(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蒸気タービンなどの大型の回転機械では、大型の回転軸を支持する軸受として、一般的に、調心性と振動安定性に優れたティルティングパッド型ジャーナル軸受が使用されている。そして、回転軸は、重力方向である下方に撓むことから、回転軸の荷重を下方に配置された2個のパッドにより分担し、高面圧化を図ることを目的として、ロードビトゥイーン型のティルティングパッド型ジャーナル軸受装置(LBP軸受)が使用されている。
【0006】
ところが、蒸気タービンでは、タービンへの蒸気挿入時に、周方向に設けられたノズルごとに弁の開閉度を変更することで、各ノズルからの蒸気流入量を調節する部分噴射という手法が用いられることがある。すると、各方向からの蒸気流入量の違いにより回転軸に作用する流体力に偏りが生じるため、回転軸を支持する軸受に対して作用する軸受荷重の大きさと方向が変化する。即ち、回転軸の荷重を下方に配置された2個のパッドにより分担するのではなく、一方のパッドだけで分担することとなる。蒸気タービンの運転中に、回転軸の荷重を支持するパッドの形態が変化すると、軸受動特性が変化することで回転軸の安定性に影響を与え、回転軸に低周波振動(不安定振動)が発生し、装置全体の信頼性が低下してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、回転軸に作用する荷重に偏りが生じても回転軸を安定して支持することで振動の発生を抑制して信頼性の向上を図るジャーナル軸受及び蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明のジャーナル軸受は、円筒形状をなす軸受ケースと、前記軸受ケースの内面に周方向に所定隙間を空けて揺動自在に支持される複数の軸受パッドと、前記軸受ケースに対して前記複数の軸受パッドの全てまたは一部を周方向に移動可能なパッド移動装置と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
従って、パッド移動装置により軸受ケースに対して軸受パッドを周方向に移動することができることから、回転軸に作用する荷重に偏りが生じても、その荷重が作用する方向に軸受パッドを移動することで、荷重を適正に受けて回転軸を安定して支持することができ、その結果、振動の発生を抑制して信頼性の向上を図ることができる。
【0010】
本発明のジャーナル軸受では、前記パッド移動装置は、前記軸受ケースの内面に周方向に沿って移動自在に支持されると共に前記軸受パッドを揺動自在に支持する移動体と、前記移動体を前記軸受ケースの周方向における所定の位置に位置決め可能な位置決め機構を有することを特徴としている。
【0011】
従って、軸受パッドが揺動自在に支持された移動体を軸受ケースの内面に周方向に沿って所定の位置に移動し、位置決め機構により移動体をこの所定の位置に位置決めすることができ、軸受パッドの移動作業及び位置決め作業が容易となり、作業性を向上することができる。
【0012】
本発明のジャーナル軸受では、前記位置決め機構は、前記軸受ケースの内面に周方向に沿って移動自在に支持されると共に所定の位置に保持可能な複数の移動ブロックを有することを特徴としている。
【0013】
従って、軸受パッドが揺動自在に支持された移動体を軸受ケースの内面に周方向に沿って所定の位置に移動し、移動ブロックを軸受パッドの位置に応じて適正位置に移動することで、軸受パッドを容易に所定の位置に位置決めすることができる。
【0014】
本発明のジャーナル軸受では、前記軸受ケースは、内面に周方向に沿って前記移動体及び前記移動ブロックを移動自在に支持するレール部が設けられることを特徴としている。
【0015】
従って、移動体及び移動ブロックをレール部に沿って移動することで、簡単な構成で、軸受パッドを所定位置に容易に移動することができる。
【0016】
本発明のジャーナル軸受では、前記軸受ケースは、半円形状をなす上ケース及び下ケースがフランジ部を介して締結されて構成され、前記移動体と前記移動ブロックは、前記下ケースに移動自在に支持されることを特徴としている。
【0017】
従って、下ケースだけに移動体と移動ブロックを移動自在に支持することで、回転軸の自重により作用する荷重に対して軸受パッドを適正位置に移動することができ、構造の複雑化を抑制することができる。
【0018】
本発明のジャーナル軸受では、前記移動体及び前記移動ブロックは、前記上ケースと前記下ケースが締結されることで、所定の位置に保持されることを特徴としている。
