(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189113
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】鉄道信号ケーブル断線検知器
(51)【国際特許分類】
B61L 1/00 20060101AFI20170821BHJP
B61L 3/00 20060101ALI20170821BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20170821BHJP
B61L 29/00 20060101ALI20170821BHJP
G01R 31/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
B61L1/00
B61L3/00
B61L23/00
B61L29/00
G01R31/02
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-141281(P2013-141281)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-13575(P2015-13575A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】青山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰貴
(72)【発明者】
【氏名】上原 広行
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 陽伸
【審査官】
白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
実開平7−35236(JP,U)
【文献】
特開平4−251523(JP,A)
【文献】
特開2006−240585(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0309205(US,A1)
【文献】
米国特許第4307860(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00
B61L 3/00
B61L 23/00
B61L 29/00
G01R 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の線路の列車検知点においてレール対の何れもが踏切制御子と二重接続されている軌道回路に付設される鉄道信号ケーブル断線検知器であって、前記レール対の一方のレールに係る二重接続線について一方の接続線を電流検出対象に含めるが他方の接続線を電流検出対象から外すとともに前記レール対の他方のレールに係る二重接続線についても一方の接続線を電流検出対象に含めるが他方の接続線を電流検出対象から外す装着状態で且つ前記電流検出対象に含める複数の接続線に流れる往復電流が相殺し合う状態で前記軌道回路に付設される電流検出部と、前記電流検出部での検出電流が相殺状態から外れたとき前記二重接続線について前記電流検出部の電流検出対象の接続線に電流検出対象外の接続線も加えた接続線の何れかに断線が生じたと判定する断線判定部とを備えたことを特徴とする鉄道信号ケーブル断線検知器。
【請求項2】
鉄道の線路の列車検知点においてレール対の何れもが踏切制御子と二重接続されている軌道回路に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器であって、前記レール対の一方のレールに係る二重接続線について一方の接続線を電流検出対象に含めているが他方の接続線を電流検出対象から外しているとともに前記レール対の他方のレールに係る二重接続線についても一方の接続線を電流検出対象に含めているが他方の接続線を電流検出対象から外している装着状態で且つ前記電流検出対象に含まれている複数の接続線に流れる往復電流が相殺し合う状態で前記軌道回路に付設されている電流検出部と、前記電流検出部での検出電流が相殺状態から外れたとき前記二重接続線について前記電流検出部の電流検出対象の接続線に電流検出対象外の接続線も加えた接続線の何れかに断線が生じたと判定する断線判定部とを備えたことを特徴とする鉄道信号ケーブル断線検知器。
【請求項3】
鉄道の線路の列車検知点においてレール対の何れもが閉電路形踏切制御子と制御区間の両端側で二重接続されている軌道回路に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器であって、前記レール対の一方のレールに係る二重接続線のうち前記制御区間の何れか一端側の二重接続線について一方の接続線を電流検出対象に含めているが他方の接続線を電流検出対象から外しているとともに前記レール対の他方のレールに係る二重接続線のうち前記制御区間の前記一端側の二重接続線についても一方の接続線を電流検出対象に含めているが他方の接続線を電流検出対象から外している装着状態で且つ前記電流検出対象に含まれている複数の接続線に流れる往復電流が相殺し合う状態で前記軌道回路に付設されている電流検出部と、前記電流検出部での検出電流が相殺状態から外れたとき前記制御区間の前記一端側の前記二重接続線について前記電流検出部の電流検出対象の接続線に電流検出対象外の接続線も加えた接続線の何れかに断線が生じたと判定する断線判定部とを備えたことを特徴とする鉄道信号ケーブル断線検知器。
【請求項4】
鉄道の線路の列車検知点においてレール対の何れもが閉電路形踏切制御子と制御区間の両端側で二重接続されて四組の二重接続線を具備している軌道回路に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器であって、前記二重接続線の総ての組について一方の接続線を電流検出対象に含めているが他方の接続線を電流検出対象から外している装着状態で且つ前記電流検出対象に含まれている複数の接続線に流れる往復電流が相殺し合う状態で前記軌道回路に付設されている電流検出部と、前記電流検出部での検出電流が相殺状態から外れたとき前記二重接続線について前記電流検出部の電流検出対象の四本の接続線に電流検出対象外の四本の接続線も加えた八本の接続線の何れかに断線が生じたと判定する断線判定部とを備えたことを特徴とする鉄道信号ケーブル断線検知器。
