(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189282
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】改良された高エネルギー点火火花点火器
(51)【国際特許分類】
F23Q 3/00 20060101AFI20170821BHJP
H01T 13/20 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
F23Q3/00 615B
F23Q3/00 Z
!H01T13/20 B
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-262128(P2014-262128)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-129628(P2015-129628A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2015年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/920,812
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/566,551
(32)【優先日】2014年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500352889
【氏名又は名称】ジョン ジンク カンパニー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ストロング、 アンドリュー エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ケリー、 ユーウェン エム.
【審査官】
横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02689556(US,A)
【文献】
米国特許第02640473(US,A)
【文献】
米国特許第02859370(US,A)
【文献】
特開昭61−032978(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第00536460(GB,A)
【文献】
米国特許第02129576(US,A)
【文献】
特開昭53−131340(JP,A)
【文献】
米国特許第06414419(US,B1)
【文献】
英国特許出願公開第02219626(GB,A)
【文献】
特開2007−250257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 3/00
H01T 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火器であって、
外表面を有する本体を形成するように構成された複数の電極と絶縁体とを備え、
前記複数の電極が、
内表面と端部とを有する中心電極であって、前記中心電極の少なくとも一部が前記本体の外表面の少なくとも一部を形成する中心電極と、
内表面と端部とを有するシェル電極であって、前記シェル電極の少なくとも一部が前記本体の外表面の少なくとも一部を形成するシェル電極と
を含み、
前記絶縁体が前記中心電極と前記シェル電極との間にあり、前記絶縁体の少なくとも一部分が前記中心電極と前記シェル電極によって非被覆であり、
前記絶縁体の非被覆部分から前記本体の外表面の前記少なくとも一部のうちの最外表面まで前記中心電極の軸方向にスパークギャップが規定されており、
前記スパークギャップの前記軸方向の深さは、前記本体の外表面周長の1.35%から8%である、火花点火器。
【請求項2】
前記絶縁体の面取り部が、前記絶縁体の非被覆部分に隣接しており、
前記絶縁体の面取り部は、前記中心電極の内表面の面取り部と前記シェル電極の内表面の面取り部と合わさっている、請求項1に記載の火花点火器。
【請求項3】
前記スパークギャップの前記軸方向の深さは、前記スパークギャップに隣接する前記シェル電極の内表面の周長の5%以下である、請求項1に記載の火花点火器。
【請求項4】
前記端部の少なくとも一方の少なくとも一部は、前記絶縁体と接触しない、請求項1に記載の火花点火器。
【請求項5】
火花点火器であって、
外表面を有する本体を形成するように構成された複数の電極と絶縁体とを備え、
前記複数の電極が、
内表面と端部とを有する中心電極であって、前記中心電極の少なくとも一部が前記本体の外表面の少なくとも一部を形成する中心電極と、
