特許第6189223号(P6189223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189223
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】クラッド光除去器および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20170821BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20170821BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20170821BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20170821BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01S3/067
   H01S3/10 Z
   G02B6/26
   G02B6/42
   G02B6/036
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-12031(P2014-12031)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2014-146800(P2014-146800A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】61/757,434
(32)【優先日】2013年1月28日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515288122
【氏名又は名称】ルーメンタム オペレーションズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Lumentum Operations LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】カイ‐チョン ホウ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴ クリナー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン エイチ. ミュンデル
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ウエストン
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−126687(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/067908(WO,A1)
【文献】 米国特許第06865316(US,B1)
【文献】 特開2012−014173(JP,A)
【文献】 特開2007−227713(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/123609(WO,A1)
【文献】 特表2011−525706(JP,A)
【文献】 特開2008−293004(JP,A)
【文献】 特開2008−187100(JP,A)
【文献】 特開平08−304857(JP,A)
【文献】 特開2012−114299(JP,A)
【文献】 特開2011−118208(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/128675(WO,A1)
【文献】 特開2008−268747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
G02B 6/00
G02B 6/02−6/036
G02B 6/10
G02B 6/245−6/25
G02B 6/26
G02B 6/42−6/43
G02B 6/46−6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光を案内するためのコアと、前記コアを囲む内部クラッドと、前記内部クラッドを囲む外部クラッドとを有する二重クラッド光ファイバを備え、
前記二重クラッド光ファイバは、前記外部クラッドが取り除かれて、前記内部クラッドの外部表面の露出部分を形成する剥離部分を含み、
前記露出部分は、前記二重クラッド光ファイバに沿って配置される複数の横方向ノッチを含み、光が前記複数の横方向ノッチに当たると前記内部クラッドから漏れることを可能にし、
前記複数の横方向ノッチの各々は、前記コアまでの距離の一部分だけの深さを有し、
前記複数の横方向ノッチの各々は、1ノッチ/cmから1000ノッチ/cmのピッチを有し、
前記複数の横方向ノッチは、少なくとも10個のノッチを含み、
前記複数の横方向ノッチは、前記露出部分の長さに沿って徐々に変化するピッチを有する、クラッド光除去器。
【請求項2】
前記コアは、前記内部クラッドによって案内されるポンプ光によってポンプされる場合に、前記信号光を増幅するためのドーパントを含む、請求項1に記載のクラッド光除去器。
【請求項3】
前記ピッチは、2ノッチ/cmと200ノッチ/cmとの間で変化する、請求項に記載のクラッド光除去器。
【請求項4】
前記複数の横方向ノッチの各々の前記深さが、前記内部クラッドの直径の5%と20%との間であるか、前記複数の横方向ノッチの各々の前記深さが、20マイクロメートルから80マイクロメートルまでの深さであるか、の少なくともいずれか一つである、請求項1に記載のクラッド光除去器。
【請求項5】
前記複数の横方向ノッチの各々の前記深さは、前記露出部分の長さに沿って徐々に変化する、請求項1に記載のクラッド光除去器。
【請求項6】
前記複数の横方向ノッチは、前記露出部分の長さに沿って、かつ、前記露出部分の外周に、間隔を置いて配置される、請求項1に記載のクラッド光除去器。
