(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A/D変換ユニットと、D/A変換ユニットと、AD変換補償ユニットと、DA変換補償ユニットと、キャリブレーションユニットとを具備する電子システムの動作方法であって、
キャリブレーション動作期間において、キャリブレーションデジタル入力信号が前記DA変換補償ユニットに供給され、前記キャリブレーションデジタル入力信号と前記DA変換補償ユニットから生成されるDA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号とのいずれかが前記D/A変換ユニットの入力端子に供給され、
前記キャリブレーション動作期間に、前記D/A変換ユニットの出力端子から生成されるキャリブレーションアナログ信号は前記A/D変換ユニットの入力端子に供給可能とされて、前記A/D変換ユニットの出力端子から生成されるキャリブレーションデジタル出力信号は前記AD変換補償ユニットの入力端子に供給され、
前記キャリブレーション動作期間に、前記キャリブレーションデジタル入力信号と、前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と、前記AD変換補償ユニットから生成されるAD変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と、前記キャリブレーションデジタル出力信号とが、前記キャリブレーションユニットに供給され、
前記キャリブレーション動作期間に、前記キャリブレーションユニットは、前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記AD変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記キャリブレーションデジタル出力信号とに応答して前記AD変換補償ユニットの動作特性を設定し、前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記AD変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記キャリブレーションデジタル入力信号とに応答して前記DA変換補償ユニットの動作特性を設定して、
前記キャリブレーション動作期間に設定された前記AD変換補償ユニットの前記動作特性は、前記A/D変換ユニットのAD変換の非線形性を補償して、
前記キャリブレーション動作期間に設定された前記DA変換補償ユニットの前記動作特性は、前記D/A変換ユニットのDA変換の非線形性を補償する
電子システムの動作方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される代表的な実施の形態についてその概要を説明する。代表的な実施の形態の概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号は、それが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0019】
〔1〕代表的な実施の形態による電子システム(1)は、A/D変換ユニット(10)と、D/A変換ユニット(11)と、AD変換補償ユニット(13)と、DA変換補償ユニット(15、16、16A)と、キャリブレーションユニット(14)とを具備する。
【0020】
キャリブレーション動作期間において、キャリブレーションデジタル入力信号(DAIN)が前記DA変換補償ユニット(15、16、16A)に供給され、前記キャリブレーションデジタル入力信号(DAIN)と前記DA変換補償ユニットから生成されるDA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号とのいずれかが前記D/A変換ユニット(11)の入力端子に供給される。
【0021】
前記キャリブレーション動作期間に、前記D/A変換ユニット(11)の出力端子から生成されるキャリブレーションアナログ信号は前記A/D変換ユニット(10)の入力端子に供給可能とされて、前記A/D変換ユニット(10)の出力端子から生成されるキャリブレーションデジタル出力信号(bk)は前記AD変換補償ユニット(13)の入力端子に供給される。
【0022】
前記キャリブレーション動作期間に、前記キャリブレーションデジタル入力信号
と、前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号
と、前記AD変換補償ユニットから生成されるAD変換補償キャリブレーションデジタル出力信号
と、前記キャリブレーションデジタル出力信号とが、前記キャリブレーションユニット(14)に供給される。
【0023】
前記キャリブレーション動作期間に、前記キャリブレーションユニット(14)は、
前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記AD変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と
前記キャリブレーションデジタル出力信号とに応答して前記AD変換補償ユニット(13)の動作特性
を設定し、前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記AD変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記キャリブレーションデジタル入力信号とに応答して前記DA変換補償ユニット(15、16、16A)の動作特
性を設定する。
【0024】
前記キャリブレーション動作期間に設定された前記AD変換補償ユニット(13)の前記動作特性は、前記A/D変換ユニット(10)のAD変換の非線形性を補償する。
【0025】
前記キャリブレーション動作期間に設定された前記DA変換補償ユニット(15、16、16A)の前記動作特性は、前記D/A変換ユニット(11)のDA変換の非線形性を補償することを特徴とする(
図1参照)。
【0026】
前記実施の形態によれば、DA変換ユニットとAD変換ユニットとを具備する電子システムにおいてAD変換ユニットの非線形性を補償して更にDA変換ユニットの非線形性を補償することができる。
【0027】
好適な実施の形態では、前記DA変換補償ユニットは、第1DA変換補償ユニット(15)と第2DA変換補償ユニット(16)とを含む。
【0028】
前記キャリブレーション動作期間に、前記第1DA変換補償ユニット(15)の入力端子に前記キャリブレーションデジタル入力信号(DAIN)が供給されることによって前記第1DA変換補償ユニットの出力端子から生成される前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号は、前記キャリブレーションユニット(14
)に供給される。
【0029】
前記キャリブレーション動作期間に前記キャリブレーションユニット(14)によって設定される前記第1DA変換補償ユニット(15)の動作特性は、前記D/A変換ユニット(11)の前記DA変換の前記非線形性を前記キャリブレーション動作期間に模擬するものである。
【0030】
前記キャリブレーション動作期間の後の通常動作期間において、前記第2DA変換補償ユニット(16)の入力端子にデジタル入力信号(DAIN)が供給されることによって前記第2DA変換補償ユニット(16)の出力端子から生成されるデジタル補償出力信号は、前記D/A変換ユニット(11)の前記入力端子に供給される。
【0031】
前記キャリブレーション動作期間のキャリブレーション結果に基づき前記キャリブレーションユニット(14)によって設定される前記第2DA変換補償ユニット(16)の動作特性は、前記D/A変換ユニット(11)の前記DA変換の前記非線形性を実質的に相殺することを特徴とするものである(
図1参照)。
【0032】
他の好適な実施の形態では、前記キャリブレーション動作期間と前記通常動作期間とにおいて、前記AD変換補償ユニット(13)の前記動作特性は、前記A/D変換ユニット(10)の前記AD変換の前記非線形性を実質的に相殺することを特徴とするものである(
図1参照)。
【0033】
更に他の好適な実施の形態では、前記電子システム(1)は、第1入力端子と第2入力端子と出力端子とを有するセレクタユニット(17)を更に具備する。
【0034】
前記キャリブレーション動作期間に、前記セレクタユニット(17)の前記第1入力端子に前記キャリブレーションデジタル入力信号(DAIN)が供給され、前記セレクタユニットの前記出力端子に伝達される前記キャリブレーションデジタル入力信号は前記D/A変換ユニット(11)の前記入力端子に供給される。
【0035】
前記通常動作期間に、前記セレクタユニット(17)の前記第2入力端子に前記第2DA変換補償ユニット(16)の前記出力端子から生成される前記デジタル補償出力信号が供給され、前記セレクタユニットの前記出力端子に伝達される前記デジタル補償出力信号は前記D/A変換ユニット(11)の前記入力端子に供給されることを特徴とするものである(
図1参照)。
【0036】
より好適な実施の形態では、前記キャリブレーションユニット(14)は、減算ユニット(140)と第1サーチエンジン(141)と第2サーチエンジン(142)とを含む。
【0037】
前記減算ユニット(140)は、
前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記AD変換補償キャリブレーションデジタル出力信号との差分を算出する。