【請求項5】
前記断線判定部による断線発生の判定に応じて前記二重接続線に係る断線発生を報知するとともに断線の発生した可能性のある接続線も報知するがその報知に際し前記二重接続線について前記電流検出部の電流検出対象の接続線に電流検出対象外の接続線も加えた接続線を報知対象とする報知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載された鉄道信号ケーブル断線検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の踏切保安装置に付設されてレールと踏切制御子との接続線に係る断線を検知する鉄道信号ケーブル断線検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、鉄道信号ケーブル断線検知器の付設対象となる現行の踏切保安装置を示し、(a)が複線区間における終点側の線路10(下り線)に係る踏切道13と踏切制御子20,30との配置図、(b)が警報始動点ADCと警報終止点BDCとに軌道回路を設置した踏切保安装置のブロック図である。また、
図9は、軌道回路の動作状態を示し、(a)〜(c)何れも警報終止点BDCに係るレール対11,12と開電路形踏切制御子20と接続線23a,23b,24a,24bとに係る部分のブロック図である。
【0003】
踏切保安装置の設置された線路では(非特許文献1,2参照)、例えば下り線の場合(
図8(a)参照)、列車14が起点側から終点側へ走行する線路10について、踏切道13の起点側で手前位置の警報始動点ADC(列車検知点)に閉電路形踏切制御子30が設置されて閉電路式の軌道回路が構成されるとともに、踏切道13の終点側で列車通過後位置の警報終止点BDC(列車検知点)に開電路形踏切制御子20が設置されて開電路式の軌道回路が構成される。この場合、警報終止点BDCに係る開電路形踏切制御子20は列車の踏切通過の早期検知のため踏切道13の近くに設置されているのに対し、警報始動点ADCに係る閉電路形踏切制御子30は警報開始後の時間確保のため踏切道13から遠くに設置されているが、何れの制御区間(列車検知区間)も、踏切道13から外れている。
【0004】
具体的には(
図8(b)参照)、軌道回路の設置される線路10は、並行状態で敷設されていてその上を列車14が走行するレール対11,12を具備したものであり、踏切道13はレール対11,12を横切って設置されている。
開電路形踏切制御子20は(非特許文献2参照)、電流イメージを矢印で図示した直流の又は図示しない交流の列車検知信号を常時送信する送信部21と、その列車検知信号を受信するための受信部22とを具備したものであり、送信部21の入出力端子(+)とレール対11,12の一方たとえばレール11とが二本の接続線23a,23bで二重接続されるとともに、受信部22の入出力端子(−)とレール対11,12の他方たとえばレール12とがやはり二本の接続線24a,24bで二重接続されている。
【0005】
これらの合計で四本になる接続線23a〜24bは、何れも、開電路形踏切制御子20から出て適宜な中継端子やケーブルを介して線路10に至り、そこでレール対11,12に溶接等で接続されているが、開電路式軌道回路なのでレール対11,12との接続位置は制御区間のほぼ中央である。そして、制御区間に列車が在線していれば列車14の車軸等を介して列車検知信号が受信されるのに対し、制御区間が列車非在線のときは列車検知信号が受信されないことに基づいて、警報終止点BDCに係る列車14の在線・非在線を判別するようになっている。
【0006】
閉電路形踏切制御子30は(非特許文献2参照)、電流イメージを矢印で図示した直流の又は図示しない交流の列車検知信号を常時送信する送信部31と、その列車検知信号を受信するための受信部32とを具備したものであり、送信部31の入出力端子(+)とレール対11,12の一方たとえばレール11とが二本の接続線33a,33bで二重接続されるとともに、送信部31の別の入出力端子(−)とレール対11,12の他方たとえばレール12とが二本の接続線34a,34bで二重接続されている。また、受信部32の入出力端子(+)とレール対11,12の一方たとえばレール11とが二本の接続線35a,35bで二重接続されるとともに、受信部32の別の入出力端子(−)とレール対11,12の他方たとえばレール12とが二本の接続線36a,36bで二重接続されている。
【0007】
これらの合計で八本になる接続線33a〜36bは、何れも、閉電路形踏切制御子30から出て適宜な中継端子やケーブルを介して線路10に至り、そこでレール対11,12に溶接等で接続されているが、閉電路式軌道回路なので、レール対11,12との接続位置は、制御区間の両端に分かれており、図示の例では、送信部31側の接続線33a〜34bについては制御区間の終端(右端)であり、受信部32側の接続線35a〜36bについては制御区間の始端(左端)である。そして、制御区間の列車非在線時は列車検知信号が受信されるのに対し制御区間の列車在線時は列車検知信号が受信されないことに基づいて、警報始動点ADCに係る列車14の在線・非在線を判別するようになっている。
【0008】
警報終止点BDCに係る開電路形踏切制御子20の列車検知状態を詳述すると(
図9参照)、制御区間に列車14が来ていないときには(
図9(a)参照)、レール11とレール12とが絶縁状態になっていて、接続線23a〜24bの電流が何れもゼロ“0”になるため、列車検知信号が受信されないので、検知結果が列車非在線になる。
これに対し、制御区間に列車14が進入すると(
図9(b)参照)、レール11とレール12とが短絡状態になって信号伝達に適う低抵抗で導通して、レール対11,12に全電流Iが流れるとともに、接続線23a〜24bのそれぞれに半電流I/2が流れるため、列車検知信号が受信されるので、検知結果が列車在線になる。
【0009】
ここで、接続線23a〜24bのうち何れか例えば接続線24aが断線したとすると(