【請求項7】
前記剥離部分は、少なくとも40mmの長さである、請求項1に記載のクラッド光除去器。
【請求項8】
前記露出部分は、50cmと200cmとの間の曲げ半径を有する曲線状の部分を備える、請求項1に記載のクラッド光除去器。
【請求項9】
前記内部クラッドから漏れた光を吸収し、前記吸収された光によって生じる熱を散逸させるためのヒートシンクをさらに備える、請求項1に記載のクラッド光除去器。
【請求項10】
前記ヒートシンクは、前記内部クラッドから漏れた前記光を捕らえるために、前記剥離部分の周囲に空洞を形成し、前記空洞は、吸収部分と、前記漏れた光を前記吸収部分に向けるための反射部分と、を有し、前記吸収部分は、外部ヒートシンクに熱的に接続される、請求項に記載のクラッド光除去器。
【請求項11】
請求項1に記載のクラッド光除去器と、
第1の端部で二重クラッド光ファイバに結合される増幅器二重クラッド光ファイバ部と、
前記増幅器二重クラッド光ファイバ部の反対側の第2の端部に光学的に結合され、前記増幅器二重クラッド光ファイバ部の前記第2の端部から前記第1の端部までポンプ光を供給して伝搬させるためのポンプ・ダイオードと、
を備える光ファイバ増幅器。
【請求項12】
前記ポンプ・ダイオードは、少なくとも200Wのポンプ定格出力を有し、前記クラッド光除去器は、少なくとも15dBの光除去効率を有する、請求項11に記載の光ファイバ増幅器。
【請求項13】
請求項12に記載の光ファイバ増幅器と、前記光ファイバ増幅器に光学的に結合される発振器と、を備えるファイバ・レーザ。
【請求項14】
請求項1に記載のクラッド光除去器を形成する方法であって、
前記内部クラッドに横方向ノッチを形成するために、レーザ・ビームを前記露出部分の前記内部クラッドの外部表面上に集束させて、前記内部クラッドを局所的に取り除くステップと、
レーザ・ビームの前記収束を、前記露出部分に沿って異なる場所で複数回繰り返すステップと、
を含む方法。
【請求項15】
レーザ・ビームの前記収束を繰り返す間、前記二重クラッド光ファイバを移動させて、結果としてノッチを作製する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
CO2レーザが、前記レーザ・ビームを生成するために用いられ、前記CO2レーザは、数10から数100マイクロ秒までのパルス幅のゲーテッド・モードで動作し、前記レーザ・ビームは、100kW/cm2と200kW/cm2との間の光パワー密度に集束される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記レーザ・ビームは、80マイクロメートルから200マイクロメートルまでの焦点スポットサイズに集束され、前記ノッチの所望の形状を生成するために、前記焦点スポットは成形され、または、前記レーザ・ビームは偏向される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
レーザ・ビームの前記収束を繰り返すステップは、前記二重クラッド光ファイバを長さ方向に変位させるためのコンピュータ制御の移動ステージを用いて、隣接するノッチ間の間隔を自動的に制御するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒートシンクは、前記二重クラッド光ファイバの前記剥離部分に隣接して配置される、請求項に記載のクラッド光除去器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ素子および関連する方法に関し、特にファイバ増幅器およびレーザにおけるクラッド光を取り除く装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバ・レーザは、自由空間レーザなどの他のレーザ形式と比較すると、効率および実用性において著しい利点を提供する、重要な新規な種類のレーザである。二重クラッド・ファイバ(DCF)の出現によって、ファイバ・レーザは、キロワット(kW)出力レベルに拡大された。DCFでは、ポンプ光は比較的太い内部クラッド(典型的には直径が125から600マイクロメートル)内を伝搬し、レーザ光はそれよりずっと細いコア(典型的には直径が5から100マイクロメートル)内を伝搬する。コアは、イッテルビウムなどの希土類元素のイオンがドーピングされ、内部クラッドで囲まれる。内部クラッドは、ファイバ長全体に沿って、レーザ光増幅のためにドーピングしたコアに吸収されるようにポンプ光を案内する。理想的には、レーザの出力側では、内部クラッド内を伝搬することになる光は存在せず、出力レーザ・ビームの全てはコアから生じる。いくつかのファイバ・レーザ・システムでは、コンポーネント間または増幅段間でコア光だけが伝搬することが、同様に望ましい。
【0003】
実際には、ファイバ・レーザまたはDCFをベースとした増幅器の出力は、いくらかのコア光およびいくらかのクラッド光から成る。クラッド光は、残留する吸収されないポンプ光と、例えばコア内の散乱または自発放出によってコアからクラッドへ漏れたいくらかのレーザ光とを含む可能性がある。クラッド光は、それらの1つまたは複数の光源およびレーザ・システムの構成に応じて、発散角の広い範囲および様々な波長の光学ビームを含む可能性がある。クラッド光は多くの応用にとって有害であり、好ましくは、ファイバから取り除くべきであり、または「剥ぎ取る」べきものである。高出力のファイバ光源では、300Wを超えるクラッド光が存在する可能性があり、安全に効率的にこの光を取り除くことは、重要な技術的課題である。典型的には、除去されたクラッド光は熱に変換され、ファイバ・コーティング、またはフェルール、スプライス・プロテクタなどの他のコンポーネントが過熱することを回避するために、配慮しなければならない。光ファイバ・コンポーネントは、限られた動作温度範囲を有するポリマーをしばしば含み、例えばいくつかの一般的な光ファイバのポリマーでは、最大連続動作温度は85°Cより低い。高い光除去効率を得るためには、除去されたクラッド光が再び内部クラッドに入ることを防止しなければならない。さらに、クラッド光を除去するために用いるデバイスは、光損失をもたらしてはならないし、あるいはファイバ・コア内の光伝搬を乱してはならない。
