(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に従って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る内視鏡システム1の外観図である。内視鏡システム1は、内視鏡装置(スコープとも呼ばれる)10、挿入形状観測装置200、映像処理装置300、光源装置400及びモニタ500を有する。なお、挿入形状観測装置200と映像処理装置300は、まとめてプロセッサとも呼ばれる。
【0011】
内視鏡システム1は、ドクターによって内視鏡装置10が操作されて、被検体である患者の体腔内の画像を得て、内視鏡検査等を行うものである。
図1及び以下においては、下部消化管内視鏡装置を用いて下部内視鏡検査を行う場合を例に説明する。
【0012】
内視鏡装置10は、ドクターによって操作される操作部20と体腔内を撮影するための撮像部74(
図2参照)が先端に設けられた挿入部30を有する。また、挿入部30には、挿入形状を算出するための、コイルと検知デバイスが複数配置される。詳細は後述する。
【0013】
挿入形状観測装置200は、体腔内での挿入部30の挿入形状を求めるためのものである。挿入形状観測装置200は、挿入部30の変形によるコイルと検知デバイス間の距離変化を計測して、挿入形状を算出する。挿入形状観測装置200は、算出した挿入形状に基づき、挿入形状画像を生成する。挿入形状観測装置200は、コイル駆動信号を出力する発振器等を有するが、挿入形状の算出等についての詳細は後述する。
【0014】
映像処理装置300は、挿入部30の先端に設けられた撮像部74で取得された画像信号に各種処理を行い、体腔内の映像である内視鏡画像データを出力する。光源装置400は、撮影のために体腔内を照射する照射光を発生する光源である。モニタ500は、映像処理装置300から出力される内視鏡画像や挿入形状観測装置200で生成される挿入形状画像を表示するものである。
【0015】
<第1実施形態>
図2は、内視鏡システム1の内部構成を示す全体ブロック図である。主に、挿入形状観測処理を説明するためのブロック図である。
【0016】
挿入部30は、先端に撮像部74を有する。撮像部74は、レンズ部70と光学像を光電変換して画像信号を出力する撮像素子72を有する。撮像素子72は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)である。
【0017】
挿入部30は、挿入形状を観測するためのコイル40及びRF(radio frequency)タグ50を備える。第1実施形態では、検知デバイスとして、RFタグ50を適用する例を示す。検知デバイスは、コイル40から放射される電磁波や磁界を検出して、対応する信号を出力する素子であればよい。RFタグは、RFIDタグとも呼ばれ、制御回路やメモリを内蔵し、外部からの電磁波により電力を発生して、所定の応答信号を放射する。
【0018】
コイル40は、コイル駆動信号が印加されて電磁波を放射し、放射した電磁波に対応してRFタグ50から放射される応答信号を受信する。挿入部30は、コイル40と挿入形状観測装置200間で信号を伝送する伝送線路60を設ける。挿入部30は、挿入方向(長手方向)に沿った表面近傍の位置に、所定の間隔で、コイル40とRFタグ50を複数設け、伝送線路60も複数設ける。また、挿入部30は、内部に光源装置400から供給される照明光を内部に導くライトガイドを設ける。
【0019】
挿入形状観測装置200は、CPU210、メモリ230、通信IF240、発振器250、A/D変換部260、映像信号出力部270を有する。CPU210は、挿入形状観測装置200の処理全体を統括的に制御するものである。CPU210は、メモリ230に記憶された制御プログラムを読込んで、制御プログラムに従って、各制御処理を実行する。メモリ230は、制御プログラムやデータを記憶する。
【0020】
通信IF240は、挿入形状観測装置200と映像処理装置300間で、制御データの通信を行い、映像処理装置300から挿入形状観測装置200へ出力される画像データ(内視鏡画像データ)を受信する。発振器250は、CPU210の指示により、コイル40へコイル駆動信号を出力する。A/D変換部260は、発振器250へ入出力する信号の電圧波形をサンプリングし、デジタル信号を出力する。
【0021】
