特許第6189281号(P6189281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189281
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ヒトc−fms抗原結合性タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20170821BHJP
   C07K 16/32 20060101ALI20170821BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170821BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170821BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170821BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170821BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170821BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20170821BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20170821BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   C07K16/30ZNA
   C07K16/32
   C12N15/00 A
   A61K39/395 N
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P19/08
   A61P37/00
   !C12P21/08
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】154
(21)【出願番号】特願2014-254993(P2014-254993)
(22)【出願日】2014年12月17日
(62)【分割の表示】特願2010-521980(P2010-521980)の分割
【原出願日】2008年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-107118(P2015-107118A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2015年1月15日
(31)【優先権主張番号】60/957,148
(32)【優先日】2007年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/084,588
(32)【優先日】2008年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・アラン・ブラゼル
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・フォスター
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・パット・セレッティー
(72)【発明者】
【氏名】ジリン・サン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・エフ.・スモーザーズ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・メーリン
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−519163(JP,A)
【文献】 BLOOD,1989年 5月15日,Vol.73, No.7,p.1786-1793
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトc−fmsポリペプチドに特異的に結合する抗原結合性タンパク質であって、
(A)CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変ドメインであって、
CDRH1は、配列番号147で表されるアミノ酸配列を含み、
CDRH2は、配列番号163で表されるアミノ酸配列を含み、及び
CDRH3は、配列番号186で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び
(B)CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変ドメインであって、
CDRL1は、配列番号193で表されるアミノ酸配列を含み、
CDRL2は、配列番号214で表されるアミノ酸配列を含み、及び
CDRL3は、配列番号228で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
を含む、抗原結合性タンパク質。
【請求項2】
重鎖可変ドメイン(VH)が配列番号77で表されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメイン(VL)が配列番号110で表されるアミノ酸配列を含む請求項1に記載の抗原結合性タンパク質。
【請求項3】
2つの同一のVHおよび2つの同一のVLを含む抗体である請求項2に記載の抗原結合性タンパク質。
【請求項4】
患者においてc−fmsと関連する状態を治療または予防するための医薬組成物であって、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1つの単離された抗原結合性タンパク質の有効量を含む医薬組成物であって、
c−fmsに関連する状態が、骨疾患、炎症性疾患、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、子宮内膜腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、食道扁平上皮細胞癌、胃癌、星状細胞癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、肺癌および卵巣癌からなる群から選択される、医薬組成物
【請求項5】
ヒトc−fmsの細胞外部分へのCSF−1の結合を阻害する医薬組成物であって、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗原結合性タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項6】
ヒトc−fmsの自己リン酸化を阻害するための医薬組成物であって、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗原結合性タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項7】
単球走化性を低減するための医薬組成物であって、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗原結合性タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項8】
腫瘍への単球移動を阻害するための医薬組成物であって、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗原結合性タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項9】
腫瘍関連マクロファージの腫瘍における蓄積を阻害するための医薬組成物であって、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗原結合性タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項10】
追加の活性剤をさらに含む、請求項から請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記追加の活性剤が、放射性同位体、放射性核種、毒素からなる群、または治療薬および化学療法薬の群から選択されるいずれか1つである、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2007年8月21日に出願された米国仮出願第60/957,148号および2008年7月29日に出願された米国仮出願第61/084,588号に対する優先権を主張する。これらの出願は、全ての目的のためにその全体が本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
多くのヒトおよびマウスの腫瘍細胞系は、それに代わって受容体c−fms(ネコ科のMcDonough株)を通して単球/マクロファージ細胞を誘引し、生存を促進し、活性化する、サイトカインCSF−1(コロニー刺激因子−1、別名マクロファージコロニー刺激因子、M−CSF)を分泌する。腫瘍関連マクロファージ(TAM)(別名、腫瘍浸潤性マクロファージ(TIM))は、細胞腫瘤の50%程を構成する腫瘍間質の主要成分であることができる。非特許文献1、非特許文献2。原発性ヒト腫瘍の調査では、CSF−1 mRNAの発現の広範囲にわたる証拠がある。さらに、多くの研究は、上昇した血清CSF−1、TAM数、または組織CSF−1および/またはc−fmsの存在が、癌患者の劣る予後と関連していることを証明した。
【0003】
TAMは、PDGF、TGF−βおよびEGFの分泌を通す腫瘍細胞に対する直接マイトジェン活性、ならびにECM分解酵素の生成を通す転移を含む、様々な手段によって腫瘍の増殖、転移および生存を支える(非特許文献3および非特許文献4に総説されている)。TAMによる腫瘍支援の別の重要な手段は、様々な新脈管形成促進因子、例えばCOX−2、VEGF、FGF、EGF、一酸化窒素、脈管形成因子およびMMPの生成による腫瘍の新血管形成への寄与である。非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7。さらに、CSF−1が誘導するマクロファージは、様々な因子、例えばプロスタグランジン、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ、一酸化窒素、IL−10およびTGFβの生成を通じて免疫抑制性であることができる。非特許文献6、非特許文献8。
【0004】
CSF−1は、膜結合サイトカインおよび溶解性サイトカインの両方として発現され(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)、マクロファージおよびそれらの前駆体の生存、増殖、走化性および活性化を調節する(非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16、非特許文献17)。
【0005】
c−fmsプロトオンコジーン(別名M−CSFR、CSF−1RまたはCD115)である同種受容体は、関連するチロシンキナーゼ活性を有する165kDの糖タンパク質であり、PDGFR−α、PDGFR−β、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、Flt3およびc−キットを含むクラスIII受容体チロシンキナーゼファミリーに属する。非特許文献18、非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21。ネコ肉腫ウイルスのMcDonough株が保有するc−fms、v−fmsの腫瘍発生形は、突然変異されて、構成的に活性化されたタンパク質キナーゼ活性を与える(非特許文献20、非特許文献22)。正常細胞でのc−fmsの発現は、骨髄単球性細胞(単球、組織マクロファージ、クッパー細胞、ランゲルハンス細胞、ミクログリア細胞および破骨細胞を含む)、造血前駆体およびトロホブラストに限定される。非特許文献23、非特許文献24、非特許文献25。c−fmsの発現は、一部の腫瘍細胞でも証明されている(非特許文献26)。突然変異体マウスの様々なin vitro研究および分析は、CSF−1がc−fmsのリガンドであることを証明する(例えば、非特許文献27、非特許文献28、非特許文献29、非特許文献30を参照)。c−fmsへのCSF−1の結合は、P3K/AKTおよびRas/Raf/MEK/MAPKを含むシグナル伝達経路の下流活性化をもたらす特定部位の受容体の自己リン酸化を誘導し、マクロファージ分化は主に持続的なMEK活性を通して媒介される(非特許文献31)。非常に最近の証拠は、インターロイキン−34(IL−34)もc−fmsのリガンドであることを示す(非特許文献32)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kellyら、1988年、Br. J. Cancer 57巻:174〜177頁
【非特許文献2】Leekら、1994年、J. Leukoc. Biol.56巻:423〜435頁
【非特許文献3】LeekおよびHarris、2002年、J. Mammary Gland Biol and Neoplasia 7巻:177〜189頁
【非特許文献4】LewisおよびPollard、2006年、Cancer Res 66巻:605〜612頁
【非特許文献5】Dranoffら、2004年、Nat. Rev. Cancer 4巻:11〜22頁
【非特許文献6】MacMickingら、1997年、Annu. Rev. Immunol.15巻:323〜350頁
【非特許文献7】Mantovaniら、1992年、Immunol. Today 13巻:265〜270頁
【非特許文献8】Bronteら、2001年、J. Immunother.24巻:431〜446頁
【非特許文献9】Cerrettiら、1988年、Mol. Immunol.25巻:761〜770頁
【非特許文献10】Dobbinら、2005年、Bioinformatics 21巻:2430〜2437頁
【非特許文献11】Wongら、1987年、Biochem. Pharmacol.36巻:4325〜4329頁
【非特許文献12】Bouretteら、2000年、Growth Factors 17巻:155〜166頁
【非特許文献13】Cecchiniら、1994年、Development 120巻:1357〜1372頁
【非特許文献14】Hamilton、1997年、J. Leukoc. Biol.62巻:145〜155頁
【非特許文献15】Hume、1985年、Sci. Prog.69巻:485〜494頁
【非特許文献16】SasmonoおよびHume、The innate immune response to infection(Kaufmann, S.、Gordon, S.およびMedzhitov, R.編)71〜94頁(ASM Press、New York、2004年)
【非特許文献17】RossおよびAuger、The macrophage(Burke, B.およびLewis, C.編)(Oxford University Press、Oxford、2002年)
【非特許文献18】Blume−JensenおよびHunter、2001年、Nature 411巻:355〜365頁
【非特許文献19】SchlessingerおよびUllrich、1992年、Neuron 9巻:383〜391頁
【非特許文献20】Sherrら、1985年、Cell 41巻:665〜676頁
【非特許文献21】van der Geerら、1994年、Annu. Rev. Cell. Biol.10巻:251〜337頁
【非特許文献22】RousselおよびSherr、2003年、Cell Cycle 2巻:5〜6頁
【非特許文献23】Araiら、1999年、J. Exp. Med.190巻:1741〜1754頁
【非特許文献24】Daiら、2002年、Blood99巻:111〜120頁
【非特許文献25】PixleyおよびStanley、2004年、Trends Cell Biol.14巻:628〜638頁
【非特許文献26】Kirmaら、2007年、Cancer Res 67巻:1918〜1926頁
【非特許文献27】BouretteおよびRohrschneider、2000年、Growth Factors 17巻:155〜166頁
【非特許文献28】Wiktor−Jedrzejczakら、1990年、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.87巻:4828〜4832頁
【非特許文献29】Yoshidaら、1990年、Nature 345巻:442〜444頁
【非特許文献30】van Wesenbeeckおよびvan Hul、2005年、Crit. Rev. Eukaryot. Gene Expr.15巻:133〜162頁
【非特許文献31】Gosseら、2005年、Cellular Signaling 17巻:1352〜1362頁
【非特許文献32】Linら、2008年、Science320巻:807〜811頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ヒトc−fmsを含むc−fmsに結合する抗原結合性タンパク質が、本明細書で記載される。ヒトc−fms抗原結合性タンパク質は、c−fmsに関連する生物応答の少なくとも1つを阻害、妨害または調節することが見出され、したがって、c−fms関連の疾患または障害の影響を改善するのに有用である。したがって、c−fmsへのある抗原結合性タンパク質の結合は、以下の活性の1つまたは複数を有することができる:c−fms−CSF−1結合またはシグナル伝達を阻害、妨害または調節すること、c−fms−IL−34結合またはシグナル伝達を阻害すること、腫瘍への単球移動を減少させること、および/または、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の蓄積を減少させること。
【0008】
一実施形態は、c−fms受容体抗原結合性タンパク質の生成のための、細胞系を含む発現系、ならびに、ヒトc−fms関連の疾患を診断および治療する方法を含む。
【0009】
記載される単離された抗原結合性タンパク質のいくつかは、(A)(i)配列番号136〜147からなる群から選択されるCDRH1;(ii)配列番号148〜164からなる群から選択されるCDRH2;(iii)配列番号165〜190からなる群から選択されるCDRH3;および(iv)合わせて合計4つ以下のアミノ酸となる1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む、(i)、(ii)および(iii)のCDRHからなる群から選択される1つまたは複数の重鎖相補性決定領域(CDRH);(B)(i)配列番号191〜210からなる群から選択されるCDRL1;(ii)配列番号211〜224からなる群から選択されるCDRL2;(iii)配列番号225〜246からなる群から選択されるCDRL3;および(iv)合わせて合計4つ以下のアミノ酸となる1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む、(i)、(ii)および(iii)のCDRLからなる群から選択される1つまたは複数の軽鎖相補性決定領域(CDRL);または(C)(A)の1つまたは複数の重鎖CDRHおよび(B)の1つまたは複数の軽鎖CDRLを含む。
【0010】
一実施形態では、単離された抗原結合性タンパク質は、前述(A)の少なくとも1つまたは2つのCDRH、および前述(B)の少なくとも1つまたは2つのCDRLを含むことができる。さらに別の態様では、単離された抗原結合性タンパク質は、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む。
【0011】
ある抗原結合性タンパク質では、前述(A)のCDRHは、(i)配列番号136〜147からなる群から選択されるCDRH1;(ii)配列番号148〜164からなる群から選択されるCDRH2;(iii)配列番号165〜190からなる群から選択されるCDRH3;および、(iv)2つ以下のアミノ酸の1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む、(i)、(ii)および(iii)のCDRHからなる群からさらに選択され;前述(B)のCDRLは、(i)配列番号191〜210からなる群から選択されるCDRL1;(ii)配列番号211〜224からなる群から選択されるCDRL2;(iii)配列番号225〜246からなる群から選択されるCDRL3アミノ酸配列;および、(iv)2つ以下のアミノ酸の1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む、(i)、(ii)および(iii)のCDRLからなる群から選択され;または、(C)(A)の1つまたは複数の重鎖CDRHおよび(B)の1つまたは複数の軽鎖CDRL。
【0012】
さらに別の実施形態では、単離された抗原結合性タンパク質は、(A)(i)配列番号136〜147からなる群から選択されるCDRH1;(ii)配列番号148〜164からなる群から選択されるCDRH2;および、(iii)配列番号165〜190からなる群から選択されるCDRH3からなる群から選択されるCDRH;(B)(i)配列番号191〜210からなる群から選択されるCDRL1;(ii)配列番号211〜224からなる群から選択されるCDRL2;および、(iii)配列番号225〜246からなる群から選択されるCDRL3からなる群から選択されるCDRL;または(C)(A)の1つまたは複数の重鎖CDRHおよび(B)の1つまたは複数の軽鎖CDRLを含むことができる。一実施形態では、単離された抗原結合性タンパク質は、(A)配列番号136〜147のCDRH1、配列番号148〜164のCDRH2および配列番号165〜190のCDRH3、ならびに(B)配列番号191〜210のCDRL1、配列番号211〜224のCDRL2および配列番号225〜246のCDRL3を含むことができる。別の実施形態では、可変重鎖(V)は配列番号70〜101からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ/または、可変軽鎖(V)は配列番号102〜135からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、Vは配列番号70〜101からなる群から選択され、かつ/または、Vは配列番号102〜135からなる群から選択される。
【0013】
別の態様では、ヒトc−fmsのc−fmsサブドメインIg様1−1およびIg様1−2を含むエピトープに特異的に結合する、単離された抗原結合性タンパク質が提供される。
【0014】
さらに別の態様では、(A)(i)配列番号136〜147と少なくとも80%の配列同一性を有するCDRH1;(ii)配列番号148〜164と少なくとも80%の配列同一性を有するCDRH2;および、(iii)配列番号165〜190と少なくとも80%の配列同一性を有するCDRH3からなる群から選択される1つまたは複数の重鎖CDR(CDRH);(B)(i)配列番号191〜210と少なくとも80%の配列同一性を有するCDRL1;(ii)配列番号211〜224と少なくとも80%の配列同一性を有するCDRL2;および、(iii)配列番号225〜246と少なくとも80%の配列同一性を有するCDRL3からなる群から選択される1つまたは複数の軽鎖CDR(CDRL);または(C)(A)の1つまたは複数の重鎖CDRHおよび(B)の1つまたは複数の軽鎖CDRLを含むc−fmsに結合する、単離された抗原結合性タンパク質が提供される。一実施形態では、単離された抗原結合性タンパク質は、(A)(i)配列番号136〜147と少なくとも90%の配列同一性を有するCDRH1;(ii)配列番号148〜164と少なくとも90%の配列同一性を有するCDRH2;および、(iii)配列番号165〜190と少なくとも90%の配列同一性を有するCDRH3からなる群から選択される1つまたは複数のCDRH;(B)(i)配列番号191〜210と少なくとも90%の配列同一性を有するCDRL1;(ii)配列番号211〜224と少なくとも90%の配列同一性を有するCDRL2;および、(iii)配列番号225〜246と少なくとも90%の配列同一性を有するCDRL3からなる群から選択される1つまたは複数のCDRL;または(C)(A)の1つまたは複数の重鎖CDRHおよび(B)の1つまたは複数の軽鎖CDRLを含む。
【0015】
別の実施形態は、c−fmsに結合する単離された抗原結合性タンパク質であり、その抗原結合性タンパク質は、下記のコンセンサス配列を有するCDRの1つまたは組合せを含む。群A、BおよびCは、系統学的に関連するクローンに由来する配列を指す。一態様では、様々な群からのCDRを混合し、一致させることができる。別の態様では、抗原結合性タンパク質は、同じ1つの群A、BまたはCからの2つ以上のCDRHを含む。また別の態様では、抗原結合性タンパク質は、同じ群A、BまたはCからの2つ以上のCDRLを含む。また別の態様では、抗原結合性タンパク質は、同じ群A、BまたはCからの少なくとも2つまたは3つのCDRHおよび/または少なくとも2つまたは3つのCDRLを含む。異なる群のコンセンサス配列は、以下の通りである。
【0016】
群A:(a)一般式GYTXTSYGIS(配列番号307)のCDRH1であり、Xは、FおよびLからなる群から選択される;(b)一般式WISAYNGNXNYAQKXQG(配列番号308)のCDRH2であり、XはTおよびPからなる群から選択され、XはLおよびFからなる群から選択される;(c)一般式XFGEXFDY(配列番号309)のCDRH3であり、XはEおよびDからなる群から選択され、XはSおよびQからなる群から選択され、XはGおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XはLおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XはWおよびGからなる群から選択され、XはVおよびLからなる群から選択され、XはEおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XはGおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XはFおよびLからなる群から選択される;(d)一般式KSSXGVLXSSXNKNXLA(配列番号310)のCDRL1であり、XはQおよびSからなる群から選択され、XはDおよびYからなる群から選択され、XはNおよびDからなる群から選択され、XはFおよびYからなる群から選択される;(e)一般式WASXRES(配列番号311)のCDRL2であり、Xは、NおよびTからなる群から選択される;ならびに、(f)一般式QQYYXPXT(配列番号312)のCDRL3であり、XはSおよびTからなる群から選択され、XはDおよびTからなる群から選択され、XはFおよびPからなる群から選択される。
【0017】
群B:(a)一般式GFTXAWMS(配列番号313)を有するCDRH1であり、XはFおよびVからなる群から選択され、XはSおよびNからなる群から選択され、XはNおよびTからなる群から選択される;(b)一般式RIKXKTDGXTXDXAAPVKG(配列番号314)を有するCDRH2であり、XはSおよびTからなる群から選択され、XはGおよびWからなる群から選択され、XはTおよびAからなる群から選択され、XはYおよびNからなる群から選択される;(c)一般式X10111213YYGX14DV(配列番号315)を有するCDRH3であり、XはE、DおよびGからなる群から選択され、XはY、Lおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XはY、R、Gおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XはH、G、Sおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XはI、A、Lおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XはL、V、T、Pおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XはT、V、Y、G、Wおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XはG、V、SおよびTからなる群から選択され、XはS、T、D、NおよびGからなる群から選択され、X10はG、F、PおよびYからなる群から選択され、X11はG、YおよびNからなる群から選択され、X12はVおよびYからなる群から選択され、X13はW、SおよびYからなる群から選択され、X14はM、TおよびVからなる群から選択される;(d)一般式QASQDIXNYLN(配列番号316)を有するCDRL1であり、Xは、SおよびNからなる群から選択される;(e)一般式DXSNLEX(配列番号317)を有するCDRL2であり、XはAおよびTからなる群から選択され、XはTおよびPからなる群から選択される;ならびに、(f)一般式QQYDXLXT(配列番号318)を有するCDRL3であり、XはNおよびDからなる群から選択され、XはLおよびIからなる群から選択される。
【0018】
群C:(a)一般式GFTFXSYGMH(配列番号319)を有するCDRH1であり、Xは、SおよびIからなる群から選択される;(b)一般式VIWYDGSNXYYADSVKG(配列番号320)を有するCDRH2であり、Xは、EおよびKからなる群から選択される;(c)一般式SSXYXMDV(配列番号321)を有するCDRH3であり、XはG、SおよびWからなる群から選択され、XはN、DおよびSからなる群から選択され、XはYおよびFからなる群から選択され、XはDおよびGからなる群から選択される;(d)一般式QASXDIXNXLN(配列番号322)を有するCDRL1であり、XはQおよびHからなる群から選択され、XはSおよびNからなる群から選択され、XはFおよびYからなる群から選択される;(e)一般式DASNLEX(配列番号323)を有するCDRL2であり、Xは、TおよびIからなる群から選択される;ならびに、(f)一般式QXYDXPXT(配列番号324)を有するCDRL3であり、XはQおよびRからなる群から選択され、XはNおよびDからなる群から選択され、XはLおよびFからなる群から選択され、XはF、LおよびIからなる群から選択される。
【0019】
さらに別の実施形態では、先に記載の単離された抗原結合性タンパク質は、少なくとも1つのCDRHを含む第1のアミノ酸配列、および少なくとも1つのCDRLを含む第2のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、第1および第2のアミノ酸配列は、互いに共有結合している。さらなる実施形態では、単離された抗原結合性タンパク質の第1のアミノ酸配列は、配列番号165〜190のCDRH3、配列番号148〜164のCDRH2および配列番号136〜147のCDRH1を含み、単離された抗原結合性タンパク質の第2のアミノ酸配列は、配列番号225〜246のCDRL3、配列番号211〜224のCDRL2および配列番号191〜210のCDRL1を含む。
【0020】
一態様では、本明細書で提供される単離された抗原結合性タンパク質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体またはそれらの抗体断片であってよい。別の実施形態では、単離された抗原結合性タンパク質の抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、ダイアボディまたは単鎖抗体分子であってよい。さらなる実施形態では、単離された抗原結合性タンパク質はヒト抗体であり、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の型でよい。
【0021】
さらに別の態様では、単離された抗原結合性タンパク質は、提供される単離された抗原結合性タンパク質のうちの1つの抗原結合性タンパク質と、ヒトc−fmsの細胞外部分への結合について競合することができる。一実施形態では、患者に投与されると、単離された抗原結合性タンパク質は、単球の走化性を減少させ、腫瘍への単球移動を阻害し、腫瘍での腫瘍関連マクロファージの蓄積を阻害し、または疾患組織でのマクロファージの蓄積を阻害することができる。
【0022】
さらなる態様では、c−fmsに結合する抗原結合性タンパク質をコードする単離核酸分子も提供される。場合により、単離核酸分子は、制御配列に作動可能に連結される。
【0023】
別の態様では、c−fmsに結合することができる抗原結合性タンパク質をコードする前記の単離核酸分子を含む、発現ベクターおよび該発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされる宿主細胞も提供される。
【0024】
別の態様では、抗原結合性タンパク質を分泌する宿主細胞から抗原結合性タンパク質を調製する段階を含む、抗原結合性タンパク質を調製する方法も提供される。
【0025】
さらに別の態様では、提供される前記の抗原結合性タンパク質の少なくとも1つおよび薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物が提供される。一実施形態では、医薬組成物は、放射性同位体、放射性核種、毒素からなる群、または治療薬および化学療法薬の群から選択される追加の活性剤を含むことができる。
【0026】
本発明の実施形態は、患者でc−fmsと関連する状態を治療または予防する方法であって、少なくとも1つの単離された抗原結合性タンパク質の有効量を患者に投与することを含む方法をさらに提供する。一実施形態では、状態は、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、子宮内膜腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、食道扁平上皮細胞癌、胃癌、星状細胞癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、膀胱癌、肺癌および卵巣癌からなる群から選択される癌である。
【0027】
別の態様では、本発明は、患者でc−fmsの細胞外部分へのCSF−1の結合を阻害する方法であって、本明細書で提供される少なくとも1つの抗原結合性タンパク質の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0028】
さらに別の態様では、患者でヒトc−fmsの自己リン酸化を阻害する方法であって、本明細書で提供される少なくとも1つの抗原結合性タンパク質の有効量を投与することを含む方法も提供される。
【0029】
さらに別の態様として、患者で単球の走化性を減少させる方法であって、少なくとも1つの抗原結合性タンパク質の有効量を投与することを含む方法がさらに提供される。
【0030】
一態様では、患者で腫瘍への単球移動を阻害する方法であって、少なくとも1つの抗原結合性タンパク質の有効量を投与することを含む方法も提供される。
【0031】
別の態様では、患者で腫瘍での腫瘍関連マクロファージの蓄積を阻害する方法であって、少なくとも1つの抗原結合性タンパク質の有効量を投与することを含む方法も提供される。
【0032】
これらおよび他の態様は、本明細書でより詳細に記載される。提供される各態様は、本明細書で提供される様々な実施形態を包含することができる。したがって、1つの要素または要素の組合せを含む実施形態のそれぞれは、記載される各態様に含めることができることが予期される。開示物の他の特徴、目的および利点は、後に続く詳細な記載で明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A-1】図1Aは、本明細書で提供する重鎖可変領域の配列の比較を示す図である。CDRおよびフレームワーク領域を示している。
図1A-2】図1Aは、本明細書で提供する重鎖可変領域の配列の比較を示す図である。CDRおよびフレームワーク領域を示している。
図1B-1】図1Bは、本明細書で提供する軽鎖可変領域の配列の比較を示す図である。CDRおよびフレームワーク領域を示している。
図1B-2】図1Bは、本明細書で提供する軽鎖可変領域の配列の比較を示す図である。CDRおよびフレームワーク領域を示している。
図2】29の抗c−fmsハイブリドーマの系統分析を示す図である。抗体の多様性を決定するために、すべてのクローンハイブリドーマの可変重鎖(V)ドメインまたは可変軽鎖(V)ドメインのいずれかに一致するアミノ酸配列を整列させ互いに比較した。水平方向の分岐の長さが、任意の2つの配列間または配列分岐群(密接に関連する配列の群)間の置換(差異)の相対数に一致する、これらの比較アラインメントを表すデンドログラムを示す。コンセンサス配列の決定のためにグループにまとめた配列を指し示している。
図3】様々なハイブリドーマ抗c−fms上清によるAML−5増殖の阻害を実証する図である。図3Aは、ハイブリドーマ抗c−fms上清を用いたAML−5バイオアッセイを示す。図3Bは、精製組換え抗c−fms抗体を用いたAML−5バイオアッセイを示す。AML−5細胞を、抗体の濃度を減少させて存在させ、10ng/ml CSF−1と共にインキュベートした。72時間後、Alamar Blueを用いて細胞増殖を測定した。
図4】CSF−1でのc−fms抗体の滴定を用いたCynoBMアッセイを示す図である。様々なハイブリドーマ抗c−fms上清によるCSF−1濃縮カニクイザル骨髄細胞増殖の阻害を例示する。カニクイザル骨髄細胞を、抗体の濃度を減少させて存在させ、10ng/ml CSF−1と共にインキュベートした。72時間後、Alamar Blueを用いて細胞増殖を測定した。
図5】IgG mAb(PT、親型)によるリガンド−誘発pTyr−c−fmsの阻害を示す図である。293T/c−fms細胞を、1時間血清を飢餓状態にさせてから、IgG mAb、1.109、1.2または2.360(PT)およびコントロールmAb抗c−fms3−4A4(非ブロッキング)および抗―h−CD39 M105(非特異的)を滴定系列(1.0〜0.0001μg/ml)または1.0μg/ml(コントロール)で用いて処理した。次いで、細胞を、37℃で5分間、50ng/ml CSF−1で刺激した。全細胞溶解物を、上記したように抗c−fms C20で免疫沈降させた。pTyr/c−fmsおよび全c−fmsのそれぞれの検出のために、ウエスタンブロットを、抗pTyr 4G10(上側のパネル)または抗c−fms C20(下側のパネル)のいずれかでプローブした。
図6】IgG mAb(PT対SM(体細胞突然変異が除去されている)型)によるリガンド−誘発pTyr−c−fmsの阻害を比較する図である。293T/c−fms細胞を、1時間血清を飢餓状態にさせてから、IgG mAb、1.109、1.2または2.360(PTまたはSMの両方)およびコントロールmAb抗c−fms3−4A4(非ブロッキング)を1.0および0.1μg/mlで用いて処理した。次いで、細胞を、37℃で5分間、50ng/ml CSF−1で刺激した。全細胞溶解物を、上記したように抗c−fms C20で免疫沈降させた。pTyr/c−fmsおよび全c−fmsのそれぞれの検出のために、ウエスタンブロットを、抗pTyr 4G10(上側のパネル)または抗c−fms C20(下側のパネル)のいずれかでプローブした。
図7】IgG mAb(PT対SM型)によるc−fmsの免疫沈降のウエスタンブロットを示す図である。非刺激293T/c−fms細胞の全細胞溶解物を、IgG mAb、1.109、1.2、または2.360(PTまたはSMの両方)および抗c−fms C20を2.5μg/mlで用いて、4℃で一晩、免疫沈降させた。ウエスタンブロットを、抗c−fms C20および抗ウサギIgG/HRPでプローブした。
図8】ヒトc−fmsの細胞外ドメイン領域のアミノ配列(配列番号1)を示す図である。
図9】c−fms SNPの免疫沈降のウエスタンブロットを示す図である。示すc−fms SNPの発現構築物を作製し、293T/c−fms細胞で一過性に発現させた。次いで、非刺激全細胞溶解物を各mAbおよびコントロールAbで免疫沈降させた。ウエスタンブロットを、c−fms H300および抗ウサギIgG/HRPでプローブした。
図10】ヒトc−fms ECD(細胞外ドメイン)および短縮型(truncated)構築物のダイアグラムを示す図である。アビジンタグが、c−fmsのN末端のフレームに融合されている。各c−fms構築物について、最初および最後の4個のアミノ酸を示す。
図11】c−fms ECDおよび短縮型アビジン融合タンパク質に対するFITC標識抗アビジン、1.109、1.2、および2.360c−fms抗体の結合を実証する図である。
図12】完全長c−fmsおよびIg−様ループ2(単独)融合タンパク質に対する抗アビジンFITC、コントロール抗体、および抗c−fms抗体(FITC標識)の結合を示す図である。
図13】20×未標識1.109、1.2、および2.360c−fms抗体、これに続く1μg/mlの濃度のFITC標識1.109を用いた競合アッセイを示す図である。
図14】20×未標識1.109、1.2、および2.360c−fms抗体、これに続く1μg/mlの濃度のFITC標識1.2を用いた競合アッセイを示す図である。
図15】20×未標識1.109、1.2、および2.360c−fms抗体、これに続く1μg/mlの濃度のFITC標識2.360を用いた競合アッセイを示す図である。
図16】各腫瘍の腫瘍体積および壊死率の測定による、抗マウスc−fms抗体によるMDAMB231乳房腺癌異種移植片の成長の阻害を示す図である。次いで、各腫瘍の壊死率をこれらの測定値から算出し、図16に示した。
図17】樹立NCIH1975肺腺癌異種移植片の成長の阻害を示す図である。腫瘍の測定値および治療日数を示し、抗マウスc−fms抗体が樹立NCIH1975肺腺癌異種移植片の成長を阻害できることを実証している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書で用いられるセクションの見出しは、構成上の目的だけのためであり、記載される対象の内容を限定するものと解釈してはならない。
【0035】
本明細書で特に定義されなければ、本出願に関連して用いられる科学技術用語は、当業者が通常理解する意味を有するものとする。さらに、文脈上特に必要とされない限り、単数用語は複数を含み、複数用語は単数を含むものとする。
【0036】
一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションに関連して用いる命名法、およびそれらの技術は、周知であって当技術分野で通常用いられるものである。一般に本出願の方法および技術は、特に明記しない限り、当技術分野で周知である従来の方法によって、また、本明細書全体に引用および記述される様々な一般参考文献およびより特定の参考文献に記載されている通りに実施される。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2001年)、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1992年)、およびHarlowおよびLane、Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990年)を参照されたい。当技術分野で一般に達成されるように、または本明細書で記載されるように、酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って実施される。本明細書で記載される分析化学、有機合成化学ならびに医化学および製薬化学に関連して用いる用語、ならびにそれらの実験手順および技術は、当業者に周知であって当技術分野で通常用いられるものである。化学合成、化学分析、医薬調製、調合および送達、ならびに患者の治療のために、標準の技術を用いることができる。
【0037】
本発明は、本明細書で記載の特定の方法論、プロトコルおよび試薬などに限定されず、したがって変更することができることを理解するべきである。本明細書で用いられる用語は特定の実施形態を記載することだけが目的であって、特許請求の範囲によってだけ定義される開示物の範囲を限定するものではない。
【0038】
実施している実施例以外、または特記されている場合以外、本明細書で用いられる成分の量または反応条件を表すすべての数字は、すべての例において用語「約」によって修飾されていると理解するべきである。用語「約」は、割合に関して用いられる場合、±1%を意味することができる。
【0039】
定義
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、一本鎖および二本鎖の両方のヌクレオチド重合体を含む。ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、またはいずれかの種類のヌクレオチドの修飾された形でもよい。前記修飾には、ブロモウリジンおよびイノシン誘導体などの塩基修飾物、2’,3’−ジデオキシリボースなどのリボース修飾物、ならびにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデートおよびホスホロアミデートなどのヌクレオチド間結合の修飾物が含まれる。
【0040】
用語「オリゴヌクレオチド」は、200個以下のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを意味する。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは長さが10〜60個の塩基である。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは長さが12、13、14、15、16、17、18、19または20個から40個までのヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、例えば突然変異体遺伝子の構築で使用するために、一本鎖または二本鎖であってよい。オリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドであってよい。検出アッセイのために、オリゴヌクレオチドは、放射標識、蛍光標識、ハプテンまたは抗原標識を含む標識を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、例えば、PCRプライマー、クローニングプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとして用いることができる。
【0041】
「単離核酸分子」は、単離ポリヌクレオチドが天然に見出されるポリヌクレオチドのすべてまたは一部と関連していないか、それが天然に連結していないポリヌクレオチドに連結している、ゲノム、mRNA、cDNAまたは合成起源、またはそれらの組合せのDNAまたはRNAを意味する。この開示のために、特定のヌクレオチド配列を「含む核酸分子」は、無傷の染色体を包含しないことを理解するべきである。特定の核酸配列を「含む」単離核酸分子は、特定された配列に加えて、最高10個またはさらに最高20個の他のタンパク質またはその一部のコード配列を、または挙げた核酸配列のコード領域の発現を制御する作動可能に連結されている調節配列を、および/またはベクター配列を含むことができる。
【0042】
特に明記しない限り、本明細書で述べる任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向は、5’方向と呼ばれる。5’から3’の方向の生まれようとするRNA転写産物の付加は、転写方向と呼ばれ、RNA転写産物の5’末端に対して5’側であるRNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と呼ばれ、RNA転写産物の3’末端に対して3’側であるRNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と呼ばれる。
【0043】
用語「制御配列」は、それが連結されるコード配列の発現およびプロセシングに影響を及ぼすことができる、ポリヌクレオチド配列を指す。そのような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態では、原核生物の制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位および転写終結配列を含むことができる。例えば、真核生物の制御配列は、転写因子のための1つまたは複数の認識部位を含むプロモーター、転写エンハンサー配列および転写終結配列を含むことができる。「制御配列」は、リーダー配列および/または融合パートナー配列を含むことができる。
【0044】
用語「ベクター」は、宿主細胞にタンパク質コード情報を伝えるのに用いられる任意の分子または実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージまたはウイルス)を意味する。
【0045】
用語「発現ベクター」または「発現構築物」は、宿主細胞の形質転換に適するベクターを指し、それに作動的に連結される1つまたは複数の異種起源のコード領域の発現を(宿主細胞と一緒に)指示および/または制御する核酸配列を含む。発現構築物は、それらに限定されないが、それに作動可能に連結されるコード領域の転写、翻訳に影響を及ぼすか制御する配列、および、イントロンが存在する場合はそれに作動可能に連結されるコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含むことができる。
【0046】
本明細書で用いるように、「作動可能に連結される」は、その用語が適用される成分が、適する条件下でそれらの固有の機能を果たすことを可能にする関係にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列に「作動可能に連結される」ベクター中の制御配列は、タンパク質コード配列の発現が制御配列の転写活性に適合する条件下で達成されるように、それに連結される。
【0047】
用語「宿主細胞」は、核酸配列によって形質転換されているか、形質転換することができ、それによって関心の遺伝子を発現する細胞を意味する。その用語は、その子孫が元の親細胞と形態または遺伝構成において同一であろうがなかろうが、関心の遺伝子が存在する限り親細胞の子孫を含む。
【0048】
用語「形質導入」は、通常バクテリオファージによる、1つの細菌から別の細菌への遺伝子移入を意味する。「形質導入」は、複製欠陥のあるレトロウイルスによる真核生物細胞の配列の獲得および移入も指す。
【0049】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来のまたは外因性のDNAの取込みを意味し、外因性のDNAが細胞膜の内側に導入されている場合、細胞は「トランスフェクト」されている。いくつかのトランスフェクション技術が当技術分野で周知であり、本明細書で開示される。例えば、Grahamら、1973年、Virology52巻:456頁、Sambrookら、2001年、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、前掲、Davisら、1986年、Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier、Chuら、1981年、Gene13巻:197頁を参照されたい。1つまたは複数の外因性のDNA部分を適する宿主細胞に導入するために、そのような技術を用いることができる。
【0050】
用語「形質転換」は細胞の遺伝特性の変化を指し、新しいDNAまたはRNAを含むようにそれが修飾されている場合、細胞は形質転換されている。例えば、トランスフェクション、形質導入または他の技術を通して新しい遺伝物質を導入することによって、細胞がその天然の状態から遺伝的に修飾される場合、細胞は形質転換される。トランスフェクションまたは形質導入の後、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込まれることによって細胞のそれと組み換えることができるか、または、複製されずにエピソームエレメントとして一時的に維持することができるか、または、プラスミドとして独立して複製することができる。形質転換DNAが細胞分裂に従って複製される場合、細胞は「安定して形質転換された」と考えられる。
【0051】
用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、本明細書で互換的に用いられ、アミノ酸残基の重合体を指す。これらの用語は、天然のアミノ酸重合体と同様に、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の類似体または模倣体であるアミノ酸重合体にも適用される。これらの用語は、例えば炭水化物残基の付加によって修飾されて糖タンパク質を形成したアミノ酸重合体、またはリン酸化されたアミノ酸重合体を包含することもできる。ポリペプチドおよびタンパク質は、天然の非組換え細胞によって生成することができ、または、それは遺伝子操作された細胞または組換え細胞によって生成され、天然のタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然の配列の1つまたは複数のアミノ酸の欠失、付加および/または置換を有する分子を含む。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、具体的にはc−fms抗原結合性タンパク質、抗体、または、抗原結合性タンパク質の1つまたは複数のアミノ酸の欠失、付加および/または置換を有する配列を包含する。用語「ポリペプチド断片」は、完全長タンパク質と比較して、アミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失および/または内部欠失を有するポリペプチドを指す。そのような断片は、完全長タンパク質と比較して修飾されたアミノ酸を含むこともできる。ある実施形態では、断片は長さが約5〜500個のアミノ酸である。例えば、断片は、長さが少なくとも5、6、8、10、14、20、50、70、100、110、150、200、250、300、350、400または450個のアミノ酸であってよい。有用なポリペプチド断片は、結合ドメインを含む抗体の免疫学的に機能的な断片を含む。c−fms結合性抗体の場合、有用な断片には、それらに限定されないが、CDR領域、重鎖または軽鎖の可変ドメイン、抗体鎖の一部、または単に2つのCDRを含むその可変領域などが含まれる。