【0038】
前記第1サーチエンジン(141)は、前記減算ユニット(140)の出力信号(“e”)に応答して、前記第1DA変換補償ユニット(15)の前記動作特性と前記第2DA変換補償ユニット(16)の前記動作特性を設定する。
【0039】
前記第2サーチエンジン(142)は、前記減算ユニット(140)の前記出力信号(“e”)に応答して、前記AD変換補償ユニット(13)の前記動作特性を設定することを特徴とするものである(
図1参照)。
【0040】
他のより好適な実施の形態では、前記A/D変換ユニット(10)と前記D/A変換ユニット(11)とのいずか一方が、前記キャリブレーションユニット(14)の前記第1サーチエンジン(141)と第2サーチエンジン(142)の計算動作の収束性を高めるためのディザー出力信号を生成することを特徴とするものである(
図3、
図8、
図10、
図11参照)。
【0041】
更に他のより好適な実施の形態では、前記ディザー出力信号を生成する前記A/D変換ユニット(10)は、パイプライン型A/D変換器(
図4参照)と逐次比較型A/D変換器(
図7参照)とのいずれかによって構成されたことを特徴とするものである。
【0042】
別のより好適な実施の形態では、前記DA変換補償ユニットは、第1DA変換補償ユニット(15)と第2DA変換補償ユニット(16A、16B)とを含む。
【0043】
前記キャリブレーション動作期間に、前記第1DA変換補償ユニット(15)の入力端子に前記キャリブレーションデジタル入力信号(DAIN)が供給されることで前記第1DA変換補償ユニット(15)の出力端子から生成される前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号は、前記キャリブレーションユニット(14
)に供給される。
【0044】
前記キャリブレーション動作期間に前記キャリブレーションユニット(14)によって設定される前記第1DA変換補償ユニット(15)の動作特性は、前記D/A変換ユニット(11)の前記DA変換の前記非線形性を模擬するものである。
【0045】
前記キャリブレーション動作期間の後の通常動作期間において、前記第2DA変換補償ユニット(16A、16B)は、前記D/A変換ユニット(11)の前記DA変換の前記非線形性を実質的に相殺することを特徴とするものである(
図8参照)。
【0046】
更に別のより好適な実施の形態では、前記D/A変換ユニット(11)はバイナリー型D/A変換器により構成される。
【0047】
前記通常動作期間において前記D/A変換ユニット(11)の前記DA変換の前記非線形性を実質的に相殺するために前記第2DA変換補償ユニット(16A、16B)の出力信号によって前記バイナリー型D/A変換器のウェイトの誤差が低減されることを特徴とする(
図9参照)。
【0048】
具体的な実施の形態では、前記キャリブレーション動作期間および前記通常動作期間において、前記DA変換補償ユニット(16)の前記動作特性は、前記D/A変換ユニット(11)の前記DA変換の前記非線形性を実質的に相殺することを特徴とするものである(
図10参照)。
【0049】
他の具体的な実施の形態では、前記ディザー出力信号を生成する前記D/A変換ユニット(11)は、ディザーアナログ出力信号を生成するためのディザーアナログ電流生成部が追加されたバイナリー型D/A変換器によって構成されたことを特徴とするものである(
図11、
図12参照)。
【0050】
より具体的な実施の形態では、前記電子システム(1)の前記A/D変換ユニット(10)と前記D/A変換ユニット(11)と前記AD変換補償ユニット(13)と前記DA変換補償ユニット(15、16、16A)と前記キャリブレーションユニット(14)とは、半導体集積回路に集積化されたことを特徴とするものである。
【0051】
他のより具体的な実施の形態では、前記半導体集積回路は、RFアナログ半導体集積回路である。
【0052】
前記A/D変換ユニット(10)は前記RFアナログ半導体集積回路の受信A/D変換器(Rx_A/D)であり、前記D/A変換ユニット(11)は前記RFアナログ半導体集積回路の送信D/A変換器(Tx_D/A)であることを特徴とするものである(
図13参照)。
【0053】
最も具体的な実施の形態による前記半導体集積回路は、中央処理ユニットコア(1410)とアナログコア(1430)とが集積化されたマイクロコンピュータである。
【0054】
前記アナログコア(1430)は、前記A/D変換ユニット(10)と前記D/A変換ユニット(11)とを含むことを特徴とするものである(
図14参照)。
【0055】
〔2〕別の観点の代表的な実施の形態は、A/D変換ユニット(10)と、D/A変換ユニット(11)と、AD変換補償ユニット(13)と、DA変換補償ユニット(15、16、16A)と、キャリブレーションユニット(14)とを具備する電子システム(1)の動作方法である。
【0056】
キャリブレーション動作期間において、キャリブレーションデジタル入力信号(DAIN)が前記DA変換補償ユニット(15、16、16A)に供給され、前記キャリブレーションデジタル入力信号(DAIN)と前記DA変換補償ユニットから生成されるDA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号とのいずれかが前記D/A変換ユニット(11)の入力端子に供給される。
【0057】
前記キャリブレーション動作期間に、前記D/A変換ユニット(11)の出力端子から生成されるキャリブレーションアナログ信号は前記A/D変換ユニット(10)の入力端子に供給可能とされて、前記A/D変換ユニット(10)の出力端子から生成されるキャリブレーションデジタル出力信号(bk)は前記AD変換補償ユニット(13)の入力端子に供給される。
【0058】
前記キャリブレーション動作期間に、前記キャリブレーションデジタル入力信号
と、前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号
と、前記AD変換補償ユニットから生成されるAD変換補償キャリブレーションデジタル出力信号
と、前記キャリブレーションデジタル出力信号とが、前記キャリブレーションユニット(14
)に供給される。
【0059】
前記キャリブレーション動作期間に、前記キャリブレーションユニット(14)は、
前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記AD変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と
前記キャリブレーションデジタル出力信号とに応答して前記AD変換補償ユニット(13)の動作特性
を設定し、前記DA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記AD変換補償キャリブレーションデジタル出力信号と前記キャリブレーションデジタル入力信号とに応答して前記DA変換補償ユニット(15、16、16A)の動作特
性を設定する。
【0060】
前記キャリブレーション動作期間に設定された前記AD変換補償ユニット(13)の前記動作特性は、前記A/D変換ユニット(10)のAD変換の非線形性を補償する。
【0061】
前記キャリブレーション動作期間に設定された前記DA変換補償ユニット(15、16、16A)の前記動作特性は、前記D/A変換ユニット(11)のDA変換の非線形性を補償することを特徴とする(
図1参照)。
【0062】
前記実施の形態によれば、DA変換ユニットとAD変換ユニットとを具備する電子システムにおいてAD変換ユニットの非線形性を補償して更にDA変換ユニットの非線形性を補償することができる。
【0063】
2.実施の形態の詳細
次に、実施の形態について更に詳述する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、前記の図と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0064】
[実施の形態1]
《電子システムの構成》
図1は、実施の形態1による電子システム1の構成を示す図である。
【0065】
図1に示した実施の形態1による電子システム1は、モノリシック半導体集積回路によって構成される。このモノリシック半導体集積回路の半導体チップには、A/D変換ユニット10とD/A変換ユニット11とキャリブレーションスイッチ12とAD変換補償ユニット13とキャリブレーションユニット14と第1DA変換補償ユニット15と第2DA変換補償ユニット16とセレクタユニット17とDA変換出力用スイッチ18とAD変換入力用スイッチ19とが集積化される。
図1に示した実施の形態1の電子システム1は、冒頭で説明したフォアグラウンドデジタル補正型A/D変換器として動作する。更に、キャリブレーションユニット14は、減算ユニット140と、第1サーチエンジン141と、第2サーチエンジン142を含んでいる。その結果、D/A変換ユニット11の出力部とDA変換出力用スイッチ18とキャリブレーションスイッチ12とA/D変換ユニット10の入力部とAD変換入力用スイッチ19は、電子システム1のアナログ回路部分Analogを構成する。その一方で、D/A変換ユニット11の入力部とセレクタユニット17と第2DA変換補償ユニット16と第1DA変換補償ユニット15とキャリブレーションユニット14とAD変換補償ユニット13とA/D変換ユニット10の出力部とは、電子システム1のデジタル回路部分Digitalを構成する。