発振器250から出力されるコイル駆動信号は、伝送線路60を通じてコイル40に伝送され、印加される。コイル40は、印加されたコイル駆動信号に対応して電磁波を放射する。コイル40から放射された信号はRFタグ50にて検知される。RFタグ50は、放射された信号を受信して、対応する応答信号を放射する。なお、発振器250は、コイル駆動信号として、パルス信号もしくはFM(変調)信号等を出力してもよい。
【0022】
コイル40は、RFタグ50から放射される応答信号を受信する。コイル40で受信された応答信号は、伝送線路60(コイル駆動信号と同じ経路)を通じて発振器250に戻ってくる。A/D変換部260は、発振器250から出力されるコイル駆動信号の電圧波形をサンプリングし、対応する電圧をCPU210へ出力する。また、A/D変換部260は、コイル40で受信された応答信号の電圧波形をサンプリングし、対応する電圧をCPU210へ出力する。
【0023】
CPU210は、A/D変換部260から出力されるコイル駆動信号に対応する電圧と、A/D変換部260から出力される応答信号に対応する電圧との時間差を計測し、時間差からコイル40とRFタグ50の間の距離を算出する。CPU210は、挿入部30の挿入方向に沿って複数設けたコイル40とRFタグ50について、隣り合うコイル40とRFタグ50を1つの組とし、各組の距離を取得して、各組の距離から挿入形状を算出し、挿入形状画像を生成する。コイル40とRFタグ50の組み合わせ配置の具体例は、
図8で後述する。
【0024】
なお、1つのコイル40の付近に複数のRFタグが存在し、1つのコイル40の電磁波により複数のRFタグが応答して、当該1つのコイル40は、同時に複数のRFタグからの応答信号を受ける可能性がある。特定のRFタグ50の応答信号以外を排除する必要がある。そのため、例えば、所望以外のRFタグ50から応答信号が出力されないようにするために、各RFタグ50のアンテナ部の共振周波数を変更するようにしてもよいし、あるいはフィルタを設けるようにしてもよい。
【0025】
また、RFタグ50からの応答信号に含まれるRFタグ50のIDによって、複数の応答信号から、所望のRFタグ50の応答信号を識別するようにしてもよい。ID情報によって所望のRFタグ50の応答信号を識別する手段は、A/D変換部260に設けるようにしてもよいし、CPU210で行うようにしてもよい。
【0026】
映像信号出力部270は、ビデオエンコーダ等で構成され、CPU210で生成される画像データ(挿入形状画像データに内視鏡画像データが合成された画像データ)を所定の映像信号(例えば、HDMIやRGB)に変換して出力する。
【0027】
映像処理装置300は、CPU310、メモリ330、通信IF340及び信号処理部350を有する。CPU310は、映像処理装置300の処理全体を統括的に制御するものである。CPU310は、メモリ330に記憶された制御プログラムを読込んで、制御プログラムに従って、各制御処理を実行する。
【0028】
メモリ330は、制御プログラムやデータを記憶する。通信IF340は、映像処理装置300と挿入形状観測装置200間で、画像データ(内視鏡画像データ)や制御データ等の通信を行う。信号処理部350は、挿入部30の撮像部74で取得された画像信号に対し、A/D、AGC(Automatic Gain Control)やCDS(Correlated Double Sampling)等の必要な各種画像信号処理を施す。
【0029】
光源装置400は、キセノンランプ等からなる発光部410を有する。光源装置400には、グラスファイバー等からなるライトガイド420が接続される。
【0030】
図3A、
図3Bは、挿入部30の内部に設けられる伝送線路60やコイル40等を示す図である。
図3Aは、挿入部30を挿入方向(長手方向)に垂直な面で断面した図である。
図3Bは、体腔内に挿入された挿入部30を挿入方向(長手方向)に平行な面で断面した図である。
図3Bの左側が体腔内で、右側が挿入形状観測装置200のある方向である。
【0031】
図3A、
図3Bに示すように、挿入部30の内部には、ライトガイド420や撮像部74への信号ケーブル(不図示)が設けられる。挿入部30の外表面に近い部分に伝送線路60が設けられる。ここでは、伝送線路60として、2組の伝送線路60a、60cが、180°対向して配設される例を示す(
図3A参照)。伝送線路60aはコイル40aに接続され、伝送線路60cはコイル40cに接続される。
【0032】
図4は、コイル40に対する伝送線路60の配線例のタイプを示す図である。
