特許第6188993号(P6188993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188993内視鏡のカバー取り外し治具および内視鏡システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188993
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】内視鏡のカバー取り外し治具および内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   A61B1/00 650
   A61B1/00 715
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-512069(P2017-512069)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2016067414
(87)【国際公開番号】WO2017006705
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2017年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-135339(P2015-135339)
(32)【優先日】2015年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】山谷 高嗣
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−184838(JP,A)
【文献】 特開平07−313439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔に挿入する内視鏡の挿入部の先端に設けられる先端構成部に装着される内視鏡用の先端カバーを取り外すカバー取り外し治具であって、
前記先端カバーの周囲を覆う包囲部と、
前記包囲部の内部に前記先端カバーを突き当てた際に前記先端カバーの開口部の中に入り、前記先端カバーに接触して押圧可能な、前記包囲部の内面に張り出す突起部と、
を有することを特徴とする内視鏡のカバー取り外し治具。
【請求項2】
前記突起部は、前記先端カバーの開口部の縁の一部に接触して前記縁の一部を周方向に押圧することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡のカバー取り外し治具。
【請求項3】
前記内視鏡は前記挿入部に挿入される処置具の先端を揺動させる揺動台を有し、
前記突起部は、前記先端カバーに設けた揺動台収納部に挿入されて位置することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡のカバー取り外し治具。
【請求項4】
前記突起部は、前記先端構成部に装着された前記先端カバーが突き当てられた状態の時に、前記揺動台が配置される領域を避けて配置されることを特徴とする請求項に記載の内視鏡のカバー取り外し治具。
【請求項5】
前記突起部は、前記先端構成部に装着された前記先端カバーが突き当てられた状態の時に、起上した前記揺動台が位置する部分を避けて配置されることを特徴とする請求項に記載の内視鏡のカバー取り外し治具。
【請求項6】
前記突起部は、前記挿入部の長手軸を中心に回転させたときに生じる応力が、前記先端カバーが変形する応力よりも大きな応力に耐性を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡のカバー取り外し治具。
【請求項7】
前記先端カバーは、前記先端構成部に対して係止部を介して取り付けられ、
前記突起部は、前記挿入部の長手軸を中心に回転させたときに生じる応力が、前記係止部による前記先端カバーと前記先端構成部との取り付けが解除される応力よりも大きな応力に耐性を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡のカバー取り外し治具。
【請求項8】