【0066】
《キャリブレーション動作》
キャリブレーション動作期間では、キャリブレーションデジタル信号としてのデジタル入力信号DAINはセレクタユニット17の第1入力端子と出力端子とを経由して参照用D/A変換ユニットとして機能するD/A変換ユニット11の入力端子に供給される。従って、参照用D/A変換ユニットとしてのD/A変換ユニット11の出力端子から生成されるキャリブレーションアナログ信号であるDA変換アナログ出力信号DAOUTは、キャリブレーションスイッチ12を介してA/D変換ユニット10の入力端子に供給される。その結果、A/D変換ユニット10の出力端子から生成されるAD変換デジタル信号は補償デジタル出力生成部として機能するAD変換補償ユニット13の入力端子に供給されて、AD変換補償ユニット13の出力端子からAD変換補償デジタル出力信号が生成される。更に、このキャリブレーション動作期間には、キャリブレーションデジタル信号として機能するデジタル入力信号DAINは第1DA変換補償ユニット15の入力端子に供給され、第1DA変換補償ユニット15の出力端子からDA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号が生成される。
【0067】
その結果、キャリブレーション動作期間では、キャリブレーションユニット14の減算ユニット140に供給される第1DA変換補償ユニット15からのDA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号とAD変換補償ユニット13からのAD変換補償デジタル出力信号との差分が実質的にゼロとなるように、キャリブレーションユニット14が動作する。すなわち、キャリブレーションユニット14の減算ユニット140の誤差出力信号“e”に第1サーチエンジン141と第2サーチエンジン142が応答して、第1DA変換補償ユニット15の動作特性とAD変換補償ユニット13の動作特性が決定される。より詳細に説明すると、第1DA変換補償ユニット15の動作特性は参照用D/A変換ユニットとしてのD/A変換ユニット11のDA変換の非線形性を模擬(エミュレート)するように第1サーチエンジン141により決定され、AD変換補償ユニット13の動作特性はA/D変換ユニット10のAD変換の非線形性を相殺(キャンセル)するように第2サーチエンジン142により決定される。すなわち、AD変換補償ユニット13の動作特性はA/D変換ユニット10のAD変換での非線形性の逆方向変換に対応する一方、第1DA変換補償ユニット15の動作特性はD/A変換ユニット11のDA変換での非線形性の順方向変換に対応するものである。従って、キャリブレーションユニット14の減算ユニット140の誤差出力信号“e”に第1サーチエンジン141と第2サーチエンジン142が応答して、第1DA変換補償ユニット15のウェイト係数Xk(k=1、2…M)が第1サーチエンジン141により決定され、AD変換補償ユニット13のウェイト係数Wk(k=1、2…N)が第2サーチエンジン142により決定される。
【0068】
従って、
図1に示した実施の形態1による電子システム1において低精度のD/A変換ユニット11と低精度のA/D変換ユニット10とを使用しても、キャリブレーション動作期間では、D/A変換ユニット11の非線形性とA/D変換ユニット10の非線形性はそれぞれ第1DA変換補償ユニット15の動作特性とAD変換補償ユニット13の動作特性によって補償されるものである。
【0069】
キャリブレーションユニット14の第1サーチエンジン141は減算ユニット140の誤差出力信号“e”に応答して第1DA変換補償ユニット15のウェイト係数Xk(k=1、2…M)を決定するので、第1DA変換補償ユニット15の出力端子から次式で与えられるDA変換補償キャリブレーションデジタル出力信号DAC_Cmp1_OUTが生成される。
【0071】
尚、上記(1)式で、Dk(k=1、2…M)は、キャリブレーション動作期間において第1DA変換補償ユニット15とセレクタユニット17とに供給されるキャリブレーションデジタル信号としてのMビットのデジタル入力信号DAINである。
【0072】
キャリブレーションユニット14の第2サーチエンジン142は減算ユニット140の誤差出力信号“e”に応答してAD変換補償ユニット13のウェイト係数Wk(k=1、2…N)を決定するので、AD変換補償ユニット13の出力端子からは次式で与えられるAD変換補償デジタル出力信号ADC_Cmp_OUTが生成される。
【0074】
尚、上記(2)式でbk(k=1、2…N)は、キャリブレーション動作期間においてA/D変換ユニット10の出力端子から生成されるNビットのAD変換デジタル信号bkである。
【0075】
キャリブレーション動作期間でのキャリブレーション動作の実行によって、キャリブレーションユニット14の減算ユニット140の誤差出力信号“e”が、実質的にゼロとされる。例えば、上記非特許文献1に記載されたLMS(Least Mean Square)アルゴリズムによって、第1DA変換補償ユニット15のウェイト係数Xk(k=1、2…M)とAD変換補償ユニット13のウェイト係数Wk(k=1、2…N)が決定される。その結果、
図1に示した実施の形態1による電子システム1において低精度のD/A変換ユニット11と低精度のA/D変換ユニット10を使用しても、キャリブレーション動作期間においてD/A変換ユニット11の非線形性とA/D変換ユニット10の非線形性はそれぞれ第1DA変換補償ユニット15の動作特性とAD変換補償ユニット13の動作特性によって補償されるものである。
【0076】
更にキャリブレーション動作期間での上述したキャリブレーション動作の実行によりキャリブレーションユニット14の第1サーチエンジン141により算出された第1DA変換補償ユニット15のウェイト係数Xk(k=1、2…M)は、第2DA変換補償ユニット16の内部レジスタにも格納される。
【0077】
《通常動作》
その結果、キャリブレーション動作期間の終了後の通常動作期間では、第2DA変換補償ユニット16は、内部レジスタに格納された第1DA変換補償ユニット15のウェイト係数Xk(k=1、2…M)を使用することにより第2DA変換補償ユニット16の動作特性を決定するものである。すなわち、第2DA変換補償ユニット16の動作特性は、D/A変換ユニット11のDA変換の非線形性の逆方向変換に対応する。その結果、第2DA変換補償ユニット16の動作特性は、D/A変換ユニット11のDA変換の非線形性を相殺(キャンセル)するものとなる。
【0078】
より詳細に説明すると、キャリブレーション動作期間の終了後の通常動作期間において第2DA変換補償ユニット16は、DA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値Dk(k=1、2…M)と内部レジスタに格納されたウェイト係数Xk(k=1、2…M)を使用して補償デジタル値D´k(k=1、2…M)を生成する。第2DA変換補償ユニット16の出力端子から生成された補償デジタル値D´k(k=1、2…M)は、セレクタユニット17の第2入力端子に供給される。すなわち、第2DA変換補償ユニット16から生成される補償デジタル値D´k(k=1、2…M)は、DA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値Dk(k=1、2…M)をD/A変換ユニット11のDA変換の非線形性によって逆方向変換したものである。従って、通常動作期間では、第2DA変換補償ユニット16の動作特性はD/A変換ユニット11のDA変換の非線形性を相殺(キャンセル)するので、低精度のD/A変換ユニット11を使用しても、高精度のDA変換アナログ出力信号DAOUTをDA変換出力用スイッチ18を介してD/A変換ユニット11の出力端子から生成することが可能となる。
【0079】
更に、キャリブレーション動作期間の終了後の通常動作期間においては、キャリブレーション動作期間と全く同様にA/D変換ユニット10の非線形性はAD変換補償ユニット13の動作特性により補償されるものである。すなわち、第2サーチエンジン142により決定されたAD変換補償ユニット13の動作特性は、A/D変換ユニット10のAD変換の非線形性を相殺(キャンセル)するものである。従って、低精度のA/D変換ユニット10を使用したとしても、高精度のAD変換デジタル出力信号ADOUTをA/D変換補償ユニット13の出力端子から生成することが可能となる。
【0080】
《第2DA変換補償ユニットの補償デジタル値の生成》
図2は、
図1に示した実施の形態1による電子システム1の内部の第2DA変換補償ユニット16がDA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値Dj(j=1、2…M)に応答して補償デジタル値D´j(j=1、2…M)を生成する動作を説明する図である。
【0081】
図2の最初のステップS200において、第2DA変換補償ユニット16の動作が開始される。ここで、k=1、D´j(j=1、2…M)=0に初期設定されている。2番目のステップS201において、第2DA変換補償ユニット16は次式に従ってD/A変換ユニット11の出力端子から生成されるDA変換アナログ出力信号DAOUTの理想値Value1の算出を実行する。
【0083】
更に2番目のステップS201において、第2DA変換補償ユニット16は次式に従ってD/A変換ユニット11の出力端子から生成されるDA変換アナログ出力信号DAOUTの実値Value2の算出を実行する。
