特許第6189372号(P6189372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189372単独運転検出装置、単独運転検出方法及び系統連系システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189372
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】単独運転検出装置、単独運転検出方法及び系統連系システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   H02J3/38 180
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-136197(P2015-136197)
(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公開番号】特開2017-22800(P2017-22800A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2015年8月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】田淵電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】龍 建儒
(72)【発明者】
【氏名】日高 秀樹
【審査官】 稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−215392(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0077367(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0188454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−5/00
G05F1/12−1/44
1/45−7/00
H02M1/00−1/44
7/00−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用三相系統と連系するインバータを備えた分散型電源の単独運転検出装置であって、
商用三相系統の三つの線間電圧のゼロクロス信号の立上りエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下がりエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n)]
に基づいて算出される平均値、
または、立上りエッジから立下りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下りエッジから立上りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n+1)]+f(z−n)
に基づいて算出される平均値に基づいて当該線間電圧の周波数を計測する系統周波数計測部と、
前記系統周波数計測部で時系列的に計測された三つの線間電圧の周波数の直近の所定期間の平均値に対する過去の所定期間の平均値の差である周波数偏差に応じて無効電力注入量を算出する無効電力注入量算出部と、
前記無効電力注入量算出部で算出された無効電力注入量の無効電力が商用三相系統に注入されるように前記インバータに対する出力電流指令値を生成する無効電流制御部と、
前記無効電流制御部で生成された出力電流指令値に基づいて前記インバータを制御するインバータ制御部と、
前記系統周波数計測部で計測された各線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度に基づいて単独運転状態であるか否かを検出する単独運転検出部と、
を備えている単独運転検出装置。
【請求項2】
前記単独運転検出部は、前記系統周波数計測部で計測された各線間電圧の周波数が連続する複数の系統周期で一方向に変化する場合に単独運転状態と判断するように構成されている請求項1記載の単独運転検出装置。
【請求項3】
商用三相系統と連系するインバータを備えた分散型電源の単独運転検出装置であって、
商用三相系統の少なくとも二つの線間電圧のゼロクロス信号の立上りエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下がりエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n)]
に基づいて算出される平均値、
または、立上りエッジから立下りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下りエッジから立上りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n+1)]+f(z−n)
に基づいて算出される平均値に基づいて当該線間電圧の周波数を計測する系統周波数計測部と、
前記系統周波数計測部で時系列的に計測された少なくとも二つの線間電圧の周波数の直近の所定期間の平均値に対する過去の所定期間の平均値の差である周波数偏差に応じて無効電力注入量を算出する無効電力注入量算出部と、
前記無効電力注入量算出部で算出された無効電力注入量の無効電力が商用三相系統に注入されるように前記インバータに対する出力電流指令値を生成する無効電流制御部と、
前記無効電流制御部で生成された出力電流指令値に基づいて前記インバータを制御するインバータ制御部と、
少なくとも二つの線間電圧から得られる三つ目の線間電圧に基づいて当該三つ目の線間電圧の周波数を算出するPLL処理部と、
前記系統周波数計測部で計測される当該二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、前記系統周波数計測部で計測された当該二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する前記PLL処理部で出力された当該三つ目の相線圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、に基づいて単独運転状態であるか否かを検出する単独運転検出部と、
を備えている単独運転検出装置。
【請求項4】
前記単独運転検出部は、前記PLL処理部で算出される運転周波数及び前記系統周波数計測部で計測される系統周波数の双方が、連続する複数の系統周期で一方向に変化する場合に単独運転状態と判断するように構成されている請求項3記載の単独運転検出装置。
【請求項5】
前記単独運転検出部は、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に単独運転状態であると判断して前記インバータの運転を停止するように構成されている請求項1から4の何れかに記載の単独運転検出装置。
【請求項6】
商用三相系統と連系するインバータを備えた分散型電源の単独運転検出方法であって、
商用三相系統の三つの線間電圧のゼロクロス信号の立上りエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下がりエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n)]
に基づいて算出される平均値、
または、立上りエッジから立下りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下りエッジから立上りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n+1)]+f(z−n)
に基づいて算出される平均値に基づいて当該線間電圧の周波数を計測する系統周波数計測ステップと、
前記系統周波数計測ステップで時系列的に計測された三つの線間電圧の周波数の直近の所定期間の平均値に対する過去の所定期間の平均値の差である周波数偏差に応じて無効電力注入量を算出する無効電力注入量算出ステップと、