内表面と端部とを有するシェル電極であって、前記シェル電極の少なくとも一部が前記本体の外表面の少なくとも一部を形成するシェル電極と
を含み、
前記絶縁体が前記中心電極と前記シェル電極との間にあり、前記絶縁体の少なくとも一部分が前記中心電極と前記シェル電極によって非被覆であり、
前記絶縁体の非被覆部分の少なくとも第1領域に半導体がなく、前記絶縁体の非被覆部分の少なくとも第2領域が半導体材料を有するように、半導体材料が前記絶縁体の非被覆部分に部分的に貼り付けられており、
前記絶縁体の非被覆部分から前記本体の前記少なくとも一部の外表面のうちの最外表面まで前記中心電極の軸方向にスパークギャップが規定されており、
前記スパークギャップの前記軸方向の深さは、前記本体の外表面周長の1.35%から8%である、火花点火器。
【請求項6】
前記半導体材料が縞状に貼り付けられている、請求項5に記載の火花点火器。
【請求項7】
前記スパークギャップに隣接する前記中心電極の第1縁部と前記スパークギャップに隣接する前記シェル電極の第2縁部との少なくとも一方が、不均一な幾何学的形状を有する、請求項6に記載の火花点火器。
【請求項8】
前記第1縁部と前記第2縁部の少なくとも一方が、星形、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、及び十角形からなる群のうちのいずれか1つを含む不均一な幾何学的形状を有する、請求項7に記載の火花点火器。
【請求項9】
前記絶縁体の面取り部が、前記絶縁体の非被覆部分に隣接しており、
前記絶縁体の面取り部は、前記中心電極の内表面の面取り部と前記シェル電極の内表面の面取り部と合わさっている、請求項6に記載の火花点火器。
【請求項10】
火花点火器であって、
外表面を有する本体を形成するように構成された複数の電極と絶縁体とを備え、
前記複数の電極が、
内表面と端部とを有する中心電極であって、前記中心電極の少なくとも一部が前記本体の外表面の少なくとも一部を形成する中心電極と、
内表面と端部とを有するシェル電極であって、前記シェル電極の少なくとも一部が前記本体の外表面の少なくとも一部を形成するシェル電極と
を含み、
前記絶縁体が前記中心電極と前記シェル電極との間にあり、前記絶縁体の少なくとも一部分が前記中心電極と前記シェル電極によって非被覆であり、
前記絶縁体の非被覆部分から前記本体の外表面の前記少なくとも一部のうちの最外表面まで前記中心電極の軸方向にスパークギャップが規定されており、
前記スパークギャップの前記軸方向の深さは、前記本体の外表面周長の1.35%から8%であり、
前記スパークギャップに隣接する前記中心電極の第1縁部と前記スパークギャップに隣接する前記シェル電極の第2縁部との少なくとも一方が、星形、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、及び十角形からなる群のうちのいずれか1つを含む不均一な幾何学的形状を有する、火花点火器。
【請求項11】
前記第1縁部が、前記不均一な幾何学的形状を有する、請求項10に記載のスパークギャップ点火器。
【請求項12】
前記第2縁部が、前記不均一な幾何学的形状を有する、請求項10に記載のスパークギャップ点火器。
【請求項13】
前記第1縁部と前記第2縁部の少なくとも一方の一部は、前記絶縁体と接触しないようになっている、請求項10に記載の火花点火器。
【請求項14】
半導体材料が前記絶縁体の非被覆部分に貼り付けられており、
前記半導体は、前記絶縁体の非被覆部分の不均一な被覆を有する、請求項10に記載の火花点火器。
【請求項15】
前記半導体材料は、前記絶縁体の非被覆部分の少なくとも一部の領域に半導体材料がないように、縞状に貼り付けられている、請求項14に記載の火花点火器。
【請求項16】
前記スパークギャップの前記軸方向の深さは、前記スパークギャップに隣接する前記シェル電極の内表面の周長の5%以下である、請求項10に記載の火花点火器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、点火システムに関するものであり、より詳細にはバーナーおよびバーナーパイロット用の火花点火器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は2013年12月26日に出願された米国仮出願第61/920812号の利益を主張し、上記仮出願は参照により本明細書に含まれるものとする。
【0003】
