特許第6189060号(P6189060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189060
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】コンプレックス細分化電位図の自動分析
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/044 20060101AFI20170821BHJP
   A61B 5/0402 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A61B5/04 314K
   A61B5/04 310M
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-56138(P2013-56138)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-192945(P2013-192945A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2016年2月5日
(31)【優先権主張番号】13/425,512
(32)【優先日】2012年3月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ガル・ハヤム
(72)【発明者】
【氏名】リモー・エルラン
(72)【発明者】
【氏名】アハロン・ツルゲマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーリブ・ハイキン
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0197929(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/137077(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0004550(US,A1)
【文献】 Yoshihide Takahashi et al.,Characterization of Electrograms Associated With Termination of Chronic Atrial Fibrillation by Catheter Ablation,Journal of the American College of Cardiology,2008年,第51巻,第10号,第1003−1010頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常な電気的活動をマッピングするための装置であって、
生体の心臓内のそれぞれの位置から、電気信号データを受信するように構成されている、プローブと、
プロセッサであって、
前記信号データを自動的に分析して、その中でコンプレックス細分化電位図(CFE)を特定し、
前記それぞれの位置に含まれるリエントリー位置を特定するように、前記CFEを分析し、その分析は、
所与のCFEに関心ウィンドウ(WOI)を割り当てること、および、前記WOI内の適格偏向を特定することであって、前記適格偏向が、所定の最小電圧と最大電圧との間にあるピークを含む、こと、および、
前記適格偏向の数(NOD)を評価すること、前記適格偏向中のノイズを考慮して、前記数を調整すること、および、前記数が所定の数値範囲内にあることを検証すること、
によって行われ、かつ
前記心臓のマップに関連して前記特定から得られる情報を表示するように構成されている、プロセッサと、
を備える、装置。
【請求項2】
前記CFEが、コンプレックス細分化心房電位図(CFAE)を含む、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサが、
最初の適格偏向及び最後の適格偏向を特定し、
前記最初の適格偏向と前記最後の適格偏向との間の総細分化時間(TFT)の期間を測定し、かつ
前記TFT期間が所定の期間範囲内にあることを検証するように更に構成されている、請求項に記載の装置。
【請求項4】
電気的活動をマッピングするためにコンピュータに、
生体の心臓内のそれぞれの位置から、電気信号データを受信、
前記信号データを自動的に分析による、その中でコンプレックス細分化電位図(CFE)定、
前記それぞれの位置に含まれるリエントリー位置を特定するための、前記CFEその分析は、
所与のCFEに関心ウィンドウ(WOI)を割り当てること、および、前記WOI内の適格偏向を特定することであって、前記適格偏向が、所定の最小電圧と最大電圧との間にあるピークを含む、こと、および、
前記適格偏向の数(NOD)を評価すること、前記適格偏向中のノイズを考慮して、前記数を調整すること、および、前記数が所定の数値範囲内にあることを検証すること、を含み、
および
前記心臓のマップに関連して前記特定から得られる情報示、
を実行させるためのプログラム
【請求項5】