【0004】
ほとんどの従来技術のクラッド光除去器(CLS)は、高指数ポリマー(high index polymer)の薄膜層を用いて、それを、クラッド光を「案内しない」ためにクラッドに適用する。例えば、Vilhelmssonによる米国特許第4,678,273号、Prattによる米国特許第6,865,316号、ならびにFrithによる米国特許第8,027,557号および米国特許第8,229,260号には、クラッド光を除去するための装置が開示されている。それらはクラッドに指数が整合するか、またはクラッドの屈折率より高い屈折率を有する1つまたは複数のクラッド層をクラッドに結合させることで動作する。
【0005】
図1Aに示すように、指数整合クラッド光除去器10Aは、コア19、クラッド12およびコーティング13を有する光ファイバ11を含み、それは光ファイバ11の中間領域14のクラッド12から除去される。高指数ポリマー層15は、中間領域14のクラッド12に適用される。動作時には、クラッド光16は、クラッド12によって案内される。クラッド光16が中間領域14の高指数ポリマー層15に結合されると、図1Aに示すように、クラッド光16はクラッド12の外に結合される。
【0006】
指数整合クラッド光除去器10Aは、効率の良いクラッド光除去を時には達成することができるが、その光パワーのスケーラビリティは、高指数ポリマー層15が処理できる最高温度によって制限され、その温度は典型的には100°Cから150°Cまでの範囲である。高指数層または指数整合層を用いたクラッド光パワーのスケールアップは、困難であり限界がある。それは、クラッド光を除去するために高指数ポリマーを使用すると、除去率を制御することができないか、ほとんどできないからである。したがって、指数整合クラッド光除去器10Aのパワーを扱う能力は、局所的な加熱によって制限される。
【0007】
いくつかの従来技術のシステムでは、ポリマーの屈折率または厚みは、より均一な温度分布を容易にするように選択される。例えば、Meleshkevich他による米国特許第7,839,901号には、温度によって減少する屈折率を有するポリマーコーティングが開示されている。そのポリマーの指数は、それがコーティングされるクラッドに整合している。放出されたクラッド光の吸収によりポリマーが過熱すると、その屈折率は減少し、それによって、クラッドからの光の局所的放出および結果として生じる加熱を制限する。そして、過熱した点の下流のいくつかの場所でクラッド光を放出する。その結果、発熱量はより均一になる。
【0008】
ポリマー・ベースのクラッド除去器の光学的および熱的性質、例えば赤外線放射の吸収、スペクトル依存性、加熱速度および熱損傷しきい値などは、除去することができる最大のクラッド光パワーを約100Wに制限することに寄与する。実用的なファイバ・レーザ・システムでは、クラッド光は、通常、高開口数(NA)の残留ポンプ光と低NAの散乱コア光を含む。低NAの光は、ポリマー・ベースのクラッド光除去器では取り除くのが困難であるが、それは、これらの除去器の除去率が光のNAに非常に敏感だからである。高NAの光は、低NAの光と比較して、非常に短い距離で除去される傾向がある。ポリマー・ベースのクラッド光除去器の熱負荷は、非常に不均一であり、低NAのクラッド光に対して所望の除去率を達成するためには、余分の長さを用いなければならない。
【0009】
Langsethらによる米国特許出願公開第2012/0070115号およびMajidらによるPCT出願の国際公開第2012088267号には、クラッド光をクラッドの外へ散乱させるために、クラッドの粗くした外部表面を有する光ファイバが開示されている。例えば、図1Bに示すように、粗面クラッド光除去器10Bはコア19、クラッド12およびコーティング13を有する光ファイバ11を含み、コーティング13は光ファイバ11の中間領域14のクラッド12から剥離される。クラッド12の外部表面18は、露出した中間領域14で粗くなっている。動作時には、クラッド光16は、クラッド12によって案内される。クラッド光16が粗くなった外部表面18に結合すると、クラッド光16は図1Bに示すようにクラッド12の外に散乱する。
【0010】
この方法の1つの利点は、クラッド除去器がポリマーを含まないようにすることができるということである。都合の悪いことに、大部分のクラッド光はクラッド除去器の上流の部分で除去されるので、除去器には不均一な温度分布が生じる。さらにまた、表面を粗くすることで微細なクラックが発生するおそれがあり、このクラックは時間と共に広がっていき、ファイバが故障する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,678,273号
【特許文献2】米国特許第6,865,316号
【特許文献3】米国特許第8,027,557号
【特許文献4】米国特許第8,229,260号
【特許文献5】米国特許第7,839,901号
【特許文献6】米国特許出願公開第2012/0070115号
【特許文献7】国際公開第2012088267号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高出力ファイバ・レーザのために好適な、製造可能でカスタマイズ可能なクラッド光除去器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のクラッド除去器は、二重クラッド光ファイバの内部クラッドの外部表面に、複数の横方向ノッチまたは溝を含む。有利なことに、ノッチの位置および方向は、クラッド光除去器に沿ってクラッド光の放出が均等になるように選択することができて、放出されるクラッド光によって、より均一な温度分布が可能になる。さらに、クラッド除去器はポリマーを含まないようにすることができ、したがって高い光パワーレベルに拡大することができる。