ガスバーナーパイロットは、(メインバーナーと比較して)低流量のガス状燃料空気混合気の燃焼によって安定したパイロット火炎を作り出すために使用される装置である。パイロット火炎は、より大きなメインバーナーまたは点火し難い燃料を点火するのに使用される。ガスパイロットの設計は、通常、点火システムを含む。ガスバーナーパイロットおよびフレアシステムのような他のバーナーシステムに使用される点火システムの一般的なタイプは、高エネルギー点火(HEI)システムである。
【0004】
HEIシステムは、冷たく、濡れ、汚れ、汚染された点火プラグ、または他の不利なバーナー起動条件において軽質燃料または重質燃料を確実に点火する能力ゆえに業界で使用されている。HEIシステムは通常、特殊な火花(電気アーク)点火器に大電流パルスを渡すために、容量放電型エキサイタを利用する。これらのシステムは、典型的には1Jから20Jの範囲の容量性貯蔵エネルギーを特徴とし、発生する大きな電流インパルスは、多くの場合1kAより大きい。HEIシステムの(スパークプラグ、スパークロッド又は点火プローブとしても知られる)火花点火器は、一般的に絶縁体に囲まれた円筒形の中心電極と、絶縁体を覆う外側導電シェルとを用いて、スパークロッドの軸方向を向いた火花端部において中心電極と外側導電シェルとの間の絶縁体の表面に環状リングのエアギャップが形成されるように構成されている。スパークギャップとも呼ばれるこのエアギャップにおいて、HEIスパークが中心電極と外側導電シェルとの間に電流を流すことができる。多くの場合、スパーク発生を容易にするために、このギャップにおいて絶縁材料に半導体材料が貼り付けられる。一般的には、HEIシステムの火花エネルギーは、適切な燃料空気比及び混合だとすると、所与の燃料の必要な最小点火エネルギーよりもかなり大きい。この余分なエネルギーは、点火システムが、上述した不利なバーナー起動条件により影響を受けることが少ない強力なスパークを作り出すことを可能にする。
【0005】
コスト及びサイズの考慮から、HEIシステムの出力エネルギーを最小にすることが望ましいが、出力エネルギーが減少するにつれて、不利なバーナー起動条件でスパークを作り出すことはますます困難になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態によれば、外表面を有する本体を形成するように構成された複数の電極と絶縁体とを備える火花点火器が提供される。複数の電極は中心電極とシェル電極とを含む。中心電極は内表面と端部とを有し、中心電極の少なくとも一部が本体の外表面の少なくとも一部を形成する。
【0007】
シェル電極もまた内表面と端部とを有し、シェル電極の少なくとも一部が本体の外表面の少なくとも一部を形成する。絶縁体は中心電極とシェル電極との間にあり、絶縁体の少なくとも一部分は中心電極とシェル電極とによって非被覆である。絶縁体の面取り部が、絶縁体の非被覆部分に隣接している。この面取り部は、中心電極の第1縁部とシェル電極の第2縁部からスパークギャップが形成されるように中心電極とシェル電極が配置され且つ互いから電気的に絶縁されるように、中心電極の内表面の面取り部およびシェル電極の内表面の面取り部と合わさる。
【0008】
本開示の別の実施形態によれば、外表面を有する本体を形成するように構成された複数の電極と絶縁体とを備える火花点火器が提供される。複数の電極は中心電極とシェル電極とを含む。中心電極は内表面と端部とを有し、中心電極の少なくとも一部が本体の外表面の少なくとも一部を形成する。シェル電極もまた内表面と端部とを有し、シェル電極の少なくとも一部が本体の外表面の少なくとも一部を形成する。絶縁体は中心電極とシェル電極との間にあり、中心電極の第1縁部とシェル電極の第2縁部からスパークギャップが形成されるように中心電極とシェル電極が配置され且つ互いに電気的に絶縁されるように、絶縁体の少なくとも一部分は中心電極とシェル電極によって非被覆である。スパークギャップの第1縁部及び第2縁部の少なくとも一方は不均一な幾何学的形状を有している。
【0009】
本開示のさらに別の実施形態によれば、外表面を有する本体を形成するように構成された複数の電極と絶縁体とを含む火花点火器がある。複数の電極は中心電極とシェル電極とを含む。中心電極は内表面と端部とを有し、中心電極の少なくとも一部が本体の外表面の少なくとも一部を形成する。シェル電極もまた内表面と端部とを有し、シェル電極の少なくとも一部が本体の外表面の少なくとも一部を形成する。絶縁体は中心電極とシェル電極との間にあり、中心電極の第1縁部とシェル電極の第2縁部からスパークギャップが形成されるように中心電極とシェル電極が配置され且つ互いに電気的に絶縁されるように、絶縁体の少なくとも一部分は中心電極とシェル電極によって非被覆である。スパークギャップの深さは絶縁体の非被覆部分から本体の外表面へと測定され、前記深さは本体の外表面周長の8%未満である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】従来技術の軸方向に向けられた火花点火器の斜視図を示す。