前記CFEが、コンプレックス細分化心房電位図(CFAE)を含む、請求項に記載のプログラム
【請求項6】
前記コンピュータに、
最初の適格偏向及び最後の適格偏向定、
前記最初の適格偏向と前記最後の適格偏向との間の総細分化時間(TFT)の期間定、および
前記TFT期間が所定の期間範囲内にあること検証
をさらに実行させる、請求項に記載のプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、心電図記録法に関し、より具体的には、心電図の自動分析に関する。
【背景技術】
【0002】
参照によって本明細書に組み込まれる、「A New Approach for Catheter Ablation of Atrial Fibrillation:Mapping of the Electrophysiologic Substrate」(Nademaneeら、J.Am.Coll.Cardiol.,2004;43(11):2044〜2053)の文書では、コンプレックス細分化心房電位図(CFAE)を呈する部位をアブレーションすることによって、心房細動をうまく処置し得ることが提案されている。著者らは、心房細動の間のCFAEの区域を特定し、次いで、それらの区域に高周波アブレーションを適用した。アブレーションの結果として、心房細動は、それらの症例の大部分で解消した。
【0003】
参照により本特許出願に組み込まれる文書は、組み込まれた文書内のいずれかの用語が、本明細書で明示的又は暗黙的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本出願の一体部分と見なされるべきであり、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、
生体の心臓内のそれぞれの位置から、電気信号データを取得することと、
信号データを自動的に分析し、その中でコンプレックス細分化電位図(CFE)を特定することと、
それぞれの位置に含まれるリエントリー位置を特定するように、CFEを分析することと、
心臓のマップに関連してその特定から得られる情報を表示することと、を含む、異常な電気的活動をマッピングするための方法を提供する。
【0005】
典型的には、CFEは、コンプレックス細分化心房電位図(CFAE)を含む。
【0006】
開示される実施形態では、リエントリー位置を特定することは、所与のCFEに関心ウィンドウ(WOI)を割り当てることと、WOI内の適格偏向を特定することとを含み、適格偏向は、所定の最小電圧と最大電圧との間にあるピークからなる。本方法は、適格偏向の数(NOD)を評価することを更に含んでもよく、リエントリー位置を特定することは、数が所定の数値範囲内にあることを検証することを含む。典型的には、数を評価することは、適格偏向中のノイズを説明するために、数を調整することを含む。
【0007】
開示される実施形態は、
最初の適格偏向及び最後の適格偏向を特定することと、
最初の適格偏向と最後の適格偏向との間の総細分化時間(TFT)の期間を測定することと、
TFT期間が所定の期間範囲内にあることを検証することと、を更に含んでもよい。
【0008】
更に、本発明の一実施形態に従って、
生体の心臓内のそれぞれの位置から、電気信号データを受信するように構成されている、プローブと、
プロセッサであって、
信号データを自動的に分析して、その中でコンプレックス細分化電位図(CFE)を特定し、
それぞれの位置に含まれるリエントリー位置を特定するように、CFEを分析し、かつ
心臓のマップに関連してその特定から得られる情報を表示するように構成されている、プロセッサと、を備える、異常な電気的活動をマッピングするための装置を提供する。
【0009】
更に、本発明の一実施形態に従って、コンピュータプログラム命令が内部に記憶される、有形コンピュータ可読媒体を含み、命令は、コンピュータによって読まれるとき、コンピュータに、
生体の心臓内のそれぞれの位置から、電気信号データを受信させ、
信号データを自動的に分析させて、その中でコンプレックス細分化電位図(CFE)を特定させ、
それぞれの位置に含まれるリエントリー位置を特定するように、CFEを分析させ、かつ
心臓のマップに関連して該特定から得られる情報を表示させる、電気的活動をマッピングするためのコンピュータソフトウェア製品を提供する。
【0010】
本開示は、以下のより詳細な実施形態と、その図面の記述により、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に従った、電位図分析システムの概略図。
図2】本発明の一実施形態に従った、システムのアナライザーモジュールによって生成される電位図の概略的なグラフ。
図3】本発明の一実施形態に従った、アナライザーモジュールを使用したプロセッサによって踏まれる工程のフローチャート。
図4】本発明の一実施形態に従った、心臓の一切片を示す概略図。
図5】本発明の代替実施形態に従った、切片を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