図9(c)参照)、列車非在線時はもちろん列車在線時までも接続線24aが電流ゼロ“0”の状態になるが、レール12と開電路形踏切制御子20との接続が接続線24aと接続線24bとの二重接続になっているため、列車在線時には、接続線24aが電流ゼロ“0”のままでも接続線24bに全電流Iが流れて、やはり列車検知信号が受信されるので、不都合はない。接続線24a,24bは、レール12に対して溶接等にて接続されていても、列車通過時の振動や設置環境の影響などに起因して稀に接続が損なわれ、レールから脱落して断線することがあるが、そのような断線が発生しても直ちには列車検知不能にならないよう二重接続が行われている。
他の接続線23a,23b,33a〜36bについても同様である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】鉄道電気技術者のための信号概論 信号シリーズ1 「鉄道信号一般」社団法人日本鉄道電気技術協会2008年4月8日発行、改訂版2刷p.116
図8−3
【非特許文献2】鉄道電気技術者のための電気概論 信号シリーズ8 「踏切保安装置」社団法人日本鉄道電気技術協会2006年5月10日発行、新省令対応2刷p.35〜42
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような接続線の二重接続を前提とした断線検知に係る課題を図面を引用して説明する。
図9(d)は、警報終止点BDCに係るレール対11,12と開電路形踏切制御子20と接続線23a,23b,24a,24bとに係る部分のブロック図であり、電流検知器25を用いた接続線23a〜24bの断線検知状況を示している。また、
図10は、電流検知器27を用いた接続線23a〜24bの断線検知状況を示し、(a)〜(d)何れも警報終止点BDCに係るレール対11,12と開電路形踏切制御子20と接続線23a〜24bと電流検知器27とに係る部分のブロック図である。
【0012】
既述したように踏切制御子−レール間の接続は片レールあたり二本用いて二重接続されているため、接続線二本のうち一本がレールから脱落して断線しても、列車検知機能が維持されて装置故障や動作異常にはならないので、断線原因の脱落不良が二重接続の一方だけにとどまっている間に脱落不良を発見する手立てとしては、今のところ、現場で目視等で確認することぐらいしか無い。
しかしながら、脱落不良の有無が分からない状態で各地の現場を渡り歩きながら断線の有無を調べるのは、目視であれ、テスタ使用の導通テストであれ、作業負担が重い。
【0013】
そこで、各々の接続線の電流を検知して電流状態を常時監視することで断線を自動検出することが考えられる。例えば(
図9(d)参照)、警報終止点BDCでレール対11,12に接続された四本の接続線23a〜24bについては、各接続線に対して後付容易なカレントトランス等の電流検出部を一つずつ装着するとともに、接続線と電流検出部との各組毎に電流検知器25を設置して、各接続線の電流が全電流Iなのか半電流I/2なのかゼロ“0”なのかを常時チェックすることが考えられる。
【0014】
もっとも、このような監視手法では、電流検知器25及び電流検出部が接続線の数だけ必要である。そのうえ、断線の無い正常状態であっても列車の在線時と非在線時とで接続線の電流が異なるので、電流検知器25が判別閾値を適時に切り替えるために開電路形踏切制御子20から在線情報を取り込む必要があるが、その配線や確認の作業は、開電路形踏切制御子20の動作停止やネジ止め等が不要で簡便なカレントトランスの装着とは異なり、気遣いを要するばかりか手間も掛かる。
【0015】
その負担を軽減するには、正常時には列車の有無によらず検出電流が一定になるよう、列車検知信号の往復電流を相殺状態で纏めて検出するのが良さそうに思われる。ついでに電流検知器の個数も削減できれば一層都合が良い。
そして、その実現には(
図10(a)参照)、四本の接続線23a〜24bを総て往復電流相殺状態で纏めたところに一つの電流検出部を装着して、接続線23a〜24bの往復電流の差電流を検出し、その差電流に基づいて断線判別を行うことが思い浮かぶ。
この場合、接続線23a〜24bに全く断線が無くて総て正常であれば、列車在線時の差電流が列車非在線時と同じくゼロ“0”になるので、電流検知器27が在線情報を取り込む必要が無くなるうえ、電流検出部も含めて検知器27が最少の一台で済む。
【0016】
ところが、このような態様で往復電流を相殺状態で纏めて検出する場合、地絡や漏電による異常は検出できても、肝心な断線の検出に難のあることが判明した。
例えば接続線24aがレール12から脱落した場合(
図10(b)参照)、列車在線時、接続線24aの電流が半電流I/2からゼロ“0”に減るが、接続線24aと共に二重接続をなす接続線24bの電流が半電流I/2から全電流Iに増えるので、両者の増減の相殺によって差電流の変化が妨げられるからである。
【0017】
そのため、電流検知器27の最少化を諦め、次善の策として(
図10(c)参照)、電流検知器27を二台に増やし、接続線23a,24bを往復電流相殺状態で纏めたところに一台の(図では右側の)電流検知器27を付設して差電流を検出するとともに、接続線23b,24aを往復電流相殺状態で纏めたところに別の(図では左側の)電流検知器27を付設してそこでも差電流を検出するように改めたところ、電流検知器27でも問題なく断線を検出することができた。そして、種々の断線状態での動作確認や閾値の調整などを行っているうち、何れか一の接続線が断線すると、その接続線に付設した電流検知器27が断線を検知するだけでなく、断線した接続線には付設されていない別の電流検知器27までも断線検知状態になることが分かってきた。
【0018】
例えば接続線24aが断線した場合(
図10(c)参照)、それに付設された(図では左側の)電流検知器27では、接続線24aの電流が半電流I/2から0に減って、差電流が0から半電流I/2になるため、断線が検知されるが、それと同時に、接続線24aに付設されていない(図では右側の)電流検知器27でも、二重接続の相方の接続線24bの電流が半電流I/2から全電流Iに増えて、やはり差電流が0から半電流I/2になるため、断線が検知される。そのため、二台の電流検知器27,27のうち一台を省いて電流検知器27を一台だけにしても(
