特許第6189009号(P6189009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6189009
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】組織回収具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   A61B17/22 528
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-533045(P2017-533045)
(86)(22)【出願日】2016年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2016060324
【審査請求日】2017年6月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100086379
【弁理士】
【氏名又は名称】高柴 忠夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(72)【発明者】
【氏名】松尾 伸子
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第8425533(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0180303(US,A1)
【文献】 特開2012−143538(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0184431(US,A1)
【文献】 特開2002−336263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部と先端部とを有し長手軸の方向へ延びた細長いシースと、
開口部と底部とを有し、前記先端部に配され、切除した組織を回収するために拡縮可能な袋体と、
前記先端部から前方へ突出する一対のワイヤがお互いに離れるように移動して前記開口部を拡開するワイヤ湾曲部と、
前記長手軸に沿って前記先端部から前方へ突出して前記袋体の内部に進入する位置になるように前記シースの前記先端部に配され、前記ワイヤ湾曲部が前記開口部を拡開させている状態において、前記開口部の開口端によって規定される開口面と交差して前記袋体の内部まで延出可能に構成された延出部と、
を備える組織回収具。
【請求項2】
前記ワイヤ湾曲部は、前記開口端に沿って延び前記開口端を環状に保持する弾性ワイヤであって
記先端部から前方へ行くに従って互いに離間するように内部に前記弾性ワイヤを進退自在に保持する一対の筒状部を有する、
請求項1に記載の組織回収具。
【請求項3】
前記ワイヤ湾曲部は、前記先端部から前記開口端に沿って延び再び前記先端部へ戻るリング状をなす弾性ワイヤを有する、請求項1に記載の組織回収具。
【請求項4】
前記長手軸方向において、前記延出部の先端は、前記一対のワイヤの先端よりも前方に位置している、請求項1に記載の組織回収具。
【請求項5】
前記袋体は、前記延出部によって前記袋体を展開する又は前記袋体を畳むために前記開口部から前記底部へ向かって延びる折り目を有する、請求項1に記載の組織回収具。
【請求項6】
前記開口端に一端が固定され前記シースに沿って前記基端部へ延びる挙上ワイヤと、
前記シースの基端部に配され前記挙上ワイヤに連結された操作部と、
をさらに備える、請求項1に記載の組織回収具。
【請求項7】
内視鏡の挿入部の長手方向に沿って前記シースが延びるように前記挿入部に前記シースを連結する連結部をさらに備え、
前記連結部は、前記シースの前記長手軸の方向へ前記シースが進退自在となるように前記シースを保持する、
請求項1に記載の組織回収具。
【請求項8】
内視鏡の挿入部の長手方向に沿って前記シースが延びるように前記挿入部に前記シースを連結する連結部をさらに備え、
前記連結部は、前記シースの前記長手軸を中心として前記シースが回転自在となるように前記シースを保持する、
請求項1に記載の組織回収具。
【請求項9】
前記底部は、点状をなしている、請求項1に記載の組織回収具。
【請求項10】