本発明の一実施形態では、プロセッサは、コンプレックス細分化電位図(CFE)を生成する領域を特定するために、心臓、典型的には、ヒトの心臓のそれぞれの領域からの電位図を自動的に分析する。電位図は、必ずではないが典型的には、心房内の領域から得られ、その場合、電位図は、コンプレックス細分化心房電位図(CFAE)である。
【0013】
プロセッサは、更に、所定期間である、関心ウィンドウ(window of interest)(WOI)中の適格偏向を描出するために、かつ偏向数(NOD)として適格偏向を列挙するために、特定されたCFEを自動的に分析する。適格偏向は、所定の最大及び最小電圧境界内にある、信号の転換点、すなわち、信号の極大及び極小を含む。適格偏向の描出に加えて、プロセッサはまた、最初の適格偏向と最後の適格偏向との間の総細分化時間(TFT)を決定するために、適格偏向を自動的に分析する。
【0014】
典型的には、プロセッサは、心臓手術を実施する医療専門家に表示される心臓のマップに、それぞれの領域のNOD値を組み込む。あるいは、又は加えて、TFT値のマップがマップに組み込まれてもよい。
【0015】
医療専門家は、プロセッサに、心臓内のリエントリー領域を画定する、所定のNOD及びTFT値の範囲を提供してもよい。プロセッサは、上記のマップの表示に所定範囲を組み込むことができる。表示から、専門家は、リエントリー領域を特定することができ、典型的には、リエントリーを除去するために、領域をアブレーションする。リエントリーが、アブレーションされた領域においてもはや生じていないかどうかを決定するために、上記の分析と同様の分析が使用されてもよい。
【0016】
システムの説明
ここで、本発明の実施形態に従った、電位図分析システム10の概略図である、図1を参照する。単純及び明確にするために、以下の説明は、特に明記する場合を除き、システム10がプローブ14を使用して、本明細書では人の心臓を含むと考えられる、心臓12に対して測定を実施する、調査的処置を取る。電位図分析を実施するための設備を有することに加えて、システム10はまた、典型的には、プローブ14を追跡するための、並びに心臓12の1つ又は2つ以上の領域をアブレーションするための設備も含む。以下の説明は、これらの後者の設備がシステム10において存在し、かつそれらが調査的処置中に使用可能であると仮定する。
【0017】
典型的には、プローブ14は、調査的処置中に被験者16の体に挿入されるカテーテルを備える。プローブの遠位端18は、被験者の心臓から心電図(ECG)信号を受信する電極20を備え、信号は、本明細書に記載するように、システム10によって分析される。調査的処置は、システム10のユーザー22によって実施され、本明細書の説明において、ユーザー22は、一例として、医療専門家と仮定される。
【0018】
典型的には、処置中に他の電極が使用されてもよい。他の電極は、プローブ14に、プローブ14と同様であり、心臓内に位置する別のプローブに、及び/又は被験者16の皮膚に取り付けられてもよい。他の電極は、例えば、電極20からの信号のタイミングに対して基準を与えるために、及び/又は電極20からの信号に対する基準接地を提供するために、基準電極として使用されてもよい(その場合、信号は単極性信号である)。あるいは、又は加えて、他の電極のうちの少なくとも1つは、電極20との電圧差を決定するために使用されてもよく、その場合、電極20によって生成される信号は、両極性信号である。単純にするために、処置中に使用される他の電極は、図1には図示しないが、必要に応じて、システム10において存在すると仮定される。
【0019】
システム10は、典型的には、汎用コンピュータとして実現されてもよいシステムプロセッサ24によって制御される。システムプロセッサは、メモリ28と通信する処理装置26を備える。プロセッサ24は、典型的には、専門家22がプロセッサとやりとりを行うために使用する、キーパッド及びポインティングデバイス、例えば、マウス又はトラックボール等を含む動作制御32を備える、コンソール30に取り付けられてもよい。プロセッサ24によって実施される動作の結果は、システムによって実施される分析の結果の略図36を表示するスクリーン34上で、専門家に提供される。スクリーンは、典型的には、遠位端18の位置、及び専門家22によって使用される他のカテーテルの位置等、心臓が調査されている一方で、心臓に関する補助情報の他の項目38を表示する。スクリーン34はまた、典型的には、専門家にグラフィカルユーザーインターフェースを示す。専門家22は、システム10の操作中、プロセッサ24によって使用されるパラメーター値を入力するために、制御32を使用することができる。
【0020】
プロセッサ24は、システム10を操作するために、メモリ28に記憶されるプローブ追跡モジュール40、アブレーションモジュール42、及びコンプレックス細分化電位図(CFE)アナライザーモジュール44を含む、コンピュータソフトウェアを使用する。そのソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサ24にダウンロードされてもよく、あるいは、又は加えて、磁気的、光学的、又は電子的メモリ等の非一時的有形コンピュータ可読媒体上に提供及び/又は記憶されてもよい。