【0014】
本発明によれば、クラッド光除去器が提供され、クラッド光除去器は、
【0015】
信号光を案内するためのコアと、コアを囲む内部クラッドと、内部クラッドを囲む外部クラッドとを有する二重クラッド光ファイバを備え、
【0016】
光ファイバは、外部クラッドが取り除かれて、内部クラッドの外部表面の露出部分を形成する剥離部分を含み、露出部分は、ファイバに沿って配置される複数の横方向ノッチを含み、光がノッチに当たると内部クラッドから漏れることを可能にし、複数のノッチの各々は、ファイバ・コアまでの距離の一部分だけの深さを有する。
【0017】
クラッド光除去器は、外部クラッドの剥離部分に隣接して配置され、内部クラッドから漏れた光を吸収し、吸収された光によって生じる熱を散逸させるための不透明スクリーンまたはヒートシンクを含むことができる。
【0018】
本発明によれば、光ファイバ増幅器がさらに提供され、光ファイバ増幅器は、クラッド光除去器と、第1の端部でクラッド光除去器の二重クラッド光ファイバに結合される増幅器二重クラッド光ファイバ部と、増幅器二重クラッド光ファイバ部の反対側の第2の端部で内部クラッドに光学的に結合され、増幅器二重クラッド光ファイバ部の第2の端部から第1の端部までポンプ光を供給して伝搬させるためのポンプ・ダイオードと、を備える。
【0019】
本発明の別の態様によれば、クラッド光除去器と、光ファイバ増幅器に光学的に結合する発振器とを含む光ファイバ増幅器を備えるファイバ・レーザがさらに提供される。
【0020】
本発明のさらに別の態様によれば、請求項1のクラッド光除去器を形成する方法がさらに提供され、本方法は、
【0021】
a)外部クラッドの一部を除去して、内部クラッドの露出部分を残すステップと、
【0022】
b)内部クラッドに横方向ノッチを形成するために、レーザ・ビームを露出部分の内部クラッドの外部表面上に集束させて、内部クラッドを局所的に蒸発させ、取り除くステップと、
【0023】
c)露出部分に沿って異なる場所でステップb)を複数回繰り返すステップと、を含む。
【0024】
例示的実施形態は、以下の図面と共に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1A図1Bは従来技術の指数整合クラッド光除去器および粗面クラッド光除去器のそれぞれの側方断面図である。
図2A】本発明の一実施形態によるクラッド光除去器の側方断面図である。
図2B】ノッチ表面で反射し屈折するクラッド光を示す図1Aの拡大図である。
図3図2Aのクラッド光除去器のニートシンクの分解3次元図である。
図4図4A図4B図4C図4Dはそれぞれ1つ、2つ、3つ、および4つの側面上にノッチを有する二重クラッド光ファイバの断面図である。
図5】2側面のノッチおよび3側面のノッチのノッチ数に対する除去効率の実験によるプロットである。
図6】ノッチ深さに対する除去効率の実験によるプロットである。
図7】ノッチ・ピッチに対する除去効率の実験によるプロットである。
図8】ファイバ曲げ半径に対する除去効率の実験によるプロットである。
図9】曲げ半径の関数としての、低NAおよび高NA光の光伝送の実験によるプロットである。
図10】ノッチが均一に分布する場合のクラッド光除去器の長さに対する送信器パワーの計算によるプロットである。
図11】クラッド光除去器の長さに対する除去効率の計算によるプロットである。
図12】様々なノッチ・ピッチとノッチ深さとを有する本発明のクラッド光除去器の側方断面図である。
図13】様々なノッチ・ピッチとノッチ深さとを有する本発明のクラッド光除去器の側方断面図である。
図14図14Aは一定のノッチ・ピッチと深さとを有するクラッド・モード除去器の試作品の測定された表面温度分布である。図14Bは様々なノッチ・ピッチと深さとを有するクラッド・モード除去器の試作品の測定された表面温度分布である。
図15】本発明のクラッド光除去器を含む光ファイバ増幅器の模式図である。
図16図15の光ファイバ増幅器を含むファイバ・レーザの模式図である。
図17】本発明による光ファイバ上にノッチを作るためのシステムの模式的な側面図である。
図18図17のシステムを用いて、図2Aのクラッド・モード除去器を製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本教示が様々な実施形態および実施例と共に記載されるが、本教示がこのような実施形態に限定されることを意図するものではない。反対に、本教示が様々な代替例および均等例を含むことは、当業者には理解できるであろう。
【0027】
図2Aおよび図2Bに示すように、クラッド光除去器20は、信号光23を案内するためのコア22を有する二重クラッド光ファイバ21と、コア22を囲む内部クラッド24と、内部クラッド24を囲む外部クラッド25とを含む。光ファイバ21は、外部クラッド25が取り除かれた剥離部分26を含み、剥離部分26は内部クラッド24の外部表面28の露出部分27を形成する。このように、剥離部分26には、外部クラッド25が存在しない。露出部分27は、内部クラッド24の外部表面28の露出部分27におけるファイバ21に沿って配置される複数の横方向ノッチ29を含み、クラッド光部分30A、30B(図2B)が、ノッチ29に当たってノッチ29の側面31を通って屈折することによって(光部分30A)、あるいは側面31で反射することによって(光部分30B)、内部クラッド24から漏れることを可能にする。本明細書では、「横方向」という用語は、光ファイバ21に対して垂直なノッチ29に限定されるものではない。すなわち、ノッチ29が光ファイバ21に対してある角度を有してもよく、その場合も「横方向」である。複数のノッチ29の各々は、幅wとファイバ・コア22までの距離D(図2B)の一部である深さdとを有する。言い換えれば、各ノッチ29はファイバ・コア22から離れており、またはファイバ・コア22に接触しないか、またはファイバ・コア22内に伸張しない。少なくとも10個のノッチ29、より好ましくは、少なくとも30個のノッチ29を提供することができる。ノッチ29の深さは、例えば内部クラッドの直径の5%と20%との間とすることができ、あるいは20マイクロメートルから80マイクロメートルまでの深さとすることができる。