【0052】
言及される用語「単離タンパク質」は、対象タンパク質が、(1)それがそれと一緒に通常見出されるであろう少なくとも一部の他のタンパク質を含有せず、(2)同じ源、例えば同じ種からの他のタンパク質を基本的に含有せず、(3)異なる種からの細胞によって発現され、(4)少なくとも約50%のポリヌクレオチド、脂質、炭水化物または天然でそれが関連する他の物質から分離されており、(5)天然でそれが関連していないポリペプチドと(共有結合的または非共有結合的相互作用によって)作動可能的に関連し、または、(6)天然で起こらないことを意味する。一般的に、「単離タンパク質」は、所与の試料の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%または少なくとも約50%を構成する。合成起源のゲノムDNA、cDNA、mRNAまたは他のRNA、またはその任意の組合せが、そのような単離タンパク質をコードすることができる。好ましくは、単離タンパク質は、その治療的、診断的、予防的、研究的使用または他の使用を妨害するであろう、その天然での環境で見出されるタンパク質またはポリペプチドまたは他の汚染物を実質的に含有しない。
【0053】
ポリペプチド(例えば、抗原結合性タンパク質または抗体)の「変異体」は、別のポリペプチド配列と比較して、1つまたは複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列に挿入され、そこから削除され、かつ/またはそこに置換されるアミノ酸配列を含む。変異体は、融合タンパク質を含む。
【0054】
ポリペプチドの「誘導体」は、挿入、欠失または置換変異体と異なるある方法で、例えば別の化学部分へのコンジュゲーションを通して化学修飾されているポリペプチド(例えば、抗原結合性タンパク質または抗体)である。
【0055】
ポリペプチド、核酸、宿主細胞などのような生物材料に関連して明細書全体で用いられる用語「天然に存在する」は、天然で見出される物質を指す。
【0056】
本明細書で用いる「抗原結合性タンパク質」は、特定の標的抗原、例えばc−fmsまたはヒトc−fmsに特異的に結合するタンパク質を意味する。
【0057】
抗原結合性タンパク質は、解離定数(K)が≦10−8Mであるとき、その標的抗原に「特異的に結合」すると言われる。抗体は、Kが≦5x10−9Mであるとき抗原に「高親和性」で特異的に結合し、Kが≦5x10−10Mであるとき「非常に高親和性」で結合する。一実施形態では、抗体は≦10−9MのK、および約1x10−4/秒の解離速度を有する。一実施形態では、解離速度は約1x10−5/秒である。他の実施形態では、抗体は、約10−8M〜10−10Mの間のKでc−fmsまたはヒトc−fmsに結合し、さらに別の実施形態では、K≦2x10−10で結合する。
【0058】
「抗原結合性領域」は、特定の抗原に特異的に結合するタンパク質またはタンパク質の一部を意味する。例えば、抗原と相互作用して、抗原結合性タンパク質に抗原に対するその特異性および親和性を与えるアミノ酸残基を含む抗原結合性タンパク質の部分は、「抗原結合性領域」と呼ばれる。一般的に、抗原結合性領域は、1つまたは複数の「相補的結合領域」(「CDR」)を含む。ある抗原結合性領域は、1つまたは複数の「フレームワーク」領域も含む。「CDR」は、抗原結合の特異性および親和性に寄与するアミノ酸配列である。「フレームワーク」領域は、抗原結合性領域と抗原の間の結合を促進するために、CDRの適切な高次構造の維持を助けることができる。
【0059】
ある態様では、c−fmsタンパク質またはヒトc−fmsに結合する組換え抗原結合性タンパク質が提供される。この文脈で、「組換えタンパク質」は、組換え技術を用いて、すなわち、本明細書で記載の組換え核酸の発現を通して作製されるタンパク質である。組換えタンパク質の生成のための方法および技術は、当技術分野で周知である。
【0060】
用語「抗体」は、標的抗原に対する特異的結合を巡って無傷の抗体と競合することができる、任意のアイソタイプの無傷の免疫グロブリンまたはその断片を指し、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体および二重特異性抗体が含まれる。したがって、「抗体」は抗原結合性タンパク質の一種である。無傷の抗体は、一般に少なくとも2つの完全長重鎖および2つの完全長軽鎖を含むが、一部の例では、重鎖だけを含むことができるラクダにおいて天然に存在する抗体などのように、より少ない鎖を含むことができる。抗体は単一の源だけに由来することができ、または「キメラ」であってもよく、すなわち、下でさらに記載するように、抗体の異なる部分が2つの異なる抗体に由来してもよい。抗原結合性タンパク質、抗体または結合性断片は、ハイブリドーマとして、組換えDNA技術によって、または無傷の抗体の酵素的切断もしくは化学的切断によって生成することができる。特に明記しない限り、用語「抗体」には、2つの完全長重鎖および2つの完全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、変異体、断片、およびその突然変異体が含まれ、その例は下に記載される。
【0061】
用語「軽鎖」には、結合特異性を与えるために十分な可変領域配列を有する、完全長軽鎖およびその断片が含まれる。完全長軽鎖は、可変領域ドメインV、および定常領域ドメインCを含む。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。軽鎖は、κ鎖およびλ鎖を含む。
【0062】
用語「重鎖」には、結合特異性を与えるために十分な可変領域配列を有する、完全長重鎖およびその断片が含まれる。完全長重鎖は、可変領域ドメインV、および3つの定常領域ドメインC1、C2およびC3を含む。Vドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、Cドメインはカルボキシル末端にあり、C3がポリペプチドのカルボキシ末端に最も近い。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4サブタイプを含む)、IgA(IgA1およびIgA2サブタイプを含む)、IgMおよびIgEを含む任意のアイソタイプであってよい。
【0063】
抗体または免疫グロブリン鎖(重鎖または軽鎖)の「免疫学的に機能的な断片」(または単に「断片」)という用語は、本明細書で用いるように、完全長鎖に存在するアミノ酸の少なくともいくつかを欠いているが、抗原に特異的に結合することができる抗体の部分(その部分がどのように得られるか、または合成されるかに関係なく)を含む、抗原結合性タンパク質である。それらが標的抗原に特異的に結合し、所与のエピトープへの特異的結合を巡って無傷の抗体を含む他の抗原結合性タンパク質と競合することができるという点で、そのような断片は生物学的に活性である。一態様では、そのような断片は完全長軽鎖または重鎖に存在する少なくとも1つのCDRを保持し、一部の実施形態では、単一の重鎖および/または軽鎖またはその一部を含む。これらの生物学的に活性な断片は、組換えDNA技術によって生成することができ、または、無傷の抗体を含む抗原結合性タンパク質の酵素的または化学的切断によって生成することができる。免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片には、それらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体および単鎖抗体が含まれ、それらは、それらに限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ラクダまたはウサギを含む任意の哺乳動物源に由来することができる。本明細書で開示される抗原結合性タンパク質の機能的部分、例えば1つまたは複数のCDRを第2のタンパク質または小分子に共有結合させて、二機能性治療特性または長期血清半減期を有する、体内の特定の標的を対象にした治療剤を作製することができるであろうことがさらに企図される。
【0064】
「Fab断片」は、1つの軽鎖ならびに1つの重鎖のC1および可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0065】
「Fc」領域は、抗体のC1およびC2ドメインを含む2つの重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合によって、およびC3ドメインの疎水性相互作用によって一緒に保持される。
【0066】
「Fab’断片」は、2つのFab’断片の2つの重鎖の間で鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab’)分子を形成することができるように、1つの軽鎖、ならびに、VドメインおよびC1ドメイン、加えてC1およびC2ドメインの間の領域を含む1つの重鎖の部分を含む。
【0067】
「F(ab’)断片」は、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖の間で形成されるように、2つの軽鎖、ならびに、C1およびC2ドメインの間の定常領域の部分を含む2つの重鎖を含む。したがって、F(ab’)断片は、2つの重鎖の間でジスルフィド結合によって一緒に保持される、2つのFab’断片で構成される。
【0068】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域が欠けている。
【0069】
「単鎖抗体」は、重鎖および軽鎖の可変領域に柔軟なリンカーが連結して、抗原結合性領域を形成する単一のポリペプチド鎖を形成する、Fv分子である。単鎖抗体は、国際特許出願公開第88/01649号および米国特許第4,946,778号および第5,260,203号に詳細に述べられ、それらの開示は参照により組み込まれている。
【0070】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域だけまたは軽鎖の可変領域だけを含んでいる、免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片である。場合により、2つ以上のV部がペプチドリンカーにより共有結合で連結されて、二価ドメイン抗体を生成する。二価ドメイン抗体の2つのV部は、同じであるか異なる抗原を標的にすることができる。
【0071】
「二価の抗原結合性タンパク質」または「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。場合により、2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。二価の抗原結合性タンパク質および二価抗体は、二重特異性でもよい。下を参照されたい。
【0072】
「多重特異性抗原結合性タンパク質」または「多重特異性抗体」は、複数の抗原またはエピトープを標的にするものである。
【0073】
「二重特異性」、「二重に特異的」または「二機能性」の抗原結合性タンパク質または抗体は、それぞれ2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッドの抗原結合性タンパク質または抗体である。二重特異性の抗原結合性タンパク質および抗体は、多重特異性抗原結合性タンパク質または多重特異性抗体の一種で、それらに限定されないが、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結を含む様々な方法によって生成することができる。例えば、SongsivilaiおよびLachmann、1990年、Clin. Exp. Immunol.79巻:315〜321頁、Kostelnyら、1992年、J. Immunol.148巻:1547〜1553頁を参照されたい。二重特異性の抗原結合性タンパク質または抗体の2つの結合部位は、同じであるか異なるタンパク質標的の上に存在することができる2つの異なるエピトープに結合する。
【0074】
用語「中和抗原結合性タンパク質」または「中和抗体」は、リガンドに結合し、その結合パートナーへのリガンドの結合を阻止し、さもなければその結合パートナーに結合するリガンドがもたらすであろう生物応答を妨害する、抗原結合性タンパク質または抗体をそれぞれ指す。抗原結合性タンパク質、例えば抗体またはその免疫学的に機能的な断片の結合および特異性の評価において、(in vitro競合結合アッセイで測定して)過剰量の抗体がリガンドに結合する結合パートナーの量を少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%またはそれを超えて減少させる場合、抗体または断片は、その結合パートナーへのリガンドの結合を実質的に阻害する。c−fms抗原結合性タンパク質の場合、そのような中和分子は、CSF−1に結合するc−fmsの能力を低下させる。一部の実施形態では、中和抗原結合性タンパク質は、IL−34に結合するc−fmsの能力を阻害する。他の実施形態では、中和抗原結合性タンパク質は、CSF−1およびIL−34に結合するc−fmsの能力を阻害する。
【0075】
同じエピトープについて競合する抗原結合性タンパク質(例えば、中和抗原結合性タンパク質または中和抗体)との関連で用いられる場合、用語「競合する」は、抗原結合性タンパク質間の競合が、試験下の抗原結合性タンパク質(例えば、抗体またはその免疫学的に機能的な断片)が一般的な抗原(例えば、c−fmsまたはその断片)に対する参照抗原結合性タンパク質(例えば、リガンドまたは参照抗体)の特異的結合を阻止または阻害するアッセイによって決定されることを意味する。多くの種類の競合結合アッセイ、例えば、固相の直接もしくは間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相の直接もしくは間接酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahliら、1983年、Methods in Enzymology9巻:242〜253頁を参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Kirklandら、1986年、J Immunol.137巻:3614〜3619頁を参照)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、HarlowおよびLane、1988年、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Pressを参照);I−125標識を用いる固相直接標識RIA(例えば、Morelら、1988年、Molec. Immunol.25巻:7〜15頁を参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Cheungら、1990年、Virology176巻:546〜552頁を参照);および、直接標識RIA(Moldenhauerら、1990年、Scand. J. Immunol.32巻:77〜82頁)を用いることができる。一般的に、そのようなアッセイは、固体表面に結合させた精製抗原、またはこれらのいずれかを含む細胞、未標識の試験用抗原結合性タンパク質、および標識参照抗原結合性タンパク質の使用を含む。競合阻害は、試験用抗原結合性タンパク質の存在下で、固体表面または細胞に結合する標識の量を決定することによって測定される。通常、試験用抗原結合性タンパク質は、過剰に存在する。競合アッセイによって特定される抗原結合性タンパク質(競合する抗原結合性タンパク質)には、参照抗原結合性タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合性タンパク質、および、立体障害が起こるように参照抗原結合性タンパク質に結合するエピトープに十分に近い隣接したエピトープに結合する抗原結合性タンパク質が含まれる。競合的結合を測定する方法に関する追加の詳細は、本明細書の実施例で提供される。通常、競合する抗原結合性タンパク質が過剰に存在する場合、それは、一般的な抗原に対する参照抗原結合性タンパク質の特異的結合を、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%阻害する。一部の例では、結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%または97%またはそれを超えて阻害される。
【0076】
用語「抗原」は、選択的な結合剤、例えば抗原結合性タンパク質(例えば、抗体またはその免疫学的に機能的な断片を含む)に結合させることができ、さらにその抗原に結合することができる抗体を生成するために動物で用いることができる、分子または分子の一部を指す。抗原は、異なる抗原結合性タンパク質、例えば、抗体と相互作用することができる、1つまたは複数のエピトープを有することができる。
【0077】
用語「エピトープ」は、抗原結合性タンパク質(例えば、抗体)が結合する、分子の一部である。この用語は、抗体などの抗原結合性タンパク質、またはT細胞受容体に特異的に結合することができる、任意の決定因子を含む。エピトープは、連続または不連続(例えば、ポリペプチドにおいて、ポリペプチド配列中でお互いに連続していないが、分子の構成の中で抗原結合性タンパク質に結合しているアミノ酸残基)でよい。ある実施形態では、それらが抗原結合性タンパク質を生成するために用いるエピトープに類似した三次元構造を含むが、抗原結合性タンパク質を生成するために用いるエピトープで見られるアミノ酸残基を全く含まないかまたは一部しか含まないという点で、エピトープは模倣体であってよい。しばしば、エピトープはタンパク質の上に存在するが、一部の例では、核酸などの他の種類の分子の上に存在することができる。エピトープ決定因子は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基もしくはスルホニル基などの、分子の化学的活性表面基を含むことができ、特異的三次元構造特性および/または特異的電荷特性を有することができる。一般に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または高分子の複合混合物中の標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0078】
用語「同一性」は、配列のアラインメントおよび比較によって決定される、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の配列の間の関係を指す。「同一性割合」は、比較する分子中のアミノ酸またはヌクレオチドの間の、同一の残基の割合を意味し、比較する分子の最小サイズのものに基づいて計算される。これらの計算のために、特定の数理モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって、アラインメント中のギャップ(存在する場合)を扱わなければならない。整列させた(aligned)核酸またはポリペプチドの同一性を計算するために用いることができる方法には、Computational Molecular Biology(Lesk, A. M.編)、1988年、New York:Oxford University Press、Biocomputing Informatics and Genome Projects(Smith, D. W.編)、1993年、New York:Academic Press、Computer Analysis of Sequence Data、Part I(Griffin, A. M.およびGriffin, H. G.編)1994年、New Jersey:Humana Press、von Heinje, G.、1987年、Sequence Analysis
in Molecular Biology、New York:Academic Press、Sequence Analysis Primer(Gribskov, M.およびDevereux, J.編)、1991年、New York:M. Stockton Press、およびCarilloら、1988年、SIAM J. Applied Math.48巻:1073頁に記載のものが含まれる。
【0079】
同一性割合の計算では、比較する配列を、配列間で最大の一致を与えるように整列させる。同一性割合を決定するために用いるコンピュータプログラムはGCGプログラムパッケージであり、それはGAP(Devereuxら、1984年、Nucl. Acid Res.12巻:387頁、Genetics Computer Group、University of Wisconsin、Madison、WI)を含む。コンピュータアルゴリズムGAPは、配列同一性割合を決定する2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを整列させるために用いられる。配列は、それらのそれぞれのアミノ酸またはヌクレオチドの最適な一致のために整列させる(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)。ギャップオープンペナルティ(平均ダイアゴナルの3倍で計算され、「平均ダイアゴナル」は用いる比較マトリックスのダイアゴナルの平均である;「ダイアゴナル」は、特定の比較マトリックスによって完全なアミノ酸マッチのそれぞれに割り当てられるスコアまたは数である)およびギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップオープンペナルティの1/10倍)、ならびにPAM 250またはBLOSUM 62などの比較マトリックスが、アルゴリズムと一緒に用いられる。ある実施形態では、標準の比較マトリックス(PAM 250比較マトリックスについてはDayhoffら、1978年、Atlas of Protein Sequence and Structure5巻:345〜352頁を、BLOSUM 62比較マトリックスについてはHenikoffら、1992年、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.89巻:10915〜10919頁を参照)も、アルゴリズムによって用いられる。
【0080】
GAPプログラムを用いてポリペプチドまたはヌクレオチド配列の同一性割合を決定するための推奨パラメータは、以下の通りである。
【0081】
アルゴリズム:Needlemanら、1970年、J. Mol. Biol.48巻:443〜453頁
比較マトリックス:上記、Henikoffら、1992年からのBLOSUM 62
ギャップペナルティ:12(しかし、末端ギャップについてはゼロペナルティ)
ギャップ長ペナルティ:4
類似性の閾値:0
2つのアミノ酸配列を整列させるためのあるアラインメントスキームは、2つの配列の短い領域だけの一致をもたらすことができ、2つの完全長配列の間に有意な関係がないとしても、この小さなアラインメント領域は非常に高い配列同一性を有することができる。したがって、所望により、標的ポリペプチドの少なくとも50個の連続したアミノ酸にわたるアラインメントをもたらすように、選択されるアラインメント方法(GAPプログラム)を調節することができる。
【0082】
本明細書で用いるように、「実質的に純粋な」は、記載されている分子種が存在する優占種であること、すなわち、モルベースでそれが同じ混合物中の任意の他の個々の種よりも豊富であることを意味する。ある実施形態では、実質的に純粋な分子は、目的種が、存在するすべての高分子種の少なくとも50%(モルベースで)を構成する組成物である。他の実施形態では、実質的に純粋な組成物は、組成物に存在するすべての高分子種の少なくとも80%、85%、90%、95%または99%を構成する。他の実施形態では、目的種は基本的に均一に精製され、そこでは、従来の検出方法によって組成物中に汚染種を検出することができず、したがって、組成物は単一の検出可能な高分子種からなる。
【0083】
用語「治療する」は、傷害、病状または状態の治療または改善における任意の成功の証拠を指し、緩和;寛解;症状の軽減、または傷害、病状もしくは状態を患者により許容できるものにすること;変性または衰退の速度を遅くすること;変性の最終点の衰弱性を弱くすること;患者の身体的もしくは精神的な幸福を改善することなどの、任意の客観的もしくは主観的パラメータが含まれる。症状の治療または改善は、検診、神経精神医学的検査および/または精神医学的な評価の結果を含む、客観的もしくは主観的なパラメータに基づき得る。例えば、本明細書で提供されるある方法は、癌の発生率を低下させること、癌の寛解を引き起こすこと、および/または、癌または炎症性疾患と関連する症状を改善することによって、癌を首尾よく治療する。
【0084】
「有効量」は、一般に、症状の重症度および/もしくは頻度を低減させ、症状および/もしくは根本原因を除去し、症状および/もしくはそれらの根本原因の発生を予防し、ならびに/または癌から生じるか癌に関連する損傷を改善または治療するのに十分な量である。一部の実施形態では、有効量は、治療的有効量または予防的有効量である。「治療的有効量」は、疾患の状態(例えば癌)もしくは症状、特に疾患状態に関連する状態もしくは症状を治療するのに十分な量であるか、あるいは、さもなければ、いかなる任意の方法でも疾患状態または疾患に関連する任意の他の望ましくない症状の進行を予防し、妨害し、遅らせるかまたは逆転させるのに十分な量である。「予防的有効量」は、対象に投与される場合、意図する予防効果、例えば、癌の発症(もしくは再発生)を予防するか遅らせること、または癌もしくは癌症状の発症(もしくは再発生)の可能性を低下させることをもたらす医薬組成物の量である。完全な治療的もしくは予防的効果は、必ずしも一用量の投与によって起こるわけではなく、一連の用量の投与の後だけに起きてもよい。したがって、治療的もしくは予防的有効量は、一回または複数回の投与で投与することができる。
【0085】
「アミノ酸」は、当技術分野におけるその通常の意味を含む。20個の天然に存在するアミノ酸およびそれらの略記号は、従来の使用法に従う。任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる、Immunology − A Synthesis、第2版、(E. S. GolubおよびD. R. Green編)、Sinauer Associates:Sunderland、Mass.(1991年)を参照されたい。20個の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、非天然アミノ酸、例えば[α]−、[α]−二置換型アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、および他の非従来のアミノ酸もポリペプチドに適する成分であることができ、連語「アミノ酸」に含まれる。非従来のアミノ酸の例には、以下が含まれる。4−ヒドロキシプロリン、[γ]−カルボキシグルタメート、[ε]−N,N,N−トリメチルリジン、[ε]−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、[σ]−N−メチルアルギニンならびに他の類似アミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)。本明細書で用いられるポリペプチド表記法では、標準の使用法および慣例に従って、左の方向はアミノ末端方向であり、右の方向はカルボキシル末端方向である。
【0086】
全体概要
本明細書で、ヒトc−fms(hc−fms)タンパク質を含むc−fmsタンパク質に結合する抗原結合性タンパク質が提供される。提供される抗原結合性タンパク質は、本明細書で記載される1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)が埋め込まれるおよび/または付加されるポリペプチドである。一部の抗原結合性タンパク質では、CDRは「フレームワーク」領域に埋め込まれるが、それは、CDRの適切な抗原結合特性が達成されるように、CDRを配向させる。一般に、提供される抗原結合性タンパク質は、CSF−1とc−fmsとの相互作用を妨害、ブロック、低減または調節することができる。
【0087】
本明細書で記載されるある抗原結合性タンパク質は、抗体であるか、または抗体に由来する。ある実施形態では、抗原結合性タンパク質のポリペプチド構造は、それらに限定されないが、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書で「抗体模倣体」と称することもある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合物(本明細書で「抗体複合体」と称することもある)およびそれらの断片を含む抗体に基づく。様々な構造物が、本明細書の下でさらに記載される。
【0088】
本明細書で提供される抗原結合性タンパク質は、c−fms、特にヒトc−fmsの細胞外ドメインに結合することが証明されている。下の実施例でさらに記載されるように、ある抗原結合性タンパク質が試験され、他のいくつかの抗c−fms抗体に結合するものと異なるエピトープに結合することが見出された。提供される抗原結合性タンパク質はCSF−1と競合し、それによって、CSF−1がその受容体に結合することを阻止する。ある実施形態では、抗原結合性タンパク質はIL−34とc−fmsとの結合を阻害する。他の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、CSF−1およびIL−34の両方に結合するc−fmsの能力を阻害する。結果として、本明細書で提供される抗原結合性タンパク質は、c−fms活性を阻害することができる。詳細には、これらのエピトープに結合する抗原結合性タンパク質は、以下の活性の1つまたは複数を有することができる:とりわけ、c−fms自己リン酸化の阻害、c−fmsシグナル伝達経路の誘導の阻害、c−fms誘発性の細胞増殖の阻害、腫瘍または腫瘍間質での腫瘍関連マクロファージの単球走化性蓄積の阻害、腫瘍促進因子の生成の阻害、およびCSF−1結合の後にc−fmsによって誘導される他の生理作用の阻害。本明細書で開示される抗原結合性タンパク質は、様々な有用性を有する。抗原結合性タンパク質のいくつかは、例えば、特異的結合アッセイ、c−fms、特にhc−fmsもしくはそのリガンドの親和性精製、およびc−fms活性の他のアンタゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイにおいて有用である。抗原結合性タンパク質のいくつかは、c−fmsへのCSF−1の結合を阻害するために、またはc−fmsの自己リン酸化を阻害するために有用である。
【0089】
本明細書で説明するように、抗原結合性タンパク質は、様々な治療適用で用いることができる。例えば、本明細書でさらに記載されるように、あるc−fms抗原結合性タンパク質は、c−fmsに関連する状態を治療するために、例えば患者で単球走化性を低減させるために、腫瘍への単球移動を阻害するために、腫瘍内の腫瘍関連マクロファージの蓄積を阻害するために、または新脈管形成を阻害するために有用である。ある実施形態では、抗原結合性タンパク質は、腫瘍の増殖、進行および/または転移を促進するTAMの能力を阻害する。さらに、腫瘍細胞自体がc−fmsを発現して利用する場合、c−fmsに結合する抗体はそれらの増殖/生存を阻害することができよう。抗原結合性タンパク質の他の用途には、例えば、c−fms関連の疾患または状態の診断、およびc−fmsの有無を判定するためのスクリーニングアッセイが含まれる。本明細書で記載される抗原結合性タンパク質のいくつかは、c−fms活性に関連する結果、症状および/または病状の治療で有用である。これらには、様々な種類の癌および炎症性疾患、ならびに癌悪液質が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、様々な骨障害を治療するために用いることができる。
【0090】
c−fms コロニー刺激因子1(CSF−1)は、単核食細胞系統の生存、増殖および分化を促進する。CSF−1は、細胞表面c−fms受容体に結合し、受容体c−fmsキナーゼによる自己リン酸化、および以降の細胞内シグナルのカスケードをもたらすことによってその活性を発揮する。
【0091】
用語「c−fms」、「c−fms受容体」、「ヒトc−fms」および「ヒトc−fms受容体」は、それに限定されないがCSF−1を含むリガンドに結合し、その結果、細胞内のシグナル伝達経路を開始する、細胞表面受容体を指す。一部の実施形態では、受容体はIL−34に、またはCSF−1とIL−34の両方に結合することができる。本明細書で開示される抗原結合性タンパク質は、c−fms、特にヒトc−fmsに結合する。ヒトc−fmsアミノ酸配列の例示的な細胞外ドメインを、配列番号1に表す。下記のように、c−fmsタンパク質は、断片を含むこともできる。本明細書で用いるように、これらの用語は互換的に用いられ、受容体、特にCSF−1に特異的に結合するヒト受容体を意味する。
【0092】
本明細書で用いる用語ヒトc−fms(h−cfms)受容体は、天然に存在する対立遺伝子も含み、例には、突然変異A245S、V279MおよびH362Rが含まれる。用語c−fmsは、c−fmsアミノ酸配列の翻訳後修飾も含む。例えば、ヒトc−fmsの細胞外ドメイン(ECD)(受容体の残基20〜512)は、配列中に11個の可能なN結合グリコシル化部位を有する。したがって、抗原結合性タンパク質は、それらの位置の1つまたは複数でグリコシル化されるタンパク質に結合すること、またはそれらから生成することができる。
【0093】
c−fmsシグナル伝達経路は、組織マクロファージ集団の慢性活性化が関与するいくつかのヒト病状で、上方制御される。CSF−1生成の増加は、炎症性腸疾患などの様々な炎症性疾患で見られる、組織マクロファージの蓄積とも関連している。さらに、いくつかの腫瘍型の増殖は、癌細胞および/または腫瘍間質でのCSF−1およびc−fms受容体の過剰発現と関連している。
【0094】
c−fms受容体抗原結合性タンパク質
c−fmsの活性を調節するのに有用な様々な選択的結合剤が、提供される。これらの剤には、例えば、抗原結合性ドメイン(例えば、抗原結合性領域を有する単鎖抗体、ドメイン抗体、免疫接着剤およびポリペプチド)を含み、c−fmsポリペプチド、特にヒトc−fmsに特異的に結合する、抗原結合性タンパク質が含まれる。剤のいくつかは、例えば、c−fmsへのCSF−1の結合を阻害することにおいて有用であり、したがって、c−fmsシグナル伝達に関連する1つまたは複数の活性を阻害、妨害または調節するために用いることができる。ある実施形態では、抗原結合性タンパク質は、IL−34とc−fmsとの結合を阻害するために用いることができる。一部の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、CSF−1およびIL−34の両方に結合するc−fmsの能力を妨害する。
【0095】
一般に、提供される抗原結合性タンパク質は、一般的に本明細書で記載の1つまたは複数のCDR(例えば、1、2、3、4、5または6個)を含む。場合により、抗原結合性タンパク質は、(a)ポリペプチド構造、および(b)ポリペプチド構造に挿入および/または結合される1つまたは複数のCDRを含む。ポリペプチド構造は、様々な異なる形をとることができる。例えば、それは天然に存在する抗体のフレームワークまたはその断片もしくは変異体であってよいか、またはそれを含むことができ、あるいは、現実には完全に合成であってよい。様々なポリペプチド構造の例を、下でさらに記載する。
【0096】
ある実施形態では、抗原結合性タンパク質のポリペプチド構造は、それらに限定されないが、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書で「抗体模倣体」と称することもある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合物(「抗体複合体」と称することもある)およびそれぞれ各々の一部または断片を含む抗体であるか、または抗体に由来する。場合により、抗原結合性タンパク質は、抗体の免疫学的断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)またはscFv)である。様々な構造を、本明細書でさらに記載し、定義する。
【0097】
本明細書で提供される抗原結合性タンパク質のあるものは、ヒトc−fmsに特異的に結合する。具体的な実施形態において、抗原結合性タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒトc−fmsタンパク質に特異的に結合する。
【0098】
抗原結合性タンパク質を治療適用のために用いる実施形態では、抗原結合性タンパク質は、c−fmsの1つまたは複数の生物活性を阻害、妨害または調節することができる。この場合、過剰量の抗体が、(例えば、in vitro競合結合アッセイで結合を測定することによって)少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%またはそれを超えて、c−fmsに結合するヒトc−fmsの量を減少させるか、またはその逆の場合、抗原結合性タンパク質はCSF−1に特異的に結合し、かつ/またはCSF−1へのヒトc−fmsの結合を実質的に阻害する。c−fmsは多くの異なる生物効果を有し、それらは異なる細胞型において多くの異なるアッセイで測定することができる。そのようなアッセイの例を、本明細書で提供する。
【0099】
天然に存在する抗体構造
提供される抗原結合性タンパク質のいくつかは、一般的に天然に存在する抗体と関連する構造を有する。これらの抗体の構造単位は、一般的に1つまたは複数の四量体を含み、それぞれはポリペプチド鎖の2つの同一のカプレットで構成されるが、哺乳動物の一部の種類はまた単一の重鎖だけを有する抗体を生成する。一般的な抗体では、各対またはカプレットは、1つの完全長「軽」鎖(ある実施形態では約25kDa)および1つの完全長「重」鎖(ある実施形態では約50〜70kDa)を含む。各個々の免疫グロブリン鎖はいくつかの「免疫グロブリンドメイン」で構成され、それぞれおよそ90〜110個のアミノ酸からなり、特徴のある折り畳みパターンを示す。これらのドメインは、抗体ポリペプチドが構成される基本単位である。各鎖のアミノ末端部分は、一般的に、抗原認識の役割を担う可変ドメインを含む。カルボキシ末端部分は、進化的に鎖の他方の末端部分よりも保存され、「定常領域」または「C領域」と呼ばれる。ヒト軽鎖は、一般的にκおよびλ軽鎖に分類され、これらのそれぞれは1つの可変ドメインおよび1つの定常ドメインを含む。重鎖は、一般的に、μ、δ、γ、αまたはε鎖に分類され、これらは抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと定義する。IgGは、
それらに限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む、いくつかのサブタイプを有する。IgMサブタイプは、IgMおよびIgM2を含む。IgAサブタイプは、IgA1およびIgA2を含む。ヒトにおいては、IgAおよびIgDアイソタイプは、4つの重鎖および4つの軽鎖を含む。IgGおよびIgEアイソタイプは、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。IgMアイソタイプは、5つの重鎖および5つの軽鎖を含む。重鎖C領域は、一般的に、エフェクター機能の役割を担うことができる1つまたは複数のドメインを含む。重鎖定常領域ドメイン数は、アイソタイプによって決まる。例えばIgG重鎖は、それぞれ、C1、C2およびC3として知られる3つのC領域ドメインを含む。提供される抗体は、これらのアイソタイプおよびサブタイプのいずれかを有することができる。ある実施形態では、c−fms抗体は、IgG1、IgG2またはIgG4サブタイプである。
【0100】
完全長の軽鎖および重鎖では、可変領域および定常領域は約12個以上のアミノ酸の「J」領域で連結され、重鎖は、約10個、より多いアミノ酸の「D」領域も含む。例えば、(すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、)Fundamental Immunology、第2版、第7章(Paul, W.編)1989年、New York:Raven Pressを参照されたい。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、一般的に抗原結合部位を形成する。
【0101】
例示的なc−fmsモノクローナル抗体のIgG2重鎖定常ドメインの一例は、以下のアミノ酸配列を有する。
【0102】
【化1】
【0103】
例示的なc−fmsモノクローナル抗体のκ軽鎖定常ドメインの一例は、以下のアミノ酸配列を有する。
【0104】
【化2】
【0105】
通常、免疫グロブリン鎖の可変領域は、「相補性決定領域」またはCDRと呼ばれることの方が多い3つの超可変領域で連結される、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)を含む、同じ全体構造を示す。一般的に、上で指摘した各重鎖/軽鎖対の2つの鎖からのCDRは、標的タンパク質(例えば、c−fms)の上の特定のエピトープと特異的に結合する構造を形成するように、フレームワーク領域によって整列される。N末端からC末端にかけて、天然に存在する軽鎖可変領域および重鎖可変領域の両方は、これらのエレメントの以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4に一般的に従う。これらのドメインのそれぞれにおいて位置を占めるアミノ酸に数字を割り当てるための、付番方式が考案されている。この付番方式は、KabatのSequences of Proteins of Immunological Interest(1987年および1991年、NIH、Bethesda、MD)、またはChothiaおよびLesk、1987年、J. Mol. Biol.196巻:901〜917頁、Chothiaら、1989年、Nature342巻:878〜883頁で規定されている。
【0106】
本明細書で提供される様々な重鎖および軽鎖可変領域を、表2に表す。これらの可変領域のそれぞれを上記の重鎖および軽鎖定常領域に結合して、それぞれ完全な抗体の重鎖および軽鎖を形成することができる。さらに、そのように生成された重鎖および軽鎖の配列のそれぞれを組み合わせて、完全な抗体構造を形成することができる。本明細書で提供される重鎖および軽鎖可変領域を、上記の例示的な配列と異なる配列を有する他の定常ドメインに結合することもできることを理解するべきである。
【0107】
提供される抗体の完全長軽鎖および重鎖のいくつかの具体的な例、およびそれらの対応するアミノ酸配列を、表1に要約する。
【0108】
【表1-1】
【0109】
【表1-2】
【0110】
【表1-3】
【0111】
【表1-4】
【0112】
【表1-5】
【0113】
【表1-6】
【0114】
【表1-7】
【0115】
【表1-8】
【0116】
【表1-9】
【0117】
【表1-10】
【0118】
【表1-11】
【0119】
また、表1に記載の例示的な重鎖(H1、H2、H3など)のそれぞれを表1に示す例示的な軽鎖のいずれかと組み合わせて、抗体を形成することができる。そのような組合せの例には、L1〜L34のいずれかと組み合わせたH1;L1〜L34のいずれかと組み合わせたH2;L1〜L34のいずれかと組み合わせたH3、その他が含まれる。場合により、抗体は、表1に記載のものからの、少なくとも1つの重鎖および1つの軽鎖を含む。場合により、抗体は、表1に記載の2つの異なる重鎖および2つの異なる軽鎖を含む。他の場合、抗体は2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖を含む。例えば、抗体または免疫学的に機能的な断片は、2つのH1重鎖および2つのL1軽鎖、または2つのH2重鎖および2つのL2軽鎖、または2つのH3重鎖および2つのL3軽鎖、ならびに表1に記載の軽鎖対および重鎖対の他の類似した組合せを含むことができる。
【0120】
提供される他の抗原結合性タンパク質は、表1に示す重鎖および軽鎖の組合せによって形成される抗体の変異体であって、これらの鎖のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の同一性を有する軽鎖および/または重鎖を含む。場合により、そのような抗体は少なくとも1つの重鎖および1つの軽鎖を含み、他の場合では、変異形態は2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖を含む。
【0121】
抗体の可変ドメイン
以下の表2中に示すような、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、およびV32からなる群から選択される抗体重鎖可変領域、および/またはV1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、V32、V33、およびV34からなる群から選択される抗体軽鎖可変領域、ならびにこれらの軽鎖および重鎖可変領域の免疫機能断片、誘導体、ムテインおよび変異体を含有する抗原結合性タンパク質も提供する。
【0122】
様々な重鎖および軽鎖可変領域の配列アラインメントを、それぞれ図1Aおよび1B中に与える。
【0123】
この型の抗原結合性タンパク質は、表2中に挙げるように「x」が重鎖可変領域の数に相当し、かつ「y」が軽鎖可変領域の数に相当する(一般に、xとyはそれぞれ1または2である)式「Vx/Vy」によって一般に表すことができる:
【0124】
【表2-1】
【0125】
【表2-2】
【0126】
【表2-3】
【0127】
【表2-4】
【0128】
【表2-5】
【0129】
表2中に挙げる重鎖可変領域のそれぞれは、表2中に示した軽鎖可変領域のいずれかと組み合わせて抗原結合性タンパク質を形成することができる。このような組合せの例には、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、V32、V33、またはV34のいずれかと組み合わせたV1、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、またはV30のいずれかと組み合わせたV2、またはV1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、V32、V33、またはV34のいずれかと組み合わせたV3などが含まれる。
【0130】
いくつかの場合、抗原結合性タンパク質は、表2中に挙げる領域由来の少なくとも1つの重鎖可変領域および/または1つの軽鎖可変領域を含む。いくつかの場合、抗原結合性タンパク質は、表2中に挙げる領域由来の少なくとも2つの異なる重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。このような抗原結合性タンパク質の例は、(a)1つのV1、および(b)V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、またはV32の1つを含む。別の例は(a)1つのV2、および(b)V1、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、またはV32の1つを含む。さらに別の例は(a)1つのV3、および(b)V1、V2、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、またはV32の1つなどを含む。
【0131】
このような抗原結合性タンパク質のさらに別の例は、(a)1つのV1、および(b)V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、V32、V33、またはV34の1つを含む。このような抗原結合性タンパク質のさらに別の例は、(a)1つのV2、および(b)V1、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、V32、V33、およびV34の1つを含む。このような抗原結合性タンパク質のさらに別の例は、(a)1つのV3、および(b)V1、V2、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、V32、V33、またはV34の1つなどを含む。
【0132】
重鎖可変領域の様々な組合せ物は、軽鎖可変領域の任意の様々な組合せ物と組み合わせることができる。
【0133】
他の場合、抗原結合性タンパク質は、2つの同一の軽鎖可変領域および/または2つの同一の重鎖可変領域を含有する。一例として、抗原結合性タンパク質は、表2中に挙げる軽鎖可変領域の対と重鎖可変領域の対の組合せで、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を含む抗体または免疫機能断片であってよい。
【0134】
提供するいくつかの抗原結合性タンパク質は、わずか1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基で、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、およびV32から選択される重鎖可変ドメインの配列と異なるアミノ酸の配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この場合それぞれのこのような配列の違いは独立に、1アミノ酸の欠失、挿入または置換のいずれかであり、その欠失、挿入および/または置換によって前述の可変ドメイン配列に対して15以下のアミノ酸の変化をもたらす。いくつかの抗原結合性タンパク質中の重鎖可変領域は、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、およびV32の重鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
【0135】
特定の抗原結合性タンパク質は、わずか1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基で、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、V32、V33、またはV34から選択される軽鎖可変ドメインの配列と異なるアミノ酸の配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、この場合それぞれのこのような配列の違いは独立に、1アミノ酸の欠失、挿入または置換のいずれかであり、その欠失、挿入および/または置換によって前述の可変ドメイン配列に対して15以下のアミノ酸の変化をもたらす。いくつかの抗原結合性タンパク質中の軽鎖可変領域は、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、V32、V33、またはV34の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
【0136】
さらに他の抗原結合性タンパク質、例えば抗体または免疫機能断片は、ここに記載するような変異体型の変異体重鎖および変異体軽鎖を含む。
【0137】
CDR
本明細書に開示する抗原結合性タンパク質は、その中に1つまたは複数のCDRが移植、挿入および/または結合したポリペプチドである。抗原結合性タンパク質は1、2、3、4、5または6個のCDRを有することができる。したがって抗原結合性タンパク質は、1つの重鎖CDR1(「CDRH1」)、および/または1つの重鎖CDR2(「CDRH2」)、および/または1つの重鎖CDR3(「CDRH3」)、および/または1つの軽鎖CDR1(「CDRL1」)、および/または1つの軽鎖CDR2(「CDRL2」)、および/または1つの軽鎖CDR3(「CDRL3」)を例えば有することができる。いくつかの抗原結合性タンパク質は、CDRH3とCDRL3の両方を含む。特異的重鎖および軽鎖CDRは、それぞれ表3Aおよび3Bにおいて確認する。
【0138】
所与の抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)は、Kabatらによって、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、US Dept.of Health and Human Services、PHS、NIH、NIH公開番号91−3242、1991年中に記載された系を使用して同定することができる。本明細書に開示する特定の抗体は、表3A(CDRH)および表3B(CDRL)中に表す1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列と同一であるかまたは相当な配列同一性を有する1つまたは複数のアミノ酸配列を含む。
【0139】
【表3A-1】
【0140】
【表3A-2】
【0141】
【表3B-1】
【0142】
【表3B-2】
【0143】
【表3B-3】
【0144】
