(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、同一画素に対応する前記第2色のインクの着弾位置と前記第3色のインクの着弾位置との中間位置と、前記第4色のインクの着弾位置との間の前記搬送方向における距離を、所定距離以下に制限することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したノズルの選択を行っても、各ヘッドモジュールの取付位置に主走査方向のずれがあるヘッドモジュール列では、主走査方向における各色のインクの着弾位置のずれが生じることがある。例えば、2色間では最大でノズルピッチの1/2のずれが生じる。また、4色以上では、最大でノズルピッチの3/4のずれが生じる。
【0008】
このため、ヘッドモジュール列ごとの、各ヘッドモジュールの主走査方向における位置ずれの状態の違いにより、ヘッドモジュール列ごとに用紙に着弾した各色のインクの重なり方が異なり、ヘッドモジュール列間で印刷画像に色差が生じることがあった。この結果、印刷画質が低下することがあった。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、印刷画質の低下を抑制できるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、用紙を搬送しつつ用紙に印刷を行う印刷部と、前記印刷部を制御する制御部とを備え、前記印刷部は、用紙の搬送方向に直交する印字幅方向に配列された互いに同じ色のインクを吐出する複数のヘッドモジュールからなり、前記搬送方向に並列配置され、互いに異なる色のインクを吐出する複数のヘッドモジュール群を有し、前記各ヘッドモジュールは、前記印字幅方向に所定のノズルピッチで配置された、インクを吐出する複数のノズルを有し、前記制御部は、それぞれ前記搬送方向に沿う同一列に配置された各色の前記ヘッドモジュールからなる複数のヘッドモジュール列における、各色の前記ヘッドモジュールの同一画素に対応する前記ノズルの前記印字幅方向における位置関係に応じて、少なくとも1つのヘッドモジュール列において、前記搬送方向における、同一画素に対応する各色のインクのうちの少なくとも1色のインクの着弾位置を他の色のインクの着弾位置からずらすように、前記各ヘッドモジュールのインク吐出タイミングを制御することにある。
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記印刷部は、第1色のインクを吐出する複数の前記ヘッドモジュールからなる第1ヘッドモジュール群と、第2色のインクを吐出する複数の前記ヘッドモジュールからなる第2ヘッドモジュール群との2つの前記ヘッドモジュール群を有し、前記制御部は、同一画素に対応する前記第1ヘッドモジュール群の前記ノズルの中心位置と前記第2ヘッドモジュール群の前記ノズルの中心位置との間の前記印字幅方向における距離が前記ノズルピッチの1/2以下となるように、前記第1および前記第2ヘッドモジュール群における前記ノズルの対応関係を決定し、同一画素に対応する前記第1色のインクの着弾位置と前記第2色のインクの着弾位置との間の距離が、印字幅方向最大ずれ量と略等しくなるように、前記各ヘッドモジュールのインク吐出タイミングを制御し、前記印字幅方向最大ずれ量は、前記複数のヘッドモジュール列のうち、前記第1ヘッドモジュール群の前記ヘッドモジュールと前記第2ヘッドモジュール群の前記ヘッドモジュールとの間での同一画素に対応する前記ノズルの前記印字幅方向におけるずれ量が最大のヘッドモジュール列における前記ずれ量であることにある。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴は、前記印刷部は、第1色のインクを吐出する複数の前記ヘッドモジュールからなる第1ヘッドモジュール群、第2色のインクを吐出する複数の前記ヘッドモジュールからなる第2ヘッドモジュール群、および第3色のインクを吐出する複数の前記ヘッドモジュールからなる第3ヘッドモジュール群の3つの前記ヘッドモジュール群を有し、前記制御部は、同一画素に対応する前記第1ヘッドモジュール群の前記ノズルの中心位置と前記第2ヘッドモジュール群の前記ノズルの中心位置との間の前記印字幅方向における距離が前記ノズルピッチの1/2以下となり、同一画素に対応する前記第2ヘッドモジュール群の前記ノズルの中心位置と前記第3ヘッドモジュール群の前記ノズルの中心位置との間の前記印字幅方向における距離が前記ノズルピッチの1/2以下となるように、前記第1乃至第3ヘッドモジュール群における前記ノズルの対応関係を決定し、同一画素に対応する前記第2色のインクの着弾位置と前記第3色のインクの着弾位置との間の距離が、印字幅方向最大ずれ量と略等しくなり、前記搬送方向において、前記第1色のインクの着弾位置が、前記第2色のインクの着弾位置と前記第3色のインクの着弾位置との中間位置と略同じになるように、前記各ヘッドモジュールのインク吐出タイミングを制御し、前記印字幅方向最大ずれ量は、前記複数のヘッドモジュール列のうち、前記第2ヘッドモジュール群の前記ヘッドモジュールと前記第3ヘッドモジュール群の前記ヘッドモジュールとの間での同一画素に対応する前記ノズルの前記印字幅方向におけるずれ量が最大のヘッドモジュール列における前記ずれ量であることにある。
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴は、前記印刷部は、第4色のインクを吐出する複数の前記ヘッドモジュールからなる第4ヘッドモジュール群をさらに有し、前記制御部は、同一画素に対応する前記第2ヘッドモジュール群の前記ノズルと前記
3第ヘッドモジュール群の前記ノズルとの前記印字幅方向における中間位置と、前記第4ヘッドモジュール群の前記ノズルの中心位置と
の間の前記印字幅方向における距離が前記ノズルピッチの1/2以下となるように、前記第1乃至第4ヘッドモジュール群における前記ノズルの対応関係を決定し、同一画素に対応する前記第2色のインクの着弾位置および前記第3色のインクの着弾位置の前記搬送方向における位置が略同じになるヘッドモジュール列では、前記搬送方向における前記第4色のインクの着弾位置と前記第2色のインクおよび前記第3色のインクの着弾位置との間の距離が、前記印字幅方向における前記第2色のインクの着弾位置と前記第3色のインクの着弾位置との間の距離の(√3)/2倍となるように、前記第4色のインク吐出タイミングを制御し、同一画素に対応する前記第2色のインクの着弾位置および前記第3色のインクの着弾位置の前記搬送方向における位置が異なるヘッドモジュール列では、前記第2色のインクの着弾位置と前記第4色のインクの着弾位置との間の距離と、前記第3色のインクの着弾位置と前記第4色のインクの着弾位置との間の距離とが略等しくなるように、前記第4色のインク吐出タイミングを制御することにある。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第5の特徴は、前記制御部は、同一画素に対応する前記第2色のインクの着弾位置と前記第3色のインクの着弾位置との中間位置と、前記第4色のインクの着弾位置との間の前記搬送方向における距離を、所定距離以下に制限することにある。