【0028】
図2Aに示す実施形態では、内部クラッド24から漏れた光部分30A、30Bを吸収するために、そして、吸収された光部分30A、30Bによって生じる熱を散逸させるために、クラッド光除去器20は、外部クラッド25の剥離部分26に隣接して配置される任意のヒートシンク34を含む。そのために、ヒートシンク34は、内部クラッド24から漏れた光部分30A、30Bを捕らえるために、剥離部分26の周囲に空洞35を形成する。好ましくは、空洞35は、吸収部分36と、漏れた光部分30A、30Bを吸収部分36に向けるための反射部分37とを有する。吸収部分36は、外部ヒートシンク38に熱的に接続することができる。ヒートシンク34は、少なくとも10W/m−Kの、より好ましくは、例えばアルミニウムまたは銅などの、少なくとも100W/m−Kを超える高い熱伝導率を有する他の材料から製造することもできる。
【0029】
ヒートシンク34の試作品を、図3に示す。図3のヒートシンク34の吸収部分36および反射部分37は、アルミニウム・ブロックから作られる。空洞35は、吸収部分36において切削加工により作られる。光ファイバ21を案内し、保持するために、溝39が吸収部分36において切削加工により作られる。溝39によって、光ファイバ21がヒートシンク34において確実にわずかに曲げられるが、50cmと200cmとの間の曲げ半径になることが好ましい。曲げは、2つの理由のために成される。第1には、ファイバ21において熱的に引き起こされた応力を軽減するためであり、第2には、後述するように、除去率を改善するためである。吸収部分36は黒色陽極酸化され、一方、反射部分37は研磨されるかまたは白色陽極酸化される。図3のヒートシンク34の寸法は、220mm×32mm×11mmである。剥離部分26を形成するために、ファイバ21の外部クラッド25の、好ましくは少なくとも40mm、より好ましくは少なくとも160mmの部分を除去することができる。160mmの外部クラッド25を取り除く場合には、内部クラッド24の外部表面28の少なくとも140mmの部分は、ノッチ29を形成するために用いることができる。単位長さ当たりのノッチ29の数は、本明細書では「ピッチ」と呼び、1ノッチ/cmから1000ノッチ/cmまで変化することができ、より好ましくは、10ノッチ/cmから500ノッチ/cmまで変化することができる。
【0030】
光ファイバ21は、ファイバ・レーザおよびファイバ光増幅器でゲインを提供するアクティブ・ファイバであってもよいし、またはパッシブ・ファイバ、例えばアクティブ・ファイバに接合される出力ファイバもしくはいかなるレーザによっても用いることができるパワー・デリバリ・ファイバなどであってもよい。アクティブ光ファイバ21では、内部クラッド24により案内されたポンプ光33(図2Aおよび図2B)によってポンプされた場合に、信号光23を増幅するために、コア22は、ドーパント、例えばイッテルビウムおよび/またはエルビウムイオンなどの希土類元素イオンを含む。動作時には、ポンプ光源(図2Aおよび図2Bには示されない)を結合することによって、光ファイバ21は内部クラッド24内にポンプされる。ポンプ光33は、コア22内の希土類元素イオンによって大部分吸収される。希土類元素イオンは、コア22内を伝搬する信号光23を増幅する。通常、ポンプ光33の一部は、本明細書では「残留ポンプ光」と呼ばれ、吸収されないままである。光部分30Aおよび30Bは、主に残留ポンプ光33から生じるが、しかし、コア22から散乱され、または自発放出された信号光23から生じることもあり得る。典型的には、残留ポンプ光33は高NA光であり、散乱した信号光23は低NA光である。クラッド24から逃れる光の量は、クラッド光33の発散およびノッチ29の深さに依存する。低NA光では、漏れた光の一部が内部クラッド24に再び入ることができる。後述するように、ノッチ29のサイズ、入射角およびノッチ29の幾何学的形状、ノッチ29のピッチ、ならびにいくつかの他のパラメータを調整することによって、クラッド光除去率を調整することができる。
【0031】
ノッチ29は、光ファイバ21の複数の側面に形成することができる。図2Aをさらに参照しつつ図4Aから図4Dに示すように、ノッチ29は1つの側面(図4A)、2つの側面(図4B)、3つの側面(図4C)、4つの側面(図4D)などに、露出部分27の外周に間隔を置いて形成することができる。ノッチ29は、露出部分27の長さに沿って、かつ露出部分27の外周に、間隔を置いて配置することができる。さらにまた、ノッチ29は、二重クラッド光ファイバ21のコア22の周りに、螺旋状パターンに配置することができる。
【0032】
高出力ファイバ・レーザの応用例では、クラッド光除去器20に沿ったクラッド光除去率の包括的な制御を有することは、非常に望ましい。「除去率」は、内部クラッド24の単位長さ当たりのクラッド光33の光パワー損失、例えば単位長さ1mm当たりのdB単位の光パワー損失と定義される。所望の除去率は、熱管理要件、クラッド・モード除去器20の長さの制約、および他の材料特性の制約に基づいて選択される。
【0033】
除去率は、光ファイバ21のノッチ29が形成された側面の数によって変化し得る。典型的には側面の数が増加するにつれて除去率は高くなるが、これは、クラッド24に対して、光を外に散乱させる漏出点(escaping points)をより多く提供するからである。また除去率は、ノッチ29の密度および深さdによっても増加する。