図10(d)参照)、接続線24aの断線ばかりか接続線23a,23b,24bの断線も逃すことなく検知できる、ということが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器は(解決手段1)、このような知見に基づいて、踏切制御子20,30とレール対11,12との二重接続線23a,23b;24a,24b;33a,33b;34a,34b;35a,35b;36a,36bに係る片方脱落による断線を自動検知するために創案されたものであり、
鉄道の線路の列車検知点においてレール対の何れもが踏切制御子と二重接続されている軌道回路に付設される鉄道信号ケーブル断線検知器であって、前記レール対の一方のレールに係る二重接続線について一方の接続線を電流検出対象に含めるが他方の接続線を電流検出対象から外すとともに前記レール対の他方のレールに係る二重接続線についても一方の接続線を電流検出対象に含めるが他方の接続線を電流検出対象から外す装着状態で且つ前記電流検出対象に含める複数の接続線に流れる往復電流が相殺し合う状態で前記軌道回路に付設される電流検出部と、前記電流検出部での検出電流が相殺状態から外れたとき前記二重接続線について前記電流検出部の電流検出対象の接続線に電流検出対象外の接続線も加えた接続線の何れかに断線が生じたと判定する断線判定部とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器は(解決手段2)、鉄道の線路の列車検知点においてレール対の何れもが踏切制御子と二重接続されている軌道回路に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器であって、前記レール対の一方のレールに係る二重接続線について一方の接続線を電流検出対象に含めているが他方の接続線を電流検出対象から外しているとともに前記レール対の他方のレールに係る二重接続線についても一方の接続線を電流検出対象に含めているが他方の接続線を電流検出対象から外している装着状態で且つ前記電流検出対象に含まれている複数の接続線に流れる往復電流が相殺し合う状態で前記軌道回路に付設されている電流検出部と、前記電流検出部での検出電流が相殺状態から外れたとき前記二重接続線について前記電流検出部の電流検出対象の接続線に電流検出対象外の接続線も加えた接続線の何れかに断線が生じたと判定する断線判定部とを備えたことを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器は(解決手段3)、鉄道の線路の列車検知点においてレール対の何れもが閉電路形踏切制御子と制御区間の両端側で二重接続されている軌道回路に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器であって、前記レール対の一方のレールに係る二重接続線のうち前記制御区間の何れか一端側の二重接続線について一方の接続線を電流検出対象に含めているが他方の接続線を電流検出対象から外しているとともに前記レール対の他方のレールに係る二重接続線のうち前記制御区間の前記一端側の二重接続線についても一方の接続線を電流検出対象に含めているが他方の接続線を電流検出対象から外している装着状態で且つ前記電流検出対象に含まれている複数の接続線に流れる往復電流が相殺し合う状態で前記軌道回路に付設されている電流検出部と、前記電流検出部での検出電流が相殺状態から外れたとき前記制御区間の前記一端側の前記二重接続線について前記電流検出部の電流検出対象の接続線に電流検出対象外の接続線も加えた接続線の何れかに断線が生じたと判定する断線判定部とを備えたことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器は(解決手段4)、鉄道の線路の列車検知点においてレール対の何れもが閉電路形踏切制御子と制御区間の両端側で二重接続されて四組の二重接続線を具備している軌道回路に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器であって、前記二重接続線の総ての組について一方の接続線を電流検出対象に含めているが他方の接続線を電流検出対象から外している装着状態で且つ前記電流検出対象に含まれている複数の接続線に流れる往復電流が相殺し合う状態で前記軌道回路に付設されている電流検出部と、前記電流検出部での検出電流が相殺状態から外れたとき前記二重接続線について前記電流検出部の電流検出対象の四本の接続線に電流検出対象外の四本の接続線も加えた八本の接続線の何れかに断線が生じたと判定する断線判定部とを備えたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器は(解決手段5)、上記解決手段1〜4の鉄道信号ケーブル断線検知器であって、前記断線判定部による断線発生の判定に応じて前記二重接続線に係る断線発生を報知するとともに断線の発生した可能性のある接続線も報知するがその報知に際し前記二重接続線について前記電流検出部の電流検出対象の接続線に電流検出対象外の接続線も加えた接続線を報知対象とする報知手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
このような本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器にあっては(解決手段1〜4)、二重接続線に対し特定の状態で電流検出部を装着したことにより、断線の無い正常状態では列車の在線・非在線にかかわらず検出電流が相殺状態に維持される一方、二重接続線の何れかに断線が生じた場合には、列車の在線状況に応じて軌道回路に列車検知信号が流れたときに検出電流が相殺状態から外れるので、断線の発生が検知される。しかも、二重接続線のうち電流検出対象になった接続線の断線が検知されるのはもとより、二重接続線のうち電流検出対象から外れた接続線についても二重接続の相方の電流変化を介して間接的に断線が検知される。したがって、この発明によれば、列車在線情報を利用するまでもなく踏切制御子とレールとの二重接続の片方脱落を自動で的確に検知することができる。
【0025】
また、本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器にあっては(解決手段5)、断線の発生した可能性のある接続線が過不足なく報されるので、現場での確認作業負担等が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例1について、鉄道信号ケーブル断線検知器の構造を示し、(a)が単体の鉄道信号ケーブル断線検知器のブロック図、(b)が鉄道信号ケーブル断線検知器を軌道回路に付設した踏切保安装置のブロック図である。