図4Aは、各コイル40に1組ずつ伝送線路60が配線されるタイプの配線図である。
図3で示した伝送線路60a、60cに対応する例である。発振器250には、コイル40の個数分の伝送線路60が接続される。発振器250は、駆動させるコイル40に対応する伝送線路60にコイル駆動信号を出力する。
【0033】
図4Bは、各コイル40に共通の伝送線路60が配線されるタイプの配線図である。そして、この場合には、共通の伝送線路60と各コイル40間には、特定のコイル40だけにコイル駆動信号が印加されるように、CPU210により制御される切換えスイッチ64がそれぞれ設けられる。
【0034】
図5は、挿入形状観測装置200のCPU210による制御処理を説明するための、機能ブロック図である。CPU210は、コイル駆動制御部212、挿入形状算出部214、挿入形状画像生成部216、重畳部218及び画像処理部220を有する。コイル駆動制御部212、挿入形状算出部214、挿入形状画像生成部216、重畳部218及び画像処理部220は、メモリ230に記憶された制御プログラムを読込んだCPU210により実現される。
【0035】
コイル駆動制御部212は、コイル40にコイル駆動信号を印加するように発振器250を制御する。コイル駆動制御部212は、所定の順番で各コイル40にコイル駆動信号を印加するように、発振器250を制御する。
【0036】
挿入形状算出部214は、コイル40にコイル駆動信号が出力されるタイミングと、RFタグ50からの応答信号を受信するタイミングの時間差から、コイル40とRFタグ50の距離を計測し、計測した距離から挿入形状を算出する。
【0037】
挿入部形状算出処理を、簡単に説明する。挿入形状算出部214は、A/D変換部260から出力される発振器250のコイル駆動信号に基づく電圧と、A/D変換部260から出力される応答信号に基づく電圧から、[コイル40とRFタグ50]の1つの組における時間差を計測し、これを各組について行う。
【0038】
挿入形状算出部214は、[コイル40とRFタグ50]の各組で計測した時間差から、各組での[コイル40とRFタグ50]間の距離を計測する。そして、挿入形状算出部214は、挿入部30上の各組の座標位置と距離に基づき、メモリ230のパターンテーブル232を参照して、挿入形状を算出する。パターンテーブル232は、距離行列のパターンと、実際(実測)の湾曲量・湾曲方向との関係が予め記載されたテーブルである。パターンテーブル232を、実測距離行列データとも呼ぶ。
【0039】
挿入形状画像生成部216は、算出された挿入形状に基づき、挿入形状を画像化させた挿入形状画像データを生成する。
【0040】
画像処理部220は、映像処理装置300から出力された内視鏡画像データに、所定の画像処理を施すものである。重畳部218は、画像処理部220で所定の画像処理が施された内視鏡画像データに、挿入形状画像データを重畳して、合成画像を作成する。合成画像は、映像信号出力部270からエンコードされて出力され、モニタ500に表示される。
図12は、モニタ500に表示される合成画像の例である。合成画像E1には、内視鏡画像E2と挿入形状画像E3が含まれる。
【0041】
次に、
図6から
図9を参照して、挿入部形状算出処理の詳細を説明する。
図6は、発振器250からコイル駆動信号が出力されて応答信号が戻る様子を示す模式図である。
【0042】
発振器250からコイル駆動信号が出力され、伝送線路60を介してコイル40に印加され、コイル40から電磁波が放射される。コイル40から距離Dだけ離れた位置に配置されるRFタグ50がコイル40に応答信号を返す。コイル40は、応答信号を受信し、受信された応答信号は伝送線路60を介して、発振器250に戻る。応答信号が発振器250に戻るまでの時間は、伝送線路60による信号伝達遅延量tlが一定の状態においては、コイル40とRFタグ50間の距離Dによって決定される。
【0043】
図7は、A/D変換部260から対応する電圧が出力されるタイミングを示す図である。A/D変換部260から、コイル駆動信号に対応する電圧が出力された後、dt時間だけ遅れて応答信号に対応する電圧が出力される。時間差dtが、コイル40とRFタグ50の距離に応じて変化する。前述のように、時間差dtが、挿入形状算出部214で計測される。
【0044】
次に、時間差dtから距離Dを算出する方法を説明する。
図8は、挿入部30における、コイル40とRFタグ50の配置例である。なお、
図8におけるコイル40とRFタグ50の配置例は、距離Dを算出する方法を説明するための一例である。
