特許第6189290号(P6189290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189290ヘリコプタエンジンの整備を推奨するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189290
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ヘリコプタエンジンの整備を推奨するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B60S 5/00 20060101AFI20170821BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20170821BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B60S5/00
   F01D25/00 W
   F01D25/00 X
   F01D25/00 V
   F02C7/00 A
   F02C7/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-516315(P2014-516315)
(86)(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公表番号】特表2014-523828(P2014-523828A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】EP2012061754
(87)【国際公開番号】WO2012175521
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】11305774.9
(32)【優先日】2011年6月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511192252
【氏名又は名称】チュルボメカ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・カメンカ
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ・メイユ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・プラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ルイ・ブコン
(72)【発明者】
【氏名】ナディール・デブズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ステファン・ヴィーニュ
(72)【発明者】
【氏名】マリー−カロリーヌ・ドゥメ−ヴィニ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・フォパン
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ・ブレ
(72)【発明者】
【氏名】ディディエール・ヴィエイヤール−バロン
(72)【発明者】
【氏名】ルドヴィク・ブタン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ブロー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ゴルティエール
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ・メスタ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ヌフェール
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・ラマゼル
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−100317(JP,A)
【文献】 特開2004−252930(JP,A)
【文献】 特開2005−004240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 5/00
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じエンジンクラスに属し、その技術的条件に応じて時間とともに変化する要素によって形成されるヘリコプタエンジンの整備、エンジン間での部品の標準的交換、および異なる部品との部品の交換を指示するためのシステムにおいて、