【0015】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第6の特徴は、前記印刷部は、第5色のインクを吐出する複数の前記ヘッドモジュールからなる第5ヘッドモジュール群をさらに有し、前記制御部は、同一画素に対応する、前記第1乃至第4色のうち前記第5色に色相が最も近い色の前記ヘッドモジュール群の前記ノズルの中心位置と、前記第5ヘッドモジュール群の前記ノズルの中心位置との間の距離が前記ノズルピッチの1/2以下となるように、前記第1乃至第5ヘッドモジュール群における前記ノズルの対応関係を決定し、同一画素に対応する前記第5色に色相が最も近い色のインクの着弾位置と前記第5色のインクの着弾位置とが、前記搬送方向において略等しい位置になるように、前記第5色のインク吐出タイミングを制御することにある。
【0016】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第7の特徴は、前記第1色はブラックであり、前記制御部は、前記第1ヘッドモジュール群の前記各ヘッドモジュールの前記各ノズルから吐出される前記第1色のインクの着弾位置の、前記搬送方向における位置が略等しくなるように、前記各ヘッドモジュール群の前記ヘッドモジュールのインク吐出タイミングを制御することにある。
【0017】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第8の特徴は、前記第2色は赤系の色であることにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、制御部は、複数のヘッドモジュール列における、各色のヘッドモジュールの同一画素に対応するノズルの印字幅方向における位置関係に応じて、各ヘッドモジュールのインク吐出タイミングを制御する。これにより、ヘッドモジュール列ごとの各ヘッドモジュールの印字幅方向における位置ずれの状態の違いに起因してヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を、搬送方向における各色のインクの着弾位置の調整により低減できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0019】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、制御部は、同一画素に対応する第1色のインクの着弾位置と第2色のインクの着弾位置との間の距離が、印字幅方向最大ずれ量と略等しくなるように、各ヘッドモジュールのインク吐出タイミングを制御する。これにより、2つのヘッドモジュール群を有するインクジェット印刷装置において、ヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を低減できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0020】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴によれば、制御部は、同一画素に対応する第2色のインクの着弾位置と第3色のインクの着弾位置との間の距離が、印字幅方向最大ずれ量と略等しくなり、搬送方向において、第1色のインクの着弾位置が、第2色のインクの着弾位置と第3色のインクの着弾位置との中間位置と略同じになるように、各ヘッドモジュールのインク吐出タイミングを制御する。これにより、3つのヘッドモジュール群を有するインクジェット印刷装置において、ヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を低減できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0021】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴によれば、制御部は、同一画素に対応する第2色のインクの着弾位置および第3色のインクの着弾位置の搬送方向における位置が略同じになるヘッドモジュール列では、搬送方向における第4色のインクの着弾位置と第2色のインクおよび第3色のインクの着弾位置との間の距離が、印字幅方向における第2色のインクの着弾位置と第3色のインクの着弾位置との間の距離の(√3)/2倍となるように、第4色のインク吐出タイミングを制御する。また、制御部は、同一画素に対応する第2色のインクの着弾位置および第3色のインクの着弾位置の搬送方向における位置が異なるヘッドモジュール列では、第2色のインクの着弾位置と第4色のインクの着弾位置との間の距離と、第3色のインクの着弾位置と第4色のインクの着弾位置との間の距離とが略等しくなるように、第4色のインク吐出タイミングを制御する。これにより、4つのヘッドモジュール群を有するインクジェット印刷装置において、ヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を低減できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0022】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第5の特徴によれば、同一画素に対応する第2色のインクの着弾位置と第3色のインクの着弾位置との中間位置と、第4色のインクの着弾位置との間の搬送方向における距離を、所定距離以下に制限する。これにより、第4色のドットが隣接するラインに近づきすぎて印刷画質に影響を与えることを回避できる。また、同一ラインにおいて、第4色のドットが第2色および第3色のドットから離れすぎることで色ずれが目立つようになることを抑制できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0023】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第6の特徴によれば、制御部は、同一画素に対応する第5色に色相が最も近い色のインクの着弾位置と第5色のインクの着弾位置とが、搬送方向において略等しい位置になるように、第5色のインク吐出タイミングを制御する。これにより、5つのヘッドモジュール群を有するインクジェット印刷装置において、ヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を低減できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0024】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第7の特徴によれば、第1色はブラックであり、制御部は、第1ヘッドモジュール群の各ヘッドモジュールの各ノズルから吐出される第1色のインクの着弾位置の、搬送方向における位置が略等しくなるように、各ヘッドモジュール群のヘッドモジュールのインク吐出タイミングを制御する。これにより、がたつきの目立ちやすい黒文字や黒の罫線等の印刷画像の低下を抑制できる。また、ブラック単色での印刷時の印刷画像の低下を抑制できる。
