(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記関心位置座標設定部、前記座標変換部、前記操作指令生成部、及び前記駆動信号生成部によって前記第一駆動部及び前記第二駆動部を動作させる第一の動作モードと、操作者が前記マニピュレータを直接操作することを可能とする第二の動作モードとを切り替えるための入力を受け付けるために前記制御部に接続されたモードセレクタをさらに備える、
請求項1に記載の医療システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の入力機構を備えた医療システムの全体図である。
図2は、医療システムのマニピュレータの模式図である。
図3は、医療システムの操作入力装置の入力機構を示す斜視図である。
図4は、医療システムの全体の概略を示すブロック図である。
図5は、医療システムの要部を示すブロック図である。
図6は、医療システムの制御部の一部及び操作入力装置を示すブロック図である。
図7及び
図8は、医療システムのブレーキ制御パターンを示す表である。
図9から
図13までは、医療システムの要部のブロック図である。
図14は、医療システムを操作する操作者における操作手順を示すフローチャートである。
図15は、医療システムの作動方法の要部を示すフローチャートである。
図16から
図18までは、医療システムの作用を示す図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の医療システム1は、マニピュレータ2と、懸架装置20と、操作入力装置30と、姿勢制御装置60と、センシングトロッカ87を有する。また、本実施形態の医療システム1は、公知の画像処理装置100、表示装置110、及び光源装置120を含んでいてもよい。
【0018】
図1及び
図2に示すマニピュレータ2は、患者Pの体腔内に挿入されて臓器等の観察や臓器等に対する処置をする装置である(
図16参照)。
図1に示すように、マニピュレータ2は、懸架装置20、操作入力装置30、姿勢制御装置60、画像処理装置100、表示装置110、及び光源装置120に接続される。
マニピュレータ2は、挿入部3と、駆動部(第一駆動部15)と、接続部16とを有する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、挿入部3は、体腔内に挿通された状態で使用することができる細長の部材である。挿入部3は、遠位端部4と、軸部8と、挿入量マーカー13と、近位端部14と、を有する。遠位端部4及び軸部8は、体腔内へ挿入可能である。遠位端部4は、体腔内へ挿入される軸部8の挿入方向の先端側に配されている。近位端部14は、軸部8の基端側に配されている。
【0020】
挿入部3の遠位端部4は、撮像部5と、照明部6と、能動湾曲部7とを有する。能動湾曲部7は、軸部8の先端に接続されている。能動湾曲部7は、後述するように湾曲形状を能動的に変更可能である。また、撮像部5及び照明部6は、能動湾曲部7よりも遠位側に配されている。したがって、撮像部5及び照明部6は、能動湾曲部7の湾曲形状に応じて位置及び向きを変更可能とされている。
【0021】
撮像部5は、処置対象となる目標物の画像を取得するエンドエフェクタである。撮像部5の光軸は、遠位端部4における最も遠位端から、遠位端部4の前方へ延びている。たとえば、撮像部5の光軸は、挿入部3の遠位端部4の長手軸と平行に延びている。これにより、本実施形態の撮像部5は、挿入部3の遠位端部4から前方の領域に撮像視野を有する。撮像部5については、CCD撮像素子など公知の内視鏡における観察手段の構造を適宜選択して採用することができる。
撮像部5は、視野内に捉えた物体までの距離を測定するための画像を撮像することができる。たとえば、撮像部5は視差を有する一組の画像(第一画像及び第二画像)を撮像することができる一組の撮像素子を備えている。なお、一組の撮像素子を撮像部5が備えていることに代えて、視差を有する一組の像を1つの撮像素子に結像させる光学系を撮像部5が備えていてもよい。撮像部5が撮像した一組の画像は、後述する制御部61において、ステレオ計測による距離測定に使用される。なお、撮像部5は距離の測定をするための画像を取得する機能を有していなくてもよい。この場合は、レーザー測距器等の公知の測距機構が挿入部3の遠位端部4に配される。
撮像部5は、取得した一組の画像の信号(画像信号)を後述する接続部16を通じて画像処理装置100へ出力する。
【0022】
照明部6は、光源装置120から不図示の光ファイバを通じて伝えられた光を用いて撮像部5の撮像視野を照明する。なお、光源装置120を備えない場合は、照明部6は、遠位端部4の前方へ向けて照明光を発するLED等の発光素子を有していてもよい。
【0023】
能動湾曲部7は、筒状をなす複数の節輪7a(湾曲駒)を有している。
複数の節輪7aは、一列に並べられている。複数の節輪7aのうち隣り合う2つの節輪7aは、節輪の中心線と直交する軸を屈曲軸として屈曲動作可能となるように互いに連結されている。
複数の節輪7aのうち能動湾曲部7の最も先端側に位置する節輪7aは、能動湾曲部7を湾曲動作させるためのアングルワイヤwの遠位端に連結されている。本実施形態では、能動湾曲部7を上下左右の4方向に湾曲させるために、節輪7aの中心線回りに90°おきに計4本のアングルワイヤwが配されている。したがって、能動湾曲部7は、4本のアングルワイヤwを選択的に牽引することで、節輪7a同士が屈曲動作をして所望の向きに所望の湾曲量で湾曲変形することが可能である。
【0024】
軸部8は、硬質な筒状部材からなる。また、能動湾曲部7と第一駆動部15とを接続するアングルワイヤwが軸部8の内部に挿通されている。軸部8は、挿入部3の遠位端部4及び近位端部14に連通している。
【0025】
挿入量マーカー13は、センシングトロッカ87によって検出可能な複数のマーカーを含んでいる。たとえば、本実施形態では、挿入量マーカー13とセンシングトロッカ87とによって、軸部8の中心線方向への軸部8の進退量を検出可能なリニアエンコーダが構成されている。挿入量マーカー13の構成は、センシングトロッカ87の構成に合わせて適宜選択されてよい。
また、挿入量マーカー13とセンシングトロッカ87を備えることに代えて、マニピュレータ2の位置および姿勢を検出する構成(手段)が設けられていてもよい。この場合、検出された位置および姿勢の値から軸部8の中心線方向への軸部8の進退量を算出することができる。
【0026】
第一駆動部15は、挿入部3の近位端部14に接続されている。第一駆動部15は、4本のアングルワイヤwを個別に牽引するための動力を発する4つのアクチュエータ(例えばモータ)15aと、各アクチュエータ15aが発する動力をアングルワイヤwに伝達するために各アクチュエータ15aの出力軸に接続された不図示のプーリと、各アクチュエータ15aの動作量を検出するエンコーダ15bとを有している。
第一駆動部15が発する動力は、上述したアングルワイヤを通じて能動湾曲部7へ伝達される。本実施形態の第一駆動部15は、能動湾曲部7を湾曲させる方向や湾曲量を操作者が指定して第一駆動部15を動作させるためのレバー15c等を有している。
