特許第6189207号(P6189207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189207
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】シロアリ駆除剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/56 20060101AFI20170821BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20170821BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20170821BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A01N43/56 D
   A01N25/08
   A01P7/04
   A01M1/20 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-267932(P2013-267932)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-124155(P2015-124155A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年12月15日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構、イノベーション創出基礎的研究推進事業における「シロアリの卵運搬本能を利用した擬似卵型駆除剤の実用化」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(72)【発明者】
【氏名】松浦 健二
(72)【発明者】
【氏名】日室 千尋
(72)【発明者】
【氏名】横井 智之
(72)【発明者】
【氏名】安芸 誠悦
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕志
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−77054(JP,A)
【文献】 特開2000−342149(JP,A)
【文献】 特開2008−194007(JP,A)
【文献】 特表2006−515602(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/059054(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
A01M 1/00−1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1
(式中RはClまたはCNを示す。)で表された殺虫活性成分とシロアリの卵エキスを疑似卵用基材に塗布または含有した疑似卵であって、疑似卵用の基材1粒当たりに、0.0005〜1μgの殺虫活性成分を塗布または含有し、疑似卵用基材がガラス製であることを特徴とするシロアリ駆除組成物。
【請求項2】
請求項1記載のシロアリ駆除組成物を用いて、シロアリを防除するシロアリ防除方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロアリ駆除・防除のためのシロアリ駆除組成物およびシロアリ防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、主に実用化されているシロアリ駆除法としては、カーバメート系化合物、ピレスロイド系化合物等の殺虫活性成分を含有する製剤をシロアリで被害を受けた箇所やシロアリが家屋に侵入する箇所等に散布する方法およびベンゾイルウレア系化合物等の昆虫成長制御剤を餌に混入してシロアリに摂食させてシロアリ駆除を行うベイト工法が挙げられる。後者のベイト工法では、限定的に薬剤を使用するので環境を汚染しないという長所がある反面、シロアリを駆除するのに2,3か月もかかるという欠点があった。
【0003】
近年、殺虫活性成分をシロアリ巣の中枢に効率よく運搬させる方法として、擬似卵運搬によるシロアリ駆除法(以下、本シロアリ駆除法という)が開示されており、本シロアリ駆除法に適用するためのシロアリ駆除組成物が開示されている。これによれば、擬似卵の運搬を阻害しない範囲でピレスロイド化合物、有機リン化合物、カーバメート化合物等の殺虫活性成分を使用できると記載されている。しかしながら、実際に適用できる殺虫活性成分については、具体的にどのような殺虫活性成分が適するのか、またその薬量範囲についても明らかにされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−342149号公報
【特許文献2】特開2008−194007号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「創立五十年誌」、第5章防除技術の変遷、社団法人日本しろあり対策協会、平成21年3月25日発行、p31−35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本シロアリ駆除法に用いられる擬似卵の基材に塗布または含有するシロアリ駆除組成物、その薬量範囲および当該シロアリ駆除組成物を用いてシロアリを防除する方法を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、一般式1
(式中RはClまたはCNを示す。)で表された殺虫活性成分を疑似卵用の基材に塗布または含有した疑似卵であることを特徴とするシロアリ駆除組成物、
