(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189069
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 27/20 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
A41D27/20 F
A41D27/20 H
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-76341(P2013-76341)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-201840(P2014-201840A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】396015448
【氏名又は名称】株式会社はるやまホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛士
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03688315(US,A)
【文献】
特開2008−088604(JP,A)
【文献】
特開2009−001923(JP,A)
【文献】
実開昭48−042701(JP,U)
【文献】
実開昭62−021017(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3151165(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3072768(JP,U)
【文献】
特開2003−113517(JP,A)
【文献】
特開昭61−097401(JP,A)
【文献】
実開昭51−007106(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/00 − 1/02
A41D 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外ポケットと、補助ポケットを有し、上半身に着用する衣服において、
前記外ポケットは、前身頃の外側にポケット布が取り付けられて形成されたものであり、前記外ポケット内の前身頃に開口が設けられ、前記補助ポケットは、前記開口をポケット入口として前記前身頃の裏側に本体部分が設けられたものであり、
前記補助ポケットのポケット入口は、外ポケットの深さ方向の中間部分よりも裾側にあり、
且つ補助ポケットの底は、前記外ポケットの底よりも裾側に至っており、
前記開口は、外ポケットの底から上方に離れた位置にあり、
前記開口には、前記前身頃及び前記補助ポケットによって上向きの段部が形成されていることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記開口には、下向きの段部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイシャツやドレスシャツ等のシャツ、ジャケット、ブレザー、背広等の上半身に着用する衣服であって、胸ポケットを有する衣服に関するものである。本発明の衣服は、携帯電話や携帯端末その他の携帯用電子機器を携行する際に便利なものである。
【背景技術】
【0002】
シャツ等の上半身に着用する衣服には、胸ポケットが設けられたものが多い。
胸ポケットは、例えば前
身頃にポケット布を縫い付けたものである。即ち、ポケット布の下辺と左右の側辺を前
身頃に縫い付け、上辺だけを縫わずにおく。そして上辺の部位をポケット入口とし、前
身頃とポケット布によって形成される袋内に物を入れる。
【0003】
またポケットの一つとして、二重ポケットと称されるポケットがある。二重ポケットは、ポケットの中に、一つ内ポケットが設けられたものである。即ち二重ポケットは、外ポケットの中に内ポケットを設けたものである。
胸ポケットが二重ポケット構造となった衣料の先行技術として次の特許文献がある。
【0004】
先行技術に開示された二重ポケットは、いずれも内外ポケットの入口が近接した位置に設けられている。即ち先行技術に開示された二重ポケットは、内ポケットの入口が、外ポケットの入口の近くにある。
【0005】
また先行技術に開示された二重ポケットの多くは、その最も深い位置が近似している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭48−042701号公報
【特許文献2】実開昭62−021017号公報
【特許文献3】実用新案登録第3151165号公報
【特許文献4】実用新案登録第3072768号公報
【特許文献5】特開2003−113517号公報
【特許文献6】特開昭61−097401号公報