前記延出部は、前記袋体が前記シースに対して挙上される際に、前記袋体のうち前記延出部と接する部分を押さえることで前記袋体の展開を補助し、前記袋体に前記組織を収容可能な空間を形成可能に配されている、請求項1に記載の組織回収具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織回収具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟性内視鏡のチャンネルに挿入した処置具を用いて、生体組織を採取する処置が行われている。採取する組織が腫瘍等の病理組織である場合、切除した組織を把持鉗子等で把持しつつ内視鏡とともに抜去したり、内視鏡に取り付けた回収具に収納したりする。回収具としては、例えば、特許文献1に開示された回収具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−21620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された回収具は、組織を収容可能な袋体を用いて組織を体内から体外へと運搬することによって、比較的大きな組織を確実に回収することができる。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、袋体の開口部を開く操作をした場合に、開口部のみが開くが袋体全体が十分に展開しない場合がある。この場合、袋体の開口部から袋体の内部へ組織を入れにくいという問題がある。
本発明は、袋体を展開させやすい組織回収具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、基端部と先端部とを有し長手軸の方向へ延びた細長いシースと、開口部と底部とを有し、前記先端部に配され、切除した組織を回収するために拡縮可能な袋体と、前記先端部から前方へ突出する一対のワイヤがお互いに離れるように移動して前記開口部を拡開するワイヤ湾曲部と、前記長手軸に沿って前記先端部から前方へ突出して前記袋体の内部に進入する位置になるように前記シースの前記先端部に配され、前記ワイヤ湾曲部が前記開口部を拡開させている状態において、前記開口部の開口端によって規定される開口面と交差して前記袋体の内部まで延出可能に構成された延出部と、を備える組織回収具である。
【0006】
前記ワイヤ湾曲部は、前記開口端に沿って延び前記開口端を環状に保持する弾性ワイヤであって、前記先端部から前方へ行くに従って互いに離間するように内部に前記弾性ワイヤを進退自在に保持する一対の筒状部を有していてもよい。
【0007】
前記ワイヤ湾曲部は、前記先端部から前記開口端に沿って延び再び前記先端部へ戻るリング状をなす弾性ワイヤを有していてもよい。
【0008】
前記長手軸方向において、前記延出部の先端は、前記一対のワイヤの先端よりも前方に位置していてもよい。
【0009】
前記袋体は、前記延出部によって前記袋体を展開する又は前記袋体を畳むために前記開口部から前記底部へ向かって延びる折り目を有していてもよい。
【0010】
上記態様の組織回収具は、前記開口端に一端が固定され前記シースに沿って前記基端部へ延びる挙上ワイヤと、前記シースの基端部に配され前記挙上ワイヤに連結された操作部と、をさらに備えていてもよい。
【0011】
上記態様の組織回収具は、内視鏡の挿入部の長手方向に沿って前記シースが延びるように前記挿入部に前記シースを連結する連結部をさらに備えていてもよい。前記連結部は、前記シースの前記長手軸の方向へ前記シースが進退自在となるように前記シースを保持してもよい。前記連結部は、前記シースの前記長手軸を中心として前記シースが回転自在となるように前記シースを保持してもよい。
【0012】
前記延出部は、前記袋体が前記シースに対して挙上される際に、前記袋体のうち前記延出部と接する部分を押さえることで前記袋体の展開を補助し、前記袋体に前記組織を収容可能な空間を形成可能に配されていてもよい。
【0013】
前記底部は、点状をなしていてもよい
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、袋体を展開させやすい組織回収具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態の組織回収具を示す全体図である。
図2】同組織回収具の先端近傍の裏面図である。
図3】同組織回収具の袋体が挙上されていない状態を示す側面図である。
図4】同袋体が挙上された状態を示す側面図である。
図5】同袋体が挙上された状態を示す平面図である。
図6】同組織回収具の作用を説明するための図である。
図7】同実施形態の組織回収具の袋体の変形例を示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。
図8】同実施形態の組織回収具の袋体の変形例を示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。
図9】本発明の第2実施形態の組織回収具が内視鏡に取り付けられた状態を示す全体図である。
図10】本発明の第3実施形態の組織回収具の全体図である。
図11】同組織回収具の延出部および袋体を示す側面図である。
