特許第6189132号(P6189132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189132筒状構造物の外径変化に応じて位置調整可能な昇降機支持架台
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189132
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】筒状構造物の外径変化に応じて位置調整可能な昇降機支持架台
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   E04G23/08 J
   E04G23/08 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-162049(P2013-162049)
(22)【出願日】2013年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-31082(P2015-31082A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 泰邦
(72)【発明者】
【氏名】今野 雄介
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−276297(JP,A)
【文献】 実公昭53−162049(JP,Y2)
【文献】 欧州特許出願公開第00133630(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14,16
E04G 23/02,08
B66C 7/00−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡縮径筒状構造物の建設、解体、補修作業で用いる昇降機を支持する昇降機支持架台であって、前記拡縮径筒状構造物の半径方向へ前記拡縮径筒状構造物の基礎上を摺動可能あるいは該基礎上に設けられた梁状構造物上を摺動可能な移動台と、該移動台上に立設されて前記昇降機を保持する保持台と、を有し、該保持台の固定側梁に固定端を固定して水平に配設されかつ調整端にボルトを着脱可能に装着するためのボルト装着孔を複数個所に設けた連結架構を有し、該連結架構の前記調整端に設けた前記ボルト装着孔に装着される前記ボルトを貫通させるためのボルト固定孔を前記保持台の調整側梁に設けることを特徴とする昇降機支持架台。
【請求項2】
前記移動台を前記拡縮径筒状構造物の半径方向へ移動させる移動用ジャッキを有することを特徴とする請求項1に記載の昇降機支持架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突等の円筒状の構造物の建設、解体、補修作業で用いる各種の昇降機を支持する昇降機支持架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
煙突等の円筒状の構造物(以下、筒状構造物という)の建設、解体、補修作業では、その筒状構造物の寸法や立地条件等に応じて様々な昇降機が用いられる。
そのような用途に用いられる昇降機として実用化されているジャッキ式昇降機は、たとえば特許文献1に開示されているように、ジャッキを駆動してステップロッドを昇降させるものである。そのジャッキ式昇降機を筒状構造物の建設、解体、補修作業に使用する場合には、筒状構造物の周囲にジャッキ式昇降機を支持するための架台(以下、昇降機支持架台という)を設置して、その昇降機支持架台に固定したジャッキ式昇降機によりステップロッドを昇降させて、ステップロッドの下端に装着した足場を上下方向に移動させながら、建設、解体、補修作業を行なう。また、作業用の足場のみならず、建設、解体、補修作業で使用する様々な機器や材料を運搬するための荷台を昇降させることも可能である。
【0003】
とりわけ筒状構造物の建設作業においては、筒状構造物の一部を部分的に構築した新たなブロック体を吊り上げる作業にもジャッキ式昇降機を使用できる。また解体作業においては、筒状構造物を部分的に解体して生じた塊状体をジャッキ式昇降機で吊り下ろすことも可能である。