【0019】
従って、上ケースと下ケースを締結することで、移動体及び移動ブロックの移動を阻止して所定の位置に保持することができ、構造の簡素化に寄与することができる。
【0020】
本発明のジャーナル軸受では、前記位置決め機構は、前記移動体の移動方向の両側から油圧を作用させることができる油圧装置を有することを特徴としている。
【0021】
従って、油圧装置により軸受パッドが揺動自在に支持された移動体を軸受ケースの内面に周方向に沿って所定の位置に移動することができ、軸受パッドを容易に所定の位置に位置決めすることができる。
【0022】
本発明のジャーナル軸受では、軸受クリアランス内における軸位置と軸振動を検出するセンサと、前記センサの検出結果に基づいて前記油圧装置を制御する制御装置とが設けられることを特徴としている。
【0023】
従って、制御装置は、センサの検出結果に基づいて油圧装置を制御して軸受パッドを所定の位置に位置決めすることができ、オンラインで軸受パッドを容易に所定の位置に位置決めすることができる。
【0024】
また、本発明の蒸気タービンは、ケーシングと、前記ケーシング内に回転自在に支持された回転軸と、前記回転軸の外周部に周方向に所定間隔をあけて固定される複数の動翼と、前記ケーシングに固定される複数の静翼と、前記ジャーナル軸受と、を有することを特徴とするものである。
【0025】
従って、パッド移動装置により軸受ケースに対して軸受パッドを周方向に移動することができることから、回転軸に作用する蒸気に偏りが生じても、適正な方向に軸受パッドを移動することで、蒸気の圧力を適正に受けて回転軸を安定して支持することができ、その結果、振動の発生を抑制して信頼性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のジャーナル軸受及び蒸気タービンによれば、軸受ケースに対して軸受パッドを周方向に移動可能なパッド移動装置を設けるので、回転軸に作用する荷重に偏りが生じても、その荷重が作用する方向に軸受パッドを移動することで、荷重を適正に受けて回転軸を安定して支持することができ、その結果、振動の発生を抑制して信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るジャーナル軸受及び蒸気タービンの好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0029】
[第1実施形態]
図9は、蒸気タービンを表す概略構成図である。
【0030】
第1実施形態において、
図9に示すように、蒸気タービン10は、ケーシング11と、ケーシング11内に回転自在に支持されたロータ(回転軸)12と、ロータ12の外周部に周方向に所定間隔をあけて固定される複数の動翼体13と、ケーシング11に固定される複数の静翼体14と、ロータ12を回転自在に支持するジャーナル軸受15及びスラスト軸受16とを有している。
【0031】
ケーシング11は、中空形状をなし、内部にロータ12が配置されている。このロータ12は、軸方向の各端部がジャーナル軸受15により回転自在に支持されている。このロータ12は、ケーシング11の内部にて、軸方向に沿って所定間隔で複数の動翼体13が固定されている。この動翼体13は、ロータ12の外周部に固定されたロータディスク21と、このロータディスク21の外周部に周方向の所定間隔で固定される複数の動翼22とから構成されている。そして、この動翼体13は、ロータ12における軸方向に所定間隔で複数段にわたって設けられている。
【0032】
また、ケーシング11は、この複数段の動翼体13の間に位置して、複数段の静翼体14が固定されている。静翼体14は、ケーシング11の内周部に周方向の所定間隔で固定される複数の静翼23と、複数の静翼23を連結するリング形状をなすシュラウド24とから構成されている。そして、この静翼体14は、ロータ12における軸方向に所定間隔で複数段にわたって設けられている。
【0033】
そして、ケーシング11は、この動翼体13及び静翼体14が配設される通路に蒸気通路25が形成されている。この蒸気通路25は、蒸気供給口26と蒸気排出口27が設けられている。蒸気供給口26は、ケーシング11に流入する蒸気の量と圧力を調整する調整弁28が設けられている。この調整弁28は、ケーシング11の内部に複数個取り付けられており、それぞれ図示しないボイラから蒸気Sが流入する調整弁室29と、弁体30と、弁座31とを有し、弁体30が弁座31から離れると蒸気供給口26が開放し、蒸気室32を介して蒸気Sがケーシング11の蒸気通路25に流入することができる。
