(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明の接離機構を適用した画像形成装置の概略図を示す。
【0023】
この装置は、繰出部Cにより記録媒体Pを繰り出し、繰り出された記録媒体Pを搬送部Dにより画像形成部Eに送って、次いで、転写部Iにより記録媒体Pに画像を転写し、その後、記録媒体Pに転写された画像を定着部Hで定着して、巻取部Gにより記録媒体Pを巻き取るものである。記録媒体Pは、紙、フィルムまたは天然や人造の布帛、織物、不織物、編み物(ニット)等の表面に凹凸を有するものである。
【0024】
繰出部Cと定着部Hと間は、記録媒体Pの引っ張り力が一定となるように調整されている。具体的には、繰出部Cに、一対のローラのグリップ力(F)よりも強い力(F1)が加わるようになると、搬送される記録媒体Pが定着部H側に引っ張られ、この記録媒体Pに強いテンションが作用するように調整されている。
【0025】
この状態を、検知手段(図示せず)を介して制御手段(図示せず)が検知すると、制御手段は、繰出部Cの記録媒体Pの繰出し量(速度)を多く(速く)することにより、記録媒体Pの引っ張り力を一対のローラのグリップ力(f)となるように構成されている。
【0026】
巻取部Gは、画像が定着された記録媒体Pを巻き戻すものである。また、繰出部Cと同様に、巻取部Gも、定着部Hの記録媒体Pの引っ張り力が一定となるように構成されている。
【0027】
この場合、巻き戻される記録媒体Pに強いテンションが作用し、一対のローラのグリップ力(f)よりも強い力(f2)が加わるようになると、繰出部Cの記録媒体Pの巻戻し量(速度)を少なく(遅く)することにより、記録媒体Pの繰出部Cの記録媒体Pの巻戻し力を一対のローラのグリップ力(f)となるように構成されている。このように、記録媒体Pの搬送は、定着部Hのグリップ力、搬送速度を基準として、繰出部Cおよび巻取部Gの調整が行われている。
【0028】
搬送部Dは、繰出部Cから繰出された記録媒体Pを、転写部Iおよび定着部Hに搬送するものである。搬送部Dは、ループ状のベルトD10(無端ベルト)と、駆動ユニットD20と、従動ローラD30とからなる。
【0029】
搬送部Dは、図示しない筐体に取り付けられ、駆動ユニットD20と従動ローラD30とにより、ベルトD10に張力が張った状態で架け渡されている。駆動ユニットD20は、二つのローラからなり、一方のローラ側には後に述べる吸着部D40が設けられている。
【0030】
ベルトD10には、吸着部D40と除電部D50とが配置されている。吸着部D40は、所定の電圧で印加して、記録媒体Pを搬送部DのベルトD10に吸着するものであり、繰出部C側に配置されている。吸着部D40は、記録媒体PをベルトD10上に保持させた状態で、画像形成部Eおよび定着部H側に、記録媒体Pを移動させるとともに、ベルトD10上で記録媒体Pの皺を延ばす。
【0031】
除電部D50は、画像(現像剤像担持体E20に形成された現像剤像)が転写された記録媒体Pを定着部Hに搬送される際に、ベルトD10から記録媒体Pが分離しやすいようにするとともに、この画像が壊れないように除電を行うものである。
【0032】
このため、除電部D50は、ベルトD10に吸着した記録媒体PがベルトD10から分離する部分、つまり、従動ローラD30の上方に配置されている。除電部D50は、コロナ帯電器であり、コロナワイヤD51とコロナワイヤD51を覆うコロナハウスとD52からなり、所定のバイアスが印加されている。
【0033】
画像形成部Eは、記録媒体Pに転写する画像を形成するものである。画像形成部Eは、各色に対応した画像形成手段E10と、各画像形成手段E10で形成された像を転写部I側に搬送する現像剤像担持体E20とからなる。
【0034】
画像形成手段E10は、上から順に、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBKが並列に配置されている。像担持体E11の周囲に、像担持体E11上の残留電荷を除去する除電手段(図示せず)と、像担持体E11の表面を特定極性に帯電する帯電手段(図示せず)、帯電された像担持体E11の静電潜像を形成する露光手段(図示せず)と、像担持体E11の表面に形成された静電潜像を現像剤により現像する現像装置E12とからなる。
【0035】
各色のトナーの供給はトナーカートリッジにより行われる。なお、この実施の形態では、各色の混色が生じたとしても、余り目立たないようにするために、現像剤の搬送方向の順に、垂直に、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBK順に配置されているが、これに限定されることはなく、ブラックBK、シアンC、マゼンタM、イエローYとしてもよい。