【0021】
プローブ追跡モジュール40は、プローブ14が被験者16の体内にある間にプローブの複数の区間を追跡する。追跡モジュールは、典型的には、被験者16の心臓内における、プローブの遠位端の位置及び向きの両方を追跡する。いくつかの実施形態では、モジュール40はプローブの他の区間を追跡する。追跡モジュールは、当該技術分野において既知であるいずれのプローブ追跡方法を用いてもよい。例えば、磁場発信器からの磁場が、追跡されているプローブの区間に配置された追跡コイルと相互作用するように、モジュール40は、被験者の付近で磁場発信器を操作してもよい。磁場と相互作用するコイルは、モジュールに伝送される信号を生成し、モジュールはその信号を分析して、コイルの位置及び向きを決定する。(簡潔にするため、そのようなコイル及び発信器は図1には示されていない。)Biosense Webster(Diamond Bar,CA)により生産されるCarto(登録商標)システムは、このような追跡方法を用いている。あるいは、又は加えて、追跡モジュール40は、電極20と、被験者16の皮膚上の電極との間のインピーダンスを測定することによって、プローブ14の遠位端を追跡してもよい。(この場合、電極20は、ECG検出及び追跡の両方に使用されてもよい。)Biosense Websterにより生産されるCarto3(登録商標)システムは、磁界伝送器及びインピーダンス測定器の両方を追跡に用いている。
【0022】
追跡モジュール40を使用して、プロセッサ24は、遠位端18の位置を測定し、略図36で使用するための位置の位置座標を形成することができる。
【0023】
アブレーションモジュール42は、専門家22が心臓12内の組織をアブレーションするために、システム10を使用することを可能にする。アブレーションモジュールは、典型的には、電極20、又は先端18上の別の電極に、無線周波数(RF)エネルギーを提供することによってアブレーションを適用する。そのようなRFアブレーションシステムは、当該技術分野において周知であり、上記で参照されるCarto(登録商標)システムにおいて利用可能である。(場合によっては、電極20は、アブレーションのために、並びにECG及び追跡信号の両方を提供するために使用されてもよい。)あるいは、アブレーションモジュール42は、超音波又は極低温アブレーション等、当該技術分野で既知の組織アブレーションの任意の他の形態を実装してもよい。
【0024】
上記で参照される、「A New Approach for Catheter Ablation of Atrial Fibrillation:Mapping of the Electrophysiologic Substrate」(Nademaneeら)の文書では、コンプレックス細分化心房電位図(CFAE)を呈する部位をアブレーションすることによって、心房細動をうまく処置し得ることが提案されている。CFAEは、2つ又は3つ以上の偏向、及び/あるいは10秒の記録期間にわたる長期の活動コンプレックスの連続的な偏向を伴うベースラインの摂動からなる細分化電位図を有する、心房電位図として、又は10秒の記録期間にわたって平均化される、非常に短いサイクル長(例えば、≦120ミリ秒)を伴う心房電位図として、定義されてもよい。記録期間は重要ではなく、他の長さの記録間隔が使用されてもよい。
【0025】
本発明の原理は、CFAEだけではなく、全ての心腔からのコンプレックス細分化電位図(CFE)に適用され得る。更に、原理は、心外膜及び心内膜アプローチのために、並びに洞調律におけるマッピングに、加えて、多くの異なる心不整脈が存在する時に適用され得る。
【0026】
電位図アナライザーモジュール44は、信号がコンプレックス細分化電位図(CFE)に分類され得るかどうかを決定するために、電極20から受信されるECG信号を分析する。そのような決定を行うためのECG信号の処理は、概して、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2007/0197929号(Porathら)において説明される通りである。
【0027】
最初に、電極20からのアナログ信号データが、典型的には、アナログ・デジタル変換器を使用して自動的に処理され、典型的には、濾過を適用することによって調整される。得られた信号は、所定の電圧範囲内の振幅を有する、本明細書において電圧ピークとも呼ばれる、電圧最大値又最小値を特定するために分析される。分析は、所定の時間範囲内に生じる、特定された電圧ピーク間のピーク・ピーク時間間隔を特定することによって継続する。次いで、分析された結果は、電位図がCFEに分類され得るかどうかを決定するために、図3のフローチャートを参照して以下に提供されるCFEの定義を使用して適用される。各特定されたCFEは、心臓12内のそれぞれの部位に対応し、部位の位置は、追跡モジュール40を使用して測定され得る。
【0028】
