特許第6189077号(P6189077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189077
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ハウジングおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/12 20060101AFI20170821BHJP
   F04B 39/14 20060101ALI20170821BHJP
   B23B 31/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F04B39/12 G
   F04B39/14
   B23B31/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-90452(P2013-90452)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2014-214633(P2014-214633A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】313000645
【氏名又は名称】三菱重工オートモーティブサーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】萩田 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】河嵜 雅樹
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−179462(JP,U)
【文献】 特許第2686742(JP,B2)
【文献】 特許第3569044(JP,B2)
【文献】 特許第3976466(JP,B2)
【文献】 特開2006−322385(JP,A)
【文献】 米国特許第06289776(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/12 − 39/14
F04C 29/00
F04D 29/40
B23B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状であって、その内周面の少なくとも1箇所に軸受部材を設置する軸受部材設置部が設けられているとともに、前記円筒形状の中心軸線を挟んで対向する位置における外周面側の少なくとも2箇所に取付け脚が設けられているハウジングであって、
前記軸受部材設置部が設けられている部位に対応する前記外周面側の周方向の少なくとも3箇所に、加工時に加工機械側のチャック機構がチャッキングされる被チャック部が設定されていることを特徴とするハウジング。
【請求項2】
前記被チャック部は、前記ハウジングの外周面に一体に形成された円筒面上のフラットな面からなる被チャック用座面により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハウジング。
【請求項3】
前記被チャック部は、前記ハウジングの外周面の周方向に等間隔で設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のハウジング。
【請求項4】
箇所の前記取付け脚は、前記中心軸線方向と直交する軸線上に対で設けられ、前記ハウジング外周面の周方向の少なくとも3箇所に設けられる前記被チャック部の1つが、前記中心軸線方向から側面視した場合に、2箇所の前記取付け脚を通る軸線上に重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のハウジング。
【請求項5】
前記ハウジングは、電動圧縮機の外殻を構成する電動圧縮機用のハウジングとされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のハウジング。
【請求項6】
箇所に設けられる一対の前記取付け脚の前記ハウジングの周方向における両側部位に、それぞれ他のハウジングとの締結用フランジ部が一体に成形されていることを特徴とする請求項5に記載のハウジング。
【請求項7】
箇所の前記取付け脚の中の1つの取付け脚に接して、冷媒ガスの吸入ポートが一体に成形されていることを特徴とする請求項5または6に記載のハウジング。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかのハウジングを機械加工する際、前記被チャック部を加工機械側のチャック機構でチャッキングし、前記ハウジングを回転させながら、所要部位を機械加工することにより、ハウジングを製造することを特徴するハウジング製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機等に用いられる円筒状のハウジングおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、圧縮機構とそれを駆動するモータとを内蔵する円筒状のハウジングを備えている。円筒状のハウジングを備えた機器は、様々提供されており、例えば、特許文献1には、負荷側にフランジの付いたベアリングブラケットを備えたフランジ形モータが開示されている。また、特許文献2には、ポンプハウジングを備えたベーンポンプが開示されている。さらに、特許文献3には、中空のスクリューロータを備えたスクリュー式コンプレッサ(流体機械)が開示されている。
【0003】