【0034】
ノッチ29の総数は、除去効率に影響を与える。「除去効率」は、本明細書では、クラッド光除去器20を伝搬した後の総光パワー損失として定義される。異なる数のノッチ29およびノッチ29が配置される異なる数の側面を有するクラッド・モード除去器20の試作品を用いて、除去効率を測定した。図5に示すように、外側の(ポリマー)クラッドを剥ぎ取ると直径400マイクロメートルとなる二重クラッド溶融石英ファイバに、深さ36マイクロメートルのノッチ29(d=36マイクロメートル)を形成した。ノッチ29の総数が増加するにつれて、除去効率は一般に増加する。図5に示す除去効率は、2側面のノッチ(図4B)と比較すると、3側面のノッチ(図4C)の方が約3〜4dB高い。
【0035】
除去率および除去効率は、幾何学的形状、例えばノッチ29の幅wおよび深さd(図2B)にも依存するので、したがって、これは除去効率を制御するための別の工学自由度を提供する。ノッチ29の深さdは、ファイバ21の引張り強度を維持し、ノッチ29によるコア22の微細な屈曲を少なくするために、通常、ファイバ21の直径の5%と20%との間に保たれる。図6に示すように、側面31の数、ノッチ29の数、およびノッチ29間の距離などの他のパラメータは同じにして、除去効率をノッチ29の深さdの関数として測定した。深さdが30マイクロメートルから80マイクロメートルまで増加するにつれて、除去効率が7dBより大きく変化することが分かる。
【0036】
除去率および/または除去効率を最適化する別の方法は、本明細書で「ピッチ」と呼ばれる、隣接するノッチ29間の距離を変化させることであり、そうすることで、漏れなかった光の伝搬がノッチ29の次の組に到達することができる。図7に、除去効率を、ピッチ・パラメータの関数として示す。ピッチが400から1800マイクロメートルまで変化するにつれて、除去効率は約9dB変化する。
【0037】
また、除去率および除去効率は、クラッド・モード除去器20の露出部分27の曲げにも敏感である。露出部分27の曲げが増大するにつれて、ノッチ29の表面に対する入射角は増大し、したがって、内部クラッド24に戻って結合することになる光の量が減少する。その結果、図8に示すように、特に低NA光では、個々のノッチ29から漏れる光の量が増加する。光クラッド除去器20の低NA光を除去するための能力は、非常に重要である。なぜなら、それは低NA光と高NA光との除去率の差を狭めることができ、ヒートシンク34の熱分布を制御することがより容易になるからである。曲げの影響の一例を図9に示すが、これは光ファイバ21が半径35cmまで適度に曲げられた場合に、低NA光と高NA光との除去率の差が非常に小さくなることを示す。
【0038】
ノッチ29の個数および深さd、ノッチ・ピッチ、ならびに光ファイバ21の曲げ半径に対する除去率および除去効率の依存性によって、特定のレーザ・システムにおける様々なクラッド光除去要件、例えばパワー処理能力、冷却要件、材料の制約、デバイスのフットプリントの要件ならびに他の制約および要件などに適応することができる。したがって、クラッド光除去器20の1つの利点は、熱分布を非常に柔軟に制御できることである。剥離部分26の始まりまたは上流では、内部クラッド24から漏れる光部分30A、30Bの光パワー密度を制限するために、非常に低い除去率を有することが一般的には好ましい。剥離部分26の下流では、残留クラッド・モード光をきれいにするために、除去率を増加させることが望ましい。
【0039】
内部クラッド24の所与の点で散逸する熱量は、残留するクラッド光パワーおよび除去率により算出することができる。高指数ポリマーを用いる大部分の従来のクラッド光除去器がそうであるように、除去率が光ファイバの長さに沿って一定である場合には、熱負荷はデバイスの始まりでは非常に高く、デバイスに沿って指数関数的に減少する。所望の除去パワーが上がるにつれて、この特性によってデバイスの始まりでは非常に高い温度になり、それによって、デバイスが散逸させることができる全パワーの量が制限される。
【0040】
クラッド・モード除去器20の熱放散を最適化するためには、単位長さ当たりの所望の散逸パワーを知ることが必要であり、それは、全クラッド光パワーの量、所望のデバイスのフットプリントもしくはクラッド・モード除去器20の長さ、またはヒートシンク34が処理できる最大熱密度によって決定される。それから、クラッド・モード除去器20に沿って所望の局所除去率を算出することができる。ノッチ29のサイズ、ピッチ、および側面の数の関数としてのノッチ29当たりの除去率に基づいて、所望の除去率を達成するように、ノッチ・ピッチまたはノッチ・サイズを調整することができる。
【0041】
ここで図10図11図12、および図13を参照し、さらに図2Aを参照して、一定の除去率において散逸されるクラッド光パワーを図10に示す。送信された光パワーは、クラッド光除去器20(図2A)に沿って、長さと共にほぼ直線的に減少する。クラッド・モード除去器20に沿った熱分布を均等にするためには、図11に示したように、剥離部分26の始まりでは除去率をより低くしなければならない。剥離部分26の始まりで除去率を減少させるためには、図12のクラッド・モード除去器20Aに示すように、剥離部分26の始まりでノッチ密度を減少させるか、または図13のクラッド・モード除去器20Bに示すように、剥離部分26の始まりでノッチ深さdを減少させるか、または剥離部分26の始まりでノッチ密度とノッチ深さdとの両方を減少させることが必要となる。好ましくは、図12のクラッド光除去器20Aのノッチ・ピッチは、図12および図13で左から右に進むにつれて、2ノッチ/cmから200ノッチ/cmまで徐々に増加し、より好ましくは、5ノッチ/cmから20ノッチ/cmまで徐々に増加している。
【0042】