【0085】
3番目のステップS202において、第2DA変換補償ユニット16は次式に従った判定動作を実行する。
【0087】
この3番目のステップS202における判定結果が「YES」の場合には、上記(3)式により算出されるD/A変換ユニット11から生成されるDA変換アナログ出力信号DAOUTの理想値Value1よりも上記(4)式により算出されるD/A変換ユニット11から生成されるDA変換アナログ出力信号DAOUTの実値Value2が小さいことになる。従って、3番目のステップS202での判定結果が「YES」の場合には、理想値Value1まで実値Value2が増加するように4番目のステップS203において第2DA変換補償ユニット16は補償デジタル値D´kを正の値“1”に設定するものである。
【0088】
一方、3番目のステップS202における判定結果が「NO」の場合には、上記(3)式により算出されるD/A変換ユニット11から生成されるDA変換アナログ出力信号DAOUTの理想値Value1よりも上記(4)式により算出されるD/A変換ユニット11から生成されるDA変換アナログ出力信号DAOUTの実値Value2が大きいことになる。従って、3番目のステップS202の判定結果が「NO」の場合には、理想値Value1まで実値Value2が減少するように5番目のステップS204において第2DA変換補償ユニット16は補償デジタル値D´kを負の値“−1”に設定するものである。
【0089】
4番目のステップS203または5番目のステップS204の後の6番目のステップS205においては、ビット管理番号kがビット数Mに到達したか否かが、第2DA変換補償ユニット16によって判定される。6番目のステップS205における判定結果が「NO」の場合には、7番目のステップS206においてビット管理番号kが+1分、インクリメントされて、6番目のステップS205における判定結果が「YES」の場合には、8番目のステップS207において第2DA変換補償ユニット16の動作が終了される。
【0090】
図2に示した第2DA変換補償ユニット16による補償デジタル値D´kの生成動作から、M回のループ動作によって補償デジタル値D´k(k=1、2…M)の最上位ビットD´1と第2ビットD´2と以下同様に最下位ビットD´Mとが第2DA変換補償ユニット16によってシーケンシャルに生成される。このシーケンシャル生成の間に、第2DA変換補償ユニット16にはMビットのDA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値Dk(k=1、2…M)と第1サーチエンジン141からのMビットのウェイト係数Xk(k=1、2…M)とが、Mビット並列の形態で供給されている。このように第2DA変換補償ユニット16にMビットのDA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値DkとMビットのウェイト係数Xkが並列の形態で供給されている状態で、第2DA変換補償ユニット16からMビットの補償デジタル値D´kがシーケンシャルに生成されることが考慮される。この考慮から、DA変換ユニット11およびセレクタユニット17と比較して、第2DA変換補償ユニット16は少なくともM倍速動作するように第2DA変換補償ユニット16が構成される。
【0091】
尚、キャリブレーションスイッチ12には第1制御信号Cnt1が供給されて、DA変換出力用スイッチ18には第2制御信号Cnt2が供給され、AD変換入力用スイッチ19には第3制御信号Cnt3が供給されて、セレクタユニット17には第4制御信号Cnt4が供給される。
【0092】
キャリブレーション動作期間では、第4制御信号Cnt4はハイレベルとされ、セレクタユニット17は第1入力端子に供給されるキャリブレーションデジタル信号としてのデジタル入力信号DAINを選択してD/A変換ユニット11の入力端子に供給する。
【0093】
通常動作期間では、第4制御信号Cnt4はローレベルとされ、セレクタユニット17は第2入力端子に供給される第2DA変換補償ユニット16からの補償デジタル値D´k(k=1、2…M)を選択してD/A変換ユニット11の入力端子に供給する。
【0094】
更にキャリブレーション動作期間では、第1制御信号Cnt1はハイレベルとされ第2制御信号Cnt2と第3制御信号Cnt3はローレベルに制御され、キャリブレーションスイッチ12はオン状態に制御され、DA変換出力用スイッチ18とAD変換入力用スイッチ19はオフ状態に制御される。
【0095】
更に通常動作期間では、第1制御信号Cnt1はローレベルとされ第2制御信号Cnt2と第3制御信号Cnt3はハイレベルに制御され、キャリブレーションスイッチ12はオフ状態に制御され、DA変換出力用スイッチ18とAD変換入力用スイッチ19はオン状態に制御される。
【0096】
[実施の形態2]
《電子システムの構成》
図3は、実施の形態2による電子システム1の構成を示す図である。
【0097】
図3に示す実施の形態2による電子システム1が
図1に示した実施の形態1による電子システム1と相違するのは、次の点である。
【0098】
すなわち、
図3に示す実施の形態2による電子システム1において、A/D変換ユニット10がNビットのAD変換デジタル信号bkを生成するだけではなく、A/D変換ユニット10がディザー生成制御信号Dither_genに応答してNビットのディザーデジタル信号dkを生成することである。その結果、キャリブレーションユニット14の第2サーチエンジン142は、Nビットのウェイト係数Wkを生成するだけではなくNビットの他のウェイト係数αkを生成するものである。
【0099】
このように、
図3に示す実施の形態2による電子システム1においてA/D変換ユニット10がディザーデジタル信号dkを生成して第2サーチエンジン142がNビットの他のウェイト係数αkを生成するのは、キャリブレーションユニット14の第1サーチエンジン141と第2サーチエンジン142のウェイト計算の収束速度を改善するためのものである。
【0100】
それに対して、
図1に示した実施の形態1による電子システム1のA/D変換ユニット10は、ディザーデジタル信号dkを生成しない。その結果、
図1に示した実施の形態1による電子システム1のD/A変換ユニット11のDA変換アナログ出力信号DAOUTが直流電圧または低周波電圧である場合には、キャリブレーションユニット14の第1サーチエンジン141と第2サーチエンジン142のウェイト計算の収束速度が遅いと言う問題が本発明者等の検討によって明らかとされた。
【0101】
従って、
図3に示す実施の形態2による電子システム1では、
図1の実施の形態1による電子システム1ではウェイト計算の収束速度が遅いと言う問題を解消するために、A/D変換ユニット10がディザー生成制御信号Dither_genに応答してNビットのディザーデジタル信号dkを生成して第2サーチエンジン142がNビットの他のウェイト係数αkを生成するものである。
【0102】
すなわち、
図1の実施の形態1による電子システム1のD/A変換ユニット11のDA変換アナログ出力信号DAOUTが直流電圧または低周波電圧であることによりA/D変換ユニット10の出力端子から生成されるNビットのAD変換デジタル信号bkが例えばオール“0”となる場合を、想定する。この場合には、AD変換補償ユニット13の出力端子からは上記(2)式で与えられるAD変換補償デジタル出力信号ADC_Cmp_OUTは、AD変換補償ユニット13のウェイト係数Wk(k=1、2…N)の値と全く無関係に、オール“0”となるものである。従って、キャリブレーションユニット14の第2サーチエンジン142によるAD変換補償ユニット13のウェイト係数Wk(k=1、2…N)のウェイト計算が正しく収束しない。更にこれに起因してキャリブレーションユニット14の第1サーチエンジン141による第1DA変換補償ユニット15のウェイト係数Xk(k=1、2…M)のウェイト計算も正しく収束しない。
【0103】
それに対して、
図3に示す実施の形態2による電子システム1では、上述の場合でもA/D変換ユニット10から生成されるNビットのディザーデジタル信号dkによりAD変換補償ユニット13の出力端子から生成されるAD変換補償デジタル出力信号ADC_Cmp_OUTがオール“0”となることが解消される。その結果、キャリブレーションユニット14の第2サーチエンジン142によるAD変換補償ユニット13のウェイト係数Wk(k=1、2…N)のウェイト計算を正しく収束させることが可能となる。更に、キャリブレーションユニット14の第1サーチエンジン141による第1DA変換補償ユニット15のウェイト係数Xk(k=1、2…M)のウェイト計算も正しく収束させることが可能となる。
【0104】
《A/D変換ユニットの構成》
図4は、
図3に示した実施の形態2による電子システム1においてAD変換デジタル信号bkとディザーデジタル信号dkとを生成するためのA/D変換ユニット10の構成を示す図である。
【0105】
