特許第6189175号(P6189175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189175
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ハンドカート
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/02 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   B62B3/02 E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-220690(P2013-220690)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-240264(P2014-240264A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-105634(P2013-105634)
(32)【優先日】2013年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107066
【氏名又は名称】株式会社リッチェル
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】沢田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】浅見 智史
(72)【発明者】
【氏名】秋元 重文
(72)【発明者】
【氏名】森井 平
(72)【発明者】
【氏名】栃原 央
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3037640(JP,U)
【文献】 特開平11−104195(JP,A)
【文献】 実開平03−081103(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00 − 5/08
B62D 7/00 − 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートの本体部と、当該本体部から支柱を立設し、当該支柱の上部にグリップ部を備えたハンドカートにおいて、
本体部の裏面側であって、前部に左右一対の前輪機構と後部に左右一対の後輪機構を有し、
前輪機構は左右の前輪がそれぞれ当該前輪の支持部材に設けた旋回軸にて旋回自在になっており、左右の支持部材同士は旋回方向内輪の切れ角が外輪の切れ角よりも大きくなるように連結され、
前記左右の支持部材はそれぞれ前輪の上部から前記旋回軸より後方に延出した延出部を有し、当該左右の延出部であって前記旋回軸より内側を1つのリンク部材でリンク連結してあり、前記延出部は前記前輪の上部をカバーするカバー部を兼ねていることを特徴とするハンドカート。
【請求項2】
前記カバー部は左右対称の節孔を有し、前記節孔を用いてリンク部材でリンク連結するものであり、左右の支持部材が共通化されていることを特徴とする請求項記載のハンドカート。
【請求項3】
カートの本体部と、当該本体部から支柱を立設し、当該支柱の上部にグリップ部を備えたハンドカートにおいて、
本体部の裏面側であって、前部に左右一対の前輪機構と後部に左右一対の後輪機構を有し、
前輪機構は左右の前輪がそれぞれ当該前輪の支持部材に設けた旋回軸にて旋回自在になっており、左右の支持部材同士は旋回方向内輪の切れ角が外輪の切れ角よりも大きくなるように連結され、
前記本体部に旋回ロック部材を有し、旋回ロック部材により前輪の旋回を規制及び解除可能にし、
前記前輪の旋回軸は前記本体部の裏面側に挿入したものであり、
旋回軸に設けた被規制部が前記旋回ロック部材に設けた規制部に干渉して前輪の抜けを防止したことを特徴とするンドカート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウォーキングキャリーとも称される、使用者が歩行する際に体の横に位置させ片手で押しながらバッグやトランクケース等の荷物を運ぶのに用いるハンドカートに関し、特にその前輪機構の構造に係る。
【背景技術】
【0002】
ハンドカートの中でも歩行時に体の横に位置させ歩行しながら片手で手押しするウォーキングキャリータイプの片手手押しハンドカートの場合に、左右に曲がりながら歩行する進行方向に合せてハンドカートが簡単に旋回できて且つ、走行安定性を確保する必要がある。
例えば特許文献1,2には筒部から左右後方に車輪支持部を突出させた即ち、平面視で略三角形状に左右後方に車輪支持部を突出させた前輪機構を開示するが、1つの旋回軸(筒部)に対して三角形状に左右の前輪を配置したものであるために左右の旋回時の走行安定性に劣るものである。
また、4輪のうち左右の前輪がそれぞれ単独旋回するものもあるが、路面の凹凸によって左右の前輪がバラバラに動き、旋回時のみならず直進走行においても不安定であった。
なお、左右の前輪が直進方向に向くようにそれぞれの前輪をスプリングで直進方向に引っ張るものもあるが、左右の前輪がバラバラに動く点では同様の問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4940192号公報
