特許第6189212号(P6189212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189212
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】引込み装置ユニット
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/10 20060101AFI20170821BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   E05F1/10
   E05F5/02 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-272423(P2013-272423)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124601(P2015-124601A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】柏熊 一彰
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 学
【審査官】 村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−205567(JP,A)
【文献】 特開2010−106655(JP,A)
【文献】 特開2013−047449(JP,A)
【文献】 特開2013−036329(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201416336(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00−13/04
E05F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠の上枠又は建築物の、開き戸の開き方向側の壁面に取り付けられる引込み装置及び受座のいずれか一方と、
開き戸の開き方向側の壁面に取り付けられる前記引込み装置及び前記受座の他方と、を備え、
前記引込み装置は、
前記受座の受座軸が離脱可能に嵌まる溝を有し、開き戸を閉じるとき、前記溝に前記受座軸が嵌まった状態で垂直軸の回りを回転して、開き戸に閉じ方向の回転力を付与し、開き戸を開くとき、前記受座軸が前記溝から離れるアームを備え、
前記開き戸の上面よりも上方において、前記引込み装置の前記アームと前記受座軸とが係合する引込み装置ユニット。
【請求項2】
枠の上枠の壁面に前記引込み装置又は前記受座が取り付けられ、
前記引込み装置又は前記受座は、枠の上枠の下面に当接可能な位置決め片を有することを特徴とする請求項1に記載の引込み装置ユニット。
【請求項3】
前記引込み装置は、
前記位置決め片、及び上枠の壁面に締結部材によって取り付けられる本体部を有するブラケットと、
締結部材によって前記ブラケットに取り付けられる引込み装置本体と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の引込み装置ユニット。
【請求項4】
開き戸の壁面に前記受座又は前記引込み装置が取り付けられ、
前記受座又は前記引込み装置は、開き戸の上面に当接可能な位置決め片を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の引込み装置ユニット。
【請求項5】
前記受座は、前記受座軸の、枠の上枠の壁面又は開き戸の壁面に対して直交する方向の位置を調整する位置調整機構を備えることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の引込み装置ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の開き戸に引込み力を付与する引込み装置ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の開き戸に引込み力を付与する引込み装置ユニットが知られている(特許文献1参照)。図10に示すように、引込み装置ユニットは、枠101に取り付けられる引込み装置102と、開き戸103に取り付けられる受座104と、を備える。引込み装置102は、引き出された位置から引込み位置まで垂直軸の回りを回転するアーム102aを備える。アーム102aは、受座104の受座軸104aが離脱可能に嵌まる溝102bを有する。図11(a)に示すように、開き戸103を閉じるとき、受座104の受座軸104aが引き出された位置のアーム102aの溝102bに嵌まる。図11(a)から図11(b)に示すように、アーム102aは溝102bに受座軸104aが嵌まった状態で垂直軸の回りを回転して、開き戸103に閉じ方向の回転力を付与する。図10に示すように、開き戸103を開くとき、受座104の受座軸104aはアーム102aの溝102bから離れる。このため、開き戸103を少ない力で開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−287237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引き込み装置ユニットにあっては、開き戸を閉じたとき、受座の受座軸が引込み装置のアームの溝に嵌まっていなければならない。この要請から、従来の引込み装置ユニットにあっては、引込み装置及び受座のいずれか一方が枠の上枠の下面に取り付けられていた。