前記無効電力注入量算出ステップで算出された無効電力注入量の無効電力が商用三相系統に注入されるように前記インバータに対する出力電流指令値を生成して前記インバータを制御するインバータ制御ステップと、
前記系統周波数計測ステップで計測された各線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度に基づいて単独運転状態であるか否かを検出する単独運転検出ステップと、
を備えている単独運転検出方法。
【請求項7】
前記単独運転検出ステップは、前記系統周波数計測ステップで計測された各線間電圧の周波数が連続する複数の系統周期で一方向に変化する場合に単独運転状態と判断するように構成されている請求項6記載の単独運転検出方法。
【請求項8】
商用三相系統と連系するインバータを備えた分散型電源の単独運転検出方法であって、
商用三相系統の少なくとも二つの線間電圧のゼロクロス信号の立上りエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下がりエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n)]
に基づいて算出される平均値、
または、立上りエッジから立下りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下りエッジから立上りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n+1)]+f(z−n)
に基づいて算出される平均値に基づいて当該線間電圧の周波数を計測する系統周波数計測ステップと、
前記系統周波数計測ステップで時系列的に計測された少なくとも二つの線間電圧の周波数の直近の所定期間の平均値に対する過去の所定期間の平均値の差である周波数偏差に応じて無効電力注入量を算出する無効電力注入量算出ステップと、
前記無効電力注入量算出ステップで算出された無効電力注入量の無効電力が商用三相系統に注入されるように前記インバータに対する出力電流指令値を生成して前記インバータを制御するインバータ制御ステップと、
少なくとも二つの線間電圧から得られる三つ目の線間電圧に基づいて当該三つ目の線間電圧の周波数を算出するPLL処理ステップと、
前記系統周波数計測ステップで計測される当該二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、前記系統周波数計測ステップで計測された当該二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する前記PLL処理ステップで出力された当該三つ目の線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、に基づいて単独運転状態であるか否かを検出する単独運転検出ステップと、
を備えている単独運転検出方法。
【請求項9】
前記単独運転検出ステップは、前記PLL処理ステップで算出される運転周波数及び前記系統周波数計測ステップで計測される系統周波数の双方が、連続する複数の系統周期で一方向に変化する場合に単独運転状態と判断するように構成されている請求項8記載の単独運転検出方法。
【請求項10】
前記単独運転検出ステップは、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に単独運転状態である判断して前記インバータの運転を停止するように構成されている請求項6から9の何れかに記載の単独運転検出方法。
【請求項11】
請求項5記載の単独運転検出装置を備えた分散型電源の複数台が商用三相系統と連系可能に接続された系統連系システムであって、
何れかの分散型電源の線間電圧が他の分散型電源と逆相に接続された場合に、各単独運転検出装置が、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に同時に単独運転状態であると判断して各インバータの運転を停止するように構成されている系統連系システム。
【請求項12】
請求項10記載の単独運転検出方法を実行する単独運転検出装置を備えた分散型電源の複数台が商用三相系統と連系可能に接続された系統連系システムの単独運転検出方法であって、
何れかの分散型電源の線間電圧が他の分散型電源と逆相に接続された場合に、各単独運転検出装置で実行される単独運転検出ステップは、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に他の単独運転検出装置と同時に単独運転状態である判断して前記インバータの運転を停止するように構成されている系統連系システムの単独運転検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用三相系統と連系するインバータを備えた分散型電源の単独運転検出装置、単独運転検出方法及び系統連系システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池や燃料電池等の分散型電源は、直流電力を交流電力に変換するとともに商用系統周波数や商用系統電圧の位相等を合わせて商用系統と連系するために、電力変換装置(以下では、パワーコンディショナ)を備えている。
【0003】
パワーコンディショナは、分散型電源で生成された直流電圧を所定の直流電圧値に調整するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータから出力される直流電力を交流電力に変換するインバータと、インバータの出力から高周波成分を除去するLCフィルタ等を備えている。
【0004】
分散型電源が商用系統と接続している配電線に地絡または短絡事故が発生し、或いは計画停電等によって変電所から配電線への送電が停止した状態、即ち単独運転状態に至った場合に、区分開閉器の動作への影響防止及び配電線の作業の安全性を確保するために当該配電線から分散型電源を確実に解列させる必要がある。
【0005】
そのための単独運転検出方式には受動的方式と能動的方式があり、何れか一方または双方がパワーコンディショナに採用されている。
【0006】
受動的方式とは単独運転移行時の発電出力と負荷の不平衡による電圧位相や周波数等の急変を検出する方式で、電圧位相の急変を検出する電圧位相跳躍検出方式、変圧器の飽和現象に伴う第3次高調波を検出する3次高調波電圧歪急増検出方式等がある。
【0007】
能動的方式とはパワーコンディショナの制御系や外部に付加した抵抗等により常時電圧や周波数に変動を与えておき単独運転移行時に顕著になる変動を検出する方式で、出力電流位相に微小周波数変化による正帰還をかけることにより周波数異常を検出するスリップモード周波数シフト方式や、出力に周期的な無効電力変動を与え、単独運転移行後に発生する周波数変動を検出する無効電力変動方式等がある。
【0008】
非特許文献1には、太陽光発電用パワーコンディショナの標準形能動的単独運転検出方式として規格化されたステップ注入付周波数フィードバック方式が開示されている。当該ステップ注入付周波数フィードバック方式は、系統周波数の偏差に応じて当該偏差を増大させる方向に予め設定された無効電力量を注入するとともに、周波数偏差が小さく且つ高調波電圧または基本波電圧が所定の変動条件を満たす場合に、周波数が低下する方向に一定の無効電力量を所定時間注入する方式である。
【0009】
特許文献1には、短い検出時限であっても高精度で単独運転を検出可能なパワーコンディショナを得ることを目的として、直流電力から交流電力に変換されて系統側に出力された電圧である系統電圧を検出するセンサと、前記センサが検出した前記系統電圧の正のゼロクロスを検出し、前記正のゼロクロスの検出間隔から前記系統電圧の第1の周期を検出する第1の周期取得手段と、前記センサが検出した前記系統電圧の負のゼロクロスを検出し、前記負のゼロクロスの検出間隔から前記系統電圧の第2の周期を検出する第2の周期取得手段と、前記第1の周期の情報および第2の周期の情報を検出順に取得し、複数の周期の情報を用いて前記系統の状態を評価して前記系統の異常を検出する系統評価手段と、を備えているパワーコンディショナが開示されている。
【0010】