図4に示したようにA/D変換ユニット10は、良く知られているように従属接続された複数のAD変換ステージ101、102…10N−1、10Nを含むパイプライン型A/D変換器によって構成されている。まず初段のAD変換ステージ101にアナログ入力信号ADINとしてのアナログ入力電圧VINとディザー生成制御信号Dither_gen1が供給されることによって、初段のAD変換ステージ101からNビットのAD変換デジタル信号bkの最上位ビットb1とNビットのディザーデジタル信号dkの最上位ビットd1とが生成される。更に、初段のAD変換ステージ101の出力端子から生成されるアナログ残差信号は、アナログ入力電圧VINとして、第2段のAD変換ステージ102の入力端子に供給される。第2段のAD変換ステージ102にもディザー生成制御信号Dither_gen2が供給されて、第2段のAD変換ステージ102からNビットのAD変換デジタル信号bkの第2ビットb2とNビットのディザーデジタル信号dkの第2ビットd2が生成される。以下同様にして、第N−1段のAD変換ステージ10N−1にもディザー生成制御信号Dither_genN−1が供給され、第N−1段のAD変換ステージ10N−1からNビットのAD変換デジタル信号bkの第N−1ビットb
N−1とNビットのディザーデジタル信号dkの第N−1ビットd
N−1とが生成される。
【0106】
図4には、従属接続されたAD変換ステージ101、102…10N−1、10Nの各AD変換ステージの構成も示されている。
図4に示すように、各AD変換ステージは、サブA/D変換器10N−11とサブD/A変換器10N−12と減算器10N−13と増幅器10N−14とを含んでいる。例えば、N−1段目のステージの例では、アナログ入力電圧VINは、サブA/D変換器10N−11によって1.5ビットのAD変換デジタル信号b
N−1に変換され、この1.5ビットのAD変換デジタル信号b
N−1はサブD/A変換器10N−12によりアナログ出力信号に変換される。減算器10N−13ではアナログ入力電圧VINからサブD/A変換器10N−12のアナログ出力信号が減算されて、減算器10N−13の差分出力信号は電圧利得が略“2”に設定された増幅器10N−14によって増幅され、増幅器10N−14の出力端子から生成されるアナログ残差信号V
OUTが次段のAD変換ステージの入力端子に供給される。
【0107】
図4に示すN−1段目のAD変換ステージは、1.5ビットのAD変換デジタル信号b
N−1とディザー生成制御信号Dither_genN−1に応答してNビットのディザーデジタル信号dkの第N−1ビットd
N−1を生成するために、擬似乱数生成器10N−15とデジタル乗算器10N−16と第2サブD/A変換器10N−17とを含んでいる。擬似乱数生成器10N−15はディザー生成制御信号Dither_genN−1とサブA/D変換器10N−11の出力端子から生成される1.5ビットのAD変換デジタル信号b
N−1とに応答して1.5ビットのディザーデジタル信号d
N−1を生成して、デジタル乗算器10N−16は第N−1ビットd
N−1と所定のデジタル乗算係数α
N−1とを乗算する。第2サブD/A変換器10N−17はデジタル乗算器10N−16のデジタル乗算出力信号をディザーアナログ出力信号に変換して、減算器10N−13ではアナログ入力電圧VINからディザーアナログ出力信号が更に減算されるものである。
【0108】
《サブA/D変換器の動作》
図5は、
図4に示した実施の形態2のパイプライン型A/D変換器のN−1段目のAD変換ステージ10N−1のAD変換デジタル信号b
N−1とディザーデジタル信号d
N−1の生成動作を説明する図である。
【0109】
最初に、
図5はでは、
図4に示した実施の形態2のパイプライン型A/D変換器のN−1段目のAD変換ステージ10N−1に含まれたサブA/D変換器10N−11によるアナログ入力電圧VINの1.5ビットのAD変換デジタル信号b
N−1への変換動作が説明されている。
【0110】
図5に示すように、アナログ入力電圧VINの入力電圧がサブA/D変換器10N−11によって高電圧範囲と中間電圧範囲と低電圧範囲との3つの電圧範囲に弁別されている。すなわち、高電圧範囲は正の基準電圧V
REFと正の1/4基準電圧V
REF/4との間の電圧で規定され、中間電圧範囲は正の1/4基準電圧V
REF/4と負の1/4基準電圧−V
REF/4との間の電圧で規定され、低電圧範囲は負の1/4基準電圧−V
REF/4と負の基準電圧−V
REFとの間の電圧で規定される。
【0111】
サブA/D変換器10N−11によってアナログ入力電圧VINが正の基準電圧V
REFと正の1/4基準電圧V
REF/4の間の高電圧範囲に存在すると弁別されると、ハイレベル“1”のAD変換デジタル信号b
N−1がサブA/D変換器10N−11から生成される。この場合には、ハイレベル“1”のAD変換デジタル信号b
N−1に応答して、擬似乱数生成器10N−15とデジタル乗算器10N−16と第2サブD/A変換器10N−17とは、中間レベル“0”またはハイレベル“1”のディザーデジタル信号d
N−1を生成する。
【0112】
また、サブA/D変換器10N−11によってアナログ入力電圧VINが正の1/4基準電圧V
REF/4と負の1/4基準電圧−V
REF/4との間の中間電圧範囲に存在すると弁別されると、中間レベル“0”のAD変換デジタル信号b
N−1がサブA/D変換器10N−11から生成される。この場合には、中間レベル“0”のAD変換デジタル信号b
N−1に応答して、擬似乱数生成器10N−15とデジタル乗算器10N−16と第2サブD/A変換器10N−17とは、ローレベル“−1”または中間レベル“0”またはハイレベル“1”のディザーデジタル信号d
N−1を生成する。
【0113】
更にサブA/D変換器10N−11によってアナログ入力電圧VIN圧が負の1/4基準電圧−V
REF/4と負の基準電圧−V
REFとの間の低電圧範囲に存在すると弁別される場合には、低レベル“−1”のAD変換デジタル信号b
N−1がサブA/D変換器10N−11から生成される。この場合には、低レベル“−1”のAD変換デジタル信号b
N−1に応答して、擬似乱数生成器10N−15とデジタル乗算器10N−16と第2サブD/A変換器10N−17とは、ローレベル“−1”または中間レベル“0”のディザーデジタル信号d
N−1を生成する。
【0114】
図6は、アナログ入力電圧VINに応答して
図4に示した実施の形態2のパイプライン型A/D変換器のN−1段目のAD変換ステージ10N−1から生成されるアナログ残差信号V
OUTとAD変換デジタル信号b
N−1とディザーデジタル信号d
N−1とを説明する図である。
【0115】
図5でも説明したように、アナログ入力電圧VINが正の基準電圧V
REFと正の1/4基準電圧V
REF/4との間の高電圧範囲に存在すると弁別されると、ハイレベル“1”のAD変換デジタル信号b
N−1と中間レベル“0”またはハイレベル“1”のディザーデジタル信号d
N−1が生成される。ディザーデジタル信号d
N−1が中間レベル“0”の場合には、
図6の右側に示すように、アナログ残差信号V
OUTの電圧レベルは太い実線に示すように比較的高レベルとなる。ディザーデジタル信号d
N−1が高レベル“1”の場合には、
図6の右側に示すように、アナログ残差信号V
OUTの電圧レベルは太い破線に示すように比較的低レベルとなる。
【0116】
図5でも説明したように、正の1/4基準電圧V
REF/4と負の1/4基準電圧−V
REF/4の間の中間電圧範囲に存在すると弁別されると、中間レベル“0”のAD変換デジタル信号b
N−1とローレベル“−1”または中間レベル“0”またはハイレベル“1”のディザーデジタル信号d
N−1が生成されるものである。ディザーデジタル信号d
N−1が低レベル“−1”の場合には、
図6の中央に示すように、アナログ残差信号V
OUTの電圧レベルは上側の太い破線に示すように比較的高レベルとなる。ディザーデジタル信号d
N−1が中間レベル“0”の場合には、
図6の中央に示すように、アナログ残差信号V
OUTの電圧レベルは太い実線に示すように比較的中間レベルとなる。ディザーデジタル信号d
N−1がハイレベル“1”の場合には、
図6の中央に示すようにアナログ残差信号V
OUTの電圧レベルは下側の太い破線に示すように比較的低レベルとなる。
【0117】
以上のように
図3と
図4と
図5と
図6とを参照して説明した実施の形態2による電子システム1によれば、D/A変換ユニット11のDA変換アナログ出力信号DAOUTが直流電圧または低周波電圧である場合に、キャリブレーションユニット14の第1サーチエンジン141と第2サーチエンジン142のウェイト計算の収束速度の高速化が可能となる。その理由は、D/A変換ユニット11のDA変換アナログ出力信号DAOUTが直流電圧または低周波電圧である場合にも、A/D変換ユニット10から生成されるNビットのディザーデジタル信号dkに応答してキャリブレーションユニット14の第1サーチエンジン141と第2サーチエンジン142のウェイト計算が活性化されるためである。
【0118】
尚、
図3に示した実施の形態2のAD変換補償ユニット13における補償動作は、
図1の実施の形態1のようなウェイト係数Wkとデジタル信号bkの内積演算ではなく、ウェイト係数Wkとデジタル信号とディザーデジタル信号の加算信号(bk+αkdk)の内積演算となる。更に、この実施の形態2によるディザー利用によるウェイト計算収束技術は、シグマデルタA/D変換器等の量子化誤差を低減する目的でアナログ原入力信号にランダム雑音を印加すると言う良く知られている「ディザー技術」とは相違するものである。
【0119】
《A/D変換ユニットの他の構成》
図7は、
図3に示した実施の形態2による電子システム1においてAD変換デジタル信号bkとディザーデジタル信号dkとを生成するためのA/D変換ユニット10の他の構成を示す図である。
【0120】
図7に示した実施の形態2によるA/D変換ユニット10は、