前記システムは、
作業用データを保存する集中データベースを含み、前記作業用データは、
前記エンジンのそれぞれについて1つまたは複数の指標の履歴を記述する、運転条件と、
前記エンジンの可能な変更および承認済み変更と、
前記指標の所定値による前記エンジンのための整備計画の定義と、
可能な変更および承認済み変更に関係するデータならびに前記運転条件による予定外の事象の推定原因の記述と、
前記エンジンのそれぞれに適用された整備作業の履歴を記述する、適用済み整備と、
前記エンジンのそれぞれに適用された構成変更の履歴を記述する、事例化構成とに関係
前記システムは、
前記エンジンのそれぞれについて前記指標を取得し、各エンジンの前記指標の取得した値に応じて前記運転条件を更新するための手段と、
前記集中データベース中の前記作業用データに応じて前記エンジンのそれぞれに適用すべき整備作業を識別するための手段と、
識別された行うべき各整備作業について連続アラームを生成するための手段と、
前記エンジンのそれぞれに適用された各整備作業に従って適用済み整備および事例化構成をデジタル署名して更新するための手段と、
少なくとも前記アラームに関連する識別された適用済み整備から結果として生じる前記データの前記デジタル署名された更新が実行される場合、始動されたアラームを停止するための手段とを含む、システム。
【請求項2】
前記適用すべき整備作業を識別するための前記手段は、
各エンジンの運転条件を整備作業のトリガとなる事象の特徴を示す前記集中データベースの時刻署名ベースと比較することによって整備作業のトリガとなる条件を識別するための手段と、
前記トリガ条件の発生より前に適用された1つまたはいくつかの整備作業がその前記発生に影響を及ぼすことがあり得たかどうかを識別するために、可能なおよび承認済みエンジン変更データならびに前記運転条件に従って適用済み整備および事例化構成に関係するデータを分析するための手段と、
前記識別された適用すべき整備作業および前記識別された適用済み整備作業に対する情報を送るための手段とを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
適用すべき前記識別手段は、
各エンジンの運転条件を整備作業のトリガとなる事象の特徴を示す前記集中データベースの時刻署名ベースと比較することによって整備作業のトリガとなる条件を識別するための手段と、
識別されたトリガ条件が予定外の事象の特徴を示すときをトリガとして予定外の事象を解決し、前記適用済み整備、前記事例化構成、前記運転条件、推定原因の記述に関係するデータ、および承認済み構成変更に対するデータに従って前記予定外の事象の可能性のある原因を識別するための手段と、
識別された推定原因に対する情報を送るための手段とを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
予定外の各事象について識別された前記原因に従って予定外の事象の推定原因を記述するデータをデジタル署名して更新する手段を含み、前記停止手段は、たとえ予定外の事象の推定原因を記述する前記データが前記事象の前記識別された原因に従って更新されても、予定外の事象に関連するアラームを停止することが可能である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
エンジン運転条件を分析し、前記分析に従って整備計画定義データを変更することが可能な傾向分析手段を含む、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
同じエンジンクラスに属し、その技術的条件に応じて時間とともに変化する要素によって形成されるヘリコプタエンジンの整備、エンジン間での部品の標準的交換、および異なる部品との部品の交換を指示する方法において、
作業用データを保存するステップであって、前記作業用データは、
前記エンジンのそれぞれについて1つまたは複数の指標の履歴を記述する、運転条件と、
前記エンジンの可能な変更および承認済み変更と、
前記指標の所定値による前記エンジンのための整備計画の定義と、
可能な変更および承認済み変更に関係するデータならびに運転条件データによる予定外の事象の推定原因の記述と、
前記エンジンのそれぞれに適用された整備作業の性質および履歴を記述する、適用済み整備と、
前記エンジンのそれぞれに適用された構成変更の性質および履歴を記述する、事例化構成とに関係する、ステップと、
前記エンジンのそれぞれについて前記指標を取得し、各エンジンの前記指標の取得した値に応じて前記運転条件を更新するステップと、
