特許第6189073号(P6189073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189073
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】呼吸用ガスの加温加湿器
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/16 20060101AFI20170821BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20170821BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A61M16/16 A
   A61M16/16 B
   A61M16/00 305A
   A61M16/10 C
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-82417(P2013-82417)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-204760(P2014-204760A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022541
【氏名又は名称】アトムメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】松原 一雄
(72)【発明者】
【氏名】松原 照巳
(72)【発明者】
【氏名】小林 心一
(72)【発明者】
【氏名】大友 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】田邉 佳史
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−518640(JP,A)
【文献】 特開平07−248136(JP,A)
【文献】 実開昭60−180440(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/16
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を溜めたチャンバ内に呼吸用ガスを流通させて加温加湿する呼吸用ガスの加温加湿器であって、円筒状のヒートシンクで覆われた円柱状のヒータを有する基台と、該基台に着脱可能に設けられ前記呼吸用ガスが流通される前記チャンバとを備え、前記チャンバは、水を溜める容器部と、該容器部の上部を開閉する蓋部とから構成され、前記基台には、前記基台に揺動可能に支持され前記蓋部を着脱可能に保持するヒンジ機構部が取り付けられ、前記ヒータは前記基台に立設され、前記容器部の中心部には前記ヒートシンクと嵌合する円筒状の加熱板が配置され、前記蓋部には前記ヒンジ機構部による揺動端部に前記容器部と係脱可能なロック部が設けられており、
前記蓋部には、前記ロック部とは反対側の外周部に、前記容器部に前記蓋部が装着された状態において該容器部の内部に挿し込まれる挿入片が立設されており、前記蓋部と前記容器部との装着状態における前記ロック部のロック位置から前記挿入片の下端までの距離が、前記ロック位置から前記挿入片が挿し込まれる位置の前記容器部の内周面までの水平距離よりも大きく設定されるとともに、前記挿入片の下端が前記ロック位置よりも下側に配置されていることを特徴とする呼吸用ガスの加温加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸器や酸素吸入療法等に用いられる呼吸用ガスを適度の温度、湿度に維持するための加温加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
所定量の酸素を含んだ呼吸用ガスを患者の気道へ送る人工呼吸器や、酸素吸入療法のための装置が知られている。このような装置においては、患者に乾燥した呼吸用ガスが供給されると、時間の経過とともに患者の喉、鼻腔及び粘膜を乾燥させ、患者に不快感を与えるだけではなく、気道の損傷をもたらすおそれがある。このため、従来から呼吸用ガスに水蒸気を取り込んで適度の温度、湿度に維持するための加温加湿器が用いられてきた。
【0003】