特許文献1に開示された技術は、筒状構造物の周囲に複数の支柱を設置し、その支柱の上端に足場を設けてジャッキ式昇降機を固定し、ジャッキ式昇降機によってステップロッドを昇降させるものである。つまりステップロッドの下端に、リング状の梁(以下、リング梁という)を装着し、筒状構造物の中心とリング梁の中心が一致した状態でリング梁を昇降させて、筒状構造物の建設、解体、補修作業を行なう。
【0004】
ところが近年、大型の筒状構造物(たとえば高さを増大した煙突等)が建造されるようになり、筒状構造物の外径を頂部に向かって次第に縮径することによって、筒状構造物の全荷重の軽量化、耐震性の向上を図っている。
そして、外径が頂部に向かって次第に縮小される筒状構造物(以下、頂部縮小筒状構造物という)の建設、解体、補修作業において特許文献1に開示された技術を使用する場合は、まず頂部縮小筒状構造物の下層部(すなわち外径が大きい部位)の更に外側に支柱を設置し、その上端の足場に設けたジャッキ式昇降機でステップロッドを昇降させることによって、リング梁を昇降させながら作業を行なう。したがってリング梁の内径は、頂部縮小筒状構造物の下層部の外径より大きく設定する必要がある。
【0005】
そのようなリング梁を用いて、頂部縮小筒状構造物の上層部(すなわち外径が小さい部位)の作業を行なう際には、リング梁と頂部縮小筒状構造物との間隔が広がり、作業の進捗に支障を来すばかりでなく、安全性にも悪影響を及ぼすという問題が生じる。
頂部縮小筒状構造物の上層部の建設、解体、補修作業においては、内径の小さいリング梁に取り換えて作業を行なうことは可能であるが、リング梁の交換に多大な時間を要するので、作業効率の低下を招く。また、リング梁は汎用性が乏しく、頂部縮小筒状構造物の寸法(たとえば外径、厚さ等)や重量の異なる部位の作業に転用するのが困難であるため、多数のリング梁を保有せざるを得なくなる。その結果、リング梁の製作費用が増加するばかりでなく、在庫管理の負荷が増大するという問題も生じる。
【0006】
リング梁を交換せず、リング梁から頂部縮小筒状構造物に向かって延伸する吊り具を取り付けて、その吊り具を用いて、建設用の新たなブロック体を吊り上げる、解体した塊状体を吊り下ろす、あるいは足場や荷台を昇降させることは可能であるが、リング梁と頂部縮小筒状構造物との間隔が広がるという問題を解決できないので、吊り荷の安定性を高めることは困難であり、安全性に問題を生じることから、作業の効率低下を招く。
【0007】
特許文献2には、内径を変更することが可能なリング梁を用いて頂部縮小筒状構造物の補修を行なう技術が開示されている。そのリング梁を頂部縮小筒状構造物の建設、解体作業に使用することは開示されていないが、頂部縮小筒状構造物の建設、解体作業において特許文献2に開示された技術を使用する場合も、頂部縮小筒状構造物の下層部(すなわち外径が大きい部位)の更に外側に支柱を設置しなければならない。そして、その支柱に設けたジャッキ式昇降機でステップロッドを昇降させることによって、リング梁を昇降させながら作業を行なう必要がある。
【0008】
そして、頂部縮小筒状構造物の上層部(すなわち外径が小さい部位)の作業を行なう際に、リング梁の内径を縮小すると、頂部縮小筒状構造物の中心とリング梁の中心を一致させるために、支柱の位置も調整せざるを得ないが、そのような設置場所の変更が可能な支柱を使用する技術は未だ確立されていない。
また、以上に説明した頂部縮小筒状構造物の他に、頂部に向かって次第に外径を拡大した筒状構造物(以下、頂部拡大筒状構造物という)も多数建造されている。そして、頂部拡大筒状構造物の建設、解体、補修作業においても同様に、頂部拡大筒状構造物の中心とリング梁の中心を一致させるために、支柱の位置を調整しなければならないという問題が生じる。
【0009】
以下では、頂部縮小筒状構造物と頂部拡大筒状構造物とを総称して、拡縮径筒状構造物と記す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-316333号公報