これらの先行技術文献にあって、特許文献1には、ベアリングブラケットのフランジ面を加工するため、ベアリングブラケットの外周面の周方向の3箇所に設けられている取付け座の中間位置に軸方向に帯状に突出した台形状のチャッキング座を等間隔で設け、それを加工機械側のチャックで掴んで加工するようにしたものが開示されている。また、特許文献2には、ポンプハウジングの外周4箇所に設けた取付けボス部の中間位置の2箇所に平行な両側面および端面を有するチャッキング面を設け、その両側面をチャッキングして機械加工するようにしたものが開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、雄型スクリューロータの互いに120度の角度で等間隔に配置されている3本の歯筋部(歯型および中空部)の開口の内周側に、機械加工時にロータをチャックするための直線部を形成し、この直線部を3個のチャック工具でチャックして切削加工するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−179462号公報
【特許文献2】特許第2686742号公報
【特許文献3】特許第3569044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1−3には、被加工物であるハウジング等の外周部のチャッキングし易い部位にチャッキング座やチャッキング面を設け、それら被チャック部を加工機械側のチャック機構で掴んで加工するようにしたものが開示されているに過ぎない。
単に被加工物側の被チャック部を加工機械のチャック機構によりチャッキングして加工すると、チャッキングによる変形や歪み、あるいは外周面に取付け脚等が設けられているハウジングが加工時に回転される際の遠心力による変形が発生することは避け難く、その変形や歪みを最小化するためには、被チャック部を選択的に設定することが重要な意義を持つことになる。
【0007】
つまり、加工精度を高めるには、加工時のチャッキングによる変形や歪み、遠心力による変形等を極小化することが重要であり、加工精度の高低は被チャック部の設定如何にかかっていると云っても過言ではなく、ハウジングの品質を向上し、そのハウジングを用いた製品の一層の高精度化、高性能化を図って行くには、欠かすことができないファクターとなりつつあり、対応策が求められている状況下にある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、円筒ハウジングを機械加工する時のチャッキングによる変形や歪みあるいは遠心力による変形を最小限化することにより、加工精度を高めて高品質化したハウジングおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明のハウジングおよびその製造方法は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるハウジングは、円筒状であって、その内周面の少なくとも1箇所に軸受部材を設置する軸受部材設置部が設けられているとともに、前記円筒形状の中心軸線を挟んで対向する位置における外周面側の少なくとも2箇所に取付け脚が設けられているハウジングであって、前記軸受部材設置部が設けられている部位に対応する前記外周面側の周方向の少なくとも3箇所に、加工時に加工機械側のチャック機構がチャッキングされる被チャック部が設定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、軸受部材設置部が設けられている円筒ハウジングの軸受部材設置部が設けられている部位に対応する外周面側の周方向の少なくとも3箇所に、加工時に加工機械側のチャック機構がチャッキングされる被チャック部が設定されているため、ハウジングを機械加工する際、内周側に軸受部材設置部が設けられている比較的剛性の高い部位に対応する外周面側に設けられている少なくとも3箇所の被チャック部を、例えば旋盤等の加工機械のチャック機構の爪でチャッキングして加工することができる。従って、チャッキングによるハウジングの変形や歪みを最小限化し、加工精度を高めて高品質のハウジングを製造することができる。
【0011】
さらに、本発明のハウジングは、上記のハウジングにおいて、前記被チャック部は、前記被チャック部は、前記ハウジングの外周面に一体に形成された円筒面上のフラットな面からなる被チャック用座面により構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、被チャック部が、ハウジングの外周面に一体に形成された円筒面上のフラットな面からなる被チャック用座面により構成されているため、外周面と一体をなす円筒面上のフラットな面で構成される被チャック用座面を加工機械側のチャック機構でチャッキングすることによって、ハウジングを位置ずれやガタが生じないようにチャッキングし、機械加工することができる。従って、チャッキングによるハウジングの変形や歪みあるいは誤差等を最小限に抑えて加工し、加工精度の高いハウジングを製造することができる。
【0013】
さらに、本発明のハウジングは、上述のいずれかのハウジングにおいて、前記被チャック部は、前記ハウジングの外周面の周方向に等間隔で設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、被チャック部が、ハウジング外周面の周方向に等間隔で設けられているため、円筒ハウジングの周方向の少なくとも3箇所に等間隔で設けられている被チャック部を、加工機械側のチャック機構により3箇所でバランスをとってずれやガタが生じないようにチャッキングしてハウジングを固定し、加工することができる。従って、ハウジングのチャッキングによる変形や歪みを均一化、最小化することにより、加工精度を向上することができる。