そして、呼吸用ガスの加温加湿器としては、例えば特許文献1又は特許文献2に開示されているような水を溜めたチャンバ内に呼吸用ガスを通過させ、蒸発した水分で加湿するもの等が知られている。
特許文献1では、水を溜めるチャンバに発熱体が設けられており、チャンバ内の水を加熱することにより、蒸発速度を増加させ、チャンバを通過する呼吸用ガス(呼吸ガス)に取り込まれる水蒸気の量を増加させた加温加湿器が提案されている。
また、特許文献2では、チャンバの底壁部に伝熱プレートを設けており、その伝熱プレートによりチャンバ内に溜められた水を加熱して温められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011‐512889号公報
【特許文献2】特表2012‐185825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の加温加湿器のように、水を用いる加温加湿器においては、チャンバ内を清潔に保つために定期的に洗浄が行われるが、洗浄作業は人的手段に頼らなければならない。このため、チャンバの洗浄を容易に行うために、チャンバの構造を出来るだけ簡略化した構成とすることが求められるが、その一方で、チャンバの取り扱い性を向上させることも求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、チャンバの取り扱い性を向上させることができ、チャンバ内の洗浄を容易に行うことができる呼吸用ガスの加温加湿器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水を溜めたチャンバ内に呼吸用ガスを流通させて加温加湿する呼吸用ガスの加温加湿器であって、円筒状のヒートシンクで覆われた円柱状のヒータを有する基台と、該基台に着脱可能に設けられ前記呼吸用ガスが流通される前記チャンバとを備え、前記チャンバは、水を溜める容器部と、該容器部の上部を開閉する蓋部とから構成され、前記基台には、前記基台に揺動可能に支持され前記蓋部を着脱可能に保持するヒンジ機構部が取り付けられ、前記ヒータは前記基台に立設され、前記容器部の中心部には前記ヒートシンクと嵌合する円筒状の加熱板が配置され、前記蓋部には前記ヒンジ機構部による揺動端部に前記容器部と係脱可能なロック部が設けられており、前記蓋部には、前記ロック部とは反対側の外周部に、前記容器部に前記蓋部が装着された状態において該容器部の内部に挿し込まれる挿入片が立設されており、前記蓋部と前記容器部との装着状態における前記ロック部のロック位置から前記挿入片の下端までの距離が、前記ロック位置から前記挿入片が挿し込まれる位置の前記容器部の内周面までの水平距離よりも大きく設定されるとともに、前記挿入片の下端が前記ロック位置よりも下側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
チャンバを基台に装着する際に、容器部の加熱板の内側にヒートシンクが挿入されることにより、加熱板とヒートシンクとが嵌合して容器部の中心が支持され、安定した装着状態を維持することができる。また、容器部の着脱は上下方向への移動により行われ、ヒートシンクで案内されることで容易に行うことができ、チャンバ洗浄時の取り扱い性を向上させることができる。また、チャンバは、容器部と蓋部とで構成されており、簡単に分離することが可能であるから、内部の洗浄を容易に行うことができる。
さらに、ヒンジ機構部と蓋部とを連結することで、ヒンジ機構部を介してチャンバを基台上に固定することができる。また、ヒンジ機構部と蓋部との連結状態でロック部を解除することで、蓋部をヒンジ機構部により揺動させることができ、容器部上部の開閉動作を容易に行うことができる。
【0010】
蓋部を容器部の上部に載置し、ロック部を容器部に係止することで、容易に蓋部と容器部とを固定することができる。前述したように、基台にチャンバを装着した状態では、ヒンジ機構部によりチャンバの蓋部を開閉することができ、ロック部により蓋部を閉止状態に固定することができる。そして、ヒンジ機構部から蓋部を離脱することにより、チャンバを基台から取り外すことができ、このとき、ロック部のロック位置を支点として蓋部が回転しようとしても、挿入片が容器部の内周面に接触して移動が妨げられることから、ロック部の係止を解除しない限り容器部の上部を蓋部で閉じた状態を維持することができる。このため、チャンバを移動させる際などに不用意に蓋部が開くことが防止され、蓋部が落下したり、チャンバ内の水がこぼれたりすることが回避できる。
