(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189022
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】フレキソ印刷用印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41F 33/00 20060101AFI20170821BHJP
B41F 17/14 20060101ALI20170821BHJP
B41F 3/20 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
B41F33/00 290
B41F17/14 E
B41F3/20 Z
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-159750(P2012-159750)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-19059(P2014-19059A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】594101226
【氏名又は名称】株式会社コムラテック
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(72)【発明者】
【氏名】中西 正治
(72)【発明者】
【氏名】小林 憲二
(72)【発明者】
【氏名】若王子 由明
【審査官】
道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−011500(JP,A)
【文献】
特開2010−046980(JP,A)
【文献】
特開平06−143535(JP,A)
【文献】
特開平09−070946(JP,A)
【文献】
特開平05−077394(JP,A)
【文献】
特開平02−192944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 3/20 〜 3/86
B41F 17/14 〜 17/00
B41F 33/00 〜 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版装着用の円筒状の版胴と、この版胴を所定の周速度で回転させる版胴駆動手段と、上記版胴の回転軸に直交する方向にスライド移動する基台と、上記基台の上に配設された被印刷物載置用の印刷ステージと、上記基台を水平方向に移動させて上記印刷ステージを移動させる基台駆動手段と、これら版胴の回転および基台の移動を制御する制御手段とを備え、上記制御手段からの信号により上記基台を版胴の回転動作に同期して移動させ、この版胴の外周に巻き付けられて装着された印刷版を、上記印刷ステージの上面に載置された被印刷物に接触させて、この印刷版の表面に保持されたインクを上記被印刷物の表面に転写する印刷装置であって、上記基台と印刷ステージとの間に、この印刷ステージを互いに直交する三軸方向に移動自在に支持するとともにステージを鉛直方向の回転軸周りに回転自在に支持するステージ位置微調整手段と、上記ステージ位置微調整手段の作動状況をフィードバックさせるフィードバック手段とが配設され、上記制御手段に予め入力された補正用データと上記フィードバック手段からのフィードバックデータにもとづき、この制御手段が、上記印刷版が被印刷物へ当接している間に上記ステージ位置微調整手段を上記版胴の回転と基台の移動に同期して作動させ、転写パターンのずれおよび曲がりの少なくとも一方を補正することにより、上記インクが被印刷物に対して適正に転写されるようになっていることを特徴とするフレキソ印刷用印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版上のインクを、基板等の被印刷物に高精度に転写することのできる
フレキソ印刷用印刷装置
(以下「印刷装置」とする)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のフラットパネルディスプレイや太陽電池パネル等の大形化(大面積化)に伴い、従来、エッチングやリソグラフィにより形成されていた基板上の導電層や絶縁層のパターンを、印刷(転写)法により形成しようとする試みがなされている。なかでも、フレキソ印刷法やグラビアオフセット印刷法等、柔軟な樹脂製の印刷版を用いる印刷法は、ガラス基板の表面や配線等を傷つけることなく、均一な薄膜(層)を再現性良く高速で印刷できることから、液晶(LCD),有機EL,有機TFT等の電子(表示)デバイスの製造工程において、各種インクを用いた電極層やシール剤層,マスキング剤層等のパターン形成に利用され始めている(例えば、特許文献1,2等を参照)。