【特許文献7】実開昭51−007106号公報
【特許文献8】特開2009−001923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、携帯電話や携帯端末等の携帯用電子機器が広く普及している。携帯用電子機器は、ポケットに入れて携行される場合が多い。またワイシャツ等の胸ポケットを有する衣服を着用している場合には、当該胸ポケットに携帯用電子機器を入れておく場合が多い。
胸ポケットは、その大きさや深さが、携帯電話等の一般的な大きさと合致する。そのため胸ポケットは、携帯電話等を入れやすい。また胸ポケットに携帯電話等を入れておくと、着信音や着信時における振動を感知しやすいという利点がある。
【0008】
しかしながら、胸ポケットに携帯電話等を入れると、使用者が屈んだ際に、携帯電話を落としてしまうことがある。
特にトイレで用を足した後に、使用者が屈んだ際、胸ポケットから携帯電話等を落としてしまうことがある。
【0009】
前記した様に、胸ポケットが二重ポケット構造となったシャツ等が公知であるが、従来技術のポケットに携帯電話等を入れても、落下の頻度は変わらない。即ち従来技術の二重ポケットは、いずれも内外ポケットの入口が近接した位置に設けられている。そのため仮に携帯電話等を外ポケットに挿入すると、携帯電話等の全ての部位が、外ポケットに保持される。また仮に携帯電話等を内ポケットに挿入すると、携帯電話等の全ての部位が、内ポケットに保持される。
従って、従来技術の衣料においては、携帯電話等を外ポケットに挿入しても、内ポケットに挿入しても、保持される状態には大差無く、落下の頻度は変わらない。
【0010】
加えて、従来技術の衣服の内ポケットには、携帯端末等を入れにくいという問題もある。
即ち従来技術の衣服の内ポケットの入り口は、外ポケットと同じ位置にある。そのため内ポケットに携帯電話等を入れる際には、携帯電話等を使用者の胸に対して直交する方向に向け、さらに外ポケットを手で保持する等によって、前
身頃と、着用者の胸との間に隙間を設けて内ポケットの袋部分を開く必要がある。そのため従来技術の胸の内ポケットは、携帯端末等を入れにくい。
【0011】
さらに近年、携帯端末が大型化する傾向にあり、ワイシャツ等の胸ポケットには収まりきれない大きさとなりつつある。即ち旧来の携帯端末は、単なる電話であったが、携帯端末が多機能化し、主たる用途が電話機能から検索機能に変わりつつある。そのため携帯端末の全体形状が大型化している。さらにスマートフォン等の様にタッチパネルを採用する携帯用電子機器が出現している。タッチパネルを使用する機種では、操作性を確保するために、表示面を大きくする必要があり、通常の携帯電話に比べて全体形状が大きくならざるを得ない。
【0012】
スマートフォン等の多機能型の携帯用電子機器を収納する為には、胸ポケットを大きくする必要がある。しかしながら、ワイシャツやドレスシャツ等の分野においては、お洒落感を醸し出すことが必要であり、機能性と装飾性のバランスが大切である。そのため機能性を追求し、スマートフォン等を収納すべく胸ポケットを大きくすると、見栄えが悪化し、需要者に好まれない。
【0013】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、携帯電話等を落とし難く、且つ入れやすいばかりでなく、見栄えも良い胸ポケットを備えた衣服を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、外ポケットと
、補助ポケットを有し、上半身に着用する衣服において、前記外ポケットは、前
身頃の外側にポケット布が取り付けられて形成されたものであり、前記外ポケット内の前
身頃に開口が設けられ、前記補助ポケットは、前記開口をポケット入口として前記前
身頃の裏側に本体部分が設けられたものであり、前記補助ポケットのポケット入口は、外ポケットの深さ方向の中間部分よりも裾側にあり、且つ補助ポケットの底は、前記外ポケットの底よりも裾側に至って
おり、前記開口は、外ポケットの底から上方に離れた位置にあり、前記開口には、前記前身頃及び前記補助ポケットによって上向きの段部が形成されていることを特徴とする衣服である。
すなわち、本発明は、外ポケットと、当該外ポケット内に設けられた補助ポケットを有し、上半身に着用する衣服において、前記外ポケットは、前身頃の外側にポケット布が取り付けられて形成されたものであり、前記外ポケット内の前身頃に開口が設けられ、前記補助ポケットは、前記開口をポケット入口として前記前身頃の裏側に本体部分が設けられたものであり、前記補助ポケットのポケット入口は、外ポケットの深さ方向の中間部分よりも裾側にあり、且つ補助ポケットの底は、前記外ポケットの底よりも裾側に至っている。
【0015】