【0015】
さらに、本発明のハウジングは、上述のいずれかのハウジングにおいて、2箇所の前記取付け脚は、前記中心軸線方向と直交する軸線上に対で設けられ、前記ハウジング外周面の周方向の少なくとも3箇所に設けられる前記被チャック部の1つが、前記中心軸線方向から側面視した場合に、2箇所の前記取付け脚を通る軸線上に重なる位置に設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、2箇所の取付け脚が、円筒ハウジングの中心軸線方向と直交する軸線上に対で設けられ、ハウジング外周面の周方向の少なくとも3箇所に設けられる被チャック部の1つが、前記中心軸線方向から側面視した場合に、2箇所の前記取付け脚を通る軸線上に重なる位置に設けられているため、2箇所に取付け脚が設けられているハウジングが回転される際の遠心力による変形を、加工機械側のチャック機構で3箇所からチャッキングする際の変形に合わせてキャンセルすることにより、ハウジング加工時の変形を最小限化することができる。従って、ハウジングの加工精度を向上し、変形や歪みの少ない高品質のハウジングを製造することができる。
【0017】
さらに、本発明のハウジングは、上述のいずれかのハウジングにおいて、前記ハウジングは、電動圧縮機の外殻を構成する電動圧縮機用のハウジングとされていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ハウジングが、電動圧縮機の外殻を構成する電動圧縮機用のハウジングとされているため、電動圧縮機の外殻を構成する電動圧縮機用ハウジングを加工時の変形や歪みを最小限化した加工精度の高いハウジングとすることができる。従って、加工精度の高いハウジングに電動圧縮機構を組み込むことにより、組み立て誤差のない高精度で高性能の電動圧縮機を製造することができる。
【0019】
さらに、本発明のハウジングは、上記のハウジングにおいて、2箇所に設けられる一対の前記取付け脚の前記ハウジングの周方向における両側部位に、それぞれ他のハウジングとの締結用フランジ部が一体に成形されていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、2箇所に設けられる一対の取付け脚の前記ハウジングの周方向における両側部位に、それぞれ他のハウジングとの締結用フランジ部が一体に成形されているため、他のハウジングとの締結用フランジ部および取付け脚が同一方向に設けられ、それらによりハウジングが回転される際の遠心力による変形を、加工機械側のチャック機構により3箇所からチャッキングする際の変形に合わせてキャンセルすることによって、ハウジング加工時の変形を最小化することができる。これによって、ハウジングの加工精度を高め、変形や歪みの少ない高品質のハウジングを製造することができる。
【0021】
さらに、本発明のハウジングは、上述のいずれかのハウジングにおいて、2箇所の前記取付け脚の中の1つの取付け脚に接して、冷媒ガスの吸入ポートが一体に成形されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、2箇所の取付け脚の中の1つの取付け脚に接して、冷媒ガスの吸入ポートが一体に成形されているため、冷媒吸入ポートおよび取付け脚が同一方向に設けられ、それらによりハウジングが回転される際の遠心力による変形を、加工機械側のチャック機構により3箇所からチャッキングする際の変形に合わせてキャンセルすることによって、ハウジング加工時の変形を最小化することができ、これによっても、ハウジングの加工精度を高め、変形や歪みの少ない高品質のハウジングを製造することができる。
【0023】
さらに、本発明にかかるハウジングの製造方法は、上述のいずれかのハウジングを機械加工する際、前記被チャック部を加工機械側のチャック機構でチャッキングし、前記ハウジングを回転させながら、所要部位を機械加工することにより、ハウジングを製造することを特徴する。
【0024】
本発明によれば、上述のいずれかのハウジングを機械加工する際、被チャック部を加工機械側のチャック機構でチャッキングし、ハウジングを回転させながら、所要部位を機械加工することにより、ハウジングを製造するようにしているため、ハウジングを加工する時に、内周側に軸受部材設置部が設けられている比較的剛性の高い部位に対応する外周面側に設けられている少なくとも3箇所の被チャック部を、例えば旋盤等の加工機械のチャック機構でチャッキングし、ハウジングを回転させながら所要の部位を加工することができる。従って、チャッキングによるハウジングの変形や歪みを最小限化し、加工精度を高めて高品質のハウジングを製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、ハウジングを機械加工する際、内周側に軸受部材設置部が設けられている比較的剛性の高い部位に対応する外周面側に設けられている少なくとも3箇所の被チャック部を、例えば旋盤等の加工機械のチャック機構の爪でチャッキングして加工することができるため、チャッキングによるハウジングの変形や歪みを最小限化し、加工精度を高めて高品質のハウジングを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る電動圧縮機用ハウジングの正面図である。