図4に示したようなパイプライン型A/D変換器によって構成されるのではなく、逐次比較型A/D変換器によって構成されている。従って、
図7に示した実施の形態2によって逐次比較型A/D変換器の形態で構成されたA/D変換ユニット10は、アナログ比較器10Aとコントローラ10BとサブD/A変換器10Cによって構成されている。アナログ比較器10Aの非反転入力端子にアナログ入力信号ADINが供給される一方、アナログ比較器10の反転入力端子にサブD/A変換器10Cから生成されるアナログフィードバック電圧が供給される。
【0121】
逐次比較型A/D変換器のアナログ比較器10Aとコントローラ10BとサブD/A変換器10Cとがアナログ入力信号ADINとアナログフィードバック電圧との逐次比較動作を実行することによって、コントローラ10BにはNビットのAD変換デジタル信号b
1、b
2、b
3…b
N−1、b
Nが格納される。
【0122】
図7に示した実施の形態2による逐次比較型A/D変換器の形態で構成されたA/D変換ユニット10がNビットのAD変換デジタル信号bkとNビットのディザーデジタル信号dkとを生成するために、A/D変換ユニット10には擬似乱数生成器10Dとデジタル乗算器10Eと第2サブD/A変換器10Gと加算器10Hとが追加されている。
【0123】
コントローラ10Bから生成されるNビットのAD変換デジタル信号b
1、b
2、b
3…b
N−1、b
NがサブD/A変換器10Cに供給されるだけではなく、擬似乱数生成器10Dにも供給される。従って、擬似乱数生成器10Dは、ディザー生成制御信号Dither_genとコントローラ10Bから生成されるNビットのAD変換デジタル信号b
1、b
2、b
3…b
N−1、b
Nとに応答してNビットのディザーデジタル信号d
1、d
2、d
3…d
N−1、d
Nを生成する。その結果、デジタル乗算器EはNビットのディザーデジタル信号d
1、d
2、d
3…d
N−1、d
NとN個の所定のデジタル乗算係数α
kの乗算を実行するので、デジタル乗算器Eからデジタル乗算出力信号が生成される。第2サブD/A変換器10Gはデジタル乗算器10Eのデジタル乗算出力信号をディザーアナログ出力信号に変換して、加算器10HはサブD/A変換器10Cのアナログフィードバック電圧と第2サブD/A変換器10Gのディザーアナログ出力信号との加算を実行して、加算器10Hの加算信号はアナログ比較器10の反転入力端子に供給される。
【0124】
図4に示した実施の形態2のパイプライン型A/D変換器によって構成されたA/D変換ユニット10は複数のAD変換ステージ101、102…10N−1、10NによるパイプラインA/D変換動作によってNビットのAD変換デジタル信号bkとNビットのディザーデジタル信号dkを生成するものであった。
【0125】
それに対して、
図7に示した実施の形態2のA/D変換ユニット10は、アナログ比較器10Aとコントローラ10BとサブD/A変換器10Cと擬似乱数生成器10Dとデジタル乗算器10Eと第2サブD/A変換器10Gと加算器10Hを使用した逐次比較型A/D変換動作によってNビットのAD変換デジタル信号bkとNビットのディザーデジタル信号dkを生成するものである。
【0126】
[実施の形態3]
《電子システムの構成》
図8は、実施の形態3による電子システム1の構成を示す図である。
【0127】
図8に示す実施の形態3による電子システム1が
図3に示した実施の形態2による電子システム1と相違するのは、次の点である。
【0128】
すなわち、
図8に示す実施の形態3による電子システム1においては、
図3に示した実施の形態2による電子システム1に含まれていた第2DA変換補償ユニット16とセレクタユニット17とが省略され、その代わりに校正値算出部16Aと制御レジスタ16Bとが追加されている。
【0129】
その結果、
図8に示した実施の形態3による電子システム1に追加された校正値算出部16Aと制御レジスタ16Bは、キャリブレーションユニット14の第1サーチエンジン141から生成されるウェイト係数Xk(k=1、2…M)に応答して、D/A変換ユニット11の非線形性を補償するウェイト係数Yk(k=1、2…M)を生成するものである。従って、校正値算出部16Aと制御レジスタ16Bとから生成されるD/A変換ユニット11の非線形性を補償するウェイト係数Yk(k=1、2…M)は、D/A変換ユニット11に直接供給される。
【0130】
その結果、キャリブレーション動作期間の終了後の通常動作期間においては、校正値算出部16Aと制御レジスタ16BとからD/A変換ユニット11に供給されるウェイト係数Yk(k=1、2…M)は、D/A変換ユニット11の非線形性を補償するものである。
【0131】
一方、キャリブレーション動作期間に
図8に示す実施の形態3による電子システム1においては、実施の形態1と実施の形態2と全く同様に、D/A変換ユニット11の非線形性は第1DA変換補償ユニット15の動作特性によって補償される。
【0132】
一方、校正値算出部16Aと制御レジスタ16Bとから生成されるウェイト係数Yk(k=1、2…M)がD/A変換ユニット11に供給されることにより非線形性が補償されない場合のDA変換アナログ出力信号DAOUTは次式で算出される。
【0134】
それに対して、校正値算出部16Aと制御レジスタ16Bとから生成されるウェイト係数Yk(k=1、2…M)がD/A変換ユニット11に供給されることにより非線形性が補償される場合のDA変換アナログ出力信号DAOUTは次式で算出される。
【0136】
一方、キャリブレーション動作期間において、上記(3)式によって算出されるD/A変換ユニット11のDA変換アナログ出力信号DAOUTの理想値Value1と上記(7)式によって算出される非線形性が補償される場合のDA変換アナログ出力信号DAOUTを等しくするために、校正値算出部16Aは次式に従ってウェイト係数Yk(k=1、2…M)を算出する。
【0138】
《非線形性が補償されるD/A変換ユニットの構成》
図9は、
図8に示した実施の形態3による電子システム1において、校正値算出部16Aと制御レジスタ16Bとから生成されるウェイト係数Yk(k=1、2…M)がD/A変換ユニット11に供給されることにより非線形性が補償されるD/A変換ユニット11の構成を示す図である。
【0139】
図9に示すようにD/A変換ユニット11は、バイナリー型D/A変換器の形態を構成するように、ウェイト付けされた複数の電流源11A1、11B1…11C1と、DA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値D1、D2…DMが供給される複数のスイッチ11A2、11B2…11C2と、演算増幅器11Dと帰還抵抗11Eによって構成されている。すなわち、最上位ビットの電流源11A1は最大電流の2
M−1I
REFを流すようにウェイト付けされ、第2ビット目の電流源11A1は2番目の電流の2
M−2I
REFを流すようにウェイト付けされ、最下位ビットの電流源11C1は最小電流のI
REFを流すようにウェイト付けされている。
【0140】
DA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値D1、D2…DMに応答して複数のスイッチ11A2、11B2…11C2のオン・オフ状態が決定されて、帰還抵抗11Eに流れるDA変換アナログ電流が決定される。帰還抵抗11Eの抵抗値とDA変換アナログ電流の電流値の積によって、D/A変換ユニット11のDA変換アナログ出力信号DAOUTの電圧値が決定される。
【0141】
しかし、上述した構成のバイナリー型D/A変換器の形態を有するD/A変換ユニット11では、複数の電流源11A1、11B1…11C1の各電流値が理想のウェイト付けから誤差を有する場合が多いので、D/A変換ユニット11のD/A変換動作の非線形性が発生する。
【0142】
このD/A変換ユニット11の非線形性を補償するために、
図9に示したD/A変換ユニット11には、複数の補償用電流源11A3、11B3…11C3が追加されている。
図9では、簡素化のために、最上位ビットの補償用電流源11A3の構成のみが示されているが、その他の補償用電流源11B3…11C3も最上位ビットの補償用電流源11A3と同様に構成される。この最上位ビットの補償用電流源11A3は、等しくウェイト付けされた基準電流I
REFを流す複数の電流源とウェイト係数Ykの最初の係数Y1(複数ビット)に基づいて制御される複数のスイッチとによって構成されている。第2ビット目の補償用電流源11B3にはウェイト係数Ykの2番目の係数Y2(複数ビット)が供給され、最後の補償用電流源11C3にはウェイト係数Ykの最終番目の係数Y
M(複数ビット)が供給される。
【0143】
図8と
図9とを参照して説明した実施の形態3による電子システム1によれば、キャリブレーション動作終了後に得られたウェイト係数Xkを使用して上記(8)式によってウェイト係数Ykが得られ、D/A変換ユニット11の非線形性は校正値算出部16Aと制御レジスタ16BとからD/A変換ユニット11に供給されるウェイト係数Ykによって補償される。
【0144】
図8と
図9とを参照して説明した実施の形態3による電子システム1によれば、キャリブレーション動作期間の終了後の通常動作期間でも、D/A変換ユニット11の非線形性は、校正値算出部16Aと制御レジスタ16BからD/A変換ユニット11に供給されるウェイト係数Yk(k=1、2…M)により補償される。更にこの通常動作期間でも、A/D変換ユニット10の非線形性はAD変換補償ユニット13の動作特性によって相殺(キャンセル)されるものである。