【特許文献2】特開2005-213870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、拡縮径筒状構造物の建設、解体、補修作業において、昇降機を支持するとともに、作業を行なう拡縮径筒状構造物の部位の外径に応じて位置を調整できる昇降機支持架台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、拡縮径筒状構造物の建設、解体、補修作業を行なう上で好適な昇降機支持架台について検討した。そして、
(A)拡縮径筒状構造物と昇降機の間隔を適正に保つために、作業を行なう部位の外径に応じて昇降機支持架台の位置を調整する必要がある、
(B)昇降機支持架台の位置の調整は、拡縮径筒状構造物の中心に近づける方向または中心から遠ざける方向(以下、半径方向という)に昇降機支持架台を移動させることによって可能となる
ということが分かった。そして、拡縮径筒状構造物の建設、解体作業のように多大な荷重が昇降機に作用する場合について詳細に研究した。その結果、
(C)多大な荷重を安定して支えるために、昇降機を2機以上使用しなければならないので、拡縮径筒状構造物の周囲2ケ所以上に昇降機支持架台を等間隔で設置する必要がある、
(D)昇降機支持架台が作業中に変形あるいは転倒するのを防止するために、昇降機支持架台を連結して、互いに隣り合う昇降機支持架台を相互に補強する必要がある、
(E)昇降機支持架台を拡縮径筒状構造物の半径方向に移動させる際にはその連結を解除し、移動が終了した後は再び連結する必要がある、
(F)昇降機支持架台の下部に移動用部材(たとえば車輪等)を備えると、多大な荷重を支えることが困難になるので、昇降機支持架台の下面を拡縮径筒状構造物の基礎に当接させて摺動させる、あるいは基礎上に設けた梁状構造物に当接させて摺動させる必要がある
という知見を得た。
【0013】
なお、補修作業のように昇降機に作用する荷重が比較的小さい場合には、上記の(D)(E)は必ずしも必要ない。また、昇降機支持架台の移動は、拡縮径筒状構造物を基礎上に載置した状態で行なうことによって安全性を確保できる。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、拡縮径筒状構造物の建設、解体、補修作業で用いる昇降機を支持する昇降機支持架台であって、拡縮径筒状構造物の半径方向へ拡縮径筒状構造物の基礎上を摺動可能あるいは基礎上に設けられた梁状構造物上を摺動可能な移動台と、移動台上に立設されて昇降機を保持する保持台と、を有し、保持台の固定側梁に固定端を固定して水平に配設されかつ調整端にボルトを着脱可能に装着するためのボルト装着孔を複数個所に設けた連結架構を有し、連結架構の調整端に設けたボルト装着孔に装着されるボルトを貫通させるためのボルト固定孔を前記保持台の調整側梁に設ける昇降機支持架台である。
【0014】
本発明の昇降機支持架台においては、移動台を拡縮径筒状構造物の中心方向へ移動させる移動用ジャッキを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、拡縮径筒状構造物の建設、解体、補修作業において、昇降機を支持し、しかも作業を行なう拡縮径筒状構造物の部位の外径に応じて昇降機支持架台の位置を調整できるので、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の昇降機支持架台を頂部縮小筒状構造物の周囲に設置した例を模式的に示す水平断面図である
図2図1中の3組の昇降機支持架台のうちの1組を拡大して示す水平断面図である。
図3図2中のA−A矢視の垂直断面図である。
図4】本発明の昇降機支持架台を移動させた例を模式的に示す水平断面図である。
図5】ステップロッドに取り付けたフックで頂部縮小筒状構造物を垂下する例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では拡縮径筒状構造物の例として、頂部縮小筒状構造物の建設、解体、補修作業について説明する。