【0025】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第8の特徴によれば、第2色は赤系の色であるので、色ずれが目立ちやすい赤系の色の色ずれが抑えられ、ヘッドモジュール列間で印刷画像に色差が発生することを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0028】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図、
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部の概略構成図、
図3は、ヘッドユニットの平面図である。
【0030】
以下の説明において、
図2の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、
図2に示すように、前方から見て、上下左右を上下左右方向とする。
図2において、左から右へ向かう方向が用紙搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、用紙搬送方向における上流、下流を意味する。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、印刷部2と、画像読取部3と、制御部4とを備える。
【0032】
印刷部2は、用紙PAを搬送しつつ用紙PAに印刷を行う。印刷部2は、搬送部11と、ヘッドユニット12と、ヘッド駆動部13とを備える。
【0033】
搬送部11は、用紙PAを搬送する。
図1、
図2に示すように、搬送部11は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23,24,25と、モータ26と、エンコーダ27と、用紙センサ28とを備える。
【0034】
搬送ベルト21は、駆動ローラ22および従動ローラ23〜25に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト21には、用紙PAを吸着保持するためのベルト穴が多数形成されている。搬送ベルト21は、ファン(図示せず)の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により、用紙PAを吸着保持する。搬送ベルト21は、駆動ローラ22の駆動により
図2における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙PAを右方向へ搬送する。
【0035】
駆動ローラ22および従動ローラ23〜25は、搬送ベルト21が掛け渡されるものである。駆動ローラ22は、モータ26により回転駆動され、搬送ベルト21を回転させる。従動ローラ23〜25は、搬送ベルト21を介して駆動ローラ22に従動する。従動ローラ23は、駆動ローラ22と略同じ高さで、駆動ローラ22の左側に所定間隔だけ離間して配置されている。従動ローラ24,25は、駆動ローラ22および従動ローラ23の下方において、互いに左右方向に所定間隔だけ離間して、略同じ高さに配置されている。
【0036】
モータ26は、駆動ローラ22を回転駆動させる。
【0037】
エンコーダ27は、従動ローラ23の所定の回転角度ごとにパルス信号を出力する。
【0038】
用紙センサ28は、搬送ベルト21に吸着保持されて搬送される用紙PAを検出する。用紙センサ28は、搬送ベルト21の上方において、後述するインクヘッド32Kの上流側近傍に配置されている。用紙センサ28としては、発光素子および受光素子を有する光学式センサを適用できる。
【0039】
ヘッドユニット12は、搬送部11により搬送される用紙PAにインクを吐出して画像を印刷する。ヘッドユニット12は、搬送部11の上方に配置されている。ヘッドユニット12は、ヘッドホルダ31と、インクヘッド32K,32C,32M,32Yとを備える。なお、色の区別が必要ない場合等に、符号における色を示すアルファベットの添え字(K,C,M,Y)を省略して総括的に表記することがある。
【0040】
ヘッドホルダ31は、インクヘッド32を保持する函体である。ヘッドホルダ31の底面であるヘッドホルダ面31aには、後述する複数のヘッドモジュール41が取り付けられる複数の開口部(図示せず)が所定位置に形成されている。
【0041】
インクヘッド32K,32C,32M,32Yは、それぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを、搬送される用紙PAに吐出する。インクヘッド32K,32C,32M,32Yは、上流側からこの順で、互いに間隔をおいて左右方向に並列配置されている。インクヘッド32K,32C,32M,32Yは、ライン型のインクジェットヘッドであり、それぞれヘッドモジュール41K,41C,41M,41Yを複数有する。本実施の形態では、インクヘッド32K,32C,32M,32Yは、
図3に示すように、それぞれヘッドモジュール41K,41C,41M,41Yが6個ずつ配列されて構成されている。インクヘッド32は、請求項のヘッドモジュール群に相当する。
【0042】
ヘッドモジュール41は、用紙搬送方向(副走査方向)に略直交する印字幅方向(主走査方向)である前後方向に所定のノズルピッチPで配置された複数のノズルを有し、ノズルからインクを吐出する。ヘッドモジュール41は、ヘッドホルダ面31aの開口部に挿通され、下端部がヘッドホルダ面31aから下方に突出するように取り付けられている。インクヘッド32において、6個のヘッドモジュール41は、千鳥配置されている。具体的には、6個のヘッドモジュール41は、印字幅方向に配列され、かつ、1つおきに用紙搬送方向における位置をずらして配置されている。換言すると、4色分の合計24個のヘッドモジュール41が、それぞれ用紙搬送方向に沿う同一列の各色のヘッドモジュール41K,41C,41M,41Yからなる6列のヘッドモジュール列51A,51B,51C,51D,51E,51Fを形成するように配置されている。なお、ヘッドモジュール列51A〜51Fの符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0043】
ヘッド駆動部13は、インクヘッド32を駆動させる。具体的には、ヘッド駆動部13は、各インクヘッド32の各ヘッドモジュール41を駆動させ、ノズルからインクを吐出させる。
【0044】
画像読取部3は、原稿画像を光学的に読み取り、画像データを生成する。