また、蓋部と容器部とは、ロック部の係止を解除した状態では、蓋部を容器部の上方に移動することで簡単に取り外すことができ、蓋部と容器部とを分離することができる。したがって、チャンバ内の洗浄を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、チャンバを基台上に安定させた状態で載置できるとともに、容易に脱離させることができ、チャンバの取り扱い性を向上させることができる。また、チャンバを構成する容器部と蓋部とを簡単に分離することができ、容易に洗浄を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の呼吸用ガスの加温加湿器の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す加温加湿器のチャンバの蓋部を開けた状態を示す斜視図である。
図3】加温加湿器のチャンバ部分の断面斜視図である。
図4図3に示す状態からチャンバを取り外した状態を示す断面斜視図である。
図5】容器部からタワーユニットを取り外した状態を示す要部断面斜視図である。
図6】タワーユニットの斜視図である。
図7図1に示す加温加湿器のチャンバの蓋部をヒンジ機構部から取り外した状態を示す斜視図である。
図8】蓋部とヒンジ機構部との着脱操作を説明するチャンバの要部断面斜視図であり、(a)が脱離状態、(b)が装着状態を示す。
図9図1に示す加温加湿器の蓋部を揺動させた状態のロック部を示す要部断面斜視図である。
図10】ロック部の係脱操作を説明するチャンバの要部断面斜視図であり、(a)が係止状態、(b)が脱離状態を示す。
図11】ロック部と挿入片の配置を説明するチャンバの要部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る呼吸用ガスの加温加湿器について、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の呼吸用ガスの加温加湿器100は、例えば、自発呼吸を補助して呼吸障害を治療するためのCPAP装置等に接続されて用いられる。CPAP装置は、持続気道陽圧(CPAP:continuous positive airway pressure)と呼ばれる方式の補助換気法を用いて患者に治療を施す装置であり、ネーザルプロング、気管挿管チューブ、鼻マスク等の患者インターフェースを介して所定量の酸素と空気との混合ガスからなる呼吸用ガスを患者に供給する。そして、加温加湿器100は、患者に供給される呼吸用ガスを適度の温度及び湿度に維持するために設けられており、CPAP装置から送られる呼吸用ガスは加温加湿器100で加温加湿され、患者に供給されるようになっている。
【0014】
加温加湿器100は、図1に示すように、制御部等が内蔵された本体1と、本体1と一体に設けられた基台2と、基台2に着脱可能に設けられたチャンバ3と、チャンバ3内に呼吸用ガスを送り込む供給用ホース4と、加温加湿後の呼吸用ガスをチャンバ3から患者インターフェースに送り出すインターフェース接続ホース5と、チャンバ3内に水を供給する給水部6とを備える。
なお、加温加湿器100は、図1に示すように、キャスタ71により移動自在な架台7上に載置されており、架台7とともに全体を移動可能になっている。
【0015】
基台2は、図3及び図4に示すように、チャンバ3の下部を嵌め込むことによりチャンバ3を装着可能な凹部21が形成されており、その凹部21の中心部にほぼ円柱状のヒータ22が垂直に立設されている。そして、ヒータ22の表面は、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)からなるヒートシンク23で気密に覆われた構成とされている。
【0016】
チャンバ3は、水を溜める容器部8とその容器部8の上部に取り付けられる蓋部9とから構成されており、容器部8と蓋部9とで構成されるチャンバ3の内部空間に呼吸用ガスを通過させることにより、呼吸用ガスを加温加湿できるようになっている。
なお、チャンバ3の容器部8及び蓋部9は、例えばポリカーボネート樹脂(PC)やPMMA等のアクリル樹脂、ポリスルホン樹脂(PSU)等の透明な樹脂により形成されている。
【0017】
蓋部9は、図2及び図7に示すように、本体1に揺動可能に設けられるヒンジ機構部91に着脱可能に設けられるとともに、容器部8と係脱可能なロック部95を有する構成とされる。