【0036】
現像剤像担持体E20は、像担持体Aに相当するものでああり、各色の画像形成手段E10で形成された現像剤像を記録媒体P側に搬送するものである。現像剤像担持体E20は、ループ状のベルトE21(無端ベルト)と、駆動ユニットE22と、従動ローラE23と、近接ローラE24とからなる。
【0037】
駆動ローラE22と従動ローラE23と近接ローラE24とによって、ベルトE21は、張力がかかった状態で掛け渡されている。ベルトE21内には、各色の画像形成手段E10(Y、M、C、Bk)に対応した転写手段(Y、M、C、Bk)が配置されている。
【0038】
駆動ユニットE20は、四つのローラからなる。近接ローラE24は、駆動ユニットE20の二つのローラ間に設けられ、ベルトE21に各色の転写手段(Y、M、C、Bk)によりされた現像剤像が記録媒体Pに転写されやすいように、転写部I側に突出している。
【0039】
転写部Iは、現像剤像担持体E20に転写された現像剤像を記録媒体Pに転写するものであり、図示しない筐体に取り付けられている。転写部Iは、転写ローラBと、この転写ローラBを支持する本発明の接離機構とからなる。
【0040】
転写ローラBは、ベルトD10の裏面に常時接触して、記録媒体Pを現像剤像担持体E20のベルトE21に近接し、記録媒体Pに、直流成分または直流成分に交流成分を重畳した転写バイアスを印加する電源700に接続されている。
【0041】
図2に示すように、接離機構は、一対の組からなり、取付部材100と第一調整手段200と第二調整手段300と規制手段400と連結手段500とからなる。
【0042】
取付部材100は、薄板状の部材からなり、中央の頂部110が軸支され、頂部110から見た一端が転写ローラBに連結され、他端が後に述べる第二調整手段300の第二駆動手段310が取り付けられている。さらに、取付部材100の一端側には、後に述べる規制手段400に当接する当接部120が設けられている。
【0043】
第一調整手段200は、後に述べる第二調整手段300を所定の高さに移動するものである。
【0044】
第一調整手段200は、第一駆動手段210と、この第一駆動手段210の回転力を直線運動に変換する変換手段220とからなる。さらに、第一駆動手段210は、第一駆動手段210に接続された第一駆動軸230と、この第一駆動軸230の回転を伝達する第一伝達手段240とからなる。
【0045】
第一伝達手段240は薄板の円盤部材からなり、偏心した位置に、第一駆動軸230に取り付けられている。第一伝達手段240には、後に述べる変換手段220が設けられている。
【0046】
変換手段220は、先に述べたように、第一駆動手段210の駆動を第一伝達手段240に伝達し、第一伝達手段240の回転を直線運動に変換するものである。変換手段220は、一端が第一駆動手段210に連結され、他端が連結手段500に連結されたロッドからなる。
【0047】
この第一伝達手段240とロッド220と第一駆動軸230とにより、リンク機構が構成される。この構成により、第一駆動軸230を介して第一伝達手段240を回転させると、変換手段220が矢印a方向にシフトし、取付部材100の自重および付勢手段600の付勢力により、頂部110を中心として矢印b方向に取付部材100が揺動し、第二調整手段300が所定の高さに移動する。なお、この第二調整手段300の移動は、規制手段400に当接部120が当接するまで行われる。
【0048】
この状態から、さらに、回転すると(
図2の状態に戻る)と、変換手段220が矢印a方向とは逆方向にシフトして、変換手段220の他端が連結手段500を突き上げて、規制手段400と当接部120との当接が解除し、第二調整手段300を所定の高さから下方に移動する。
【0049】
連結手段500は、薄板状の部材を略三角形形状にしたものであり、頂部510は第一ピン511により取付部材100の頂部110と一緒に軸支され、一端は第二ピン
513により、変換手段220の他端に連結され、他端は第三ピン
512により取付部材100に連結されている。
【0050】
連結手段500には、取付部材100を近接ローラE24側に付勢する付勢手段600を収容する収容部520が設けられている。また、収容部520と向かい合う取付部材100位置には付勢手段600を受ける受台130が設けられている。
【0051】