当該系統評価手段は、連続して取得した系統の周期の変化の傾きを検出する傾き検出手段、を備え、前記傾き検出手段で検出した傾きが規定より大きい状態が所定時間継続した場合に前記系統の異常と判断するように構成されている。
【0011】
また、特許文献2には、上述と同様の目的で、直流電源から出力される直流電力を交流電力に変換して系統及び一般負荷に供給する分散型電源の単独運転検出装置であって、連系された系統の交流電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出部と、ゼロクロス点間の時間を計測する周期計測部と、計測したゼロクロス点間の時間が複数のゼロクロス点間の時間から算出した平均周期に対して一定時間以上ずれている場合には、前記連系された系統に異常が生じたと認識する位相跳躍認識部と、前記連系された系統に異常が生じたとする認識が一定回数連続してあった場合には単独運転と判断する一方、前記認識が一定回数連続してなかった場合には継続運転と判断する運転継続判断部と、を有することを特徴とする分散型電源の単独運転検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】日本電機工業会規格 JEM1498 2012年8月27日発行
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2015−23653号公報
【特許文献2】特開2015−73399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1に開示された系統評価手段を採用しても、検出時限が短いと、FRT、位相急変および周波数変動等の様々な外乱が発現した状況下で、系統の周期の変化の傾きを評価する際に予め設定された基準値を上回り、単独運転状態であるとの誤検出(以下、「不要検出」と記す。)を招く虞があった。尚、FRT(Fault Ride Through)とは系統擾乱時における運転継続性能をいう。
【0015】
また、特許文献2に開示されたように位相跳躍認識部で認識された位相跳躍の程度を運転継続判断部で判断するような構成を採用する場合でも、同様に検出時限が短いと、FRT以外でも位相急変や周波数変動等により系統電圧周期が大幅に変化する場合に不要検出を招く虞がありその検出感度を下げると単独運転状態を適切に検出できないという問題があった。
【0016】
さらに、非特許文献1に規定されたステップ注入付周波数フィードバック方式でも、系統周波数の偏差に応じて無効電力量を注入する周波数フィードバック制御時に十分な応答性を確保するための明確な制御回路が提示されているわけではなく、規格で示される0.2秒以内に単独運転状態を検出するためには、特許文献1に開示されたような周波数変化率の値に応じて無効電力の注入量を嵩上げするような回路等が必要になり、制御が複雑になるという問題が内在されている。
【0017】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、商用系統周波数の急変や商用系統電圧の位相の急変、或いはそれらの変化が長時間継続する場合でも、FRT機能を具備しつつ多数台連系に対応できる単独運転検出装置、単独運転検出方法及び系統連系システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の目的を達成するため、本発明による単独運転検出装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、商用三相系統と連系するインバータを備えた分散型電源の単独運転検出装置であって、商用三相系統の三つの線間電圧のゼロクロス信号の立上りエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下がりエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n)]
に基づいて算出される平均値、
または、立上りエッジから立下りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下りエッジから立上りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n+1)]+f(z−n)
に基づいて算出される平均値に基づいて当該線間電圧の周波数を計測する系統周波数計測部と、前記系統周波数計測部で時系列的に計測された三つの線間電圧の周波数の直近の所定期間の平均値に対する過去の所定期間の平均値の差である周波数偏差に応じて無効電力注入量を算出する無効電力注入量算出部と、前記無効電力注入量算出部で算出された無効電力注入量の無効電力が商用三相系統に注入されるように前記インバータに対する出力電流指令値を生成する無効電流制御部と、前記無効電流制御部で生成された出力電流指令値に基づいて前記インバータを制御するインバータ制御部と、前記系統周波数計測部で計測された各線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度に基づいて単独運転状態であるか否かを検出する単独運転検出部と、を備えている点にある。
【0019】
系統周波数計測部によって三つの線間電圧のゼロクロスタイミングから系統周波数が計測され、その系統周波数に基づいて時系列的な周波数偏差が発生すると無効電力注入量算出部によってその周波数偏差に応じた無効電力注入量が算出され、インバータから無効電力が注入される。単独運転検出部は系統周波数計測部で計測された各線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度を評価して単独運転状態であるか否かを検出するため、不要検出することがなく速やかに単独運転状態であるか否かを検出することができるようになる。
【0020】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記単独運転検出部は、前記系統周波数計測部で計測された各線間電圧の周波数が連続する複数の系統周期で一方向に変化する場合に単独運転状態と判断するように構成されている点にある。
【0021】
商用系統に無効電力を注入した状況で、何らかの要因で商用系統の位相が急変するような場合にはその時点で系統周波数が変動してもその前後で系統周波数が変動することがないのに対して、商用系統からの送電が停止して単独運転状態となる場合にはそれ以降周波数が同じ方向に変動する。そこで、系統周波数計測部で計測される系統周波数が、連続する複数の系統周期で一方向に変化する、という傾向が見られる場合に単独運転状態であると判断することによって、系統電源の位相急変時や瞬低による位相急変時(FRT)の不要検出を確実に回避することができるようになる。
【0022】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、商用三相系統と連系するインバータを備えた分散型電源の単独運転検出装置であって、商用三相系統の少なくとも一相の線間電圧のゼロクロス信号の立上りエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下がりエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n)]
に基づいて算出される平均値、
または、立上りエッジから立下りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下りエッジから立上りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n+1)]+f(z−n)
