(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。まず、本実施形態による土壌の粒度解析方法を用いた土の粒度試験の概要について説明する。
図1は、本実施形態による土の粒度試験の概要を示すフロー図である。
図1に示すように、この粒度試験は、大きく分けて、採取工程、分級工程、分取工程、乾燥工程、撮影工程、部分粒度特定工程、全体粒度特定工程という手順で実施される。
【0012】
まず、採取工程において、地山から湿潤状態の土壌を試料として採取する(ステップS1)。続いて、分級工程において、採取した試料を2〜4種類のふるいによって分級し、分級した各試料の重量を測定する(ステップS2)。続いて、分取工程において、分級した各試料から試験に必要な分量を分取する(ステップS3)。ここで、最も小さい粒径の試料については、乾燥工程において、電子レンジを用いて試料を乾燥させる(ステップS4)。その他の試料については、乾燥工程は行わない。続いて、撮影工程において、分取した各試料をデジタルカメラ20により撮影する(ステップS5)。
【0013】
続いて、部分粒度特定工程において、撮影した画像の解析により、分級した各試料の粒度を特定する(ステップS6)。この粒度とは、土粒子径の分布状態を重量百分率で表したものをいう。続いて、全体粒度特定工程において、特定した各試料の粒度をその重量比率に基づいて統合し、試料の全粒径範囲の粒度を特定する(ステップS7)。この部分粒度特定工程及び全体粒度特定工程は、コンピュータ10によって行われる。
【0014】
図2は、コンピュータ10の構成を示す図である。このコンピュータ10は、例えば工事現場の事務所に設置されたパーソナルコンピュータである。コンピュータ10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する制御部11と、液晶パネルやその駆動回路を有する表示部12と、タッチパネルや操作ボタンを有する入力部13と、制御部11によって実行されるプログラムや制御部11によって用いられる各種のデータを記憶した記憶部14とを備えている。また、記憶部14には、画像解析を行うための画像解析ソフトウェアが記憶されている。
【0015】
(実施例)
次に、本実施形態による土の粒度試験について、実施例を挙げて具体的に説明する。
図3は、本実施例による土の粒度試験の詳細な手順を示すフロー図である。ここでは、粒径が300mm以下の粒度分布が良好な試料を用いた場合における粒度試験の詳細な手順について説明する。
【0016】
まず、作業者は、地山から湿潤状態の土壌を試料として10〜15kg程度採取する(ステップS11)。続いて、作業者は、目開きが26.5mmのふるいと目開きが2mmのふるいとを用いて、ステップS11で採取した試料を分級する(ステップS12)。具体的には、作業者は、まず目開きが26.5mmのふるいを使用して、採取した試料を、粒径が26.5mm以上の土粒子群(以下、「第1の試料」という)と粒径が26.5mm未満の土粒子群とに分級する。続いて、作業者は、目開きが2mmのふるいを使用して、目開きが26.5mmのふるいを通過した土粒子群を、さらに粒径が2mm以上26.5mm未満の土粒子群(以下、「第2の試料」という)と粒径が2mm未満の土粒子群(以下、「第3の試料」という)とに分級する。
【0017】
第1の試料については、以下の手順で粒度試験が進められる。まず、作業者は、はかりなどの計測機器で第1の試料の全重量を測定する(ステップS13)。続いて、作業者は、第1の試料をデジタルカメラ20で撮影する(ステップS14)。
図4は、試料の撮影を説明するための図である。この撮影には、デジタルカメラ20の他に、縦1m×横1mの白色板によって構成される撮影台21と、デジタルカメラ20を支持するカメラスタンド22とが用いられる。作業者は、まずカメラスタンド22によって撮影台21全体が撮影できる位置にデジタルカメラ20を固定して、撮影台21をデジタルカメラ20で撮影する。続いて、作業者は、撮影台21の上に定規を置いて、定規をデジタルカメラ20で撮影する。続いて、作業者は、第1の試料を撮影台21上に散在させ、これをデジタルカメラ20で撮影する。