データベース中の前記作業用データに応じて前記エンジンのそれぞれに適用すべき整備作業を識別するステップと、
識別された行うべき各整備作業について連続アラームを生成するステップと、
前記エンジンのそれぞれに適用された各整備作業に従って適用済み整備および事例化構成をデジタル署名して更新するステップと、
少なくとも前記アラームに関連する識別された適用済み整備から結果として生じる前記データのデジタル署名された更新が実行される場合、始動されたアラームを停止するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコプタエンジンに関し、より詳細にはその整備に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプタエンジンは、いわゆる「クリティカル」システムであり、その構成要素、部品および部品の機能的アセンブリの変動性が非常に高い。
【0003】
最初に、いずれの機械システムとも同じように、部品および部品の機能的アセンブリ、または「モジュール」のそれぞれは、摩耗、汚染、潤滑油の経年劣化などを受け、またはより一般的にはそれらの特性をその望ましい挙動から逸脱させるそれらの特性の変化を受ける。ヘリコプタエンジンの場合には、飛行の安全性を確保するための技術的制約は、整備作業の数および整備頻度の両方が高く、特に例えば航空機エンジンの整備作業の数および整備頻度よりもはるかに高いということである。
【0004】
したがって、同じエンジン定義については、運転条件は、航空機エンジンについてよりもはるかにより変わりやすい。定期航空機エンジンは典型的には、その飛行時間の90%が安定かつ一定のパラメータでの巡航モードにある航路飛行を行うが、同じクラスのヘリコプタエンジンは、多種多様のストレスをともなう任務、すなわち高出力を連続してかつ繰り返し必要とし、地面に近接して、それ故にダストおよび他のエアロゾルに近接して実行される負荷吊り下げ任務、高高度でのかなりの巡航フェーズをともなう旅客輸送任務、塩分を含む霧にかなりの時間さらされる海難救助任務、最も著しく変わりやすいプロファイルをともなう戦闘任務等を行うために使用されることもある。
【0005】
したがって、ヘリコプタエンジン製作者は、それらの性能を改善するためにそのようなシステムについて絶えず研究を行う。それ故に、ヘリコプタエンジンの製作者は、エンジンについて数百に及ぶ変更、特に部品の特性の変化を指示することもある。例えば、Turbomecaの「ARRIEL」ヘリコプタエンジンを変更するための指示数は、今では300よりも多く、それは、このクラスのエンジンについて2300よりも多い理論的に可能な構成の数に達するが、可能な構成の中でも、変更の間での包含および/または排除の厳密な規則によって定義される所与のものだけが、航行することを許される。実際、エンジンは、例えば航空機エンジンよりも実質的に多いその設計制約に起因して、高度に最適化されたシステムである。例として、「ARRIEL」エンジンは、109kgの重量について700馬力を供給し、その結果は、各部品および各モジュールを互いに関して極度に最適化することによって得られる。それによって、製作者が、変更指示を出すこともあるが、このことは、前記変更がエンジンのユーザによって必ず実施されることを意味しない。その上、各エンジンは、一般にそれに特有でありかつ同じクラスの他のエンジンの構成と明らかに異なる構成を有することが観察できる。
【0006】
それ故に、ヘリコプタエンジンは、定期航空機エンジンを含む他の種類の民間用エンジンと比較して少なくとも不相応に、非常に多数の可能な構成をとることもある高度に相互依存する要素を備え、エンジンの性能および安全性に直接影響を及ぼす、また高くもある数の整備作業を受ける、クリティカルシステムである。
【0007】
整備作業者は、すべての詳細が統合されるそのような複雑なものを管理することができない。それ故に、展開される整備概念は、レベル1および2の整備作業者にエンジン運転条件および構成の簡略化された合成モデルに取り組ませるものであり、運転条件パラメータは、限られた数により(典型的には2から3パラメータ)、構成管理は、レベル1および2で見える変更の数を減らすことによってその術語の第1段階に限定される。どんなエンジン動作条件であっても(それは合成パラメータによって詳細に反映できない)飛行の安全性を確保するために、大幅なセキュリティマージンが、整備指示に適用される。それ故に、ヘリコプタエンジンの整備は、本質的にエンジンに取り組む異なる整備作業者のスキルに依存するので、実際にはかなり準最適であり、さらにおそらくは一定でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ヘリコプタエンジンのための整備作業を決定するために、すでに適用された整備の複雑性、飛行中の動作条件、および特定のエンジン構成を考慮に入れる整備指示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明は、同じエンジンクラスに属し、その技術的条件に応じて時間とともに変化する要素によって形成されるヘリコプタエンジンの整備、エンジン間での部品の標準的交換、および異なる部品との部品の交換を指示するためのシステムにおいて、