図1は、本発明の昇降機支持架台を頂部縮小筒状構造物の下層部(すなわち外径が大きい部位)の周囲に設置した例を模式的に示す水平断面図である。図1には頂部縮小筒状構造物の周囲に3基の昇降機支持架台を等間隔で設置する例を示したが、本発明の昇降機支持架台を2基以上使用することによって、頂部縮小筒状構造物の建設、解体、補修作業を行なうことが可能である。
【0018】
以下では図1を参照して、3基の昇降機支持架台を用いて頂部縮小筒状構造物の解体作業を行なう例について説明する。各々の昇降機支持架台に配設する昇降機はジャッキ式昇降機とし、そのジャッキ式昇降機に対して好適な組み合わせとなるステップロッドを使用する例について説明する。
本発明の昇降機支持架台を用いて頂部縮小筒状構造物の解体作業を行なうにあたって、図1に示すように、頂部縮小筒状構造物2の下層部(すなわち外径が大きい部位)の更に外側に昇降機支持架台1を等間隔で設置する。図1中の3基の昇降機支持架台1のうちの1基を拡大して図2に示し、さらに図2中のA−A矢視の垂直断面図を図3に示す。
【0019】
図3に示すように、昇降機支持架台1は、頂部縮小筒状構造物2の基礎3上に設置される。昇降機支持架台1の移動台4は、基礎3上を頂部縮小筒状構造物2の半径方向に摺動することが可能である。移動台4を摺動させる手段は、特に限定しないが、移動用ジャッキ5を使用することが好ましい。基礎3上に移動用ジャッキ5を固定する際に、その駆動軸を頂部縮小筒状構造物2の半径方向に一致させることによって、移動台4を頂部縮小筒状構造物2の半径方向に容易に摺動させることができる。その移動台4には保持台6の下端が立設される。保持台6はジャッキ式昇降機(図示せず)を保持するものである。
【0020】
そして図2に示すように、保持台6の片側の梁7a(以下、固定側梁という)に連結架構8の一端8a(以下、固定端という)が固定される。ここでは、連結架構8の固定端8aを溶接で保持台6の固定側梁7aに固定する例を図示したが、固定端8aを固定する手段は、特に限定せず、溶接の他にも、ボルトやピン等の従来から知られているものを使用することができる。一方で、連結架構8の他端8b(以下、調整端という)にはボルトを着脱可能に装着するためのボルト装着孔9が複数個所に設けられる。
【0021】
保持台6の他側の梁7b(以下、調整側梁という)にはボルト固定孔10が設けられる。調整側梁7bのボルト固定孔10は、連結架構8の調整端8bに設けられるボルト装着孔9に対応するものであり、ボルト固定孔10とボルト装着孔9を貫通するボルト11を装着してナットで締め付けることにより、隣り合う昇降機支持架台1の保持台6に連結架構8を固定する。互いに隣り合う昇降機支持架台1の保持台6は、基礎3から同一の高さに配置されるので、連結架構8は水平に固定される。
【0022】
なおボルト固定孔は、保持台6の調整側梁7bのみならず、固定側梁7aに設けても良い。その場合は、保持台6の固定側梁7aと連結架構8の固定端8aとを、ボルトで固定することになる。
このようにして、頂部縮小筒状構造物2の周囲に3組の昇降機支持架台1を等間隔で設置し、昇降機支持架台1の保持台6上のジャッキ式昇降機で昇降可能なステップロッドによって頂部縮小筒状構造物2の上層部を垂下して支持しながら、頂部縮小筒状構造物2の下層部を解体して除去する。次いでジャッキ式昇降機を操作して、ステップロッドにて垂下した頂部縮小筒状構造物2を基礎3上に下降させる。
【0023】
このとき頂部縮小筒状構造物2の上層部を垂下する手段は特に限定しないが、図5に示すように、ステップロッド12の下端にフック14を取り付けて、頂部縮小筒状構造物2の外壁に設けた開口部16にそのフック14を挿入して、頂部縮小筒状構造物2の上層部を垂下しかつ支持することができる。その場合は、ローラー17が柱(図示せず)に沿って上下方向に移動することによって、フック14が広がるのを防止することが好ましい。
【0024】