【特許文献2】特許第5150752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、四輪カートにおいて旋回走行性に優れ、構造が簡単な前輪機構からなる片手手押しタイプのハンドカートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るハンドカートは、カートの本体部と、当該本体部から支柱を立設し、当該支柱の上部にグリップ部を備えたハンドカートにおいて、本体部の裏面側であって、前部に左右一対の前輪機構と後部に左右一対の後輪機構を有し、前輪機構は左右の前輪がそれぞれ当該前輪の支持部材に設けた旋回軸にて旋回自在になっており、左右の支持部材同士は旋回方向内輪の切れ角が外輪の切れ角よりも大きくなるように連結されていることを特徴とする。
ここで、例えば左右の支持部材は旋回軸よりも後方側であって、且つ、内側にてリンク連結してある構造が例として挙げられ、その場合にリンク連結は左右の支持部材同士を1つのリンク部材でリンク連結してもよい。
また、左右の支持部材はそれぞれ前輪の上部から後方に延出した延出部を有し、当該左右の延出部を1つのリンク部材でリンク連結してあってもよく、さらに延出部は前輪の上部をカバーするカバー部を兼ねており、当該カバー部に左右対称の節孔を設けることで左右の支持部材を共通化することも可能である。
【0006】
本発明でカートの本体部から支柱を立設し当該支柱の上部にグリップ部を備えたとは、荷台となるカートの本体部を片手手押しできるように、この本体部から支柱を立設して片手で握るためのグリップを設けた趣旨である。
従って、グリップを設けるための支柱は一本でも複数でもよい。
例えば、カートの本体部にバッグ等を介して、あるいは直接荷物を載せ、手片で操作しやすい構造例としては本体部の前部より前支柱を立設し、この本体部の後部より後支柱を立設し、前支柱の上部と後支柱の上部とを枠状に連結し、グリップ部を形成する例が挙げられる。
【0007】
本発明にあっては、前記左右の前輪の車軸の位置が前記旋回軸の位置よりも後方に位置しているのが好ましい。
このように、いわゆるプラスキャスター構造にすると、前進走行安定性に優れる。
また、本発明にあっては、前記本体部に旋回ロック部材を有し、旋回ロック部材により前輪の旋回を規制及び解除可能にしてもよい。
さらには、前記前輪の旋回軸は前記本体部の裏面側に挿入したものであり、旋回軸に設けた被規制部が前記旋回ロック部材に設けた規制部に干渉して前輪の抜けを防止してもよい。
このようにすると、前輪の本体部への取付構造が簡単であり、ロック操作性に優れる。
【0008】
本発明にあっては、前記支持部材又はリンク部材は、前輪が直進方向に向くように付勢されていてもよい。
前輪の支持部材同士をリンク部材でリンク連結してある場合に、支持部材又はリンク部材を弾性材等で後方に付勢すればハンドカートの旋回後に左右の前輪が一体的に直進方向に復帰する。
また、後進の際の直進性が安定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るハンドカートは左右一対の前輪をそれぞれ単独で支持部材を介して本体部に旋回支持させるとともに旋回時の内輪の切れ角が外輪の切れ角よりも大きくなるように左右の支持部材同士を連結したので、旋回走行性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るハンドカートの車輪構造を示し、(a)はカートの本体部の裏面から見た斜視図を示し、(b)は前輪機構を示す。
図2】(a)はハンドカートの側面図、(b)は底面図を示す。
図3】(a)はハンドカートの平面図、(b)は正面図を示す。
図4】前輪の旋回のロック構造を示す。
図5】前輪の動きを示し、(a)は直進状態、(b)は右側旋回状態、(c)は左側旋回状態を示す。
図6】(a)は旋回ロック部の側面図、(b)は底面図を示す。
図7】リンク部材をスプリングで後方に付勢した例を(a)〜(c)に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るハンドカートの構造例を以下、図面に基づいて説明するが本発明は本実施例に限定されない。
【0012】
本実施例に係るハンドカート1は、図1〜3に示すように、荷台となるカートの本体部2の上面側の前部からパイプ状の前支柱4を立設し、後部からパイプ状の後支柱5を立設してある。
本明細書では、ハンドカートの進行方向前側を前部と表現する。
内部構造を省略したが、前後の支柱4,5は外装のパイプの内側に内装のパイプを挿入し、図1(a)に示すように縦方向の複数のロック孔(4a)5aにより高さ調整が可能になっている。
なお、図1には前支柱4のロック孔4aの図示を省略したが、後支柱5のロック孔5aに対応して設けてある。
前後の支柱4,5の上部はコ字形状に連結され、グリップ部3を形成している。
高さ調整のロック解除ボタン3aをグリップ部3に設けてある。
本実施例では、図3(b)に示すようにカートの本体部2にバッグ等の荷物を載せやすくし、且つ、荷物の固定が容易なように支柱から側方に向けて略U字形状に突出させるとともに図2(a)に示すように中央部が段差状に凹形状が形成されたサイドバー部材6を有する。
サイドバー部材6はバッグ等のベルトを用いて、あるいは荷物をベルトやひもを用いて引っ掛け固定できるようにフック部6aを有する。
また、サイドバー部材6は支柱への取り付け部6bが取り外し可能になっていて、進行方向に対して左側に突出させる状態と、右側に突出させる状態の切り換えが可能になっている。
【0013】
本体部2の裏面側には図1に示すように、左右一対の前輪からなる前輪機構10と左右一対の後輪からなる後輪機構20を有する。
前輪機構10は、旋回自在の支持部材12に前輪11を回転支持してある。
支持部材12は、断面略逆U字形状となるようにベース部12eの両側に垂下させた左右の軸受部12aを有する。