天然に存在する抗体内のCDRの構造および性質は前に記載している。簡単に言うと、従来の抗体中では、CDRが重鎖および軽鎖可変領域中のフレームワーク内に埋め込まれており、そこでそれらは抗原結合および抗原認識を担う領域を構成する。可変領域は、フレームワーク領域(Kabatら、1991年、上記によってフレームワーク領域1〜4、FR1、FR2、FR3、およびFR4、Chothia and Lesk、1987年、上記も参照)内に、少なくとも3つの重鎖または軽鎖CDRを含む、上記参照(Kabatら、1991年、Sequences of Proteins of Immunological Interest、Public Health Service N.I.H.、Bethesda、MD;Chothia and Lesk、1987年、J.Mol.Biol.196巻:901〜917頁;Chothiaら、1989年、Nature342巻:877〜883頁も参照)。しかしながら、本明細書で提供するCDRは、従来の抗体構造の抗原結合ドメインを定義するために使用することができるだけでなく、本明細書に記載される様々な他のポリペプチド構造に埋め込むことができる。
【0145】
一態様では、提供するCDRは、(a)(i)配列番号136〜147からなる群から選択されるCDRH1、(ii)配列番号148〜164からなる群から選択されるCDRH2、(iii)配列番号165〜190からなる群から選択されるCDRH3、および(iv)わずか5、4、3、2、または1アミノ酸の1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または挿入を含有する(i)、(ii)および(iii)のCDRHからなる群から選択されるCDRH、(B)(i)配列番号191〜210からなる群から選択されるCDRL1、(ii)配列番号211〜224からなる群から選択されるCDRL2、(iii)配列番号225〜246からなる群から選択されるCDRL3、および(iv)わずか5、4、3、2、または1アミノ酸の1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または挿入を含有する(i)、(ii)および(iii)のCDRLからなる群から選択されるCDRLである。
【0146】
別の態様では、抗原結合性タンパク質は、表3Aおよび3B中に挙げるCDRの1、2、3、4、5、または6個の変異体型を含み、それぞれ表3Aおよび3B中に挙げるCDR配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する。いくつかの抗原結合性タンパク質は表3Aおよび3B中に挙げる1、2、3、4、5、または6個のCDRを含み、それぞれこれらの表中に挙げるCDRとわずか1、2、3、4または5アミノ酸により異なる。
【0147】
さらに別の態様では、本明細書に開示するCDRは、関連モノクローナル抗体の群に由来するコンセンサス配列を含む。本明細書に記載されるように、「コンセンサス配列」は、いくつかの配列間で共通の保存アミノ酸および所与のアミノ酸配列内で変わる可変アミノ酸を有するアミノ酸配列を指す。提供するCDRコンセンサス配列は、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3のそれぞれに相当するCDRを含む。
【0148】
コンセンサス配列は、抗c−fms抗体のVおよびVに相当するCDRの標準的な系統発生分析を使用して決定した。コンセンサス配列は、VまたはVに相当する同じ配列内に隣接するCDRを維持することによって決定した。簡単に言うと、VまたはVのいずれかの可変ドメイン全体に相当するアミノ酸配列を、比較アラインメントの処理および系統発生の推測を容易にするためにFASTA形式に変換した。次に、これらの配列のフレームワーク領域を、VまたはVに相当する同じ配列内に隣接するCDRを依然として維持しながら、同時事象(例えば、共通の生殖系列フレームワーク遺伝物を偶然に共有する無関連抗体など)による偏度に重み付けし、いかなるアミノ酸位置も導入せずにCDR単独の調査を実施することができるように、人工リンカー配列(「GGGAAAGGGAAA」(配列番号325))で置換した。次いでこの形式のVまたはV配列を、標準的なClutalW様アルゴリズムを利用するプログラムを使用する、配列類似性アラインメントによる照合に供した(Thompsonら、1994年、Nucleic Acids Res.22巻:4673〜4680頁を参照)。8.0のギャップクリエーションペナルティおよび2.0のギャップ伸長ペナルティを利用した。このプログラムも同様に、UPGMA(算術平均を使用する非加重結合法)または近隣結合法(Saitou and Nei、1987年、Molecular Biology and Evolution4巻:406〜425頁を参照)のいずれかを使用し配列類似性アラインメントに基づいて系統樹(系統樹のイラスト)を生成して、枝長の比較および分類によって配列群の類似性および相違を構築し例証した。両者の方法共に同様の結果をもたらしたが、UPGMA由来系統樹法を最終的に使用した。この方法は簡潔でより中庸な推定値のセットを利用するからである。UPGMA由来系統樹は図2中に示し、この場合類似の配列群は、群内の個々の配列間に100残基当たり15未満の置換を有するとして定義し(スケールに関しては系統樹のイラスト中の凡例を参照)、これらを使用してコンセンサス配列の集合を定義した。
【0149】
図2中に示すように、本明細書で提供する様々な抗原結合性タンパク質の系統分析は、群A、B、およびCで表す3群の密接に関連した系統発生クローンをもたらした。
【0150】
群Aの様々なCDR領域のコンセンサス配列は以下のコンセンサス配列である:
a.XがFおよびLからなる群から選択される、一般式GYTXTSYGISのCDRH1(配列番号307);
b.XがTおよびPからなる群から選択され、XがLおよびFからなる群から選択される、一般式WISAYNGNXNYAQKXQGのCDRH2(配列番号308);
c.XがEおよびDからなる群から選択され、XがSおよびQからなる群から選択され、XがGおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがLおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがWおよびGからなる群から選択され、XがVおよびLからなる群から選択され、XがEおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがGおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがFおよびLからなる群から選択される、一般式XFGEXFDYのCDRH3(配列番号309);
d.XがQおよびSからなる群から選択され、XがDおよびYからなる群から選択され、XがNおよびDからなる群から選択され、XがFおよびYからなる群から選択される、一般式KSSXGVLXSSXNKNXLAのCDRL1(配列番号310);
e.XがNおよびTからなる群から選択される、一般式WASXRESのCDRL2(配列番号311);および
f.XがSおよびTからなる群から選択され、XがDおよびTからなる群から選択され、XがFおよびPからなる群から選択される、一般式QQYYXPXTのCDRL3(配列番号312)。
【0151】
群Bの様々なCDR領域のコンセンサス配列は以下のコンセンサス配列である:
a.XがFおよびVからなる群から選択され、XがSおよびNからなる群から選択され、XがNおよびTからなる群から選択される、一般式GFTXAWMSを有するCDRH1(配列番号313);
b.XがSおよびTからなる群から選択され、XがGおよびWからなる群から選択され、XがTおよびAからなる群から選択され、XがYおよびNからなる群から選択される、一般式RIKXKTDGXTXDXAAPVKGを有するCDRH2(配列番号314);
c.XがE、DおよびGからなる群から選択され、XがY、Lおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがY、R、Gおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがH、G、Sおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがI、A、Lおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがL、V、T、Pおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがT、V、Y、G、Wおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがG、V、SおよびTからなる群から選択され、XがS、T、D、NおよびGからなる群から選択され、X10がG、F、P、およびYからなる群から選択され、X11がG、YおよびNからなる群から選択され、X12がVおよびYからなる群から選択され、X13がW、SおよびYからなる群から選択され、X14がM、TおよびVからなる群から選択される、一般式X10111213YYGX14DVを有するCDRH3(配列番号315);
d.XがSおよびNからなる群から選択される、一般式QASQDIXNYLNを有するCDRL1(配列番号316);
e.XがAおよびTからなる群から選択され、XがTおよびPからなる群から選択される、一般式DXSNLEXを有するCDRL2(配列番号317);および f.XがNおよびDからなる群から選択され、XがLおよびIからなる群から選択される、一般式QQYDXLXTを有するCDRL3(配列番号318)。
【0152】
群Cの様々なCDR領域のコンセンサス配列は以下のコンセンサス配列である:
a.XがSおよびIからなる群から選択される、一般式GFTFXSYGMHを有するCDRH1(配列番号319);
b.XがEおよびKからなる群から選択される、一般式VIWYDGSNXYYADSVKGを有するCDRH2(配列番号320);
c.XがG、SおよびWからなる群から選択され、XがN、DおよびSからなる群から選択され、XがYおよびFからなる群から選択され、XがDおよびGからなる群から選択される、一般式SSXYXMDVを有するCDRH3(配列番号321);
d.XがQおよびHからなる群から選択され、XがSおよびNからなる群から選択され、XがFおよびYからなる群から選択される、一般式QASXDIXNXLNを有するCDRL1(配列番号322);
e.XがTおよびIからなる群から選択される、一般式DASNLEXを有するCDRL2(配列番号323);および
f.XがQおよびRからなる群から選択され、XがNおよびDからなる群から選択され、XがLおよびFからなる群から選択され、XがF、LおよびIからなる群から選択される、一般式QXYDXPXTを有するCDRL3(配列番号324)。
【0153】
いくつかの場合、抗原結合性タンパク質は、前述のコンセンサス配列の1つを有する少なくとも1つのCDRH1、CDRH2、またはCDRH3を含む。いくつかの場合、抗原結合性タンパク質は、前述のコンセンサス配列の1つを有する少なくとも1つのCDRL1、CDRL2、またはCDRL3を含む。他の場合、抗原結合性タンパク質は、前述のコンセンサス配列に従う少なくとも2つのCDRH、および/または前述のコンセンサス配列に従う少なくとも2つのCDRLを含む。一態様では、CDRHおよび/またはCDRLは異なる群A、B、およびCに由来する。他の場合、抗原結合性タンパク質は、同じ群A、B、またはC由来の少なくとも2つのCDRH、および/または同じ群A、B、またはC由来の少なくとも2つのCDRLを含む。他の態様では、抗原結合性タンパク質は、前述の同じ群A、B、またはC由来のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3配列、および/または前述の同じ群A、B、またはC由来のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3配列を含む。
【0154】
それ故、提供するいくつかの抗原結合性タンパク質は、群Aのコンセンサス配列由来の1、2、3、4、5または全6個のCDRを含む。したがって、特定の抗原結合性タンパク質は、例えば、前述の群Aのコンセンサス配列由来のCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む。提供する他の抗原結合性タンパク質は、群Bのコンセンサス配列由来の1、2、3、4、5または全6個のCDRを含む。したがって、特定の抗原結合性タンパク質は、例えば、前述の群Bのコンセンサス配列由来のCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む。提供するさらに他の抗原結合性タンパク質は、群Cのコンセンサス配列由来の1、2、3、4、5または全6個のCDRを含む。したがって、特定の抗原結合性タンパク質は、例えば、前述の群Aのコンセンサス配列由来のCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む。
【0155】
例示的な抗原結合性タンパク質
一態様によれば、(A)(i)配列番号136〜147からなる群から選択されるCDRH1、(ii)配列番号148〜164からなる群から選択されるCDRH2、(iii)配列番号165〜190からなる群から選択されるCDRH3、および(iv)わずか5、4、3、2、または1アミノ酸の1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または挿入を含有する(i)、(ii)および(iii)のCDRHからなる群から選択される1つまたは複数の重鎖相補性決定領域(CDRH)、(B)(i)配列番号191〜210からなる群から選択されるCDRL1、(ii)配列番号211〜224からなる群から選択されるCDRL2、(iii)配列番号225〜246からなる群から選択されるCDRL3、および(iv)わずか5、4、3、2、または1アミノ酸の1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または挿入を含有する(i)、(ii)および(iii)のCDRLからなる群から選択される1つまたは複数の軽鎖相補性決定領域(CDRL)、または(C)(A)の1つまたは複数の重鎖CDRHおよび(B)の1つまたは複数の軽鎖CDRLを含むc−fmsと結合する単離された抗原結合性タンパク質を提供する。
【0156】
さらに別の実施形態では、単離された抗原結合性タンパク質は、(A)(i)配列番号136〜147からなる群から選択されるCDRH1、(ii)配列番号148〜164からなる群から選択されるCDRH2、および(iii)配列番号165〜190からなる群から選択されるCDRH3からなる群から選択されるCDRH、(B)(i)配列番号191〜210からなる群から選択されるCDRL1、(ii)配列番号211〜224からなる群から選択されるCDRL2、および(iii)配列番号225〜246からなる群から選択されるCDRL3からなる群から選択されるCDRL、または(C)(A)の1つまたは複数の重鎖CDRHおよび(B)の1つまたは複数の軽鎖CDRLを含むことができる。一実施形態では、単離された抗原結合性タンパク質は、(A)配列番号136〜147のCDRH1、配列番号148〜164のCDRH2、および配列番号165〜190のCDRH3、および(B)配列番号191〜210のCDRL1、配列番号211〜224のCDRL2、および配列番号225〜246のCDRL3を含むことができる。
【0157】
別の実施形態では、可変重鎖(VH)は、配列番号70〜101からなる群から選択されるアミノ酸の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の配列同一性を有し、かつ/または可変軽鎖(VL)は、配列番号102〜135からなる群から選択されるアミノ酸の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、VHは配列番号70〜101からなる群から選択され、かつ/またはVLは配列番号102〜135からなる群から選択される。
【0158】
別の態様では、c−fmsのc−fmsサブドメインIg様l−1およびIg様1−2を含有するエピトープと特異的に結合する単離された抗原結合性タンパク質も提供する。
【0159】
さらなる態様では、c−fmsと結合する単離された抗原結合性タンパク質を提供するが、その抗原結合性タンパク質は、(1)配列番号165〜190からなる群から選択されるCDRH3、(2)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(i)のCDRH3とアミノ酸配列が異なるCDRH3、および(3)(a)XがEおよびDからなる群から選択され、XがSおよびQからなる群から選択され、XがGおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがLおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがWおよびGからなる群から選択され、XがVおよびLからなる群から選択され、XがEおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがGおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがFおよびLからなる群から選択される、XFGEXFDY(配列番号309)(前に記載した系統発生群A由来のCDRH3コンセンサス配列)、(b)XがE、DおよびGからなる群から選択され、XがY、Lおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがY、R、Gおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがH、G、Sおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがI、A、Lおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがL、V、T、Pおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがT、V、Y、G、Wおよび無アミノ酸からなる群から選択され、XがG、V、SおよびTからなる群から選択され、XがS、T、D、NおよびGからなる群から選択され、X10がG、F、P、およびYからなる群から選択され、X11がG、YおよびNからなる群から選択され、X12がVおよびYからなる群から選択され、X13がW、SおよびYからなる群から選択され、X14がM、TおよびVからなる群から選択される、X10111213YYGX14DV(配列番号315)(前に記載した系統発生群B由来のCDRH3コンセンサス配列)、および(c)XがG、SおよびWからなる群から選択され、XがN、DおよびSからなる群から選択され、XがYおよびFからなる群から選択され、XがDおよびGからなる群から選択される、SSXYXMDV3(配列番号321)(前に記載した系統発生群C由来のCDRH3コンセンサス配列)からなる群から選択されるCDRH3アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRH3、または(B)(1)配列番号225〜246からなる群から選択されるCDRL3、(2)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(i)のCDRL3とアミノ酸配列が異なるCDRL3、および(3)(a)XがSおよびTからなる群から選択され、XがDおよびTからなる群から選択され、XがFおよびPからなる群から選択される、QQYYXPXT(配列番号312)(前に記載した系統発生群A由来のCDRL3コンセンサス配列)、(b)XがNおよびDからなる群から選択され、XがLおよびIからなる群から選択される、QQYDXLXT(配列番号318)(前に記載した系統発生群B由来のCDRL3コンセンサス配列)、および(c)XがQおよびRからなる群から選択され、XがNおよびDからなる群から選択され、XがLおよびFからなる群から選択され、XがF、LおよびIからなる群から選択される、QXYDXPXT(配列番号324)(前に記載した系統発生群C由来のCDRL3コンセンサス配列)からなる群から選択されるCDRL3アミノ酸配列からなる群から選択される軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含む。
【0160】
一実施形態では、c−fmsと結合する抗原結合性タンパク質は、群A、B、またはCのコンセンサス配列に従うCDRH3、および/または群A、B、またはCのコンセンサス配列に従うCDRL3、および前述の群のいずれかのCDRH1および/またはCDRH2、および/または前述の群のいずれかのCDRL1および/またはCDRL2を含む。
【0161】
一実施形態では、上記参照のように、c−fmsと結合する単離された抗原結合性タンパク質は、群AのCDRH3および/またはCDRL3、および
(1)(a)配列番号136〜147のCDRH1、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRH1とアミノ酸配列が異なるCDRH1、および(c)XがFおよびLからなる群から選択される、GYTXTSYGIS(配列番号307)からなる群から選択されるCDRH1アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRH1、
(2)(a)配列番号148〜164のCDRH2、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRH2とアミノ酸配列が異なるCDRH2、および(c)XがTおよびPからなる群から選択され、XがLおよびFからなる群から選択される、WISAYNGNXNYAQKXQG(配列番号308)からなる群から選択されるCDRH2アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRH2、
(3)(a)配列番号191〜210のCDRL1、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRL1とアミノ酸配列が異なるCDRL1、および(c)XがQおよびSからなる群から選択され、XがDおよびYからなる群から選択され、XがNおよびDからなる群から選択され、XがFおよびYからなる群から選択される、KSSXGVLXSSXNKNXLA(配列番号310)からなる群から選択されるCDRL1アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRL1、および
(4)(a)配列番号211〜224のCDRL2、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRL2とアミノ酸配列が異なるCDRL2、および(c)XがNおよびTからなる群から選択される、WASXRES(配列番号311)からなる群から選択されるCDRL2アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRL2からなる群から選択されるCDRを含む。
【0162】
一実施形態では、上記参照のように、c−fmsと結合する単離された抗原結合性タンパク質は、群BのCDRH3および/またはCDRL3、および
(1)(a)配列番号136〜147のCDRH1、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRH1とアミノ酸配列が異なるCDRH1、および(c)XがFおよびVからなる群から選択され、XがSおよびNからなる群から選択され、XがNおよびTからなる群から選択される、GFTXAWMS(配列番号313)からなる群から選択されるCDRH1アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRH1、
(2)(a)配列番号148〜164のCDRH2、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRH2とアミノ酸配列が異なるCDRH2、および(c)XがSおよびTからなる群から選択され、XがGおよびWからなる群から選択され、XがTおよびAからなる群から選択され、XがYおよびNからなる群から選択される、RIKXKTDGXTXDXAAPVKG(配列番号314)からなる群から選択されるCDRH2アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRH2、
(3)(a)配列番号191〜210のCDRL1、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRL1とアミノ酸配列が異なるCDRL1、および(c)XがSおよびNからなる群から選択される、QASQDIXNYLN(配列番号316)からなる群から選択されるCDRL1アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRL1、および
(4)(a)配列番号211〜224のCDRL2、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRL2とアミノ酸配列が異なるCDRL2、および(c)XがAおよびTからなる群から選択され、XがTおよびPからなる群から選択される、DXSNLEX(配列番号317)からなる群から選択されるCDRL2アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRL2からなる群から選択されるCDRを含む。
【0163】
一実施形態では、上記参照のように、c−fmsと結合する単離された抗原結合性タンパク質は、群CのCDRH3およびCDRL3、および
(1)(a)配列番号136〜147のCDRH1、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRH1とアミノ酸配列が異なるCDRH1、および(c)XがSおよびIからなる群から選択される、GFTFXSYGMH(配列番号319)からなる群から選択されるCDRH1アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRH1、
(2)(a)配列番号148〜164のCDRH2、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRH2とアミノ酸配列が異なるCDRH2、および(c)XがEおよびKからなる群から選択される、VIWYDGSNXYYADSVKG(配列番号320)からなる群から選択されるCDRH2アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRH2、
(3)(a)配列番号191〜210のCDRL1、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRL1とアミノ酸配列が異なるCDRL1、および(c)XがQおよびHからなる群から選択され、XがSおよびNからなる群から選択され、XがFおよびYからなる群から選択される、QASXDIXNXLN(配列番号322)からなる群から選択されるCDRL1アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRL1、
(4)(a)配列番号211〜224のCDRL2、(b)2つ以下のアミノ酸のアミノ酸付加、欠失または置換によって(a)のCDRL2とアミノ酸配列が異なるCDRL2、および(c)XがTおよびIからなる群から選択される、DASNLEX(配列番号323)からなる群から選択されるCDRL2アミノ酸配列からなる群から選択されるCDRL2からなる群から選択されるCDRを含む。
【0164】
さらに別の実施形態では、本明細書で前に記載した単離された抗原結合性タンパク質は、前述のCDRHコンセンサス配列の少なくとも1つを含む第1のアミノ酸配列、および前述のCDRLコンセンサス配列の少なくとも1つを含む第2のアミノ酸配列を含む。一態様では、第1のアミノ酸配列は前述のCDRHコンセンサス配列の少なくとも2つを含み、および/または第2のアミノ酸配列は、前述のコンセンサス配列の少なくとも2つを含む。さらに別の態様では、第1のアミノ酸配列は前述の群A、B、またはCの同じ群の少なくとも2つのCDRHを含み、および/または第2のアミノ酸配列は、前述の群A、B、またはCの同じ群の少なくとも2つのCDRLを含む。さらに他の態様では、第1および第2のアミノ酸配列は、前述の群A、B、またはCの同じ群の、少なくとも1つのCDRHおよび1つのCDRLをそれぞれ含む。またその上さらなる態様では、第1のアミノ酸配列は前述の群A、B、またはCの同じ群のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、および/または第2のアミノ酸配列は、前述の群A、B、またはCの同じ群のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0165】
特定の実施形態では、第1および第2のアミノ酸配列は互いに共有結合している。
【0166】
さらなる実施形態では、単離された抗原結合性タンパク質の第1のアミノ酸配列は配列番号165〜190のCDRH3、配列番号148〜164のCDRH2、および配列番号136〜147のCDRH1を含み、および/または単離された抗原結合性タンパク質の第2のアミノ酸配列は、配列番号225〜246のCDRL3、配列番号211〜224のCDRL2、および配列番号191〜210のCDRL1を含む。
【0167】
さらなる実施形態では、抗原結合性タンパク質は、表4A中に示すような、重鎖配列H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13,H14、H15、H16、H17、H18、H19、H20、H21、H22、H23、H24、H25、H26、H27、H28、H29、H30、H31、またはH32の少なくとも2つのCDRH配列を含む。その上さらなる実施形態では、抗原結合性タンパク質は、表4B中に示すような、軽鎖配列L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10、L11、L12、L13、L14、L15、L16、L17、L18、L19、L20、L21、L22、L23、L24、L25、L26、L27、L28、L29、L30、L31、L32、L33、またはL34の少なくとも2つのCDRL配列を含む。その上さらなる実施形態では、抗原結合性タンパク質は、表4A中に示すような、重鎖配列H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13,H14、H15、H16、H17、H18、H19、H20、H21、H22、H23、H24、H25、H26、H27、H28、H29、H30、H31、またはH32の少なくとも2つのCDRH配列、および表4B中に示すような、軽鎖配列L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10、L11、L12、L13、L14、L15、L16、L17、L18、L19、L20、L21、L22、L23、L24、L25、L26、L27、L28、L29、L30、L31、L32、L33、またはL34の少なくとも2つのCDRL配列を含む。
【0168】
さらに別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、表4A中に示すような、重鎖配列H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13,H14、H15、H16、H17、H18、H19、H20、H21、H22、H23、H24、H25、H26、H27、H28、H29、H30、H31、またはH32のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3配列を含む。さらにまた別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、表4B中に示すような、軽鎖配列L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10、L11、L12、L13、L14、L15、L16、L17、L18、L19、L20、L21、L22、L23、L24、L25、L26、L27、L28、L29、L30、L31、L32、L33、またはL34のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3配列を含む。
【0169】
さらにまた別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、表4Aおよび4B中に示すような、H1およびL1、またはH1およびL2、またはH2およびL31、またはH2およびL33、またはH3およびL3、またはH4およびL4、またはH5およびL5、またはH6およびL6、またはH7およびL7、またはH8およびL8、またはH8およびL9、またはH9およびL32、またはH9およびL34、またはH10およびL10、またはH11およびL11、またはH12およびL12、またはH13およびL12、またはH14およびL13、またはH15およびL14、またはH16およびL15、またはH17およびL16、またはH18およびL17、またはH19およびL18、またはH20およびL20、またはH21およびL19、またはH22およびL21、またはH24およびL22、またはH25およびL23、またはH26およびL24、またはH27およびL25、またはH28およびL26、またはH29およびL27、またはH30およびL28、またはH31およびL29、またはH32およびL30の全6個のCDRを含む。
【0170】
以下の実施例中に記載したように調製および同定した特異的抗体に関する配列情報は表4C中に要約する。参照しやすいように、いくつかの場合、参照値の最後の数字が欠落した短縮形の参照値を本明細書中で使用する。したがって、例えば、1.109.1は時折単に1.109として言及し、1.109.1SMは1.109SMとして言及し、1.2.1は1.2として言及し、1.2.1SMは1.2SMとして言及し、2.360.1は2.360として言及し、2.360.1SMは2.360SMとして言及するなどである。
【0171】
【表4A-1】
【0172】
【表4A-2】
【0173】
【表4B-1】
【0174】
【表4B-2】
【0175】
【表4C-1】
【0176】
【表4C-2】
【0177】
一態様では、本明細書で提供する単離された抗原結合性タンパク質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、またはそれらの抗体断片であってよい。
【0178】
別の実施形態では、本明細書で提供する単離された抗原結合性タンパク質の抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、ダイアボディ、または単鎖抗体分子であってよい。
【0179】
さらなる実施形態では、本明細書で提供する単離された抗原結合性タンパク質はヒト抗体であり、IgG1−、IgG2−IgG3−またはIgG4−型であってよい。
【0180】
別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、まさに表4A〜4C中に示す軽鎖または重鎖ポリペプチドからなる。いくつかの実施形態では、抗原結合性タンパク質は、まさに表4A〜4C中に挙げるドメインなどの可変軽鎖ドメインまたは可変重鎖ドメインからなる。このような抗原結合性タンパク質は、1つまたは複数のPEG分子でペグ化することができる。
【0181】
さらに別の態様では、本明細書で提供する単離された抗原結合性タンパク質は標識基と結合させることが可能であり、ヒトc−fmsの細胞外部分への結合について本明細書で提供する単離された抗原結合性タンパク質の1つの抗原結合性タンパク質と競合し得る。一実施形態では、本明細書で提供する単離された抗原結合性タンパク質は、患者に投与したとき、単球走化を低減することができ、腫瘍への単球移動を阻害することができ、または腫瘍における腫瘍関連マクロファージの蓄積および機能を阻害することができる。
【0182】
当業者によって理解されるように、示した配列由来の2つ以上のCDRを有する任意の抗原結合性タンパク質に関して、示した配列から独立に選択されるCDRの任意の組合せが有用である。したがって、1、2、3、4、5または6個の独立に選択したCDRを有する抗原結合性タンパク質を生成することができる。しかしながら、当業者によって理解されるように、特異的実施形態は非反復状態であるCDRの組合せを一般に使用し、例えば、抗原結合性タンパク質は一般に2つのCDRH2領域などで作製しない。
【0183】
提供する抗原結合性タンパク質のいくつかは、以下でさらに詳細に論じる。
【0184】
抗原結合性タンパク質および結合エピトープおよび結合ドメイン
抗原結合性タンパク質が特定残基内のエピトープ、c−fms、またはc−fmsの細胞外ドメインなどと結合すると言われるとき、例えば、抗原結合性タンパク質がc−fmsの特定部分と特異的に結合することを意味する。いくつかの実施形態では、抗原結合性タンパク質は特定残基(例えば、c−fmsの特定セグメント)からなるポリペプチドと特異的に結合する。このような抗原結合性タンパク質は、典型的にはc−fms、またはc−fmsの細胞外ドメイン内のあらゆる残基と接触するということはない。c−fms、またはc−fmsの細胞外ドメイン内のそれぞれ個々のアミノ酸の置換または欠失が、結合親和性に必ずしも有意に影響を与えるわけでもない。
【0185】
抗原結合性タンパク質のエピトープ特異性および(1つまたは複数の)結合ドメインは、様々な方法によって決定することができる。例えば、いくつかの方法は抗原の短縮型部分を使用することができる。他の方法は、1つまたは複数の特異的残基で突然変異した抗原を利用する。
【0186】
抗原の短縮型部分を使用する方法に関して、1つの例示的な手法では、重複ペプチドの集合を使用することができる。重複ペプチドは、抗原の配列に広がっておりかつ少数のアミノ酸(例えば、3アミノ酸)の増分(increment)で異なる約15アミノ酸からなる。ペプチドはマイクロタイターディッシュのウェル内または膜上の異なる場所に固定する。ペプチドの一末端のビオチン化によって固定を実施することができる。場合によっては、同じペプチドの異なるサンプルをアミノ末端およびカルボキシ末端でビオチン化することができ、比較の目的で別々のウェル中に固定することができる。これは末端特異的抗原結合性タンパク質を同定するのに有用である。場合によっては、対象とする特定のアミノ酸で終結させる追加的ペプチドを含めることができる。この手法は、c−fmsの内部断片(またはc−fmsの細胞外ドメイン)に対する末端特異的抗原結合性タンパク質を同定するのに有用である。抗原結合性タンパク質または免疫機能性断片は、様々なペプチドのそれぞれとの特異的結合に関してスクリーニングする。抗原結合性タンパク質がそれに対する特異的結合を示す全ペプチドに共通であるアミノ酸のセグメントと共に存在するとして、エピトープを定義する。エピトープを定義するための特異的手法に関する詳細は実施例12中に述べる。
【0187】
実施例12中に実証するように、一実施形態では、本明細書で提供する抗原結合性タンパク質は、Ig様ドメイン1とIg様ドメイン2を組合せで含むポリペプチドと結合することができる。しかしながらそれらは、元来Ig様ドメイン1のみまたは元来Ig様ドメイン2のみを含有するポリペプチドとは結合しない。このような抗原結合性タンパク質の結合エピトープは、したがってIg様1ドメインとIg様2ドメインを組み合わせて三次元的に構成される。図8中に強調表示するように、これら2つのドメインは、以下のアミノ酸配列を有するc−fms細胞外ドメインのアミノ酸20〜223を含む:
【0188】
【化3】
【0189】
Ig様1ドメインを表すために実施例12中で使用したアミノ酸配列は、図8中に示す配列のアミノ酸20〜126に相当する(すなわち、配列番号1のアミノ酸20〜126、すなわち
【0190】
【化4】
【0191】
)。Ig様2ドメインのみを表すために使用したアミノ酸配列は、図8中に示す配列のアミノ酸85〜223に相当した(すなわち、配列番号1のアミノ酸85〜223、すなわち
【0192】
【化5】
【0193】
)。
【0194】
したがって、一実施形態における抗原結合性タンパク質は、配列番号326で指定するアミノ酸配列を有するcfmsタンパク質(例えば、成熟完全長タンパク質)内の領域と結合または特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗原結合性タンパク質は、配列番号326で記載するアミノ酸残基から本質的になるかまたはこれらからなるポリペプチドと結合または特異的に結合する。
【0195】
別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、図8中に示す配列のアミノ酸20〜126(すなわち、配列番号1のアミノ酸20〜126)からなるポリペプチドではなく、配列番号326からなるポリペプチドと結合または特異的に結合することができる。別の態様では、抗原結合性タンパク質は、図8中に示す配列のアミノ酸85〜223(すなわち、配列番号1のアミノ酸85〜223)からなるポリペプチドではなく、配列番号326からなるポリペプチドと結合または特異的に結合することができる。さらに別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、図8中に示す配列のアミノ酸20〜126(すなわち、配列番号1のアミノ酸20〜126)または図8中に示す配列のアミノ酸85〜223(すなわち、配列番号1のアミノ酸85〜223)からなるポリペプチドではなく、配列番号326からなるポリペプチドと結合または特異的に結合することができる。
【0196】
別の手法では、抗体と接触しているかまたは抗体に埋もれた残基を含有する(1つまたは複数の)ドメイン/(1つまたは複数の)領域は、抗原(例えば、野生型抗原)中の特異的残基を突然変異させること、および抗原結合性タンパク質が突然変異タンパク質と結合することができるかどうかを決定することによって同定することができる。いくつか個別の突然変異を作製することによって、結合において直接的役割を果たし、または抗原結合性タンパク質と抗原の間の結合に突然変異が影響を与え得るほど抗体と十分極めて接近した残基を同定することができる。これらのアミノ酸の知識から、抗原結合性タンパク質と接触しているかまたは抗体によって覆われた残基を含有する抗原の(1つまたは複数の)ドメインまたは(1つまたは複数の)領域を解明することができる。このようなドメインは、抗原結合性タンパク質の結合エピトープを典型的には含む。この一般的手法の1つの具体例は、アルギニン/グルタミン酸スキャニングプロトコルを使用する(例えば、Nanevicz、Tら、1995年、J.Biol.Chem.、270巻:37号、21619〜21625頁およびZupnick、Aら、2006年、J.Biol.Chem.、281巻:29号、20464〜20473頁を参照)。一般に、アルギニンおよびグルタミン酸は野生型ポリペプチド中のアミノ酸と(典型的には個別に)置換される。これらのアミノ酸は帯電しておりしかも大きいため、したがって突然変異を導入する抗原の領域中の抗原結合性タンパク質と抗原の間の結合を妨害する可能性があるからである。野生型抗原中に存在するアルギニンおよびリシンはグルタミン酸と交換される。様々なこのような個別の突然変異体を得て、収集した結合の結果を分析して、どの残基が結合に影響を与えるかを決定する。
【0197】
実施例14は、本明細書で提供するc−fms結合性タンパク質に関するヒトc−fmsのアルギニン/グルタミン酸スキャニングを記載する。それぞれの突然変異体抗原が1つの突然変異を有する、一連の95個の突然変異体ヒトc−fms抗原を作製した。それぞれの突然変異体c−fms抗原と本明細書で提供する選択したc−fms抗原結合性タンパク質の結合を測定し、野生型c−fms抗原(配列番号1)と結合するこれらの選択した結合性タンパク質の能力と比較した。本明細書で使用する抗原結合性タンパク質と突然変異体c−fms抗原の間の結合の低下は、(例えば、実施例中に記載するようなBiacore試験などの知られている方法によって測定したように、)結合親和性の低下、および/または(例えば、抗原結合性タンパク質濃度と抗原濃度のプロット中のBmaxの低下によって実証したように、)抗原結合性タンパク質の全体的結合能力の低下があることを意味する。結合の有意な低下は、突然変異した残基が抗原結合性タンパク質との結合に直接関与していること、または結合性タンパク質が抗原と結合するとき、結合性タンパク質と極めて接近していることを示す。
【0198】
いくつかの実施形態では、結合の有意な低下は、抗原結合性タンパク質と突然変異体c−fms抗原の間の結合親和性および/または結合能力が、結合性タンパク質と野生型c−fms抗原(例えば、配列番号1で示す細胞外ドメイン)の間の結合と比較して、40%を超えて、50%を超えて、55%を超えて、60%を超えて、65%を超えて、70%を超えて、75%を超えて、80%を超えて、85%を超えて、90%を超えてまたは95%を超えて低下することを意味する。特定の実施形態では、結合は検出可能な限界未満に低下する。いくつかの実施形態では、抗原結合性タンパク質と突然変異体c−fms抗原の結合が、抗原結合性タンパク質と野生型c−fms抗原(例えば、配列番号1で示す細胞外ドメイン)の間で観察した結合の50%未満(例えば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%または10%未満)であるとき、結合の有意な低下が実証される。このような結合測定は、当技術分野で知られている様々な結合アッセイを使用して実施することができる。1つのこのようなアッセイの具体例は実施例14中に記載する。
【0199】
いくつかの実施形態では、野生型c−fms抗原(例えば、配列番号1)中の残基がアルギニンまたはグルタミン酸で置換された突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下した結合を示す、抗原結合性タンパク質を提供する。1つのこのような実施形態では、抗原結合性タンパク質の結合は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と比較して、以下の突然変異体:E29R、Q121R、T152R、およびK185Eのいずれか1つまたは複数(例えば、1、2、3または4個)を有する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下する。ここで使用する簡単な表記では、その形式は:野生型残基:ポリペプチド中の位置:突然変異体残基、および配列番号1で示すような残基のナンバリングである。いくつかの実施形態では、抗原結合性タンパク質の結合は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と比較して、以下の突然変異体:E29R、Q121R、S172R、G274R、およびY276Rのいずれか1つまたは複数(例えば、1、2、3、4または5個)を有する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下する。別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と比較して、以下の突然変異体:R106E、H151R、T152R、Y154R、S155R、W159R、Q171R、S172R、Q173R、G183R、R184E、K185E、E218R、A220R、S228R、H239R、N240R、K259E、G274R、N275R、Y276R、S277R、およびN282Rのいずれか1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5個など、23個まで)を含有する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下した結合を示す。なおもさらなる実施形態では、抗原結合性タンパク質の結合は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)との結合と比較して、以下の突然変異体:K102E、R144E、R146E、D174R、およびA226Rのいずれか1つまたは複数(例えば、1、2、3、4または5個)を含有する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下する。さらに他の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と比較して、以下の突然変異体:W50R、A74R、Y100R、D122R、T130R、G161R、Y175R、およびA179Rのいずれか1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8個)を含有する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下した結合を示す。
【0200】
ここに挙げる突然変異体型は配列番号1で示す野生型細胞外ドメイン配列に対して参照するが、c−fmsの対立遺伝子変異体では、示した位置におけるアミノ酸は異なる可能性があることは理解されよう。このようなc−fmsの対立遺伝子型に対して有意に低下した結合を示す抗原結合性タンパク質も企図する。したがって、一実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と比較して、対立遺伝子c−fms抗原に対して有意に低下した結合を有する。ここでは、対立遺伝子抗原の以下の残基の1つまたは複数(例えば、1、2、3または4個)が29R、121R、152R、および185Eで示すようにアルギニンまたはグルタミン酸と交換される(ポリペプチド中の位置:突然変異体残基、および配列番号1で示す残基のナンバリングを用いる)。いくつかの実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と結合するその能力と比較して、以下の残基の1つまたは複数(例えば、1、2、3、4または5個)を29R、121R、172R、274R、および276Rで示すようにアルギニンまたはグルタミン酸と交換される対立遺伝子c−fms抗原に対して有意に低下した結合を示す。別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と結合するその能力と比較して、以下の残基の1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5個など、23個まで)が、106E、151R、152R、154R、155R、159R、171R、172R、173R、183R、184E、185E、218R、220R、228R、239R、240R、259E、274R、275R、276R、277R、および282Rで示すようにアルギニンまたはグルタミン酸と交換される対立遺伝子c−fms抗原に対して有意に低下した結合を示す。なおもさらなる他の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と結合するその能力と比較して、以下の残基の任意の1つまたは複数(例えば、1、2、3、4または5個)が、102E、144E、146E、174R、および226Rで示すようにアルギニンまたはグルタミン酸と交換される対立遺伝子c−fms抗原に対して有意に低下した結合を有する。さらに他の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と結合するその能力と比較して、以下の残基の任意の1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8個)が、50R、74R、100R、122R、130R、161R、175R、および179Rで示すようにアルギニンまたはグルタミン酸と交換される対立遺伝子c−fms抗原に対して有意に低下した結合を示す。
【0201】
いくつかの実施形態では、抗原結合性タンパク質の結合は、野生型c−fms抗原中の選択した位置における残基が任意の他の残基に突然変異する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下する。例えば、一実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と結合するその能力と比較して、位置29、121、152、および185(この場合位置は配列番号1中で示すのと同様である)の1つまたは複数(例えば、1、2、3または4箇所)に1つのアミノ酸置換を含有する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下した結合を示す。いくつかの実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と結合するその能力と比較して、配列番号1の位置29、121、172、274および276の1つまたは複数(例えば、1、2、3、4または5箇所)に1つのアミノ酸置換を含有する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下した結合を有する。別の実施形態では、抗原結合性タンパク質の結合は、配列番号1の野生型c−fmsに対する結合と比較して、配列番号1の位置106、151、152、154、155、159、171、172、173、183、184、185、218、220、228、239、240、259、274、275、276、277、および282の1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5個など、23箇所まで)に1つのアミノ酸置換を含有する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下する。なおもさらなる実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と結合するその能力と比較して、配列番号1の位置102、144、146、174、および226の1つまたは複数(例えば、1、2、3、4または5箇所)に1つのアミノ酸置換を含有する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下した結合を有する。さらに他の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、野生型c−fms(例えば、配列番号1)と結合するその能力と比較して、位置50、74、100、122、130、161、175、および179の1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8箇所)に1つのアミノ酸置換を含有する突然変異体c−fms抗原に対して有意に低下した結合を有する。