【
図1B】従来技術の軸方向に向けられた火花点火器の断面図を示す。
【
図2A】本開示の特定の実施形態に従って使用することができる軸方向に向けられた火花点火器の斜視図を示す。
【
図2B】本開示の特定の実施形態に従って使用することができる軸方向に向けられた火花点火器の断面図を示す。
【
図3A】径方向に向けられた火花点火器の斜視図を示す。
【
図3B】径方向に向けられた火花点火器の断面図を示す。
【
図4A】本開示の特定の実施形態に従って使用することができる径方向に向けられた火花点火器の斜視図を示す。
【
図4B】本開示の特定の実施形態に従って使用することができる径方向に向けられた火花点火器の断面図を示す。
【
図5A】径方向に向けられた火花点火器を比較する図である。
【
図5B】径方向に向けられた火花点火器の実施例を比較する図である。
【
図6A】一実施形態による不均一な電極シェル形状を有する軸方向に向けられた火花点火器の一実施例を示す図である。
【
図6B】別の実施形態による不均一な中心電極形状を有する軸方向に向けられた火花点火器の一実施例を示す図である。
【
図7A】不均一な中心電極形状を有する軸方向に向けられた火花点火器の構成を示す。
【
図7B】不均一な中心電極形状を有する軸方向に向けられた火花点火器の構成を示す。
【
図8A】不均一な電極形状を有する径方向に向けられた火花点火器の斜視図を示す。
【
図8B】不均一な電極形状を有する径方向に向けられた火花点火器の側面図を示す。
【
図9A】縞状のまたは部分的な半導体形状を有する軸方向に向けられた火花点火器の一実施例を示す図である。
【
図9B】縞状のまたは部分的な半導体形状を有する径方向に向けられた火花点火器の一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明および図面は、燃料と空気の混合物を供給するメインバーナーを有する炉で使用されるタイプの火花点火器を示す。本開示は、炉のための火花点火器の文脈で説明されているが、当然のことながら、本明細書に開示される火花点火器は、燃料の点火システムとしてより広く適用可能であり、他のシステムに適用することができる。
【0012】
HEIシステムがその出力電圧を不変に維持し且つ不利な条件でその性能上の利点を維持し続けながらその出力エネルギーを最小化することを可能にする、多くの点火器形状の実施形態が開発されている。
【0013】
2つの電極、具体的には、中心電極とシェル電極との間のエアギャップを横切る電界集中は、シェル電極と中心電極と内側セラミック絶縁体との間に平らなまたは「ほぼ平らな」表面ギャップを作るように点火器先端のウェル深さを縮小することによって増大させることができることが発見されている。他の利点の中で、これは、点火器の表面ギャップにたまり得るまたは存在し得る汚染物質の総容量を制限する。
【0014】
2つの電極間の電界集中を増大させる別の実施形態は、シェル電極、中心電極及び/又は内側セラミック絶縁体に内部面取りを適用することである。他の利点の中で、これらの面取りは、嵌合部品間の良好な接触を可能にし、従って、合わせ面間に液体が染み込む可能性を減少させる。また、別の実施形態は、不均一な電極境界を作り出すことである。
【0015】
HEIシステムがその出力電圧を不変に維持しながらその出力エネルギーを最小化することを可能にするさらに別の実施形態は、半導体を横切る電流密度を増加することである。これは、縞状のまたは部分的な半導体形状を有することによって、中心電極の大きさを減少させることによって、または絶縁体の外径(OD)を小さくすることによって、達成することができる。
【0016】
下記の実施形態は、これと共に用いるだけでなく、独立した改良技術として機能すると考えられている。特に断りのない限り、それらはまた、端部点火式のまたは側部点火式の点火器の形状に適用することができる。端部点火式の点火器は、点火器先端が軸方向を向く表面に位置するような形状を有する。側部点火式の点火器は、点火器先端が径方向を向く表面に位置するような形状を有する。
【0017】
2つの電極間の電界集中を増大させる。充電電極上の鋭角な端部又は縁部は、非鋭角または均一な電極表面の電界集中よりも端部及び縁部上に大きな電界集中を作り出す。これは以下のように達成することができる。