図12】同組織回収具の作用を説明するための図である。
図13】本発明の第4実施形態の組織回収具の先端近傍を示す部分断面図である。
図14】本発明の第5実施形態の組織回収具の先端近傍を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態の組織回収具を示す全体図である。図2は、組織回収具の先端近傍の裏面図である。図3は、組織回収具の袋体が挙上されていない状態を示す側面図である。図4は、袋体が挙上された状態を示す側面図である。図5は、袋体が挙上された状態を示す平面図である。図6は、組織回収具の作用を説明するための図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態の組織回収具1(以下、単に「回収具1」と称する。)は、長尺な内シース2と、袋体3と、延出部8と、糸9と、第一ワイヤ10と、操作部13とを備える。
【0018】
内シース2は、先端部2aと基端部2bとを有し、長手軸L1の方向へ延びた細長い筒状部材である。内シース2の先端部2aに袋体3が設けられている。内シース2の基端部2bに操作部13が設けられている。第一ワイヤ10を延出させるための一対の第一孔2cが、内シース2の先端部2aの両側面に形成されている。内シース2の先端部2aよりも所定距離だけ基端側に離れた位置に、内シース2の内部から糸9を延出させるための第二孔2dが形成されている。
【0019】
袋体3は、切除組織や液体が隔離可能な薄膜で形成された袋である。袋体3の材質は、生体適合性を有する柔軟な材質である。たとえば、袋体3は、ウレタン等によって形成されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、袋体3は、開口部4と、底部6と、折り目7とを有する。袋体3の開口部4は、内シース2の先端部2aから前方側へ突出している。袋体3の底部6は、内シース2の先端部2aよりもさらに前方に位置している。
【0021】
開口部4は、内シース2の先端部2aに接続されている。また、開口部4は、内シース2の先端部2aから最も離れた位置において糸9と接続されている。
袋体3の開口部4の向きは、糸9による牽引動作に応じて変化する。すなわち、袋体3の開口部4の向きは、内シース2の長手軸L1方向と、長手軸L1に対して直交する方向との間で、糸9に牽引されることによって変化する。
袋体3の開口部4は、開口部4の開口端4aの形状を規定する第一ワイヤ10を挿通することができるように、筒状の挿通路5を有している。
【0022】
袋体3の底部6は、開口部4の開口端4aにより規定される開口面4bと平行な直線状である。また、袋体3が最も好適に展開している状態において、袋体3の底部6は、内シース2の長手軸L1に交差する直線に沿って延びている。
【0023】
図2から図4までに示すように、折り目7は、開口部4から底部6へ向かって延びている。袋体3のうち延出部8を間に挟んで両側の位置に、2つの折り目7が1つずつ配されている。折り目7は、袋体3の一部が袋体3の外側へ向かって突出するように形成された稜線部7aを有し、稜線部7aを含んだ袋体3の一部が熱溶着されることによって形成されている。折り目7は、袋体3の他の部位よりも硬く、稜線部7aが延びる方向に長い線状を維持することで、袋体3が袋状に展開しやすくするように袋体3を支持する。なお、折り目7は、開口部4から底部6へ向かって延びていれば、その位置及び数は特に限定されない。たとえば、図2から図4に示すように延出部8の近傍に形成された折り目7に加えて、さらに別の場所に折り目(不図示)が形成されていてもよい。
【0024】
延出部8は、袋体3の開口部4の近傍に接触可能となるように、内シース2の先端部2aに配されている。延出部8は、内シース2の先端部2aから、内シース2の長手軸L1に沿ってさらに前方へ延びている。
本実施形態では、延出部8の先端8aは、袋体3が後述する挙上操作部17(図1参照)によって挙上している状態において、袋体3に接触する。袋体3が挙上している状態において、延出部8は、袋体3の開口部4から底部6へ向かって延びている。内シース2の長手軸L1方向における延出部8の長さは、延出部8の先端8aが袋体3に接触可能となる長さ以上であるとともに、挙上された袋体3の開口部4から底部6までの長さ以下である。また、内シース2の長手軸L1方向において、延出部8の先端8aは、第一ワイヤ10の先端となるワイヤ湾曲部11よりもさらに前方に位置している。
【0025】
図1及び図2に示すように、糸9は、操作部13の後述する挙上操作部17に連結されているとともに、袋体3の開口部4に連結されている。糸9は、内シース2に形成された第二孔2dに挿通されている。本実施形態では、糸9は、内シース2の第二孔2dから内シース2の外部に延出して、袋体3の開口部4に固定されている。