【0202】
前述のように、結合に直接関与するかまたは抗原結合性タンパク質によって覆われる残基は、スキャニング結果から同定することができる。したがってこれらの残基は、抗原結合性タンパク質が結合する(1つまたは複数の)結合領域を含有する配列番号1のドメインまたは領域の指標となる可能性がある。実施例14中に要約する結果から見ることができるように、一実施形態では、抗原結合性タンパク質は配列番号1のアミノ酸29〜185を含有するドメインと結合する。別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は配列番号1のアミノ酸29〜276を含有する領域と結合する。他の実施形態では、抗原結合性タンパク質は配列番号1のアミノ酸106〜282を含有する領域と結合する。さらに他の実施形態では、抗原結合性タンパク質は配列番号1のアミノ酸102〜226を含有する領域と結合する。さらに別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は配列番号1のアミノ酸50〜179を含有する領域と結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合性タンパク質は、配列番号1の完全長配列の断片内の前述の領域と結合する。他の実施形態では、抗原結合性タンパク質はこれらの領域からなるポリペプチドと結合する。特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は配列番号1のアミノ酸90〜282を含有する領域と結合する。別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は以下の領域:配列番号1のアミノ酸90〜185およびアミノ酸217〜282の一方または両方と結合する。さらに別の実施形態では、抗原結合性タンパク質は以下の領域:配列番号1のアミノ酸121〜185およびアミノ酸217〜277の一方または両方と結合する。
【0203】
抗原結合性タンパク質の競合
別の態様では、c−fmsとの特異的結合に関して前に記載したエピトープと結合する例示的な抗体または機能断片の1つと競合する、抗原結合性タンパク質を提供する。このような抗原結合性タンパク質は、本明細書中の例示的な抗原結合性タンパク質の1つと同じエピトープ、または重複エピトープと結合することもできる。例示的な抗原結合性タンパク質と同じエピトープと競合またはそれと結合する抗原結合性タンパク質および断片は、類似した機能的特性を示すと予想される。例示的な抗原結合性タンパク質および断片は、表1、2、3、および4A〜C中に含まれる重鎖および軽鎖、可変領域ドメインおよびCDRを有する抗原結合性タンパク質および断片を含めた、前に記載した抗原結合性タンパク質および断片を含む。したがって、具体例として、提供する抗原結合性タンパク質は、
(a)表4C中に挙げた抗体に関して挙げたCDRの全6個、
(b)表4C中に挙げた抗体に関して挙げたVHおよびVL、または
(c)表4C中に挙げた抗体に関して指定した2つの軽鎖および2つの重鎖
を有する抗体と競合する抗原結合性タンパク質を含む。
【0204】
モノクローナル抗体
提供する抗原結合性タンパク質は、c−fmsと結合するモノクローナル抗体を含む。当技術分野で知られている任意の技法を使用して、例えば、免疫処置スケジュールの終了後にトランスジェニック動物から採取した脾細胞を不死化することによって、モノクローナル抗体を産生することができる。脾細胞は、当技術分野で知られている任意の技法を使用して、例えば、それらとミエローマ細胞を融合してハイブリドーマを産生することによって不死化することができる。ハイブリドーマ産生融合手順中で使用するためのミエローマ細胞は、高い融合効率、および望ましい融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を助長する特定選択培地中でそれらが増殖不能となる酵素欠損を有する、非抗体産生細胞であることが好ましい。マウス融合において使用するのに適した細胞系の例には、Sp−20、P3−X63/Ag8、P3−X63−Ag8.653、NS1/1.Ag4l、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG1.7およびS194/5XXOBulがあり、ラット融合において使用される細胞系の例には、R210.RCY3、Y3−Ag1.2.3、IR983Fおよび4B210がある。細胞融合に有用な他の細胞系はU−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2およびUC729−6である。
【0205】
いくつかの場合、ハイブリドーマ細胞系は、動物(例えば、ヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)をc−fms免疫原で免疫処置し、免疫処置した動物から脾細胞を採取し、採取した脾細胞とミエローマ細胞系を融合し、それによってハイブリドーマ細胞を生成し、ハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞系を樹立し、かつc−fmsポリペプチドと結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を同定することによって産生する。このようなハイブリドーマ細胞系、およびそれらによって産生される抗c−fmsモノクローナル抗体は本出願の態様である。
【0206】
ハイブリドーマ細胞系によって分泌されるモノクローナル抗体は、当技術分野で知られている任意の技法を使用して精製することができる。ハイブリドーマまたはモノクローナル抗体をさらにスクリーニングして、Wnt誘導型活性を遮断する能力などの、特定の性質を有するモノクローナル抗体を同定することができる。このようなスクリーニングの例は以下の実施例中に与える。
【0207】
キメラ抗体およびヒト化抗体
前述の配列に基づくキメラ抗体およびヒト化抗体も提供する。治療剤として使用するためのモノクローナル抗体は、使用前に様々な方法で修飾することができる。一例は、共有結合して機能的免疫グロブリン軽鎖または重鎖を生成する異なる抗体由来のタンパク質セグメントまたはその免疫機能部分から構成される抗体である、キメラ抗体である。一般に、重鎖および/または軽鎖の部分は、特定種由来または特定抗体クラスもしくはサブクラス所属の抗体中の相当する配列と同一または相同であり、一方その(1つまたは複数の)鎖の残り部分は、別種由来または別の抗体クラスもしくはサブクラス所属の抗体中の相当する配列と同一または相同である。キメラ抗体に関する方法に関しては、例えば、参照によって本明細書に組み込んだ、米国特許第4,816,567号、およびMorrisonら、1985年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA81巻:6851〜6855頁を参照されたい。例えば、米国特許第6,180,370号、同第5,693,762号、同第5,693,761号、同第5,585,089号、および同第5,530,101号中にCDR移植が記載される。
【0208】
一般に、キメラ抗体を産生する目的は、目的の患者種由来のアミノ酸の数が最大であるキメラを作製することである。一例は、特定種由来または特定抗体クラスもしくはサブクラス所属であり、一方抗体の(1つまたは複数の)鎖の残り部分が、別種由来または別の抗体クラスもしくはサブクラス所属の抗体中の相当する配列と同一または相同である、1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を抗体がその中に含む「CDR移植」抗体である。ヒト中で使用するために、げっ歯類抗体由来の可変領域または選択CDRをヒト抗体に移植し、ヒト抗体の天然に存在する可変領域またはCDRと交換することが多い。
【0209】
1つの有用な型のキメラ抗体は「ヒト化」抗体である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト動物中で最初に起こされたモノクローナル抗体から産生される。典型的にはモノクローナル抗体の非抗原認識部分に由来する、このモノクローナル抗体中の特定のアミノ酸残基を、相当するアイソタイプのヒト抗体中の相当する残基と相同的であるように修飾する。例えば、げっ歯類の可変領域の少なくとも一部分でヒト抗体の相当する領域を置換することにより、様々な方法を使用してヒト化を実施することができる(例えば、米国特許第5,585,089号、同第5,693,762号、Jonesら、1986年、Nature321巻:522〜525頁;Riechmannら、1988年、Nature332巻:323〜27頁;Verhoeyenら、1988年、Science239巻:1534〜1536頁を参照)。
【0210】
一態様では、本明細書で提供する抗体の軽鎖および重鎖可変領域のCDR(表3参照)を、同じ、または異なる系統発生種由来の抗体由来のフレームワーク領域(FR)に移植する。例えば、重鎖および軽鎖可変領域V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、およびV32、および/またはV1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18、V19、V20、V21、V22、V23、V24、V25、V26、V27、V28、V29、V30、V31、V32、V33、およびV34のCDRをコンセンサスヒトFRに移植することができる。コンセンサスヒトFRを作製するために、いくつかのヒト重鎖または軽鎖アミノ酸配列由来のFRを整列させて、コンセンサスアミノ酸配列を同定することができる。他の実施形態では、本明細書で開示する重鎖または軽鎖のFRを、異なる重鎖または軽鎖由来のFRと交換する。一態様では、抗c−fms抗体の重鎖および軽鎖のFR中の稀なアミノ酸は交換せず、一方残りのFRアミノ酸を交換する。「稀なアミノ酸」は、この特定のアミノ酸がFRにおいて通常見られない位置に存在する特異的アミノ酸である。あるいは、1つの重鎖または軽鎖由来の移植可変領域を、本明細書で開示するその特定重鎖または軽鎖の定常領域と異なる定常領域と共に使用することができる。他の実施形態では、移植可変領域は単鎖Fv抗体の一部分である。
【0211】
特定の実施形態では、ヒト以外の種由来の定常領域を、(1つまたは複数の)ヒト可変領域と共に使用して、ハイブリッド抗体を産生することができる。
【0212】
完全ヒト抗体
完全ヒト抗体も提供する。人間を抗原に曝さずに所与の抗原に特異的な完全ヒト抗体を作製するために、いくつかの方法が利用可能である(「完全ヒト抗体」)。完全ヒト抗体の産生を実施するために提供する1つの具体的な手段は、マウス体液性免疫系の「ヒト化」である。内因性Ig遺伝子が不活性化されたマウス中へのヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座の導入は、任意の望ましい抗原で免疫処置することができる動物であるマウスにおいて、完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)を産生する1つの手段である。完全ヒト抗体を使用することによって、治療剤としてマウスモノクローナル抗体またはマウス由来モノクローナル抗体をヒトに投与することによって時折引き起こされる可能性がある、免疫応答およびアレルギー応答を最小にすることができる。
【0213】
内因性免疫グロブリン産生の不在下でヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(通常マウス)を免疫処置することによって、完全ヒト抗体を産生することができる。この目的の抗原は6個以上の隣接アミノ酸を典型的に有し、場合によってはハプテンなどの担体と結合する。例えば、Jakobovitsら、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90巻:2551〜2555頁;Jakobovitsら、1993年、Nature362巻:255〜258頁;およびBruggermannら、1993年、Year in Immunol.7巻:33頁を参照されたい。このような方法の一例では、その中にマウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン鎖をコードする内因性マウス免疫グロブリン遺伝子座を無力化し、ヒト重鎖および軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を含有するヒトゲノムDNAの大きな断片をマウスゲノムに挿入することによって、トランスジェニック動物を生成する。ヒト免疫グロブリン遺伝子座の不完全部分を有する部分的に改変した動物を、次いで異種交配して望ましい免疫系改変のすべてを有する動物を得る。免疫原を投与すると、これらのトランスジェニック動物は、免疫原に免疫特異的であるが、可変領域を含めネズミアミノ酸配列ではなくヒトアミノ酸配列を有する抗体を産生する。このような方法のさらなる詳細に関しては、例えば、WO96/33735およびWO94/02602を参照されたい。ヒト抗体を作製するためのトランスジェニックマウスに関する他の方法は、米国特許第5,545,807号、同第6,713,610号、同第6,673,986号、同第6,162,963号、同第5,545,807号、同第6,300,129号、同第6,255,458号、同第5,877,397号、同第5,874,299号および同第5,545,806号中、PCT公開WO91/10741、WO90/04036中、およびEP546073B1およびEP546073A1中に記載されている。
【0214】
本明細書で「HuMab」マウスと呼ぶ、前に記載したトランスジェニックマウスは、非再構成ヒト重鎖([μ]および[γ])および[κ]軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子の小遺伝子座を、内因性[μ]および[κ]鎖遺伝子座を不活性化する標的突然変異とともに含有する(Lonbergら、1994年、Nature368巻:856〜859頁)。したがって、このマウスはマウスIgMまたは[κ]の低減した発現を示し、かつ免疫処置に応じて、導入したヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子は、クラスの変化および体細胞突然変異を経て高親和性ヒトIgG[κ]モノクローナル抗体を生成する(Lonbergら、上記;Lonberg and Huszar、1995年、Intern.Rev.Immunol.13巻:65〜93頁;Harding and Lonberg、1995年、Ann.N.Y Acad.Sci.764巻:536〜546頁)。HuMabマウスの調製は、Taylorら、1992年、Nucleic Acids Research20巻:6287〜6295頁;Chenら、1993年、International Immunology5巻:647〜656頁;Tuaillonら、1994年、J.Immunol.152巻:2912〜2920頁;Lonbergら、1994年、Nature368巻:856〜859頁;Lonberg、1994年、Handbook of Exp.Pharmacology113巻:49〜101頁;Taylorら、1994年、International Immunology6巻:579〜591頁;Lonberg and Huszar、1995年、Intern.Rev.Immunol.13巻:65〜93頁;Harding and Lonberg、1995年、Ann.N.Y Acad.Sci.764巻:536〜546頁;Fishwildら、1996年、Nature Biotechnology14巻:845〜851頁中に詳細に記載されており、前述の参照文献はあらゆる目的でその全容を参照によって本明細書に組み込む。そのすべての開示があらゆる目的でその全容を参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,789,650号、同第5,877,397号、同第5,661,016号、同第5,814,318号、同第5,874,299号、および同第5,770,429号、ならびに米国特許第5,545,807号、国際公開WO93/1227、WO92/22646、およびWO92/03918をさらに参照のこと。これらのトランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を産生するために使用される技術は、参照によって本明細書に組み込まれる、WO98/24893、およびMendezら、1997年、Nature Genetics15巻:146〜156頁中にも開示される。例えば、HCo7およびHCo12トランスジェニックマウス株を使用して抗c−fms抗体を生成することができる。トランスジェニックマウスを使用したヒト抗体の産生に関するさらなる詳細は、以下の実施例中に与える。
【0215】
ハイブリドーマ技術を使用して、望ましい特異性を有する抗原特異的ヒトモノクローナル抗体を、前に記載したトランスジェニックマウスなどのトランスジェニックマウスから産生および選択することができる。このような抗体は適切なベクターおよび宿主細胞を使用してクローニングし発現させることが可能であり、または抗体は培養したハイブリドーマ細胞から採取することができる。
【0216】
完全ヒト抗体は、(Hoogenboomら、1991年、J.Mol Biol.227巻:381頁;およびMarksら、1991年、J.Mol.Biol.222巻:581頁中に開示されたのと同様に)ファージディスプレイライブラリーから誘導することもできる。ファージディスプレイ技法は、繊維状バクテリオファージの表面上での抗体レパートリーの提示による免疫選択、およびそれに続く選択した抗原とのそれらの結合によるファージの選択を模倣する。1つのこのような技法は、このような手法を使用したMPL−受容体およびmsk−受容体に対する高親和性かつ機能性アゴニスト抗体の単離を記載する、(参照によって本明細書に組み込まれる)PCT公開WO99/10494中に記載される。
【0217】
二重特異性または二重機能性抗原結合性タンパク質
提供する抗原結合性タンパク質は、前に記載した1つまたは複数のCDRまたは1つまたは複数の可変領域を含む、二重特異性および二重機能性抗体も含む。二重特異性抗体または二重機能性抗体は、いくつかの場合、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結だけには限られないが、これらを含めた様々な方法によって産生することができる。例えば、Songsivilai and Lachmann、1990年、Clin.Exp.Immunol.79巻:315〜321頁;Kostelnyら、1992年、J.Immunol.148巻:1547〜1553頁を参照されたい。
【0218】
様々な他の形
提供する抗原結合性タンパク質のいくつかは、前に開示した抗原結合性タンパク質(例えば、表1〜4中に挙げた配列を有するタンパク質)の変異型である。例えば、抗原結合性タンパク質のいくつかは、表1〜4中に挙げた重鎖または軽鎖、可変領域またはCDRの1つまたは複数において、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する。
【0219】
天然に存在するアミノ酸は一般的な側鎖の性質に基づいていくつかのクラスに分けることができる:
1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
3)酸性:Asp、Glu;
4)塩基性:His、Lys、Arg;
5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;および
6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0220】
保存的アミノ酸置換は、これらのクラスの1つのメンバーと同じクラスの別のメンバーの交換を含み得る。保存的アミノ酸置換は、生物系中での合成によってというよりは寧ろ化学ペプチド合成によって典型的に組み込まれた、天然に存在しないアミノ酸残基を包含し得る。これらは、ペプチド模倣体および他の逆型または反転型のアミノ酸部分を含む。
【0221】
非保存的置換は、前述のクラスの1つのメンバーと別のクラス由来のメンバーの交換を含み得る。このような置換残基は、ヒト抗体と相同的である抗体の領域中、または分子の非相同的領域中に導入することができる。
【0222】
このような変化を施す際に、特定の実施形態に従い、アミノ酸のハイドロパシーインデックスを考慮することができる。タンパク質のハイドロパシープロファイルは、それぞれのアミノ酸に数値(「ハイドロパシーインデックス」)を割り当てること、および次いでペプチド鎖に沿ってこれらの値を繰り返し平均することによって計算する。その疎水性および電荷特性に基づいて、それぞれのアミノ酸にハイドロパシーインデックスを割り当てた。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8)トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(塩)(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(塩)(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)である。
【0223】
タンパク質に相互作用的生物機能を与える際のハイドロパシープロファイルの重要性は、当技術分野で理解されている(例えば、Kyteら、1982年、J.Mol.Biol.157巻:105〜131頁を参照)。特定のアミノ酸を、類似したハイドロパシーインデックスまたはスコアを有し類似した生物活性を依然として保持する、他のアミノ酸で置換することができることは知られている。ハイドロパシーインデックスに基づいて変化を施す際に、特定の実施形態では、そのハイドロパシーインデックスが±2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。いくつかの態様では±1以内であるアミノ酸が含まれ、他の態様では±0.5以内であるアミノ酸が含まれる。
【0224】
特に、このように生成する生物機能性タンパク質またはペプチドが、本発明の場合のように免疫学的実施形態における使用を目的とする場合、親水性に基づいて同様のアミノ酸の置換を効率良く施すことができることも、当技術分野で理解されている。特定の実施形態では、その隣接アミノ酸の親水性によって決定されるタンパク質の最大局所平均親水性は、その免疫原性および抗原結合性または免疫原性、すなわちタンパク質の生物学的性質と相関関係がある。
【0225】
以下の親水性値がこれらのアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(塩)(+3.0±1);グルタミン酸(塩)(+3.0±1);;セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5)およびトリプトファン(−3.4)。類似した親水性値に基づいて変化を施す際に、特定の実施形態では、その親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれ、他の実施形態では、±1以内であるアミノ酸が含まれ、さらに他の実施形態では、±0.5以内であるアミノ酸が含まれる。いくつかの場合、親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを同定することもできる。これらの領域は、「エピトープコア領域」とも呼ばれる。
【0226】
例示的な保存的アミノ酸置換を表5中に述べる。
【0227】
【表5-1】
【0228】
【表5-2】
【0229】
当業者は、よく知られている技法を使用して、本明細書で言及するポリペプチドの適切な変異体を決定することができるはずである。当業者は、活性に重要であると考えられない領域の標的化により活性を損なわずに変えることができる、分子の適切な領域を同定することができる。当業者は、類似したポリペプチド中で保存される残基および分子の一部分を同定することもできるはずである。さらなる実施形態では、生物活性または構造に重要である可能性がある領域さえも、生物活性を損なわずに、またはポリペプチド構造に悪影響を与えずに、保存的アミノ酸置換を施すことができる。
【0230】
さらに、当業者は構造−機能試験を概説し、活性または構造に重要である類似したポリペプチド中の残基を同定することができる。このような比較を鑑みて、類似したタンパク質中の活性または構造に重要であるアミノ酸残基に相当する、タンパク質中のアミノ酸残基の重要性を予想することができる。当業者は、このような予想される重要なアミノ酸残基と化学的に類似したアミノ酸の置換を選択することができる。
【0231】
当業者は、類似したポリペプチド中のその構造に関する3次元構造およびアミノ酸配列を分析することもできる。このような情報を鑑みて、当業者は、その三次元構造に対する抗体のアミノ酸残基のアラインメントを予想することができる。このような残基は他の分子との重要な相互作用に関与する可能性があるので、タンパク質の表面に存在すると予想されるアミノ酸残基に根本的な変更を施さないことを、当業者は選択することができる。さらに、当業者は、それぞれの望ましいアミノ酸残基に1アミノ酸置換を含有する試験用変異体を作製することができる。したがってこれらの変異体は、c−fms中和活性に関するアッセイを使用してスクリーニングし(以下の実施例参照)、それによってどのアミノ酸を変えることができるか、およびどのアミノ酸を変えてはならないかに関する情報を得ることができる。言い換えると、このような通常の実験から集めた情報に基づいて、いずれか単独または他の突然変異と組み合わせたさらなる置換を避けるべきアミノ酸位置を、当業者は容易に決定することができる。
【0232】
いくつかの科学出版物は二次構造の予想をテーマにしている。Moult、1996年、Curr.Op.in Biotech.7巻:422〜427頁;Chouら、1974年、Biochem.13巻:222〜245頁;Chouら、1974年、Biochemistry113巻:211〜222頁;Chouら、1978年、Adv.Enzymol、Relat.Areas Mol.Biol.47巻:45〜148頁;Chouら、1979年、Ann.Rev.Biochem.47巻:251〜276頁;およびChouら、1979年、Biophys.J.26巻:367〜384頁を参照されたい。さらに、二次構造の予想を手助けするための、いくつかのコンピュータプログラムが現在利用可能である。二次構造を予想する1つの方法は相同性モデリングに基づく。例えば、30%を超える配列同一性、または40%を超える類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質は、類似した構造トポロジーを有し得る。タンパク質構造データベース(PDB)の近年の増大は、ポリペプチドの構造またはタンパク質の構造内の考えられるフォールディング数を含めた、二次構造の高い予測可能性をもたらしている。Holmら、1999年、Nucl.Acid.Res.27巻:244〜247頁を参照されたい。所与のポリペプチドまたはタンパク質中には限られた数のフォールディングが存在すること、および重要な数の構造を解明した後、構造の予想は劇的にさらに正確となり得ることが示唆されている(Brennerら、1997年、Curr.Op.Struct.Biol.7巻:369〜376頁)。
【0233】
二次構造を予想するさらなる方法には、「スレッディング(threading)」(Jones、1997年、Curr.Opin.Struct.Biol.7巻:377〜387頁;Sipplら、1996年、Structure4巻:15〜19頁)、「プロファイル分析」(Bowieら、1991年、Science253巻:164〜170頁;Gribskovら、1990年、Meth.Enzym.183巻:146〜159頁;Gribskovら、1987年、Proc.Nat.Acad.Sci.84巻:4355〜4358頁)、および「進化的連鎖」(Holm、1999年、上記参照;およびBrenner、1997年、上記を参照)がある。
【0234】
いくつかの実施形態では、(1)タンパク質分解に対する感受性を低減する、(2)酸化に対する感受性を低減する、(3)タンパク質複合体形成に対する結合親和性を変える、(4)リガンド結合親和性または抗原結合親和性を変える、および/または(4)他の物理化学的性質または機能的性質をこのようなポリペプチドに与えるかまたはそれらを改変するアミノ酸置換を施す。例えば、1つまたは複数のアミノ酸置換(特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換)を天然に存在する配列に施すことができる。分子間接触を形成する(1つまたは複数の)ドメイン外に存在する抗体のその部分に置換を施すことができる。このような実施形態では、親配列の構造特性を実質的に変えない保存的アミノ酸置換を使用することができる(例えば、親または天然の抗原結合性タンパク質を特徴付ける二次構造を損なわない1つまたは複数の置換アミノ酸)。当技術分野で理解されているポリペプチドの二次および三次構造の例は、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれる、Proteins、Structures and Molecular Principles(Creighton、編)、1984年、W.H.New York:Freeman and Company;Introduction to Protein Structure(Branden and Tooze、編)、1991年、New York:Garland Publishing;およびThorntonら、1991年、Nature354巻:105頁中に記載される。
【0235】
他の好ましい抗体変異体には、親または天然アミノ酸配列中の1つまたは複数のシステイン残基が欠失しているかまたは別のアミノ酸(例えばセリン)で置換されている、システイン変異体がある。特に抗体を生物活性がある高次構造にリフォールディングしなければならないとき、システイン変異体は有用である。システイン変異体は天然抗体より少ないシステイン残基を有することができ、典型的には不対システインからの相互作用を最小にするために偶数を有する。
【0236】
開示する重鎖および軽鎖、可変領域ドメインおよびCDRを使用して、c−fmsポリペプチドと特異的に結合することができる抗原結合性領域を含有するポリペプチドを調製することができる。例えば、表3および4中に挙げた1つまたは複数のCDRを、共有結合的または非共有結合的に分子(例えば、ポリペプチド)中に取り込んで免疫接着をもたらすことができる。免疫接着は大きなポリペプチド鎖の一部分として(1つまたは複数の)CDRを取り込むことができ、(1つまたは複数の)CDRと別のポリペプチド鎖を共有結合させることが可能であり、あるいは(1つまたは複数の)CDRを非共有結合的に取り込むことができる。(1つまたは複数の)CDRは、対象とする特定の抗原(例えば、c−fmsポリペプチドまたはそのエピトープ)と特異的に結合する免疫接着を可能にする。
【0237】
本明細書に記載される可変領域ドメインおよびCDRに基づく、模倣体(例えば、「ペプチド 模倣体(peptide mimetics)」または「ペプチド模倣体(peptidomimetics)」)も提供する。これらの類似体は、ペプチド、非ペプチドまたはペプチド領域と非ペプチド領域の組合せであってよい。任意の目的で参照によって本明細書に組み込まれる、Fauchere、1986年、Adv.Drug Res.15巻:29頁;Veber and Freidinger、1985年、TINS.392頁;およびEvansら、1987年、J.Med.Chem.30巻:1229頁。治療上有用なペプチドと構造的に類似するペプチド模倣体を使用して、類似する治療または予防効果をもたらすことができる。このような化合物は、コンピュータによる分子モデリングの助力を受けて開発されることが多い。一般に、ペプチド模倣体は、ここでのc−fmsと特異的に結合する能力などの望ましい生物活性を示す抗体と構造的に類似するが、当技術分野でよく知られている方法によって、−CHNH−、−CHS−、−CH−CH−、−CH−CH−(シスおよびトランス)、−COCH−、−CH(OH)CH−、および−CHSO−から選択される結合により場合によっては置換された1つまたは複数のペプチド結合を有するタンパク質である。コンセンサス配列の1つまたは複数のアミノ酸と同じ型のD−アミノ酸(例えば、L−リシンの代わりにD−リシン)の系統的置換を、特定の実施形態において使用して、より安定したタンパク質を生成することができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列変異体を含む拘束性ペプチドを、当技術分野で知られている方法、例えば、ペプチドを環状にする分子内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を加えることによって生成することができる(参照によって本明細書に組み込まれる、Rizo and Gierasch、1992年、Ann.Rev.Biochem.61巻:387頁))。
【0238】
本明細書で記載する抗原結合性タンパク質の誘導体も提供する。誘導体化抗原結合性タンパク質は、特定の使用における増大した半減期などの望ましい性質を抗体または断片に与える任意の分子または物質を含むことができる。誘導体化抗原結合性タンパク質は、例えば、検出可能(または標識)成分(例えば、放射活性、比色、抗原分子または酵素分子、検出可能ビーズ(磁気または高電子密度(例えば金)ビーズなど)、または別の分子(例えば、ビオチンまたはストレプトアビジン))と結合する分子、治療用成分または診断用成分(例えば、放射活性成分、細胞傷害性成分、または薬剤活性成分)、または特定の使用(例えば、ヒト対象などの対象への投与、または他のin vivoもしくはin vitro使用)に関する抗原結合性タンパク質の適合性を増大する分子を含むことができる。抗原結合性タンパク質を誘導体化するために使用することができる分子の例には、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)がある。抗原結合性タンパク質のアルブミン結合誘導体およびペグ化誘導体は、当技術分野でよく知られている技法を使用して調製することができる。特定の抗原結合性タンパク質は、本明細書に記載されるペグ化単鎖ポリペプチドを含む。一実施形態では、抗原結合性タンパク質は、トランスサイレチン(TTR)またはTTR変異体と結合または他の場合は連結する。TTRまたはTTR変異体は、例えばデキストラン、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される化学物質で化学的に修飾することができる。
【0239】
他の誘導体は、c−fms抗原結合性タンパク質のN末端またはC末端と融合した異種ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質の発現などによる、c−fms抗原結合性タンパク質と他のタンパク質またはポリペプチドの共有結合体または凝集結合体を含む。例えば、結合ペプチドは、異種シグナル(またはリーダー)ポリペプチド、例えば、酵母α因子リーダー、またはエピトープタグなどのペプチドであってよい。c−fms抗原結合性タンパク質含有融合タンパク質は、c−fms抗原結合性タンパク質の精製または同定を容易にするために加えるペプチドを含むことができる(例えば、ポリ−ヒス)。c−fms抗原結合性タンパク質は、Hoppら、1988年、Bio/Technology6巻:1204頁および米国特許第5,011,912号中に記載されたように、FLAGペプチドと結合させることもできる。FLAGペプチドは高抗原性であり、特異的モノクローナル抗体(mAb)によって可逆的に結合したエピトープを与え、発現した組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。FLAGペプチドが所与のポリペプチドと融合した融合タンパク質を調製するのに有用な試薬は市販されている(Sigma、St.Louis、MO)。
【0240】
1つまたは複数のc−fms抗原結合性タンパク質を含有するオリゴマーは、c−fmsアンタゴニストとして利用することができる。オリゴマーは、共有結合または非共有結合二量体、三量体、または高次オリゴマーの形であってよい。2つ以上のc−fms抗原結合性タンパク質を含むオリゴマーは使用が企図され、一例はホモ二量体である。他のオリゴマーには、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体などがある。
【0241】
一実施形態は、c−fms抗原結合性タンパク質と融合したペプチド部分間の共有結合または非共有結合相互作用によって結合した複数のc−fms結合性ポリペプチドを含むオリゴマーを対象とする。このようなペプチドは、ペプチドリンカー(スペーサー)、またはオリゴマー化を促進する性質を有するペプチドであってよい。以下でより詳細に記載するように、抗体由来のロイシンジッパーおよび特定のポリペプチドは、それに結合したc−fms抗原結合性タンパク質のオリゴマー化を促進することができるペプチドである。
【0242】
特定の実施形態では、オリゴマーは2〜4個のc−fms抗原結合性タンパク質を含む。オリゴマーのc−fms抗原結合性タンパク質部分は、前に記載した形のいずれか、例えば変異体または断片であってよい。オリゴマーは、c−fms結合活性を有するc−fms抗原結合性タンパク質を含むことが好ましい。
【0243】
一実施形態では、免疫グロブリン由来のポリペプチドを使用してオリゴマーを調製する。抗体由来ポリペプチド(Fcドメインを含む)の様々な部分と融合した特定の異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は、例えばAshkenaziら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA88巻:10535頁;Byrnら、1990年、Nature344巻:677頁;およびHollenbaughら、1992年「Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins」in Current Protocols in Immunology、Suppl.4巻、10.19.1〜10.19.11頁によって記載されている。
【0244】
一実施形態は、c−fms抗原結合性タンパク質と抗体のFc領域の融合によって作製した2つの融合タンパク質を含む二量体を対象とする。二量体は、例えば融合タンパク質をコードする遺伝子融合体を適切な発現ベクターに挿入し、組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞中で遺伝子融合体を発現させ、発現した融合タンパク質が非常に類似した抗体分子を構築することを可能にすることによって作製することができ、それによって鎖間ジスルフィド結合をFc部分間で形成して二量体を生成する。
【0245】
本明細書で使用する用語「Fcポリペプチド」は、抗体のFc領域由来の天然およびムテイン型のポリペプチドを含む。二量体化を促進するヒンジ領域を含有するこのようなポリペプチドの短縮型も含まれる。Fc部分(およびそこから形成されたオリゴマー)を含む融合タンパク質は、プロテインAまたはプロテインGカラムでの親和性クロマトグラフィーによる容易な精製という利点を与える。
【0246】
PCT出願WO93/10151および米国特許第5,426,048号および同第5,262,522号中に記載された1つの適切なFcポリペプチドは、N末端ヒンジ領域からヒトIgG1抗体のFc領域の天然C末端まで延長した単鎖ポリペプチドである。別の有用なFcポリペプチドは、米国特許第5,457,035号中、およびBaumら、1994年、EMBO J.13巻:3992〜4001頁中に記載されたFcムテインである。このムテインのアミノ酸配列はWO93/10151中で示された天然Fc配列のそれと同一であるが、ただしアミノ酸19がLeuからAlaに変わっており、アミノ酸20がLeuからGluに変わっており、かつアミノ酸22がGlyからAlaに変わっている。このムテインはFc受容体に対して低下した親和性を示す。
【0247】
他の実施形態では、本明細書で開示するようなc−fms抗原結合性タンパク質の重鎖および/または軽鎖の可変領域分を、抗体重鎖および/または軽鎖の可変領域分と置換することができる。
【0248】
あるいは、オリゴマーは、ペプチドリンカー(スペーサーペプチド)を含むかまたは含まない、多数のc−fms抗原結合性タンパク質を含む融合タンパク質である。特に適切なペプチドリンカーは、米国特許第4,751,180号および同第4,935,233号中に記載されたペプチドリンカーである。
【0249】
オリゴマーc−fms抗原結合性タンパク質誘導体を調製するための別の方法は、ロイシンジッパーの使用を含む。ロイシンジッパードメインは、それらが見られるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーはいくつかのDNA結合性タンパク質において最初に同定され(Landschulzら、1988年、Science240巻:1759頁)、それ以来様々な異なるタンパク質において発見されている。知られているロイシンジッパーの中には、二量体化または三量体化する天然に存在するペプチドおよびその誘導体がある。可溶性オリゴマータンパク質を生成するのに適したロイシンジッパードメインの例はPCT出願WO94/10308中に記載されており、肺サーファクタントタンパク質D(SPD)由来のロイシンジッパーは、参照によって本明細書に組み込まれるHoppeら、1994年、FEBS Letters344巻:191頁中に記載される。そこに融合した異種タンパク質の安定した三量体化を可能にする修飾ロイシンジッパーの使用は、Fanslowら、1994年、Semin.Immunol.6巻:267〜278頁中に記載される。一手法では、ロイシンジッパーペプチドと融合したc−fms抗原結合性タンパク質断片または誘導体を含む組換え融合タンパク質を適切な宿主細胞中で発現させ、形成する可溶性オリゴマーc−fms抗原結合性タンパク質断片または誘導体は培養上清から回収する。
【0250】
提供するいくつかの抗原結合性タンパク質は、例えば以下の実施例中に記載するように測定して、少なくとも10/M×秒、少なくとも10/M×秒、少なくとも10/M×秒のc−fmsに関する結合速度(k)を有する。提供する特定の抗原結合性タンパク質は、遅い解離速度(dissociation rate)または解離速度(off−rate)を有する。いくつかの抗原結合性タンパク質は、例えば、1×10−2−1、または1×10−3−1、または1×10−4−1、または1×10−5−1のk(解離速度)を有する。特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、25pM、50pM、100pM、500pM、1nM、5nM、10nM、25nMまたは50nM未満のK(平衡結合親和性)を有する。
【0251】
別の態様は、in vitroまたはin vivoで(例えば、ヒト対象に投与したとき)少なくとも1日の半減期を有する抗原結合性タンパク質を提供する。一実施形態では、抗原結合性タンパク質は少なくとも3日の半減期を有する。別の実施形態では、抗体またはその一部分は4日またはそれを超える半減期を有する。別の実施形態では、抗体またはその一部分は8日またはそれを超える半減期を有する。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分を、非誘導体化または非修飾抗体と比較してより長い半減期を有するように、誘導体化または修飾する。別の実施形態では、参照によって組み込まれる2000年2月24日に公開されたWO00/09560中に記載されたように、抗原結合性タンパク質は点突然変異を含有して血清中半減期が増大する。
【0252】
グリコシル化
抗原結合性タンパク質は、天然種で見られるそれと異なるかそこから改変したグリコシル化パターンを有し得る。当技術分野で知られているように、グリコシル化パターンは、タンパク質の配列(例えば、以下で論じるような、特定のグリコシル化アミノ酸の有無)、またはタンパク質が生成される宿主細胞または生物のいずれにも依存し得る。特定の発現系は以下で論じる。
【0253】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的にはN−結合型またはO−結合型のいずれかである。N−結合型は、アスパラギン残基の側鎖と糖質部分の結合を指す。Xがプロリン以外の任意のアミノ酸である、トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニンは、アスパラギン側鎖と糖質部分の酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在によって、潜在的グリコシル化部位が生成する。O−結合型グリコシル化は糖類N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの1つとヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンの結合を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンを使用することもできる。
【0254】
抗原結合性タンパク質へのグリコシル化部位の付加は、それが1つまたは複数の前に記載した(N−結合型グリコシル化部位に関する)トリペプチド配列を含有するようにアミノ酸配列を改変することによって都合よく実施する。(O−結合型グリコシル化部位に関する)開始配列への1つまたは複数のセリンまたはスレオニン残基の付加、または置換によって改変を施すこともできる。簡略化のために、抗原結合性タンパク質のアミノ酸配列は、DNAレベルでの変更によって、特に望ましいアミノ酸に翻訳されるコドンが生成するように、予め選択した塩基で標的ポリペプチドをコードするDNAを突然変異させることによって改変することができる。
【0255】
抗原結合性タンパク質上の糖質部分の数を増やす別の手段は、タンパク質とグリコシドの化学または酵素カップリングによるものである。これらの手順は、N−結合型およびO−結合型グリコシル化のグリコシル化能力を有する宿主細胞中でのタンパク質の生成を必要としない点で有利である。使用するカップリング形式に応じて、(1つまたは複数の)糖を、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインの遊離スルフヒドリル基などの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基などの遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンの芳香族残基などの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基と結合させることが可能である。これらの方法は、1987年9月11日に公開されたWO87/05330中に、およびAplin and Wriston、1981年、CRC Crit.Rev、Biochem.259〜306頁中に記載されている。
【0256】
開始抗原結合性タンパク質上に存在する糖質部分の除去は、化学的または酵素的に実施することができる。化学的脱グリコシル化は、化合物トリフルオロメタンスルホン酸、または同等化合物へのタンパク質の露出を必要とする。この処理は、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外の大部分またはすべての糖の切断をもたらし、一方ポリペプチドは完全な状態に保つ。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinら、1987年、Arch.Biochem.Biophys.259巻:52頁によって、およびEdgeら、1981年、Anal.Biochem、118巻:131頁によって記載される。ポリペプチド上の糖質部分の酵素による切断は、Thotakuraら、1987年、Meth.Enzymol.138巻:350頁によって記載されたように、様々なエンドグリコシダーゼおよびエクソグリコシダーゼの使用によって実施することができる。潜在的グリコシル化部位におけるグリコシル化は、Duskinら、1982年、J.Biol.Chem.257巻:3105頁によって記載されたように、化合物ツニカマイシンの使用によって妨げることができる。ツニカマイシンは、タンパク質−N−グリコシド結合の形成を阻害する。
【0257】
したがって、いくつかの態様は、(1つまたは複数の)グリコシル化部位の数および/または型が親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して改変されている、抗原結合性タンパク質のグリコシル化変異体を含む。特定の実施形態では、抗体タンパク質変異体は、天然抗体より多いかまたは少ない数のN−結合型グリコシル化部位を含む。N−結合型グリコシル化部位は、Xとして表すアミノ酸残基がプロリン以外の任意のアミノ酸残基であってよい、配列:Asn−X−SerまたはAsn−X−Thrによって特徴付けられる。この配列を生成するためのアミノ酸残基の置換は、N−結合型糖質鎖の付加の可能性がある新たな部位をもたらす。あるいは、この配列を除去または改変する置換は、天然ポリペプチドに存在するN−結合型糖質鎖の付加を妨げる。例えば、グリコシル化はAsnの欠失によって、またはAsnと異なるアミノ酸の置換によって低下させることができる。他の実施形態では、1つまたは複数の新たなN−結合型部位を生成する。抗体は典型的には、Fc領域中にN−結合型グリコシル化部位を有する。
【0258】
標識およびエフェクター基
いくつかの実施形態では、抗原結合性物は1つまたは複数の標識を含む。用語「標識基」または「標識」は任意の検出可能な標識を意味する。適切な標識基の例には、以下の:放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素基(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、または二次レポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)によって認識される所定のポリペプチドエピトープがあるが、これらだけには限られない。いくつかの実施形態では、標識基は様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合性タンパク質と結合させて、考えられる立体障害を減らす。タンパク質を標識するための様々な方法は当技術分野で知られており、適切であると分かる場合は使用することができる。
【0259】
用語「エフェクター基」は、細胞傷害性薬として作用する抗原結合性タンパク質と結合した任意の基を意味する。適切なエフェクター基の例は放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)である。他の適切な基には毒素、治療剤基または化学療法剤基がある。適切な基の例には、カリケアマイシン、オーリスタチン、ゲルダナマイシンおよびマイタンシンがある。いくつかの実施形態では、エフェクター基は様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合性タンパク質と結合させて、考えられる立体障害を減らす。
【0260】
一般に標識は、それらが検出されるアッセイに応じて様々なクラスに分類される:a)放射性同位体または重同位体であってよい同位体標識、b)磁気標識(例えば、磁気粒子)、c)酸化還元活性成分、d)光学色素、酵素基(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、e)ビオチン化基、およびf)二次レポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)によって認識される所定のポリペプチドエピトープ。いくつかの実施形態では、標識基は様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合性タンパク質と結合させて、考えられる立体障害を減らす。タンパク質を標識するための様々な方法は当技術分野で知られている。
【0261】
特異的な標識には、発色団、蛍光体およびフルオロフォアだけには限られないが、これらを含めた光学色素があり、多くの場合後者が特異的である。フルオロフォアは「小分子」蛍光体、またはタンパク質性蛍光体のいずれかであってよい。
【0262】