【0045】
図8に示す例では、挿入部30先端から操作部20までの間で、2つのRFタグ50からなるRFタグの組(b/dタイプとも称す)と、2つのコイル40からなるコイル40の組(a/cタイプとも称す)が、交互に所定間隔に配置される。具体的には、挿入部30先端から順に、[RFタグ50−1bとRFタグ50−1d]、[コイル40−1aとコイル40−1c]、[RFタグ50−2bとRFタグ50−2d]、[コイル40−2aとコイル40−2c]・・・が、配置される。
【0046】
また、一組のRFタグ50は隣り合う一組のコイル40に対し、それぞれ図の極座標系φにおいて所定角度(本例では、90°)ずらして配置される。具体的には、最も内視鏡挿入部先端側にある1組のコイルであるRFタグ50−1bはφ=90°、RFタグ50−1dはφ=270°の位置に配置される。続いて、コイル40−1aはφ=0°、コイル40−1cはφ=180°の位置に配置される。同様に、RFタグ50−2bはφ=90°、RFタグ50−2dはφ=270°の位置に配置される。符号の末尾のアルファベット(a,b,c,d)が同一のコイル40やRFタグ50は、位相が同一であることを示す。
【0047】
また、コイル40は、符号の末尾のアルファベットに対応した伝送線路60の線路上に配置された接続とする。つまりコイル40−1aやコイル40−2aは伝送線路60a(
図8では不図示)に、コイル40−1cやコイル40−2cは伝送線路60c(
図8では不図示)に接続するといった形である。従って、コイル40−1aやコイル40−2a・・・と伝送線路60aとは、詳細は省略するが、
図4Bで説明したような構成となる。
【0048】
以下では、[隣り合う2つのRFタグ50と2つのコイル40]からなる組をセクション(Sc)と呼び(
図8参照)、このセクションを単位として、距離行列を算出する例を示す。
図8に示すように、[RFタグ50−1bとRFタグ50−1d]及び[コイル40−1aとコイル40−1c]による組合せを、Sc1とし、Sc1から、距離行列を求める例を説明する。
【0049】
まず、[コイル40−1aとRFタグ50−1b]の時間差を計測する。コイル40−1aに、発振器250から伝送線路60(a)を介し、コイル駆動信号が印加され、電磁波が放射される。電磁波を検出したRFタグ50−1bからの応答信号が放射される。RFタグ50−1bから放射される応答信号がコイル40−1aで検出され、A/D変換部260で受信される。
【0050】
A/D変換部260は、コイル40−1aへのコイル駆動信号に対応する電圧を出力する。また、A/D変換部260は、複数のRFタグ50からの応答信号が入力されるが、前述した手段(例えば、RFタグのID情報で識別する)によりRFタグ50−1bからの応答信号に対応する電圧を出力する。コイル40−1aへのコイル駆動信号による電圧と、コイル40−1aで受信したRFタグ50−1bからの応答信号による電圧の時間差が、挿入形状算出部214により計測される。
【0051】
次に、[コイル40−1aとRFタグ50−1d]の時間差を計測する。コイル40−1aに、コイル駆動信号が印加される。A/D変換部260は、コイル40−1aへのコイル駆動信号による電圧を出力する。また、A/D変換部260は、RFタグ50−1dからの応答信号による電圧を出力する。コイル40−1aへのコイル駆動信号による電圧と、コイル40−1aで受信したRFタグ50−1dからの応答信号による電圧の時間差が、挿入形状算出部214により計測される。
【0052】
同様にして、[コイル40−1cとRFタグ50−1b]の時間差、[コイル40−1cとRFタグ50−1d]の時間差が計測される。
【0053】
図9は、A/D変換部260から、Sc1とSc2の一部の電圧がCPU210に出力されるタイミングを示す図である。[コイル40−1aとRFタグ50−1b]、[コイル40−1aとRFタグ50−1d]、[コイル40−1cとRFタグ50−1b]、[コイル40−1cとRFタグ50−1d]の各時間差をt1a―1b、t1a―1d、t1c―1b。t1c―1dとして示す。
【0054】
そして、[コイル40−1aとRFタグ50−1b]の距離をD1a―1bとすると、D1a―1b=(t1a―1b―tl)×0.5cとなる。cは信号の伝搬速度、tlは伝送線路60の長さによる遅延である。
【0055】
Sc1における、コイル40とRFタグ50間の距離行列は、以下式(1)のようになる。
【数1】