蓋部9は、ヒンジ機構部91に装着された状態ではヒンジ機構部91の基端部により本体1に揺動可能に支持される。また、その揺動端部に設けられたロック部95と容器部8との係止を解除することで、容器部8の上部を自在に開閉できるようになっている。なお、蓋部9は、ヒンジ機構部91から脱離させた状態においても容器部8の上部に着脱することができる。ヒンジ機構部91及びロック部95の詳細は、後述する。
【0018】
また、蓋部9には、図1及び図2に示すように、チャンバ3の内部空間に呼吸用ガスを取り込む吸入口41と、チャンバ3内で加湿された呼吸用ガスを外部に導き出す吹出口51と、チャンバ3内に加湿用の水を供給する給水口61とが設けられている。そして、吸入口41は供給用ホース4に接続され、吹出口51はインターフェース接続ホース5に接続され、吸水口61は給水部6に接続されている。
【0019】
容器部8には、図3及び図4に示すように、底部の中心部に熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)からなる加熱板81が設けられている。この加熱板81は、ほぼ円筒スリーブ状の胴体部の上端を天板部に一体に閉塞した形状に形成されている。そして、加熱板81の外周面81aがチャンバ3の内部空間の一部を構成しており、内部空間がリング状の空間に形成されている。また、加熱板81の胴体部の内側には、容器部8を基台2に装着する際にヒートシンク23が挿入されるようになっている。
【0020】
また、ヒートシンク23と加熱板81とは、上方に向かうにしたがって漸次縮径するように若干のテーパ状に形成され、ヒートシンク23の外周面23aと加熱板81の内周面81bとがほぼ同じ傾斜角度に形成されている。そして、チャンバ3を上下方向に移動させることにより基台2への着脱が行えるようになっており、チャンバ3を基台2に装着した状態において加熱板81とヒートシンク23とが嵌合するように設けられている。したがって、チャンバ3を基台2に装着した状態では、加熱板81の内周面81bとヒートシンク23の外周面23aとが面接触し、ヒータ22の熱がヒートシンク23を介して加熱板81に円滑に伝えられるようになっている。
【0021】
また、ヒートシンク23と加熱板81との嵌合により、チャンバ3の中心が支持されることから、チャンバ3の基台2への安定した装着状態を維持することができる。さらに、ヒートシンク23によりチャンバ3の移動が案内されるので、チャンバ3の着脱を容易に行えるようになっている。
そして、この加熱板81の外周面81aに、シート状加湿部材11を有するタワーユニット10が着脱可能に取り付けられるようになっている(図5参照)。
【0022】
タワーユニット10は、図6に示すように、シート状加湿部材11をほぼ円筒状に支持する枠体12と、シート状加湿部材11の周囲に間隔をあけて設けられる円筒状の仕切り板13との二つの部品を組み合せて構成されている。そして、枠体12と仕切り板13とは、ポリプロピレン等の樹脂により形成されている。
枠体12は、タワーユニット10の長さ方向の両端に配置される円環部を4本の板状部で繋いだ形状とされており、板状部の間を塞ぐようにシート状加湿部材11が取り付けられることにより、シート状加湿部材11がほぼ円筒状に保持されている。この場合、加熱板81が若干のテーパ状に形成されていることから、この加熱板81の外周面81aにシート状加湿部材11を緊密接触できるように、枠体12の板状部及びシート状加湿部材11も加熱板81と同様に、上方に向かうにしたがって漸次縮径するように傾斜を設けた若干のテーパ状に形成されている。
【0023】
また、仕切り板13は、枠体12の外側を覆う円筒状に形成されており、枠体12と仕切り板13とは、タワーユニット10の両端部で接続されている。
そして、タワーユニット10を容器部8の加熱板81に取り付けた状態では、シート状加湿部材11が加熱板81の外周面81aに面接触するように配置されるとともに、仕切り板13によりチャンバ3の内部空間を内側と外側との二重のリング状空間に区画する。したがって、チャンバ3の内部空間は、図3及び図4に示すように、シート状加湿部材11が配置される内側の加湿空間31と、その加湿空間31に隣接する予熱空間32とに区画されることとなる。
【0024】