管腔に挿入する挿入部と、前記挿入部の先端に設けられる先端構成部に装着された先端カバーと、を有する内視鏡と、
前記先端カバーの周囲を覆う包囲部と、
前記包囲部の内部に前記先端カバーを突き当てた際に前記先端カバーの開口部の中に入り、前記先端カバーに接触して押圧可能な、前記包囲部の内面に張り出す突起部と、
を有する先端カバー取り外し治具と、
を含むことを特徴とする内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の可撓管の先端構成部に装着された先端カバーを取り外すカバー取り外し治具および内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡の可撓管等の挿入機器は、先端構成部に開口部を有し、チャンネル内を挿通して開口部から種々の機能を有する処置具、例えば、生体組織に対して高周波電流を利用して切除処置等を行う高周波処置具を延出している。
【0003】
先端構成部は、通常、複数の金属部材を組み合わせて構成しているため、挿入された高周波処置具がその金属部材に接触又は近接している場合には、それらの金属部材に高周波電流が伝搬される、又は電流帰還路の一部として利用されている場合がある。このため、生体の体腔内に高周波処置具を導入する場合には、処置対象以外の生体組織に高周波電流が印加されないように、遮蔽する措置をとらなければならない。その対策として、挿入部の先端構成部は、露出する金属部材を覆うための先端カバーを装着している。
【0004】
例えば、特許文献1:特許第4855824号公報には、樹脂材料によりキャップ形状に形成された先端カバーが提案されている。この先端カバーは、塑性変形部を備える係止部を有し、取り外しの際には係止部の指掛け部を押し指先で押し開いて、塑性変形させて再利用を防止する機能を備えている。
【発明の概要】
【0005】
通常、使用後の先端構成部に装着されている先端カバーは、滅菌処理を含む洗浄工程の前に取り外されている。従って、先端カバー内部には患者の体液等がまだ付着している可能性がある状態であるため、素手による取り外しは行わずに、処置用手袋を嵌めた状態で行われる場合が多い。
【0006】
前述した特許文献1で提案される先端カバーは、径が細い先端構成部に装着されているため、先端カバーの径も比較的細くなり、指掛け部も小さく作られている。そのため、手袋を嵌めた状態で指掛け部に指先を掛けて引き裂くことは、想定しているよりも手間取ることが多く、また使用後に拭き取りせずに濡れている状態で先端カバーを取り外そうとした場合には、指先が滑ってしまい、手袋も破損する可能性もある。
【0007】
本発明は、内視鏡の挿入部の先端構成部へ容易に装着可能であり、高周波電流の漏出を防止する機能を有し、簡易な操作で取り外しができる内視鏡の先端カバー取り外し治具および内視鏡システムを提供する。
【0008】
本発明に従う実施形態の内視鏡のカバー取り外し治具は、管腔に挿入する内視鏡の挿入部の先端に設けられる先端構成部に装着される内視鏡用の先端カバーを取り外すカバー取り外し治具であって、前記先端カバーの周囲を覆う包囲部と、前記包囲部の内部に前記先端カバーを突き当てた際に前記先端カバーの開口部の中に入り、前記先端カバーに接触して押圧可能な、前記包囲部の内面に張り出す突起部と、を有する。
さらに、本発明に従う実施形態の内視鏡システムは、管腔に挿入する挿入部と、前記挿入部の先端に設けられる先端構成部に装着された先端カバーと、を有する内視鏡と、前記先端カバーの周囲を覆う包囲部と、前記包囲部の内部に前記先端カバーを突き当てた際に前記先端カバーの開口部の中に入り、前記先端カバーに接触して押圧可能な、前記包囲部の内面に張り出す突起部と、を有する先端カバー取り外し治具と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る先端カバーが装着された内視鏡の先端構成部を上方から見た断面構造を示す断面図である。
図2図2は、分離されている先端カバーを上方から見た外観構成を示す図である。
図3図3は、分離されている先端カバーを側方から見た外観構成を示す図である。
図4図4は、先端カバーが未装着の先端構成部を上方から見た外観構成を示す図である。