【0045】
制御部4は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部4は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。制御部4は、印刷動作において、ヘッドモジュール列51A〜51Fにおける、各色のヘッドモジュール41の同一画素に対応するノズルの印字幅方向における位置関係に応じて、少なくとも1つのヘッドモジュール列51において、用紙搬送方向における、同一画素に対応する各色のインクのうちの少なくとも1色のインクの着弾位置を他の色のインクの着弾位置からずらすように、各ヘッドモジュール41のインク吐出タイミングを制御する。インク吐出タイミングの制御については後述する。
【0046】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0047】
印刷時において、制御部4は、モータ26により搬送部11を駆動させる。図示しない給紙部から用紙PAが給紙されると、搬送部11が用紙PAを搬送する。そして、制御部4は、画像データに基づきヘッド駆動部13によりインクヘッド32K,32C,32M,32Yを駆動させ、搬送される用紙PAに画像を形成させる。この際、制御部4は、各画素に各色のインクを着弾させるように、各インクヘッド32K,32C,32M,32Yを順次駆動させる。
【0048】
ところで、前述のように、各インクヘッド32の各ヘッドモジュール41は、ヘッドホルダ面31aの所定位置に形成された開口部に取り付けられている。しかしながら、ヘッドモジュール41の取付位置に、ずれが生じていることがある。インクジェット印刷装置1では、ヘッドモジュール41の取付位置のずれに起因する、ヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を低減するように各ヘッドモジュール41のインク吐出タイミングを制御する。
【0049】
このようなインク吐出タイミングの制御のための、ヘッドモジュール41ごとの吐出タイミング補正量を決定する処理について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0050】
まず、
図4のステップS1において、制御部4は、印刷部2により規定のパターン画像を用紙PAに印刷させる。パターン画像は、各インクヘッド32の各ヘッドモジュール41における同じノズル番号のノズルから、同じライン上にドットを形成するために予め設定されたタイミングでインクを吐出させるための画像である。ノズル番号は、主走査方向における一端側から何番目のノズルであるかを示すものである。
【0051】
パターン画像の印刷が終了すると、ユーザが、パターン画像が印刷された用紙PAを画像読取部3に読み取らせる操作を行う。これに応じて、制御部4は、
図4のステップS2において、印刷されたパターン画像を画像読取部3に読み取らせる。画像読取部3は、印刷されたパターン画像を読み取って得られた画像データを制御部4へ出力する。
【0052】
次いで、ステップS3において、制御部4は、印刷されたパターン画像の画像データを解析し、各ヘッドモジュール41による各ドットの重心位置を求める。
【0053】
ここで、すべてのヘッドモジュール41が本来の位置に正確に取り付けられ、取付位置にずれがない場合、各ヘッドモジュール列51において、各色のドットの重心位置が重なる。また、全ヘッドモジュール列51におけるドットの重心位置の用紙搬送方向における位置が同じとなる。これに対し、ヘッドモジュール41の取付位置にずれがある場合、ドットの重心位置に、印字幅方向および用紙搬送方向の少なくともいずれか一方におけるずれが発生する。
【0054】
なお、各ヘッドモジュール41において複数のノズルからインクを吐出させるパターン画像を用い、各ヘッドモジュール41における複数のドットの重心位置の平均を、各ヘッドモジュール41におけるドットの重心位置としてもよい。
【0055】
次いで、ステップS4において、制御部4は、各ヘッドモジュール41における第1タイミング補正量を求める。第1タイミング補正量は、用紙搬送方向におけるヘッドモジュール41の取付位置のずれによる着弾位置のずれを補正するためのものである。
【0056】
具体的には、まず、制御部4は、Kインクを吐出する6つのヘッドモジュール41Kのうちの1つを基準モジュールとする。次いで、制御部4は、基準モジュール以外の各ヘッドモジュール41について、当該ヘッドモジュール41によるドットの重心位置と、基準モジュールによるドットの重心位置との用紙搬送方向における距離(ずれ量)を求める。そして、制御部4は、その距離を搬送部11による搬送速度で搬送するのに要する時間を、各ヘッドモジュール41における第1タイミング補正量とする。ここで、基準モジュールによるドットに対する上流側のずれに対しては、第1タイミング補正量を負の値とする。基準モジュールおける第1タイミング補正量はゼロとなる。
【0057】
そして、制御部4は、用紙搬送方向における各ドットの重心位置が基準モジュールによるドットの重心位置と同じになるように、各ドットの重心位置を用紙搬送方向にシフトさせる。
【0058】
次いで、ステップS5において、制御部4は、各ヘッドモジュール列51におけるKに対するMのノズル対応関係を決定する。具体的には、まず、制御部4は、各ヘッドモジュール列51におけるKのドットの重心位置とMのドットの重心位置との間の印字幅方向における距離を求める。
【0059】
この距離がP/2(半ピッチ)を超えるヘッドモジュール列51がある場合、制御部4は、そのヘッドモジュール列51において、ヘッドモジュール41K,41Mにおけるノズル番号の対応関係を変更する。具体的には制御部4は、ヘッドモジュール41Kのノズルに対して、同一画素に対応するヘッドモジュール41Mのノズルの印字幅方向におけるずれ量がP/2以下となるように、ノズル番号の対応関係を変更する。例えば、ヘッドモジュール41KのN番のノズルとヘッドモジュール41Mの(N+1)番のノズルとが、同一画素に対応するように決定される。そして、制御部4は、ヘッドモジュール41K,41Mにおけるノズル番号の対応関係を変更した場合、その変更に応じてMのドットの重心位置を印字幅方向にシフトさせる。
【0060】
一方、Kのドットの重心位置とMのドットの重心位置との間の印字幅方向における距離がP/2以下のヘッドモジュール列51については、制御部4は、ヘッドモジュール41Kとヘッドモジュール41Mとで同一ノズル番号のノズルを同一画素に対応するように決定する。
【0061】
この段階における、同一画素に対応するKのドットDkn(n=1,2,…)およびMのドットDmn(n=1,2,…)の位置関係の例を
図5(a)に示す。ここで、n=1,2,…は、ヘッドモジュール列51の前側からの配列順に対応する。1列目がヘッドモジュール列51A、6列目がヘッドモジュール列51Fである。
