(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バイザー側係合要素は、前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記幌布上の異なる位置において前記幌布側係合要素と係合する係合具を含む、請求項4または5に記載の手押し車用の幌。
前記手押し車用の幌が前記乳母車本体に取付けられた状態において、前記第1の状態における前記バイザー部材と前記通気部との間に形成される前記隙間は、前方に開放している、請求項8に記載の乳母車。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
幌布を広げると乳幼児の頭上の広範囲を幌布で覆うことになるため、乳幼児への通気が阻害され得る。この点、乳幼児への通気を確保するために、例えば特許文献1には、編み目状の通気部を幌布に形成することが記載されている。通気部は、幌布から延び出す蓋材に選択的に覆われるようになっている。蓋材が通気部を覆わないときには、通気部を介して通気を行うことができる。ただしこの場合、通気部に向かう日差しを遮ることができない。一方、蓋材が通気部を覆うときには、通気部に向かう日差しを遮ることができる。ただしこの場合、通気部を介して通気を行うことはできない。
【0005】
日差しが強い場合には、日差しによって体感温度も高くなることから、乗車した乳幼児を日差しから保護すると共に、乳幼児への通気を確保することが望まれる。しかしながら、上記の通り、従来の手押し車用の幌では、通気部に向かう日差しを遮るのと同時に、通気部を介して通気を行うことはできない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、通気部に向かう日差しを遮ると共に通気部を介して通気を行うことが可能な手押し車用の幌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による手押し車用の幌は、
採光及び通気の両方が可能な通気部を含む幌布と、
前記幌布に接続された基端縁及び当該基端縁に対向する先端縁を含むバイザー部材と、
前記幌布に対して第1の状態及び第2の状態に前記バイザー部材を選択的に保持可能な状態保持手段と、
を備え、
前記第1の状態において、前記バイザー部材の前記先端縁が前記幌布から離間し、且つ、前記バイザー部材が前記通気部の上方に位置して、前記バイザー部材と前記通気部との間に隙間が形成され、
前記第2の状態において、前記バイザー部材が、前記第1の状態よりも前記幌布に接近して前記通気部を覆う。
【0008】
本発明による手押し車用の幌において、前記バイザー部材は、前記基端縁と前記先端縁との間をそれぞれ延びる一対の側縁をさらに含み、前記バイザー部材の前記先端縁の長さは、前記基端縁の長さよりも長くてもよい。
【0009】
本発明による手押し車用の幌において、前記バイザー部材は、前記先端縁に沿って延びる補強要素を有していてもよい。
【0010】
本発明による手押し車用の幌において、前記状態保持手段は、前記バイザー部材に保持されたバイザー側係合要素と、前記幌布に保持され前記バイザー側係合要素に係合可能な幌布側係合要素と、を含み、
前記バイザー側係合要素は、前記第1の状態及び前記第2の状態のいずれの状態においても前記バイザー部材と前記幌布との間に位置するように前記バイザー部材に保持されていてもよい。
【0011】
本発明による手押し車用の幌において、前記バイザー側係合要素は、柔軟性をもつフラップ要素を介してバイザー部材に支持されていてもよい。
【0012】
本発明による手押し車用の幌において、前記バイザー側係合要素は、前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記幌布上の異なる位置において、前記幌布側係合要素と係合する係合具を含んでもよい。
【0013】
本発明による手押し車用の幌において、前記幌布を支持する複数の幌骨をさらに備え、
前記バイザー部材の前記基端縁は、前記複数の幌骨のうちの一の幌骨に沿って延び、
前記第2の状態において、前記バイザー部材の前記先端縁は、前記基端縁が沿って延びる前記一の幌骨と、当該一の幌骨と隣り合う他の幌骨と、の間となる領域に位置してもよい。
【0014】
本発明による乳母車は、乳母車本体と、
当該乳母車本体に取り付けられた前記いずれかの特徴を有する手押し車用の幌と、を備える。
【0015】
