特許第6189164号(P6189164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189164
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20170821BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20170821BHJP
   C23C 16/46 20060101ALI20170821BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/458
   C23C16/46
   H01L21/68 N
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-205081(P2013-205081)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-70198(P2015-70198A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】内田 徹
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−010894(JP,A)
【文献】 特開2008−308746(JP,A)
【文献】 国際公開第03/069029(WO,A1)
【文献】 特開2013−138164(JP,A)
【文献】 特開2001−126995(JP,A)
【文献】 特開2012−222284(JP,A)
【文献】 特開2009−275254(JP,A)
【文献】 特開2009−275255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205、21/31、21/365、21/469、
21/67−21/683、21/86、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハポケットを有し、熱伝導性を有するサセプタと、
前記サセプタの前記ウェハポケットとは反対側のみに配置された、熱源となるヒータと、
前記サセプタの前記ウェハポケット側に配置され、原料ガスを導入するガス導入口と、
を具備し、
前記ヒータは前記サセプタに対応した同心円状に複数配置されたランプヒータであり、
前記サセプタの厚さは、前記ウェハポケットの中心部よりも前記ウェハポケットの周縁部において小さく、前記ウェハポケットの下における前記サセプタの下面は、傾斜部を有する凸部形状であることを特徴とする成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成長装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の成長に用いられる半導体成長装置は、ウエハを加熱するためのヒータが設けられている。ヒータから発せられる熱により、ウエハを保持するサセプタの温度が上昇し、これにより、ウエハが加熱される。例えば半導体の成長には有機金属気相成長法(Metal
Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法が用いられる(特許文献1)。MOCVD法では、成長装置のチェンバーに原料ガスを流入し、かつ加熱することにより半導体を成長させる。半導体にはp型またはn型のドーパントをドープすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−252217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体のドーパント濃度にムラが生じることがある。本発明は、半導体のドーパント濃度の均一性を高めることができる成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る成長装置は、ウェハポケットを有するサセプタと、前記サセプタの前記ウェハポケットとは反対側に配置された、熱源となるヒータと、を具備し、前記サセプタの厚さは、前記ウェハポケットの中心部よりも前記ウェハポケットの周縁部において小さいことを特徴とするものである。
【0006】
前記ヒータは、前記サセプタに対応した領域において複数配置されたランプヒータとすることができる。
【0007】
前記ウェハポケットの下における前記サセプタの下面は、傾斜部を有する凸部形状とすることができる。
【0008】
前記凸部形状の底面に対する前記傾斜部の角度は20°以上30°以下とすることができる。
【0009】
前記サセプタは複数の前記ウェハポケットを有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体のドーパント濃度の均一性を高めることができる成長装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)は実施例1に係る成長装置を例示する断面図である。図1(b)はサセプタおよびランプヒータを例示する平面図である。図1(c)はサセプタの拡大図である。