図5における各色のドットの重心位置の印字幅方向における位置関係は、各色のヘッドモジュール41の同一画素に対応するノズルの中心位置の印字幅方向における位置関係に対応する。なお、
図5では、便宜上、3列目のヘッドモジュール列51Cまでを示している。
【0062】
図5(a)に示すように、印字幅方向におけるドットDknの重心位置とドットDmnの重心位置との間の距離をXanとする。Xanは、P/2以下になっている。なお、
図5(a)における破線のドットは、ドットDmnに対応するノズルの隣のノズルからインクが吐出された場合に形成されるドットの位置を示している。
【0063】
図4に戻り、ステップS5の後、ステップS6において、制御部4は、各ヘッドモジュール列51におけるKに対するCのノズル対応関係を決定する。具体的には、まず、制御部4は、各ヘッドモジュール列51におけるMのドットDmnの重心位置とCのドットの重心位置との間の印字幅方向における距離を求める。ここで、ステップS5においてヘッドモジュール41K,41Mにおけるノズル番号の対応関係を変更した場合、MのドットDmnの重心位置は、前述のように印字幅方向にシフトされた後の位置になっている。
【0064】
そして、MのドットDmnの重心位置とCのドットの重心位置との間の印字幅方向における距離がP/2を超えるヘッドモジュール列51がある場合、制御部4は、そのヘッドモジュール列51において、ヘッドモジュール41K,41Cにおけるノズル番号の対応関係を変更する。具体的には、制御部4は、ヘッドモジュール41Mとヘッドモジュール41Cとで同一画素に対応するノズルの中心位置の印字幅方向におけるずれ量がP/2以下となるように、ヘッドモジュール41K,41Cにおけるノズル番号の対応関係を変更する。例えば、ヘッドモジュール41KのN番のノズルとヘッドモジュール41Cの(N+1)番のノズルとが、同一画素に対応するように決定される。そして、制御部4は、ヘッドモジュール41K,41Cにおけるノズル番号の対応関係を変更した場合、その変更に応じてCのドットの重心位置を印字幅方向にシフトさせる。
【0065】
一方、MのドットDmnの重心位置とCのドットの重心位置との間の印字幅方向における距離がP/2以下のヘッドモジュール列51については、制御部4は、ヘッドモジュール41Kとヘッドモジュール41Cとで同一ノズル番号のノズルを同一画素に対応するように決定する。
【0066】
上述のようなステップS5,S6により、インクヘッド32K,32M,32Cにおけるノズルの対応関係が決定される。これにより、同一画素に対応するインクヘッド32Kのノズルの中心位置とインクヘッド32Mのノズルの中心位置との間の印字幅方向における距離がP/2以下となる。また、同一画素に対応するインクヘッド32Mのノズルの中心位置とインクヘッド32Cのノズルの中心位置との間の印字幅方向における距離がP/2以下となる。
【0067】
この段階における、同一画素に対応するKのドットDkn、MのドットDmn、およびCのドットDcnの位置関係の例を
図5(b)に示す。
図5(b)に示すように、印字幅方向におけるドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置との間の距離をXbnとする。Xbnは、P/2以下になっている。なお、
図5(b)における破線のドットは、ドットDcnに対応するノズルの隣のノズルからインクが吐出された場合に形成されるドットの位置を示している。
【0068】
図4に戻り、ステップS6の後、ステップS7において、制御部4は、Mのヘッドモジュール41MおよびCのヘッドモジュール41Cにおける第2タイミング補正量を求める。第2タイミング補正量は、印字幅方向におけるヘッドモジュール41の取付位置のずれに起因する、ヘッドモジュール列間における印刷画像の色差を低減するために、用紙搬送方向におけるインクの着弾位置を調整するためのものである。
【0069】
具体的には、まず、制御部4は、印字幅方向最大ずれ量を算出する。印字幅方向最大ずれ量は、ヘッドモジュール列51A〜51Fのうち、ヘッドモジュール41Mとヘッドモジュール41Cとの間での同一画素に対応するノズルの印字幅方向におけるずれ量が最大のヘッドモジュール列51におけるずれ量である。すなわち、
図5におけるXbnの最大値Xbmaxが印字幅方向最大ずれ量となる。
図5の例では、ヘッドモジュール列51CのドットDm3の重心位置とドットDc3の重心位置との間の距離Xb3が、印字幅方向最大ずれ量Xbmaxであるとする。
【0070】
次いで、制御部4は、Xbnが印字幅方向最大ずれ量Xbmaxとなっているヘッドモジュール列51以外のヘッドモジュール列51において、
図5(c)に示すように、MのドットDmnを用紙搬送方向にYanだけシフトさせる。Yanは、ドットDmnを用紙搬送方向にシフトさせてドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置との間の距離が印字幅方向最大ずれ量Xbmaxと略等しくなるようにするためのシフト量である。
【0071】
図5の例では、ヘッドモジュール列51C以外のヘッドモジュール列51において、ドットDmnを用紙搬送方向にYanだけシフトさせる。
図5の例におけるヘッドモジュール列51Aであれば、
図6に示すように、ドットDm1を用紙搬送方向にYa1だけシフトさせることで、ドットDm1とドットDc1との間の距離が印字幅方向最大ずれ量Xbmaxとなる。
図6から分かるように、シフト量Yanは、以下の式(1)により算出される。
【0072】
Yan=√(Xbmax
2−Xbn
2) …(1)
なお、
図5、
図6の例では、ドットDmnを上流側へシフトさせているが、下流側へシフトさせてもよい。
【0073】
次いで、制御部4は、
図5(d)に示すように、
図5(c)でドットDmnをシフトさせた方向と反対方向に、ドットDmnおよびドットDcnをYan/2だけシフトさせる。これにより、用紙搬送方向において、ドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置との中間点Gnの位置が、KのドットDknの重心位置と略同じになる。
【0074】
そして、制御部4は、Yan/2を搬送部11による搬送速度で搬送するのに要する時間を、ヘッドモジュール41Mおよびヘッドモジュール41Cにおける第2タイミング補正量として求める。ここで、ドットDknの重心位置に対して上流側へシフトしているドットDmnまたはドットDcnに対応するヘッドモジュール41については、第2タイミング補正量を負の値とする。
【0075】
図5(d)に示した例では、ドットDm1に対応するヘッドモジュール列51Aのヘッドモジュール41M、およびドットDm2に対応するヘッドモジュール列51Bのヘッドモジュール41Mにおける第2タイミング補正量は負の値となる。一方、ドットDc1に対応するヘッドモジュール列51Aのヘッドモジュール41C、およびドットDc2に対応するヘッドモジュール列51Bのヘッドモジュール41Cにおける第2タイミング補正量は正の値となる。なお、ドットDm3に対応するヘッドモジュール列51Cのヘッドモジュール41M、およびドットDc3に対応するヘッドモジュール列51Cのヘッドモジュール41Cにおける第2タイミング補正量はゼロとなる。