【0003】
図5,
図6は、上記ガラス基板等の上に印刷版を用いて導電層等を転写(パターン形成)する際に用いられる従来の印刷装置の構成例である。
図5に示すように、この印刷装置は、印刷版(フレキソ印刷版)Pと、この印刷版Pを外周に巻き付けて取り付けるための版胴Dと、上記印刷版Pに所定量のインクを保持させるためのアニロックスロールAおよびドクターブレードBと、インクを供給するインクタンクTと、上面に固定された被印刷物(基板=ワークW)を上記版胴Dの回転と同期して搬送する印刷ステージ2等を主体として構成されている。
【0004】
上記版胴Dは、
図6のように、その中心軸(回転軸=シャフトS)を介して版胴駆動用のモータM1に連結されており、制御部(コントローラ,図示せず)等の指令により、上記印刷ステージ2の動作(図中x軸方向のスライド移動)と同期して回転するようになっている。また、上記印刷ステージ2は、上記x軸方向に沿ったガイドレール(直動軸受)G,Gの上にスライド自在に取り付けられた走行ベース(土台)1の上に配設されており、これらガイドレールG,Gの間に設けられたリニアモータM2により、上記版胴D(印刷版P)の回転と同期して移動するようになっている。
【0005】
上記引用文献1,2によれば、印刷装置(印刷機)に、印刷版と被印刷物(基板)との距離(印刷ギャップである隙間)を精密に制御する手段を設け、印刷版を適正な接圧(いわゆる「キスタッチ」)で基板に押し付けてインクを転写することにより、高精度な印刷を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−245417号公報
【特許文献2】特開2009−241469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような印刷装置を用いた転写(パターン形成)は、被印刷物が長尺の連続印刷機とは異なり、一動作(過程)で基板一つずつの印刷(転写)を完了させる枚葉式(バッチ式)の印刷となっている。そのため、上記印刷装置においては、製造品種の転換や印刷版の消耗等により、比較的頻繁に印刷版や版胴を交換する必要が生じる。
【0008】
しかしながら、上記印刷版や版胴を交換する頻度が多いほど、以下のような不具合が発生する確率が高くなる。例えば、上記印刷装置におけるパターンの転写状態を示す
図7(平面図)に示すように、印刷版Pは版胴Dの外周に張力(テンション)をかけて巻回・固定されるため、印刷版装着時に、印刷版Pが版胴Dに対して歪んだり曲がったりして取り付けられた場合、印刷前の基板Wが印刷ステージ2上に正確に位置決めされていても、印刷版P上のパターンは歪んだ形で転写されてしまう(印刷後の基板W’上の斜線部分を参照)。なお、
図7において線L3−L3’は、転写加工中における上記印刷ステージ2の中心点の移動軌跡である。
【0009】
また、
図8に示すように、版胴組み付け時に、万一、版胴Dと一体のシャフトSが、モータM1等の回転駆動手段の中心軸に対して傾いた状態で取り付けられた場合も、同様に、印刷版P上のパターンは、基板Wに対して曲がった形で転写されてしまう(印刷後の基板W’上の斜線部分を参照)。
図8中の線L4−L4’は、転写加工中における上記印刷ステージ2の中心点の移動軌跡である。
【0010】
上記いずれかの不具合により転写パターンに異常が生じた場合、印刷後のパターンの仕上がりを補正するために、実際の被印刷物を用いたテストプリントを行い、その結果を見て上記印刷版の位置や版胴の傾きを手作業で微調整するフィードバック作業が、上記転写パターンが適正になるまで、何度か繰り返し行われる。このように、上記従来の印刷装置では、製造開始前の工数や材料のロスが大きいため、その改善が望まれている。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、印刷版や版胴が適切に取り付けられていない場合でも、その転写のずれや曲がりに応じた補正を印刷時に自動的に行うことにより工程ロスが少なく、設計通りの高精度な転写を再現することのできる印刷装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明の印刷装置は、印刷版装着用の円筒状の版胴と、この版胴を所定の周速度で回転させる版胴駆動手段と、上記版胴の回転軸に直交する方向にスライド移動する基台と、上記基台の上に配設された被印刷物載置用の印刷ステージと、上記基台を水平方向に移動させて上記印刷ステージを移動させる基台駆動手段と、これら版胴の回転および基台の移動を制御する制御手段とを備え、上記制御手段からの信号により上記基台を版胴の回転動作に同期して移動させ、この版胴の外周に