【0145】
[実施の形態4]
《電子システムの構成》
図10は、実施の形態4による電子システム1の構成を示す図である。
【0146】
図10に示す実施の形態4による電子システム1が
図3に示した実施の形態2による電子システム1と相違するのは、次の点である。
【0147】
すなわち、
図10に示した実施の形態4による電子システム1においては、
図3に示した実施の形態2による電子システム1に含まれていた第1DA変換補償ユニット15とセレクタユニット17とが省略されている。
【0148】
その結果、キャリブレーション動作期間では、キャリブレーションユニット14の減算ユニット140に供給されるMビットのDA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値Dk(k=1、2…M)とAD変換補償ユニット13からのAD変換補償デジタル出力信号との差分が実質的にゼロとなるように、キャリブレーションユニット14が動作する。すなわち、キャリブレーションユニット14の減算ユニット140の誤差出力信号“e”に第1サーチエンジン141と第2サーチエンジン142とが応答して、第2DA変換補償ユニット16の動作特性とAD変換補償ユニット13の動作特性とが決定される。より詳細に説明すると、第2DA変換補償ユニット16の動作特性は参照用D/A変換ユニットとしてのD/A変換ユニット11のDA変換の非線形性を相殺(キャンセル)するように第1サーチエンジン141によって決定され、AD変換補償ユニット13の動作特性はA/D変換ユニット10のAD変換の非線形性を相殺(キャンセル)するように第2サーチエンジン142によって決定される。すなわち、AD変換補償ユニット13の動作特性はA/D変換ユニット10のAD変換での非線形性の逆方向変換に対応する一方、第2DA変換補償ユニット16の動作特性はD/A変換ユニット11のDA変換での非線形性の逆方向変換に対応するものである。従って、減算ユニット140の誤差出力信号“e”に第1サーチエンジン141と第2サーチエンジン142が応答して、第2DA変換補償ユニット16の補償デジタル値D´k(k=1、2…M)が第1サーチエンジン141により決定され、AD変換補償ユニット13のウェイト係数Wk(k=1、2…N)が第2サーチエンジン142により決定される。
【0149】
更に
図10に示した実施の形態4による電子システム1においては、キャリブレーション動作期間の後の通常動作期間においても第2DA変換補償ユニット16の動作特性は、D/A変換ユニット11のDA変換の非線形性を相殺(キャンセル)するものとなる。すなわち、第2DA変換補償ユニット16はその内部レジスタに格納された第1DA変換補償ユニット15のウェイト係数Xk(k=1、2…M)を使用することにより、第2DA変換補償ユニット16の動作特性が決定されるものである。すなわち、第2DA変換補償ユニット16の動作特性は、D/A変換ユニット11のDA変換の非線形性の逆方向変換に対応する。
【0150】
すなわち、第2DA変換補償ユニット16は、DA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値Dk(k=1、2…M)と内部レジスタに格納されたウェイト係数Xk(k=1、2…M)とを使用して、補償デジタル値D´k(k=1、2…M)を生成する。より詳細に説明すると第2DA変換補償ユニット16から生成される補償デジタル値D´k(k=1、2…M)は、DA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値Dk(k=1、2…M)をD/A変換ユニット11のDA変換の非線形性によって逆方向変換したものである。従って、キャリブレーション動作期間とその後の通常動作期間では、第2DA変換補償ユニット16の動作特性はD/A変換ユニット11のDA変換の非線形性を相殺(キャンセル)するものである。従って、低精度のD/A変換ユニット11を使用しても、高精度のDA変換アナログ出力信号DAOUTがDA変換出力用スイッチ18を介してD/A変換ユニット11の出力端子から生成されることが可能となる。
【0151】
更に、
図10に示した実施の形態4による電子システム1においても、
図1と
図2とを参照して説明した電子システム1と同様にDA変換ユニット11と比較して第2DA変換補償ユニット16は少なくともM倍速動作するように第2DA変換補償ユニット16が構成されるものである。
【0152】
[実施の形態5]
《電子システムの構成》
図11は、実施の形態5による電子システム1の構成を示す図である。
【0153】
図11に示した実施の形態5による電子システム1が
図3に示した実施の形態2による電子システム1と相違するのは、次の点である。
【0154】
すなわち、
図11に示した実施の形態5による電子システム1においては、
図3に示した実施の形態2による電子システム1のようにA/D変換ユニット10がキャリブレーションユニット14のウェイト計算の収束速度を改善するためのディザーデジタル信号dkを生成せずにD/A変換ユニット11がディザーアナログ出力信号を生成するものである。
【0155】
すなわち、
図11の実施の形態5による電子システム1では、キャリブレーション動作期間にD/A変換ユニット11がディザーアナログ出力信号を生成することにより、キャリブレーションユニット14の第1サーチエンジン141と第2サーチエンジン142とのウェイト計算の収束速度の改善が可能となる。
【0156】
一方、
図11の実施の形態5による電子システム1では、キャリブレーション動作期間後の通常動作期間では、D/A変換ユニット11がディザーアナログ出力信号の生成を停止する。
【0157】
《ディザーアナログ出力信号を生成するD/A変換ユニットの構成》
図12は、
図11に示した実施の形態5による電子システム1において、ディザー生成制御信号Dither_genに応答してディザーアナログ出力信号を生成するためのD/A変換ユニット11の構成を示す図である。
【0158】
図12に示したようにD/A変換ユニット11は、バイナリー型D/A変換器の形態を構成するように、ウェイト付けされた複数の電流源11A1、11B1…11C1と、DA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値D1、D2…DMが供給される複数のスイッチ11A2、11B2…11C2と、演算増幅器11Dと帰還抵抗11Eとによって構成されている。すなわち、最上位ビットの電流源11A1は最大電流の2
M−1I
REFを流すようにウェイト付けされ、第2ビット目の電流源11A1は2番目の電流の2
M−2I
REFを流すようにウェイト付けされ、最下位ビットの電流源11C1は最小電流のI
REFを流すようにウェイト付けされている。
【0159】
DA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値D1、D2…DMに応答して複数のスイッチ11A2、11B2…11C2のオン・オフ状態が決定されて、帰還抵抗11Eに流れるDA変換アナログ電流が決定される。帰還抵抗11Eの抵抗値とDA変換アナログ電流の電流値の積によって、D/A変換ユニット11のDA変換アナログ出力信号DAOUTの電圧値が決定される。
【0160】
更にこのD/A変換ユニット11はディザーアナログ出力信号を生成するために、擬似乱数生成器11Gとディザーアナログ電流生成部11Fとを含んでいる。擬似乱数生成器11Gは、キャリブレーション動作期間にディザー生成制御信号Dither_genと必要に応じてDA変換デジタル入力信号DAINのデジタル値Dk(k=1、2…M)とに応答してMビットのディザーデジタル信号d
1、d
2…d
Mを生成する。
【0161】
ディザーアナログ電流生成部11Fは、デジタル乗算係数α
1、α
2…α
Mによりウェイト付けされた複数のディザー電流源11A4、11B4…11C4とMビットのディザーデジタル信号d
1、d
2…d
Mが供給される複数のスイッチ11A3、11B3…11C3とによって構成されている。
【0162】
更に、キャリブレーション動作期間の後の通常動作期間において、ディザー生成制御信号Dither_genはローレベルとされ、擬似乱数生成器11Gは非活性化されて、Mビットのディザーデジタル信号d
1、d
2…d
Mは全て“0”となる。従って、D/A変換ユニット11のDA変換アナログ出力信号DAOUTには、ディザーアナログ電流生成部11Fのアナログ電流の成分は含まれなくなる。
【0163】
[実施の形態6]
図13は、ワイヤレスLANに使用される実施の形態6によるRFアナログ半導体集積回路1の構成を示す図である。
【0164】
図13に示すRFアナログ半導体集積回路1は、ワイヤレスLANの子機(LAN端末)と子機の通信パートナーの親機(アクセスポイントハブ)に共通に使用可能である。アンテナスイッチ132がアンテナ131に接続され、アンテナ131からレシーバーシステムへのRF受信入力信号の供給とトランスミッターシステムからアンテナ131へのRF送信出力信号の供給とを時分割多重アクセス方式(TDMA)で行う。
【0165】