に基づいて算出される平均値に基づいて当該線間電圧の周波数を計測する系統周波数計測部と、前記系統周波数計測部で時系列的に計測された少なくとも一相の線間電圧の周波数の直近の所定期間の平均値に対する過去の所定期間の平均値の差である周波数偏差に応じて無効電力注入量を算出する無効電力注入量算出部と、前記無効電力注入量算出部で算出された無効電力注入量の無効電力が商用三相系統に注入されるように前記インバータに対する出力電流指令値を生成する無効電流制御部と、前記無効電流制御部で生成された出力電流指令値に基づいて前記インバータを制御するインバータ制御部と、少なくとも2相の線間電圧から得られる他相の線間電圧に基づいて当該他相の線間電圧の周波数を算出するPLL処理部と、前記系統周波数計測部で計測される当該2相の線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、前記系統周波数計測部で計測された当該2相の線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する前記PLL処理部で出力された当該他相の相線圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、に基づいて単独運転状態であるか否かを検出する単独運転検出部と、を備えている点にある。
【0023】
系統周波数計測部によって二つの線間電圧のゼロクロスタイミングから系統周波数が計測され、その系統周波数に基づいて時系列的な周波数偏差が発生すると無効電力注入量算出部によってその周波数偏差に応じた無効電力注入量が算出され、インバータから無効電力が注入される。単独運転検出部は前記系統周波数計測部で計測される何れか二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、前記系統周波数計測部で計測された当該二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対するPLL処理部で出力された当該他相の相線圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、を評価して単独運転状態であるか否かを検出するため、不要検出することがなく速やかに単独運転状態であるか否かを検出することができるようになる。しかも、商用三相系統電圧の少なくとも一相の周波数がPLL処理部で算出されるので、系統周波数計測部に二つの線間電圧のゼロクロス検出部を備えるだけでよく回路構成もシンプルになる。
【0024】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三の特徴構成に加えて、前記単独運転検出部は、前記PLL処理部で算出される運転周波数及び前記系統周波数計測部で計測される系統周波数の双方が、連続する複数の系統周期で一方向に変化する場合に単独運転状態と判断するように構成されている点にある。
【0025】
PLL処理部で算出される運転周波数及び系統周波数計測部で計測される系統周波数の双方が、連続する複数の系統周期で一方向に変化する、という傾向が見られる場合に単独運転状態であると判断することによって、系統電源の位相急変時や瞬低による位相急変時(FRT)の不要検出を確実に回避することができるようになる。
【0026】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記単独運転検出部は、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に単独運転状態であると判断して前記インバータの運転を停止するように構成されている点にある。
【0027】
上述した第二または第四の特徴構成と同様、商用系統の位相が急変するような場合にはその時点の前後で系統周波数が変動することがないのに対して、単独運転状態となる場合にはそれ以降周波数が同じ方向に変動する。そこで、少なくとも連続するn.5系統周期で各系統周波数の挙動をチェックすることにより、商用系統の位相急変による系統周波数の変動であるか否かが正確に検出できるようになる。尚、nは整数である。
【0028】
本発明による分散型電源の単独運転検出方法の第一の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、商用三相系統と連系するインバータを備えた分散型電源の単独運転検出方法であって、商用三相系統の三つの線間電圧のゼロクロス信号の立上りエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下がりエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n)]
に基づいて算出される平均値、
または、立上りエッジから立下りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下りエッジから立上りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n+1)]+f(z−n)
に基づいて算出される平均値に基づいて当該線間電圧の周波数を計測する系統周波数計測ステップと、前記系統周波数計測ステップで時系列的に計測された三つの線間電圧の周波数の直近の所定期間の平均値に対する過去の所定期間の平均値の差である周波数偏差に応じて無効電力注入量を算出する無効電力注入量算出ステップと、前記無効電力注入量算出ステップで算出された無効電力注入量の無効電力が商用三相系統に注入されるように前記インバータに対する出力電流指令値を生成して前記インバータを制御するインバータ制御ステップと、前記系統周波数計測ステップで計測された各線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度に基づいて単独運転状態であるか否かを検出する単独運転検出ステップと、を備えている点にある。
【0029】
同第二の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記単独運転検出ステップは、前記系統周波数計測ステップで計測された各線間電圧の周波数が連続する複数の系統周期で一方向に変化する場合に単独運転状態と判断するように構成されている点にある。
【0030】
同第三の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、商用三相系統と連系するインバータを備えた分散型電源の単独運転検出方法であって、商用三相系統の少なくとも二つの線間電圧のゼロクロス信号の立上りエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下がりエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n)]
に基づいて算出される平均値、
または、立上りエッジから立下りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)と立下りエッジから立上りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)とから以下の数式
(z−n)=0.5[f(z−n)+f(z−n+1)]+f(z−n)
に基づいて算出される平均値に基づいて当該線間電圧の周波数を計測する系統周波数計測ステップと、前記系統周波数計測ステップで時系列的に計測された少なくとも二つの線間電圧の周波数の直近の所定期間の平均値に対する過去の所定期間の平均値の差である周波数偏差に応じて無効電力注入量を算出する無効電力注入量算出ステップと、前記無効電力注入量算出ステップで算出された無効電力注入量の無効電力が商用三相系統に注入されるように前記インバータに対する出力電流指令値を生成して前記インバータを制御するインバータ制御ステップと、少なくとも二つの線間電圧から得られる三つ目の線間電圧に基づいて当該三つ目の線間電圧の周波数を算出するPLL処理ステップと、前記系統周波数計測ステップで計測される当該二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、前記系統周波数計測ステップで計測された当該二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する前記PLL処理ステップで出力された当該三つ目の線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、に基づいて単独運転状態であるか否かを検出する単独運転検出ステップと、を備えている点にある。
【0031】