「蛍光標識」とは、その固有の蛍光性によって検出することができる任意の分子を意味する。適切な蛍光標識には、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル−クマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルーJ、テキサスレッド、IAEDANS、EDANS、BODIPY FL、LC Red 640、Cy5、Cy5.5、LC Red 705、オレゴングリーン、Alexa−Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680)、カスケードブルー、カスケードイエローおよびR−フィコエリスリン(PE)(Molecular Probes、Eugene、OR)、FITC、ローダミン、およびテキサスレッド(Pierce、Rockford、IL)、Cy5、Cy5.5、Cy7(Amersham Life Science、Pittsburgh、PA)があるが、これらだけには限られない。フルオロフォアを含めた適切な光学色素は、参照によって本明細書に明確に組み込まれるRichard P.HauglandによるMOLECULAR PROBES HANDBOOK中に記載される。
【0263】
適切なタンパク質性蛍光体標識には、Renilla、Ptilosarcus、またはAequorea種のGFP(Chalfieら、1994年、Science263巻:802〜805頁)、EGFP(Clontech Labs.、Inc.、Genbankアクセッション番号U55762)を含めた緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質(BFP、Quantum Biotechnologies、Inc.、Quebec、Canada;Stauber、1998年、Biotechniques24巻:462〜471頁;Heimら、1996年、Curr.Biol.6巻:178〜182頁)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP、Clontech Labs.、Inc.)、ルシフェラーゼ(Ichikiら、1993年、J.Immunol.150巻:5408〜5417頁)、βガラクトシダーゼ(Nolanら、1988年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.85巻:2603〜2607頁)およびRenilla(WO92/15673、WO95/07463、WO98/14605、WO98/26277、WO99/49019、米国特許第5292658号、同第5418155号、同第5683888号、同第5741668号、同第5777079号、同第5804387号、同第5874304号、同第5876995号、同第5925558号)もあるが、これらだけには限られない。
【0264】
C−fms抗原結合性タンパク質をコードする核酸
抗体、またはその断片、誘導体、ムテイン、または変異体の片方または両方の鎖をコードする核酸、重鎖可変領域またはCDRのみをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの同定、分析、突然変異または増幅用のハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマーまたはシークエンシングプライマーとして使用するのに十分なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンス核酸、および前述の相補配列を含めた、本明細書に記載される抗原結合性タンパク質、またはその一部分をコードする核酸も提供する。核酸は任意の長さであってよい。核酸は例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000またはより多くのヌクレオチド長であってよく、および/または1つまたは複数の追加的配列、例えば、制御配列を含むことができ、および/またはより大きな核酸の一部、例えばベクターであってよい。核酸は一本鎖または二本鎖であってよく、かつRNAおよび/またはDNAヌクレオチド、およびその人工変異体(例えば、ペプチド核酸)を含むことができる。表6は、IgG2重鎖定常領域およびIgG2κ軽鎖定常領域をコードする例示的な核酸配列を示す。本明細書で提供する任意の可変領域をこれらの定常領域と結合させて、完全重鎖および軽鎖配列を形成することが可能である。しかしながら、これらの定常領域の配列は、単なる具体例として提供されることは理解されるべきである。いくつかの実施形態では、可変領域の配列を、当技術分野で知られている他の定常領域の配列と結合させる。重鎖および軽鎖可変領域をコードする例示的な核酸配列は表7中に提供する。
【0265】
【表6】
【0266】
表7は、その中に様々なCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3配列が埋め込まれた重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする例示的な核酸配列を示す。
【0267】
【表7-1】
【0268】
【表7-2】
【0269】
【表7-3】
【0270】
【表7-4】
【0271】
【表7-5】
【0272】
【表7-6】
【0273】
【表7-7】
【0274】
【表7-8】
【0275】
特定の抗原結合性タンパク質、またはその一部分(例えば、完全長抗体、重鎖または軽鎖、可変ドメイン、またはCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、またはCDRL3)をコードする核酸は、c−fmsまたはその免疫原性断片で免疫処理したマウスのB細胞から単離することができる。核酸はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの従来の手順によって単離することができる。ファージディスプレイは、それによって抗体および他の抗原結合性タンパク質の誘導体を調製することができる既知の技法の別の例である。一手法では、対象となる抗原結合性タンパク質の構成要素であるポリペプチドを任意の適切な組換え発現系中で発現させ、発現したポリペプチドを構築して抗原結合性タンパク質分子を形成することができる。
【0276】
表6および7中に与える核酸は単なる例示的なものである。遺伝コードの縮重のため、表1〜4中に挙げるかまたは本明細書で他に示すそれぞれのポリペプチド配列も、提供する配列以外の多数の他の核酸配列によってコードされる。当業者は、したがって本出願は、それぞれの抗原結合性タンパク質をコードするそれぞれの縮重ヌクレオチド配列に関する、適切な文書による記載および使用可能性を与えることを理解するはずである。
【0277】
一態様は、特定のハイブリダイゼーション条件下で、他の核酸(例えば、表6および表7中に挙げるヌクレオチド配列を含む核酸)とハイブリダイズする核酸をさらに提供する。核酸をハイブリダイズするための方法は当技術分野でよく知られている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.(1989年)、6.3.1〜63.6を参照されたい。本明細書で定義するように、適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)を含有する事前洗浄溶液、約50%のホルムアミド、6×SSCのハイブリダイゼーションバッファー、および55℃のハイブリダイゼーション温度(または、約50%のホルムアミドを含有する溶液などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液、および42℃のハイブリダイゼーション温度)、および60℃、0.5×SSC、0.1%のSDS中の洗浄条件を使用する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6×SSC中45℃でハイブリダイズさせ、次に0.l×SSC、0.2%のSDS中68℃での一回または複数回の洗浄を行う。さらに当業者は、互いに少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸が、典型的に互いにハイブリダイズした状態であるように、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を操作して、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増大または低下させることが可能である。
【0278】
ハイブリダイゼーション条件の選択および適切な条件を考案するための指針に影響を与える基本パラメータは、例えばSambrook、Fritsch、およびManiatis(2001年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.上記;およびCurrent Protocols in Molecular Biology、1995年、Ausubelら編、John Wiley & Sons、Inc.、セクション2.10および6.3〜6.4)によって述べられ、例えば核酸の長さおよび/または塩基組成に基づき、当業者により容易に決定され得る。
【0279】
核酸への突然変異によって変化を導入することができ、これによってそれがコードするポリペプチド(例えば、抗体または抗体誘導体)のアミノ酸配列の変化をもたらすことができる。突然変異は当技術分野で知られている任意の技法を使用して導入することができる。一実施形態では、1つまたは複数の特定のアミノ酸残基を、例えば部位特異的突然変異誘発プロトコルを使用して変える。別の実施形態では、1つまたは複数のランダムに選択した残基を、例えばランダム突然変異誘発プロトコルを使用して変える。それをどのように作製しようとも、突然変異体ポリペプチドを発現させ望ましい性質に関してスクリーニングすることが可能である。
【0280】
核酸がコードするポリペプチドの生物活性を著しく変えずに、核酸に突然変異を導入することができる。例えば、ヌクレオチド置換を施して、非必須アミノ酸残基におけるアミノ酸置換をもたらすことができる。あるいは、核酸がコードするポリペプチドの生物活性を選択的に変える、1つまたは複数の突然変異を核酸に導入することができる。例えば、突然変異は生物活性を定量的または定性的に変えることができる。定量的変化の例には、活性の増大、低減または除外がある。定性的変化の例には、抗体の抗原特異性の変化がある。一実施形態では、当技術分野で十分に確立している分子生物学の技法を使用して、本明細書に記載される任意の抗原結合性タンパク質をコードする核酸を突然変異させアミノ酸配列を変えることが可能である。例えば実施例4は、どのように核酸配列(表6参照)を突然変異させて、1つまたは複数のアミノ酸置換を特定の抗原結合性タンパク質に導入し、抗原結合性タンパク質1.2SM1.109SMおよび2.360SMを生成したかを記載する。他の突然変異を含有する追加的抗原結合性タンパク質を、同様の方法で生成することができる。
【0281】
別の態様は、核酸配列の検出用のプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとして使用するのに適した核酸分子を提供する。核酸分子は、完全長ポリペプチド、例えばプローブまたはプライマーとして使用することができる断片、またはポリペプチドの活性部分(例えば、c−fms結合部分)をコードする断片をコードする核酸配列の一部分のみを含み得る。
【0282】
核酸の配列に基づくプローブを使用して、核酸または類似の核酸、例えば、ポリペプチドをコードする転写産物を検出することができる。プローブは標識基、例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素コファクターを含むことができる。このようなプローブを使用して、ポリペプチドを発現する細胞を同定することができる。
【0283】
別の態様は、ポリペプチドまたはその一部分(例えば、1つまたは複数のCDRまたは1つまたは複数の可変領域ドメインを含有する断片)をコードする核酸を含むベクターを提供する。ベクターの例には、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクターおよび発現ベクター、例えば組換え発現ベクターがあるが、これらだけには限られない。組換え発現ベクターは、宿主細胞中での核酸の発現に適した形で核酸を含むことができる。組換え発現ベクターは、発現に使用する宿主細胞に基づいて選択され発現する核酸配列と作動可能に連結した、1つまたは複数の制御配列を含む。制御配列は、多くの型の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を誘導する配列(例えば、SV40初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスプロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーター)、特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を誘導する配列(例えば、組織特異的制御配列、その全容を参照によって本明細書に組み込んだ、Vossら、1986年、Trends Biochem.Sci.11巻:287頁、Maniatisら、1987年、Science236巻:1237頁を参照)、および個々の処理または状態に応じてヌクレオチド配列の誘導的発現を誘導する配列(例えば、哺乳動物細胞におけるメタロチオニンプロモーター、ならびに原核生物系と真核生物系の両方におけるtet−応答性および/またはストレプトマイシン応答性プロモーター(上記参照)を含む。発現ベクターの設計は、例えば形質転換する宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現のレベルなどの要因に依存し得ることは、当業者によって理解されるはずである。発現ベクターを宿主細胞中に導入して、それによって本明細書に記載される核酸によってコードされる融合タンパク質またはペプチドを含めた、タンパク質またはペプチドを生成することができる。
【0284】
別の態様は、その中に組換え発現ベクターが導入された宿主細胞を提供する。宿主細胞は任意の原核生物細胞(例えば、大腸菌)または真核生物細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞))であってよい。従来の形質転換またはトランスフェクション技法によって、ベクターDNAを原核生物細胞または真核生物細胞中に導入することができる。哺乳動物細胞の安定したトランスフェクションに関して、使用する発現ベクターおよびトランスフェクション技法に応じて、一部分の細胞のみがそれらのゲノム中に外来DNAを組み込むことができることが知られている。これらの要素を確認および選択するために、(例えば、抗生物質に対する耐性に関する)選択可能なマーカーをコードする遺伝子を一般に、対象とする遺伝子を有する宿主細胞中に導入する。好ましい選択可能なマーカーには、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートなどの薬剤に対する耐性を与えるマーカーがある。導入核酸で安定してトランスフェクトした細胞は、他の方法中で薬剤選択によって同定することができる(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生存し、一方他の細胞は死滅する)。
【0285】
抗原結合性タンパク質の調製
提供される非ヒト抗体は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ロバ、または(サル(例えば、カニクイザルもしくはアカゲザル)または類人猿(例えば、チンパンジー)などの)非ヒト霊長類などのどんな抗体産生動物由来でもよい。非ヒト抗体は、例えば、in vitro細胞培養および細胞培養をベースとする適用において、あるいは、抗体への免疫応答が起きないもしくはわずかである、予防することができる、懸念するほどではない、または望まれる他のどんな適用においても使用することができる。ある種の実施形態では、完全長c−fmsを使用して、またはc−fmsの細胞外ドメインを使用して免疫化することにより抗体を産生してもよい。あるいは、ある種の非ヒト抗体は、本明細書に提供されるある種の抗体が結合するエピトープの一部を形成するc−fmsのセグメントであるアミノ酸を使用して免疫化することにより産生してもよい(下記を参照)。抗体は、ポリクローナルでも、モノクローナルでもよく、または組換えDNAを発現することにより宿主細胞で合成してもよい。
【0286】
完全ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニック動物を免疫化することにより、またはヒト抗体のレパートリーを発現しているファージディスプレイライブラリーを選択することにより、上記の通りに調製してもよい。
【0287】
モノクローナル抗体(mAb)は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えば、KohlerとMilstein、1975年、Nature 256巻:495頁の標準体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む種々の技術によって産生することができる。あるいは、モノクローナル抗体を産生するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルスまたは腫瘍形成性形質転換を用いることができる。ハイブリドーマを調製するための1つの適切な動物系は、十分に手法が確立しているマウス系である。融合のための免疫化脾細胞の単離のための免疫化プロトコルおよび技術は、当技術分野では公知である。そのような手法のために、免疫化マウス由来のB細胞を、マウスミエローマ細胞系などの適切な不死化融合パートナーと融合させる。必要ならば、ラットまたはさらに他の哺乳動物をマウスに代わって免疫化することができ、そのような動物由来のB細胞をマウスミエローマ細胞系と融合させて、ハイブリドーマを形成することができる。あるいは、マウス以外の供給源由来のミエローマ細胞系を使用してもよい。ハイブリドーマを作製するための融合手法も周知である。
【0288】
重鎖および軽鎖可変ドメイン(Fv領域)断片をアミノ酸ブリッジ(短いペプチドリンカー)を介して連結して、単一ポリペプチド鎖をもたらすことにより、提供される一本鎖抗体を形成してもよい。そのような一本鎖Fv(scFv)は、2つの可変ドメインポリペプチド(VおよびV)をコードするDNA間に、ペプチドリンカーをコードするDNAを融合することにより調製してもよい。こうして得られたポリペプチドは折り畳まれて抗原結合性単量体を形成することができ、または2つの可変ドメイン間の可動性リンカーの長さに応じて、多量体(例えば、二量体、三量体、もしくは四量体)を形成することができる(Korttら、1997年、Prot. Eng.10巻:423頁;Korttら、2001年、Biomol. Eng. 18巻:95〜108頁)。異なるVとV含有ポリペプチドを組み合わせることにより、異なったエピトープに結合する多量体scFvを形成することができる(Kriangkumら、2001年、Biomol. Eng. 18巻:31〜40頁)。一本鎖抗体の産生のために開発された技術には、米国特許第4,946,778号;Bird、1988年、Science 242巻:423頁;Hustonら、1988年、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85巻:5879頁;Wardら、1989年、Nature 334巻:554頁、de Graafら、2002年、Methods Mol Biol. 178巻:379〜387頁に記載された技術が挙げられる。本明細書に提供される抗体由来の一本鎖抗体には、表2に描かれた重鎖および軽鎖可変領域の可変ドメイン組合せを含むscFv、または表3および4に描かれたCDRを含む軽鎖と重鎖の可変ドメインの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0289】
本明細書に提供され、1つのサブクラスである抗体は、サブクラススイッチ法を使用して、異なるサブクラス由来の抗体に変えることができる。したがって、IgG抗体は、例えば、IgM抗体に由来してもよく、その逆でもよい。そのような技術のおかげで、所与の抗体(親抗体)の抗原結合特性を有するが、親抗体とは異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスに関連する生物学的特性も示す新しい抗体を調製することができる。組換えDNA技術を用いてもよい。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローン化DNA、例えば、目的のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAを、そのような手法に用いてもよい。例えば、Lanttoら、2002年、Methods Mol. Biol. 178巻:303〜316頁を参照されたい。
【0290】
したがって、提供される抗体には、例えば、目的のアイソタイプ(例えば、IgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、およびIgD)の他にもそのFab断片またはF(ab’)断片も有する上に記載された可変ドメイン組合せを含む抗体が挙げられる。さらに、IgG4が望まれる場合には、Bloomら、1997年、Protein Science 6巻:407頁(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたヒンジ領域に点突然変異(CPSCP→CPPCP)を導入して、IgG4抗体に不均一性をもたらすことができるH鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を緩和することも望ましくあり得る。
【0291】
さらに、異なった特性(すなわち、抗体が結合する抗原に対する変動する親和性)を有する抗体を引き出すための技術も公知である。1つのそのような技術は、チェインシャフリングと呼ばれ、繊維状バクテリオファージの表面に免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーを表示するものであり、ファージディスプレイと呼ばれることも多い。Marksら、1992年、BioTechnology 10巻:779頁により記載されたように、チェインシャフリングを使用して、ハプテン2−フェニルオキサゾール−5−オンに対する高親和性抗体が調製されている。
【0292】
表2に記載された重鎖および軽鎖可変領域、または表3および4に記載されたCDRに保存的改変(およびそのコード核酸に対応する改変)を加えて、機能的および生化学的特徴を有するc−fms抗原結合性タンパク質を産生してもよい。そのような改変を実現するための方法は上に記載されている。
【0293】
C−fms抗原結合性タンパク質は、種々の方法でさらに改変してもよい。例えば、治療目的に使用するつもりであれば、c−fms抗原結合性タンパク質をポリエチレングリコールとコンジュゲートさせて(ペグ化させて)、血清半減期を延ばすか、またはタンパク質送達を増強してもよい。あるいは、被験者抗体のV領域またはその断片を異なる抗体分子のFc領域と融合させてもよい。この目的に使用するFc領域を、それが補体に結合せず、したがって融合タンパク質が治療薬として使用されるときには患者内で細胞溶解を誘発する可能性を減らすように改変してもよい。さらに、被験者抗体またはその機能的断片をヒト血清アルブミンとコンジュゲートさせて、抗体またはその断片の血清半減期を増強してもよい。抗原結合性タンパク質またはその断片のための別の有用な融合パートナーはトランスサイレチン(TTR)である。TTRには四量体を形成する能力があり、したがって抗体−TTR融合タンパク質はその結合アビディティーを増加させ得る多価抗体を形成することができる。
【0294】
あるいは、本明細書に記載された抗原結合性タンパク質の機能的および/または生化学的特徴の実質的改変は、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列に、(a)例えば、シートもしくはらせん形高次構造としての置換体の領域における分子骨格の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさばりを維持することに対するその効果が有意に異なる置換体を作り出すことにより実現してもよい。「保存的アミノ酸置換」は、その位置でのアミノ酸残基の極性または電荷への効果がほとんどないまたは全くない非天然残基による天然アミノ酸残基の置換を含んでもよい。上記の表3を参照されたい。さらに、アラニン系統的変異導入法ですでに記載したように、ポリペプチド中のどんな天然残基もアラニンで置換してもよい。
【0295】
被験者抗体のアミノ酸置換(保存的でも非保存的でも)は、当業者であれば常法を用いることにより実行することができる。アミノ酸置換を使用して、本明細書に提供される抗体の重要な残基を同定することができるか、または、ヒトc−fmsに対するこれらの抗体の親和性を増加させるもしくは減少させることができるか、もしくは本明細書に記載された他の抗原結合性タンパク質の結合親和性を改変するために用いることができる。
【0296】
抗原結合性タンパク質を発現させる方法
発現系および上記の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、発現ベクター、転写カセットまたは発現カセットの形の構築物ならびにそのような発現系または構築物を含む宿主細胞も、本明細書に提供されている。
【0297】
本明細書に提供された抗原結合性タンパク質は、いくつかの従来の技術のどれによって調製してもよい。例えば、c−fms抗原結合性タンパク質は、当技術分野では公知の任意の技術を使用して、組換え発現系により産生してもよい。例えば、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses、Kennetら、(編)Plenum
Press、New York(1980年);およびAntibodies:A Laboratory Manual、HarlowとLane(編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1988年)を参照されたい。
【0298】
抗原結合性タンパク質は、ハイブリドーマ細胞系で(例えば、特に抗体はハイブリドーマで発現されてもよい)またはハイブリドーマ以外の細胞系で発現させることができる。抗体をコードする発現構築物を使用して、哺乳動物、昆虫または微生物宿主細胞を形質転換することができる。形質転換は、米国特許第4,399,216号、米国特許第4,912,040号、米国特許第4,740,461号、米国特許第4,959,455号に例証されるように、例えば、ポリヌクレオチドをウイルスまたはバクテリオファージにパッケージングし、当技術分野で公知のトランスフェクション法により構築物で宿主細胞を形質導入することを含む、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の既知の方法を使用して実施することができる。使用される最適の形質転換法は、どのタイプの宿主細胞が形質転換されているかに依存することになる。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入するための方法は当技術分野では周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中へのポリヌクレオチド(複数可)の封入、核酸と正電荷を帯びた脂質の混合、およびDNAの核への直接マイクロインジェクションが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0299】
組換え発現構築物は、典型的には、以下のもの、すなわち、本明細書に提供された1つもしくは複数のCDR;軽鎖定常領域;軽鎖可変領域;重鎖定常領域(例えば、C1、C2および/もしくはC3);ならびに/またはc−fms抗原結合性タンパク質の別のスキャフォールド部分のうちの1つまたは複数を含むポリペプチドをコードする核酸分子を含む。これらの核酸配列は、標準ライゲーション技術を使用して適切な発現ベクターに挿入される。一実施形態では、重鎖または軽鎖の定常領域は、抗c−fms特異的重鎖または軽鎖の可変領域のC末端に付加され、発現ベクターにライゲートされる。ベクターは、典型的には、用いられる特定の宿主細胞において機能的である(すなわち、ベクターは宿主細胞機構に適合性であり、増幅を可能にし、かつ/または遺伝子の発現が起こり得る)ように選択される。いくつかの実施形態では、ジヒドロ葉酸レダクターゼなどの、タンパク質レポーターを使用したタンパク質断片相補性アッセイを用いるベクターが使用される(例えば、米国特許第6,270,964号を参照、この文献は参照により本明細書に組み込まれている)。適切な発現ベクターは、例えば、Invitrogen Life TechnologiesまたはBD Biosciences(以前は「Clontech」)から購入することができる。抗体および断片をクローニングし発現させるための他の有用なベクターには、BianchiとMcGrew、2003年、Biotech. Biotechnol. Bioeng. 84巻:439〜44頁に記載されるベクターが挙げられ、この文献は参照により本明細書に組み込まれている。追加の適切な発現ベクターは、例えば、Methods Enzymol.、185巻(D.V.Goeddel編)、1990年、New York: Academic Pressにおいて考察されている。
【0300】
典型的に、宿主細胞のどれにおいて使用される発現ベクターも、プラスミド維持のための、ならびに外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含有することになる。そのような配列は、まとめて「隣接配列」と呼ばれるが、ある種の実施形態では、典型的に、以下のヌクレオチド配列、すなわちプロモーター、1つまたは複数のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナーおよびアクセプタースプライシング部位を含有する完全イントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択可能マーカーエレメントのうちの1つまたは複数を含むことになる。これらの配列はそれぞれ下で考察される。
【0301】
随意に、ベクターは、「タグ」コード配列、すなわち、c−fms抗原結合性タンパク質コード配列の5’または3’末端に位置するオリゴヌクレオチド分子を含有していてもよく、オリゴヌクレオチド配列は、(ヘキサHisなどの)ポリHis、またはFLAG(登録商標)、HA(ヘマグルチニンインフルエンザウイルス)、もしくはmycなどの別の「タグ」をコードしており、それに対しては市販の抗体が存在する。このタグは、典型的には、ポリペプチドが発現されるとそのポリペプチドに融合され、宿主細胞由来のc−fms抗原結合性タンパク質の親和性精製または検出のための手段としての役割を果たすことができる。親和性精製は、例えば、親和性マトリックスとしてタグに対する抗体を使用したカラムクロマトグラフィーにより実現することができる。随意に、タグはその後、切断のためのある種のペプチダーゼを使用してなどの種々の手段により、精製されたc−fms抗原結合性タンパク質から除去することができる。
【0302】
隣接配列は、相同でも(すなわち、宿主細胞と同一の種および/または系統由来)、異種でも(すなわち、宿主細胞種または系統以外の種由来)、ハイブリッドでも(すなわち、2つ以上の供給源由来の隣接配列の組合せ)、合成でも、天然でもよい。したがって、隣接配列の供給源は、隣接配列が宿主細胞機構において機能的であり、それによって活性化されることができるならば、どんな原核生物でも真核生物でも、どんな脊椎動物でも無脊椎動物でも、あるいはどんな植物でもよい。
【0303】
ベクターにおいて有用な隣接配列は、当技術分野で周知のいくつかの方法のどれによって入手してもよい。典型的には、本明細書において有用な隣接配列は、地図作成によりおよび/または制限エンドヌクレオアーゼ消化によりすでに同定済みであろうし、したがって、適切な制限エンドヌクレアーゼを使用して適切な組織供給源から単離することができる。いくつかの場合に、隣接配列の完全ヌクレオチド配列は既知である可能性がある。本明細書においては、隣接配列は、核酸合成またはクローニングのために本明細書に記載した方法を使用して合成してもよい。
【0304】
隣接配列で既知であるのがそのすべてであれ、一部分のみであれ、隣接配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してならびに/または、同一のもしくは別の種由来のオリゴヌクレオチドおよび/もしくは隣接配列断片などの適切なプローブを使用してゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、入手してもよい。隣接配列が既知ではない場合、隣接配列を含有するDNAの断片を、例えば、コード配列またはさらに別の遺伝子もしくは複数の遺伝子を含有し得るDNAのさらに大きな部分から単離してもよい。単離は、適切なDNA断片を作製する制限エンドヌクレアーゼ消化により、続いてアガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth、CA)を使用する単離によりまたは当業者には公知の他の方法により実現してもよい。この目的を実現するための適切な酵素の選択は、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0305】
複製起点は、典型的には、市販のこれらの原核生物発現ベクターの一部であり、起点は宿主細胞におけるベクターの増幅に助けとなる。選択されたベクターに複製起点部位が含有されていない場合には、複製起点部位は既知の配列に基づいて化学的に合成してベクターにライゲートされてもよい。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs、Beverly、MA)由来の複製起点は、大半のグラム陰性菌に適しており、種々のウイルス起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、またはHPVもしくはBPVなどのパピローマウイルス)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は哺乳動物発現ベクターには必要ではない(例えば、SV40起点は、ウイルス初期プロモーターも含有しているという理由だけで使われていることが多い)。
【0306】
転写終結配列は、典型的にはポリペプチドコード領域の末端から3’側に位置しており、転写を終結させる働きをする。通常、原核細胞中の転写終結配列は、G−C豊富断片であり、その後にポリT配列が続く。配列はライブラリーから容易にクローン化され、またはベクターの一部として市販さえされているが、本明細書に記載された方法などの核酸合成のための方法を使用して容易に合成することもできる。
【0307】
選択可能マーカー遺伝子は、選択培地で増殖された宿主細胞の生存および増殖に必要なタンパク質をコードしている。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、原核生物宿主細胞ではアンピシリン、テトラサイクリン、もしくはカナマイシンに対する耐性を与える、(b)細胞の栄養要求性欠損を補完する、または(c)複合培池もしくは限定培地からは入手できない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。特異的選択可能マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子である。有利に、ネオマイシン耐性遺伝子も原核生物と真核生物の宿主細胞の両方における選択のために使用してもよい。
【0308】
他の選択可能遺伝子を使用して、発現されることになる遺伝子を増幅させてもよい。増幅は、増殖または細胞生存にとって重要なタンパク質の産生のために必要とされる遺伝子が組換え細胞の継続的世代の染色体内でタンデムに反復されるプロセスである。哺乳動物細胞に適切な選択可能マーカーの例には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびプロモーターのないチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。哺乳動物細胞形質転換体は、ベクター中に存在する選択可能遺伝子のおかげで形質転換体だけが変わりなく生存に適応している淘汰圧下に置かれている。培地中の選択剤の濃度が連続的に増加される条件下で形質転換された細胞を培養することにより、淘汰圧は課せられ、それによって、選択可能遺伝子と、c−fmsポリペプチドに結合する抗原結合性タンパク質などの別の遺伝子をコードするDNAの両方の増幅をもたらす。その結果、増幅されたDNAから合成される抗原結合性タンパク質などのポリペプチドの量が増加する。
【0309】
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始には必要であり、シャインダルガーノ配列(原核生物)またはコザック配列(真核生物)により特徴付けられる。そのエレメントは、典型的には、プロモーターの3’側および発現されるポリペプチドのコード配列の5’側に位置している。
【0310】
真核生物宿主細胞発現系においてグリコシル化が求められる場合などの、いくつかの場合、種々のプレ配列またはプロ配列を操作して、グリコシル化または収量を改良してもよい。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を改変してもよいし、グリコシル化に影響を与え得るプロ配列を付加してもよい。最終タンパク質産物は、−1位に(成熟タンパク質の第1アミノ酸に対して)、完全には取り除かれていなかった可能性のある、発現に付随する1つまたは複数の追加のアミノ酸を有していてもよい。例えば、最終タンパク質産物は、ペプチダーゼ切断部位に見出され、アミノ末端に結合している1つまたは複数のアミノ酸残基を有していてもよい。あるいは、いくつかの酵素切断部位の使用によって、酵素が成熟ポリペプチド内のそのような領域で切断する場合には、目的のポリペプチドのわずかな短縮型をもたらしてもよい。
【0311】
発現およびクローニングは、典型的には、宿主生物により認識され、c−fms抗原結合性タンパク質をコードする分子に作動可能に連結されているプロモーターを含有することになる。プロモーターは、構造遺伝子(一般に、約100〜1000bp以内)の開始コドンの上流(すなわち、5’側)に位置し、構造遺伝子の転写を制御する非転写配列である。プロモーターは、慣習的に2つのクラス、すなわち誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターのうちの1つに分類される。誘導性プロモーターは、栄養素の有無または温度の変化などの培養条件のある変化に応じて、その制御下にあるDNAからの転写レベルの増加を起こす。一方、構成的プロモーターは、それが作動可能に連結されている遺伝子を一様に、すなわち、遺伝子発現の間ほとんどまたは全く制御しないで転写する。種々の潜在的宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。適切なプロモーターは、制限酵素消化により供給源DNAからプロモーターを除去し、目的のプロモーター配列をベクターに挿入することにより、c−fms抗原結合性タンパク質を含む重鎖または軽鎖をコードするDNAに作動可能に連結される。
【0312】
酵母宿主とともに使用するのに適したプロモーターも当技術分野では周知である。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターと一緒に有利に使用される。哺乳動物宿主細胞とともに使用するのに適したプロモーターは周知であり、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、(アデノウイルス2などの)アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の適切な哺乳動物プロモーターには、異種哺乳動物プロモーター、例えば、熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが挙げられる。
【0313】
対象になり得る追加のプロモーターには、SV40初期プロモーター(BenoistとChambon、1981年、Nature 290巻:304〜310頁);CMVプロモーター(Thomsenら、1984年、Proc. Natl. Acad. U.S.A. 81巻:659〜663頁);ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復に含有されるプロモーター(Yamamotoら、1980年、Cell 22巻:787〜797頁);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981年、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78巻:1444〜1445頁);メタロチオネイン遺伝子由来のプロモーターおよび調節配列(Prinsterら、1982年、Nature 296巻:39〜42頁);およびβラクタマーゼプロモーターなどの原核生物プロモーター(Villa−Kamaroffら、1978年、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75巻:3727〜3731頁);またはtacプロモーター(DeBoerら、1983年、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80巻:21〜25頁)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。組織特異性を示しトランスジェニック動物で使用されてきた以下の動物転写制御領域も対象になり、すなわち、膵腺房細胞で活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら、1984年、Cell 38巻:639〜646頁;Ornitzら、1986年、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50巻:399〜409頁;MacDonald、1987年、Hepatology 7巻:425〜515頁);膵臓β細胞で活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan、1985年、Nature 315巻:115〜122頁);リンパ系細胞で活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984年、Cell 38巻:647〜658頁;Adamesら、1985年、Nature 318巻:533〜538頁;Alexanderら、1987年、Mol. Cell. Biol. 7巻:1436〜1444頁);精巣、乳房、リンパ系細胞およびマスト細胞で活性であるマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Lederら、1986年、Cell 45巻:485〜495頁);肝臓で活性であるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら、1987年、Genes and Devel. 1巻:268〜276頁);肝臓で活性であるαフェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら、1985年、Mol. Cell. Biol. 5巻:1639〜1648頁;Hammerら、1987年、Science 253巻:53〜58頁);肝臓で活性であるα1アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら、1987年、Genes and Devel. 1巻:161〜171頁);骨髄細胞で活性であるβグロビン遺伝子制御領域(Mogramら、1985年、Nature 315巻:338〜340頁;Kolliasら、1986年、Cell 46巻:89〜94頁);脳内のオリゴデンドロサイト細胞で活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら、1987年、Cell 48巻:703〜712頁);骨格筋で活性であるミオシン軽鎖2遺伝子制御領域(Sani、1985年、Nature 314巻:283〜286頁);および視床下部で活性である性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら、1986年、Science 234巻:1372〜1378頁)がある。
【0314】
エンハンサー配列をベクターに挿入して、高等真核生物によるヒトc−fms抗原結合性タンパク質を含む軽鎖または重鎖をコードするDNAの転写を増加させてもよい。エンハンサーは、プロモーターに作用して転写を増加させる、通常は約10〜300bp長のDNAのシス作動性エレメントである。エンハンサーは、相対的に配向および位置非依存性であり、転写ユニットの5’側の位置にも3’側の位置にも見出されている。哺乳動物遺伝子(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、αフェトプロテインおよびインスリン)から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が知られている。しかし、典型的には、ウイルス由来のエンハンサーが使用される。当技術分野で公知のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化のための例となる増強エレメントである。エンハンサーはベクター中のコード配列の5’側または3’側のいずれに位置していてもよいが、典型的にはプロモーターから5’の部位に位置している。適切な天然または異種シグナル配列(リーダー配列またはシグナルペプチド)をコードする配列は、発現ベクターに組み込まれて、抗体の細胞外分泌を促進することができる。シグナルペプチドまたはリーダーの選択は、抗体が産生されることになる宿主細胞の種類に依存しており、異種シグナル配列は天然シグナル配列に取って代わることができる。哺乳動物宿主細胞において機能的なシグナルペプチドの例には、以下のものが挙げられる。すなわち、米国特許第4,965,195号に記載のインターロイキン7(IL−7)のシグナル配列;Cosmanら、1984年、Nature 312巻:768頁に記載のインターロイキン2受容体のシグナル配列;欧州特許第0367566号に記載のインターロイキン4受容体シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号に記載のI型インターロイキン1受容体シグナルペプチド;欧州特許第0460846号に記載のII型インターロイキン1受容体シグナルペプチドがある。
【0315】
提供される発現ベクターは、市販のベクターなどの出発ベクターから構築してもよい。そのようなベクターは、目的の隣接配列のすべてを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。本明細書に記載される1つまたは複数の隣接配列がまだベクター中に存在していない場合、隣接配列は個々に入手してベクターにライゲートしてもよい。隣接配列のそれぞれを得るために使用する方法は当業者には周知である。
【0316】
ベクターが構築され、c−fms抗原結合配列を含む軽鎖、重鎖、または軽鎖と重鎖をコードする核酸分子がベクターの適切な部位に挿入された後に、完成したベクターを、増幅および/またはポリペプチド発現のために適切な宿主細胞に挿入してもよい。抗原結合性タンパク質のための発現ベクターの選択された宿主細胞への形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、またはその他の既知の技術を含む周知の方法により実現してもよい。選択された方法は、一部が、使用されるような種類の宿主細胞の機能になるであろう。これらの方法および他の適切な方法は当業者には周知であり、例えば、Sambrookら、2001年、上記、に記載されている。
【0317】
宿主細胞は、適切な条件下で培養されると、抗原結合性タンパク質を合成し、このタンパク質はその後(宿主細胞が抗原結合性タンパク質を培地に分泌する場合には)培地から、または(抗原結合性タンパク質が分泌されない場合には)それを産生している宿主細胞から直接回収することができる。適切な宿主細胞の選択は、目的の発現レベル、(グリコシル化もしくはリン酸化などの)活性に望ましいまたは必要なポリペプチド修飾、および生物学的に活性な分子への折り畳みの容易さなどの種々の要因に依存することになる。
【0318】
発現のための宿主として利用できる哺乳動物細胞系は当技術分野では周知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、およびいくつかの他の細胞系を含むが、これらに限定されることはない米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)から入手可能な不死化細胞系が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある種の実施形態では、細胞系は、どの細胞系が高い発現レベルを有し、c−fms結合特性のある抗原結合性タンパク質を構成的に産生するかを決定することにより選択してもよい。別の実施形態では、それ自体の抗体は作らないが異種抗体を作り分泌する能力のあるB細胞系統由来の細胞系を選択することができる。
【0319】
診断および治療目的のためのヒトC−fms抗原結合性タンパク質の使用
抗原結合性タンパク質は、生体試料中のc−fmsを検出するのに、およびc−fmsを産生する細胞または組織の同定に有用である。例えば、c−fms抗原結合性タンパク質は、診断分析、例えば、組織もしくは細胞で発現されるc−fmsを検出かつ/または定量するための結合アッセイに使用することができる。c−fmsに特異的に結合する抗原結合性タンパク質は、それを必要とする患者のc−fmsに関連する疾患の治療にも使用することができる。さらに、c−fms抗原結合性タンパク質を使用して、c−fmsがそのリガンドであるCSF−1と複合体を形成するのを阻害し、それによって細胞または組織中のc−fmsの生物活性を調節することができる。調節することができる活性の例には、c−fmsの自己リン酸化を阻害すること、単球走化性を減少させること、単球遊走を阻害すること、腫瘍もしくは病変組織中の腫瘍関連マクロファージの蓄積を阻害することおよび/または新脈管形成を阻害することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。したがって、c−fmsに結合する抗原結合性タンパク質は、他の結合化合物との相互作用を調節しかつ/または遮断することができ、したがって、c−fms関連疾患を寛解させる治療的使用を有し得る。
【0320】
適応症
多くの腫瘍細胞がCSF−1を分泌し、このCSF−1は次に単球/マクロファージ細胞を引き寄せ、その生存を促進し、同族受容体c−fmsを通じて活性化する。ヒト腫瘍におけるCSF−1のレベルは、その腫瘍中に存在するTAMの数と正に相関していることが明らかにされている(Murdochら、2004年、Blood 104巻:2224〜2234頁)。いくつかの研究では、種々の形の癌について、高TAM数と患者における患者生存の低下が関連付けられてきた。最近の研究では、腫瘍細胞におけるオートクリンループの存在が示されている。他の研究では、c−fmsが種々の炎症性疾患に関与していることが示されている。したがって、本明細書に提供されるヒトc−fms抗原結合性タンパク質によるc−fms−CSF−1シグナル伝達の調節により、c−fmsに関連する生物学的応答の少なくとも1つを阻害し、妨げ、または調節することができ、したがって、c−fms関連疾患または状態の効果を寛解させるのに有用である。本明細書に提供されるc−fms結合性タンパク質は、そのような疾患もしくは状態の診断、予防または治療のためにも使用することができる。
【0321】
ヒトc−fmsに関連する疾患または状態には、患者におけるその発症が、少なくとも一部が、c−fmsとCSF−1リガンドおよび/またはIL−34との相互作用により引き起こされる任意の疾患または状態が挙げられる。疾患または状態の重症度も、c−fmsとCSF−1リガンドおよび/またはIL−34との相互作用により増加することも減少することもできる。抗原結合性タンパク質で治療することができる疾患および状態の例には、種々の癌、炎症性疾患および骨障害が挙げられる。抗原結合性タンパク質を使用して、癌の転移および癌の骨への転移に付随する骨の骨溶解を治療するかまたは予防することもできる[0325]。高レベルのTAMは、乳癌(Tsutsuiら、2005年、Oncol. Rep. 14巻:425〜431頁;Leekら、1999年、Br. J. Cancer 79巻:991〜995頁;LeekとHarris、2002年、J. Mammary Gland Biol and Neoplasia 7巻:177〜189頁)、前立腺癌(Lissbrantら、2000年、Int. J. Oncol. 17巻:445〜451頁)、子宮内膜癌(Ohnoら、2004年、Anticancer Res. 24巻:3335〜3342頁)、膀胱癌(Hanadaら、2000年、Int. J. Urol 7巻:263〜269頁)、腎臓癌(Hamadaら、2002年、Anticancer Res. 22巻:4281〜4284頁)、食道癌(LewisとPollard、2006年、Cancer Res. 66巻(2号):606〜612頁)、扁平上皮癌(Koideら、2004年、Am. J. Gastroenterol. 99巻:1667〜1674頁)、ブドウ膜黒色腫(Makitieら、2001年、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 42巻:1414〜1421頁)、濾胞性リンパ種(Farinhaら、2005年、Blood 106巻:2169〜2174頁)、腎臓癌および子宮頚部癌(Kirmaら、2007年、Cancer Res 67巻:1918〜1926頁)を含む種々の癌における腫瘍増殖に関連している。乳癌、前立腺癌、子宮内膜癌、膀胱癌、腎臓癌、食道癌、扁平上皮癌、ブドウ膜黒色腫、濾胞性リンパ種および卵巣癌の場合には、高レベルのTAMは患者生存の低下も示している。したがって、本明細書に提供されるc−fms抗原結合性タンパク質を使用して、腫瘍におけるTAMの動員を阻害して生存および機能を減少させ、したがって、腫瘍増殖にマイナスの影響を与え、患者生存を増加することができる。