【0034】
従って、蒸気Sがこの蒸気供給口26から蒸気通路25に供給されると、この蒸気Sが複数段の動翼体13と静翼体14を通過することで、各動翼体13を介してロータ12が駆動回転する。即ち、蒸気Sの圧力エネルギーが速度エネルギーに変換される。このロータ12は、図示しない発電機が連結されており、この発電機が駆動することで発電される。一方、動翼体13を駆動した蒸気Sは、排気ディフューザ(図示略)で静圧に変換されてから蒸気排出口27から大気に放出される。
【0035】
ここで、ロータ12を回転自在に支持するジャーナル軸受15について詳細に説明する。
図1は、第1実施形態のジャーナル軸受を表す断面図、
図2は、
図1のII−II断面図、
図3は、
図1のIII−III断面図、
図4は、第1実施形態のジャーナル軸受の作用を表す断面図である。
【0036】
ジャーナル軸受15は、
図1及び
図2に示すように、ロードビトゥイーン型のティルティングパッド型ジャーナル軸受(LBP軸受)である。このジャーナル軸受15は、軸受ケース41と、複数(本実施形態では、4個)の軸受パッド42,43と、パッド移動装置44とを有している。
【0037】
軸受ケース41は、円筒形状をなしている。この軸受ケース41は、半円形状(U字形状)をなす上ケース51及び下ケース52から構成されている。上ケース51は、半円形状の上枠部51aと、一対のフランジ部51bとから構成されている。下ケース52は、半円形状の下枠部52aと、一対のフランジ部52bとから構成されている。軸受ケース41は、上ケース51及び下ケース52における各フランジ部51b,52bが密着した状態で、締結ボルト53及びナット54により締結されて構成されている。
【0038】
上ケース51と下ケース52は、外径寸法は同径であるが、内径寸法が相違している。即ち、上ケース51の内径寸法に対して、下ケース52の内径寸法が大きく設定されている。そして、下ケース52は、内面に周方向に沿って逆T字断面形状をなすレール部55が形成され、各フランジ部52bに開放している。移動体56は、下ケース52の内周面に沿った湾曲形状をなし、下部に逆T字断面形状をなすガイド部57が形成されている。そして、移動体56は、ガイド部57が下ケース52のレール部55に移動自在に嵌合している。移動ブロック58は、下ケース52の内周面に沿った形状をなし、下部に逆T字断面形状をなすガイド部59が形成されている。そして、移動ブロック58は、ガイド部59が下ケース52のレール部55に移動自在に嵌合している。ここで、移動体56と移動ブロック58は、下ケース52の周方向における長さが相違するものの、同じ寸法の断面形状となっている。
【0039】
下ケース52は、内周部に形成されたレール部55に移動体56が移動自在に支持されると共に、移動体56の両側に同数ずつ複数(本実施形態では、8個)の移動ブロック58が移動自在に支持されている。そして、上ケース51と下ケース52が締結されることで、上ケース51における各フランジ部51bの端面が下ケース52に支持された移動ブロック58に当接することで、移動体56及び移動ブロック58の移動が阻止され、移動体56が所定の位置に支持される。また、軸受ケース41は、下ケース52に移動体56と複数の移動ブロック58が支持されることで、上ケース51の内径と下ケース52(移動体56及び移動ブロック58)の内径とが同径となる。
【0040】
上ケース51は、内周面に周方向に所定隙間を空けて複数(本実施形態では、2個)の軸受パッド42がピボット61により揺動自在に支持されている。一方、下ケース52は、移動体56の内周面に周方向に所定隙間を空けて複数(本実施形態では、2個)の軸受パッド43がピボット62により揺動自在に支持されている。そのため、複数(本実施形態では、4個)の軸受パッド42,43は、軸受ケース41の内面に周方向に所定隙間(好ましくは、等間隔)で配置され、ピボット61,62により揺動自在に支持されることとなる。なお、ピボット61,62は、ロータ12と並行をなしている。4個の軸受パッド42,43は、内側にロータ12を摺動自在に支持する湾曲した支持面42a,43aを有している。
【0041】
なお、移動体56を軸受ケース41(下ケース52)の周方向における所定の位置に位置決め可能な位置決め機構は、複数の移動ブロック58及び上ケース51(フランジ部51bの端面)により構成される。また、軸受ケース41に対して軸受パッド43を周方向に移動可能なパッド移動装置44は、下ケース52の内面に周方向に沿って移動自在に支持されると共に軸受パッド43を揺動自在に支持する移動体56により構成される。