・作業用データを保存する集中データベースであって、その作業用データは、
〇エンジンのそれぞれについて1つまたは複数の運転条件指標の履歴を記述する、運転条件と、
〇エンジンの可能な変更および承認済み変更と、
〇運転条件指標の所定値によるエンジンのための整備計画の定義と、
〇可能な変更および承認済み変更に関係するデータならびに運転条件データによる予定外の事象の推定原因の記述と、
〇エンジンのそれぞれに適用された整備作業の性質および履歴を記述する、適用済み整備と、
〇エンジンのそれぞれに適用された構成変更の性質および履歴を記述する、事例化構成とに関係する、集中データベースと、
・エンジンのそれぞれについて運転条件指標を取得し、各エンジンの指標の取得した値に応じて運転条件データを更新するための手段と、
・データベース中の作業用データに応じてエンジンのそれぞれに適用すべき整備作業を識別するための手段と、
・識別された行うべき各整備作業について連続アラームを生成するための手段と、
・エンジンのそれぞれに適用された各整備作業に従って適用済み整備データおよび事例化構成データをデジタル署名して更新するための手段と、
・少なくともアラームに関連する識別された適用済み整備作業から結果として生じるデータのデジタル署名された更新が実行される場合、始動されたアラームを停止するための手段とを含む、システムを目的とする。
【0010】
「作業用運転条件データ」は、エンジンが飛行中にまたは地上で動作中にそれを受け、エンジンを補修する決定がそれに基づいて行われる条件を記述する客観的データを意味する。実例として、運転条件データの1つは、ヘリコプタの飛行時間数であり、ヘリコプタエンジンの分解修理は、例えば3,000飛行時間ごとに行われる。
【0011】
「可能なエンジン変更に関係する作業用データ」は、同じクラスに属するエンジンについて可能であるすべての変更または構成を記述するデータを示す。
【0012】
「承認済みエンジン変更に関係する作業用データ」は、同じクラスに属するエンジンの可能な構成の中から承認されたまたは「航行可能な」すべての構成を記述するデータを示す。
【0013】
「作業用整備計画定義データ」は、エンジンの運転条件指標の値に基づいて、それらの特定構成から独立に、同じクラスのエンジンについて予想通りに引き起こされるすべての整備を記述するデータを示す。
【0014】
「予定外の事象の推定原因の記述の作業用データ」は、エンジンに生じる予定外の事象、特に故障の、好ましくは関連する確率とともに、推定原因を記述するデータを示す。
【0015】
「整備作業」はここでは、どんな性質のエンジンについても取られるアクションを示す。整備作業は、エンジン故障支援および修理、設定、分解修理、制御、ならびに点検のアクションを集める。
【0016】
「適用済み整備に関係する作業用データ」はここでは、エンジンについて実施されたすべての整備作業を記述するデータを示す。
【0017】
「事例化構成に関係する作業用データ」はここでは、例えば製作者による変更指示の後の構成変更に続くエンジンの特定構成を記述するデータを示す。
【0018】
最初に、本発明によるシステムは、同じクラスに属するすべてのエンジンのすべてのデータをプロットし、それは、各エンジンの特定の追跡を可能にする。
【0019】
さらに、特定のエンジンに関連するすべてのデータは、「電子的エンジン日誌(Electronic Engine Logbook)」を形成し、それは、エンジンに適用されたすべての整備作業の履歴、運転条件作業用データ、ならびにその特定構成を含み、手書きエンジン日誌を置き換える。飛行指標の分析、ならびに整備指示はそれ故に、エンジンに適用されたすべての整備作業の履歴、飛行中または地上での動作条件ならびにすべての構成の履歴を含むこれらのデータに基づいて行われ、そのことはそれ故に、ヘリコプタエンジンの整備の複雑性を考慮に入れることを可能にする。さらに、データの履歴はまた、傾向分析を実施することを可能にし、それ故に特に整備計画の定義および予定外の事象の原因の定義のデータを訂正しかつ/または改善することを可能にする。