(2)疑似卵用の基材1粒当たりに、0.0005〜1μgの一般式1
(式中RはClまたはCNを示す。)で表された殺虫活性成分を塗布または含有することを特徴とする請求項1に記載のシロアリ駆除組成物、
(3)上記(1)または(2)に記載のシロアリ駆除組成物を用いて、シロアリを防除するシロアリ防除方法、を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の殺虫活性成分を、擬似卵の基材に塗布または含有するシロアリ駆除組成物を用いることで確実にシロアリを防除できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本シロアリ駆除法に使用する殺虫活性成分は、そのまま擬似卵の基材に塗布または含有させることが困難であるため、シロアリに対し擬似卵の運搬を阻害させない溶剤による希釈剤か、特殊な製剤にすることが望ましい。
そのような溶剤として、例えば、水、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、グリセリン等のグリコール系溶剤、シリコーンオイル等のシリコン系溶剤等が挙げられるが、シロアリに対して擬似卵の運搬を阻害させない溶剤であればよい。
【0010】
擬似卵の運搬を阻害させない特殊な製剤としては、乳剤、水性乳剤、活性成分の微粉末や微粒子分を分散剤や増粘剤等で水中に分散させた水性懸濁剤、微粒子や微粉末を溶剤で溶解させて、ウレタン等の高分子樹脂で有効成分を包み込み、その粒子を分散剤、増粘剤等を配合させて水中に分散させるマイクロカプセル製剤等が挙げられる。
【0011】
本発明の駆除の対象となるシロアリの種類は、世界中で木材類、紙類、家屋・ビル類、堤防、森林、農作物、配管・ケーブル類等を加害するシロアリ目に属するシロアリ類すべてに適用できる。
【0012】
本発明に適用できる具体的な殺虫活性成分としては、例えば以下の一般式1
(式中RはClまたはCNを示す。)で表された殺虫活性成分において、RがClである化合物A、RがCNである化合物Bを挙げることができる。
【0013】
本シロアリ駆除法に適する殺虫活性成分を擬似卵用の基材に塗布または含有する薬量の範囲としては、疑似卵用の基材1粒当たり、化合物Aまたは化合物Bを0.0005〜1μgであることが好ましい。疑似卵用の基材としては、直径約0.25〜0.6mmの球形粒子を用いることができ、直径0.4〜0.6mmが好ましい。球形粒子は真球状である必要はなく、楕円体であっても良い。材質としては特に限定されないが、ガラス、プラスチック、セラミック等を使用することができ、これらの中でガラス製が好ましく、ガラスビーズが好適に使用できる。疑似卵とは、殺虫活性成分とシロアリの卵エキスを塗布または含有させた粒子である。
【0014】
本シロアリ駆除法に適用できるシロアリ駆除剤を用いてシロアリを防除するシロアリ防除方法としては、シロアリの生息場所、シロアリが食害している木材、シロアリの通り道である蟻道の中等に投与することでシロアリを確実に防除することができる。
【0015】
以下に実地例を示して本発明をさらに具体的かつ詳細に説明するが、実施例はあくまでも例示説明であり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
本願のシロアリ駆除組成物を以下のようにして調製した。
アルトリセット(登録商標)(有効成分化合物Aを5%含有、デュポン株式会社製)を水で希釈して、有効成分含量が5.0、0.5、0.05、0.005または0.0025重量%となるように調整した水希釈液1gを底部直径2cm高さ2.5cmのビーカー内にある5万個の直径約0.4〜約0.6mmのガラスビーズに滴下し、充分に攪拌させた。そこに、卵認識フェロモンとして、ヤマトシロアリの卵5個とグリセン10%含有水溶液1gを加えて、さらに充分に攪拌させることにより、擬似卵1粒当たり化合物Aを1.0、0.1、0.01、0.001または0.0005μg含有する本シロアリ駆除法に用いられるシロアリ駆除組成物を得た。
【0017】
(比較例1)
サイゴー乳剤「ES」(有効成分ペルメトリン10.0%含有、住化エンビロサイエンス株式会社製)を水で希釈して、有効成分含量が0.1、0.05または0.01重量%となるように調整した希釈液1gを、実施例1と同じようにして擬似卵1粒当たり有効成分0.02、0.01または0.002μgを含有する比較例のシロアリ駆除組成物を得た。
【0018】
(比較例2)
スミチオン(登録商標)10FL「ES」(有効成分フェニトロチオン10.0%含有、住化エンビロサイエンス株式会社製)を水で希釈して、有効成分含量が0.5、0.25または0.05重量%となるように調整した希釈液1gを、実施例1と同じようにして擬似卵1粒当たり有効成分0.1、0.05または0.01μgを含有する比較例のシロアリ駆除組成物を得た。
【0019】
(試験例1)
スプルース等の木粉を餌とし、角型ケース(221×141×37mm)内に、ヤマトシロアリ約400個体を放虫して1ヵ月以上室温に放置して人工巣を構築させた。次に、実施例1および比較例1のシロアリ駆除剤約5000個を上述の人工巣内の蟻道付近に配置させた。これらのシロアリ駆除剤の薬量設定については次の通りとした。判定方法については、放虫2週間後における人工巣内のヤマトシロアリの死虫率が60%以上の場合、その巣が正常に機能しないことから、巣駆除が成功したものと判定した。
【0020】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によるシロアリ駆除組成物を用いることにより、シロアリによる被害を効率的に防止することができる。