【0076】
図4に戻り、ステップS7の後、ステップS8において、制御部4は、各ヘッドモジュール列51におけるKに対するYのノズル対応関係を決定する。具体的には、まず、制御部4は、各ヘッドモジュール列51における中間点GnとYのドットの重心位置との間の印字幅方向における距離を求める。
【0077】
そして、中間点GnとYのドットの重心位置との間の印字幅方向における距離がP/2を超えるヘッドモジュール列51がある場合、制御部4は、そのヘッドモジュール列51において、ヘッドモジュール41K,41Yにおけるノズル番号の対応関係を変更する。具体的には、制御部4は、同一画素に対応するヘッドモジュール41Mのノズルとヘッドモジュール41Cのノズルとの印字幅方向における中間位置と、ヘッドモジュール41Yのノズルの中心位置との間の距離がノズルピッチの1/2以下となるように、ヘッドモジュール41K,41Yにおけるノズル番号の対応関係を変更する。例えば、ヘッドモジュール41KのN番のノズルとヘッドモジュール41Yの(N+1)番のノズルとが、同一画素に対応するように決定される。そして、制御部4は、ヘッドモジュール41K,41Yにおけるノズル番号の対応関係を変更した場合、その変更に応じてYのドットの重心位置を印字幅方向にシフトさせる。
【0078】
一方、中間点GnとYのドットの重心位置との間の印字幅方向における距離がP/2以下のヘッドモジュール列51については、制御部4は、ヘッドモジュール41Kとヘッドモジュール41Yとで同一ノズル番号のノズルを同一画素に対応するように決定する。
【0079】
上述のようなステップS8により、インクヘッド32K,32Yにおけるノズルの対応関係が決定される。前述のステップS5,S6によりインクヘッド32K,32M,32Cにおけるノズルの対応関係が決定されているため、ステップS8により、インクヘッド32K,32M,32C,32Yにおけるノズルの対応関係が決定する。この結果、同一画素に対応するインクヘッド32Mのノズルとインクヘッド32Cのノズルとの印字幅方向における中間位置と、インクヘッド32Yのノズルの中心位置との間の印字幅方向における距離がP/2以下となる。
【0080】
この段階における、同一画素に対応するKのドットDkn、MのドットDmn、CのドットDcn、およびYのドットDynの位置関係の例を
図5(e)に示す。
図5(e)に示すように、印字幅方向における中間点GnとドットDynの重心位置との間の距離をXcnとする。Xcnは、P/2以下になっている。なお、
図5(e)における破線のドットは、ドットDynに対応するノズルの隣のノズルからインクが吐出された場合に形成されるドットの位置を示している。
【0081】
図4に戻り、ステップS8の後、ステップS9において、制御部4は、Yのヘッドモジュール41Yにおける第2タイミング補正量を求める。
【0082】
具体的には、制御部4は、
図5(f)に示した、YのドットDynの用紙搬送方向へのシフト量Ybnを求める。シフト量Ybnの求め方は後述する。そして、制御部4は、Ybnを搬送部11による搬送速度で搬送するのに要する時間を、ヘッドモジュール41Yにおける第2タイミング補正量として求める。ここで、ドットDknの重心位置に対して上流側へシフトしているドットDynに対応するヘッドモジュール41Yについては、第2タイミング補正量を負の値とする。
【0083】
シフト量Ybnは、ドットDynを用紙搬送方向にシフトさせたときに、ドットDmnの重心位置とドットDynの重心位置との間の距離と、ドットDcnの重心位置とドットDynの重心位置との間の距離とが略等しくなるようにするためのシフト量である。
【0084】
シフト量Ybnの求め方について、
図5のヘッドモジュール列51Aにおけるシフト量Yb1の求め方を例にして、
図7を参照して説明する。
【0085】
制御部4は、
図7(a)に示すような、ドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置とを結ぶ線分L1に直交し中間点G1を通る直線L2と、ドットDynの重心位置を通る用紙搬送方向に平行な直線L3との交点Cの位置を求める。そして、制御部4は、用紙搬送方向における中間点G1と交点Cとの間の距離を、シフト量Yb1として求める。
【0086】
これにより、ドットDy1を用紙搬送方向へシフト量Yb1だけシフトさせると、
図7(b)に示す、ドットDm1の重心位置とドットDy1の重心位置との間の距離Rmyと、ドットDc1の重心位置とドットDy1の重心位置との間の距離Rcyとが略等しくなる。なお、
図5、
図7の例では、ドットDy1を用紙搬送方向の下流側へシフトさせているが、上流側へシフトさせてもよい。
【0087】
ところで、シフト量Ybnを求める際、用紙搬送方向におけるドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置とが略同じ位置になるヘッドモジュール列51では、上述した方法でシフト量Ybnを求めることはできない。その理由は次のとおりである。
【0088】
まず、用紙搬送方向におけるドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置とが略同じである場合において、印字幅方向におけるドットDynの重心位置が、ドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置との中間ではない場合、ドットDynを用紙搬送方向へシフトさせても、ドットDmnの重心位置とドットDynの重心位置との間の距離と、ドットDcnの重心位置とドットDynの重心位置との間の距離とが略等しくなるようにすることはできない。
【0089】
一方、印字幅方向におけるドットDynの重心位置が、ドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置との中間にある場合、ドットDynを用紙搬送方向へどれだけシフトさせても、ドットDmnの重心位置とドットDynの重心位置との間の距離と、ドットDcnの重心位置とドットDynの重心位置との間の距離とが略等しくなる。このため、シフト量Ybnを決めることができない。
【0090】
そこで、用紙搬送方向におけるドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置とが略同じ位置である場合、制御部4は、印字幅方向におけるドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置との間の距離Xbnの(√3)/2倍を、シフト量Ybnとする。