【0020】
したがって、本システムは、アラーム始動/停止システムを実装する。アラームは、少なくともエンジンにすぐに行うべき各整備作業について始動される。アラームの使用は、整備作業をエンジンに行うべきであると整備作業者に警告することだけでなく、とりわけ作業者にデータベースを更新させることも目的とし、そのことは、データベース中のデータが常に完全で、関連のあることを確実にする。より具体的には、本発明によるシステムは、紙の整備日誌の役割を担い、それは、整備作業者にシステムを必ず使用させ、それ故にそれを更新させる。技術的アラーム管理およびシステムの使用の法的義務の組合せはそれ故に、完全なデータベースの技術的効果を提供する。
【0021】
本システムの変形形態によると、アラームはまた、データの更新による停止の対応する手順が実行されていない限り、アラームが始動されたエンジンに対するシステムへのどんなアクションも阻止する。
【0022】
本発明はまた、同じエンジンクラスに属し、その技術的条件に応じて時間とともに変化する要素によって形成されるヘリコプタエンジンの整備、エンジン間での部品の標準的交換、および異なる部品との部品の交換を指示する方法において、
・作業用データを保存するステップであって、その作業用データは、
〇エンジンのそれぞれについて1つまたは複数の運転条件指標の履歴を記述する、運転条件と、
〇エンジンの可能な変更および承認済み変更と、
〇運転条件指標の所定値によるエンジンのための整備計画の定義と、
〇可能な変更および承認済み変更に関係するデータならびに運転条件データによる予定外の事象の推定原因の記述と、
〇エンジンのそれぞれに適用された整備作業の性質および履歴を記述する、適用済み整備と、
〇エンジンのそれぞれに適用された構成変更の性質および履歴を記述する、事例化構成とに関係する、ステップと、
・エンジンのそれぞれについて運転条件指標を取得し、各エンジンの指標の取得した値に応じて運転条件データを更新するステップと、
・データベース中の作業用データに応じてエンジンのそれぞれに適用すべき整備作業を識別するステップと、
・識別された行うべき各整備作業について連続アラームを生成するステップと、
・エンジンのそれぞれに適用された各整備作業に従って適用済み整備データおよび事例化構成データをデジタル署名して更新するステップと、
・少なくともアラームに関連する識別された適用済み整備作業から結果として生じるデータのデジタル署名された更新が実行される場合、始動されたアラームを停止するステップとを含む、方法も目的とする。
【0023】
本発明は、付随する図面との関連で例としてだけ提供される次の説明を読むことでより良く理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による整備指示システムの簡略化した図である。
図2】本発明によるシステムのデータベースに保存された時間にわたる運転条件の第1の指標のプロットである。
図3】データベースに保存された第2の運転条件指標のプロットである。
図4】第2の運転条件指標の時間ドリフトのプロットである。
図5】故障推定原因の識別に使用される確率ツリーの例である。
図6】故障推定原因の識別に使用される確率ツリーの例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1では、本発明による整備指示システムが、全体的な参照数字10の下で例示される。システム10は、保有ヘリコプタ16のエンジンに対するデータを集めるデータベース14を実装する中央サーバ12、サーバ12へのアクセスおよびその安全性を管理するソフトウェアユニット18、およびデータベース14に含まれるデータを処理するためのソフトウェアユニット20を含む。
【0026】
データベース14は、保有機でのエンジンのすべてのデータを集めて、これらのエンジンの航行可能性の連続した追跡を可能にし、それ故に特にそれらの特定構成およびそれに適用された整備作業の履歴に従って、それへの整備作業を指示することを可能にする。
【0027】
中央サーバ12へのアクセスは、ユーザが利用できる任意のコンピュータ手段22、すなわちオフィスコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット、「スマートフォン」、または他のものによって、1つまたはいくつかの電気通信ネットワーク24、例えばインターネット、ローカルネットワーク、仮想プライベートネットワークなどを介して行われる。中央サーバ12とは対照的に、ユーザが利用できるコンピュータ手段22は、「ローカルステーション」と呼ばれる。
