特許第6189143号(P6189143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189143
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20170821BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20170821BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A61F13/511 100
   A61F13/534
   A61F13/539
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-178882(P2013-178882)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-110890(P2014-110890A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-240838(P2012-240838)
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(72)【発明者】
【氏名】福田 優子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信也
(72)【発明者】
【氏名】藤中 知子
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−132056(JP,A)
【文献】 特開2011−135987(JP,A)
【文献】 特開平11−347062(JP,A)
【文献】 特許第5014604(JP,B2)
【文献】 特開2012−034715(JP,A)
【文献】 特開2007−143676(JP,A)
【文献】 特開2007−222673(JP,A)
【文献】 特開2011−240055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 −13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の肌に近い側に位置する表面シート、着用者の肌から遠い側に位置する裏面シート、及び該表面シートと該裏面シートとの間に位置する吸収体を備え、長手方向及びそれと直交する幅方向を有する縦長の吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収コアと該吸収コアを被覆するコアラップシートとを有し、
前記吸収コアは、パルプ繊維と高吸収性ポリマーとが混合されてなり、該高吸収性ポリマーの吸収速度が30秒以上150秒以下であり、かつ該高吸収性ポリマーの比率が高い第1面と、該第1面と反対側に位置し該パルプ繊維の比率が高い第2面とを有し、
前記吸収コアは、その第1面が肌当接面側に位置し、かつ第2面が非肌当接面側に位置するように配されており、
前記表面シートは、着用者の肌に当接する第1面及び吸収体と対向する第2面を有しており、
第1面側には、多数の第1突出部が配列されており、
第2面側には、多数の第2突出部が配列されており、
第1突出部の突出形状は半球状であり、第2突出部の突出形状は尖鋭であり頂部に丸みのある円錐ないし円錐台形状であり、
第1突出部と第2突出部とは、前記表面シートのシート面に対して互いに反対方向に突出しており、
両突出部は、平面視においても側面視においても同一位置にない、重なりのない関係で交互に配置するようになされており、
前記表面シートと前記吸収体との間には、前記両突出部の凹凸構造に起因する空間が形成されており、
前記吸収体においては、前記吸収コアの第1面と前記コアラップシートとが、長手方向に沿って延びる複数条の接着領域において幅方向に間欠的に接合されており、
前記吸収コアの第1面と前記コアラップシートとの前記接着領域の面積と非接着領域の面積との比率が、〔接着領域の面積/非接着領域の面積〕で表して0.5以上1.2以下であり、かつ非接着領域の幅が8mm以上であり、
前記吸収体の肌当接面側における液の拡散面積と、非肌当接面側における液の拡散面積との比率が、〔肌当接面側における液の拡散面積/非肌当接面側における液の拡散面積〕で表して0.5以上0.8以下である吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収コアにおける〔前記高吸収性ポリマー/前記パルプ繊維〕の質量比が1以上2以下である請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収コアにおける前記高吸収性ポリマーの坪量が30g/m2以上350g/m2以下であり、前記パルプ繊維の坪量が30g/m2以上300g/m2以下である請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記高吸収性ポリマーは、そのJIS K 7223に準拠した遠心保持量が25g/g以上65g/g以下であり、その加圧下通液速度が20ml/分以上1000ml/分以下である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の吸収体をパルプ繊維と高吸収性ポリマーの粒子とから構成し、高吸収性ポリマーの粒子を吸収体の厚み方向において偏在させる技術が種々知られている。例えば特許文献1には、吸収体における第1主平面側を含む第1二半部分における高吸収材料の密度を、対向する第2主表面を含む第2二半部分における高吸収材料の密度よりも高くすることが記載されている。第1主平面は吸収性物品における肌当接面側を向いている。
【0003】
特許文献2には、吸収体の内部に高吸収性ポリマーが混入されているとともに、高吸収性ポリマーの一部又は全部が表層側に偏在して配置されている吸収性物品が記載されている。また、同文献には、このように高吸収性ポリマーを偏在させた吸収体を、凹凸のエンボスが付与されている表面シートと組み合わせて用いることが記載されている。
【0004】
ところで、吸収体の全域において効率よく液を吸収させるために、吸収体の面方向に液を拡散させ、吸収面積を有効利用する工夫が種々提案されている。例えば、吸収体の肌当接面側に、液を面方向に拡散させやすいサブレイヤシートを配置する技術が知られている。また吸収体に溝を形成したり、圧縮加工したりして、液を吸収体の全域に拡散させる技術も知られている。しかし一方で、吸収体の全域にわたり広く液が拡散することには、肌が液に接触する面積の増加の懸念や、着用状態での吸収性物品と肌との間の空間の湿度上昇の懸念がある。上述した各特許文献には、吸収体の面方向への液の拡散を高めつつ、拡散を高めることによって生じる不都合を解消するための手段については検討がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−205806号公報