モジュール44は、更に、リエントリーを含み得る心臓の部位を特定するために、CFEを分析及び特性化する。電位図の更なる分析及び特性化がオフラインで実施され得る一方で、本発明者らは、それがオンラインで、リアルタイムでも実施され得ることが分かった。
【0029】
モジュール44を使用して実施される分析は、図3のフローチャートに関して以下により詳細に記載される。
【0030】
図2は、本発明の実施形態に従った、モジュール44によって生成される電位図の概略的グラフを示す。グラフ100は、基準として使用される別の電極と共に、電極20によって生成される第1の双極電位図である。グラフ100は、電極20が心房のうちの1つの所与の部位と接触している時に生成される。グラフ102は、2つの基準電極間で、グラフ100と同時に生成される第2の双極電位図である。グラフのパラメーター及び他の要素は、以下の表I、及び図3のフローチャートの説明において説明される。
【0031】
図3は、本発明の実施形態に従った、アナライザー44を使用した、プロセッサ24によって踏まれる工程のフローチャート150である。工程の以下の説明は、電位図が、心房のうちの1つの領域と接触している電極20から生成されると仮定し、明確にするために、グラフ100(図2)が、電位図の一部に対応すると仮定する。
【0032】
初期の設定工程152において、専門家22は、電極20からの信号の分析において、プロセッサ及びアナライザー44によって使用されるパラメーターに対して値を割り当てる。本工程において割り当てられ得るパラメーター、及びパラメーターの典型的なユーザー定義の値は、表Iに示される。(表中の所見は、フローチャートの工程の説明において更に説明される。)
【表1】
【0033】
CFE特定工程154において、プロセッサ24は、CFEを生成する心臓12の領域を特定する。特定は、概して、上記で参照される米国特許出願第2007/0197929号に記載される通りであり、工程152及び表Iに記載されるようなパラメーターを使用した、領域からの電位図の初期分析を伴う。明確にするために、初期分析は、10秒の期間にわたって得られる電位図に対して実施されると仮定されるが、上記の通り、期間は、より長くても、又は短くてもよい。分析は、電位図に含まれる鼓動を打つ心臓の各サイクルに対して実施され、サイクルは、典型的には、グラフ102(図2)に示されるような基準電極によって受信される基準信号からの連続的なRピーク間の期間である。
【0034】
CFE特定工程は、電極20からの各サイクル中の適格ピークを描出するために、アナライザー44を使用したプロセッサを含む。適格ピークは、+Vminと+Vmaxとの間にその最大値を有する転換点を有する。正の電圧値を有するそのような適格ピークは、正の適格ピークとも呼ばれる。あるいは、適格ピークは、−Vminと−Vmaxとの間にその最小値を有する転換点を有し、負の電圧値を有するそのような適格ピークは、負の適格ピークとも呼ばれる。特定はまた、ピーク間の時間間隔を測定すること、並びに最小及び最大持続時間、Tmin及びTmaxによって境界される時間内にある間隔を、適格間隔として列挙することも含む。
【0035】
典型的な領域は、4つ又は5つ以上の適格間隔を有すると仮定され、適格間隔の数の存在は、CFEを定義する。しかしながら、領域がCFEを有するかどうかを決定するために使用される適格間隔の数は、専門家22によって必要とされる信頼度に従って、この数よりも多く、又は少なくなるように選択されてもよい。適格間隔の数が高いほど、電位図がCFEを含むという信頼度は大きくなる。
【0036】
第1の分析工程156において、CFEを有する各所与の領域に対して、アナライザー44は、関心ウィンドウ(WOI)内の信号データを考慮する。WOIは、ユーザー定義の期間であってもよく、本明細書では、一例として、上記のように1サイクルの時間中の期間であると仮定される。WOIは、開始期間WOISTによって定義される、WOIの開始時間TSTからの信号に適用される。開始時間は、典型的には、隣接したRピーク間の中間である時間インスタントである。しかしながら、WOI自体に関しては、WOIの開始時間TSTは、ユーザー定義であってもよい。
【0037】
初期の偏向列挙工程158において、プロセッサは、WOI内で、本明細書において適格偏向とも呼ばれる、適格ピークを特定する。図2に示すように、8つの適格偏向の群が存在する:104、106、108、110、112、114、116、及び118。これらのうち、偏向104、108、114、及び118は、正の適格ピークであり、偏向106、110、112、及び116は、負の適格ピークである。プロセッサは、メモリ28において、偏向の数(NOD)、すなわち、特定された正及び負の適格ピークの総数を記憶する。
【0038】