【0042】
このように構成されたジャーナル軸受15は、複数の軸受パッド42,43が回転軸12を回転自在に支持している。ところで、上述した蒸気タービン10では、蒸気Sを蒸気通路25に挿入する蒸気供給口26が、ケーシング11における周方向の異なる位置に複数設けられている。そして、調整弁28の開閉動作を確認するために、蒸気Sを異なる蒸気供給口26から蒸気通路25に挿入することが行われる。このとき、回転軸12に対して異なる方向からの蒸気流入量の違いにより回転軸12に作用する流体力に偏りが生じるため、回転軸12を支持するジャーナル軸受15に対して作用する軸受荷重の大きさと方向が変化する。
【0043】
図5は、通常運転時における回転軸から軸受に作用する圧力分布を表す説明図、
図6は、蒸気部分挿入時における回転軸から軸受に作用する圧力分布を表す説明図、
図7は、通常運転時における回転軸の振動スペクトルの一例を表すグラフ、
図8は、異常振動(低周波振動)発生時の回転軸の振動スペクトルの一例を表すグラフである。
【0044】
図5に示すように、回転軸001を支持する従来のジャーナル軸受002は、軸受ケース003と、ピボット004により揺動自在に支持される複数の軸受パッド005とを有している。回転軸001は、重力方向に撓み、蒸気S1が上方から供給されると、ジャーナル軸受002の内に充填された潤滑油には、鉛直方向の下方に向けた圧力分布F01が発生する。この場合、ジャーナル軸受002がビトゥイーン型のパッド型ジャーナル軸受であることから、回転軸001は、下方の2個の軸受パッド005により均等な荷重f01,f02を分担している。
【0045】
ところが、
図6に示すように、回転軸001に対して鉛直方向に対して斜め方向から蒸気S2が供給されると、ジャーナル軸受002の内に充填された潤滑油には、鉛直方向に対して斜め方向に向けた圧力分布F02が発生する。この場合、ジャーナル軸受002がビトゥイーン型のパッド型ジャーナル軸受であることから、回転軸001は、下方の2個の軸受パッド005により荷重f01,f02を分担するものの、一方の荷重f01に対して他方の荷重f02が著しく小さくなる。すると、ジャーナル軸受002に作用する軸受荷重の大きさと方向が変化してしまい、1個の軸受パッド005のみで軸荷重を支えることになる。
【0046】
蒸気タービン10の運転中に、ジャーナル軸受002における軸受動特性が変化すると、回転軸001の安定性に悪影響を与え、回転軸001に低周波振動(不安定振動)が発生し、装置全体の信頼性へ影響する可能性がある。即ち、
図7に示すように、蒸気タービン10が正常運転しているとき、周波数が回転速度成分N,2Nにあるときに振幅が大きくなり、低周波数振動が発生する。ところが、
図8に示すように、蒸気タービン10が蒸気部分挿入を行うように運転しているとき、回転速度成分Nが支配的に軸受荷重の大きさや方向が変わり、軸受油膜特性が変化する。すると、回転軸001における軸系の減衰が失われ、回転速度成分Nよりも低い振動成分(主に、軸の固有値)が卓越する低周波振動が発生する。
【0047】
そのため、本実施形態のジャーナル軸受15は、
図1に示すように、軸受ケース41に対して軸受パッド43を周方向に移動可能とするパッド移動装置44が設けられている。即ち、蒸気タービン10が正常運転しているとき、回転軸12は、重力方向に撓み、蒸気S1が上方から供給されると、ジャーナル軸受15の内に充填された潤滑油には、鉛直方向の下方に向けた圧力分布Fが発生する。この場合、ジャーナル軸受15がビトゥイーン型のパッド型ジャーナル軸受であることから、ジャーナル軸受15は、下方の2個の軸受パッド43により回転軸12の荷重を均等に分担することができる。
【0048】
一方、
図4に示すように、蒸気タービン10が蒸気部分挿入を行うように運転しているとき、回転軸12に対して鉛直方向に対して斜め方向から蒸気S2が供給されると、ジャーナル軸受15の内に充填された潤滑油には、鉛直方向に対して斜め方向に向けた圧力分布Fが発生する。このとき、パッド移動装置44により軸受ケース41に対して軸受パッド43を周方向に移動する。
【0049】
即ち、蒸気タービン10を停止し、締結ボルト53を弛緩して軸受ケース41の上ケース51を取外し、クレーンなどにより回転軸12を吊上げる。そして、
図4に示すように、一方側(