【0056】
挿入部30が湾曲すると、この隣り合う計4つのコイル40とRFタグ50同士の位置関係が変化するため、結果距離行列の値が変化する。例えば、
図8の極座標系において、+θ方向に挿入部が湾曲した場合、RFタグ50−1bとRFタグ50−1dが、コイル40−1aの距離が接近し、D1a−1b、D1a−1dが小さくなる。
【0057】
加えて、このとき+φ方向に湾曲すると、RFタグ50−1bに比べてRFタグ50−1dのほうがよりコイル40−1aに接近するため、D1a−1b<D1a−1dとなる。
【0058】
そして、θおよびφの値に応じて式(1)の距離行列がどの程度変化するかを予め実測等で求めテーブル化したパターンテーブル232を参照して、実際に得た距離行列との相関係数を求め、最も相関度が高いものが現在の内視鏡挿入部の湾曲量・湾曲方向であると判断する。
【0059】
そして、この形状の算出を、挿入部30の長さ全体について行って、挿入部30全体の3次元的な形状を算出することができる。
図8に示すように、先端から順番に、Sc1、Sc2、Sc3、・・・Sc(n−1)とし、コイル40とRFタグ50の隣り合う組(セクション)を組み合わせることで、挿入部30全体の3次元的な形状を算出することができる。
【0060】
以上のようにして、本実施形態に係る内視鏡システム1では、各コイル40-RFタグ50間の距離から、3次元的に内視鏡挿入部の挿入形状を得ることができる。
【0061】
次に、本実施形態に係る挿入形状算出に係わる処理の手順を説明する。
図10及び
図11は、本実施形態に係る挿入形状算出の手順を説明するためのフローチャートである。
図10は、メインのフローチャートである。
図11は、サブルーチンである。
図10と
図11における処理は、主に挿入形状観測装置200のCPU210で実行される処理である。
【0062】
図10において、挿入形状算出部214は、初期化処理として、セクション(Sc)番号kを1にする(ステップS10)。コイル駆動制御部212は、コイル駆動制御を行う(ステップS12)。
【0063】
図11のサブルーチンに移る。なお、この処理は、セクションkに属するコイル40とRFタグ50の各組み合わせに対して、ステップS100〜ステップS112が実行されるものとする。つまり、
図8のSc1の例で説明すると、Sc1に属する[コイル40−1aとRFタグ50−1b]、[コイル40−1aとRFタグ50−1d]、[コイル40−1cとRFタグ50−1b]、[コイル40−1cとRFタグ50−1d]の4つの組み合わせにつき、ステップS100〜ステップS112が、それぞれ実行される。
【0064】
コイル駆動制御部212は、発振器250にコイル駆動信号の出力を指示する。発振器250は、セクションkの所定のコイルに、コイル駆動信号を出力する(ステップS100)。例えば、発振器250はコイル40−1aにコイル駆動信号を出力する。
【0065】
A/D変換部260は、発振器250から出力されたコイル駆動信号を検出して(ステップS102)、対応する電圧を挿入形状算出部214に出力する。
【0066】
コイル40が、コイル駆動信号により電磁波を放射する(ステップS104)。RFタグ50がコイル駆動信号により放射された電磁波を検出する(ステップS106)。RFタグ50が、検出した電磁波に応じて、応答信号を出力(放射)する(ステップS108)。
【0067】
コイル40が、RFタグ50から放射された応答信号を受信する(ステップS110)。A/D変換部260は、伝送線路60を介して応答信号を検出し、応答信号をサンプリングして、対応する電圧を挿入形状算出部214に出力する(ステップS112)。例えば、A/D変換部260は、RFタグ50−1dの応答信号による対応する電圧を挿入形状算出部214に出力する。前述のように、この処理を、セクションkに属する他のコイル40とRFタグ50の組み合わせについて行い、終了したら
図10のステップS14に進む。
【0068】
挿入形状算出部214は、A/D変換部260から出力されるコイル駆動信号に対応する電圧と応答信号に対応する電圧に基づき、コイル駆動電圧が出力される出力タイミングと応答信号を受信した受信タイミングとの時間差を算出する(ステップS14)。
【0069】
挿入形状算出部214は、A/D変換部260からの電圧波形を読み出して、発振器250がコイル駆動信号を出力してから、RFタグ50による応答信号をコイル40が受信するまでの時間差を算出する。