【0018】
続いて、作業者は、例えばデジタルカメラ20とコンピュータ10とを有線又は無線で接続することによって、デジタルカメラ20で撮影された画像を表す画像データをコンピュータ10に取り込む。制御部11は、作業者の操作により画像解析ソフトウェアを実行して、デジタルカメラ20から取得した画像データに基づく画像解析を行うことにより、第1の試料の粒度を特定する(ステップS15)。この粒度は、例えば第1の試料の土粒子径に対応する通過質重量百分率によって表される。この通過重量百分率は、対象の粒径より小さい粒径の土粒子の重量を第1の試料の全重量で除した値を百分率で表すことによって求められる。この土粒子径は、例えば特開2008−268051号公報に開示されているように、画像データに対して2値化処理を行った後、撮影された土粒子の画像の面積を算出し、算出した面積を真円に置き換えた等価円の直径を求めることによって測定される。なお、ステップS14で撮影された撮影台21の画像及び定規の画像は、画像解析のキャリブレーション(例えば、2値化処理の閾値の補正や基準スケールの校正)に用いられる。
【0019】
第2の試料については、以下の手順で粒度試験が進められる。まず、作業者は、はかりなどの計測機器で第2の試料の全重量を測定する(ステップS16)。続いて、作業者は、JISで規定された四分法によって、第2の試料から100〜200g程度の分量を分取する(ステップS17)。続いて、作業者は、分取した第2の試料をデジタルカメラ20で撮影する(ステップS18)。ここでは、上述したステップS14と同様に、
図4に示す撮影台21、カメラスタンド22及びデジタルカメラ20を用いて、第2の試料を撮影する。ただし、撮影台21は、縦15cm×横20cm程度の大きさがあればよく、透明なパネルを有するバックライト付のものであってもよい。このとき、作業者は、第2の試料を10〜20g程度の分量毎に分けて撮影を行う。
【0020】
続いて、作業者は、例えばデジタルカメラ20とコンピュータ10とを有線又は無線で接続することによって、デジタルカメラ20で撮影された画像を表す画像データをコンピュータ10に取り込む。制御部11は、上述したステップS15と同様に、作業者の操作により画像解析ソフトウェアを実行して、デジタルカメラ20から取得した画像データに基づく画像解析を行うことにより、第2の試料の粒度を特定する(ステップS19)。
【0021】
第3の試料については、以下の手順で粒度試験が進められる。まず、作業者は、はかりなどの計測機器で第3の試料の全重量を測定する(ステップS20)。続いて、作業者は、JISで規定された四分法によって、第3の試料から5〜20g程度の分量を分取する(ステップS21)。続いて、作業者は、地盤工学会基準(JGS 0122−2009)に規定される「電子レンジを用いた土の含水比試験方法」によって、分取した第3の試料を電子レンジで加熱、乾燥させる(ステップ22)。例えば、600Wの電子レンジを用いた場合には、第3の試料を10分程度加熱する。続いて、作業者は、上述したステップS18と同様に、
図4に示す撮影台21、カメラスタンド22及びデジタルカメラ20を用いて、乾燥した第3の試料を撮影する(ステップS23)。このとき、作業者は、第3の試料を0.5g程度の分量毎に分けて撮影を行う。
【0022】
続いて、作業者は、例えばデジタルカメラ20とコンピュータ10とを有線又は無線で接続することによって、デジタルカメラ20で撮影された画像を表す画像データをコンピュータ10に取り込む。制御部11は、上述したステップS15と同様に、作業者の操作により画像解析ソフトウェアを実行して、デジタルカメラ20から取得した画像データに基づく画像解析を行うことにより、第3の試料の粒度を特定する(ステップS24)。
【0023】