図4の右側)の2個の移動ブロック58を抜き取り、他方側(
図4の左側)にこの2個の移動ブロック58を挿入する。すると、下ケース52は、一方側が6個の移動ブロック58となり、他方側が2個の移動ブロック58となることから、移動体56が一方側へ移動し、2個の軸受パッド43も同方向に移動する。その後、クレーンなどにより回転軸12を吊下ろし、下ケース52に上ケース51を装着し、締結ボルト53により締結する。
【0050】
そのため、この状態で蒸気タービン10を運転すると、回転軸12に対して鉛直方向に対して斜め方向から蒸気S2が供給され、鉛直方向に対して斜め方向に向けた圧力分布Fが発生しても、軸受パッド43が適正位置に移動していることから、蒸気タービン10が正常運転しているときと同様に、ジャーナル軸受15は、下方の2個の軸受パッド43により回転軸12の荷重を均等に分担することができる。また、通常運転時でも、蒸気部分送入のように、軸受荷重が変化する場合であっても、どちらの場合でも安定して運転を行うことができるような位置に軸受パッド43を移動することができる。
【0051】
このように第1実施形態のジャーナル軸受にあっては、円筒形状をなす軸受ケース41と、軸受ケース41の内面に周方向に所定隙間を空けて揺動自在に支持される複数の軸受パッド42,43と、軸受ケース41に対して一部の軸受パッド43を周方向に移動可能なパッド移動装置44としての移動体56とを設けている。
【0052】
従って、パッド移動装置44により軸受ケース41に対して軸受パッド43を周方向に移動することができることから、回転軸12に作用する荷重に偏りが生じても、その荷重が作用する方向に軸受パッド43を移動することで、荷重を適正に受けて回転軸12を安定して支持することができ、その結果、回転軸12の振動の発生を抑制して信頼性の向上を図ることができる。
【0053】
第1実施形態のジャーナル軸受では、パッド移動装置44として、軸受ケース41の内面に周方向に沿って移動自在に支持されると共に軸受パッド43を揺動自在に支持する移動体56と、移動体56を軸受ケース41の周方向における所定の位置に位置決め可能な位置決め機構としての複数の移動ブロック58を設けている。従って、軸受パッド43が揺動自在に支持された移動体56を軸受ケース41の内面に周方向に沿って所定の位置に移動し、複数の移動ブロック58を配置することで移動体56をこの所定の位置に位置決めすることができ、軸受パッド43の移動作業及び位置決め作業が容易となり、作業性を向上することができる。
【0054】
第1実施形態のジャーナル軸受では、位置決め機構として、軸受ケース41の内面に周方向に沿って移動自在に支持されると共に所定の位置に保持可能な複数の移動ブロック58を設けている。従って、軸受パッド43が揺動自在に支持された移動体56を軸受ケース41の内面に周方向に沿って所定の位置に移動し、移動ブロック56を軸受パッド43の位置に応じて適正位置に移動することで、軸受パッド43を容易に所定の位置に位置決めすることができる。
【0055】
第1実施形態のジャーナル軸受では、軸受ケース41の内面に周方向に沿って移動体56及び移動ブロック58を移動自在に支持するレール部55を設けている。従って、移動体56及び移動ブロック58をレール部55に沿って移動することで、簡単な構成で、軸受パッド43を所定位置に容易に移動することができる。
【0056】
第1実施形態のジャーナル軸受では、軸受ケース41は、半円形状をなす上ケース51及び下ケース52がフランジ部51b,52bを介して締結されて構成され、移動体56と移動ブロック58を下ケース52に移動自在に支持している。従って、下ケース52だけに移動体56と移動ブロック58を移動自在に支持することで、回転軸12の自重により作用する荷重に対して軸受パッド43を適正位置に移動することができ、構造の複雑化を抑制することができる。
【0057】
第1実施形態のジャーナル軸受では、移動体56及び移動ブロック58を上ケース51と下ケース52が締結することで、所定の位置に保持可能としている。従って、移動体56及び移動ブロック58は、フランジ部51bにより移動が阻止されて所定の位置に保持されることとなり、構造の簡素化に寄与することができる。
【0058】
また、第1実施形態の蒸気タービンにあっては、ケーシング11と、ケーシング11内に回転自在に支持された回転軸12と、回転軸12の外周部に周方向に所定間隔をあけて複数固定される動翼体13と、ケーシング11に固定される複数の静翼体14と、回転軸12を回転自在に支持するジャーナル軸受15とを設けている。