【0005】
しかし、上枠の下面に引込み装置を取り付けると、上枠の下面に引込み装置又は受座を取り付けるためのスペースが必要になり、枠の厚さが厚くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、枠の厚さに無関係に引込み装置又は受座を取り付けることができ、取り付けが容易な引込み装置ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、枠の上枠又は建築物の、開き戸の開き方向側の壁面に取り付けられる引込み装置及び受座のいずれか一方と、開き戸の開き方向側の壁面に取り付けられる前記引込み装置及び前記受座の他方と、を備え、前記引込み装置は、前記受座の受座軸が離脱可能に嵌まる溝を有し、開き戸を閉じるとき、前記溝に前記受座軸が嵌まった状態で垂直軸の回りを回転して、開き戸に閉じ方向の回転力を付与し、開き戸を開くとき、前記受座軸が前記溝から離れるアームを備え、前記開き戸の上面よりも上方において、前記引込み装置の前記アームと前記受座軸とが係合する引込み装置ユニットである。
【0008】
本発明の好ましい一態様は、枠の上枠の壁面に前記引込み装置又は前記受座が取り付けられ、前記引込み装置又は前記受座は、枠の上枠の下面に当接可能な位置決め片を有することを特徴とする。
【0009】
本発明のさらに好ましい一態様は、前記引込み装置は、前記位置決め片、及び上枠の壁面に締結部材によって取り付けられる本体部を有するブラケットと、締結部材によって前記ブラケットに取り付けられる引込み装置本体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のさらに好ましい一態様は、開き戸の壁面に前記受座又は前記引込み装置が取り付けられ、前記受座又は前記引込み装置は、開き戸の上面に当接可能な位置決め片を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のさらに好ましい一態様は、前記受座は、前記受座軸の、枠の上枠の壁面又は開き戸の壁面に対して直交する方向の位置を調整する位置調整機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、引込み装置及び受座のいずれか一方が枠の上枠又は建築物の、開き戸の開き方向側の壁面に取り付けられ、引込み装置及び受座の他方が開き戸の開き方向側の壁面に取り付けられるので、枠の上枠の下面に引込み装置又は受座を取り付ける必要がなくなり、枠の厚さに無関係に引込み装置ユニットを取り付けることができる。また、開き戸の上面よりも上方において、引込み装置のアームと受座軸とが係合するので、開き戸を開閉するとき、上枠又は建築物の壁面に取り付けられる引込み装置のアーム又は受座の受座軸が開き戸に当たることがない。さらに、引込み装置のアーム及び受座の受座軸が見え易くなるので、引込み装置及び受座の位置調整も容易になる。さらに、引込み装置及び受座が枠及び開き戸の開き方向側(例えば室外側)に取り付けられるので、例えば室内側から見たときの枠及び開き戸の美観も向上する。
【0013】
本発明の好ましい一態様によれば、引込み装置又は受座が枠の上枠の下面に当接可能な位置決め片を有するので、引込み装置を上下方向に位置決めすることができる。
【0014】
本発明のさらに好ましい一態様によれば、引込み装置が、上枠の壁面に締結部材によって取り付けられるブラケットと、締結部材によってブラケットに取り付けられる引込み装置本体と、を備えるので、高さ方向の寸法が小さい上枠に引込み装置を取り付けるのが容易になる。
【0015】
本発明のさらに好ましい一態様によれば、受座又は引込み装置が開き戸の上面に当接可能な位置決め片を有するので、受座又は引込み装置を上下方向に位置決めすることができる。
【0016】
本発明のさらに好ましい一態様によれば、受座軸を、上枠の壁面又は開き戸の壁面に対して直交する方向に位置調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一の実施形態の引込み装置ユニットの斜視図
図2】化粧カバーを取り外した本実施形態の引込み装置ユニットの斜視図
図3】本実施形態の引込み装置の内部構造図
図4】本実施形態の引込み装置の分解斜視図
図5】本実施形態の受座の分解斜視図
図6】本実施形態の引込み装置及び受座の正面図
図7図6のVII-VII線断面図