本発明による乳母車において、前記手押し車用の幌が前記乳母車本体に取付けられた状態において、前記第1の状態における前記バイザー部材と前記通気部との間に形成される前記隙間は、前方に開放していてもよい。
【0016】
本発明による手押し車用の幌において、前記フラップ要素は、前記バイザー部材の前記側縁に沿って取り付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通気部に向かう日差しを遮ると共に通気部を介して通気を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下添付図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1乃至
図6は、本発明による幌を備えた乳母車の一実施の形態を説明するための図である。このうち、
図1及び
図2には、乳母車1の全体構成が示されている。
図1および
図2に示された乳母車1は、折り畳み可能な乳母車本体2と、乳母車本体2に装着された幌3と、を備えている。図示された乳母車本体2は、フレーム部10と、フレーム部10に揺動可能に接続されたハンドル20と、を有している。このうち、乳母車本体2のフレーム部10は、それぞれ左右に配置された一対の前脚11と、それぞれ左右に配置された一対の後脚12と、それぞれ左右に配置された一対のアームレスト13と、それぞれ左右に配置された一対の第1リンク材14と、を有している。フレーム部10の各前脚11の下端には、前輪15が保持され、フレーム部10の各後脚12の下端には、後輪16が保持されている。
【0020】
図1及び
図2に示す乳母車1では、前脚11の上方端部及び後脚12の上方端部は、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト13の前方部分に回動可能に接続されている。第1リンク材14の上方部分は、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト13の後方部分に回動可能に接続されている。第1リンク材14の下方部分は、対応する側(左側または右側)に配置された第2リンク材17を介して、後脚12の中間部分に回動可能に接続されている。また、第1リンク材14の上方端部には、後述する幌3を保持するための係止孔18aが形成された筒状部18が設けられている。
【0021】
このようなフレーム部10に対し、ハンドル20が揺動可能に接続されている。
図1に示すように、ハンドル20は、全体として略U字状の形状をもつ。ハンドル20は、
図1及び
図2に実線で示す背面押し位置と、図示しない対面押し位置と、に固定され得る。ハンドル20をフレーム部10に対して揺動可能とする構成は、既知の構成、例えば、JP2008−254688Aに開示された構成を、採用することができる。したがって、本明細書においては、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0022】
また、
図1及び
図2に示す乳母車1は、広く普及しているように、折り畳み可能に構成されている。折り畳み可能な乳母車1の構成も、既知の構成、例えば、上述したJP2008−254688Aに開示された構成を、採用することができる。したがって、本明細書においては、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0023】
なお、本明細書中において、乳母車1、乳母車本体2及び幌3に対する「前」、「後」、「上」および「下」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車1に乗車する乳幼児を基準とした「前」、「後」、「上」および「下」を意味する。したがって、乳母車1、乳母車本体2および幌3に関して用いる「前後方向」とは、
図2における紙面の左と右とを結ぶ方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、乗車した乳幼児が向く側であり、
図2における紙面の左側が乳母車1、乳母車本体2および幌3の前後方向における前側となる。一方、乳母車1、乳母車本体2および幌3に関して用いる「上下方向」とは前後方向に直交するとともに乳母車1の接地面に直交する方向である。したがって、乳母車1の接地面が水平面である場合、「上下方向」とは鉛直方向をさす。また、乳母車1、乳母車本体2および幌3に関して用いる「幅方向」とは、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する横方向である。