【0059】
従って、パッド移動装置44により軸受ケース41に対して軸受パッド43を周方向に移動することができることから、回転軸12に作用する荷重に偏りが生じても、その荷重が作用する方向に軸受パッド43を移動することで、荷重を適正に受けて回転軸12を安定して支持することができ、その結果、回転軸12の振動の発生を抑制して蒸気タービン10の信頼性の向上を図ることができる。
【0060】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態のジャーナル軸受を表す概略図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
第2実施形態において、
図10に示すように、ジャーナル軸受70は、ロードビトゥイーン型のティルティングパッド型ジャーナル軸受(LBP軸受)である。このジャーナル軸受70は、軸受ケース41と、複数(本実施形態では、4個)の軸受パッド42,43と、パッド移動装置71とを有している。
【0062】
軸受ケース41は、円筒形状をなし、上ケース51及び下ケース52から構成されている。軸受ケース41は、上ケース51及び下ケース52における各フランジ部51b,52bが密着した状態で、締結ボルト53及びナット54により締結されて構成されている。下ケース52は、内面に周方向に沿って逆T字断面形状をなすレール部55が形成され、各フランジ部52bに開放している。移動体56は、下ケース52の内周面に沿った湾曲形状をなし、下部に逆T字断面形状をなすガイド部(図示略)が形成されている。そして、移動体56は、ガイド部が下ケース52のレール部55に移動自在に嵌合している。
【0063】
また、下ケース52は、移動体56の両側にその内面に周方向に沿って油圧通路72,73が設けられている。この油圧通路72,73は、それぞれ油圧ポート74,75が設けられている。そして、各油圧ポート74,75は、油圧配管76,77を介して油圧装置78に連結されている。制御装置79は、油圧装置78を制御可能であり、油圧を油圧配管76,77を通して油圧ポート74,75から油圧通路72,73に供給することで、移動体56の移動方向の両側から油圧を作用させて移動することができると共に、位置決めすることができる。
【0064】
上ケース51は、内周面に周方向に所定隙間を空けて複数の軸受パッド42がピボット61により揺動自在に支持されている。一方、下ケース52は、移動体56の内周面に周方向に所定隙間を空けて複数(本実施形態では、2個)の軸受パッド43がピボット62により揺動自在に支持されている。そのため、複数(本実施形態では、4個)の軸受パッド42,43は、軸受ケース41の内面に周方向に所定隙間で配置され、ピボット61,62により揺動自在に支持されることとなる。
【0065】
ジャーナル軸受70は、回転軸12の変位(軸受クリアランス内における軸位置と軸振動)を検出するための変位センサ81,82が軸受ケース41の外側に配置されている。この変位センサ81,82は、検出結果を制御装置79に出力する。また、ジャーナル軸受70は、軸受パッド42,43の温度を検出する温度センサ83,84が配置されている。この温度センサ83,84は、検出結果を制御装置79に出力する。制御装置79は、変位センサ81,82の検出結果及び温度センサ83,84の検出結果に基づいて油圧装置78を制御する。
【0066】
なお、移動体56を軸受ケース41(下ケース52)の周方向における所定の位置に位置決め可能な位置決め機構は、油圧装置78などにより構成される。また、軸受ケース41に対して軸受パッド43を周方向に移動可能なパッド移動装置71は、移動体56、油圧装置78、制御装置79などにより構成される。
【0067】
そのため、本実施形態のジャーナル軸受70は、軸受ケース41に対して軸受パッド43を周方向に移動可能とするパッド移動装置71が設けられている。即ち、蒸気タービンが正常運転しているとき、回転軸12は、重力方向に撓み、蒸気が上方から供給されると、ジャーナル軸受70の内に充填された潤滑油には、鉛直方向の下方に向けた圧力分布が発生する。この場合、ジャーナル軸受70がビトゥイーン型のパッド型ジャーナル軸受であることから、ジャーナル軸受70は、下方の2個の軸受パッド43により回転軸12の荷重を均等に分担することができる。
【0068】
