【実施例1】
【0037】
図13は、原子力発電プラントの概略構成図、
図14は、加圧水型原子炉を表す縦断面図、
図15は、原子炉容器の計装管台を表す断面図である。
【0038】
実施例1の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉である。
【0039】
実施例1の加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントにおいて、
図13に示すように、原子炉格納容器11は、内部に加圧水型原子炉12及び蒸気発生器13が格納されており、この加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは高温側送給配管14と低温側送給配管15を介して連結されており、高温側送給配管14に加圧器16が設けられ、低温側送給配管15に一次冷却水ポンプ17が設けられている。この場合、減速材及び一次冷却水(冷却材)として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により150〜160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。
【0040】
従って、加圧水型原子炉12にて、燃料(原子燃料)として低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持された状態で、高温側送給配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高温高圧の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は低温側送給配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
【0041】
蒸気発生器13は、加熱された二次冷却水、つまり、蒸気を送給する配管31を介して蒸気タービン32と連結されており、この配管31に主蒸気隔離弁33が設けられている。蒸気タービン32は、高圧タービン34と低圧タービン35を有すると共に、発電機(発電装置)36が接続されている。また、高圧タービン34と低圧タービン35は、その間に湿分分離加熱器37が設けられており、配管31から分岐した冷却水分岐配管38が湿分分離加熱器37に連結される一方、高圧タービン34と湿分分離加熱器37は低温再熱管39により連結され、湿分分離加熱器37と低圧タービン35は高温再熱管40により連結されている。
【0042】
更に、蒸気タービン32の低圧タービン35は、復水器41を有しており、この復水器41は、配管31からバイパス弁42を有するタービンバイパス配管43が接続されると共に、冷却水(例えば、海水)を給排する取水管44及び排水管45が連結されている。この取水管44は、循環水ポンプ46を有し、排水管45と共に他端部が海中に配置されている。
【0043】
そして、この復水器41は、配管47が接続されており、復水ポンプ48、グランドコンデンサ49、復水脱塩装置50、復水ブースタポンプ51、低圧給水加熱器52が接続されている。また、配管47は、脱気器53が連結されると共に、主給水ポンプ54、高圧給水加熱器55、主給水制御弁56が設けられている。
【0044】
従って、蒸気発生器13にて、高温高圧の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、配管31を通して蒸気タービン32(高圧タービン34から低圧タービン35)に送られ、この蒸気により蒸気タービン32を駆動して発電機36により発電を行う。このとき、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン34を駆動した後、湿分分離加熱器37で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン35を駆動する。そして、蒸気タービン32を駆動した蒸気は、復水器41で海水を用いて冷却されて復水となり、グランドコンデンサ49、復水脱塩装置50、低圧給水加熱器52、脱気器53、高圧給水加熱器55などを通して蒸気発生器13に戻される。
【0045】
このように構成された原子力発電プラントの加圧水型原子炉12において、
図14に示すように、原子炉容器61は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体62とその上部に装着される原子炉容器蓋(上鏡)63により構成されており、この原子炉容器本体62に対して原子炉容器蓋63が複数のスタッドボルト64及びナット65により開閉可能に固定されている。
【0046】
