおよびアームの中心線とのなす角度が鋭角となるような姿勢にてベースマシンを構えて、ブームおよびアームの揺動動作方向に力に基づく上記平面中心線方向の分力を当該平面中心線方向への掘進ベクトルとして混合撹拌ヘッドを掘進させる場合において、特に狭隘な現場においても無理なく施工することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜14は本発明に係る地盤改良装置を実施するためのより具体的な第1の形態を示していて、特に
図1〜4は地盤改良装置の基本構造を示している。すなわち、
図1は地盤改良装置を用いた改良壁体の構築状況を示す側面説明図であり、
図2は
図1の平面図を示している。
【0024】
図1,2において、1は汎用型の建設機械の一つである無限軌道(履帯)式またはクローラ式のショベル系掘削機械、例えば履帯2を有する油圧ショベルもしくはバックホウ等のベースマシン(母機)であって、ベースマシン1の上部旋回体としての旋回ベース3に搭載された揺動式(起伏式または起倒式)のブーム4の先端には同じく揺動式のアーム5が連結されている。そして、ベースマシン1におけるアーム5の先端には、アタッチメントとして原位置土の掘削と固化材(地盤改良材)との混合撹拌のためのいわゆるトレンチャー式の混合撹拌ヘッド6が後述する中間ブラケット方式の取付角調整機構7を介して着脱可能に装着されている。
【0025】
なお、8はブーム4の揺動動作のためのブームシリンダ、9はアーム5の揺動動作のためのアームシリンダ、10はアタッチメントである混合撹拌ヘッド6の揺動動作のためのアタッチメントシリンダである。また、Bはいわゆる地中連続壁の形態で鉛直姿勢にて構築しようとする改良壁体である。
【0026】
ここでは、
図2において、便宜上、改良壁体Bの平面視においてその改良壁体Bの厚み寸法を二分する中心線を改良壁体Bまたは構築すべき改良壁体Bの平面中心線C1と定義する。同様に、ベースマシン1の平面視でのブーム4およびアーム5の中心線をブーム4等の平面中心線C2と定義するものとする。
【0027】
図3は
図1に示した地盤改良装置を拡大して混合撹拌翼の周回移動面側から見た側面説明図であり、
図4は
図3の右側面図を示している。
【0028】
これらの
図3,4に示すように、混合撹拌ヘッド6は、剛性の高いフレーム11を本体部(母体)としていて、このフレーム11は、幅広で且つ略二股状のヨーク部12と、ヨーク部12の下部に連結された真直で四角柱状の支柱としてのポスト部13とから構成されている。ヨーク部12の上端の固定側リンクプレート14は、後述する
図5に示すような取付角調整機構7を介してアーム5の先端に着脱可能に連結される。なお、支柱としてのポスト部13は四角柱状のものに限らず、四角柱以外の多角柱状や円柱状のものであっても良い。
【0029】
そして、ポスト部13の上部に設けた油圧モータ15駆動の例えばチェーンスプロケットタイプの駆動輪16(
図5参照)と同じくポスト部13の下部に設けた従動輪17との間にエンドレス(無端状)のドライブチェーン18を巻き掛けてある。ドライブチェーン18には、当該ドライブチェーン18の長手方向とほぼ直交するように、
図3に示す幅寸法Wの複数の混合撹拌翼19を略等ピッチで装着してある。これらの複数の混合撹拌翼19がドライブチェーン18とともに上下方向に周回駆動されることになる。
【0030】
なお、混合撹拌翼19にはその長手方向に沿って複数の掘削刃であるカッタービット20(
図5参照)を設けてある。また、ドライブチェーン18は、ポスト部13に設けた複数のガイドローラ23に所定の張力が付与された状態で案内・支持されている。
【0031】
さらに、ポスト部13の先端部(下端部)には吐出ノズル21を設けてあり、この吐出ノズル21には例えば水と固化材としての粉体状のセメントとを予め混ぜ合わせたスラリ状の固化材が図示外の圧送ポンプと配管22を介して圧送されるようになっている。これにより、吐出ノズル21から地中に向けてスラリ状の固化材を吐出・噴射することが可能となっている。
【0032】
図5は
図3に示した混合撹拌ヘッド6の上端部の拡大図を示し、
図6は
