(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189145
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニル用抗カビ組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/02 20060101AFI20170821BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20170821BHJP
A01N 43/80 20060101ALI20170821BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20170821BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20170821BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20170821BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20170821BHJP
C08K 5/378 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
A01N25/02
A01N25/00 101
A01N43/80 102
A01P3/00
C08L27/06
C08K5/01
C08K5/10
C08K5/378
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-181142(P2013-181142)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-48331(P2015-48331A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義晃
【審査官】
三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−096754(JP,A)
【文献】
特開2003−063916(JP,A)
【文献】
特表2010−513436(JP,A)
【文献】
特開2005−029621(JP,A)
【文献】
特開2011−257417(JP,A)
【文献】
特表2012−520370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、可塑剤と、パラフィン系炭化水素を含有し、20℃における組成物の粘度が30mPa・s以下であり、0℃における組成物の粘度が100mPa・s以下であることを特徴とするポリ塩化ビニル用抗カビ組成物。
【請求項2】
可塑剤がフタル酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載のポリ塩化ビニル用抗カビ組成物。
【請求項3】
フタル酸エステルの分子量が390以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ塩化ビニル用抗カビ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
壁紙、床材、断熱材、防音材等の建築材料や、電線被覆、農業用資材、合成皮革等には幅広くポリ塩化ビニルが使用されており、これらのポリ塩化ビニル製品に対して微生物劣化を防止することが可能な抗カビ組成物に関するものであり、詳しくは一般式(I)で示される一種以上のイソチアゾリン化合物と、可塑剤と、パラフィン系炭化水素を含有することを特徴とする低粘度の抗カビ組成物に関する技術である。
一般式(I)
(式中、Rは炭素数4以上8以下のアルキル基を示し、X、Yは同一または異なり、水素もしくはハロゲンを示し、または互いに結合して芳香族環を形成しても良い)
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル製品は可塑剤等が配合されていることが多く、カビ等の微生物劣化を受けやすい材料である。このためポリ塩化ビニルに抗カビ剤を配合することが一般的に行われており、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン等のピリジン系化合物、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン系化合物、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル等のベンズイミダゾール系化合物、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、ジヨードメチル−パラトリルスルフォン等のヨード系化合物、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル等のニトリル系化合物、オルトフェニルフェノール、パラクロロメタキシレノール等のフェノール系化合物、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド等のフタルイミド系化合物等があり、これら抗カビ剤を複数組み合わせても使用されている。
【0003】
複数の抗カビ剤を組み合わせて使用されている例として、例えば、特開昭56−113706号に2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールの混合物(特許文献1)が、特公昭61−31081号に2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルと2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物(特許文献2)が、特公平5−42405号に3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメートと2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルの混合物(特許文献3)が、特開2003−192508号に2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールもしくは2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルからなる抗カビ組成物(特許文献4)が開示されている。
【0004】