次に、制御部11は、ステップS15、S19及びS24で特定した第1の試料の粒度、第2の試料の粒度及び第3の試料の粒度をその重量比率に基づいて統合し、試料の全粒径範囲の粒度を特定する(ステップS25)。この粒度は、例えば試料の各土粒子径に対応する通過質重量百分率によって表される。この通過重量百分率は、対象の粒径より小さい粒径の土粒子の重量を全体の重量で除した値を百分率で表すことによって求められる。
【0024】
続いて、制御部11は、ステップS25で特定した全粒径範囲の粒度に基づいて、粒度試験の結果を作成して出力する(ステップS26)。
図5は、粒度試験の結果の一例を示す図である。例えば、制御部11は、全粒径範囲の粒度に基づいて粒径加積曲線C1を作成し、作成した粒径加積曲線C1を表示部12に表示させる(表示工程)。このとき、制御部11は、土材料に対して要求される粒度の範囲である基準範囲Rを粒径加積曲線C1とともに表示部12に表示させる。この基準範囲Rは、例えば土材料の用途に応じて決められる。
【0025】
例えば、各粒径に対応する通過重量百分率が
図5に示すような値である場合には、半対数グラフの対数目盛に粒径を、算数目盛に通過重量百分率をとることによって、
図6に示すような粒径加積曲線C1が作成される。
図6に示す例では、粒径加積曲線C1は、基準範囲R内に収まっている。これは、土壌の粒度が、土材料に対して要求される粒度の範囲を満たしていることを意味する。このように、粒径加積曲線C1と基準範囲Rとを比較した状態で表示することにより、作業者は、土壌の粒度が、土材料に対して要求される粒度の範囲を満たしているか否かを容易に判断することができる。また、作業者がこの判断をより簡単に行えるように、制御部11は、粒径加積曲線C1が基準範囲R内に収まっているか否かを判定し、その判定結果を表示部12に表示させてもよい。
【0026】
また、制御部11は、粒径加積曲線C1から粒度組成を求め、この粒度組成に基づいてヒストグラムを作成し、作成したヒストグラムを表示部12に表示させてもよい。この粒度組成は、粒径に応じて定められた粒径区分毎に、土粒子径の分布状態を重量百分率で表したものをいい、例えば各粒径区分に対応する重量百分率によって表される。この重量百分率は、各粒径区分に属する土粒子の重量を全体の重量で除した値を百分率で表すことによって求められる。例えば、各粒径区分に対応する重量百分率が
図5に示すような値である場合には、横軸に粒径、縦軸に重量百分率をとることによって、
図7に示すようなヒストグラムが作成される。
【0027】
さらに、制御部11は、粒径加積曲線C1から粒度分布の特徴を表す値を算出し、算出した値を表示部12に表示させてもよい。この粒度分布の特徴を表す値には、例えば
図5に示す最大粒径Dmax、通過重量百分率が10%、30%、50%及び60%のときの粒径である10%粒径D10、30%粒径D30、50%粒径D50及び60%粒径D60、均等係数Uc、曲率係数Uc’が含まれる。この均等係数Ucは、以下の式(1)によって求められる。
【数1】
また、曲率係数Uc’は、以下の式(2)によって求められる。
【数2】
【0028】
道路や河川築堤のために用いられる盛土材の品質管理の項目には、最大粒径や細粒分含有率(粒径が0.075mm以下の土粒子の含有率)が含まれている場合がある。また、地盤改良材の品質管理の項目には、粒度範囲や細粒分含有率(粒径が0.075mm以下の土粒子の含有率)が含まれている場合がある。したがって、上述したように粒径加積曲線C1、ヒストグラム、最大粒径Dmax等の情報を表示することにより、作業者が品質管理に必要な情報を容易に把握することができる。
【0029】
次に、本実施例による土の粒度試験の精度を調べるために本願発明者らが行った実験について説明する。この実験では、比較例として、本実施例による土の粒度試験と同様の試料を用いて、JIS A 1204に規定される「土の粒度試験方法」を用いた粒度試験を行い、双方の試験の結果を比較した。
図8は、本実施例による粒度試験の結果と、比較例による粒度試験の結果とを示す図である。