また、仕切り板13の下部には、予熱空間32と加湿空間31とを連通する連通部33が設けられており、この連通部33は、水面下に配置される下側連通部34と、この下側連通部34よりも上側に配置され水面wに近接して水面上に開口した上側連通部35とにより構成されている。そして、容器部8内の水は、下側連通部34により、予熱空間32と加湿空間31との間で流通可能とされ、予熱空間32と加湿空間31とに水が同じ水位で貯留される。
この場合、タワーユニット10の下端部が水に浸漬するとともに、加熱板81の下端部も水に浸漬して設けられるが、タワーユニット10及び加熱板81の大部分は水面上に露出して設けられる。このため、加熱板81によってチャンバ3内の水を加熱することができるとともに、チャンバ3内の空間を温めることができ、チャンバ3の内部空間の湿度を高めることができる。
【0025】
そして、蓋部9に設けられた吸入口41及び給水口61は、予熱空間32に接続されている。一方、吹出口51は加湿空間31に接続されており、吸入口41から取り込まれた呼吸用ガスは、連通部33を介して予熱空間32から加湿空間31へと移動し、吹出口51から取り出されるようになっている。
【0026】
シート状加湿部材11は、例えばレーヨンやポリエステル、綿などの天然素材により形成された不織布等の吸水性及び通気性に優れた材料が用いられる。このシート状加湿部材11は、前述したようにタワーユニット10を加熱板81に取り付けた状態において、下端部が容器部8内の水に浸漬した状態とされる。これにより、シート状加湿部材11が毛細管現象によって水を吸い上げてシート全域にわたって水が浸透し、水を含んだ湿潤状態が保たれる。
なお、シート状加湿部材11は、枠体12に接着することにより取り付けることができるが、予め枠体12の成形時に金型内にシート状加湿部材11を挿入しておくことで、枠体12と一体化して設けることもできる。
【0027】
チャンバ3内に水を供給する給水部6は、給水用バッグ62と、この給水用バッグ62とチャンバ3とを接続する給水ホース63と、給水用バッグ62内の水を送水する送水ポンプ64とを備える。
給水ホース63は、チャンバ3の蓋部9に設けられた給水口61に接続されており、チャンバ3内に貯留された水の水位に応じて、給水用バッグ62からチャンバ3内に水が供給されるようになっている。
【0028】
また、蓋部9とヒンジ機構部91との着脱は、図7に示すように、蓋部9の上面に設けられた一対の凸条部92との係脱により行われる。凸条部92は、図7及び図8に示すように、先端が鉤型に形成される。
ヒンジ機構部91には、蓋部9の凸条部92の基端部と係合可能な一対のガイド孔91aが設けられるとともに、凸条部92の先端鉤部92aと係合可能なフランジ部94を有する回転操作部93が設けられる。フランジ部94は、図7に示すように縦横比の異なる形状に形成されており、その短手方向は、間隔をあけて配置される一対のガイド孔91aの間の間隔αよりも小さく形成され、長手方向が間隔αよりも大きく形成されている。したがって、回転操作部93を、図7の二点鎖線の位置まで矢印で示すように90度回転することにより、フランジ部94をガイド孔91aから退避させることができ、さらに回転操作部90を反対向きに90度回転することにより、フランジ部94をガイド孔91a内に配置することができるようになっている。
【0029】
そして、蓋部9とヒンジ機構部91とを装着する際には、図8(a)に示すように、フランジ部94をガイド孔91aから退避させた状態とし、ガイド孔91a内に蓋部9の凸条部92を挿入する。この状態で、回転操作部93を90度回転することにより、図8(b)に示すようにフランジ部94をガイド孔91a内に進入させ、凸条部92の先端鉤部92aとフランジ部94とを係止することができ、蓋部9をヒンジ機構部91に装着することができる。
蓋部9は、ヒンジ機構部91に装着された状態ではヒンジ機構部91の基端部により本体1に揺動可能に支持されることから、容器部8の上部を自在に開閉することができる。
【0030】
また、ロック部95の開閉は、容器部8の外周部にその径方向外方に突出して設けられた爪部85との係脱により行われる。
ロック部95は、図10(a)及び図11に示すように、先端が鉤型に形成されたロック片96と、ロック片96を爪部85との係止方向に付勢するコイルばね97と、ロック片96を爪部85との係止方向と反対側に退避させる操作レバー98とを備える。