図2図2(a)はウェハポケットにおける加熱および放熱を例示する模式図である。図2(b)は中心部における温度を例示する模式図である。図2(c)は周縁部における温度を例示する模式図である。図2(d)は温度と熱量との関係を示す模式図である。
図3図3は比較例に係る成長装置のサセプタを例示する拡大図である。
図4図4(a)は実施例2に係る成長装置を例示する断面図である。図4(b)はサセプタの拡大図である。
図5図5(a)は温度と熱量との関係を例示する模式図である。図5(b)は実施例2における温度と熱量との関係を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1(a)は実施例1に係る成長装置100を例示する断面図である。図1(b)はサセプタ10およびランプヒータ12を例示する平面図である。図1(c)はサセプタ10の拡大図である。図1(a)においてハッチングは省略している。図1(b)においてランプヒータに格子斜線を記載した。
【0014】
図1(a)に示すように、成長装置100は、サセプタ10、歯車11、ランプヒータ12、回転軸13、ベアリング14、歯車15、インジェクタ16、およびモータ17を備える。図1(b)に示すように、サセプタ10の上面には3つのウェハポケット20が設けられている。ランプヒータ12はサセプタ10の下に、同心円状に配置されている。図1(a)に示したモータ17は回転軸13を回転させ、回線軸13と接続している歯車11を回転させる。歯車15は、中央部が刳り貫かれたドーナツ形状をしており、該中央部にサセプタ10が接触している。歯車11の歯と歯車15の歯が噛み合わさって動力が伝達する。これにより、モータ17はサセプタ10を回転させる。インジェクタ16から半導体の原料ガスが成長装置100内に投入される。サセプタ10は例えば炭素により形成されている。ランプヒータ12は例えばハロゲンランプを用いたヒータである。複数のインジェクタ16はハニカム状に配置されている。
【0015】
MOCVD法により半導体層26を成長させる。具体的には、図1(c)に示すように、ウェハポケット20に半導体基板24を配置する。ランプヒータ12が発生する輻射熱によりサセプタ10を介して半導体基板24を加熱させながら、原料ガスを流入させることにより半導体基板24上に半導体層26をエピタキシャル成長させる。半導体基板24は例えばインジウムリン(InP)により形成されている。半導体層26は例えばシリコン(Si)をドーパントとするInPとして成長する。原料ガスは例えばトリメチルインジウム(TMI)、フォスフィン(PH)およびジシラン(Si)などを含む。半導体基板24の温度が高くなると半導体層26のSiの取り込み効率は高くなる。
【0016】
図1(c)に示すように、サセプタ10の下面のうち、ウェハポケット20の中心部下には凸部22が設けられている。ウェハポケット20の中心部におけるサセプタ10の厚さH1は例えば13mmである。ウェハポケット20の周縁部におけるサセプタ10の厚さH2は例えば2mmであり、厚さH1より小さい。ウェハポケット20の周縁部とは、凸部22より外側の部分である。破線の円で示す領域23は実施例2で後述する。
【0017】
実施例1によれば、ウェハポケット20の周縁部におけるサセプタ10の厚さH2が小さいため、周縁部においてサセプタ10を伝導する熱量は多くなる。それにより、半導体基板24において周縁部の温度は中心部の温度に比較して高くなる。その結果、半導体層26のSiの取り込み効率が均一に近付く。この結果、半導体層26のドーパント濃度は均一に近付く。
【0018】
図2(a)はウェハポケット20における加熱および放熱を例示する模式図である。図2(a)に示すように、ウェハポケット20の中心部の上面を20a1、周縁部の上面を20a2とする。ランプヒータ12の輻射により、凸部22の下面20b1に熱量Q1aが加わり、ウェハポケット20の周縁部における下面20b2に熱量Q1bが加わる。加わった熱量はサセプタ10から放出される。下面20b1および20b2からは熱量Q2が放出される。ウェハポケット20の上面20a1および20a2からは熱量Q3が放出される。
【0019】
図2(b)は中心部における温度を例示する模式図である。横軸はサセプタ10の厚さ方向における位置、縦軸は温度を表す。図2(b)に示すように、上面20a1における温度はTa1、下面20b1における温度はTb1である。図2(c)は周縁部における温度を例示する模式図である。図2(c)に示すように、上面20a2における温度はTa2、下面20b2における温度はTb2である。先述のようにウェハポケット20の周縁部におけるサセプタ10の厚さH2が小さいため、周縁部の上面20a2における温度Ta2は、中心部の上面20a1における温度Ta1より高くなる。
【0020】
サセプタ10における熱は次の式で表される。κはサセプタ10の熱伝導率である。
【数1】
温度Ta0は温度Ta1またはTa2である。温度Tb0は温度Tb1またはTb2である。数1中の厚さHはH1またはH2である。数1を変形すると、Tb0は次の式により表される。
【数2】
数1および数2に基づき、Q2は次の式により表される。
【数3】
数3に示すようにQ2は温度Ta0=Q3×H/κ+Ta0の関数である。
【0021】