この原子炉容器本体62は、原子炉容器蓋63を取り外すことで上部が開口可能であり、下部が半球形状をなす下鏡66により閉塞された円筒形状をなしている。そして、原子炉容器本体62は、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を供給する入口ノズル(入口管台)67と、軽水を排出する出口ノズル(出口管台)68が形成されている。また、原子炉容器本体62は、この入口ノズル67及び出口ノズル68とは別に、図示しない注水ノズル(注水管台)が形成されている。
【0047】
原子炉容器本体62は、内部にて、入口ノズル67及び出口ノズル68より上方に上部炉心支持板69が固定される一方、下方の下鏡66の近傍に位置して下部炉心支持板70が固定されている。この上部炉心支持板69及び下部炉心支持板70は、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成されている。そして、上部炉心支持板69は、複数の炉心支持ロッド71を介して下方に図示しない多数の連通孔が形成された上部炉心板72が連結されている。
【0048】
原子炉容器本体62は、内部に円筒形状をなす炉心槽73が内壁面と所定の隙間をもって配置されており、この炉心槽73は、上部が上部炉心板72に連結され、下部に円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された下部炉心板74が連結されている。そして、この下部炉心板74は、下部炉心支持板70に支持されている。即ち、炉心槽73は、原子炉容器本体62の下部炉心支持板70に吊り下げ支持されることとなる。
【0049】
炉心75は、上部炉心板72と炉心槽73と下部炉心板74により形成されており、この炉心75は、内部に多数の燃料集合体76が配置されている。この燃料集合体76は、図示しないが、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成され、上端部に上部ノズルが固定される一方、下端部に下部ノズルが固定されている。また、炉心75は、内部に多数の制御棒77が配置されている。この多数の制御棒77は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ78となり、燃料集合体76内に挿入可能となっている。上部炉心支持板69は、この上部炉心支持板69を貫通して多数の制御棒クラスタ案内管79が固定されており、各制御棒クラスタ案内管79は、下端部が燃料集合体76内の制御棒クラスタ78まで延出されている。
【0050】
原子炉容器61を構成する原子炉容器蓋63は、上部が半球形状をなして磁気式ジャッキの制御棒駆動装置80が設けられており、原子炉容器蓋63と一体をなすハウジング81内に収容されている。多数の制御棒クラスタ案内管79は、上端部が制御棒駆動装置80まで延出され、この制御棒駆動装置80から延出されて制御棒クラスタ駆動軸82が、制御棒クラスタ案内管79内を通って燃料集合体76まで延出され、制御棒クラスタ78を把持可能となっている。
【0051】
この制御棒駆動装置80は、上下方向に延設されて制御棒クラスタ78に連結されると共に、その表面に複数の周溝を長手方向に等ピッチで配設してなる制御棒クラスタ駆動軸82を磁気式ジャッキで上下動させることで、原子炉の出力を制御している。
【0052】
また、原子炉容器本体62は、下鏡66を貫通する多数の計装管台83が設けられ、この各計装管台83は、炉内側の上端部に炉内計装案内管84が連結される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ85が連結されている。各炉内計装案内管84は、上端部が下部炉心支持板70に連結されており、振動を抑制するための上下の連接板86,87が取付けられている。シンブルチューブ88は、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示略)が装着されており、コンジットチューブ85から計装管台83及び炉内計装案内管84を通り、下部炉心板74を貫通して燃料集合体76まで挿入可能となっている。
【0053】
従って、制御棒駆動装置80により制御棒クラスタ駆動軸82を移動して燃料集合体76から制御棒77を所定量引き抜くことで、炉心75内での核分裂を制御し、発生した熱エネルギにより原子炉容器61内に充填された軽水が加熱され、高温の軽水が出口ノズル68から排出され、上述したように、蒸気発生器13に送られる。即ち、燃料集合体76を構成する原子燃料が核分裂することで中性子を放出し、減速材及び一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。一方、制御棒77を燃料集合体76に挿入することで、炉心75内で生成される中性子数を調整し、また、制御棒77を燃料集合体76に全て挿入することで、原子炉を緊急に停止することができる。