図2図1に示すハウジングの平面図である。
図3図1に示すハウジングの底面図である。
図4図1に示すハウジングの左側面図である。
図5図1に示すハウジングの縦断面相当図である。
図6図1に示すハウジングの外周面に設けた取付け脚と被チャック部との位置関係を表した模式図(A),(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図6を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る電動圧縮機用ハウジングの正面図が示され、図2には、その平面図図3には、底面図図4には、左側面図図5には、縦断面相当図、図6には、取付け脚と被チャック部との位置関係を表した模式図(A),(B)が示されている。
本実施形態の電動圧縮機用ハウジング(ハウジング)1は、電動圧縮機の外殻を構成するものであり、モータを収容する径の大きいモータハウジング部2と、径が少し小さくされている圧縮機構を収容する圧縮機ハウジング部3とが一体にダイカスト成形されたアルミ合金製の円筒ハウジングとされている。
【0028】
ハウジング1には、図5に示されるように、その内周面側に駆動軸を回転自在に支持するとともに、圧縮機構を組み込むための軸受部材を設置する軸受部材設置部4が一体成形されている。そして、この軸受部材設置部4を境界にして、図示の左側がモータハウジング部2、右側が圧縮機ハウジング部3とされ、それぞれに図示省略のモータおよび圧縮機構が収容設置されるようになっている。また、ハウジング1のモータハウジング部2側の外周面には、ハウジング1の軸線方向と直交する上下方向軸線上に一対の取付け脚5,6が上下2箇所に設けられている。
【0029】
さらに、モータハウジング部2の外周面には、上下一対の取付け脚5,6のハウジング1の周方向における両側部位においてハウジング端面に位置するように、他のハウジングである図示省略のインバータ収容ハウジングとの締結用フランジ部7が、上下各2箇所の計4箇所に一体に成形されるとともに、上部側の取付け脚5に接するように、冷媒ガスの吸入ポート8が、一体に成形されている。一方、圧縮機ハウジング部3側の外周面には、ハウジング端面に位置するように、他のハウジングである図示省略の吐出ハウジングとの締結用フランジ部9が等間隔で複数箇所に設けられている。
【0030】
また、ハウジング1の外周面には、その内周面を例えば旋盤等の加工機械で切削加工する際、旋盤側のチャック機構によりハウジング1をチャッキングするための被チャック部10が、周方向に対して等間隔で少なくとも3箇所に設定されている。この少なくとも3箇所に設けられる被チャック部10は、内周面側に軸受部材設置部4が設けられることにより、比較的剛性が高くなっている軸受部材設置部4の設置部位に対応する外周面側に設けられていることになる。
【0031】
この場合、被チャック部10は、ハウジング1の外周面に一体に形成される円筒面上のフラットな面からなる座面(被チャック用座面)11により構成されている。更に、この周方向3箇所に設けられる被チャック部10(被チャック用座面11)は、図6(A),(B)に示されるように、各々が内周面に軸受部材設置部4が設けられている部位に対応する外周面側に等間隔で設けられるが、本実施形態の如く、上下方向軸線上の上下2箇所に一対の取付け脚5,6が設けられている場合、図6(A)に示されるように、ハウジング1を側面視した場合、被チャック部10の1つを取付け脚5,6を通る上下方向軸線上に重なる位置に設けることが望ましい。
【0032】
これは、ハウジング1が、加工時にその軸線周りに回転される際に、取付け脚5,6が設けられていることにより発生する遠心方向への変形を極力抑制できるように、この遠心方向への変形をチャック機構でのチャッキングによる変形と相殺してキャンセルすることによって、加工時の変形を最小限化して加工精度を向上させるためである。
【0033】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記ハウジング1の内周面を、例えば旋盤等の加工機械により切削加工する場合、ハウジング1の外周面に設けられている周方向3箇所の被チャック部10(被チャック用座面11)を旋盤側のチャック機構でチャッキングし、ハウジング1をワークとして回転させることにより、内周面を加工することができる。この際、ハウジング1を軸受部材設置部4が設けられている比較的剛性の高い部位でチャッキングできることから、チャッキングによる変形や歪みを極力小さくすることができる。
【0034】
また、ハウジング1が回転されることによる遠心力で取付け脚5,6等が設けられている上下部位の遠心方向への変形量が大きくなるが、ハウジング1を側面視した場合、周方向3箇所に設けられる被チャック部10の1つを取付け脚5,6を通る上下方向軸線上に重なる位置に設けていることから、遠心力による変形を、加工機械側のチャック機構で3箇所からチャッキングする際の変形に合わせてキャンセルすることができるため、ハウジング1の加工時における変形を最小限に抑制することができる。
【0035】
斯くして、本実施形態においては、軸受部材設置部4が設けられている円筒ハウジング1の軸受部材設置部4が設けられている部位に対応する外周面側の周方向の少なくとも3箇所に、加工機械側のチャック機構でチャッキングされる被チャック部10(被チャック用座面11)を設けているため、ハウジング1を機械加工する際、内周面に軸受部材設置部4が設けられている比較的剛性の高い部位に対応する外周面側に設けられている少なくとも3箇所の被チャック部10を、旋盤等の加工機械のチャック機構でチャッキングして加工することができる。従って、チャッキングによるハウジング1の変形や歪みを最小限化し、加工精度を高めて高品質のハウジング1を製造することができる。