【特許文献2】特開2007−117727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、着用者の肌に近い側に位置する表面シート、着用者の肌から遠い側に位置する裏面シート、及び該表面シートと該裏面シートとの間に位置する吸収体を備え、長手方向及びそれと直交する幅方向を有する縦長の吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収コアと該吸収コアを被覆するコアラップシートとを有し、
前記吸収コアは、パルプ繊維と高吸収性ポリマーとが混合されてなり、該高吸収性ポリマーの吸収速度が30秒以上150秒以下であり、かつ該高吸収性ポリマーの比率が高い第1面と、該第1面と反対側に位置し該パルプ繊維の比率が高い第2面とを有し、
前記吸収コアは、その第1面が肌当接面側に位置し、かつ第2面が非肌当接面側に位置するように配されており、
前記表面シートは、少なくとも前記吸収体との対向面側が凹凸構造を有しており、該表面シートと該吸収体との間には、該凹凸構造に起因する空間が形成されており、
前記吸収体においては、前記吸収コアの第1面と前記コアラップシートとが、長手方向に沿って延びる複数条の接着領域において幅方向に間欠的に接合されている吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、肌当接面側における液の拡散が抑えられ、かつ非肌当接面側において液を大きく拡散させることができる。したがって本発明の吸収性物品によれば、肌への液移りや液戻りが低減され、また吸収性物品と肌との間の空間の湿度上昇が低減される。更に効率よく熱や水蒸気を非肌当接面側の外界に放散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態としての使い捨ておむつを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すおむつにおける表面シートの要部拡大図である。
図3図3は、図1に示すおむつにおける股下部の要部を示す幅方向断面図である。
図4図4は、図1に示すおむつにおける吸収コアとコアラップシートとの接着状態を示す平面図である。
図5図5(a)ないし(d)は、図1に示すおむつにおける液の拡散及び吸収の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の吸収性物品の一実施形態としての使い捨ておむつが示されている。図2は、図1における股下部の縦断面図である。同図に示す使い捨ておむつ10は、テープ止めタイプの展開型のものである。おむつ10は、長手方向Yと、これに直交する幅方向Xを有し、長手方向Yに長い形状をしている。おむつ10は、その長手方向Yの中央域が股下部Cとなっている。股下部Cの前後は、腹側部A及び背側部Bとなっている。
【0011】
おむつ10は、着用者の肌に近い側、すなわち肌当接面側に位置する表面シート11と、着用者の肌から遠い側、すなわち非肌当接面側に位置する裏面シート12を備えている。表面シート11と裏面シート12との間には吸収体13が位置している。
【0012】
おむつ10は、幅方向Xにおける左右両側部に、長手方向Yに延びる一対の防漏カフ14,14を有している。防漏カフ14は、おむつ10の全長にわたって延びている。防漏カフ14は、長手方向Yに長い一枚のシート14aを、該長手方向Yに沿って二つ折りしたものから構成されている。防漏カフ14は、長手方向Yに沿って自由端及び固定端を有している。自由端は、二つ折りしたシート14aの折り線に沿った部位である。自由端には、糸ゴム等の弾性部材14bが伸長状態で配置固定されている。弾性部材14bは、股下部Cに少なくとも配されている。弾性部材14bが収縮することで、防漏カフ14は着用者の肌側に向けて起立性向を有するようになる。防漏カフ14の固定端は、吸収体13の左右両側縁から側方に延出した裏面シート12と接合している。この接合によって、おむつ10の左右両側部には、レッグカフ15が形成される。レッグカフ15においては、防漏カフ14の固定端と裏面シート12とが接合している部位に、両者間に糸ゴム等の弾性部材14cが伸長状態で配置固定されている。弾性部材14cは、股下部Cに少なくとも配されている。弾性部材14cが収縮することで、おむつ10の装着状態においてレッグカフ15が着用者の脚周りに密着する。
【0013】
おむつ10においては、背側部Bの左右両側縁部に、一対のファスニングテープF,Fが設けられている。腹側部Aの外表面、すなわち裏面シート12の非肌当接面には、ファスニングテープF,Fを止着させるランディングテープLが設けられている。ファスニングテープFをランディングテープLに止着することで、おむつ10の装着状態が完成する。
【0014】
表面シート11としては液透過性を有するシート材が用いられる。このシート材の詳細は以下に述べる。裏面シート12としては、液不透過性ないし液難透過性のフィルムや不織布(例えばスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布)を用いることができる。防漏カフ14を構成するシート14aとしては、撥水性のシート材、例えばスパンボンド不織布をはじめとする各種の不織布を用いることができる。
【0015】
図3には、表面シート11の要部拡大図が示されている。表面シート11は、その各面に凹凸構造を有している。表面シート11は、その面方向に連続した構造を有している。この「連続」とは、断続した部分や小孔がないことを意味する。ただし、繊維間細孔のような微細孔は前記小孔には含まれない。
【0016】
表面シート11は、第1面111及び第2面112を有している。第1面111は着用者の肌に当接する面である。第2面112は、吸収体13と対向する面である。表面シート11の第1面111側には、多数の第1突出部11aが縦横の2つの方向の面内で斜交する関係で延び配列されている(以下、この配列を斜交格子状配列ということがある。)。この格子状配列は直交(90°)する関係でもよく、そのときには直交格子状の配列として区別していうことがある。本実施形態においては、その面内における任意の第1方向とそれに直交する第2方向が、30°〜90°の角度で交差していることが好ましい。更に本実施形態においては、表面シート11の第2面112側に突出する多数の第2突出部11bが形成されている。この第2突出部11bも斜交格子状配列になっているが、直交格子状配列であってよい。その交差角度の好ましい範囲は、第1突出部11aに伴って定まるため、前記と同様である。この第1突出部11aと第2突出部11bとは、シート面に対して互いに反対方向に突出している。そして、平面視においても側面視においても同一位置にない、つまり重なりのない関係で両者が交互に配置するようになされている。
【0017】