【0027】
図1に示す接続部16は、駆動部15に接続されている。接続部16は、操作入力装置30、及び姿勢制御装置60、画像処理装置100にマニピュレータ2を電気的に接続する。
接続部16は、撮像部5が撮像した画像の信号(画像信号)を画像処理装置100へ出力するための信号線と、後述する制御部61からマニピュレータ2の第一駆動部15へ駆動信号を出力するための信号線と、後述する制御部61から懸架装置の第二駆動部22へ駆動信号を出力するための信号線と、マニピュレータ2のエンコーダ(不図示)が検知した角度情報を後述する制御部61へ出力するための信号線とを有する。
また、接続部16は、光源装置120からマニピュレータ2へと照明光を伝送する光ファイバを有する。
【0028】
図1に示すように、懸架装置20は、マニピュレータ2の第一駆動部15に連結されたアーム部21と、アーム部21を駆動する駆動部(第二駆動部22)とを有している。アーム部21は少なくとも3自由度を有する。
第二駆動部22は、姿勢制御装置60に接続されている。本実施形態の懸架装置20として、硬性鏡を保持して動作させることができる公知の電動ホルダの構成を適宜選択して採用可能である。第二駆動部22は、姿勢制御装置60からの駆動信号に従ってアーム部21を駆動するアクチュエータ22aと、アクチュエータ22aの動作量を姿勢制御装置60に出力するエンコーダ22bとを有している。
【0029】
図1及び
図4に示すように、操作入力装置30は、入力機構31と、モードセレクタ49とを有している。
図3に示すように、入力機構31は、ベース部32と、第一回動部33と、第一リンク34と、第二回動部35と、第二リンク36と、進退入力部37と、センサ部40と、ブレーキ部45とを有する。
【0030】
第一回動部33は、所定の第一軸Xを回転中心としてベース部32に対して回動可能となるように、ベース部32に連結されている。第一回動部33は、第一回動部33に外力がかかっていない状態で後述の第一ブレーキ46が開放状態となっている場合に所定の中立位置に復帰するバネなどの不図示の中立機構を有している。
【0031】
第一リンク34は、第一回動部33に固定されている。第一リンク34は、くの字状(L字状)に屈曲した形状の剛体からなる。一例として、第一リンク34は、第一回動部33から第一軸Xと垂直な方向へ延び、第一回動部33から離れるように90°屈曲し、屈曲部位から第一軸Xと平行に延びている。第一リンク34において第一回動部33が固定された側の端と反対側の端は、第二回動部35に連結されている。
【0032】
第二回動部35は、第一軸Xと直交する第二軸Yを回転中心として第一リンク34に対して回動可能となるように、第一リンク34に連結されている。第二回動部35は、第二回動部35に外力がかかっていない状態で後述の第二ブレーキ47が開放状態となっている場合に所定の中立位置に復帰するバネなどの不図示の中立機構を有している。
【0033】
第二リンク36は、第二回動部35に固定されている。第二リンク36は、くの字状(L字状)に屈曲した剛体からなる。一例として、第二リンク36は、第二回動部35から第二軸Yと垂直な方向へ延び、第二軸Yと平行となるように90°屈曲して延びている。第二リンク36において第二回動部35が固定された側の端と反対側の端は、進退入力部37に接続されている。
【0034】
進退入力部37は、第二リンク36に固定された保持部38と、保持部38に連結された入力部材39とを有している。
保持部38は、第一軸Xと第二軸Yとの交点を通る直線を中心線とする筒状部材である。
入力部材39は、保持部38に挿通された棒状部材である。入力部材39は、保持部38の中心線に沿って自在に進退移動することができる。入力部材39は、第一軸Xと第二軸Yとの交点を通る直線状の第三軸Lを進退軸として進退可能である。入力部材39の形状は、操作者による持ちやすさを考慮して適宜決定されてよい。
進退入力部37は、進退入力部37に外力がかかっていない状態で後述の第三ブレーキ48が開放状態となっている場合に所定の中立位置に復帰するバネなどの不図示の中立機構を有している。
【0035】
本実施形態では、ベース部32、第一回動部33、第一リンク34、第二回動部35、第二リンク36、及び進退入力部37によって、入力部材39の移動は、第一軸Xと第二軸Yの交点を中心とした揺動と、第一軸Xと第二軸Yの交点に向かう直線に沿った進退に制限される。
【0036】
センサ部40は、ベース部32に対する第一回動部33の回転角を検知するために第一回動部33に配された第一センサ41と、第一リンク34に対する第二回動部35の回転角を検知するために第二回動部35に配された第二センサ42と、保持部38に対する入力部材39の進退移動量を検知するために進退入力部37に配された第三センサ43と、入力部材39に対する操作者の接触の有無を検知することによって操作者が入力部材39を把持しているか否かを判定するために入力部材39に配された把持センサ44とを有している。
図9に示すように、第一センサ41、第二センサ42、第三センサ43、は、制御部61の操作量演算部72に接続さされている。
図6に示すように、把持センサ44は、制御部61のモード設定部62に接続されている。
【0037】
図3に示すように、ブレーキ部45は、第一回動部33に配された第一ブレーキ46と、第二回動部35に配された第二ブレーキ47と、進退入力部37に配された第三ブレーキ48とを有している。第一ブレーキ46、第二ブレーキ47及び第三ブレーキ48は、例えば電磁ブレーキにより構成されている。
【0038】
第一ブレーキ46は、姿勢制御装置60による制御に従って、ベース部32に対して第一回動部33が回動可能な状態と、ベース部32に対して第一回動部33が回動不能な状態とを切り替える。
【0039】
第二ブレーキ47は、姿勢制御装置60による制御に従って、第一リンク34に対して第二回動部35が回動可能な状態と、第一リンク34に対して第二回動部35が回動不能な状態とを切り替える。
【0040】
第三ブレーキ48は、姿勢制御装置60による制御に従って、保持部38に対して入力部材39が進退可能な状態と、保持部38に対して入力部材39が進退不能な状態とを切り替える。
【0041】
図4及び
図6に示すように、モードセレクタ49は、姿勢制御装置60に接続されている。モードセレクタ49は、姿勢制御装置60の動作モードを選択するための複数のスイッチ(ロックオンモード選択スイッチ50、自在モードスイッチ51、及び見回しモードスイッチ52、近接俯瞰モードスイッチ53)を有している。
ロックオンモード選択スイッチ50は、ロックオンモードとマニュアルモードとを切り替えるためのスイッチである。ロックオンモードとは、マニピュレータ2の撮像部5の撮像視野内における関心位置に撮像部5が常に向かうように、マニピュレータ2を自動的に動作させるために医療システム1に設定される第一の動作モードである。ロックオンモードの詳細は後述する。また、マニュアルモードとは、操作者がマニピュレータ2を直接移動させたり撮像部5の撮像視野を所望の方向へむけたりするために医療システム1に設定される第二の動作モードである。ロックオンモード選択スイッチ50は、押されるたびに、姿勢制御装置60における動作モードをロックオンモード又はマニュアルモードに交互に切り替えるための切替信号を出力する。