図5図5は、先端カバーが未装着の先端構成部を側方から見た外観構成を示す図である。
図6A図6Aは、カバー取り外し治具を正面から見た構成を示す図である。
図6B図6Bは、カバー取り外し治具を側方から見た断面構成を示す断面図である。
図7図7は、先端構成部に装着された先端カバーにカバー取り外し治具を宛がった状態を示す断面図である。
図8図8は、先端カバーにカバー取り外し治具を宛がった取り外し前の状態を示す断面図である。
図9図9は、先端カバーにカバー取り外し治具を宛がった取り外し中の状態を示す断面図である。
図10図10は、先端カバーにカバー取り外し治具を宛がう状態を概念的に示す図である。
図11図11は、カバー取り外し治具により押される先端カバーの箇所を示す図である。
図12図12は、先端構成部に装着する先端カバーの状態を示す部分的断面図である。
図13図13は、第1の実施形態の第1の変形例に係る先端カバーを上方から見た外観構成を示す図である。
図14図14は、第1の変形例における係止部が設けられた先端構成部を上方から見た外観構成を示す図である。
図15図15は、先端カバーが装着された先端構成部を上方から見た断面構造を示す断面図である。
図16A図16Aは、第1の実施形態の第2の変形例に係るカバー取り外し治具を正面から見た構成を示す図である。
図16B図16Bは、カバー取り外し治具を側方から見た断面構成を示す断面図である。
図17図17は、挿入機器の先端構成部を内視鏡の挿入部の先端構成部に適用したときの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る先端カバーが装着された内視鏡の先端構成部を上方から見た断面構造を示す断面図、図2は、分離されている先端カバーを上方から見た外観構成を示す図、図3は、分離されている先端カバーを側方から見た外観構成を示す図、図4は、先端カバーを外した先端構成部を上方から見た外観構成を示す図、図5は、先端カバーを外した先端構成部を側方から見た外観構成を示す図である。図17は、本実施形態の挿入機器の先端構成部を内視鏡の挿入部の先端構成部に適用したときの構成例を示す図である。
【0011】
内視鏡の挿入部の先端構成部として、挿入された高周波処置具の進行方向を変更する揺動台(又は起上台)が搭載された構成例について説明する。この揺動台は、上下方向又は、上下方向に加えて、これと交差する左右方向に変更可能な揺動機構であってもよい。尚、以下の実施形態では、処置具を高周波処置具として説明しているが、これに限定されたものではない。
【0012】
この内視鏡100は、管孔内又は管腔内に挿入される挿入部101と、操作部102とで構成されている。挿入部101の基端側には、処置対象の部位に対して、電気的処置、例えば高周波電流による処置を行う処置具の挿入ポート(鉗子口)110が設けられている。挿入部101の先端側には円柱形状の先端構成部2が配置され、操作部102には揺動台操作部107が設けられている。尚、この内視鏡は、図示していないが、照明光を供給する光源装置と、撮像された映像信号に画像処理を施すビデオプロセッサを含む制御部と、観察画像を表示する表示部と、映像信号を記録する記録部等を含めて一般的な内視鏡システムの構成を含んでいるものとする。
【0013】
挿入部101は、先端構成部2に続いて、基端側に湾曲部103及び可撓管104が配置される。挿入部101内には、処置具を挿通させるためのチャンネル管路111と、洗浄液や空気を供給するための送気送水管106と、揺動台を揺動動作(起上動作)させるための長尺な牽引ワイヤ(牽引部材)9が内装されている。この牽引ワイヤ9を介して揺動台操作部107に接続されている。揺動台操作部107のレバー操作により揺動台4が揺動(回動)して起上または倒置される。
【0014】
チャンネル管路111においては、基端側の挿入ポート110から可撓管104内を連通して、処置具チャンネル孔105に接続され、先端にチャンネル開口部3a(図4参照)が開口する。高周波処置具は、挿入ポート110から差し入れられて、チャンネル管路111を通過し、処置具チャンネル孔105のチャンネル開口部3aから外部に延出される。
【0015】
次に、図1図4及び図5を参照して、先端構成部2について説明する。
