【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
<実施例1>
図1は実施例1による研磨布1の断面図を示す。
ポリエステル短繊維(繊度1.5dtex、長さ51mm)よりなるニードルパンチされた不織布(目付125g/m
2、厚み0.8mm)に、ポリウレタンエラストマー溶液を含浸させ、水に浸漬して湿式凝固せしめた後、水洗乾燥、研削処理し、厚さ0.4mmの基材3を得た。
【0035】
一方、固形分濃度30%のポリエステル系ポリウレタンエラストマー溶液100質量部に、ジメチルホルムアミド60質量部、発泡助剤1.5質量部、および顔料であるカーボンブラックを20質量%含有するジメチルホルムアミド分散液10質量部を加え、ポリウレタンエラストマー溶液(発泡用溶液)を作製した。
【0036】
得られた溶液(発泡用溶液)を基材3にロールコーターで1000g/m
2塗布した後、凝固浴の中に浸漬して凝固させ、温水で十分に脱溶媒した後、100℃にて熱風乾燥を行った。
【0037】
このようにして不織布の基材3上にポリウレタンエラストマーの発泡5を有する樹脂シート2を積層し、次に、樹脂シート2の表面(基材3の反対側)を、サンドペーパー#240、クリアランス1.0
mm、ラインスピード1.5m/分、ペーパー回転数1000rpmの条件で、穴開け研削し、樹脂シート2上に研磨面6を形成し、樹脂シート2の厚みを0.6mmとした。
【0038】
上述の研削処理後、溝切り加工機(三菱マテリアルテクノ株式会社製 直線溝入れ加工機)により、溝幅2mm、溝の間隔20mm、研磨面6からの深さ0.6mmの碁盤目状(縦横の格子状)の溝7を研磨面6に形成し、厚み1.0mmの研磨布1を得た。 次に溝加工後の研磨布1の溝7を目視し、溝最底部8が積層面4に達していることを確認した。
【0039】
<実施例2>
図2は実施例2による研磨布1の断面図を示す。
実施例2では、研磨面6に形成する溝7の研磨面6からの深さを0.7mmとした以外は、実施例1と同様にし、研磨布1を得た。樹脂シート2の厚みは0.6mmであるから、溝7の最底部8は積層面4より基材3に0.1mm入り込んでいる。溝7を目視し、その溝最底部8が基材3であることを確認した。
【0040】
<比較例1>
図3に比較例1、2による研磨布9の断面図を示す。
比較例1では、研磨面6に形成する溝10の研磨面6からの深さを0.5mmとした以外は、実施例1と同様にし、研磨布9を得た。次に溝加工後の研磨布9の溝10を目視し、その溝最底部11が樹脂シート2であることを確認した。
【0041】
<比較例2>
比較例
2では、樹脂シート2の厚さを0.8mm、基材3の厚さを0.2mmとした以外は、実施例1と同様にし、研磨布9を得た。次に溝加工後の研磨布9の溝10を目視し、その最底面部11が樹脂シート2であることを確認した。
【0042】
<吸水量測定のための試料の作製>
樹脂シート2および基材3の吸水量を測定するための試料12について、
図4にその概略を示す。
【0043】
<試料の作製>
試料12は、
図4に示すように、樹脂シート2および基材3の測定用シート13(100mm×100mmの正方形)の水を吸水させる面以外からの水の侵入を防ぐために、その両面に測定シート13の大きさを上回る、水を透過しない粘着シート14を測定シート13の両面に貼着し、測定シート13を密閉する。さらに水を吸水させる面の粘着シート14の中央をφ40
mmの円形に剥がし、吸水窓15を設けたものである。
【0044】
<樹脂シートの測定用シート>
樹脂シート2の測定用シート13は、PET(ポリエチレンテレフタラート)基材上に実施例1と同様の樹脂シート2を形成し、樹脂シート2からPET基材を剥がし、上述の大きさに切断加工したものである。
<
基材の測定用シート>
基材3の測定用シート13は、実施例1と同様に作製した基材3上の樹脂シート2を研削処理にて取り除き、上述の大きさに切断加工したものである。
【0045】
<吸水量の測定方法>
上述の試験片12を十分乾燥させ、吸水前の重量を測定した。次に、水を満たした水槽中に試験片12を沈め、90時間放置後、水槽から取り出し表面の余分な水分を拭き取り、吸水後の重量を測定した。吸水後の重量から吸水前の重量を引き、樹脂シート2、基材3の吸水量を算出した。
【0046】
上述の吸水量の測定方法により、樹脂シート2および基材3ついて、おのおの5枚の試料12を測定し、その平均値を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1、2および比較例
1、
2の研磨布について次の研磨試験を行った。
オスカー式の片面研磨装置を用い、予め板厚を精密に測定した、板厚0.7mm、サイズ680mm×880mmの液晶用向けガラス基板を、径1200mmの上方の加圧盤の下面に貼着された厚さ1mmの水を含んだバックパッドに押圧して接触させ吸着固定させた。
【0049】
前記片面研磨装置の下方の径1500mm加圧盤の上面に研磨布を両面テープにより貼着し、加圧盤を回転させ、酸化セリウムからなる研磨砥粒を水に分散させ研磨液とした市販の研磨液を毎分5リットル供給しつつ、ガラス基板を加圧盤にて研磨布に押しつけ研磨を行った。
【0050】
その際の自転軸を中心に自転可能な上方の加圧盤の揺動幅を380mm、揺動速度を50mm/秒、下方の加圧盤の回転数を90rpm(回転数/分)、研磨圧を100g/cm
2とし、研磨を行い、ガラス基板表面に0.01μm〜0.03μmの表面凹凸がなくなるまでの研磨時間を測定した。
【0051】
ガラス基板における表面凹凸の有無については、表面粗さ計(株式会社東京精密社製、サーフコム1400)を用い測定した。
【0052】
上述の研磨加工試験により、実施例および比較例の研磨布について、おのおのガラス基板10枚を研磨し、その平均研磨時間を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示すように、研磨面6より積層面4まで達する溝を形成した実施例1による研磨布1を用いた研磨時間は平均297秒、研磨面6より基材3まで入り込んでいる溝を形成した実施例2による研磨布1を用いた研磨時間は平均276秒、研磨面より基材3まで及ばない溝を形成した比較例1の研磨布9を用いた研磨時間は平均325秒であった。よって、比較例1に比較し、ガラス基板表面に0.01μm〜0.03μmの表面凹凸がなくなるまでの研磨時間が実施例1では28秒、実施例2では49秒短縮した。
また、実施例2と比較例2の比較より、同じ溝の深さであっても、基材3まで入り込む溝を形成した場合は、ガラス基板表面に0.01μm〜0.03μmの表面凹凸がなくなるまでの研磨時間が43秒短縮した。
【0055】
よって、上述の吸水量、研磨加工試験に示すように、基材が樹脂シートより単位体積当たりの吸水量が大きい研磨面の溝を形成した研磨布において、溝最底部が、積層面もしくは基材までおよぶ研磨布は、研磨加工時間の短縮が図れる。