【0322】
治療することができる他の癌には、固形腫瘍全般、肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、脳、膵臓、頭部、頚部、肝臓、白血病、リンパ腫およびホジキン病、多発性骨髄腫(Farinhaら、2005年、Blood 106巻:2169〜2174頁)、メラノーマ、胃癌、アストロサイト癌、胃腺癌および肺腺癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。Ishigamiら、2003年、Anticancer Research 23巻:4079〜4083頁;Carusoら、1999年、Modern Pathology 12巻:386〜390頁;Witcherら、2004年、Research Support 104巻:3335〜3342頁;Haran−Gheraら、1997年、Blood 89巻:2537〜2545頁;Husseinら、2006年、International Journal of Experimental Pathology 87巻:163〜76頁;Lauら、2006年、British Journal of Cancer. 94巻:1496〜1503頁;Leungら、1997年、Acta Neuropathologica. 93巻:518〜527頁;Giraudoら、2004年、Journal of Clinical Investigation 114巻:623〜633頁;Kirmaら、2007年、Cancer Research 67巻:1918〜26頁;van Ravenswaayら、1992年、Laboratory Investigation 67巻:166〜174頁。
【0323】
抗原結合性タンパク質を使用して、腫瘍増殖、進行および/または転移を阻害することもできる。そのような阻害は、種々の方法を使用してモニターすることができる。例えば、阻害により腫瘍サイズを減らしかつ/または腫瘍内の代謝活性を減少させることができる。これらのパラメータは両方とも、例えばMRIまたはPETスキャンにより測定することができる。阻害は、腫瘍内のネクローシス、腫瘍細胞死のレベル、および血管増生のレベルを確認するバイオプシーによりモニターすることもできる。転移および転移に付随する骨の骨溶解の程度は、既知の方法を使用してモニターすることができる。
【0324】
オートクリンループが存在する証拠は、c−fms活性を阻害すれば腫瘍関連マクロファージに、しかし腫瘍細胞にも影響を及ぼすことができることを示している。したがって、一実施形態では、オートクリンループを有する腫瘍は、第1標的として標的にされる。他の実施形態では、TAMも腫瘍もともに複合効果の標的にされる。さらに他の実施形態では、パラクリンループを使用するかまたはオートクリンとパラクリンループを使用する腫瘍が標的にされる。
【0325】
本明細書に提供されるヒトc−fms抗原結合性タンパク質は、ある種の実施形態では、単独で投与することができるが、例えば、化学療法、放射線療法、または手術などの1つまたは複数の他の癌治療選択肢と併用して使用することもできる。化学療法薬とともに投与される場合、抗原結合性タンパク質は、化学療法薬の前もしくは後に、または同時に(例えば、同一組成物の一部として)投与することができる。
【0326】
提供される抗原結合性タンパク質と併用して使用することができる化学療法治療には、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファランおよびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード類;カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、およびセムスチン(メチル−CCNU)などのニトロソウレア類;Temodal(商標)(テモゾラミド)、エチレンイミン/メチルメラミン(トリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレン、チオホスホラミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン)など);ブスルファンなどのスルホン酸アルキル類;ダカルバジン(DTIC)などのトリアジン類を含むアルキル化剤、メトトレキサートおよびトリメトレキサートなどの葉酸類似体を含む代謝拮抗薬、5−フルオロウラシル(5FU)、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5−アザシチジン、2、2’−ジフルオロデオキシシチジンなどのピリミジン類似体、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、2’−デオキシコホルマイシン(ペントシタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、および2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2−CdA)などのプリン類似体;パクリタキセルなどの有糸分裂阻害剤、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、およびビノレルビンを含むビンカアルカロイド類、タキソテール、エストラムスチンならびにリン酸エストラムスチンを含む天然産物;エトポシドおよびテニポシドなどのピポドフィロトキシン類;アクチモマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC、およびアクチノマイシンなどの抗生物質;L−アスパラギナーゼなどの酵素;インターフェロンα、IL−2、G−CSFおよびGM−CSFなどの生物学的応答修飾物質;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金錯化合物、ミトキサントロンなどのアントラセンジオン類、ヒドロキシウレアなどの置換ウレア、N−メチルヒドラジン(MIH)およびプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、ミトタン(o、p−DDD)およびアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制薬を含む種々の薬剤;プレドニゾンおよび等価物などの副腎皮質ステロイドアンタゴニスト類、デキサメタゾンならびにアミノグルテチミドを含むホルモン類およびアンタゴニスト類;Gemzar(商標)(ゲムシタビン)、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロールなどのプロゲスチン;ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール等価物などのエストロゲン;タモキシフェンなどの抗エストロゲン剤;プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン/等価物を含むアンドロゲン類;フルタミド、性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体およびリュープロリドなどの抗アンドロゲン類;ならびにフルタミドなどの非ステロイド性抗アンドロゲン類を含む抗悪性腫瘍薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、脱メチル化剤(例えば、ビダザ)および転写抑制(ATRA)治療の放出を含むが、これらに限定されるものではない後成的機構を標的にする治療薬も、抗原結合性タンパク質と組み合わせることができる。
【0327】
癌治療は、抗原結合性タンパク質と一緒に投与してもよく、標的化治療も挙げられるが、これに限定されるものではない。標的化治療の例には治療抗体の使用が挙げられるが、これに限定されるものではない。例となる治療抗体には、マウス、マウス−ヒトキメラ、CDRグラフト、ヒト化抗体および完全ヒト抗体、ならびに、抗体ライブラリーをスクリーニングすることにより選択される抗体が含まれるが、これに限定されるものではない合成抗体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例となる抗体には、腫瘍細胞上に存在する細胞表面タンパク質のHer2、CDC20、CDC33、ムチン様糖タンパク質、および上皮成長因子受容体(EGFR)に結合し、随意に、これらのタンパク質を表示する腫瘍細胞に対し細胞増殖抑制効果および/または細胞傷害性効果を誘導する抗体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例となる抗体には、乳癌およびその他の種類の癌を治療するのに使用してもよいHERCEPTIN(商標)(トラスツズマブ)、ならびに非ホジキンリンパ腫およびその他の種類の癌を治療するのに使用してもよいRITUXAN(商標)(リツキシマブ)、ZEVALIN(商標)(イブリツモマブチウキセタン)、GLEEVEC(商標)およびLYMPHOCIDE(商標)(エプラツズマブ)も挙げられる。ある種の例となる抗体には、ERBITUX(商標)(IMC−C225);エルチノリブ(イレッサ);BEXXAR(商標)(ヨウ素131トシツモマブ);KDR(キナーゼドメイン受容体)阻害剤;抗VEGF抗体およびアンタゴニスト(例えば、Avastin(商標)およびVEGAF−TRAP);抗VEGF受容体抗体および抗原結合領域;抗Ang−1およびAng−2抗体および抗原結合領域;Tie−2に対する抗体および他のAng−1およびAng−2受容体;Tie−2リガンド;Tie−2キナーゼ阻害剤に対する抗体;Hif−laの阻害剤、ならびにCampath(商標)(アレムツズマブ)も挙げられる。ある種の実施形態では、癌治療薬は、TNF関連ポリペプチドTRAILが挙げられるが、これに限定されるものではない、腫瘍細胞に選択的にアポトーシスを誘導するポリペプチドである。
【0328】
化学療法薬の追加の特定の例には、タキソール、タキセン(例えば、ドセタキセルおよびタキソテール)、修飾パクリタキセル(例えば、アブラキサンおよびオパキシオ)ドキソルビシン、Avastin(登録商標)、スーテント、ネクサバール、および他のマルチキナーゼ阻害剤、シスプラチンおよびカルボプラチン、エトポシド、ゲムシタビン、ならびにビンブラスチンが挙げられる。MAPK経路阻害剤(例えば、ERK、JNKおよびp38の阻害剤)、PI3キナーゼ/AKT阻害剤ならびにPim阻害剤を含むが、これらに限定されるものではない他のキナーゼの特定の阻害剤も、抗原結合性タンパク質と併用して使用することができる。他の阻害剤には、Hsp90阻害剤、プロテアソーム阻害剤(例えば、ベルケイド)およびトリセノックスなどの多重機構のアクチン阻害剤が挙げられる。
【0329】
ある種の実施形態では、本明細書に提供される抗原結合性タンパク質は、新脈管形成を減少させる1つまたは複数の抗脈管形成薬と併用して使用される。ある種のそのような薬には、IL−8アンタゴニスト;キャンパス、B−FGF;FGFアンタゴニスト;Tekアンタゴニスト(Cerrettiら、米国特許公開第2003/0162712号;Cerrettiら、米国特許第6,413,932号、およびCerrettiら、米国特許第6,521,424号、これらの文献のそれぞれがあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれているものとする);抗TWEAK薬(抗体および抗原結合領域を含むが、これらに限定されるものではない);可溶性TWEAK受容体アンタゴニスト(Wiley、米国特許第6,727,225号);インテグリンのそのリガンドへの結合に拮抗するADAMディスインテグリンドメイン(Fanslowら、米国特許出願公開第2002/0042368号);抗eph受容体および抗エフリン抗体;抗原結合領域またはアンタゴニスト(米国特許第5,981,245号、米国特許第5,728,813号、米国特許第5,969,110号、米国特許第6,596,852号、米国特許第6,232,447号、米国特許第6,057,124号およびその特許ファミリーメンバー);Avastin(商標)またはVEGF−TRAP(商標)などの抗VEGF薬(例えば、VEGF、または可溶性VEGF受容体またはそのリガンド結合領域に特異的に結合する抗体または抗原結合領域)、および抗VEGF受容体薬(例えば、それに特異的に結合する抗体または抗原結合領域)、パニツムマブ、IRESSA(商標)(ゲフィチニブ)、TARCEVA(商標)(エルロチニブ)などのEGFR阻害剤(例えば、それに特異的に結合する抗体または抗原結合領域)、抗Ang−1薬および抗Ang−2薬(例えば、それにまたはその受容体、例えば、Tie−2/TEKに特異的に結合する抗体または抗原結合領域)、および抗Tie−2キナーゼ阻害剤(例えば、肝細胞増殖因子(HGF、Scatter Factorとしても知られる)のアンタゴニストなどの、増殖因子に特異的に結合しその活性を阻害する抗体または抗原結合領域、およびその受容体「c−met」に特異的に結合する抗体または抗原結合領域;抗PDGF−BBアンタゴニスト;PDGF−BBリガンドに対する抗体および抗原結合領域;ならびにPDGFRキナーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0330】
抗原結合性タンパク質と併用して使用することができる他の抗脈管形成薬には、MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)阻害剤、MMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)阻害剤、およびCOX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤などの薬が挙げられる。有用なCOX−II阻害剤の例には、CELEBREX(商標)(セレコキシブ)、バルデコキシブ、およびロフェコキシブが挙げられる。
【0331】
ある種の実施形態では、癌治療薬は新脈管形成阻害剤である。ある種のそのような阻害剤には、SD−7784(Pfizer、USA);シレンギチド(Merck KGaA、 Germany、EPO770622);ペガブタニブオクタソジウム、(Gilead Sciences、USA);アルファスタチン、(BioActa、UK);M−PGA、(Celgene、USA、米国特許第5,712,291号);イロマスタット、(Arriva、USA、米国特許第5,892,112号);セマキサニブ、(Pfizer、USA、米国特許第5,792,783号);バタラニブ、(Novartis、Switzerland);2−メトキシエストラジオール、(EntreMed、USA);TLC ELL−12、(Elan、Ireland);酢酸アネコルタブ、(Alton、USA);アルファ−D148 Mab、(Amgen、USA);CEP−7055、(Cephalon、USA);抗Vn Mab、(Crucell、Netherlands);DAC:脈管形成抑制薬、(ConjuChem、Canada);アンギオシジン、(InKine Pharmaceutical、USA);KM−2550、(Kyowa Hakko、Japan);SU−0879、(Pfizer、USA);CGP−79787、(Novartis、 Switzerland、EP970070);ARGENT technology、(Ariad、USA);YIGSR−Stealth、(Johnson&Johnson、USA);フィブリノーゲン−E断片、(BioActa、UK);新脈管形成阻害剤、(Trigen、UK);TBC−1635、(Encysive Pharmaceuticals、USA);SC−236、(Pfizer、USA);ABT−567、(Abbott、USA);メタスタチン、(EntreMed、USA);新脈管形成阻害剤、(Tripep、Sweden);マスピン(Sosei、Japan);2−メトキシエストラジオール、(Oncology Sciences Corporation、USA);ER−68203−00、(IVAX、USA);ベネフィン、(Lane Labs、USA);Tz−93、(Tsumura、Japan);TAN−1120、(Takeda、Japan);FR−111142、(Fujisawa、Japan、日本特許第02233610号);血小板第4因子、(RepliGen、USA、欧州特許第407122号);血管内皮増殖因子アンタゴニスト(Borean、Denmark);癌治療(University of South Carolina、USA);ベマシズマブ(pINN)、(Genentech、USA);新脈管形成阻害剤、(SUGEN、USA);XL784、(Exelixis、USA);XL647、(Exelixis、USA);Mab、α5β3インテグリン、第2世代、(Applied Molecular Evolution、USA and MedImmune、USA);遺伝子治療、網膜症、(Oxford BioMedica、UK);エンザスタウリン塩酸塩(USAN)、(Lilly、USA);CEP7055(Cephalon、USAとSanofi−Synthelabo、France);BC1、(Genoa Institute of Cancer Research、Italy);新脈管形成阻害剤、(Alchemia、Australia);VEGFアンタゴニスト、(Regeneron、USA);rBPI21およびBPI由来脈管形成抑制薬、(XOMA、USA);PI88、(Progen、Australia);シレンギチド(pINN)、(Merck KGaA、German;Munich Technical University、Germany、Scripps Clinic and Research Foundation、USA);セツキシマブ(INN)、(Aventis、France);AVE8062、(Ajinomoto、Japan);AS1404、(Cancer Research Laboratory、New Zealand);SG292、(Telios、USA);エンドスタチン、(Boston Childrens Hospital、USA);ATN161、(Attenuon、USA);アンジオスタチン、(Boston Childrens Hospital、USA);2−メトキシエストラジオール、(Boston Childrens Hospital、USA);ZD6474、(AstraZeneca、UK);ZD6126、(Angiogene Pharmaceuticals、UK);PPI2458、(Praecis、USA);AZD9935、(AstraZeneca、UK);AZD2171、(AstraZeneca、UK);バタラニブ(pINN)、(Novartis、SwitzerlandとSchering AG、Germany);組織因子経路阻害剤、(EntreMed、USA);ペガプタニブ(Pinn)、(Gilead Sciences、USA);キサントリゾール、(Yonsei University、South Korea);ワクチン、遺伝子ベース、VEGF−2、(Scripps Clinic and Research Foundation、USA);SPV5.2、(Supratek、Canada);SDX103、(University of California at San Diego、USA);PX478、(ProIX、USA);メタスタチン、(EntreMed、USA);トロポニン1(Harvard University、USA);SU6668、(SUGEN、USA);OXI4503、(OXiGENE、USA);o−グアニジン、(Dimensional Pharmaceuticals、USA);モツポラミンC、(British Columbia University、 Canada);CDP791、(Celltech Group、UK);アチプリモド(PINN)、(GlaxoSmithKline、UK);E7820、(Eisai、Japan);CYC381、(Harvard University、USA);AE941、(Aeterna、Canada);ワクチン、新脈管形成、(EntreMed、USA);ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、(Dendreon、USA);オグルファニド(pINN)、(Melmotte、USA);HIF−1α阻害剤、(Xenova、UK);CEP5214、(Cephalon、USA);BAY RES2622、(Bayer、Germany);アンジオシジン、(InKine、USA);A6、(Angstrom、USA);KR31372、(Korea Research Institute of Chemical Technology、South Korea);GW2286、(GlaxoSmithKline、UK);EHT0101、(ExonHit、France);CP868596、(Pfizer、USA);CP564959、(OSI、USA);CP547632、(Pfizer、USA);786034、(GlaxoSmithKline、UK);KRN633、(Kirin Brewery、Japan);薬剤送達システム、眼内、2−メトキシエストラジオール、(EntreMed、USA);アンギネックス、(Maastricht University、Netherlands、とMinnesota University、USA);ABT510、(Abbott、USA);ML993、(Novartis、Switzerland);VEGI、(Proteom Tech、USA);腫瘍壊死因子α阻害剤、(National Institute on Aging、USA);SU11248、(Pfizer、USAとSUGEN USA);ABT518、(Abbott、USA);YH16、(Yantai Rongchang、China);S−3APG、(Boston Childrens Hospital、USAとEntreMed、USA);MAb、KDR、(ImClone Systems、USA);MAb、α5 β1、(Protein Design、USA);KDRキナーゼ阻害剤、(Celltech Group、UK、とJohnson&Johnson、USA);GFB116、(South Florida University、USAとYale University、USA);CS706、(Sankyo、Japan);コンブレタスタチンA4プロドラッグ、(Arizona State University、USA);コンドロイチナーゼAC、(IBEX、Canada);BAY RES2690、(Bayer、Germany);AGM1470、(Harvard University、USA、Takeda、Japan、およびTAP、USA);AG13925、(Agouron、USA);テトラチオモリブデン酸塩、(University of Michigan、USA);GCS100、(Wayne State University、USA);CV247、(Ivy Medical、UK);CKD732、(Chong Kun Dang、South Korea);MAb、血管内皮増殖因子、(Xenova、UK);イルソグラジン(INN)、(Nippon Sinyaku、Japan);RG13577、(Aventis、France);WX360、(Wilex、Germany);スクアラミン(pINN)、(Genaera、USA);RPI4610、(Sirna、USA);癌治療、(Marinova、Australia);ヘパラナーゼ阻害剤、(InSight、Israel);KL3106、(Kolon、South Korea);ホノキオール、(Emory University、USA);ZK CDK、(Schering AG、Germany);ZK Angio、(Schering AG、Germany);ZK229561、(Novartis、Switzerland、とSchering AG、Germany);XMP300、(XOMA、USA);VGA1102、(Taisho、Japan);VEGF受容体修飾薬、(Pharmacopeia、USA);VEカドヘリン−2アンタゴニスト、(ImClone Systems、USA);バソスタチン、(National Institutes of Health、USA);ワクチン、Flk−1(ImClone Systems、USA);TZ93、(Tsumura、Japan);タムスタチン、(Beth Israel Hospital、USA);短縮型可溶性FLT1(血管内皮増殖因子受容体1)、(Merck&Co、USA);Tie−2リガンド、(Regeneron、USA);トロンボスポンジン1阻害剤、(Allegheny Health、Education and Research Foundation、USA);2−ベンゼンスルホンアミド、4−(5−(4−クロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)−;Arriva;およびC−Met.AVE8062((2S)−2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−[2−メトキシ−5−[(1Z)−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテニル]フェニル]プロパンアミド一塩酸塩);メテリムマブ(pINN)(免疫グロブリンG4、抗(ヒト形質転換増殖因子β1(ヒトモノクローナルCAT192.ガンマ.4−鎖))、ヒトモノクローナルCAT192.κ.−鎖二量体を有するジスルフィド);Flt3リガンド;CD40リガンド;インターロイキン−2;
インターロイキン−12;4−1BBリガンド;抗4−1BB抗体;TNFアンタゴニストおよびTNFR/Fcを含むTNF受容体アンタゴニスト、TWEAKアンタゴニストおよびTWEAK−R/Fcを含むTWEAK−Rアンタゴニスト;TRAIL;抗VEGF抗体を含むVEGFアンタゴニスト;(Flt1およびFlk1またはKDRとしても知られているVEGF−R1およびVEGF−R2を含む)VEGF受容体アンタゴニスト;CD148(DEP−1、ECRTP、およびPTPRJとも呼ばれる、Takahashiら、J. Am. Soc. Nephrol. 10巻:213545頁(1999年)参照、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれているものとする)アゴニスト;トロンボスポンジン1阻害剤、および(Ang−2などの)Tie−2またはTie−2リガンドのうちの1つまたは両方の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。公開された米国特許出願第20030124129号(PCT出願第WO03/030833号に一致)および米国特許第6,166,185号に記載の抗Ang−2抗体を含む、Ang−2のいくつかの阻害剤は当技術分野では公知であり、これらの文献の内容は参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。さらに、Ang−2ペプチボディーも当技術分野では公知であり、例えば、公開された米国特許出願第20030229023号(PCT出願第WO03/057134号に一致)および公開された米国特許出願第20030236193号に見出すことができ、これらの文献の内容はあらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0332】
ある種の癌治療薬には、サリドマイドおよびサリドマイド類似物(N−(2,6−ジオキソ−3−ピペリジル)フタルイミド);テコガランナトリウム(硫酸化多糖類ペプチドグリカン);TAN1120(8−アセチル−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−10−[[オクタヒドロ−5−ヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシプロピル)−4,10−ジメチルピラノ[3,4−d]−1,3,6−ジオキサゾシン−8−イル]オキシ]−5,12−ナフタセネジオン);スラディスタ(7,7’−[カルボニルビス[イミノ(1−メチル−1H−ピロール−4,2−ジイル)カルボニルイミノ(1−メチル−1H−ピロール−4,2−ジイル)カルボニルイミノ]]ビス−1,3−ナフタレンジスルホン酸四ナトリウム塩);SU302;SU301;SU1498((E)−2−シアノ−3−[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(1−メチルエチル)フェニル]−N−(3−フェニルプロピル)−2−プロペンアミド);SU1433(4−(6,7−ジメチル−2−キノキサリニル)−1−,2−ベンゼンジオール);ST1514;SR25989;可溶性Tie−2;SERM誘導体、Pharmos;セマキサニブ(pINN)(3−[(3,5−ジメチル−1H−ピロール−2−イル)メチレン]−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン);S836;RG8803;RESTIN;R440(3−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)−4−(1−メチル−6−ニトロ−1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン);R123942(1−[6−(1,2,4−チアジアゾール−5−イル)−3−ピリダジニル]−N−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−ピペリジンアミン);プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤;進行上昇遺伝子;プリノマスタット(INN)((S)−2,2−ジメチル−4−[[p−(4−ピリジルオキシ)フェニル]サルフォニル]−3−チオモルフォリンカルボヒドロキサム酸);NV1030;NM3(8−ヒドロキシ−6−メトキシ−α−メチル−1−オキソ−1H−2−ベンゾピラン−3−酢酸);NF681;NF050;MIG;METH2;METH1;マナサンチンB(α−[1−[4−[5−[4−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−1−メチルエトキシ]−3−メトキシフェニル]テトラヒドロ−3,4−ジメチル−2−フラニル]−2−メトキシフェノキシ]エチル]−1,3−ベンゾジオキソール−5−メタノール);KDRモノクロール抗体;α5β3インテグリンモノクローナル抗体;LY290293(2−アミノ−4−(3−ピリジニル)−4H−ナフト[1,2−b]−ピラン−3−カルボニトリル);KP0201448;KM2550;インテグリン特異的ペプチド;INGN401;GYKI66475;GYKI66462;グリーンスタチン(101−354−プラスミノーゲン(ヒト));関節リウマチ、前立腺癌、卵巣癌、グリオーマ、エンドスタチン、結腸直腸癌、ATF BTPI、抗新脈管形成遺伝子、新脈管形成抑制薬、または新脈管形成に対する遺伝子治療;ゼラチナーゼ阻害剤、FR111142(4,5−ジヒドロキシ−2−ヘキセン酸5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2.5]オクト−6−イルエステル);ホルフェニメックス(PINN)(S)−α−アミノ−3−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)ベンゼン酢酸);フィブロネクチンアンタゴニスト(1−アセチル−L−プロリル−L−ヒスチジル−L−セリル−L−システイニル−L−アスパルトアミド);線維芽細胞増殖因子受容体阻害剤;線維芽細胞増殖因子アンタゴニスト;FCE27164(7,7’−[カルボニルビス[イミノ(1−メチル−1H−ピロール−4,2−ジイル)カルボニルイミノ(1−メチル−1H−ピロール−4,2−ジイル)カルボニルイミノ]−]ビス−1,3,5−ナフタレントリスルホン酸ヘキサナトリウム塩);FCE26752(8,8’−[カルボニルビス[イミノ(1−メチル−1H−ピロール−4,2−ジイル)カルボニルイミノ(1−メチル−1H−ピロール−4,2−ジイル)カルボニルイミノ]]ビス−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸);内皮単球活性化ポリペプチドII;VEGFRアンチセンスオリゴヌクレオチド;抗脈管形成因子および栄養性因子;ANCHOR脈管形成薬;エンドスタチン;Del−1脈管形成タンパク質;CT3577;コントルトロスタチン;CM101;コンドロイチナーゼAC;CDP845;カンスタチン;BST2002;BST2001;BLS0597;BIBF1000;アレスチン;アポミグレン(1304−1388XV型コラーゲン(ヒト遺伝子COL15A1α1鎖前駆体));アンジオインヒビン;aaATIII;A36;酢酸9αフルオロメドロキシプロゲステロン((6−α)−17−(アセチルオキシ)−9−フルオロ−6−メチル−pregn−4−エン−3,20−ジオン);2−メチル−2−フタルイミジノ−グルタル酸(2−(1,3−ジヒドロ−1−オキソ−2H−イソインドール−2−イル)−2−メチルペンタン二酸);イットリウム90標識モノクローナル抗体BC−1;セマキサニブ(3−(4,5−ジメチルピロール−2−イルメチレン)インドリン−2−オン)(C15 H14 N2 O);PI88(ホスホマンノペンタオース硫酸);アルボシディブ(4H−1−ベンゾピラン−4−オン、2−(2−クロロフェニル)−5,7−ジヒドロキシ−8−(3−ヒドロキシ−1−メチル−4−ピペリジニル)−シス―(−)−)(C21−H20 Cl N O5);E7820;SU11248(5−[3−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ジエチルアミノエチル)アミド)(C22 H27 F N4 O2);スクアラミン(コレスタン−7,24−ジオール,3−[[3−[(4−アミノブチル)アミノプロピル]アミノ]−,24−(硫酸水素塩)、(3β、5α、7α)−)(C34 H65 N3 O.sub.5 S);エリオクロムブラックT;AGM1470(カルバミン酸、(クロロアセチル)−,5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクト−6−イルエステル、[3R−[3α、4α(2R,3R)、5β、6β]])(C19 H28 Cl N O6);AZD9935;BIBF1000;AZD2171;ABT828;KS−インターロイキン−2;ウテログロビン;A6;NSC639366(1−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピルアミノ]−4−(オキシラン−2−イルメチルアミノ)アントラキノンフマル酸塩)(C24 H29 N3 O4.C4 H4 O4);ISV616;抗ED−B融合タンパク質;HUI77;トロポニンI;BC−1モノクローナル抗体;SPV5.2;ER68203;CKD731(3−(3,4,5−トリメトキシフェニル−1)−2(E)−プロペン酸(3R,4S,5S,6R)−4−[2(R)メチル−3(R)−3(R)−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラン−2−イル]−5−メトキシ−1−オキサスピロ[2.5]オクト−6−イルエステル)(C28 H38 O8);IMC−1C11;aaATIII;SC7;CM101;アンギオコール;クリングル5;CKD732(3−[4−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]フェニル]−2(E)−プロペン酸)(C29 H41 N O6);U995;カンスタチン;SQ885;CT2584(1−[11−(ドデシルアミノ)−10−ヒドロキシウンデシル]−3,7−ジメチルキサンチン)(C30 H55 N5 O3);サルモシン;EMAPII;TX1920(1−(4−メチルピペラジノ)−2−(2−ニトロ−1H−1−イミダゾイル)−1−エタノン)(C10 H15 N5 O3);αv βx阻害剤;CHIR11509(N−(1−プロピニル)グリシル−[N−(2−ナフチル)]グリシル−[N−(カルバモイルメチル)]グリシンビス(4−メトキシフェニル)メチルアミド)(C36 H37 N5 O6);BST2002;BST2001;B0829;FR111142;4,5−ジヒドロキシ−2(E)−ヘキセン酸(3R,4S,5S,6R)−4−[1(R),2(R)−エポキシ−1,5−ジメチル−4−ヘキセニル]−5−メトキシ−1−オキサスピロ[2.5]オクタン−6−イルエステル(C22 H34 O7);ならびにN−(4−クロロフェニル)−4−(4−ピリジニルメチル)−1−フタラジンアミン;4−[4−[[[[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]アミノ]フェノキシ]−N−メチル−2−ピリジンカルボキサミド;N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−5−[(5−フルオロ−1,−2−ジヒドロ−2−オキソ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド;3−[(4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル)メトキシ]−5−[[[[4−(1−ピロリジニル)ブチル]アミノ]カルボニル]アミノ]−4−イソチアゾールカルボキサミド;N−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−6−メトキシ−7−[(1−メチル−4−ピペリジニル)メトキシ]−4−キナゾリンアミン;3−[5,6,7,13−テトラヒドロ−9−[(1−メチルエトキシ)メチル]−5−オキソ−12H−インデノ[2,1−a]ピロロ[3,4−c]カルバゾール−12−イル]プロピルエステルN,N−ジメチル−グリシン;N−[5−[[[5−(1,1−ジメチルエチル)−2−オキサゾリル]メチル]チオ]−2−チアゾリル]−4−ピペリジンカルボキサミド;N−[3−クロロ−4−[(3−フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]−6−[5−[[[2−(メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]−2−フラニル]4−キナゾリンアミン;4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−N−[4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−フェニル]ベンズアミド;N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシ]−4−キナゾリンアミン;N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン;N−(3−((((2R)−1−メチル−2−ピロリジニル)メチル)オキシ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−2−((3−(1,3−オキサゾール−5−イル)フェニル)アミノ)−3−ピリジンカルボキサミド;2−(((4−フルオロフェニル)メチル)アミノ)−N−(3−((((2R)−1−メチル−2−ピロリジニル)メチル)オキシ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−ピリジンカルボキサミド;N−[3−(アゼチジン−3−イルメトキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−2−(4−フルオロ−ベンジルアミノ)−ニコチンアミド;6−フルオロ−N−(4−(1−メチルエチル)フェニル)−2−((4−ピリジニルメチル)アミノ)−3−
ピリジンカルボキサミド;2−((4−ピリジニルメチル)アミノ)−N−(3−(((2S− )−2−ピロリジニルメチル)オキシ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−ピリジンカルボキサミド;N−(3−(1,1−ジメチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル)−2−((4−ピリジニルメチル)アミノ)−3−ピリジンカルボキサミド;N−(3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−6−イル)−2−(−(4−ピリジニルメチル)アミノ)−3−ピリジンカルボキサミド;N−(3−((((2S)−1−メチル−2−ピロリジニル)メチル)オキシ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−2−((4−ピリジニルメチル)アミノ)−3−ピリジンカルボキサミド;2−((4−ピリジニルメチル)アミノ)−N−(3−((2−(1−ピロリジニル)エチル)オキシ)−4−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−ピリジンカルボキサミド;N−(3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−6−イル)−2−((4−ピリジニルメチル)アミノ)−3−ピリジンカルボキサミド;N−(4−(ペンタフルオロエチル)−3−(((2S)−2−ピロリジニルメチル)オキシ)フェニル)−2−((4−ピリジニルメチル)アミノ)−3−ピリジンカルボキサミド;N−(3−((3−アゼチジニルメチル)オキシ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−2−((4−ピリジニル−メチル)アミノ)−3−ピリジンカルボキサミド;N−(3−(4−ピペリジニルオキシ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−2−((2−(3−ピリジニル)エチル)アミノ)−3−ピリジンカルボキサミド;N−(4,4−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−7−イル)−2−(1H−インダゾール−6−イルアミノ)−ニコチンアミド;2−(1H−インダゾール−6−イルアミノ)−N−[3−(1−メチルピロリジン−2−イルメトキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−ニコチンアミド;N−[1−(2−ジメチルアミノ−アセチル)−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−6−イル]−2−(1H−インダゾール−6−イルアミノ)−ニコチンアミド;2−(1H−インダゾール−6−イルアミノ)−N−[3−(ピロリジン−2−イルメトキシ)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−ニコチンアミド;N−(1−アセチル−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−6−イル)−2−(1H−インダゾール−6−イルアミノ)−ニコチンアミド;N−(4,4−ジメチル−1−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−7−イル)−2−(1H−インダゾール−6−イルアミノ)−ニコチンアミド;N−[4−(tert−ブチル)−3−(3−ピペリジルプロピル)フェニル][2−(1H−インダゾール−6−イルアミノ)(3−ピリジル)]カルボキサミド;N−[5−(tert−ブチル)イソキサゾール−3−イル][2−(1H−インダゾール−6−イルアミノ)(3−ピリジル)]カルボキサミド;およびN−[4−(tert−ブチル)フェニル][2−(1H−インダゾール−6−イルアミノ)(3−ピリジル)]カルボキサミドを含むが、これらに限定されるものではないキナーゼ阻害剤、および米国特許第6,258,812号;米国特許第6,235,764号;米国特許第6,630,500号;米国特許第6,515,004号;米国特許第6,713,485号;米国特許第5,521,184号;米国特許第5,770,599号;米国特許第5,747,498号;米国特許第5,990,141号;米国特許公開第20030105091号;および特許協力条約公開番号、国際公開第01/37820号;国際公開第01/32651号;国際公開第02/68406号;国際公開第02/66470号;国際公開第02/55501号;国際公開第04/05279号;国際公開第04/07481号;国際公開第04/07458号;国際公開第04/09784号;国際公開第02/59110号;国際公開第99/45009号;国際公開第98/35958号;国際公開第00/59509号;国際公開第99/61422号;国際公開第00/12089号;および国際公開第00/02871号に開示されたキナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されるものではないキナーゼ阻害剤、が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これら公表文献はそれぞれ、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれている。
【0333】
本明細書に提供される抗原結合性タンパク質は、増殖因子阻害剤と併用して使用することもできる。そのような薬剤の例には、EGF−R抗体、EGF抗体、およびEGF−R阻害剤である分子などのEGF−R(上皮増殖因子受容体)応答を阻害することができる薬剤;VEGF受容体およびVEGFを阻害することができる分子などのVEGF(血管内皮増殖因子)阻害剤;ならびにerbB2受容体に結合する有機分子または抗体、例えば、HERCEPTIN(商標)(Genetech、Inc.)などのerbB2受容体阻害剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。EGF−R阻害剤は、例えば、米国特許第5,747,498号、国際公開第98/14451号、国際公開第95/19970号、および国際公開第98/02434号に記載されている。
【0334】
併用療法の特定の例には、例えば、乳癌の治療にはc−fms抗原結合性タンパク質とタキソールまたはタキサン(例えば、ドセタキセルもしくはタキソテール)または修飾パクリタキセル(例えば、アブラキサンもしくはオパキシオ)、ドキソルビシンおよび/またはアバスチン(登録商標);腎臓癌の治療にはヒトc−fms抗原結合性タンパク質とマルチキナーゼ阻害剤、MKI(スーテント、ネクサバール、もしくは706)および/またはドキソルビシン;扁平上皮癌の治療にはc−fms抗原結合性タンパク質とシスプラチンおよび/または放射線;肺癌の治療にはc−fms抗原結合性タンパク質とタキソールおよび/またはカルボプラチンが挙げられる。
【0335】
腫瘍学における適用に加えて、本明細書に提供される結合性タンパク質は、炎症性疾患の治療または検出に使用することができる。マクロファージが疾患の病態の一因となっている炎症性疾患では、他の細胞コンパートメントにおけるマクロファージのレベルを減少させるc−fms抗原結合性タンパク質の能力は、これらの疾患の治療における有用な役割を示している。いくつかの研究により、ヒトc−fms抗原結合性タンパク質が、例えば、炎症性関節炎、アテローム性動脈硬化および多発性硬化症のような炎症性疾患の調節に役割を果たし得ることが示唆されている。
【0336】
治療することができる追加の疾患には、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、リウマチ性脊椎炎、強直性脊椎炎、関節炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、湿疹、接触性皮膚炎、乾癬、トキシックショック症候群、敗血症、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、喘息、慢性肺炎症性疾患、珪肺症、肺サルコイドーシス、骨粗鬆症、再狭窄、心臓および腎臓再灌流障害、血栓症、糸球体腎炎、糖尿病、移植片対宿主反応、同種移植片拒絶、多発性硬化症、筋変性、筋ジストロフィー、アルツハイマー病および脳卒中が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0337】
マクロファージにより産生される炎症促進性サイトカインは悪液質病態に関与していると考えられるために、抗原結合性タンパク質を使用して、悪液質を治療することもできる(Sweetら、2002年、J. Immunol. 168巻:392〜399頁;Boddaertら、2006年、Curr. Opin. Oncol. 8巻:335〜340頁およびWangら、2006年、J. Endocrinology 190巻:415〜423頁)。
【0338】
種々の炎症性疾患を治療するために使用される抗原結合性タンパク質の能力を考慮すると、抗原結合性タンパク質を種々の他の抗炎症薬と一緒に使用するかまたは併用することができる。そのような薬剤の例には、TNF薬(例えば、HUMIRA(商標)、REMICADE(商標))および(ENBREL(商標)などの)TNF受容体免疫グロブリン分子などのTNFα阻害剤、IL−1阻害剤、受容体アンタゴニストまたは可溶性IL−1ra(例えば、キネレットもしくはICE阻害剤)、COX−2阻害剤および上記の阻害剤などのメタロプロテアーゼ阻害剤、ならびにα−2−δリガンド(例えば、PREGABALIN(商標)およびNEUROTIN(商標))が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0339】
ある種の実施形態では、破骨細胞の発生および活性化におけるc−fmsの重要な役割を考慮して、抗原結合性タンパク質を使用して種々の骨疾患も治療することができる(例えば、Rolf, F.ら、(2008年)J. Biol. Chem. 55巻:340〜349頁、およびWatarn, A.ら、(2006年)J. Bone Mineral Metabolism 24巻:274〜282頁)。したがって、抗原結合性タンパク質は、過度の骨喪失を伴う種々の医学的障害を被っている患者、または必ずしも過度の破骨細胞活性が存在するわけではない場合でも新生骨の形成を必要とする患者を治療するのに有用となり得る。過度の破骨細胞活性は、骨減少症(ostopenia)、骨粗鬆症、歯周炎、パジェット病、固定化による骨喪失、溶解性骨転移、ならびに、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎および骨浸食を伴う他の状態を含む関節炎を含む、提供される抗原結合性タンパク質で治療することができる多数の骨減少性障害と関連している。乳癌および前立腺癌などの一部の癌は、破骨細胞活性を増加させ、骨吸収を誘発することが知られている。骨髄で生じる多発性骨髄腫も骨喪失と関連している。
【0340】
癌の骨転移に関して、本明細書に提供される抗原結合性タンパク質の使用によりCSF−1/c−fms軸を阻害すれば、複数の作用機序を通じて治療上有用になり得ると考えられる。これらには、TAMにより産生されるマトリックス分解酵素の喪失による浸潤および転移の阻害、破骨細胞の数および機能の喪失による骨髄内の腫瘍細胞シーディングの阻害、前述のTAMの減少による転移性腫瘍増殖の阻害ならびに骨転移病変に付随する骨溶解の阻害が含まれると考えられる(Ohno, H.ら、(2008年)Molecular Cancer Therapeutics. 5巻:2634〜2643頁)。抗原結合性タンパク質は、骨の癌である骨肉腫に対しても治療効果を有することができる。
【0341】
グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症、移植後に誘導される骨粗鬆症、化学療法に付随する骨粗鬆症(すなわち、化学療法誘導性骨粗鬆症)、固定化誘導性骨粗鬆症、機械的除去による骨粗鬆症、および抗痙攣薬使用に付随する骨粗鬆症を含むが、これらに限定されることはない種々の形の骨粗鬆症を含む種々の他の低骨質量状態も治療することができる。治療することができる追加の骨疾患には、腎不全ならびに栄養性、胃腸管系および/または肝臓関連骨疾患に付随する骨疾患が挙げられる。
【0342】
例えば、変形性関節炎および関節リウマチを含む異なる形の関節炎も治療することができる。抗原結合性タンパク質を使用して、関節炎(例えば、関節リウマチ)に付随する全身性骨喪失も治療することができる。関節炎を治療する際、被験者抗原結合性タンパク質の病巣周囲または病巣内注射により患者の利益になり得る。例えば、抗原結合性タンパク質を炎症関節の近くにまたは直接に注入し、したがってその部位の損傷した骨の修復を刺激することができる。
【0343】
本明細書に記載される抗原結合性タンパク質は、種々の骨修復適用にも使用することができる。例えば、抗原結合性タンパク質は、人工関節に付随する摩耗デブリ骨溶解を遅延させ、骨折の修復を加速し、移植骨のそれが移植された周囲の生きている骨への取込みを増強するのに有用になり得る。
【0344】