同第四の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第三の特徴構成に加えて、前記単独運転検出ステップは、前記PLL処理ステップで算出される運転周波数及び前記系統周波数計測ステップで計測される系統周波数の双方が、連続する複数の系統周期で一方向に変化する場合に単独運転状態と判断するように構成されている点にある。
【0032】
同第五の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記単独運転検出ステップは、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に単独運転状態である判断して前記インバータの運転を停止するように構成されている点にある。
【0033】
本発明による系統連系システムの特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述した第五の特徴構成を有する単独運転検出装置を備えた分散型電源の複数台が商用三相系統と連系可能に接続された系統連系システムであって、何れかの分散型電源の線間電圧が他の分散型電源と逆相に接続された場合に、各単独運転検出装置が、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に同時に単独運転状態であると判断して各インバータの運転を停止するように構成されている点にある。
【0034】
本発明による系統連系システムの単独運転検出方法の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述した第五の特徴構成を有する単独運転検出方法を実行する単独運転検出装置を備えた分散型電源の複数台が商用三相系統と連系可能に接続された系統連系システムの単独運転検出方法であって、何れかの分散型電源の線間電圧が他の分散型電源と逆相に接続された場合に、各単独運転検出装置で実行される単独運転検出ステップは、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に他の単独運転検出装置と同時に単独運転状態である判断して前記インバータの運転を停止するように構成されている点にある。
【発明の効果】
【0035】
以上説明した通り、本発明によれば、系統周波数の急変や系統電圧の位相の急変、或いはそれらの変化が長時間継続する場合でも、FRT機能を具備しつつ多数台連系に対応できる単独運転検出装置、単独運転検出方法及び系統連系システムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明による単独運転検出装置が適用される分散型電源の回路図
図2】本発明による単独運転検出装置の制御ブロックを示す構成図
図3】(a),(b)は系統周波数計測部の動作説明図
図4】系統周波数計測部に備えたサンプルホールド回路の説明図
図5】単独運転状態の検出手順(n=2の一例)の説明図
図6】(a)は単独運転検出回路図、(b)は(a)の系統周波数計測部から出力される立上り/立下りパルスの説明図
図7】別実施形態を示し、本発明による単独運転検出装置の制御ブロックを示す構成図
図8】別実施形態を示す単独運転検出回路図
図9】単独運転時の運転周波数fPLLと系統周波数fGridの特性説明図
図10】商用系統電圧の瞬低、且つ、位相急変時の説明図
図11】互いが逆相に接続された3台のパワーコンディショナの接続図
図12】(a),(b)は系統周波数計測部の動作説明図
図13】(a)は周波数対応無効電力注入部で用いられる周波数偏差・無効電力注入量特性テーブルの説明図、(b)は無効電力ステップ注入部の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明による単独運転検出装置、単独運転検出方法及び系統連系システムを図面に基づいて説明する。
図1には、分散型電源の一例である太陽電池発電装置100が示されている。太陽電池発電装置100は、太陽電池パネルSPと太陽電池パネルSPが接続されたパワーコンディショナPCを備えて構成され、系統連系リレーSGridを介して商用三相系統eGridに接続されている。尚、本発明はパワーコンディショナPCに接続される電源装置が太陽電池パネルSPである場合に限定されるものではなく、燃料電池等の他の発電装置や蓄電装置等が接続される場合であっても適用可能である。
【0038】
パワーコンディショナPCは、太陽電池パネルSPで発電された直流電圧を所定の直流リンク電圧Vdcに昇圧するDC/DCコンバータ1と、商用三相系統と連系するように所定の周波数及び電圧値の三相交流電圧に変換するインバータ3と、インバータ3の出力から高調波成分を除去するLCフィルタ4を備えている。
【0039】
単独運転検出装置10を含む制御ユニットCUによってインバータ3に備えたスイッチS1,S2,S3,S4,S5,S6がPWM制御されて、商用三相系統の周波数、位相、振幅と整合する三相交流電力が出力され、さらにLCフィルタ4によってその出力から高調波成分が除去されて正弦波の三相交流電力が出力される。
【0040】
図1中、符号euvはu−v間の線間電圧、evwはv−w間の線間電圧、euwはu−w間の線間電圧である。また、符号Vdcは直流バス電圧、Cdcは直流バス電圧の平滑用の電解コンデンサ、S1〜S6はインバータ3のスイッチング素子、i,i,iはインバータ3の出力電流、LinvとCinvはLCフィルタ4を構成するコイルとコンデンサ、RinvはACリアクトルの内部抵抗、RはコンデンサCinvの内部抵抗、RGridとLGridは系統インピーダンス、SGridは系統連系リレー、ZLoadは三相負荷である。
【0041】
図2には、マイクロコンピュータとメモリ及び周辺回路等を備えて構成された制御ユニットCUに組み込まれた単独運転検出装置10の機能ブロックが示されている。本実施形態では、単独運転検出装置10はステップ注入付周波数フィードバック方式に対応するとともに本発明による不要検出回避アルゴリズムを含む制御プログラム等に基づいて所期の単独運転検出方法が実行されるように構成されている。
【0042】
単独運転検出装置10は、直流電圧制御部11と、無効電力制御部12と、インバータ出力電流制御部13と、PWM制御部14と、系統周波数計測部15と、無効電力注入量算出部16と、単独運転検出部17と、PLL処理部19等を備えている。無効電力注入量算出部16はステップ注入付周波数フィードバック方式を具現化する機能ブロックであり、周波数偏差対応無効電力注入部16Aと、無効電力ステップ注入部16Bを備えている。
【0043】
図2中、符号Vdcは直流バス電圧の指令値、Quvwは無効電力の指令値、Qは注入量Qinjを含めた総合無効電力の指令値、Qは無効電力のフィードバック値、Kは無効分の総合注入量、Kstepは無効分のステップ注入量、Kfvarは周波数フィードバック注入量、Pは有効電力のフィードバック値、Iは有効分の電流指令値、Iは無効分の電流指令値、θはPLL処理部19で求めた位相角度、ΔfVARは周波数偏差、ΔfCHK.xは単独運転状態を確認するための周波数偏差、d,d,dはインバータ出力電流制御部13から出力されるデューティ比である。
【0044】
図2に示す単独運転検出装置10では、u,v,wの三相交流電圧及び電流をα,β変換して得られる有効電力P及び無効電力Qに基づいて各種の制御演算が実行され、有効電力P及び無効電力Qは、以下の数式〔数1〕,〔数2〕で求められる。
【数1】

【数2】
【0045】
三相交流電圧euv,evw,euwが系統周波数計測部15に入力され、系統周波数計測部15で算出された周波数偏差ΔfVARが周波数偏差対応無効電力注入部16Aに入力される。周波数偏差対応無効電力注入部16Aでは周波数偏差ΔfVARに応じて当該偏差を増大させる方向に周波数フィードバック注入量Kfvarが算出される。
【0046】
さらに、三相交流電圧euv,evw,euwが無効電力ステップ注入部16Bに入力され、無効電力ステップ注入部16Bでは周波数偏差が小さく且つ高調波電圧または基本波電圧が所定の変動条件を満たす場合に、周波数が低下する方向に所定時間注入するためのステップ注入量Kstepが算出される。
【0047】