この先端構成部2は、大別して、ステンレス等の金属材料で形成されるベース部材3と、ベース部材3に回動可能に設けられる揺動台4と、円筒形状の内視鏡用先端カバー12(以下、先端カバーと称する)と、で構成される。ベース部材3と湾曲部103の先端側20の外皮部材26とは、固定用細線28の結着により固定される。外皮部材26は、絶縁性を有する樹脂製又はゴム製の水密なチューブである。その固定用細線28の表面を覆うように、絶縁性を有する樹脂材料によりコーティングした固定リング部27が形成される。
【0016】
ベース部材3は、長手軸方向に沿って二分され、一方側には、チャンネル開口部3aと、そのチャンネル開口部3aの前方に揺動台4が配置され、他方側には、外周面に対して平坦な観察面3bが形成されている。チャンネル開口部3aは、処置具チャンネル管路111を通じて、挿入部101の挿入ポート110と連通している。また、観察面3bには、図示しない光ファイバーに導光された照明光を照射する照明窓部5が配置される。照明窓部5に隣接して、観察窓部6が配置されている。図示していないが、観察窓部6に続く光路上に光像を結像する光学系、光像から光電変換により映像信号を生成する撮像素子及び映像信号に種々の処理を行う電気回路からなる撮像部が配置されている。
【0017】
観察窓部6の近傍で、長手軸方向の基端側には、ノズル部7が配設され、送気送水管24(106)から供給された生理食塩水などの洗浄液や空気などの気体を噴出して照明窓部5と観察窓部6が適宜、洗浄される。
【0018】
図4図5に示すように、ベース部材3における少なくとも観察面3bに続く側面には、溝形状を成す回転規制部3c,3dが、長手軸方向に平行して延伸するように形成される。回転規制部3c,3dは、先端構成部2に装着された先端カバー12が周方向に回転しないように回転規制を行う。さらに、回転規制部3c,3dよりも基端側位置で両側面には、先端カバー12に設けられた後述する第1カバー10の係止穴10aが嵌合する円柱形の係止ピン3e[第1の係止部]が設けられている。係止ピン3eの形状は、円柱形状に限らず、突起して係止可能な形状であれば、特に限定されるものではない。
【0019】
揺動台4は、後述する図7に示すように、チャンネル開口部3aから延出する処置具(図示せず)に当接して進行方向を変更させる凹陥状の当接面を有し、牽引ワイヤ9が連結されている連結部21が外側面に設けられている。牽引ワイヤ9は、ガイド部22により固定された連結部材23に嵌合されたワイヤガイド部材25を通じて揺動台操作部107に接続され、レバー操作により連結部21を押し引きして、これに連動して揺動台4が起上または倒置される。また、ベース部材3で外皮部材26及び固定用細線28の端面に密着するように、絶縁性を有する絶縁リング13が全周に渡って形成されている。この絶縁リング13は、係止部である係止ピン3e及び係止穴10aよりも操作部102の側に設けられる、即ち、先端構成部2と湾曲部103の先端部との繋ぎ目箇所の外周囲に設けられている。
【0020】
次に、図2及び図3を参照して、先端カバー12の構成について説明する。
本実施形態の先端カバー12は、2つの異なる作用及び機能を有する第1カバー10と第2カバー11とで構成される。これらのうち、第1カバー10は、絶縁性を有する弾塑性の樹脂材料、例えば、プラスチック等で先端側が閉じられた円筒のカップ形状に射出成形される。先端側に曲面を用いた形状であり、表面は滑らかで滑り性がよい。また、第2カバー11は、絶縁性を有する弾性体の材料、例えば、ゴム等で環状に形成される。
【0021】
第1カバー10は、装着対象となる先端構成部2に設けられた揺動台4、照明窓部5及び観察窓部6を露出するための開口部(窓)10bが開口している。以降の説明において、開口部10bが開口する面を上面としている。また、先端側から基端側(開口側)の方向を長手軸方向とし、長手軸方向と直交する方向を周方向としている。
【0022】
第1カバー10の基端側は、周囲に渡って外周面よりも一段低くなる接合面10cが形成され、その開口側の端部には段差を有して厚みを増して係止機能を持たせた嵌合部10dが設けられている。尚、図1に示すように、嵌合部10dは、内面が開口側に広がりを持つテーパー形状に形成され、先端構成部2に嵌め易くなっている。