ポリ塩化ビニルに抗カビ剤を配合する場合、基材であるポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、顔料、安定剤等を混錬して均一化した後、添加される場合が一般的であることから、粉塵飛散に係る計量等作業性の問題から液剤であることが好ましい。上述した抗カビ剤のなかには室温で固体のため適当な溶剤に溶解もしくは分散することで製剤したものが使用されることも一般であるが、保管時の安定性や計量等作業性の問題から分散した製剤より、溶解した製剤の方が好ましい。適当な溶剤としてはポリ塩化ビニルへの物性上の問題等から可塑剤が選択される事例が多く、その可塑剤に対する溶解性の点から主要な抗カビ剤として2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが使用されているが、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを可塑剤に溶解したものは粘度が高くなること、さらに低温時には結晶が析出する恐れがあり、作業性に問題があることからその改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−113706号公報
【特許文献2】特公昭61−31081号公報
【特許文献3】特公平5−42405号公報
【特許文献4】特開2003−192508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ポリ塩化ビニルに対して、微生物劣化を防止することが可能な低粘度で作業性の良い抗カビ組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意種々の研究を行った結果、一般式(I)で示される一種以上のイソチアゾリン化合物と、可塑剤と、パラフィン系炭化水素を含有させることによって計量等の作業性に優れる低粘度の抗カビ組成物を提供可能となることを見出し、本発明を完成させたものである。
一般式(I)
(式中、Rは炭素数4以上8以下のアルキル基を示し、X、Yは同一または異なり、水素もしくはハロゲンを示し、または互いに結合して芳香族環を形成しても良い)
すなわち本発明は、
(1)一般式(I)
一般式(I)
(式中、Rは炭素数4以上8以下のアルキル基を示し、X、Yは同一または異なり、水素もしくはハロゲンを示し、または互いに結合して芳香族環を形成しても良い)
で示される一種以上のイソチアゾリン化合物と、可塑剤と、パラフィン系炭化水素を含有することを特徴とするポリ塩化ビニル用抗カビ組成物に関する。また本発明は、
(2)可塑剤がフタル酸エステルであることを特徴とするポリ塩化ビニル用抗カビ組成物に関する。また本発明は、
(3)フタル酸エステルの分子量が390以上であることを特徴とするポリ塩化ビニル用抗カビ組成物に関する。また本発明は、
(4)一般式(I)で示されるイソチアゾリン化合物が、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンであることを特徴とするポリ塩化ビニル用抗カビ組成物に関する。また本発明は、
(5)20℃における組成物の粘度が30mPa・s以下であり、0℃における組成物の粘度が100mPa・s以下であることを特徴とするポリ塩化ビニル用抗カビ組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
上記組成物を用いることにより、低温時の粘度上昇が少なく、使用時の作業性に優れるポリ塩化ビニル製品への抗カビ性付与が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポリ塩化ビニル用抗カビ組成物は、一般式(I)で示される一種以上のイソチアゾリン化合物と、可塑剤と、パラフィン系炭化水素を必須成分として含有するものである。
一般式(I)
(式中、Rは炭素数4以上8以下のアルキル基を示し、X、Yは同一または異なり、水素もしくはハロゲンを示し、または互いに結合して芳香族環を形成しても良い)
【0010】
本発明で使用する一般式(I)
一般式(I)
(式中、Rは炭素数4以上8以下のアルキル基を示し、X、Yは同一または異なり、水素もしくはハロゲンを示し、または互いに結合して芳香族環を形成しても良い)
で示されるイソチアゾリン化合物は、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチルヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−ヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−ブチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−ブチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。これらは公知の技術によって製造することができるが、例えば4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下DCOITと省略する)であれば、「KATHON(登録商標) 287T」としてROHM AND HAAS社から市販されているものが利用可能であり、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下OITと省略する)であれば、「ZONEN(登録商標) O/100」としてケミクレア社から市販されているものが利用可能であり、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(以下BBITと省略する)であれば、「DENSIL(登録商標) DN」としてARCH CHEMICALS社から市販されているものが利用可能であり、好ましくはDCOIT、OIT、BBITから選ばれる一種以上であり、より好ましくはOITである。
【0011】
本発明で使用する可塑剤は、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等のアジピン酸エステル類、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジイソノニル、セバシン酸ジイソデシル等のセバシン酸エステル類、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジイソデシル等のアゼライン酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリイソノニル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリプロピル、アセチルクエン酸トリブチル等のアセチルクエン酸エステル類、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、フェノールアルキルスルホン酸エステル等が挙げられる。これらのうち好ましくはフタル酸エステルであり、より好ましくは分子量390以上のフタル酸エステルである。このようなフタル酸エステルとしては、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル等が好ましい可塑剤として挙げられる。
【0012】