【0026】
第一ワイヤ10は、弾性変形可能な弾性ワイヤである。第一ワイヤ10は、ワイヤ湾曲部11と、両端12a,12bとを有している。
ワイヤ湾曲部11は、第一ワイヤ10自身の長手方向の中間部分が折り返されて形成されている。ワイヤ湾曲部11は、外力がかかっていない状態において、たとえば内シース2の直径よりも大きく広がった環状となっている。すなわち、ワイヤ湾曲部11は、ワイヤ湾曲部11において基端部分から中間部分へ行くに従って漸次内シース2長手軸L1に対して対称的に離れるように内シース2の径方向外側へ膨らみ、ワイヤ湾曲部11における中間部分から先端部分へ行くに従って漸次内シース2の径方向内側へ窄んでいる。ワイヤ湾曲部11における基端部分から中間部分までの領域は、本実施形態において開口部4を拡開する一対の開閉部材となっている。
【0027】
ワイヤ湾曲部11は、袋体3の開口部4に挿通されている。本実施形態では、ワイヤ湾曲部11は、開口部4に形成された挿通路5の内部に挿通されることによって、開口端4aに沿って延びている。ワイヤ湾曲部11は、開口部4の開口端4aを環状に保持する。ワイヤ湾曲部11は、内シース2の先端部2aからの前方への突出量に応じて開口部4の形状を規定する。すなわち、ワイヤ湾曲部11に外力がかかっていない状態において、ワイヤ湾曲部11が内シース2の先端部2aから前方へ移動したときに、ワイヤ湾曲部11は、内シース2の長手軸L1に対して対称的に離れるように移動して、開口部4を拡開し、開口部4が環状となるように開口部4を保持する。ワイヤ湾曲部11が内シース2の先端部2a近傍に位置するように第一ワイヤ10が基端側に位置していると、ワイヤ湾曲部11は、開口部4が縮径した状態となるように開口部4を保持する。
内シース2の先端部2aより前方の領域において、第一ワイヤ10は、内シース2の先端部2aから袋体3の開口部4の開口端4aに沿って延び、再び内シース2の先端部2aへ戻るリング状をなしている。
【0028】
第一ワイヤ10の両端12a,12bは、いずれも内シース2の基端部2bに位置している。第一ワイヤ10の両端12a,12bは、操作部13のスライダ16と接続されている。
【0029】
第一ワイヤ10において、ワイヤ湾曲部11と両端12a,12bとの間の部分は、内シース2に挿通されている。
【0030】
第一ワイヤ10は、弾性変形可能なニッケルチタンなどの形状記憶合金からなる。第一ワイヤ10のうち、ワイヤ湾曲部11は、開口部4の形状を規定するための湾曲形状が予め付与されている。ワイヤ湾曲部11は、開口部4の挿通路5に挿入されることによって、開口部4の開口端4aに沿って延びている。挿通路5から露出した第一ワイヤ10は、内シース2の側面に対向して形成された一対の第一孔2cに挿入されている。
【0031】
図1に示すように、操作部13は、内シース2の基端部2bに配されている。操作部13は、袋体3の開口部4を開閉するための開閉操作部14と、袋体3を挙上させるための挙上操作部17とを備えている。
開閉操作部14は、操作部本体15と、スライダ16とを備えている。
【0032】
スライダ16は、操作部本体15に対して摺動可能となるように操作部本体15に連結されている。スライダ16は、第一ワイヤ10の両端12a,12bに固定されている。
操作部本体15に対してスライダ16を前方へ移動させると、第一ワイヤ10が前方へ移動して第一ワイヤ10が内シース2の先端部2aから前方へ突出する。第一ワイヤ10において、ワイヤ湾曲部11は袋体3の開口部4が環状に開くように開口部4を変形させる。スライダ16を用いた第一ワイヤ10の進退操作によって、袋体3には、組織を袋体3の内部に挿入するための入口が形成される。
【0033】
挙上操作部17は、一端が内シース2に接続された分岐チューブ18と、分岐チューブ18の他端に配された糸固定具19とを備えている。糸固定具19は、分岐チューブ18に対して糸9の位置を固定した状態と、分岐チューブ18に対して糸9が進退自在である状態とを切り替える。糸9が牽引された状態で糸9が糸固定具19に固定されているときには、糸9が袋体3の開口部4を挙上させた状態で維持される。糸固定具19に対する糸9の固定が解除されると、開口部4は、内シース2の長手軸L1方向に先端側へ突出した状態に復元する。
糸9は、糸固定具19に対して任意の位置で固定可能である。このため、本実施形態の糸固定具19を備えた挙上操作部17を用いて、内シース2の長手軸L1に対する袋体3の開口部4の挙上角度を任意の角度に設定することができる。
【0034】
本実施形態の回収具1の作用について説明する。図6は、組織回収具の作用を説明するための図である。