【
図2】鉄道信号ケーブル断線検知器の動作状態を示し、(a),(b)何れも警報終止点に係るレールと開電路形踏切制御子と接続線と鉄道信号ケーブル断線検知器とに係る部分のブロック図である。
【
図3】鉄道信号ケーブル断線検知器の動作状態を示し、(a),(b)何れも警報終止点に係るレールと開電路形踏切制御子と接続線と鉄道信号ケーブル断線検知器とに係る部分のブロック図である。
【
図4】鉄道信号ケーブル断線検知器の動作状態を示し、(a),(b)何れも警報終止点に係るレールと開電路形踏切制御子と接続線と鉄道信号ケーブル断線検知器とに係る部分のブロック図である。
【
図5】本発明の実施例2について、鉄道信号ケーブル断線検知器の構造を示すブロック図である。
【
図6】電流検出接続線振分条件の必要性を示し、(a)〜(c)何れも警報始動点に係るレールと閉電路形踏切制御子の接続線と鉄道信号ケーブル断線検知器とに係る部分のブロック図である。
【
図7】本発明の実施例3について、適切な電流検出接続線振分の一例と断線検知に係る動作状態を示し、(a)〜(c)何れも警報始動点に係るレールと閉電路形踏切制御子の接続線と鉄道信号ケーブル断線検知器とに係る部分のブロック図である。
【
図8】従来の踏切保安装置を示し、(a)が複線区間の下り線に係る踏切制御子の配置図、(b)が警報始動点と警報終止点とに軌道回路を設置した踏切保安装置のブロック図である。
【
図9】軌道回路の動作状態を示し、(a)〜(d)何れも警報終止点に係るレールと開電路形踏切制御子と接続線とに係る部分のブロック図である。
【
図10】電流検知器を用いた接続線の断線検知状況を示し、(a)〜(d)何れも警報終止点に係るレールと開電路形踏切制御子と接続線と電流検知器とに係る部分のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
このような本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜3により説明する。
図1〜4に示した実施例1は、上述した解決手段1〜3,5(出願当初の請求項1〜3,5)を具現化したものであり、
図5〜6に示した実施例2は、その変形例であり、
図7に示した実施例3は、上述した解決手段4,5(出願当初の請求項4,5)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、また、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の各実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0028】
本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、(a)が単体の鉄道信号ケーブル断線検知器40と断線検知対象の四本の接続線とに係るブロック図、(b)が二種類の軌道回路に対して三台の鉄道信号ケーブル断線検知器40を付設した踏切保安装置に係るブロック図である。
【0029】
図1の踏切保安装置が既述した
図8の踏切保安装置と相違するのは、3台の鉄道信号ケーブル断線検知器40が導入されて接続線23a〜24b,33a〜36bに分散付設されている点である。
鉄道信号ケーブル断線検知器40は(
図1(a)参照)、各接続線に対して後付容易なカレントトランス等からなる電流検出部41と、電流検出部41による差電流ΔIの検出値を入力して断線の有無を判定する断線判定部42と、断線判定部42の判定結果を報せる報知手段としての図示しない表示部や監視部とを具備している。
【0030】
断線判定部42は、差電流ΔIと閾値Thとを比較する比較回路43と、差電流ΔIが閾値Thを上回っている継続時間をカウンタ等にて計る計時回路44と、常態では正常状態対応値を保持しているが計時回路44のカウント継続時間が例えば1秒といった過剰反応抑制時間を上回ると断線発生状態対応値を保持するラッチ45と、その保持値を表示部や監視部に報知する手段とを具備した回路を図示したが、この回路構成に限定されるものでなく、差電流ΔIが閾値Thを継続的に上回ったときに判定内容を断線無しから断線有りに変えるようになっていれば良い。
【0031】
電流検出部41は、断線検知対象の軌道回路に付設されるが、その際、その軌道回路のレール対の一方のレールに係る二重接続線について一方の接続線を電流検出対象に含めるが他方の接続線を電流検出対象から外した装着状態と、上記のレール対の他方のレールに係る二重接続線についても一方の接続線を電流検出対象に含めるが他方の接続線を電流検出対象から外した装着状態と、上記の電流検出対象に含める複数の接続線に流れる往復電流が相殺し合う装着状態という三つの条件を満たす状態で装着され、その装着状態が装着後も維持されるものである。
【0032】
この装着状態では、列車検知信号通電時に断線無しなら半電流I/2が逆向き又は逆相で流れる接続線の対が、一対以上、電流検出部41の電流検出対象に含まれている。また、それらの接続線に対して二重接続の相方になっている接続線は、何れも、列車検知信号通電時に断線無しなら半電流I/2が流れるが、電流検出部41の電流検出対象から外されている。そのため、電流検出部41で検出する差電流ΔIが、断線の無い状態では列車検知信号の通電の有無にかかわらず相殺状態のゼロ“0”になり続けるが、電流検出対象の接続線が一本断線した状態では検出対象の電流が半電流I/2だけ減り、電流検出対象外の接続線が一本断線した状態では検出対象の電流が半電流I/2だけ増えて、列車検知信号通電時の差電流ΔIがゼロ“0”でなく半電流I/2のレベルになるので、閾値Thはゼロと半電流I/2との切り分けに好適な中間値たとえばI/4に設定されている。
【0033】
さらに、このような電流検出部41の装着状態に基づく差電流ΔIと接続線断線との関係を前提としたことで、上述した構成の断線判定部42は、電流検出部41での検出電流が相殺状態から外れたとき断線検知対象の二重接続線について電流検出部41の電流検出対象の接続線に電流検出対象外の接続線も加えた接続線の何れかに断線が生じたと判定するものとなっている。