【0023】
また、接合面10cの両側面には、先端構成部2の係止ピン3eに嵌合する円形の係止穴(又は円形溝)10aが形成され、脱落防止に寄与する。さらに、接合面10cの両側面には、先端構成部2に嵌合させる際に、係止穴10aを含む部分を弾性的に外側に広げるために、長手軸方向に延びる複数個の直線的な切り込み部10gが形成される。また、第1カバー10の先端側から接合面10cに至る内側面には、長手軸方向に平行して延びる、回転規制部3c,3dに係合する形状の複数のバー形状を成す突起(この例では2本の突起)からなる回転防止用凸部10fが形成される。さらに、共に長手軸方向で直線上に配置される、開口部10b側からの切り込み部10jと、嵌合部10dの端からの切り込み部10gとによる脆弱部10hが設けられている。この脆弱部10hは、第1カバー10の捻れ等により裂開する箇所である。
【0024】
第2カバー11は、絶縁性を有する弾性材料、例えばゴムにより環形状に形成される。基端側当接面11cは、第1カバーの接合面10cの先端側当接面10eと合致し、外周面が第1カバー10の外周面と平滑に繋がるように形成される。
また、第2カバー11の先端側の内周面は、第1カバー10に嵌合された際に、接合面10cと密着するための接合面11aが形成され、その接合面11aの基端側続く嵌合部10dと嵌合する嵌合溝11bが形成されている。また、第2カバー11の基端側の内周面は、先端構成部2に密着するように嵌合する接合面11dとして形成されている。
【0025】
第2カバー11は、第1カバー10及び先端構成部2の絶縁リング13に嵌合した際に、それぞれの部位に対して中心に向かう弾性力が発生するように形成されている。この弾性力は、例えば、第1カバー10及び先端構成部2の絶縁リング13のそれぞれの外径に対して、第2カバー11の内径を小径化することで発生させることが可能である。
この構成においては、第1カバー10と第2カバー11を嵌合した際に、接着剤を用いてもよいが、第1カバー10の脆弱部10hが裂開した際に、第2カバー11とは容易に分離される接着力であることが必要である。
【0026】
図1乃至図3及び図12を参照して、第1カバー10及び第2カバー11を先端構成部2に装着する手順及び作用効果について説明する。図12は、先端構成部に装着する先端カバーの状態を示す部分的断面図である。
まず、第1カバー10の基端側から第2カバー11を差し込み、接合面10cと接合面11aとを密着させ、且つ嵌合溝11bに嵌合部10dを嵌合して、先端カバー12として一体化する(又は、製品形態として一体化されている)。
【0027】
次に、先端構成部2に先端カバー12を覆うように差し込み、図12に示すように、第2カバー11の接合面11dが絶縁リング13を超えて、固定リング部27に掛かるまで差し込む。この時、第1カバー10の場合は、回転規制部3c,3dに回転防止用凸部10fを嵌め入れた状態で進入し、係止穴10aに先端構成部2の係止ピン3eが嵌め込まれることで適正な位置に位置決めされる。
【0028】
本実施形態による先端カバー12は、先端構成部2の高周波電流の漏出を防止する。例えば、挿入ポート110から挿入された高周波処置具は、先端構成部2のチャンネル開口部3aから延出し、揺動台4で進行方向が変更される。高周波処置具に高周波電流を印加して処置を実施したときには、空間を伝わって高周波が伝搬されて、先端構成部2内にも高周波電流が流れる。この時、第2カバー11と絶縁リング13とが密着されているため、高周波電流は、その密着部分から先端カバー12の外側に漏出されることはない。従って、先端カバー12の裏側の術者が目視できない部分から高周波電流iが漏れ出ることはなく、体腔内で先端カバー12が処置対象以外の生体組織に接触したとしても、火傷等の損傷を与える可能性を極めて低くすることができる。
【0029】