【0024】
次に、乳母車本体2に装着された幌3について
図3乃至
図6を参照して説明する。このうち、
図3乃至
図5は、
図1に示す幌3についての各状態を示す側面図または平面図である。
図6は、幌3の回動動作を説明するための側面図である。
図3乃至
図6に示す幌3は、折り畳み可能に構成されている。
図3及び
図4に示すように、幌3は、相対移動可能な複数の幌骨30と、複数の幌骨30によって支持された幌布40と、複数の幌骨30を相対移動可能に支持する基部50と、を備えている。このうち基部50には、突起状の係止要素51が設けられている。この係止要素51は、アームレスト13の後端に連結された第1リンク材14の係止孔18aに挿入されている。幌3の係止要素51が乳母車本体2の係止孔18aに挿入されることにより、幌3は、乳母車本体2に着脱可能に装着される。
【0025】
先ず、手押し車用の幌3の幌骨30について説明する。本実施の形態では、幌骨30は、第1の幌骨31と、当該第1の幌骨31より後方側にある第2の幌骨32と、当該第2の幌骨32より後方側にある第3の幌骨33と、を含んでいる。各幌骨30は、逆U字状に曲げられ、その各基端部が直接または間接的に基部50に支持されている。
図3乃至
図6に示す例では、第1の幌骨31と第2の幌骨32と第3の幌骨33とは同軸に支持されている。さらに、第1の幌骨31と第2の幌骨32との間には、リンク機構からなる開度規制具34が枢着されている。この開度規制具34によって、第1の幌骨31の第2の幌骨32に対する開度が規制される。
【0026】
ここで、幌骨30の回動動作を
図6(a)〜(c)を参照して説明する。
図6(a)〜(c)は、
図3に示す幌3の回動動作を説明するための概略側面図であり、
図6(a)は、幌3を折り畳んだ状態を示し、
図6(b)は、幌3を半展開した状態を示し、
図6(c)は、幌3を完全に展開した状態を示す。幌3を使用しないときには、
図6(a)に示すように、第1の幌骨31と第2の幌骨32とのなす角度が小さくなるように開度規制具34を屈曲させると共に、第2の幌骨32を第3の幌骨33に沿うように回動させる。これにより、3つの幌骨31、32、33を互いに接近させて閉じた状態(折り畳んだ状態)にすることができる。次に、幌3を半展開した状態にするときには、
図6(a)に示す状態から第1の幌骨31と第2の幌骨32とのなす角度が大きくなるように第1の幌骨31を前方に回動させ、開度規制具34を直線状に延ばす。これにより、
図6(b)に示すように、第2の幌骨32及び第3の幌骨33を閉じた状態で第1の幌骨31を開いた状態にすることができる。さらに、幌3を完全に展開するときには、
図6(b)に示す状態から第2の幌骨32を第3の幌骨33に対して前方側に回動させて、各幌骨31、32、33間の角度を大きくする。これにより、
図6(c)に示すように、幌骨30を完全に広げた状態(展開した状態)にすることができる。
【0027】
次に、各幌骨31〜33に支持された幌布40について説明する。各幌骨31〜33に支持された幌布40は、幌骨30の開閉状態に応じて広げられる。幌布40は、広げられるほど乳幼児の頭上のより広い範囲を覆い、より広い範囲から降り注ぐ日差しから乗車中の乳幼児を保護することができる。
【0028】
図3及び
図4に示すように、幌布40は、第1の幌骨31と第2の幌骨32との間となる前方領域41と、第2の幌骨32と第3の幌骨33との間となる中央領域42と、第3の幌骨33よりも後方に位置する後方領域43と、を含んでいる。このうち第1の幌骨31と第2の幌骨32との間となる前方領域41には、採光及び通気の両方が可能な通気部44が設けられている。この通気部44は、幌布40のその他の部分よりも採光機能及び通気性に優れている。幌布40に設けられた通気部44によって、幌3を広げた状態でも幌3の内部と外部との間での通気性を高めることができる。
【0029】
このような幌布40の通気部44以外の部分は、例えば、従来より用いられてきた布材を用いることができる。一方、通気部44は、例えば、幌布40の通気部44以外の部分をなす布材に形成された開口を覆うように編み目状に形成された部分で構成される。一例として、通気部44は、前記布材に形成された開口を覆うメッシュ材からなる。あるいは、通気部44は、前記布材に形成された単なる開口であってもよい。
【0030】