【0054】
また、原子炉容器61は、炉心75に対して、その上方に出口ノズル68に連通する上部プレナム89が形成されると共に、下方に下部プレナム90が形成されている。そして、原子炉容器61と炉心槽73との間に入口ノズル67及び下部プレナム90に連通するダウンカマー部91が形成されている。従って、軽水は、入口ノズル67から原子炉容器本体62内に流入し、ダウンカマー部91を下向きに流れ落ちて下部プレナム90に至り、この下部プレナム90の球面状の内面により上向きに案内されて上昇し、下部炉心支持板70及び下部炉心板74を通過した後、炉心75に流入する。この炉心75に流入した軽水は、炉心75を構成する燃料集合体76から発生する熱エネルギを吸収することで、この燃料集合体76を冷却する一方、高温となって上部炉心板72を通過して上部プレナム89まで上昇し、出口ノズル68を通って排出される。
【0055】
このように構成された原子炉容器61にて、
図15に示すように、計装管台83は、炉内計装筒95が原子炉容器本体62の下鏡66に形成された取付孔96に嵌入し、炉内計装筒95の上端部が下鏡66の内面に溶接(開先溶接部97)により固定されて構成されている。原子炉容器本体62は、母材となる低合金鋼の内面にステンレス鋼が肉盛溶接されて構成され、ニッケル基合金製の炉内計装筒95がこの原子炉容器本体62の取付孔96に嵌入した状態で、ニッケル基合金製の材料により原子炉容器本体62に溶接(開先溶接部97)されている。
【0056】
そのため、炉内計装筒95、開先溶接部97及びその周辺部に引張応力が残留している可能性があり、長期の使用により応力腐食割れが発生する確率が高くなる。そこで、原子炉補修装置としてのウォータジェットピーニング(WJP)装置によりこの表面の引張残留応力を圧縮残留応力に改善することで、応力腐食割れを防止するようにしている。このウォータジェットピーニング装置は、水中で金属部材表面にキャビテーション気泡を含む高圧水を噴射し、金属部材表面の引張残留応力を圧縮残留応力に改善するものである。
【0057】
そして、ウォータジェットピーニング装置により下鏡66の表面の引張残留応力を圧縮残留応力に改善する場合、このウォータジェットピーニング装置を計装管台83(炉内計装筒95)に装着して作業を行う。実施例1の原子炉補修装置の据付装置及び方法は、このウォータジェットピーニング装置を計装管台83(炉内計装筒95)に据え付けるためのものである。
【0058】
図11は、原子炉補修装置としてのウォータジェットピーニング装置を表す正面図、
図12は、ウォータジェットピーニング装置に対する各カメラの配置を表す概略図である。
【0059】
図11及び
図12に示すように、ウォータジェットピーニング装置101は、装置本体102とクランプ装置103と外面WJPノズル104と内面WJPノズル105とを有している。クランプ装置103は、装置本体102の下部から下方に突出して配置され、炉内計装筒95の外周面に嵌合してクランプすることで、装置本体102を計装管台83に固定するものである。外面WJPノズル104は、下鏡66の内面や開先溶接部97に引張高圧水を噴射するものである。内面WJPノズル105は、炉内計装筒95の内面に引張高圧水を噴射するものである。
【0060】
この場合、外面WJPノズル104及び内面WJPノズル105は、装置本体102に対して上下に移動することができると共に周方向に回転することができ、下鏡66、開先溶接部97、炉内計装筒95の所定の領域に高圧水を噴射することができる。
【0061】
また、ウォータジェットピーニング装置101は、装置本体102に対して施工監視用カメラ106と装置位置決め用カメラ107,108が設けられている。施工監視用カメラ106は、装置本体102に固定され、水平支持軸により回動可能であり、撮影方向を変更可能となっている。
【0062】
装置位置決め用カメラ107,108は、水平方向に所定角度θ(例えば、90度)だけ離間した位置に配置され、照明を有している。この装置位置決め用カメラ107,108は、装置本体102に対して昇降シリンダ109により昇降可能となっており、ウォータジェットピーニング装置101の位置決め時に下降位置に移動し、ウォータジェットピーニング装置101の作業時の上昇位置に移動可能となっている。
【0063】
ウォータジェットピーニング装置101は、装置本体102の上部に連結軸110が固定されており、後述する据付用ポール(据付用治具)が連結可能となっている。
【0064】