【0028】
好ましくは、ローカルステーション22は、アクセスおよびセキュリティ管理ユニット18とともに、ウェブクライアント/サーバ型のソフトウェアアーキテクチャを実施するソフトウェアユニットを含み、それ故にすべてのユーザのための単一ウェブポータルを介して中央サーバ12との接続を可能にする。
【0029】
中央サーバ12への接続は、認証によって行われ、中央サーバ12に接続することを望むユーザは、それへのアカウントを有し、少なくともログインおよびパスワードを入力することによって中央サーバ12にアクセスする。
【0030】
アクセスおよびセキュリティ管理ユニット18はさらに、サーバ12との接続のセキュリティおよび機密保持の機能、特にウイルス防止、侵入防止、吸引防止(anti-aspiration)、異常トラフィック検査、および他の機能を実装し、中央サーバ12を介してデータベース14に行われる各接続および各アクションを追跡する。さらに、各ユーザアカウントは、ユーザの性質(整備作業者、エンジン所有者/賃貸人組織、エンジン製作者など)に従って特定の権限に関連し、これらの権限は、ユーザがデータベース14に行うことができるアクションの種類およびユーザがアクセスできるデータベース14中のデータの種類を規定する。
【0031】
異なる認証レベルがさらに、ユーザの権限に従って実装されてもよい。有利には、データベース14のデータの変更に関係する権限については、デジタル署名または電子署名に基づく強力な認証が、必要とされる。
【0032】
データベース14は特に、以下に関係する作業用データを含む。
・例えばエンジンのそれぞれの飛行時間数または繰り返し数などの、エンジンのそれぞれの運転条件について1つまたはいくつかの指標の履歴を記述する、運転条件。繰り返し数は、エンジンの速度が飛行中に所与の速度範囲を完全に記述する回数を記述する指標である。運転条件指標はまた、例えば砂だらけの、塩分を含んだ、または他の環境での飛行などの、エンジンの運転条件に影響を及ぼすヘリコプタの飛行条件を含むこともある。
・エンジンの可能な変更および承認済み変更。有利には、データベース14は、承認済み、または「航行可能な」エンジン変更だけでなく、すべての可能なエンジン変更もまた含む。承認済み構成は、包含および/または排除の厳密な規則から推定できる。これは、例えば整備の誤りに起因して可能ではあるが未承認の構成のこともある特定のエンジン構成を承認済み構成と比較することを可能にする。構成変更の誤りは、このようにして検出できる。
・運転条件指標の所定値によるエンジンのための整備計画の定義。例えば、これは、エンジンのX飛行時間ごとに、またはエンジンの繰り返し数が所定のしきい値を越えるときに、またはエンジンが特定の環境で飛行されたときに適用すべき整備作業に関係する。
・可能な変更および承認済み変更に関係するデータならびに運転条件データによる、予定外の事象、特に故障の推定原因の記述。好ましくは、記述データは、この後でさらに詳細に説明されるように、可能なエンジン変更に従って確率ツリーの形に編成される。
・エンジンのそれぞれに適用された整備作業の性質および履歴を記述する、適用済み整備。
・エンジンのそれぞれに適用された構成変更の性質および履歴を記述する、事例化構成。
【0033】
データベース14はまた、例えば基準技術文書の形で、各整備作業の作業手順、すなわち、整備作業者が整備作業を適切に実行するために何をすべきかを記述する作業用データも含む。
【0034】
整備計画定義データ、推定原因を定義するデータ、および作業用データは、時間とともに変化することが可能であるので(更新、整備計画の最適化、動作モードの最適化、故障原因の改善された識別など)、データベース14は、これらのデータのすべてのバージョン、特に基準技術文書のすべてのバージョン、ならびに各適用済み作業および行われた変更をデータの1つのバージョンに関連付けるための前記バージョンのタイムスタンプ、すなわち、それらが整備および構成変更作業で使用された期間を含む。
【0035】
データベースはまた、この後でさらに詳細に説明されるように、事象の、特に故障の特徴を示す一組の時刻署名も含み、データベース14に保存された運転条件指標は、特にエンジンへの予定外の事象を決定するために、それ故に整備作業のトリガとなるために、その時刻署名と比較される。
【0036】