次に、図6A,6B乃至図11を参照して、先端構成部2からの先端カバー12の取り外しについて説明する。ここで、図6Aは、カバー取り外し治具41を正面から見た構成を示す図、図6Bは、カバー取り外し治具41を側方から見た断面構成を示す断面図、図7は、先端構成部2に装着された先端カバー12にカバー取り外し治具41を宛がった状態を示す断面図、図8は、先端カバー12にカバー取り外し治具41を宛がった取り外し前の状態を示す断面図、図9は、先端カバー12にカバー取り外し治具41を宛がった取り外し中の状態を示す断面図である。また、図10は、先端カバー12にカバー取り外し治具41を宛がう状態を概念的に示す図、図11は、カバー取り外し治具41により押される先端カバー12の箇所を示す図である。
【0030】
本実施形態のカバー取り外し治具41は、図6A,6Bに示すように、断面が矩形の柱状形状を成して、先端カバー12よりも硬い樹脂又は、金属部材等の硬質部材により形成される。一端には、先端カバー12を覆うように嵌合する包囲部である嵌合穴41dが形成される。この嵌合穴41dにおいては、先端カバー12の先端が当接する穴底面をP面とし、嵌合穴41dに先端カバー12の外周面に接する内面をQ面とする。尚、図10に示すカバー取り外し治具41は、図6Bとは外形のみが異なり、外形を円筒形状に形成した例を示し、周囲に複数のすべり防止用溝が形成され、差し入れる位置を目視可能な指標として、外周面の一部に平坦面が設けられている例である。指標としては、「UP」のような文字であってもよいし、回転方向を示す矢印を刻印してもよい。このようにカバー取り外し治具41の外形の形状は、特に限定されるものではない。
【0031】
嵌合穴41d内には、先端カバー12を取り外すために、第1カバー10の脆弱部10hを裂開させて塑性変形させる突起部41aが張り出すように設けられている。突起部41aは、観察面3bと第1カバー10の間隔Dに嵌入可能な幅を有し、揺動台4の手前で、揺動台収納部に挿入される位置(開口に掛かる位置)までの長さを有している。
【0032】
嵌合穴41dにおいては、裂開された先端カバー12の一部を収容する退避スペース41cが突起部41aの根元部分に入り込むように延びて設けられている。この突起部41aにおける領域41bは、図11に示す先端カバー12のF面に当接する。同時に、図8に示すように、先端カバー12の外周面がQ面に対して略隙間なく嵌合している。
【0033】
この嵌め込まれた状態において、突起部41aの上面の傾斜面41eは、2点鎖線で示す揺動台4の起上時の最外周の可動範囲よりに上方に位置(非接触となる位置)するように間隔xを空けるように設定されている。従って、揺動台4は、どの起上位置に停止していたとしても、嵌め込まれたカバー取り外し治具41が接触することはない。
【0034】
先端構成部2から先端カバー12を取り外す場合には、まず、図10の矢印Sに示すように、先端カバー12を覆うように、カバー取り外し治具41を嵌め込む。この時、図7に示すように、先端カバー12の先端が嵌合穴41d内のP面に突き当たるまでカバー取り外し治具41が嵌め込まれる。
【0035】
次に、図8に示す嵌め入れた状態からカバー取り外し治具41を矢印Yの方向に回転させる。この回転時に、突起部41aの領域41bは、第1カバー10のF面に当接して回転方向に押すことで、図9に示すように観察面3bと第1カバー10の間隔Dが間隔D1に拡がり、第1カバー10の脆弱部10hが裂開されて、第1カバー10が外側に開くように塑性変形される。このF面とは、先端カバー12における開口部10bの縁部分に近接する面または領域であり、この部分を周方向に押圧を掛けて、カバー部分を捲れ上げることができる。この塑性変形により、第1カバー10の係止穴10aの少なくとも一方が係止ピン3eから係止状態が解除されて、外れ出た状態になる。
【0036】
カバー取り外し治具41は、前述したように硬質部材で形成されている。これは、突起部41aに対して、先端構成部2(可撓管)の長手軸を中心に回転させたときに生じる応力が、先端カバー12(第1カバー10)が変形する応力よりも大きな応力に耐性する、即ち、損傷しないことを有している。
【0037】