【0018】
点火器先端のウェル深さを縮小する。これは、(径方向に垂直な平面に対して)ほぼ鋭角の縁部を含む電極形状を効果的に作り出す。ウェル深さを縮小することは、汚染物質がエアギャップ内に蓄積する可能性を低減することができる。
【0019】
シェル電極の内部面取り。また、(再び径方向に垂直な平面に対して)ほぼ鋭角の縁部を含む電極形状を作り出すように、中心電極および/または内側セラミック絶縁体を応用することができる。
【0020】
不均一な電極境界。これは、(軸方向に垂直な面に対して)ほぼ鋭角の縁部を含む電極形状を効果的に作り出す。半導体を横切る電流密度を増加する。電流密度は、半導体の単位面積当たりの電流である。高い密度は、点火器のアークを得る能力を高める。電流が一定値に保持されている場合、半導体の面積の縮小は電流密度を増加する。これは以下のように達成することができる。縞模様または部分的な半導体形状。これは、直接的に半導体の表面積を減少させる。点火器先端のウェル深さを縮小する。点火器ウェルにたまるイオン水は、電流が流れることのできる導電経路として機能する。水の添加が導電領域を効果的に増大させ、従って、電流密度を減少させる。エアギャップ内にたまることができる水の量を最小限にすることによって、電流密度への悪影響を最小限に抑えることができる。中心電極のサイズを縮小する。エアギャップとシェル電極ODが一定に保たれた場合、これは直接的に半導体の表面積を減少させる。これは主に端部点火式の点火器に適用される。絶縁体の外径(OD)を縮小する。これは、エアギャップ及び電極のODが一定に保持された状態で半導体の表面積を直接的に減少させる。これは主に側部点火式の点火器に適用される。
【0021】
言い換えれば、以下の説明および図面は、燃料と空気の混合物を供給するメインバーナーを有する炉で使用されるタイプの火花点火器を示す。本開示は、炉のための火花点火器の文脈で説明されているが、当然のことながら、本明細書に開示される火花点火器は、燃料の点火システムとしてより広く適用可能であり、他のシステムに適用することができる。
【0022】
図1A〜Bを参照すると、先行技術の軸方向に向けられた火花点火器100が示されている。火花点火器100は、絶縁体104に囲まれた中心電極102と、絶縁体を覆う外側導電シェルまたはシェル電極106とを有し、点火器先端108において、中心電極102とシェル電極106との間にスパークギャップ110、すなわち、中心電極と外側電極シェルとの間のギャップが形成されるようになっている。多くの場合、スパーク発生を容易にするために、このギャップにおいて絶縁材料に半導体材料が貼り付けられる。このスパークギャップ110において、高エネルギーのスパークが、中心電極102の第1縁部112とシェル電極106の第2縁部114との間を通過することができる。
【0023】
図1Bから分かるように、スパークギャップ110は、点火器先端108の端面または軸方向を向く表面116に位置する。従って、火花点火器100は、軸方向に向けられたスパーク、すなわち、軸方向を向く表面116およびそこから離れる方向に火花点火器の長手方向軸に沿って向けられたスパークを作り出す。スパークは燃料に点火する。
【0024】
図2A〜Bは、本発明の特定の実施形態に係る軸方向に向けられた火花点火器200を示す。火花点火器200は、HEIシステムがその出力電圧を不変に維持し且つ不利な条件でその性能を維持しながらその出力エネルギーを最小化することを可能にする。火花点火器200は、複数の電極と、本体を形成する絶縁体204とを有する。複数の電極は中心電極202とシェル電極206とを含む。中心電極202は内表面218と端部220とを有し、中心電極の少なくとも一部が本体の外表面の少なくとも一部を形成する。シェル電極206もまた内表面222と端部224とを有し、シェル電極の少なくとも一部が本体の外表面の少なくとも一部を形成する。絶縁体204は中心電極202とシェル電極206との間にあり、点火器先端208において中心電極の第1縁部212とシェル電極の第2縁部214からスパークギャップ210が形成されるように中心電極とシェル電極が配置され且つ互いに電気的に絶縁されるように、絶縁体の少なくとも一部分226は中心電極とシェル電極によって非被覆である。スパークギャップ210の深さ、すなわちウェル深さは、絶縁体の非被覆部分226からスパークギャップ210に隣接する本体の外表面へと測定される。軸方向に向けられた点火器においてスパークギャップ210に隣接する本体の外表面は、中心電極220の端部またはシェル電極224の端部のいずれかの最も外側の部分である。