図9は、本実施例による粒度試験の結果に基づいて作成された粒径加積曲線C1と、比較例による粒度試験の結果に基づいて作成された粒径加積曲線C2とを示す図である。
図10は、本実施例による粒度試験の結果に基づいて作成されたヒストグラムと、比較例による粒度試験の結果に基づいて作成されたヒストグラムとを示す図である。
図8〜
図10では、本実施例による粒度試験の結果と比較例による粒度試験の結果の間に大きな差異は見られなかった。この実験によれば、本実施例による土の粒度試験が十分な精度を有することが分かった。
【0030】
以上説明したように、本実施形態では、試料を分級してから、分級した各々の試料について撮影及び画像解析を行っている。通常、土には大小様々な粒径の土粒子が混ざっているため、例えば試料を分級せずに撮影して画像解析を行おうとしても、試料の粒径範囲が測定可能範囲を超えてしまって画像解析ができないか、画像解析ができても著しく精度が悪くなる場合がある。しかし、本実施形態によれば、試料を分級してから、分級した各々の試料について撮影及び画像解析を行っているため、画像解析により、粒径が300mm〜0.75mmまでの試料について粒度の測定を実現することができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、最も小さい粒径以外の粒径の試料(例えば、粒径が26.5mm以上の試料及び粒径が2mm以上26.5mm未満の試料)については、試料を乾燥させずに粒度試験を行うため、粒度試験に要する時間が短くなる。なお、これらの試料については、一般的に自然に水が切れるくらい粒径が大きいため、乾燥させなくても粒度試験に大きな支障はない。
【0032】
また、本実施形態では、最も小さい粒径の試料(例えば、粒径が2mm未満の試料)については、試料を乾燥させることにより、土粒子を個々に分離してから撮影を行っている。最も小さい粒径の試料は、湿潤状態のままだと複数の土粒子がくっついて見かけ上粒径が大きくなる場合があるため、画像解析において粒径が誤認識される恐れがある。しかし、本実施形態によれば、最も小さい粒径の試料については、試料を乾燥させてから撮影するため、画像解析において粒径が誤認識される可能性を小さくすることができる。
【0033】
そして、この乾燥工程では電子レンジを用いるから、炉乾燥装置などの特殊な機器を必要とせず、土の粒度試験を行うための設備コストが削減される。また、このような特殊な機器を使用しないことにより、土の粒度試験を、設備の整った試験室ではなく、例えば工事現場に設置された事務所で実施することができる。この場合、土の粒度試験の実施頻度を増やすことができるため、土材料の品質管理の精度を高めることができる。
【0034】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されず、次のような変形が可能である。また、以下の変形例を相互に組み合わせてもよい。
(変形例1)
上述した実施例で説明したふるいの目開きの大きさは一例であり、ふるいの目開きの大きさは、例えば試料の特性に応じて選択すればよい。
【0035】
(変形例2)
上述した実施形態では、最も小さい粒径の試料(例えば、粒径が2mm未満の試料)を乾燥させていたが、この試料の乾燥は必須ではない。例えば試料の粒径や含水率によっては、最も小さい粒径の試料についても試料を乾燥させなくてもよい。反対に、最も小さい粒径以外の粒径の試料についても、撮影前に試料を乾燥させてもよい。
【0036】
(変形例3)
上述した実施例では、
図6に示す粒径加積曲線C1、
図7に示すヒストグラム、
図5に示す土の粒度試験の結果などの情報を表示部12に出力していたが、例えばコンピュータ10にプリンターが接続されている場合には、コンピュータ10はこれらの情報をこのプリンターによって媒体に印刷して出力させ得るようにしてもよい。
【0037】
(変形例4)
画像解析の方法は、実施例で説明した方法に限らず、その他の周知の方法を採用することができる。