図8の例では、1つのセクションにつき、4つの時間差(t1a―1b、t1a―1d、t1c―1b。t1c―1d)が算出される。
【0070】
挿入形状算出部214は、時間差を解析し、コイル40・RFタグ50間の距離行列(式(1))を生成する(ステップS16)。
【0071】
挿入形状算出部214は、生成した距離行列と、メモリ230に予め格納しておいたパターンテーブル232とのマッチングを行い、該当セクションにおける湾曲量・湾曲方向を算出する(ステップS18)。
【0072】
挿入形状算出部214は、セクション番号kに1をインクリメントする(ステップS20)。挿入形状算出部214は、セクション番号kがラストであるかを判断する(ステップS22)。挿入形状算出部214は、セクション番号kがラストでないと判断する(ステップS22No)、ステップS12に戻り、次の番号のセクションに移り、同様の手順にて解析を実施する。
【0073】
挿入形状算出部214は、セクション番号kがラストであると判断すると(ステップS22Yes)、挿入形状算出部214により挿入部30全体の挿入形状が算出されたことになるので、挿入形状算出部214は、各セクションの挿入形状データを挿入形状画像生成部216に通知する。挿入形状画像生成部216は、各セクションの挿入形状データに基づき、対応する挿入形状画像データを生成する(ステップS24)。
【0074】
重畳部218は、生成された挿入形状の画像データを内視鏡画像データに重畳させ、合成画像データを生成する(ステップS26)。映像信号出力部270は、合成画像をモニタ500に出力する。モニタ500には、
図12で示したように、内視鏡画像E2と挿入形状画像E3が合成された合成画像E1が表示される。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る内視鏡システム1によれば、発振器250から出力されたコイル駆動信号が、内視鏡装置10の挿入部30に沿って設けられる伝送線路60を伝送する。伝送されたコイル駆動信号は、コイル40において放射され、放射された電磁波がRFタグ50により検出される。RFタグ50は、電磁波を検出して、対応する応答信号を放射する。RFタグ50より放射される応答信号をコイル40は検出する。コイル40で検出された応答信号は再び伝送線路60を通じて発振器250に戻ってくる。
【0076】
A/D変換部260は、発振器250の入出力電圧波形をサンプリングする。挿入形状算出部214は、対応する電圧の時間差に基づき、上記式(1)で示した各コイル40・RFタグ50間の距離行列を求める。挿入形状算出部214は、求めた距離行列とメモリ230に格納しておいた湾曲量・湾曲方向に対応した距離行列のパターンテーブル232とのマッチングを行い、該当セクションにおける湾曲量・湾曲方向を求める。
【0077】
挿入形状算出部214は、これを挿入部30に設けたコイル40とRFタグ50の組み合わせ数(セクションの数)だけ繰り返し、全てのセクションの湾曲量・湾曲方向を算出し、挿入部30全体の挿入形状を算出する。これにより、本実施形態では、アンテナユニット等の大掛かりな装置を必要とせず、より簡単な構成により、内視鏡装置10における挿入部30の形状を算出することが可能となる。
【0078】
<第2実施形態>
第1実施形態では、RFタグ50を検知デバイスに適用した例を説明した。検知デバイスは、RFタグに限るものではなく、例えばコイルを適用することも可能である。第2実施形態では、検知デバイスにコイルを適用した例を説明する。
【0079】
図13は、第2実施形態における、内視鏡システム1の内部構成を示す全体ブロック図である。第2実施形態の内視鏡システム1の外観図は、
図1と同じであるので省略する。
図13では、第1実施形態と異なる、挿入部30bと挿入形状観測装置200bのみを示す。
【0080】
挿入部30bには、コイル40、伝送線路60、検知デバイスであるセンスコイル42(第2のコイルとも呼ぶ)と、伝送線路62とが設けられる。コイル40及び伝送線路60は、第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0081】
センスコイル42は、RFタグ50に代わる検知手段である。センスコイル42には、それぞれ伝送線路62が設けられ、伝送線路62は挿入形状観測装置200bに接続される。
【0082】