この塑性変形させた後に、カバー取り外し治具41を先端構成部2から引き抜く。この時、破壊された状態によっては、カバー取り外し治具41が第1カバー10を伴って外れる場合もある。また、第1カバー10が先端構成部2に引っ掛かった状態であったとしても、指で先端構成部2から容易に外すことができる。その後、弾性体の第2カバー11を先端構成部2から抜き出すことで取り外すことができる。尚、カバー取り外し治具41で破壊されて、洗浄前の先端構成部2に留まっている第1カバー10や弾性体からなる第2カバー11は、直接的に指で摘まみ取り外さなくとも、鉗子等を用いて容易に取り外すことも可能であるため、術者や手術スタッフに対する衛生的な安全性も確保できる。
【0038】
尚、本実施形態では、先端カバー12が第1カバー10と第2カバー11との別体で構成されている例について説明したが、別体に限定されるものではない。即ち、カバー取り外し治具41による取り外しの際に、塑性変形された第1カバー10の係止穴10aの少なくとも一方が係止ピン3eから外れ出た状態になるのであれば、第1カバー10と第2カバー11とを一体的に構成してもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、先端構成部2に装着されている先端カバー12にカバー取り外し治具41を被せて回す動作だけで、塑性変形により先端カバーが破壊され、先端構成部2から容易に先端カバー12を取り外すことができる。従って、洗浄前の先端カバー12を直接、指先で破壊しなくとも、簡単に取り外すことができる。また破壊されてはいるが、先端構成部2に留まっている第1カバー10や弾性部材からなる第2カバー11は、鉗子等を用いて取り除くことができ、手の直接的な接触を行わずに先端カバー12を取り外すことが可能である。また、取り外された先端カバー12は、部分的に裂開されて塑性変形しているため、洗浄したとしても再利用を防止することができ、患者に対する安全が確保される。
【0040】
さらに先端カバー12は、回転規制部3c,3dに嵌合する回転防止用凸部10fにより先端カバー12の回転が防止され、係止ピン3eと係止穴10aとが先端構成部2への先端カバー12として外れ防止として機能する。また、第2カバー11の締め付ける弾性力により、嵌合溝11bと係止穴10aを押圧し、先端構成部2から外れ難くすることができる。先端カバー12は、それぞれに絶縁性を有する第1カバー10、第2カバー11とにより構成され、開口部10bを除いて先端構成部2のベース部材3の先端から絶縁リング13までを完全に覆っている状態で装着することができる。よって、先端カバー12で覆った部分に加えて、第2カバー11の基端側即ち、先端カバー12の基端側からの高周波電流の漏出を防止することができる。
【0041】
[第1の実施形態の第1の変形例]
図13は、第1の実施形態の第1の変形例に係る先端カバーを上方から見た外観構成を示す図、図14は、第1の変形例における係止部が設けられた先端構成部を上方から見た外観構成を示す図、図15は、先端カバーが装着された先端構成部を上方から見た断面構造を示す図である。本変形例において、前述した第1の実施形態とは、第1係止部(係止ピン3e)のみが異なり、第2の係止部以外の構成部位で同等の部位には、同じ参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0042】
本変形例は、先端構成部2の先端側に第1カバー10を係止するT型の係止ピン3g[第2の係止部]が設けられ、第1カバー10にその係止ピン3gに嵌合するT型溝10iが設けられている構成例である。
図14に示すように、先端構成部2の観察面3bに接する先端面に、T型の係止ピン3gが設けられている。係止ピン3gのヘッド部分(例えば、円盤形状)は、周囲に面取り処理が施されて、先端側に向かい細くなるテーパー形状に形成されて、図13に示す第1カバー10のT型溝10iに嵌合し易い形状となっている。
【0043】
本変形例における先端カバー12の取り外しは、前述した第1の実施形態と略同等であり、先端カバー12に宛がい、先端カバー12の先端が嵌合穴41d内のP面に当接するまでカバー取り外し治具41を嵌め込む。その後、カバー取り外し治具41を回転させて、突起部41aの領域41bを第1カバー10のF面に当接して回転方向に押すことで、図9に示すように観察面3bと第1カバー10の間隔が広がり、塑性変形が生じる。この塑性変形による間隔の広がりと共に、第1カバー10の先端部分も捩れてT型溝10iも拡がり、係止ピン3gが外れ出る。