本実施形態の回収具1は、図6に示すように、内視鏡100とともに体内へ挿される。
まず、開閉操作部14(図1参照)を用いて第一ワイヤ10を前方へ移動させることによって、袋体3の開口部4が開く(図3参照)。このとき、袋体3に折り目7が形成されているので、第一ワイヤ10が開口部4を開く力によって袋体3の開口部4と底部6との間の部分も開口部4とともに開く。
【0035】
袋体3の開口部4が内シース2の長手軸L1方向へ突出している状態において、挙上操作部17を用いて糸9を基端側へ牽引すると、糸9が開口部4を挙上させる。すると、開口部4の開口端4aによって規定される開口面4bに延出部8が交差して袋体3の底部6へ向かうように、袋体3と延出部8との位置関係が変化する(図4及び図5参照)。袋体3が挙上される過程で、延出部8は、袋体3のうち延出部8と接する部分が挙上されないように袋体3を押さえる。その結果、上記の開閉操作部14を用いた操作において袋体3の開口部4と底部6との間の部分の開き方が不十分であった場合であっても、組織の一部を収容可能な空間を袋体3に生じさせることができる。
【0036】
図6に示すように袋体3が挙上された状態で、例えば内視鏡用把持鉗子110等を用いて組織Tを袋体3内に開口部4を通じて挿入することができる。袋体3には、第一ワイヤ10のワイヤ湾曲部11と延出部8とによって、袋体3を押し広げるきっかけとなる空間がすでに生じているので、袋体3内に組織を挿入する過程で袋体3は容易に広がり、体積が大きな組織であっても容易に袋体3に収容可能となる。
【0037】
袋体3への組織Tの挿入後、スライダ16が操作部本体15に対して基端側へ移動される(図1参照)。すると、第一ワイヤ10の両端12a,12bが内シース2に対して基端部2bよりもさらに基端側へ移動する。第一ワイヤ10は開口部4の挿通路5内に挿通されているので、ワイヤ湾曲部11が基端側に牽引されると、開口部4が縮径されて袋体3が閉じられる。袋体3が閉じられた状態で、回収具1が体外へと抜去されることにより、組織を体外へ取り出すことができる。
【0038】
以上に説明したように、本実施形態の回収具1によれば、第一ワイヤ10を用いて袋体3の開口部4を開いたときに袋体3の一部の展開が不十分であった場合にも、延出部8が袋体3の展開を助けることによって、袋体3の挙上後には組織の収容のきっかけとして十分な大きさの空間を袋体3内に生じさせることができる。その結果、本実施形態の回収具1は、袋体3を展開させやすい。
【0039】
また、本実施形態の回収具1の第一ワイヤ10が、内シース2の先端部2aより前方の領域において袋体3の開口部4の開口端4aに沿うリング状をなしているので、開口部4が整った環状となるように第一ワイヤ10を用いて袋体3を支持することができる。
【0040】
また、本実施形態の回収具1において袋体3が挙上状態であるときに延出部8の先端8aがワイヤ湾曲部11よりも前方に位置しているので、本実施形態の回収具1によれば、袋体3を挙上する過程で袋体3に組織を収容するための空間を広く生じさせることができる。
【0041】
また、袋体3に折り目7が形成されているので、畳まれた状態の袋体3が挙上する過程で折り目7の稜線が線状となるように袋体3が展開しやすい。本実施形態では袋体3の開口部4から底部6へ向かって折り目7が延びているので、袋体3の開口部4から底部6に至るまでの全域で、組織を収容可能な空間を生じさせることができる。
また、本実施形態では、折り目7が袋体3の外周面に対して直角なリブ状になっている。これにより、袋体3を折り目7によって補強することができる。このため、適切に展開した袋体3が意図せずに再び畳まれてしまうのを予防できる。
【0042】
また、本実施形態では、袋体3を挙上した状態と、袋体3を挙上しない状態とのいずれの状態でも、袋体3内に組織を収容することができる。このため、組織を袋体3内に収容するための内視鏡用把持鉗子などの器具との位置関係において使いやすい向きに開口部4を向けることができるので、組織を袋体3に入れやすい。
【0043】
(変形例1−1)
上記実施形態の変形例について説明する。図7は、本変形例の組織回収具の袋体を示す側面図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。
図7に示すように、本変形例の回収具1Aは、上記実施形態に開示された袋体3とは形状が異なる袋体3Aを有している。
本変形例における袋体3Aの底部6Aは、開口部4の開口端4aにより規定される開口面4bと平行な面状をなしている。すなわち、本変形例における袋体3Aは、袋体3Aが挙上された状態で最も好適に展開しているときに、ほぼ円錐台状をなしている。