ところで、例えば日差しが強い日には、日差しによって体感温度も高くなることから、乗車した乳幼児を日差しから保護すると共に、幌3の通気を確保することも望まれる。そこで、本実施の形態の幌3は、幌布40から延び出したバイザー部材60と、幌布40に対して第1の状態C1及び第2の状態C2にバイザー部材60を選択的に保持可能な状態保持手段70と、をさらに備えている。
図3に、バイザー部材60が第1の状態C1で示され、
図4に、バイザー部材60が第2の状態C2で示されている。また、
図5に、バイザー部材60が捲り上げられた状態で示されている。
【0031】
図3に示すように、第1の状態C1において、バイザー部材60が通気部44の上方に位置して、バイザー部材60と通気部44との間に隙間Sが形成される。この隙間Sに流入する外気が、通気部44から取り込まれる。本実施の形態では、バイザー部材60と通気部44との間に形成される隙間Sは、前方に開放している。このため、乳母車1の走行中に外気が前方から隙間Sに流入し易くなり、通気部44を介して通気を活発に行うことができる。加えて、バイザー部材60が通気部44の上方に位置することから、通気部44に向かう日差しをバイザー部材60によって遮ることができる。一方、
図4に示すように、第2の状態C2において、バイザー部材60が第1の状態C1よりも幌布40に接近して通気部44を覆う。第2の状態C2において、バイザー部材60によって通気部44に向かう日差しを遮ることにより、乳幼児を日差しから保護することができる。加えて、バイザー部材60が通気部44を覆うことから、バイザー部材60によって通気部44に向かう外気を遮ることもできる。以下、このような機能をもつバイザー部材60及び状態保持手段70について詳述していく。
【0032】
バイザー部材60は、
図3乃至
図5に示すように、柔軟性をもつシート状の本体部61を有している。バイザー部材60の本体部61は、互いに対向する基端縁62及び先端縁63と、基端縁62と先端縁63との間をそれぞれ延びる一対の側縁64と、を含んでいる。このうち、基端縁62は、幌布40に接続されている。本実施の形態では、基端縁62は、第2の幌骨32の近傍で、当該第2の幌骨32に沿って幌布40に縫い付けられている。上述のように、第2の幌骨32は逆U字状に曲げられているため、基端縁62は、湾曲した経路に沿って幌布40に縫い付けられている。一方、基端縁62に対向する先端縁63は、基端縁62とは反対側に向かって凸となるように湾曲している。言い換えると、バイザー部材60の先端縁63は、当該先端縁63の端部を結ぶ直線に対して基端縁62とは反対側となる領域内で湾曲している。この先端縁63は、幌布40に拘束されていない。このため、柔軟性をもつバイザー部材60の本体部61を、基端縁62を起点として容易に撓ませる(曲げる)ことができる。また、
図5に示すように、先端縁63の長さL1は、基端縁62の長さL2よりも長い。このため、バイザー部材60の基端縁62側よりもバイザー部材60の先端縁63側を大きく撓ませることができる。
【0033】
バイザー部材60の各側縁64は、基端縁62と先端縁63との間を直線状または曲線状に延びる。本実施の形態では、各側縁64は、基端縁62の端部と先端縁63の端部との間を直線状に延びている。上述のように、先端縁63の長さL1が基端縁62の長さL2よりも長いため、一対の側縁64の間隔は、基端縁62側から先端縁63側に向かって大きくなっていく。すなわち、一対の側縁64の間隔は、基端縁62側よりも先端縁63側の方が大きい。このような縁部62〜64を含むバイザー部材60の本体部61は、
図5に示すように、略扇形の形状になっている。
【0034】
さらに、先端縁63に沿って延びる補強要素65が、バイザー部材60の本体部61に取付けられている。補強要素65が先端縁63に沿って延びることにより、本体部61の先端縁63側の剛性を高めることができる。このため、第1の状態C1及び第2の状態C2において、本体部61の先端縁63側を所望の形状に保持することができる。本実施の形態では、3つの補強要素65が、互いに間隔を空けて平行に配置されている。とりわけ、3つの補強要素65のうちの1つは、先端縁63に重なる位置に配置されている。また、各補強要素65は、一方の側縁64から他方の側縁64まで延びている。このような補強要素65として、例えば樹脂製または金属製の平板部材や軸状部材を採用することができる。軸状部材の断面の形状は、多角形であってもよいし、円形または楕円形であってもよい。また、補強要素65は、中空になっていてもよい。なお、図示する例では、軸状部材からなる3つの補強要素65を示したが、このような例に限定されず、幅広の平板部材からなる1つの補強要素が先端縁63に沿って設けられていてもよい。