挿入形状観測装置200bは、CPU210b、メモリ230、通信IF240、発振器250、A/D変換部260b、映像信号出力部270を有する。メモリ230、通信IF240、発振器250、映像信号出力部270については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。発振器250は、所定のコイル40にコイル駆動信号を印加する。
【0083】
A/D変換部260bは、コイル40に印加されるコイル駆動信号を検出しサンプリングして対応する電圧をCPU210bに出力する。さらに、A/D変換部260bは、センスコイル42で発生する誘導電流を応答信号として伝送線路62を介して検出し、サンプリングして対応する電圧をCPU210bに出力する。
【0084】
CPU210bは、A/D変換部260bから出力されるコイル駆動信号と応答信号の時間差を算出する。以降、CPU210bが挿入形状を算出して、挿入形状画像を生成する処理は、第1実施形態と同様であるので、省略する。
【0085】
以上のような構成で、コイル40に発振器250よりコイル駆動信号が印加され、コイル40が発生した磁界により、センスコイル42には、誘導電流が発生する。センスコイル42で発生する誘導電流が応答信号として伝送線路62により、A/D変換部260bに入力される。A/D変換部260bは、コイル駆動信号と応答信号に対応する電圧をそれぞれCPU210bに出力する。CPU210bは、第1実施形態と同様に、時間差から挿入形状を算出して、挿入形状画像を生成し、合成画像をモニタ500に出力する。
【0086】
上記の各実施形態により、アンテナシステムが不要になり、コンパクトな構成によって内視鏡装置挿入部の挿入形状を取得する内視鏡システムを提供することができる。
【0087】
上記の各実施形態においては、発振器250を内視鏡システム1の挿入形状観測装置200に設置する場合を例に説明している。しかしながら、本実施形態に係る内視鏡装置10の挿入部30の挿入形状を算出する方法を実現するためには、かかる構成に限定されるものではない。例えば、内視鏡装置10の操作部20に発振器250、及びCPU210等の挿入形状観測装置200に含まれる機能を設置する構成とすることもできる。この場合、特に携帯型の内視鏡システムにおいては内視鏡装置のみで全ての機能を搭載できる点で有用性が高いといえる。
【0088】
更には、上記の各実施形態においては、コイル40・検知デバイス間の信号伝達時間から挿入部の挿入形状を算出しているが、算出方法としてはそれに限らない。信号の伝達速度からコイル40・検知デバイス間の距離を求めるのではなく、信号の受信感度(コイル40・検知デバイス間の透過係数等)から距離を求め、挿入形状を算出することも可能である。また、コイル40についても、コイルとしての形状に限定されるものではなく、周囲に電磁界を形成するものであれば同様の効果を得ることができる。
【0089】
また、本実施形態では、挿入形状観測装置200、映像処理装置300と光源装置400とを別体の装置として説明したが、挿入形状観測装置200、映像処理装置300と光源装置400とを、2つ以上組み合わせて構成するものであってもよい。
【0090】
また、内視鏡装置10と映像処理装置300との間で伝送される画像信号は、電気信号に限らず、例えば電気信号を光に変調して送受信が行われるものであっても良い。また、内視鏡装置10と映像処理装置300との間で画像信号は、ワイヤによって伝送されるものに限らず、無線によって伝送されるものであっても良い。
【0091】
また、光源装置400の光源は、レーザー光源を用いるものであってもよい。また、内視鏡装置10と別体の光源装置400から、ライトガイドで光源が供給される構成を説明したが、これに限らず、例えば内視鏡装置10の挿入部30先端に半導体光源(LEDやレーザー)を設けるようにしてもよい。
【0092】
なお、上記においては、CPU210が挿入形状を算出することとしている。しかし、かかる構成に限定されるものではなく、例えば、FPGA(field-programmable gate array)等により、上記の挿入形状の算出処理を実現する構成とすることもできる。また、CPU210による処理は、その一部または全部をハードウェアで構成してもよい。また、発振器250やA/D変換部260を、ソフトウェア処理で実現するようにしてもよい。
【0093】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でのその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。