上述のようにして面内の第1方向及び第2方向にそれぞれ延び配列された第1突出部11aと第2突出部11bとは、面状に矛盾なく連続して表面シート11を構成している。ここで、矛盾なく連続するとは、特定の形状部分が連なって面状になるとき、屈折したり不連続になったりせず、緩やかな曲面で全体が連続した状態になることをいう。なお、第1突出部11aと第2突出部11bとの配列形態は図2に示す形態に限定されず、矛盾なく連続し得る配列で配置し得る形態であればよい。例えば、第1突出部11aを中心に六角形の頂点に6つの第2突出部11bが配置し、そのパターンが面内に広がる配列であってもよい。なお、この場合、第2突出部11bの数が第1突出部11aの数を上回るため、第2突出部11bどうしが隣接する状態が生じるが、全体において連続したシート状態が構成される限りにおいて、このような形態の配列も第1突出部11aと第2突出部11bとが「交互」に配列したという意味に含まれる。
【0018】
第1突出部11a及び第2突出部11bは頂部に丸みをもった円錐台形状又は半球状にされている。より詳細に見れば、第1突出部11aの突出形状は尖鋭ではなくむしろ半球状であり、他方、第2突出部11bの突出形状はより尖鋭であり頂部に丸みのある円錐ないし円錐台形状になっている。尤も、各突出部11a,11bの形状はこれに限定されず、どのような突出形態でもよい。例えば、様々な錐体形状(本明細書において錐体形状とは、円錐、円錐台、角錐、角錐台、斜円錐等を広く含む意味である。)であることが実際的である。
【0019】
第1突出部11a及び第2突出部11bはその外形と相似する頂部に丸みのある円錐台形状又は半球状の空間11c,11dを保持している。それぞれの空間11c,11dは、表面シート11を介して隔てられており実質的に連続しない空間として形成されている。
【0020】
本実施形態においては、表面シート11を平面視した場合、第1突出部11aと第2突出部11bとはそれぞれ散点状に千鳥格子の配置状態になるように形成されている。つまり、表面シート11の平面視において平面内の第1方向に沿って第1突出部11aと第2突出部11bとが交互に出現し、かつ第1方向と直交する第2方向に沿っても第1突出部11aと第2突出部11bとが交互に出現するように、これらの突出部11a,11bが配置されている。このような構造を有する表面シート11は、例えば各種の繊維材料を原料として用い、特開2012−136792号公報に記載の方法によって好適に製造することができる。
【0021】
表面シート11における少なくとも吸収体13との対向面側が凹凸構造を有していることに起因して、図3に示すとおり、おむつ10においては、表面シート11と吸収体13との間に、該凹凸構造に起因する複数の空間11dが形成される。この空間11dによって、表面シート11と吸収体13とは面方向において不連続に隔てられる。この空間11dは、表面シート11に排泄された液が該表面シート11を透過してきたときに、該液の一時ストック空間として機能し、面方向への液の拡散を抑制する。空間11dに一時的にストックされた液は、面方向への拡散が抑制されつつ、吸収層13へと吸収される。
【0022】
十分な容積の一時ストック空間を形成する観点から、表面シート11はその見かけの厚み、すなわち第1突出部11aの頂点の位置から、第2突出部11bの頂点の位置までの長さが1mm以上、特に1.5mm以上であることが好ましく、4.5mm以下、特に4.2mm以下であることが好ましい。例えば表面シート11の見かけの厚みは1mm以上4.5mm以下であることが好ましく、1.5mm以上4.2mm以下であることが更に好ましい。表面シート11の見かけの厚みは、表面シート11に0.05kPaの圧力を加えた状態で測定される。一方、表面シート11自体の厚みは、0.1mm以上、特に0.2mm以上であることが好ましく、2mm以下、特に1.5mm以下であることが更に好ましい。例えば表面シート11自体の厚みは0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.2mm以上1.5mm以下であることが更に好ましい。
【0023】
吸収体13は、吸収コア16と、吸収コア16を被覆するコアラップシート17とを有している。コアラップシート17は、吸収コア16の少なくとも上面の全域、すなわち表面シート対向面である肌当接面の全域を被覆している。更にコアラップシート17は、吸収コア16の下面の全域、すなわち裏面シート対向面である非肌当接面の全域を被覆していることが好ましい。
【0024】
吸収コア16はパルプ繊維と高吸収性ポリマーとを含んで構成されている。吸収コア16においてはパルプ繊維と高吸収性ポリマーとが混合状態で積繊されている。パルプ繊維及び高吸収性ポリマーは、吸収コア16の厚み方向Zにおいて均一に分布しているのではなく、両者のその分布状態が偏在している。詳細には、吸収コア16の厚み方向Zにおいて、該吸収コア16は、高吸収性ポリマーの比率が高い第1面と、該第1面と反対側に位置し該パルプ繊維の比率が高い第2面とを有している。そして吸収コア16は、その第1面が肌当接面側に位置し、かつ第2面が非肌当接面側に位置するように配されている。
【0025】
吸収コア16における高吸収性ポリマーは、厚み方向Zにおいて、吸収コア16の肌当接面においてその存在比率が最も高くなっている。また高吸収性ポリマーは、吸収コア16の非肌当接面においてその存在比率が最も低くなっている。肌当接面と非肌当接面の間においては、高吸収性ポリマーの存在比率は、肌当接面から非肌当接面へ向けて減少している。減少のしかたは、例えば連続的に漸次減少していてもよく、あるいは不連続にステップ状に減少していてもよい。
【0026】
一方、パルプ繊維に関しては、厚み方向Zにおいて、吸収コア16の非肌当接面においてその存在比率が最も高くなっている。また、吸収コア16の肌当接面においてその存在比率が最も低くなっている。肌当接面と非肌当接面の間においては、パルプ繊維の存在比率は、非肌当接面から肌当接面へ向けて減少している。減少のしかたは、例えば連続的に漸次減少していてもよく、あるいは不連続にステップ状に減少していてもよい。
【0027】
このように吸収コア16においては、その肌当接面側に高吸収性ポリマーが偏在している一方、その非肌当接面にパルプ繊維が偏在している。このような構造の吸収コア16を特定の接着パターンでコアラップシート17と接着させてなる吸収体13を、上述した凹凸構造を有する表面シート11と組み合わせて用いることで、肌当接面側における液の拡散を抑えることができ、かつ非肌当接面側において液を大きく拡散させることができる。このメカニズムの詳細について後述する。
【0028】
吸収コア16の厚み方向Zにおける高吸収性ポリマー及びパルプ繊維の偏在の程度は、肌当接面及びその近傍の部位において、高吸収性ポリマーの割合が60質量%以上、特に65質量%以上であることが好ましく、95質量%以下、特に90質量%以下であることが好ましい。一方、パルプ繊維の割合が5質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましく、40質量%以下、特に35質量%以下であることが好ましい。例えば肌当接面及びその近傍の部位における高吸収性ポリマーの割合は、60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、65質量%以上90質量%以下であることが一層好ましい。
【0029】