【0042】
図7及び
図8は、ロックオンモード及びマニュアルモードにおけるブレーキ部45のブレーキ制御パターンを示している。
【0043】
図7及び
図8に示すように、自在モードスイッチ51は、ロックオンモードにおいて、入力部材39(
図3参照)を操作者が把持している間はブレーキ部45の全てのブレーキを解放し、入力部材39を操作者が離したときにブレーキ部45の全てのブレーキを動作させるようにブレーキ部45が制御される「自在モード」で姿勢制御装置60を動作させるためのスイッチである。すなわち、自在モードでは、入力部材39を操作者が手に持っている場合には操作者が自在に入力部材39を移動させることができ、入力部材39から操作者が手を離すとその場で入力部材39の位置及び姿勢が保持される。自在モードスイッチ51は、押されるたびに、姿勢制御装置60における動作モードを自在モードに切り替えるための自在モード選択信号を出力する。
【0044】
見回しモードスイッチ52は、ロックオンモードにおいて、第三ブレーキ48を常時動作させるとともに、入力部材39を操作者が把持している間は他のブレーキ(第一ブレーキ46及び第二ブレーキ47)を解放し、入力部材39を操作者が離したときにブレーキ部45の全てのブレーキを動作させるようにブレーキ部45が制御される「見回しモード」で姿勢制御装置60を動作させるためのスイッチである。すなわち、見回しモードでは、入力部材39を操作者が手に持っている場合には操作者が自在に入力部材39を揺動させることができるが入力部材39を進退させることはできない。また、見回しモードでは、入力部材39から操作者が手を離すとその場で入力部材39の位置及び姿勢が保持される。見回しモードスイッチ52は、押されるたびに、姿勢制御装置60における動作モードを見回しモードに切り替えるための見回しモード選択信号を出力する。本実施形態では、見回しモードが選択された場合に、制御部61及びブレーキ部45は、第一軸X及び第二軸Yにおける回動を禁止する第一ロック機構として構成される。
【0045】
近接俯瞰モードスイッチ53は、ロックオンモードにおいて、第一ブレーキ46及び第二ブレーキ47を常時動作させるとともに、入力部材39を操作者が把持している間は第三ブレーキ48を解放し、入力部材39を操作者が離したときにブレーキ部45の全てのブレーキを動作させるようにブレーキ部45が制御される「近接俯瞰モード」で姿勢制御装置60を動作させるためのスイッチである。すなわち、近接俯瞰モードでは、入力部材39を操作者が手に持っている場合には操作者が自在に入力部材39を進退させることができるが入力部材39を揺動させることはできない。また、近接俯瞰モードでは、入力部材39から操作者が手を離すとその場で入力部材39の位置及び姿勢が保持される。近接俯瞰モードスイッチ53は、押されるたびに、姿勢制御装置60における動作モードを近接俯瞰モードに切り替えるための近接俯瞰モード選択信号を出力する。本実施形態では、近接俯瞰モードが選択された場合に、制御部61及びブレーキ部45は、第三軸Lにおける入力部材39の進退を禁止する第二ロック機構として構成される。
【0046】
自在モードスイッチ51、見回しモードスイッチ52、近接俯瞰モードスイッチ53(
図5参照)は、1つのスイッチが押されてオンになると他のスイッチが自動的にオフになるように連動している。このため、モードセレクタ49において、ロックオンモード中は、自在モード、見回しモード、または近接俯瞰モードのいずれか1つが選択される。
【0047】
また、本実施形態では、ロックオンモード選択スイッチ50の操作によって動作モードがマニュアルモードに設定されると、全てのブレーキが開放され、入力部材39が中立位置に復帰する。また、マニュアルモードに設定されると、自在モードスイッチ51、及び見回しモードスイッチ52、近接俯瞰モードスイッチ53はオフになる。
【0048】
図4に示すように、画像処理装置100は、撮像部5から出力された画像信号の入力を受け付ける。画像処理装置100は、画像信号を映像信号にエンコードする映像信号生成部101を有する。映像信号生成部101は、撮像部5から出力された画像信号に基づいて、画像信号に含まれる一組の画像(第一画像及び第二画像)のうちの所定の一方の画像(例えば本実施形態では第一画像)を、表示装置110における表示に適合した形式の映像信号に変換する。画像処理装置100は、映像信号生成部101が生成した映像信号を表示装置110へ出力する。
【0049】
また、画像処理装置100は、画像信号を画像データにエンコードする画像データ生成部102を有している。画像データ生成部102は、撮像部5から出力された画像信号に基づいて、画像信号に含まれる第一画像の信号を第一画像データにエンコードし、画像信号に含まれる第二画像の信号を第二画像データにエンコードする。画像処理装置100は、第一画像データ及び第二画像データを含む一組の画像データを制御部61へ出力する。
【0050】
表示装置110は、画像処理装置100の映像信号生成部101から出力された映像信号の入力を受け付ける。表示装置110は、例えば液晶モニタ111を有する。
【0051】
図1に示す姿勢制御装置60は、マニピュレータ2、懸架装置20、操作入力装置30、及び画像処理装置100に接続可能である。姿勢制御装置60は、マニピュレータ2及び懸架装置20の位置及び姿勢を制御する制御部61と、制御部61が生成するデータや制御部61が参照するパラメータ等を記憶する記憶部85とを有する。
【0052】
姿勢制御装置60の記憶部85に記憶されたパラメータは、
図9に示すように、マニピュレータ2の構成に対応するマニピュレータ構造パラメータと、懸架装置20の構成に対応する懸架装置構造パラメータとを含んでいる。これらのパラメータは、順運動学計算及び逆運動学計算に使用可能な関節座標系及び関節間距離等のデータを含んでいる。また、本実施形態では、マニピュレータ構造パラメータは、マニピュレータ2の撮像部5の一か所に規定される撮像部基準点(不図示)に対して関節座標系が定められている。撮像部5が撮像する対象物に対する距離測定によって取得される距離値は、撮像部基準点から対象物までの距離に基づいて算出される。
【0053】
図5に示すように、制御部61は、マニュアルモード及びロックオンモードにおいて共通して使用される機能部として、モード設定部62、拘束点座標演算部69、姿勢取得部67、パラメータ取得部68、及び駆動信号生成部71を含む。
また、制御部61は、マニュアルモードのみにおいて使用される機能部として、倣い動作指令部70を含む。
また、制御部61は、ロックオンモードにおいてロックオン機能を提供する機能部として、操作量演算部72、撮像部5が撮像した画像を用いた処理を行う画像処理系ブロックと、各種の座標を演算によって算出する座標演算系ブロックと、ロックオンモードにおける操作指令を生成する逆運動学演算部82を含む。
画像処理系ブロックは、画像データ受付部75、特徴点設定部76、距離計測部77、及び関心位置抽出部80を含む。