図1は、本発明の実施例1に係る原子炉補修装置の据付装置の全体構成を表す概略図、
図2は、実施例1の原子炉補修装置の据付装置を表す概略図、
図3は、位置決め架台の正面図、
図4は、位置決め架台の平面図、
図5は、
図3のIII−III断面図、
図6は、モニタ架台の正面図、
図7は、モニタ架台の平面図、
図8は、
図7のVIII−VIII断面図、
図9は、原子炉補修装置の据付装置の据付方法を表すフローチャート、
図10−1から
図10−4は、原子炉補修装置の水平位置決め方法を表す概略図である。
【0065】
実施例1の原子炉補修装置の据付装置は、原子炉容器61(原子炉容器本体62)の下鏡(半球部)66に設けられた計装管台83(炉内計装筒95)に原子炉補修装置としてのウォータジェットピーニング装置101を据え付けるものである。この原子炉補修装置の据付装置は、据付用ポール111と昇降装置112と移動装置113と位置調整装置114とを有している。
【0066】
原子力発電プラントにおいて、
図1及び
図2に示すように、原子炉建屋(図示略)は、作業フロア121が設けられており、この作業フロア121より下方にキャビティ122が設けられ、このキャビティ122に冷却水が貯留されている。このキャビティ122は、内部に原子炉容器61が配置され、吊下げ支持されている。
【0067】
原子炉建屋は、天井クレーン(第1昇降装置)123が設けられ、フック124を水平方向に交差する2方向に移動可能であると共に昇降可能となっている。また、原子炉建屋は、キャビティ122の両側に一対のガイドレール125が敷設され、移動式クレーン(移動装置113)126が移動自在に支持されている。この移動式クレーン126は、水平方向におけるX方向に移動自在であると共に、水平方向におけるX方向に交差(直交)するY方向に移動自在な電動ホイスト(昇降装置112、第2昇降装置)127が設けられている。そして、この電動ホイスト127は、鉛直方向に沿うZ方向に昇降可能なフック128を有している。
【0068】
据付用ポール111は、長尺部材であって、所定の長さを有しており、下端部にウォータジェットピーニング装置101の連結軸110が連結可能となっている。この場合、作業フロア121に連結軸110のフランジ部を吊下げ支持する仮置き架台129が設けられている。また、ウォータジェットピーニング装置101の連結軸110は、複数のスイングボルトが設けられている。そのため、仮置き架台129に連結軸110のフランジ部を吊下げ支持し、このフランジ部の上に据付用ポール111の下部フランジ部を載せ、複数のスイングボルトにより両者を締結することができる。また、据付用ポール111は、複数の分割ポールから構成され、同様に、フランジ部同士を密着させ、複数のスイングボルトにより両者を締結することができる。
【0069】
据付用ポール111は、上部にエアバランサ131と吊替金具132が連結されている。エアバランサ131は、据付用ポール111及びウォータジェットピーニング装置101などの重量を軽減するものである。即ち、エアバランサ131は、据付用ポール111及びウォータジェットピーニング装置101が連結されて上下に移動自在なピストンを内蔵することで、上室と下室が区画されて構成されている。エアバランサ131は、従って、下室に据付用ポール111及びウォータジェットピーニング装置101の重量に対応した圧力を付与することでこの重量を軽減することができ、この圧力を調整することでウォータジェットピーニング装置101をゆっくりと下降することができる。
【0070】
吊替金具132は、複数(本実施例では、3個)の吊下げ孔(吊下げ部)を有し、吊下げ支持された据付用ポール111及びウォータジェットピーニング装置101などを天井クレーン123から移動装置113(電動ホイスト127)に吊り替えるものである。即ち、まず、吊替金具132の第1の吊下げ孔に据付用ポール111及びウォータジェットピーニング装置101を連結し、第2の吊下げ孔を天井クレーン123のフック124に係止し、この天井クレーン123により据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101を吊下げる。この状態から、天井クレーン123によりウォータジェットピーニング装置101を移動式クレーン126の近傍まで移動し、第3の吊下げ孔に移動式クレーン126のフック128を係止し、フック128を上昇する一方、フック124を下降することで、ウォータジェットピーニング装置101は、天井クレーン123から移動式クレーン126に吊り替えられる。
【0071】