【0036】
また、被チャック部10を、ハウジング1の外周部に設けられる円筒面上のフラットな面からなる被チャック用の座面11により構成しているため、外周面と一体をなす円筒面上のフラットな面で構成される被チャック用座面11を加工機械側のチャック機構でチャッキングすることによって、ハウジング1を位置ずれやガタが生じないようにチャッキングし、機械加工することができる。従って、チャッキングによるハウジング1の変形や歪みあるいは誤差等を最小限に抑えて加工し、加工精度の高いハウジング1を製造することができる。
【0037】
さらに、被チャック部10を、ハウジング1の外周面の周方向に等間隔で設けた構成としている。このため、円筒ハウジング1の周方向の少なくとも3箇所に等間隔で設けられている被チャック部10を、加工機械側のチャック機構により3箇所でバランスをとってずれやガタが生じないようにチャッキングしてハウジング1を固定し、加工することができる。従って、ハウジング1のチャッキングによる変形や歪みを均一化、最小化することにより、加工精度を向上することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、上下2箇所の取付け脚5,6を、円筒ハウジング1の軸線方向と直交する上下方向軸線上に対で設け、ハウジング1を側面視した場合、ハウジング1の外周面の周方向の少なくとも3箇所に等間隔で設けられる被チャック部10の1つを、取付け脚5,6を通る上下方向軸線上に重なる位置に設けた構成としている。このため、上下2箇所に取付け脚5,6が設けられているハウジング1が回転される際の遠心力による変形を、加工機械側のチャック機構で3箇所からチャッキングする際の変形に合わせてキャンセルし、これによって、ハウジング加工時の変形を最小限化することができる。従って、ハウジング1の加工精度を向上し、変形や歪みの少ない高品質のハウジング1を製造することができる。
【0039】
また、本実施形態では、ハウジング1が、電動圧縮機の外殻を構成する電動圧縮機用のハウジング1とされている。これにより、電動圧縮機の外殻を構成する電動圧縮機用ハウジング1を加工時の変形や歪みを最小限化した加工精度の高いハウジング1とすることができる。このため、加工精度の高いハウジング1に電動圧縮機構を組み込むことで、組み立て誤差のない高精度で高性能の電動圧縮機を製造することができる。
【0040】
また、上下2箇所に設けられる一対の取付け脚5,6の両側部位に、各々他のハウジングとの締結用フランジ部7が一体に成形され、更に、上部側取付け脚5に接して冷媒ガスの吸入ポート8が一体に成形された構成とされている。このため、他のハウジングとの締結用フランジ部7や吸入ポート8および取付け脚5,6が同一方向に設けられ、それらによりハウジング1が回転される際の遠心力による変形を、加工機械側のチャック機構により3箇所からチャッキングする際の変形に合わせてキャンセルすることにより、ハウジング加工時の変形を最小化することができ、これによって、ハウジング1の加工精度を高め、変形や歪みの少ない高品質のハウジング1を製造することができる。
【0041】
さらに、ハウジング1を機械加工する際、被チャック部10(被チャック用座面11)を加工機械側のチャック機構でチャッキングし、ハウジング1を回転させながら、所要部位を機械加工することにより、ハウジング1を製造するようにしているため、ハウジング1の加工時、内周側に軸受部材設置部4が設けられている比較的剛性の高い部位に対応する外周面側に設けられている少なくとも3箇所の被チャック部10を、旋盤等の加工機械のチャック機構でチャッキングし、ハウジング1を回転させながら所要部位を加工することができる。従って、本実施形態のハウジング製造方法によっても、チャッキングによるハウジング1の変形や歪みを最小限化し、加工精度を高めて高品質のハウジング1を製造することができる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、被チャック部10として、ハウジング1の外周面に専用の円筒面上のフラットな面からなる被チャック用座面11を設けた例について説明したが、この被チャック用座面11は必ずしも必要なものではなく、当該被チャック部10が円筒面上のフラットな面であれば、ハウジング1の外周面を直に被チャック部10としてもよく、本発明は、かかる形態をも包含するものである。
【0043】
また、上記実施形態では、ハウジング1の両端部に他のハウジングであるインバータ収容ハウジングおよび吐出ハウジングを締結する3分割タイプのハウジングの例について説明したが、これに限らず、2分割タイプのハウジングやその他形態のハウジングにも同様に適用できることは云うまでもない。
【0044】
さらに、上記実施形態では、ハウジング1を外周上に周方向3箇所でチャッキングする場合の例について説明したが、必ずしも3箇所に限定されるものではなく、3箇所以上であればよく、3箇所のチャックに各々2個の爪を設け、6箇所でチャッキングする等様々な変形例が考えられる。
【符号の説明】
【0045】
1 電動圧縮機用ハウジング(ハウジング)
2 モータハウジング部
3 圧縮機ハウジング部
4 軸受部材設置部
5,6 取付け脚
7 締結用フランジ部
8 吸入ポート
10 被チャック部
11 被チャック用座面

図1
図2
図3
図4
図5
図6