前記の肌当接面及びその近傍の部位とは、吸収体の厚みを2分割した部位のうち、肌当接面側に位置する部位のことをいう。一方、非肌当接面及びその近傍の部位とは、吸収体の厚みを2分割した部位のうち、非肌当接面側に位置する部位のことをいう。肌当接面及びその近傍の部位及び非肌当接面及びその近傍の部位における高吸収性ポリマー及びパルプ繊維の割合は、次の方法で測定する。
吸収体を長手方向に沿って3cmの長さに切断する。切断した部位を2枚のアクリル板で挟む。このとき、吸収体の厚さと同じ厚さのすきまゲージを吸収体と重ならないようにアクリル板の間に介在させて厚みを維持しつつ挟む。そしてカッターの刃を用いて吸収体を厚み方向で2分する。分割面によって分割された肌当接面及びその近傍の部位及び非肌当接面及びその近傍の部位のそれぞれを、保水性のない素材からなるメッシュ袋に入れ、高吸収性ポリマーの脱落がないように、メッシュ袋ごと以下の操作を行う。まず、各部位に秤量する(この値を(A)とする) 。次に、各部位を生理食塩水中に30分浸漬させ
る。その後、各部位を生理食塩水中から引き上げて、10分間吊り下げて自然落下による水切りを行う。次に、各部位について800rpmの速度で遠心脱水機による水切りを10分間行う。遠心脱水機による水切り後に保持されている各部位中の水分量(この値を(B)とする)を求める(以下、遠心脱水機による水切り後に保持されている水分量を「遠心保持量」という) 。
一方で、各部位に含まれる高吸収性ポリマーと同一種類のポリマーを秤量し、メッシュ袋に入れて前記と同様の操作を行い、高吸収性ポリマーのみの遠心保持量を求める。そして、高吸収性ポリマー1g あたりの遠心保持量(C)を計算する。
以上のとおりの操作で求めたA、B及びCの値を用い、{(B)−(A)}÷(C)の計算から、各部位中の高吸収性ポリマーの量(D)を求め、更に(D)÷(A)から高吸収性ポリマーの割合を求める。これに加えて{(A)−(D)}÷(A)からパルプ繊維の割合を求める。
【0030】
吸収コア16の非肌当接面及びその近傍の部位においては、高吸収性ポリマーの割合が30質量%以上、特に35質量%以上であることが好ましく、55質量%以下、特に50質量%以下であることが好ましい。一方、パルプ繊維の割合が45質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましく、75質量%以下、特に70質量%以下であることが好ましい。例えば非肌当接面及びその近傍の部位における高吸収性ポリマーの割合は、30質量%以上55質量%以下であることが好ましく、35質量%以上50質量%以下であることが一層好ましい。一方、非肌当接面及びその近傍の部位におけるパルプ繊維の割合は、45質量%以上75質量%以下であることが好ましく、50質量%以上70質量%以下であることが一層好ましい。
【0031】
吸収コア16における高吸収性ポリマーの量は、30g/m2以上、特に50g/m2以上であることが好ましい。上限値は、350g/m2以下、特に300g/m2以下であることが好ましい。例えば高吸収性ポリマーの量は、好ましくは30g/m2以上350g/m2以下であり、更に好ましくは50g/m2以上300g/m2以下である。一方、吸収コア16におけるパルプ繊維の量は、30g/m2以上、特に50g/m2以上であることが好ましい。上限値は、300g/m2以下、特に250g/m2以下であることが好ましい。例えばパルプ繊維の量は、好ましくは30g/m2以上300g/m2以下であり、更に好ましくは50g/m2以上250g/m2以下である。
【0032】
吸収コア16における高吸収性ポリマーとパルプ繊維との比率は、〔高吸収性ポリマー/パルプ繊維〕の質量比で表して1以上、特に1.2以上であることが好ましく、2以下、特に1.8以下であることが好ましい。吸収コア16における高吸収性ポリマー及びパルプ繊維それぞれの量並びにそれらの比率を上述の範囲に設定することで、吸収コア16を過度に厚くすることなく、十分な液保持容量を確保することができる。
【0033】
吸収コア16それ自体の坪量は60g/m2以上、特に70g/m2以上であることが好ましい。上限値は、650g/m2以下、特に600g/m2以下であることが好ましい。例えば吸収コア16の坪量は、好ましくは60g/m2以上650g/m2以下であり、更に好ましくは70g/m2以上600g/m2以下である。
【0034】
吸収コア16に含まれる高吸収性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液を吸収・保持できかつゲル化し得るものが好ましい。形状は特に問わず、例えば球状、塊状、ブドウ状、粉末状又は繊維状であり得る。好ましくは大きさが1μm以上1000μm以下、より好ましくは10μm以上500μm以下の粒子状のものである。そのような高吸収性ポリマーの例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合体も好ましく使用し得る。
【0035】
吸収コア16に含まれるパルプ繊維としては、従来この種の吸収性物品に用いられてきたものと同様のものを用いることができる。例えばフラッフパルプを用いることができる。パルプ繊維は必要に応じそれを構成するセルロースが架橋されていてもよい。あるいはパルプ繊維はカールしていてもよい。
【0036】
吸収コア16を被覆するコアラップシート17は、吸収コア16の保形性を高めるために用いられている。コアラップシート17としては、液透過性の繊維シートを用いることができる。例えばティッシュペーパーや不織布を用いることができる。不織布としては、例えばスパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布などを用いることができる。吸収コア16の肌当接面側を被覆するコアラップシート17と、非肌当接面側を被覆するコアラップシート17は、同種のものであってもよく、あるいは異種のものであってもよい。
【0037】
図3に示すとおり、吸収コア16の上面と、該上面を被覆するコアラップシート17とは、接着剤20によって間欠的に接着されている。この接着によって、吸収コア16の保形性が一層高められる。また、両者の接着は吸収コア16の上面における液の厚み方向Zへの透過及び面方向への拡散のコントロールにも寄与している。
【0038】
図4には、吸収コア16の肌当接面及び非肌当接面とコアラップシート17との接着パターンが示されている。同図に示すとおり、吸収コア16の上面とコアラップシート17とは、長手方向Yに沿って延びる複数条の接着領域18において、接着剤20によって接合されている。幅方向Xにおいて隣り合う接着領域18の間は非接着領域19になっている。つまり幅方向Xにおいて隣り合う接着領域18は、非接着領域19によって隔てられている。このように吸収コア16の上面とコアラップシート17とは長手方向Yにおいて連続する接着領域18において接合されているとともに、幅方向Xにおいては非接着領域19を隔てて間欠的に接合されている。
【0039】