調整工程160において、プロセッサは、設定工程152において定義される、電圧及び持続時間閾値、Vth及びTthの値を使用して、ノイズによって引き起こされた可能性があるピークに対して調整する。プロセッサは、正のピーク及び負のピークを別々に分析する。2つの正の適格ピークは、Vthの2つのピーク間で最小電圧差がある場合、及びTthの2つのピーク間で最小時間差がある場合、2つのピークが2つの別々のピークとしてNOD内で計算されるように、別々であると仮定される。両方の条件が満たされない場合、2つのピークは、NODにおいて1と計算される。プロセッサは、2つの負の適格ピークが別々であると仮定されるかどうかを決定するために、同様の条件を適用する。
【0039】
例えば、Vth及びTthの値が、ピーク110が電圧−0.12mVを有し、ピーク112が電圧−0.06mVを有し、かつピーク間の分離時間が30msである、表Iに示される典型的な値であると仮定する。この場合、2つのピークがVthを超える値によって分離されるにもかかわらず、それらの分離時間がTth未満であるため、それらは1つのピークとして計算され、NODの調整された値が、工程158において決定される「未処理」NOD値の代わりに、7になる。
【0040】
細分化時間工程162において、プロセッサは、NODを含むピークの群における最初のピークと最後のピークとの間で、ミリ秒で期間を数値化する。期間は、電位図の総細分化時間(TFT)と呼ばれる。図2は、グラフ100のTFTが、ピーク104とピーク118との間の時間(msで)であることを示す。
【0041】
結果工程164において、各CFEに割り当てられるNOD値、又は各CFE領域に割り当てられるTFT値は、専門家22に表示される。表示は、典型的には、グラフであるが、代わりに、又は加えて、数値的であってもよい。グラフ形式の表示の実施例は、図4及び5に示される。
【0042】
図4は、本発明の実施形態に従った、それらのそれぞれの空間的位置に従ってマッピングされるNOD値を示す、心臓12の切片180を示す略図36図1)の概略図である。NOD値は、カラースケールに従って色分けされ、適切な色は、切片180のマップに組み込まれる。あるいは、又は加えて、NOD値は、数値的に表示されてもよい。NOD値は、一例として、4〜12の全範囲を有すると仮定される。専門家22は、典型的には、専門家の経験、並びに歴史的NODデータ等の他の要因に基づき、潜在的なリエントリー部位を特定及び検証するNOD値のセットを選択する。例えば、専門家は、6〜8の間のNOD値を有する部位を、潜在的なリエントリー部位として選択してもよく、その場合、領域182は、1つのそのような部位であり、典型的には、アブレーションの対象となる。
【0043】
上記に提示したNOD値及び潜在的なリエントリー部位NOD値の全範囲は、一例であり、本発明の範囲は、当業者には明らかとなる他の全NOD範囲及び潜在的なリエントリー部位NOD値を含むことが理解されるであろう。
【0044】
図5は、本発明の実施形態に従った、心臓12のそれらのそれぞれの位置に従ってマッピングされるTFT値を示す、切片180を示す略図36の概略図である。TFT値は、カラースケールに従って色分けされ、適切な色は、切片180のマップに組み込まれる。あるいは、又は加えて、TFT値は、数値的に表示されてもよい。
【0045】
TFT値は、一例として、35ms〜90msの全範囲を有すると仮定される。専門家22は、典型的には、NODに対する値を選択するために使用される方法と同様の方法で、潜在的なリエントリー部位を特定及び検証するTFT値のセットを選択する。一例として、専門家は、48ms〜69msの間のTFT値を有する部位を、潜在的なリエントリー部位として選択してもよく、その場合、領域184がリエントリー部位である。NOD値に関しては、上記に提示したTFT値及び潜在的なリエントリー部位TFT値の全範囲は、一例であり、本発明の範囲は、当業者には明らかとなる他の全TFT範囲及び潜在的なリエントリー部位TFT値を含む。
【0046】
典型的には、専門家22は、NOD値のマップ又はTFT値のマップを見るように、スクリーン34上の表示を切り替えることができる。一方又は両方のマップを使用して、専門家は、典型的には、マップのうちの一方又は両方によって指示されるリエントリー部位をアブレーションするために、追跡モジュール40及びアブレーションモジュール42を使用する。いったんアブレーションが実施されると、専門家22は、システム10を使用して、上記で与えられるNOD又はTFT基準に従ってリエントリー部位と見なされた部位が、同一の基準を使用して、もはやリエントリー部位とは見なされないことを検証することができる。典型的には、アブレーションされた部位は、コンプレックス細分化挙動を呈さない。
【0047】
上述した実施形態は一例として記載されたものであり、本発明は、本明細書において上に具体的に図示及び説明した内容に限定されないことが明らかとなろう。むしろ本発明の範囲には、上記に述べた様々な特徴の組み合わせ及び下位の組み合わせ、並びに当業者であれば上記の説明文を読むことで想到されるであろう、先行技術に開示されていないそれらの変更及び改変が含まれるものである。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 異常な電気的活動をマッピングするための方法であって、