あるいは特許文献2に開示されたような、内径を変更することが可能なリング梁(図示せず)をステップロッド12に取り付けて、さらにリング梁に吊り具を配設して、頂部縮小筒状構造物2の上層部を垂下しかつ支持することもできる。なお図5では、ジャッキ式昇降機15、ステップロッド12、フック14の配置を明示するために、昇降機支持架台1は図示を省略する。
【0025】
垂下した頂部縮小筒状構造物2の荷重はジャッキ式昇降機15に作用し、ひいては昇降機支持架台1に多大な荷重が加わる。そこで、上記したように、水平に配設される連結架構8を用いて、互いに隣り合う昇降機支持架台1を連結することによって、昇降機支持架台1が作業中に変形あるいは転倒するのを防止する。
あるいは図3に示すように、基礎3に固定されるアンカーボルト13を併用すれば、昇降機支持架台1の変形や転倒を防止する効果が向上する。昇降機に作用する荷重が比較的小さい場合には、必ずしも連結架構8を使用する必要はなく、アンカーボルト13のみで昇降機支持架台1の変形や転倒を防止して自立させるとこも可能である。
【0026】
このようにして、頂部縮小筒状構造物2の上層部を垂下しかつ支持しながら、頂部縮小筒状構造物2の下層部を解体し、さらに除去した後、垂下した頂部縮小筒状構造物2を基礎3上に下降させ、上方の開口部16にフック14を挿入する手順を繰り返すことによって、頂部縮小筒状構造物2を下層部から解体することができる。
そして、頂部縮小筒状構造物2の上層部を解体する際には、頂部縮小筒状構造物2の外径が小さくなっているので、図4に示すように、昇降機支持架台1を頂部縮小筒状構造物2の半径方向に移動させる。昇降機支持架台1の移動は、頂部縮小筒状構造物2が基礎3上に載置された状態で行なうことが、安全性を確保する観点から好ましい。
【0027】
昇降機支持架台1を移動させるためには、まず、ボルト固定孔10とボルト装着孔9を貫通して固定されたボルト11を取り外す。また、アンカーボルト13を併用する場合は、そのアンカーボルト13も取り外す、あるいは緩める。
次に移動用ジャッキ5を操作して、基礎3上で頂部縮小筒状構造物2の半径方向に移動台4を摺動させることによって、昇降機支持架台1を頂部縮小筒状構造物2に近づけて所定の位置で停止させる。移動台4の摺動を容易に行なうために、基礎3上面に鉄板を敷くことが好ましい。あるいは基礎3の側面に梁状構造物を連結し、かつ基礎3の上面と梁状構造物の上面とを同じ高さに揃えて鉄板を敷く等の対策を施しても良い。このようにして梁状構造物を用いることによって、基礎3よりも広い範囲に移動台4を摺動させることができ、さらに鉄板を敷くことによって移動台4を容易に摺動させることが可能となる。
【0028】
頂部縮小筒状構造物2の周囲に設置した3組の昇降機支持架台1を全て移動させた後、ボルト固定孔10とボルト装着孔9を貫通するボルト11を装着して、再びナットで締め付けることにより、隣り合う昇降機支持架台1の保持台6に連結架構8を水平に固定する。
このとき、図4に示すように、昇降機支持架台1の連結架構8と、隣り合う昇降機支持架台1の保持台6とが当接する位置が変化するが、連結架構8の調整端8bに予め複数個のボルト装着孔9が設けられているので、保持台6の調整側梁7bのボルト固定孔10とボルト装着孔9とを貫通するボルト11を装着することができる。
【0029】
そしてアンカーボルト13を併用する場合は、そのアンカーボルト13を基礎3に固定する。
このようにして、頂部縮小筒状構造物2の上層部を解体する際にも、頂部縮小筒状構造物2の同心円上にジャッキ式昇降機15を配置することができる。したがって、ステップロッド12の下端にそれぞれ取り付けたフック14(合計3個)が描く円の中心を、頂部縮小筒状構造物2の中心に一致させることができる。あるいは、内径を変更することが可能なリング梁をステップロッドの下端に取り付ける場合には、リング梁の中心を頂部縮小筒状構造物2の中心に一致させることもできる。
【0030】
以上は頂部縮小筒状構造物2の解体作業の手順である。頂部縮小筒状構造物2の建設に本発明の昇降機支持架台1を使用する場合は、頂部縮小筒状構造物2の上層部から建設を開始(図4参照)し、頂部縮小筒状構造物2を垂下しかつ支持しながら、下層部を構築(図2参照)していく。その際、昇降機支持架台1を頂部縮小筒状構造物2から遠ざけることになるが、昇降機支持架台1を摺動させて、所定の位置で停止させ、さらに固定する操作は、上記の解体作業の場合と同じであるから、説明を省略する。