ここで、位置調整装置114について詳細に説明する。位置調整装置114は、移動式クレーン126(電動ホイスト127)により据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101が吊下げ支持された状態で、据付用ポール111を水平方向(本実施例では、Y方向)に微小移動することで、ウォータジェットピーニング装置101におけるY方向の位置を調整するものである。この場合、位置調整装置114は、据付用ポール111における長手方向の上部であって、フック128による支持位置より下方を支持して移動調整する。
【0072】
移動式クレーン126は、ガイドレール125に沿って電動でX方向に移動可能であるが、電動ホイスト127は、作業者のチェーン操作によりY方向に移動可能となっている。そのため、このY方向に対するウォータジェットピーニング装置101の高精度な位置調整が困難となる。そのため、位置調整装置114は、Y方向に沿って微小移動することで、ウォータジェットピーニング装置101を微小移動して高精度な位置調整を可能としている。
【0073】
位置調整装置114は、移動式クレーン126にY方向に沿って敷設されたガイドレール141と、このガイドレール141に沿って移動自在な第1移動体142と、第1移動体142に設けられて据付用ポール111を保持可能な保持部材143を有している。また、
位置調整装置114は、ウォータジェットピーニング装置101に設けられた装置位置決め用カメラ107,108と、ガイドレール141に沿って移動自在な第2移動体144と、第2移動体144に設けられて装置位置決め用カメラ107,108の映像を表示可能なモニタ145を有している。この場合、位置調整装置114は、ガイドレール141上に第1移動体142を介して保持部材143が配置され、この保持部材143の両側に第2移動体144を介してモニタ145がそれぞれ配置されている。
【0074】
即ち、移動式クレーン126のY方向に沿って作業者が歩行可能な通路146が設けられ、その両側に手摺147,148が設けられている。ガイドレール141は、この通路146の前方にY方向に沿って固定されている。
【0075】
そして、
図3から
図5に示すように、第1移動体142は、ガイドレール141の長手方向側における各端部に上面を転動自在な一対の第1支持ローラ151が設けられている。また、第1移動体142は、後部側であって、ガイドレール141の長手方向側における各端部に側面を転動自在な一対の第2支持ローラ152が設けられている。ガイドレール141は、下方に延出する支持壁153が固定されている。第1移動体142は、前部側に下方に延出する連結部材154が連結されており、この連結部材154に支持壁153を転動自在な一対の第3支持ローラ155が設けられている。また、第1移動体142は、ストッパ156が回転自在に設けられており、このストッパ156を回転することで、先端部をガイドレール141の上面に当接することができる。
【0076】
従って、第1移動体142は、第1支持ローラ151及び第2支持ローラ152がガイドレール141を転動すると共に、第3支持ローラ155が支持壁153を転動することで、Y方向に移動することができ、所定の位置でストッパ156を回転して先端部をガイドレール141の上面に当接することで、この位置に固定することができる。
【0077】
第1移動体142は、連結部材154に保持部材143が固定されている。この保持部材143は、水平をなす上部支持片157と下部支持片158が設けられており、上部支持片157に上保持部159が設けられ、下部支持片158に下保持持部160が設けられている。上保持部159は、上部支持片157にX方向に沿って移動自在に支持され、据付用ポール111に係合可能な係合凹部161と、係合凹部161に据付用ポール111を係止可能なフック162を有している。下保持部160は、下部支持片158に固定され、据付用ポール111に係合可能な係合凹部163と、係合凹部163に据付用ポール111を係止可能なフック164を有している。
【0078】
従って、保持部材143は、上保持部159及び下保持部160がA位置で据付用ポール111を保持可能であり、上保持部159のみがB位置で据付用ポール111を保持可能となっている。この場合、A位置は、据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101におけるY方向の位置を調整可能な位置であり、B位置は、ウォータジェットピーニング装置101によるウォータジェットピーニングの施工位置である。
【0079】
また、
図6から