図5の平面図を示している。また、
図7は
図3のa−a線に沿った拡大断面図を示している。
【0033】
図5に示すように、ベースマシン1のアーム5と混合撹拌ヘッド6との間に介装された取付角調整機構7は、アーム5側となるアーム側ブラケット26と、混合撹拌ヘッド6側となるヘッド側ブラケット27とを主要素として構成されていて、後述するように両者は相対回転可能に連結されている。
【0034】
アーム側ブラケット26は基板となる円板状の固定板28に所定距離隔てて一対のリンクプレート29を立設したものである。他方、ヘッド側ブラケット27も基板となる円板状の可動板30上に下向きに立設した一対のリンクプレート31がアーム側ブラケット26のリンクプレート29に対して90°位相がずれている点を除き、アーム側ブラケット26とほぼ同構造のものとなっている。
【0035】
そして、アーム側ブラケット26の固定板28とヘッド側ブラケット27の可動板30とは、共に水平で且つ互いに平行であって、それら両者が互いに密着するように重ね合わせた上で、固定板28と可動板30の中心部を貫通する中空円筒状の軸部材32を介してアーム側ブラケット26とヘッド側ブラケット27とが相対回転可能に連結されている。この軸部材32の中心は、
図6,7に示すように、混合撹拌ヘッド6のフレーム11を構成している四角柱状のポスト部13の中心線の延長線上に位置している。なお、アーム側ブラケット26の固定板28とヘッド側ブラケット27の可動板30の水平度および両者の平行度について、多少の誤差はそれぞれ許容される。
【0036】
また、アーム側ブラケット26の固定板28とヘッド側ブラケット27の可動板30とを貫通した軸部材32の両端部には、軸部材32よりも大径のリング状の抜け止め部材35が嵌め合わされた上で溶接固定されている。この抜け止め部材35は、
図9に示すように、リング状の抜け止めフランジ35aの周囲に補強を目的とした複数のリブ35bを溶接固定したもので、抜け止めフランジ35aおよび複数のリブ35b共に軸部材32に溶接固定される。
【0037】
その上で、アーム側ブラケット26の固定板28とヘッド側ブラケット27の可動板30の周縁部にそれぞれに形成された
図10に示す多数のボルト穴33にそれぞれに挿入される締結固定手段としてのボルト・ナット36を介して両者が締結固定されるようになっている。これにより、軸部材32は、取付角調整機構7の一構成要素として、アーム側ブラケット26とヘッド側ブラケット27との相対回転を許容する軸体として機能しつつ、同時に当該軸部材32の両端部に溶接固定される抜け止め部材35と共に脱落防止機構50を形成している。また、多数のボルト・ナット36による締結力を解除するならば、軸部材32を回転中心としたアーム側ブラケット26の固定板28とヘッド側ブラケット27の可動板30との相対回転が可能となっている。
【0038】
なお、アーム側ブラケット26の固定板28とヘッド側ブラケット27の可動板30との相対回転に備えて、
図9に示すように、固定板28および可動板30と各抜け止め部材35の抜け止めフランジ35aとの間には微少な隙間を確保してある。また、
図9に示した抜け止め部材35に代えて、
図11,12に示した抜け止め部材39,40を用いることも可能である。
図11に示した抜け止め部材39は、実質的に
図9に示した抜け止めフランジ35aを廃止して、複数のリブ35bのみとしたものである。また、
図12に示した抜け止め部材40は、実質的に
図9に示した複数のリブ35bを廃止して、抜け止めフランジ35aのみとしたものである。
【0039】
ここで、
図10に拡大して示すように、固定板28と可動板30の双方に形成されている複数のボルト穴33はそれぞれが固定板28および可動板30の円周方向に長い長穴状のものとなっている。そして、それぞれのボルト穴33の長径方向の長さgに比べて、隣り合うボルト穴33同士の間に残されたブリッジ部33aの長さhの方が小さくなるように、g>hの関係に設定さている。なお、双方の長さg,h共に、長穴状のボルト穴33の長手方向両端での円弧の中心間距離を示している。これにより、アーム側ブラケット26に対するヘッド側ブラケット27との微細な角度調整が可能となっている。