ソフトウェア処理ユニット20は、データベース14からのデータの電子的相談の第1のユニット26を含み、システム10によって管理されるエンジンの各ファミリまたはクラスについて、整備説明書または故障点検説明書、予備部品カタログ、工具カタログ、特に構成またはその他の変化に関する、製作者によって発行される広報の形でそれらを対話形式で表示することを可能にする。この文書へのアクセスは、好ましくはユーザに割り当てられた権限、エンジンの事例化構成、または任意の他の関心のある基準に従って、相談ユニット26によって管理される。
【0037】
ソフトウェア処理ユニット20は、一般に「飛行データ」と呼ばれる、飛行中に生成されたデータを処理するための第2のユニット28を含み、ユニット28は、エンジン運転条件指標を収集し、それらを処理し、それらをデータベース14に組み込むことを可能にする。
【0038】
より具体的には、処理ユニット28は、運転条件指標を収集するための第1のサブユニットを含む。指標および他の飛行データは、中央サーバ12によって異なる取得チャンネルから、特に飛行記録装置30から、例えば搭載される記録装置を装備しないエンジンについては手動入力手段32から、および例えば前記データを最初に収集する他のコンピュータシステム34から収集される。収集は好ましくは、ユーザによってユーザのローカルワークステーション22から監督され、したがってユーザは、中央サーバ12へそれらをダウンロードする前に、それらを見ることができ、必要な場合それらを変更することができる。
【0039】
ユニット28はさらに、収集データを確認し、保存するための第2のサブユニットを含む。第2のサブユニットは、収集データがデータベース14に保存される前に収集データの整合性を検証する。特に、第2のサブユニットは、これらのデータに必要とされる1つまたはいくつかのフォーマットとのデータフォーマットの適合性を検証し、例えば中央サーバ12と収集データの完全性を検証するためのローカルステーション22との間でのデータ交換を用いて、データが伝送中に破損されないことを検証する。データの整合性がない場合には、アラーム信号が、サブユニット28に出される。
【0040】
収集データを前処理するためのサブユニットがまた、例えば中央サーバ12にダウンロードされた運転条件指標値から複合運転条件指標を生成するために提供されてもよい。さらに、エンジンの運転条件の合成である指標の値は、例えば飛行中に連続してまたは定期的に記録された生の飛行データに従って、計算によって生成されてもよい。オプションとして、生の飛行データは、中央サーバ12に直接ダウンロードされてもよく、前処理サブユニットは、指標の値を生成する計算を実施する。
【0041】
ソフトウェアユニット20はまた、第3の整備指示ユニット36も含み、それは、いったんエンジンの運転条件の指標の新しい値がデータベース14に記録されると、または新しいデータ収集から独立して、承認されたユーザの命令によって実行される。特に、エンジン運転条件指標の最終値は、整備作業がエンジンに適用されるべきかどうかを決定するために、作業用整備計画データで定義される所定値と比較される。整備計画は特に、運転条件指標の現在値による予測可能な整備作業に対応する。例えば、整備作業は、X飛行時間ごとに実行される。
【0042】
しかしながら、データベース14は、運転条件指標の履歴、構成変更の履歴、および各エンジンに適用された整備作業の履歴を含むので、整備作業が適用されるべきか否かを決定するために、トリガしきい値との値の簡単な比較よりもより複雑な試験を実施することが、可能である。特に、運転条件指標の傾向の分析は、前記指標の時間にわたる変化がわかるので、ユニット36によって実施されてもよく、事例化エンジン構成および/またはすでにそれに適用された整備作業でそのような分析に重み付けをするまたはしない可能性がある。
【0043】
エンジンに適用すべき整備作業が、識別されると、アラーム信号が、第3のユニット36によって出される。さらに、第3のユニット36は、事例化エンジン構成に従って、オプションとしてすでにそれに適用された整備作業に従って、識別された整備作業を実行するために実施すべき作業手順を記述するデータを識別し、そのようなデータは、前記作業を担当する整備作業者が利用できるようになされている。
【0044】
第3のユニット36はまた、予測不能な事象が生じたかどうかを決定するようにも構成される。特に、データベース14に保存された運転条件指標は、整備作業のトリガとなる事象の特徴を示す時刻署名のベースと比較される。例えば運転条件指標の値の突然の変化を例示する図2および図3で示されるように、例えばいくつかの指標が正常なエンジン動作中のそれらの値の限られた変動を採用することは、周知である。それ故に、これらの指標の時間変動を異常と考えられる変動プロファイルと比較することで、整備計画で指示される予測可能な作業に加えて整備作業が適用されなければならない可能性があると決定することが可能になる。