【0035】
次に、バイザー部材60を第1の状態C1及び第2の状態C2に選択的に保持する状態保持手段70について、主に
図5を参照して説明する。
図5に示すように、状態保持手段70は、バイザー部材60に保持されたバイザー側係合要素71と、幌布40に保持されバイザー側係合要素71に係合可能な幌布側係合要素74と、を有している。本実施の形態のバイザー側係合要素71は、第1の状態C1及び第2の状態C2の両方で使用される2つの共用係合具72と、第1の状態C1のみで使用される2つの第1状態用係合具73と、を含んでいる。2つの共用係合具72は、2つの第1状態用係合具73よりも先端縁63の近傍に配置されている。また、2つの共用係合具72は、一対の側縁64の間となる位置で幅方向に間隔を空けて配置されている。同様に、2つの第1状態用係合具73も、一対の側縁64の間となる位置で幅方向に間隔を空けて配置されている。図示する例では、各共用係合具72及び各第1状態用係合具73は、対応する側縁64の近傍に配置されている。
【0036】
また、バイザー側係合要素71は、柔軟性をもつフラップ要素77を介してバイザー部材60の本体部61に支持されている。本実施の形態では、各係合具72、73に対応してフラップ要素77が1つずつ設けられている。各フラップ要素77は、バイザー部材60の本体部61から延び出し、共用係合具72または第1状態用係合具73のいずれかを保持している。
【0037】
図7に、フラップ要素77を拡大して示す。理解を容易にすべく、
図7において、バイザー部材60の本体部61に対してフラップ要素77を起立させた状態で示している。
図7に示すように、各フラップ要素77の基端縁77aが、バイザー部材60の側縁64に沿って本体部61に縫い付けられている。とりわけ、本実施の形態では、各フラップ要素77の基端縁77aは、隣り合う2つの補強要素65の間となる側縁64近傍の部分に縫い付けられている。一方、各フラップ要素77の基端縁77aに対向する先端縁77bは、基端縁77aよりも幅方向内方側に位置している。ただし、先端縁77bは、バイザー部材60の本体部61に拘束されていない。このため、柔軟性をもつフラップ要素77を、基端縁77aを起点として容易に曲げることができる。
【0038】
本実施の形態では、
図5に示すように、バイザー側係合要素71及びフラップ要素77は、外力が加えられていない状態にて、バイザー部材60の本体部61に重なっている。このため、
図3及び
図4に示すように、バイザー側係合要素71及びフラップ要素77は、第1の状態C1及び第2の状態C2のいずれの状態においても、バイザー部材60と幌布40との間に位置することができる。
【0039】
一方、幌布40に保持された幌布側係合要素74は、第1の状態C1のみで使用される4つの第1状態用被係合具75と、第2の状態C1のみで使用される2つの第2状態用被係合具76と、を含んでいる。4つの第1状態用被係合具75は、2つの第2状態用被係合具76よりも通気部44の近傍に配置されている。4つの第1状態用被係合具75は、第1の状態C1において対応する共用係合具72に係合可能な2つの前方第1状態用被係合具75aと、第1の状態C1において対応する第1状態用係合具73に係合可能な2つの後方第1状態用被係合具75bと、を含んでいる。上述のように、バイザー側係合要素71の2つの共用係合具72は、バイザー側係合要素71の2つの第1状態用係合具73よりもバイザー部材60の先端縁63の近傍に配置されている。これに対応して、幌布側係合要素74の2つの前方第1状態用被係合具75aは、2つの後方第1状態用被係合具75bよりも前方に配置されている。また、幌布側係合要素74の2つの前方第1状態用被係合具75aは、通気部44を間に挟むように幅方向に間隔を空けて配置されている。同様に、幌布側係合要素74の2つの後方第1状態用被係合具75bも、通気部44を間に挟むように幅方向に間隔を空けて配置されている。とりわけ、幌布側係合要素74の2つの前方第1状態用被係合具75aの間隔W2は、バイザー側係合要素71の2つの共用係合具72の間隔W1よりも狭い。
【0040】
一方、幌布側係合要素74の2つの第2状態用被係合具76は、第2の状態C2において対応する共用係合具72に係合可能になっている。2つの第2状態用被係合具76は、通気部44を間に挟むように幅方向に間隔を空けて配置されている。とりわけ、幌布側係合要素74の2つの第2状態用被係合具76の間隔W3は、幌布側係合要素74の2つの前方第1状態用被係合具75aの間隔W2よりも広く、バイザー側係合要素71の2つの共用係合具72の間隔W1とほぼ等しい。