本発明で使用するパラフィン系炭化水素は、ノルマルデカン、ノルマルウンデカン、ノルマルドデカン、ノルマルトリデカン、ノルマルペンタデカン、ノルマルヘキサデカン等のノルマルパラフィン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン等のイソパラフィン等が挙げられる。これらパラフィン系炭化水素は石油から分留される製造法が一般的であることから単一組成のものを入手するのは経済的ではない場合もあるため、混合物を使用することもできる。具体的にはノルマルパラフィンとしては、カクタス(登録商標)ノルマルパラフィン(JX日鉱日石エネルギー社)等が、イソパラフィンとしては、IPソルベント(出光興産社)、アイソパー(登録商標、エクソンモービル社)等が使用できる。
【0013】
本発明のポリ塩化ビニル用抗カビ組成物は、一般式(I)
一般式(I)
(式中、Rは炭素数4以上8以下のアルキル基を示し、X、Yは同一または異なり、水素もしくはハロゲンを示し、または互いに結合して芳香族環を形成しても良い)
で示される一種以上のイソチアゾリン化合物と、可塑剤と、パラフィン系炭化水素を含有する組成物であるが、これら以外の添加剤を低温時の粘度上昇を妨げない範囲で配合することが可能であり、このような添加剤として具体的には可塑剤やパラフィン系炭化水素以外の溶剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、防錆剤、イソチアゾリン系以外の抗菌抗カビ成分、防虫成分が挙げられる。例えば、溶剤としてはジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル類、N−メチルピロリドンやγ−ブチロラクトン等の環状有機溶剤、メチルナフタレンやフェニルキシリルエタンやアルキルベンゼン等の芳香族系溶剤等が挙げられる。紫外線吸収剤としてはフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線安定剤としてはヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0014】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお特に断りがない限り、「%」は「質量%」を表す。
(ポリ塩化ビニル用抗カビ組成物実施例)
【0015】
〔実施例1〕
ZONEN O/100(ケミクレア社製OIT) 20部、フタル酸ジイソノニル(分子量418.6) 25部、IPソルベント2028(出光興産社製イソパラフィン) 55部を混合溶解して実施例1とした。
【0016】
〔実施例2〕
ZONEN O/100 20部、フタル酸ジイソノニル 40部、IPソルベント2028 40部を混合溶解して実施例2とした。
【0017】
〔実施例3〕
ZONEN O/100 20部、フタル酸ジイソノニル 25部、カクタスノルマルパラフィンN−10(JX日鉱日石エネルギー社製ノルマルパラフィン) 55部を混合溶解して実施例3とした。
【0018】
〔実施例4〕
ZONEN O/100 20部、アジピン酸ジイソデシル(分子量398.2) 25部、IPソルベント2028 55部を混合溶解して実施例4とした。
【0019】
〔実施例5〕
ZONEN O/100 20部、アセチルクエン酸トリブチル(分子量402.5) 25部、IPソルベント2028 55部を混合溶解して実施例5とした。
【0020】
〔実施例6〕
DENSIL DN(ARCH CHEMICALS社製BBIT) 20部、フタル酸ジイソノニル 25部、IPソルベント2028 55部を混合溶解して実施例6とした。
【0021】
〔実施例7〕
KATHON 287T(ROHM AND HAAS社製DCOIT) 4部、ZONEN O/100 16部、フタル酸ジイソノニル 25部、IPソルベント2028 55部を混合溶解して実施例7とした。
【0022】
〔実施例8〕
ZONEN O/100 20部、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(分子量390.6) 25部、IPソルベント2028 55部を混合溶解して実施例8した。
【0023】
〔実施例9〕
ZONEN O/100 10部、フタル酸ジイソノニル 25部、IPソルベント2028 65部を混合溶解して実施例9とした。
【0024】
〔実施例10〕
ZONEN O/100 20部、フタル酸ジイソノニル 60部、IPソルベント2028 20部を混合溶解して実施例10とした。
【0025】
〔比較例1〕
ZONEN O/100 20部、フタル酸ジイソノニル 80部を混合溶解して比較例1とした。
【0026】
〔比較例2〕
ZONEN O/100 20部、IPソルベント2028 80部を混合したが均一な組成物は得られなかった。
【0027】
(粘度測定)
実施例および比較例のポリ塩化ビニル用抗カビ組成物の粘度を、B型粘度計にて測定した。さらに0℃に調節した各抗カビ組成物100gを別容器に量り取る作業を行い、その作業性について評価した。1分以内に99g以上移すことができたものを○、できなかったものを×で評価した。
【0028】
(ポリ塩化ビニル製品に対する抗カビ試験)
PQB83(ポリ塩化ビニル、新第一塩ビ社) 100部、フタル酸ジイソノニル 50部、ホワイトン(登録商標)H(炭酸カルシウム、白石工業社) 100部、NVS−9044−W(二酸化チタンスラリー、日本ピグメント社) 19部、アデカスタブ(登録商標)FL100(安定剤、ADEKA社) 3部、AZH−25(発泡剤、大塚化学社) 4.5部を充分混合して調製した塩ビゾル 100部に対して実施例ないし比較例の製剤を0.3部混合し、これをPPC用紙に150μmの厚みで塗布した後、150℃で25秒間加熱し、その後220℃で50秒加熱することによりポリ塩化ビニル製壁紙を得た。これらポリ塩化ビニル製壁紙のカビ抵抗性試験を、JIS Z2911(2010)附属書A(規定)プラスチック製品の試験により評価した。
【0029】
これらの結果を表1に示した。本発明のポリ塩化ビニル用抗カビ組成物は、低温においても粘度上昇が穏やかであり、抗カビ性能も遜色ないことがわかる。
【0030】
【表1】
0:肉眼及び顕微鏡下でカビの発育は認められない。
1:肉眼ではカビの発育が認められないが、顕微鏡下では明らかに確認できる。
2:肉眼でカビの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%未満。
3:肉眼でカビの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%以上〜50%未満。
4:菌糸はよく発育し、発育部分の面積は試料の全面積の50%以上。
5:菌糸の発育は激しく、試料全面を覆っている。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のポリ塩化ビニル用抗カビ組成物は、特定のイソチアゾリン化合物と、可塑剤と、パラフィン系炭化水素を含有することを特徴とするものであり、低温時を含めて低粘度を維持するため作業性に優れ、壁紙や断熱材、防音材等の建築材料や、電線被覆、農業用資材等に幅広く使用されるポリ塩化ビニル製品に対して微生物劣化を防止することが可能であるため産業の発展に寄与するものである。