座標演算系ブロックは、撮像部座標演算部79と、関心位置座標演算部78と、関心位置ずれ量演算部81と、座標変換部83とを含む。
【0054】
制御部61の各構成要素について、制御部61による制御動作の流れに沿って以下に説明する。
【0055】
図6に示すように、モード設定部62は、制御部61の動作モードの設定及び各種の初期設定を行う。モード設定部62は、初期化部63と、制限状態選択部64とを含む。
【0056】
初期化部63は、ロックオンモード選択スイッチ50が出力した切替信号の入力を受け付ける。
初期化部63は、ブレーキ部45の全てのブレーキ(第一ブレーキ46、第二ブレーキ47、及び第三ブレーキ48)を解放するための解放信号を、切替信号の入力を受け付けた場合にブレーキ状態切替部66へ出力する。
また、初期化部63は、切替信号の入力を受け付けた場合に、第一センサ41、第二センサ42、及び第三センサ43をリセットする。
【0057】
制限状態選択部64は、モードセレクタ49に対する操作に対応して入力機構31の各ブレーキの動作状態を選択する。制限状態選択部64は、判定部65と、ブレーキ状態切替部66とを含む。
【0058】
判定部65は、自在モードスイッチ51、見回しモードスイッチ52、及び近接俯瞰モードスイッチ53が出力した信号の入力を受け付けることができる。本実施形態では、自在モードスイッチ51、見回しモードスイッチ52、及び近接俯瞰モードスイッチ53のうちの1つのみがオンになるように連動しているので、判定部65は、自在モードスイッチ51、見回しモードスイッチ52、及び近接俯瞰モードスイッチ53のうちのいずれか1つから信号を受け付ける。
判定部65は、判定部65へ出力された信号の種類に対応してブレーキ制御パターンをブレーキ状態切替部66へ出力する。
【0059】
ブレーキ状態切替部66は、判定部65が出力したブレーキ制御パターンの入力を受け付ける。ブレーキ状態切替部66は、ブレーキ制御パターンに従ってブレーキ部45を動作させるための駆動信号をブレーキ部45へ出力する。
【0060】
図10に示すように、姿勢取得部67は、マニピュレータ2の第一駆動部15のエンコーダ15bが出力した角度情報の入力を受け付ける。さらに、姿勢取得部67は、懸架装置20の第二駆動部22のエンコーダ22bが出力した角度情報の入力を受け付ける。
姿勢取得部67は、エンコーダ15bが出力した角度情報と、エンコーダ15bを特定するための所定の識別番号(関節番号)とを対応付ける。また、姿勢取得部67は、エンコーダ22bが出力した角度情報と、エンコーダ22bを特定するための所定の識別番号(関節番号)とを対応付ける。
姿勢取得部67は、関節番号及び対応する角度情報を拘束点座標演算部69へ出力する。
【0061】
パラメータ取得部68は、記憶部85に記憶された懸架装置構造パラメータ及びマニピュレータ構造パラメータを、所定の読み出し命令に従って読み出す。
パラメータ取得部68が取得した各種パラメータは、制御部61において順運動学計算又は逆運動学計算を行う場合に利用される。
【0062】
拘束点座標演算部69は、姿勢取得部67が出力した関節番号及び対応する角度情報の入力を受け付ける。さらに、拘束点座標演算部69は、センシングトロッカ87が出力した軸部位置情報の入力を受け付ける。
また、拘束点座標演算部69は、パラメータ取得部68が出力したマニピュレータ構造パラメータ及び懸架装置構造パラメータの入力を受け付ける。
拘束点座標演算部69は、角度情報及び軸部位置情報に基づいて、例えば順運動学計算によって拘束点の座標の情報(拘束点座標)を演算する。拘束点の座標は、懸架装置20に固有の基準座標系における座標である。
拘束点座標演算部69は、拘束点座標を記憶部85へ出力する。
【0063】
制御部61は、拘束点座標が記憶部85に記憶された後、マニュアルモードでの動作を開始する。
【0064】
図5に示す倣い動作指令部70は、マニュアルモードで動作する制御部61における操作指令を生成するための機能部である。倣い動作指令部70は、姿勢取得部67が取得した角度情報及び対応する関節番号の入力を受け付ける。
倣い動作指令部70は、角度情報に対応する関節番号に該当する関節に対して、角度情報に含まれる関節動作方向と同方向へ関節を動作させるための操作指令を生成する
倣い動作指令部70は、操作指令を駆動信号生成部71へ出力する。
【0065】
駆動信号生成部71は、倣い動作指令部70が出力した操作指令の入力を受け付ける。本実施形態では、マニュアルモードで制御部61が動作している場合には、駆動信号生成部71は倣い動作指令部70から操作指令の入力を受け付ける。
また、駆動信号生成部71は、ロックオンモードで制御部61が動作している場合には、逆運動学演算部82から操作指令の入力を受け付ける。
駆動信号生成部71は、操作指令に基づいて、第一駆動部15のアクチュエータ15aに対する駆動信号を生成する。また、駆動信号生成部71は、操作指令に基づいて、第二駆動部22のアクチュエータ22aに対する駆動信号を生成し、生成した駆動信号を、対応する駆動部(第一駆動部15及び/又は第二駆動部22)へ出力する(たとえば
図12参照)。
【0066】
次に、ロックオンモードにおいて機能する各構成の説明を行う。
【0067】
図9に示すように、操作量演算部72は、ロックオンモードにおいて操作者が入力機構31に対して行う操作入力に基づいて、操作量を算出する。操作量演算部72は、第一センサ41、第二センサ42、及び第三センサ43が出力した情報を受け付ける。また、操作量演算部72は、第一センサ41、第二センサ42、及び第三センサ43から出力された信号をリセットするためにモード設定部62の初期化部63が出力するリセット信号の入力を受け付ける。
操作量演算部72は、倍率補正部73と、順運動学演算部74とを有する。
【0068】
倍率補正部73は、第三センサ43が出力した情報の入力を受け付ける。
倍率補正部73は、第三センサ43が出力した情報に対して所定の係数をかけて進退量情報を算出し、算出された進退量情報を順運動学演算部74へ出力する。この係数は、入力部材の進退操作量に対する撮像部5の進退移動量の大きさを規定する。
【0069】
順運動学演算部74は、第一センサ41及び第二センサ42が出力した角度情報と、倍率補正部73が出力した進退量情報との入力を受け付ける。
また、順運動学演算部74は、記憶部85に記憶されたマニピュレータ構造パラメータ及び懸架装置構造パラメータの入力を受け付ける。
順運動学演算部74は、上記の角度情報、進退量情報、マニピュレータ構造パラメータ、及び懸架装置構造パラメータを用いて、順運動学計算によって、入力部材の座標と入力部材の姿勢を含む情報(入力部材位置姿勢データ)を算出する。入力部材位置姿勢データは、第一軸Xと、第二軸Yと、第一軸X及び第二軸Yに対して直交する垂直軸Zとによって規定される三次元直交座標系(以下、入力座標系という。)における、入力部材39の所定の一点(基準点)の座標と、基準点から入力部材39の先端へ向かう方向(基準点から入力座標系の原点へ向かう方向ベクトル)を含む。なお、本実施形態では、入力部材39が中立位置にあるときには、入力部材39は入力座標系の垂直軸Zに沿って延びている。