図4に示す実施形態では、スパイラル状に塗布された2列で一条をなす接着剤20からなる接着領域18が複数条形成されている。尤も、接着剤20の塗布パターンはスパイラル状に限られず、例えば所定の幅をもってストライプ状に接着剤20を塗布してもよい。あるいはΩ字状の塗布パターンで接着剤20を塗布してもよい。また、図4に示す実施形態では、接着領域18は、吸収コア16の長手方向Yの全長にわたって形成されているが、これに代えて接着領域18が、吸収コア16の長手方向Yの一部だけに延びるように形成してもよい。例えば接着領域18が吸収コア16の長手方向Yの略中央域にのみ延びるように形成してもよい。
【0040】
吸収コア16の上面とコアラップシート17とが所定のパターンで接合していることで、表面シート11を透過してきた液がコアラップシート17に到達すると、該液は主としてコアラップシート17における非接着領域19を通じて吸収コア16内に透過し、吸収コア16内で面方向に拡散する。この理由は、接着領域18は非接着領域19よりも相対的に液を透過させづらくなっているので、このことに起因して、吸収コア16の上面での液の面方向への拡散が抑制されるからである。要するに、吸収コア16に液が到達すると、その上面における液の面方向への拡散が抑制されるとともに、吸収コア16内において液が面方向に拡散するようになる。このことは、吸収コア16に一旦吸収された液が、肌への液移りや液戻りの低減に寄与するという有利な効果につながる。
【0041】
以上の効果を一層顕著なものとする観点から、吸収コア16の上面とコアラップシート17との接着領域18の面積と、非接着領域19の面積との比率を、〔接着領域18の面積/非接着領域19の面積〕で表して、0.5以上、特に0.6以上とすることが好ましい。また、この比率を1.2以下、特に1以下とすることが好ましい。例えば、この比率は0.5以上1.2以下であることが好ましく、0.6以上1以下であることが更に好ましい。
【0042】
以上の効果を一層顕著なものとする観点から、非接着領域19の幅は8mm以上、特に10mm以上とすることが好ましい。前記の接着領域18を複数条塗布し、かつ接着領域18間に一定の間隔で非接着領域19を形成することで、表面シート11から吸収体13への液移行を妨げることなく、長手方向への液拡散が促進されやすくなる。また、非接着領域19の幅は、30mm以下、特に25mm以下とすることが好ましい。例えば非接着領域19の幅は8mm以上30mm以下であることが好ましく、10mm以上25mm以下であることが更に好ましい。なお、接着領域18の面積とは、接着剤20が所定の幅を有するストライプ状に塗布されて接着領域18が形成されている場合には、接着剤20が実際に塗布されている領域の面積のことをいう。一方、接着剤20が図4に示すとおりスパイラル状に塗布されている場合や、Ω字状に塗布されている場合(図示せず)には、幅方向Xにおける接着剤20の端部間の長さW(図4参照)と接着領域18の長さとの積を接着面積と定義する。
【0043】
吸収コア16の上面とコアラップシート17とが接着領域によって間欠的に接着されていることには、液を繰り返し吸収したときであっても、液の面方向の拡散が抑制されるという利点もある。詳細には、吸収コア16が一旦液を吸収すると、それに含まれている高吸収性ポリマーが膨潤する。この膨潤に起因して、吸収コア16と、その上面に配置されているコアラップシート17との間に空間が生じる。この場合、両者が接合領域18よりも非接合領域19の方が、空間が生じる程度が大きくなる。この空間を通じて2回目以降の液の吸収時にも液の透過が円滑に行われるので、面方向への液の拡散が抑制される。
【0044】
以上の説明は、吸収コア16における上面とコアラップシート17との関係であったところ、吸収コア16における下面とコアラップシート17とは、図4に示すとおり、吸収コア16の長手方向に延びようにストライプ状に塗布された接着剤20によって接着されていている。なお、接着剤20の接着パターンは、図4に示すパターンに限られず、他のパターンを採用してもよい。また場合によっては、吸収コア16における下面とコアラップシート17と接着されていなくてもよい。
【0045】
以上の構成を有する本実施形態のおむつにおける液の透過吸収機構について図5(a)ないし(d)を参照しながら説明する。図5(a)はおむつ10に液Nが排泄された直後の状態である。この状態においては、液Nは、凹凸構造を有する表面シート11の肌対向面側の凹部及び空間11dを含む見かけの厚み全体に貯留される。
【0046】
図5(b)は、液Nが表面シート11を透過し、該表面シートの肌当接面側から吸収体対向面側へ移行した状態である。この状態においては、液Nは、表面シート11と吸収体13におけるコアラップシート17との間に画成された空間11d内に一時的にストックされる。空間11は面方向に不連続に形成されているので、液Nの面方向への拡散は抑制される。
【0047】
空間11dに一時的にストックされた液は、次いで図5(c)に示すとおり、コアラップシート17を透過する。先に述べたとおり、コアラップシート17は、接着剤20によって吸収コア16の上面16aと接着されている。この接着領域においては液Nの透過が抑制される。特に接着領域は、先に述べた図4に示すとおり、おむつ10の長手方向に沿って複数条設けられているので、液Nの面方向の拡散が各接着領域によって抑制される。その結果、液Nは主として接着領域間の非接着領域を通じ、面方向への過度の拡散を伴わずに透過する。
【0048】
コアラップシート17を透過して吸収コア16に到達した液Nは、図5(d)に示すとおり、該吸収コア16の上面16a側、すなわち肌当接面側に偏在している高吸収性ポリマー間を透過する。高吸収性ポリマーは、パルプ繊維に比べると液の吸収速度が遅いので、高吸収性ポリマーに液Nが接触した直後の状態では該高吸収性ポリマーは液Nを吸収しないので、液Nはそのまま下方へ向けて透過する。しかも高吸収性ポリマーは、吸収コア16の肌当接面側に偏在しているので、液Nは吸液膨潤前の高吸収性ポリマーの存在によって面方向への拡散が抑制される。その結果、液Nは吸収コア16の内部において、裏面シート12側に向けて、面方向への過度の拡散を伴わずに透過する。そして、液Nは吸収コア16における裏面シート対向面側において面方向へ拡散する。このような液の透過吸収が行われる結果、本実施形態のおむつ10においては、肌への液移りや液戻りが効果的に低減される。またおむつ10と肌との間の空間の湿度上昇が低減される。更に効率よく熱や水蒸気を非肌当接面側の外界へ放散させることができる。水蒸気の放散は、裏面シート12が透湿性を有するものである場合に起こり、それに伴って熱の放散がより顕著なものとなる。
【0049】
以上の有利な効果を一層顕著なものとする観点から、高吸収性ポリマーは、その吸収速度が30秒以上、特に40秒以上であることが好ましく、150秒以下、特に120秒以下であることが好ましい。例えば吸収速度が30秒以上150秒以下であることが好ましく、40秒以上120秒以下であることが更に好ましい。高吸収性ポリマーがこの範囲の吸収速度を有することによって、吸収コア16の肌当接面側において高吸収性ポリマーが液を吸収し始めるまでの時間を遅らすことができ、吸収コア16内を液が透過しやすくなり、裏面シート12の対向面側において液が面方向に拡散しやすくなる。この範囲の吸収速度を有する高吸収性ポリマーを得るためには、例えば吸収性ポリマーの粒子径、一次架橋密度、表面架橋度の調整(後架橋処理)、形状制御、各種界面活性剤や多価アルコール、親水性粉体などによる吸収性ポリマーの表面処理などによって調整すればよい。