【0034】
また、表示部や監視部は、断線判定部42によって断線発生の判定が出されると、断線判定部42に外装された図示しない断線表示ランプや,断線判定部42から送信された断線報告を受信した図示しない集中監視装置などのステータス表示画面などに断線発生の表示を行う等のことで、断線検知対象の二重接続線に係る断線発生を報知するようになっている。しかも、その際、断線の発生した可能性のある接続線として、すなわち現場に赴いて目視やテスタ等で個別に断線検査をすべき接続線として、断線検知対象の二重接続線については電流検出部41の電流検出対象の接続線だけでなくそれに電流検出部41の電流検出対象外の接続線も加えた接続線を例えば複数ランプ同時点灯や接続線付記名称列記表示などで報せることで報知対象とするようになっている。
【0035】
三台の鉄道信号ケーブル断線検知器40それぞれについて具体的な付設状態を述べると(
図1(b)参照)、警報終止点BDCに係る軌道回路に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器40は(図では右側)、開電路形踏切制御子20とレール11とを二重接続で繋ぐ接続線23a,23bの何れか一方だけ例えば接続線23bだけが電流検出部41の電流検出対象に含められるとともに、開電路形踏切制御子20とレール12とを二重接続で繋ぐ接続線24a,24bの何れか一方だけ例えば接続線24aだけが電流検出部41の電流検出対象に含められる。
【0036】
また、警報始動点ADCに係る軌道回路の制御区間の終端に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器40は(図では中央)、閉電路形踏切制御子30の送信部31とレール11とを二重接続で繋ぐ接続線33a,33bの何れか一方だけ例えば接続線33bだけが電流検出部41の電流検出対象に含められるとともに、閉電路形踏切制御子30の送信部31とレール12とを二重接続で繋ぐ接続線34a,34bの何れか一方だけ例えば接続線34aだけが電流検出部41の電流検出対象に含められる。
【0037】
警報始動点ADCに係る軌道回路の制御区間の始端に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器40は(図では左側)、閉電路形踏切制御子30の受信部32とレール11とを二重接続で繋ぐ接続線35a,35bの何れか一方だけ例えば接続線35bだけが電流検出部41の電流検出対象に含められるとともに、閉電路形踏切制御子30の受信部32とレール12とを二重接続で繋ぐ接続線36a,36bの何れか一方だけ例えば接続線36aだけが電流検出部41の電流検出対象に含められる。
【0038】
この実施例1の鉄道信号ケーブル断線検知器40について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図2〜
図4は何れも、(a)も、(b)も、警報終止点BDCに係るレール対11,12と開電路形踏切制御子20と接続線23a,23b,24a,24bと一台の鉄道信号ケーブル断線検知器40とに係る部分のブロック図である。
【0039】
警報終止点BDCに係る接続線23a〜24bに対して電流検出部41が上述のように装着されているので、鉄道信号ケーブル断線検知器40によって、四本のうち二本の接続線23b,24aの差電流ΔIが検出され、更に四本の接続線23a〜24bの何れかに断線が生じているか否かが判定され、断線発生の判定時には四本の接続線23a〜24bに係る断線発生の報知が出される。
詳述すると(
図2(a)参照)、四本の接続線23a〜24bの何れにも断線の無い正常状態の場合、列車非在線時には、レール対11,12が絶縁状態になっていて、列車検知信号が流れないので、接続線23a〜24bの電流が何れもゼロ“0”になって、接続線23b,24aの差電流ΔIもゼロ“0”になるため、断線無しと判定される。
【0040】
また(
図2(b)参照)、四本の接続線23a〜24bの何れにも断線の無い正常状態で列車14が来て、列車在線状態になった時には、レール対11,12が短絡状態になって、列車検知信号が流れるが、この場合、全電流Iが二重接続の接続線23a,23bとやはり二重接続の接続線24a,24bの所では二分されるので、接続線23a〜24bの電流が何れも半電流I/2になって、接続線23b,24aの往復電流が相殺状態で纏めて検出された差電流ΔIもゼロ“0”になるため、この場合も、断線無しと判定される。このように、断線の無い正常状態では列車の在線時も非在線時も差電流ΔIが同じくゼロ“0”になるので、鉄道信号ケーブル断線検知器40は、開電路形踏切制御子20から在線情報を取り込むまでもなく的確に判定を下すことができる。
【0041】
さらに(
図3(a)参照)、四本の接続線23a〜24bのうち何れか例えば接続線24aがレール12から脱落して断線状態になった場合、列車在線時に、レール対11,12が短絡状態になって、やはり列車検知信号が流れるが、この場合、断線の無い二重接続の接続線23a,23bにはそれぞれ半電流I/2が流れるのに対し、断線の生じた二重接続の接続線24a,24bについては、断線した接続線24aの電流がゼロ“0”になり、相方の接続線24bの電流が全電流Iになるので、接続線23b,24aの往復電流が相殺状態で纏めて検出された差電流ΔIがゼロ“0”でなく半電流I/2になるため、この場合は、断線有りと判定される。
【0042】
また(
図3(b)参照)、残り三本の接続線のうち何れか例えば24bがレール12から脱落して断線状態になった場合、列車在線時に、レール対11,12が短絡状態になって、やはり列車検知信号が流れるが、この場合、断線の無い二重接続の接続線23a,23bにはそれぞれ半電流I/2が流れるのに対し、断線の生じた二重接続の接続線24a,24bについては、断線した接続線24bの電流がゼロ“0”になり、相方の接続線24aの電流が全電流Iになるので、接続線23b,24aの往復電流が相殺状態で纏めて検出された差電流ΔIがやはり半電流I/2になるため、この場合も、断線有りと判定される。
【0043】
また(