【0044】
次に、カバー取り外し治具41を先端構成部2から引き抜く。この時、破壊された状態によっては、カバー取り外し治具41が第1カバー10を伴って外れる場合もある。また、第1カバー10が先端構成部2に引っ掛かった状態であったとしても、指で先端構成部2から容易に外すことができる。その後、弾性体の第2カバー11を先端構成部2から抜き出すことで取り外すことができる。この変形例においても、鉗子等を用いて、破壊された第1カバー10や弾性体からなる第2カバー11を容易に取り外すことも可能である。
【0045】
本変形例によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。また、本変形例では、第2の係止部である係止ピン3gを先端構成部2の先端面に配置している、即ち、先端構成部2の長手軸方向に配置しているため、側面に配置した構成例よりも先端構成部2の径を細くすることができ、可撓管の細径化に寄与している。
【0046】
本変形例の先端カバー12においても、第2カバー11と絶縁リング13とが密着されているため、高周波電流は、外部に漏出せずに、内視鏡の可撓管内を伝搬されて、帰還している。従って、先端カバー12の裏側の術者が目視できない部分から高周波電流が漏れ出ることはなく、体腔内で先端カバー12が処置対象以外の生体組織に接触したとしても、火傷等の損傷を与える可能性を極めて低くすることができる。
【0047】
[第1の実施形態の第2の変形例]
図16Aは、第1の実施形態の第2の変形例に係るカバー取り外し治具42を正面から見た構成を示す図、図16Bは、カバー取り外し治具42を側方から見た断面構成を示す断面図である。本変形例において、前述した第1の実施形態とは、突起部41aのみが異なり、これ以外の構成部位で同等の部位には、同じ参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0048】
本変形例のカバー取り外し治具42は、突起部41aに代わって、円柱形状の破壊ピン43が嵌合穴41d内のP面上で長手軸方向に立設される。この破壊ピン43は、前述した第1カバー10のF面に当接する位置で、前述した突起部41aにおける領域41bに対応するように立設される。
【0049】
本変形例の先端構成部2から先端カバー12を取り外す手順は、まず、図10の矢印Sに示すように、先端カバー12を覆うように、カバー取り外し治具42を嵌め込む。この時、先端カバー12の先端が図16Bに示すP面に当接するまでカバー取り外し治具42が嵌め込まれる。
次に、この嵌め入れた状態からカバー取り外し治具42を図8に示す矢印Yと同じ方向に回転させる。この回転時に、破壊ピン43が第1カバー10のF面を回転方向に押すことで、図9に示すように、観察面3bと第1カバー10の間隔を拡げて、第1カバー10の脆弱部10hを裂開し、第1カバー10が外側に開くように塑性変形する。
【0050】
この塑性変形させた後に、カバー取り外し治具42を先端構成部2から引き抜く。この時、破壊された状態によっては、カバー取り外し治具42が第1カバー10を伴って外れる場合もある。また、第1カバー10が先端構成部2に引っ掛かった状態であれば、指で先端構成部2から容易に外すことができる。その後、弾性体の第2カバー11を先端構成部2から抜き出すことで取り外すことができる。
【0051】
本変形例によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。また、前述した第1の実施形態の突起部41aに比べて、カバー取り外し治具42の穴底面に破壊ピン43を立設する簡易な構成であるため、設計や製造が容易であり、第1カバー10の仕様変更に対しても立設位置の変更により柔軟に対応することができる。
【0052】
本発明によれば、内視鏡の挿入部の先端構成部へ容易に装着可能であり、高周波電流の漏出を防止する機能を有し、簡易な操作で取り外しができる内視鏡の先端カバーを提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17