本明細書に提供される抗原結合性タンパク質は、骨障害の治療に使用するときは、単独で投与することも、他の治療薬と併用して、例えば、癌治療薬と、破骨細胞活性を阻害する薬剤と、または骨芽細胞活性を増強する他の薬剤と併用して投与することもできる。例えば、抗原結合性タンパク質は、放射線療法または化学療法を受けている癌患者に投与することができる。抗原結合性タンパク質と併用して使用される化学療法剤には、アントラサイクリン、タキソール、タモキシフェン、ドキソルビン、5−フルオロウラシル、オキサロプラチン、Velcade(登録商標)([(1R)−3−メチル−1−[[(2S)−1−オキソ−3−フェニル−2−[(ピラジニルカルボニル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]ボロン酸)および/または癌の治療に使用される他の小分子薬を含んでもよい。
【0345】
抗原結合性タンパク質は、骨質量の喪失をもたらす上記で示す状態の治療のために単独で使用することができるか、または、BMP−1からBMP−12まで命名された骨形成因子類;形質転換増殖因子―βおよびTGF−βファミリーメンバー;線維芽細胞増殖因子FGF−1からFGF−10;(IL−1ra、IL−1に対する抗体およびIL−1受容体に対する抗体を含む)インターロイキン−1阻害剤;(エタネルセプト、アダリブマブおよびインフリキシマブを含む)TNFα阻害剤;(可溶性RANK、オステオプロテジェリンおよびRANKもしくはRANKリガンドに特異的に結合するアンタゴニスト抗体を含む)RANKリガンド阻害剤;Dkk−1阻害剤(例えば、抗Dkk−1抗体)副甲状腺ホルモン、Eシリーズプロスタグランジン、ビスホスホネートならびにフッ化物およびカルシウムなどの骨増強ミネラルを含むが、これらに限定されるものではない治療的有効量の骨成長促進(タンパク質同化)薬または骨再吸収抑制薬と併用して使用することができる。抗原結合性タンパク質およびその機能的断片と併用して使用することができるタンパク質同化薬には、副甲状腺ホルモンおよびインスリン様増殖因子(IGF)が挙げられ、後者の薬剤は好ましくはIGF結合性タンパク質と複合体を形成する。そのような併用療法に適したIL−1受容体アンタゴニストは国際公開第89/11540号に記載されており、適切な可溶性TNF受容体−1は国際公開第98/01555号に記載されている。例となるRANKリガンドアンタゴニストは、例えば、国際公開第03/086289号、国際公開第03/002713号、米国特許第6,740,511号および米国特許第6,479,635号に開示されている。前述の特許および特許出願はすべて参照により本明細書に組み込まれている。
【0346】
抗原結合性タンパク質を使用して、新脈管形成(例えば、腫瘍における)を阻害することもできる。例えば、抗原結合性タンパク質を使用して、炎症性新脈管形成が主にFGF−2により推進される場合には新脈管形成を減少させることができる。いくつかの実施形態では、抗原結合性タンパク質を使用して、VEGFレベルが低く腫瘍血管密度が高い腫瘍において新脈管形成を阻害する。
【0347】
診断法
本明細書に記載される抗原結合性タンパク質を診断目的のために使用して、c−fms関連疾患および/または状態を検出し、診断し、またはモニターすることができる。本開示は、当業者に公知の古典的免疫組織学的方法(例えば、Tijssen、1993年、Practice and Theory of Enzyme Immunoassays, 15巻(R. H. BurdonとP. H. van Knippenberg編、Elsevier、Amsterdam);Zola、1987年、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、147〜158頁(CRC Press, Inc.);Jalkanenら、1985年、J. Cell Biol. 101巻:976〜985頁;Jalkanenら、1987年、J. Cell Biol. 105巻:3087〜3096頁)を使用した試料中のc−fmsの存在の検出を提供する。c−fmsの検出はin vivoでもin vitroでも実施することができる。
【0348】
本明細書に提供される診断適用には、c−fmsの発現およびc−fmsへのリガンドの結合を検出する抗原結合性タンパク質の使用が含まれる。c−fmsの存在の検出に有用な方法の例には、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)および放射免疫アッセイ(RIA)などの免疫アッセイが挙げられる。
【0349】
診断適用では、抗原結合性タンパク質は、典型的には、検出可能標識基で標識されることになる。適切な標識基には、以下のもの、すなわち、放射性同位元素または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素基(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、または、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体用の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、標識基は、種々の長さのスペーサーアームを介して抗原結合性タンパク質に連結されて潜在的立体障害を減少させる。タンパク質を標識するための種々の方法は当技術分野では公知であり、使用してよい。
【0350】
別の態様では、抗原結合性タンパク質を使用して、c−fmsを発現する1つまたは複数の細胞を同定することができる。特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質は標識基で標識され、標識した抗原結合性タンパク質のc−fmsへの結合が検出される。さらに特定の実施形態では、抗原結合性タンパク質のc−fmsへの結合はin vivoで検出される。さらに特定の実施形態では、c−fms抗原結合性タンパク質は、当技術分野で公知の技法を使用して単離され測定される。例えば、HarlowとLane、1988年、Antibodies: A Laboratory Manual、New York: Cold Spring Harbor (1991年編および定期的な増補); John E. Coligan編、1993年、Current Protocols In Immunology New York: John Wiley & Sonsを参照されたい。
【0351】
本開示の別の態様は、提供される抗原結合性タンパク質とc−fmsへの結合について競合する試験分子の存在を検出することを提供する。1つのそのようなアッセイの例は、試験分子の存在または不在下で一定量のc−fmsを含有する溶液中の遊離抗原結合性タンパク質の量を検出することを含む。遊離抗原結合性タンパク質(すなわち、c−fmsに結合していない抗原結合性タンパク質)の量の増加は、試験分子が抗原結合性タンパク質とc−fmsへの結合について競合することができることを示すと考えられる。一実施形態では、抗原結合性タンパク質は標識基で標識される。あるいは、試験分子が標識され、遊離試験分子の量が、抗原結合性タンパク質の存在および不在下でモニターされる。
【0352】
治療方法:医薬調合物、投与経路
抗原結合性タンパク質を使用する方法も提供される。いくつかの方法で、抗原結合性タンパク質は患者に提供される。抗原結合性タンパク質は、CSF−1のヒトc−fmsへの結合を阻害する。抗原結合性タンパク質のいくつかの方法での投与は、CSF−1のヒトc−fmsへの結合を阻害することにより、ヒトc−fmsの自己リン酸化も阻害することができる。さらに、ある種の方法で、有効量の少なくとも1つの抗原結合性タンパク質を患者に投与することにより、単球走化性が減少する。有効量の抗原結合性タンパク質を投与することにより、いくつかの方法での腫瘍内への単球の遊走が阻害される。さらに、腫瘍または患部組織における腫瘍関連マクロファージの蓄積は、本明細書に提供されるような抗原結合性タンパク質を投与することにより阻害することができる。
【0353】
治療的有効量の1つまたは複数の抗原結合性タンパク質ならびに薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤、および/またはアジュバントを含む医薬組成物も提供される。さらに、そのような医薬組成物を投与することにより患者を治療する方法が含まれる。用語「患者」にはヒト患者が含まれる。
【0354】
許容される調合物材料は、用いられる用量および濃度においてレシピエントに無毒である。特定の実施形態では、治療的有効量のヒトc−fms抗原結合性タンパク質を含む医薬組成物が提供される。
【0355】
ある種の実施形態では、許容される調合物材料は、好ましくは用いられる用量および濃度においてレシピエントに無毒である。ある種の実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧重量モル濃度、粘度、透明性、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解速度もしくは放出速度、吸収または透過を改変する、維持するまたは保存するための調合物材料を含有していてもよい。そのような実施形態では、適切な調合物材料には、(グルシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリシンなどの)アミノ酸;抗微生物薬;(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムもしくは亜硫酸水素ナトリウムなどの)抗酸化剤;(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリスHCl、クエン酸塩、リン酸塩または他の有機酸などの)緩衝剤;(マンニトールもしくはグリシンなどの)増量剤;(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの)キレート剤;(カフェイン、ポリビニルピロリドン、βシクロデキストリンもしくはヒドロキシプロピルβシクロデキストリンなどの)錯化剤;充填剤;単糖類;二糖類;および(グルコース、マンノースもしくはデキストリンなどの)他の炭化水素;(血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどの)タンパク質;着色剤、香味剤および希釈剤;乳化剤;(ポリビニルピロリドンなどの)親水性ポリマー;低分子量ポリペプチド;(ナトリウムなどの)塩形成対イオン;(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸もしくは過酸化水素などの)保存剤;(グリセリン、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどの)溶剤;(マンニトールもしくはソルビトールなどの)糖アルコール;懸濁剤;(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベートなどのポリソルベート類、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなどの)界面活性剤または湿潤剤;(ショ糖もしくはソルビトールなどの)安定性増強剤;(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトール、ソルビトールなどの)張度増強剤;送達媒体;希釈剤;賦形剤および/または医薬アジュバントが挙げられるが、これらに限定されるものではない。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、18版(A.R. Genrmo編)、1990年、Mack Publishing Companyを参照されたい。
【0356】
ある種の実施形態では、最適の医薬組成物が、例えば、目的の投与経路、送達形式および所望の用量に応じて、当業者により決定されることになる。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、上記を参照されたい。ある種の実施形態では、そのような組成物は、開示された抗原結合性タンパク質の物理的状態、安定性、in vivo放出速度およびin vivoクリアランス速度に影響を及ぼすことができる。ある種の実施形態では、医薬組成物中の主要媒体または担体は、本来水系でも非水系でもよい。例えば、適切な媒体または担体は、場合によっては非経口投与のための組成物でよく見られる他の材料が補充された注射用蒸留水でも、生理食塩水でも、人工脳脊髄液でもよい。中性緩衝化食塩水または血清アルブミンを混合した食塩水は、さらなる例となる媒体である。特定の実施形態では、医薬組成物は、約pH7.0〜8.5のトリス緩衝液、または約pH4.0〜5.5の酢酸塩緩衝液を含み、ソルビトールまたは適切な代用物をさらに含んでいてもよい。ある種の実施形態では、ヒトc−fms抗原結合性タンパク質組成物は、所望の程度の純度を有する選択された組成物を、凍結乾燥させたケーキまたは水溶液の形で随意の調合薬(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、上記を参照)と混合することにより保存用に調製してもよい。さらに、ある種の実施形態では、ヒトc−fms抗原結合性タンパク質は、ショ糖などの適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として調合してもよい。
【0357】
医薬組成物は、非経口送達のために選択することができる。あるいは、組成物は、吸入のために、または経口的になど消化管を通じての送達のために選択してもよい。そのような薬学的に許容される組成物の調製は当技術分野の技術の範囲内である。
【0358】
調合物成分は、好ましくは投与部位に許容される濃度で存在する。ある種の実施形態では、緩衝剤を使用して、生理的pHで、またはわずかに低いpHで、典型的には約5から約8のpH範囲内で組成物を維持する。
【0359】
非経口投与が企図されている場合、治療組成物は、薬学的に許容される媒体中に目的のヒトc−fms抗原結合性タンパク質を含む発熱物質を含まない、非経口的に許容される水溶液の形で提供してもよい。非経口注射に特に適した媒体は、ヒトc−fms抗原結合性タンパク質が適切に保存された無菌等張液として調合されている無菌蒸留水である。ある種の実施形態では、調製物は、デポー注射を介して送達することができる産物の制御放出または徐放を提供することができる注射用微粒子、生体浸食性粒子、(ポリ乳酸またはポリグリコール酸などの)高分子化合物、ビーズまたはリポソームなどの薬剤とを含む目的の分子の調合物を含むことができる。ある種の実施形態では、循環中の持続期間を促進する効果を有するヒアルロン酸を使用してもよい。ある種の実施形態では、植え込み型薬物送達装置を使用して、目的の抗原結合性タンパク質を導入してもよい。
【0360】
ある種の医薬組成物は吸引のために調合される。いくつかの実施形態では、ヒトc−fms抗原結合性タンパク質は、乾燥した吸入可能な粉末として調合される。特定の実施形態では、ヒトc−fms抗原結合性タンパク質吸入液は、エアロゾル送達用の噴霧体と一緒に調合してもよい。ある種の実施形態では、溶液を霧状にしてもよい。したがって、肺投与および調合法は、国際特許出願第PCT/US94/001875号にさらに記載されており、この文献は参照により組み込まれており、化学修飾タンパク質の肺送達を記載している。一部の調合物は経口的に投与することができる。このような形で投与されるヒトc−fms抗原結合性タンパク質は、習慣的に錠剤およびカプセルなどの固形の剤形の調合で使用される担体と共にまたはなしで調合することができる。ある種の実施形態では、カプセルは、消化管中バイオアベイラビリティが最大になり前全身性の分解が最小である時点で、調合物の活性部分を放出するように設計してもよい。ヒトc−fms抗原結合性タンパク質の吸収を促進する追加の薬剤を含むことができる。希釈剤、香味剤、低融点ワックス、植物油、滑沢剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、および結合剤を用いてもよい。
【0361】
一部の医薬組成物は、錠剤の製造に適した無毒性賦形剤との混合物で、有効量の1つまたは複数のヒトc−fms抗原結合性タンパク質を含む。無菌水または別の適切な媒体中で錠剤を溶解することにより、単位用量の形で溶液を調製してもよい。適切な賦形剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは重炭酸ナトリウム、ラクトースまたはリン酸カルシウムなどの不活性希釈剤;あるいはデンプン、ゼラチンまたはアカシアなどの結合剤;あるいはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの滑沢剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0362】
持続送達調合物または制御送達調合物中にヒトc−fms抗原結合性タンパク質を含む調合物を含む追加の医薬組成物は当業者には明白であろう。リポソーム担体、生体浸食性微粒子もしくは多孔質ビーズおよびデポー注射物などの、種々の他の持続送達手段または制御送達手段を公式化するための技術も、当業者には公知である。例えば、国際特許出願第PCT/US93/00829号を参照されたい。この文献は参照により組み込まれており、医薬組成物の送達のための多孔質ポリマー微粒子の制御放出を記載している。徐放調製物は、造形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形で半透性ポリマーマトリックスを含んでいてもよい。徐放マトリックスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号および欧州特許出願公開第EP058481号に開示されており、各々の文献は参照により組み込まれている)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidmanら、1983年、Biopolymers 2巻:547〜556頁)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−インエタクリレート)(Langerら、1981年、J. Biomed. Mater. Res. 15巻:167〜277頁およびLanger、1982年、Chem. Tech.12巻:98〜105頁)、酢酸エチレンビニル(Langerら、1981年、上掲)またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許出願公開第EP133,988号)を含んでいてもよい。徐放組成物は、当技術分野で公知のいくつかの方法のうちのいずれによっても調製することができるリポソームも含んでいてよい。例えば、Eppsteinら、1985年、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82巻:3688〜3692頁;欧州特許出願公開第EP036,676号、欧州特許出願公開第EP088,046号、および欧州特許出願公開第EP143,949号を参照されたい。これらの文献は参照により組み込まれている。
【0363】
in vivo投与のために使用される医薬組成物は、典型的には、無菌調製品として提供される。無菌化は、無菌濾過膜を通した濾過により実現することができる。組成物が凍結乾燥されている場合は、この方法を使用した無菌化は、凍結乾燥および再構成に先立って、またはそれに続いてのいずれかで実施してよい。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥の形でまたは溶液中で保存することができる。非経口組成物は、一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内注射溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0364】
ある種の実施形態では、本明細書に開示された組換え抗原結合性タンパク質を発現している細胞は送達のためにカプセルに包まれる(Invest. Ophthalmol Vis Sci. 43巻:3292〜3298頁、2002年およびProc. Natl. Acad. Sciences 103巻:3896〜3901頁、2006年参照)。
【0365】
ある種の調合物において、抗原結合性タンパク質は、少なくとも10mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、100mg/mlまたは150mg/mlの濃度を有する。一部の調合物は、緩衝剤、ショ糖およびポリソルベートを含有する。調合物の例は、50〜100mg/mlの抗原結合性タンパク質、5〜20mM酢酸ナトリウム、5〜10%w/vショ糖、および0.002〜0.008%w/vポリソルベートを含有する調合物である。ある種の調合物は、例えば、9〜11mM酢酸ナトリウム緩衝液、8〜10%w/vショ糖、および0.005〜0.006%w/vポリソルベート中に65〜75mg/mlの抗原結合性タンパク質を含有している。ある種のそのような調合物のpHは、4.5〜6の範囲である。他の調合物は、5.0〜5.5のpH(例えば、5.0、5.2または5.4のpH)を有する。
【0366】
医薬組成物が調合された後は、溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固体、結晶として、または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末として、無菌バイアル中に保存してもよい。そのような調合物は、すぐに使える形で、または投与に先立って再構成される形(例えば、凍結乾燥される)のいずれで保存してもよい。単回用量投与ユニットを作製するためのキットも提供される。ある種のキットは、乾燥タンパク質を有する第1容器と水性調合物を有する第2容器を含有する。ある種の実施形態では、単室および多室のあるプレフィルドシリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringe))を含有するキットが提供される。用いられる治療的有効量のヒトc−fms抗原結合性タンパク質含有医薬組成物は、例えば、治療状況および目標に依存することになる。治療のための適切な用量レベルは、ある程度、送達される分子、ヒトc−fms抗原結合性タンパク質が使われる適応症、投与経路およびサイズ(体重、体表もしくは器官の大きさ)ならびに/または患者の状態(年齢および全体的な健康)に応じて変化することになることは、当業者であれば認識するであろう。ある種の実施形態では、臨床医は、用量の力価を測り、最適の治療効果を得るために投与経路を変更してもよい。
【0367】
典型的用量は、上記の要因に応じて、約1μg/kgから約30mg/kgまでまたはそれを超える範囲でもよい。特定の実施形態では、用量は10μg/kgから約30mg/kgまで、随意に、0.1mg/kgから約30mg/kgまで、あるいは、0.3mg/kgから約20mg/kgまでの範囲でもよい。いくつかの適用では、用量は0.5mg/kgから20mg/kgまでである。いくつかの例では、抗原結合性タンパク質は、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、または20mg/kgで投薬される。いくつかの治療計画における投与計画は、0.3mg/kg qW、0.5mg/kg qW、1mg/kg qW、3mg/kg qW、10mg/kg qW、または20mg/kg qWの用量である。
【0368】
投薬回数は、使用される調合物中の特定のヒトc−fms抗原結合性タンパク質の薬物動態パラメータに依存することになる。典型的には、臨床医が、目的の効果を達成する用量に到達するまで組成物を投与する。したがって、組成物は、単回投与として、または経時的に2回以上投与(同量の目的の分子を含有していてもよいし、含有していなくてもよい)として、または植え込み型装置もしくはカテーテルを介して持続注入として投与してもよい。適切な用量は、適切な用量応答データの使用を通じて確認してもよい。ある種の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、長時間にわたって患者に投与することができる。抗原結合性タンパク質の連続投与は、完全にはヒト型ではない抗原結合性タンパク質、例えば、非ヒト動物中のヒト抗原に対して起こした抗体、例えば、完全ではないヒト型抗体または非ヒト種中で産生された非ヒト型抗体に一般的に付随する有害な免疫反応またはアレルギー反応を最小化する。
【0369】
医薬組成物の投与経路は、既知の方法、例えば、経口的に、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、もしくは病巣内経路による注射による方法;徐放システムによりまたは植え込み型装置による方法に従っている。ある種の実施形態では、組成物は、ボーラス注入によるかあるいは連続注入により、または植え込み型装置により投与してもよい。
【0370】
組成物は、目的の分子がすでに吸収されているかまたは被包されている膜、スポンジまたは別の適切な材料の植え込みを介して局所的に投与してもよい。植え込み型装置が使われているある種の実施形態では、装置はどんな適切な組織または器官に植え込まれてもよく、目的の分子の送達は、拡散、持続放出ボーラス、または連続投与を介していてもよい。
【0371】
本開示に従うヒトc−fms抗原結合性タンパク質医薬組成物をex vivoで使用することも望ましいことであり得る。そのような例では、患者から取り出された細胞、組織または器官はヒトc−fms抗原結合性タンパク質医薬組成物に曝露されて、その後細胞、組織および/または器官は続いて患者に植え戻される。
【0372】
特に、ヒトc−fms抗原結合性タンパク質は、ポリペプチドを発現し分泌するように、本明細書に記載される方法などの方法を使用して、遺伝子操作されたある種の細胞を植え込むことにより送達することができる。ある種の実施形態では、そのような細胞は動物細胞でもヒト細胞でもよく、自家性でも、異種性でも、異種間でもよい。ある種の実施形態では、細胞は不死化してもよい。他の実施形態では、免疫応答の機会を減らすために、細胞はカプセルに包んで周囲の組織の浸潤を回避してもよい。追加の実施形態では、被包材料は、典型的には、タンパク質産物(複数可)を放出させるが、患者の免疫系による細胞の破壊または周囲の組織からの他の有害な因子による細胞の破壊を防ぐ生物適合性、半透性重合体の封入体または膜である。
【0373】
実施された実験および得られた結果を含む以下の実施例は、説明目的のためだけに提供されるもので、添付の特許請求の範囲を限定すると解釈すべきではない。
【実施例】
【0374】
アッセイ
AML−5アッセイ
c−fmsに対する抗体が、c−fms/CSF−1軸に結合してそのブロッキングで機能的な活性を示すことができるか否かを決定するために、細胞ベースのバイオアッセイを用いた。このアッセイは、成長因子依存ヒト骨髄単球性細胞系、AML5(University Health Network、Toronto、Ontario)のCSF−1駆動増殖を定量的に測定する。したがって、このアッセイは、この経路をブロックする作用剤を導入することによってこの増殖の阻害を測定する。このアッセイでは、AML−5細胞を、濃度を減少させた抗体の存在下、10ng/ml CSF−1と共にインキュベートした。72時間後、細胞の代謝活性に基づいた増殖の間接測定であるAlamar Blue(商標)(Biosource)を用いて細胞増殖を測定した。
【0375】
骨髄アッセイ
同様のアッセイで、抗体がカニクイザルc−fmsと交差反応できるか否かを決定するために、抗体を、サル1次骨髄由来の単球性細胞のCSF−1駆動増殖で試験した。AML−5増殖アッセイと同様に、カニクイザル骨髄細胞を、濃度を減少させた抗体の存在下、10ng/ml CSF−1と共にインキュベートした。72時間後、細胞増殖をAlamar Blueを用いて測定した。
【0376】
実験に用いる抗体クローン
以下に示す実験は、すべてが2つの完全な重鎖および2つの完全な軽鎖を含む四量体である1.109、1.2、2.360と呼ぶ3種類の抗体クローンの使用を含む。クローン1.109は、2つの重鎖H1(配列番号4)および2つの軽鎖L1(配列番号36)を含み、クローン1.2は、2つの重鎖H8(配列番号11)および2つの軽鎖L8(配列番号43)を含み、クローン2.360は、2つの重鎖H24(配列番号27)および2つの軽鎖L22(配列番号57)を含む。
【0377】
(実施例1)
C−fmsハイブリドーマの調製
実施形態は、ヒトc−fmsに対する完全ヒトモノクローナル抗体を開発するためにXenoMouse(登録商標)技術を用いることができる。免疫化のために、c−fms−Fc、すなわちC末端ヒトFcドメインを備えたヒトc−fms細胞外ドメイン(残基1〜512、図8の配列番号1を参照)を用いた。加えて、c−fms−LZ、すなわちC末端ロイシンジッパードメイン(Amgen Lot#45640−43)を備えたヒトc−fms細胞外ドメイン(残基1〜512)および293T/c−fms細胞系、すなわち完全長ヒトc−fmsでトランスフェクトしたヒトアデノウイルス5型−形質転換ヒト胚腎細胞系を用いて抗c−fms抗体をスクリーニングした。
【0378】
コホート1(IgG)およびコホート2(IgG)XenoMice(登録商標)をc−fms−Fcで免疫化/追加免疫化した。血清力価を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって測定し、コホート1およびコホート2の両方のマウスからの脾臓を融合してハイブリドーマを作製した。得られたポリクローナル上清を、c−fms−LZに対する結合についてはELISAによって、293T/c−fms細胞に対する結合については蛍光微量アッセイ技術(FMAT)によってスクリーニングした。合計828の陽性上清を、蛍光活性化細胞分取(FACS)によってCSF−1のc−fms/293T細胞に対する結合の阻害について試験した。得られた168の陽性上清を、急性骨髄性白血病(AML)−5細胞のCSF−1誘発増殖の阻害についてさらに試験した。スクリーニングに基づいて、33のハイブリドーマを、CSF−1活性に対して拮抗的であるとして同定し、クローニング用に選択した。
【0379】
(実施例2)
抗C−fmsハイブリドーマの特徴付け
33の選択したハイブリドーマから、29(19のIgGlアイソタイプおよび10のIgG2アイソタイプ)を首尾よくクローニングし、これらのクローンからの上清を、CSF−1の293T/c−fms細胞に対する結合の阻害およびAML−5細胞のCSF−1誘発増殖の阻害について試験した。単量体c−fmsタンパク質を用いた低解像度Biacore結合アッセイは、これらの29の抗c−fmsハイブリドーマのKが、0.1〜43nMの範囲であったことを示した(表8を参照)。抗ヒトIgGを、アミンカップリング法でセンサチップの4つすべてのフローセルに固定した。粗製ハイブリドーマ試料を半分に希釈し、抗IgG表面で捕捉した。単量体c−fms(残基1〜512)−pHisを、125nMの濃度で分析物とした。配列系統の分析も、29のハイブリドーマに対して行った(図2を参照)。
【0380】
【表8-1】
【0381】
【表8-2】
【0382】
結合の阻害アッセイおよび増殖の阻害アッセイに基づいて、29の上清うちの16の上清(11個のIgG1アイソタイプおよび5個のIgG2アイソタイプ)をさらなる特徴付けのために選択した。マウスおよびカニクイザルc−fmsに対する交差反応性を、マウスDRM(マウス骨髄のDexter型培養に由来するras−およびmyc−不死化単球性細胞系)細胞およびカニクイザル1次骨髄細胞のそれぞれのCSF−1誘発増殖の阻害によって試験した。細胞増殖に関して、いずれの上清も、マウスDRM細胞の増殖を阻害しなかったが(データは不図示)、16個の内の13個の上清が、カニクイザル骨髄細胞の増殖を阻害した。上清を、ヒト末梢血由来CD14単球のCSF−1誘発増殖の阻害についても試験し、ヒトAML−5バイオアッセイ(上記のアッセイのセクションを参照)で再試験し、この結果を表9および10に示す。ラット抗ヒトc−fms抗体である2−4A5抗体(Biosource)を正のコントロールとして用いた。
【0383】
4個のIgGアイソタイプ抗体は、AML−5バイオアッセイで10pM未満の力価を有しており、3個の抗体、クローンID:1.2.1、1.109.3、および1.134.1は、カニクイザル骨髄細胞の増殖を阻害した。3個の抗体の内、クローン1.2.1および1.109.3は、Biacore結合アッセイでc−fmsに対して最も高い親和性を有していた。2個のIgGアイソタイプ抗体、2.103.3および2.360.2は、AML−5バイオアッセイおよびカニクイザル骨髄バイオアッセイで高い力価を示し、Biacoreアッセイでc−fmsに対して同様の親和性を示した。AML−5おバイオアッセイよびカニクイザル骨髄バイオアッセイで高い力価を示した5個の抗体はまた、配列における多様性も示した。力価、親和性、および多様性のこれらの因子に基づいて、クローン1.2.1、1.109.3、および2.360.2を、さらなる開発および特徴付けのために選択した。
【0384】
【表9】
【0385】
【表10-1】
【0386】
【表10-2】
【0387】
(実施例3)
抗体の発現および特徴付け
抗体クローン1.2、1.109、および2.360の重鎖および軽鎖の遺伝子を単離し、IgG重鎖およびκ軽鎖として発現させるために構築物にクローニングした。抗体を、COS/PKB細胞での一過性の発現によって発現させ、プロテインAクロマトグラフィーによって精製した。抗体の収量は、この発現系の予想範囲内である3.6〜7.4mg/lであった。
【0388】
クローニングした抗体およびハイブリドーマ−発現抗体の活性を、AML−5増殖アッセイで比較した。AML−5細胞を、濃度を減少させた抗体の存在下、10ng/ml CSF−1と共にインキュベートした。72時間後、細胞増殖をAlamar Blueを用いて測定した(図3を参照)。組換え抗体は、ハイブリドーマ上清と同様の中和活性を示し、1.2および1.109のIgG1からIgG2への転換は、明確な効果がなかった。組換え抗体はまた、図4に示すように、カニクイザル増殖アッセイで良好な中和活性を実証した。AML−5増殖アッセイと同様に、カニクイザル骨髄細胞を、濃度を減少させた抗体の存在下、10ng/ml CSF−1と共にインキュベートした。72時間後、細胞増殖をAlamar Blueを用いて測定した。
【0389】
SDS−PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による精製抗体の特徴付けにより、SDS−PAGE上で予想されたよりも大きく移動したクローン1.109の軽鎖を除き、一般的な結果が得られた。この例外は、N−結合型グリコシル化部位の配列が以前にCDR1で示されていたため予想外ではなかった。予想よりも大きい移動は、このグリコシル化部位が占有されたことを示唆した。
【0390】
抗体のN末端配列により、シグナルペプチドが予想通り処理され、重鎖N末端グルタミン残基が予想通りピログルタミン酸に環化する可能性が高いことが確認された。酵素的脱グリコシル化の後に個々の抗体鎖に対して質量分析を行った。重鎖の質量により、N末端グルタミン残基がピログルタミン酸に環化し、C末端リシン残基が存在しないことが確認された。他の翻訳後修飾は示されなかった。クローン1.2SMおよび2.360の軽鎖の質量により、これらに翻訳後修飾がなく無傷であることが確認された。クローン1.109の軽鎖の質量が得られなかったが、これは、グリコシル化部位が、酵素除去に対して耐性があるために、正確な質量が得られなかったためであろう。
【0391】
(実施例4)
体細胞突然変異(SM)の修正
既知の生殖細胞系配列とIgG2クローン1.2、1.109.および2.360抗体との配列比較により、表11に示すように、図1Aおよび図1Bに示すような成熟配列に関するものである、当該表中で番号付けをしてある下に示す体細胞突然変異を明らかにした。
【0392】
【表11】
【0393】
体細胞突然変異を生殖細胞系残基に変換できるか否かを調べるために、適当な構築物を作製し、抗体をCOS/PKB細胞での一過性発現により発現させて、プロテインAクロマトグラフィーで精製した。これらの抗体を、IgGクローン1.2SM、1.109SM、および2.360SM(SMは、体細胞突然変異が除かれている)と呼ぶことにした。1.109LCの場合、2つの構築物を作製した。第1の構築物では、Asn−28を、N−結合型グリコシル化部位を除去するためにAsp−28に変換し、第2の構築物では、Asn−28をAsp−28に変換し、Asn−45をLys−45に変換した。収量は、この発現系の予想範囲内である1.7〜4.5mg/lであった。
【0394】
SDS−PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による精製抗体の特徴付けにより、一般的な結果が得られた。IgGクローン1.109SMの2つの型のSDS−PAGEにより、軽鎖が親抗体軽鎖よりも速く移動することが示され、N−結合型グリコシル化部位が除去されたことが確認された。N末端の配列決定により、抗体鎖のN末端が無傷であることが示され、質量分析により、体細胞突然変異が生殖細胞系残基に転換されたことが示された。
【0395】
(実施例5)
体細胞突然変異−修正抗体の特徴付け
体細胞突然変異の修正の後、精製IgG抗体を、AML−5増殖アッセイおよびカニクイザル骨髄増殖アッセイで再試験した。AML−5増殖アッセイにおけるIC50は、親IgG抗体と比較して、IgGクローン1.2SMまたは1.109SM(SMは、体細胞突然変異が除かれている)において変化はなかったが、IgGクローン2.360SM抗体に対しては力価が10分の1に低下した(表12を参照)。
【0396】
体細胞突然変異修正抗体の単量体c−fmsタンパク質に対する結合親和性を、Biacore3000装置を用いて表面プラズモン共鳴によって測定した。IgGクローン1.2SM抗体の親和性は、親抗体から実質的に変化がなかったが、IgGクローン1.109SM抗体および2.360SM抗体の親和性はそれぞれ、親抗体の約2分の1未満であった(表12を参照)。
【0397】
親(PT)抗体およびSM IgG抗体を、125I−hCSF−1のAML−5細胞に対する結合を阻害する能力についてさらに試験した。125I−hCSF−1のAML−5細胞に対する見掛けの結合親和性が、初めに46pMであり、未標識hCSF−1のKが17.8pMであることが決定された(実施例10を参照)。表12に示すように、抗体1.2のK値は、AML−5バイオアッセイにおけるIC50値に一致し、1.2SMも同様の結果であった。抗体1.109のK値も、IC50値と一致しており、Biacoreによって測定した単量体c−fmsの親和性において2分の1の低下にもかかわらず、1.109SM抗体には変化がなかった。抗体2.360は、抗体1.2および抗体1.109と同様に阻害せず、2.360SMは、その親抗体ほどには良好に阻害しなかった。
【0398】
【表12】
【0399】
1.2SM抗体の活性を、ヒトまたはカニクイザルの骨髄単球性細胞を用いる増殖アッセイでさらに調べた。ヒトアッセイでは、ヒト細胞を、濃度を減少させた抗体1.2SMの存在下、11.1ng/ml 組換えヒトCSF−1と共にインキュベートした。カニクイザルアッセイでは、カニクイザル細胞を、濃度を減少させた抗体1.2SMの存在下、29.63ng/ml 組換えヒトCSF−1と共にインキュベートした。ヒトIgG2抗体をコントロール実験に用いた。7日後、CellTiter−Glo(Promega、Madison WI)を用いて細胞増殖を測定し、ATPのレベルを決定した。非線形回帰曲線フィットを行って抗体のIC50を決定した。表13は、3セットの実験の結果を示す。
【0400】
【表13】
【0401】
(実施例6)
C−fmsチロシンリン酸化の阻害
抗c−fms IgG mAbの、1.109、1.2、および2.360が、ホスホチロシン(pTyr)−反応を完全にまたはほぼ完全に阻害できることを示すために、CSF−1刺激の前に、293T/c−fms細胞を、様々な濃度のこれらのmAbで、37℃で1時間処理した。
【0402】
滴定希釈を用いた様々な濃度のIgGmAbは、1.0、0.1、0.01、0.001、および0.0001μg/mlであった。コントロールとして、ノンブロッキング抗c−fmsモノクローナル抗体、mAb3−4A4(BioSource、Intl.)、および無関連の抗体、hCD39M105をそれぞれ1.0μg/mlで用いた。血清を飢餓状態にした293T/c−fms細胞を、上記したように様々な濃度を用いてIgG(PT)mAbのそれぞれで処理し、各濃度は、50ng/mlでのCSF−1の5分の刺激の前に、5分間、10倍希釈に変更した。刺激後、全細胞溶解物を収集し、抗c−fms C20ポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology、Inc.)で、4℃で一晩、免疫沈降させ、ウエスタンブロットで試験した。このウエスタンブロットでは、c−fmsのチロシンリン酸化レベルおよびc−fms自体のレベルについて、それぞれ、一般的な抗pTyr抗体、4G10(Upstate Biotechnology)、および抗c−fms C20抗体で免疫プローブした。
【0403】
37℃、5%COで、24×10cmディッシュの上で293T/c−fms細胞を増殖させるために、11個のT175フラスコ(約50〜60%コンフルエント)を、4mlトリプシン/フラスコ(Gibco−Invitrogen)によって収集し、70ml DMEM(Gibco)/10%FBS(JRH Biosciences)に移した。次いで、各10cmディッシュに、培地10mlを加えて、収集した細胞2mlで接種した。DMEM/−FBS培地を、37℃で1時間調製した。慎重な吸引により10cmディッシュから培地を除去し、FBS−含有培地を可能な限り除去した。DMEM/−FBS 10mlを加え、この混合物を37℃で1時間インキュベートした。
【0404】
37℃で1時間、血清を飢餓状態にさせた後、培地を除去した。抗体処理およびマイナス−Abコントロールを、4.0mlの連続希釈Ab含有試料を用いるかまたはDMEM/−FBSのみを用いるかのいずれかで調製し、37℃で1時間さらにインキュベートして合計2時間、血清の飢餓をもたらした。抗体前処理およびリガンド刺激を表14に例示する。
【0405】
【表14-1】
【0406】
【表14-2】
【0407】
50ng/μl(25μg/バイアル)CSF−1(R&D Systems/216−MC/Lot CC093091)の新鮮なバイアルを、500μlのPBS(Gibco)/0.1%BSA(Sigma)で再構成して、氷上で保存した。CSF−1ストックの1:1000に希釈物(60μl)を、Ab−処理終了の約5分前にDMEM/−FBS(60ml)に調製した。293T/c−fms細胞を、50ng/ml CSF−1と共に37℃で5分間インキュベートした。上清を取り除き、2mlの冷溶解緩衝液(PBS/1%トリトン 100ml、0.5M EDTA 100μl、1.0M NaF 100μl、0.5M β−グリセロールリン酸200μl、バナジン酸ナトリウム(100×)500μL、オカダ酸(10,000×)10.0μL、およびCompleteプロテアーゼインヒビター4錠)を加えた。この溶解物(2.0ml)を、50%プロテインA/Gセファロース(Amersham)30μlと混合して、ロッカープラットフォーム(rocker platform)上で、4℃で1時間インキュベートし、非特異的結合性タンパク質を予め除去した。画分を回転させた後、上清を新しい15ml管に注いだ。
【0408】
全細胞溶解物を2.5μg/ml抗c−fms C20(25μl;0.2μg/μlで)で免疫沈降させた。抗体−細胞溶解混合物を、ロッカープラットフォーム上で、4℃で一晩インキュベートし、全c−fmsをプローブした。ロバ抗ウサギIgG/HRP(ブロッキング溶液中に1:10,000;Jackon)を加え、4℃でもう30分間さらにインキュベートした。この免疫複合物を、SDS−PAGEにかけて免疫ブロットした。ウエスタンブロットを、pTyr c−fmsおよび全c−fmsのそれぞれの検出のために抗pTyr 4G10かまたは抗c−fms C20のいずれかでプローブした。
【0409】
図5に示すように、IgGクローン(PT)1.109、1.2、および2.360は、293T3/c−fmsアッセイ系においてリガンド−誘発pTyr/c−fmsを阻害する能力を示した。CSF−1刺激前の0.1μg/ml(8.3nM)のIgGクローン(PT)1.109または1.2での1時間の処理により、ホスホチロシンシグナルがバックグラウンドレベルに低下した。他方、IgGクローン(PT)2.360は、1.0μg/ml(83nM)で等しく阻害した。しかしながら、0.01μg/ml(0.83nM)以下のいずれかの抗体の処理では、pTyr阻害が起こらなかった。対照的に、ノンブロッキング抗c−fms 3−4A4抗体および無関連のhCD39M105抗体は、最も高い用量(1.0μg/ml)で、−mAb/+CSF−1コントロールと比べて、リガンド−誘発pTyrシグナルに対する影響がなかった。したがって、pTyr形成の阻害は、CSF−1結合のブロッキングに直接つながっている。
【0410】
これらのアッセイで用いた293T/c−fmsトランスフェクタントが、予め測定された約30,000個の受容体/細胞の細胞表面c−fms密度を維持したと仮定すると、約3,000,000個の細胞が、約90×10個のc−fmsを保持することになり、それは、0.1μg/mlでの前処理の4.0ml中の約5.0×1011個のmAbよりも著しく低い。標的について約10,000倍過剰に存在するmAbにより、利用可能なc−fmsが飽和し得る。これは、8.3nMのクローン(PT)1.109または1.2が、50ng/mlまたは1.0nMのCSF−1の、または約10:1(mAb:c−fms)モル比でのCSF−1のシグナル伝達を効果的にブロックしたことを示す。クローン(PT)1.109および1.2の有効性の閾値は、このアッセイ系において0.1〜0.01μg/ml(0.83〜8.3nM)の間に入るであろう。
【0411】
CSF−1を添加しない1.0μg/ml IgG(PT)mAbでの処理では、バックグラウンドレベルを超えるpTyrシグナルが得られなかった。10μg/mlで用いた全3種のIgG(PT)型を用いた前の実験でも、同一条件下でpTyrシグナルが検出されなかった。これらのmAbに関連したアゴニスト活性は、一切測定されなかった。
【0412】
(実施例7)
IgGのPT型およびSM型を用いたリガンド−誘発pTyr/c−fmsの阻害
この研究の目的は、IgGクローン1.109、1.2、および2.360の生殖細胞系−復帰変異(SM)型の、それぞれの親型(PT)と比較した任意の機能の変化が存在するか否かを決定することであった。この実験のための293T/c−fms細胞を調製するために、5個のT175(約80〜90%コンフルエント)からの増殖している細胞を4mlトリプシン/フラスコによって収集し、10%FBSを含むDMEM 75mlに移した。各24×10cmディッシュに対して、培地9mlを加え、収集した細胞3mlで接種した。DMEM/−FBS培地を調製し、かつ/または37℃で1時間暖めた。慎重な吸引により10cmディッシュから培地を除去し、FBS含有培地を可能な限り除去した。DMEM/−FBS(10ml)を加え、この混合物を37℃で1時間インキュベートした。冷溶解緩衝液を調製して、氷上で保存した。
【0413】
表15に示すようにモノクローナル抗体滴定物を調製し、室温に保った。
【0414】
【表15-1】
【0415】
【表15-2】
【0416】
一連の連続抗体希釈物(300μL+2.7mlのDMEM/−FBS)を、各mAbについて1.0μg/ml〜0.1μg/mlの範囲で試験した。37℃、1時間で血清を飢餓状態にした後、培地を除去し、抗体前処理およびマイナス−Abコントロールを、表13に記載したのと同様に調製した。抗体前処理およびリガンド刺激を、以下に示す表16に記載する。
【0417】
【表16-1】
【0418】
【表16-2】
【0419】
抗c−fms mAb(SM型)によるリガンド−誘発pTyrを、実施例6に記載するようにPT型に対して行った。
【0420】
1.0μg/mlおよび0.1μg/mlでの3種のIgG mAbのPT型のSM型に対する効果を比較するための293T/c−fms細胞を用いた実験では、リガンド−誘発pTyr/C−fmsを阻害する能力における差が見られなかった(図6を参照)。クローン1.109および1.2(PT型およびSM型の両方)は、2.360(PT型およびSM型)を用いるよりも低い濃度で阻害を示した。
【0421】
クローン1.109および1.2(PTまたはSM)はまた、50ng/ml(1.0nM)CSF−1の添加の前に、293T/c−fms細胞を0.1μg/ml(8.3nM)以上のmAbで、37℃で1時間処理すると、in vitroでリガンド−誘発pTyr/c−fmsを防止することができた。これらのモノクローナル抗体のpTyr/c−fmsの形成を阻害する能力は、CSF−1のシグナル伝達、単球の遊走、およびその後のTAMの蓄積の阻害をもたらすであろう。アゴニスト活性は、これらのmAbが非−CSF−1依存的様式で受容体の活性化を回避することと関連していないようであった。mAbは、1.0μg/mlの濃度および10μg/mlもの高い濃度で用いた場合、アゴニスト活性を全く示さなかった(データは示さない)。
【0422】
したがって、mAbは、in vitroでリガンド−誘発pTyr/c−fmsを防止することができた。
【0423】
(実施例8)
抗c−fms mAbによるC−fmsの免疫沈降
c−fmsに結合して免疫沈降させるIgG抗c−fms mAbの能力は、上記したように、安定にトランスフェクトされた293T/c−fms細胞を使用することによって達成された。非刺激細胞の全細胞溶解物を、各mAb(PTおよびSM)および抗c−fms C20抗体と共に一晩免疫沈降させ、c−fmsの検出用プローブとしてC20 Ab(Santa Cruz Biotechnology、Inc.)を用いるウエスタンブロットによって試験した。c−fmsを、モノクローナル抗体によって免疫沈降させた。37℃/5%CO、約75%コンフルエントで増殖させた安定にトランスフェクトされた293T/c−fmsの溶解物を調製し、表17に示すようにモノクローナル抗体と組み合わせた。
【0424】
【表17】
【0425】
安定な293T/c−fmsの未処理全細胞溶解物を用いた免疫沈降実験により、c−fmsに結合して沈降させる様々なmAb(2.360SMを除く)の能力が、ポリクローナル抗c−fms C20コントロール;クローン2.360−SMと比較して同等であることが実証されたが、このアッセイでキャパシティの低下が示された(図7を参照)。
【0426】
(実施例9)
IgG mAbによるSNP−変異体の免疫沈降
一塩基多型またはSNPは、ゲノム配列における1つのヌクレオチド(A、G、T、またはC)が変化した時に起こるDNA配列変異である。SNPは、ヒトゲノムのコード領域および非コード領域の両方で起こり得る。多くのSNPは、細胞機能に影響を与えないが、科学者は、他のSNPは、人々を疾患に罹りやすくする、または人々の薬物反応に影響を与え得ると考えている。DNA配列における変異は、疾患、環境障害(例えば、細菌、ウイルス、毒素、および化学種)、薬物、および他の療法に対する個人の応答の仕方に大きな影響を与え得る。このため、SNPは、生物医学的研究、医薬品開発、および医療診断に大きな価値がある。さらに、SNP地図により、科学者が、複雑な疾患、例えば、癌、糖尿病、および血管疾患などに関連した多数の遺伝子を同定することができる。
【0427】
ヒトc−fmsの細胞外領域は、5つの免疫グロブリン(Ig)−様反復ドメイン(A〜Eと呼ぶ)に分割することができる。ヒトドメインの議論については、例えば、Hampe, A.ら、(1989年)、Oncogene Res.、4巻、9〜17頁を参照されたい。マウスタンパク質における対応するドメインについては、例えば、Wangら、(1993年)、Molecular and Cell Biology、13巻、5348〜5359頁を参照されたい。ドメインA〜Cは、CSF−1結合領域を含むことが示されており、ドメインDは、リガンド結合の際の受容体の二量体化の制御を助けることが示されている。ヒトc−fmsの3つの自然発生SNP−変異体、すなわち、Ig−ドメインCのA245S、V279M、およびIg−ドメインDのH362Rを調製した(c−fmsの細胞外ドメインのアミノ酸配列については図8を参照)。これらのSNPは、CSF−1結合領域内またはその近傍で見出され、抗c−fms H−300(ヒトc−fms/CSF−1RのN末端近傍にマッピングされるアミノ酸11〜310に対して起こされたウサギポリクローナル抗体;Santa Cruz Biotech.、Inc.、Cat. No. sc−13949)でプローブするウエスタンブロットによって試験した。
【0428】
ヒトc−fms SNP変異体が、本明細書で提供する様々なc−fms Abとどのように相互作用するかを研究するために、上記したように、c−fms SNP変異体の3つの型を発現する一過性にトランスフェクトされた293T細胞および野生型(WT)c−fms(ならびに無関連のベクター−一致コントロール)を用いて、免疫沈降によって各抗c−fms mAbのSNP−変異体に結合する能力を評価した。
【0429】
293T細胞を、哺乳動物発現ベクターpCIneoにおけるc−fms A245S、V279M、H362R、WT c−fms、および無関連のコントロール構築物を用いて10cmディッシュで2連でトランスフェクトし、37℃/5%COで48時間増殖させた。細胞溶解物を、上記したように調製した。アリコート1.0ml中で2.5μg/mlの抗c−fms mAbおよびポリクローナル抗c−fms C20または抗c−kit C19を、表18に例示するように各溶解物に加えた。
【0430】
【表18-1】
【0431】
【表18-2】