【0040】
さらに、アーム側ブラケット26のリンクプレート29はアーム5および当該アーム5側のリンク部材5aに対して連結ピン34により着脱可能に連結されるとともに、ヘッド側ブラケット27のリンクプレート31は混合撹拌ヘッド6側の上端部の固定側リンクプレート14に対して連結ピン38により着脱可能に連結される。
【0041】
なお、混合撹拌ヘッド6の固定側リンクプレート14はアーム側ブラケット26のリンクプレート29と共通化されており、取付角調整機構7を使用しない場合には、混合撹拌ヘッド6の固定側リンクプレート14を連結ピン34または38を介して直接的にアーム5側に連結することが可能となっている。
【0042】
ここで、
図5,6に示すように、混合撹拌ヘッド6の構成要素と取付角調整機構7の構成要素との配置にあたって、混合撹拌ヘッド6における四角柱状のポスト部13の中心線の延長線上に、取付角調整機構7の軸部材32の中心が一致するように配置してあることは先に述べた通りである。
【0043】
また、
図5のほか
図6,7に示した混合撹拌ヘッド6の平面図および断面図において、混合撹拌翼19が装着されているドライブチェーン18の張り側での混合撹拌翼19の周回移動面と、同じくドライブチェーン18の緩み側での混合撹拌翼19の周回移動面とで挟まれた領域であって、且つ混合撹拌翼19の幅寸法W(
図3参照)の領域内に納まるように、取付角調整機構7の固定板28および可動板30のそれぞれの大きさが設定されている。
【0044】
同様に、取付角調整機構7を含む混合撹拌ヘッド6の平面視において、上記領域内に納まるように、取付角調整機構7の軸部材32と、
図3〜5に示した混合撹拌ヘッド6のポスト部13、油圧モータ15、駆動輪16および従動輪17のそれぞれが重なり合うように配置されている。つまり、取付角調整機構7を含む混合撹拌ヘッド6の平面視において、油圧モータ15の中心と駆動輪16および従動輪17のそれぞれの回転中心とが一致していて、それらの中心線上で交差するかたちで取付角調整機構7の軸部材32の中心が位置している。
【0045】
すなわち、混合撹拌翼19が装着されているドライブチェーン18の張り側での混合撹拌翼19の周回移動面と同じくドライブチェーン18の緩み側での混合撹拌翼19の周回移動面とで挟まれた領域であって、且つ混合撹拌翼19の幅寸法Wの領域とは、
図8にハッチング(斜線)を施した領域Eである。この領域E内に納まるように、取付角調整機構7の固定板28および可動板30のそれぞれの大きさが設定されている。同時に、領域E内に納まるように、取付角調整機構7の軸部材32と、混合撹拌ヘッド6のポスト部13、油圧モータ15、駆動輪16および従動輪17のそれぞれが平面視にて重なり合うように配置されている。
【0046】
このような取付角調整機構7を用いることにより、固定板28と可動板30とを締結固定している多数のボルト・ナット36の脱着を行って、固定板28に対して可動板30を任意の角度だけ回転させれば、取付角調整機構7におけるアーム側ブラケット26とヘッド側ブラケット27とのなす角度、ひいては
図2に示した改良壁体Bの平面中心線C1とブーム4等の平面中心線C2とのなす角度θを任意の角度に設定することが可能である。
【0047】
なお、
図2では改良壁体Bの平面中心線C1とブーム4等の平面中心線C2とのなす角度θがθ=90°である。これに対して、後述する
図13では、取付角調整機構7の自由度を使って、改良壁体Bの平面中心線C1とベースマシン1のブーム4等の平面中心線C2とのなす角度θを15°程度に設定した上での施工状況を示している。
【0048】
また、
図5に示した取付角調整機構7には、軸部材32と抜け止め部材35とからなる脱落防止機構50が付加されていることにより、アーム側ブラケット26の固定板28とヘッド側ブラケット27の可動板30とを締結固定している多数ボルト・ナット36の全てが仮に脱落したとしても、アーム側ブラケット26の固定板28とヘッド側ブラケット27の可動板30とが切り離されることがないように、つまり、アーム側ブラケット26とヘッド側ブラケット27とが脱落防止機構50により実質的に不離一体に連結されていて、アーム側ブラケット26からのヘッド側ブラケット27の脱落が阻止される構造となっている。これにより、例えば過負荷によるトラブル発生の抑制化と安全性の向上が図られている。