巻き付けられて装着された印刷版を、上記印刷ステージの上面に載置された被印刷物に接触させて、この印刷版の表面に保持されたインクを上記被印刷物の表面に転写する印刷装置であって、上記基台と印刷ステージとの間に、この印刷ステージを互いに直交する三軸方向に移動自在に支持するとともにステージを鉛直方向の回転軸周りに回転自在に支持するステージ位置微調整手段と、上記ステージ位置微調整手段の作動状況をフィードバックさせるフィードバック手段とが配設され、上記制御手段に予め入力された補正用データと上記フィードバック手段からのフィードバックデータにもとづき、この制御手段が、
上記印刷版が被印刷物へ当接している間に上記ステージ位置微調整手段を上記版胴の回転と基台の移動に同期して作動させ、
転写パターンのずれおよび曲がりの少なくとも一方を補正することにより、上記インクが被印刷物に対して適正に転写されるようになっているという構成をとる。
【0013】
すなわち、本発明者は、前記課題を解決するために研究を重ね、一動作で基板一つずつの転写を完了させる枚葉式の印刷装置において、版胴の回転に同期する被印刷物載置用の印刷ステージを、印刷版の歪み,曲がりや版胴の回転軸ずれに対応してこれを補正することのできる、ステージ位置微調整手段の上に配設して移動させることを着想した。そして、予め行ったテストプリント等から得られる上記曲がりやずれ等の(最初の)データを利用し
、かつ、ステージ位置微調整手段の作動状況のフィードバックデータに基づいて、上記ステージ位置微調整手段により、転写の際にオンタイム(リアルタイム)で印刷版の曲がりやずれ等を自動で修正することによって、テストプリントを繰り返すことなく、上記印刷版上の印刷パターンを、被印刷物上に、素早く正確に再現できることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の印刷装置は、水平方向にスライド移動する基台と、その上面に被印刷物を載置して固定するための印刷ステージとの間に、この印刷ステージを互いに直交する三軸(xyz軸)方向に移動自在に、かつ、鉛直方向の回転軸(θ軸)周りに回転自在に支持するステージ位置微調整手段が配設されており、このステージ位置微調整手段が、上記印刷ステージおよび基台と一体となって、版胴の回転動作に同期してスライド移動するようになっている。そして、このステージ位置微調整手段は、上記スライド移動中に、印刷装置の制御手段に予め入力(記憶)された補正用データ
とステージ位置微調整手段の作動状況のフィードバックデータにもとづき、上記版胴の回転位置(すなわち、印刷版と被印刷物の接触位置)に対応して、上記三軸方向のステージ位置とステージの回転角を変更し、印刷位置(印刷版と被印刷物の当接位置)を自動で補正するようになっている。これにより、本発明の印刷装置は、印刷版や版胴が適正に取り付けられていない場合でも、印刷時にパターンの曲がりやずれ等が、転写の進行とともにリアルタイムで適切に補正され、所期の目標通りの高精度な転写を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態における印刷装置の概略構成図である。
【
図3】上記印刷装置における印刷ステージの動きと転写結果を説明する図である。
【
図4】上記印刷装置における印刷ステージの動きと転写結果を説明する図である。
【
図7】従来の印刷装置における印刷ステージの動きと転写結果を説明する図である。
【
図8】従来の印刷装置における印刷ステージの動きと転写結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態における印刷装置は、一動作でワークW(被印刷物)の一つに一回の転写を完了させる、枚葉式の印刷装置であり、その主要部分は、従来例と同様、印刷版Pを取り付けるための版胴Dと、上記印刷版Pに所定量のインクを保持させるためのアニロックスロールAおよびドクターブレードBと、インクを供給するインクタンクTと、上面に固定されたワークWを搬送する印刷ステージ2、および、これらを管理する制御手段(図示せず)等から構成されている(
図5参照)。
【0018】
また、本実施形態の印刷装置は、
図1に示すように、上記版胴Dが、シャフトSを介して版胴駆動用のモータM1に連結され、周方向に回転駆動されるようになっている。また、上記印刷ステージ2は、スライド自在の走行ベース1(基台)の上に配設されており、この走行ベース1と印刷ステージ2とが、一体となって、リニアモータM2の駆動によりx軸方向に移動するようになっている。上記印刷ステージ2の移動と上記版胴Dの回転とは、
図2に示すように、上記制御手段からの指令(信号)により同期するようになっている。
【0019】