【0025】
図2A〜Bは、シェル電極、中心電極および/または絶縁体に内部面取りを適用することによって2つの電極間の電界集中を増大させる、本開示の実施形態を示す。
図2Bに示すように、絶縁体の非被覆部分226に隣接する絶縁体204の一部が、面取り部228へと延びている。この面取り部228は、中心電極202の内表面218の面取り部230と、シェル電極206の内表面222の面取り部232と合わさる。スパークギャップ210は、シェル電極206の第1縁部212と中心電極202の第2縁部214から形成される。中心電極202とシェル電極206は、スパークギャップ210において互いに電気的に絶縁されている。また、シェル電極206の外表面と中心電極202の外表面は、スパークギャップ210において面取りされることができる。この外表面の面取りは、シェル電極206の外表面における面取り234によって示されている。
【0026】
図2A〜Bに示すように、面取りは、ほぼ鋭角であることができる傾斜した縁部を含む電極の形状を作り出し、それによってシェル電極と中心電極との間の電界集中を増大させる。他の利点の中で、これらの面取りは、嵌合部品間の良好な接触を可能にし、従って、合わせ面間に液体が染み込む可能性を減少させる。
【0027】
図2A〜Bによって示されている実施形態は、従来の点火器先端と比較して縮小されたウェル深さを示す。浅いウェル深さは、シェル電極と中心電極と絶縁体との間に平らなまたは「ほぼ平らな」エアギャップを作るように2つの電極間の電界集中を増大させる。これは、(径方向に垂直な平面に対して)ほぼ鋭角の縁部を含む電極形状を効果的に作り出す。他の利点の中で、これは、点火器のエアギャップにたまり得るまたは存在し得る汚染物質の総容量を制限する。軸方向に向けられた火花点火器用の所望の電極形状を得るために、深さは第2縁部で測定したシェル電極の内表面の周長の5%以下でなければならない。深さはまた、第1縁部で測定した中心電極の内表面の周長の5%以下であることができる。
【0028】
図3A〜Bは、より伝統的なギャップの設計に従う設計を有する径方向に向けられた火花点火器300を示す。火花点火器300は、絶縁体304に囲まれた中心電極302と、絶縁体を覆う外側導電シェルまたはシェル電極306とを有し、点火器先端308において、中心電極302とシェル電極306との間にスパークギャップ310、すなわち、中心電極と外側電極シェルとの間のギャップが形成されるようになっている。点火器先端308は、スパークギャップ310が火花点火器300の径方向を向く表面316にあるように構成されている。多くの場合、スパーク発生を容易にするために、このギャップにおいて絶縁材料に半導体材料が貼り付けられる。このスパークギャップ310において、高エネルギーのスパークが、中心電極302の第1縁部312とシェル電極306の第2縁部314との間を通過することができる。したがって、火花点火器300は、径方向に向けられたスパーク、すなわち、径方向を向く表面316から離れるように径方向外側に向けられたスパークを作り出す。
【0029】
図4A〜Bは、本発明の特定の実施形態に係る径方向に向けられた火花点火器400を示す。火花点火器400は、HEIシステムがその出力電圧を不変に維持し且つ不利な条件でその性能を維持しながらその出力エネルギーを最小化することを可能にする。火花点火器400は、複数の電極と、本体を形成する絶縁体404とを有する。複数の電極は中心電極402とシェル電極406とを含む。中心電極402は内表面418と端部420とを有し、中心電極の少なくとも一部が本体の外表面の少なくとも一部を形成する。シェル電極406もまた内表面422と端部424とを有し、シェル電極の少なくとも一部が本体の外表面の少なくとも一部を形成する。絶縁体404は中心電極402とシェル電極406との間にあり、点火器先端408において中心電極402の第1縁部412とシェル電極406の第2縁部414からスパークギャップ410が形成されるように中心電極とシェル電極が配置され且つ互いに電気的に絶縁されるように、絶縁体の少なくとも一部分426は中心電極とシェル電極によって非被覆である。スパークギャップ410の深さ、すなわちウェルの深さは、絶縁体の非被覆部分426から本体の外表面へと測定される。径方向に向けられた点火器の本体の外表面は、本体の外表面の少なくとも一部を形成するシェル電極406の一部である。
【0030】
図4A〜Bは、シェル電極、中心電極および/または絶縁体に内部面取りを適用することによって2つの電極間の電界集中を増大させる、本開示の実施形態を示す。