図8に示すように、第2移動体144は、下部にガイドレール141の上面を転動自在な複数の第1支持ローラ171が設けられている。また、第2移動体144は、ガイドレール141の長手方向側における各端部に側面を転動自在な複数の第2支持ローラ172が設けられている。第2移動体144は、ガイドレール141の両側部に係合自在な一対の係合片173が設けられている。また、第2移動体144は、ストッパ174が回転自在に設けられており、このストッパ174を回転することで、先端部をガイドレール141の上面に当接することができる。
【0080】
従って、第2移動体144は、第1支持ローラ171及び第2支持ローラ172がガイドレール141を転動すると共に、係合片173がガイドレール141の両側部に係合することで、Y方向に移動することができ、所定の位置でストッパ174を回転して先端部をガイドレール141の上面に当接することで、この位置に固定することができる。
【0081】
第2移動体144は、複数の支持部材175,176,177を介してモニタ145が支持されている。このモニタ145は、第1移動体142に支持された保持部材143側を向いて配置されている。
【0082】
このように構成された原子炉補修装置の据付装置による原子炉補修装置の据付方法は、作業フロア121からウォータジェットピーニング装置101の上部に連結された据付用ポール111の上部を吊下げ支持する工程と、据付用ポール111を水平方向に交差する2方向に移動することで計装管台83に対するウォータジェットピーニング装置101の仮位置決めを行う工程と、据付用ポール111を水平方向に微小移動することで計装管台83に対するウォータジェットピーニング装置101の本位置決めを行う工程と、据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101を下降することで計装管台83に装着する工程とを有している。
【0083】
また、原子炉補修装置の据付方法は、ウォータジェットピーニング装置101を下降しながら水平方向に微小移動することで、計装管台83に対するウォータジェットピーニング装置101の本位置決めと装着を連続して行うようにしている。
【0084】
また、原子炉補修装置の据付方法は、天井クレーン123により据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101を吊下げ支持し、所定の位置に移動した後、天井クレーン123により据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101を支持したままで据付用ポール111を移動式クレーン126(電動式ホイスト127)に吊り替えるようにしている。
【0085】
即ち、原子炉補修装置の据付方法において、
図1及び
図2、
図9に示すように、ステップS11にて、据付装置としての昇降装置112と移動装置113と位置調整装置114を作業フロア121に設置する。また、作業フロア121に、高圧水ポンプ181、WJP操作盤182、モニタテレビ183、電源ボックス184、空配盤185、中継ボックス186を設置し、ウォータジェットピーニング装置101に接続する。
【0086】
ステップS12にて、天井クレーン123によりウォータジェットピーニング装置101を移動して仮置き架台129に配置する。ステップS13にて、天井クレーン123により据付用ポール111を移動し、仮置き架台129に支持されたウォータジェットピーニング装置101上に載置し、両者を締結する。そして、ステップS14にて、天井クレーン123により吊替金具132を介して据付用ポール111及びウォータジェットピーニング装置101を吊下げ支持し、移動式クレーン126の近傍まで移動する。そして、移動式クレーン126のフック128を吊替金具132に係止し、移動式クレーン126のフック128を上昇する一方で天井クレーン123のフック124を下降する。すると、天井クレーン123のフック124から吊替金具132が外れ、移動式クレーン126が吊替金具132を介して据付用ポール111及びウォータジェットピーニング装置101を吊下げ支持することとなる。
【0087】
ステップS15にて、移動式クレーン126を水平移動することで、保持部材143により据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101を保持する。そして、ステップS16にて、ウォータジェットピーニング装置101の位置決めを行う。即ち、まず、天井クレーン123により据付用ポール111をX方向及びY方向に移動することで、計装管台83に対するウォータジェットピーニング装置101の仮位置決めを行う。このとき、作業者は、2つのモニタ145により装置位置決め用カメラ107,108の映像を見ながら作業を行う。
【0088】