そして、上記印刷装置は、上記走行ベース1と印刷ステージ2との間に、この印刷ステージ2を互いに直交する三軸(xyz軸)方向に移動自在に支持するとともに印刷ステージ2を鉛直方向の回転軸(θ軸)周りに回転自在に支持するステージ位置微調整手段〔x−y軸駆動ユニット3,z軸駆動ユニット4およびθ軸回転用モータ5〕が配設され、上記制御手段に予め入力された補正用データ
とステージ位置微調整手段の作動状況のフィードバックデータにもとづいて、このステージ位置微調整手段(3,4,5)が、上記版胴Dの回転と印刷ステージ2の移動に同期して作動することにより、上記印刷版P上に保持されたインクが、ワークWに対して適正に転写されるようになっている。これが、本発明の印刷装置の特徴である。
【0020】
上記印刷装置の構成について、詳しく説明すると、上記版胴Dは真円筒状で、その中心(回転中心)に、これを支持するためのシャフトSが、筒長方向に貫通している。この版胴Dの外周には、外周面に巻き付けられた上記印刷版Pの両端部(回転方向端部)を固定するためのくわえ部(図示省略)が、版胴周方向に離間して2個所設けられており、上記印刷版Pが、これら両側のくわえ部の間に、周方向にテンションをかけて若干引っ張られた状態で、所定の位置に固定されるようになっている。
【0021】
上記版胴Dを支持するシャフトSは、中実の長い円筒状で、その一端が、上記版胴Dを回転駆動するモータM1に接続されている。このモータM1には、低速で定速回転可能なステッピングモータ等が用いられ、後記する印刷ステージ2の移動(直線速度)と上記版胴Dの回転速度(周速度)とを一致(同期)させやすいように構成されている。
【0022】
つぎに、上記ワークWおよび印刷ステージ2を移動させるための走行ベース1は、x軸方向に沿った2本のガイドレールG,Gと、その上にそれぞれ載置された鞍形部材とからなる直動軸受(滑り軸受)の上に、跨るように形成されており、その上に配設される印刷ステージ2および後記のステージ位置微調整手段(3,4,5)を、上記x軸方向にスライド自在に支持するようになっている。
【0023】
上記2本のガイドレールG,Gの間に配設されたリニアモータM2は、ガイドレールGと同様にx軸方向に沿ったバー状の固定子(マグネット側)と、上記走行ベース1の裏面(図では見えない)側に配置された可動子(コイル側)とで構成されており、上記x軸方向に沿った精密な位置決めと、設定された定速でのスライド移動が可能になっている。
【0024】
上記走行ベース1上に配設される印刷ステージ2は、ワークW(基板等)を載置するための上面を備え、後記するステージ位置微調整手段(3,4,5)により、xyzの3軸方向と、上記上面の中心軸(θ軸)周りの回転が可能になっている。なお、印刷ステージ2の上面には、この上に載置されるワークWを印刷(転写)の度に毎回同じ位置にセットするためのガイド等(図示省略)が設けられている。
【0025】
上記印刷ステージ2と走行ベース1の間のステージ位置微調整手段は、先にも述べたように、x−y軸駆動ユニット3と、z軸駆動ユニット4(ステージ昇降用モータ)と、θ軸回転用モータ5とから構成されている。このx−y軸駆動ユニット3は、上記走行ベース1上に配設された2組の小形のリニアモータで構成されており、これら各リニアモータが、x軸方向およびy軸方向に互いに直交するように配置されることにより、上記走行ベース1上における印刷ステージ2の小刻みな位置調整が可能になっている。なお、印刷ステージ2の調整方向は図中の矢印X,Yで表示している。また、リニアモータの形状は簡略化して描いている。
【0026】
また、上記z軸駆動ユニット4は、図示しないリンク機構を介して、印刷ステージ2をz軸方向(略鉛直方向)に昇降させるものであり、前記版胴駆動用モータM1と同様、ステッピングモータ等を用いることにより、正確な高さ調整が可能になっている(調整方向は図中の矢印Zで表示)。そして、上記θ軸回転用モータ5にも、同様のステッピングモータ等が採用され、このθ軸周りの上記印刷ステージ2の正確な回転(θ軸周りの位相角制御)ができるようになっている(調整方向は図中の矢印θで表示)。
【0027】
つぎに、上記印刷装置の運転(同期)制御について説明する。
図2は、上記印刷装置の運転方法を説明するブロック図である。なお、図中の二点鎖線で囲まれた部分(下側3段)が、本発明のステージ位置微調整手段を制御するために追加されたブロックである。また、図中の制御装置には、テストプリント等により得られた「印刷版Pの曲がり」(
図7参照)や「版胴Dの回転軸のずれ」(
図8参照)等に起因する転写位置ずれや曲がりの詳細なデータが、この制御装置の備えるメモリ等の記憶手段(図示省略)に予め記憶(入力)されているものとして説明する。
【0028】