【0091】
例えば、
図5の例では、ヘッドモジュール列51Cにおいて、用紙搬送方向におけるドットDm3の重心位置とドットDc3の重心位置とが略同じである。そこで、
図8に示すように、ドットDm3の重心位置とドットDc3の重心位置との間の距離Xb3の(√3)/2倍が、シフト量Yb3となる。
【0092】
印字幅方向におけるドットDynの重心位置が、ドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置との中間にある場合は、
図9のようになる。
図9の例では、MのドットDmxの重心位置とCのドットDcxの重心位置との間の距離Xbxの(√3)/2倍が、YのドットDyxのシフト量Ybxとなる。この場合、ドットDmxの重心位置と、ドットDcxの重心位置と、ドットDyxの重心位置とが、正三角形の頂点をなす配置となる。
【0093】
このように、Xbnの(√3)/2倍をシフト量Ybnとすることで、印字幅方向におけるドットDynの重心位置がドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置との中間にある場合では、
図9のように、ドットDmn,Dcn,Dynの相互の距離を均等にできる。印字幅方向におけるドットDynの重心位置がドットDmnの重心位置とドットDcnの重心位置との中間ではない場合は、
図8のように、ドットDmn,Dcn,Dynを相互にある程度離れた位置とすることができる。
【0094】
ここで、シフト量Ybnが大きすぎる場合、すなわち、第2タイミング補正量が大きすぎる場合、印刷時において、Yのドットが隣接するラインに近づきすぎて印刷画質に影響するおそれがある。また、同一ラインにおいて、Yのドットが、M,Cのドットから離れすぎることで、色ずれが目立つおそれがある。そこで、シフト量Ybnを所定距離以下に制限する。具体的には、制御部4は、上述のようにして求めたシフト量YbnがP/2を超える場合、シフト量Ybn=P/2とする。
【0095】
図4に戻り、ステップS9の後、ステップS10において、制御部4は、各ヘッドモジュール41について、第1タイミング補正量と第2タイミング補正量との合計の吐出タイミング補正量ΔTを求める。そして、制御部4は、各ヘッドモジュール41の吐出タイミング補正量ΔTを記憶する。以上により、吐出タイミング補正量決定処理が終了となる。
【0096】
吐出タイミング補正量ΔTは、ヘッドモジュール41の交換等を行わない限り、継続して使用できる。したがって、インクジェット印刷装置1において、ヘッドモジュール41の交換等が発生しない限り、上述した吐出タイミング補正量決定処理は、一度行っておけばよい。
【0097】
印刷動作において、制御部4は、
図10に示すように、基準クロックおよび基準位置信号に基づき、ヘッド駆動部13によるヘッドモジュール41の駆動タイミングを制御している。基準クロックは、エンコーダ27の出力信号、またはエンコーダ27の出力信号から生成されるクロック信号である。基準位置信号は、用紙センサ28で用紙PAの先端が検出されたタイミングで生成される信号である。制御部4は、
図10に示すように、本来の駆動タイミングから吐出タイミング補正量ΔTだけ時間をずらして各ヘッドモジュール41を駆動させる。
【0098】
これにより、制御部4は、各色のインクが用紙PAに着弾して形成される各色のドットが、
図5(f)に示したドットDkn,Dmn,Dcn,Dynと同様の位置関係になるように、各ヘッドモジュール41のインク吐出タイミングを制御することになる。
【0099】
すなわち、制御部4は、同一画素に対応するMインクの着弾位置とCインクの着弾位置との間の距離が、印字幅方向最大ずれ量と略等しくなり、用紙搬送方向において、Kインクの着弾位置が、Mインクの着弾位置とCインクの着弾位置との中間位置と略同じになるように、ヘッドモジュール41K,41M,41Cのインク吐出タイミングを制御する。
【0100】
また、制御部4は、同一画素に対応するMインクの着弾位置およびCインクの着弾位置の用紙搬送方向における位置が略同じになるヘッドモジュール列51では、用紙搬送方向におけるYインクの着弾位置とMインクおよびCインクの着弾位置との間の距離が、印字幅方向におけるMインクの着弾位置とCインクの着弾位置との間の距離の(√3)/2倍となるように、ヘッドモジュール41Yのインク吐出タイミングを制御する。
【0101】
また、制御部4は、同一画素に対応するMインクの着弾位置およびCインクの着弾位置の用紙搬送方向における位置が異なるヘッドモジュール列51では、Mインクの着弾位置とYインクの着弾位置との間の距離と、Cインクの着弾位置とYインクの着弾位置との間の距離とが略等しくなるように、ヘッドモジュール41Yのインク吐出タイミングを制御する。
【0102】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部4は、ヘッドモジュール列51A〜51Fにおける、各色のヘッドモジュール41の同一画素に対応するノズルの印字幅方向における位置関係に応じて、少なくとも1つのヘッドモジュール列51において、用紙搬送方向における、同一画素に対応する各色のインクのうちの少なくとも1色のインクの着弾位置を他の色のインクの着弾位置からずらすように、各ヘッドモジュール41のインク吐出タイミングを制御している。これにより、ヘッドモジュール列51ごとの各ヘッドモジュール41の印字幅方向における位置ずれの状態の違いに起因してヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を、用紙搬送方向における各色のインクの着弾位置の調整により低減できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0103】
具体的には、制御部4は、各色のインクが用紙PAに着弾して形成される各色のドットが、
図5(f)に示したドットDkn,Dmn,Dcn,Dynと同様の位置関係になるように、各ヘッドモジュール41のインク吐出タイミングを制御する。
【0104】
これにより、同一画素に対応するMインクの着弾位置とCインクの着弾位置との間の距離が、すべてのヘッドモジュール列51で略等しくなる。また、各ヘッドモジュール列51で、用紙搬送方向において、MインクとCインクとの中間にKインクが着弾している。さらに、各ヘッドモジュール列51において、Mインクの着弾位置とYインクの着弾位置との間の距離と、Cインクの着弾位置とYインクの着弾位置との間の距離とが略等しくなる。なお、同一画素に対応するMインクの着弾位置およびCインクの着弾位置の用紙搬送方向における位置が略同じであって、印字幅方向におけるYインクの着弾位置が、Mインクの着弾位置とCインクの着弾位置との中間ではないヘッドモジュール列51では、Mインクの着弾位置とYインクの着弾位置との間の距離と、Cインクの着弾位置とYインクの着弾位置との間の距離とが略等しくはならないが、Mインク、Cインク、Yインクが互いにある程度離れた位置に着弾する。