本発明の衣服は、補助ポケットの入口が、外ポケットの入口に比べて大幅に裾側に寄っている。衣服を着用した状態を基準とすると、補助ポケットの入口が、外ポケットの入口に比べて大幅に下側にある。
また本発明の衣服では、補助ポケットの底は、前記外ポケットの底よりも裾側に至っている。衣服を着用した状態を基準とすると、補助ポケットの底は、外ポケットの底よりも大幅に下側にある。
本発明の衣服では、外ポケットの入口から携帯電話等を挿入し、携帯電話の下部を補助ポケットに入れる。
その結果、携帯電話等は外ポケットと補助ポケットの双方で支持される。
また携帯電話等を落とす際は、体のひねり具合等によって、ポケットの入口が開いたり、携帯電話の側面等とポケットの布との間に空間が生じた場合である。ここで体等をひねった場合、外ポケットと補助ポケットでは、布の動きが相違する。そのため本発明の衣服では、例えポケットの一方が、落下を許容する状態となっても、他方が携帯電話の落下を阻止し、携帯電話等は、結果的に落下を免れる。
また本発明の衣服の外観は、従来の衣服と変わらない。即ち本発明の衣服では、外から見えるのは、外ポケットだけであり、外ポケットは必ずしも大きくする必要はない。そのため本発明の衣服は、見栄えが良い。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記開口には、下向きの段部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の衣服である。
【0017】
本発明では、補助ポケットの入り口たる開口に、下向きの段部が形成されている。そのため当該段部が逆止機構となり、携帯電話の落下を阻止する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の衣服は、胸ポケットを備え、当該胸ポケットは携帯電話等を入れやすい。また本発明の衣服は、携帯電話等を落とし難く、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】
図1のシャツの胸ポケットの断面斜視図である。
【
図4】
図1のシャツの胸ポケットに携帯電話を挿入する際の様子を示す断面図であり、携帯電話の先端を胸ポケットに入れる直前を示す。
【
図5】
図1のシャツの胸ポケットに携帯電話を挿入する際の様子を示す断面図であり、携帯電話の先端が、補助ポケットの入口近傍に至った状態を示す。
【
図6】
図1のシャツの胸ポケットに携帯電話を挿入し終えた状態を示す断面図である。
【
図7】
図1のシャツの胸ポケットに携帯電話を挿入した状態における正面図である。
【
図8】
図1のシャツの胸ポケットに煙草を挿入した状態における正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の衣料は、紳士物のシャツ1である。本実施形態のシャツ1は、長袖シャツであり、胸ポケット2が設けられている。
胸ポケット2の構造は、
図3の様に二重ポケット構造であり、外ポケット5と補助ポケット6によって構成されている。
外ポケット5は、パッチポケットであり、
図1、
図3の様に前
身頃7にポケット布8が縫い付けられたものである。即ち、ポケット布8は、一枚の布であり、
図1、
図3の様に、下辺と左右の側辺が縫製ライン10,11,12によって前
身頃7に取り付けられている。外ポケット5の上辺13は、前
身頃7に縫製されておらず、外ポケット入口15を構成している。
ポケット布8の上辺13は、
図3の様に布が内側に折り返されて合わせ面が縫製されている。そのため、ポケット布8は、上辺近傍部20が他の部位に比べて厚くなっている。またポケット布8の開口近傍は、縫製ライン21があり、当該部位及びその下の部位が段状を呈している。特に上辺13の折り返された部位の先端には、下向きの段部23がある。
【0021】
外ポケット入口15には、ホック18が設けられている。即ちポケット布8の内側に、雄側ホック片16が設けられ、前
身頃7に雌側ホック片17が設けられている。そして両者を係合することにより、外ポケット入口15を閉じることができる。
【0022】
外ポケット5の内部の、前
身頃7には切り目状の開口25が設けられている。開口25の位置は、外ポケット5の内部であって、外ポケット5の底26を少し離れた位置である。より具体的には、開口25の位置は、外ポケット5の内部であって、外ポケット5の底26から20mm乃至40mm程度離れた位置にある。即ち開口25の上辺28の位置は、外ポケット5の深さの半分以下の高さである。即ち開口25の位置は、深さ方向の中間部分よりも裾30側にある。
より望ましくは、外ポケット5の深さをHとし、開口25の上辺28の外ポケット5の底26からの距離をhとしたとき、底からの距離hは、外ポケット5の深さHの40パーセント以下であり、さらに望ましくは、35パーセント以下である。本実施形態では、底からの距離hは、外ポケット5の深さHの30パーセントである。