本変形例において、袋体3Aが挙上された状態では、延出部8は、袋体3Aの開口部4の開口端4aにより規定される開口面4bに交差して底部6Aへ向かって延びている。
【0044】
(変形例1−2)
上記実施形態の他の変形例について説明する。図8は、本変形例の組織回収具の袋体を示す側面図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。
図8に示すように、本変形例の回収具1Bは、上記実施形態に開示された袋体3とは形状が異なる袋体3Bを有している。
本変形例における袋体3Bの底部6Bは、点状である。すなわち、本変形例における袋体3Bは、袋体3Bが挙上された状態で最も好適に展開しているときに、略円錐状をなしている。
本変形例において、袋体3Bが挙上された状態では、延出部8は、袋体3Bの開口部4の開口端4aにより規定される開口面4bに交差して底部6Bへ向かって延びている。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図9は、本実施形態の組織回収具が内視鏡に取り付けられた状態を示す全体図である。
【0046】
図9に示すように、本実施形態の回収具20は、内視鏡100の挿入部101に取り付けることができる。すなわち、回収具1は、内視鏡100の挿入部101に対して内シース2を連結するための連結部21を有している。
【0047】
連結部21は、内シース2が内部に挿通された状態で内シース2を保持する外シース22と、外シース22を内視鏡100の挿入部101に固定するためのリング状の固定部材23とを有している。
本実施形態では、外シース22に挿通された内シース2は、内シース2の長手軸L1方向に進退自在であるとともに、内シース2の長手軸L1を回転中心として回転自在である。
【0048】
固定部材23は、内視鏡100の挿入部101の長手方向の複数個所において挿入部101に外シース22を固定する。固定部材23は、例えば、内視鏡100の挿入部101において、能動湾曲部102よりも近位側(内視鏡100の操作部103に近い側)に取り付けられる。この場合、回収具20の位置及び姿勢は能動湾曲部102の影響を受けない。また、固定部材23は、内視鏡100の挿入部101において能動湾曲部102の先端に取り付けられてもよい。この場合、回収具20の位置及び姿勢が能動湾曲部102における湾曲動作に追従する。
【0049】
本実施形態の回収具20の連結部21は、内シース2の長手軸L1に沿って外シース22内を内シース2が進退自在であり、内シース2の長手軸L1を中心として内シース2が外シース22に対して回転自在となるように、内シース2を保持している。
本実施形態の回収具20では、内視鏡100の挿入部101の遠位端近傍に回収具20の袋体3が位置する。このため、本実施形態の回収具20によれば、袋体3に組織を挿入する際に挿入しやすい。また、外シース22に対して内シース2が進退及び回転自在であるので、内視鏡100の挿入部101の遠位端に対する袋体3の位置を内シース2の操作によって容易に変更できる。このため、本実施形態の回収具20によれば、内視鏡100の視野の邪魔をしない位置に袋体3を退避させたり、内視鏡用把持鉗子などを用いて袋体3内に組織を入れやすい位置に袋体3を移動させたりすることができる。
【0050】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。図10は、本実施形態の組織回収具の全体図である。図11は、組織回収具の延出部および袋体を示す側面図である。図12は、組織回収具の作用を説明するための図である。
【0051】
図10及び図11に示すように、本実施形態の回収具30は、上記第1実施形態に開示された内シース2とは形状が異なる内シース31と、内シース31の長手軸L1方向に進退自在となるように内シース31に挿通された延出部32と、内シース31の基端部31b近傍において延出部32を進退操作するための進退操作部33とを備えている。本実施形態の進退操作部33は、操作部本体15に対して進退自在となるように操作部本体15に取り付けられている。また、進退操作部33は、スライダ16及び第一ワイヤ10と干渉しない位置に配置されている。
【0052】
図11及び図12に示すように、延出部32は、内シース31の先端部31aから前方へと突出可能である。
また、本実施形態では、延出部32は、内シース31の先端部31aから前方へ突出した時に袋体3内に進入するようになっている。
【0053】
また、本実施形態では、内シース31の先端部31aからの延出部32の突出量を進退操作部33によって調整することができる。このため、組織の一部を収容するための空間の大きさを適宜調整することができる。また、本実施形態では、内シース31内に延出部32の先端32aが入り込むように内シース31内に延出部32を収納することによって、袋体3をコンパクトに畳むことができる。