図2(d)は温度と熱量との関係を示す模式図である。横軸は上面の温度Ta0、縦軸は熱量を表す。実線はQ1−Q3を表す。破線は下面20b1における熱量Q2を表す。点線は下面20b2における熱量Q2を表す。図2(d)に示すように、数3のQ1−Q3、およびQ2のグラフの交点が上面の温度になる。下面20b1および20b2において熱量Q1が一定(Q1a=Q1b)ならば、Ta1<Ta2となる。つまりウェハポケット20の周縁部の上面20a2の温度Ta2を高めることができる。
【0022】
図2(d)に示すように、熱量Q1が増加すると温度Ta1およびTa2は上昇し、Q1が減少すると温度Ta1およびTa2は低下する。厚さH1およびH2が小さくなると温度Ta1およびTa2は上昇し、厚さH1およびH2が大きくなると温度Ta1およびTa2は低下する。温度Ta1に比べ温度Ta2を高くするため、厚さH1を大きくし、厚さH2を小さくすればよい。厚さH1は厚さH2の3倍以上であることが好ましく、より好ましくは6倍以上とする。ウェハポケット20から2.5mm以上外側の位置におけるサセプタ10の厚さH3(図1(c))は例えば5.5mmとする。サセプタ10の強度を高めることができる。
【0023】
サセプタ10を加熱する熱源として、ランプヒータ以外のヒータを用いてもよい。輻射以外に、ヒータからの熱伝導によりサセプタ10を加熱してもよい。サセプタ10を効率よく加熱するために、複数のランプヒータ12を同心円状に配置することが好ましい。
【0024】
図3は比較例に係る成長装置のサセプタ10を例示する拡大図である。図3に示すように、凸部が設けられていない。ウェハポケット20におけるサセプタ10の厚さはH2である。ランプヒータ12によりウェハポケット20を均一に加熱する場合、周縁部におけるSiの取り込み効率は、中心部における取り込み効率より低くなる。従って、半導体層26の周縁部におけるドーパント濃度は、中心部におけるドーパント濃度より2〜3%程度低くなる。例えば光半導体などにおいてはドーパント濃度のわずかな違いにより、特性が劣化する。実施例1によれば、ドーパント濃度が均一に近付くため、光半導体などにおける特性の劣化が抑制される。
【実施例2】
【0025】
実施例2はサセプタ10の下面を円錐形にした例である。図4(a)は実施例2に係る成長装置200を例示する断面図である。図4(b)はサセプタ10の拡大図である。図4(a)および図4(b)に示すように、サセプタ10の下面には円錐形の凸部28が形成されている。凸部28の頂点はウェハポケット20の中心の下に位置する。下面20b2は凸部28の底面を形成する。下面20bから凸部28の頂点までの厚さはH1である。下面20b2から頂点までの角度θは例えば25°である。実施例2によれば、ウェハポケット20の周縁部におけるサセプタ10の厚さH2が小さいため、周縁部においてサセプタ10を伝導する熱量は多くなる。半導体基板24において周縁部の温度は中心部の温度に比較して高くなる。その結果、半導体層26のドーパント濃度が均一に近付く。以下、詳しく説明する。
【0026】
図1(c)に破線の円で示す領域23が凸部22の影になる。このため領域23の輻射の立体角が中心部に比べ小さくなり、領域23の加熱が十分に行われないことがある。図5(a)は領域23における温度と熱量との関係を例示する模式図である。実線はウェハポケット20の中心部における熱量Q1a−Q3を表す。一点鎖線は周縁部における熱量Q1b−Q3を表す。上述のように領域23における加熱が不十分であるため熱量Q1bが小さくなる。この結果、図5(a)に示すように温度Ta2が温度Ta1より低くなる。温度Ta2が低下することにより、半導体層26の周縁部におけるドーパント濃度が中心部におけるドーパント濃度より低くなる。
【0027】
図5(b)は実施例2における温度と熱量との関係を例示する模式図である。図5(b)に示すように、温度Ta2が温度Ta1より高くなる。サセプタ10に円錐形の凸部28を設けることで、輻射熱がサセプタ10の下面の全体に十分に伝わる。このため熱量Q1bが大きくなり、図5(b)の一点鎖線のグラフが図5(a)の例より上側にシフトする。これによりTa2が高くなる。サセプタ10を均一に加熱するためには、ランプヒータ12を用いることが好ましい。特に複数のランプヒータ12を同心円状に配置することが好ましい。
【0028】
角度θが小さいとウェハポケット20の中心部におけるサセプタ10の厚さH1が小さくなり、中心部の温度Ta1が高くなってしまう。角度θが大きいとサセプタ10の下面に凸部28の影になり輻射熱により加熱されにくい領域が生じてしまう。角度θは20°以上30°以下が好ましく、例えば18°以上、22°以上、28°以下、または32°以下などでもよい。
【0029】
サセプタ10は4つ以上のウェハポケット20を有してもよいし、1つまたは2つのウェハポケット20を有してもよい。半導体基板24および半導体層26はインジウムガリウム砒素リン(InGaAsP)またはインジウムアルミニウム砒素(InAlAs)などでもよい。
【0030】
なお、本発明は係る特定の実施形態および実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 サセプタ
12 ランプヒータ
20 ウェハポケット
20a1、20a2 上面
20b1、20b2 下面
22、28 凸部
24 半導体基板
26 半導体層
100、200 成長装置
図1
図2
図3
図4
図5