特許第6189081号(P6189081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189081電子内視鏡用プロセッサ、電子内視鏡システムおよび画像処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189081
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】電子内視鏡用プロセッサ、電子内視鏡システムおよび画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20170821BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20170821BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20170821BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A61B1/00 680
   A61B1/045 611
   H04N7/18 M
   G02B23/24 B
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-93110(P2013-93110)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-213001(P2014-213001A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】小松 雅弘
【審査官】 荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−201540(JP,A)
【文献】 特開平06−045922(JP,A)
【文献】 特開2009−195602(JP,A)
【文献】 特開2008−080007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00− 1/32
G02B 23/24−23/26
H04N 5/14− 5/217
H04N 7/18
H04L 7/00− 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子内視鏡からLVDS信号を受信するインタフェースを備える電子内視鏡用プロセッサであって、
前記インタフェースは、
前記LVDS信号と位相比較を行って、該LVDS信号にロックするPLLと、
前記PLLを制御するPLL制御部と、
前記LVDS信号をパラレル信号に変換するパラレル変換部と、を有し、
前記PLLは、前記LVDS信号のクロックに基づいてウインドウ信号を生成し、
前記PLL制御部は、前記LVDS信号クロックに、該クロックの1周期あたり複数ビットの撮像データが多重化されている場合、前記ウインドウ信号を用いて、該複数ビットのうち所定の1ビットとの位相比較を行うよう前記PLLを制御することを特徴とする、電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項2】
前記PLL制御部は、前記LVDS信号がクロックに撮像データが多重化されたものである場合、前記ウインドウ信号のウインドウ位置における前記LVDS信号の立ち上がりのみに基づいて位相比較を行うよう前記PLLを制御し、
前記ウインドウ位置は、前記ウインドウ信号がHighの領域である、請求項1に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項3】
前記ウインドウ信号は、前記LVDS信号における前記クロックと異なるデューティー比を有する、請求項1または2に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項4】
前記PLL制御部は、前記PLLのロックが外れた場合、前記ウインドウ信号の前記ウインドウ位置を調整する、請求項2に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項5】
前記PLL制御部は、前記PLLのロックが外れた回数に応じて、前記ウインドウ信号の前記ウインドウ位置を調整する、請求項4に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項6】
前記PLL制御部は、前記PLLのロックが外れた場合、前記PLLのダイナミック位相シフトを用いて、前記ウインドウ信号の前記ウインドウ位置をシフトさせることを特徴とする、請求項2に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項7】
前記PLL制御部は、前記LVDS信号が前記クロックのみからなる場合、該クロックとの位相比較を行うよう前記PLLを制御する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項8】