周波数フィードバック注入量Kfvarとステップ注入量Kstepの加算値である総合注入量Kと有効電力Pとの積である注入量Qinjと無効電力の指令値Quvwとの加算値が総合無効電力の指令値Qとして無効電力制御部12に入力され、フィードバック値Qに基づくPID演算によって無効成分の電流指令値Iが算出される。
【0048】
直流バス電圧の指令値Vdcが直流電圧制御部11に入力されて、フィードバック信号である直流バス電圧Vdcに基づくPID演算によって、有効成分の電流指令値Iが算出される。有効成分の電流指令値I及び無効成分の電流指令値Iがインバータ出力電流制御部13に入力される。
【0049】
インバータ出力電流制御部13では、PLL処理部19で求められた位相角度θ、インバータ出力電流i,i,iがフィードバック信号として入力され、有効成分の電流指令値I及び無効成分の電流指令値Iが得られるようにPID演算された結果であるデューティ比d,d,dがPWM制御部14に入力されて、PWM制御部14によって図1に示したインバータ3が駆動される。
【0050】
単独運転検出部17は、このようにして無効電流が注入された状態で、系統周波数計測部15から入力された周波数偏差ΔfCHK.x図2参照。)、または、系統周波数計測部15から入力された周波数偏差ΔfCHK.x及びPLL処理部18から入力されたu−w間の線間電圧euwの運転周波数偏差ΔfPLL図7参照。)に基づいて単独運転状態か否かを検知し、単独運転状態であると検知されるとPWM制御部14に停止信号を出力してインバータ3を停止する。
【0051】
以下、単独運転検出部17について詳述する。
単独運転検出部17は系統周波数計測部15で検出された系統周波数の変動量に基づいて単独運転状態であるか否かを判断するように構成されている。
【0052】
系統周波数計測部15は三相の商用系統電圧euv,evw,euwの各ゼロクロスタイミングに基づいて系統周波数fGridを計測するブロックであり、各線間電圧を分圧する分圧回路と分圧回路で分圧された電圧を二値化する二値化回路とを含むゼロクロス検出回路を備えている。
【0053】
図3(a)に示すように、商用系統電圧euvを抵抗分圧した線間電圧波形を、電圧値ゼロを閾値として二値化回路で二値化することにより線間電圧の周波数を示す方形波が得られる。以下の数式〔数3〕で示すように、方形波の立上りエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)と、方形波の立下がりエッジ間の時間差から算出した周波数f(z−n)との平均値が平均周波数fとして算出される。
【数3】
【0054】
図3(b)に示すように、線間電圧の周波数を示す方形波の立上りエッジから立下りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)と、方形波の立下りエッジから立上りエッジ迄の時間差から算出した周波数f(z−n)とから、数式〔数4〕に基づいて得られる平均値を平均周波数fとして算出するように構成されていてもよい。
【数4】
【0055】
何れの場合も、本実施形態では、2.5MHzのサンプリング周波数(0.4μs.の精度)で検出されるエッジに基づいて周波数f(z−n)及び周波数f(z−n)が求められている。尚、サンプリング周波数は例示であり、この値に限定されることはない。
【0056】
図4に示すように、系統周波数計測部15にはサンプルホールド部が設けられ、上述の平均周波数f(z)が当該サンプルホールド部によって5ms.毎にサンプリングされた値f(z)に対して、現在から40サンプリング周期(200ms.)前の16回(80ms.)の平均値と現在から8サンプリング周期(40ms.)前の8回(40ms.)の平均値との差分が周波数偏差ΔfVARとして算出される。
【0057】
例えば、商用三相系統の周波数が50Hzであれば、周波数偏差ΔfVARは線間電圧の10周期前の4周期分の周波数平均値と、現在から直近2周期分の周波数平均値の差分となる。
【0058】
図5に示すように、単独運転検出部17は、系統周波数計測部15によって求められた各線間電圧euv,evw,euwに対する各平均周波数f1,2,に基づいて、以下に示す数式〔数5〕に従って単独運転状態を検知するように構成されている。
【数5】
【0059】
即ち、各相の平均周波数f1,2,の平均値が系統周波数fGridとして算出され、現在から32系統周期から64系統周期前の32個の系統周波数fGridの平均値が平均系統周波数fGrid.avgとして算出され、平均系統周波数fGrid.avgと各線間電圧の平均周波数f1,2,との差分と各相の周波数偏差のリミッタ値flimとの間の最小値が周波数偏差の現在値Δf(z)として算出される。
【0060】
さらに、周波数偏差が現在値Δf(z)からn個前の値Δf(z−n)まで求められ、単独運転状態を確認するための周波数偏差ΔfCHK.xが算出される。各相の周波数偏差ΔfCHK.x(x=1〜3)が全て単独運転状態の判定値fcstより大であれば単独運転状態と判断されてインバータ3が運転停止される。尚、数式〔数5〕中、Kは単独運転状態を検出するための感度調整用のゲインであり、ゲインKが0であれば単独運転状態とは検出されない。
【0061】
つまり、単独運転検出部17は、系統周波数計測部15で計測された各線間電圧euv,evw,euwの周波数f1,2,を所定期間平均した平均系統周波数fGrid.avgに対する各線間電圧の周波数f1,2,の複数周期に亘る変動の程度に基づいて、具体的には時系列的に算出された複数の周波数偏差Δf(z)の積に基づいて単独運転状態であるか否かを検出するように構成されている。数式〔数5〕に示すnの値はn≧2であればよく、n=2であれば、少なくとも系統周期の連続する3周期の変動が加味され、不要検出が回避できるようになる。
【0062】
図6(a)には、単独運転検出部17に組み込まれ、各線間電圧の周波数偏差ΔfCHK.x(x=1〜3)と単独運転状態の判定値fcstとを比較して、PWM制御部14の動作を許容するか停止するかの許否信号を出力する回路ブロックが例示され、図6(b)には、系統周波数計測部15から出力される立上り/立下りパルスが系統周波数のゼロクロス点を基準に生成される様子が示されている。
【0063】
即ち、単独運転検出部17は、平均系統周波数及び各線間電圧の周波数に基づいて得られる周波数偏差と所定の閾値とを比較する比較部17A,17B,17Cと、各比較部からの出力を論理積演算する論理積演算部17Dと、系統周波数計測部15から出力されるゼロクロス信号に同期して論理積演算部17Dの出力をインバータ3の駆動の許否信号Sとしてラッチするラッチ処理部17Eと、を備えている。
【0064】
比較部17A,17B,17Cから出力される各線間電圧の周波数偏差ΔfCHK.x(x=1〜3)と所定の閾値fcstとの比較の結果が論理積演算部17Dに入力されるので、全ての線間電圧で周波数偏差が所定の閾値よりも大きな値になるとラッチ処理部17Eによってインバータ3の駆動が停止される旨の許否信号が出力され、一つの線間電圧でも周波数偏差が所定の閾値よりも小さな値になるとラッチ処理部17Eによってインバータの駆動が許容される旨の許否信号が出力される。
【0065】
図7には、マイクロコンピュータとメモリ及び周辺回路等を備えて構成された制御ユニットCUに組み込まれた単独運転検出装置10の別実施形態を示す機能ブロックが示されている。図1との違いは、系統周波数計測部15に二つの線間電圧の周波数を算出するゼロクロス検出回路を備え、三つ目の線間電圧の周波数を算出するPLL処理部18を備えた点にある。
【0066】
図7中、符号ΔfPLLはPLL処理部18で求めたu−w間の線間電圧euwの運転周波数偏差、euwはu−v間とv−w間の線間電圧の和である。
【0067】
図5の例では、系統周波数計測部15によって求められた各線間電圧euv,evw,euwに対する各平均周波数f1,2,に基づいて単独運転状態を検知する構成を説明したが、少なくとも二つの線間電圧から三つ目の線間電圧を模擬するPLL処理部18を備え、PLL処理部18で得られた運転周波数偏差ΔfPLLと、系統周波数計測部15によって求められた当該二つの線間電圧に対する各平均周波数とに基づいて、以下に示す数式〔数6〕に従って単独運転状態を検知するように構成されている。