図2Aのクラッド・モード除去器20、図12のクラッド・モード除去器20Aおよび図13のクラッド・モード除去器20Bの、除去されたクラッド光30A、30Bによる熱分布を均等にする能力を実証するために、2つの試作品のクラッド・モード除去器を製作した。図14Aを参照して、ノッチ29の深さdおよび間隔(ピッチ)が一定の場合のヒートシンク34の熱分布を示す。大部分の熱がヒートシンク34の左側の始まりで散逸されることが分かる。除去率がデバイスに沿って一定である従来技術のクラッド・モード除去器においても、このタイプの熱分布が一般的である。ここで図14Bを参照して、ノッチ29が様々な深さdおよび間隔(ピッチ)をもつ場合のヒートシンク34の熱分布を示す。ヒートシンク34の温度プロフィールはより均一であり、ヒートシンク34に沿ってより分散した熱負荷を示す。ノッチ29の様々なサイズおよび間隔の利点は、ヒートシンク34の温度上昇によって定量化することができる。図14Bの試作品デバイスでは、ヒートシンクの温度上昇は、約450Wの除去された全パワーに対してわずか34度Cであり、それは、同じ約450Wの除去されたパワーレベルの非分散熱負荷クラッド・モード除去(図14A)における温度上昇の半分だけである。
【0043】
図2Aのクラッド・モード除去器20の応用例について、ここで考慮する。図15に示すように、光ファイバ増幅器150は、クラッド光除去器20および増幅器二重クラッド光ファイバ部159を含み、それは、増幅器二重クラッド光ファイバ部159の第1の端部151で、クラッド光除去器20の二重クラッド光ファイバ21に結合される。ポンプ・ダイオード153は、増幅器二重クラッド光ファイバ部159の反対側の第2の端部152に、例えば、レンズ155およびダイクロイック・ミラー156を介して光学的に結合される。動作時には、ポンプ・ダイオード153は、破線で示すポンプ光154を生成し、それは増幅器二重クラッド光ファイバ部159の第2の端部152から第1の端部151まで伝搬するように、増幅器二重クラッド光ファイバ部159に結合される。ダイクロイック・ミラー156は、ポンプ波長で光を反射するが、信号波長で光を透過する。ポンプ光154が増幅器二重クラッド光ファイバ部159のドーピングしたコア162に吸収されると、入力光信号157が増幅され、実線で示す出力光信号158またはレーザ光158がダイクロイック・ミラー156を介して増幅器から出力する。クラッド光除去器20は、増幅器二重クラッド光ファイバ部159のドーピングしたコア162に吸収されなかった残留ポンプ光154の大部分を取り除く。
【0044】
クラッド・モード除去器20は、例えば、増幅器二重クラッド光ファイバ部159に接合される、ドーピングしていない二重クラッド・ファイバ部を含むことができるか、または、増幅器二重クラッド光ファイバ部159を含む同じアクティブ(ドーピングした)二重クラッド光ファイバの別の部分を含むことができる。本発明の一実施形態では、クラッド光除去器20は、少なくとも200Wのポンプ・ダイオード153の残留光パワーレベルで、少なくとも15dBの光除去効率を有することができる。
【0045】
図15をさらに参照しつつ図16に示すように、ファイバ・レーザ160は、光ファイバ増幅器150と、入力光信号157を生成するための、光ファイバ増幅器150に光学的に結合される発振器161とを含む。クラッド光除去器20の機能は、発振器161の過熱、損傷または不安定化を防止するために、内部クラッド24から可能な限り多くのクラッド光を取り除くことである。
【0046】
クラッド光除去器20は、様々な他の構成で、例えば、(1)信号157の伝搬方向がポンプの伝搬方向と同じ方向にあり、クラッド光除去器20は、アクティブ・ファイバの出力端の近傍に配置されるか、またはアクティブ・ファイバに接合されたパッシブ・デリバリ・ファイバに配置され、このようにしてクラッドのポンプおよび信号光の両方を除去する、ファイバ増幅器(図示せず)において、(2)コア内の光信号157が反射して、光信号157がアクティブ・ファイバを2回通過する複光路ファイバ増幅器(図示せず)において、(3)アクティブ・ファイバおよび2つの反射器により形成されるファイバ発振器であって、クラッド光除去器20は発振器のポンプから反対側の端部に配置される、ファイバ発振器(図示せず)において、あるいは、(4)例えばプラグ接続可能なコネクタによって、または、ファイバ接合によって、レーザ・システムに接続することができる自律的パワー・デリバリ・ファイバ(図示せず)において、用いることもできる。
【0047】
本発明によれば、クラッド光除去器20は、図17に示す製造システム170を用いたレーザ材料アブレーションによって、好適に製造される。製造システム170は、COレーザ171と、デリバリ・ファイバ173および処理ヘッド174を含むビーム・デリバリ・システム172と、電動式の並進/回転ステージ175と、COレーザ171および並進/回転ステージ175を制御するように構成されるコンピュータ176とを含む。図2Aおよび図17をさらに参照しつつ図18に示すように、クラッド光除去器20を製造する方法180は、外部クラッド25の部分26を取り除いて、内部クラッド24の外部表面28の部分27を露出させるステップ181を含む。ついで、ステップ182で、除去されたファイバ21は、電動式の並進/回転ステージ175上に置かれ、処理ヘッド174はC02レーザ171の出力レーザ・ビーム177を集束させる。出力レーザ・ビーム177は、露出部分27の外部表面28上の球形または楕円形の焦点スポット178に集束させることができる。そのために、処理ヘッド174は、図示していないが、球状/メニスカスおよび/または円柱レンズの組合せを含むことができる。COレーザ171は、好ましくは数10から数100マイクロ秒までのゲーテッド・モード(gated mode)で動作し、集束したレーザ・ビームのピーク強度は、パルス幅に応じて、内部クラッド材料の損傷しきい値より上になるように、例えば溶融石英では100kW/cmと200kW/cmとの間で選択される。焦点スポット178のサイズは、80マイクロメートルと200マイクロメートルとの間とすることができる。ノッチ29の所望の形状を生成するために、焦点スポット178を成形することができ、および/または、レーザ・ビーム177を偏向することができる。