【0023】
補助ポケット6は切りポケットであり、前記した前
身頃7の開口25が補助ポケット6の入口となる。
補助ポケット6は前記した様に切りポケットであり、
図2、
図3の様にポケット袋31が縫い付けられたものである。
【0024】
ポケット袋31は、
図3の様に2片の布36,37によって構成され、両者の縁が縫製ライン32で縫合されたものである。
ポケット袋31の開口部33は、前記した前
身頃7の開口25に合致させて縫合されている。ここで、ポケット袋31の開口部33と前
身頃7の開口25とは、両部材の開口端を折り曲げ、さらに両者を重ねた状態で縫合されている。そのため、ポケット袋31の開口部33は、他の部位に比べて厚くなっている。特に、開口25の上辺28の近傍には、下向きの段部35が形成されている。
【0025】
補助ポケット6の底38は、外ポケット5の底26よりも裾30側に至っている。
即ち補助ポケット6の底38は、外ポケット5の底26よりも30mmから70mm程度深い位置にある。
より好ましくは、40mmから60mm程度深い位置にある。本実施形態では、補助ポケット6の底38は、外ポケット5の底26よりも50mm前後深い位置にある。
外ポケット5の深さをHとし、外ポケット5の底26と補助ポケット6の底38の距離をDとすると、距離Dは、外ポケット5の深さHの25パーセントから60パーセント程度である。
より望ましくは、距離Dは、外ポケット5の深さHの30パーセントから50パーセント程度である。最も推奨される距離Dは、外ポケット5の深さHの35パーセントから40パーセント程度である。
【0026】
次に本実施形態のシャツ1の機能について説明する。
本実施形態のシャツ1は、前記した様に胸ポケット2を有し、当該胸ポケット2に、
図6、
図7の様に携帯電話50等を入れることができる。
携帯電話50は、先端側を外ポケット入口15から挿入して行き、さらに先端を外ポケット5内の開口(内ポケット6の入口)から補助ポケット6内に挿入する。
その結果、
図6、
図7の様に、携帯電話50の上側が外ポケット5内にあり、下部が補助ポケット6に保持される。
【0027】
ここで、本実施携帯のシャツ1では、携帯電話50の先端部が外ポケット入口15から挿入される際に、携帯電話50を垂直姿勢にした状態で挿入することができる。即ち外ポケット5は、パッチポケットであって、外ポケット入口15は、上部側に向かって開口している。そのため
図4に示すように、携帯電話50を垂直姿勢にした状態のままで、無理なく外ポケット5に挿入することができる。
【0028】
続いて携帯電話50の先端部が、外ポケット5内の開口(内ポケット6の入口)に至る。ここで、本実施形態のシャツ1では、外ポケット5内の開口(内ポケット6の入口)は、外ポケット5の底26に近い位置であり、携帯電話50の相当の部位が既に胸ポケット2内に入り込んでいる。そのため携帯電話50は、外ポケット5を構成する前
身頃7と、ポケット布8に挟まれ、縦姿勢を維持しようとする。
そのため、
図5に示す様に、胸ポケット2を使用者の胸から僅かに浮かすだけで、先端部分を補助ポケット6に挿入することができる。
【0029】
また本実施形態のシャツ1は、使用者が屈んでも携帯電話50を落としにくい。即ち、本実施形態のシャツ1では、携帯電話50の一部が外ポケット5で保持され、携帯電話50の他の部分が補助ポケット6によって保持されている。
そのため使用者が屈んだ際に、二つのポケット5,6は、異なる動きをし、少なくともいずれか一方が、携帯電話50の落下を阻止する。
【0030】
また本実施形態のシャツ1では、胸ポケット2の内部の2箇所に段部23,35がある。即ち外ポケット5の上辺13に折り返された部位があり、当該部位が、下向きの段部23となっている。
さらに補助ポケット6の入口たる開口25の上辺28の近傍にも、下向きの段部35がある。
ここで下向きの段部23,35は携帯電話50の脱落を阻止する方向に向いている。そのため、本実施形態のシャツ1では、段部23,35の作用によっても脱落が阻止される。
また本実施形態のシャツ1では、外から見えるのは外ポケット5だけであり、内ポケット6は前
身頃7に隠れて見えない。また本実施形態のシャツ1では、外ポケット5を過度に大きくする必要はない。そのため本実施形態のシャツ1は、見栄えがよい。
【0031】
もちろん本実施形態のシャツ1の胸ポケット2に入れるものは限定されず、手帳や煙草を入れることができる。例えば煙草51を入れる場合は、
図8の様に外ポケット5に挿入されることとなる。
【符号の説明】
【0032】
1 シャツ
2 胸ポケット
5 外ポケット
6 補助ポケット
7 前
身頃
8 ポケット布
15 外ポケット入口
23 段部
25 開口
26 底
35 段部
38 底
50 携帯電話