【0031】
頂部縮小筒状構造物の補修作業を行なう場合は、ステップロッドを昇降させるためのジャッキ式昇降機を昇降機支持架台に取り付けて、そのステップロッドに作業用の足場や荷台を装着して上下方向に移動させる。
ここでは、3基の昇降機支持架台を頂部縮小筒状構造物の周囲に設置する例について説明したが、2基以上の昇降機支持架台を設置すれば頂部縮小筒状構造物の建設、解体、補修作業を行なうことができる。
【0032】
昇降機支持架台を1基のみ設置すると、建設や解体作業において、頂部縮小筒状構造物を垂下しかつ支持することが困難になるので、昇降機支持架台は2基以上必要である。頂部縮小筒状構造物を安定して垂下するためには、多数の昇降機支持架台を設置することが好ましい。しかし昇降機支持架台が多すぎると、頂部縮小筒状構造物の基礎上の作業可能なスペースが減少するので、建設や解体作業に支障を来す。そのため、設置する昇降機支持架台は8基以下とすることが好ましい。
【0033】
以上に説明した通り、本発明の昇降機支持架台を使用することによって、頂部縮小筒状構造物の外径の変化に応じて昇降機支持架台の位置を調整しながら、建設、解体、補修作業を行なうことができる。
また頂部拡大筒状構造物の建設、解体、補修作業においても、上記と同様にして、外径の変化に応じて昇降機支持架台の位置を調整することが可能である。
【0034】
ここでは拡縮径筒状構造物の建設、解体、補修作業において、ジャッキ式昇降機とステップロッドを組み合わせる例について説明したが、PC鋼線、ワイヤ、ネジ棒、梯子状構造物等をステップロッドに代えて使用し、それらに好適な昇降機を組み合わせて使用することも可能である。
たとえばネジ棒を使用する場合は、ネジ棒に螺合させるナットを回転させる、あるいはネジ棒を回転させることによって、ナットを昇降させることが可能である。したがって、そのナットに連動してフックやリング梁等を昇降させるように構成すれば、本発明の昇降機支持架台を用いて、拡縮径筒状構造物の建設、解体、補修作業を行なうことができる。
【実施例】
【0035】
下層部の外径6000mm、上層部の外径4400mm、高さ100mの頂部縮小筒状構造物を解体するにあたって、図1〜3に示すように、頂部縮小筒状構造物2の周囲の基礎3上に3組の昇降機支持架台1を等間隔で設置した。そして、昇降機支持架台1にそれぞれジャッキ式昇降機15を取り付けて、図5に示すように、ステップロッド12の下端に取り付けたフック14で頂部縮小筒状構造物2を垂下しかつ支持した。基礎3から保持台6上面までの高さは11.5m、ステップロッド12の外径は140mmとし、ジャッキ式昇降機15は200tonジャッキを使用した。
【0036】
このようにして頂部縮小筒状構造物2の上層部を垂下して支持しながら、頂部縮小筒状構造物2の下層部を解体して除去し、次いでジャッキ式昇降機15を操作して、ステップロッド12にて垂下した頂部縮小筒状構造物2を基礎3上に下降させた。
この手順を繰り返して、頂部縮小筒状構造物2を下層部から解体していき、頂部縮小筒状構造物2の上層部を解体する際には、図4に示すように、昇降機支持架台1を頂部縮小筒状構造物2の半径方向に移動させて、頂部縮小筒状構造物2とフック14の間隔が広がり過ぎないように調整した。
【0037】
このようにして、本発明の昇降機支持架台1を用いることによって、頂部縮小筒状構造物2を倒壊あるいは崩壊させることなく、下層部から上層部まで順次解体することができた。
【符号の説明】
【0038】
1 昇降機支持架台
2 頂部縮小筒状構造物
3 基礎
4 移動台
5 移動用ジャッキ
6 保持台
7a 固定側梁
7b 調整側梁
8 連結架構
8a 固定端
8b 調整端
9 ボルト装着孔
10 ボルト固定孔
11 ボルト
12 ステップロッド
13 アンカーボルト
14 フック
15 ジャッキ式昇降機
16 開口部
17 ローラー
図1
図2
図3
図4
図5