前記インタフェースは、FPGAで構成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項9】
前記LVDS信号を生成して送信するインタフェースを備える電子内視鏡と、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電子内視鏡用プロセッサと、からなる電子内視鏡システム。
【請求項10】
LVDS信号を受信するインタフェースを備える画像処理装置であって、
前記インタフェースは、
前記LVDS信号と位相比較を行って、該LVDS信号にロックするPLLと、
前記PLLを制御するPLL制御部と、
前記LVDS信号をパラレル信号に変換するパラレル変換部と、を有し、
前記PLLは、前記LVDS信号のクロックに基づいてウインドウ信号を生成し、
前記PLL制御部は、前記LVDS信号クロックに、該クロックの1周期あたり複数ビットの撮像データが多重化されている場合、前記ウインドウ信号を用いて、該複数ビットのうち所定の1ビットとの位相比較を行うよう前記PLLを制御することを特徴とする、画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡で撮像された画像を処理するための電子内視鏡用プロセッサ、該電子内視鏡用プロセッサおよび電子内視鏡からなる電子内視鏡システム、ならびに画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の体腔内に細径で長尺の挿入部を挿入することにより、対象部位の観察および撮像を行うことができる電子内視鏡システムが広く用いられている。電子スコープの挿入部先端には撮像素子(CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなど)および照明光を体腔内に照射するためのライトガイドが設けられている。対象部位によって反射された光は、撮像素子によって光電変換されて画像信号として出力され、電子スコープと接続されるビデオプロセッサによって映像信号処理が施され、モニタに表示される。
【0003】
また、電子スコープおよびプロセッサ間のインタフェースとして、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)伝送を用いることが知られている。LVDS伝送を用いた電子内視鏡システムの一例が特許文献1に記載される。LVDS伝送では、電子スコープとプロセッサの間を2本の配線からなる差動伝送路で結び、電子スコープはこの伝送路を使って、振幅が比較的小さいLVDS信号(クロックおよびデータ)をプロセッサに送る。プロセッサ側では、PLL(Phase Locked Loop)を用いて、電子スコープから受信したLVDS信号に同期する内部クロックを使用して、LVDS信号に対してパラレル変換などの処理を行い、画像信号を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−11144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される電子内視鏡システムでは、クロックとデータとが別々の差動伝送路でプロセッサに送られる構成となっている。ここで、ケーブル数の削減および内視鏡の細径化のために、クロックにデータを多重化して一つの差動伝送路で送ることが望ましい。このようにクロックにデータが多重化される場合、プロセッサ側のPLLでは、多重化された信号に含まれるクロックのみを抽出して、適切な位相比較を行うことが求められる。また、一般的に、LVDS伝送を用いてインタフェースを実現する場合には、専用のIC(Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いる構成となっている。しかしながら、専用ICを用いる場合には、専用ICが製造中止となった場合に設計変更を行う必要がある。また、LVDS信号は、電子スコープのケーブル長、高周波処置具の影響、温度、湿度、FPGA基板上の部品の誤差、および電子スコープ側のICの性能などに起因して、ジッタが生じる場合がある。また、FPGAを用いた場合には、引き込みの周波数帯域の制限されるため、LVDS信号に含まれるジッタ量によっては、PLLのロックが外れてしまうことがあった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、クロックにデータが多重化されたLVDS信号と適切に位相比較を行うとともに、LVDS信号におけるジッタの影響を吸収するようPLLを制御することが可能な電子内視鏡用プロセッサおよび電子内視鏡システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、電子内視鏡からLVDS信号を受信するインタフェースを備える電子内視鏡用プロセッサであって、該インタフェースは、LVDS信号と位相比較を行って、該LVDS信号にロックするPLLと、PLLを制御するPLL制御部と、LVDS信号をパラレル信号に変換するパラレル変換部とを含む電子内視鏡用プロセッサが提供される。