【0049】
言い換えるならば、
図5に示した多数のボルト・ナット36は、アーム側ブラケット26とヘッド側ブラケット27との相対回転位置を規制しつつ両者を位置決めして締結固定する機能を有している。その一方、脱落防止機構50は、アーム側ブラケット26とヘッド側ブラケット27との相対回転自由度を確保しつつ、上記ボルト・ナット36に依存することなく、アーム側ブラケット26とヘッド側ブラケット27とを実質的に不離一体に連結して、両者の切り離し(アーム側ブラケット26からのヘッド側ブラケット27の脱落)を防止する機能を有している。
【0050】
また、上記取付角調整機構7の構造として、アーム側ブラケット26に対しヘッド側ブラケット27を、円筒状の軸部材32を回転中心として任意の角度に回転させた後、多数のボルト・ナット36にて締結固定する構造としていることにより、例えば特許文献1の
図5,6に開示されているようなモータ駆動方式のものと比べて、駆動部のトラブルが少なく取付角調整機構7の構造を簡素化できるとともに、堅牢性および耐久性にも優れたものとなる。
【0051】
加えて、
図8に示したように、ハッチングを施した領域E内に納まるように、取付角調整機構7の固定板28および可動板30の大きさが設定されていて、同時に、領域E内に納まるように、取付角調整機構7の軸部材32と、混合撹拌ヘッド6のポスト部13、油圧モータ15、駆動輪16および従動輪17のそれぞれが重なり合うように配置されている。これは、例えば施工条件によっては、ベースマシン1のアーム5の先端部までも混合撹拌された安定処理土内に埋没させて施工することがあり、固定板28や可動板30が原地盤と干渉して混合撹拌ヘッド6の掘進が困難となることがあることから、このような事態を避ける上で上記の各要素の配置は有効である。加えて、上記の各要素の配置のもとでは、ベースマシン1のアーム5から混合撹拌ヘッド6が吊り下げ支持される際の重量バランスに基づく姿勢安定性が良く、例えば混合撹拌ヘッド6を地中から引き抜いた上で移動させる際の機動性にも優れたものとなる。
【0052】
このような構造の混合撹拌ヘッド6を用いて改良壁体Bの構築のための施工を行う場合、一般的には、
図1,2に示すように、構築しようとする鉛直な改良壁体Bの長手方向とベースマシン1の履帯2を平行にセットする。ただし、従来の一般的な工法では、上記取付角調整機構7による回転自由度は有していない。その上で、油圧モータ15の正転または逆転駆動により、ドライブチェーン18とともに複数の混合撹拌翼19を上下方向に周回駆動させる。さらに、混合撹拌ヘッド6全体を例えばブーム4やアーム5の揺動力(揺動動作方向の力)を利用して直立姿勢にて地中に貫入する。そして、吐出ノズル21からスラリ状の固化材を吐出しながら、ベースマシン1を構築しようとする改良壁体Bと平行に横行移動させて、混合撹拌ヘッド6を掘進させることになる。
【0053】
これにより、複数の混合撹拌翼19により掘削された原位置土が同じく複数の混合撹拌翼19によりスラリ状の固化材と混合撹拌されて、混合撹拌ヘッド6の掘進方向後方側に連続した鉛直姿勢の改良壁体Bが構築されることになる。なお、地中に構築される改良壁体Bの壁体厚は混合撹拌翼19の長さW(
図3参照)とほぼ同等のものとなる。
【0054】
この場合において、混合撹拌ヘッド6におけるドライブチェーン18の張り側と緩み側に相当する部位であって複数の混合撹拌翼19による掘削と混合撹拌にあずかる部位、すなわち混合撹拌翼19の上下方向での周回移動面(改良壁体Bの構築方向前方側に面する周回移動面と構築方向後方側に面する周回移動面)は改良壁体Bの構築方向と直交したものとなる。そして、改良壁体Bの構築方向前方側に面する周回移動面を上向きとするか下向きとするかは、地盤の硬さや土質性状に応じて決定する。
【0055】
従来の一般的な改良壁体の構築方法では、
図1の平面図である