図8】開き戸を閉めるときのアームの挙動を示す平面図(図8(a)は引き出された位置のアームに受座軸が当接した状態を示し、図8(b)はアームが引込み方向に思案点の角度まで回転した状態を示す)
図9】本発明の第二の実施形態の引込み装置ユニットの斜視図
図10】従来の引込み装置ユニットの斜視図
図11】従来の引込み装置ユニットのアームの挙動を示す平面図(図11(a)は引き出された位置のアームに受座軸が当接した状態を示し、図11(b)はアームが引込み位置まで回転した状態を示す)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面に基づいて本発明の第一の実施形態の引込み装置ユニットを説明する。図1は、枠1及び開き戸2に取り付けられた本実施形態の引込み装置ユニットを示す。枠1は、上枠1a、左右の縦枠1b,1c、及び下枠1dを備える。枠1の内側には、開き戸2を閉じたときに開き戸2の閉じ方向側の壁面に当たる戸当たり1eが設けられる。枠1には、一軸ヒンジ3を介して開き戸2が開閉可能に取り付けられる。開き戸2を閉めたとき、枠1の壁面1fと開き戸2の壁面2aとは略同一の平面内に配置される。
【0019】
上枠1aの、開き戸2の開き方向側の壁面1fには、引込み装置4が取り付けられる。引込み装置4は、引き出された位置から引込み位置まで垂直軸の回りを回転するアーム5を備える。アーム5は、受座6の受座軸7が離脱可能に嵌まる溝5aを有する。アーム5の回転中心になる垂直軸は、釣元側に配置される。開き戸2の開き方向側の壁面2aには、受座6が取り付けられる。受座6は、引込み装置4のアーム5の溝5aに嵌まる受座軸7を備える。引込み装置4及び受座6は、化粧カバーで覆われる。
【0020】
図1に示すように、開き戸2を開いたとき、受座6の受座軸7は引込み装置4のアーム5から離れている。開き戸2を閉じると、受座軸7がアーム5の溝5aに嵌まり、アーム5が引き出された位置から引込み位置まで垂直軸の回りを回転し、開き戸2に閉じ方向の回転力を付与する。アーム5は、開閉する開き戸2に当たらないように、開き戸2の上面2bよりも上方に配置される。受座軸7の少なくとも上端部はアーム5に係合できるように、開き戸2の上面2bよりも上方に配置される。
【0021】
図2は、化粧カバーを取り外した引込み装置4及び受座6を示す。引込み装置4は、上枠1aの壁面1fにねじ等の締結部材によって取り付けられるブラケット11と、ブラケット11にかしめピン等の締結部材によって取り付けられる引込み装置本体12と、を備える。ブラケット11は、上枠1aの下面1gに当接可能な位置決め片としての位置決め爪14を有し(図3参照)、上下方向に位置決めされた状態で上枠1aに取り付けられる。枠1は建築物の壁で囲まれている。ブラケット11が上枠1aの上下方向の高さ寸法以内に収まらないとき、ブラケット11は上枠1a及び建築物の壁面に取り付けられてもよいし、建築物の壁面のみに取り付けられてもよい。
【0022】
図2に示すように、受座6は、開き戸2の壁面2aの上端にねじ等の締結部材によって取り付けられる。受座6は、開き戸2の上面2bに当接可能な位置決め片としての位置決め爪8を有する。受座6は、上下方向に位置決めされた状態で開き戸2に取り付けられる。受座6の構造は後述する。
【0023】
図3は、引込み装置4の内部構造図を示す。引込み装置4は、ブラケット11と、ブラケット11に取り付けられる引込み装置本体12を備える。引込み装置本体12は、図3中二点鎖線で示すケース21と、ケース21に垂直軸の回りを回転可能に支持されるアーム5と、アーム5に引き出し方向及び引き込み方向の回転力(トルク)を与えるスライダクランク機構22と、引き込み時にアーム5がゆっくり引き込まれるようにするダンパ機構23と、を備える。
【0024】
図4の分解斜視図を参照しつつ、ブラケット11、ケース21、アーム5、スライダクランク機構22及びダンパ機構23を順番に説明する。
【0025】
ブラケット11は、引込み装置本体12が取り付けられる本体部としての本体プレート15と、位置決め片としての位置決め爪14と、を備える。本体プレート15は、左右方向(枠1の間口方向)に細長い長方形に形成される。本体プレート15には、ブラケット11を上枠1aに取り付けるためのねじ等の締結部材が挿入される取付け穴15aが開けられる。また、本体プレート15には、引込み装置本体12を取り付けるためのかしめピン16等の締結部材が挿入される取付け穴15bが開けられる。位置決め爪14は、本体プレート15の背面側に本体プレート15から直交する方向に突出する。位置決め爪14は、本体プレート15の長さ方向に離れて複数設けられる。本体プレート15の長さ方向の両端部15cは、引込み装置本体12側に折り曲げられる。本体プレート15の背面側が上枠1aの壁面1fに接触する。位置決め爪14は上枠1aの下面1gに接触する。
【0026】