【0054】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。図13は、本実施形態の組織回収具の先端近傍を示す平面図である。
図13に示すように、本実施形態の回収具40は、第1実施形態に開示された内シース2の先端部2aに固定された一対の筒状部41,42を有している。
【0055】
筒状部41及び筒状部42は、内シース2の先端部2aに固定された側では互いに平行であり、内シース2の先端部2aから前方へ行くに従って互いに離間するように湾曲している。筒状部41及び筒状部42の内部に第一ワイヤ10が挿通されている。筒状部41及び筒状部42の材質は、たとえば超弾性合金その他の形状記憶合金であり、上記の湾曲状態が維持される材質である。
【0056】
本実施形態では、筒状部41及び筒状部42は、延出部8の近傍において、袋体3の開口部4の形状を規定している。このため、本実施形態では、袋体3の挙上の有無に関わらず、延出部8の近傍では開口部4が開いた状態となっている。本実施形態において第一ワイヤ10のワイヤ湾曲部11を前方へ移動させると、ワイヤ湾曲部11およびその基端部分は、筒状部41及び筒状部42に支持されたリング状となる。
【0057】
このように、本実施形態の回収具40によれば、組織を袋体3内に挿入するためのきっかけとなる空間を、筒状部41、筒状部42、及び延出部8によって袋体3に生じさせることができる。
【0058】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。図14は、本実施形態の組織回収具の全体図である。
図14に示すように、本実施形態の回収具50は、第1実施形態に開示された回収具1と比較して、糸9及び挙上操作部17を有していない点で構成が異なる。すなわち、本実施形態の回収具50は、袋体3を挙上させるようにはなっていない。また、本実施形態の回収具50は、第1実施形態に開示された回収具1の延出部8とは形状が異なる延出部51を有している。
延出部51は、内シース2の先端部2aから、内シース2の長手軸L1に対して交差する方向へ延びて、袋体3の底部6へと向けられている。
延出部51の先端51aは、袋体3に接触することによって、袋体3が少なくとも開口部4近傍で適切に展開するように、袋体3を支えている。
本実施形態の回収具50において、延出部51は、袋体3が適切に展開するように袋体3を支え、また、袋体3が開口部4を通じて反対側へ飛び出すのを防ぐことができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記各実施形態に開示された袋体は、延出部を囲む筒状に成形された折り目を有していてもよい。この場合、筒状の折り目の内部に延出部が配されることで延出部の先端が常に袋体に接するようになる。また、進退可能な延出部が筒状の折り目の内部に配されていてもよく、この場合には、延出部の先端が袋体の底部へ向かって移動するように折り目が延出部を案内することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、内視鏡とともに使用される組織回収具に利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1,1A,1B,20,30,40,50 組織回収具
2 内シース
3,3A,3B 袋体
4 開口部
4a 開口部の開口端
4b 開口部の開口端によって規定される開口面
5 挿通路
6,6A,6B 底部
7 折り目
8,32,51 延出部
8a,32a,51a 延出部の先端
9 糸
10 第一ワイヤ
11 ワイヤ湾曲部
13 操作部
14 開閉操作部
15 操作部本体
16 スライダ
17 挙上操作部
18 分岐チューブ
19 糸固定具
21 連結部
22 外シース
23 固定部材
31 内シース
33 進退操作部
41 筒状部
42 筒状部
100 内視鏡
101 挿入部
102 能動湾曲部
103 内視鏡の操作部
110 内視鏡用把持鉗子
【要約】
組織回収具(1)は、基端部と先端部とを有し長手軸の方向へ延びた細長い内シース(2)と、開口部と底部とを有し、前記先端部に配され、拡縮可能な袋体(3)と、先端部から前方へ移動したときに長手軸に対して対称的に離れるように移動して開口部を拡開する第一ワイヤ(10)と、第一ワイヤ(10)の間に配され、第一ワイヤ(10)が開口部を拡開させている状態において、開口部の開口端よりも底部側において袋体(3)に接する延出部(8)と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14