【0050】
また高吸収性ポリマーは、そのJIS K 7223に準拠した遠心保持量が25g/g以上、特に30g/g以上であることが好ましく、65g/g以下、特に55g/g以下であることが好ましい。例えば遠心保持量が25g/g以上65g/g以下であることが好ましく、30g/g以上55g/g以下であることが更に好ましい。高吸収性ポリマーがこの範囲の遠心保持量を有することによって、液を吸収した後の高吸収性ポリマーの膨潤の度合いが大きくなり、そのことに起因して吸収コア16内での液の透過経路を確保することができる。この範囲の遠心保持量を有する高吸収性ポリマーを得るためには、例えば 吸収性ポリマーの表面架橋度を調整すればよい。一般に、吸収性ポリマーの表面架橋度が高くなる(表面架橋処理が進む)と、遠心保持量(吸水倍率)は低くなる傾向がある。具体的には例えば、表面架橋剤の量を調整したり、表面架橋処理温度を低くしたり、反応時間を短くしたりすることでも遠心保持量は調整可能である。
【0051】
更に高吸収性ポリマーは、その加圧下通液速度が20ml/分以上、特に40ml/分以上であることが好ましく、1000ml/分以下、特に800ml/分以下であることが好ましい。例えば加圧下通液速度が20ml/分以上1000ml/分以下であることが好ましく、40ml/分以上800ml/分以下であることが更に好ましい。高吸収性ポリマーがこの範囲の加圧下通液速度を有することによって、吸収コア16に着用者の体圧が加わった状態であっても高吸収性ポリマー間に液の透過経路を確保することができる。この範囲の加圧下通液速度を有する高吸収性ポリマーを得るためには、例えば架橋の強さ(内部架橋、及び必要に応じて表面架橋)、形状、表面処理等によって調整すればよい。
【0052】
上述した高吸収性ポリマーの吸収速度は、特開2010−017536号公報の〔0050〕に記載のボルテックス法に従い測定することができる。遠心保持量は、特開2010−017536号公報の〔0047〕に記載の方法で測定することができる。加圧下通液速度は、特開2003−235889号公報の〔0008〕−〔0016〕に記載の方法で測定することができる。
【0053】
以上のとおり、本実施形態のおむつ10では、吸収体13の肌当接面側と非肌当接面側とで液の拡散面積が顕著に相違するものである。例えば吸収体13は、肌当接面側における液の拡散面積と、非肌当接面側における液の拡散面積との比率が、〔肌当接面側における液の拡散面積/非肌当接面側における液の拡散面積〕で表して0.5以上、特に0.55以上であることが好ましく、0.8以下、特に0.75以下であることが好ましい。例えば前記の比率は0.5以上0.8以下であることが好ましく、0.55以上0.75以下であることが更に好ましい。
【0054】
前記の拡散面積は、次のようにして測定される。平面に展開したサンプルの所定の位置を液注入点として、ポンプを用いて5g/secの速度で着色した液を所定量(40g)注入し、10分間静置する。その後、表面シートを剥離して吸収コアの第1面におけるコアラップシート上の着色領域をOHPシートに写し取る。サンプルを裏返し裏面シートを剥離し、更にコアラップシートを静かに剥離して、吸収コアの第2面におけるコアラップシート上の着色領域をOHPシートに写し取る。OHPシートの画像をスキャナーに取り込み画像解析ソフトImage−Pro Plus(日本ローパー製)を用いて拡散面積を算出する。
前記の拡散面積の測定に使用される液としては、例えば人工尿が用いられる。人工尿の組成は、尿素1.94質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.11質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.197質量%、赤色2号(染料)0.010質量%、水96.88質量%及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(約0.07質量%)であり、表面張力を53±1dyne/cm(23℃)に調整したものである。
【0055】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、表面シート11における各面が凹凸構造を有していたが、これに代えて、表面シート11における吸収体の対向面のみが凹凸構造を有していてもよい。
【0056】
また前記実施形態は、本発明の吸収性物品をテープ止めタイプの展開型使い捨ておむつに適用した例であるが、本発明は、他の形態の吸収性物品、例えばパンツ型使い捨ておむつ、失禁パッド、生理用ナプキン等にも同様に適用できる。
【0057】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸収性物品を開示する。
<1> 着用者の肌に近い側に位置する表面シート、着用者の肌から遠い側に位置する裏面シート、及び該表面シートと該裏面シートとの間に位置する吸収体を備え、長手方向及びそれと直交する幅方向を有する縦長の吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収コアと該吸収コアを被覆するコアラップシートとを有し、
前記吸収コアは、パルプ繊維と高吸収性ポリマーとが混合されてなり、該高吸収性ポリマーの吸収速度が30秒以上150秒以下であり、かつ該高吸収性ポリマーの比率が高い第1面と、該第1面と反対側に位置し該パルプ繊維の比率が高い第2面とを有し、
前記吸収コアは、その第1面が肌当接面側に位置し、かつ第2面が非肌当接面側に位置するように配されており、
前記表面シートは、少なくとも前記吸収体との対向面側が凹凸構造を有しており、該表面シートと該吸収体との間には、該凹凸構造に起因する空間が形成されており、
前記吸収体においては、前記吸収コアの第1面と前記コアラップシートとが、長手方向に沿って延びる複数条の接着領域において幅方向に間欠的に接合されている吸収性物品。
【0058】
<2> 前記吸収コアにおける〔前記高吸収性ポリマー/前記パルプ繊維〕の質量比が1以上2以下である前記<1>に記載の吸収性物品。
<3> 前記吸収コアにおける前記高吸収性ポリマーの坪量が30g/m2以上350g/m2以下であり、前記パルプ繊維の坪量が30g/m2以上300g/m2以下である前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4> 前記高吸収性ポリマーは、そのJIS K 7223に準拠した遠心保持量が25g/g以上65g/g以下であり、その加圧下通液速度が20ml/分以上1000ml/分以下である前記<1>ないし<3>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<5> 前記吸収コアの第1面と前記コアラップシートとの接着領域の面積と非接着領域の面積との比率が、〔接着領域の面積/非接着領域の面積〕で表して0.5以上1.2以下であり、かつ非接着領域の幅が8mm以上である前記<1>ないし<4>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0059】