【数6】
【0068】
系統周波数fGridは、系統周波数計測部15により測定された線間電圧euvの平均周波数f及び線間電圧evwの平均周波数fの平均値である。また、線間電圧euvと線間電圧evwから算出した線間電圧euwを用いて、PLL処理部18(図7参照)によって算出される系統周波数が線間電圧euwの運転周波数fPLLとして求められる。数式〔数6〕に示すnの値もn≧2であればよく、n=2であれば、少なくとも系統周期の連続する3周期の変動が加味され、不要検出が回避できるようになる。
【0069】
つまり、単独運転検出装置10は、少なくとも二つの線間電圧から得られる他相の線間電圧に基づいて当該他相の線間電圧の周波数を出力するPLL処理部をさらに備え、単独運転検出部17は、系統周波数計測部15で計測される当該2相の線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、系統周波数計測部15で計測された当該二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対するPLL処理部18で出力された当該他相の相線圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、に基づいて単独運転状態であるか否かを検出するように構成されている。
【0070】
図8には、単独運転検出部17に組み込まれ、二つの線間電圧の周波数偏差ΔfCHK.x(x=1〜2)及び当該二つの線間電圧から算出された三つ目の線間電圧の周波数偏差ΔfPLLと単独運転状態の判定値fcstとを比較して、PWM制御部14の動作を許容するか停止するかの許否信号を出力する回路ブロックが例示されている。図8に示す立上り/立下りパルスは図6(b)と同様である。
【0071】
即ち、単独運転検出部17は、平均系統周波数及び各線間電圧の周波数に基づいて得られる周波数偏差ΔfCHK.x(x=1〜2)、並びにPLL処理部18から出力された運転周波数偏差ΔfPLLを所定の閾値fcstと比較する比較部17a,17b,17cと、各比較部からの出力を論理積演算する論理積演算部17dと、前記系統周波数計測部15から出力されるゼロクロス信号に同期して論理積演算部17dの出力をインバータ3の駆動の許否信号Sとしてラッチするラッチ処理部17eと、を備えている。
【0072】
比較部17a,17b,17cから出力される二つの線間電圧の周波数偏差と所定の閾値との比較の結果及び運転周波数偏差と所定の閾値との比較の結果が論理積演算部17dに入力されるので、全ての線間電圧で周波数偏差が所定の閾値よりも大きな値になるとラッチ処理部17eによってインバータの駆動が停止される旨の許否信号が出力され、一つの線間電圧でも周波数偏差が所定の閾値よりも小さな値になるとラッチ処理部17eによってインバータの駆動が許容される旨の許否信号が出力される。
【0073】
一般的に、商用三相系統が正常(系統電圧の範囲が201±20V)である場合には正しく検出できるが、落雷などにより電力設備に故障が生じ、送配電網の電圧が瞬間的に低下する現象が発生した場合(FRT)に、入力電圧の低下および位相のずれが発生する。
【0074】
図10にはその一例が示されている。線間電圧euvが90°の時に瞬低が発生し、位相が最大+41°ずれた瞬間に、系統周期T(z−4)が広くなり(周波数低下)、単独運転状態と不要検出されるような状態が発生する。
【0075】
しかし、数式〔数5〕、〔数6〕に示したように、n≧2に設定されていれば、単独運転状態を検出するために、現在値(z)、一つ前の値(z−1)及び二つ前の値(z−2)との因果関係が考慮されるので、単独運転状態の不要検出が回避可能になる。尚、他の二つの線間電圧evw,euwも同様である。ここに、nは整数である。
【0076】
図9に示すように、単独運転検出部17はPLL処理部18で算出される運転周波数fPLL及び系統周波数計測部15で計測される系統周波数fGridの双方が連続する複数の系統周期で一方向に変化する場合に単独運転状態と判断するように構成されていることが好ましく、不要検出を回避して単独運転状態を正確に検出できるようになる。尚、数式〔数6〕に示したように、運転周波数fPLLの応答性が系統周波数fGridより遅くなり、運転周波数偏差ΔfPLLの感度を高めるために、ゲインMの調整範囲は、0〜2Kまで調整できるように設計されている。
【0077】
双方の値が次第に高くなる場合もあれば、反対に双方の値が次第に低くなる場合もある。これに対して、図10のように位相が急変した場合には、PLL処理部18で算出される運転周波数fPLL及び系統周波数計測部15で計測される系統周波数fGridの双方が、急変時のサイクルでのみ一時的に上昇または下降し、その後定常に復帰するので、その傾向を判別することによって不要検出を回避し、単独運転状態を正確且つ迅速に検出できるのである。
【0078】
つまり、単独運転検出部17は、PLL処理部18で算出される運転周波数及び系統周波数計測部15で計測される系統周波数の双方が、連続する複数の系統周期で一方向に変化する場合に単独運転状態と判断するように構成されている。
【0079】
本発明によれば、単独運転状態を確認するための周波数偏差ΔfCHK.xは現在値からn個の前の値の積を計算することにより、FRT時、位相急変時及び周波数変動等の様々な外乱の状況においても、ΔfCHK.xが複数の周期に亘る積で求めているので誤検出することがなく、的確に単独運転状態を確実に検出することができる。
【0080】
上述した単独運転検出部17は、単独運転状態であると検出すると、インバータのスイッチング損失を低減しながらも速やかに停止させることができるように、各線間電圧の系統周期のゼロクロス近傍でインバータの運転を停止するように構成されている。単独運転状態であると検出した直後の各線間電圧の系統周期のゼロクロス近傍でインバータの運転を停止することが好ましい。
【0081】
そして、単独運転検出部17は、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に単独運転状態であると判断してインバータの運転を停止するように構成されている。
【0082】
商用系統の位相が急変するような場合にはその時点の前後で系統周波数が変動することがないのに対して、単独運転状態となる場合にはそれ以降周波数が同じ方向に変動する。そこで、少なくとも連続するn.5系統周期で各系統周波数の挙動をチェックすることにより、商用系統の位相急変による系統周波数の変動であるか否かが正確に検出できるようになる。
【0083】
また、図11に示すように3台のパワーコンディショナ(PCS)が同一の商用三相系統に接続された系統連系システムでは、各単独運転検出装置が、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に同時に単独運転状態であると判断して各インバータの運転を停止するように構成される。
【0084】
それぞれの線間電圧が逆相に接続されている場合に単独運転状態が発生しても、上述した数式〔数5〕または〔数6〕を適用することにより3台のパワーコンディショナ(PCS)で同時に単独運転状態を検出することができる。
【0085】
それぞれのパワーコンディショナ(PCS)は、各線間電圧の平均周波数の変化量を同時に監視し、上述した数式〔数5〕または〔数6〕を適用した場合でn=3に設定すると、最速3サイクル半の前後で3台同時に運転を停止させることができるようになる。尚、3台を例に説明したが、同一の商用三相系統に複数台のパワーコンディショナ(PCS)が接続されている場合でも同様である。
【0086】
換言すると、本発明による系統連系システムの単独運転検出方法は、各単独運転検出装置で実行される上述の単独運転検出ステップが、単独運転状態であると検出するために設定された検出時限n周期に対して、単独運転状態となった後のn.5周期後に他の単独運転検出装置と同時に単独運転状態である判断して前記インバータの運転を停止するように構成されている。
【0087】