図4(a)参照)、残り二本の接続線のうち何れか例えば接続線23bがレール11から脱落して断線状態になった場合、列車在線時に、レール対11,12が短絡状態になって、やはり列車検知信号が流れるが、この場合、断線の無い二重接続の接続線24a,24bにはそれぞれ半電流I/2が流れるのに対し、断線の生じた二重接続の接続線23a,23bについては、断線した接続線23bの電流がゼロ“0”になり、相方の接続線23aの電流が全電流Iになるので、接続線23b,24aの往復電流が相殺状態で纏めて検出された差電流ΔIがやはり半電流I/2になるため、この場合も、断線有りと判定される。
【0044】
また(
図4(b)参照)、残り一本となった接続線23aがレール11から脱落して断線状態になった場合、列車在線時に、レール対11,12が短絡状態になって、やはり列車検知信号が流れるが、この場合、断線の無い二重接続の接続線24a,24bにはそれぞれ半電流I/2が流れるのに対し、断線の生じた二重接続の接続線23a,23bについては、断線した接続線23aの電流がゼロ“0”になり、相方の接続線23bの電流が全電流Iになるので、接続線23b,24aの往復電流が相殺状態で纏めて検出された差電流ΔIがやはり半電流I/2になるため、この場合も、断線有りと判定される。
【0045】
このように、四本の接続線23a〜24bのうち何れかが断線状態になると、電流検出部41の電流検出対象に含まれている接続線23b,24aが断線した場合はもちろん、電流検出部41の電流検出対象に含まれていないが二重接続の相方が含まれている接続線23a,24bが断線した場合までも、的確に断線状態が検知されて、接続線23a〜24bに係る断線発生が現場の鉄道信号ケーブル断線検知器40や,駅の駅装置,中央の集中監視装置などによって保安要員等に報知されるので、開電路形踏切制御子20による列車検知機能が損なわれる前に的確な断線チェック等を行うことができる。
【0046】
なお、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、列車非在線時に列車検知信号が流れるという違いはあるものの、警報始動点ADCに係る軌道回路の制御区間の終端に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器40も、同様にして、四本の接続線33a〜34bに生じた断線を検知して報知する。警報始動点ADCに係る軌道回路の制御区間の始端に付設された鉄道信号ケーブル断線検知器40も、やはり同様にして、四本の接続線35a〜36bに生じた断線を検知して報知する。何れの場合も、電流検出対象の接続線だけでなく、電流検出対象外の接続線についても、断線が検知され報知される。
【実施例2】
【0047】
本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図5は、鉄道信号ケーブル断線検知器50のブロック図である。
この鉄道信号ケーブル断線検知器50が上述した実施例1の鉄道信号ケーブル断線検知器40と相違するのは、電流検出部41が増えて二つになっている点と、それに対応して断線判定部42が断線判定部51になっている点である。
【0048】
断線判定部51には、一方の電流検出部41で検出した差電流ΔIを入力して断線判定を行う一組の比較回路43と計時回路44とラッチ45と、他方の電流検出部41で検出した差電流ΔIを入力して断線判定を行う別組の比較回路43と計時回路44とラッチ45と、両組のラッチ45,45の保持値の論理和をとってそれを表示部や監視部へ送出する論理和回路52とが具備されている。
【0049】
このような鉄道信号ケーブル断線検知器50は、二つの電流検出部41,41にて二カ所で電流検出が行えるうえ、何れかで断線が発生した場合にはそのことが報知されるため、上述した鉄道信号ケーブル断線検知器40の二台分の役目を担うことができるので、例えば警報始動点ADCに係る軌道回路の制御区間の始端と終端の双方と閉電路形踏切制御子30とを繋ぐ八本の接続線33a〜36bに対して好適なものとなっている。
【0050】
[電流検出接続線振分条件について]
ここで、閉電路形踏切制御子30の接続線33a,33b,34a,34b,35a,35b,36a,36bに鉄道信号ケーブル断線検知器50(又は40)の電流検出部41を装着するに際して電流検出接続線振分条件が必要となることを説明する。
【0051】
上述の実施例では、電流検出部41を接続線33a〜36bに装着するに際し、レール対11,12の一方のレール11に係る二重接続線のうち警報始動点ADCの制御区間の何れか一端(終端)側の二重接続線33a,33bについて一方の接続線33bを電流検出対象に含めているが他方の接続線33aを電流検出対象から外しているとともにレール対11,12の他方のレール12に係る二重接続線のうち警報始動点ADCの前記一端(終端)側の二重接続線34a,34bについても一方の接続線34aを電流検出対象に含めているが他方の接続線34bを電流検出対象から外している装着状態で且つ電流検出部41の電流検出対象に含まれている複数の接続線33b,34aに流れる往復電流I/2,I/2が相殺し合う状態で、装着が行われている。警報始動点ADCの制御区間の始端側の二重接続線35a,35bと二重接続線36a,36bについても同様である。
【0052】
これに対し、開電路形踏切制御子20の接続される警報終止点BDCに係る二重接続線23a,23bと二重接続線24a,24bのように、閉電路形踏切制御子30の接続される警報始動点ADCについても電流検出接続線振分条件を課さないと、すなわち電流検出対象の接続線を選定するときに警報始動点ADCの制御区間の始端と終端とに振り分けて各端毎に選定するということを行わないと、次に図面を引用して説明するような不都合の生じることがある。
図6は、(a)〜(c)何れも警報始動点ADCに係るレール対11,12と閉電路形踏切制御子30の接続線33a〜36bと鉄道信号ケーブル断線検知器50とに係る部分のブロック図である。
【0053】
例えば(
図6(a)参照)、レール対11,12の一方のレール11に係る二重接続線33a,33bについて一方の接続線33aを電流検出部41の電流検出対象に含めるが他方の接続線33bを電流検出対象から外すとともに他方のレール12に係る二重接続線36a,36bについても一方の接続線36bを電流検出対象に含めるが他方の接続線36aを電流検出対象から外す装着状態で且つ電流検出対象に含める複数の接続線33a,36bに流れる往復電流I/2,I/2が相殺し合う状態で、電流検出部41を警報始動点ADCに係る軌道回路に付設した場合、警報終止点BDCの場合と同様の装着条件は満たしているが、上述した電流検出接続線振分条件まで満たすわけではない。