<6> 非接着領域の幅が30mm以下である前記<5>に記載の吸収性物品。
<7> 前記吸収体の肌当接面側における液の拡散面積と、非肌当接面側における液の拡散面積との比率が、〔肌当接面側における液の拡散面積/非肌当接面側における液の拡散面積〕で表して0.5以上0.8以下である前記<1>ないし<5>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<8> 前記空間によって、表面シートと吸収体とが面方向において不連続に隔てられている前記<1>ないし<7>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<9> 表面シートは、着用者の肌に当接する第1面及び吸収体と対向する第2面を有しており、
第1面側には、多数の第1突出部が縦横の2つの方向に面内で斜交する関係で延び配列されており、その面内における任意の第1方向とそれに直交する第2方向が、30°以上90°以下の角度で交差している前記<1>ないし<8>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0060】
<10> 表面シートは、着用者の肌に当接する第1面及び吸収体と対向する第2面を有しており、
第1面側には、多数の第1突出部が配列されており、
第2面側には、多数の第2突出部が配列されており、
第1突出部と第2突出部とは、表面シートのシート面に対して互いに反対方向に突出しており、
両突出部は、平面視においても側面視においても同一位置にない、重なりのない関係で交互に配置するようになされている前記<1>ないし<9>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<11> 第1突出部と第2突出部との配列形態は、第1突出部を中心に六角形の頂点に6つの第2突出部が配置し、そのパターンが面内に広がる配列である前記<10>に記載の吸収性物品。
<12> 第1突出部の突出形状は半球状であり、第2突出部の突出形状は尖鋭であり頂部に丸みのある円錐ないし円錐台形状である前記<10>又は<11>に記載の吸収性物品。
【0061】
<13> 第1突出部の頂点の位置から、第2突出部の頂点の位置までの長さが1mm以上4.5mm以下である前記<10>ないし<12>のいずれか1に記載の吸収性物品。<14> コアラップシートは、吸収コアの表面シート対向面の全域を被覆し、吸収コアの裏面シート対向面の全域を被覆している前記<1>ないし<13>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<15> 吸収コアにおける高吸収性ポリマーの存在比率は、該吸収コアの厚み方向での肌当接面と非肌当接面の間において、肌当接面から非肌当接面へ向けて、連続的に漸次減少しているか、又は不連続にステップ状に減少している前記<1>ないし<14>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<16> 吸収コアにおけるパルプ繊維の存在比率は、該吸収コアの厚み方向での肌当接面と非肌当接面の間においては、非肌当接面から肌当接面へ向けて連続的に漸次減少していているか、又は不連続にステップ状に減少している前記<1>ないし<15>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0062】
<17> 吸収コアの肌当接面及びその近傍の部位において、高吸収性ポリマーの割合が60質量%以上95質量%以下であり、パルプ繊維の割合が5質量%以上40質量%以下である前記<1>ないし<16>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<18> 吸収コアにおける高吸収性ポリマーの量が、30g/m2以上350g/m2以下であり、パルプ繊維の量が、30g/m2以上300g/m2以下である前記<1>ないし<17>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<19> コアラップシートが液透過性の繊維シートからなり、該液透過性の繊維シートがティッシュペーパー又は不織布からなり、該不織布がスパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布、エアスルー不織布又はスパンレース不織布からなる前記<1>ないし<18>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<20> スパイラル状、ストライプ状又はΩ字状の塗布パターンで接着剤が塗布されて前記接着領域が形成されている前記<1>ないし<19>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<21> 長手方向Yと、これに直交する幅方向Xを有し、長手方向Yに長い形状をし、長手方向Yの中央域が股下部となっており、該股下部の前後が腹側部及び背側部となっている前記<1>ないし<20>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0063】
<22> 幅方向Xにおける左右両側部に、長手方向Yに延びる一対の防漏カフを有しており、
防漏カフは、吸収性物品の全長にわたって延びており、
防漏カフは、長手方向Yに長い一枚のシートを、該長手方向Yに沿って二つ折りしたものから構成されており、
防漏カフは、長手方向Yに沿って自由端及び固定端を有しており、該自由端は、二つ折りした前記シートの折り線に沿った部位であり、該自由端には弾性部材が伸長状態で配置固定されている前記<21>に記載の吸収性物品。
<23> 左右両側部にレッグカフが形成されており、
レッグカフにおいては、防漏カフの固定端と裏面シートとが接合している部位において、両者間に弾性部材が伸長状態で配置固定されている前記<22>に記載の吸収性物品。<24> 使い捨ておむつである前記<1>ないし<23>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<25> テープ止めタイプの展開型使い捨ておむつである前記<24>に記載の吸収性物品。
<26> 背側部の左右両側縁部に、一対のファスニングテープが設けられており、腹側部の外表面に、該ファスニングテープを止着させるランディングテープが設けられている前記<25>に記載の吸収性物品。
<27> パンツ型使い捨ておむつである前記<24>に記載の吸収性物品。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0065】
〔実施例1〕