ケース21は、一対の側壁21aと、底壁21bと、を有し、断面U字形に形成される。ケース21は、左右方向(枠1の間口方向)に細長い。ケース21の長さ方向の中央部にアーム5の垂直軸24が配置される。ケース21の、垂直軸24の一方の側にスライダクランク機構22が配置され、ケース21の、垂直軸24の他方の側にダンパ機構23が配置される。ケース21の上端部、長さ方向の両端部は開口する。ケース21の下部には、アーム5を回転させるためのアーム用開口21cが開けられる。
【0027】
アーム5は、金属製のアーム本体31と、受座軸7に衝突するときの衝撃音を低減する緩衝体32と、アーム本体31を覆うと共に、緩衝体32を露出させる樹脂製のアームカバー33と、アーム本体31と一体に回転する樹脂製のアーム軸34と、を備える。アームカバー33は、緩衝体32がアーム本体31から脱落するのを防止する役割も持つ。アーム本体31を金属製にするのは、アーム5の強度を高くし、重量の重い開き戸2にも引込み力を付与できるようにするためである。ただし、開き戸2の重量が重くなければ、アーム本体31及びアームカバー33を一体の樹脂成形品にすることもできる。
【0028】
アーム本体31とアーム軸34には、垂直軸24が貫通する。垂直軸24は、引込み装置本体12のケース21に両端部が固定される。アーム本体31とアーム軸34とは、垂直軸24の回りを一体に回転する。アーム本体31とアーム軸34とは、第一及び第二のピン35a,35bによって連結される。第一のピン35aは、アーム5に回転力を付与するスライダクランク機構22のリンク36に連結される。第二のピン35bは、回転するアーム5に制動力を付与するダンパ機構23のスライドブロック41に連結される。
【0029】
スライダクランク機構22は、リンク36、スライダ37、コイルばね38、及びばねベース39を備える。リンク36の一端部はアーム5に垂直軸24から偏心した位置に第一のピン35aを介して回転可能に連結され、リンク36の他端部はスライダ37にピン40を介して回転可能に連結される。スライダ37はケース21に一方向にスライド可能に支持される。弾性部材としてのコイルばね38はスライダ37とばねベース39との間に介在し、スライダ37に付勢力を与える。
【0030】
ダンパ機構23は、スライドブロック41、例えば三本のダンパ42、ダンパ42の位置を調節するダンパ受け43、ダンパベース44、及びダンパ調整軸45を備える。スライドブロック41には、アーム5の第二のピン35bが通される長孔41aが形成される。スライドブロック41はケース21に一方向にスライド可能に支持される。アーム5が回転すると、スライドブロック41が一方向にスライドする。ダンパ42はスライドブロック41とダンパ受け43との間に介在する。ダンパ42には、本体部に対してロッドがストロークする伸縮式のダンパが用いられる。アーム5が引き込まれる方向に回転するとき、ダンパ42が縮まり、ダンパ力が発生するようになっている。ダンパベース44はケース21に固定される。ダンパベース44には、上下方向に複数段(この実施形態では二段)、左右方向に複数列(この実施形態では二列)のダンパ収容部44aが形成される。ダンパベース44には、複数のダンパ42に接するダンパ受け43が一方向にスライド可能に設けられる。ダンパベース44には、ダンパ受け43の一方向の位置を調整するためのダンパ調整軸45が組み込まれる。ダンパ調整軸45を回転させることによって、複数のダンパ42に接するダンパ受け43の位置が調整され、複数のダンパ42の位置が同時に調整される。ダンパ受け43を設けるのは、上下方向及び左右方向に配列される複数のダンパ42の位置を同時に調整するためである。
【0031】
図5は、受座6の分解斜視図を示す。受座6は、開き戸2の壁面2aに取り付けられる受座ベース51と、受座ベース51に支持される受座軸7と、受座ベース51に対する受座軸7の、開き戸2の壁面2aに対して直交する方向(以下、奥行き方向という)の位置を調整する位置調整機構としての受座ブロック52と、を備える。受座ベース51は、開き戸2の壁面2aからブラケット状に突出する。受座ベース51には、受座6を開き戸2に取り付けるためのねじ等の締結部材が挿入される取付け穴51aが開けられる。受座ベース51には、受座ベース51の背面側に突出する位置決め片としての位置決め爪8が設けられる。位置決め爪8は、受座ベース51の左右方向(開き戸2の間口方向)に離れて複数設けられる。受座ベース51の背面側が開き戸2の壁面2aに接触する(図2参照)。位置決め爪8は開き戸2の上面2bに接触する(図2参照)。受座ベース51の上面には、ぎざぎざ51c(連続した凹凸)が形成される。
【0032】
受座ベース51の上面には、受座ブロック52がねじ等の締結部材58を介して取り付けられる。受座ブロック52の下面には、ぎざぎざ52a(連続した凹凸)が形成される。締結部材58を緩めれば、受座ブロック52の奥行き方向の位置を調整できる。調整後、締結部材58を締めれば、受座ブロック52が受座ベース51に奥行き方向に固定される。
【0033】