また、本発明におけるPLLは、LVDS信号に基づいてウインドウ信号を生成し、PLL制御部は、LVDS信号がクロックに撮像データが多重化されたものである場合、該ウインドウ信号を用いて、LVDS信号との位相比較を行うようPLLを制御することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、電子内視鏡からクロックにデータが多重化されたLVDS信号を受信した場合も、PLLがウインドウ信号に基づいて、適切に基準クロックとの位相比較を行うことができ、基準クロックに同期した内部クロックを生成することが可能となる。
【0009】
また、本発明のPLL制御部は、LVDS信号がクロックに撮像データが多重化されたものである場合、ウインドウ信号のウインドウ位置におけるLVDS信号の立ち上がりのみに基づいて位相比較を行うようPLLを制御しても良い。また、ここで言うウインドウ位置とは、ウインドウ信号がHighの領域である。さらに、ウインドウ信号は、LVDS信号におけるクロックと異なるデューティー比を有するよう生成される。
【0010】
また、本発明のPLL制御部は、PLLのロックが外れた場合、ウインドウ信号のウインドウ位置を調整しても良く、PLLのロックが外れた回数に応じて、ウインドウ信号のウインドウ位置を調整しても良い。また、本発明のPLL制御部は、PLLのロックが外れた場合、PLLのダイナミック位相シフトを用いて、ウインドウ信号のウインドウ位置をシフトさせても良い。
【0011】
この構成によれば、LVDS信号にジッタが生じたことにより、PLLのロックが外れてしまった場合も、自動的に該ジッタを吸収するようウインドウ位置が調整され、適切に再ロックすることが可能となる。これにより、安定してLVDS信号を受信することができる。
【0012】
また、本発明のPLL制御部は、LVDS信号がクロックのみからなる場合、該クロックとの位相比較を行うようPLLを制御しても良い。また、本発明のインタフェースは、FPGAで構成されても良い。
【0013】
さらに、本発明により、LVDS信号を生成して送信するインタフェースを備える電子内視鏡と、上記いずれかの電子内視鏡用プロセッサと、からなる電子内視鏡システムが提供される。
【0014】
また、本発明により、LVDS信号を受信するインタフェースを備える画像処理装置であって、インタフェースは、LVDS信号と位相比較を行って、該LVDS信号にロックするPLLと、PLLを制御するPLL制御部と、LVDS信号をパラレル信号に変換するパラレル変換部と、を有する、画像処理装置が提供される。また、PLLは、LVDS信号に基づいてウインドウ信号を生成し、PLL制御部は、LVDS信号がクロックに撮像データが多重化されたものである場合、ウインドウ信号を用いて、LVDS信号との位相比較を行うようPLLを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、クロックにデータが多重化されたLVDS信号に対して、適切にクロックとの位相比較を行って同期することができる。また、LVDS信号にジッタが生じた場合も、該ジッタの影響を考慮して位相比較を行うことにより、安定してLVDS信号を受信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る電子内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るプロセッサ側インタフェースの概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るプロセッサ側インタフェースにおける各信号のタイミングチャートである。
図4】本発明の実施形態におけるウインドウ位置調整処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る電子内視鏡システム1の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の電子内視鏡システム1は、電子スコープ100、電子内視鏡用プロセッサ200およびモニタ300を備えている。
【0019】
電子内視鏡用プロセッサ200は、システムコントローラ202やタイミングコントローラ206を備えている。システムコントローラ202は、メモリ204に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1の全体を統合的に制御する。また、システムコントローラ202は、操作パネル208に入力されるユーザ(術者又は補助者)からの指示に応じて、電子内視鏡システム1の各種設定を変更する。タイミングコントローラ206は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各種回路に出力する。