【0054】
この場合、断線の無い正常状態であれば列車非在線時に列車検知信号が各接続線に等しく分散して流れて差電流ΔIがゼロ“0”になるとともに(
図6(a)参照)、何れかの接続線たとえば接続線36aが断線した状態では列車非在線時に列車検知信号が二重接続の相方の接続線36bに偏って流れて差電流ΔIが半電流I/2になるので(
図6(b)参照)、一見すると良さそうに感じられるが、列車14が警報始動点ADCの制御区間に進入したときにまで差電流ΔIが半電流I/2になってしまうので(
図6(c)参照)、不都合である。そのため、警報始動点ADCに係る接続線33a〜36bへの電流検出部41の装着に際しては上述の電流検出接続線振分条件も満たすことが必要である。
【実施例3】
【0055】
本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器の実施例3について、その具体的な構成および動作を、図面を引用して説明する。
図7は、(a)〜(c)何れも警報始動点ADCに係るレール対11,12と閉電路形踏切制御子30の接続線33a〜36bと鉄道信号ケーブル断線検知器40とに係る部分のブロック図であり、そのうち(a)は適切な電流検出接続線振分の一例であり、(b),(c)は断線検知に係る動作状態を示している。
【0056】
ここでは、警報始動点ADCに係る線路10と閉電路形踏切制御子30との接続線33a〜36bに対して上述の電流検出接続線振分条件をも満たしながら単一の電流検出部41を装着して接続線33a〜36bの八本の何れの断線も検知できる例を述べる。具体的には(
図7(a)参照)、警報始動点ADCの制御区間の何れか一端側としての終端側に関して、レール対11,12の一方のレール11に係る二重接続線33a,33bについて一方の接続線33aを電流検出対象に含めるが他方の接続線33bを電流検出対象から外すとともにレール対11,12の他方のレール12に係る二重接続線34a,34bについても一方の接続線34aを電流検出対象に含めるが他方の接続線34bを電流検出対象から外した装着状態で且つ電流検出部41の電流検出対象に含まれている複数の接続線33a,34aに流れる往復電流I/2,I/2が相殺し合う状態で、電流検出部41が接続線33a〜34bに装着される。
【0057】
しかも、警報始動点ADCの制御区間の何れか他端側としての始端側に関しても、レール対11,12の一方のレール11に係る二重接続線35a,35bについて一方の接続線35bを電流検出対象に含めるが他方の接続線35aを電流検出対象から外すとともにレール対11,12の他方のレール12に係る二重接続線36a,36bについても一方の接続線36aを電流検出対象に含めるが他方の接続線36bを電流検出対象から外した装着状態で且つ電流検出部41の電流検出対象に含まれている複数の接続線35b,36aに流れる往復電流I/2,I/2が相殺し合う状態で、電流検出部41が接続線35a〜36bにも装着される。何れの組の二重接続線についても一方の接続線だけが電流検出部41の電流検出対象になり相方の接続線は電流検出対象外になる。
【0058】
この場合、断線の無い正常状態であれば列車非在線時に列車検知信号が各接続線に等しく分散して流れて差電流ΔIがゼロ“0”になる(
図7(a)参照)。
また、断線の無い正常状態であれば列車在線時に列車検知信号が終端側の各接続線に等しく分散して流れるのでやはり差電流ΔIがゼロ“0”になる(
図7(b)参照)。
これに対し、何れかの接続線たとえば電流検出対象の接続線36aが断線した状態では列車非在線時に列車検知信号が二重接続の相方の接続線36bに偏って流れて接続線36aに流れないため差電流ΔIが半電流I/2になるので(
図7(c)参照)、何れかの接続線に断線の発生したことが分かる。
【0059】
図示は割愛したが、電流検出対象外の接続線たとえば接続線36bが断線した状態では列車非在線時に列車検知信号が二重接続の相方の接続線36aに偏って流れて差電流ΔIが半電流I/2になるので、やはり何れかの接続線に断線の発生したことが分かる。
他の接続線の断線時も同様にして列車非在線に差電流ΔIが半電流I/2になるので、電流検出部41が一個しかなくても何れの接続線の断線も的確に検知される。
また、この場合、断線の発生した可能性のある接続線として報知される対象には、接続線33a〜36bが総て含められる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器は、上述した複線区間の下り線に付設された踏切制御子の断線検知に限定されるものでなく、複線区間の上り線や単線区間の線路に付設された踏切制御子の断線検知にも適用することができる。上述したように複線区間の下り線では警報始動点ADCと警報終止点BDCが列車検知点の典型例であるが、複線区間の上り線では警報始動点CDCと警報終止点DDCが列車検知点の典型例であり、単線区間では警報始動点ADC,CDCと警報終止点BDC(又はDDC)が列車検知点の典型例である(非特許文献1参照)。
また、本発明の鉄道信号ケーブル断線検知器は、直流軌道回路に限らず、交流の列車検知信号を用いる軌道回路にも、適用することができる。交流の場合、往復電流が相殺し合う状態の典型例として、往復電流の位相が互いに反転している状態が挙げられる。
【符号の説明】
【0061】
10…線路(軌道,レール対)、11,12…レール、
13…踏切道、14…列車、ADC…警報始動点、BDC…警報終止点、
20…開電路形踏切制御子、21…送信部、22…受信部、
23a,23b,24a,24b…接続線(リード線)、25,27…電流検知器、
30…閉電路形踏切制御子、31…送信部、32…受信部、
33a,33b,34a,34b…接続線(リード線)、
35a,35b,36a,36b…接続線(リード線)、
40…鉄道信号ケーブル断線検知器、41…電流検出部(カレントトランス)、
42…断線判定部、43…比較回路、44…計時回路、45…ラッチ、
50…鉄道信号ケーブル断線検知器、51…断線判定部、52…論理和回路