この図のように、上記印刷装置の制御手段(制御装置)は、「運転命令」を受けると、まず、印刷ステージ2の移動と版胴Dの回転の駆動を開始する。この際、先にも述べたように、上記印刷ステージ2の移動速度(位置)と版胴Dの回転速度(角度)とは、上記印刷版Pが印刷ステージ2上のワークWの決められた位置に当接するように、同期制御される(同期運転制御部)。なお、印刷ステージ2の移動は、先にも述べたように、走行ベース1の駆動により行われる。また、この印刷版PのワークWへの当接が、理想とする「キスタッチ」に近づくように、上記z軸駆動ユニット4(ステージ昇降用モータ)により、その印刷ステージ2の高さが、予め適切に制御される。
【0029】
上記印刷版PのワークWへの当接のタイミングが近づくと、予め行ったテストプリント等から得られた「転写パターンのずれや曲がり」等のデータを利用して演算された補正値、すなわち、図においては「印刷ステージ昇降(z軸)駆動演算部」,「印刷ステージx−y軸駆動演算部」,「印刷ステージ回転(θ軸)駆動演算部」から出力される「補正値」にもとづき、「同期運転制御部」から各モータドライバに対して指令(信号)が発せられ、x−y軸駆動ユニット3,θ軸回転用モータ5およびステージ昇降用のz軸駆動ユニット4の駆動と制御を開始する。
【0030】
例えば、
図7(従来例)のように、印刷版Pが版胴Dに対して歪んだり曲がったりして取り付けられたことに起因する転写パターンのずれや曲がり等がある場合、上記印刷装置では、
図3のように、印刷版PがワークWへ当接している間に、上記補正指令によりx−y軸駆動ユニット3を作動させ、上記印刷ステージ2を、そのスライド移動に同期してこれに直交する方向(
図1におけるY方向)に移動させ、上記印刷版PのワークWへの接触位置を微調整する。これにより、上記転写パターンのずれや曲がり等が解消され、
図3のように、印刷版Pの表面に保持されたインクを、所期の設計どおりのパターンに正確に転写することができる(印刷ステージ2の中心点の移動軌跡L1−L1’を参照)。
【0031】
また、
図8(従来例)のように、版胴Dが回転軸に対して傾いた状態で取り付けられたことに起因する転写パターンのずれや曲がり等がある場合、上記印刷装置では、
図4のように、印刷版PがワークWへ当接している間に、補正信号によりx−y軸駆動ユニット3とθ軸回転用モータ5とを作動させ、上記印刷ステージ2を、そのスライド移動に同期してこれに直交する方向(
図1におけるY方向)に移動させながら、θ軸周りにステージを回転させ、上記版胴D上の印刷版PのワークWへの接触位置を微調整する。これにより、上記転写パターンのずれや曲がり等が解消され、
図4のように、印刷版Pの表面に保持されたインクを、所期の設計どおりのパターンに正確に転写することができる(印刷ステージ2の中心点の移動軌跡L2−L2’を参照)。
【0032】
なお、
図2に示すように、上記x−y軸駆動ユニット3,z軸駆動ユニット4,θ軸回転用モータ5を駆動する各モータには、それぞれエンコーダが取り付けられており、上記各モータの作動状況(すなわち、印刷ステージ2の位置,角度,速度等)が、各モータのドライバにフィードバックされるようになっている。これにより、上記各ステージ位置微調整手段(3,4,5)は、各駆動演算部から発せられる「補正値」に沿った正確な動作が可能になっている。
【0033】
また、上記例では、補正信号によりx−y軸駆動ユニット3(Y方向)とθ軸回転用モータ5とを作動させる例を示したが、テストプリント等から得られる転写位置のずれや曲がりの方向や程度等に応じて、各ステージ位置微調整手段(x−y軸駆動ユニット3,z軸駆動ユニット4,θ軸回転用モータ5)の作動を組み合わせれば、どのような転写位置のずれや曲がりにも対応することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、印刷ステージ2のxy軸方向の駆動手段として2組のリニアモータを、z軸方向の駆動手段(ステージ昇降手段)としてリンク機構とステッピングモータの組み合わせを、θ軸周りの駆動手段としてステッピングモータを、それぞれ例示したが、その他の駆動手段を用いることもできる。例えば、上記x−y軸方向およびz軸の駆動手段としては、リニアモータ,ステッピングモータ等のデジタル制御可能なモータやアクチュエータ等が使用できる。上記θ軸周りの駆動手段としては、モータまたはアクチュエータ等と、角度(位相角)センサとを組み合わせて利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の印刷装置は、工程におけるロスが少なく、設計通りの高精度な転写を再現できるため、液晶(LCD),有機EL,有機TFT等の電子デバイスの製造工程で用いられる、各種インクを用いた電極層やシール剤層,マスキング剤層等のパターン形成に適する。
【符号の説明】
【0036】
1 走行ベース
2 印刷ステージ
3 x−y軸駆動ユニット
4 z軸駆動ユニット
5 θ軸回転用モータ
D 版胴
P 印刷版
W ワーク