生体の心臓内のそれぞれの位置から、電気信号データを取得することと、
前記信号データを自動的に分析して、その中でコンプレックス細分化電位図(CFE)を特定することと、
前記それぞれの位置に含まれるリエントリー位置を特定するように、前記CFEを分析することと、
前記心臓のマップに関連して前記特定から得られる情報を表示することと、を含む、方法。
(2) 前記CFEが、コンプレックス細分化心房電位図(CFAE)を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記リエントリー位置を特定することが、所与のCFEに関心ウィンドウ(WOI)を割り当てることと、前記WOI内の適格偏向を特定することとを含み、前記適格偏向が、所定の最小電圧と最大電圧との間にあるピークを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記適格偏向の数(NOD)を評価することを含み、前記リエントリー位置を特定することが、前記数が所定の数値範囲内にあることを検証することを含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記数を評価することが、前記適格偏向中のノイズを説明するために、前記数を調整することを含む、実施態様4に記載の方法。
【0049】
(6) 最初の適格偏向及び最後の適格偏向を特定することと、
前記最初の適格偏向と前記最後の適格偏向との間の総細分化時間(TFT)の期間を測定することと、
前記TFT期間が所定の期間範囲内にあることを検証することと、を含む、実施態様3に記載の方法。
(7) 異常な電気的活動をマッピングするための装置であって、
生体の心臓内のそれぞれの位置から、電気信号データを受信するように構成されている、プローブと、
プロセッサであって、
前記信号データを自動的に分析して、その中でコンプレックス細分化電位図(CFE)を特定し、
前記それぞれの位置に含まれるリエントリー位置を特定するように、前記CFEを分析し、かつ
前記心臓のマップに関連して前記特定から得られる情報を表示するように構成されている、プロセッサと、を備える、装置。
(8) 前記CFEが、コンプレックス細分化心房電位図(CFAE)を含む、実施態様7に記載の装置。
(9) 前記リエントリー位置を特定することが、所与のCFEに関心ウィンドウ(WOI)を割り当てることと、前記WOI内の適格偏向を特定することとを含み、前記適格偏向が、所定の最小電圧と最大電圧との間にあるピークを含む、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記適格偏向の数(NOD)を評価することを含み、前記リエントリー位置を特定することが、前記数が所定の数値範囲内にあることを検証することを含む、実施態様9に記載の装置。
【0050】
(11) 前記数を評価することが、前記適格偏向中のノイズを説明するために、前記数を調整することを含む、実施態様10に記載の装置。
(12) 前記プロセッサが、
最初の適格偏向及び最後の適格偏向を特定し、
前記最初の適格偏向と前記最後の適格偏向との間の総細分化時間(TFT)の期間を測定し、かつ
前記TFT期間が所定の期間範囲内にあることを検証するように更に構成されている、実施態様9に記載の装置。
(13) 電気的活動をマッピングするためのコンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が内部に記憶される、有形コンピュータ可読媒体を含み、命令が、コンピュータによって読まれるとき、前記コンピュータに、
生体の心臓内のそれぞれの位置から、電気信号データを受信させ、
前記信号データを自動的に分析させて、その中でコンプレックス細分化電位図(CFE)を特定させ、
前記それぞれの位置に含まれるリエントリー位置を特定するように、前記CFEを分析させ、かつ
前記心臓のマップに関連して前記特定から得られる情報を表示させる、製品。
(14) 前記CFEが、コンプレックス細分化心房電位図(CFAE)を含む、実施態様13に記載の製品。
(15) 前記リエントリー位置を特定することが、所与のCFEに関心ウィンドウ(WOI)を割り当てることと、前記WOI内の適格偏向を特定することとを含み、前記適格偏向が、所定の最小電圧と最大電圧との間にあるピークを含む、実施態様13に記載の製品。
【0051】
(16) 前記適格偏向の数(NOD)を評価することを含み、前記リエントリー位置を特定することが、前記数が所定の数値範囲内にあることを検証することを含む、実施態様15に記載の製品。
(17) 前記数を評価することが、前記適格偏向中のノイズを説明するために、前記数を調整することを含む、実施態様16に記載の製品。
(18) 前記コンピュータに、
最初の適格偏向及び最後の適格偏向を特定させ、
前記最初の適格偏向と前記最後の適格偏向との間の総細分化時間(TFT)の期間を測定させ、かつ
前記TFT期間が所定の期間範囲内にあることを検証させることを含む、実施態様16に記載の製品。
図1
図2
図3
図4
図5