【0020】
また、電子内視鏡用プロセッサ200は、電子スコープ100のLCB(Light Carrying Bundle)102に白色光束である照明光を供給する光源装置230を備えている。光源装置230は、ランプ232、ランプ電源234、集光レンズ236及び調光装置240を備えている。ランプ232は、ランプ電源234から駆動電力の供給を受けて照明光を放射する高輝度ランプであり、例えば、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ又はハロゲンランプが使用される。ランプ232が放射した照明光は、集光レンズ236により集光された後、調光装置240を介してLCB102に導入される。
【0021】
調光装置240は、システムコントローラ202の制御に基づいてLCB102に導入する照明光の光量を調整する装置であり、絞り242、モータ243及びドライバ244を備えている。ドライバ244は、モータ243を駆動するための駆動電流を生成して、モータ243に供給する。絞り242は、モータ243によって駆動され、照明光が通過する開口を変化させて、開口を通過する照明光の光量を調整する。
【0022】
入射端からLCB102に導入された照明光は、LCB102内を伝播し、電子スコープ100の先端に配置されたLCB102の出射端から出射して、配光レンズ104を介して被写体に照射される。被写体からの反射光は、対物レンズ106を介してCCD(Charge-Coupled Device)108の受光面上で光学像を結ぶ。
【0023】
CCD108は、各種フィルタが受光面に配置された単板式カラーCCDイメージセンサであり、受光面上で結像した光学像に応じた3原色R,G,B各色の撮像信号を生成する。生成された撮像信号は、スコープコントローラ120においてデジタル画像信号に変換され、スコープ側I/F(インタフェース)150に入力される。スコープ側I/F150は、デジタル画像信号をシリアル信号に変換するとともに、クロック発振器にて発生したクロックに多重化し、LVDS信号として電子内視鏡用プロセッサ200に送る。また、スコープコントローラ120は、メモリ114(ROMまたは不揮発性メモリ)にアクセスして電子スコープ100の固有情報を読み出す。メモリ114に記録される電子スコープ100の固有情報には、例えばCCD108の画素数、感度、および動作可能なフレームレートなどが含まれる。スコープコントローラ120は、メモリ114から読み出した固有情報をシステムコントローラ202に出力する。
【0024】
システムコントローラ202は、電子スコープ100の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成した制御信号を用いて、電子内視鏡用プロセッサ200に接続された電子スコープ100に適した処理がなされるように、電子内視鏡用プロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0025】
プロセッサ側I/F(インタフェース)250は、スコープ側I/F150から受信したLVDS信号をパラレルの画像信号に変換し、画像処理ユニット220に送る。画像処理ユニット220は、システムコントローラ202による制御の下、プロセッサ側I/F250から送られてくる画像信号に基づいて、モニタ表示するためのビデオ信号を生成し、モニタ300に出力する。術者は、モニタ300に表示された内視鏡画像を確認しながら例えば消化管内の観察や治療を行う。
【0026】
次に、本実施形態のプロセッサ側I/F250におけるLVDS信号の受信処理ついて図2および図3を参照して詳述する。図2は、プロセッサ側I/F250の概略構成を示すブロック図である。プロセッサ側I/F250は、電子スコープ100からのLVDS信号を受信するインタフェースであり、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成される。図2に示されるように、プロセッサ側I/F250は、PLL(Phase Locked Loop)251、PLL制御部252、およびシリアル/パラレル変換部253からなる。PLL251は、PLL制御部252の制御に従い、LVDS信号のクロックと位相比較を行って内部クロックの位相と周波数をLVDS信号のクロックと同期する。シリアル/パラレル変換部253は、PLL制御部252の制御に従い、PLL251で生成される内部クロックに基づいて、LVDS信号をパラレル信号に変換するための処理部である。
【0027】