図4Bに示すように、絶縁体の非被覆部分426に隣接する絶縁体404の一部が、面取り部428へと延びている。この面取り部428は、中心電極402の第1縁部412とシェル電極406の第2縁部414からスパークギャップ410が形成されるように中心電極402とシェル電極406が配置され且つ互いに電気的に絶縁されるように、中心電極402の内表面418の面取り部430およびシェル電極406の内表面422の面取り部432と合わさる。
【0031】
図4A〜Bに示す面取りは、ほぼ鋭角の縁部を含む電極形状を作り出し、それによってシェル電極と中心電極との間の電界集中を増大させる。他の利点の中で、これらの面取りは、嵌合部品間の良好な接触を可能にし、従って、合わせ面間に液体が染み込む可能性を減少させる。
【0032】
図4A〜Bで示した別の実施形態は、シェル電極と中心電極と絶縁体との間に平らなまたは「ほぼ平らな」表面ギャップを作るように点火器先端のウェル深さを縮小することによって、2つの電極間の電界集中を増大させる。これは、(径方向に垂直な平面に対して)ほぼ鋭角の縁部を含む電極形状を効果的に作り出す。他の利点の中で、これは、点火器のエアギャップにたまり得るまたは存在し得る汚染物質の総容量を制限する。径方向に向けられた火花点火器用の所望の電極形状を得るために、深さは本体の外表面の周長の8%以下でなければならない。上述したように、径方向に向けられた点火器の本体の外表面は、本体の外表面の少なくとも一部を形成するシェル電極406の一部である。
【0033】
図5Aは、径方向に向けられた火花点火器300を示す。火花点火器300は、絶縁体304と、中心電極302の内表面318と、外殻電極306の内表面322との間に異常に拡大されたエアギャップ336を有して示されている。エアギャップは中心電極とシェル電極との間の空間である。エアギャップ336は、水338または他の堆積物のような汚染物質が点火器のエアギャップにたまり得るかまたは存在し得ることを示すために誇張して示されている。点火器ウェルにたまるイオン水は、電流が流れることのできる導電経路として機能する。水の添加が導電領域を効果的に増大させ、従って、電流密度を減少させる。電流密度は、単位面積当たりの電流である。高い密度は、点火器のアークを得る能力を高める。
【0034】
エアギャップ内にたまることができる水の量を最小限にすることによって、たまった水が有する電流密度への悪影響を最小限に抑えることができる。
図5Bは、中心電極502と、絶縁体504と、シェル電極506に対する内部面取りを有する、径方向に向けられた点火器500の実施形態を開示している。内部面取りは、水538または他の堆積物が蓄積することができる面積を小さくするのに役立つ。図示のように、絶縁体の非被覆部分526に隣接する絶縁体504の一部は面取り部528へと延び、面取り部528は、中心電極502の第1縁部512とシェル電極506の第2縁部514からスパークギャップ510が形成されるように中心電極502とシェル電極506が配置され且つ互いに電気的に絶縁されるように、中心電極502の内表面518の面取り部530及びシェル電極506の内表面522の面取り部532と合わさる。
【0035】
図6A〜Bは、(軸方向に垂直な面に対して)ほぼ鋭角の縁部を含む電極の形状を効果的に作り出す不均一な電極境界を有する、軸方向に向けられた火花点火器の実施形態を示す。
図6Aでは、火花点火器600は、外表面を有する本体を形成するように構成された複数の電極と絶縁体604とを備える。複数の電極は中心電極602とシェル電極606とを含む。絶縁体604は中心電極602とシェル電極606との間にあり、中心電極の第1縁部612とシェル電極の第2縁部614からスパークギャップ610が形成されるように中心電極602とシェル電極606が配置され且つ互いに電気的に絶縁されるように、絶縁体の少なくとも一部分626が中心電極602とシェル電極606によって非被覆である。
【0036】
図6A〜Bでは、スパークギャップの第1縁部と第2縁部の少なくとも一方は、不均一な幾何学的形状を有している。不均一な幾何学的形状は、星形、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、および十角形からなる群のうちのいずれか1つを含むことができる。図示しないが、スパークギャップの第1縁部と第2縁部の両方が不均一な幾何学的形状を有する場合は、本明細書に含まれる。
【0037】
図6Aは、スパークギャップ610が本体の外表面の軸方向を向く部分616に位置し、且つシェル電極の第2縁部614のみが不均一な幾何学的形状を有し、形状は上記の任意の1つを含む実施形態を示す。