ロック片96は、操作レバー98が操作されない状態では、図9及び図10(a)に示すように、コイルばね97により付勢された状態で保持される。
【0031】
蓋部9を揺動させて、図2に示すように蓋部9を開いた状態から、図3及び図10(a)に示すように閉じた状態に移動させると、まずロック片96の先端鉤部96aのテーパ面96sが、容器部8の爪部85の先端部と当接する。そして、蓋部9がさらに押し下げられることにより、テーパ面96sに沿ってロック片96がコイルばね97を圧縮する方向に押し込まれる。これにより、先端鉤部96aが爪部85の先端を乗り越え、ロック片96の先端鉤部96aと爪部85とが係合する。この状態では、図10(a)に示すように、ロック片96は、コイルばね97により爪部85との係止方向に付勢され、容器部8の爪部85に係合した状態が保持されることにより、容器部8の上部を蓋部9で閉じた状態が維持される。
また、容器部8の上部が蓋部9により閉じられた状態から蓋部9を開くには、図10(b)に示すように、操作レバー98を引き上げる。これにより、ロック片96が爪部85との係止方向と反対側に退避させられ、爪部85と先端鉤部96aとの係合が解除されることから、蓋部9を上方に移動できるようになる。
【0032】
また、蓋部9には、図11に示すように、ロック部95とは反対側の外周部に、容器部8に蓋部9が装着された状態において容器部8の内部に挿し込まれる挿入片99が立設されている。そして、蓋部9と容器部8との装着状態におけるロック部95のロック位置(ロック片96の先端鉤部96aと爪部85との係止位置)から挿入片99の下端までの距離L1(図11に一点鎖線で示す。)は、ロック位置から挿入片99が挿し込まれる位置の容器部8の内周面までの水平距離L2(図11に破線で示す。)よりも大きく設定されるとともに、挿入片99の下端がロック位置よりも下側に配置される。これにより、蓋部9を容器部8に装着し、ロック部95を容器部8に係止した状態では、ロック部95のロック位置を支点として蓋部9が回転しようとしても、挿入片99が容器部8の内周面に接触して蓋部9の移動が妨げられる。したがって、ロック部95と容器部8との係止を解除しない限り、容器部8の上部を蓋部9で閉じた状態を維持することができる。
一方、蓋部9と容器部8とは、ロック部95の係止を解除した状態では、蓋部9を容器部8の上方に移動することで簡単に取り外すことができ、蓋部9と容器部8とを容易に分離することができる。
また、図示は省略するが、加温加湿器100には、チャンバ3内に呼吸用ガスを送り込むためのガス供給機(例えば、CPAP装置)が接続される。
【0033】
次に、加温加湿器100の動作について説明する。
まず、チャンバ3を基台2に載置し、蓋部9とヒンジ機構部91とを装着することにより、チャンバ3を本体1に固定する。また、蓋部9に供給用ホース4等の接続を行う。
そして、チャンバ3内に呼吸用ガスを供給する前に、給水用バッグ62からチャンバ3内に給水を行う。これにより、シート状加湿部材11の下端部が水面下に浸漬され、シート状加湿部材11が水を吸い上げて湿潤状態となる。そして、この状態でガス供給機を駆動することにより、呼吸用ガスを吸入口41からチャンバ3内に供給する。
【0034】
呼吸用ガスは、まず予熱空間32に導入され、この予熱空間32に取り込まれた呼吸用ガスは、仕切り板13の上側連通部35に向かって下向きに流れる。この予熱空間32を通過する際に、呼吸用ガスは予備的に加温されるとともに、チャンバ3内の水面w等から予熱空間32内に蒸発している水蒸気により予備的に加湿される。そして、仕切り板13の上側連通部35を通過して加湿空間31へと移動する際に、呼吸用ガスは水面wに近接する上側連通部35を通ることで、水面wに接触して加湿が促進される。
加湿空間31に取り込まれた呼吸用ガスは、流れの向きを上向きに変えて上部の吹出口51に向かって流れる。この際、呼吸用ガスは、加熱板81によって温められた湿潤状態のシート状加湿部材11の表面をなぞるようにその表面に沿って流れることにより、シート状加湿部材11に含まれる水分を気化させ、その水蒸気が取り込まれることで加湿される。そして、加湿された呼吸用ガスは、吹出口51から外部へと取り出される。
【0035】
なお、シート状加湿部材11は、呼吸用ガスを加湿することで水分が奪われる形となるが、シート状加湿部材11の下端部を水面下に浸漬させているので、呼吸用ガスを加湿すると同時に水を吸い上げて湿潤状態が保たれる。このため、呼吸用ガスを連続して加湿することができる。