一方、蒸気タービンが蒸気部分挿入を行うように運転しているとき、回転軸12に対して鉛直方向に対して斜め方向から蒸気が供給されると、ジャーナル軸受70の内に充填された潤滑油には、鉛直方向に対して斜め方向に向けた圧力分布が発生する。このとき、パッド移動装置71により軸受ケース41に対して軸受パッド43を周方向に移動する。
【0069】
即ち、変位センサ81,82は、回転軸12の変位(軸受クリアランス内における軸位置と軸振動)を検出して検出結果を制御装置79に出力し、温度センサ83,84は、軸受パッド43の温度を検出して制御装置79に出力している。制御装置79は、回転軸12が異常方向に変位しているとき、また、軸受パッド43の温度に異常な変化が確認されたとき、回転軸12に異常振動が発生したと判定する。このとき、蒸気タービンを停止し、締結ボルト53を弛緩して軸受ケース41の上ケース51を取外し、クレーンなどにより回転軸12を吊上げる。そして、制御装置79は、油圧装置78を制御し、油圧を油圧配管76,77を通して油圧ポート74,75から油圧通路72,73に供給することで、移動体56の移動方向の両側から油圧を作用させて移動する。つまり、移動体56を一方側へ移動させることで、2個の軸受パッド43も同方向に移動させる。その後、クレーンなどにより回転軸12を吊下ろし、下ケース52に上ケース51を装着し、締結ボルト53により締結する。
【0070】
そのため、この状態で蒸気タービンを運転すると、回転軸12に対して鉛直方向に対して斜め方向から蒸気が供給され、鉛直方向に対して斜め方向に向けた圧力分布が発生しても、軸受パッド43が適正位置に移動していることから、蒸気タービンが正常運転しているときと同様に、ジャーナル軸受70は、下方の2個の軸受パッド43により回転軸12の荷重を均等に分担することができる。
【0071】
なお、制御装置79は、回転軸12に異常振動が発生したと判定したとき、蒸気タービンを停止せずに運転状態を維持しながら、油圧装置78を制御して移動体56を所定の位置に移動するようにしてもよい。
【0072】
このように第2実施形態のジャーナル軸受にあっては、円筒形状をなす軸受ケース41と、軸受ケース41の内面に周方向に所定隙間を空けて揺動自在に支持される複数の軸受パッド42,43と、軸受ケース41に対して軸受パッド43を周方向に移動可能なパッド移動装置71としての油圧装置78とを設けている。
【0073】
従って、パッド移動装置71により軸受ケース41に対して軸受パッド43を周方向に移動することができることから、回転軸12に作用する荷重に偏りが生じても、その荷重が作用する方向に軸受パッド43を移動することで、荷重を適正に受けて回転軸12を安定して支持することができ、その結果、回転軸12の振動の発生を抑制して信頼性の向上を図ることができる。
【0074】
第2実施形態のジャーナル軸受では、位置決め機構として、移動体56の移動方向の両側から油圧を作用させることができる油圧装置78を設けている。従って、油圧装置78により軸受パッド43が揺動自在に支持された移動体56を軸受ケース41の内面に周方向に沿って所定の位置に移動することができ、軸受パッド43を容易に所定の位置に位置決めすることができる。
【0075】
第2実施形態のジャーナル軸受では、回転軸12の変位を検出するための変位センサ81,82と、軸受パッド43の温度を検出する温度センサ83,84と、各センサ81,82,83,84の検出結果に基づいて油圧装置78を制御する制御装置79とを設けている。従って、制御装置79は、センサ81,82,83,84の検出結果に基づいて油圧装置78を制御して軸受パッド43を所定の位置に位置決めすることができ、オフラインまたはオンラインで軸受パッド43を容易に所定の位置に位置決めすることができる。
【0076】
なお、上述した実施形態では、ジャーナル軸受をロードビトゥイーン型のティルティングパッド型ジャーナル軸受(LBP軸受)とし、荷重の支持形態がロードオン型のティルティングパッド型ジャーナル軸受(LOP軸受)になったときに、パッドを周方向に移動して修正するようにしたが、この形態に限定されるものではない。例えば、ジャーナル軸受をロードオン型のティルティングパッド型ジャーナル軸受(LOP軸受)とし、荷重の支持形態がロードビトゥイーン型のティルティングパッド型ジャーナル軸受(LBP軸受)になったときに、パッドを周方向に移動して修正するようにしてもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、本発明のジャーナル軸受を蒸気タービンに適用して説明したが、蒸気タービンに限らずガスタービンなどの回転機械に適用することが可能である。