図2に示すように、改良壁体Bの平面中心線C1とベースマシン1のブーム4等の平面中心線C2とが直交するように、すなわち双方の平面中心線C1,C2同士のなす角度θが90°となるようにセットしている。なお、
図2の寸法Lは改良壁体Bの平面中心線C1からベースマシン1の旋回ベース3の旋回中心までの距離(作業半径)、寸法L
1は改良壁体Bの側面からベースマシン1の履帯2の側面までの距離をそれぞれ示している。
【0056】
その上で、混合撹拌ヘッド6を鉛直姿勢にて地中に貫入し、改良壁体Bの構築方向前方側に面することになる混合撹拌翼19の周回移動面において、その混合撹拌翼19が例えば上方から下方に向かって周回移動するように回転駆動させることにより、改良壁体Bの構築方向前方側に面することになる混合撹拌翼19の周回移動面側にて混合撹拌翼19が積極的に原位置土を掘削して、掘削された原位置土が固化材と混合撹拌されながらそれと反対側の混合撹拌翼19の周回移動面側に送り込まれる力を反力として、混合撹拌ヘッド6自体を改良壁体Bの構築方向に掘進させることになる。
【0057】
かかる改良壁体Bの構築方法において、混合撹拌ヘッド6の掘進力はそれ自体の混合撹拌時の反力とベースマシン1の旋回ベース3の旋回力とによる掘進であって、その掘進力は大きな掘進力とはなり得ないものである。
【0058】
そこで、本実施の形態では、基本的には、改良壁体Bの平面中心線C1とブーム4等の平面中心線C2となす角度θが後述する
図13に示すように鋭角となるような姿勢で混合撹拌ヘッド6を構えるものとする。これにより、ベースマシン1が本来的に有しているブーム4やアーム5およびアタッチメントシリンダ10のシリンダ力を最大限に活用して、従来から課題となっている混合撹拌ヘッド6の掘進力の増大化を図った改良壁体の構築方法とするものである。
【0059】
先にも述べたように、従来の一般的な改良壁体Bの構築方法における掘進力は、混合撹拌時の反力とベースマシン1における旋回ベース3の旋回力を掘進力とするものであって、その掘進力は小さく、硬質地盤等の掘進においてはその速度も遅く、経済スピードによる掘進は困難である。そもそも、ショベル系の掘削機の旋回力は、アーム5の先端のアタッチメントであるバケットを空中(気中)で旋回させる力があれば十分であって、大きな旋回力を必要とするものではない。その一方で、ショベル系の掘削機の掘削力は、ブームシリンダ8やアームシリンダ9(以下、アームシリンダ9等と言う。)の伸縮動作に基づくブーム4およびアーム5の揺動動作方向の力とアタッチメントシリンダ(バケットシリンダ)10の伸縮力による掘削力に依存するものであって、ベースマシン1の規格にもよるが大きな掘削力を有している。
【0060】
本実施の形態では、このアームシリンダ9等のほかアタッチメントシリンダ10の伸縮動作に基づくブーム4およびアーム5の揺動動作方向の力とアタッチメントシリンダ10の伸縮力による掘削力を改良壁体構築方向への混合撹拌ヘッド6の掘進力(掘進ベクトル)として積極的に活用する改良壁体の構築方法である。
【0061】
図13は例えば両側を家屋M等で挟まれた狭隘な街区道路での改良壁体Bの構築のための施工状況を示す平面図である。同図に示すように、ベースマシン1の履帯2を改良壁体Bの構築方向と平行となるようにセットした上で、ベースマシン1における旋回ベース3の旋回中心から混合撹拌ヘッド6の回転中心までの距離(作業半径)Lを保ちながらベースマシン1を改良壁体Bの構築位置に近付ける。そうすると、平面中心線C1,C2同士のなす角度θが鋭角となる姿勢で混合撹拌ヘッド6を構えることとなる。
【0062】
図13では角度θをθ≒15°に設定していて、取付角調整機構7の回転自由度を使って、
図6の状態からアーム側ブラケット26に対しヘッド側ブラケット27を混合撹拌ヘッド6と共に角度αとして75°程度回転させて、
図14に示すように、最終的に平面中心線C1,C2同士のなす角度θを15°程度に設定している。
【0063】
この場合において、混合撹拌ヘッド6における混合撹拌翼19の周回移動面は改良壁体Bの平面中心線C1と直角となるようにセットする。ただし、ベースマシン1の履帯2と改良壁体Bの平面中心線C1(=改良壁体Bの構築方向)との平行度、および混合撹拌ヘッド6における混合撹拌翼19の周回移動面と改良壁体Bの平面中心線C1との直角度の多少のばらつきは許容される。