図13に示したRFアナログ半導体集積回路1のダイレクト・ダウンコンバージョン・レシーバー・システムRF Rxは、IEEE802.11a規格の約5GHz(5.15GHz〜5.35GHz)の周波数帯域に対応するものである。そのために、ダイレクト・ダウンコンバージョン・レシーバー・システムRF Rxは、ローノイズアンプ1324、受信ミキサー1325、プログラマブルゲインアンプ1326、1328、ローパスフィルター1327で構成されている。ダイレクト・ダウンコンバージョン・レシーバー・システムRF Rxにより生成されたアナログ受信ベースバンド信号Rx_I、Rx_Qは受信A/D変換器Rx_A/Dの入力端子に供給され、受信A/D変換器Rx_A/Dの出力端子から生成されるデジタル受信ベースバンド信号は図示されていないベースバンド処理ユニットに供給される。
【0166】
図示されていないベースバンド処理ユニットから生成されるデジタル送信ベースバンド信号が送信D/A変換器Tx_D/Aの入力端子に供給されて、送信D/A変換器Tx_D/Aの出力端子からアナログ送信ベースバンド信号Tx_I、Tx_Qが生成される。アナログ送信ベースバンド信号Tx_I、Tx_Qは、ダイレクト・アップコンバージョン・トランスミッター・システムRF Txによって、IEEE802.11a規格の約5GHzの周波数帯域に変換される。ダイレクト・アップコンバージョン・トランスミッター・システムRF Txは、IEEE802.11a規格の約5GHzの周波数帯域に対応するため、ローパスフィルター1332、送信ミキサー1333、ドライバアンプ1335によって構成されている。RFアナログ半導体集積回路1の外部では、ドライバアンプ1335の出力端子にRFパワー増幅器1336とバンドパスフィルターBPFとが接続されている。また、RFアナログ半導体集積回路1の外部では、ローノイズアンプ1324の入力に表面弾性波フィルター133が接続されている。
【0167】
RFアナログ半導体集積回路1の受信ミキサー1325に供給される受信用ローカル信号と送信ミキサー1333に供給される送信用ローカル信号とは、ΣΔフラクショナルPLL周波数シンセサイザー1330から生成される。PLL周波数シンセサイザー1330にはシステム基準周波数発振器(TCXO)1339が接続され、RFアナログ半導体集積回路1の外部ではシステム基準周波数発振器1339には水晶振動子1340が接続されている。
【0168】
尚、システム基準周波数発振器(TCXO)1339をRFアナログ半導体集積回路1の外部に形成して、RFアナログ半導体集積回路1の内部にクロックバッファを形成してもよい。集積回路内部のクロックバッファは、外部のシステム基準周波数発振器(TCXO)1339から形成されたシステム基準周波数クロック信号を受信して、集積回路内部のΣΔフラクショナルPLL周波数シンセサイザー1330にクロック信号を供給する。
【0169】
図13に示した実施の形態6によるRFアナログ半導体集積回路1に集積化された送信D/A変換器Tx_D/Aの2個のD/A変換器と受信A/D変換器Rx_A/Dの2個のA/D変換器には、上述した実施の形態1乃至実施の形態5のいずれかの実施の形態によるD/A変換ユニット11とA/D変換ユニット10とがそれぞれ使用される。
【0170】
従って、
図13に示した実施の形態6によるRFアナログ半導体集積回路1では、上述した実施の形態1乃至実施の形態5のいずれかの実施の形態によるD/A変換ユニット11の非線形性の補償動作とA/D変換ユニット10の非線形性の補償動作とが実行されるものである。
【0171】
[実施の形態7]
図14は、シングルチップマイクロコンピュータとして構成された実施の形態7による半導体集積回路1の構成を示す図である。
【0172】
図14に示すシングルチップマイクロコンピュータとして構成された実施の形態7による半導体集積回路1は、CPUコア1410と周辺コア1420とアナログコア1430とを含んでいる。
【0173】
CPUコア1410は、中央処理ユニット(CPU)と浮動小数点演算ユニット(FPU)とデジタル乗算器(MULT)を有する処理ユニット1411と、内蔵不揮発性メモリ1412と、内蔵揮発性メモリ1413と内部電源電圧供給回路1414とを含んでいる。更に、CPUコア1410は、内部アドレスバスInt_Adr_Busと内部データバスInt_Dt_Busを含んでいる。尚、内蔵不揮発性メモリ1412は、オンチップフラッシュメモリによって構成されて、内蔵揮発性メモリ1413はオンチップRAM(ランダムアクセスメモリ)によって構成されたものである。
【0174】
CPUコア1410の内部アドレスバスInt_Adr_Busと内部データバスInt_Dt_Busには周辺コア1420とアナログコア1430とが接続されている。
【0175】
図14に示したように周辺コア1420は、ダイレクトメモリアクセスコントローラ1421とバスステートコントローラ1422と割り込みコントローラ1423とタイマー1424とコントローラエリアネットワーク1425と外部ポート1426とシリアルコミュニケーションインターフェース1427を含む。
【0176】
ダイレクトメモリアクセスコントローラ1421は、中央処理ユニット(CPU)からの指示に従って内蔵揮発性メモリ1413と半導体集積回路1の外部のメモリまたは入出力デバイス(I/O)の間で直接データ転送を実行することにより、このデータ転送の期間中に中央処理ユニット(CPU)はその他のタスクを実行することが可能なものである。
【0177】
バスステートコントローラ1422は、半導体集積回路1が接続されるSRAMやROM等の外部メモリを周辺アドレスバスPh_Adr_Busと周辺データバスPh_Dt_Busと外部ポート1426とを介してアクセスすることが可能なものである。
【0178】
割り込みコントローラ1423は、半導体集積回路1が接続される外部の入出力デバイスやその他の周辺機器からの割り込み要求を中央処理ユニット(CPU)に供給する。外部からの割り込み要求は外部ポート1426と周辺データバスPh_Dt_Busを介して割り込みコントローラ1423に供給され、割り込みコントローラ1423からの割り込み要求に応答して中央処理ユニット(CPU)はそれ以前に実行中の通常処理を中断した後に割り込み処理を実行する。この割り込み処理の実行が完了すると、中央処理ユニット(CPU)は中断した通常処理を再開するものである。
【0179】
タイマー1424は、ウオッチドッグタイマー等のハードウェア時間計測器である。例えばタイムアウト処理のための時間計測をタイマー1424が実行して、中央処理ユニット(CPU)の処理がハングアップの状態になった際に、システムリセット等の例外処理が実行されるものである。
【0180】
コントローラエリアネットワーク1425は、自動車における速度、エンジンの回転数、ブレーキの状態、故障診断の情報等の転送に使用され、耐ノイズ性の強化を考慮して設計され、相互接続された機器間のデータ転送に使われるものである。それ以外に機器の制御情報の転送用途にも普及しており、輸送用機械、工場、工作機械等のロボット分野においても利用可能である。
【0181】
外部ポート1426は、上述のように半導体集積回路1の外部デバイスをアクセスするために使用される。
【0182】
シリアルコミュニケーションインターフェース1427は、半導体集積回路1の外部デバイスとシリアルデータ通信を可能とするものである。
【0183】
アナログコア1430のアナログ・デジタル変換器(ADC)1431は半導体集積回路1の外部から供給されるアナログ入力信号をデジタル信号に変換して、デジタル信号は周辺データバスPh_Dt_Busとダイレクトメモリアクセスコントローラ21またはバスステートコントローラ22を介してCPUコア1410に供給される。
【0184】
アナログコア1430のデジタル・アナログ変換器(DAC)1432はCPUコア1410から生成されるデジタル信号をアナログ信号に変換して、アナログ信号を半導体集積回路1の外部に供給する。
【0185】
図14に示すシングルチップマイクロコンピュータとして構成された実施の形態7による半導体集積回路1に形成されたアナログ・デジタル変換器(ADC)1431とデジタル・アナログ変換器(DAC)1432には、上述した実施の形態1乃至実施の形態5のいずれかの実施の形態によるA/D変換ユニット10とD/A変換ユニット11とがそれぞれ使用される。
【0186】
従って、
図14に示した実施の形態7によるシングルチップマイクロコンピュータとして構成された半導体集積回路1では、上述した実施の形態1乃至実施の形態5のいずれかの実施の形態によるD/A変換ユニット11の非線形性の補償動作とA/D変換ユニット10の非線形性の補償動作とが実行されるものである。
【0187】
以上、本発明者によってなされた発明を種々の実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0188】
例えば、上述した各実施の形態におけるディザー信号は、乱数や擬似乱数のようなランダム信号だけでなく、周期信号のような規則的な信号やそれ以外の様々な信号を使用することができる。
【0189】
例えば、D/A変換ユニット11の非線形性の補償動作とA/D変換ユニット10の非線形性の補償動作とが実行される電子システム1は、プリント配線基板上に複数の半導体集積回路を搭載することにより実現されることが可能である。
【0190】
例えば、D/A変換ユニット11の非線形性の補償動作とA/D変換ユニット10の非線形性の補償動作とが実行される半導体集積回路1は、RFアナログ半導体集積回路とシングルチップマイクロコンピュータとに限定されず、その他の半導体集積回路に適用することも可能である。例えば、種々の用途に使用されるシステムLSIやシステムオンチップに適用することが可能である。