【0038】
図6B〜7は軸方向に向けられた火花点火器700の実施形態を示し、この実施形態では、スパークギャップ710が本体の外表面の軸方向を向く部分716に位置し、且つ中心電極の第1縁部712のみが不均一な幾何学的形状を有し、形状は上記の任意の1つを含む。
【0039】
図8A〜Bは径方向の火花点火器800の別の実施形態を示し、この実施形態では、スパークギャップ810が本体の外表面の径方向を向く部分816に位置し、且つ不均一な形状はシェル電極の第2縁部814の一部が絶縁体804と接触しないようになっている。当然のことながら、図示しないが、中心電極の第1縁部812の一部が絶縁体804に接触しないようなものであることができる。さらに別の実施形態では、両方の中心電極の第1縁部812とシェル電極の第2縁部814の両方が、その一部が絶縁体804に接触しないように不均一である。
【0040】
電流が一定に保持された場合に、半導体の面積を小さくすることにより、半導体を横切る電流密度を増加することができる。
図9は、縞状のまたは部分的な半導体形状を有する実施形態を示す。
図9Aは、軸方向に向けられた火花点火器900の縞状のまたは部分的な半導体形状を示す。図示のように、スパークギャップ910の底部において絶縁体904上に半導体940が置かれる。半導体940は中心電極902とシェル電極906との間の導電経路を形成する。この半導体は絶縁体自体に貼り付けたフィルムであることができる。経路が設けられると、電気エネルギーは回路インピーダンスを除いて抵抗されずに流れることができ、それによってスパークギャップ910において非常に高い電流およびエネルギーのスパークを作り出す。また、
図9Bは、縞状のまたは部分的な半導体形状を径方向に向けられた火花点火器1000にも適用することができることを示す。
【0041】
本明細書に開示の任意の実施形態では、半導体の表面積を縮小することにより、半導体を横切る電流密度が増加し、それによってアークを得る火花点火器の能力を高める。当然のことながら、縞状のまたは部分的な半導体形状を有することは、本開示の独立した変形例として、または本明細書に開示される任意の他の実施形態と共に使用することができる。
(実施例)
以下の実施例は本発明を説明するために提供される。実施例は、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定、変更または定義するよう意図されておらず、そのように解釈されるべきではない。
【0042】
2つの異なる点火エキサイタと5つの異なる点火器先端形状をテストした(テストに関する詳細については、表1および2参照)。
【0043】
1番目のテスト中は、約1/4インチの直径の点火器と合わせることができる低エネルギーHEIシステム(〜0.33J)を使用した。言い換えれば、シェル電極の外径(OD)として定義される点火器ODは、直径1/4インチである。このプロジェクトの間に、3つの側部点火式の点火器形状または径方向に向けられた火花点火器をテストした。(形状の仕様については、表1を参照のこと。)表1は、側部点火式の設計を用いて行った様々な実験の結果を反映している。結果は、ウェル深さを縮小し且つ面取りした電極および絶縁体を有することによって、電極間の電界集中が大きくなることを示している。電界集中を大きくすることは、成功した火花試験によって示される、アークを得る能力を高める。
【0045】
2番目のテスト中は、約1/2インチ直径の点火器と合わせることができる低エネルギーHEIシステム(〜1.5J)を使用した。言い換えれば、シェル電極の外径(OD)として定義される点火器ODは、直径1/2インチである。この間、可能な限り平らなエアギャップを保つことに重点を置いて端部点火式の点火器先端又は軸方向に向けられた火花点火器を設計した。(形状の仕様については、表2を参照のこと。)表2は、端部点火式の設計を用いて行った様々な実験の結果を反映している。
【0046】
示されるように、表1でテストした径方向に向けられた火花点火器と一致するような、同様の結果が表2において生じた。結果は、ウェル深さを縮小し且つ面取りした電極および絶縁体を有することによって、電極間の電界集中が大きくなることを示している。電界集中を大きくすることによって、アークを得る能力が向上し、このことが成功した火花試験によって示されている。
【0047】
また、表2は、不均一な電極の形状が、特に軸方向に向けられた火花点火器の中心電極が不均一である場合に、中心およびシェル電極間の電界集中の増大を招き、それによって不利な条件でスパークが成功する可能性を高めることを示している。