受座ブロック52には、受座軸7が固定される。受座軸7は、受座ブロック52にねじ固定される固定軸56と、固定軸56に対して軸方向に移動可能な可動軸55と、を備える。図6の受座6の正面図に示すように、可動軸55がアーム5の溝5aに嵌まる。図7の受座6の断面図に示すように、可動軸55は、コイルばね54によって突出した状態で固定軸56に入れ子式に嵌められる。固定軸56の外周面にはねじが形成されていて、固定軸56は受座ブロック52にねじで固定される。固定軸56にはナット57も螺合する。固定軸56を回転させると、ねじの作用によって固定軸56の上下方向の位置が調整される。固定軸56の位置を調整後、ナット57を締めることで、固定軸56が受座ブロック52に固定される。
【0034】
可動軸55と固定軸56との間にコイルばね54を介在させるのは、いたずら等によって引き出された位置のアーム5が引込み位置に移動しても、可動軸55がアーム5の溝5aに嵌まるようにするためである。図7に示すように、アーム5が引込み位置に移動していても、開き戸2を閉じると、可動軸55がアーム5の溝5aの脇の傾斜面5bを乗り越え、アーム5の溝5aに嵌まる。可動軸55が傾斜面5bを乗り越えるようにするために、コイルばね54が設けられる。固定軸56には、伸縮するコイルばね54の歪を矯正する案内軸53が固定される。
【0035】
図8を参照しつつ、引込み装置4の動きを説明する。図8(a)に示すように、アーム5が引き出された位置にあるとき、スライダクランク機構22はアーム5にさらに引き出される方向(1)に回転力(トルク)を与える。このためアーム5の引き出された位置が保たれる。開き戸2を閉じて、受座軸7が引き出された位置のアーム5に当たると、図8(b)に示すようにアーム5が引込み方向(2)に回転する。アーム5には緩衝体32が設けられているので、このときの衝撃音を低減することができる。アーム5がスライダクランク機構22の思案点を超えると、スライダクランク機構22はアーム5に引込み方向(2)のトルクを与え、アーム5が引込み方向(2)に回転する。アーム5の溝5aには、受座軸7が嵌まっているので、アーム5の引込み方向(2)の回転によって開き戸2に引込み力が付与される。開き戸2が戸当たり1eに当たる全閉位置にあるとき、スライダクランク機構22はアーム5にさらに引込み方向(2)のトルクを与える。このため、開き戸2の全閉位置が保たれる。
【0036】
開き戸2を開くときは、アーム5は上記とは逆の挙動を示す。すなわち、開き戸2を開くと、受座軸7がアーム5を引込み位置から引き出し方向(1)に回転させる。アーム5が図8(b)に示す思案点の角度まで回転すると、スライダクランク機構22がアーム5に与える回転力の方向が切り替わり、アーム5に引き出し方向(1)の回転力が付与される。このため、アーム5が図8(a)に示す引き出し位置まで自動的に回転する。
【0037】
図9は、本発明の第二の実施形態の引込み装置ユニットを示す。上記第一の実施形態の引込み装置ユニットでは、引込み装置4が枠1の上枠1aの壁面1fに取り付けられ、受座6が開き戸2の壁面2aに取り付けられているが、この実施形態では、引込み装置4が開き戸2の壁面2aに取り付けられ、受座6が枠1の上枠1aの壁面1fに取り付けられる。受座6の受座軸7は、開閉する開き戸2に当たらないように、開き戸2の上面2bよりも上方に配置される。引込み装置4のアーム5は、受座6の受座軸7に係合するように、開き戸2の上面2bよりも上方に配置される。
【0038】
この実施形態では、引込み装置4は、ブラケット11を介することなく、直接開き戸2に取り付けられる。それ以外の引込み装置4の構造は、第一の実施形態の引込み装置4と略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。また、受座6の構造も、第一の実施形態の受座6と略同一なので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に変更できる。
【0040】
上記に記載の引込み装置の構造は、一例であり、例えばダンパ機構を省略することもできるし、アームに回転力を付与できるものであれば、スライダクランク機構以外にも様々な機構を採用できる。アームには、緩衝体を設けなくてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、引込み装置本体が取り付けられるブラケットに位置決め爪を設けているが、引込み装置のケースに位置決め爪を設け、ブラケットを介することなく引込み装置を枠に直接取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1…枠
1a…上枠
1f…上枠の壁面
2…開き戸
2a…開き戸の壁面
2b…開き戸の上面
4…引込み装置
5…アーム
5a…アームの溝
6…受座
7…受座軸
8…受座の位置決め爪(受座の位置決め片)
11…ブラケット
12…引込み装置本体
14…引込み装置の位置決め爪(引込み装置の位置決め片)
15…本体プレート(本体部)
24…アームの垂直軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11