順運動学演算部74は、入力部材位置姿勢データを記憶部85へ出力する。
【0070】
図11に示すように、画像データ受付部75は、ロックオンモードにおける制御に使用する画像の入力を受け付ける。具体的には、画像データ受付部75は、画像処理装置が出力した一組の画像データの入力を受け付ける。画像データ受付部75は、特徴点設定部76、距離計測部77、関心位置抽出部80、及び関心位置ずれ量演算部81に対して、一組の画像データを出力する。
【0071】
特徴点設定部76は、画像データ受付部75が出力した一組の画像データの入力を受け付ける。特徴点設定部76は、一組の画像データのうちの第一画像データに基づいて、第一画像の中央を含む所定の範囲に対して、形状や色等に基づいて複数の特徴点を抽出する。本実施形態における第一画像の中央は、ロックオンモードにおける関心位置Tsに対応する。特徴点設定部76は、抽出した特徴点を示す特徴点データと第一画像の中央を示す中央点データとを含む情報を、特徴点パターンとして記憶部85へ出力する。また、特徴点設定部76は、特徴点パターンを距離計測部77へ出力する。
【0072】
距離計測部77は、画像データ受付部75が出力した一組の画像データの入力を受け付ける。また、距離計測部77は、記憶部85に記憶された特徴点パターンを読み込む。距離計測部77は、一組の画像データの第二画像データにおいて特徴点パターンに対応する領域を特徴点マッチングの手法を用いて抽出する。距離計測部77は、第一画像データと第二画像データとにおける特徴点パターンに対応する領域のずれ量の大きさを、特徴点パターンが設定された部位までの距離値に換算する。距離計測部77における上記の換算において、距離計測部77は、撮像部5において予め規定された基準点から特徴点が設定された部位までの距離値を取得する。距離計測部77は、取得された距離値を関心位置座標演算部78へ出力する。
【0073】
関心位置座標演算部78は、距離計測部77が出力した距離値の入力を受け付ける。さらに、関心位置座標演算部78は、姿勢取得部67が出力した関節番号及び対応する角度情報の入力を受け付ける。
また、関心位置座標演算部78は、パラメータ取得部68が出力したマニピュレータ構造パラメータ及び懸架装置構造パラメータの入力を受け付ける。
関心位置座標演算部78は、角度情報及び軸部位置情報に基づいて、例えば順運動学計算によって、画像データにおける中央に位置する部位(関心位置)の座標の情報(関心位置座標)を演算する。関心位置座標は、懸架装置20に固有の基準座標系における座標である。関心位置座標は、撮像部5の光軸方向に沿って撮像部5の前方に上記の距離値分だけ離れた点の座標である。
関心位置座標演算部78は、関心位置座標を記憶部85へ出力する。
【0074】
撮像部座標演算部79は、姿勢取得部67が出力した関節番号及び対応する角度情報の入力を受け付ける。さらに、撮像部座標演算部79は、パラメータ取得部68が出力したマニピュレータ構造パラメータ及び懸架装置構造パラメータの入力を受け付ける。
撮像部座標演算部79は、マニピュレータ2のエンコーダ15bから得られた角度情報及びマニピュレータ構造パラメータに基づいて、能動湾曲部7の湾曲角度を算出する。本実施形態では、アングルワイヤwの牽引によって能動湾曲部7は一様に湾曲される。このため、アングルワイヤwの牽引量に対応するエンコーダ15bの角度情報を用いて、能動湾曲部7の湾曲量及びこのときの能動湾曲部7の曲率中心を取得することができる。
撮像部座標演算部79は、順運動学計算を用いて、基準座標系における撮像部基準点座標を算出する。
撮像部座標演算部79は、撮像部基準点座標を記憶部85へ出力する。
【0075】
図12に示すように、関心位置抽出部80は、ロックオンモードでの動作中に撮像部5が取得した画像から関心位置の座標を取得するための機能部である。
関心位置抽出部80は、画像データ受付部75が出力した一組の画像データの入力を受け付ける。また、関心位置抽出部80は、特徴点パターンを記憶部85から読み込む。
関心位置抽出部80は、一組の画像データに対して特徴点パターンを用いて特徴点マッピングを行う。これにより、関心位置抽出部80は、一組の画像データに含まれる特徴点を抽出し、基準座標系における関心位置の現在位置の座標を、一組の画像データの視差を用いて算出する。
関心位置抽出部80は、関心位置の現在位置の座標情報を関心位置ずれ量演算部81へ出力する。
【0076】
関心位置ずれ量演算部81は、関心位置抽出部80が出力した関心位置の現在位置の座標情報の入力を受け付ける。さらに、関心位置ずれ量演算部81は、記憶部85から、関心位置座標を読み込む。
関心位置ずれ量演算部81は、記憶部85から読み込んだ関心位置座標と、関心位置抽出部80が出力した座標とを比較して、関心位置のずれ量を算出する。関心位置ずれ量演算部81は、
関心位置ずれ量演算部81は、関心位置のずれ量を逆運動学演算部82へ出力する。
【0077】
逆運動学演算部82は、関心位置ずれ量演算部81が出力した関心位置のずれ量の入力を受け付ける。さらに、逆運動学演算部82は、パラメータ取得部68が出力した懸架装置構造パラメータ及びマニピュレータ構造パラメータの入力を受け付ける。また、逆運動学演算部82は、撮像部基準点座標及び拘束点座標を記憶部85から読み込む。
逆運動学演算部82は、撮像部基準点座標を始点とし、関心位置のずれ量が0となるまで撮像部5を平行移動させた点を終点として、終点の座標から逆運動学計算により移動後のマニピュレータ及び懸架装置の姿勢を演算する。本実施形態では、撮像部5を平行移動させるように逆運動学演算部82が演算を行うことによって、入力部材の姿勢と撮像部5の姿勢との対応関係が維持される。
逆運動学演算部82は、演算結果に基づいてマニピュレータ2及び懸架装置20を動作させるための操作指令を生成して、駆動信号生成部71へ操作指令を出力する。
なお、マニピュレータ2及び懸架装置20の可動域の限界の影響で関心位置のずれ量が0となるまで撮像部5を平行移動させることができない場合には、その旨のエラーを出力してロックオンモードを終了してもよい。
【0078】
次に、ロックオンモードにおいて操作者が入力機構31に対して行った入力に基づいて動作する機能部について説明する。
【0079】
図13に示すように、座標変換部83は、ロックオンモードにおいて操作者が入力装置へ入力した操作に基づいて操作量演算部72が算出した入力部材位置姿勢データを記憶部85から読み込む。さらに、座標変換部83は、関心位置座標を記憶部85から読み込む。
座標変換部83は、入力部材位置姿勢データを、関心位置座標を原点とするように座標変換する。さらに、座標変換部83は、関心位置座標を原点とするように座標変換された入力部材位置姿勢データを、基準座標の原点を原点とするように平行移動する。これにより、基準座標系において入力部材位置姿勢データに対応する位置及び方向が算出される。
座標変換部83は、算出された位置及び方向を逆運動学演算部82へ出力する。
【0080】