【0045】
署名ベースとの比較が、肯定的であるときは、エンジンへの前のアクションが、関係する運転条件指標の異常変動を説明することができるかどうか見いだすために、分析が、第3のユニット36によって適用済み整備作業データおよび事例化構成データについて実行される。例えば、図2の指標の突然の増加は、エンジン構成の変化によって説明でき、一方図3および図4で例示される指標の突然の変動は、エンジンモジュール、すなわちその発電機の2つの連続する交換によって説明でき、そのような情報は、データベース14に保存され、特にデータベース14にタイムスタンプが記録される。この分析によって識別された推定原因は、第3のユニット36によって記載され、承認されたユーザに送られる。さらに、時刻署名はまた、識別された故障に関連することもある。整備作業はそれ故に、第3のユニット36によって指示される。同時に、前記ユニットはまた、アラーム信号も出す。
【0046】
構成変化、適用済み整備、および運転条件指標の履歴の保存は、ヘリコプタエンジンの複雑性を考慮に入れて分析を行うことを可能にすることに留意されたい。実際、前述のように、ヘリコプタエンジンは、それが受けたすべての整備作業および運転条件によってその動作が影響されるハイパークリティカルシステムである。特に、エンジンの運転条件は、適用された最終の整備作業または最終の構成変更に依存するだけでない。それ故に、より前の作業と結合された整備作業、または構成変更は、間の悪い事象を引き起こすこともあり、それは、データベース14に保存された履歴による分析によって検出できるだけである。
【0047】
さらに、第3のユニット36によって検出された事象が故障である場合には、またはユーザによる故障の特徴を示すデータの手動入力後には、第3のユニット36は、適用済み整備作業、事例化エンジン構成、運転条件指標、および承認済み構成変更に従って故障の推定原因の識別のアルゴリズムを実施する。
【0048】
特に、データベース14中の可能性のある故障原因に関係するデータは、確率ツリーの形に編成される。確率ツリーの2つの簡単な例が、図4および図5に示され、図4は、エンジントルクセンサーからの情報消失の推定原因を例示し、図5は、エンジン性能損失の推定原因を例示する。確率ツリーは、特に事例化エンジン構成に従って調べられ、ベイジアン(Bayesian)型アルゴリズムを用いて閲覧される。第3のユニット36は、その分析の終わりに故障の推定原因のリストを、好ましくは推定原因のそれぞれに関連する確率、ならびに関連する整備指示とともに送る。同時に、第3のユニット36は、アラーム信号も送る。図4および図5に例示されるツリーは、非常に簡単であるが、実際には、可能な構成の数は、非常に多く、確率ツリーもまた、複雑であることに留意されたい。
【0049】
最後に、処理ユニット20は、アラーム信号を他のユニットから受け取る第4のアラーム管理ユニット40を含む。アラーム管理ユニット40は、各アラーム発生事象に関連するアラーム信号のリスト、ならびにアラームを停止するためにデータベース14に対して取るべきアクションのリストを最新の状態に保つ。
【0050】
特に、アラームは、整備作業が整備作業者によって行われたときならびに作業者が行った整備作業または構成の変化の記述およびタイムスタンプを作業者がデジタル署名してダウンロードしたときに停止される。好ましくは、故障の場合には、アラームは、作業者が識別した故障に関係する情報もまた作業者がデジタル署名して書き入れるときに停止され、そのことは、可能性のある故障原因に対するデータを再びまとめることによって前記データを精密化することを可能にする。本発明の変形形態では、ユニット40はまた、エンジンへの整備作業または構成変更の指示がダウンロードされていない限り、エンジンに対するデータベース14のデータへのどんな操作も阻止することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 整備指示システム
12 中央サーバ
14 データベース
16 保有ヘリコプタ
18 ソフトウェアユニット、アクセスおよびセキュリティ管理ユニット
20 ソフトウェアユニット、ソフトウェア処理ユニット
22 コンピュータ手段、ローカルステーション
24 電気通信ネットワーク
26 第1のユニット、相談ユニット
28 第2のユニット、飛行データ処理ユニット
30 飛行記録装置
32 手動入力手段
34 コンピュータシステム
36 第3のユニット、整備指示ユニット
40 第4のユニット、アラーム管理ユニット
図1
図2
図3-4】
図5
図6