【0064】
その状態にて、アームシリンダ9等のほかアタッチメントシリンダ10を伸縮動作させると、その伸縮動作に基づくブーム4およびアーム5の揺動動作方向の力Pは改良壁体Bの構築方向の分力P1またはP2を生じ、この分力P1またはP2は改良壁体Bの構築方向への掘進力となる。言い換えるならば、この掘進力は、ブーム4およびアーム5の揺動動作方向の力Pより生じるベクトルであって、混合撹拌ヘッド6の掘進ベクトルP1またはP2となる。
【0065】
なお、アームシリンダ9等のほかアタッチメントシリンダ10の伸縮動作ストロークが限界となったならば、所定量だけベースマシン1を前進または後退動作させる。ただし、ベースマシン1の後退力および前進力は掘進力に寄与するものではなく、掘進ベクトルP1またはP2によって改良壁体Bが所定量だけ構築されたならば、その構築相当量だけベースマシン1自体を後退動作または前進動作させるにすぎない。また、
図13の符号Fは敷地境界を示す。
【0066】
図13ではベースマシン1の向きを逆にした場合を仮想線で示しているが、いずれの掘進方向であっても、混合撹拌翼19の周回移動面と構築すべき改良壁体Bの平面中心線C1とを略直角とした上で、混合撹拌ヘッド6を改良壁体Bの平面中心線C1方向に掘進させるので、掘進ベクトルP1またはP2はいずれの方向においても同等のものとして得ることができる。また、
図13の例では改良壁体Bとベースマシン1の履帯2とのなす距離がぼぼ零で、先にも述べたように平面中心線C1,C2同士のなす角度θが15°程度となっている。これにより、
図2と
図13とを比較した場合に、距離Lが両者共に等しくても、距離L
1は
図13の方が著しく小さくなる。
【0067】
上記の掘進ベクトルP1またはP2は、改良壁体Bの構築のための実質的な掘進力であって、改良壁体Bの平面中心線C1とブーム4等の平面中心線C2とのなす角度θ2が小さければ小さいほど、大きな掘進ベクトルP1またはP2が得られる。この場合において、前記角度θの最小角度は、
図13に示すように、ベースマシン1の履帯2を改良壁体Bのベースマシン1側の側面と干渉しない程度まで近付けた時の角度であって、その角度は先に述べた15°程度となる。それ故に、角度θ2≒15°での掘進ベクトルP1またはP2が最大の掘進力となる。
【0068】
図15は本発明に係る地盤改良装置の第2の実施の形態を示していて、
図5に示した取付角調整機構7に代わる別の取付角調整機構の例を示している。
【0069】
図15に示す取付角調整機構47は、
図5に示したものと比較すると明らかなように、ピン脱着式のアーム側ブラケット26とヘッド側ブラケット57とが円筒状の軸部材32を介して相対回転可能に連結されている点で、
図5に示したものと同じ構造である。その一方、ヘッド側ブラケット57の可動板30に対して、混合撹拌ヘッド6の上端部の固定側リンクプレート14が
図5のようなピン脱着によらずに直接的に溶接等にて一体的に接続されている点で、
図5に示したものと異なっている。それ以外の構造は
図10に示したものと同様である。なお、
図15では、
図5に示したボルト・ナット36の図示を省略している。
【0070】
このような構造の取付角調整機構47によれば、取付角調整機構47が実質的に混合撹拌ヘッド6と一体化されていることにより、
図5に示したものと比べて構造の簡素化が図れるとともに、ベースマシン1のアーム5に対する脱着も容易となる。
【解決手段】ベースマシンのアーム5と混合撹拌ヘッド6との間に、その混合撹拌ヘッド6の角度調整のための中間ブラケット方式の取付角度調整機構7が介装されている。アーム側ブラケット26の固定板28とそれに対して回転可能なヘッド側ブラケット27の可動板30とが、両者を貫通する軸部材32を解して結合されている。さらに、固定板28と可動板30とが多数のボルト・ナット36により締結固定されている。軸部材32の両端には抜け止め部材35が不離一体に固定され、アーム側ブラケット26からのヘッド側ブラケット27の脱落防止機構50を形成している。