次に、天井クレーン123により据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101を吊下げ支持した状態で、第1移動体142を移動することで保持部材143をY方向に微小移動することで、計装管台83に対するウォータジェットピーニング装置101の本位置決めを行う。このとき、作業者は、電動ホイスト127を操作し、据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101を計装管台83の上方まで下降し、エアバランサ131を利用してウォータジェットピーニング装置101を微小下降しながらY方向に微小移動することで、計装管台83に対してウォータジェットピーニング装置101を嵌合する。
【0089】
この場合、作業者は、まず、
図10−1に示すように、ウォータジェットピーニング装置101と共に装置位置決め用カメラ107,108を下降し、モニタ145を見ながら位置調整を行う。そして、
図10−2に示すように、ウォータジェットピーニング装置101を下降し、クランプ装置103を計装管台83における炉内計装筒95の外周面に嵌合する。続いて、
図10−3に示すように、ウォータジェットピーニング装置101を下降し、クランプ装置103の位置決め部材103aが炉内計装筒95の上端部に当接すると、ウォータジェットピーニング装置101の下降を停止する。そして、
図10−4に示すように、複数のクランプ部材103bを内側に移動することで、クランプ装置103により炉内計装筒95を把持する。
【0090】
ここで、クランプ装置103によりウォータジェットピーニング装置101を計装管台83に装着することができ、ステップS17にて、第1移動体142をガイドレール141に固定することで、ウォータジェットピーニング装置101の固定が完了する。従って、この状態で、ウォータジェットピーニング装置101による下鏡66の内面や開先溶接部97に対してウォータジェットピーニングを行うことができる。
【0091】
このように実施例1の原子炉補修装置の据付装置にあっては、ウォータジェットピーニング装置101の上部に連結される据付用ポール111と、作業フロア121から据付用ポール111の上部を吊下げ支持可能であると共に昇降可能な昇降装置112と、昇降装置112を水平方向に交差する2方向に移動可能な移動装置113と、据付用ポール111を昇降装置112に支持された状態で水平方向に移動可能な位置調整装置114とを設けている。
【0092】
従って、ウォータジェットピーニング装置101は、上部に連結される据付用ポール111を介して昇降装置112により吊下げ支持され、この昇降装置112により下降されると共に移動装置113により水平方向に移動されることで仮位置決めされ、最終的に位置調整装置114により据付用ポール111が昇降装置112に支持された状態で水平方向に移動されることで本位置決めされることとなり、その後、ウォータジェットピーニング装置101を下降することで計装管台83に据え付けることができる。そのため、上方の作業フロア121からでもウォータジェットピーニング装置101を所定の位置に容易に装着することができ、作業性を向上することができる。
【0093】
実施例1の原子炉補修装置の据付装置では、位置調整装置114は、据付用ポール111における昇降装置112の支持位置より下方を支持して移動可能としている。従って、据付用ポール111における昇降装置112の支持位置より下方を支持して移動してウォータジェットピーニング装置101の位置決めを行うことから、ウォータジェットピーニング装置101は、重量が昇降装置112に支持された状態で位置決めされることとなり、ウォータジェットピーニング装置101の落下などを防止して安全性を向上することができる。
【0094】
実施例1の原子炉補修装置の据付装置では、ウォータジェットピーニング装置101の重量を軽減するエアバランサ131が据付用ポール111に設けられている。従って、エアバランサ131によりウォータジェットピーニング装置101の重量が軽減されることで、ウォータジェットピーニング装置101の微小降下が可能となり、ウォータジェットピーニング装置101と計装管台83の衝突を防止し、ウォータジェットピーニング装置101を適正に計装管台83に据え付けることができる。
【0095】
実施例1の原子炉補修装置の据付装置では、複数の吊下げ部を有して据付用ポール111を介して吊下げ支持されたウォータジェットピーニング装置101を昇降装置112に吊り替え可能な吊替金具132が据付用ポール111に設けられている。従って、吊替金具132に複数の吊下げ部が設けられていることから、例えば、ウォータジェットピーニング装置101を天井クレーン123から電動ホイスト127に吊り替えるとき、吊替金具132によりウォータジェットピーニング装置101の重量が天井クレーン123と電動ホイスト127の両方に支持可能となり、ウォータジェットピーニング装置101の落下などを防止して安全性を向上することができる。