付勢手段600は、後に述べる第二調整手段により転写ローラBを所定位置となるように設定した後、第一調整手段200により、取付部材100を所定の高さに移動した時、またはベルトD10に記録媒体を搬送時に生じるショックを吸収するものである。
【0052】
第二調整手段300は、転写ローラBの配置位置、すなわち記録媒体Pと現像剤像担持体E20のベルトE21との間隔を所定距離の微調整を行うものであり、第二駆動手段310と第二伝達手段320とからなる。
【0053】
第二調整手段300は、取付部材100の一端側に取り付けられた第二駆動手段310と、第二駆動手段310の駆動力を伝達する第二伝達手段320とからなる。第二駆動手段310は、第二駆動源311と第二駆動軸312とからなり、第二伝達手段320の駆動ローラ321に直結されている。
【0054】
第二伝達手段320は、第二駆動軸312に連結した駆動ローラ321と、転写ローラBに連結した従動ローラ322と、駆動ローラ321と従動ローラ322とに張架されたベルト323とからなる。
【0055】
従動ローラ322は転写ローラBに取り付けられている。従動ローラ322の偏心した位置に連結軸330が設けられている。転写ローラBは連結軸330に軸支されている。この構成により、従動ローラ322の回転に伴い、転写ローラBが上下に変位(矢印c)し、記録媒体Pと現像剤像担持体E20のベルトE21との間隔の微調整が行われる。
【0056】
さらに、ベルトの張架はテンションローラで調整されている。テンションローラは、取付部材100に設けられた調整溝140に沿って移動させて、ベルトの張架の調整を行う。
【0057】
なお、記録媒体Pと現像剤像担持体E20のベルトとの間隔は、図示しない検知手段により検知し、この検知結果に基づいて、第二調整手段300を作動させて、この間隔を所定距離となるように調整する。また、記録媒体Pと現像剤像担持体E20のベルトE21との間隔は、記録媒体Pの特性に応じて決められている。
【0058】
以上の構成のもと、本発明の接離機構の動作を説明する。なお、この動作は、第二調整手段300、第一調整手段200の順で作動する。
【0059】
先ず、第二駆動源311を作動させて、第二駆動軸312を回転させる。この回転は、駆動ローラ321に伝達され、ベルトが矢印d方向に回転する。さらに、ベルトの回転に伴って従動ローラ322が回転する。
【0060】
駆動ローラ322は、転写ローラBに偏心した状態で直結しているため、転写ローラBは、矢印方向cにシフトする。この動作により、転写ローラBの所定位置の設定が完了する。
【0061】
この設定は、後に述べる第一調整手段200により、頂部110を支点として矢印b方向に、取付部材100が揺動した時に、転写ローラBが現像剤像担持体E20のベルトE21に近づくまたは当接(押圧)する方向にシフトするようになっている。
【0062】
次いで、第一駆動手段210を駆動して、第一駆動軸230の回転を第一伝達手段240に伝達する。第一伝達手段240に伝達された第一駆動軸230の回転は、変換手段220に伝達される。この時、変換手段220(ロッド)の一端が、第一駆動軸230から見て偏心した位置に軸支されているため、リンク機構として作動する。
【0063】
第一伝達手段240が矢印方向に回転すると、変換手段220が所定の位置から矢印a方向(前進)または逆矢印a方向(後退)する。
【0064】
この動作により、第一伝達手段240が所定の位置から矢印a方向(前進)した場合、変換手段220は矢印a方向に作動し、規制手段400に当接部120が突き当たるまで、取付部材100は矢印b方向に揺動し、所定の高さまで第二調整手段300(取付部材100)が移動する。
【0065】
この時、規制手段400に当接部120が突き当たった時に生じるショックは、付勢手段600により吸収される。
【0066】
さらに、変換手段220が所定の位置から逆矢印a方向(後退)した場合、頂部110を支点として取付部材100が逆矢印b方向(転写ローラBが現像剤像担持体E20のベルトE21から離れる方向)に揺動する。
【0067】
以上のように、第一調整手段200と第二調整手段300という簡単な構成で、記録媒体Pの特性に応じて、記録媒体Pを転写ローラBと現像剤像担持体E20のベルトE21と間に押圧したり、転写ローラBと現像剤像担持体E20のベルトE21との間に一定の隙間を形成したりすることができる。
【0068】
特に、第二調整手段300により、ベルトD10に記録媒体Pを載置したした時に生じるベルトD10の沈みや、表面の凹凸の差がある記録媒体Pを搬送した場合に生じる振動を付勢手段600により吸収することにより、記録媒体Pの特性に応じて生じる僅かな変化に対応して、隙間の微調整を行うことができる。