【0048】
1つのノッチ29がパルスの1つまたは複数のショットによって作られた後、ステップ183で、並進/回転ステージ175を用いて矢印179で示すようにファイバ21を移動させるか、またはレーザ・ビーム177を動かすことによって、次の位置上にレーザ・ビーム177を集束させて、結果としてノッチ29を作製する。それから、ステップ184で、集束およびアブレーションのステップ182が繰り返され、ファイバ21は、次の位置へ移動し、以下同様である。上述したように、所望の除去効率および/または熱負荷分布を達成するために、隣接するノッチ29間の間隔は、同一であってもよいし、または変化してもよく、光ファイバ21を長さ方向に変位させるために、手動で、またはコンピュータ176および並進/回転ステージ175によって自動的に制御される。COレーザ171および/または集束パラメータを変化させることによって、ノッチ29の幅wおよび深さdを制御する。集束パラメータは、すなわち、各ノッチ29に対するショット数、ピークパワー、レーザ・パルス幅、レーザ時間的波形、レーザ焦点強度、レーザ焦点スポットサイズ、レーザ焦点178に対するファイバ21の位置などである。
【0049】
製造システム170は、既存のレーザ・システムのいかなるファイバであっても、付加的な接合を必要とせずに、クラッド光除去器20を作製するために用いることができる。これは有利なことであり、なぜなら、付加的な接合によって、コア光損失および出力レーザ・ビーム品質の劣化をさらに招くおそれがあるからである。
【0050】
並進/回転ステージ175を用いてファイバ21を回転させるか、または多重レーザ・ビーム(図示せず)を用いることによって、図4Aから図4Dに示すように、ノッチ29をファイバ21の1つまたは複数の側面に作ることができる。ノッチ29が作られる側面の数は、所望の除去効率および/または他の要件によって決定される。ノッチを形成するために、他のレーザ・タイプ、例えばUV(紫外)レーザを用いてもよい。
【0051】
図17および図18をさらに参照しつつ、再び図2Aおよび図2Bを参照すると、COレーザ・システム170(図17)および方法180(図18)を用いて製造されたクラッド・モード除去器20は、500Wまでの内部クラッド光33を除去することが実証され、溶融石英内部クラッド24については、典型的には、取り除かれた光パワーの1ワット(W)当たり約0.06°Cであり、ポリマー外部クラッド25については、典型的には、約0.03°C/Wである非常に低い温度係数を有する。わずか40ミリメートルの長さのクラッド・モード除去器20は、0.08未満の低いNAクラッド光部分30A、30Bに対して、500Wのパワーレベルで、約19dBの減衰を生じさせることができる。典型的には、0.08未満の低いNAクラッド光部分30A、30Bに対して、少なくとも16〜23dBの除去効率が達成され、時には32dBまでの効率が達成された。
【0052】
クラッド光除去器20の別の利点は、内部クラッド24の表面28を広範囲にわたって変形させても、光ファイバ21の引張り強度の低下がほとんど、あるいは全く観察されなかったということである。全ての試作品デバイスは曲げ試験でテストされ、全てが50kPSIの等価な引張り強度をパスした。さらに、パッケージされた試作品クラッド光除去器20は、工業標準の25Gの衝撃試験および5Gのサイン・スイープ振動試験にパスした。
【0053】
図18のレーザ・ノッチング製造方法180は、光ファイバ21のコア22の屈折率の変化を生じさせる可能性があるので、このようなデバイスが挿入損失またはモード品質の劣化を招くおそれがあり得る。この影響を緩和する1つの方法は、ノッチ29の深さdを小さくするか、あるいはコア光23の基本モードを高次モードに結合させることになる共振周波数とは異なるノッチ・ピッチを選択することである。これらの要因は、好ましくはノッチ・ピッチを選択する際に考慮される。コア光パワーの損失またはモード品質の劣化が、クラッド光除去器20の試作品では、全く観察されなかったことが実験的に確認された。
【0054】
本発明の1つまたは複数の実施形態についての上記の記述は、図示および説明のために提示したものである。それは、網羅的であることを意図するものではなく、あるいは本発明を開示される正確な形式に限定することを意図するものでもない。上記の教示を考慮して、多くの変更および変形が可能である。この詳細な説明によってではなく、むしろ本明細書に添付した特許請求の範囲によって、本発明の範囲を限定することを意図している。
【符号の説明】
【0055】
20 クラッド光除去器、クラッド・モード除去器、光クラッド除去器
20A、20B クラッド・モード除去器
21 二重クラッド光ファイバ
22 コア
23 信号光
24 内部クラッド
25 外部クラッド
26 剥離部分
27 露出部分
28 外部表面
29 横方向ノッチ
30A、30B クラッド光部分
31 側面
33 ポンプ光
34 ヒートシンク
35 空洞
36 吸収部分
37 反射部分
38 外部ヒートシンク
39 溝
150 光ファイバ増幅器
151 第1の端部
152 第2の端部
153 ポンプ・ダイオード
154 ポンプ光
155 レンズ
156 ダイクロイック・ミラー
157 入力光信号
158 出力光信号
159 増幅器二重クラッド光ファイバ部
160 ファイバ・レーザ
161 発振器
162 コア
170 製造システム
171 COレーザ
172 ビーム・デリバリ・システム
173 デリバリ・ファイバ
174 処理ヘッド
175 並進/回転ステージ
176 コンピュータ
177 レーザ・ビーム
178 焦点スポット
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18