【0041】
ところで、上述のように、バイザー側係合要素71の共用係合具72は、第1の状態C1において幌布側係合要素74の2つの前方第1状態用被係合具75aに係合し、第2の状態C2において幌布側係合要素74の2つの第2状態用被係合具76に係合する。したがって、バイザー側係合要素71の共用係合具72は、第1の状態C1と第2の状態C2との間で幌布40上の異なる位置において幌布側係合要素74と係合するようになっている。
【0042】
なお、バイザー部材60の本体部61をなす材料及び状態保持手段70のフラップ要素77をなす材料として、例えば幌布40をなす布材と同じ布状の材料を用いることができる。典型的には、これらの布状の材料は、遮光性に優れ空気を透過させ難い。また、これらの布状の材料は、柔軟性をもち容易に変形させることができる。
【0043】
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0044】
図3に示すように、第1の状態C1において、バイザー側係合要素71の共用係合具72が幌布側係合要素74の前方第1状態用被係合具75aに係合し、バイザー側係合要素71の第1状態用係合具73が幌布側係合要素74の後方第1状態用被係合具75bに係合する。上述のように、幌布側係合要素74の2つの前方第1状態用被係合具75aの間隔W2は、バイザー側係合要素71の2つの共用係合具72の間隔W1よりも狭い。このため、第1の状態C1において、バイザー部材60の先端縁63が前方に凸となるように湾曲して幌布40から離間する。そして、バイザー部材60の本体部61が通気部44の上方に位置して、バイザー部材60と通気部44との間に隙間Sが形成される。この隙間S及び通気部44を介して、幌3の通気を確保することができる。例えば、バイザー部材60と通気部44との間の隙間Sに進入する外気を、通気部44から取り込むことができる。加えて、バイザー部材60の先端縁63が幌布40から離間し、バイザー部材60の本体部61が通気部44の上方に位置するため、通気部44に向かう日差しをバイザー部材60によって遮ることができる。
【0045】
一方、
図4に示すように、第2の状態C2において、バイザー側係合要素71の共用係合具72が幌布側係合要素74の第2状態用被係合具76に係合する。上述のように、幌布側係合要素74の2つの第2状態用被係合具76の間隔W3は、幌布側係合要素74の2つの前方第1状態用被係合具75aの間隔W2よりも広く、バイザー側係合要素71の2つの共用係合具72の間隔W1とほぼ等しい。このため、バイザー部材60の先端縁63は、第1の状態C1よりも幌布40に接近する。これに応じて、バイザー部材60の本体部61も第1の状態C1よりも幌布40に接近して通気部44を覆う。この場合、通気部44に向かう外気及び日差しの両方を、バイザー部材60によって遮ることができる。
【0046】
とりわけ、第2の状態C2において、バイザー部材60の先端縁63は、基端縁62が沿って延びる幌骨32と、当該幌骨32と隣り合う他の幌骨31と、の間となる領域に位置している。隣り合う2つの幌骨31、32の間となる幌布40の領域は、当該隣り合う2つの幌骨31、32に安定して張設されている。したがって、第2の状態C2において、バイザー部材60の先端縁63が、安定して張設された幌布40の領域と対面するため、バイザー部材60の先端縁63と幌布40との間に意図せぬ隙間が形成されることを効果的に抑制することができる。これにより、この意図せぬ隙間から外気や日差しが通気部44に向かって進入することを効果的に防止することができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態によれば、第1の状態C1において、バイザー部材60の先端縁63が幌布40から離間し、且つ、バイザー部材60が通気部44の上方に位置して、バイザー部材60と通気部44との間に隙間Sが形成される。このような形態によれば、隙間S及び通気部44を介して、幌3の通気を確保することができる。また、バイザー部材60の先端縁63が幌布40から離間しバイザー部材60が通気部44の上方に位置するため、通気部44に向かう日差しをバイザー部材60によって遮ることができる。さらに、本実施の形態によれば、第2の状態C2において、バイザー部材60が、第1の状態C1よりも幌布40に接近して通気部44を覆う。