図1に示す形態のベビー用Mサイズの使い捨ておむつを製造した。おむつにおける表面シートは図2に示す形態の不織布からなり、該不織布は特開2012−136792号公報の実施例1に記載の方法と同様の方法で製造した。この不織布の坪量は30g/m2であり、一方の面における突出部は千鳥格子状に配置されている。突出部のピッチは5mmであった。他方の面についても同様である。不織布の厚みは0.05kPa荷重下において2.1mmであった。おむつにおける裏面シートとしては、液難透過性のポリエチレンフィルムを用いた。防漏カフとしては、撥水性のスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布を用いた。吸収体における吸収コアは、フラッフパルプ及び高吸収性ポリマーから構成した。吸収コア全体に含まれるフラッフパルプの坪量は172g/m2であり、高吸収性ポリマーの坪量は257g/m2であった。吸収コアにおける肌当接面側と非肌当接面側とでフラッフパルプ及び高吸収性ポリマーの存在割合を違えるようにする方法として、特開2007−37668号公報に記載の方法を採用した。その結果、吸収コアには、肌当接面側から非肌当接面側に向かって高吸収性ポリマーの存在割合が漸次減少し、かつ非肌当接面側から肌当接面側に向かってフラッフパルプの存在割合が漸次減少したものになった。肌当接面及びその近傍の部位における高吸収性ポリマーの存在割合は69.3%であった。一方、非肌当接面及びその近傍の部位におけるフラッフパルプの存在割合は63.8%であった。使用した高吸収性ポリマーは、表1に示すポリマーAである。ポリマーAは、その吸収速度が65秒であり、そのJIS K 7223に準拠した遠心保持量が31.5g/gであり、その加圧下通液速度が70ml/分であった。吸収コアを包むコアラップシートとしては、坪量18g/m2である天然パルプNBKPを用いた。吸収コアにおける肌当接面とコアラップシートとの間は、ホットメルト粘着剤で接合した。ホットメルト粘着剤は、サミットスプレーを用い、図4に示すとおり、2列で一条をなすスパイラル状パターンを採用して塗布した。スパイラルの太さは0.05から0.2mmであり、図4に示す2列で一条をなすスパイラルからなる塗工領域の幅Wは5.5mmであった。この幅のサミット塗工領域を五条形成した。隣り合うサミット塗工領域の距離は12mmであった。ホットメルト粘着剤の全塗工量は3g/m2であった。
【0066】
〔実施例2〕
実施例1において、吸収コアにおけるパルプの坪量及び高吸収性ポリマーの坪量を、表1に示すとおりとした。また高吸収性ポリマーとして、表1に示すポリマーBを用いた。ポリマーBは、吸収速度が44秒であり、そのJIS K 7223に準拠した遠心保持量が32.8g/gであり、その加圧下通液速度が21ml/分であった。これ以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを製造した。
【0067】
〔実施例3〕
実施例1において、吸収コアにおけるパルプの坪量及び高吸収性ポリマーの坪量を、表1に示すとおりとした。これ以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを製造した。
【0068】
〔比較例1〕
本比較例は、実施例1において、吸収コアにおける肌当接面とコアラップシートとの間に塗工するホットメルト粘着剤の塗工パターンを変更したものである。また、実施例1において用いた吸収コアの表裏を反転させたものである。本比較例におけるホットメルト粘着剤の塗工パターンはコーターストライプとした。コーターの太さは2.5mmであり、隣り合うコーターの距離は2.5mmであった。また、ホットメルト粘着剤の全塗工量は3g/m2であった。これら以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0069】
〔比較例2〕
本比較例は、実施例1において用いた凹凸形状を有する表面シートに代えて、フラットな不織布を表面シートとして用いた例である。このフラットな不織布は、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレン(PE)の複合繊維と、5.6dtexのポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の複合繊維からなる二層構造の坪量25g/m2のエアスルー不織布であった。これら以外は実施例1と同様にして使
い捨ておむつを得た。
【0070】
〔比較例3〕
本比較例は、実施例2において用いた高吸収性ポリマーであるポリマーBに代えて、吸収速度が速く比較的遠心保持量が小さい高吸収性ポリマーであるポリマーCを用いた例である。ポリマーCは、吸収速度が3秒であり、そのJIS K 7223に準拠した遠心保持量が23.4g/gであり、その加圧下通液速度が0ml/分であった。これら以外は実施例2と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0071】
〔比較例4〕
本比較例は、実施例1において用いた高吸収性ポリマーであるポリマーAに代えて、吸収速度が速く比較的遠心保持量が小さい高吸収ポリマーであるポリマーDを用いた例である。ポリマーDは、吸収速度が29秒であり、そのJIS K 7223に準拠した遠心保持量が25.3g/gであり、その加圧下通液速度が130ml/分であった。また、吸収コア全体に含まれるフラッフパルプの坪量は191g/m2であり、高吸収性ポリマーの坪量は300g/m2であった。これら以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0072】
〔比較例5〕
本比較例は、実施例1において用いた吸収コアに代えて、別の吸収コアを用いた例である。本比較例で用いた吸収コアは、全体に含まれるフラッフパルプの坪量は200g/m2であり、高吸収性ポリマーの坪量は186g/m2であった。吸収コアにおけるフラッフパルプ及び高吸収性ポリマーの存在状態はほぼ均等で、肌当接面及びその近傍の部位における高吸収性ポリマーの存在割合は48.5%であった。一方、非肌当接面及びその近傍の部位におけるフラッフパルプの存在割合は52.1%であった。これら以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
【0073】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたおむつについて、吸収体の肌当接面側及び非肌当接面側における面方向への液の拡散の程度を、上述した方法で測定した。その結果を以下の表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例のおむつ(本発明品)は、各比較例のおむつに比べて、肌当接面側での液広がり面積が小さいことが判る。また、各実施例のおむつは、各比較例のおむつに比べて、非肌当接面側での液広がり面積に対する肌当接面側での液広がり面積の比率が小さいことも判る。
【符号の説明】
【0076】
10 使い捨ておむつ
11 表面シート
11a 第1突出部
11b 第2突出部
11d 空間
111 表面シートの第1面
112 表面シートの第2面
12 裏面シート
13 吸収体
14 防漏カフ
15 レッグカフ
16 吸収コア
17 コアラップシート
18 接着領域
19 非接着領域
20 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5