また、チャンバ3内の水が消費されることに伴い水位が低下するが、加温加湿器100においては、チャンバ3内の水位に応じて給水部6から水が自動供給されるようになっている。
【0036】
このように、本実施形態の加温加湿器100によれば、チャンバ3内の水全体を加熱するのではなく、その水に一部を浸漬させて湿潤状態となっているシート状加湿部材11を加熱するので、少ないエネルギーで確実に水を蒸発させることができる。このため、水蒸気が生じるまでの時間を短縮することができ、チャンバ3内を通過する呼吸用ガスを円滑に加湿することが可能となる。
しかも、シート状加湿部材11は、吸水性に優れるので、加湿空間31に配置される表面から水を蒸発させながら、水に浸漬状態の下端部から速やかに水を上部に吸い上げることができ、水を連続的に蒸発させることができる。
【0037】
また、チャンバ3内の清浄化のために、チャンバ3を洗浄することが定期的に行われるが、加温加湿器100においては、チャンバ3を洗浄する際に、チャンバ3(容器部8及び蓋部9)を基台2から取り外すことができ、発熱源であるヒータ22は基台2側に取り付けられていることから、チャンバ3内の構造が簡略化され、洗浄作業を容易に行えるようになっている。
【0038】
さらに、基台2とチャンバ3(容器部8)とは、ヒートシンク23と加熱板81との嵌合により、チャンバ3の中心が支持されることにより、安定した装着状態を維持することができる。また、チャンバ3の着脱は上下方向への移動により行われ、ヒートシンク23で案内されることで容易に行うことができ、チャンバ洗浄時の取扱性を向上させることができる。
そして、加熱板81とヒートシンク23とは、上方に向かうにしたがって漸次縮径するテーパ状に形成されていることから、ヒートシンク23の先端径よりも加熱板81の開口径が大きくなり、基台2とチャンバ3との着脱を容易に行うことができる。
【0039】
また、蓋部9を容器部8の上部に載置し、ロック部95を容器部8に係止することで、容易に蓋部9と容器部8とを固定することができる。そして、基台2にチャンバ3を装着した状態では、ヒンジ機構部91によりチャンバ3の蓋部9を開閉することができ、ロック部95により蓋部9を閉止状態に固定することができる。
また、ヒンジ機構部91から蓋部9を離脱することにより、チャンバ3を基台から取り外すことができ、このとき、ロック部95のロック位置を支点として蓋部9が回転しようとしても、挿入片99が容器部8の内周面に接触して移動が妨げられることから、ロック部95の係止を解除しない限り、容器部8の上部を蓋部9で閉じた状態を良好に維持することができる。このため、チャンバ3を移動させる際などに不用意に蓋部9が開くことが防止され、蓋部9が落下したり、チャンバ3内の水がこぼれたりすることが回避できる。
また、ロック部95の係止を解除した状態では、蓋部9を容器部8の上方に移動することで簡単に取り外すことができ、蓋部9と容器部8とを容易に分離することができる。
【0040】
このように、本発明によれば、チャンバ3を基台2上に安定させた状態で載置できるとともに、容易に脱離させることができ、チャンバ3の取り扱い性を向上させることができる。また、チャンバ3を構成する容器部8と蓋部9とを簡単に分離することができ、容易に洗浄を行うことが可能である。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 本体
2 基台
3 チャンバ
4 供給用ホース
5 インターフェース接続ホース
6 給水部
7 架台
8 容器部
9 蓋部
10 タワーユニット
11 シート状加湿部材
12 枠体
13 仕切り板
14a,14b 円環部
15 板状部
20 センサ
21 凹部
22 ヒータ
23 ヒートシンク
31 加湿空間
32 予熱空間
33 連通部
34 下側連通部
35 上側連通部
41 吸入口
51 吹出口
61 給水口
62 給水用バッグ
63 給水ホース
64 送水ポンプ
71 キャスタ
81 加熱板
85 爪部
91 ヒンジ機構部
92 凸条部
93 回転操作部
94 フランジ部
95 ロック部
96 ロック片
97 コイルばね
98 操作レバー
99 挿入片
100 呼吸用ガスの加温加湿器
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