この場合、通気部44に向かってくる外気及び日差しの両方を、バイザー部材60によって遮ることができる。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、状態保持手段70がバイザー部材60を第2の状態C2で保持することにより、従来同様に、乗車中の乳幼児を日差しから保護すると共に乳幼児へ向かう外気を遮る、という機能を発揮することができる。加えて、状態保持手段70がバイザー部材60を第1の状態C1で保持することにより、従来の機能に加えて、乗車中の乳幼児を日差しから保護すると共に幌3の通気を確保する、という機能を発揮することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、幌3が乳母車本体2に取付けられた状態において、第1の状態C1におけるバイザー部材60と通気部44との間に形成される隙間Sは、前方に開放している。典型的な利用態様では、乗車した乳幼児の背後から乳母車1を走行させるので、乳母車1の前方から後方に向かって外気が流れる。したがって、第1の状態C1における隙間Sが前方に開放していることから、前方から流れる外気を通気部44から容易に取り込むことができ、第1の状態C1において通気効率を大幅に改善することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、先端縁63の長さL1は、基端縁62の長さL2よりも長い。この場合、バイザー部材60の基端縁62側よりもバイザー部材60の先端縁63側を大きく撓ませることができる。このため、第1の状態C1において、バイザー部材60の先端縁63側を大きく撓ませることにより、バイザー部材60と通気部44との間に形成される隙間Sを十分に確保することができる。この結果、第1の状態C1における通気性をさらに向上させることができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、バイザー部材60の先端縁63は、基端縁62とは反対側に向かって凸となるように湾曲している。この場合、第1の状態C1において、バイザー部材60の先端縁63側を撓ませると、バイザー部材60の先端縁63が基端縁62とは反対側に向かって大きく張り出す。これにより、バイザー部材60が通気部44の上方の広範囲を覆うことができる。結果として、通気部44に向かう日差しを、バイザー部材60によってさらに効果的に遮ることができる。また、バイザー部材60の先端縁63が基端縁62とは反対側に向かって大きく張り出すことから、従来の乳母車1用の幌3とは異なる外観を醸し出すことができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、先端縁63に沿って延びる補強要素65が、バイザー部材60の本体部61に取付けられている。補強要素65が先端縁63に沿って延びることにより、本体部61の先端縁63側の剛性を高めることができる。このため、第1の状態C1及び第2の状態C2において、本体部61の先端縁63側を所望の形状に保持することができる。具体的には、第1の状態C1においては、補強要素65によって本体部61の先端縁63側を所望に湾曲させた状態に保持することができ、当該先端縁63を幌布40から確実に離間させることができる。一方、第2の状態C2においては、補強要素65によってバイザー部材60の先端縁63が幌布40と確実に対面するように保持することができ、バイザー部材60の先端縁63と幌布40との間に意図せぬ隙間が形成されることを効果的に抑制することができる。これにより、この意図せぬ隙間から外気や日差しが通気部44に向かって進入することを効果的に防止することができる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、バイザー側係合要素71は、第1の状態C1及び第2の状態C2のいずれの状態においてもバイザー部材60と幌布40との間に位置するようにバイザー部材60に保持されている。このような形態によれば、第1の状態C1及び第2の状態C2のいずれの状態においても、バイザー側係合要素71がバイザー部材60に覆われるため、バイザー側係合要素71を外方から視認し難くすることができる。このため、手押し車用の幌3の見映えがよい。
【0054】