支持部材12の上部から旋回軸14を突設し、この旋回軸14を図2(a)に点線で示すように本体部2に設けた挿入孔2aに挿入してある。
支持部材12の両側に逆U字形状に垂下させた軸受け部12aの間に前輪11の車軸11aを軸支してある。
左右の支持部材12はそれぞれ前輪11の上部から後方に延出した延出部を有し、当該左右の延出部を1つのリンク部材でリンク連結してある。
本実施例は支持部材12の延出部を前輪11の上部を円弧状にカバーする機能を兼ね備えたカバー部12bとなっており、この左右のそれぞれのカバー部12bの後方であって、内側の節部12c間をコ字形状に折り曲げた棒状の1つのリンク部材13にてリンク連結してある。
これらの位置関係を図5(a)にて説明する。
本体部2の裏面側に挿入装着した旋回軸14よりも後方に前輪11の車軸11aが位置し、さらに、この車軸11aよりも後方に節部12cを有する左右の節部12c間を1つのリンク部材13にてリンク連結した構造になっている。
リンク部材13のリンク長さLは旋回軸14間の間隔Lよりも短く設定してある。
車軸11aが旋回軸14より後方に位置するように支持部材12を形成したので、プラスキャスター機構となり前進直進性に優れる。
次に、直進及び旋回におけるリンク機構の動きを説明する。
図5(a)に示す直進状態ではリンク部材13のリンク長さLは旋回軸14間の間隔Lよりも短く設定してあるので左右の旋回軸を結んだ線とリンク部材13が平行になった台形を形成する。
これに対して例えば、ハンドカート10が図5(b)に示すように右側に旋回(図5は裏面から見ている)する際にはリンク部材13にて、左右の前輪11が連動して旋回することになるが、リンク部材13が斜めになるのでリンク部材の長さLが同じでも水平方向の間隔Lが短くなり台形に歪みが生じる。
したがって、内輪側の旋回軸中心Oと節部12cの中心を結んだ元の台形の側辺は台形の内側に倒れるように回転し、逆に外輪側は元の台形の側辺が、台形の外側に起きるように回転することになる。
その結果として内輪の切れ角θの方が外輪の切れ角θより大きくなることで、内外輪の旋回中心が近くなるようになり旋回走行性に優れる。
図5(c)に示すように、カートが左に旋回するときは内外輪が上記とは逆になり図5(c)では右側内輪の切れ角θの方が左側外輪の切れ角θより大きくなる。
本実施例では、支持部材12を断面略逆U字形状となるように左右の軸受部12aを形成するとともにカバー部12bも左右対称にしてあり、カバー部12bの後部に左右対称に節孔12fを形成し、左右の支持部材12のカバー部の内側に位置する節孔にリンク棒の先を差し込み節部12cとしたので、左右の支持部材の共通化が図られている。
【0014】
次にロック機構について説明する。
図1(b)、図4に示すように、左右の支持部材12の前端間にまたがるように旋回ロック部材15を本体部2に軸着部15bにて軸着してある。
左右の支持部材12と旋回ロック部材15との間のうち、一方に凸部を設け、他方に凹部を設けることで前輪11の旋回を規制したり解除したりすることができる。
本実施例では、旋回ロック部材15側にロック爪15aを設け、支持部材12側にロック凹部12dを設けた例になっている。
また、旋回軸14の根元側につば形状からなる被規制部14aを設け、旋回ロック部材15に、この被規制部14aの下側に突出したプレートつば形状の規制部15cを設けてある。
これにより図6に示すように旋回ロック部材15の先端側を下に向けて回動すると、ロック爪15aがロック凹部12dに係合し、前輪11の旋回が規制され、前輪11を直進方向にロックする。
逆に旋回ロック部材15の先端が水平方向になるように上に向けて回動すると、前輪11がロックから開放され左右に旋回可能になる。
また、旋回軸14の根元に設けた被規制部14aが旋回ロック部材15の規制部15cにあたり抜けが規制されている。
【0015】
後輪機構20は、図1(a)に示すように本体部2の裏面後部から後輪支持部材22を突設し、シャフト21bの両端の車軸部21aを介して左右の後輪21が軸支されている。
後輪21は図2(a)に示すように、ブレーキハンドル7と図示を省略した後支柱5の内部に配設したワイヤーに連結されたブレーキシュー23によりブレーキ操作されている。
なお、停車時の安全性を確保すべくブレーキロック8が設けられている。
【0016】
図7にリンク部材13をスプリング17にて後方に付勢した例を示す。
図7(a)に示すように左右の前輪11を支持する支持部材12同士をリンク連結したリンク部材13の中央部と、本実施例では本体部2の裏面に設けたフレーム16の左右中央部とをスプリング17の両端部17a、17bにて連結した例になっている。
なお、一方又は両方の支持部材12の後部を直接、後方に付勢してもよい。
また、付勢部材もスプリングに限定されない。
このようにすると、図7(b),(c)に示すように前輪は旋回後に直進方向に戻るように作用し、前進の場合には直進復帰が容易になり、後進の場合には直進走行安定性に優れる。
【符号の説明】
【0017】
1 ハンドカート
2 本体部
3 グリップ部
4 前支柱
5 後支柱
7 ブレーキハンドル
8 ブレーキロック
10 前輪機構
11 前輪
11a 車軸
12 支持部材
12a 軸受け部
12b カバー部
12c 節部
12d ロック凹部
13 リンク部材
14 旋回軸
14a 被規制部
15 旋回ロック
15a ロック爪
15c 規制部
20 後輪機構
21 後輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7