【0105】
上記のような着弾位置の関係になっているドットイメージの一例を
図11(a)に示す。比較例として、従来のように各色のインクの着弾位置を用紙搬送方向において一致させたドットイメージを
図11(b)に示す。
図11(a)のように各色のインクの着弾位置を用紙搬送方向において調整することにより、
図11(b)と比較して、ヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を低減できる。これにより、印刷画質の低下を抑制できる。
【0106】
また、制御部4は、シフト量YbnをP/2以下に制限している。すなわち、制御部4は、同一画素に対応するMインクの着弾位置とCインクの着弾位置との中間位置と、Yインクの着弾位置との間の用紙搬送方向における距離が、P/2以下になるように制限している。これにより、Yのドットが隣接するラインに近づきすぎて印刷画質に影響を与えることを回避できる。また、同一ラインにおいて、YのドットがM,Cのドットから離れすぎることで色ずれが目立つようになることを抑制できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0107】
また、制御部4は、インクヘッド32Kの各ヘッドモジュール41Kから吐出されるKインクの着弾位置の、用紙搬送方向における位置が略等しくなるように制御している。これにより、がたつきの目立ちやすい黒文字や黒の罫線等の印刷画像の低下を抑制できる。また、K単色での印刷時の印刷画像の低下を抑制できる。ここで、ブラック(K)が請求項の第1色に相当する。
【0108】
また、インクジェット印刷装置1では、吐出タイミング補正量決定処理において、第1色であるブラック(K)を基準とし、マゼンタ(M)を第2色、シアン(C)を第3色、イエロー(Y)を第4色としている。そして、色ずれが目立ちやすい赤系の色であるMインクの着弾位置と、Cインクの着弾位置との間の距離が、すべてのヘッドモジュール列51で略等しくなるようにしている。これにより、マゼンタ(M)の色ずれが抑えられ、ヘッドモジュール列間で印刷画像に色差が発生することを低減できる。
【0109】
なお、赤系の色のインクとして、マゼンタ(M)以外の、レッド等のインクが用いられることがある。この場合、その赤系の色を第2色とすればよい。
【0110】
上記実施の形態では、4つのインクヘッド32K,32C,32M,32Yを有するインクジェット印刷装置1について説明した。これに対し、K,C,M,Y以外の第5色のインクを吐出するインクヘッド32が追加された構成の場合について説明する。
【0111】
この場合、制御部4は、同一画素に対応する、K,M,C,Yのうち第5色に色相が最も近い色のインクヘッド32のノズルの中心位置と、第5色のインクヘッド32のノズルの中心位置との間の距離がP/2以下となるように、各インクヘッド32におけるノズルの対応関係を決定する。
【0112】
ここで、例えば、第5色が、グレイ、ライトグレイ等である場合、K,M,C,Yのうち第5色に色相が最も近い色はK(ブラック)である。また、例えば、第5色が、ライトマゼンタ、レッド等である場合、K,M,C,Yのうち第5色に色相が最も近い色はM(マゼンタ)である。また、例えば、第5色が、ライトシアン、ブルー、バイオレット等である場合、K,M,C,Yのうち第5色に色相が最も近い色はC(シアン)である。また、例えば、第5色が、オレンジ等である場合、K,M,C,Yのうち第5色に色相が最も近い色はY(イエロー)である。
【0113】
そして、印刷時には、制御部4は、同一画素に対応する第5色に色相が最も近い色のインクの着弾位置と第5色のインクの着弾位置とが、用紙搬送方向において略等しい位置になるように、第5色のインク吐出タイミングを制御する。
【0114】
これにより、5色での印刷が可能なライン型のインクジェット印刷装置において、ヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を低減できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0115】
また、インクヘッド32が3つの構成である場合は、上記実施の形態における第4色であるイエロー(Y)に関する内容を省略した処理を行えばよい。
【0116】
すなわち、吐出タイミング補正量決定処理では、ステップS8,S9を省略すればよい。そして、印刷時には、制御部4は、その吐出タイミング補正量決定処理で求めた各ヘッドモジュール41の吐出タイミング補正量ΔTを用いて、3つのインクヘッド32の各ヘッドモジュール41の吐出タイミングを制御すればよい。
【0117】
これにより、インクヘッド32が3つであるインクジェット印刷装置において、ヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を低減できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0118】
ここで、3つのインクヘッド32に対応する3色にブラック(K)が含まれている場合、上記実施の形態と同様に、ブラック(K)を第1色とする。また、3色にブラック(K)、およびマゼンタ(M)等の赤系の色が含まれている場合、上記実施の形態と同様に、ブラック(K)を第1色、マゼンタ(M)等の赤系の色を第2色とする。
【0119】
また、インクヘッド32が2つの構成である場合は、その2色が、上記実施の形態におけるマゼンタ(M)とシアン(C)の関係と同様になるように処理を行えばよい。
【0120】
すなわち、制御部4は、同一画素に対応する一方のインクヘッド32のノズルの中心位置と他方のインクヘッド32のノズルの中心位置との間の印字幅方向における距離がP/2以下となるようにノズルの対応関係を決定する。そして、制御部4は、同一画素に対応する一方の色のインクの着弾位置と他方の色のインクの着弾位置との間の距離が、印字幅方向最大ずれ量と略等しくなるように、各ヘッドモジュール41のインク吐出タイミングを制御する。
【0121】
これにより、インクヘッド32が2つであるインクジェット印刷装置において、ヘッドモジュール列間で印刷画像に生じる色差を低減できる。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0122】
ここで、2つのインクヘッド32に対応する2色にブラック(K)が含まれている場合は、制御部4は、Kのインクヘッド32Kの各ヘッドモジュール41Kから吐出されるKインクの着弾位置の、用紙搬送方向における位置が略等しくなるように制御する。これにより、がたつきの目立ちやすい黒文字や黒の罫線等の印刷画像の低下を抑制できる。また、K単色での印刷時の印刷画像の低下を抑制できる。
【0123】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。