以上説明した通り、上述の数式〔数5〕に従って演算する単独運転検出装置10によって、本発明による単独運転検出方法が実行される。
即ち、商用三相系統の三つの線間電圧のゼロクロスタイミングに基づいて当該線間電圧の周波数を計測する系統周波数計測ステップと、系統周波数計測ステップで時系列的に計測された三つの線間電圧の周波数の直近の所定期間の平均値に対する過去の所定期間の平均値の差である周波数偏差に応じて無効電力注入量を算出する無効電力注入量算出ステップと、無効電力注入量算出ステップで算出された無効電力注入量の無効電力が商用三相系統に注入されるようにインバータに対する出力電流指令値を生成してインバータを制御するインバータ制御ステップと、系統周波数計測ステップで計測された各線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度に基づいて単独運転状態であるか否かを検出する単独運転検出ステップとが実行される。
【0088】
さらに、上述の数式〔数6〕に従って演算する単独運転検出装置10によって、本発明による単独運転検出方法が実行される。
即ち、商用三相系統と連系するインバータを備えた分散型電源の単独運転検出方法であって、商用三相系統の二つの線間電圧のゼロクロスタイミングに基づいて当該線間電圧の周波数を計測する系統周波数計測ステップと、系統周波数計測ステップで時系列的に計測された二つの線間電圧の周波数の直近の所定期間の平均値に対する過去の所定期間の平均値の差である周波数偏差に応じて無効電力注入量を算出する無効電力注入量算出ステップと、無効電力注入量算出ステップで算出された無効電力注入量の無効電力が商用三相系統に注入されるようにインバータに対する出力電流指令値を生成してインバータを制御するインバータ制御ステップと、二つの線間電圧から得られる三つ目の線間電圧に基づいて当該他相の線間電圧の周波数を出力するPLL処理ステップと、系統周波数計測ステップで計測される当該二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対する各線間電圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、系統周波数計測ステップで計測された当該二つの線間電圧の周波数を所定期間平均した平均系統周波数に対するPLL処理ステップで出力された当該三つ目の相線圧の周波数の複数周期に亘る変動の程度と、に基づいて単独運転状態であるか否かを検出する単独運転検出ステップとが実行される。
【0089】
以下、ステップ注入付周波数フィードバック方式を具現化する無効電力注入量算出部16について説明する。
【0090】
周波数偏差対応無効電力注入部16Aは系統周波数計測部15で計測された系統周波数fGridに基づいて得られる周波数偏差ΔfGridに応じて無効電力注入量を算出するブロックで、ある時点の周波数偏差ΔfGridに応じて以後の周波数偏差が次第に大きくなるように無効電力注入量が定められた周波数偏差・無効電力注入量特性テーブルから周波数フィードバック注入量Kfvarを算出する。ここに、系統周波数fGridは、数式〔数5〕または〔数6〕で得られる値である。
【0091】
図12(b)に示すように、系統周波数fGridは1周期毎に更新され、5ms.間隔で直近の40ms.間の移動平均が算出され、記憶部に記憶される。図12(a)に示すように、直近の移動平均算出時から200ms.前の80ms.分の移動平均から直近の40ms.間の移動平均を減算することによって周波数偏差ΔfGridが算出される。
【0092】
図13(a)には周波数偏差・無効電力特性が示されている。周波数対応無効電力注入部20は周波数偏差・無効電力特性に基づいて周波数フィードバック注入量Kfvarを算出し、周波数偏差ΔfGridの算出から系統周波数fGridの半サイクル以内に算出した周波数フィードバック注入量Kfvarを注入する。
【0093】
当該周波数偏差・無効電力特性は、周波数偏差ΔfGridが±0.01Hz以内の低感帯領域と、その両外側の高感帯領域で傾きが異なる周波数フィードバック注入量Kfvarが規定されている。何れも周波数偏差を増大させる方向への無効電力注入量Kfvarが規定され、周波数偏差ΔfGridが低感帯領域の1段目ゲインの傾きよりも高感帯領域の2段目ゲインの傾きが大きくなるように設定されている。最大値は±0.25p.u.(per unit)に設定されている。尚、周波数偏差・無効電力特性は例示であり、この特性に限定されるものではない。
【0094】
無効電力ステップ注入部16Bはある時点の周波数偏差ΔfGridに変動がなく各線間電圧euv,evw,euw及び/または高調波電圧THDが変動する場合に電流位相が一定方向で一定量のステップ注入量Kfstepを算出するブロックである。尚、本明細書では「周波数偏差に変動がない状態」とは変動が小さい状態、つまり上述の低感帯領域にある状態を含む概念で用いている。
【0095】
図13(b)に示すように、無効電力ステップ注入部16Bは、周波数偏差ΔfGridが低感帯領域であるときに、高調波電圧THDの変動が数式〔数7〕に示す全ての条件式を満たすと判断すると、それから半サイクル以内に、3サイクル以下の時間で上限を0.1p.u.とする無効電力をパワーコンディショナPCから見て電流位相を遅らせる方向に、つまり周波数が低下する方向に注入する。
【0096】
〔数7〕
THD(z)−THDavr(z)>2V
THD(z−1)−THDavr(z)>2V
THD(z−2)−THDavr(z)>−0.5V
│THD(z−3)−THDavr(z)│<0.5V
│THD(z−4)−THDavr(z)│<0.5V
│THD(z−5)−THDavr(z)│<0.5V
【0097】
以下の数式〔数8〕に示すように、本実施形態では高調波電圧実効値THDとして2次から7次までの総合高調波電圧実効値が好ましい態様として採用されているが、さらに高次の高調波が含められていてもよい。尚、数式〔数8〕はu−w間の線間電圧の高調波電圧実効値THDの一例が示されている。u−v間およびv−w間の線間電圧の高調波電圧実効値も数式〔数8〕と同様に計算できると考えられる。
【数8】
【0098】
また、無効電力ステップ注入部16Bは、周波数偏差ΔfGridが低感帯領域であるときに、u−w間の線間電圧の実効値の変動Euw.rmsが数式〔数9〕に示す全ての条件式を満たすと判断すると、それから半サイクル以内に、3サイクル以下の時間で上限を0.1p.u.とする無効電力をパワーコンディショナPCから見て電流位相を遅らせる方向に、つまり周波数が低下する方向に注入する。
【0099】
〔数9〕
uw.rms(z)−Euw.rms.avr(z)>2.5V
uw.rms(z−1)−Euw.rms.avr(z)>2.5V
uw.rms(z−2)−Euw.rms.avr(z)>−0.5V
│Euw.rms(z−3)−Euw.rms.avr(z)│<0.5V
│Euw.rms(z−4)−Euw.rms.avr(z)│<0.5V
│Euw.rms(z−5)−Euw.rms.avr(z)│<0.5V
【0100】
上述の各実施形態は本発明による分散型電源の単独運転検出装置及び単独運転検出方法の一例に過ぎず、各構成ブロックの具体的な構成(ハードウェアやソフトウェア)や各種の数値等は本発明による作用効果が奏される範囲で適宜変更設計することも可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0101】
1:DC/DCコンバータ
3:インバータ
4:LCフィルタ
10:単独運転検出装置
11:直流電圧制御部
12:無効電力制御部
13:インバータ出力電流制御部
14:PWM制御部
15:系統周波数計測部
16:無効電力注入量算出部
16A:周波数偏差対応無効電力注入部
16B:無効電力ステップ注入部
17:単独運転検出部
18:PLL処理部
100:分散型電源(太陽電池発電装置)
PC:パワーコンディショナ
SP:太陽電池パネル
S1,S2,S3,S4,S5,S6:インバータブリッジに備えたスイッチ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13