また、本実施の形態によれば、バイザー側係合要素71は、第1の状態C1と第2の状態C2との間で幌布40上の異なる位置において幌布側係合要素74と係合する共用係合具72を含んでいる。このような形態によれば、第1の状態C1及び第2の状態C2の両方で、同一の共用係合具72を用いることができる。このため、バイザー部材60上のスペースを有効に活用することができる上に、材料を効率よく利用することもできる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、バイザー側係合要素71は、柔軟性をもつフラップ要素77を介してバイザー部材60に支持されている。このような形態によれば、フラップ要素77が柔軟性を示すため、バイザー側係合要素71を幌布側係合要素74に容易に位置合わせすることができる。このため、バイザー側係合要素71を幌布側係合要素74に係合させる作業の作業性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、各フラップ要素77の基端縁77aが、バイザー部材60の側縁64に沿って本体部61に取り付けられている。この場合、各フラップ要素77の基端縁77aがバイザー部材60の側縁64に沿って観察されることから、見映えがよい。とりわけ、本実施の形態では、係合具72、73を保持する各フラップ要素77の基端縁77aは、隣り合う2つの補強要素65の間となる本体部61の部分に取り付けられている。隣り合う2つの補強要素65の間となる本体部61の部分は、当該隣り合う2つの補強要素65によって剛性を高められている。このため、各フラップ要素77をバイザー部材60の本体部61に安定して支持させることができる。結果として、フラップ要素77を介して、バイザー側係合要素71をバイザー部材60の本体部61に安定して支持させることができる。
【0057】
なお、
図5には、バイザー部材60を幌布40に対して捲り上げた状態で幌3が示されている。状態保持手段70は、第1の状態C1及び第2の状態C2に加えて、このバイザー部材60を幌布40に対して捲り上げた第3の状態に当該バイザー部材60を保持可能になっていてもよい。言い換えると、状態保持手段70は、第1の状態C1及び第2の状態C2に加えて、バイザー部材60が通気部44からずれた第3の状態に当該バイザー部材60を保持可能になっていてもよい。
【0058】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0059】
上述した実施の形態では、幌3を乳母車1に適用した例を示したが、幌3の用途は、上述した例に限定されない。上述した特徴を有する幌を、任意の手押し車に適用することができる。
【0060】
また、上述した実施の形態では、
図1乃至
図5に示すように、第1の状態C1におけるバイザー部材60と通気部44との間に形成される隙間Sが前方に開放している例を示したが、隙間Sが開放する向きは、上述した向きに限定されない。例えば、幌3が乳母車本体2に取付けられた状態において、第1の状態C1におけるバイザー部材60と通気部44との間に形成される隙間が後方に開放していてもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態では、
図3及び
図4に示すように、幌3が相対移動可能な3つの幌骨30を備える例を示したが、幌骨30の数は、上述した例に限定されない。幌は、相対移動可能な任意の数の幌骨を備えることができる。一例として、幌は、相対移動可能な2つの幌骨を備えていてもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態では、
図5に示すように、バイザー側係合要素71が、2つの共用係合具72と、2つの第1状態用係合具73と、を含み、幌布側係合要素74が、4つの第1状態用被係合具75と、2つの第2状態用被係合具76と、を含む例を示したが、状態保持手段70の形態は、上述した形態に限定されない。バイザー側係合要素71及び幌布側係合要素74に含まれる係合具の数、配置及び組み合わせは、仕様に応じて適宜変更可能である。例えば、幌布側係合要素が、第1の状態C1と第2の状態C2との間でバイザー部材60の本体部61上の異なる位置においてバイザー側係合要素71と係合する複数の共通係合具を含んでいてもよい。
【0063】
さらに、上述した実施の形態では、バイザー側係合要素71及び幌布側係合要素74が、ボタンにて構成された例を示している。ただし、このような例に限定されず、バイザー側係合要素71及び幌布側係合要素74として、それ自体既知の任意の係合具を採用することができる。例えば、バイザー側係合要素及び幌布側係合要素として、ホック、線ファスナー、面ファスナーまたはバックルを用いてもよい。