【0096】
実施例1の原子炉補修装置の据付装置では、位置調整装置114は、移動式クレーン126にY方向に沿って敷設されたガイドレール141と、ガイドレール141に沿って移動自在な第1移動体142と、第1移動体142に設けられて据付用ポール111を保持可能な保持部材143とを有している。従って、据付用ポール111を保持可能な保持部材143は、第1移動体142を介してY方向に沿ったガイドレール141により移動自在であることから、作業者はこの第1移動体142を移動するだけでウォータジェットピーニング装置101の位置決めが可能となり、作業性を向上することができる。
【0097】
実施例1の原子炉補修装置の据付装置では、保持部材143は、据付用ポール111における長手方向の2箇所を保持可能である。従って、保持部材143は、据付用ポール111の傾きを抑制してウォータジェットピーニング装置101の安定した位置決めを行うことができる。
【0098】
実施例1の原子炉補修装置の据付装置では、位置調整装置114は、ウォータジェットピーニング装置101による補修作業を撮影可能な装置位置決め用カメラ107,108と、ガイドレール141に沿って移動自在な第2移動体144と、第2移動体144に設けられて装置位置決め用カメラ107,108の映像を表示可能なモニタ145を有している。従って、ウォータジェットピーニング装置101による位置決め作業が表示されるモニタ145は、第2移動体144を介してY方向に移動自在であることから、作業者はこの第2移動体144によりモニタ145を適正位置に移動しながらウォータジェットピーニング装置101の位置決めが可能となり、作業性を向上することができる。
【0099】
実施例1の原子炉補修装置の据付装置では、ウォータジェットピーニング装置101の上部を吊下げ支持する仮置き架台129を設けている。従って、仮置き架台129にウォータジェットピーニング装置101の上部を吊下げ支持した状態で、据付用ポール111を連結することが可能となり、長尺な据付用ポール111及びウォータジェットピーニング装置101を原子炉内に容易に搬入することができる。
【0100】
また、実施例1の原子炉容器の据付方法にあっては、作業フロア121からウォータジェットピーニング装置101の上部に連結された据付用ポール111の上部を吊下げ支持する工程と、据付用ポール111を水平方向に交差する2方向に移動することで計装管台83に対するウォータジェットピーニング装置101の仮位置決めを行う工程と、据付用ポール111を水平方向に微小移動することで計装管台83に対するウォータジェットピーニング装置101の本位置決めを行う工程と、据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101を下降することで計装管台83に装着する工程を有している。
【0101】
従って、ウォータジェットピーニング装置101を水平方向に移動することで位置決めし、ウォータジェットピーニング装置101を下降することで計装管台83に据え付けることができる。そのため、上方の作業フロア121からでもウォータジェットピーニング装置101を所定の位置に容易に装着することができ、作業性を向上することができる。
【0102】
実施例1の原子炉容器の据付方法では、ウォータジェットピーニング装置101を下降しながら水平方向に微小移動することで、計装管台83に対するウォータジェットピーニング装置101の本位置決めと装着を連続して行うようにしている。従って、ウォータジェットピーニング装置101を計装管台83に対して容易に且つ高精度に据え付けることができる。
【0103】
実施例1の原子炉容器の据付方法では、天井クレーン123により据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101を吊下げ支持し、所定の位置に移動した後、天井クレーン123により据付用ポール111を介してウォータジェットピーニング装置101の重量(荷重)を支持したままで、据付用ポール111を電動ホイスト127に吊り替えるようにしている。従って、天井クレーン123からウォータジェットピーニング装置101を電動ホイスト127に吊り替えるとき、天井クレーン123によりウォータジェットピーニング装置101を支持したままで電動ホイスト127に吊り替えるため、ウォータジェットピーニング装置101の重量が2個の昇降装置に同時に支持されることとなり、ウォータジェットピーニング装置101の落下などを防止して安全性を向上することができる。