逆運動学演算部82は、座標変換部83から出力された位置及び方向の入力を受け付ける。座標変換部83から出力された位置及び方向の入力を受け付けた逆運動学演算部82は、上記の関心位置のずれ量に基づく演算の終了後、次の演算を開始する前に、座標変換部83から出力された位置及び方向に基づいて、撮像部5を移動させるための操作指令を生成する。
逆運動学演算部82は、操作指令を駆動信号生成部71へ出力する。その後、駆動信号生成部71は操作指令に基づいて駆動信号を生成して第一駆動部15及び第二駆動部22へ出力する。
これにより、入力機構31の入力部材に対する操作者による操作に対応して撮像部5が動作する。
【0081】
本実施形態において、制御部61にはセンシングトロッカ87が電気的に接続されている。センシングトロッカ87は、拘束点座標演算部69に対して、センシングトロッカ87への軸部8の挿入量の情報を出力する。
【0082】
本実施形態の入力機構31を備えた医療システム1の作用について説明する。
医療システム1を用いた処置の前に、操作者は、医療システム1のマニピュレータ2を懸架装置20に取り付ける(
図1参照)。また、操作者は、懸架装置20を患者に対して所定の位置に配置して、マニピュレータ2を体内へ挿入する。医療システム1の制御部61は、センシングトロッカ87に挿入された軸部8の挿入量に基づいて、患者へのマニピュレータ2の刺入点の位置として、拘束点Rの座標(拘束点座標)を記憶部85に記憶させる(
図10及び
図15参照、ステップS11)。
【0083】
操作者は、表示装置110のモニタ111(
図1参照)に表示される画像に処置対象として所望する部位(目標物)が表示されるように、マニピュレータ2を移動させる。必要に応じて、操作者は、第一駆動部15のレバー15c等を用いて能動湾曲部7を湾曲させてもよい。表示装置110のモニタ111に表示される画像の中央近傍に目標物Tが位置したときに、モードセレクタ49を操作者が操作して、ロックオンモードを開始する(
図14参照、ステップS1)。たとえば、操作者は、ロックオンモード選択スイッチ50及び自在モードスイッチ51を押す。
【0084】
制御部61がロックオンモードで動作開始(
図12においてYes)すると、制御部61は、第一駆動部15及び第二駆動部22の動作を一時的に停止させる(
図15参照、ステップS14)。その後、制御部61は、ロックオンモードの開始のために必要な初期化及び演算を行う(
図15参照、ステップS15からステップS18)。まず、制御部61の初期化部63(
図6参照)は、ブレーキ部45の全てのブレーキを解放するようにブレーキ状態切替部66に対して解放信号を出力して、入力部材39を中立位置に移動させる。これにより、入力機構31が初期化される(ステップS15)。
また、制御部61の特徴点設定部76(
図11参照)は、画像データから特徴点を抽出して特徴点パターンを記憶部85に記憶させる(ステップS16)。続いて、関心位置座標演算部78は、距離計測部77が計測した距離値並びにマニピュレータ2及び懸架装置20の姿勢に基づいて、関心位置座標を取得して記憶部85に記憶させる(ステップS17)。
また、制御部61の撮像部座標演算部79(
図11参照)は、マニピュレータ2及び懸架装置20の姿勢に基づいて撮像部基準点座標を取得して記憶部85に記憶させる(ステップS18)。
【0085】
上記のステップS18までの処理が終了したら、ロックオンモードで操作者が操作を開始することができる。入力部材39を操作者が把持(
図14参照、ステップS2)すると、入力部材39を操作者が把持したことを把持センサが検知する。入力部材39が操作者に把持されていることが把持センサに検知されている間は、操作者は、入力部材39を進退させることができ、また、入力部材39を揺動させることができる(ステップS3)。
【0086】
入力部材39を操作者が進退させたり揺動させたりする操作は、
図9に示すように、操作量演算部72において検知され、入力部材位置姿勢データとして記憶部85に記憶される。
【0087】
図13に示すように、制御部61の座標変換部83は、入力部材位置姿勢データを記憶部85から読み込み(
図15参照、ステップS19)、座標変換して逆運動学演算部82へ出力する(ステップS20)。続いて、逆運動学演算部82は、座標変換部83から出力された情報に基づいて操作指令を生成(ステップS21)し、操作指令を駆動信号生成部71へ出力する。駆動信号生成部71は、操作指令に従って駆動信号を生成して、第一駆動部15及び第二駆動部22へ出力する(ステップS22)。
【0088】
その後、制御部61は、関心位置が撮像部5の視野中心に位置するように、撮像部5の位置を補正する(ステップS23)。すなわち、
図12に示すように、関心位置抽出部80が、撮像部5が撮像した画像から関心位置を抽出し、関心位置ずれ量演算部81が関心位置のずれ量を算出して、関心位置のずれ量が0となるように逆運動学演算部82が操作指令を生成する。
【0089】
このように、本実施形態では、入力部材39に対する入力に基づいた撮像部5の移動制御と撮像部5の視野中心に関心位置を位置させる撮像部5の移動制御が順次実行されることによって、撮像部5が関心位置を中心として公転し、かつ撮像部5の視野中心がロックオンモード中常に視野中心と一致する。たとえば、本実施形態におけるロックオンモードでは、
図16に示すように撮像部5が目標物Tを視野に捉えた状態では、入力部材39に対する操作に従って、たとえば、目標物Tを中心として撮像部5が円弧状に移動する。このとき、マニピュレータ2の軸部8は、拘束点Rを中心として揺動しながら軸部8の中心線方向に進退し、さらに能動湾曲部7の湾曲形状も撮像部5の移動に伴って漸次変化する。
【0090】
図18に示すように、本実施形態のロックオンモードでは、目標物の位置に対応する関心位置Tsの座標を中心に撮像部5を公転させることができ、さらに、入力部材39に対する進退操作によって、関心位置Tsと撮像部5との距離を操作者が操作することができる。これにより、本実施形態では、目標物Tを見回すように目標物Tを観察したり、目標物Tに対して撮像部5を近接させて目標物Tの画像を拡大して観察したり、目標物Tから撮像部5を離間させて目標物Tを含む広い領域を俯瞰的に観察したりすることができる。
【0091】
ロックオンモードが設定されている間(
図15に示すステップS24においてYesであるとき)は、
図15に示すステップS19からステップS24までの各ステップがこの順に繰り返される。
【0092】
操作者は、モードセレクタ49を操作することによって、ロックオンモードでの制御部61の動作を終了してマニュアルモードに戻すことができる(
図15参照、ステップS24においてNo)。この場合、ロックオンモードの終了直前におけるマニピュレータ2及び懸架装置20の位置及び姿勢で第一駆動部15及び第二駆動部22の自動制御が終了する。第一駆動部15及び第二駆動部22に対する制御が終了した後、ブレーキ部45の各ブレーキは解放状態とされて、入力部材39が中立位置へ復帰する。操作者は、必要に応じて、第一駆動部15のレバー15cの操作や懸架装置20の倣い動作などを用いて、マニピュレータ2の位置及び姿勢をマニュアルモードで制御することができる。