図3は、プロセッサ側I/F250における各信号を示すタイミングチャートである。図3(a)は、PLL251がLVDS信号にロックする前、すなわちロック待ち状態における各信号を示す。また、図3(b)は、PLL251がLVDS信号にロックされた後の各信号を示す。まず、患者の体腔内の観察を開始するために、電子スコープ100が電子内視鏡用プロセッサ200に接続されると、スコープ側I/F150からLVDS信号が送信される。ここで送信されるLVDS信号は、図3(a)に示されるようにデューティー比は、50:50の基準クロックであり、画像信号のデータは含まれていない。PLL251は、LVDS信号の基準クロックの立ち上がり(図3(a)において楕円で示す部分)を基準に位相比較を行い、基準クロックを逓倍した内部クロックを同期させる。そして、PLLが基準クロックにロックすると、SYNC信号が立ち下げられる。
【0028】
図3(b)に示されるように、SYNC信号の立ち下がりに応じて、スコープ側I/F150より、基準クロックに画像信号のデータが多重化されたLVDS信号が送られる。本実施形態では、スタートビット(S)およびエンドビット(E)を含む20ビットのデータがクロックに多重化される。多重化されたデータは、PLL251の内部クロックに基づいて読み出され、シリアル/パラレル変換部253によってパラレル信号へ変換される。
【0029】
ここで、図3(b)に示されるように、データが基準クロックに多重化されたLVDS信号を受信する場合に、PLL251がLVDS信号に含まれるデータの各立ち上がりエッジを基準に位相比較を行うと、基準クロックと同期できなくなってしまう。そのため、本実施形態では、多重化されたLVDS信号を受信する場合には、LVDS信号におけるスタートビットの立ち上がりのみ(図3(b)において楕円で示す部分)を見て位相比較を行うようPLL251が制御される。
【0030】
具体的には、基準クロックに対して、スタートビットの立ち上がりのみを有効にするようなウインドウ信号を用いて位相比較を行うようPLL251が制御される。ウインドウ信号には、PLL251の出力の一つ(例えばPFDENA信号)が用いられ、基準クロックのデューティー比を90:10(データ2ビット分を含むように)に変更して生成される。本実施形態では、PLL251が最初にロックされた状態において、ウインドウ信号の立ち下がりと、基準クロックの立ち上がりが一致するように、ウインドウ信号の位相が設定される。そして、ウインドウ信号はPLL251にフィードバックされ、PLL251において、ウインドウ信号が“H(High)”の場合におけるLVDS信号の立ち上がりのみを見て、位相比較を行う。これにより、クロックとデータが多重化された場合も、適切に基準クロックとの位相比較を行うことが可能となる。
【0031】
また、LVDS信号には様々な要因により、ジッタが生じる場合がある。ジッタが生じた場合、ウインドウ信号の“H”の領域(以下、「ウインドウ位置」という)が、LVDS信号のスタートビットの立ち上がり位置からずれてしまい、PLL251のロックが外れてしまう可能性がある。そのため、本実施形態では、ウインドウ信号のウインドウ位置を制御することにより、LVDS信号に生じるジッタの影響を吸収する構成となっている。
【0032】
このようなウインドウ位置調整処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。図4は、PLL制御部252の制御に従いPLL251によって実行される。まず、電子スコープ100が電子内視鏡用プロセッサ200に接続されると、プロセッサ側I/F250においてFPGAの各種設定などの初期動作を行う(S1)。また、初期動作において、後述するウインドウ位置のシフト数SNを「0」に設定する。初期動作が完了すると、PLL251にて、スコープ側I/F150から送信されるLVDS信号を受信する(S2)。ここで受信するLVDS信号は、図3(a)に示されるように、データを含まない基準クロックである。PLL251は、受信した基準クロックと位相比較を行って、ロックする(S3)。
【0033】
PLL251がロックすると、シフト数SNに基づいてウインドウ信号の位相をシフトする(S4)。具体的には、PLL251のダイナミック位相シフト機能を用いて、ウインドウ信号の位相をシフトする。ダイナミック位相シフトでは、まず、位相を変更したいカウンタを指定する。本実施形態の場合、ウインドウ信号(PFDENA信号)のカウンタを指定する。続いて、位相シフトの方向を指定する。本実施形態の場合、初期状態ではウインドウ信号の立ち下がりと、基準クロックの立ち上がりが一致しているため、UP方向に位相をシフトさせることで良い。これらが設定されると、ウインドウ信号の周期の1/8を1単位として、ウインドウ信号の位相がシフトされる。このようなダイナミック位相シフトによる位相シフトを、シフト数SNだけ繰り返すことにより、ウインドウ信号のウインドウ位置を移動させることができる。尚、S4の処理を最初に行う場合には、シフト数SNは0のため、ウインドウ信号の位相シフトは行われない。
【0034】