【0432】
細胞を、実施例6で記載したようにロッカー上で、4℃で一晩インキュベートした。
【0433】
抗体は、WTコントロールに比べ、SNP型に結合する能力が全く低下していないことを示した(図9)。mAbは、一定範囲の自然発生c−fms変異体に対する結合キャパシティを有するようである。
【0434】
安定な293T/c−fmsの未処理全細胞溶解物からの免疫沈降により、各種すべてのmAb(2.360SMを除く)のc−fmsに結合して沈降させる能力が、ポリクローナル抗c−fmsコントロールに対して等しく;クローン2.360SMが、このアッセイでキャパシティの明らかな低下を示したことが実証された。一過性にトランスフェクトされた293T/c−fms細胞からc−fmsおよびSNP変異体を免疫沈降させる様々なmAbの能力の試験により、SNP型を結合する能力が全く低下していないことが示された。様々なmAbのc−fms SNPに対する結合能は、これらのmAbが、ヒトに存在することが知られている多種多様の変異体の中からc−fmsタンパク質を認識することを示した。
【0435】
(実施例10)
抗c−fms mAbによる125I−hCSF−1の結合の阻害
抗c−fms mAbの細胞表面発現ヒトc−fmsに対する親和性を、125I−hCSF−1のAML−5細胞に対する結合の阻害を測定することによって決定した。
【0436】
組換えhCSF−1(Amgen)を、125I(Amersham)およびIODO−GEN(登録商標)(Pierce)を用いてヨウ素化した。PBS 75μl、hCSF−1 10μg、および1mCi 125Iを、IODO−GEN(登録商標)プレコートヨウ素化管に入れ、15分間、氷上で放置した。この混合物を、平衡化した2ml
P6カラムに移して、125I−hCSF−1をゲル濾過によって遊離125Iから分離させた。ヨウ素化hCSF−1含有画分をプールし、次いで結合培地(2.5%ウシアルブミンフラクションV、20mM Hepes、および0.2%アジ化ナトリウムを含むRPMI−1640、pH7.2)中で100nMの濃度まで希釈した。4.8×1015cpm/mmolの特異的活性を、hCSF−1の初期タンパク質濃度と、追加の125Iを除き、ヨウ素化プロトコルを通して125I−hCSF−1のアリコートを用いるコントロール実験からの80%の回収率とに基づいて計算した。
【0437】
AML−5細胞の表面で発現されるc−fmsに対するhCSF−1の結合のKおよびKの両方を決定するために、飽和放射性リガンド結合実験を、各阻害アッセイと共に行った。混合物を、総量150μl/ウェルの96ウェル丸底マイクロタイタープレートにセットした。すべての試薬を、0.2%アジ化ナトリウムを含む結合培地で希釈して、受容体の内部移行および脱落の可能性を最小限にするために4℃で実験を行った。
【0438】
飽和結合アッセイでは、125I−hCSF−1を2倍に連続希釈し、約1.7nMの濃度で開始し、約1.5pM濃度の12ウェルをで終了した。非特異的結合を、1,000倍モル過剰の未標識hCSF−1の存在下、単一濃度の125I−hCSF−1(約80pM、3連)で測定し、存在する放射標識hCSF−1の濃度の1次関数であると推定した。
【0439】
125I−hCSF−1阻害アッセイでは、未標識hCSF−1を5nMの開始濃度に設定した。抗c−fms1.2、1.109、および2.360(それぞれに対してPTおよびSM)の開始濃度はそれぞれ、0.312nM、1.25nM、および20nMとした。各試料を、15ウェルで2倍に連続希釈した。結合培地のみの3連のウェルおよび1,000倍モル過剰の未標識hCSF−1の3連のウェルを、阻害率を決定するためのコントロールとしてアッセイの開始時、中間、終了時にセットした。単一濃度の125I−hCSF−1(約9pM)を各ウェルに加えた。
【0440】
AML−5細胞をPBSで2回洗浄し、インキュベーションの直前に各アッセイプレートに1×10細胞/ウェルで加えた。
【0441】
両方のアッセイは、ミニオービタルシェーカーで、時間経過実験で決定した平衡に達するまでに必要となる時間の長さである4時間かけて、4℃でインキュベートした。各インキュベーション混合物の2つの60μlのアリコートを、フタル酸油200μlを含む冷却した400μlポリエチレン遠心分離管に移し、細胞結合125I−hCSF−1を遊離125I−hCSF−1から分離するために、9615×gで、4℃の卓上マイクロチューブ(Sorvall)で1.5分間回転させた。この油管を切断し、個々の12×75mmガラス管に収集した各細胞ペレットおよび上清を、cpm測定のためにCOBRAガンマカウンター(Packard Instrument Company)にセットした。各ウェルから取った2連のアリコートからのcpmを分析のために平均した。
【0442】
飽和結合データを、Prismバージョン3.03(GraphPad Software、Inc.)の非線形回帰によって単純1部位結合式にフィットさせて、細胞表面発現ヒトc−fmsに結合する125I−hCSF−1についての46pMの見掛け平均Kを得た。未標識hCSF−1(見掛けの平均K=17.8pM)および各抗c−fms mAbのK値を生成するために同時結合アッセイで得た125I−hCSF−1のK値を用いて、阻害データを、Prismの非線形回帰によって単一部位競合阻害式にフィットさせた。2つの実験からの平均K値を報告した(表13を参照)。
【0443】
(実施例11)
抗c−fms mAbに対する単量体C−fmsの結合の速度定数および結合定数の決定
ヒトc−fms(1〜512).pHIS(Amgen)の抗c−fms mAbに対する親和性をBiacoreによって測定した。CM4センサチップを備えたBiacore3000装置(Biacore AB)を用いて実験を25℃で行った。センサチップ、アミンカップリング剤(EDC(1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩)、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)、およびエタノールアミン−HCl、pH8.5)、10mM酢酸ナトリウム、pH5.5、HBS−EP(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%v/vサーファクタントP20)、および10mMグリシン−HCl、pH1.5をBiacore ABから購入した。ウシ血清アルブミン(BSA、Bovuminar Standard Powder)をSerological Corporationから購入した。AffiniPureヤギ抗ヒトIgG、FcγFragment SpecificをJackson ImmunoResearch Laboratoriesから購入した。
【0444】
抗ヒトIgG、Fcγ特異的捕捉抗体を、泳動用緩衝液としてHBS−EPを含む標準的なアミンカップリング化学反応を用いてCM4チップに共有結合で固定した。簡単に述べると、各フローセルを、0.1M NHSと0.4M EDCの1:1(v/v)混合物を用いて、5μl/分の流速で7分間活性化させた。10mM酢酸ナトリウム、pH5.5中の28μg/mlヤギ抗ヒトIgGを約2700RUの密度で固定した。残った反応性の表面を、1Mエタノールアミンを5μl/分で7分間注入して不活化させた。100μl/分での10mMグリシンHCl、pH1.5の50μlの3回の注入で、残っている非共有結合した捕捉抗体のすべてを除去し、各表面を調整した。残りのすべてのステップに対して、泳動用緩衝液を0.1mg/ml BSAを含むHBS−EPに切り替えた。
【0445】
0.25μg/ml抗c−fms1.2または抗c−fms1.2SMを10μl/分で2分間、1つのフローセル中のヤギ抗ヒトIgG、Fcγに対して注入て、約47RUの表面密度を得た。ヤギ抗ヒトIgG、Fcγのみを含む別のフローセルを基準表面として用いた。各アッセイは、シグナルを安定させるための分析物として10サイクルの緩衝液で開始した。ヒト単量体c−fms(1〜512).pHIS試料を、30、10、3.33、1.11、0.37、および0.12nMの濃度に3連で調製し、捕捉した抗c−fmsおよび基準表面の両方に対して100μl/分でランダムな順に6つの緩衝液ブランクと共に注入した。各複合体は、結合が2分間、解離が5分間できるようにした。これらの表面は、100μl/分での10mMグリシンHCl、pH1.5の30秒のパルスでの各c−fms注入または緩衝液注入、これに続く30秒の緩衝液注入の後に再生された。
【0446】
他の抗c−fms抗体を、同様の要領で調べたが、結合特性の差異を考慮してプロトコルを変更した。抗―c−fms1.109および抗―c−fms1.109SMを各々、10μl/分で1.5分間、0.5μg/mlヤギ抗ヒトIgGに対して注入して、それぞれ59RUおよび91RUの表面密度を得た。ヒトc−fms(1〜512).pHIS試料を、抗c−fms1.109の結合のために10、3.33、1.11、0.37、0.12、および0.041nMの濃度に調製し、0.041nMの試料を除いて同じセットを、抗c−fms1.109SMの結合のために調製した。ヒト単量体c−fms(1〜512).pHISは、抗c−fms1.109からは20分間、1.109SMからは15分間、解離できるようにした。抗c−fms2.360および抗c−fms2.360SMのそれぞれを、10μl/分で1.5分間または2分間、1μg/mlでヤギ抗ヒトIgG、Fcγに対して注入して、約100RUの表面密度を得た。ヒトc−fms(1〜512)/pHIS試料を、抗c−fms2.360の結合のために30、10、3.33、1.11、および0.37nMの濃度に調製し、0.12nMの試料を追加した同じセットを、抗c−fms2.360SMの結合のために調製した。ヒト単量体c−fms(1〜512).pHISは、抗c−fms2.360からは8分間、抗c−fms2.360SMからは5分間、解離できるようにした。
【0447】
データは、バルク屈折率の変化を取り除くために基準表面応答を減じること、および実験のフローセルからの系統的アーチファクトを取り除くために平均した緩衝液ブランクを減じることによって二重参照した。データを処理して、BIAevaluation(バージョン4.1、Biacore AB)のローカルRmaxで1:1相互作用モデルに対して全体的にフィットさせて、動力学速度定数kおよびkを得た。c−fmsの各濃度の3連の試料からのデータを収集したが、BIAevaluationソフトウエアに固有のパラメータ数の制限により、2連の試料からのデータのみを分析することができる。Kを、k/kの商から算出した。結果を表19に示す。上記した種々の実施例からのデータを表20に要約した。
【0448】
【表19】
【0449】
【表20】
【0450】
(実施例12)
抗C−fms抗体IgGクローン1.109、1.2、および2.36のエピトープマッピング
C−fms−アビジン融合構築物の調製
c−fmsアビジン融合発現構築物を図10に示す。各融合タンパク質を発現させるために、ヒトc−fms細胞外ドメインのコード配列をPCR増幅し、制限酵素XhoIを用いて、c−fms配列がニワトリアビジン配列のC末端に結合されるようにpCEP4−アビジン(N)にクローニングした。ニワトリアビジンに対するシグナル配列がpCEP4−アビジン(N)ベクター内で無傷で残ったため、c−fmsのシグナル配列は含ませなかった。
【0451】
上記したように、細胞外ドメインは、5つの異なるIg−様領域を含む。ヒトc−fmsの異なるドメインは、例えば、Hampeら、Oncogene Res、1989年、4巻、9〜17頁で議論されている。マウスc−fmsの対応するドメインの議論については、例えば、Wangら、Molecular and Cell Biology、1993年、13巻、5348〜5359頁を参照されたい。以下に示す異なるアビジン構築物は、示したIg−様ドメインに一致するように調製した(細胞外ドメインのアミノ酸配列:配列番号1を示す図8を参照されたい)。
【0452】
シグナル:アミノ酸1〜19
Ig様1ドメイン:アミノ酸20〜126
Ig様1〜2ドメイン:アミノ酸20〜223
Ig様1〜3ドメイン:アミノ酸20〜320
Ig様1〜4ドメイン:アミノ酸20〜418
Ig様1〜5ドメイン:アミノ酸20〜512
Ig−様2ドメインのみ:アミノ酸85〜223
したがって、エピトープマッピングのためにヒトc−fms(短縮型)の特定の領域を作製する際は、次のアミノ酸:Ig−様ループ1(IPVI−ALLP)、Ig−様ループ1および2(IPVI−AQIV)、Ig−様ループ1〜3(IPVI−EGLN)、Ig−様ループ1〜4(IPVI−GTLL)、およびIg−様ループ1〜5(IPVI−PPDE)、ならびにIg−様ループ2のみ(TEPG−AQIV)を標的としてPCR増幅を行った。カッコ内に示す配列は、各ドメインに対するそれぞれの開始配列および終了配列を示す(図8を参照)。ジスルフィド結合がドメインの自然の3次元構造の維持に重要であるため、指し示した特定の領域は、ジスルフィド結合の形成に関与するシステイン残基を維持するように選択した。さらに、Ig−様ループ2のみについての構築物は、同じ理由からIg−様ループ1からの一部の配列を含む。結果として、列記したドメインの開始アミノ酸および終了アミノ酸は、上記したHampeおよびWangによる論文で特定したドメイン領域とはやや異なる。
【0453】
アビジン融合タンパク質の発現
アビジン融合タンパク質の発現は、T75組織培養フラスコ中でのヒト293T接着細胞の一過性トランスフェクションによって達成した。細胞を増殖させ、10%透析処理済FBSおよび1×Pen−strep−グルタミン(増殖培地)を含むDMEM(高グルコース)中に37℃、5%COで維持した。約3×10個の293T細胞を、増殖培地15mlを含むT75フラスコ内に接種し、一晩、約20時間増殖させた。次いで、細胞を、pCEP4−アビジン(N)−c−fms構築物でトランスフェクトした。各フラスコで、DNA 15μgを、Opti−MEM培地(Invitrogen)の存在下、Lipofectamine2000(Invitrogen)75μlと混合し、この複合物を20分間インキュベートした。このトランスフェクション複合物を対応するフラスコ内に接種し、Opti−MEM培地で、37℃で4〜5時間インキュベートした。インキュベーション時間の終了時に、Opti−MEM培地を新しい増殖培地に交換した。トランスフェクションの約48時間後、馴化培地(conditioned media)を回収し、4℃で10分間、2000×gで遠心分離して細胞および細片を除去してから、50ml管に移した。DNAを用いない点以外は同じプロトコルにしたがってコントロールフラスコ(偽トランスフェクション)も作製し、結合実験のための負のコントロール馴化培地を用意した。
【0454】
融合タンパク質の検出
各c−fmsアビジン融合タンパク質の濃度を、定量的FACSベースのアッセイで決定した。c−fmsアビジン融合タンパク質を、6.7μmビオチンポリスチレンビーズ(Spherotech,Inc.、Libertyville Ill.)に捕捉した。1×馴化培地(20μlおよび200μl)を5μl(約3.5×10)のビーズに加え、回転させながら室温で1時間インキュベートした。馴化培地を遠心分離によって除去し、0.5%BSAを含むPBS(BPBS)で試料を洗浄した。アビジンビーズを、BPBS中の0.5μg/mlヤギFITC標識抗アビジン抗体(Vector Labs、Burlingame、CA)溶液200μlを用いて、ホイルで覆って室温で45分間染色した。インキュベーション後、ビーズを遠心分離によって再収集し、BPBSで洗浄し、そして分析のためにBPBS0.5ml中に再懸濁した。FITC蛍光を、FACScan(Becton Dickinson Bioscience、Franklin Lakes、NJ)で検出した。このシグナルを、rAvidinから得た標準曲線を用いてタンパク質質量に変換した。エピトープマッピングのために、ビオチンビーズに、3.5×10ビーズ当たり約100ngのc−fmsアビジン融合タンパク質を負加して、増殖培地で体積を増大させた。
【0455】
抗体結合FACSアッセイ
正規化した量のC−FMSサブドメイン融合タンパク質を負加したビオチン被覆ポリスチレンビーズ(Spherotech、Inc.)を、BPBS 0.2ml中の1μgのFITCコンジュゲート抗c−fmsモノクローナル抗体(1.109、1.2、および2.36)と混合した。室温での1時間のインキュベーションの後、洗浄緩衝液(BPBS)3mlを加え、抗体−ビーズ複合体を、5分間の750×gの遠心分離によって収集した。ペレットを、BPBS 3ml中で洗浄した。アビジン−ビーズ複合体に結合した抗体を、FACS(Becton Dickinson)分析によって検出した。平均(X)蛍光強度を、各試料について記録した。
【0456】
抗体競合アッセイ
フルオレセインでの標識物を調製するために、モノクローナル抗体を、PBS(pH7.4)中に1mg/mlの濃度で透析または再懸濁した。Molecular Probes(F−2181)からの標識([6−フルオレセイン−5−(および6)−カルボキサミド]ヘキサン酸,スクシンイミジルエステル5(6)−SFX)混合異性体を、DMSO中の5mg/ml標識ストックからのモル比9.5:1(標識物:タンパク質)となるようにタンパク質に加えた。この混合物を、暗い中で、室温で1時間インキュベートした。標識抗体を、PBS中での透析によって遊離標識物から分離した。各競合実験では、BPBS中の20倍過剰(20μg/ml)の未標識競合抗体、アビジン融合タンパク質で被覆された3.5×10ビオチンビーズを含む結合反応物を作製した。未標識競合抗体の30分のプレインキュベーションの後、FITC標識抗体(1μg/ml)を加えた。この処理に続いて、この時点から単色法(one color method)を行った。
【0457】
293T細胞に発現したすべての融合タンパク質(図11)を、FACScanによってFITC標識抗アビジン抗体で検出することができる。どのc−fms Ig−様ドメインが抗体結合部位であるかを決定するために、6つすべての融合タンパク質を結合アッセイで用いた。抗体クローン1.109、1.2、および2.36は、ヒトc−fmsサブドメインIg様1〜2、Ig様1〜3、Ig様1〜4、およびIg様1〜5融合タンパク質に結合する。これらの抗体クローンは、単一ドメインc−fms Ig様1およびIg−様2の融合タンパク質には結合しない。比較のために、ヒトc−fms ECDを、正のコントロールとして用いている(図11および図12)。これらの結果は、これら3つの抗体のエピトープが、ヒトc−fmsのN末端Ig−様ループ1およびIg−様ループ2に主に位置し、Ig−様ループ1領域およびIg−様ループ2領域の両方の存在を必要とすることを示唆する。これらの結果はまた、抗体が、Ig−様ループ3に主に位置するリガンドの高親和性結合部位を直接ブロックし得ないことも示唆している。抗体は、共にリガンド結合に極めて重要な領域であるIg−様ループ1およびIg−様ループ2のために、リガンド結合に間接的に影響を与え得る(Wangら、Molecular Cell Biology、1993年、13巻、5348〜5359頁)。
【0458】
3つの抗体の内、クローン1.109は、1μg/mlのもとで他の2つ抗体と比べて最も高い結合シグナルを有する。競合データは、3つの抗体が、20倍過剰の未標識抗体を用いて互いにブロックできることを実証した(図13図14、および図15を参照)。競合データはまた、これら3つの抗体のエピトープが、Ig−様ループ1およびIg−様ループ2内で同様であるかまたは近接していることも示している。
【0459】
(実施例13)
市販の抗体に対比した抗c−fms抗体1.2SMのエピトープマッピング
この実験は、本明細書に開示する特定のヒト抗体が、いくつかの市販の抗体と同じであるかまたは異なるエピトープに結合するかを決定するために行った。
【0460】
材料および方法:試験した市販のC−fms抗体
試験したラット抗体およびマウス抗体を表21および表22に示す。
【0461】
【表21】
【0462】
【表22】
【0463】
c−fmsアビジン融合構築物およびアビジン融合タンパク質の発現
ヒトc−fmsアビジン融合発現構築物を、実施例12に記載したように調製した。アビジン融合タンパク質の発現は、10cm組織培養プレートでのヒト293T接着細胞の一過性のトランスフェクションによって達成した。1×Pen−strep−グルタミン(Invitrogen)、1×非必須アミノ酸(Invitrogen)および1×ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)(増殖培地)を補充した、5%の適格な(qualified) FBSを含むDMEM(高グルコース)中で37℃、5%COで細胞を増殖させ維持した。約2.5×10個の293T細胞を、増殖培地10mlを含む10cmプレートに接種し、一晩、約20時間増殖させた。次いで、細胞をpCEP4−アビジン(N)−c−fms構築物でトランスフェクトした。各トランスフェクションでは、DNA 7.5μgを、補充していないDMEM培地(Invitrogen)の存在下、FuGene6(Roche)45μlと混合し、この複合体を20分間インキュベートした。このトランスフェクション複合体を、対応するプレートに加え、37℃で一晩インキュベートした。翌朝、細胞を1×ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(Invitrogen)で2回洗浄し、上記の補充物に加えてインスリン、トランスフェリン、およびSelenium−X(ITS−X)(Invitrogen)を含む無血清DMEM 5mlを加えた。トランスフェクションの約48時間後、馴化培地を回収し、4℃で10分間、2000×gで遠心分離して細胞および細片を除去してから15ml管に移した。DNAを用いない点以外は同じプロトコルにしたがってコントロールプレート(偽トランスフェクション)も作製し、結合実験のための負のコントロール馴化培地を用意した。
【0464】
融合タンパク質の検出
各c−fmsアビジン融合タンパク質の濃度を、定量的FACSに基づくアッセイで決定した。アビジン融合タンパク質を、6.7μmビオチンポリスチレンビーズ(Spherotech,Inc.、Libertyville Ill.)に捕捉した。1×馴化培地(2、20、および200μl)を5μl(約3.5×10)のビーズに加え、回転させながら室温で1時間インキュベートした。馴化培地を遠心分離によって除去し、2%FBSを含むPBS(FPBS)で試料を洗浄した。アビジンビーズを、FPBS中の1.0μg/ml FITC標識ヤギ抗アビジン抗体(Vector Labs、Burlingame、CA)溶液500μlを用いて、回転させながら、室温で30分間、染色した。インキュベーション後、ビーズを遠心分離によって再収集し、FPBSで洗浄し、そして分析のためにFPBS0.5ml中で再懸濁した。FITC蛍光を、FACScan(Becton Dickinson Bioscience、Franklin Lakes、NJ)で検出した。このシグナルを、rAvidinから得た標準曲線を用いてタンパク質質量に変換した。エピトープマッピングのために、ビオチンビーズに、3.5×10ビーズ当たり約200ngのc−fmsアビジン融合タンパク質を負加して、FPBSで体積をあわせた。
【0465】
抗体結合FACSアッセイ
正規化した量のc−fmsサブドメイン融合タンパク質を負加したビオチン被覆ポリスチレンビーズ(Spherotech、Inc.)を、FPBS 0.2ml中の1μgのヒト抗c−fmsモノクローナル抗体(1.2)、マウス抗c−fmsモノクローナル抗体(MAB329、MAB3291、およびMAB3292[R&D Systems])、またはラット抗c−fmsモノクローナル抗体(2−4A5−2[Invitrogen]、O.N.178および5J15[U.S. Biological])いずれかと混合した。室温での1時間のインキュベーションの後、抗体−ビーズ複合体を、洗浄緩衝液(FPBS)1.25mlで3回洗浄し、洗浄と洗浄の間に18,000×gでの1分間の遠心分離によって収集した。次いで、抗体を、1.0μg/ml FITC(Southern Biotech)にコンジュゲートした種適正ヤギ2次抗体で30分間、染色した。洗浄ステップを繰り返して、抗体−ビーズ複合体を、分析のためにFPBS 0.5ml中に再懸濁した。アビジン−ビーズ複合体に結合した抗体を、FACS(Becton Dickinson)分析によって検出した。平均(X)蛍光強度を、各試料について記録した。
【0466】
抗体競合アッセイ
フルオレセインでの標識物を調製するために、モノクローナル抗体を、PBS(pH7.4)中に1mg/mlの濃度で透析または再懸濁した。Molecular Probes(F−2181)からの標識([6−フルオレセイン−5−(および6)−カルボキサミド]ヘキサン酸,スクシンイミジルエステル5(6)−SFX)混合異性体を、DMSO中の10mg/mlストックからのモル比10:1(標識物:タンパク質)となるようにタンパク質に加えた。この混合物を、暗い中で、室温で1時間インキュベートした。標識抗体を、PBS中でのNAP5カラムクロマトグラフィーによって遊離標識物から分離し、続いて0.2μm濾過を行った。各競合実験では、FPBS中の25倍過剰(25μg/ml)の未標識競合抗体、アビジン融合タンパク質で被覆された3.5×10ビオチンビーズを含む結合反応物を作製した。15分のプレインキュベーションの後、FITC標識抗体(1μg/ml)を加えた。この処理に続いて、この時点から単色法を行った。
【0467】
結果および考察
293T細胞で発現したすべての融合タンパク質を、FACScanによってFITC標識抗アビジン抗体で検出することができる。実施例12に記載したように、試験したいくつかの抗体が、Ig1〜2アビジン融合構築物で見られるIg−様ループ1領域およびIg−様ループ2領域の両方の存在を必要とする同様のエピトープに結合する。したがって、結合実験および競合実験は、本明細書で提供するヒト抗体、市販の抗ヒトc−fms抗体、およびアビジン融合構築物のパネルから選択したメンバーのうちの1つと共に行った。
【0468】
すべての市販の抗体は、予想通り、完全長c−fms ECD Ig1〜5構築物に首尾よく結合することができた。6つの市販の抗体の内、1つ(MAB3291)が、Ig1〜2構築物に結合することができ、ヒト抗c−fmsエピトープの潜在的な競合物であることを示唆した。さらなる結合実験を、Ig1構築物を用いて行った。MAB3291は、Ig1構築物に結合することが示され、そのエピトープがIg1−様ドメイン内に完全に位置していることを示唆した。Ig1−構築物およびIg1〜2−構築物中のMAB329に対して見られる微弱シグナルは、抗体のビーズに対するバックグラウンド結合であることが確認された。
【0469】
競合データは、市販の抗体はいずれも、たとえ25倍過剰の競合物抗体でも代表的なヒト抗体をブロックできないことを実証した。
【0470】
結合実験および競合実験からのデータの組合せは、市販の抗体が、ヒト抗c−fms抗体によって使用されていないエピトープに結合することを実証する。
【0471】
(実施例14)
c−fmsのアルギニン/グルタミン酸スキャニングによる抗C−fms抗体のエピトープマッピング
アルギニン/グルタミン酸−スキャニング法を用いて、c−fmsに対する抗体の結合をマッピングした。アルギニンおよびグルタミン酸の側鎖は、荷電していて大きく、c−fmsに対する抗体の結合を妨げることがある。したがって、この方法は、残基が、突然変異すると、抗原結合性タンパク質のc−fmsに対する結合に負の影響を与えることを示唆し得る。これは、非突然変異抗原結合性タンパク質における対応する残基が、抗原結合性タンパク質に接触することができるかまたは抗体に近接することができるため、アルギニンまたはグルタミン酸での置換が結合に影響を与えるのに十分であることを示唆する。
【0472】
アルギニン/グルタミン酸変異物の構築、発現、および特徴付け
c−fmsの初めの3つのIgドメイン中に分布する95個のアミノ酸を、変異のために選択した。この選択は、荷電アミノ酸または極性アミノ酸に偏っており、変異によって誤って折り畳まれたタンパク質になる可能性を低減するためにシステインおよびプロリンを除外した。アルギニンでないアミノ酸をアルギニンに変異させ;アルギニンおよびリシンをグルタミン酸に変異させた。
【0473】
変異残基を含むセンスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを96ウェルフォーマットで合成した。c−fms細胞外ドメイン−Flag−His−タグ化構築物(「野生型」)の変異誘発を、Quickchange IIキット(Stratagene、#200523)を用いて行った。pTT5ベクターにおけるFlag−His−tagged c−fmsのすべての変異体構築物を、96ウェルプレート内で一過性にトランスフェクトした293−6E懸濁細胞(NRCC)で発現させた。馴化培地中の組換えタンパク質の発現レベルおよび完全性を、His−タグに対するウエスタンブロットによっておよびこれに続く抗アイソタイプAlexa−fluor抗体によって特徴付けた。続いて、エピトープマッピング実験を、馴化培地中のタンパク質を用いて行った。
【0474】
変異体発現を、ePage SDS−PAGE電気泳動装置(Invitrogen)に対して各ウェルから上清を流すこと、ブロッティングすること、および抗His抗体(Novagen)およびこれに続く抗アイソタイプAlexa−fluor抗体でのプロービングによって特徴付けた。各変異体構築物を発現させた。
【0475】
高次構造エピトープの決定
抗c−fms抗体が、c−fms上の高次構造エピトープに結合するか否かを決定するために、3種類の抗c−fms抗体(1.2SM、1.109SM、および2.360)およびc−fmsを個々に、還元および非還元の条件下でウエスタンブロットにかけた。抗体1.2SMおよび抗体2.360は、還元条件下でのウエスタンブロットにおけるバンドの欠如によって証明されているように高次構造エピトープに結合することが示された一方で、抗体1.109SMでは、薄いバンドが観察され、抗体1.109SMが線形エピトープに結合し得ることを示唆した。
【0476】
BioPlex結合アッセイ
ビーズを用いたマルチプレックスアッセイを用いて、95c−fms変異体、野生型、および陰性コントロールに結合する抗体を同時に測定した。100セットの色分けされたストレパビジン被覆LumAvidinビーズ(Luminex)を、室温(RT)で1時間、ビオチン化抗pentaHis抗体(Qiagen、#1019225)に結合させてから洗浄した。次いで、それぞれの色分けされたビーズセットを、上清100μl中のc−fms変異体、野生型、または陰性コントロールに室温で1時間結合させてから洗浄した。
【0477】
それぞれが特定のタンパク質に結合した色分けされたビーズセットをプールした。プールしたビーズは、96ウェルフィルタープレート(Millipore、#MSBVN1250)の96ウェルに分注した。3倍希釈物の抗c−fms抗体(1.2SM、1.109SM、および2.360)100μlを3連の目的のために3つのカラムに加え、室温で1時間インキュベートしてから洗浄した。1:200に希釈したフィコエリトリン(PE)−コンジュゲート抗ヒトIgG Fc(Jackson Immunoresearch、#109−116−170)100μlを各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートしてから洗浄した。
【0478】
ビーズを、PBS中の1%BSA中に再懸濁し、10分間振盪し、BioPlex装置(Bio−Rad)で読み取った。この装置は、各ビーズをその色分けによって識別し、PE染料の蛍光強度にしたがってビーズに結合した抗体の量を測定した。各変異体に結合する抗体を、同じプール内の野生型に結合する抗体と直接比較した。
【0479】
変異体c−fmsに結合する抗体の同定
アッセイ系の可変性および結合における変化の有意性を経験的に決定した。ビーズとビーズおよびウェルとウェルの可変性を、100セットすべての色分けされたビーズに対する野生型c−fmsの結合によって実験に基づいて決定した。ビーズを、96ウェルプレートの各ウェルに分注し、プレートの各カラムを下ってプレートの全12カラムにわたり3倍希釈物の抗c−fms抗体1.2SMで探査した。最大シグナル、最小シグナル、および勾配の可変性を測定することからの曲線フィットを用いてEC50を導いた。可変性測定値を用いて、EC50における大きさの変動が有意であるか否かを決定した。
【0480】
抗体結合の平均蛍光強度(MFI)を、重み付け4パラメータロジスティカル曲線フィット(SplusでのVarPower付き4PL)を用いてグラフにした。実験の可変性を、各プールの3つの野生型コントロールを用いて決定した。突然変異体抗原に結合する抗体を、各野生型コントロールと比較した。突然変異体と各野生型コントロールとの間のEC50倍数変化の99%信頼区間(CI)を計算し、野生型コントロールに対する比較により、より大きいp値が報告された。Benjamini−Hochberg False Discovery Rate(FDR)コントロールを用いた多数回の調整を加えた。EC50の99%CIが野生型のEC50とは有意差がある変異、すなわち0.02以下のFDR調整p値を有する変異は、タンパク質抗原と抗原結合性タンパク質との間の特異的な結合反応に重要であるとみなされた。加えて、野生型の最大MFIシグナルの30%以下への低下によって証明されるような結合を低下させた突然変異は、タンパク質抗原と抗原結合性タンパク質との間の結合に有意に影響を与えるとみなされた。表23は、1.2SM抗体、1.109抗体、および2.36抗体のヒトc−fmsの細胞外ドメインに結合する能力を有意に低下させる「ヒット」または突然変異の位置をまとめている。表23に用いた表記法は:(野生型残基:ポリペプチドにおける位置:突然変異体残基)であり、数字の付け方は、配列番号1に示す通りである。
【0481】
【表23】
【0482】
少なくとも1つの抗体の結合が、表23に示す特定の突然変異の存在下で維持されるため、変異体タンパク質が、導入された突然変異によって著しく誤って折り畳まれるかまたは凝集する可能性は低い。これはまた、それでも抗体が抗原に結合できるため、すべての抗体に対してEC50の変動を引き起こしたそれらの突然変異に対しても当てはまる。試験した抗体のそれぞれが、ビニング(binning)分析によって示されるように同様の領域に結合するが、各抗体は、抗体の突然変異体抗原に対する結合を阻害する突然変異によって区別することができる。複数の抗体に影響を及ぼす一部の突然変異は、抗体が同様のビンに属するという事実に一致している。
【0483】
(実施例15)
MDAMB231乳房腺癌異種移植片の成長の阻害
本明細書で提供する抗原結合性タンパク質は、ヒトc−fmsに結合するがマウスc−fmsには結合しないため、抗cfms抗体が癌を治療するのに有用であること実証するためにマウスc−fmsに結合する抗体で一連のin vivo実験を行った。
【0484】
無胸腺ヌードマウスに、Matrigel(1:1)の存在下、10,000,000個のMDAMB231ヒト乳房腺癌細胞を皮下移植した。腫瘍細胞移植の1日目の内に開始し、研究の期間中、1週間に3回、PBS 100μl中の抗マウスc−fms抗体400μgまたはコントロールラット抗マウスIgG 400μgのいずれかをマウスに腹膜内注射した。腫瘍の測定および治療の日を図16に示す。51日後、マウスを安楽死させ、腫瘍を収集し、ホルマリン固定した。H&E染色切片およびF4/80(マクロファージマーカー)標的化免疫組織化学切片を評価した。すべてのスコアリングは、処理および群が見えないようにして行った。抗マウスc−fms抗体で処置したマウスからの切片は、コントロールで処置したマウスよりも有意に少ない染色性を示し、腫瘍関連マクロファージの数の有意な減少を示唆した。より客観的に壊死の範囲を評価するために、AFOG染色切片デジタル画像を、Metavueソフトウエアでキャプチャし、腫瘍の全体の断面積および壊死断面積を測定した。次いで、各腫瘍の壊死率を、これらの測定値から算出し、図16に示す。これらの結果は、抗c−fms抗体が、腫瘍関連マクロファージを減少させ、壊死を増大させ、そしてMDAMB231乳房腺癌異種移植片の成長を阻害できることを実証している。
【0485】
(実施例16)
樹立NCIH1975肺腺癌異種移植片の成長の阻害
無胸腺ヌードマウスに、Matrigel(1:1)の存在下、10,000,000個のNCIH1975ヒト肺腺癌細胞を皮下移植した。腫瘍を250〜300mmになるまで成長させてから、研究の期間中、1週間に3回、PBS 100μl中の抗マウスc−fms抗体400μgまたはコントロールラット抗マウスIgG 400μgのいずれかをマウスに腹膜内注射した。第3群のマウスを、1週間に1回、30mg/kg タキソテール(陽性コントロール)で処置した。腫瘍の測定値および処置の日を、抗c−fms抗体が樹立NCIH1975肺腺癌異種移植片の成長を阻害できることを示す図17に示す。
【0486】
上記の腫瘍モデルは、癌の治療における使用に対して、本明細書に開示するようなCSF−1/cfms軸の活性を阻害する抗c−fms抗体の有用性を実証している。病変組織内へのマクロファージの浸潤を減少させるこのような抗体の能力は、このような抗体を代謝疾患および炎症の疾患にも用いることができることを意味する。
【0487】
(実施例17)
コントロール新脈管形成に対するCSF−1/CSF−1Rの相互作用の調節
CSF−1に媒介されるマクロファージの動員、分化、および刺激が、腫瘍または他の正常組織における新脈管形成の促進に関与し得るか否かを試験するために、2つの異なる中和ラット抗マウスCSF−1Rモノクローナル抗体(M279は内部で産生;もう一方のFS98は、Ebiosciencesから得た)を、in vivoでのマウス角膜新脈管形成に対するこれらの抗体の影響について評価した。コントロールmAb、M279、またはAFS98の1回の全身投与後の5日目に、次のパラメータ:1)マウス角膜新脈管形成応答に関連した血管密度、2)マウスCSF−1の循環濃度、および3)角膜および他の組織内へのマクロファージの浸潤レベルを測定し分析した。
【0488】
マウス角膜ポケットアッセイ
4mm PVAスポンジ(M−PACT Worldwide、Eudora、KS)を正確に二等分し、組換えヒトFGF−2 2.4μgまたは組換えヒトVEGF(R&D Systems、Minneapolis、MN)48μgを含むPBS 8μlに浸漬した。このスポンジを、角膜ポケット移植に適した48個の同様の大きさのミニスポンジ片(ペレット)にさらに無菌的に(asceptically)分割した。各スポンジ片は、組換えヒトFGF−2約50ngまたは組換えヒトVEGF 1μgを含んでいた。雌C57BL/6マウス(7〜10週齢)を全身麻酔で麻酔をかけて、それぞれの眼にプロパラカイン局所麻酔薬を1滴投与して眼を角膜切開に備えた。角膜の中間に細いスリット形成し、角膜輪部から約1mmの眼の曲率にしたがった角膜実質に開口(「ポケット」)を形成した。PBS、VEGF、またはFGF−2を含むペレットを、角膜ポケット内におき、動物を、発熱物質を含まないPBS 200μl中の250μgの用量のラットIgG(Sigma、St.Louis、MO)IPまたは精製ラット抗マウスCSF−1R 250μgのいずれかで処置した。ペレット移植後の5日目に、マウスを全身麻酔で麻酔をかけて、それぞれの眼(角膜)を、ペレットを含む経線の極軸から45度の初期角の近距離垂直照明を取り付けたInsight Spotデジタルカメラを取り付けた実体顕微鏡下で画像化した。これらの取得したデジタル画像を、減算カラーフィルター(Adobe Photoshop)で処理し、Bioquant画像解析ソフトウエア(Nashville、TN)で分析して、可視毛細血管に一致する閾値を超えた角膜周辺の全密度の範囲内のピクセルの割合を決定した。角膜の全血管密度を、ピクセルの割合を用いて決定し、この結果を、眼全体の領域のピクセル数に対する血管領域のピクセル数の比として表した。
【0489】
マウスCSF−1 ELISA
マウスCSF−1の血清レベルを、製造業者の取扱説明書にしたがって、DUOSET抗体ELISAシステム(R&D systems)を用いて抗CSF−1R抗体の活性のバイオマーカーとして決定した。
【0490】
マウスの肝組織および角膜組織におけるマクロファージおよび血管の免疫局在性
組織におけるマクロファージおよび血管のレベルに対する抗マウスCSF−1R抗体の影響を決定するために、Alexa488、クローンBM8にコンジュゲートしたラット抗マウスF4/80(マクロファージが制限された細胞表面糖タンパク質)(1:1000)を用いて組織マクロファージを検出した。PE、クローン390がコンジュゲートしたCD31、ラット抗マウスPECAM−1 IgG2a(1μg/ml使用)を用いて、内皮細胞を検出した。組織を回収した後、この組織をさらなる処理のためにOCT内で凍結させた。肝臓または角膜のいずれかの5ミクロンの切片を、冷アセトンで、室温で15分間固定してから、PBSで2回洗浄した。洗浄後、切片をブロッキング溶液(BS)で、室温で30分間インキュベートした。F4/80−488およびCD31−PEの両方を、上記濃度でBSに加え、切片を室温で30分間インキュベートし、次いでPBSで2回洗浄した。スライドを封入剤の中に封入して、Leica−Hamamutsu−Openlabシステムで蛍光画像を取得した。
【0491】
結果および結論:
ラット抗muCSF−1R中和抗体、M279、およびAFS98は、VEGFではなくFGF−2誘発マウス角膜新脈管形成を約80%、有意に阻害した(P<0.01)。M279またはAFS98 250μgの1回投与により、ラットIgG処理マウスで観察されたレベルに比べて、muCSF−1血清レベルが有意に上昇した(45〜83倍の上昇)。免疫蛍光染色/局在化(IMF)により、マウス角膜切片は、FGF−2およびVEGFのペレット移植が、外科/PBSペレット移植のみに比べて、角膜におけるマクロファージの浸潤を増加させることを示した。M279処理により、コントロールラットIgG処置に比べて、刺激剤誘発(FGF−2およびVEGFの両方)角膜マクロファージ浸潤が約85〜96%、大幅に減少した。IMFにより、マウス肝切片は、M279またはAFS98での1回の処置が、マウス肝臓におけるF4/80陽性マクロファージの数を約60%、有意に減少させたが、CD31IMFによる評価では血管密度を明確には変更しなかったことも示した(P<0.01)。マクロファージは、血管ネットワークに付随するが、一般に、血管化したマウス角膜における微小血管に共局在しない。
【0492】
両方の脈管形成刺激(FGF−2およびVEGF)を評価すると、CSF−1/CSF−1R相互作用のブロッキングにより、組織に対するマクロファージの浸潤が減少したが、角膜血管密度画像処理に基づくとFGF−2新脈管形成のみが阻害された。これらの結果に基づき、CSF−1応答性組織マクロファージが新脈管形成を助長/促進できる場合は炎症環境が指示するのは明らかであるが、同時に、複数の炎症部位における組織マクロファージが、炎症病変でのその存在を維持するために進行中のCSF−1/CSF−1R相互作用を必要とすることを例証している。これらの結果は、炎症性新脈管形成が主にFGF−2によって駆動される場合、CSF−1/CSF−1R相互作用を阻害することが、特に、VEGFレベルが高くはないが腫瘍血管密度が高い腫瘍では、新血管形成の低減に役立ち得ることを示している。
【0493】
(実施例18)
カニクイザルでの毒性試験
カニクイザルに1.2SM抗体を投与して、薬力学的(pharmocodynamic)マーカーを測定した。c−fms抗原結合性タンパク質の影響を試験するために用いたコホートを表24に示す。4週間の間、カニクイザルに抗体1.2SMを毎週静脈内投与し、続く11週間を回復期とし、29日目に末期剖検をし、3ヶ月で回復期剖検をした。血清CSF−1レベル、酒石酸塩(Tartrate)耐性酸性ホスファターゼ5b(Trap5b)濃度、および結腸マクロファージの量を含む薬力学的マーカーを測定した。より詳細に後述するように、これらの各マーカーの測定は、c−fmsに結合し、かつc−fms/CSF−1軸を阻害する抗体の能力を実証した。マーカーのレベルはまた、血中の抗体のレベルに相関していた。
【0494】
【表24】
【0495】
抗体1.2SMでの処置に対する血清CSF−1レベルの応答
血清CSF−1レベルは、抗c−fms抗体の存在および活性のバイオマーカーとなる。これは、マウスにおける125I標識CSF−1のマクロファージによる選択的分解(Tushinski RJら、Cell、(1982年)、28巻、71〜81頁);c−fmsノックアウトマウスの血清中でCSF−1が上昇するという観察(Dai XMら、Blood、(2002年)、99巻、111〜120頁);および抗マウスc−fms抗体で処置したマウスで血清CSF−1レベルが上昇するという実証によって証明されている。
【0496】
カニクイザルCSF−1の相対濃度を、−7日目、8日目、29日目、57日目、85日目、および99日目に収集した血清標本に対して決定した。試料を、アッセイ製造業者(R&D Systems ヒトCSF−1 DuoSet ELISAキット;Minneapolis、MN)によって提供されたプロトコルにしたがって、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で分析した。カニクイザルCSF−1濃度を、ヒトCSF−1標準曲線に対する比較によって決定した。
【0497】
血清抗体1.2SMの濃度を測定するために、マウス抗1.2SM抗体を、Maxisorpマイクロプレートウェル(Nunc)に受動的に吸着させた。過剰なマウス抗1.2SM抗体を除去した後、マイクロプレートウェルをSuperBlock(登録商標)T20(Pierce、Rockford、IL)でブロックした。標準品および品質コントロール品(QC)を、抗体1.2SMを100%カニクイザル血清プールにスパイクすることによって調製した。ブロッキング後にマイクロプレートウェルを洗浄した。標準品、基質ブランク(NSB)、QC、および研究試料を、周囲室温で解凍し、次いでSuperBlock(登録商標)T20を用いて1/50の前処置してから、これらをマイクロプレートウェルに添加した。試料中の抗体1.2SMを、固定化されたマウス抗1.2SM抗体によって捕捉した。結合していない抗体1.2SMを、マイクロプレートウェルを洗浄することによって除去した。洗浄後、第2の西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートマウス抗1.2SM抗体をマイクロプレートウェルに加えて、捕捉した抗体1.2SMと結合させた。結合していないHRPコンジュゲート抗体を洗浄によって除去した。2成分3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液をウェルに加えた。TMB基質溶液は、過酸化物と反応し、HRPの存在下、最初のステップでの捕捉試薬によって結合された抗体1.2SMの量に比例した比色シグナルを生成した。色の生成を停止してから色の強度(光学密度、OD)を650nmに対して450nmで測定した。データを、重み付け因子が1/Yであるロジスティック(自動推定)(4パラメータロジスティック;4−PL)回帰モデルを用いるWatsonバージョン7.0.0.01圧縮パッケージで圧縮した。
【0498】
抗体1.2SMでのサルの処置により、血清CSF−1レベルが有意に上昇し、この上昇が、抗体血清濃度に相関していた。したがって、CSF−1血清レベルは、抗体の投与および血清中でのその蓄積の後に上昇し、投与が完了して血清抗体レベルが低下した後に低下することが分かった。これらの観察は、c−fms/CSF−1軸に作用する抗体に一致している。
【0499】
抗体1.2SMでの処置に対するTrap5bレベルの応答
Trap5bレベルは、抗c−fms抗体のマーカーとなる。Trap5bは、破骨細胞によって特異的に発現され、破骨細胞数の指標である。破骨細胞は、造血細胞の骨髄細胞系統に由来し、c−fmsを発現しCSF−1を利用する。これは、CSF−1の減少により、CSF−1ノックアウト(op/op)マウス(Dai XMら、Blood、(2002年)、99巻、111〜120頁)における破骨細胞およびTrap5bのレベルが低下するという観察に一致する。
【0500】
BoneTRAP(登録商標)アッセイ(Immunodiagnostic Systems Limited、Fountain Hills、AZ)を用いて、被検体におけるTRAP5bを定量した。抗体1.2SM血清濃度を、上記したように決定した。血清中のTRAP5bおよび抗体1.2SMのレベルを、−7日目、8日目、29日目、57日目、85日目、および99日目に収集した血清標本について決定した。
【0501】
投薬段階の29日目に、1.2SM抗体で処置したすべての被検体は、Trap5bが減少していた。抗体1.2SMで処置した後、血清中のTrap5b濃度は、血清中の抗体濃度が低下するにつれて上昇した。抗体1.2SMでの処置は、血清中のTrap5bの濃度の低下に相関していた。
【0502】
抗体1.2SMでの処置に対するマクロファージの応答
カニクイザルにおける抗体1.2SMの活性の別の指標として、結腸組織に存在するマクロファージの数を、CD−68染色組織のレーザースキャニングサイトメトリー(LSC)によって定量した。結腸試料を、29日目の剖検で3匹の動物/性別/群から収集し、100日目の剖検で2匹の動物/性別/群から収集した。各組織の試料を、OCT(最適切断温度)培地(Sakura Finetek、Torrance、California)で収集し、ドライアイス/ブタン槽中で冷凍した。マクロファージを、抗CD68またはアイソタイプ抗体を用いる従来の免疫組織化学を用いて染色した。ジアミノベンジジン(DAB)陽性事象を、レーザースキャニングサイトメトリー(LSC)を用いて計数した。レーザー光の吸収をステージの上方のフォトダイオード検出器によって定量する2スキャン法を用いた。初めの低解像度パスは、スライド上の切片の位置を特定し、続く高解像度パスは、視野画像を取得した。DAB染色の定量分析を、LSC関連iCyteソフトウエアを用いて行った。
【0503】
表25は、処置直後(29日目)および続く抗体1.2SMをもはや投与しない回復期(99日目)における結腸マクロファージの数の変化を要約している。この表から分かるように、抗体1.2SMを投与すると結腸マクロファージの数が減少し、処置を中止するとマクロファージの数が増加しており、従ってこれは抗体の活性を実証している。
【0504】
【表25】
【0505】
(実施例19)
c−fms結合性タンパク質を用いた患者における腫瘍の処置
ヒト患者を、悪性腫瘍について診断する。患者を、本明細書に記載される、有効量のc−fms結合性タンパク質で治療する。c−fms結合性タンパク質の投与の後、腫瘍の大きさおよび/または代謝活性を(例えば、MRIまたはPETスキャンによって)測定する。腫瘍の成長、生存力、および転移の大きさおよび/または代謝活性または他の指標の有意な低下が、c−fms結合性タンパク質の投与に応じて見られる。
【0506】
(実施例20)
c−fms結合性タンパク質を用いた悪性腫瘍の患者におけるTAMの減少
ヒト患者を、悪性腫瘍について診断する。患者を、本明細書に記載される、有効量のc−fms結合性タンパク質で治療する。c−fms結合性タンパク質の投与の後、TAMsの数を測定する。TAMの数の有意な低下が、c−fms結合性タンパク質の投与に応じて見られる。
【0507】
(実施例21)
c−fms結合性タンパク質を用いた悪液質の治療
ヒト患者を、癌について診断する。患者を、本明細書に記載される、有効量のc−fms結合性タンパク質で治療する。c−fms結合性タンパク質の投与の後、悪液質のレベルを評価する。悪液質のレベルの有意な低下が、c−fms結合性タンパク質の投与に応じて見られる。
【0508】
(実施例22)
c−fms結合性タンパク質を用いた血管形成の減少
ヒト患者を、悪性腫瘍について診断する。患者を、本明細書に記載される、有効量のc−fms結合性タンパク質で治療する。c−fms結合性タンパク質の投与の後、腫瘍の生検を行い、血管形成のレベルを評価する。腫瘍血管形成のレベルおよび/または機能の有意な低下が、c−fms結合性タンパク質の投与に応じて見られる。
【0509】
(実施例23)
c−fms結合性タンパク質を用いた炎症性関節炎の治療
ヒト患者を、炎症性関節炎について診断する。患者を、本明細書に記載される、有効量のc−fms結合性タンパク質で治療する。c−fms結合性タンパク質の投与の後、炎症のレベルおよび/または骨密度のレベルを評価した。炎症のレベルおよび/または骨の骨溶解のレベルの有意な減少が、c−fms結合性タンパク質の投与に応じて見られる。
【0510】
記載したすべての特許文献および他の刊行物は、例えば、本記載に関連して用いることができるこのような刊行物に記載されている方法論などの記載および開示のために、参照により本明細書に明らかに組み込まれる。これらの刊行物は、もっぱら本出願の出願日前のこれらの開示のために提供されたものである。これに関して、発明者が、前の発明によってまたは他のあらゆる理由によってこのような開示をそれ以前の日付に設定する権利がないことを認めるとして解釈されるべきではない。これらの文献の内容についての表現または日付についてのすべての文書は、出願者が入手できる情報に基づいたものであり、これらの文献の日付または内容の正確さについて一切保障するものではない。
図1A-1】
図1A-2】
図1B-1】
図1B-2】
図2
図3
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図8
図9
図10
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図16
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]