【0093】
以上に説明したように、本実施形態の入力機構31によれば、進退入力部37の入力部材39の動作は、第一軸Xと第二軸Yとの交点を通る第三軸Lを進退軸とするように拘束されている。これは、ロックオンモードにおいて関心位置Tsに撮像部5が向かうように撮像部5の移動が拘束されることに対応している。このため、本実施形態の入力機構31を使用して進退入力部37を操作することによって、ロックオンモードにおいて処置対象部位となる関心位置Tsに対するアプローチ方向の変更操作を直感的に行うことができる。
【0094】
さらに、本実施形態の医療システム1は、関心位置Tsと拘束点Rとの二点が拘束された条件下(
図18参照)でマニピュレータ2を自動制御することができるので、関心位置Tsと拘束点Rとの二点を拘束するようにマニピュレータ2を手動で操作することと比較して、マニピュレータ2の操作が容易である。
【0095】
また、第一軸Xと第二軸Yとが互いに直交しているので、入力機構31における入力座標系CS2が三次元の直交座標系となる。これにより、制御部61における演算が簡単である。
また、第一軸Xと第二軸Yとが直交しているので、第一軸X周りの摩擦抵抗及び第二軸Y周りの摩擦抵抗が入力部材39の操作抵抗に与える影響が互いに同等となる。このため、本実施形態の入力機構31は、入力部材39の位置及び姿勢が変化しても入力部材39の動きやすさの変化を少なくすることができる。
【0096】
(変形例1)
上記実施形態の変形例について説明する。
図19は、本変形例における入力機構を示す斜視図である。
図19に示すように、本変形例の入力機構31は、第1実施形態に開示された第一リンク34及び第二リンク36とは形状が異なる第一リンク57及び第二リンク58を有している。
【0097】
本変形例の第一リンク57は、第一軸X上に中心を有するリング状をなしている。
【0098】
本変形例の第二リンク58は、第一軸Xと直交する回転軸において第一リンク57に連結されたリング状をなしている。第二リンク58の中心は、第二リンク58の回転軸上且つ第一軸X上に位置している。上記の第1実施形態と同様の進退入力部37が第二リンク58に連結されている。
本変形例の第一リンク57及び第二リンク58も、上記の第1実施形態に開示された第一リンク34及び第二リンク36と同様に動作可能である。
【0099】
なお、
図20に示すように、第一リンク57及び第二リンク58の形状は、リング状でなく四角形状でもよい。また、入力機構31は、第一軸Xを含む平面内に中心線が位置するように延びる溝を有して第一リンク57に取り付けられたガイド59を有していてもよい。ガイドの溝には進退入力部37の保持部38が入り込んでいる。
【0100】
(変形例2)
上記実施形態の他の変形例について説明する。
図21は、本変形例における入力機構31を示す斜視図である。
図21に示すように、本変形例の入力機構31は、基台部90と、基台部90に収容された球体部94を有している。
【0101】
基台部90は、球体部94を受ける支持体91と、球体部94の外周面に接して転動可能なエンコーダ92,93とを有している。エンコーダ92,93は、球体部の回転方向及び回転量を検出するために、少なくとも2つ設けられている。
【0102】
球体部94は、支持体91及びエンコーダ92,93に支持された状態で、基台部90に収容されている。球体部94には、進退入力部37の保持部38が固定されている。保持部38の中心線L2は、球体部94の球心を通る直線上に位置している。
本変形例の入力機構31も第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0103】
(変形例3)
上記実施形態のさらに他の変形例について説明する。
図22は、本変形例の入力機構における第一リンクと第二リンクとの位置関係の変化を説明するための図である。
図22に示すように、本変形例の入力機構31は、上記の第1実施形態に開示された第一リンク34及び第二リンク36(
図3参照)とは形状が異なる第一リンク34A及び第二リンク36Aを有している。
【0104】
本変形例の第一リンク34Aは、くの字状(L字状)に屈曲している。第一リンク34Aの屈曲角度は鈍角である。たとえば、第一リンク34Aは、第1実施形態と同様の第一回動部33(
図3参照)から第一軸Xと垂直な方向へ延び、第一回動部33から離れるように120°屈曲している。第一リンク34Aにおいて第一回動部33が固定された側の端と反対側の端は、第1実施形態と同様の第二回動部35(
図3参照)に連結されている。
【0105】
本変形例において、第二回動部35の回動軸である第二軸Y2は、第一軸Xと交差しているが直交はしていない。第一軸Xと第二軸Y2とのなす角の大きさは60°である。
【0106】
本変形例の第二リンク36Aは、くの字状(L字状)に屈曲している。第二リンク36Aの屈曲角度は鈍角である。たとえば、第二リンク36Aは、第二回動部35から第二軸Y2と垂直な方向へ延び、第一軸Xと第二軸Y2との交点に近付くように120°屈曲している。第二リンク36Aにおいて第二回動部35が固定された側の端と反対側の端は、進退入力部37に接続されている。
【0107】
進退入力部37の保持部38(
図3参照)は、第一軸Xと第二軸Y2との交点を通る直線を中心とする筒状部材である。保持部38に挿通された入力部材39は、保持部38の中心線に沿って自在に進退移動することができる。入力部材39の進退軸である第三軸L2と第二軸Y2とのなす角の大きさは60°である。
【0108】
本変形例の第一リンク34A及び第二リンク36Aを備えた入力機構31において、入力部材39の進退動作は、第一軸Xと第二軸Y2との交点を通る第三軸L2を進退軸とするように拘束されている。さらに、入力部材39の揺動動作は、第一軸Xと第二軸Y2との交点を揺動中心とするように拘束されている。これにより、本変形例の入力機構31は、第1実施形態と同様の効果を奏する。
なお、第一リンク34Aの屈曲角度は120°には限られない。また、第二リンク36Aの屈曲角度は120°には限られない。
【0109】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。
図23は、本実施形態の入力機構を備えた医療システムの要部を示すブロック図である。
図24は、医療システムの要部を示すブロック図である。
図25は、医療システムのブレーキ制御パターンを示す表である。
図26及び
図27は、医療システムの要部を示すブロック図である。
図28は、医療システムの作動方法の要部を示すフローチャートである。
【0110】
図23に示す本実施形態の医療システム1Aは、第1実施形態と制御内容が異なる制御部61Aを有する。本実施形態の制御部61Aは、第1実施形態と同様にロックオンモードで動作可能であり、さらに、マニュアルモードにおいて操作入力装置30を利用することができる。
【0111】
また、本実施形態の医療システム1Aは、
図24に示すように、マニュアルモードにおいて操作入力装置30を利用可能とするために、第1実施形態とは構成が異なるモードセレクタ49Aを有している。