続いて、PLL251のロックが解除されたか否かを判断する(S5)。ここで、PLL251のロックが解除されていない場合は(S5:NO)、S7に進み、所定時間が経過したか否かを判断する(S7)。そして、所定時間が経過していない場合は(S7:NO)、再び基準クロックを受信し(S8)、S5の処理に戻ってPLL251のロックが解除されていないかを判断する。そして、S5において、PLL251のロックが解除された場合(S5:YES)、シフト数SNに1を追加する(S6)。その後、S2に戻り、再び基準クロックを受信して、PLL251がロックするまで待つ(S3)。
【0035】
そして、PLL251がロックすると、シフト数SNに基づいて、ウインドウ信号の位相(ウインドウ位置)をシフトする(S4)。この場合、シフト数SNは1となっているため、ダイナミック位相シフトによって、ウインドウ信号のウインドウ位置が、1/8だけシフトされる。このように、PLL251がロックした後も、所定の時間の間、基準ロックを受信して、ロックが解除されることがないかを確認することで、ロック状態が安定するまで待つことができる。さらに、ジッタを考慮して、ウインドウ信号のウインドウ位置を調整することができる。尚、別の実施形態では、S7およびS8の処理を省略することも可能である。
【0036】
一方、S7において所定時間が経過した場合は(S7:YES)、ロック状態が安定したと判断し、スコープ側I/F150にPLL251がロックしたことを通知するSYNC信号を送信する(S9)。これにより、スコープ側I/F150から、図3(b)に示される画像信号のデータが多重化されたLVDS信号が送信される。そして、PLL251にて受信した画像信号は、PLL制御部252の制御に従い、シリアル/パラレル変換部223にて、パラレル信号に変換され、画像処理ユニット220に送られる(S10)。
【0037】
続いて、PLL251のロックが解除されたか否かを判断する(S11)。そして、PLL251のロックが解除されていない場合(S11:NO)、すなわち、PLL251がロック状態である場合は、S12に進み、観察を終了するか否かを判断する(S12)。そして、観察を終了しない場合には(S12:NO)、S10の処理に戻り、引き続き画像信号データの受信および処理を行い、観察が終了する(S12:YES)まで、各ステップを繰り返す。
【0038】
一方、PLL251のロックが解除された場合は(S11:YES)、スコープ側I/F150に、ロックが解除されたことを通知する(S13)。これにより、スコープ側I/F150からは再び基準クロックのみからなるLVDS信号が送信される。そして、S6の処理に戻って、ウインドウ位置のシフト数SNに1を追加する(S6)。その後、再度、基準クロックの受信(S2)、PLL251のロック(S3)を行い、ウインドウ信号の位相をシフト数SNに従ってシフトする(S4)。そして、ロック状態が安定するまで待った上で(S7:YES)、データの受信を再開する。このように、観察が終了するまで、PLL251のロック状態を監視し、ロックの解除に応じてウインドウ信号のウインドウ位置を調整する。
【0039】
本実施形態を上記のように構成することで、観察中にLVDS信号にジッタが生じてPLL251のロックが外れた場合も、自動的にウインドウ信号のウインドウ位置を調整して、再ロックさせることが可能となり、安定してLVDS信号を受信することができる。
【0040】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態における電子内視鏡用プロセッサ200は、電子スコープ100によって取得された画像を処理する画像処理装置と、自然光の届かない体腔内を、電子スコープ100を介して照射するための光源を備える光源装置230とを一体に備えた装置であるが、光源装置230を別体として構成してもよい。
【0041】
また、ウインドウ信号の位相をシフトする場合におけるシフト方向やシフト量は、上記実施形態の例に限定されるものではなく、適宜設定可能である。具体的には、ウインドウ信号の立ち上がりと、基準クロックの立ち上がりが一致するようにウインドウ位置を設定した場合には、シフト方向をDOWN方向とすることも可能である。さらに、変形例として、図4のフローチャートにおけるステップS3とS4を入れ替えても良い。具体的には、上記実施形態では、PLL251のロックが解除された場合、シフト数SNに1を追加した後、PLL251がロックするまで待ってから、ウインドウ信号の位相(ウインドウ位置)をシフト数SNに基づいてシフトする構成としたが、ロックが解除された場合に、ウインドウ信号の位相をシフトした後で、PLL251を再ロックさせる構成としても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 電子内視鏡システム
100 電子スコープ
108 CCD
114 メモリ
120 スコープコントローラ
150 スコープ側I/F
200 電子内視鏡用プロセッサ
202 システムコントローラ
206 タイミングコントローラ
220 画像処理ユニット
250 プロセッサ側I/F
251 PLL
252 PLL制御部
253 シリアル/パラレル変換部
300 モニタ
図1
図2
図3
図4