本実施形態のモードセレクタ49Aは、第1実施形態に開示されたモードセレクタ49と比較して、マニュアルモード選択スイッチ54と、全体移動モード選択スイッチ55と、先端湾曲モード選択スイッチ56とをさらに有している点が異なっている。
【0112】
マニュアルモード選択スイッチ54は、マニュアルモードを操作者が選択する場合に操作する押しボタンスイッチである。本実施形態では、マニュアルモード選択スイッチ54とロックオンモード選択スイッチ50とのいずれか一方がオンとなる場合には他方がオフとなるように、互いに連動している。
【0113】
全体移動モード選択スイッチ55と、マニュアルモードにおいてマニピュレータ2の全体的な移動操作(全体移動モード)を操作者が選択する場合に操作する押しボタンスイッチである。
【0114】
先端湾曲モード選択スイッチ56は、マニュアルモードにおいてマニピュレータ2の能動湾曲部7のみの湾曲操作(先端湾曲モード)を操作者が選択する場合に操作する押しボタンスイッチである。
また、本実施形態では、制限状態選択部64は、
図25に示すように、マニュアルモードにおいて利用可能なブレーキ部45の制御パターンを有している。
【0115】
全体移動モードでは、ブレーキ部45の動作は自在モードと同様に把持センサに従う。
先端湾曲モードでは、第三ブレーキ48のみ常時ブレーキをかけるように設定されている。
【0116】
図26に示すように、本実施形態の制御部61Aの逆運動学演算部82は、第1実施形態とは異なる入力に基づいて演算を行って演算結果を駆動信号生成部71へ出力するようになっている。
【0117】
さらに、本実施形態の制御部61の姿勢取得部(不図示)は、マニピュレータ構造パラメータ及び懸架装置構造パラメータと、エンコーダ15b、22bから取得した情報とを用いて、基準座標系における軸部8の位置及び姿勢を示す情報(軸部位置姿勢データ、
図26参照)を算出して記憶部85に記憶させる。
【0118】
図27に示すように、制御部61Aは、マニュアルモードにおいてマニピュレータ2を移動させたり能動湾曲部7を湾曲させたりするために、湾曲動作演算部86をさらに有している。
【0119】
本実施形態の制御部61Aにおいて全体移動モードにおいて動作する機能部の制御動作について説明する。
【0120】
全体移動モードでは、
図26に示すように、座標変換部83が、記憶部85に記憶された入力部材位置姿勢データを読み込み、基準座標系において拘束点座標を原点とするように座標変換して逆運動学演算部82へ出力する。
【0121】
逆運動学演算部82は、軸部位置姿勢データを記憶部85から読み込む。逆運動学演算部82は、軸部位置姿勢データに基づいた軸部8の位置及び姿勢を、軸部8の移動の始点とする。さらに、逆運動学演算部82は、座標変換部83から出力された情報に基づいて、軸部8の移動先の位置及び姿勢を設定する。逆運動学演算部82は、始点から終点まで軸部8が移動するような第二駆動部の動作量を含む操作指令を生成して駆動信号生成部71へ出力する。駆動信号生成部71は操作指令に従って駆動信号を生成して第二駆動部へ出力する。
これにより、本実施形態では、操作入力装置30を用いて、拘束点を中心とした軸部8の揺動、軸部8の中心線方向への軸部の進退を行うことができる。
【0122】
本実施形態の制御部61Aにおいて先端湾曲モードにおいて動作する機能部について説明する。
【0123】
図27に示すように、湾曲動作演算部86は、入力部材位置姿勢データを記憶部85から読み込む。湾曲動作演算部86は、中立位置からの入力部材傾きの変化を入力部材位置姿勢データから算出して、能動湾曲部7の湾曲角度及び湾曲量の情報を含む操作指令を生成して駆動信号生成部71へ出力する。
これにより、本実施形態では、操作入力装置30を用いて、マニュアルモードで能動湾曲部7の湾曲操作を行うことができる。
【0124】
本実施形態の医療システム1Aの動作について説明する。
本実施形態では、モードセレクタ49Aによってロックオンモードが選択された場合には、第1実施形態と同様にロックオンモードで医療システム1Aが動作する。
【0125】
本実施形態では、第1実施形態と同様に拘束点Rが設定される(
図28参照、ステップS31)。
本実施形態においてモードセレクタ49Aによってマニュアルモードが選択された場合(ステップS32においてNo)には、マニュアルモードでの動作が開始(ステップS33)され、全体移動モードである場合(ステップS34においてYes)には、入力部材位置姿勢データを座標変換部83が読み込んで逆運動学演算部82へ出力し(ステップS35)、逆運動学演算部82が操作指令を生成して駆動信号生成部71へ出力する(ステップS36)。さらに駆動信号生成部71は第二駆動部22へ駆動信号を出力(ステップS37)し、懸架装置20がマニピュレータ2の全体を移動させる。
【0126】
ステップS37のあと、ロックオンモードが操作者によって選択されていなければ(ステップS38においてNo)、ステップS34へ進み引き続きマニュアルモードとなる。ステップS37のあと、ロックオンモード選択スイッチ50が押された場合(ステップS38においてYes)には、ステップS42へ進み、マニュアルモードからロックオンモードへ移行する。
【0127】
また、マニュアルモードでの動作が開始された後、先端湾曲モードである場合(ステップS34においてNo)には、入力部材位置姿勢データを湾曲量演算部が読み込んで(ステップS39)、操作指令を生成し(ステップS40)、駆動信号生成部71へと出力する。さらに駆動信号生成部71が第一駆動部15へ駆動信号を出力し(ステップS41)、能動湾曲部7が湾曲する。
【0128】
ロックオンモードにおける本実施形態の医療システム1Aの動作(ステップS43)は、第1実施形態と同様である。ロックオンモードで動作している場合に、マニュアルモード選択スイッチ54が押されると、ロックオンモードの選択が解除される。このため、ロックオンモードで医療システム1Aが動作しているときにマニュアルモード選択スイッチ54が押された場合(ステップS44においてNo)には、ステップS33へ進み、ロックオンモードからマニュアルモードへ移行する。
【0129】
本実施形態の医療システム1Aは、マニュアルモードとロックオンモードとのいずれのモードでも入力機構31を用いてマニピュレータ2を動作させることができる。このため、本実施形態の医療システム1Aによれば、マニュアルモードとロックオンモードとを切り替えて医療システム1Aを操作者が操作する場合の移動や持ち替えの負担が軽減される。
【0130】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、マニピュレータ2は、軟性内視鏡に挿入可能な公知の処置具を取付けることができるチャンネルを有していてもよい。また、マニピュレータ2のチャンネルには、処置具に限らず内視鏡が挿入されてもよい。内視鏡がマニピュレータ2のチャンネルに挿入される場合には、マニピュレータ2の撮像部5と内視鏡の撮像部5が併用されてもよい。
【0131】
また、上述の各実施形態及び変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。